○夏堀
委員 はなはだ遺憾ではありますけれども、私は大臣の御
意見とはかわつた考えであります。大
企業に対してはなお一層軽課されることであ
つて、小
企業に対して今の自家労働、これはある程度救われるでありましようけれども、日本の
産業経済の中核となるところの中
企業というものは、どうしても貧乏くじを引くのだという結果になるだろう。これが
附加価値税の
実施の面に現われる最も恐るべきことであると私は考えております。しかしこれは見解の相違であるとおつしやればそれまででありますが、理論的にはこれは非常によろしいと思いますけれども、世界に類例のない
課税であります。もしどこかの国でこれを試験したことでもあれば、たいへんよろしいのでありますけれども、世界に類例のないこの
課税の
方法、今これを
実施するとし、
国民全体がこれに対してどういう批判を持
つておるか。私は與党として、
政府に対してはなはだ申しにくいのでありますけれども、これが恐るべき事態に到達する前に、これに対して何とか修正はできないものであろうかという悲痛な声は、全日本の
国民にみなぎ
つておるのであります。もしこれがどうしても修正が行われないで
実施されるという
段階になつたたらば、そしてそのとき
国民の日本再建の一途をたど
つて進みつつある気魄がくずれて、どうにもならぬという
段階になつたならば、また敗戰
国民として再び救うことのできない
経済面が展開したならば、どうなりますか、これは絶対に
政府の
責任ということになるであろう、これを私は心配するのでありますから、ここに與党として
政府に対して若干の
意見を申し上げ、そうしてそういう事態にならぬように
国民を救済してもらいたいということを申し上げておきます。
なお今大臣のおつしやつたそれと、私の求めた資料によ
つて若干
意見を申し上げたいのでありますが、これは漁業
関係であります。これはあぐり漁業——あぐりというのはいわしをとる綱でありますが、たいへん不況にな
つております。しかしそれをこの資料と若干損の行く表と、二つにらみ合せて申し上げますが、ある船は千三百四十五万五千円を
とつた。数量は十一万五千貫
とつた。こうした場合に資材に五百七万二千五百円要した。それから漁船費が六十四万円を要した。人件費は六百八十万四千円を要した。このように人件費は大きいのですよ。金利及び公課その他は百万円であつた。合計千三百五十一万六千円という経費を要しておるのであ
つて、ここに欠損は六万一千五百円となつた。ここに結果として現われたものは、
現行法においては
船舶税はわずか一万一千四百円であります。そうして損ですから
所得税はかからない。このほか多少雑税はあるかもしれませんけれども、大ざつぱに申し上げますと、
改正案によります
附加価値税は二十三万二千二百七十五円を要する。
船舶税が十三万九千六百五十円を要する。ここに損失なお三十七万一千九百二十五円となるのであります。ここに三十六万五百二十五円の増額とな
つて、
現行法と比較してその比率は三十二倍となるのであります。そこでなお利益のあつた場合はどうか。こまかしいことは申し上げませんで、利益の
数字だけを申し上げます。なかなかこういうことはありませんが、二百二十一万六千円
とつた船があつたと仮定いたします。それで多少利潤があれば減
つて来るが、ようようここに一・一倍の増になるのであります。こういうぐあいに——ここでまぐろのことをちよつと申し上げますと、平均一航海一万貫、年額千八百六十三万円
とつた船、この場合に損は百三十七万九千三百六円になります。
現行法の
改正との
負担の比率は三十倍で、非常に増額になるのであります。一万一千五百貫、年額二千百四十二万五千円
とつた際に二十八万九千円の利益になります。それで多少利益になりますので、ここに三・七倍の増額になるのであります。
なおたくさんの資料はありますけれども時間もありませんのでやめます。漁業の面において幸いに変動
所得としてその損失の繰延べ、繰もどしを認められたのであ
つて、私どもはまことに感謝にたえないのであります。しかしこうした恩恵を受けておりながら、一方シャウプ勧告案においてはもよく知らぬと言
つておるから、確かに知らぬことであ
つて、御
意見はなかつたでしよう。ただ
政府だけが知つたふりをしてこれをやつたのだというふうに私は解釈しております。もしそうであつたならば、
政府はろくな
調査もせずして、こうした恐るべき
課税を
国民になすりつけて、そうして
産業を壊滅状態に陥れるという
段階に達するおそれが多分にあると思います。もしこれが私の予想する通り参りましたならば、特に中
企業に対しては再び救うことのできない
段階に陷れるのじやなかろうか。せつかくアメリカは日本の生産に対して貴重な資材を援助物資として與えて、そして日本は世界一のいわゆる水産国として現在伸びつつあるのであります。しかるにこの税の操作によ
つて、
産業を壊滅状態に陥れるということになりましたならば、これははつきりと
政府の
責任ということになることは当然であろうと思いますので、この問題の
取扱いについては、なお時間があればあとで申し上げたいのでありますけれども、結論的に私どもは修正案をあとで
委員長の手元まで提出し、この漁業に対しては絶対修正していただきたいと存じておるのであります。あとで漁民大衆が騒いでからどうこう言
つても、追いつくこともできません。漁業者特に零細漁民というものはまことに無知と申しましようか、宣伝下手と申しましようか、たとえばある
地方で漁具、
船舶、疊、ふすま、そういうものまでも全部税金のために差押えされたのだけれども、これを訴えるいかなる
方法もとれなかつた。けれどもこれは
国税徴收法の第十六條と第十七條にはつきり明示しておりまして、いわゆる生活に絶対必要な資材に対しては差押えはできないのだということにな
つておるのでありますが、しかしそうしたようなことに対して、抗議を申し出べき何らの知識もないのであります。ただ黙々として働いており、そして終戦後いち早く立ち上
つて、争議一つ起さず、あの船板一枚下は地獄という危險な作業にさらされて、日本の
産業のために非常に努力して来た漁民に対して、それにつけ込んで、知らずにいるし騒がないからまあまあというようなことで、こういうような重税を賦課したということにたりますれば、私どもは
国民代表として、特に漁業者代表として、漁業者の窮状を全然顧みないという立場に置かれて、私どもはまみえる顔がないのであります。そうしたような意味から、まことに與党として申しにくいのでありますけれども、
国民の真摯な声、もうすでに破滅の状態にな
つている姿を見るに見かねて、
政府に対して前申上げたようなことを私ども申し述べまして、これに対する適当な修正の
方法をお考えにな
つていただきたい。こういうことを要望して、あとで修正案に対しては書面をも
つて申し上げるということにいたします。これで私の質問を終ります。