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内山公述人 私は本日は
日本租税研究協会の
研究部長としての立場から、若干の
発言をさせていただきたいと思うのであります。日本租税協会と申しますのは、
研究団体でありまして、経済界、学界、言論界、弁護士、計理士等の法曹界、各方面の税に関するエキスパートが集
つている
研究会でございますが、協会としての一致した結論的な
意見を出すことは、原則としてやらない建前にな
つておりますので、
日本租税研究協会の
意見がこうであるということは、私としては申し上げられないのでございます。ただこの協会の関係者の
意見が、どういうふうな方向に向いているかということについては、絶えず注意をいたしておりますので、その間におのずから大体各方面の
意見の動向に一致をしている点がございますので、そういう点のおもなる問題点を御紹介申し上げまして、あとで若干私自身の私見を述べさせていただくことにしたいと思います。
本日
地方税に関する問題でございますが、少し
調査の時期が古いのでございますけれ
ども、二月の下旬ごろに、協会の役員及び
地方税委員会等の
委員の方々に
質問を発しまして、おもなる問題についての
考え方をまとめたものがございます。大体その書類は、国会関係等にもお送り申し上げておりますので、お目通しいただいている方がおありと存じますが、要点だけを簡単に御説明申し上げてみたいと思います。
まず第一に、今度の
シヤウプ案に現われております
地方税の体系の基本的な問題でございますが、これにつきまして
一つの問題は、今度の
税制の体系は、従来日本の
地方税は
事業税その他收益税を基礎とした課税が中心をなしておつたと大体言えるのでございますが、今度の改正案におきましては、それがなくなりまして、
固定資産税、
附加価値税というふうな、收益を基準としない税が、中心にな
つているわけでございます。この点をどういうふうに
考えるか。日本の実情から見て、そういう
考え方がそれでいいかどうかという問題でございます。この点についての回答がありましたが、大体の状況を申し上げますと、財界方面からの回答としては、十九名返事がございましたが、そのうち、このような体系でよろしいという答えは二名だけで、あとの十七名は、日本の実情から見て、この
考え方は妥当でないという返事でございました。しかし学界、言論界におきまして七名の回答がありまして、この方では原案でよろしいというのが三名、これでは妥当でないというのが四名、あまり大きな差はございませんが、やはりこの
考え方に若干修正を要するという
意見の方が少し多いのでございます。その他法曹界等の方面では、賛成が四名、修正を要するという
意見が六名でありまして、大体全体といたしまして、この根本の
考え方について、日本の実情から見ては、ある
程度修正をしなくてはむりだという
意見が、圧倒的であるということは言えるわけであります。その理由につきましては、あらためて申し上げるまでもないと思いますから、省略いたします。
なおこの
調査には現われておりませんが、その後いろいろな会合等において現われております
意見といたしまして、今度の府県税の中に、農業に対する税が
一つも入
つておらない。この点が府県の行政を農業からわけてしまうという点が、相当問題になることは、しばしば協会の中でも、やはり
一つの重要な問題として
考えられていることを、申し上げておきたいと思います。
次に今度の
地方税が大体全体としてみまして、財政上の必要に比べて、
税收の
見積りといいますか、課税
方法、あるいは課税標準、あるいは
税率等の関係から見まして、特に
固定資産税においてそうでありますが、相当に余裕のある見方をしている。たとえば
固定資産税で申し上げますと、地租、家屋税だけで、大体予定の
税收が上るはずであ
つて、減価
償却資産だけが余分になるというように一応見えるわけでありますが、この点について租税協会の関係している專門家たちは、どういうふうに
考えておるかということを調べてみたのであります。その結論によりますと、やはりこれでは
見積りが多過ぎる。このままでこの
通りに
徴税をやれば、收入の方がオーバーするという見方が圧倒的に多いのであります。すなわち財界方面では、十九名の回答中、收入が多くなり過ぎるだろうという見方が十八名、まあこの
程度が妥当であろうというのが一名あります。学界、言論界では、收入が多くなり過ぎるというのが六名、大体妥当という回答が二名、その他法曹方面十名のうち、收入が多くなり過ぎるというのが九名、大体妥当であるというのが一名、こういう状況でございます。この問題は、結局そういう状況であるから、この
シヤウプ案で大体予定せられているような歳入計画の上から見ても、ある
程度減税の余地があるという結論を出したものと見ていいと思うのでありますすなわち
納税者の状況からでなしに、財政の方面から見て、減税の余地があるというふうに判断をしている。こういうことでございます。そこでそれではその
意味において減税をします場合に、どういう方向で、どういう方面に現われるのかということでございますが、これにつきまして、おもなる税目といたしまして、
固定資産税と、
附加価値税と、住民税の特に所得割の
部分等について、原案の
税率が大体やむを得ないと
考えるか、高過ぎると
考えるかということについての回答を整理してみました。それによりますと、
固定資産税については高過ぎるという回答が、財界の方面では、十九名のうち、十八名が高過ぎるという回答を送
つてよこしました。それから学界、言論界では、三名だけはやむを得ないという回答で、五名が高過ぎるという回答で、その他の方面では八名が高過ぎるということで、二名だけはやむを得ないということであります。それから
附加価値税については、第一種
事業四%でさしつかえないかどうかという
質問を出したわけでありますが、財界方面では、これは回答者が一名少いのでありますが、十七名が高過ぎるという回答で、その
程度でよかろうというのが一名、学界、言論界では、七名の回答者の全部が高過ぎるという回答であります。それからその他の法曹界関係では、高過ぎるというのが八名で、大体それでいいというのが二名、次に住民税の中の所得割の課率、これは
質問を出しました当時あまり明確でなかつたので、二〇%でいいかという
質問を出しましたので、現在の原案は一八%でありますから、幾分か
数字を動かしてみる必要があるかもしれませんが、二〇%ではどうかという
質問に対しましては、財界方面からは、十八名が高過ぎる、一名はその
程度でよかろう。学者の方面では、五名は高過ぎるという返事、二名がやむを得ないという返事、それからその他では八名が高過ぎる、あとの二名だけはその
程度でやむを得ない。大体こういう状況でございまして、全体の中の財界方面で申しますと、六、七パーセント、それから多いところでも八分の三はやむを得ないということですが、学界、言論界のうちの五名、大
部分の人はやはり
税率が高過ぎる。すなわち
税率をもう少し低めるように修正した方がいいという結論に
なつたわけであります。
それから税の
負担が重すぎるかどうかという問題は、申し上げるまでもなく課税標準のとり方と非常に関係がございますので、
税率はすえ置きであ
つても、課税標準のとり方が低くなれば、それで埋合せがつくわけでございますが、課税標準の問題は、今度の
地方税が新しい
制度でありますために、実際の正確な見当をつけることは非常にむづかしゆうございまして、ただいま申しましたような
調査を私
どもとしてとることは実はできなかつたのであります。しかし
部分的にはいろいろな
意見が出ておりまして、それにつきましてはあとで私の
考えとして申し上げますときに、少し織り込んで申し上げさしていただきたいと思
つております。
次に、今度の
税制の中で特に問題の多いのは、
附加価値税でございますが、この
附加価値税につきまして、もう少し内訳の、ただいま申し上げましたような
調査の結論を、御紹介申し上げてみたいと思います。第一に
附加価値税の
計算方式でありますが、原案ではいわゆる差引
計算の方式をとることにな
つておりますが、その
方法と、それから減価償却を普通の
方法で行い、たなおろし
資産の増減をやはり
計算にいれて、そうして寄せ算方式をとる場合と、どちらに賛成をするかということの
調査をしたのであります。それによりますと、財界方面からは十七名回答がございましたが、そのうち十六名は寄せ算方式に改めた方がいいという
意見であります。一名だけが原案でよろしいという回答でございました。それから学者の中では、六名のうち四名がやはり寄せ算方式に変更した方がよろしいという
意見でございました。弁護士、会計士方面では、十名のうち六名は寄せ算方式に改めた方がよろしい。四名だけが原案でよろしい。この点につきましても原案のままでよろしいという
意見も若干ございますけれ
ども、やはり大勢は減価償却、たなおろし
資産の増減等に対する
考え方を、普通の会計方式に
従つて、寄せ算方式によ
つて、
附加価値を
計算した方が妥当である。学者、法曹界等も各界を通じまして、大体結論はそういう方向にあるということがはつきりわかるわけでございます。なおその同じ寄せ算方式をとります場合でも、ここに
一つ非常に問題になりますのは、借入金の利子が二重課税になりはしないかどうかという問題があるのでございます。この点につきましてやはり私の勤めております経済団体連合会その他財界方面からは、
附加価値税の課税標準としては、支払い給与と
利潤、この二つだけを課税標準にすることにして、利子と賃貸料とは課税標準に入れない方がよろしいという
意見が相当多いのでございます。その
考え方に従いますと、結局借入金の利子は課税標準に加えないという
考え方になるわけでございます。もつともこの
考え方は、借入金の利子なり、あるいは賃借料なりというものが、全然課税されないということではないのでございまして、それは結局支払つた方に課税をしないで、受取つた方に課税をするという
考え方になるわけでございます。すなわち支払つた方で課税しないかわりに、受取つた方ではそれを
利潤の中に含めて課税をする、こういう
考え方になるわけでございます。そうすることによ
つて二重課税にならないようにするという
考え方が成立つわけであります。この点につきましては
シヤウプさんがあとから補足的な説明を送
つて参りまして、それは二重にはならないのだから、課けた方がいいのだという
意見を送
つて来ておるわけでありますが、これを日本側から見て、いろいろ
研究しておる方方の
意見がどうであるかということを聞いてみたわけでありますが、その返事を整理してみますと、財界の方面の返事は、十九名のうち十七名までは、それは実際上やはり二重課税になるから、それを遅けるようにした方がいいという回答でございます。それから会計士あるいは弁護士方面も、十名の回答者のうち七名までは、二重になるから支払い利子の方には課税しない方がいいという回答でありました。ただ学界、言論界の回答七名のうち、これは反対に五名が課税してさしつかえないという回答でございました。そういうわけでこの点につきましては、学者の間ではむしろ
シヤウプの案でよろしいという見方が、少くとも二月下旬ごろとしてはそうであつた、しかしその他の実際方面の方々は、それはやはり支払い利子には課税しない方がいいという
意見でございました。こういうぐあいに
附加価値税につきましては、その課税標準の
計算方式等についても、相当問題があるのだということを、基本的な問題として申し上げたい
意味で、御紹介申し上げた次第であります。
附加価値税につきましては、その他いろいろな問題がございますが、特に課税標準の
計算方式その他の点で問題が多うございますので、そういう点を十分に究明することと、それから
負担の関係から見ましても、
業種別に軽くなるところと重くなるところの差が非常に強うございまして、私
どものやや断片的ではございますが調べておりますところでは、
附加価値税がすべての
業種に重くなるということは決してございません。明らかに従来の
事業税よりも
附加価値税にかえた方が軽くなるところも、実際の
調査の中から現われて来ておりますが、しかし重くなる方は相当きつい加重になりまして、とても
負担に耐え切れないだろうと思われるほど重くなるところが相当ございますので、その
意味から言
つても、
附加価値税についてはどうしても根本的な再検討が必要である。これはただいま申し上げましたように、課税標準等の
計算方式にまで立入つた
研究が必要にな
つて参りますので、これを十分に究明して、どういう
方法が一番いいかという結論を出すのには、相当時間がかかる。それからまた一方から見ますと、これは
附加価値税だけではありませんが、
地方税の実施については、今までまつたくそういう方式をと
つていなかつた新しい方式を採用するのでありますから、各地方自治体等においても、十分の準備を整えてかかる必要がある。そういつた
意味からいたしまして、あるいはこの税はしぼらく実施を延ばして、その間は暫定的に従来の
事業税にも欠陥がございますけれ
ども、その直すべき点を若干直して、続ける方がいいではないかという
考え方が、
日本租税研究協会といたしましても、特に昨年の十二月ごろ一時相当に強く
なつたのでございます。その後司令部側の見解がかわ
つて参りまして、またシャウプさんからの手紙が参つた等の関係もございまして少し空気がかわ
つて来ておるのでありますが、二月の下旬ごろにおいて、その点について協会の関係者はどういうふうに
考えておるかということを一応
調査いたしてみました。この
調査は大体三段にわけまして、原案の
考え方で実施すべしというのと、原案はむろんかえる必要がある、
附加価値税の本質をかえない
程度の修正は実施すべしという方に入るわけでありますが、むしろ
附加価値税をこの際もつと違つた
税制にかえて、実施してしまう方がいいという
意見と、それからこの際そういう違つた
税制制度に変更するというようなことは、相当長い間かけて
研究する必要があるのだから、延期しておいて、延期しておる間に根本的な
研究をした方がいいではないかという延期論と、つまり
附加価値税の実施論と、それから修正というよりも変更論、それから延期論、こういう三つにわけて回答をと
つてみたのでありますが、その結果によりますと、財界方面では十九名の回答者のうち、実施してよろしいというのは三名でございます。それからこの際もつと違う
税制にかえた方がいいというのが八名、それから延期した方がいいというのが八名でございます。それから学者、評論家等の方面では、少し状況がかわ
つて参りまして、実施すべしというのが四名、それから違う形にかえて実施すべしというのが一名、延期すべしというのが二名でございます。法曹界方面では、実施すべしというのが二名、それから変更して実施すべしというのが二名、延期論が六名で、法曹界方面でに延期論が非常に
比率が高い。要するに学者方面では
附加価値税は
附加価値税として実施すべし、むろんその中には
附加価値税としての修正論を含んでおりますが、実施すべしという見解が一番強いのでありますが、実際家としての経済界方面の方々、あるいは経理士、弁護士等の方面の方々には、延期すべしという論も相当強い。また他の税にかえた方がいいという論も強い。こういうようなわけでございまして、
附加価値税についてはずいぶん根本的な点で問題があるということが、はつきりいたすわけでございます。
大体基本的な
考え方を御紹介申し上げますと、以上のようなわけでございまするが、これはいずれも非常に根本的の問題になりますので、今日といたしましては、そういう根本問題もむろん
考える必要がありますが、それはそれとして、さしあた
つて二十五年度をどうするかという当面の問題を、どうしても
考えなくてはならない必然的な関係にあると思うのであります。そこでそれにつきまして、以下私自身の私見が入ることになるわけでございますが、ただいまのところ
考えております結論的なことを、数点申し上げてみたいと存じます。
まず根本的な問題に対する
理論というものは、今となりましてはそれを強く主張すること、時間的にむりであるということを私
どもも実は認めざるを得ないのであります。従いましてそういう根本論はあらためて、二十五年度の途中からでもむろんさしつかえないのでありまして、できるだけ早い方がいいのでありますが、あるいは二十六年度以後において根本論をもう一度よく検討する。これには必要な資料を整える必要もあると思うのでありますから、相当の時間をかける必要がございますので、そういうふうに将来の問題としてや
つて行く必要があるのではないか。そういたしますと結局現在といたしましては、二十五年度の実施をまずどうするか。ここにあまりに大きな混乱と不都合とが起らないように、またできるだけ
徴税面の円滑に参りますように、若干の変更を加えるという
考え方をとることがきわめて必要である。そういう立場におきまして、この修正の問題を
考えてみますときに、私はことに
固定資産税と
附加価値税につきまして、特にこの点を御考慮願いたいという点を数点申し上げてみたいと思うのでありますが、まず
固定資産税につきまして、やはり一番問題になりますのは、
負担が過重になるところが相当できて、この方は
附加価値税とは違いまして、軽くなるところは
一つもないのでありまして、全部が非常に重くなるのでありますから、結局重くなる
負担に耐え得るか耐え得ないかということが、結論的の問題になるわけであります。ところがだんだん調べてみますると、とてもこのままで行
つては重くて耐えられないだろうというところが相当に出て参りまするので、そういう点を何とか直さなければならぬということが、問題の中心になると思うのであります。そこでまず土地と家屋でございますが、これは具体的には従来の地租、家屋税を一定の倍率で、今度は賃貸価値を九百倍という率で参りますると、約三倍強になると思いますが、そういうふうにふやすということになるわけでございますので、その三倍強にふやしたことから起る結果についても、若干の考慮を払うということと、それからきわめて特殊な場合には、若干の匡正策を
考える。これよりほかに行きようがないものと思うのでありますが、それと同時に、でき得れば
税率を一・七五%というものをもう少し
引下げることの方が、結局において実際の税収の点において、かえ
つていいのではなかろうか。
徴税事務を円滑に行い、結果において比較的公平であ
つて、比較的
税收を確保する
方法としては、
税率をもう少し下げた方がよくはないか、こう思うのであります。ただ一率に
税率を下げただけでは救われないところが、どうしても出て参ります。というのは、従来全然考慮されておらなかつたいわゆる減価
償却資産に、今度課税されるようになるということであります。この方は従来全然税を
負担しておらなかつたところへ、
固定資産を相当多額に所有しておる
事業になりますと、非常に重い税にな
つて参りますので、これは
業種別に
考えまして、非常に重くなる
業種について何らか特別の
考え方をとる。これよりほかに行きようがないと思うのであります。その場合に具体的な
方法といたしましては、でき得る限り
資産の種類に応じた特別の税目を設ける。軌道税のようなものでありますとか、あるいは船舶税でありますとか、そういうもので救い得るだけ救うことが、まずも
つて必要であると思います。
それから
税率につきましては、土地、家屋につきましては、従来から税を
負担しておつたのでありますが、減価
償却資産の方は、従来全然
負担しておらなかつたところへ、新たに税を課けるのでありますから、ある
程度、土地、家屋に対する
税率と、減価
償却資産に対する
税率とは、かえてもさしつかえないのではないかと思うのであります。できるならば、その
税率を低くするということが、好ましいと思うのであります。しかしこれも相当根本の点に触れて来て、非常に困難であるということでありますれば、最後の
考え方といたしましては、結局課税標準をできるだけむりに行わないようにするということになるわけでございまして、減価
償却資産については、法案の上では帳簿価額または実際の再
評価価額を下まわることができない、それ以上でさえあればいいというふうな表現にな
つておりますけれ
ども、地方自治庁の
考え方を聞いてみますと、それは大体において再
評価の最高基準をとることにしたい。ただそのうち
陳腐化等の減価のはつきりしておるものだけは、これは差引く。しかし実際の毎
評価をそれより低くしてお
つても、その方はとらないで、高い方をとるのだというふうに説明をしておるのであります。これは根本の
考え方といたしまして、課税標準を高くし、あるいは
税率を上げる方がいいという
考え方であれば、その方がいいと思うのでありますが、根本において今度の税は、
負担関係から見て、相当むりがあるのだ、
従つてあまり税は多くしない方が、かえ
つて結果において円滑に行
つて、公平な税になるのだという
考え方をとりますならば、低い方による方がいい。そういう
意味において第一に実際の再
評価価額、つまり帳簿価額と大体近いものになると思うのでありますが、それをとる方がいいと
考えるのであります。
なおこの実際の再
評価価額をとつた方がいいと思われる
一つの理由といたしまして、今度のこの減価
償却資産に対する課税というものは、法人税あるいは所得税における減価償却によ
つて、それを損費と認められる、その減価償却と関連を持たせた
考え方に大体な
つておると思うのであります。法案の中にもそういう字句が使われておるわけでありますが、減価償却が認められるその反面として、これに対する固定費席税を課する。こういうのでありますからして、
評価の点においても、その減価償却の恩惠を受ける基礎になるところの
評価を、
固定資産税の課税標準に使うということは、少くとも
一つの大きな事由になり得ると思うのであります。むろんその点につきましては、根本的には違つた
考え方が相当あると思うのでありますけれ
ども、さしあたり二十五年度の問題といたしましては、そういう
考え方をとることがむしろ妥当ではないか、こういうふうに私は
考えるのであります。もちろん帳簿価額あるいわ再
評価価額というものは、実際を見ますと非常に不公平、あるいはほとんどでたらめと言いたい結果が出て来るということは、私もある
程度実際の
数字から見て、そう
考えております。非常に差が起るのであります。同じ種類の
資産で、片方は十倍の
評価になり、片方は十分の一の
評価にしかならぬというような場合が、これは
耐用年数のとり方とか、従来の
税制が悪かつたために、そういう差の起
つて来る面が相当ございます。しかしこれは、再
評価の基準を出すときにもそうでございますが、従来の
税制から起
つて来た結果についてはやむを得ない。それはその
通りやるという
考え方にな
つているのでございますから、今度の
固定資産税につきましても、従来の
税制の不備から起
つて来る不公平というものは、一応目をつぶ
つてかかるよりほかにないのじやないか。それは二十六年度以後の問題として、
耐用年数の再検討とか、減価償却の
方法の再検討等によ
つて、漸次直して行くという
考え方をとるべきではないか、こういうように
考えております。
なおこの減価
償却資産につきまして、最近
日本租税研究協会の方の会員の中から承
つております問題を、一言つけ加えさせていただきたいと存じます。それは民間の
研究機関が持
つております実験その他の設備に対する課税問題でございます。それらの
研究機関がある
程度営利
事業として
営業的にそれを使
つている場合には、これは課税されてもいたしかたがないけれ
ども、
研究用の施設、
機械等であります場合には、ぜひこれは税が課からないようにしてもらいたいという申し出を受けているのであります。国会に提出いたされました法案を拝見いたしますと、大体においてそういうふうに解釈し得ると思うのでありますが、しかし字句がなお少し不明確なところがあるようでございます。
事業の用に供し得る
資産というような言葉が使
つてございまして、また減価償却を行わない場合でも、同じような
資産を課けるというような点がございますので、もし地方庁で違つた解釈が行われるというようなことがあ
つては、無用な摩擦を引起す危険もございますので、この点をどうかもう一層明確にしておいていただきたいということを、これは私からもお願い申し上げておく次第でございます。
それから次に
附加価値税につきましては、これは単に全体としての税が重くなるという問題ではなくして、むしろ軽くなるところと重くなるところと相当のでこぼこができて、重くなるところは、一方ではとても耐え切れないほど重くなるものがあるという点に、一番大きな問題がございますので、これにつきましては、根本から申しますと、結局課税
方法そのものにさかのぼ
つて全部を
研究いたしませんと、今提出せられておりますような原案をそのまま認めた上で、不都合の起らないようにする
方法を
考えるということは、実は非常にむずかしいというように私は
考えているのであります。しかしながらただこれについて
一つ申し上げてみたいと思いますことは、けさも
安藤さんからお話がございましたが、普通の
附加価値の
計算方式によらずに、総売上高、あるいは総收入に対するある
比率をかけることによ
つて、それを課税標準とするという
考え方でございます。この
考え方を、特に税が重くなり過ぎて困るという
業種に対して、できるだけそういう方式をとる範囲を広げていただくことが、きわめて有力な、また効果的な救済
方法になるだろうと思うのであります。実はこの
税制改革のときの
負担の変化があまりに急激に来るということは、いずれにしても非常におもしろくなく、避けねばならないことでありますので、過渡的に経過措置として、ある
程度以上に変化がきつく
なつた場合には、減免の措置を講じ得るようにすることがよくはないかという
考えがあるのてありますが、基本的には私もそういう
考え方をするのが必要だと思うのであります。その
考え方を、
附加価値税の実際問題といたしましては、今のような便法をとることによりまして、普通の
方法で
計算をした
附加価値率をそのままとらないでそのままと
つては少し重くなり過ぎる場合に、それをある
程度手かげんする
一つの便法として、これを使うようにすることが必要ではないか。こういうように実は感ずるのであります。もしそれが、相当にできれば、非常に困る点は解決して行けるのではないか、こう思うのであります。
ただ最後にもう
一つお願い申し上げておきたいと思いますことは、ただいま申し上げましたような
附加価値に対する修正にしましても、あるいは
固定資産税に対する修正にいたしましても、
業種別に検討して行くということになりますると、時間的に少し間に合わなくなるものが出て来る危際があるということでございます。もはや二十五年度に入
つておる昨今のことでございますから、修正はするといたしましても、早く成立しなくては非常に困る点があると
考えますので、
法律としては早くこれを成立させる必要があると思うのでございます。その場合にただいま申し上げましたようないろいろな非常に不合理な点を直す措置が、時間的に間に合わないというおそれがあるのでございますから、それらにつきましては、あとからある
程度そうした違つた措置ができるような何らかの便法を講じていただくことができれば、実施の上において非常に都合よくなるのではないかと思うのであります。これは何らかの
方法によ
つてはできるはずだというふうに私
ども考えまするので、最後につけ加えて申し上げます。以上で私の
公述を終ります。