○池田(峯)
委員 私は共産党を代表してこの本案に反対するものであります。
第一にこの
法案は
地方財政をますます不安定にし、
地方行政の一般的水準をますます引下げるような結果になるであろうということであります。なぜならば
国会の
審議権をみずから放棄して、自由党の議員総会で
決定したにひとしい
地方税法は、財源を
地方に與えると言
つておりますけれ
ども、実はとれない財源を
地方に與え、それをとれるものとして
平衡交付金額を
決定するものだからであります。たとえば附加価値税というものは赤字の企業にも課税する。裸のものから税金をとれ、労働者の賃金とか家賃とか、地代とか、銀行の利息として支拂
つたもの、そういうものに課税する。課税できないものに課税する。無を與えて、有を生ぜしめる、むりにとろうとすれば罰金とあるいは懲役、あるいは国税犯則取法というようなもので脅迫してとる以外はない、そういう税法であります。そういう税金をとれるものとしてこれだけとれ、こういうことで
平衡交付金を
決定する。この
平衡交付金の
総額というものも一千五十億ときま
つておりますが、ここに麗々しくうたわれおる必要にして十分な額ということを証明するものは何もないのであります。この一千五十億という額から逆算いたしまして、
地方の
基準財政需要額あるいは
基準財政收入額というものをつくり上げるのであります。作文的につくり上げる、これはあたかも
所得税額というものを初めに
決定しておいて、国民所得をそれから逆算して
決定するやり方とま
つたく同じだ。また
基準財政需要額というものも、かような
関係から実際より少く計算されることは必然であります。警察費にいたしましても、あるいは消防費にいたしましても、あるいは土木費にしても、
教育費にしても、あるいは生活保護費とか、失業対策費等とか、年々増加の一途をたど
つておるのである。さらに
地方団体の借金も莫大に上
つておる。これは災害
関係の復旧費として
市町村が立てかえているものだけでも、すでに八十億に上
つておると言われておる。あるいはまた災害復旧費で国庫補助が未拂いにな
つておる額が全国で一千百億円に上
つておる。災害の
総額としてまだ残
つておるものが一千六百億に上
つておる。本
年度の公共事業費九百九十億の中からこういう穴埋めに四百七十億埋めて、だんだん帳消しするというようなことを
政府は言
つておりますけれ
ども、大体日本ではこの公共事業費の額が少いために、一千億くらいの災害が毎年起
つておるのであります。今年もまた一千億くらい出て来るであろう。こういうことになりますと、
地方の
財政需要というものはますます増大せざるを得ない、これに対して
政府は実際何一つや
つていないのであります。一例をあげますと、栃木県の今市
地方の震災のときなどに、
政府は一体災害復旧として何をや
つたか、何もや
つていないでしよう。県
当局は震災で被害をこうむ
つておる人たちにDDTをまいてや
つた、こういうことしかや
つていない。岩手とか群馬など年々災害の起る
地方にも、
政府の対策はあまりにもひどいものであるのであります。こういうふうに
地方団体がその住民のために使わなければならない額というものは非常に多い。そのほかに今度は
政府は政策の結果、警察費であるとか、あるいは徴税費であるとか、こういう住民を收奪し、彈圧する
費用がますます莫大に計上せられざるを得ない。だから実際の
需要額よりもむしろ
基準需要額というものが少くなるということは明らかであります。それから
基準財政收入額、これはどうなるかというと、
先ほど附加価値税の例で申し上げました
通り、とれない税金をとれるものとして見積るから、実際より多く見積られる、こういう実積より少く見積られたものから、実際より多く
見積つたものを差引いたものが
平衡交付金でありますから、
平衡交付金というものは実際上とるものとは、はるかに隔
つたものだということは言うまでもないことであります。だから
平衡交付金の少いものをもら
つてもなかなかや
つて行けない、こういうことは
地方の県知事な
ども言
つておりまして、事実青森県などにおいては、業者の猛烈な反対を押し切
つて、りんご税を課税しようということを盛んに運動しておるのであります。そこで
平衡交付金が少ければどういうことになるかというと、徴税の強行となり、住民を苦しめる。そして一方警察費であるとか、あるいは徴税費であるとか、それから
地方ボスのふところを暖める仕事、競輪場をつく
つたり、あるいは国際観光ホテルをつく
つたり、観光道路をつく
つたりする。こういう
費用はまず必要にして十分なる額を先取りいたしますから、結局これだけは間違いない。
あとは何も残らない。大事な
教育費などはこれはま
つたく顧みられないという結果になるであろうことは明らかであります。
従つて全国の教育者たちがこの
平衡交付金は
教育費を圧迫するという意味で、猛烈な反対をしていることは、私はその気持を察することができるのであります。大体教育の権利ということは憲法に保障されているのであります。すべて国民は、
法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
義務教育は無償とするというふうに、憲法によ
つて教育の権利を認められておるにかかわらず、
平衡交付金によ
つてま
つたくこの権利は蹂躙され、教育はますます植民地的の奴隷教育となるであろうことは明らかであります。現在すでに日本の教育というものは、数学の教科書をちよつと見ればわかります
通り、一年生の教科書は十から以下の足したり引いたりしか教えておらない。二年生の教科書は二十から以下を足したり引いたりしか教えておらないというような、ばかな教育をや
つております。教育者の生活もま
つたく蹂躙されておるのでありますが、さらにまたこういう結果によ
つて、教育は植民地的な
状態に陷るであろうことは明らかであります。さらに特別
交付金の使い方で、
本多国務大臣は、私の
質問に、国際観光
都市であるとか、あるいは
地方総合
計画とか、そういうものに使用しない、こういうふうに言明しておりますけれ
ども、この
法案の中に、使わないということはどこにも書いてない、またこれが今後一割になるか二割になるか、そういうこともこの
法案には書いておらない。特別の
財政需要があれば、交付するということにな
つておるが、その認定の権限は遺憾ながら
本多国務大臣にはないのでありまして、
地方財政委員会がそういう
決定をすることができる、そうして
政府の政策というものは、国際観光
都市建設とか、外国の人たちに気持よく遊んでもら
つて、日本人はどこかへ立ちのかなければならないというような、そういう日本人のためでない国土
計画、あるいは沈まざる航空母艦の建設ということを、
最高政策としておるような
状態でありますから、ここに特別
交付金というものが使われないと、どうして言えるでありましようか。さらにこの
交付金をめぐ
つて奪い合いが始まりまして、これはもうすでに自由党の諸君などが
地方に行
つて、共産党などとお前たちが一緒にやれば、
平衡交付金の増減でも
つて縛
つてやる、制限してやるということを言
つておることによ
つても明らかである
通り、
交付金の交付をめぐ
つて奪い合いが始ま
つて、これから
地方財政委員会の腐敗堕落を生ずるであろうということも明らかであります。さらにまた
地方財政委員会は、その広汎な権力をも
つて、完全に
地方の
財政から
行政一般まで掌握して、知事あるいは
市町村長を、その膝下に威服せしめるような結果になる、これは
地方自治の破壊であります。
行政上はフアシヨ体制、戰時体制の再現である。その特徴的なことを申し上げますと、第一に農地に対する固定資産税の
基準となる価格を、
財政委員会が
決定する。これはもう農業政策というものに重大な影響を及ぼすようなことを、單なる
地方財政委員会が
決定する。これはすでに農民軽視、日本の農業を破壊する政策の現われである。さらにまた
地方債の許可を與える権限であるとか、大規模な附加価値税、固定資産税を直接
財政委員会が
決定して、
地方団体に対する指導権あるいは
地方財政委員会の事務局の職員が、直接納税者に対して
質問検査権を持つということ、
地方団体が徴税に怠慢である場合に、直接
地方財政委員会の事務職員が出かけて行
つて質問検査する、これを拒否した場合には一年以下の懲役、二十万円以下の罰金に処する。こういう強力な権限を持
つておる
地方財政委員会が
平衡交付金を見積る。これを
地方所体か実行しなか
つたならば
平衡交付金を取上げたり、減額したり、こういうことをやれる権限を持
つておるのであります。これは
地方財政委員会が
地方団体を完全にその膝下に威服せしめるというような結果になることは明らかであります。こういうふうに
地方団体は
地方財政委員会の二重、三重の支配網の中で自主権を奪われ、恐るべき彈圧を受ける
機関とならざるを得ないのであります。すなわちファシズムの
地方集権の強化にならざるを得ない、これはどういうことであるか。この国の植民地化、軍事基地化をますます促進せしめ、戰争への道をまつすぐに進む、こういうような結果になるであろうことをわれわれはこの
法案の中からはつきりと断言するのでありまして、かような意味合いにおいて、われわれはこの
法案に反対するものであります。