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1950-04-04 第7回国会 衆議院 地方行政委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月四日(火曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 菅家 喜六君    理事 大泉 寛三君 理事 野村專太郎君    理事 久保田鶴松君 理事 藤田 義光君    理事 立花 敏男君 理事 大石ヨシエ君       生田 和平君    塚田十一郎君       森下  孝君    吉田吉太郎君       龍野喜一郎君    床次 徳二君       井出一太郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         地方自治政務次         官       小野  哲君         地方自治庁次長 荻田  保君         総理府事務官         (地方自治庁財         政部財政課長) 奥野 誠亮君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 四月四日  委員田中豊君辞任にき、その補欠として西村直  巳君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  地方税法案内閣提出第二一三号)  公述人選定に関する件     —————————————
  2. 菅家喜六

    菅家委員長代理 これより会議開きます。  前会に引続き、地方税法案を議題として質疑を続行いたします。その前に本案に関する公聴会公述人選定についてお諮りいたしたいと思います。すなわち一般より申入れ公述人につきましては、その申入れ期間が六日でありますので、七日の委員会において選定いたしたいと思います。その他の公述人につきましては、たびたび理事会を開いて協議いたしましたが、本日大体次の方々を決定いたしました。すなわち課税団体側としては都道府県知事代表、これは全国地方自治会にその人選を一任いたしたいと思います。市長代表全国市長会推薦いたした者にいたしたいと思います。町村長代表全国町村長会推薦いたした者に願いたいと思います。次は納税者側農業団体代表日本農民組合総本部中村君、経済団体代表企業経営協会澁谷健一君、中小企業代表商工会議所推薦者、同じく中小企業代表中小企業振興会会長松澤隼人君、化学工業代表化学正業協会推薦者公益企業代表私鉄経営協議会村上義一君、新聞業代表新聞協会推薦、同じく販売関係全国販売組合連合会江崎銀兵衛船舶業代表山下汽船森熊吉君、建築関係建築業協会会長安藤清太郎君、料理飲食業代表全国料理飲食喫茶組合連合会野本源治郎君、古物商代表全国古書籍商組合連合会河野貞三郎君、勤労者代表産別萩澤公彦君、機械工業関係近畿機械工業懇談会小田原大造君、労働組合全国金属労組天野一男君、学識経験者からは日本租税研究会推薦者徴税担当者日本財務労働組合室佐太郎君、同じく徴税担当者自治労連中央執行委員会議録員長信近高雄君、以上に決定したのでありますが、理事会の決定通りさよう決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 菅家喜六

    菅家委員長代理 御異議ないと認めましてさよう決します。  なお公述人の日割その他の手続については、委員長に御一任願いたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 菅家喜六

    菅家委員長代理 それではさよう決定いたします。  それでは地方税法質疑を続行いたしますが、ただいま主務大臣本多国務大臣は閣議中だそうでありまして、政務次官と荻田政府委員が見えておられますので、御質問を願いたいと思います。通告順によりまして塚田君。
  5. 塚田十一郎

    塚田委員 昨日に引続いて、もう少し数字的な点についてお尋ねしたいのですが、この間お尋ねしました免税点以下の附加価値税についてであります。免税点以下の所得の算出の基礎でありますが、ここの備考を拝見しますと、昭和二十三年度における所得額四万円以下、第二種事業にあつては七万円以下のものを基礎として推定をして出したのが三百八十八億、こういうように書いてあるのですが、もしそういうことであるとすると、大分状態が違うのじやないかというように考えておる。それはこの間次長答弁にもあつたのですが、平均附加価値をどのくらいに見るがということが、これが相当問題点になると思うのですけれども、かりに五〇%に見ると、九万円の免税点というのは年間の売上げ額が十八万円、この十八万円に対してどれだけの所得が見込まれるかというと、かりに二割見込んだとしても三万六千円であります。しかし三割はこの総売上げ額に対しては所得としては出ていないだろうと私は思うのです。もし一割とすれば、これは一万八千円の所得ということになる。ところが昭和二十三年の所得額四万円というのは、この三十三年と二十五年の問の所得開きを見ると、これは相当大きいと思うのです。営業なんかの場合に、国民所得比率から見ましても、二十三年の十七万程度のものは二十五年には二十七万円くらい。そうすると二十三年と二十五年の比率は六四%前後ということになる。その他の事業でも、大体その比率は八〇%くらいになつておるのですが、二十三年の四万円という数字は、かりにここに八割で還元して行きましても、二十五年には五万円になつております。五万円の所得のものまでを、大体一割とすれば、一万八千円前後しかないものを引かれたということになると、私はここの二百八十八億という数字は非常に多過ぎる。こんなには落るものではないだろうと思う。それは実質的な面に行けば九万円という免税点では、非常に少数の人しか抜けないで、大体の今はやはり課税されてしまうということであり、またここにお上げになつ数字にもそういう意味において誤算があるだろう。こういうふうに判断するのですが、その辺はどういうようにお考えになつておるか。
  6. 荻田保

    荻田政府委員 これは見方でございますが、所得の少い方の者は大体自家労力が多いために、利益率附加価値率が割合に接近しておるだろう。従つて附加価値中分くらいが利益額になるだろう。結局自家労力とほんとうの利益に相当する部分、それで九万円の半分くらいというものをとつておるわけであります。ただお説のように、二十三年と二十五年におきまする物価水準というものは、依然として残つておると思います。
  7. 塚田十一郎

    塚田委員 これらの点も、数字検討されるときに、昨日の質問と合せて再検討を、御考慮を願いたいと思います。それと同じ問題が固定資産でもちよつとあるんですが、固定資産の場合の償却費産の一兆三千億という数字は、決してそんなに控え目な数字ではないということを昨日も申し上げましたが、再評価をすると、法人だけでも大体八兆二千億程度償却資産というものがあり得るということは、主税局の数字では出ておる。これは個人の償却資産が当然入るわけですから、この数字をさらに基礎にして、五三%というような控え目な数字的基礎をお使いになる必要は毛頭ないと私どもは思う。大体五二%という数字をどこからお出しになつたのか、その辺もちよつとお伺いしておきたい。一兆三千億程度数字ならば、少くとも八〇%ないし九〇%をつかまえておられても、十分私どもは出て来ると思う。このくらいの固定資産税償却資産から出て来る、こういうふうに考えるのですが、この点をお伺いしたい。
  8. 荻田保

    荻田政府委員 委員長ちよつと速記をとめてください。
  9. 菅家喜六

    菅家委員長代理 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止
  10. 菅家喜六

    菅家委員長代理 速記を始めて。
  11. 塚田十一郎

    塚田委員 事情を伺つてみると、これ以上追究もできかねる気持でありますが、そこで固定資産税のところで、ついでにちよつとお尋ねしておきたいのは、償却資産事業の用に供することができるというように表現してあるのですが、これは実際の事業に使つておる償却資産だけをいう意味なのか、使つていなくとも使うことのできるという意味なのか、またもちろん課税されるものは事業をやつておる人たちでなければ課税されないと思うのですが、その辺の関係をひとつ承りたい。
  12. 荻田保

    荻田政府委員 もちろん現実に使つでおるものは問題ありませんが、現実に使つていないものであります。商品として持つているというもの、これはもちろん課税対象から除外されます。それから單にストツクとして持つているもの、これも除外されます。ただ問題はいわゆる未稼働という解釈によつて来ます。使えるべくしであるけれども現に使つていないもの、これはやはり対象に入る。しかしこの評価につきましては相当考慮するというくらいのつもりであります。
  13. 塚田十一郎

    塚田委員 大体数学的な基本的な面は、その程度にいたしたいと思うのでありますけれども、ただこの間から盛んに申し上げておるように、どうも頂戴している数字的な基礎資料が明確でない。もう一度再検討をお願いしやいと思う。市町村民税のところは申し上げなかつたのでありますけれども、若干疑問の膚があるのでありまし、てこれはもう一度全体的に徹底的な再検討を加えて、はつきりした数字をお示し願つて、その上でどういうぐあいに修正なりするということを考えたいと思いますが、ぜひ御協力願いたいと思います。
  14. 荻田保

    荻田政府委員 昨日御指摘附加価値税につきましては、今資料を印刷中でございますので、後刻御提出いたしたいと思います。市町村民税につきまして所得割基礎なつ所得税の額が、国の予算に計上じてある分より少し多くなつておりまするが、これは調査いたしましたら、大蔵省で調査しておりまする賦課の見込み額、つまり捕捉した分を全部あげたのでございます。それから徴收がどれだけできるのかというので、大蔵省予算におきましては相当落ちておりますけれども、元の数字の方、現実に賦課でき得る数字を使つておりますので、少し予算開きがあります。
  15. 井出一太郎

    井出委員 こまかな点、特に税の細目にわたりました点はなお資料等を頂戴したい向きもありますので、その上でいたしたいと思います。それで当面きわめて大ざつぱな問題だけをお尋ねしたいのですが、もし重複してすでにお答えになつておるという分がありましたら、それは簡單に済ませていただいてけつこうであります。地方税法がこの国会の最後の山とでも申しましようか、非常に注目を浴びてただいま審議中であるわけでございますが、これにつきまして関連のありまする平衡交付金法案あるいは地方財政委員会設置法案、こういつたものがやはり同時に提出をされて、これと関連の上で一括審議をしなければならぬ部分も相当多いと思うのであります。つきましてはこの二つ法案現状はどう相なつておるか。いつごろ提案に相なる運びか、こういつた点をあらかじめお知らせをいただきたいと思います。
  16. 小野哲

    小野(哲)政府委員 井出さんの御質問に対しましてお答えを申し上げます。御承知のように地方税法案関連いたしまして、地方財政平衡交付金法案並びに地方財政委員会設置法案政府といたしましては提案をいたすべく準備をいたし、関係方面折衝をいたしておるような次第でございます。地方財政平衡交付金法案並びに地方財政委員会設置法案につきましては、政府関係方面との折衝はすでに終局の段階に達しておるのでありまして、政府としては一日も早く何らかの意見の発表があることを期待いたしておるような次第でございます。それにつきましては、もとより政府において関係方面に対しまして、国会審議模様その他諸般の情勢につきまして、これが早急の意見開示につきまして懇請をいたしておるような次第でございます。  なお今日の段階におきましては、いつこれに対して意思表示があるかということを、ここで明らかに申し上げることは困難でございますが、近く地方財政平衡交付金法案並びに地方財政委員会設置法案につきましては、関係方面から意見開示があるものと期待いたしておるような次第でございます。
  17. 井出一太郎

    井出委員 ただいまの二つ法案につきまして、この委員会としても関係方面へ何らかの意思表示をするというふうな点について、委員長はどうお考えになられますか、お考えをお漏らしいただきたいと思います。
  18. 菅家喜六

    菅家委員長代理 先般来その問題については、各委員諸君からも御質問があり、ただいま政府委員からお答えがあつたようでありますが、政府との間の折衝はすでに済んで、その後において本法案がまだOKがないということになりますと、審議上いろいろ支障を来しますので、この問題については、理事会を開いて適当なる処置をいたじたいと思います。さよう御了承を願いまする
  19. 井出一太郎

    井出委員 年度がすでに昭和二十五年度に入りまして、おそらく地方都道府県あるいは市町村ずれ予算の確定の時期に入つておるが、この地方税が上らないということは、地方へ多大な迷惑をかけておる現状でございます。そしてせんだつてとりあえず暫定措置がとられたものの、やはり非常に大きな昏迷を地方に與えておるようでございます。それはそれといたしまして、この法案がこの国会で仕上げに相なりますときは、かりに今月中に済んだといたしましても、すでに五月一日からこれを施行するといつたような場合には、そこに一月のずれが出て来ると思うのです。そうすると暫定措置でこのずれを十分にカバーし得るものかどうか、あるいはこの一箇月の空白によつて当初の徴収金額というものに欠陷が生じやしないか、こういう点をひとつ承りたい。
  20. 小野哲

    小野(哲)政府委員 ただいま井出さんから御指摘になりましたように、地方税法案審議模様によりましては、政府が最初予定いたしておりましたように、本年度初頭からこれを実施するということは、今日困難に相なつておりますことはその通りでございます。それにつきましては、地方団体における財政計画の上に、なるべく支障の生じないように処理することが適当と存じまして、先般地方税法の一部改正法律案の御審議を賜わつた次第でございますが、なお地方財政計画の実施にあたりまして、財源等の問題から地方財政運営支障を生ずるような場合が起り得ることは、予想にかたくないのでございます。その点につきましては暫定的な措置として、何らか地方団体に対しまして財源付與措置を講じて参りたい、こういう考えを持つておる次第でございます。
  21. 井出一太郎

    井出委員 この問題につきましては、先ごろも平衡交付金一種の仮拂いのような形で、カバーし得る道もあるということでございましたが、その際も問題に相なりましたように、平衡交付金法案というものが成立をしておらない場合、つまり法的根拠なくして平衡交付金の安排いをなし得るかどうかについては、私は非常に疑問に思うのでありますが、これは確信を持つてそういう措置ができますかどうか伺いたい。
  22. 荻田保

    荻田政府委員 先般も御答弁申し上げたのでありますが、もちろん平衡交付金法が通過いたしまして、施行になりましてから出すのが正当ではございますけれども、どうしてもそれが出せません場合には、財政法等の規定に基きまして、一般補助金としての扱いをいたしますれば、必ずしも概算交付ができないものではないと考えております。
  23. 井出一太郎

    井出委員 もし一箇月地方税法成立ずれたという場合に、地方財政における数字上の欠陥がどんな形で現われて参るかという予想、あるいは資料が今日のところございますでしようか。ありましたならばお示し願いたいと思います。
  24. 荻田保

    荻田政府委員 ただいま数字的には持つておりませんが、大きな問題といたしましては、固定資産税は四回にわけることになつておりまして、これが徴収できます。それから他に附加価値税あたり徴收が少し遅れて来ることが予想されます。ほかのものにつきましては大した問題はないと思います。それから平衡交付金法につきましては、今申しましたような概算拂いをとれば、この問題についても財政的な欠陷は起らないと思います。
  25. 井出一太郎

    井出委員 今回の地方税でありますが、本多国務大臣提案説明にもありました通り、これはまさに画期的な税制でありましよう。そうして従来になかつた税樋口が出て参つておりますが、実際には政府で予定をせられておる千九百八億でございますかこの数字というものが非常に適格性を欠いておるのではないか。これはやり方によつては非常によけいにもとれるし、先ほど塚田委員の御質問にもあつたように、固定資産税のとり方にいたしましても、五百二十億というものから逆算をして行つてきめるというようなことであるならば、これは税率から今度逆にやつて行くと、その五百二十億はどうにでも動く、こういうふうにも考えられるのであります。そういう点からこれはとつてみなければわからぬというようなことにあるいはなるかもしれませんけれども、とにかくよく言えば非常に伸縮性があると言いましようか、ただ地方にこれをまかせて、その間非常に不統一な、税全体の額において、どうもこの千九百億なにがしが非常に狂つて来るおそれはないか。こういう予想を抱くのでありますが、この点はいかがでしようか。
  26. 荻田保

    荻田政府委員 各税に対します見積りの根拠等をお語いたしたのでございますが、いろいろ見方もございます。ことに捕捉率と申しますか、現実にあるものをどれだけはたしてつかまえることができるかという点につきまして、いろいろ意見の相違ありますので、われわれとしては、一応この数字でもつて大体千九百億に納まるのではないか。ある税につきましては確かに多過ぎるものもあるかと思いますが、ある税につきましては、むしろそれを徴収するのについて、その額だけ徴收するのに困難な税もあるのではないかというつもりでおりますので、目標を総額においては大体この程度徴収できるものと考えております。
  27. 井出一太郎

    井出委員 地方税の内容でございますが、都道府県の主たる財源となるものが附加価値税ということになりました場合、農業等原始産業が大体これから除外せられるという場合に、都道府県財源農業者以外の者から非常によけい部分を徴収することに相なります。しかしながら大体地方府県というものは、農林、漁業といつたような原始産業部分が、地方経済の非常に大きなウエイトを占めておるのが現状であります。その場合に、府県に対する農民漁民発言権と言いましようか、つまり比較的わずかしか担税をしておらないで、もし発言権が税の負担ぐあいにおいて生ずるものであるとするならば、府県財政というものは地方の小都市その他の商工業者というものの負担において府県財政がまかなわれる。こういう結果に相なると思うのであります、そういう点、農業者もあるいは林業者漁業者等も、府県財政に対する負担を応分にするような形において、府県財政が築かれるという方が、府県のあり方としては私は妥当ではないかと思うのでありますが、今回の税制からいたしますと、附加価値税中心があります以上、さようなわけに参らない。そういう点は将来地方自治団体の、特に府県運営にあたつて、少しかたわの形ができやしないか、こういう感じがいたすのでありますが、これはどのようにお考えでありましようか。
  28. 小野哲

    小野(哲)政府委員 ただいま仰せになりましたように、今回の地方税法案にございます都道府県並びに市町村税目配分につきまして、今御指摘になりましたような御心配が想像されるのであります。今回の税目配分の方針といたしましては、偏在的な税源につきましてはこれを都道府県に、普遍的なものにつきましては市町村へと、こういうような基本的な原則からできておるのでございますが、これが運用につきましては、当該地方公共団体地方議会等におきまして、十分これに対する検討が加えられることと存ずるのでありますけれども、もしこれらの税制運営にあたりまして、都道府県その他におきまして、あるいは歳入上の問題について、なお検討を要する事態が起りました場合には、地方財政平衡交付金による財政調整措置を考慮いたさなければならないかと存じておるのでございます。ただいま仰せになりましたように、都道府県税源附加価値税中心として、漁民あるいは農民発言をする機会がこれによつて非常に少くなるのじやないかというような御意見でございますが、これらの点につきましても、この税の執行運営にあたりまして、地方議会等におきまして、適正な方法によつて運営をいたす場合におきましては、税源自体が偏在しておることにばつて当該道府県財政計画運営の上に、大なる支障が起るのではないかというふうに考える次第でございます。
  29. 井出一太郎

    井出委員 ただいまの御答弁は私の考え方と若干異なるようであります。運営いかんによつて税源の遍在が大した支障にはならぬ。こう小野次官は言われますが、これは私のような考え方もあるということを、ひとつよく記憶におとどめおきを願います。そこで地方税税源安定性とでもいいますか、こういう点が私は安定性は非常にけつこうである。また今度の税制改革が、地方に安定した財源を付與する。こういう目的である以上は、これはまさにそういう方向を示したものだと思うのでありますが、ただ最近いわば経済デフレ傾向に向つておる、こういう際にあたりまして、国の財源である所得税であるとか、その他婆税とかいうものは、景気影響を非常に敏感に受ける税目でございましよう。しかるに固定資産税あるいは市町村民税、こういつたものは大体土地、建物というようなものに対象を求めておる。あるいは市町村住民一種の人頭割的な、人に対象を求めておる。これはまあ非常に財源としては確かに安定しておるが、同時にこれは固定しておる。こう言えるかと思うのです。また附加価値税にいたしましても、これはもうけがあつたち出す、欠損だから出さぬというのではなくして、いわゆる附加価値というものは、これまた所得税などに比べるとはるかに安定性を持ち、特に固定性を持つておる。こう考えられると思います。そうした場合にこの景気変動によつてこういう配慮がつまりもつと何か伸縮性を持たせるような措置が講じられないとするならば、景気がこういう下降状態に突入いたしました際に、地方住民が非常に大きな負担過重という現象が出て来はせぬか、こういうおそれを抱いておるのでありますが、この点を政府当局はいかようにお考えでありましようか。
  30. 荻田保

    荻田政府委員 いろいろな面におきまして、景気変動ということが、税に影響するわけでございまするが、大体物価水準と申しますか、こういうものと並行して税収入が増減すればまず負担かち申しましても、財政需用から申しましても、比較的よく行くのではないか、理想的なものではないかと思うのでありますが、そこで現在の地方税を見ますと、固定資産税は確かにおつしやいましたように財産でございますので、固定性があるわけでございます。しかし前と違いまして賃貸価格が十年間もすえ置くというものではございませんで、毎年評価いたしまするから、この点は毎年の時価に応じて評価できるものと考えます。なお税率もちろん本年度だけは固定税率でありますが、明年以降は標準税率になりますので、適当に調整できると思います。それから市町村民税につきましては、これはむろん均等割もございまするが、大部分、八割程度のものは所得割でございますので、所得の増減によつで変動がある。また附加価値税もやはり外形標準でございまするけれども附加価値というような景気変動に応じて増減のあるものでありまするから、相当その対応性はあるのではないかと思います。なおそのほかの遊興飲食税入場税のごとき消費税、これは消費税でありまするから、そのような問題は起らないかと思いますが、財源的にはかえつて景気影響を敏感に受けついで、むしろ財源変動を来すものではないかと思いますが、いずれにいたしましても税一つではなくて、こうたくさんの税を組み合す以上、これだけの組合せがあれば、いずれの面から申しましても、従来の制度よりはまさつているものではないかと考えております。
  31. 井出一太郎

    井出委員 ただいま賃貸価格を毎年評価する。これは時価主義というものをおとりになる以上、当然そういうことに相なりますが、これは考えてみますと、はたして賃貸価格というものが毎年そのときどきの変動によつて変更し得るようなきめ方ができるかどうか、それが私は非常に疑問だと思うのであります。何となれば土地について申すならば、従来地価というような制度がございました。これは明治初年に定められて以来、何十年間一度も変動というものがなかつた、また大正期でありまするが、賃貸価格という制度を用いたが、これまた相当年々賃貸価格の更改をするわけには参らなかつた、これはおそらく莫大な費用と労力と手数を要する仕事でありまして、もちろん固定資産税は非常に大きな財源でありまするけれども、これのために毎年その更改をし得るような余地が一体あるかどうか、この点は私は相当問題だと思います。
  32. 荻田保

    荻田政府委員 これは前の制度と違いまして、建前といたしましては、毎年市町村で価格をきめることになります。はたしてしからば毎年度かわつたものができるかという問題でございますが、これは一つには一市町村におきまする固定資産のつり合いと申しますか、これが去年よりもことしは違つたという特殊のものにつきまして上つたり下つたりします。これは市町村によりまして、それぞれ前年度の基準から、その分だけを直すことになります。そこで問題は一般物価が上つたり下つたりいたしました場合に、相対的に価格をどうするかという問題でありますが、これはこの法案にもございますように、そういう基準は中央におきまして、地方財政委員会が決定して地方に指示することになります。そう物価がかわりません場合は別でありますが、相当程度物価がかわりますれば、昨年度の価格を何パーセントなら何パーセントふやすことが一応の基準だと、こういうような数字を示すことになる、だろうと思いますから特に景気変動物価がかわります場合は、全体的な調整はできるものだと考えております。
  33. 井出一太郎

    井出委員 これだけの大きな変革をやり、しかも地方税のウエイトが非常に重くなりまして、現在の地方団体の持つ徴税機構ではとうていまかない切れないことは当然でありまするし、そのことは大臣の趣旨弁明の中にも、はつきりうたつてあるようであります。これは実際田舎の町村へ行つてつてみまして、たとえば現在徴税吏員を三名でやつておつたいこれを一体どのくらいにふやしたら適当であるかどうか、事実まだ町村などにおいては、さような見当がついておらぬようであります。これはよほど中央から指導というと語弊があると思いますが、ただ地方自治は下から盛上れというばかりでは、この過渡期はやつて行けない。そこでこの徴税機構をいかに拡充するか、まだ府県などは数年来、そういう準備態勢を整えておりまするので、どうやらやれるかもしれません。けれどもこれとてもとうてい現在の職員ではやれますまいが、特に市町村においてその点は著しいと思うのでございます。国税の方はもう長い間徴税機構というものが、たとえば養成所を設けるとか、いろいろな施設等によつて訓練を施しておりまするが、今の町村でにわかに人を求めるということは、非常に困難だと思います。こういう点をいかようにお見・通しになつておられるか、また自治庁といいましようか、今後の地方財政委員会がこういつた徴税能力を輿上せしめるために、何らかの施策を講ずるお考えをお持ちになるか、こういう点をお伺いしたいと思います。
  34. 小野哲

    小野(哲)政府委員 ただいま仰せになりました地方団体の徴税能力の問題でございますが、今回の地方税法の改正によりまして、御指摘のような御心配はなきにしもあらずであります。シヤウプ税制報告書が昨秋発表されまして以来、地方団体におきましても、これに対する諸般の準備を、実際上は進めて参つでおるような次第でございますし、また地方自治庁におきましては、今回御審議つております地方税法案につきましては、確定的な案ができませんでした当時におきましても、適宜これに対しまして関係地方団体について、種々技術的な助冒であるとか、あるいはまた徴税能力あるいは徴税機構の問題につきまして、適時会合等をも催しまして、必要な指導をいたして参つておるような次第で、今回地方税法が改正されまして後において、これらの準備をいたすということにはなつておらないのでございます。しかしながら、御指摘のように、道府県は別といたしまして、町村等における徴税能力の充実の問題は、きわめて重要な点でございます。これらの点につきましては、なおごの税法の改正施行にあたりまして、地方自治庁が中心となりまして、あるいは税務吏員の講習、その他これが運用にあたりまして齟齬を来さないように、一層適切な助言をいたして参りたい。あるいは講習会を催す等のことも、もちろん考えなければならぬと存じます。か要はよい質を持つた税務吏員を得るということが必要でございましようし、現行の地方税市町村におきましては附加税的な方法によつて参りましたために、その徴税機構なり、徴税能力の上において十分でない画のあることは、御指摘通りでございます。さような点につきまして、できるだけの努力をいたして参りたい、かように考えておる次第でございます。
  35. 井出一太郎

    井出委員 最後にもう一点。これは資料の形で頂戴できればと思いますが、口頭で荻田さんあたりからお答えをいただいてもいいと思います。それはシヤウプ勧告と、それから今回ここに御提出なつ地方税法、これはほとんどシヤウプ勧告をそのままに焼直したと言うと叱られるかもしれませんが、でまつたくシヤウプ勧告通りだと、こう大体においては言い得ると思います。そこでシヤウプ勧告との関連において、私は本税法の検討を、きようでなく一度試みてみたいと思うのでありますが、それにつきましてシヤウプ勧告と、この税法案との大体の相違点といいましようか、これは私の方も一応調べて抜出して見ているのでありますが、もし政府の方でそのお答えがいただければ、労力の節約にも相なりますから、とりあえずどういう点がシヤウプ勧告と相違しておるか、ごく顕著な点だけでいいと思いますが、お示しをいただいておきたいと思います。
  36. 荻田保

    荻田政府委員 いずれ資料にして御提出いたしたいと思いますが、今気のつくところだけ申し上げたいと思います。市町村民税におきまして、法人に対しましても均等割課税するということを行つておりますが、これはシヤウプ勧告は、法人に対しましては全然とらないということになつております。固定資産税につきましては、土地、家屋の二十五年度に用います倍数が一千倍になつておりましたのを、九百倍に引下げたことであります。それから附加価値税につきましては、シヤウプ勧告があまり詳しいことを書いておりませんので、そう違つたというようなところはございませんが、ただ二十五年度におきまして、金融業とか、交通業につきましては、附加価値の計算はしないで、総売上げ金額の何パーセントというようなことを選択できるようにしたのも一つの違いでございます。それから遊興飲食税につきまして、シヤウプ勧告では減税をいたしておりませんでしたが、政府案におきましてはある程度の減税をいたしております。それからシヤウプ勧告では残つておりました税で、廃止になつた税があります。それは軌道税、電柱税、屠畜税、使用人税、それから自動車の取得に対する税、こういうものはシヤウプ勧告では依然として残るようになつておりましたが、政府案では廃止するようにいたしております。
  37. 菅家喜六

    菅家委員長代理 それでは龍野喜一郎君。
  38. 龍野喜一郎

    ○龍野委員 私はまず冒頭に地方税の確立ということにつきまして、大臣の基本的なお考え方をお伺いいたしたいと存ずるのであります。大臣の提案理由の説明の中に、民主政治の確立は、車に政治運営の形式を民主化するにとどめてはなりませず、政治運営に関する判断がひろく国民の中から生れて来るようにしむけて参らなければなりません。これがためには、すべて公事に関する問題は可及的にその問題の周辺にあつて、その問題から直接の影響を受ける人たちの手によつて、責任ある処理を行わせるようにして参らなければなりませんので、民主政治の確立と地方自治の強化とは、表裏一体をなす問題であります。」と言われておりますが、この点についてわれわれもことごとく同感であります。しかして新憲法におきましては、特に地方自治に関する項目を取上げており、その他これに伴いまして地方自治法が制定せられておることは皆様御承知の通りであります。しかるにその形は整つたのでありますが、その内容が整わない。今日いろいろな意味において地方自治の確立が叫ばれるゆえんであろうと存ずるのであります。その原因は私がここに申し上げるまでもなく、地方財政の確立をはからんがためである。しかして地方財政の確立をはかるためには、地方税制の確立をはからなければならぬということは、これも異論のないところであろうと思うのでありますが、地方税の確立という問題につきまして、私の見解を述べますならば、これは地方税の質の問題を考えるべきであつて、これによつて得るところの税の総額の問題ではなかろうと存ずるのであります。すなわち今日までの自治体が自主性を喪失しておつた、ことに旧憲法下にあつては、ほとんど自治体というものは名のみであつて、ことごとく官僚行政と申しますか、あるいは国の行政に左右せられておつたということも、これも異論のないところでありますが、その当時におきますところの地方税制を見ますれば、ことごとく附加税中心主義だつた、何ら地方として自主性を持つておらなかつだ。しかるにその後現行法によりまして、それが大体独立税中心なつたのでありますが、その徴収の手続き等におきましては、算定の基礎等について相かわらず国税を中心考えておつた。これがために形が整つたにかかわらず、地方の自治が確立しなかつた。すなわち地方自治に自主性がなかつた。この意味におきまして、まず地方税の自主性をはからなければならぬ。この問題がこのたびの地方税の改正案に織り込まれておるということは、私はまことに満腔の賛意を表する次第であります。次に今までの地方の税を考えてみますと、いわゆる国の余りものを頂戴しておつたという感が非常に深いのであります。それは国におきましては二十数種のわずかの財源によつて三千億ないし四千億の税が、平気でとは申しませんが容易にとれを。にもかかわらず地方税にありましては百数十種の、俗の言葉で言いますればがらくたな税が並べられまして、その税一つ一つがなかなかとりにくい。国民に対して非常に苦痛を與える税であつた。それがために地方税はなかなかとれませんで、地方民に苦痛を與える。こういう意味においてこのたびこの改正案で取上げまして税種の整理が行われた。そうして国民に対して苦痛を與えない、内容の豊富な財源を與えられたということは、これまた私は本法案の非常な進歩であろうと存ずるのであります。しかしながら、だからといつて今日の地方税の確立は、増徴しなければならぬという論法にはならぬと存ずるのであります。地方税の増徴もしくは地方税の量を増すという問題は、別個な観点からながむべきである。すなわち増税の問題、あるいは減税の問題というのは、そのときの経済状態あるいは社会状態、あらゆる点からながめてこれをやらなければならぬ問題であつて地方税の確立をはかるという問題とは、決して必然的な関係はないと存ずるのでありますが、本法案の説明の中にあります通り、このいろいろ規制改革の結果、三百八十四億の増税を見込まれておるようでありますが、地方税の確立と増税とは必然の関係にあるというふうに大臣はお考えになるのでありますか、それともこの増税は別個な意味において、ここに提案されたのでありますか、まずこの点について大臣の所信をお伺いいたしたいと思うのであります。
  39. 本多市郎

    本多国務大臣 お話によりますと、税は質についてもつぱら考慮すべきであつて、幾らとれるかというわくについては、これは第二次的あるいはこの場合考慮すべきではないという御意見のようでございますが、これはやはりいかなる税をとり得るかという質の問題と、さらに地方財政を確保するためにはとれだけはとらねばならぬ。そのとらねばならぬわくをいかなる方法でとるかということにあると思うのでございます。この二つを同時に調整勘案して、税法を立てるほかはなかろうと考えております。今回は確かに地方税としては増税になるのでございますか、今日まで地方自治制が自主性を持ち得なかつた根本的な原因は、財源の窮乏というところにあつたと考えられるのでございまして、この財源を確立してやることが、地方自治制を発達させる根本問題であると思いますので、今回のこの程度税源の拡張は、地方自治制を育成する意味において、やむを得ないことであると考えております。
  40. 龍野喜一郎

    ○龍野委員 今日の地方自治団体財政状況を見ますれば、必ずしも豊富とは言えない。むしろ財政的に破綻に瀕しているという批判もあるようであります。従いまして今日地方財政を充実することについて相当の考慮を拂うということにつきましても、私も大臣と考えを同じうするのでありますが、しかし今日地方財政の窮乏を救うのあまり、増税すべきときであるかという問題について、私はいささか自分の考えを申し述べ、大臣のお考えを承りたいと存ずるのであります。すなわち国税においては約七百億の減税をいたしたのであります。国民はこれによつ相当負担の軽減をいたすことになりまして、大いに政治を喜んでおると思うのでありますが、私はこの国税を今日七百億減税いたしたのは、決して国の財政に余裕があるから減税いたしたのではない。今日の政治の目標は何はさておいても減税をしなければならぬときである。国民の負担を軽減しなければならぬときである。国民の今日の政治の目標は、私が申し上げるまでもなくわれわれの先輩であらせられる本多国務大臣は十分御承知と思うのでありますが、今日の政治の目標は決して富国強兵でもなければ、国の命令のために動いているわけでもない。今日の政治の目標はあくまで各個人々々の家庭の生活を充実せしめるところにあると思うのであります。政治家の目標は自分の在任軸に大きな省をつくつたとか、あるいは自分が村長になつたために、新制中学校をつくつたというところにあるのでは決してないのであつて、いかにすれば自分の在任中に国民の各家庭々々がその途に安んじ得たかというところにあろうと存ずるのであります。これがために現下の情勢を考えますたらは、とにかく何はさておいても国民の負担を軽減しなければならぬ。そうしてでき得るならば国は国民の自由なる活動に対して制限をしない。そうして国としましては個人としてできないこと、あるいはどうしても団体もしくは国の力でやつた方が便利だ。そうすることがさらに個人の生活内容を充実し得るゆえんだというもののみに、大体限つて行くべきでなかろうかと存ずるのであります。こういう観点からいたしますれば、今日経済は安定いたしております。国家全体としての経済は安定しておることは、すでに百円札の値打が安定したことによつても、国民は承知し得るところであろうと思うのでありますが、そうかといつて各個人々々あるいは各業者々々の生活が、必ずしも楽になつたとは言えなかろうと存ずるのであります。ことにややもすれば不景気になるおそれのある今日におきましては、ことに個人個人によりましては非常なさんたんたる境遇にあるということも、政治家はひとしく知つておるところの事実であろうと思うのであります。私はこの意味におきまして、国税において七百億を減税したこの趣旨は、あくまでやはり地方税においてもこれを徹底しなければならぬ。七百億の国の減税は決して国庫に余裕があるためにやつたのではない。国も乏しき中をさいて国民の負担を軽減したのだ。その意味においてやはり地方財政も非常に窮乏はしているのだ。しかしながらここ一年や三年はとにかく地方自治体もしんぼうしてもらつて、そうしてここしばらく時間を稼いで、各個人々々の生活が楽になつたときに、しかるべく増徴をはかるようた行き先をすべきではたなろうかと存ずるのでありますが、今日のこの情勢は地方税が苦しさのあまり増徴することが適当であるというふうにお考えになるかどうか、その辺について大臣のお考えを承りたいと存ずるのであります。
  41. 本多市郎

    本多国務大臣 減税に対しまする考え方はまつたく同感でありまして、今日の場合この重い税を減税するくらい善政はないと考えております。しかしその減税を断行しますためには、あらゆる面に努力をしなければ減税の実現ができないのでございますから、政府といたしましても今後さらに努力いたしまして、減税の方向へ進む考えでおるのでございます。但し今回の国税、地方税にわたる改正は、シヤウプ氏の勧告によりまして一貫せる改革であり、中央と地方財政計画も総合的に計画せられたものであります。また政府もこれを適当なものとして、全面的に受入れておるのでありまして国税において昨年の最終予算と比較して七百億、当初予算と比較して九百億の減税でありますが、この減税の中で地方税として四百億の増税になりますから、差引いたしましたところが国民負担の減になることと考なられます。しかしこの四百億というものは、地方で増税になることが財政計画でも認められておるのでありまして、これだけの金額は国が、国民負担、すなわち税源というものを地方に委譲したものである、こういう計画に基いているものでございます。結局総合的に考えまして、本年は減税も十分には行うことはできませんけれども、それは財政上の事情からやむを得ないところであつて、しかし相当の減税も行え得るということになるのでありまして、中央において減税した中で地方税として増税する分は、これは実質的な減にはなりませんが、それだけ国において税源地方に移したものである、かように考えるのでございます。
  42. 龍野喜一郎

    ○龍野委員 次に改正税法が実施せられました場合に、予想せられます各種の影響について、大臣の見解を承りたいと存じます。  まず第一点は、この改正案が納税者に及ぼす影響であります。先般も塚田委員から、いかなるりくつがあつても、理論があつても、新税は悪税だというようなお話を承つたのでありますが、私もことごとく同感であります。この税制のごとく、国民に直接関係のある法律というものは、これはなかなか容易に改正すべき問題でなかろう。負担を軽減するという意味におけるところの税制ならば、国民も納得するにやぶさかでないのでありますが、新税を起すということは、これはよほど重大な決意を要する事項ではないかと存ずるのであります。たとえば附加価値税の問題を一つ取上げてみましても、これはまつたくの新税であり、これを事業税に比べますならば、先般の大臣の御説明によりましても、むしろ事業税全体の収益から考えれば、附加価値税は減つているのだという御説明であつたのでございますが、しかしながらこの附加価値税が、はたして国民のいかなる層に、どれだけの税金がかかつて行くかということは、やつてみなければわからない。なるほど事業税は相当重かつたかもしれないが、それも年数が経てば一つの秩序になり、自分の生計を立てる上において、自分の事業税は大体どのくらい納まるのだというような見当もつくのでありますが、附加価値税の場合に、はたして自分の附加価値税は幾ら取られるか、自分の会社はどれだけの計算になるかということは、やつてみなければわからない。総体においては、あるいは幾分の減税になつておるかもしれませんが、しかしながら各個人々々に関する限りは、非常な不安である。私はかくのごとき大改正は、漸を追うてやるべきものではなかろうかというふうに信ずるのであります。大体政府におかれましても、附加価値税は国民の各層にどれだけの税金となつて現われるかということについての、標準課税の説明はあつたようでありますが、しかしながら国民は、これに対して相当の不安を持つておる。ことにこの附加価値税の実施のため、納税者の間に非常な変動があるということが予想される。あるいはこのために非常な利益をこうむる国民もあるかもしれませんが、また反面に非常な負担の重くなるような考もあろうと存ずるのでありますが、これらについての大臣のお考えを承りたい。  それから第二点は、徴税者、すなわち府県市町村に及ぼす影響であります。先ほどもどなたからか御質問があつたのでございますが、このたびの税制の改革によりまして、著しく地方税は増徴されるわけでありますが、この結果われわれは恐れておるのであります。国民に対するいろいろな問題も恐れますが、今日の地方自治、ことに町村の自治というものは、これはややともすれば、リコールその他の運動によつて、非常に脅かされておるこの際、貧弱な税務機構を持つておる町村が、はたして円満なる税務の運営ができるかどうかということについて、非常な危惧の念を持つておるのであります。先般も私ある村長に会つたのでありますが、お墨付はありがたく頂戴したけれども、しかしながらこのお墨付通りやれるかどうか非常に自分たちも心配だということを言つております。と申しますのは、本多国務大臣も十分御承知だと思いますが、大体町村というものは、これは話合いで行くものであります。それがこのたび新法によつて、税徴收のための権力が非常に確保せられました。その各種の権力を持つて臨むということは、法律上はできるかもしれませんが、はたして話合いの行政であるところの自治体がうまくやつて行けるかどうか。すなわち税金だけは非常に完全に取れるかもしれませんが、その結果は自治体の破壊になるということを考えなければならぬ。自治体全般の運営からいつて、はたして今日のこの急激なる増徴が円満にやつて行けるかどうか。今までは税務署が国民の裏切りの的になつておつたが、これは町村にとつては間接の的であります、しかしながら、面接村当局は村長の怨嗟の的になるというようなことになつたならば、はたして自治体の円満なる運営ができるかどうかということについて、私は大臣の所見を承りたい。そうなりますれば、勢い公選によるところの市町村長も、あるいはまた選挙によるところの市町村会議員も、ややともすればその執行力が鈍る、法律の決定通り実施することについての積極的意思を失うということを、われわれは恐れなければならぬ。すなわちこの増税案実施の場合は、絵に書いた餅みたいな結果になりはしないかということを、われわれは恐れるのであります。  次に新法の経済界等に及ぼす影響であります。これは先般安本長官よりいろいろ説明を承りまして、やや納得した点もあるのでありますが、しかしながら、客観的に申しまして、何と申しても物価にいささかの影響を及ぼし、あるいはまた地代、家賃等に相当の影響を及ぼすということは、これは疑いをいれぬところであろうと存ずるのであります。事業の経営に吸収させるということによつて物価にはあまり影響はしないということを安本長官は答えられたのでありますが、しかしながら、わが国の大体九〇%を占める中小企業においては、経営の合理化という余地があるかどうか。大企業におきましてはあるいはそういう余地があるかもしれませんが、人の五人や十人養つているところの中小企業に対して、そういう余地があるかどうか。そうなれば勢い中小企業は、切詰め切つてしまつた今日の経営を、さらに切詰めることはできない。そうなれば、結局倒れなければならぬというようなぐあいになりはしないか。また地代家賃等につきましても、これはなるほど、説明獲れば、今までのいろいろな不動産に対するところの税率が、他の諸物価の高騰に比べて、非常に低きに失する、これが均衡をとらせるということは、これは一通りのりくつであります。しかしながら、これも一つの長い間の秩序である。人の物でもこれを長い間持つておれば自分の物になるというようなことは、法制上認められている。一つの秩序というものは、これは尊重しなければならない。その秩序に基いてまたいろいろな制度が生れている。それを一挙に固定資産税が相当増徴されるのでありますが、今般の、この地方税の改革において、固定資産税が一番増徴せられるのでありますが、こういう変革のための地代、家賃に及ぼす影響、それがまた従つて社会生活に及ぼす影響、これは数字的に安本長官の御説明を承つてやや了承いたしたのでありますが、当面の所管大臣であらせられる本多国務大臣の、以上三点についての御所見を承りたいと存ずるのであります。
  43. 本多市郎

    本多国務大臣 新税は常に悪税であるということは、よく言われるのでございますが、これは従来の税法の欠陥、さらに新しく創設する場合の税法の長所というようなことの研究が不十分で、はつきりしないで、軽々にその改革をやるべきものではないという趣旨で言われるものと考えております。今回の税制改正は、長年にわたる地方税制の不均衡の点を研究いたしまして、すでに地方税制そのものが破綻しておるという程度の不均衡に陷つている、これをこのまま放置することはできない。それにはシヤウプ氏の勧告に基く今回の税制改革は、まことに適当である、ゆえにこの際一日も早くこれを改革することが、地方課税の適正、負担の均衡化をするゆえんでありまして、これは軽々にやつてはならないという御趣旨には御同感でございますけれども、愼重に研究いたしました結果、地方財政確立の点、さらに今日の不均衡な負担を是正するという意味から、どうしてもこの際やるべきことであると信じておる次第でございます。さらに今回の地方税法の改正による徴収の面において、確信があるかという意味の御質問もあつたようでございますが、これは各府県市町村においても、それぞれ今回のシヤウプ勧告に基く心構えもできておりまするし、それぞれ準備もいたしておることでございますから、この際ならば非常に熱意を持つておりますので、大なる支障なくこれをなし途げ得るものであると考えております。  さらにまたお話の自主性ということと、責任という問題でありますが、この自主性には常にその自主性に基く行政を完全に遂行するという責任が伴わなければならぬと思います。税法上の自主性を回復したいときには、それを完全に運営して行くという信念に燃えているはずでありまして、そうした点から今回の税制に対応するだけの市町村の心構えと準備はあるものと考えております。  さらに物価に及ぼす影響についてお話があり、中小商工業に対する影響のお話があつたのでございますが、中小商工業者は原則としては国税と地方税の総合計算によりまして、相当の減税になるのでございます。しかし個々の納税者につきましては、あるいは減税にならなかつたり、増税になつたり、さらに減税、増税の度合が必ずしも均衡を得ないというものが、出て来るかと存ぜられるのでありますが、それがすなわち地方財源確保のための税制改革によつて負担の均衡、課税の適正を実現するための改革から生じて来ることでございますから、今回の程度のことは負担にもたえられるという範囲のことであると考えますし、やむを得ない点であると考えております。
  44. 龍野喜一郎

    ○龍野委員 最後にもう一点お伺いいたしたいと存ずるのでありますが、本法案の全体を通じて見ますならば、大体においてこの法案を本年度よひ一挙にこれを実施しよう。ただ特定のものに限つて二十五年度に限り暫定措置として、ちよつとした特例を認められているのでありますが、ただいま大臣の御説明の中にもあります通りに、こういう画期的な税制の実施につきましては、それはもちろん政府としてぢ、国民としても、相当用意も必要であるし、またそれによるところの、いろいろなトラブルも覚悟しなければならぬととは、これは当然と思うのであります。しかしながら政治の目標は、とにかくいろいろな革新的断誓いえども、なるべく摩擦を少くして行くというところに、政治の目標があると存じておるのであります。私の見解をもつてすれば本法案全体については、私は必ずしも異論をはさむわけではありません。この法案の趣旨、立法精神等を勘案いたしまして、大体において賛意を表するにやぶさかでないのでありますが、しかしながらかくのごとき大改正を実施するにつきましては相当のトラブルがある。このトラブルを緩和することが暫定的措置としてぜひとも必要ではないか。それならば少くとも最低一箇年くらいの余裕を置くべきじやなかろうか。そうしてもつて国民のいかなる層にいかほどかかつて行くかという実績を見ながら、徐々にこれを実行して行くというところに、政治の段階があるのではないかと存ずるのであります。そういう意味におきまして、挙に実施するということは、できればけつこうでありますが、私は実際問題としてやはり相当の暫定期間を設ける、あるいは二十五年度につきましては大幅の特例を設ける、そうして実績を見ながらこれを遂行して行くというようなふうに持つて行くのが、政治の実際としてまことに適切じやないかと存ずるのでありますが、この点につきまして大臣の御所見を承りたいと存ずるのであります。
  45. 本多市郎

    本多国務大臣 改正による摩擦を最少限度にとどめるためにでき得る限りのことは、なすべきであるという御意見には賛成でありまして、法案の中にもそうした点を考慮して規定を設けた点もございます。実施の面につきましては、さらにそうした点につきましては十分認識を深めまして、摩擦等が少いようにいたして参りたいと存じております。ただしかし今回の税法は、個々の納税者にとりましては、従来の地方税法に比較いたしまして、幾ら自分が税金を納むべきかということの計算は、前税法に比較して、きわめて容易にその範囲をみずから知り得るようになると考えております。いずれも予定することのできるような税法になつておりますので、そうした企業者が自己の企業の存立の前提條件として、これを予定して企業を経営して行くという上におきましては、純益に課税する事業税等に比べて、附加価値税は、はるかに前もつて知ることができる点において都合がいいのではないかと考えております。さらに一年ぐらい延期すべきではないかという御意見でございますが、これもごもつともな意見とは存ずるのでありますけれども、今度の税制改革は国、地方を通じてであり、財政計画も、国、地方を通じての財政計画になつておりますので、この時機を逸して他の機会にやる場合、納税者に対して一層の迷惑をかけるということも考えられますので、政府といたしましては、国税を軽減されるこの機会に、この軽減の一部分地方財政税源に委譲するということも考えることができますので、この機会になすべきであると考えた次第であります。
  46. 菅家喜六

    菅家委員長代理 午前の会議はこの程度にして、午後一時三十分より再開することにいたしたいと存じます。それまで暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩     午後二時二十一分開議
  47. 菅家喜六

    菅家委員長代理 再開いたします。休憩前に引続き地方税法案を議題として質議を続行いたします。大泉寛三君。
  48. 大泉寛三

    ○大泉委員 今度の地方税はきわめて罰則が強化されたように見えますが、本日の説明はそれほどではない。いわゆる国税徴収法によるというものを各税種目に明確にしたにすぎないと、こうおつしやつておりますけれども、その條文に明確にこういうふうに法文化してしまうと、どうしても非常に罰則が強化されたという結果になるのでありまして、従来自治体としては、みずからの自治性で、自分の責任において、義務においてこれを遂行しようという自治体を愛するという気持は、こうした苛酷な罰則を羅別されると、どうも住民は自治体の上に各徴税機関を通じて、非常に罰則の恐怖時代がここに現出する。しかも今日上層部の方ではそれほどでもないのだが、末端の徴税官吏に至りますと、きわめて権力を濫用し過ぎ、しかもそれを半ば恐喝的に使用する。またそうせざれば徴税成績があがらぬというような立場にあるのであります。今度は地方自治体に法文化してこれを與えたとしたならば、まつたくそのよつて来るところは恐るべきものがある、こう思うのでありますが、これは各地方自治体に対して正定の国税徴収法による範囲内において、その地方自治体の條例等においてこれを定めさせたらどうか、こう思うのでありますが、一応これができるかできないか、お伺いしたい。
  49. 小野哲

    小野(哲)政府委員 ただいま大泉さんから御質疑になりました罰則の問題でありますが、今回の地方税法案において、罰則の規定が相当詳細に掲げられておりますことは御指摘通りでございます。これは本委員会で先般御説明をいたしましたような理由で、今回詳細に掲げられることに相なつたのでありますが、本来の趣旨から申しますと、徴税についてはできるだけ罰則による強行を行うということは努めて避けなければならぬ、かように考えております。と同時に問題はただいま仰せになりましたように、地方における税務官吏のやり方、態度、こういうものが地方住民に対して相当重大な影響を及ぼすものであろうということも、察するにかたくないのであります。従いまして今朝本委員会で申し上げましたように、この税法を施行いたします場合においては、努めて質のよい税務吏員を養成して行くことに、一面努力いたさなければなりません。と同時に地方税の性格から申しまして、地方住民と当該地方団体との緊密な間柄において、徴収する種類のものでありますので、この辺については運用上十分に戒心をいたすべき点であろうと存じます。ただいまお話がございました地方税法中から罰則に関する規定を除いて、あげてこれを地方団体の條例にまかしてはどうか、こういう御意見でございますが、一応ごもつとものように存じますけれども、この種税法については罰則規定を條例に委任するということは妥当でない。こういう見地からこの税法案の中に罰則規定を網羅いたしておる。かように考えておりますので、御了承をいただきたいと思うのでございます。
  50. 大泉寛三

    ○大泉委員 自治体というものはまつたく自分の力において治めるというのだから、自治体には一切をまかしてこそ、ほんとうの自治体であつて、また国としては各地方自治体に対して相当の競争性を持たせる必要があると私は思う。自治行政の運営に対しては、今日まで中央政府あるいは県等を頼んで来ておつた。こういうことを脱却させる意味においても、また創意くふうさせて、きわめて経費を切り詰める意味においても、能率的な行政をとらせるのにも、相当自治体同士の競争性を加味させた方がよろしいのじやないか。こういう建前からいうと、納税においても政府の外部的な罰則法令によるということは当を得ていないと思う。おのおのその土地において自治的に何でもまとめて行く、円満のうちに行政を運営して行くという建前から言つたならば、それは利用もされないおどかし的な罰則なんというものは、ない方がよろしい。むしろ自治体そのものが自治的にこれをぎめた方がよろしい。こう思うのであります。たとえばどうせ使わない刀であつたならば、何も持たない方がむしろ相手方に対して好意を持つて協力させる上においても、また信頼させる上においても、ましではないか。こういうふうに思う。どこまでも自律の本領は住民のおのおのが自治に参画して運営して行くというところに、われわれ日本人の感情もあるのじやないか。特に長い間家族制度でつちかわれて来た日本国民としては、当然そうしたことがとられなければならないものじやないか。こう思うのであります。自治運営に競争性を持たせる考えはないか。そういう立場においてこの罰則などということは、あまり日本の国の性質に適応したものでない。こう考えるのでありますが、いかがでありますか。
  51. 小野哲

    小野(哲)政府委員 ただいまお話がございましたように、地方自治の運営にあたりましては、努めて当該各地方団体がお互いにその長所を発挿し、また短所を改めまして、それぞれがその特長を発揮するという点については、私もまつたく同感でございます。しかしながら地方税に関する限りにおきましては、この法律案の建前が御承知のように国税とは分離いたしまして、地方税に関しまして、その体系において自主性を與えておる点、並びにこの税法が公平なる運用を期待いたす点において徴税を確保する意味において、必要な罰則その他の規定についても、これを法律によつてきめることが適当であろうと存ずるのでございます。ただ大泉さんからお話になりましたように、それであるからといつて地方自治体の運営そのものについて、その地方的な特色を拂拭して、画一的な運営をさせるという意味ではないことを御了承願いたいと存じます。
  52. 大泉寛三

    ○大泉委員 以前は納税を多くすればその土地柄においても、あるいは一般社会においても栄誉的な一つの立場を担つておつたのでありますが、終戦以来というものは、どうも力のある者は出すのだ、あるいは所得の多い者は多く負担せなければならぬという、こきわめて峻烈な累進税を課せられている。そして多く負担した者は、もうけ過ぎたのだからとか、あるいは不当利得を多く得たとか、あるいはやみ利得を得たとかいうような誤解を生じたことが一面ありましようが、ともかく多くの納税する者は一般大衆から批判の的になつたような感もある。ところが今度完全に税制を遂行するには、なるたけ多くの収益をあげるとか熱心に事業に参画する者は、自然税を多く負担しなければならぬ、こういう結果になるのであります。この税に対する罰則のみが強化されるということは、事業を大きくやるとか手広くやるということになると、結局それに恐怖が伴つて来る。税を出す方がきわめて峻烈な罰則を受けて、とつた方の使い方は、不当支出ということはないだろうが、とにかくあいまいな支出、あるいは不適当な支出については何らの罰則もない。特に政府においてその機構や組織が完全にできておつても、自治体においてはやはりそうした一つの監督の立場にあるのは、住民だけである。住民の力によつて一切の監督をせなければならぬというような立場にあるとしたならば、この徴税の罰則と並行して、いわゆる地方自治体の支出の面と、予算執行の面においても、相当きつい罰則がなければならぬと私は思う。私は罰則の面においてのみ、こだわつておるわけではないけれども、ともかくこうした罰則を政府が自治体に押しつける、あるいはこの法律で定めて行く以上は、それと並行して行かなければならぬのではないかと思う。特に事業を大きくやつておる者は、直接それに携わつておるのではない。やはり多くの人を使用して、ある分野をまかしておる。まかされた者は、たまたま責任の立場から、責任者に罰則だけはひつかかつて来るということだけは往々にある。これを見ても、やはり全部が責任者にその罰則が加えられるということになります。また一方に徴税する方の立場から見ると、一方的な認定でよろしいことになつておる。調べた後において、あるいは明瞭になつた後においても、とにかく一方的に納税義務者と認められた者は、つまり法によつて調査をされたり、あるいは探索をされたりしておる。そういう場合に全然間違つておつたのだというようなことが、迷惑をこうむつた後においてわかる。こういうことはあまりにも政府が一方的ではないかと思うので、地方自治体はどこまでも住民の協力を基本として行く以上は、こういう考え方を改めるべきではないかと思うのであります。税を多く負担する人ほど、罰則が特に恐怖的な立場に置かれる。この点についてもどうお考えになるかということも、あわせてお伺いしたいと思うのであります。
  53. 本多市郎

    本多国務大臣 所得の多い者ほど累進税で高い税を負担するという点につきましては、御承知の通り累進率が行き過ぎますと、国民の意欲を減退させることになるのでありまして、まさに日本の現在まではそれに該当するような状態ではなかつたかと考えられます。勤労所得等についてあまりに政府が働くに従つて累進率で課税されるために、これ以上働いても、その何分の一しか実収にならないという点から、そういう傾向も生ずるのでありまして、そこまで累進率が参りますと、国家的に考慮しなければならぬと考えられるのでございます。今回の税制改革にあたりましては、そういう点に考慮が拂われておるのでございますが、さりとて所得の多い者に高率に課税して税をとるということは、税が応能負担を理想とする点、さらにまた社会政策的見地から、どうしても今日の政策としては実行して行かなければならぬところであると考えております。今回改正せられました税法の程度ならば、今の社会政策的な見地からも納税者の勤労意欲と申しますか、生産意欲というものからもやむを得ないところであつて、了解していただけるのではなかろうかと考えております。  罰則の点につきましては、やはりその税額等によつて、罰金等が高くなる関係から、納税者に罰金が重くなるというような点もあると存じますけれども、これは悪質であり、まつたく故意的であるものを対象にして罰則が定められておるのでありまして、税制を確保するという上からは、この程度のことはやむを得ないのではなかろうかと存じます。さらに税は必ず納税者の納得の上に立つてやるということは、最も望ましいことでありますけれども、しかし税が強制力を失つてしまうというところまで参りますと、税の確保ができないということになりますので、それぞれ実情に即した実際上の行政運営はいたしたいと存じますけれども、これはどこまでも一方的にまかせるというところまでは、いかなる時代にも行くことは理想でありますが、困難であろうと考えております。
  54. 大泉寛三

    ○大泉委員 大臣のおつしやることはよくわかりますし、また私もシヤゥプ勧告の税制改革に対しては、非常に敬意を持つているのでありますから、今までのようなことはなかろうと思いますけれども、とにかく経験前までは、納税者には相当栄誉的な考え方で待遇を與えられておつたが、終戰後はそれがなくなつた。むしろ多く出す方がばかやろうだというようなことになつて来た。このときにあたつてなお罰則がここに強化されるということは、かえつて徴税成績に悪い影響があるのじやないかと思う。こういう観点から申し上げるのでありますが、歴史的に見ても、こんなに税問題に対して国民が恐怖的な立場に置かれた時代というものはおそらくないと思うのであります。そのときにもつて来てこの罰則であるから、非常に悪いのじやないかと私は思うのであります。そこで強制力を持たせなければならぬというのはよくわかりますが、その強制力も国家が自治体に干渉せずに、自治体みずからに條例等によつてやらしたらどうかと思うのであります。ともかくこの徴税に対しては、双方とも理解したところに完全な遂行ができますけれども、一方的な認定あるいは疑い等の立場に立つて、この法を適用するということは、国家が自治体に対して思いやり過ぎているのではないか、あまり干渉し過ぎているのではないかと思うのであります。私の申し上げることはまわりくどい話でありますけれども、ともかく現在の段階では、国民に対してあまり恐怖観念を持たせずに、みずから自治体の責任者となり、義務者となつて、自治制の運行を円滑ならしめて、円満にこれを遂行せしめたらどうかと思うのであります。
  55. 本多市郎

    本多国務大臣 根本的には現在の税が重過ぎるということから、いろいろ、そうした問題が起きて来るのではなかろうかと思うのでございます。もし税が容易に納められる程度に軽くなつた税でありましたならば、そうした刑罰に該当するようなことも、少くなつて行くと存ぜられるのでありますが、今の段階におきましては、この程度の税を確保するためには、この程度の罰則等を設けておくことが、地方団体をしてその財源を確保させることであり、やむを得ないことではなかろうかと存ぜられます。御了解願いたいと存じますのは、これはいずれも故意、悪質なものでありまして、善意の間違い等の場合には、もちろんそこのところは、十分調整されることであろうと存じます。またこの税の施行につきましては、それぞれ府県市町村の條例あるいは府県市町村の規則等で、詳細な実施面がきまるわけでございまして、この罰則も不合理のないように運用されることであろうと存じますので、将来こういう罰則を必要としないところまで税も安くなり、納税者の理解も高まるということを目標に、努力を続けなければならぬと考えております。
  56. 大泉寛三

    ○大泉委員 罰則の問題は大体この程度にしておい、とにかく罰則の強化に対しては再検討していただいて、また政府の態度を聞きたいと思います。  次に納税に対する強化のために、全国に二万人からの徴税吏員を養成されているということですが、納税吏員をふやして納税者の負担を重からしめるどいうことは、きわめて不合理なことである。けれどもこの税制改革のために、公平を期するという建前から、これはやむを得ないとして、この二万人の人はどういうような配分の方法をもつて行われますか。地方の自治体からの要望によつて割振りするのですか。それとも自治体の中から人を選んで養成するのですか。
  57. 本多市郎

    本多国務大臣 罰則励行のために二万人をふやすというふうに、お話しになつたようでございますが、そうではないのでございまして、そういう罰則に該当するようなことにならないように、十分税法の精神を理解させるに必要であり、さらにまた調査もでき得るだけいたしまして、課税の適正均衡を得るという趣旨で、税務職員の増員をしなければむりであろうという見地から、二万人近くは府県市町村を通じて、採用されるという見込み人員でございまして、地方自治庁といたしましては、国税庁で急激に税務官吏を増員しました場合に、どうもその採用が少しく疎漏ではなかつたかとも考えられますので、そういう点についても考慮いたし、また今回この地方税制を適正に運営するかいなかは、地方自治体の今後に非常な影響のあることでございますから、地方自治制の信用を高め得るようなりつぱな人物を、ここに充貫て行きたいというように考えておけます。これはそれぞれ地方団体において採用されるのでございまして、自治庁において、それぞれその数については指定とか、配分等はいたしませんけれども、おおよその見込みが、全国ではそのくらいになるだろうという数字であります。
  58. 大泉寛三

    ○大泉委員 よくわかりましたが、私はただいま罰則のために増員するとは申しませんでした。これは徴税の公平を期するためであろうというふうに申したのでありますから、その点御了承願います。   次に今度の固定資産税附加価値税、その他の税は政府予想しておるよりも多分に多くなるだろう、場合によつては三倍とか、五倍になるところもあるだろう、あるいは最低であつても、ともかく従前の線までは行くだろうというような予想をしておるのでありますが、政府は各地方団体に対して定のわくを制限する意思があるか。たどえば前年度は三億円の自治体に対しては、今年度も三億円のわく内にとどめて、それ以上は増税しないというような一定のわくを與えてやらぬと、予想に反して厖大な数学が、そこに出て来るような結果に陥るのではないかと思いますので、政府としては、地方自治体に対して、そういうことをする意思があるかどうかということであります。
  59. 本多市郎

    本多国務大臣 それぞれ制限税率の範囲内におきましては、地方財政委員会に届出だけで、標準税率以上徴收することができるようになつておるのでございまして、わくと申しますとこれは法律上のわくであつて、このわく内におけるその地方自治団体負担力並びに財政需要を勘案して、どの程度が適当であるかということは、自治体自体が自治体の議会に諮つて決定することでありまして、その制限税率以内のことにつきまして、さらに政府がわくを指定するというようなことは、かえつて自治の発達を阻害し、行過ぎた干渉になりはしないかとも考えられるのでございまして、それは考えておらないのであります。
  60. 大泉寛三

    ○大泉委員 政府が自治体に対して干渉がましいことをしないように、私どもはいつも要望しておりますけれども、こういう画期的な税制改革のときにおいては、見積り予想というような立場から行くと、番狂わせが生じて来るような傾向がありはしないか。だれでもが手堅い方と不安の方の両方の立場から選択するならば、手堅い方を選ぶ方が結局税の確保のためには、まず間違いのないところを選ぶとするならば、やはりよけいに取過ぎる傾向が多分にある、こういうふうに私は想像するのであります。何のためにとつてしまつたのだか、これは地方自治体みずからのくふうによつて住民の意思によつて決すべきだという、ただ單にそれだけでは、当局として不親切ではなかろうかと思うのであります。やはり前年度を越えるべからずとか、べからずは悪いとしても、前年度よりはなるたけ増徴のないように、減税に振り向けてもらいたいという要望があつてしかるべきだと思うのですが、これをお尋ねいたします。
  61. 本多市郎

    本多国務大臣 全般的には、市町村財源を拡大してやるということが目標でございますから、総計四百億円程度の拡大は、これは自然政府としても財政計画に盛り込んでおるのでありますからい総計ではそういう結果になろうと見込んでおるのでございますが、それでは個々の場合に、財政需要がそれほど必要がないのに、制限税率の範囲内で必要以上の税をとつて住民を苦しめるようなことがないかというようなお話でございます。この点は、それぞれ市町村議会がございまするし、ことに国全体として見込みを立てます場合には、非常に広汎にわたりますので、あるいは多少総合的には当つていぞも、地方とつとつの見込みについては、あるいは妥当を欠くような見込みも立てないとも限らないのでありますけれども、それぞれ町村という単位になりますと、手近に課税標準の調査ができるのであじまして、その課税標準が大体どういう程度のものであるということがきまりまして、そうして財政需要額が幾らである、としたならば、税率はどの程度つてちようど財政需要を満たすことができるか、こういうことが勘案され得るのでございます。ことに議会等においては、ただ税金を必要もないのによけいとるというようなことに、賛成するはずはないとえられますので、そうした点は、地方自治体内において、財政需要を満たす、負担加重にならないようにどいうようなことで、治まるのではないかと考えております。
  62. 菅家喜六

    菅家委員長代理 立花敏男君。
  63. 立花敏男

    ○立花委員 本多さんにまずお尋ねしておきたいのですが、この間の新聞では、本多さんは二十三日にアメリカに行くと載つておるのでありますが、これは事実でございましようか。また本多さん自身として、どういうふうにお考えでございましようか、承りたいと思います
  64. 本多市郎

    本多国務大臣 私にアメリカを訪問するようにという交渉がありました際に、私は、地方税法その他、議会の最終段階において、最も重要な法律案を受持つておりますので、議会中は困難であるということをあらかじめ言つて、強くこれを御辞退いたしておつたのであります。その際に、来月の二十三日という予定であるが、二十三日ならば、たいてい君の受持ちの法案の上る時期ではあるまいかということで、交渉がありまして、それでも辞退しておつたのでございますが、司令部の方において一方的に、そのころならばよろしいであろうというので、決定されたようであります。しかしこれに対しまして、私は、これらの重要法案の決定前に、いずれにしても任を離れることはできないと考えております。幸い二十三日出発の船で行くのでありまして、船で行くのと飛行機で行くのは二週間の違いがあります。そこで私は、自分の受持ちの法案が二十三日までに終了いたしません場合には、来月の初旬に飛行機で向うへ行つて、一行に追いつくようにいたしたいということで、今交渉中でございます。いずれにいたしましても委委員会等の審議が終了しないうちに、私が離れるということは、今私の考えておらないところであります。
  65. 立花敏男

    ○立花委員 ぜひそういうようにしていただきたいと思うのです。現在すでに地方財政部長が渡米しておりますし、今また本多さんが、この法律が成立しない以前にお出掛けになるということは、この法案審議上私ども非常にさしつかえがございますので、そういうふうにお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、その問題に関連いたしましてお尋ねいたしたいと思いますが、どういう目的で渡米なさるのか、現在審議中の地方税法と、どういう関連があるのか、あるいはないのか、そういう点をお答え願います。
  66. 本多市郎

    本多国務大臣 司令部からは、その目的としては、特にまだ文書等で明示されたものはございませんが、アメリカに人事交流計画というものがあるそうであります。そして、その人事交流計画に基いて、訪日させる人、渡米させる人というのが、きめられておるようであります。その一環として私が向うに参ることになつたのでございますが、私ども向うへ参ります一行の目的は、日本の新憲法下における自治制度の状況、さらにアメリカにおける地方自治制の状況等を視察することを目的といたしておるものと考えております。
  67. 立花敏男

    ○立花委員 法案審議が終りましても、議会開会中に大臣がそういう一方的な決定、あるいは單に人事交流というような趣旨で渡米なさる、開会中の議会を空席になさるということは、問題だろうと思うのでありますが、私ども、できましたならば、こういう状態の起らないように、大臣としても主張していただきたいと思います。それからむう一つ、実はドツジ・ラインの問題でございますが、最近の新聞紙上によりますと、ドツジ・ラインに対する修正の意見が、民間におきましても、あるいは政府内部におきましても、あるいは與党内部におきましても、相当台頭して来でおるということを承つておるのでございますが、本多さん自身は、これをどういうふうにお考えになつておられますか。あるいはまた、ドツジ・ラインとシヤウプ勧告との関連を、どういうふうにお考えになつておるか、御説明願いたいと思います。
  68. 本多市郎

    本多国務大臣 ドツジ氏の勧告とシヤウプ氏の勧告は、これは一体をなすものであると考えております。シヤウプ氏の税制改革の計画は、ドツジ・ラインの範囲内において矛盾を来さないように計画せられたものである。従いまして、このドツジ氏の計画を受入れるりと同じて、シヤウプ氏の勧告を政府は全面的に受入れておるのでございまして、ともに堅持されて行かなければならないものであろうと存じます。但し、ドツジラインを堅持して行く上におきましても、またシヤウプ勧告に基きまする税制を施行して行く上におきましても、その摩擦をでき得る限り緩和させるという施策を、政府は努力すべきである。しかしいずれにいたしましても、この原則と矛盾するものであつてはならない。かように考えております。
  69. 立花敏男

    ○立花委員 本多さんの渡米は、ドツジ・ラインあるいはシヤウプ勧告の摩擦を少くするという使命を帯びておるのかどうか。
  70. 本多市郎

    本多国務大臣 これは議会中に離れてはならぬというお話に対しても、お答えをいたしておきたいと思いますが、私といたしましても、国会議員としての責任もあり、ことにこういう重要な法案の所管大臣としての責任もございますので、そういうことを希望いたしております。私が固く辞退したにもかかわらず、これがきまつて来たのでございまして私も大臣として、総理大臣の指示にも従わなければなりません。出張をする場合、出張を命ぜられることになると思うのでございますが、こうした点は、でき得る限り事情を述べまして、さしつかえのないようにいたしたいと考えております。今回向うへ参りましたならば、シヤウプ博士には面会する予定になつているように聞いておりますが、ドツジ氏には今のところまだ面会するという予定は聞いておらないのでありまして、私どもは機会があればそのドツジ、シャウプ氏のみならず、日本の自治制の状況も行の者が向うに紹介し、向うの状態をよく視察して帰るというのが使命でありまして、何らドツジ・ラインあるいはシヤウプ勧告の緩和とか、あるいはこういうところに摩擦を多く生じているから、特にそのことを折衝に行くとかいうのではございません。しかし自然話はこの地方税制等については、向うからも一の審議模様あるいは実施の状況等について話が出ることと存じますし、また私も感じましたことは、お話することがあろうと存じますけれども、そうした摩擦を緩和するとかいうようなことを、交渉する意味で行(ということには全然関係がないことでございます。
  71. 立花敏男

    ○立花委員 きのうの夕刊によりますと、ドツジ博士の意見といたしまして、日本の労働者の賃上げは反対であという意見が発表されておるのであります。そしてドツジニラインの基本線を政府が実施なさつた過程におきまして、いろいろな摩擦なりいろいろな困離な事態が発生している。こういうことは率直に事態をお認めになれば明らかだと思う。しかもその線と同じであると本多大臣がお認めになつたシヤウプ勧告、しかもこれを従来の政府の公式の御答弁によりますと、これは政府は全責任を持つて、これは絶対正しいと信じて出して来たという御意見でございますが、もう少し率直に政府の薫感じているままをお述べを願いたいと思うのです。何となれば、私どもお聞きいたしましたところによりましても、今まで政府が向うと交渉なさうて、何ら実現できなかつた、これは周知の事実でございまして、そういう点についてどういうふうにお考えになつているのか。あるいは今具体的な点では、向うへおいでになりまして、シヤウプ博士にお会いになつても、具体的な話は出ないだろうとおつしやつたのでありますが、今までの公式の御答弁のように、今お出しになつている税法が完全に正しいという建前で、シヤウプにお会いになるのかどうか。そういう点をもう少し掘下げて率直にお話し願いたいと思います。
  72. 本多市郎

    本多国務大臣 私が今お答えできることは、できるだけ率直にお話をして、御了解願いたいと思うのでございますが、政府としては今提案いたしておりまする法案について、特にどの点についてどうということをシヤウプ氏に交渉するなんということは、今全然そういう意見考えも、また方針もないのでございまして、これはこの案をまとめます各段階におきましては、いろいろまとめるまでの研究的な意見として出ましたけれども、結局しかし全体的に見て、ここにおちつけることが最善であると、こういう結論になつた次第でございまして、この結論を出すまでの段階に現れたいろいろの意見をもつて、それを政府意見として、向うに交渉するというようなことは、行くまでにも政府ではそういうことがきまるようなこともないと思いまするし、今のところはそういうことはないと私も考えております。
  73. 立花敏男

    ○立花委員 大体渡米の問題に関しましては、これくらいにしておきますが、きのうから、あるいはけさほどから、塚田委員から新税は悪税であるというふうな御意見が出ておりますが、私自身は新税は必ずしも悪税ではないと考えております。それは従来におきましては、あるいはこの法案のように天降り的にきめられます新税であります場合は、そういうふうに悪税になるかと思いますが、民主的に決定されました場合は、決して新税は悪税でないと私ども考えております。本多さんのおつしやいますように、ドツジ・ラインとシヤウプ勧告の線が同一であるとするならば、すでにドツジ・ラインの線で非常に社会的に日本の経済状態は、混乱の苦い経験をなめつつあるのでありますが、シヤウプ勧告におきましても、やはりシヤゥプ勧告に基いてお出しになつたこの税法を実施いたしたといたしますと、非常に社会的な混乱が起る。ではないか、そういうふうに私は考えております。この点は特にきのうは勤労階級に対する負担の面をとり上げて御質問いたしましたが、史ようは中小商工業に対する負担過重の面をとり上げてみたいと思うのであります。  昨日御質問いたしましたように、今の改正案はシヤウプ勧告とほとんど同じである。この地方税の改正案を見ますと、ほとんど大部分が大衆課税なんでございますが、その次に注目したければなりませんのは、これは中小商工業者に非常に苛酷な税金であるという点だと思います。附加価値税について見ますと、これは塚田委員からも御指摘がありましたが、事業所得の中で法人、個人を合せまして五千億足らずの中で、個人の所得が約四千億あるわけです。従つて所得の八割以上が個人の負担であり、中小商工業者負担である。個人事業所得負担である。法人はわずかに八百四十億ばかりでしかない、これは総額にいたしますと五%ないし六%にしかすぎないわけです。かもこの少い法人の所得の見積りの中からは、次にこの中から差引かれます固定資産税所得額が約千三百七十倍に達しておりますが、この大部分はおそらく法人の事業所得の中から控除れるのてはないかと思います。現在の中小企業の企業経営状態から見ますと、新しい機械を多額の金を出して購入するということは、おそらく不可能でございまして。     〔菅家委員長代理退席、大泉委員長代理着席〕 むしろストックの投売り、あるいは機械の売掛いというような方向で、ようやく税金を拂い、この借金をまかなているという状態でございまして、新しい資産の取得ということは、おそく大企業に限定されると思うのであますが、それでなくてもいわゆる八割対二割のような所得の見積りに対しして、さらにその少い見積りの中ら、この大部分固定資産所得額が差引かれるのでありますが、こうなりますといわゆる附加価値税は、ほんとうに中小商工業者に対しては大きな重圧となつて来る。きのう見ました勤労者の重圧は最も大きいものでございますが、その次にやはり重圧をこうむりますのは中小企業者だということは、はつきりと政府自体がお出しになりました数字からも朗らかでありますが、この点でどういうふうにお考えになつておられますのか、ドツジ・ラインの旋風によりまして、中小企業が全国的に倒壊しつつあるのでございますが、やはりシヤウプ勧告によりましても、ういうはつきりした中小企業への圧迫が数字の上で明らかに現われておるのでございますが、この点をどういうふうにお考えになつているのか、こういう点を政府として何らか対策を講じられるおつもりはないのかどうか、これをお伺いいたしたいと思います。
  74. 本多市郎

    本多国務大臣 まことに答弁のしにくい問題のように考えまして、今考慮いたしておるのでありますが、結局中小商工業は、従来の税よりも負担が軽減するということで、御了承願うよりしようがないのではないかと存じます。さらにまた今回の税法が勤労者の負担であり、中小商工業の負担であるというふうに言われますが、今日の大衆、中小商工業、勤労階級というものをどの範囲にお考えになつて言われますかしれませんけれども、今日の税はこれら三者の負担なくしては、国家財政はとうていやつて行けないのでありまして、これは負担の均衡が問題でありましてその税負担をしてもらうということは、やむを得ないことだと考えております。
  75. 立花敏男

    ○立花委員 私は中小企業者にかけたらいけないと言つているのではございません。どの範囲かわからないとおつしやいますが。個人と法人とに事業所得をおわけになつておられますが、個人の事業所得と申しますのは、おそらく私は中小企業者じやないかと考えます。その意味で、その個人の事業所得全体の事業所得のうちの八割余を占めておるということ、このことを私は指摘しておりますので、決して中小企業者から税金をとつてはいけないと、私は言つているのではございません。法人がわずか二割くらいで、個人が八割だ、しかも全体から言うと法人の所得は五%ないし六%しかなつていない、ここに問題があるということを私は指摘しておるのでございます。本多さんの言われますようにこれで均衡がとれているのかどうか、私はおそらくこれは均衡のとれていない税金じやないかと考えます。  もう一つ本多さんは去年から減額されていると今おつしやつたのでございますが、今日いただきました資料によりますと、農業の附加価値税は約九十億と見積りまして、去年の事業税は約四百三十億、今年は四百二十億、十億しか総額において負担は減つていない。ところがこの四百三十億の中から、きよういただきました資料によりましても、九十億の農業の附加価値税は免除されているはずであります。そういたしますと去年よりはこの事業に対する課税は決して軽減されて、いない。去年は事業税を人口の半分を占めます農民を入れまして全体で四百三十億負担しておつたのであります。ところがその農民部分を引きました残りを今度は事業者全体で負担しなければいけない、こういうことになりほして、決して個々の事業者の負担は私は減らないと思います。この問題について御答弁を承りたいと思います。
  76. 本多市郎

    本多国務大臣 中小工業者も農業者も昨年に比較いたしまして、国税、地方税を総合して勘案いたしますと、相当の軽減になることだと考えております。その資料についての説明は次長から申し上げます。
  77. 荻田保

    荻田政府委員 この附加価値税の収入見込みは、個人と法人との比較だけの問題といたしますれば、確かにこれによりまして事業の方は八割程度が個人になつておりますが、この計算の基礎になつております勤労所得の方は、相当法八分が多いのでございます。今的確な資料がございませんから、数字を申し上げられませんが、御必要でございましたらあとで申し上げることにいたします。  それからもう一つお考え願いたいことは、従来の事業税は法人が赤字でございますから、法人に対してはほとんど課税されていないのでございます。従いましてその比較においては非常に個人の分担が減つていることになります。それから昨年度事業税と附加価値税との比較をおつしやいましたが、昨年は五百億であります。それでそのうちに新しい附加価値税が九十億とれると申しますのは、農業全体に対して附加価値税をとれば九十億とれる、従来もあなたも御承知のように農業に対しましては、主食に対する部分は除いておりますから、ほとんど農業に対する事業税というものはなかつたわけでございます。五百億のうちのおそらく五十億、もつと少い額が農業に対する課税であつたかと思います。
  78. 立花敏男

    ○立花委員 勤労所得の問題をお話になりましたが、勤労所得の問題は、昨日御質問を申し上げて大体おわかり願つたと思うのですが、これは大部分が勤労者に転嫁されるということは、もう自明の理だろうと思うのです。政府自体といたしましても、これが勤労者に転嫁されないという何らの対策もお持ちになつていないしま、た明確な御説明もないわけでございまして、これはどうしても勤労者の賃金に実質的にあるいは名目的に影響して来るものだろうと私ども考えております。あるいは労働強化といたしまして、あるいは厚生施設費の減少といたしまして、どうしでもこれは労働者の負担に転嫁されて行くというふうに考えております。その点で政府にそういう形では絶対にこれは転嫁されないという何らかの対策なり、御意見がございましたら、納得の行くまでお聞かせ願いたいと思います。私どもこの点は勤労者の負担に転嫁されると考えておりますので、附加価値税は勤労課税であるといつても、過言ではないということはきのう申しました。その残りの中小企業の問題を、今日は御質問しているのでありますが、今言いましたようにこれは明らかに個人の事業負担が八割で、法人の事業負担が二割ということが数字の上ではつきりしておりますので、こういう考え方税制をおきめになりますから、いわゆる新税は悪税であるという言葉に当てはまるような税金が生まれて参ります。これをもし逆になさいましたならば、決して新税は悪税でないと私ども考えております。こういう点をもう一度明確に資料をおつくりになられまして、お考え願いたいと思います。特にさいぜんも指摘いたしましたが、固定資産税の取得、あるいは赤字附加価値の五箇年間の継続軽減というような問題は決して個人の事業者には当てはまらない問題だろうと思うのであります。そういう点でここに出ました数字よりも、さらに低目な負担が法人の事業所得になるのではないかと私ども考えるのであります。そのほかに附加価値税におきましては、特に中小企業に対する重圧の面がたさんございます。これはあまりこまかくなりますので、個々の質問の場合にやつた方がいいかと思いますので、項目だけをあげておきたいと思います。たとえば控除式による附加価値額の算定でございますが、控除式に上りますと、これはどういたしましても中小企業には有利でない、大企業は抵除式の方がはるかに有利だ、たとえげ控除式によりまして広告費やあるいは宣伝費、あるいその他のいろいろな各項目にわたりまして、控除いたします場合には、やはり正式の出納簿、経理簿を用います、あるいは特別の計理士や専門家がおります大企業が、非常に有利になることは当然考えられます。そういう意味で控除式の方法自体が、中小企業には非常に困難がある、不利であるということが言えると思います。それから免税点の問題でございますが、これは特にお考えを願いたいと思うのでございますが、たとえば地代、家賃などは出す方は税金がかかるが、入る方には税金がかからないことになる。それから公租、公課でございますが、所得税住民税には税金がかかる建前になつている、こういうことはやはり中小企業の立場から申しますと、どうしても地代、家賃は拂う方の立場であると思います。大企業から申しますと、幾らかでも拂う方よりは地代、家賃の収入の方が多いと思います。そういう場合に拂う方には税金がかかつて、受取る方、收入の方には税金がかからないという形は、どうしても私は中小企業に不利だと思います。その他機械の購入の問題にいたしましても、機械を売る必要の方が今中小企業には多いのでございます。資産を売り拂う必要の方が多いのでありますが、資産を売り拂つた場合に税金がかかりまして、取得した場合に税金がかからないというのは、やはり中小企業に不利ではないか、あるいは赤字附加価値の場合におきましても、赤字を正式に地方自治団体などに承認さすという形ではつきりと算出をし、はつきり書類に残し得ますのはやはり大企業ではないか、たとい赤字附加価値に相当する部分がありましても、これは中小企業ではそういう正式に認めさせて、附加価値観から引くという形はなかなか出せないのではないか一こういういろいろの点から考えまして、附加価値税は中小企業には、非常に大きな重圧になることが当然考えられるのでありべます。この点をぜひとも考慮される必要があるのではないか。本多さんはドツジ・ラインとシヤウプ・ラインとは同じだと言われますならば、ドツジ・ラインを政府が実施なさつた結果起つヒおりますところの中小企業の崩壊の事実とまたそれに輪をかけたような形で、いわば首つりの足をひつぱるような形で、こういう新税をおつくりになりましたならば、それこそ全国的な混乱が巻き起りまして、全国的に中小企業の崩壊が起るのではないか、そういうふうに考えますので、もう一度この点をお考え直し願いたいと思うのでございます。その点でもう少し詳細な御意見を承りたいと思います。
  79. 本多市郎

    本多国務大臣 実はあまり詳細に答弁する準備がないのでございますけれども、概念的にお答えをいたしますと、さいぜんお話のありました附加価値税が、寄せ算計算によれば賃金が寄せ算の中に加わる関係で、これが対象になつているように感じられるのでございますけれども、どこまでもこれは賃金そのものでなく、附加価値の中に賃金が含まれているのであつて、そうして納税者は事業主であるという点から、賃金そのものに対する課税でないことは明らかでございます。しかしこれがまつたく影響しないかという点になりますと、これはお話の通りだろうと存じます。避くべからざる営業費が増加したというような場合と同じ意味合いをもちまして、会社の支出するあらゆる経費に影響を及ぼして行きますから、その関係においては賃金にもその影響があるものと考えて行かなければならぬと存じます。さらに法人と中小企業において、この税法が実施される場合不均衡を生じはしないかというお話でございますが、同じ税法の適用でございますから、この両者の間に調査、あるいはこのいろいろな評価あるいは附加価値課税標準の決定等に、不均衡を生じてはならないのでありまして、それにはそういうことのないように基準等を決定し、さらに地方庁に対しましても、十分に指導をいたして行きたいと考えております。
  80. 立花敏男

    ○立花委員 賃金部分に対する課税の増大は、不可避的な他の費用の増額と同じように、勤労者に転嫁されることはやむを得ないだろうとおつしやいましたが、この問題はもう少し具体的にお考え願わないと、そういう考え方では非常に事態を甘く見るのではないか。この税法によつて巻き起つて参ります摩擦と混乱を看過されるのでは、ないか、そういうふうに私ども考えます。これは特に人件費に対してかかつて来るということは、事業者ははつきり知つておるのでございまして、その人件費をいかにするか。たとえば四%の附加価値税がかかつて参りますと四占減らせばいいんだ、あるいは百人おりますところならば、四人首を切ればいいんだという形で、必ず勤労者の部分に転嫁されて来るだろう。その対策をはつきりお考えになつて税法をお出しにならないと、思わぬ結果が巻き起つて来るのではないか、私どもそういうふうに考えます。し院かもドツジ・ラインによりましても、あるいはシヤウプ勧告によりましても、政府がおやりになるところを見ておりますと、私どもどういたしましてもやはり企業の合理化、企業整備ある心は労働者に対する圧力が一つのねらいになつ、ておるのではないかという、ふうに考えるのでこざます。これは一昨日でございましたか、塚田委員からも御質問がございまして、なぜこんな皮肉なと申しますか意地の悪い地方税をつくるんだ、何らか特別に含むところがあつてやつたかというような御意見がございましたが、明らかに私は——これは本多さん個人のいわゆる行政整理大臣としての立場から言つておるのではありませんので、そういうふうな施策の根本精神が、やはり労働者にこの負担を転嫁する。あるいはこういう税制のねらいどころは、これによつてやはり企業整備あるいは人員の淘汰、そういたしまして人件費を軽減いたしまして、資本構成率を高めて行く、そういうところまでねらつているのではないかと考えられますので、これは本多さんの言われますように、他の一般的な費用の増高と同じような種類のものだというふうにお考えになられましては、非常に困るのではないか。特に労働行政、社会行政で困つて来る面があるのではないか。私どもの観念からいたしますと、そういうところまでこまかくお考えつて、そういうところに対する具体的な御意見も私どもに発表していただきまして、それを私どもと討論の上で、政策をお立て願いたいと思うのでございます。
  81. 本多市郎

    本多国務大臣 いろいろと影響するところを御研究くださいまして、御注意いただいたことはありがたいことと存じますが、その加え算の方の計算方法は、これは理解を早めるために、また計算を簡便ならしめるために発表いたしたものでございまして、賃金を附加価値の内容とするということをもつてそこへ明示いたしまして、もつて人員の整理等を促進するとか、あるいは圧迫するとかいう考えは毛頭ない次第でございまして、どうかひとつこの点は一般においても計算上の便宜のために、さらにまた附加価値の内容の理解を早からしめるために、そこに二通りの概念を示したものであるということを了解していただくように、努めたいと存じます。
  82. 立花敏男

    ○立花委員  大臣が言われますように、これは決して二つの概念ではありませんので、ここではそういうふうに出ておりますが、実際上具体的に申しまして、一つの資本家に税が加重されました場合、それを解消いたしますのは製品の値段を上げるか、あるいは労働者の賃金に転嫁するか、賃金に転嫁するという問題の中には、もちろん家質賃金の問題がありまして、労働強化、いろいろな首切りの問題が含まれておるのでございますが、製品の値段を上げるか労働者に転嫁するか、この二つしかないと思います。そういう意味でこれはきのうも申し上げましたが、すでに安本が言つておりますようにあるいは社会情勢から見まして、物価に転嫁する方は、購買力の減退から申しましてもおそらく不可能であろう。従つてどういたしましても資本家に負担となりますものは労働者の負担に転嫁しなければ、他に方法がないというような現実の事態から申しまして、私どもはこの賃金部分の圧迫になつて来るという結論を出して、具体的に御質問申し上げております。決して概念の上で二つにわかれておるからというわけで、御質問を申しておるのではありませんので、この点をひとつお含み願いたいと思います。それからこの問題に関連いたしましてシヤウプ勧告の中には、個人的な消費を社会的な消費に切りかえるんだ日本人には金を持たして個人的な消費をさせますと、日本人は政治的に高まつていないから、いらない奢侈品を買つたり何かいたしまして非常に濫費をやるから、この部分を税金で吸収いたしまして、そうして社会的な消費をやらすんだ。だから減税して個人消費をやらすのではなしに、増税いたしまして生活費の部分まで食い込んで、そうして税金を取上げて、それを社会消費として地方自治体にやらすというふうに、シヤウプ勧告書の中にあるのでございますが、こういう点を本多さんといたしまして、どういうふうに考えておられるのか。現在の地方住民の生活からいたしまして、そういち余裕があるかどうか、あるいはたといあるといたしましても、増税の形で地方自治団体徴收されました税金が、はたして社会消費という形でこの美しい名前で、地方住民の生活にもどつて来る見通しがあるのかどうか。私どもが見ますところでは、一旦巻き上げられました税金は、おそらく住民の生活とは縁の遠いところへ行つておるのではないか。一例を申し上げますと、本多さんが壷岐、対馬を御見学なさいまして、萱岐、対馬へ十八億の金をお入れになるという発表をなさつておられますが、これは住民の生活とは縁の遠い問題ではないかむしろ住民は十八億もの金があるならば、もつと身近な日常の生活の方にまわしてほしいということを念願しておるだろうと思うのであります。一旦増税されて地方税なら地方税で入りましたものは、決して住民の生活のところへ返つて来ないのが建前だと思います。中央の予算を見ましても、地方予算を見ましても、あるいは今あげました一例によりましても、そういう傾向がはつきり現われておるのでございます。シヤウプ氏が言つております個人の消費を税金で吸収いたしまして、それを社会消費の形で個人の生活に還元するんだというこのお考えを、地方税法の中に盛り込んでおられるのかどうか。盛り込んでおられるとすれば、これに対する具体的な説明をお願いしたいと思います。
  83. 本多市郎

    本多国務大臣 シヤウプ勧告の中にそういうことがやはり理念として述べられておることを承知いたしておりますが、個人にまちまちに消費させる方が社会政策的にもいいか、さらにまたこれを地方自治体が税としてとつて消費した場合の消費価値の方がいいかという点でありますが、これはシヤウプ氏の言われました通りに、やはり私は市町村が税としてとつたものが、その市町村の最も身近な消費となると考えております。給料にいたしましても、公共事業費その他の施設にいたしましても、その自治体自体としては、最も身近なところに消費されるのではないかと考えておる次第であります。なお対馬の話がありましたが、対馬には視察には参りましたけれども、十八億という巨額な国費なんというものは、今全然まだ計画をされておらないのでありまして将来の計画として長崎県の示した理想的な数字にすぎないのであります。ただいまの問題はそういう心持をもつてこの税法全体がとりまとめられておるものと解釈いたしております。
  84. 立花敏男

    ○立花委員 理念とおつしやいましたが、私どもは決して理念のいいか悪いかを問題にしておりませんし、触れたくないのでありますが、実際現在すでに明日の米も買う金がない、配給物をとる金がないという場合に、そういう考え方で個人の消費を節約して、それを税金として取上げるということが一体できるかできないかということが問題だと思うのです。しかも取上げた税金をはたして今までの日本の成績から見まして、今後といたしましても、それを住民の生活に還元し得るような政策がとれるかどうか。この問題だと思う。決して理念としていいか、悪いかということではない。それはたとえばある外国のように、私どもの十倍も給料をもらつており、数倍のカロリーをとつておるところでは、そういう個人消費を節約して税金でとることもできるかもしれませんが、今の日本の状態におきましては、個人消費をこれ以上節約してとるということはおそらく町できないと思う。それから中央、地方を通じでの予算の使い方を見ましても取上げられた税金が決して住民の手へ返つて来てない。そのことはすでに現在だんだん破局的な生活に陷りつつあることを見ても、明らかだと思う。今までこのことがやられておりましたならば、戦後において多少の生活の改善はあつただろうと思いますが、最近においては生活の改善どころか、改悪の方が強くなつて来ておるということから考えましても、決してこれは還元でき得ないという考えを持つておりますので、理念としてではなしに、そういうことができるかできないかということをお尋ねいたしたいと思います。
  85. 本多市郎

    本多国務大臣 これは消費の社会経済に及ぼす影響だろうと思いますが、個人がまちまちに消費をする場合に、非常な事後的な偏した消費ということも考えられますが、公共団体がこれを消費する場合は、社会経済に及ぼす影響も、個人のまちまちの消費の場合に比べまして、いいのではないかと考えられます。但しごの問題は消費の効果についての御議論でありまして、今日の場合重いけれども、ここまでは税金を出していただかなければならぬという負担力の面から考慮いたしまして、この税制はとりまとめてあるものでございます。
  86. 立花敏男

    ○立花委員 今の言葉は非常に重要な言葉でございまして、そういうお考えだからこういうひどい税法をおつくりになつただろうと思う。国民の生活を勘案いたしまして、あるいは中小企業者の経営状態を勘案いたしまして、これだけの税金がとれるからとるというのじやなしに、これだけ出してもらわなければならないからとる、建前ということを、今大臣がおつしやつたのたと思いますが、そう確認してよろしゆうございますか。
  87. 本多市郎

    本多国務大臣 負担力も考えてということを申し上げたのであります。
  88. 立花敏男

    ○立花委員 負担力を考えるということでございましたならば、おそらくこういう税法はできないだろうと思いますが、それは水かけ論になりますのでよしておきます。  今附加価値税の問題をやつたのですが、その次に固定資産税の問題ですが、これもまた中小企業者に非常に圧力になるのではないかと私は思うのです。と申しますのは、土地、家屋の大消費者でございますと、これは他に転嫁できますので、これは固定資産税もトンネル式に、使用しております者から地代、家賃として、あるいは小作料としてとれると思いますが、そうではなく、自分の土地、自分の家屋を持つております者は、おそらくこの税にはたえられないじやないか。本多国務大臣負担力を考えてとおつしやいます。が、自分の家屋を持ち、それを商店として、あるいは工場としてささやかに生活をやつておる者も、現在は税金が負担できないというような事態に立ち至つておると思います。こういう者に他に転嫁できない形の固定資産税がかかつて参りますと、もうその人々は持つておる土地、家屋、あるいは工場、店舗というものを売り拂わなければ納税ができないじやないか。私どもそういうふうに考えるわけであります。この点で非常に大きな重圧が中小業者に来るのではないかと考えるのでありますが、この点どういうものでございましようか。
  89. 本多市郎

    本多国務大臣 この税法適用の結果、自分で土地、家屋を持つておる者よりも、持つていない方が税金については得であるというふうにはならないと思います。税法を修正することがかえつて利益だというところまで行つては、これは税のとり方の不均衡であると考えます。この税法ではやはり目分の土地、家屋を持つて生活する人の方が、それだけ借家でおるよりも実際は利益だろうと思います。但し各個人の生活は、その経済力を勘案いたしまして、適正規模でなければむりが来るということは当然でありまして、まつたく親譲りの不つり合いな大邸宅に入つて、収入がきわめて少いというような場合には、これはどういうときでも生活にむりが生じて来るだろうと思うのでありますが、この税は決して土地家屋を所有するのにたえられないほどの税ではなかろうと考えます。
  90. 立花敏男

    ○立花委員 この程度の税と簡單におつしやいますが、現在でもすでに負担ができなくて、中小企業者は御承知のようにたくさん破産あるいは生命の危険にさらされておるのであります。この三倍半にもなる土地家屋に対する固定費産税を、それほどの税金でないというふうに簡単にお片づけになりますのは、これはあまりに軽卒ではないかと考えます。さいぜんからの御答弁を聞いておりますと、やはり現存の苦しい業者あるいは勤労者の生活を十分に把握なさつていないのではないか、これぐらいならとれるというようなお考えが先に立つておるのではないかと思う。それともう一つ、これはさいぜん大臣が修正されましたが、これだけいるんだから、どうしても出してもらわなければ因るというお考えが先に立つておるのではないか、私はそう思うので、こういう点をやはり考え直していただきまして、現実の業者の状態、あるいは勤労者の生活の状態、その担税力を基礎といたしまして、実情に即した税制をお立てになるようにお願いしておきます。それから固定資産税につきまして、私最初から疑問に思いますのは、この事業用の償却資産の問題であります。この一兆三千億の土地家屋と同じ資産価格である償却資産が、収入見込額だけは九十三億減つております。これはどうしても私には不可解なんです。この点、たとえ御説明で納得したといたしましても、あとに重大な問題が残ると思います。これはやはり中小企業者に非常に大きな圧力になつて来るのではないか、この収入見込額の大部分が、大所得者でなしに中小企業者の負担になつて来るのではないか、小さい正直なものに課税され、出した者はばかを見る、とる方から言いますと、とれるところから輝けとるという形がはつきりこれに出て来るのではないか、私どもはそういうふうに考えるわけなんです。もちろんその場合にこれは御説明がありましたから追究いたすのもどうかと思いますが、この捕捉率が五二%で徴收率が八〇%、合計いたしまして課税標準となるものの四割しかとれない6これはどうしても私ども納得がいきません。これはやはり何とかなさらないと、それこそこの点でまつたく自主性をなくした税金であるということが、はつきり言えると思います。しかもそれが特に大資本家に有利な面で自主性をなくしておられる。この点はもう少し何とかなさらないと、私ども決して承服することはできな、その問題はまた後ほどやるといたしまして、とにかくこういう形で、課税標準になるものの四割しかとれないというふうなものをおきめになりますと、その結果といたしまして、どうしても弱いものいじめになる。強い抵抗力のあるところからはとらないで、結局抵抗力のない小さいところからとるという形が、必ず生れて参りますので、この收入見込額の九十三億は中小企業者の負担になるのではないか。この点はどう強弁されても事実となつて現われて来るのではないかと思うので、この点を御説明願いたいと思います。
  91. 本多市郎

    本多国務大臣 結論乏いたしましては、そういうことの起らないように、十分市町村において努力して竜らわな写れぱならぬと考えております。大きな会社におきましては、償却資産もたなおろし等をやりました資産表に漏れなく載つておるわけでありまして、これをいかに評価するかということにつきましては、資産再評価表による再評価額の限度に指導したいという考えでありますが、この方法によりました場合と、個ス資産との間に不均衡を生じないように評価基準を出したいと考えておりますしかし、資産再評価の価額は、その法人の任意にきめるところでございますから、必ずしもこれと権衡を保つことはできない場合が生じて来ようかと存じます。今日の方針は、大体におきましてこの再評価のをきになるべくこれを多額に評価して、償却費を多く計上して行きたい、そうして経費を多く出したいと希望して駆るのでございますが、一面固定資産税がそれに伴つて高くなるということで牽制を受ける立場になつております。そうした点から、この牽制を多くしたいという法人の希望とで、調整のとれたところにおちつくのではなかろうかという考えであります。また個人の固定資産につきましても、固定資産調査員等を設けまして、不権衡のないようにこれを査定せしめ、しかもその査定した固定資産課税標準を一定期間住民に閲覧せしめまして、不権衡な場合の指摘がありましたならば、さらに研究して是正して行くという方法もとることになつておりますので、そう極端な間違いは起きない、支障を来すほどの間違いはないであろうと考えております。
  92. 立花敏男

    ○立花委員 少しこまかくなりますが、大臣が言及されましたので一言いたしておきたいと思います。固定資産評価であります。評価員の決定あるいは固定資産評価審査委員会でありますが、あれの委員は市長の選任になつておるのでありますが、あれはぜひ公選にしていただきたい。リコール制を含めます公選にする必硬があると考えます。特に今言いましたように、四割しかとらない。しかもその大部分が中小商工業者のような弱いものいじめになるおそれがある場合は、特に評価員を公選制にする必要があると思います。もし万一、従来のような天くだり的なきめ方により大固定費産を持つておりますものの代表が、評価員となつて参りました場合は、さいぜんから指摘しておりますこの九十三億のほとんど大部分は、小さいところへ転嫁されることは明かだと思いますので、これはぜひ公選にしていただきたいと思います。  もう一つこの問題と関連して触れてきたいと思い、ますのは、固定資産税の超過した部分配分の問題で、地方財政委員会が中央でこの問題を決定するということになつておりますが、これも固定資産評価員あるいは審査委員会が公選制で、真に民主的なものが地方に確立されておりましたならば、それと合同の委員会とか、あるいはそういう形で地方で自由的に決定できるではないか、そういうように考えますので、さいぜんの固定資産の許価員の問題とあわせまして、これはどうして場もやつていただきたいと考えます。  それと関連してさらに二言いたしてきたいと思います。今度地方税制の改正の中に、地方財政委員会のような形のものの地方への干渉がたくさん出て来ておりますが、これは地方自治を重するという建前から、なるだけ廃していただきたい。地方の民主的な機決定するようにしていただきたいと考えますので、この点大臣の御意見を聞きたいと想いまする
  93. 本多市郎

    本多国務大臣 固定資産評価員は、これを決定する機関でないので、調査いたしまして十分説明のできるような人でなければならぬと思います。従つて固定資産評価ということの経験を有し、しかも公正に事務を執行し得る人格者を選ばなければならぬと思うのであります。それだけの人を市町村長が推薦いたしまして、地方議会の承認を得て決定すれば、それで選挙の方法によらなくても十分ではないかと考えております。さらに地方財政委員会地方団体に対する干渉を最小限度にしなければならぬという御趣旨は同感であります。今回の地方財政委員会設置法に予定いたしておりますのも、その趣旨を十分勘案いたしておる次第でございます。二つ以上の地方団体にまたがる場合、どうしても調整するために府県知事あるいは地方財政委員会が、その段階によつて必要やむを得ざる調整のために触れるのでございまして、全然同趣旨で法案を準備いたしておる次第でございます。
  94. 立花敏男

    ○立花委員 それから中小業者に対する圧迫と申しますのは、市町村民税の場合にもはつきり現われていると思う。第一、市町村民税が法人に対する所得課税をお抜きになつているという点からも言えると思います。その他」ろんな点から言えると思うのですが、とにかくそういうふうに今度の地方税は、中小企業者に対する重圧が勤労者に対する重圧に次いで非常に大きい、こういうことから生じます結果は、結局中小企業者が大企業者に対して、ますます競争力を失つて行く形がはつきり現われて来ると思います。今度の地方税におきましては、その他にも業体の問題からいいまして、たとえば国鉄には免税されておりまして、それに伴いまして私鉄との競争関係の問題が起つて来るというような問題もございますが、今言いましたように、中小工業者に対する税金の圧力が非常に大きくなつて参りますので、その点から申しましても、中小企業者は大企業者に対して競争力を失つて来る。従つて必然的に中小企業者の没落を早めるという形が出て来ると思うのですが、こうい点に対しまして対策をお持ちになつているか、またどういうようにお考えかお聞かせ願いたいと思います。水量国務大臣これは負担均衡の問題でございましてとの税法の程度で均衡のとれたものと考えているとお答えするほかはないのであります。但し国鉄と私鉄の関係における地方税負担は、これは一方は国営でありますために、国鉄は非課税ということになつておりますが、これにつきましても、地方財政基礎を強化するという意味から、将来は研究して行きたいと考えます。
  95. 立花敏男

    ○立花委員 本論に入りたいと思うのですが、今度の地方税は勤労者と中小工業者に非常に負担が重加されて来るということは、私ども政府がお出しになりました資料で毒見できると思うのです。ところがこの重加の程度は決し宅政府がお出しになつている数字にはとどまらない、このことはもう何回も他の委員の方も、部分的に指摘なさつておられますが、やはりこれは根本的にもつとはつきりと解明しておかなければいけない問題ではないかと思いますので、この点をこれからひとつ解明してみたいと思います。この問題は私前にも少し触れまして大臣から四百億の地方税の増徴、あるいはそれから出て参ります地方税の收入見込額と申しますのは、これは実際これだけとれるという数字ではなくして、平衡交付金を配付するための参考的な額なんだというふうにおつしやられましたが、この点をもう一度明確にしておきたいと思います。ので重ねて御答弁をお願いいたします。
  96. 本多市郎

    本多国務大臣 政府といたしましては標準税率でありますから、全部この標準税率課税することは考えませんけれども、平均いたしまして大体この徴收見込額に達するものと考えております。
  97. 立花敏男

    ○立花委員 どういう根拠でそういうことを断言できるのかどうか、もう少し具体的にその根拠をお知らせ願いたい。
  98. 本多市郎

    本多国務大臣 今日まで税法上のわくが狭小でありましたために、標準税率を超過しておるところもあつたのでございますが、しかし今度の税法の改正によりまして、財源のわくが拡張をせられたということ等も勘案し、大体下をとるところ、上をとるところがあつても、この程度ではないかと思つております。しかし制限税率の範囲内において、その地方住民負担をいとわず、何か施設をしなければならぬような町村におかれましては、標準以上になるところも生じて来るのでございまして、政府としてはそういうことも勘案いたしまして、財政計画はどの程度に納まるものと予定いたしておるのであります。
  99. 立花敏男

    ○立花委員 覇非常に今までの地方税の実態に対しまして、御認識がないのじやないかと思う。それは現在でも、標準税率を超過しておるところもあつたというふうなお言葉でございますが、むしろ現在では、標準税率を超過しておるのが普通ではないか、これは大臣もお認めになると思う。現在でも標準税率を超過しておる。しかも地方財政が増加されたと申しましても、きのう荻田次長がおつしやいましたように、これは大部分上からのひもつきでございまして、地方の自由に使えるという意味で、地方財源は余裕がついたのではない。そういう意味で、決して地方標準税率を越えてとらないという保障はどこにもないと思います。大臣は今上をとるものもあるし、下をとるものもあるだろうから、平均して標準だ、そういうふうにおつしやられましたが、それは実態から故意に目をそらした、いわばりくつの上の観念だけのお考えじやないかと思うのです。こういう点を考えまして、決して私ども標準税率で満足するものではない。これはこの間の答弁と、大臣のきようの答弁は大分違うのでございますが、あくまでも標準税率と申しますものは、平衡突付金をお出しになるための税率であるということは、これはこの法案の第一條の総則にもお書きになつておられます。従つてこれはあくまでも平衡交付金のための標準税率である。そういうことから考えまして、実際土はおそらく制限税率一ぱいまでとるのではないか、私どもそういうふうに考えるのでございます。そういうことを勘案いたしまして、少くとも国民の代表として責任を持ちまして、この税法を審議いたします以上は、最悪の場合を予想いたしまして、制限税率で、ぎりぎり一ぱいとつて、幾らの予算になるか、幾らの徴税になるかという数字をお出し願いたいということを、私ども数回前の委員会速記にもとどめていただいて、御要求しておるのでございますが、まだこれをお出しにならない。これはお出しになりにくいかとも思いますが、これをお出しにならないと、私どもは具体的な審議もできませんし、また国民に対して十分な審議の責任を果したということもできないと思う。特に問題になります附加価値税におきましては、これは大泉委員からもさいぜん言及いたしましたが、制限税率を撤廃なさるお考えはないのか。四分といいましても、実は八分までとれるのだ、おそらく八分までとれるところが多いのだということが予想されます場合に、私ども政府がお出しになりました標準税率だけの額で審議を続けることはおそらくできないと思う。だからどういたしましても、私どもは再び制限税率による見積りをお出し願いたい。そうじやないと、私ども審議ができないと思います。この問題は、決して附加価値税だけの問題ではございません。住民税におきましても制限税率がございますし、あるいは固定資産税におきましても、この二十五年度は百分の一・七五でございますが、来年度からは百分の三という数字がございますので、これはどういたしましても、やはりはつきりと制限税率の場合には幾ら、標準税率の場合は幾らというふうな数字をお出し願いませんと、私どもは十分な責任を持つて審議ができないのではないかと考えます。この点についての御意見を伺いたいと思います。
  100. 本多市郎

    本多国務大臣 政府といたしましては、制限税率ぱいの税が取れるということは予想いたしておりませんので、そうした資料をつくつてお上げすることは容易でありますけれども政府としてそういう印刷物をお上げいたしますと、これがまた地方団体を心配させるもとになつてもいけないと思つたので、遠慮いたしておつたのでありますが、今のお話の制限税率を一ぱいとつたら幾らかということはお上げいたしておりまする資料で、きわめて間單に計算できることでございますから、どうか必要がありましたら、御自分で御計算になつていただきたいと思います。
  101. 立花敏男

    ○立花委員 遺憾ながら私は算術がへたなのでございまして、その計算の仕方を教えていただきたいと思います。数字をお出しになるのがごめんどうなら、こういうふうに計算しろという、その方法を教えていただきたいと思います。
  102. 本多市郎

    本多国務大臣 そういうことを事務当局からお知らせしてもけつこうですが、附加価値に対して四%かけている課税に対しては八%かけ、一三%かけているものに対しては六%かければすぐに出ます。固定資産税は本年は定税率でございますから、その通りにいたしますが、来年度の制限税率一ぱいは、百分の三をかけていただけば出ます。それから住民税についてもそれぞれその所得割の百分の十八を百分の二十とかけ直せば出ますので、計算方法はなれた者から事務的に御説明申したいと思います。
  103. 立花敏男

    ○立花委員 そういう簡単なものをなぜ今までおやりにならなかつたのか。この問題はそれほど簡単な問題ではないので、最悪の場合を予想して私ども税法を審議いたしませんと、かけられてから、お前たちこんなものをだまつてどうして通したのかということになりまして、とんでもないことになると思います。今自由党の方が問題にされております附加価値税にいたしましても、標準税率の四分ですら、あれだけの問題になさつておられますので、これが八分になればたいへんな問題になると思う。それを私ども地方議会があるからかけられないであろうというような、簡単なことでは審議を進めることはできないと思う。ですから、具体的にそういう簡単にお出しできるならば、すぐ出していただきたいと思います。附加価値税の問題にしても、決してこれは小さい額ではございませんので、本多さんが今おつしやいましたように、四分のものを二倍にしろ、三分のものを二倍にしろとおつしやられますと、結局四百二十六億の二倍で八百五十三億になるだろうと思いますが、四百三十億のとり過ぎが附加価値税だけで出て来るわけでありまして、全体を見積りまして、おそらく一千億になるのではないかと思うのでありますが、こういうような問題を簡單なこととして放つておくことは済まされないと思います。しかもそういうことは地方議会にまかしておいてよいの礎ということで簡單に婆せられ在と憂いますから、すぐお出しできるものなら、出していただきたいと思います。そういたしまして、実際にこの地方税地方税法通りとりましても、おそらく一千九百億にとどまらないで、三千億になるのではないかという見通しを持つておりますので、新しい資料を出してもらいまして、その新しい資料でう一度各委員検討する必要があろうと思います。この点を御答弁願いたいと思います。
  104. 本多市郎

    本多国務大臣 制限税率一ぱいで全地方団体がとるということも予想いたしませんでしたし、またゼロに近い最低税率でとることも予想しておらなかつたのでありましてこれはその中間の標準税率でかけたものをお上げすることが、税の見込み收入額と一致するところであり、むしろ御審議上便宜であるかと思つてお出しいたしておるのでありまして、ただいまのお話の通り計算方法についてはあとで事務的に御相談いたしたいと思います。それによつて正確な数字は出るわけでございますから、御了承願いたいと思います。さらにこの標準税率というものは、平衡交付金算定のために設けたのではないわけであります。税の実収見積りとしては関係ないものではないかというお話でゼざいましたが、実収の見積りとしても、この標準税率をもつて出すことが適当であり、その見積りと一致するところの税率をもつて平衡交付金法の標準徴収額を算定することが、これまた実情にあてはまるものであると考えられます。これは両方とも意味を持つているわけでございます。
  105. 塚田十一郎

    塚田委員 ちよつと関連して伺いますが、立花君が盛んについておられるのですが、私これは非常に重大だと思います。これは全部の府県が制限税率なり、附加価値税をかけるとも思いませんし、全部の市町村が風定資産が制限一ぱいで行くとは思わない。だからそういう点を頭に置かないで、一応考えておられるという大臣の御答弁なのですが、そういう御答弁を聞くにつれても、私どもはこの間ちよつと申し上げましたように、今度の新しい税による収入歩合が各府県一もしくは市町村によつてどういうぐあいになるかということがわからないと、まつたくこの税法については自信がないのです。必ず府県もしくは市町村によつて、その制限のところまで行かなければやつて行けないところが出て来ると思う。そういうところをどの府県が大体この税率で行つてどういう収入になるか。市町村といつても一万何千の全部の市町村ということは行きませんが、大体このくらい、そうして今までの收入状態はこのくらいである。この程度開きならば、今の平衡交付金で、こういうふうに救済できる見通しがあるのだということがなければ、やはり制限税率がとられる場合というものを、当該府県もしくは市町村の場合については考えておかないと、全体としてこれで行けるのだというような考え方は、非常に不親切な考え方だと思います。そういう意味資料はぜひ出していただかなければ審議が進められないと考えるのであります。ことに平衡交付金法が出るまでには、そういう関係資料はぜひお出し願つて、納得の行くところで審議をして行きたいと思います。
  106. 本多市郎

    本多国務大臣 資料については今お話申し上げた通りでありまして、附加価値税は倍になると考えても、いのですし、所得割の点は一〇%ふえる。そういう意味で計算していただくと、すぐ出ることでございますから、計寡でさましたら、私の方からお渡ししてもけつこうでございます。ただいまのお話によりますと、ある町村によつては制限税率まで、すべての税を一ぱいとらなければ、財政需要がまかなえない町村が出て来はしないかというお話でございますが、標準財政需要に関しましては、標準的な施設をするのに、標準税率で曲つただけでまかない得る程度に、平衡交付金がその少いところには行くわけでありますから、大体においてそういう場合は起きないと思いますが、その地方団体において、特別にみずからの負担を顧みず、何か施設をしようという熱意を持たれます場合におきましては、そういうことも起きないとは限らないと思いますけれども、これはすべてについて考えることのできない場合であると思います。
  107. 塚田十一郎

    塚田委員 もう一点伺いますが、ただいまの大臣の御答弁のように、平衡交付金というものが予算のわくを持たないで、出て来る場合にはおつしやる通り出ると私は思う。しかし一応千五十億という予算のわくがあつて、それをある比率によつてわけるといろ場合には、必ずどこかに今までよりぐあいの悪いものが出て来る。こういうふうに抽象的に考えざる得ない。大体今度の平衡交付金のわけ方は標準支出と標準收入のあの考え方から行けば、あそこから出て来た差額というものは、必ず地方財政においても千五十億が二千億になろうとも、それおけは必ず補つて行くんだという前提がなければ、私は出て来ないと思う。その辺、あの千五十億というわくをまず押えておいて、あとこの範囲でわけて行くんだということになると、私は大臣のお考えになつておるように、そう簡単ではないかと考えておりますが、ぜひこの府県別の資料をいただきたいと思うのであります。
  108. 荻田保

    荻田政府委員 団体別の税の異同の資料は、たびたび要求されまして出しませんのは非常に相済まぬと思います。初めは非常にむずかしく考えまして、附加価値の計算などが非常にむずかしいものですから、非常にかた(考えておつたわけでございますが、こういう御審議の状況でございますから、何らかの方法をもちまして、明日中にでも府県分だけはお出しいたしたいと思います。
  109. 立花敏男

    ○立花委員 私も文書で要求しておいたのですが、市町村別をひとつお願いしたいと思います。  それから第二に御質問するのですが、半衡交付金というものは、地方の不足を全部まかなえるものなの加、まかなえないものなのか、この二つを簡単にお答え願いたいと思います。
  110. 本多市郎

    本多国務大臣 標準的な支出であります場合、平衡交付金と、みずからの收入金とをもつて完全にまかなえることを目標としております。本年の千五十億円もそうしたことも見積りまして決定されておるものでありますから、それに近いところまでは行き得るとは存じますけれども、完全に符合することはできないだろうと思います。そういう性質のものであります。
  111. 立花敏男

    ○立花委員 完全に符合しない場合は、そうしたらどうするかということをひとつお伺いいたします。
  112. 本多市郎

    本多国務大臣 これは財政需要額と標準収入額との差額を算定いたしまして、もつともこれは七掛けで算定するごとになつておりますが、それぞれ交付の標準を全国市町村別に決定いたしまして、その標準に千五十億を按分することにいたしております。
  113. 立花敏男

    ○立花委員 完全に下足を補うなら按分する必要はないのじやないですか。
  114. 本多市郎

    本多国務大臣 完全に補うことができないから、按分するのでございます。
  115. 立花敏男

    ○立花委員 そうしたら先金に補えない部分は、やはり附加価値税などは、制限税率までとられることもある、そういうことは言えると思いますが、その点をもつと明確にしていただきたいと思います。
  116. 本多市郎

    本多国務大臣 これは詳細に次長から御説明申し上げたいと存じますが、その通りでございます。従つて平衡交付金を受け入れられなくてもいい町村もできるわけであります。そうしたところでは標準税率以下で標準的な支出ができるところもあります。そういう場合はお話の通りであると思います。
  117. 荻田保

    荻田政府委員 御承知の通り平衡交付金は標準行政費と標準財政収入願との差額を、全部埋めるというのが建前であります。しかしその差額を計算いたしますのは、普通の年度におきましては、前年度予算を編成するときに、それから実際わけますのは、その翌年度実際予算が施行されるときであります。その年の四身一日現在によつて、もう一度標準行政費なり、標準財政收入なりを調査し直すごとになります。従いまして初めの見積りと、そこに少し違いが出て来るわけであります。従いまして実際わけるときには按分というかつこうになりますけれども、その按分の指数は必ず一になるというのではなくて、〇・九五にな。たけ、あるいは一・一になつたりして、そこに初めの見積りと多少違うところができますから、どうしても按分と言わなければならぬと思いますけれども、趣旨といたしましては大体標準行政費の一〇〇%を埋めることになるわけでありまする
  118. 立花敏男

    ○立花委員 平衡交付金の問題ですが、それが一にならないで、百分の九十五になつた場合の五は追加されるお考えなのか、それとも追加されないお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  119. 荻田保

    荻田政府委員 その程度のことは追加いたさないつもりであります。
  120. 立花敏男

    ○立花委員 その程度のことはと言われますが、百分の九十五というのは次長がかつてにおきめになつて、その程度はとおつしやつたのですか。これは幾らになるかわからないのですが、いかなる場合も平衡交付金は追加しない。それは全部地方でまかなうんだということになりますか。
  121. 荻田保

    荻田政府委員 先ほど申し上げましたように、前年度予算をつくりますときに、標準行政費等について、法律なり政令なりできまつた指数によつて計算するのであります。それが実際一年たちまして違う場合がありますけれども、それは大して違いはないのであります。大きく違いますのは、たとえば災害であるとか、あるいは制度でも途中で改正になつて、特殊な財政審要でもできて来れば別問題でありますが、このときは、何らか地方税を増すか、あるいは地方債を増すか、平衡交付金を益すか、処置を講じなければなりませんが、その程度の、ただ技術的に、百分の百でなくして、九十五、あるいは九十八、あるいは百分の百二という程度のことは、そのままにしておくつもりであります。
  122. 立花敏男

    ○立花委員 大臣に條文の上でちよつとお聞きしておきたいのですが、標準税率と申しますのは、條文の上で、現行の標準税率に対する規定と、新しい標準税率準対する規定とは根本的に違うと思うのであります。現行のものによりますと、標準税率を越えて課税してはならないというふうに、はつきり言つてあるのでありまして、特別の事情があると認める場合を除くほかは、課税してはならないというふうに、はつきりなつております。ところで新しいのによりますと、特別の必要があると認めるときにおいては、これによることを要しない税率と、はつきりなつておるのであります。この点で根本的に差異があると思います。しかも新しい規定によりますと、標準税率と申しますものは、平衡交付金の額をきめる際に、基準財政収入顧の算定の基礎として用いる税率であると言つておりまして、根本的に條文の規定が違うのでございますが、その差異をお認めになつておるかどうか、大臣の御答弁を求めたいと思います。
  123. 本多市郎

    本多国務大臣 今回の税法は、自主性を高めるという上におきまして、旧税法と同じ標準税率という言葉にはなつていても、上下に対するいろいろな制限を設けたのでありまして、特に許可を得なければならぬということになつておりましたか、今回は標準税率は、許可でなく、自主的に上下を課税することができるというところまで、自主性を増したわけであります。
  124. 立花敏男

    ○立花委員 地方税自体がもちろん問題でありまして、これからやりたいと思いますが、もう一つ問題は、このようにしてとられました税金がどこへ使われるかということ、この問題は私どももつと詳細に見なければならぬのじやないか、国の予算の場合は、そういう面が審議できまするし、資料も、あるいは御説明もあるのでございますが、この地方の税金の場合は、そういう問題が非常に無視されると申しますか、ゆるがせにされるきらいがありまして、とる方だけの審議になりまして、とられたものをどこへ使うかということがあまり審議できないと思うのであります。その点はお出しになりました資料にも現われておりまして、二十五年度地方財政の歳出の予算などにおきましても、ただ五行か六行しかお書きになつておりません。これじや私どもほとんど税金の行方を探究することができないと思うのであります。この点に対してどうお考えになつて声るか、こういうことは審議しなくてもいいというようにお考えになるか、もつとやつた方がいいとお考えになるか、お聞かせ願いたいと思います。
  125. 本多市郎

    本多国務大臣 原則としては地方の自治権にこれをゆだねる趣旨でございます。但し国家的見地から、国家の要請する施設規模等については、それぞれその施設の所管省が監督をいたしまして、その程度の施設をするように勧告あるいははなはだしく国家の要請する程度の規模を怠つたような場合には、それぞれ平衡交付金等において、地方自治体が不利益を受けるような規定にいたしたいと存ずるわけであります。
  126. 立花敏男

    ○立花委員 大臣のお答えは、私の質問ちよつと焦点が合わないのではないかと思うのです。私はそういう点をお聞きしておるのではありませんで、もちろん私は地方の自主性は認めた上での御質問でございまして、そういうものを中央できめるかきめないかということをお尋ねしておるのではありませんので、ここでそれを分析して審議する必要はないかということを聞いておるのであります。
  127. 本多市郎

    本多国務大臣 これは地方財政計画の歳出の中に、資料でその集計したものは出ておるのでございますが、それではまだおわかりにならないという御趣旨でありますと、地方議会の予算審議権について、何か費目ごとに法律上のわくを必要とするのではないかという御趣旨の質問じやないでしようか。
  128. 立花敏男

    ○立花委員 いや、そうじやないのです。この税法で非常に重い税金がとられるのですが、さいぜん私がシヤウプの言葉を引いて言いましたように、再び住民の生活へ還元され得るという見通しが予算の上であるならば、それは私ども一応は納得できるのですが、これがどこへ行くのかわからない。そういうことを抜きにして審議していいものかどうか。こういうことをお聞きしているのです。
  129. 本多市郎

    本多国務大臣 今度増税になりますのはもつぱら市町村でありまして、その市町村で徴収いたしました税は、すべてその市町村住民の意思によつて市町村のために処理されるのでありまして、これを中央等で集めて使うとかいうことにはならないのでございます。
  130. 立花敏男

    ○立花委員 中央が集めて使うということは私は言つておりませんので、すべて地方住民の意思によつて申されるが、これが問題だと思うのです。私どもは決して現在の地方自治団体の議会の決定が、全部的に地方住民の意思を表わしておるとは考えないのでございますが、そういう地方が自主的に決定した形になつておるものでもけつこうでございますが、そういうものの集積としての地方の歳出予算を十分に検討するだけの資料を出していただいて、それを検討する必要があるのではないかと考えるわけです。それを検討いたしました結果、私どもの観点からこれは地方の自主性を束縛するのではございませんが、必要な方向へ出されておると考えました場合には、あるいはそれが地方住民の意思に反して使われておると考えました場合には、税の審議の場合にも、やはりそういう観点から審議しなければいけないと思いますので、地方予算に関しての資料は非常にわずかしか出ていないのでございますが、これではそういう私ども審議の参考になるようなものは、おそらくないと思うのでありまして、もう少し具体的なものをお出し願いたいと思うのです。やはりどうしても大臣に納得していただいてからでないと、資料を出していただけないと思いますが、そういう必要があるということを大臣はお認めになるのかならないのかということをお聞きしたい。
  131. 本多市郎

    本多国務大臣 この財政計画を固めるにつきましては、相当地方からの資料を徴し、詳細な調査によつたものでありまして、この財政計画に現われておりますのは、これを集約した大きな種目別になつてはおりますけれども、大体において当を得たものであると考えております。さらにその内訳という御趣旨でございますが、それは大綱的に分類いたしておりますが、詳細な内訳になりますと、それぞれ地方自治団体の希望、実情に応じてかわつて行くわけでありますがその差異は自治権にゆだねる結果、そうなるものであると考えております。しかしできるだけ調査いたしまして、御趣旨に沿うようなものをできるだけ提出いたしたいと思います。
  132. 立花敏男

    ○立花委員 それではこれから審議の過程において要求いたしますから、資料を出していただきたい。と申しますのは、きのうの荻田次長の御発言の中にも出た問題で、大体中央のひもつきであつて地方のままにならないというようなお言葉があつたのでございますが、これはおそらく事実だろうと思います。これは率直に言われたのだろうと思いますが、こういうもののために地方がこういう税金をとられるということは、根本的に検討する必要があるのではないかと思います。また四百億増徴になるということは標準税率でも、また累次の政府の声明によつても明らかなのでございますが、この公共事業費その他の政府補助金がふえまして、地方に今回出されますが、それに伴う地方の必然的な負担増がやはり三百億ないし四百億あるということになりますと、地方の税金のふやされた部分は、何のことはない中央できめますところのいわゆる公共事業費的なものに使われてしまうのだというようなことも考えられるわけなのです。しかもその公共事業費が地方に参りましてどうなつておるかと申しますと、いわゆるひもつきの公共事業がふえまして、地方の単独の公共事業が滅つて来るような形も現われておりますし、そういう面もやはり私ども十分審議しなければ、この出されました税法の法案だけを見ておりますのでは、十分審議できないのではないかと思いますので、そういうこまかい問題に関する資料も、今後要求して行きたいと思いますので、お出し願いたいと思います。なおそういう面からもう一度自治庁の方でも地方財政に関する、特に歳出に関する資料がございましたならば、御提出を願いたいと思います。
  133. 荻田保

    荻田政府委員 御要求にぴつたり合うかどうかわかりませんが、大体調べたものもございますから、明日にでも出したいと思います。ただ公共事業費のことに関して、それは国のひもつきであるから、地方の自主性はないというようなことはないと思います。国庫補助はみな地方のためになる経費でございまして、地方の單独事業とひもつきの公共事業と、地方にどちらが大事かというと、必ずしも国の事業だから地方に大事でないということはないと思います。
  134. 立花敏男

    ○立花委員 その問題は非常に大きな問題だと思います。これは災害復旧の全額国庫負担の場合に問題になつたと思うのです。国できめたから全部地方のためになるのだというような簡單な考え方では問題は解決できだいと思う。というのはやはり地方にも予算があるわけでございまして、その予算を最も地方住民の要求しておるもの、地方の状態に当面最も必要なものに出すということが問題なのでございまして、国できめたからこれは地方のためになるんだというような簡單な考え方ではいけないと思います。すでに現在でも住民が毎朝牛をひつぱつてつております山道がくずれておつても、それを直さないで、住民が何のことかわからない何十間幅の道路が村のまん中を走つておるということがございますので、こういう問題は国できめたから地方住民利益になるのだというふうに、簡單にはきめられ、ないと思います。こういう点でやはり荻田次長のお言葉は、簡單な意味でお言いになつたのかもしれませんが、そういう意味でやはり少し意見の食い違いがあるのではないか、これは根本的な意見の食い違いになるかもしれませんが、そういう点でもう一度次長の御意見を承りたいと思います。
  135. 荻田保

    荻田政府委員 言葉が足りなかつたかもしれま世んが、国で補助金を出すような仕事の方が、地方の単独の仕事よりも全部重大である、こういうことを申したのではなくてあなたの御意見はむしろ逆に、地方単独の事業の方が地方のためになるのであつて、国の補助金はむしろ国家の都合のためであつて地方の全部のためにならぬのだ、こういうふ、うに受取りましたので、決してそうではなくて、いずれにしても、ものの実質を判断して、どちらが地方住民のためになるか調査をしてみなければならぬと、こう申したのであります。
  136. 立花敏男

    ○立花委員 この問題は国の予算あるいは地方予算を使います場合に、この税法できめられました莫大な税金を使います場合に、非常に根本的な問題だと思いますので、もう一、二言させていただきたいと思いますが、たとえばこれは本多国務大臣がさつき御否定になりましたが、壷岐、対馬へ十八億五箇年計画でお出しになる、その中で漁港の改修、船だまりをおつくりになるのに五億円の金をお出しになるという予定があるのでありますが、これは大臣がすぐ着手することに決定してないのだからとおつしやるかもしれないが、私どもがいただ心た資料の中にはそういう数字がございます。ところが私淡路島におりますが、この瀬戸内海の漁業は完全に壊滅しております。もう漁民漁業組合で米代を拂つてもらう、そして魚をとつて来たときにそれを拂いもどすという形になつているわけです。こういうところへは国の予算はおそらくはとんどゼロと言つていいほどしかお出しにならないで、玄海灘の離れ小島の壱岐、対馬の漁港の船だまりをおつくりになるのに五億円もお出しになるというやり方、このやり方が住民利益に合致するかどうか。住民が望んでいるところに合致するかどうか。これは一つの例なのでございますが、さいぜんもあげました道路の例なんかと並べまして、やはり税金の使い方というものは中央、地方を問わず、やはり重大な問題だと思うのです。そういう面で、私どもぜひとも地方の歳出の予算検討してみたいと思います。それでは中央できめるから中央の金だけでいいのだだけでは済まされません。中央の決定に従いまして、やはり地方予算も指示する。あるいは中央でたりないところはいろいろな形で、地方予算でまかなつて行く。たとえば総合開発なんかの場合におきましても、中央で重点的な経費は出しますが、その他の雑費的な費用、あるいはそれに必要な他の名目で出します費用は、やはり地方負担になることがあると思いますので、こういう点もやはりあわせて考慮しないと、税金の問題は十全には審議されないのではないかと思いますので、できるだけ詳細な地方資料をお出し願いますと同時に、やはり地方でとり上げましたこの税金の使い方につきましても、愼重なる御配慮を願いたいと思います。重ねて大臣にこういう問題の根本的なお考請えをお聞きいたしたいと思います。
  137. 本多市郎

    本多国務大臣 対馬に十八億の公共事業政府が計画しているようなことを前提にして、お話がありましたけれども、さいぜんも申し上げました通り、それくらいのことができる日本であれば、まことにけつこうでありますが、お話の通り貴重な税でありますから、全国に均衡化した処理の仕方しかできないのでありまして、それは長崎県で出した将来の対馬開発計画に十八億円も金がかかるという案があるということは聞いておりますけれども政府としてはそれは全然關與いたしておらないところでございますから、そういう不均衡な金の使い方を政府がしているというようなことが、誤り伝えられても不本意でございますので、どうぞこの点だけははつきり御了承おきを願いたいと思います。対馬の実状はまことに開発が遅れておりまして、同情すべき点もあるのでございますけれども財政窮乏のために、十分に向うに施設をしてやることができず、二十四年度対馬では十八億円とか、一億円とかいう金額はおろか、百万円の開発のための調査費をぜひ出してもらいたいという陳情が、年度末まで続いておつたのでございますが、これすら私といたしましては、希望はしておりましたけれども、百万円の調査費がとれたかとれないか、まだ確実なところを聞いておらない状態でございまして、まことに対馬の今日の開発の遅れていることには同情はいたしますけれども政府としてそんな大規模な計画はとてもできないのが、今日の財政の実情でございますので、その計画は政府には関係のないものであり、長崎県が郷土開発のために非常な熱意を持つて理想的に計画をやつたものであつて、そこまでは国力が追随し得ないものであると考えております。  さらに今日負担に苦しむ場合の税のことであるから、この税がそれぞれ地方団体においても、適切に、また有効に、使用されなければならぬということについての注意をすべきことは、お話の通りでございまして、そうしたことにつきましては、それぞれ所管大臣並びに自治庁といたしましても、十分指導に当つて行きたいと存じております。しかしいかんせん法律的な干渉はできないことでございますので、地方自治体自体が自主的にやるかわりには、十分完全にやるという責任を負担してもらわなければならぬ。そのためには自治体自体の自治制の発達が、非常に期待せられるゆえんであると思います。今回の税制改革等によりまして、財源も相当拡大するということになりましたならば、それぞれ自治制に対する責任観念も高まり、またすべての国政との関連におきましても、認識も改まつて向上して行くものであると期待いたしておる次第でございます。
  138. 立花敏男

    ○立花委員 税金の問題で、地方の人民の関心が高まつて行くということを大臣が期待されるのであれば、現在地方住民が行つております地方の納税の民主化という問題に対する、政府の官憲を使つての弾圧と申しますか、ああいうものに対して、大臣はどういうふうにお考えになつているのか、念のためにこの際聞いておきたいのであります。
  139. 本多市郎

    本多国務大臣 ただいまの問題については、私も資料が手元にございませんので、完全なお答えはできませんが、弾圧というお言葉がありましたが、合法的な国民の行動に対して、不当なる弾圧を下すということはよろしくないことど存じます。
  140. 立花敏男

    ○立花委員 この問題は資料を集めてから、もう一度大臣にお聞きいたしたいと思います。  それから最後の壱岐、対馬の問題と関連いたしまして、壱岐、対馬に参られました際に、大臣が新聞記者に発表されました道州制の問題と地方税の問題でございますが、さいぜんから問題になつておりますように、これは各府県別の資料が出て来ないと、はつきりしない問題だと思います。しかしすでに大臣の故郷であられる九州などにおかれましては、もう鹿児島県の知事なんかが参られまして、七億円ないし八億円の減収になる、これではとうていやつて行かれない、これと同じ形が熊本、宮崎に現われている。そういたしまして一方北九州には八幡を中心といたしまして、八幡だけでも日鉄が二億八千万円の固定資産税があり、八幡の町だけで八億円の固定資産税があると言われておりますように、北九州の税金は非常に大きいのでございますが、こういうふうに非常に不足するところと、余るところとあるという形が、この税の結果必然的に出て来ているのでございますが、こういう問題はどういたしましても、この数府県のブロックあるいは市町村のブロックをつくらなければ解決できない。單に平衡交付金では解決できない問題だと思うのでありますが、こういうところから結局必然的に重工業地帶を中心として、その附近の府県を合せて行くところの道州制の考え方、あるいは大工場大経営を中心とする市町村の廃合の問題、これが必然的に起つて来ると思いますが、こういう問題につきまして、大臣はどういうふうにお考えになつているか、道州制を初めて発表されました大臣が、特にアメリカに行かれるということは、私ども重大な関心を持つておるわけなのであります。すでに地方行政調査委員会議の委員長の神戸さんが、この道州制の研究にアメリカへ行くのだということを新聞に発表されて行かれた。それで向うでお会いになると思います。だから大臣の渡米の問題を、われわれは決して道州制の問題と関連がないと考えてはおりませんので、大臣の意見をこの際お聞かせ願いたいと思います。
  141. 本多市郎

    本多国務大臣 道州制が将来施行されるであろうというようなことは、今日まで全然言つた覚えはないのでございます。ただシヤウプ勧告に基きまして、地方行政調査委員会議というものが、正月から発足しておりますので、ここで都道府県市町村についてそれぞれ廃合等が研究されるであろう、その趣旨はただいまお話になりました通り、ことに市町村などの中にはあまりに小規模であるために行政費が多くなり、行政区画が小さいために完全な支出ができないというような所もありますから、そういうような所はこの地方行政調査委員会議の決定によつて、あるいは統合という問題も起きて来ようということも予想されますので、この地方行政調査委員会議において廃合の問題が研究されるということは、私が申したのでありますが、道州制の施行については私は触れたことはないのでございます。従つて政府といたしましても今日道州制についての方針は何ら決定しておりません。これは政府意見でなく、私の個人的意見になりますが、むしろ今日の場合道州制のごときは屋上屋であつて、かえつて経費を増加することではないかと、私個人としては考えております。政府といたしましても、この道州制について、また府県の統合についても何ら今日方針は決定しておらないのでありまして、もつぱら地方行政調査委員会議の愼重なる調査の結論をまつた上で、政府の方針を決定いたしたいと考えておる次第であります。地方行政調査委員会議の神戸委員の出発にあたりまして、道州制のためにアメリカ視察に行くのではないかということが、新聞に伝わつたのでございますが、このことも全然そうでないということを神戸委員みずから否定して行つている次第でございます。私自身もそういうふうな考えのもとに、視察に行くのではないことを御了承願いたいと思います。
  142. 立花敏男

    ○立花委員 詳細な問題は次に譲りたいと思うのですが、二、三回質問をやりましたので、この際その質問に対する御答弁の中で、国税を減らしたから地方税をふやした、国の財源地方に讓つたのだというふうな御答弁もございましたし、やはり税金と申しますものは国税と地方税と合して考えなければいけませんし、それからさいぜんも問題になりましたように、国の予算地方予算は非常に緊密につながつております。さらに平衡交付金の問題は中央の予算の問題でございまして、決して地方だけの問題ではございませんので、この際大蔵大臣と主税局長の御出席を願つて、その面から審議を進める必要があると思うのでございますが、あすでもぜひひとつ委員長の方から御出席を求めていただきたいと思います。
  143. 菅家喜六

    菅家委員長代理 了承しました。  なおこの際お諮りいたしますが、昨日でしたか塚田委員より要求がありました資料が、ただいま政府の方において各位の方に配付になりました。この機会に政府委員からこの資料に基いて説明を聽取いたしたいと思います。
  144. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 附加価値税の収入を見込みます場合に、その基礎といたしまして安本で調査いたしてあります国民所得基礎にして推計いたしましたものと、昭和二十三年度現実に国税として課税いたしました実績を基礎として推計いたしましたもの、お手元に配付いたしております昭和三十五年度の国税の收入見込額を基礎として推計いたしましたもの、この三つを実はやつてみたわけなあであります。ただ皆さんたちの御審議の便宜上、国税につきましては昭和二十五年度の収入見込額に関する資料提出されておりますので、それと並行するために昭和二十五年度の国税の收入見込額を基礎とする推計を差上げたわけであります。国税の数字大蔵省から出しております昭和三十五年度租税及び印紙収入の予算の説明という資料からとつたわけであります。以前から差上げております地方財政に関する参考計数資料の四ページのところに一昭和二十五年度附加価値税収入見込み額調がございます。これに関する説明のための参考資料として、ただいま「昭和二十五年度附加価値税収入見込み額調べの基礎資料の説明」というものを差上げたわけであります。その二つについて御説明申し上げたいと思います。  最初の事業所得の問題でありますが、ただいま差上げた基礎資料の説明を見ていただきたいと思います。事業所得のうちで、個人分の昭和二十五年度所得税課税所得見込み額五千七百七十七億九十六百万円というのは、先ほ申し上げました大蔵省から出ております資料をそのままとつたわけであります。ところがその数字課税所得見込み額でありますので、算定三の失格分として控除されたものが、千三百三十億余りあります。また基礎控除分として控除されておりますものが、千五百四十数億あるのであります。扶養控除されておりますものが、二千三百五十数億あるわけであります。附加価値税課税標準の基礎といたしましては、これらを合算しなければならないので、計をとりますと一兆一千十五億二千百万円という数字が出るわけであります竹ところがこれは国税の方では申告納税にかかる分と、源泉徴收にかかる分と、所得税課税所得二つに大別しておるわけであります。ところが申告納税にかかります分も、附加価値税では課税対象になりませんところの農業の分や、林業の分や、鉱産税の分や、あるいは一時所得の分が、相当たくさん入つておるわけであります。それでこれらを区別いたしますために、昭和二十三年度所得税課税実績があるわけであります。所得別の実績が出ておるのでありまして、その国税庁の数字基礎にいたしまして、この一兆一千十数億の金額に按分しだわけであります。またそけ按分の結果が、次に掲げてございます昭和二十三年度所得税課税基礎なつ所得の六千八百九十二億のうち、附加価値税一種に該当するものが二千九百六十億であります。第二種に該当するものが百七十二億であります。第三種に該当するものが三百五十三億という数字になるわけであります。これを按分しました結果が、その下の欄の第一種、第二種、第三種、計五千五百七十一億九千九百万円という数字があがつております。ところが国税の方では、課税所得はこれだけあるが、二十五年度に収入されるものはそのうちの七〇%だという数字をあげておるわけであります。ところが実際は、予算にあがつております申告納税の額につきましても、今日なお徴収実績が相当下まわつているようであります。しかしながら大蔵省から出されております数字そのままを使いまして、一応計算をいたしております。その結果が、右の側にあがつておひます第一種が三千三百億幾ら、第二種が百九十億幾ら、第三種が三百九十億幾ら、合計いたしまして、三千九百億幾らという数字になるわけであります。それから元の参考計数資料2の四ページのところにもどるわけでありますが、以上が個人分のところを申し上げたわけなのであります。その三千九百億という数字と合うわけであります。次の法人の分を御説明いたしますが、また元へもどりまして基礎資料の説明をごらんいただきたいと思います。基礎資料の説明の法人の分でありますが、普通法人の昭和二十五年度法人税の収入見込みの基礎とされた所得が一千四十一億ということになつております。さらに特別法人、公益法人を合せまして一千五十五億八千九百万円ということになります。これをさらに一種、二種、三種に按分しなければならぬわけでありますが、それが昭和二十三年度法人税り課税基礎なつ所得が五百二十億であります。その五百二十億のうちで一種、二種、三種のものがその下に掲げてある数字であります。これに按分しました結果が左側の一番下のところであります。一種が千二十一億、二種が十九億、三種が十四億、合計して一千五十五億ということになつております。ところが法人税の昭和二十五年度における徴収見込みの基礎なつた徴収率が八〇%という数字を用いておりまする従つてこれをそのまま使いまして右側に昭和二十五年度附加価値税の収入見込みの基礎として見込んだ所得一種が八百十六億、二種が十五一億、三種が十一億、合計しまして八百四十四億、これが参考計数資料2の四ページの事業所得の法人分の欄であります。合計いたしまして事業所得が四千七百四十五億一千万円ということになつておるわけであります。その次の欄の勤労所得の御説明をいたしたいと思います。基礎資料の説明の二ページであります。昭和二十五年度所得税、給與所得に対するものでありますが、これの課税所得の見込額が四千二百六十五億一千二層万円、この算出上失格分として控除されたものが四百四十二億六千八百万円、勤労控除分として控除されたものが消えているようですが、これが一千五百五十六億七千三百万円であります。基礎控除分として控除されたものが二千四百九十三億ちようどであります。扶養控除分として控除されたものが二千三百六十七億三午九百万円であります。これらをすべて合計いたしますと一兆一千百二十四億九千二百万円という数字になります。この中にはたとえば官公吏の給與の部分も含んでおりますし、あるいは非課税に該当します事業から受ける勤労所得も含んでいるわけであります。それらを控除しなければなりませんので、備考の欄に書いてあります昭和二十五年度国民所得推計、安本調査によるものであります。その勤労所得の区分によりまして第一種から第三種のものに按分したわけであります。勤労所得の受取つた先の区分による区別は、安本調査の国民所得推計によるよりほかはありませんので、昭和二十五年度のその見込額を基礎として、一種、二種、三種に按分したわけであります。そうしますと一種に該当するものは九千二百五十六億五千七百万円、二種に該当するものが三百七十一億九千万円、三種に該当するものが八百六十七億五午万円ということになるわけであります。ところが実はこの資料をつくりましたときの基礎が、その後さらに動いて参つております。従つてこの数字が一千億円以上見込み過ぎておる。收入見込みが従つて相当下まわるということに実はなつて来ておるわけでありますが、当時見込みました基礎をそのままここに使つておりますために、そういうその後の数字の変化が起つて来ております。これにつきましては国税の方では九七・八五%の徴収率を見込んでおりますので、申告納税よりもはるかに成績がいいわけであります。従つてそれをそのまま使つて、右側に第一種が九千五十七億、第二種が三百六十三億、第三種が八百四十八億、合計いたしまして一兆二百七十億三千九百万円、こういうふうに計算をいたしたわけであります。  その次に減価償却額の問題であります。所得を計算いたします際には、減価償却額を経費として控除しておるわけであります。しかし附加価値税課税の場合は控除いたしませんから、一応それらを合算いたさなければならぬのであります。減価償却額の見方は、旧法による法人分の減価償却額を五十二億というふうに国税の方で見込んでおります。さらに資産再評価による増加見込額を五百二十三億二千百万円と見込んでおりますので、合計五百七十五億二千百万円であります。そのうち昭和二十五年度において法人税の課税対象となるものは八六%だけでありますので“さらにそれに八六%をかけた四百四十九億九千六百万円、こういう計算をしたのであります。さらに、これは法人分でありまして、個人分を推計しなければならないわけであります。個人分の推計は適当なものがありませんので——資産再評価見込みで、法人と個人の区分がありますので——その比率を用いたわけであります。すなわちそのわくの中に書いてありますように、一番下の計を見ていただきます。と、法人の資産再評価見込額が八千二百十七億三千四百万円、個人の資産再評価の見込額が一千百十六億、この割合がちようど一〇〇と一四・一一六ということになるわけであります。従つて個人分の減価償却見込額は法人分の四百四十九億九千六百万円に百分の一四・一一六をかけたわけであります。そうしますと六十三億五千二百万円という数字が出るのであります。これと法人分、個人分を合せて五百十三億四千八百万円ということになるのであります。これが参考計数資料2の四ページに上つております減価償却額の数字と合うわけであります。合計いたしますと一兆五千五百二十八億八千八百万円ということになるわけでありますが、これからさらに控除しなければならないものに、附加価値税の場合には固定資産基礎としました場合には、これをまるく支出金額として落してしまうわけであります。そこで固定資産の取得額が幾らあるだろうかという見込みでありますが、基礎資料の説明の二ページの一番下のところであります。固定資産の取得額が、家屋につきましては事業の占める割合が五三・三%でありますので、固定資産税の収入見込みの基礎なつた改訂価格一兆三千五百四十九億九千万円に五三・主%を乗じたわけであむます。そうしますと七千二百十八億という数字が出ます。平均耐用年数が三十年でありますから、三十年に一回ずつ更新される。従つてこれの三十分の一として二十五年度一年間の取得額は二百四十億六千万円である、こういう数字を出したわけであります。ところがきのう塚田さんから固定資産の取得額見込みが少いというお話があつたそうであります。実はわれわれもそういう考え方を持つておるわけでありますが、いろいろな計数と合せますためにこの部かは固定資産税から見ておるわけであります。固定資産税の家屋の坪当り価格というものは、工場や店舗でありますと賃貸価格の九百倍でありますから五、六千円であります。現実坪当りの建設費というものは五千円や一万円ぐらいでできるものではないと思つておりますが、便宜上その数字を用いたのであります。従いましてこの数字はもつと大きな数字に実はなるのでありますが、一応数学的に関連を持たせます止めに、そのまま使つて行つたわけであります。  償却資産につきましては、その次の欄に出ております。なお申し落しましたが、たとえば家屋の耐用年数といたしましても、戦後の家屋は大体十五年ぐらいになつておりまして、コンクリート家屋でありますと、もつと大きくなるわけでありますが、平均して三十年というふうに見込んでおるわけであります。ただ昭和二十丑年度、二十六年度は、戦災復旧のために固定資産の取得額が、非常に大きいのではないかとやうことも考えておるのであります。しかしそういうものは全然この数字の中には見込んでいないわけであります。従つて塚田さんのような疑問も出るのももつともだというふうに考えております。こういう計算で固定資産の取得額を出しますと、参考計数資料非常に厚い前にお配りした資料でありますが、その参考計数資料の四ページにもどりたいと思いますが、その固定資産の取得額の一千三百七十三億三千二百万円という数字と合うわけであります。以下参考計数資料の2の四ページについて申し上げたいと思います。上のわくの右の端に書いてあります点であります。が「左のうち赤字附加価値として繰越以外のものB、九七%推計、これは三%だけは、固定資産を取得しましても、固定資産の取得額として控除し過ぎる、いわゆる赤字附加価値になつてしまうのであります。赤字附加価値なつたものは翌年に繰越されますので、赤字附加価値まで控除しますと、控除し過ぎることになります。初年度はやはり全額を見込まないで九七%しか見込むべきではない、こういう計算をいたしたわけであります。従つて固定資産の取得額の一千三百七十三億三千二百万円に九七%を乗じまして、一千三百三十二億一千二百万円になつて、控除すべきでないという計算をいたしたのであります。わくの二段目の左の端、これは上の欄の「計のA」から今申しました九七%と推計しましたBの欄を差引きました額、この一番下の数字が一兆四千百九十六億七千六百万円となるわけであります。ところが国税としてはこれだけ捕捉できるだろうが、地方団体としては初めてのことでありますので、初年度におきましては地方団体としてはその能力から考えまして、一〇〇%見込むことは危険であるということから、捉可能附加価値を九〇%程度を見込んだわけであります。さらにこのうちで免税点以下の附加価値があるわけでありますが、その部分はこの欄から落さなければならぬわけであります。それを二百八十二億二千七百万円と見たわけでありますが、これは午前中次長からお話があつた通り昭和三十三年度所得税のうちで、所得額四万円以下のものを基礎として落しておるわけであります。四万円に所得額の増加率を乗じて行きますと、二十五年度では七万四千円くらいになります。大体その金額に対する所得額の割合と附加価値額の割合は、大きな企業になればなるほどその差は大きくなつて来ますが、小さい企業のところでありますと、似たり寄つたりだと思います。そういうところから一応四万円という昭和二十三年度所得額以下のところを押えたわけであります。これを控除いたしますと、課税標準額が一兆二千四百九十四万七千九百万円となるわけでありまして、これに税率を乗じまして、捕捉可能の差額が四百八十四億八千百万円となるわけであります。そのうち徴収可能税額徴収率九〇%と押えまして、四百三十六億三千二百万円となるわけであります。が初年度において手ぎわよく進むことが不可能でありますから、徴收率をその九六%強と押えまして、四百十九億六千四百万円という数字を出したわけであります。
  145. 塚田十一郎

    塚田委員 大体の見込みを伺つたので、そのほか考えてみて質問したいと思うのですが、参考のために一、二点、今伺つてつて疑問を持つた点をお尋ねしておきたいと思います。政府がこういうような推算をなされる場合に、二十三年と二十五年の各所得の間に、増減の率が一様でないということをお考えになつておるかどうか。私が個人当りの数字でもつて調べたのだけでも、さつき私が他の質問の際にもちよつと申し上げただけで、農業所得は三十三年と二十五年の間に七四・二%という数字であり、営業所得は六三・七%という数字であり、その他の業種所得は八〇%という数字になつておる。一律に出て来ておらぬ。そういうことを十分考慮に置いておられたかどうかということが一点。それからもう一つこれは疑問に思うのですが、国税でもこれしかとれないから地方税ではさらにそれからいくらか控え目にしなければならぬという疑問がある。徴税の基礎を同じものに置かれたならば、そういうことが出て来ると思うのですが、この問もちよつと申し上げたように、今度の間接法でやられるということになると、そのしんしやくが私はいらないと思う。やはりこの基礎数字をもとにして、それから何パーセントしか今の徴税能力ではとれないということにされないと、税法と計算をされた資料との理論が一貫して出て来ない。こういうように思うのですが、その二点をお伺いしておきたい。
  146. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 最初の点はお話まことにごもつともなのでありまして、事業所得昭和二十五年度の正確な資料があるならよろしいのでありますが、所得の種類別による正確な資料は得られないのであります君れくとしてはやはり客観的な裏づけのある資料基礎として推計して行きたいのであります。そういたしますと、どうしても昭和二十三年度の実績以外には、実は適当な資料がなかつたわけであります。そこでお話のような点がありはしないかという点から、二十三年度の実績による、たとえば農業と営業との割合がどうなつておるかということを主税局が見込んでおります。営業と農業との二十五年度所得の割合と比較してみておりますが大同小異であります。あまり違いませんのでそれなら昭和二十三年度の実績をとつても、大差あるまいという見方をいたしたわけであります。勤労所得昭和三十五年度の安本の推計をとつておりますので、それで適当ではないかと考えられるのでありますが、一面また実績ではありませんので、多少不安な点もあるわけであります。  それから第三の点でありますが、計算の仕方が片方は所得をつかみ、片方は附加価値をつかむということになりますので、まつたく同じ数字基礎にして、ただ徴収率を與にする方が理論的ではないか、またさようにも思われるのでありますが、ただ地方団体の徴税能力が非常に云々されておる際でもありますし、また実際問題として地方税の独立体系の問題を取出しましたの、ごく最近のことでありまして、これは遺憾ながら明らかに地方団体の徴税能力の遜色というものは認めざるを得ないので、ただいま申し上げたような計算の仕方をいたしたわけであります。
  147. 立花敏男

    ○立花委員 奥野君に聞きたいのですが、本多さんの御答弁ちよつと違うのです。勤労所得に対する徴收率と法人事業所得に対する徴収率と違つて計算なされておるが、これは両方と同じ法人が納めるとすれば、違うということはおかしいと思うのです。本多ざんは概念的にはわけられるが、一本だとおつしやいましたが、これをわけるということはどうも不可解だと思う。
  148. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 勤労所得はお話のように、多くは法人から支拂われておるもので、法人が源泉徴収しておるものでありますが、申告納税の部分事業得は主として個人が申告納税するものであります。法人の分は、その事業所得の中で個人分と法人分とわけておりますように、額としては割合少い獺です。
  149. 立花敏男

    ○立花委員 法人分の中で、法人の第一種のものを八〇%の徴収率をお見込みになり、個人所得の場合は九七・八五%をお見込みになる。そういたしますと、本多さんが一緒だと言われたが、やはり事業者の場合、人件費の九七・八五%をかけてとつておいて、これだけはのけておいて、自分の負担の分は、いわゆる八〇%で行くのだ、そういうことを政府自体がこの資料でお認めになつているのじやないですか。
  150. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 先ほどちよつと申し上げましたように、国税を基礎にいたします以上は、できるだけ国税の方の計算の基礎をそのまま押して行きたい。その方が便宜ではなかろうかというふうに考えましたので、便宜国税天使つております率をそのまま用いて立たわけであります。
  151. 立花敏男

    ○立花委員 だからそうなつたのが正しいかどうかの問題をきめておかないと困ると思うのです。勤労所得部分だけ九七・八五%とつて、法人の事業所得は八〇%ということは、どらも納得できませんし、本多さんの御答弁とも違うと思うのです。
  152. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 全体としてどう見るかということが、最後の判断の問題になるだろうと思うのであります。たまたま申告納税に関します部分は、当該年度で決定される分が、勤労所得に関する部分よりもかなり落ちて来ているのは事実でありますので、一応どの程度まで三十五年度中に課税所得として把握できるかということになりますと、課税が、かりにわけて使つておるものですから、それをそのまま用いざるを得ない。しかしそうじやなくて、立花さんのおつしやつたような考え方をするならば、全体としてどんな率になる、だろうか従つて勤労所得の率の九七・八五というのはあまり率をきつく見過ぎる、従つて申告納税の分を七〇%というのは低きに過ぎる、だから上げる、こういう問題になるだろうと思うのです。だから結局そういうことは、さらに区分して考えましたならば、国税の申告納税は七〇%、勤労所得の分は九七%八五%を使つておる、それはそのまま用いても結果においては大体同じことになるのだろうという考え方をいたしております。
  153. 立花敏男

    ○立花委員 そうは参らぬと思うのです。勤労所得に対する部分は九七・八五%で、おそらく百パーセントです。人件費の中から百パーセントだけとつて、あとは自分の方から八〇%出して、合わしたものを、はい、附加価値でございますといつて納めるのだから、やはり勤労所得に重課されると照う。この点をはつきりしておきませんと、実際においてそうなると私は思う。
  154. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 ここで計算しますのは、全事業の納付します附加価値が、全体としてどうなるかということを見て行きたいために、そういう計算をしておりますが、個々の事業について具体的な附加価値税がどうなつて来るかということになりますと、お考えのような計算の仕方をしなければならぬと思います。しかし全体として見るのですから、その点こういう計算の仕方をしてもさしつかえないではないか、結果において平均したところが八〇%というパーセンテージになるのではないかというように考えております。
  155. 立花敏男

    ○立花委員 單に全体をお出しになる計算のためだというならば了解できますが、こういう数字をお出しになりますると実際とる場合そういう、かうになるおそれがありますので、その点御注意願います。
  156. 菅家喜六

    菅家委員長代理 本日は大分御勉強願いましたので、質疑はこの程度にとどめておきたいと思います。なお明日は午前十時半に開会いたしたいと思いますから、たいへん御迷惑でございますが、時間を励行いたしたいと思います。また政府当局の方にもお願いしておきますが、政府の方も種々なる御都合があると思いますが、委員会としても、審議の予定がございますので、どうぞ時間励行で御出席くださるよう強く要望を申し上げておきます。本日はこれにて散会いたします。     午後五時十五分散会