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1950-04-27 第7回国会 衆議院 大蔵委員会 第60号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月二十七日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 大上  司君 理事 岡野 清豪君    理事 北澤 直吉君 理事 小山 長規君    理事 前尾繁三郎君 理事 川島 金次君       甲木  保君    佐久間 徹君       島村 一郎君    高間 松吉君       苫米地英俊君    三宅 則義君       宮腰 喜助君    田中織之進君       松尾トン子君    河田 賢治君       竹村奈良一君    田島 ひで君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      佐藤 一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君  委員外出席者         大蔵事務官         (銀行局保險課         長)      長崎 正造君         運輸事務官         (海運局監督第         二課長)    辻  章男君         会計検査院事務         官         (総長官房総務         課長)     山名酒喜男君         会計検査院事務         官         (検査第一局         長)      池田  直君         会計検査院事務         官         (検査第一局出         資検査第一課         長)      大澤  實君         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君 四月二十七日  北澤直吉君が理事に補欠当選した。     ————————————— 四月二十七日  つむぎ等の輸入税を免除する法律案根本龍太  郎君外四名提出衆法第二四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  予算執行職員等責任に関する法律案内閣提  出第一七五号)  船主相互保險組合法案内閣提出第一八三号)     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長代理 これより会議を開きます。  予算執行職員等責任に関する法律案及び船主相互保險組合法案の両案を一括議題といたしまして、前会に引続き質疑を継続いたします。三宅則義君。
  3. 三宅則義

    三宅(則)委員 ただいま議題となりました予算執行職員等責任に関する法律案について質疑をいたしたいと思います。本法案につきましては、予算執行に対しまする職員等責任に関する問題でございますからして、私どもはこの趣旨には賛成であります。これにつきまして、政府にひとつお尋ねいたしたい件は、最初に第一條に書いてあるところでございますが、「この法律は、予算執行職員責任」と書いてございます。しかしやはり予算執行職員等のという意味合いが含まれるべきが当然かと思いますが、はたして政府の方では、これは落していらつしやるのであろうか、どうであろうかという点をひとつお伺いいたしたい。その理由になつております点は、第九條にもございますが、上司責任において云云と規定されておりますし、また十一條では公団等出納職員弁償責任、こういうふうになつておるのでありますからして、私は政府といたしましては——第一條では、ぜひこの法律予算執行職員等責任云々というような意味合い解釈するのでありますが、政府の方で、はたしてどういう御意見を持つておられますか承りたい。
  4. 河野一之

    河野(一)政府委員 法律の方は予算執行職員等となつて、中が予算執行職員となつておる、これがどうであろうという御趣旨かと思うのでありますが、予算執行職員というのは、第二條に掲げてあります通りのものでありまして、このほかに公団が嚴格な意味において、予算執行職員と言えるかどうかという問題がございます。それから上司に転嫁するという規定うしろの方の條文にあるのですが、そういう関係で、法律題名といたしましては、予算執行職員等、すなわち予算執行職員のほかにも含まれるものがある。しかし法律趣旨といたしましては、予算執行職員責任を明確化することによつて、その他の職員責任もまたこれに応じて明確にされるようになるのだ、こういう趣旨で、第一條には等を入れておらないわけでございます。
  5. 三宅則義

    三宅(則)委員 今の御答弁では満足行かぬのでありますが、私はむしろこの際政府の方は大乗的に考えられまして、予算執行職員等というふうに御考慮なすつて、御訂正なすつた方がより明確になる、かように考えておるのでありますが、今これに対しましての修正に同意されるような御気持はありましようか承りたい。
  6. 河野一之

    河野(一)政府委員 第一條予算執行職員責任を明確にするということがこの法律趣旨でありまして、その結果上司に転嫁する問題もありますし、公団の問題もありますから、これはあとの方の條文に、そういう場合にはこういうことを含んであるぞということで、自分責任をそこで上司に転嫁するという規定がありますが、ここで自分責任はこの範囲のものであるということを明確にすることによつて予算執行が適正化される。しかし責任としては予算執行職員だけの責任ではなしに、ほかの者もこれに基いて負うのだという意味で、法律題名一條との書き方が違つておるわけであります。三宅さんのお話の点はごもつともな点もありますが、私ども考え方としてはそういう考え方であります。
  7. 三宅則義

    三宅(則)委員 あまりしつこく質問をいたしませんが、私ども予算執行職員等というふうに解釈したい、かように考えておるものであります。  次に第四條の第一項に書いてあることでございます。会計検査院予算執行職員弁償責任をきめるわけでありますが、この検定する場合、事実が発生いたしましてから三年を経過いたしたときには、責任がないようにも解せられるのでありますが、どうも三年では短か過ぎるのではないかと思います。私たちは五年間くらい適用せられた方が適当であろうと思いますが、どうして三年ときめられたのでありますか。これはあとの方の法律関連がありますので、少しくまずいのじやないかと思いますが、いかがですか。
  8. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは会計検査院弁償責任検定するわけでありますが、あまり長い期間にわたつた後においてやるということはどうであろうか。これによつて会計検査院が一応の弁償責任確定する責任は有するのでありますが、もしそういうような非違があつた場合に、三年を過ぎたからもはやその責任がないのだということにはならないので、ただ会計検査院としては三年の間そういう権限を持たしたらどうかという考えでありまして、御趣旨のような点もあるかと思われますが、検査院に特別の権限を與えたというふうな規定に御解釈願つてはいかがかと思います。
  9. 三宅則義

    三宅(則)委員 今の河野さんの御説明はまことに不満足であります。第四條に「会計検査院は、予算執行職員故意又は重大な過失に因り」云々と書いてあります。重大な過失により、前條第二種の規定に違反した者のあることを認めるときにおきましては、これはやはり三年よりもむしろ五年くらいに長く延ばした方が、かえつて責任が明確になるのじやないかと思いますが、その辺はもう少しお考えをなすつて答弁をいただきたい。
  10. 河野一之

    河野(一)政府委員 会計検査院は、これを三年ということでなしに、毎年予算執行状況監査しておるわけでありまして、そういうふうに非常に遅れるということは、私は事実問題としてなかろうと思うのであります。またこれを非常に長くするということも一つ考え方でありますけれども予算執行職員責任をいつまでも非常に不安定の状態に置くというのも、いかがかと思うのでありまして、そういう点から三年という程度で区切つたらどうであろうか。三年よりは五年でよいじやないかという御議論も一応成り立とうかと思いますけれども、まずこの辺のところで考えておるわけでありまして、大体この程度が現在の実情に沿うのじやないかという考え方であります。
  11. 三宅則義

    三宅(則)委員 私の考え方によりますと、第五條の方には、会計検査院云々と書いてあり、最後の方に五箇年間としてあるのでありまして、私はこの第四條と第五條関連いたしまして、ぜひとも同じような寸法になさる方が、かえつて法律を明確にするゆえんであると考えるのでありますが、いかがでしようか。
  12. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは三年と五年とは一応つり合いをとつてあるのでありまして、まずこの三年間たつた後に、一般の民法上の責任追究を妨げるものではないのでありまして、これは一般司法上の原則によつて責任追究ができる。ただ会計検査院自分権限としてやるものは三年間をもつて限りたい。それからあとの方の五條の五年としてありますのは、会計検査院が誤つて検定した場合再検定を必要とするわけでありまして、これは三年の後の救済規定でありますから、三年よりは長いのが適当であろうという意味合いでわけたわけであります。
  13. 三宅則義

    三宅(則)委員 今の河野主計局長お話はどうも私満足が行かないのであります。もう少しく御相談していただいて、あとでもよろしゆうございますから、明快な御答弁をいだきたいと思います。  次に会計検査院のことを伺います。会計検査院が事実現段階におきまして、各官庁監督しもしくは監査をいたしておるわけでありまするが、どういう状況によつてつておりまするか。私はむしろ会計検査院が重大なる責任のものにつきましては、四半期ごとに厳重に監督すべきが当然であると思いまするが、いかがな状況でございますか。この際主計局長から承りたい。
  14. 河野一之

    河野(一)政府委員 会計検査院は約千人余りの陣容を擁しております。これは実地検査書面検査、いずれもあるのでありますが、政府の側の会計関係書類は毎月これを会計検査院の方に送付することになつております。たとえば支出報告でありますとか、収入報告徴収報告書証憑書類といつたようなものは毎月送る。おそらく一年に何万ページの厖大なものであります。その書面検査をやりまして、さらに実地に行つて検査しておるわけであります。従つて四半期ということでなしに、随時その検査を行つておるというのが実情でございます。
  15. 三宅則義

    三宅(則)委員 今の御説でありまするが、むしろ今までの問題の起りました実績から考えますると、大体一箇年以後になつておるように考えるのであります。私ども観点からいたしますると、大体今お説のように毎月もしくは四半期ごとに嚴重なる監督と申しますか、監査と申しますか、さような方法を講ぜられればけつこうでありまするが、ややもいたしますると一箇年もしくは二箇年も過ぎてから、間違いが発見される場合があるのであります。こういうことになつております原因は、会計検査院の人間が足らぬという意味であるか。あまりに事務が複雑しておるからという意味か。それともその責任あとにならなければならないという意味か。その辺をもう少しはつきりお示し願いたい。
  16. 河野一之

    河野(一)政府委員 会計検査院検査報告というものは、年度が過ぎて決算の形で出ておるわけであります。その間において何年も遅れて出ておるということは、ものによつてはありまするが、きまつたものから検査確定しておるわけであります。ただものによりまして、非常に複雑なものであるということになりますと、その分だけは検査確定を留保して、次の機会において国会報告するということになつております。二十三年度決算にいたしましても、この分は検査確定しておる、この分はまだ未確定であるというわけでやつておるわけであります。遅れるものはそういつた関係の調査なりが、重要なもので、複雑なもので、なかなか済まぬというものが、事実そういうふうになつておるのでありまして、たいがいのものはその年度内にやり、そうしてその年度を過ぎて次の国会提出する、こういうようなことになつております。政府の方としても契約関係、あるいはこういうものについては随意に契約をやることにいたしたから、通知をするというようなことで、会計当局としても随時連絡をしておるわけであります。その状況を見てこれはどうであろうか、こうであろうかということで、ただちにそのときに意見の表明もあつたというものも相当あるのでありまして、必ずしも遅れておるというほど私ども考えておりません。ただ会計検査院が、今後職能の上から見まして、もう少し充実して、また素質の優秀なものを入れるということはもちろんあろうかと思いますが、三宅さんのおつしやるように、現在非常に事務が澁滯して困つておるというふうにも考えておらない次第であります。
  17. 三宅則義

    三宅(則)委員 第四條の三のところに書いてあるのですが、「各省各庁の長は、予算執行職員故意又は重大な過失に因り」云々という場合におきましては、会計検査院が、検定前においてもこれを弁償せしめることができる、こういうふうに解釈するのであります。してみますと、会計検査院というものの決定が、たとえば一箇年に一回というようなふうにも見られることがあるわけですが、それはよほど前に毎月もしくは四半期ごと決定しておるというように考えておられますか。これはどういうふうな意味合いでありましようか、承りたい。
  18. 河野一之

    河野(一)政府委員 会計検査院は、もちろん全面的に検査されるわけでありますが、場合によつては見落しの面もございましようし、あるいは会計検査院検定前におきましても、検定が相当いろいろな事情を生じて、各省各庁の方でこの程度はつきりこういうことが起つたということで、最後的に確定的な検定を待たないでも、国の災害を一日も早く補填するということで、そういうふうな規定を置いてあるわけであります。会計検査院の方は確定的のものでありますが、各省各庁の場合においては、もちろん確定しておることと結果的に一致するということもあるかも存じませんが、場合によつて自分の貼るところによつて弁償責任を命ずる、こういう道を開いたのであります。
  19. 三宅則義

    三宅(則)委員 昨日前尾委員からもお尋ねがあつたと存じておりますが、こういうように予算執行職員等に対して、重大な責任を負わせるのでありますから、ややもいたしますとその担当官がいやがるということが、官庁にありはせぬかと考えますが、政府はどういうふうに考えておられるか、承りたい。
  20. 河野一之

    河野(一)政府委員 おつしやるところは非常にごもつともなところもあるわけであります。ただ現在までの段階におきましては、何と申しますか、少しルーズな点もあり過ぎたのではないか。もちろんこの予算執行職員に関する事項だけによつて予算執行が適正になる。それがすべてであるとは考えませんが、この予算執行について、相当今まで遺憾であつたと思うのであります。従つていろいろな事情を考慮いたしまして、こういう法律をつくるようになつたのでありまして、実際の適用にあたつては、会計検査院とも連絡を十分にいたしまして、そのよるべきところを明らかにして、安んじて予算執行職員事務をとることができるようにいたしたいと考えております。またこの法律によつて課せられております予算執行職員責任は、非常に加重だというわけではないと思うのでありまして、従来当然負うべきものが明確化されたというふうに思うのであります。通常職員が普通の注意と義務を持つて、その職務をやつでおりますれば、非常に困るとかあるいはとまどいするというようなことはないのだというふうに考えております。またそのつもりで指導したいというふうに考えております。
  21. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は多少本質に触れましてどうかと思いますが、これは各公団等においても、ゆゆしい問題がしばしばありまして、野党諸君からもまた與党諸君からも、たびたび質問があつたのでありますが、こういう予算執行職員というものの権限であります。これは小切手とかあるいはまた現金に類するもの、帳簿に記載するもの等につきまして、少くともその長として、課長あるいは部長として書類に目を通し、判を押す者があるのであります。ところが過去において、往々にいたしまして割合に若い者に大責任を負わせて、上の方は盲判を押しておつたという。それがありはしないかと考えますが、政府はどういうように考えておりますか承りたい。
  22. 河野一之

    河野(一)政府委員 会計関係職員というものは、全国で約三万くらいおります。もちろん支出官を一番上に、その補助官あるいは出納官吏契約担当官、いろいろあるわけであります。三宅さんのおつしやるような点も、場合によつてはなかつたとは申し上げられないのでありますが、今後この法律ができることによつて自分責任はつきりいたしますので、おつしやるような盲判ということは、おそらくこわくてできぬということになるのではないかと思つております。
  23. 三宅則義

    三宅(則)委員 私はこの法律関連いたしまして、政府当局注意といつては恐縮でありますが、一応参考意見を申し上げたい。というのは私ども観点からいたしますならば、会計職員というものは、まじめな者を採用しておる。もちろんその通りでありまして、ここに私ども考えといたしますならば、よほど素質のいい者をとるようにやつてもらいたい。今まではどちらかというと、あまり間に合わぬやつに会計をまかせるということも、多少あつたと思いますが、さようなことのないように、相当了解をいたし、また長になる人もある程度までよくそれを監査する、あるいは監督するというようにやつてもらいたい。同時にことに小切手とか現金に類するようなものに対する管理については、一人では絶対にいけない。二人もしくは三人の目を通してやる。こういう選定をしてもらいたいと思いますが、これに対して政府はどういうように考えておられますか。
  24. 河野一之

    河野(一)政府委員 予算執行職員あるいは会計職員というものが、従来あまり素質がよくなかつたという点はあるかもしれませんが、そういう点はおつしやる通りであります。大体会計事務というものは、各省仕事からいいますと、本来の仕事ではありませんで、いわば事務官吏みたいな仕事で、相当できるとすぐ本来の行政事務の方に持つて行かれるということで、本人もそちらの方を喜ぶ、あるいは栄転だと思う。会計のような地道な仕事をこつこつやるのは、いやだという向きもあつたのでありますが、今後は会計行政の基礎的な一種仕事でありますから、こういう優秀な職員をぜひ確保したい。それにはただいまいろいろ講習その他をやつておりますし、まつたでき得れば地位の向上、待遇の改善ということについても、今後考えて行きたいと思つております。最後におつしやつた現金関係でありますが、これは現在でも、たとえば小切手を切る場合においては、契約を認証する。その契約に基いて小切手を渡される。これは違う人がやつておるということで、二重にも三重にも目を通すという機会は、現在でも会計法建前からやつております。
  25. 三宅則義

    三宅(則)委員 これは私経済の方と多少関連がありまするから、官庁事項としましては違うかもしれませんが、場合によりますると上の長の人が、こういうようなものは当然やらなければならぬと言われて参りますと、多少伝票にある程度までふかしぎがあると考えておりましても、前の人もしくは上の人の命令であるという意味合いにおいて、やむを得ずそういう伝票を切る、こういう場合があるのと、もう一つ伝票を切らなくても、金銭の出入りにつきましては業者と結託いたしまして、場合によりましてはそれを横流しいたしたり、または割りもどしいたしたりするような者があつたと聞いております。現今はやかましくなつたと言われておりますけれども政府においてはそういうようなことにつきまして、詳しく監督しておられますかどうか。
  26. 河野一之

    河野(一)政府委員 公団の問題が起りましていろいろうるさくなつたのでありますが、現在の会計法規は、これはこの職に当る者の心がけということが、結局問題になるわけであります。その意味において、先ほど申し上げましたように、また会計職員の優秀なる者を確保するということが大切でありますが、現在の会計法規建前といたしましては、そういうことが起らないように、あらゆる方面から帳簿の組織もまた事務動き方も、一応そういうふうになつております。会計法規をこのまま適用すれば、おそらくそういつたことはない建前に一応なつております。ただこれはいろいろの心がけの問題もありまして、必ずしも今までその通りに行われなかつたという点も、認めるにやぶさかではないのであります。従いまして、こういう法律によつて会計法規に違反した場合には、こういう責任をとらなければならぬということをはつきりさせることによりまして、目的を達成し得るというふうに考えております。
  27. 北澤直吉

    北澤委員 この予算執行職員等責任に関する法律案によりますと、弁償責任の有無と弁償額検定会計検査、院が行う。弁償命令任命権者が行う。それから懲戒処分についてはその要求会計検査院がするが、懲戒処分をするかどうかは任命権者自主的判断にゆだねる。こういうふうなことであります。しかしながら、この問題は国庫に非常に大きな影響がありますので、私はもう少し国会というものがこれにタッチする必要があるのではないか、こう考えるのであります。もちろんこの法律案によりましても、弁償責任の減免について国会議決を要する。それから検査院がなしました事項については、検査報告に記載して国会報告するということになつております。大体においてこれは報告でありますが、私はこういう問題は国庫に非常に大きな関係がありますので、もう少し国会がこれにタッチするようにする必要があると思いますが、その点に対しまして、政府におきましてはどういうお考えでありますか。
  28. 河野一之

    河野(一)政府委員 国の財政を処理する権限は、国会議決に基かなくてはならないという憲法の規定があるわけでありますが、行政司法おのおのの分野の問題からいたしまして、会計事務は現在の行政部内の事務でありまして、会計検査院は独立の地位を持つておりますが、それも一種行政部内であります。自分のところで一つ責任を持つてつておりますので、これに対しての命令、直接的にあるいは徴戒をするとかいうようなことを他の機関がやるというのは、権限を分立した考え方から言うと適当でないであろう。そういう要求なりをするのはできることにいたしまして、これを実施する責任というものは、おのおの任命権者というものがやるのが、適当であろうというふうに考えておるわけであります。
  29. 北澤直吉

    北澤委員 そこで問題が会計検査院要求もしくはその任命権者職務に対しまして、もし国会がこれを適当でないと認める場合には、国会はどういう処置をとりますか。
  30. 河野一之

    河野(一)政府委員 会計検査院政府解釈が違うということもございます。その場合に国会報告が出ました場合に、あるいは政府措置を妥当とせられるか、あるいは会計検査院措置を妥当とせられるか、そのときに国会が御決定に相なりまして、その判断に基いて行政部内は処理する。これはもちろん政治的責任の問題になりますが、当然国会議決に従つて処理すべきものだというふうに考えております。
  31. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は前にもどりまして申し上げたいのでございますが、各予算執行責任者に対しましては相当の責任を負う、こういうことになつておりますが、たとえば何千万円費消したような場合におきましては、それを全額とるということが必要でないかと思いますが、ある程度安い月給とりは安い月給に応じて行くということになるのですか。それとも全額負担するという意味合いになるのですか。その点をはつきりしてもらいたい。
  32. 河野一之

    河野(一)政府委員 経済上の損害を與えた場合におきましては、弁償責任がある。その経済上の損害がどういうものであろうかということは、これは個々の場合にきめねばならぬことでありまして、場合によつては非常に大きな金額に上るということも考えられると思います。しかしそういう責任を負うた以上は、それを弁償せねばならぬということは当然であります。ただ実際問題として非常に気の毒なこともありましようし、また無資力なこともありましよう。そういう場合におきましては、国会議決に基いて適当な措置をとるということに相なろうと思います。その弁償の責任は、国会議決に基いてでなければ弁償されないという規定を入れましたのも、そういう趣旨であろうと思います。
  33. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は公団のことをひつばり出しまして多少恐縮に考えておりますが、公団等におきましては、かつては相当なやり損じといいますか、放漫といいますか、私企業、会社等においてはなされないようなことを平気でやつてつたというのが、ずいぶんあるということであります。こういうような場合におきましては、最後には国がこの責任を負う、こんなことになつてつたので、はなはだ私どもおもしろくないと思うのです。今度の法案が出て来た以上は、ある程度までそれは国の議決前においても、各員もしくはその責任者というものが、ある程度そこに責任を負つてもらいたいと思うのですが、これに対しまして政府はどういうふうに思つておられますか、承りたい。
  34. 河野一之

    河野(一)政府委員 この予算執行職員の場合の責任の問題としまして、犯罪のある場合は当然でありまして、これはその犯罪の場合もこの規定は排除しておるわけではありませんで、もしそれが不正な犯罪行為でありまするならば、当然刑法の規定によつて一般の裁判所でもこれに関與するわけであります。犯罪でありますればそれは告発することもありますし、ただ犯罪でない場合にどうなるかという問題であろうと思います。従つてこの予算執行責任の問題に関しましては、両方競合するという場合も多分にあるわけであります。そうでない場合につきましては、これは結局任命権者判断でありますが、犯罪でない場合におきましても損があるということになりますれば、当然その責任を明らかにして一般司法上の債権といいますか、司法上の請求権も当然行使し得るというふうに考えております。
  35. 三宅則義

    三宅(則)委員 あと大分つかえておりますからもう一点だけ聞いておきますが、時間がありましたらあとで伺いたいと思います。私の考えております事柄は、これは政府部内のことであります。予算決定いたして国会議決を経ております以上は、四半期ごとに新聞にでも予算状況などを御発表なさつて一般の国民も了承するようにしてもらいたいと思うが、政府といたしましてはそういうような事柄に注意を拂われまするか。それとも一箇年過ぎてから国会提出される御用意でありましようか。その点をひとつはつきりしてもらいたい。
  36. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは憲法の規定にも「内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。」これは九十一條であります。この規定がございまして、現在定期的にこれをやつております。ただ官報に載せておりますので、予算が成立しますれば、こういう予算が成立して、その内容はこうであるということ、それから毎四半期ごとに收入、支出の状況を公告いたしております。国庫金の状況あるいは政府の債務の増減の関係を公告いたしております。ただ一般的な——官報はポピュラーなものではありませんから、あるいはお目にとまらぬかと思いますが、もつと大衆的な方法でこれを公告するということについては、いろいろと考慮いたしております。予算自体がなかなかわかりにくいものでありますから、そういうところも啓蒙的な点から、やはり気をつけて行くということも必要であろうかと思います。
  37. 三宅則義

    三宅(則)委員 私はこれに関連いたしまして、ちよつとよけいなことでありますが、官報というものはこれはなかなかとりにくい。とつても、近ごろは大体配達するようになつて来ましたが、一月も遅れて来るような場合があつたりして、その時期を失しているというような場合がありますから、むしろ私は、政府がある程度まで民間の新聞紙を利用いたしまして、あるいは一年間特定せられてもけつこうでありますが、ある程度まで、もう少し詳細に御発表なさる御用意があると一番よいと思いますが、そういう気持は今持つておられませんか。
  38. 河野一之

    河野(一)政府委員 まあ新聞に発表するということも一つの方法だろうと思いますが、非常に紙面を厖大にとります関係上、なかなか広告料でも拂わないとやつてくれない問題でございまして、そういう点もございます。ただ私どもといたしましてば新聞のようなものばかりでなしに、これは議員の皆さんにも御配付申し上げたのですが、いろいろな予算の説明書類であるとか、あるいは国の予算とか、ああいう大きいものは各図書館、学校というような所に大体無償で配付いたしております。そういうことによつて、そういう機関を通じて、一般の国民に知つていただくというような方法を、現在採用しているわけであります。おつしやるような点もいろいろ考えているのであります。
  39. 前尾繁三郎

    前尾委員長代理 苫米地英俊君。
  40. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 昨日、途中になつたのでありますが、考えてみますと戰争の始まる少し前あたりから、大分いろいろと乱れて来たのであります。これはその当時の印象であつたのでありますが、上司監督地位にある人が責任を負わない。それはもうしかたがないというような見方で、当の責任者だけを追究するというような傾向があつたのであります。でありますから、以前ならば当然上司責任を負うべきところを、上司は平気でいる。そうして下の直接の当事者だけが罰を受けている。また、もつとひどいのになつて来ますと、大目に見てしまつて、当然処罰せらるべき者が処罰せられないで、転任ぐらいのところで済むといつたような傾向が大分あつたのであります。そういうことのために、私はこの予算執行職員等責任というものが、だんだんゆるんで来たというようなところも見られるのであります。ところが今度出る法規の中には、直接の職員たけ責めておつて上司に対する監督責任というようなものについては、一向規定がないように思われのでありますが、この点はどうなつておりますか。
  41. 河野一之

    河野(一)政府委員 上司に従来、苫米地さんのおつしやるようなことが、皆無であつたとは思わないのであります。ことに会計事務というものは、行政事務の下積みになつておる仕事でありまして、行政面の執行会計方面が粗雑に扱われる。ことに戰時中は何でも物を増産する、金のことはかまうなという時期もあつて、そういうことも多分あつたと思います。会計事務行政事務の基礎になるものでありますから、上司も当然責任を負うべきものである。それでこの法律にもこの規定を置きまして、上司会計検査院意見をただすことができるようにいたしましたし、それから上司命令によつてつた行為については、その責任上司に転嫁する、こういう規定も入れております。
  42. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 ただいまのお話はわかりましたが、監督が不十分であつたというような点について、この責任を負わせるというような規定がないように思いますが、その点はいかがでしよう。
  43. 河野一之

    河野(一)政府委員 監督が不十分という点につきましては、これはすべての問題についてあるわけでありまして、その点について会計事務だけを特別に扱うというのもいかがと思われます。もちろんこの上司責任については、一般管理上の責任がかぶせられる。この点にはかわりないと思います。会計事務だけを取上げて監督不十分というのも、この法律建前としていかがなものであろうかというふうに考えておるわけであります。
  44. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 ただいまの御説明はごもつともと存じますけれども、こ点がはつきりしておらない。ことに追究する金額が現在だと非常に多い。場合によると二十年も分割してとるというような、非常に重いことになつておりますので、もしそういう過失があつた場合に、それで追究されると絶望の淵に落ちてしまう。そこで今度はほかの方法で行けば、重大な過失と認めないで、これを何とかして軽減してやるという温情的な行き方をすると、その効果が現われて来ないというようになるのであります。私はそういう見地からしても、一方において予算執行職員等責任をこれだけ強く追究するならば、同時に監督責任についても、もう少し何とか考えていいんじやないかという気持がいたしますが、これは私の意見になりますから、これ以上は申し上げません。ただここで私はこういうことを考えるのですが、こういうことはできないものでありましようか。こういうふうなぐあいに予算執行職員等責任が非常に重い。その罰も重い。そこでこのおもしろくもない経理事務を熱心にやる。これに対しては、まあ将来給與の方については特別な考慮もするというようなお話もございましたが、私はこういう場合に、従来あつたボーナスの制度を復活いたしまして、直接上司の人がほんとうの勤務ぶり、誠実ぶりというようなものを勘案して、このボーナスをもつて給與をふやして行く、こういうことはよほど効果があると考えるのでありますが、この点はどういうふうにお考えでございましようか。
  45. 河野一之

    河野(一)政府委員 前段の問題、御意見だということでありましたが、ちよつと申し上げます。会計事務というものは何段階にもなつておりまして、契約責任、それから契約を認証する責任契約担当の責任、それからそれに対して支出の決定をする責任現金を出す責任小切手を出す責任、こういうふうに何段階もございますので、その損害がそれらの職員全部に関係することになりますと、これはその損害についておのおのが寄與した程度において、責任を負うことは当然であります。これはその間における監督責任ももちろんある程度入ることもあろうかと思つております。  それから賞與の問題でございますが、これは公務員に対する賞與の制度が昭和二十一年以来廃止されまして、多年の懸案になつておるわけであります。公務員の給與は一般の民間賃金との権衡を保つて、というふうな規定も公務員法にあるわけでありまして、民間で賞與制度が行われておるものを、公務員だけこれを考えないで行くということも、いかがなものであろうかというような気持は十分いたしております。ただしかし賞與という制度を非常に拡充して行きますと、一種の封建的な色彩がここに生れて来るわけでありまして、雇用主の方において自由な裁量によつて給與をやつて行くということで、労働の対価である賃金の性質がゆがめられるというような考え方も事実あるわけであります。過去における賞與というものは一律のものでありまして、ほとんど本給とかわりない。おのおの河箇月というような非常に大きな、賞與とも言えないようなものが、盆と暮れに出されておつたというような実情がありまして、いろいろ議論のあるところでございます。これはもちろん人事院の問題でありまするけれども、ほんとうの意味の賞與制度というものを復活してはどうかということは、非常に興味のある十分研究すべき問題だと思つております。私の方の所管ではありませんけれども、こういう点についていずれ何らかの措置考えたいというふうに、検討しておる段階でございます。その程度のことは申し上げてさしつかえないだろうと思つております。
  46. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 ただいまのお話通り、封建的なところがあり、それからして弊害のある点も十分ありますけれども、私はそういう弊害よりは、直接これを監督するところの上司が、その功績によつてほんとうの意味のボーナスを與えるということは、かえつていいのではないかと思いますが、この点十分御研究くださいまして、実現できるようにお願いしたいと思います。  それから次に移りまして処罰が大分重いようですが、私はこういう重い処罰でびくびくしたような、萎縮したような気分に持つて行くよりは、英米その他において行われておりますか、他に就職する場合に、前の雇い主の証明がないと雇つてくれない。これが向うの方の道義心を維持し、信用を維持するところの非常に大きな支柱になつておることは、御存じの通りだと思います。これは公務員ばかりでなく、女中でもそういうふうになつておる。その他の雇用人も全部そういう組織になつて縛られておる。であるから現在の雇い主から証明をもらつてでなければ、自分の将来の就職ができない。こういうやり方は、向うの信用程度の高い、また高くなつている一つの原因だと私は思うのであります。ですから、こういう場合においても、そういう制度を日本全国にたたちにとることはできなくても、公務員に対してだけでもそういうことをお始めになり、同時にこれは先般の御説明によりましても、容易に実施できない、研究中だというようなお話でございましたが、向うにあります信用保險、フイデリテイ・ギヤランティー、この制度を併用するならば、私は国家の損害も少くなり、公務員の反省を促すという点にも非常に効果があるのではないか、こういうふうに考えるのですが、この点いかがでしようか。
  47. 河野一之

    河野(一)政府委員 苫米地さんのおつしやる通り、外国におきましてはそういう制度があるようであります。それから会計といいますか、経理関係職員の資格は非常に嚴重であるようであります。日本の現在の状況においては、むしろ非常にルーズであるというのが実情であろうと思います。ただ現在会計事務職員のみならず、一般職員を採用いたします場合におきましては、前歴というものを調べ、それから特に会計職員につきましては、そういつた身元関係というものに愼重を期していることは事実であります。ただ法制的な制度にはなつていないわけであります。それからやはり信用保險とか身元保証とかいうような点は、あるいは考えられていいことではないかと思います。ことに民間におきましては、会計職員について身元保証というような制度をとつているところが相当あるようでございます。ただ現在の公務員の生活実情——会計職員だけ非常に給與がいいというわけでもございませんので、その辺に支障があろうかと思います。また信用保險の制度も、この法案を立案する前に、いろいろ一応当つてみたことがあるのでありますが、何しろ百分の幾つというような大きな金額になりますので、信用保險制度そのものが日本では発達していない。これがだんだん整備されるに従つて、将来そういうふうなことに相なろうと考えております。
  48. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 御説明ごもつともだと思いますが、私はまず第一に信用証明を雇い主が出し、それによらなければ公務員にはなれないというようなことになれば、これは民間にも自然に及ぶことだろうと思います。身元調査というのをやつておいでのことはよく承知しておりますが、それにしても前の行状記も、前の雇い主がはつきりしておれば、そこに照会すればはつきりわかるから、それもある程度信用できるということになりますから、これを実行すれば信用程度が高まる。信用程度が高まつたときに、信用保險をかけておけば簡單にできる。こういう段階にしたらよくはないか。こんなふうに考えておりますが、この辺はなお御研究願いたいと思います。それからもう一つございますが、国会の決議に基いて減免するということであります。この国会の決議を要求する條件、またはそういうことを要求する人、こういうものはどういうふうになつておりますか。それをお伺いしたいと思います。
  49. 河野一之

    河野(一)政府委員 現金出納官吏弁償責任につきましては、大赦という制度がありまして、その責任を減免するということがあつたわけであります。新憲法になりまして、いかがなものかと思われますので、国会が財政を処理する権限について、国会議決に基かなければならないという趣旨で、こういう規定を入れておるわけであります。このやり方といたしましてはいろいろあろうかと思うのでありますが、アフリカあたりでは個々の人に対する法律をつくつておるようであります。こういう具体的な行き方で参りますか、あるいは條件をきめて、かかるものについてある程度政府の裁量の余地を残していただきますか、これも法律案の形にいたしますか、決議案の形にいたしますか、その点については目下検討している段階でございます。その辺につきまてはいろいろ国会の御意見ども拜聽いたしまして、きめたいというふうに考えております。
  50. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 そうすると、こまかい手続、條件というようなものを将来きめられるときに、これは政令ででもお出しになるようなお気持でありますか。
  51. 河野一之

    河野(一)政府委員 政令で出すという考え方はないのでありまして、こういう人を減免したいという具体的な場合を、多分出してお願いするようになるのではないかと思います。貸付金にするとか、何年の年賦にでやるとか、そういつたような国の債権の効力を変更する場合においては、国会議決に基かねばならぬという財政法の規定もございますので、場合によつてはそれと同じような趣旨で扱つて行きたいというふうに考えております。
  52. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 そういうふうになりますと、これはボーナスの封建制よりもつと大きな封建制がそこに現われて来て、規矩准繩によつてこれをきめて行くということになるといいのですけれども、そのときの当局者の恣意によつてそういうことが提案されるということになつて来ますと、運動をするとか、政治力が動くとかいうことがあつて、はなはだまずいことになりはしないかと思いますが、その点いかがでございましようか。
  53. 河野一之

    河野(一)政府委員 これはもちろん一定の標準を立てねばいかぬと思います。従来大赦の際におきましては、こういう程度のものは免除するとか、あるいは何日から以前に起つたものはどうするとか、そういうふうなことできまつたので、個々的にこの人は減免するけれども、この人は減免しないとかいうことにはおそらくならぬだろうと思います。ただ議決をいただく形として、それに該当するこれこれのものというふうになることも考えられますが、その場合には、該当の人すべてに適用されるような行き方で行くことになろうと思います。それから個々の人の過失程度のこともございますし、金額の程度のこともございます。そういつたようないろいろな條件の組合せによつて、一定の規矩準繩ができるというふうに運用いたしたいと考えております。
  54. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 この点はどうもまだ多少不安を感じますが、なおよく御研究願うことにいたしまして、私の質疑を打切ります。
  55. 前尾繁三郎

    前尾委員長代理 竹村奈良一君。
  56. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大体各委員によつて質問されましたので、一、二点だけお伺いいたします。  こういうふうに嚴重な賠償責任を負わすということになると、今度こういう職員を採用する場合に、たとえば賠償の責任を負わすために、ある程度の財産を持つておるというような点を一応調査することになつて、家に財産、資産のないものはそういう職員に採用されないというようなきらいが生れて来ると思うのでございますが、これに対してはどういうふうにお考えでございますか。
  57. 河野一之

    河野(一)政府委員 財産のある者しか会計職員に採用しないというふうなことは、考えておらないのでございます。要するに、この法律によつて会計法規を正確に遵守して行きますならば、こういう損害が起らないのが当然なのであります。要はそういう職員事務執行、その公務に対する責任観の問題でありまして、その財産のいかんによつてこれをきめるというふうなことは全然考えておりません。
  58. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういうことをやらなければ、別にこの法律に適合しないので弁償する必要もない。従つてそういうことは考えていない。一応理論的にはそうなるのですけれども、しかし国に損害を及ぼさないというような建前から、責任地位にある者が、今後そういうことがあつたら賠償ができるようにしたいというので、採用のときに財産等を調査することになるのではないかと考えるわけであります。もちろん理論的には必要ないと言われればそれまででありますけれども、結局当事者に責任を負わして、監督地位にある者が責任をのがれるという形になつて、そういう弊害が起ることを心配するのですが、その点はどうですか。
  59. 河野一之

    河野(一)政府委員 私どもはそういうふうに考えておらないのであります。先ほども申しましたように、誠実に会計法規を遵守するという責任観さえあれば、そういつた憂いはないというふうに考えております。この規定にもございますように、会計検査院自分判断が正しいかどうかということを照会する権能を與えておりますし、上司に対して意見提出することもできるわけでありますから、そういう点の心配はない。またそういうふうに運用すべきものであろうと考えております。
  60. 竹村奈良一

    ○竹村委員 これを見ますと、出納者に対していろいろなことがきめられておりますけれども、しかし不正事実は、單に出納者だけでなく、国有財産の処分とかその他いろいろな面に非常に多いのです。一例をあげるならば、最近大蔵委員全部が横浜の税関に参りましたときに聞いた話でありますけれども、建設省の人が、あの横浜税関のそばにある国の土地を民間の運送会社に貸して、国が使用することができない状態になつている。そういうような場合、そこに不正があつたとかどうとか即断するのは誤りかもしれませんけれども、国家が必要なものをわざわざ民間の営利会社に貸し與えている事実は、何かそこに不正があつたという感じをわれわれ持つのであります。こういうふうに、單に收納する者だけでなく、処分する方にも不正があるように思われるのであります。これに対して取締り規定を設けよというのではないけれども、一方だけ責めて一方をほうつておくのはつり合いがとれぬ。こういうことに対しては一体どういうふうに考えておられるか。
  61. 河野一之

    河野(一)政府委員 御質問の点は、予算執行職員でなしに、その他財務方面についても考えてはどうかということだと思います。これはおつしやる通り一つの問題でございまして、そこまで広げるということも考えられるわけであります。ただ現在の実情といたしましても、こういう画期的な法律をつくるについて、その辺まで及ぼすかとうかという点については、なおよく検討いたしてみたいという考えがあるのであります。たとえて申しますれば、ただいまの国有財産の例もございますが、税務署長が低い課税の決定をいたした、故意にせずとも過失でやつた場合に、その税務署長は税金をとらなかつた責任を問われるのかどうかといようなところまでなつて、かえつて苛斂誅求というようなそしりを招いてもいけません。現在の税務の実情とよくかみ合せてやらなければならぬ。国有財産につきましても常に高い値段でばかりやることになつて、国家の收入があげられないというような実情もいろいろありますので、具体的の場合に、歳入面においてはどういう程度において国家に損害がありたかないのか、その辺をよく検討いたしまして、できるだけ近い機会において、そういう面も予算執行職員と同じように扱う、この法律の範囲の適用を広げて行くというふうに考えておるわけであります。ただいまのところとしては、この辺のところにとどめておきたいという考えです。
  62. 竹村奈良一

    ○竹村委員 少々誤解がありますので、実はそういう取締り規定を広げよという意味ではないのでありまして、実際こういうような出納者にだけ、出納條件だけ重い罰則を重ねて、片方はほつておかれるというところに問題がある。少くともこういうようなことを実際やらねばならないと言いますけれども、実際はそういう單なる下級職員の人に問題があるのではなしに、私はもつと上の方に問題があるんじやないかと思う。そのものをやつて、下の方はほつておいてもいいじやないか、こういう感じを持つので、そう言つておるのでありまして、実際はそういう面をやらなければ、不正の根源はなくすることができない。しかももう一つは、たとえば下級職員の方においては、先ほどから各委員によつて問題にされております賃金ベースの関係もありまので、いろいろな関係があつてやむにやまれず、その不正を正しいとは申しませんけれども、そういう場合も往々にあるのであります。しかし実際高級官吏、あるいはまたその他のいろいろな部外の力関係等によつて行われておる不正というものが、その根源のおもなるものであると私は思うのでありますけれども、これに対して一体どういうふうに考えておられるか。單なるこれだけでは、上の方も一応責任があるというだけでは問題にならないのでありまして、もつと根本的なそういうものに対する高級官僚の不正に対しては、どういうふうになさるか。
  63. 河野一之

    河野(一)政府委員 予算執行職員を先ほど三万と申し上げたのであります。これは竹村さんは、全部下級の職員だというふうにお考えになつておるのでないかと思うのでありますが、予算執行職員はおつしやる高級の官吏も含んでおるのでありまして、各省の局長はみな支出負担行為の担当官でありまして、会計課長支出官であります。それから認証官も各省おのおのいろいろ違いますが、末端まで行きますれば三万程度になりますが、その中心をなすものは相当地位の高い職員でありまして、この職員だけが責任をのがれておるというようなことでは、実際はないのであります。会計法が最近に改正されまして、そういうふうなやり方になつております。もちろんこれに対する監督責任が、最終的には各省大臣にあるということになつております。
  64. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 今回のこの改正法につきまして、範囲を拡大して、善良な管理者の注意を喚起するということは、非常にいいことではあります。しかしこの違反の行為を審理する場合において、往々にして今までの税の問題にしてもそうですが、どうも書面審理になりがちな点があるのでありまして、今の憲法から考えても、今後この口頭審理なりあるいは実質上の調査をして、十分その妥当なる決定をするというぐあいに持つて行かなければ、この法案が生きて来ないじやないかという心配があるのでありますが、今後もしそういう事態が発生した場合の審理状態について、現在のような書面審理でなく、一般の裁判と同じように実質審理をさせる、並びに弁護人をこれにつけるというようなことができるでしようかどうか。
  65. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは会計検査院責任検定をいたしました場合に、この責任に対して異議がございます場合、各省、各庁の長でも、各省大臣でももちろんでありますが、予算執行の当該の責任者でも、自分は免責の事由があるというふうに思います場合においては、再検定を請求する。再検定の場合においては口頭審理をやるということになつておりますので、そうしてまたそれは職員の請求があつたときは、公開してやるという建前になつておりますので、そういう点は公明正大に行われるということを期待しておるのであります。
  66. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 それは司法上の裁判と同様に、そこにいろいろな参考人なり、あるいはまた弁護人を付するということはできませんか。
  67. 河野一之

    河野(一)政府委員 弁護人を選任したり、あるいは証人を出席させたり、そういうことができる建前にこの法律でいたしております。
  68. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 それから一つ問題がありますが、いずれにしてもこの問題はいろんな民事上の複雑な問題が起きて来ようと考えます。たとえば出納官吏が盗難にあつたという場合には、盗難上の責任において賠償金が確定した場合は、おそらくこの盗難にあつた金額というものは、その被害者に当然移転しなければならぬと思うのです。もしこれを民法上の規定によつて当然に被害者に移転すれば、被害者が民事上の訴訟によつて、その加害者に対して追究できるということになるのですが、実際においては下級官吏においては、おそらくこれを裁判にして、民事上の追究をするということは、非常に困難になつて来るようであります。こういうような場合に、法律上当然移転する場合を考えられますが、そうなつた場合に、放置しておくと時効になつてしまう。こういう場合に政府で何か被害者いわゆる盗難によつて損害を生じた場合、出納官吏責任追究する場合に、責任確定する。そうなると当然この官吏に移転してしまう。移転するけれども、おそらく訴訟費もなく、この追究はできないように考えますが、こういう点まで政府でお考えでしようかどうか。
  69. 河野一之

    河野(一)政府委員 出納官吏が持つております金は公金でありますので、それが盗難にあつたという場合に、出納官吏故意または重大な過失があつたかどうか、こういう問題になろうかと思います。その場合に国の方自身としては、加害者に対して当然責任追究できることは当然であります。もしそれが出納官吏の方で責任があるということになりましたならば、これも追、究せざるを得ないわけでありますが、その訴訟費用の問題となりますと、これは場合々々によりまして、もしそれがその場合犯罪でありますれば、刑事訴訟の附帶私訴ということで簡單にできるということになりますので、非常に訴訟費用がかかつて困るということも、ある場合によつてはあろうかと存じますが、まずそういうような事態を生ぜしめない。直接加害者に対して請求をやるというような方向へ行くのが、事情によつては適当な場合もあろうかというふうに考えます。
  70. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 そうすると、政府ではその盗難にあつた場合に、加害者に対して政府でも請求できる。しかし決定によつて権利がこの出納官吏に移転するということになると、この出納官吏の民事上の請求もできるという場合に、そうすると二本建で行くものでしようか。一方だけの請求でしようか。時効との関係で非常に官吏は、いろいろなそういう重大な過失があつたということになりますが、時効等によつてこの官吏が追究できない場合もあり得ると考えます。両建で行くものでありますか。あるいはまだそういう場合には検定によつて当然拂つたのだから、その出納官吏個人の請求権として規定して行くものでしようか。
  71. 河野一之

    河野(一)政府委員 具体的な問題になりませんと何とも申されないのでありますが、盗難によつてなくなつたというときに、出納官吏責任があるかどうか、故意または重大なる過失があつたかどうかということできまることでありますが、もしあつたということになりますると、国といたしましてはその加害者だけでなしに、被害者に対して、すなわち出納官吏に対して請求権を有することは当然であります。ただこの加害者の方から金が入るということになりますと、その限度においては責任を免れるというような、実際上の運用になるのじやないかと思つております。
  72. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 そうするとこの実際上の損害上の訴訟のような場合には、もしその訴訟の確定するまでは、この賠償の範囲は決定的ということになるのですか。
  73. 河野一之

    河野(一)政府委員 何人も裁判を受けられる権利を侵害することはべきないのでありまして、この会計検査院は一応の検定でありますが、それで承服して納めればそれでもう確定するわけであります。さらに再検定の手もあり、また裁判所に出訴することももちろん許されるわけであります。争いがある場合には、最終的に裁判所において具体的な金額はきまることに相なろうかと思います。裁判係属の間は当然時効は進行しないということに相なりましようから、その点はおつしやるようなことはないのではないかと思います。
  74. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 その点ぜひひとつ政府でも御研究を願いたい。民事上の問題と公法上の問題についてどうもはつきりしないようですから、その点をぜひ愼重に御研究願いたい。
  75. 小山長規

    ○小山委員 各委員からいろいろ質問があつて、大体私の疑問としている点がおおよそはわかりかけておるのでありますが、二、三、ごく師即にお伺いしておきたいことがあります。  この法律趣旨においてはわれわれはむしろ全面的に賛成で、ただ先般他の委員会で田中委員からもあつたのでありますが、一番われわれがおそれることは、ことに第七條の関係のために、「会計検査院は、予算執行職員会計検査院法第三十七條第二項の規定に基き、支出等の行為に関し疑義のある事項についてあらかじめ書面をもつて意見を求め、これに対し表示された意見に従つて支出等の行為をしたときは、当該支出等の行為については有責任検定をし、又は懲戒処分要求をすることができない。」この規定によつて行政の澁滯が相当起るのではないか。これが一番心配なのであります。これに関連してお伺いするのでありますが、この法律施行後において、このような会計検査院に付して意見を求めるというような事態は、相当たくさん起るお見込みでありますか。またそれによつて、現在の検査院は人員が足りないと言つておりますが、どの程度の人員の増加を来すお見込みでありますか。それから伺つておきたい。
  76. 河野一之

    河野(一)政府委員 それによりまして、ある程度事務がふえるということは想像されます。どの程度こういうような障害があるかは、ちよつと私も見当がつきかねるのでありますが、個々の問題についてあることもありましようし、それから一般的な問題、法規の解釈その他についてあることもあろうと思いますが、そういういろいろな紛糾した事態を起こさないために、会計検査院及び政府部内で、いろいろこの法規の具体的な問題について解釈を統一して、これを一般に周知せしめる。またある会計職員から照会して来たことにつきましては、こういうふうな解釈をしておるというふうな具体的な事例を周知させるというようなことによつて事務の煩雑という御心配の点を、できるだけ軽くして行きたいと思つております。何しろ初めての試みでありまするので、いろいろ当初は摩擦もあるかと思いますが、できるだけそういう点を除いて参りたい。執行状況によりまして、十分どの程度の経費を要することになるのか、実情によつて勘案して行きたいと考えております。
  77. 小山長規

    ○小山委員 この「支出等の行為」というのは第一條、第二條によりまして契約まで入つておるはずであります。その場合に、たとえば建設省の担当官が土木工事の請負をやらせる、あるいは一般会計官が事務用品の納入の契約をやる。担当官事務用品の場合、その品質について自信のあるところまで確めないと、この契約はできないということになるのであろうと思いますし、まだ土木工事の場合にしても、その請負業者の指名入札に付する範囲の人々に対するいろいろな実情調査その他について、重大な責任があるわけでありますが、そのような弁償責任契約相当官にまで及ぼされた結果、これらの人々は非常に憶病になるであろう。そうして実際自分では決しかねて、そのためにその都度具体的な事例について会計検査院に対してお伺いを立てる。これは免責の條件を得るために、あらゆる会計担当官がその都度会計検査院に対してお伺いを立てる。こういうことになつた場合は、いつかも先般の委員会でもお話がありましたように、法律百七十一号では支拂いの遅延が起りましたが、今度は契約の遅延が起りはしないか。これを非常に心配するのでありますが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  78. 河野一之

    河野(一)政府委員 場合によりましてはおつしやるような点が皆無とも言えないと存じます。しかし私どもは善良なる管理者の注意で、会計執行職員が健全な常識でやるならば、これはそういう取越し苦労をする必要がないので、またそういうような法律の運営にすることが適当であろうというふうに考えております。個々の契約について、もうすべて行くというふうな運営にするというのは考えものでありまして、中の重大なるものについて、いろいろ人によつて見方が違うといつたようなものについて、そういう問題が起るのじやないかと思います。契約につきましても、納入せられたものにつきまして、さらに検收をするというような制度もございまするし、その検收の結果によつて週初の契約と違つたものであるならば、それを解除し、あるいは減額するということもあるのでありまして、要は具体的な個々的な事実について、適正な運用がなされて行くというふうに考えておるわけであります。
  79. 小山長規

    ○小山委員 健全な常識に従つてやるのであるならば、この法律はそう取越し苦労をする必要はなかろう、こういうことでありますが、この第七條はそういう意味では会計担当官に逃げ道をつくつてつて、そうしてそこで非常な事務の澁滯が起るだけの弊害しか出て来ないというような感じがするのでありますが、第七條を削除した場合には、この法案全体を通じてどういう結果が起りますか。私はこれはなくともいいのではないかというような感じがするのであります。
  80. 河野一之

    河野(一)政府委員 小山さんのおつしやるような考え方一つ成立するわけであります。会計職員もほんとうに健全なる常識でやるならば、そういう必要がないじやないか。これは一応そういうふうに考えられることもあるわけであります。ただ今でもいろいろ問題になるようなものにつきましては、会計検査院に時々に問い合せてやつておるようなものも相当あるのであります。日常のルーティンのものについては、そういうことは考えられないのでありますが、契約が適当であるかどうか、あるいは支出が適当であるかどうか、予算の目的に反しておるかどうか、予算の目的の問題としましては大蔵省がいろいろ御相談に乗りますが、そういうふうに重要なものについては現在でもこういうことをやつておるわけであります。ただ書面でなしに、いろいろそういう意見を聞いて指示をやつておる、こういうようなことでありますので、これを法制化いたしまして、そういつたものについては免責をする。会計検査院もあらかじめこれはいいと了承したものでありますので、これは有責任検定をしない方かよかろうというような考え方で入れた次第であります。
  81. 小山長規

    ○小山委員 私が申し上げているのは、従来もそういう会計検査院規定もありますし、従来もやつておるでありましようが、この免責の條項が入つておるからみなここに逃げ込んでしまつて、そのために行政の澁滯が起りはしないか。だからそのくらいならば、いつそのことこの免責の規定をやめて、第七條をやめて、それ以外の條項を適用して行つても、予算執行職員監督あるいはそれの綱紀の粛清というようなことはできる。ただこの條項があるために、実際迷惑をするのは国民であつて予算執行職員は、これで一応自分たちの立場というものは守れましようけれども、そのよつて来るところの弊害は、全部国民に転嫁される。支拂いの遅延の防止法というものをつくらなければならなかつたと同じように、またこの第七條の弊害を除去する法律を、あらためてつくらなければならぬというような事態に来やしないか。それならばいつそのこと第七條を削除したらどうだろうか。しかしあなた方立案者の立場から言つて、第七條を削除すると、どういうところに困つた問題が起つて来るかというような、何か積極的なことはございますか。
  82. 河野一之

    河野(一)政府委員 おつしやるような点もわからぬこともない気がいたしまするが、やはり現在の会計職員というものは、身分を保障されておるわけではありません。給與の点もほかの職員よりいいというわけでもございません。ただ現状を基礎として考えてみますときに、非常に重大な責任を負わせるという場合におきましては、一方これに対する緩和の措置、何か責任をゆるめてやるという考慮も一方にいたしませんと、小山さんのおつしやるようないろいろな問題が出て来るだろうと思います。お考えではあるのでありますが、ただいまのところ予算執行職員の現在の状況、ことに素質とかいろいろな点を考えました場合に、それだけの能力のない者に全面的な責任を負わすということによつて、かえつてむずかしい事態を招くのじやないか。考えようによつては、こういう措置があることによつて、かえつて澁滯をしないというような考え方もできるわけであります。これは初めての措置でありますので、実行した結果を十分検討してみたいと思う次第であります。     〔前尾委員長代理退席、北澤委員長代理着席〕
  83. 小山長規

    ○小山委員 私もただいま河野主計局長の言われた予算執行職員の身分保障なり、あるいはこの人たちに対する特別な手当なりというような制度が両々相またなければ、みなこの條文に逃げて行つてしまいはしないかという気もするのであります。従つてこの條文を削除するということについて、削除したために、予算執行職員はますます大恐慌を起すのか、あるいはこれがなくても、その辺のところはどうにかなつて行くのかということの説明が、実はもう少しほしいのであります。  それからもう一つは、ただいまおつしやつた予算執行職員に対して、これだけの重大な責任を負わせる以上、この人たちに対しての特別な手当とか、あるいは信用保險というような制度を、あわせてお考えになつておるのでありますか。その点はいずれそのうちまたぼつぼつ考えようというようなおつもりなのか。この実行状態と見合せつつ、これは早急に立案されるおつもりでおるのか。それをあわせてお伺いしたいと思います。
  84. 河野一之

    河野(一)政府委員 現在の段階におきましては、先ほど申し上げましたように、会計検査院と実際上連絡をしておるというような関係もございますので、こういうふうな規定を置いておいた方がいいのじやないかというように、私ども起案者側といたしましては考えておるわけであります。  それから給與の問題でありますが、実はこの問題を立案いたします際に、そういう具体的なものでは困難でありますし、相当時期を要しますので、そういう根本的な方針を一本うたい込みたいというふうに思つてつたのでありますが、いろいろな事情で実現に至りませんでした。ただ今度は職階制が確立せられますので、職階制では、責任の重い者には給與も当然それに応ずる給與にするという建前でありますので、人事院において職階制を立案せられます場合には、まずこのことを考えていただくということで、そういう方面の相談も現在いたしておるというような段階でございます。
  85. 小山長規

    ○小山委員 これは誤解があるといけませんが、私は予算執行職員に特に給與を厚くせいということで、言つておるのではないのでありまして、こういうような人たちは万が一の場合の積立金というものがあるのです。民間会社にはそういうものがある。だからそういうような制度をつくつておいて、そしてその当該の職におる間は、一定の金額を積み立てておいて、無事にそれが済んだ場合に初めてその本人に給與してやる、こういうような制度を打立てる。あるいはそういうようなことが予算上不可能であるならば、信用保險というような制度を設けて、それを国費で負担して行く。そして万が一事故があつた場合にそれを補填するというような、いずれかの制度を設けるべきであるという趣旨であります。話は前にもどりますが、第七條は要するに予算執行職員に対して、そういうような信用保險の制度もない、あるいは特別な給與の制度もまだ打立てられていない、そういうことで出るから、このような逃げ場をつくつておるのである。ただそれだけの理由でありますか。それともそれ以外の理由があつて、第七條というものができておるのでありますか。
  86. 河野一之

    河野(一)政府委員 法規の解釈というものは人によつていろいろ解釈があるわけでありまして、会計法規解釈というものは、もちろん会計検査院だけでなしに、行政部内としても解釈があるわけであります。もちろん最終的には最高裁判所がその権限を持つておるわけでありますが、かりに行政部内でいいという解釈にしたところで、もし最高裁判所で違つても困るというようなことで、できるだけ解釈の統一をとらねばならぬ性質のものだと思います。従つてそういう意味合いにおきましても、今後会計検査院といろいろ具体的な事例についても対象にして、その確定的なものをきめて行かなければならぬと思いますが、現在の段階におきましては、そういつた問題につきまして自分解釈がいいかどうかというような点について、場合によつて会計検査院検定があるわけでありますから、そういう点についてあらかじめ意見を聞いておくことは、必ずしも避けるべきことではないというふうに考えるわけであります。  もう一つ、小山さんのあとの方でおつしやいました信用保險とか積立金という制度でありますが、これはおつしやる通りでありまして、現在出納職員、ことに鉄道あたりにおきましては、現金出納をいたします者に出納手当というものがございます。それで損をいたしましたならば、それで補うということでありますが、執行職員になりますと、その金額をどの程度積み立てたらいいのか、あるいは手当としてどの程度出したらいいのか、そういつた点もあわせて考える必要があると思つております。必ずしも給與をよくするという一点張りではなしに、そういつた制度も考え合せて、今後予算執行職員地位責任というものを、それにふさわしいものにするという点とあわせて考えて行きたいと思つております。
  87. 小山長規

    ○小山委員 私はこの第七條削除論者でありますが、皆さんの御意向も伺つて、また態度をきめることにいたしておきます。要はこの第七條があるために事務の澁滯が起つて、国民に非常な迷惑をかけるというような事態がなければいいのであります。それでおそらく検査院の方は、こういうふうな問合せがあつた場合には検査会議にかけるとが、あるいはいろいろな内部的な重要な意思決定をするのでありますから、内部的にもいろいろな手続を経てこの回答が出されることになるのは、これは必然であろうと思います。そのために国民が迷惑をこうむつてはたいへんであるというのが、実は私ども趣旨でありますから、もしこれが削除しないでもよろしいという結論に、当委員会の結論が出ました場合には、その澁滯が起らないだけのあらゆる措置は、ぜひ政府の方で講じてほしいと思うのであります。  次にお伺いしますが、第四條の第一項のしまいの方に「但し、その事実の発生した日から三年を経過したときは、この限りでない。」とこうありますが、この三年というのは不変期間でありますか。時効によつて中断される期間でありますか。これを明らかにしておいてほしいのであります。
  88. 河野一之

    河野(一)政府委員 不変期間であります。
  89. 小山長規

    ○小山委員 そうしますと、この三年を経過したときというその経過した日は、いつが経過した日なんですか。会計検査院が事実を発見したときでありますか。それとも損害が発生したというふうに認定したときでありますか。
  90. 河野一之

    河野(一)政府委員 そういう支出等の行為をして国に損害を與えた、そういう事実のあつたときであります。
  91. 小山長規

    ○小山委員 そうしますと実際はたとえば検査官が派遣されて、いろいろ調べておる間に、その損害を與えるべき行為があつてその事実が発見された。発見されたが、実際損害ありと認定したのはそれから数年の後であつたというようなときでも、これは入るわけでありますか。そのときには入らぬのでありますか。
  92. 河野一之

    河野(一)政府委員 事実が発生してから三年を経過した場合においては、会計検査院としては検定ができないというだけでありまして、一般司法上の原則に従つて、国がその請求権を持つということはかわりないわけでございます。ただ会計検査院が特別の立場でやるのは、この程度の期間にとどめようというふうにいたしてあるわけであります。
  93. 小山長規

    ○小山委員 どうもそこのところに行き違いがあるようですが、この事実の発生した日というのは、これはもう客観的にわかるわけでありますが、その発生した日が発見されたときにはまだ三年たつていなかつた損害の認定が行われたときには三年経過しておつたというときには、この條項は損害の認定をすることができない、こういうことになるわけでありますか。
  94. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは三年以内に検定をしなければいかぬ。言葉はちよつと悪いのですが、すでに審理をしておる間に三年たつということになりますと、これはできないというふうに考えております。
  95. 小山長規

    ○小山委員 それはどうもおかしいと思うのです。見つげたけれども、いろいろ調べておる間に時間が経過したらだめだ。こういうのでははなはだおかしい。だからそういう意味で、私は不変期間でなくて、時効中断の期間にすべきではないかと思うのであります。何か委員の間にも異議があるようでありますが、この点は間違いないですか。
  96. 河野一之

    河野(一)政府委員 三年内に検定をするという趣旨でありますから、おつしやるようなところもあるかもしれませんが、私ども解釈としてはそういうふうに解釈しております。
  97. 小山長規

    ○小山委員 次に今度はこの損害の認定であります。これは條文によると最終的に会計検査院が認定するというふうに読めるのでありますが、いやしぐもある一人の人間が債務を負わなければならぬという事態を、裁判所以外のものが最後的に認定するというのは、いかにもおかしいように思うのでありますが、この点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  98. 河野一之

    河野(一)政府委員 これはその個人において不服があれば、もちろん裁判に出訴できるわけでありまして、最終的には裁判所で争えばそれが確定的なものになるわけでありますが、会計検査院検定いたしたものにつきまして、当人がそれに服従するということになれば、そこで最終的に決定したということに相なろうかと思います。裁判に出訴する権利を奪つておる趣旨ではございません。
  99. 小山長規

    ○小山委員 しかし法律の法理論から言うと、これは特別法だと思います。その特別法でそういうふうな、特に出訴する規定がないということになると、一般にはこれでおしまいなんだ。弁護士までつけて裁判類似の行為をやつておるのでありますから、ここに検定に不服の場合には裁判所に出訴することができると書いてないと、これはここで最終的にきまるというような法理解釈になるのではありませんか。
  100. 河野一之

    河野(一)政府委員 私はそういうふうなつもりでは考えておらないのでございまして、憲法にも裁判の点につきましては保障いたしておりますので、この法律でそういうふうな例外を設けるわけには行かない。ただ会計検査院がこういう会計法規解釈なり適用なりにつきましては、またあるいは損害の認定につきましては、多年経験と知識を有しておりますから、まずその検定に従つても間違いがないであろうという意味で、またその損害の補填を早くするといつたような意味においても、会計検査院の職制にかんがみて、こういう権限を與えたというふうに考えておるわけであります。
  101. 小山長規

    ○小山委員 そういたしますと、検査院最後検定があつた場合にも債務名義は発生しない、つまり国家はそれに対して執行の権利を持たないのだ、こういうふうに解釈するのでありますか。
  102. 河野一之

    河野(一)政府委員 本人が承服いたしますれば、その検定は最終的に確定するというふうに考えております。
  103. 小山長規

    ○小山委員 そういたしますと、その債務名義はどういうふうにしてとるのでありますか。つまり相手方が服従したから、それではそれによつて執行するという場合の債務名義は、どういう形で出て参りますか。
  104. 河野一之

    河野(一)政府委員 債務名義はあることになります。各省、各庁の長が債務名義の請求権を持つわけでありますから、それに基き債務名義が確定するというふうに考えます。
  105. 小山長規

    ○小山委員 そうすると裁判と同じことになるのでありますが、一応本人がそれでしかたがあるまいというふうに納得して、あとでどうもあれはおかしかつたというので、執行を行う直前に出訴することができるのでありますか。
  106. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは事実問題でどういうようになりますか。(「法律問題です」と呼ぶ者あり)法律問題でありますが、現在出納官吏についての弁償責任というものは、この法律以外にあるのであります。今までの考え方から行きますと、そのときにおいて請求権を獲得し、その際に異議を申し立てなければ、それで最終的にも確定してしまう、こういうふうに考えております。
  107. 小山長規

    ○小山委員 そうしますと、そういうふうな裁判を用いずに、債権が確定する法律がほかにもあるのでありますね。行政内部において、下級職員に対する債権が確定する法律がほかにありますか。
  108. 河野一之

    河野(一)政府委員 現在の会計法に、出納官吏責任に関する規定がございますが、それは同じような扱いになつております。
  109. 北澤直吉

    北澤委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。
  110. 三宅則義

    三宅(則)委員 もう二、三点だけお許し願いたいと思います。法令による公団、連合国軍人等住宅公社、日本專売公社、日本国有鉄道、復興金融金庫、国民金融公庫、住宅金融公庫、商船管理委員会、持株会社整理委員会、閉鎖機関整理委員会及び証券処理調整協議会、こういうふうにあるのでありまして、こういうように政府監督し、もしくは出資しておりますような公団、もしくはそうしたような種類のものに対しまして、これを適用することに相なるわけであります。すると総裁、理事長もしくは委員長も、これは同じく上司ということに相なるわけでありまして、これらに対しましても、今も問題が起つておりますように、最後決定権はやはり裁判かと思いますが、その辺ひとつ先のに関連いたしますので、お答えを願いたいと思います。
  111. 河野一之

    河野(一)政府委員 最後的な確定は、三宅さんのおつしやる通り裁判で確定するのだというふうに思つております。
  112. 三宅則義

    三宅(則)委員 今までの例によりますると、公団等の使い込み等寸があつた場合におきましては、総裁が責任を負わなくて、ある程度までその下の者が負つておるかと考えております。さらにまた公団が損失を受けた場合におきましては、国家がこれを補つておるように考えるわけでありますが、この辺はどういうようになりましようか承りたい。
  113. 河野一之

    河野(一)政府委員 身分上の監督権が、今後においては多少違つて参りますが、従来のものにつきまして、身分上の監督権がどの程度経済的な責任を負うかという点は、また別でありますが、公団につきましては御承知のようにこれは国家の機関でありまして、最終的には、国がその損失があつた場合には負担する。これはかわりございません。
  114. 三宅則義

    三宅(則)委員 先ほど宮腰委員がお尋ねになつたことに関連いたすのでありますが、出納官吏現金もしくは物品等に対して注意を怠つた場合が相当あるのです。しかし物品も現金と同様な責任があると私は考えております。場合によりますと相当貴重な物を、結託をいたしまして横流しをいたす者があつたり、あるいは内々でこれを見のがしている者がある、かようなことを聞いたことがありますが、そういう者に対しましても相当責任があると思いますが、政府はどういうようにお考えになつておりますか。この点を伺いたい。
  115. 河野一之

    河野(一)政府委員 現金、物品の出納官吏につきましても、やはり同じような責任を負うごとに相なつております。
  116. 三宅則義

    三宅(則)委員 たいへん時間も過ぎましたのですぐやめますが、私は本法案はよほど重要な法案であると思いますから、もう少し政府としても親切かつ丁寧な御答弁を願いたい、かように考えておりますが、いかがなものでありますか。それと同時に、この出納官吏に対する弁償責任については、最後的には国会の決議によらなければならぬことになつておりますが、その前に、何か決議によつて、ある程度まで弁償責任を是く負わせしめたいと考えおりますけれども政府はその方の御用意がありますか。
  117. 河野一之

    河野(一)政府委員 会計検査院検査が済まない場合におきましても、任命権者弁償責任を課することができるわけであります。これは、会計検査院検定が延びたというようなことを考えます場合には、当然そういうふうな措置が必要なわけであります。大体そういうことで実際の目的を達すると思うのでありますが、三宅さんのおつしやる点はどういうことでございましようか
  118. 三宅則義

    三宅(則)委員 私の考えております事柄は、もちろん国会最後決定権を持つわけでありますが、その前に各長が負うというふうにいたしておりますが、長といえども私財を投げ出すということはなかなかむずかしい話でありますから、そういうことにつきましては、先ほど小山委員なりあるいは苫米地委員なりからお話のありましたように、別に保険制度というものを設けた方が、穏健にして妥当な負担ができるのではないかと思いますが、その用意を今後なさいますか、いかがでありましようか。
  119. 河野一之

    河野(一)政府委員 将来は信用保険制度というような問題を、考えて行かねばならぬのではないかというふうに思つております。従来は、物品その他につきましては、盗難保険とか運送保険とかいろいろそういつたような保険はかけておりましたが、身分だけの問題としますと、やはり信用保険の制度を考えて行かねばならぬと考えております。
  120. 三宅則義

    三宅(則)委員 最後まで食い下るようでありますが、やはり小山委員と同じく、第四條の三年、第五條の五年という点は、これはもう少し将来政府委員の方も御研究願いまして、円満に遂行できるようにいたしたい、かように考えますので、どうかその辺十分了承するようにしていただきたいと思います。ただ、あまり時間を急ぎまして、法律をつくるときに拙速ではいかぬと思いますから、御注意かたがた希望を申し上げて私の質問を終りたいと思います。
  121. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 八條の問題でありますが、これは先ほどほかの委員からも質問があつたと思いますが、国会の承認を得れば責任を解除するということになつておりまする会計検査院あたりではまだ事件が進行をしない。ところが国会がこれの責任を解除するというような場合、多数党の横暴によつて、たとえば政党方面の選挙対策資金なんかを使い込んだのだけれども、やみからやみへ葬り去られまして、国民に納得の行かない責任解除を生ずるというような心配のあることをおそれるものでありますが、特別なる方法はないものでしようか。
  122. 河野一之

    河野(一)政府委員 会計検査院弁償責任ありとせられた者に対しての減免は、国会の決議によつてやるわけでありますから、会計検査院がまだ事案係属中においては、そういうことはなかろうというふうに思つております。
  123. 北澤直吉

    北澤委員長代理 では午前はこの程度にして、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後二時四十一分開議
  124. 川野芳滿

    ○川野委員長 ただいまより再開いたします。  議題の審査に入ります前にお諮りいたしたいことがあります。実は去る本月二十五日理事北澤直吉君が委員を辞任したのに伴いまして、理事が一名欠員になつております。この際理事の補欠選任を行う必要があります。昨二十六日北澤直吉君が再び委員に選任されましたので、北澤直吉君を再び理事に指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 川野芳滿

    ○川野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  126. 川野芳滿

    ○川野委員長 次に、予算執行職員等責任に関する法律案議題として質疑を続行いたします。川島金次君。
  127. 川島金次

    ○川島委員 会計検査院の当局が見えておりますので、二、三法案に直接関係あるものと、最後に直接は関係はありませんが、一、二お尋ねをいたしておきたいと思うのであります。  まず第一に、今本委員会で審議中でありまする予算執行職員等責任に関する法律案の中で、従来各省予算執行にあたりまして、その適法性について疑念のあるようなもの等については、あらかじめ口頭をもつて検査院の了解を得ることを慣例といたしておつたように聞いておるのであります。ところが委員会での質疑応答の中で判明いたしたのでありますが、それらの事柄について検査院各省のあらかじめの了解、折衝に対して、その担当官が事前の折衝に全幅の了解を與えることが多かつたそうであります。しかるにその事前における了承を信頼いたしまして、それに基いて各省の出納関係官が支出をいたしたものに対して、爾後において往々にしてそれが再びくつがえされて、了解されたものと思つて支出されたものが、正式の検査を受ける場合においては、また元に返つて審議を受け、しかもその結果においては不当な支出だという決定をなされる場合が、きわめて多かつたという事柄が判明いたしたのであります。しかしこれは一方的な説明でありますので、われわれのつまびらかに知るところではないのでありますが、そういう事態というものが、従来検査院においては説明のように多くあつたのかどうか。この点について御説明を願いたい、かように思うのであります。
  128. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。一般的にさような事案も懸念いたされますので、会計検査院といたしましては、検査に派遣する職員に対しましても、あるいは在庁の職員に対しましても、その点については十分前から注意を拂つておりまして、現に手元にございますが、職員全部に携帶させておりまする注意事項があります。その中の第四項に、研究及び判断の熟さない事案についてみだりに指示または了解を與え、信を後日に失うことのないようにしなければならないといつたような注意事項を、各職員に持たしておりまして、一般的に非常に警戒的な態度をとつておるのであります。具体的な事案については御詮議いただきませんとはつきりいたしませんが、各省において私の方で不当であるとして説明を聞いております間に、いろいろその行為をやられました経過についての御説明があつて、前後の経緯についての御説明を承つておきますというようなことに対して、先方ではそれに対する了解があつたものというふうな御判断になることもないではないのでありまして、その間における私の方の態度と、あるいは先方の方の御了解等の点における食い違いが、私どもの方の係官のその当時における態度等から発生することがないでもないと思いますが、多くの場合そういうような事案について、将来不当として非難のおそれが発生しないようにというので、今回あらためて口頭でなく、書面による照会をいた場だきたいという措置を、この法律でおとり願いたいと思つておりますのと、もう一つは、御説明になりますときに、同一前提條件から出て参ります結論が甲という結論が出ます。その甲の全部をお話にならないで、十のうちの五つをお話になりまして、それから出ました結論が乙というもので、大体乙の結論になりそうだというような御意見を申し上げたところが、後日漸次調査をいたしてみますと、そのほかに隠れた事実が五つあるというふうな問題で、結論がおのずからかわつて来るというような問題もないではありませんで、この点は両当事者もよほど愼重に研究されて参らなければならぬと思つておますが、ただいまの御質問のことは、私の方の検査の態度にも関連いたすことでございますので、職員には一般的に注意を拂つておる次第であります。御了承願います。
  129. 川島金次

    ○川島委員 そこで内容を伺つておくのですが、私の質問の要旨は、そういう事態がままあつたようでありますが、そういう事柄はそうたくさんは起らないということが、われわれの常識的な判断ではありまするけれども、この委員会の一方の当局の説明によりますと、そういう事柄が従来非常にひんぴんとしてあつた、こういう説明でありますので、そういう事柄は一体どういうことでひんぴんとして起るのか。またそういう事実がひんぴんとしてあつたのかどうか。そういうことの具体的な問題についてお尋ねをしていることが、趣旨なのであります。その点はどうなのですか。
  130. 山名酒喜男

    ○山名説明員 具体的な問題についてあらかじめ意見の御照会があつたのに対して、判定いたしました結論と、爾後において検査報告によりますと、不当事項の際の結論と相違いたしました事例は、私の関知するところではございません。
  131. 川島金次

    ○川島委員 そういう具体的な事項はあまりなかつたというお話でありますが、実際のこの委員会の昨日の説明によりますと、そういう事柄がひんぴんとあつて非常に迷惑をしているという、責任ある当局からの御説明なのでありまする。私どもはいやしくも検査院の立場にある検査官が、たとい口頭であつても一応その支出についての適法性を公表されておつた場合に、しかもその支出後において検査の結果、別な判断が検さ院宣から下される。こういうことは常識ではあり得べからざることであるとわれわれは考える。ところが実際の説明によると、そうではない。非常にそういう事柄がひんぴんとしてあつて各省の出納関係官らは非常に迷惑をして来たという説明なんであります。そういうことでお伺いをいたしたのでありますが、そういうことが事実上あまりないという責任ある御説明でありますれば、それで私も了解をいたすのでありますが、そうでないようなお話を聞いたので、一言お尋ねした次第であります。  それから第二にお尋ねをいたしたいのは、今後この法律によりますれば、事前審査は、従来の慣例とは違つて、必す書面において行わなければならぬということで、その確実性を期しておるわけでありますが、この書面の事前審査によりまして、弁償責任の減免、あるいは懲戒処分要求を免れるという形になる基本的な問題でございます。この事前審査にあたりまして、ことに書面でございますから、——役所をあえて非難するわけではございませんが、この審査にあたりましては、従来の事実から見ますると、書面をもつて提出されたこのような審査というものが、往々にして時間的に大きな時間を要するということが、官庁事務の通例であると言つてもさしつかえないほど、われわれは見聞しておるわけであります。このようなことになりまする場合に、はたして検査院がその書類の審査に対しまして、能率的に敏速にその事態に応じての処理ができる可能性があるのか。そういう事柄について、この事前審査に伴いまして、検査官を増員したり、あるいはその他機構をかえなければならぬというような事態が起るのかどうか。またそういうことをしなくても、この事前審査の問題については、円滑にしかも敏速にその審査の要求に応ずる態勢が整つておるのかどうか。その点についてはどのようなことになるか。その点について具体的に御説明を願いたいと思うのであります。
  132. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいま御質問になりました、照会に伴つて審議並びに回答に関連しての遅滞、ひいては行政事務の遅延ということに関連して、さらに検さ院における受入れ態勢というようなことについての御質問でございましたが、御質問になりましたところは、同様に私の方でも懸念いたされまして、大体書面で照会いたしますにつきまして、主務庁の方で書面を作成するのに相当手間もかかりますので、参りました場合には、打てば響くほどにたたちになるだけの準備をするというほどの、現在余裕の人員を持つておりません。しかしただいま御心配になりましたように、国務がこれによつて澁滞する一因になつては困ると考えますので、私の方といたしましても、支出負担行為担当宜、認証官、支出官、貸金前渡官吏等の人数に対応し、またこれらにより発せられます従来の照会件数から見た照会件数の予定のもとに、大体人員が四、五十名の範囲において必要ではないかという考え方のもとに、またこれたけの増員が認められました場合においては、最も能率的に人を配置し、機構もさように各局ごとに責任ある回答ができるように、打てば響くというふうな態勢に置こうというので、せつかく大蔵当局と折衝を開始いたしておる次第でございます。
  133. 川島金次

    ○川島委員 私はきわめて常識的な判断で、そのようなお尋ねをいたしておるのでありますが、こういう書面をもつての事前審査というものは、相当口頭とは違つて検査院にいたしても、従来よりは一層愼重を期さなければならぬという責任を生ずるわけであります。従つて従来の機構だけでば、この事前審査が円滑に進むことはなかなか不可能ではないか。そういう場合に、ただいまの御説明によりますと、それに対する対応態勢といいますか、その態勢をつくりますためには、四、五十人の増員をしなければならぬ。しかもその増員は目下大蔵大臣と折衝中だということであつては、私はまことにその答弁は奇怪だと思います。この法律は、大体すでに予算を組み立てるときに、あるいは予算審議中に、この法案は大体作成されたものであろうと考えるのであります。るが、この法案に伴う検査院としての態勢のために非常なる人員の増加、それに対する予算措置、こういつた問題は当然予想されるのでありますにかかわらず、これから大蔵関係と折衝の上に、その人員の整備充実を期するということであつては、次の臨時国会もしくは通常国会を待たずしては予算の補正ができない。従つて増員の問題が解決しない。こういうようなことになつたのでは、せつかくこの法案を実施いたしましても、それを受ける立場にある検査院の事前審査が万全を期するわけに行かない、こういう形になるのではないかと思うのでありますが、その関係において、この法案をつくつたのが大蔵省で、しかも検査院の方では予算措置が必要なんだが、これからするということであつては、せつかくの法律の完全な実施ができないことになるわけであります。そういうことであつては、私はこの法案の実施についても、まことに懸念を深めるようなことになつてしまうわけであります。その折衝におきまして、予算の補正をせずしてやり繰りがつくような形になるのであれば別でありますが、その点はどういうふうになつておりますか。
  134. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ちよつと速記をとめていただきたいと思います。
  135. 川野芳滿

    ○川野委員長 速記をとめて……。     〔速記中止〕
  136. 川野芳滿

    ○川野委員長 それでは速記を始めて……。
  137. 川島金次

    ○川島委員 その事情もよくわかりましたが、問題はこれは事前審査を必要とし、その事前審査を受ければ免責あるいは懲戒等の処分を免れるという形の法律なんであります。従つて今後この法律が実施されますると、出納関係官の出納に関する責任というものは非常に重大になりますから、その出納関係官の態度というものはきわめて愼重になる。従つてこの法律執行を——現行法でありますれば従来の慣例によりまして口頭でやり、しかも御説明によれば、その口頭で了解をしたことについて、間違つたことはあまりない。こういうことでありますが、それと今の予算的な措置関連して考えてみますると、この事前審査というものをことさらに設けなくても、実際の効果においてはかわりがないのではないかというような気がいたしますることと、もう一つは、政府の支拂いの促進ということは、われわれが常に強く叫んでおります。政府支拂いがややもすれば遅延をいたしまして、それかためにひいては国民経済の上にまで、甚大な影響を與えておりますることも御存じの通りであります。しかるにこのきつい法律が出て参りますと、一方の出納関係官は愼重を期する。ところがその愼重を期して、私はそのためにさらに一層事前審査の要求というものが、従来の口頭時代よりは多くなるという可能性が、きわめて見やすい道理ではないかと思う。そういうことでありますると、さらにますます政府支拂いの遅延ということが、ここに結果的に自然起つて来る。それがひいては国民経済の上に、またしても大きな問題を投げかけて来るということにもなるわけである。従つてそういう予算的の措置もまだないし、しかもこれをやるためには、四十人も五十人もの熟練した検査官を置かなければならぬ。しかもそれがまだ予算はできておらぬということになるのでありますれば、検査院としては、こういう事前審査というものを、ことさらに法文化いたしてやらぬでも、従来の慣例によつても弊害がなかつたとすれば、この法律のこの一項というものは除いてもいいのではないかという気がわれわれはするのでありまして、現に午前中の委員会におきまして、小山委員からもその点が強く指摘されたような次第でありますが、その点について検査院当局としましては、どのような見解を持たれておりまするか。重ねてお尋ねしておきたいと思うのであります。
  138. 山名酒喜男

    ○山名説明員 この法律の七條の條文は、この七條をもつて初めて出て参つた條文ではございませんで、院法の中にすでにある條文であるということは、ただいま仰せになりました通りでございまして、院法の方の事前照会があつた事案について、なおこの法律による責任追究するのでは気の毒だ。だから院法の方の三十七條の、その事前照会に対する意見、回答の通りつた場合においては、この責任追究は中断されるといいますか、宥恕されるといいますか、免責されるぞという好意的な意味條文でありまして、三十七條の方の條文は、支拂い官吏だけでなしに、一般的な会計事務執行いたします職員の免責的な意味においての條文と、国益を守るといつたような立場で設けられております條文でございますので、予算執行職員といたしましては、この法律の中に七條の條文があることに非常な安心をいたすわけでございますので、私はあつた方がいいのではないかと思います。同時にまたあることに伴つてつて来る事務澁滞の問題になりますが、先ほど仰せになりました支拂い遅延の問題も、いささか懸念されますが、多くの事案につきましては、契約をいたします以前の段階において、かような工事をし、かような物品購入をし、かような契約をすることははたして予算上妥当か、またこういう手続によることが会計法規上違法な事態にはならないかという、そごの段階でもつて多く意見照会がありまして、その意見照会に基きましてその契約を締結しまして、相手方の履行が済んで、支出官の支拂いの段階に入りましたときの支出官意見照会というものは、多くの問題は本質的な問題というよりも、形式的な問題で出て参りますので、本院——私の方といたしましても、支出官段階では割合意見照会が少くて、基本の契約を結ぶこと自体の可否についての意見照会が多いのではないかというので、支拂い遅延も起りますことは確かでございますが、それよりもそちらの方が多いのではないかというふうに考えております。従つて支拂い遅延というよりも、予算執行事務全体としての澁滞を懸念することは懸念いたしておりますが、一方ではまたかような事前照会の方途によつて、国に及ぼす損害が軽減され、また会計法規違反の事態の発生を防止されるという一方の効果を考えますれば、多少その点について事務改善の措置の方法によつて、すみやかに執行するという配慮とともに行けば、相当の効果はあがつて来る條文ではないかと考えてはおりまする
  139. 川島金次

    ○川島委員 そこでさらにお尋ねしますが、もし今大蔵省と折衝中の予算措置が困難であつて、本年度来るべき臨時国会の補正、あるいは通常国会に入つての明年度予算の補正ができない限りにおいては、かりに四、五十名の検査官が増員できないという形になつた場合を仮定しての話ですが、そういう場合においてでも、この事前審査に対する行政事務の円滑、あるいは敏速化というものが期待できるか。その点を私はさらに懸念するのでありますが、この点についての見通しはいかがでございますか。
  140. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいま検査院といたしましての事務執行の問題は、会計行為の結果について多く不当または違法を発見し、将来にわたつて会計経理の是正をはかる方向に相当動いておりまして、その点において今期国会でも、済んだことよりも——御承知のように済んだことを言うてもあまりかいがない。それよりもアップッウデート、今の問題を審議したらどうかという御意向もある時代でございまして、検査院といたしまして、もし予算が通らないといたしますれば、今、毎月々々の済んた仕事の——国の收入支出なり、あるいは国の契約について済んだ仕事にとにかく目をつけて、それの当、不当を鳴らして、将来を改善させようという方向よりも、これからしようという仕事について検査院の当、不当の意見を照会されましたことに対しての将来の是正、未発に防ぐという方向に、やはり主力をそそいで行かなければ、国損を発生させないという大きな観点から行けば、この法律ができますれば、その任務が大きな要素として加えられますので、私の方としてはそれに重点を置かざるを得ませんが、同時にすでに済みました事項についての問題は、人手不足の関係でやむを得ず、あるいは検査がおろそかになる部分ができないとは保しがたいと案じております。
  141. 川島金次

    ○川島委員 私一人で質問しておりましては迷惑と思いますので、まだお尋ねしたいのですが、その点はそれで打切ります。  それで次にお尋ねいたしたいのは、本日手元に、二十三年度決算検査報告の「予算執行職員の不当金額事項別分類調」というものを受取つたのでありますが、これによりますと経費の年度区分を乱したもの、あるいは予算の使用当を得ないもの、その他実に十四件にわたるところの種目別に不当と検査院かみなした件数があり、しかもその金額は実に莫大な金額に上つておるのであります。そこでお尋ねをいたしたいのですが、これらの不当と決定をいたしました問題につきまして、各省からこれらの問題については従来の慣例によりまして、おそらく口頭その他によつて事前の折衝があつたのではないかと、私は常識的に判断をいたすのでありますが、こうした結果を見ました事案に対しまして、どのくらいあらかじめの了承事項があつたのか。あるいはまた全然これは何らの事前の話合いがなくして、方的にこういう不当な結果を生むに至つたのであるか。その点のいきさつがおわかりでしたならば、御説明を願つておきたいと思うのであります。
  142. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいまの数字をあげての御質問でございますが、本表に列挙いたしました事項については、正式に検査院の了解を事前に求めるという手続は全然とられておりません。
  143. 川島金次

    ○川島委員 そうすると、たとえばこの点が問題になると思いますが、農林省の「薪炭購入代金の支拂に当り処置当を得ないもの、」あるいは「横持料を不当に支那つたもの、」「指定集荷業者等に対する手数料を不当に増額したもの、」こういつたまことに重視すべき問題がここにも列挙されている。その他にもありますが、一例をあげればこういつた問題があるわけです。ことにわれわれ薪炭特別会計については、国民とともに非常に重大な関心を持つて来たものであります。しかもそのために五十何億かの一般会計による、すなわち国民の血税によつて、その大きな穴を埋めなければならぬというような事態になつたわけであります。これは一例でございますが、参考のためにこういう薪炭の購入代金、横持料、指定集荷業の手数料の不当の増額、こういつた問題に対して、どういう事態でこういう問題が起きたか。その内容について、もしお手元に資料があり、あるいは御存じでありましたならば、この機会に参考のためにひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  144. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいま御質問のありました事項は、項目をここにあげておりますが、この内容の詳細につきましては、国会決算委員会の方に御提出申し上げました不当事項の六百数十件の中に、相当詳細にわたつて記述いたしてございます。なおこれの一番下の欄に書いてございます会計検査報告掲記番号というのが、その決箕報告の中に上つております番号であります。それをごらんいただきまして御質問なり、あるいは関連のあります事柄につきましての御質問でございますれば、私の方から別途御説明申し上げ、あるいはまた検査の当局は第二局が主管でありまして、農林検査課長もおることでございますので、そちらの方から御説明させてもよろしいかと存します。
  145. 川島金次

    ○川島委員 それではそれはよろしいです。そこでもう一つお尋ねいたしますが、しからば二十三年度において不当支出と認められたものが、会計検査院の目に触れたものだけでも六十二億の巨額であります。この数十億の中で、この出納関係官の弁償責任法律が実施された場合に、これに該当して弁償しなければならぬような額はこれでどのくらいあるものか。またその弁償の責任を今日追究している額はどのくらいあるか。そういうようなものがありましたならば、参考のためにお示し願いたいと思います。
  146. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいま御質問事項は非常にむずかしい問題でございまして、ここに上げました六十三億を不当なりとしました金額は、予算に違反して買つたものとか、あるいは建てたものとか、予算の十分の効果をあげていないものとか、そういつた金がざつと上つておりまして、この分だけがただちに国損を発生したと申しかねますし、また国損は具体的に反対給付があるわけでありますから、反対給付と支出いたしました予算との差額が、どう国の利害に響いているかという問題、またはたして当務官吏か故意であつたか重過失であつたか、単純な軽過失であつたかというような点については、非常に困難な問題が多うございますので、せつかくただいまつ一つの案件について検討いたしておりまして、著しい国損を発生して、著しい過失があつたものと認めるものに対しては、当務官吏に対しての懲戒要求の詮議はいたしますが、弁償をいたさせる規定が現在ございませんので、そこまでの詮議には入つておりません。著しい国損を発生し、著しい過失のあつたものに対しての本属長官に対する当務官の懲戒要求の詮議は、ただいま進行中でございます。
  147. 川島金次

    ○川島委員 そうしますと、この法律がかりに本月一ぱいに通つた。そうするとこの法律が遡及しないで、三十三年度あるいは二十四年度会計検査によつて明らかになつた国損というものは、この法律は適用されないということになるのですか。
  148. 山名酒喜男

    ○山名説明員 大体法律は相手方の利益にはさかのぼるが、不利益には大体遡及しないというのが一応の立法の原則になつておりまして、本法は公布の日よりこれを施行するということになつておりますので、公布されました以後における会計官吏の行為によつて及ぼした国損について、検査院検定をし懲戒要求をすることになるのであります。
  149. 川島金次

    ○川島委員 たとえばただいま反対給付かあるから、国損というものを確定するのもむずかしい。あるいは重過失か軽過失かという問題は、その判定はむずかしい。それはよくわかるのであります。ところがたとえば物品を購入した場合、非常にそれを多額な金で買つてしまつた。あるいはまた工事に対して余分の金を支拂つてしまつた。こういつたことは反対給付でなくして、政府みずから余分に支拂い、その支拂つた額だけ国損だということになるのではないかと思うのです。そういう明らかな支出に対しても、まだ調査研究ということになつているのですか。
  150. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいま御質問になりましたように、超過拂いをするとか、あるいはあやまつて債務額以上の金を拂つたものは、明らかに国損であります。ただいまそれについて調査中かとおつしやいましたが、現在は弁償を要求いたします法規もございませんし、こういう支拂い官吏について検査員が弁償責任検定をします法律上の根拠もございませんので、この新しい法律を中心にしてのそういう調査研究はいたしてはございません。ただ懲戒要求関係だけは詮議をいたしております。
  151. 川島金次

    ○川島委員 それでは法律の直接関係はこの程度にとどめておきます。そこでこの法律が実施されることは、すでに目睫の間に迫つておりますので、関連的に二、三なるべく簡潔にお尋ねをしておきたいのですが、問題となつておりまする鉱工品の配給公団の問題、あるいはその他各般の公団の事件が、目下白日のもとにさらけ出されまして、まじめな納税国民の心からの憤激と反感を買つておる次第であります。そこでお尋ねいたしますが、例の貿易公団、鉱工品公団の問題がことに大きく取上げられまして、その額実に一億というような額になつております。しかもこの問題の発生は、昨年の三月とかあるいは六月とかいう、はつきりした記憶は私はありませんが、昨年の春ごろから起つた事態でありますので、今日に至るまで会計検査院としては、これらの公団に対する厳重なる、しかも綿密なる——世評にとかくのうわさが出ておつたのでありますから、一層の責任を持つて検査をされて来たものであると、私どもは了解いたすのでありまするが、しかもその検さ途上においては、ややもすれば何ら問題にならなかつたというようなことも承つておるわけであります。一例をあげての話として、鉱工品公団等に対するところの今日に至るまでの会計検査の実況、その結果はどういう事情であつたかということについて、御承知でありましたならば御説明を願いたいと思います。
  152. 池田直

    ○池田説明員 お答えいたします。主として鉱工品貿易公団検査の経過につきましての御質問と思いますので、簡單に御報告をいたします。会計検査の方針といたしましては、昭和二十二年の七月、鉱工品貿易公団が発足いたしましてから、会計検さ院は毎月資産表及び付属諸表を提出させて参つて、これを検討いたしますほか、大体主要なるところは年に二回、ごく末端の方は一回、あるいはいろいろの都合でできかねるところもあつたわけでございますが、今申し上げましたような次第で実地検査を行つて参りました。検査の大体重点を申し上げてみますと、最初のほどは、まず公団の経理制度の確立を主眼に置きまして検査して参りました。と申しますのは、公団の発足当初は多数の旧代行機関の集合体でありまして、鉱工品公団は御承知の通りでございますが、各部の事務所も散在しておりまして、その間の銃一を欠いておりましたばかりでなく、監督官庁でありまする経済安定本部の指示も、どちらかと申しますと遅延がちでございまして、人件費、事務費などを公団收入でまかないますのか、あるいは別途に国庫の交付金をもちましてまかないますのか、あるいは業務用の固定資産をどの程度まで保有できるものか、そうした公団運営の経理関係の根本の制度も、当初のほどは確立しておらなかつたようなぐあいで、こうしたことを確立させる必要もございましたし、そうした面からまず主務官庁等に対しましても意見を言いまして、公団経理の確立に努めて参つたような次第であります。  次いで、先ほど申し上げましたように、発足当初は公団の各部、それぞれ業界の団体から成り立つておりましたような関係もありまして、各部のバランスにつきましてもまちまちであつたような次第で、いろいろ経理の処置が的確でないような次第もありましたので、バランスの真実性を大いに強調いたしまして、事業の全貌がバランスに現われるように、その方面の指導監督に努力いたして来たような次第であります。一方帳簿関係も非常に発足当初は的確でありませんで、商品台帳を備えないものもありますし、あるいは業務の商品台帳と経理の方の関係帳簿が符合しないで、その原因がはつきりしない。そうした関係はつきりさせるために、検査の期間を相当費して来たような次第でございます。一方商品代金の回收、收納あるいは事業費等の支拂いの促進という面につきましても、注意をいたして参りまして、資金の滞留関係につきましても、極力これが防止に力を注いで来たような次第でございます。当初から未收金、未拂金が相当ありましたので、個々のケースについてその内容をなるたけ詳細にきわめるとともに、全般にその回收及び支拂い促進について、公団に厳重に注意をいたして参つたような次第でございまして、この点につきましては主務官庁に対しても注意をいたした次第でございます。その他現品の把握関係につきましても、必ずしも十分でありませず、事業費支拂い内容の妥当性に関する関係等とあわせまして、この点も非常に重視して検査をいたして参つた次第でございますが、今申し上げましたような関係もありまして、当初のほどはその点は必ずしも十分に検査が行き届かなかつたというようないきさつでございます。昨年の実地検査のときは、当初よりもよほど実質面の方も検査をいたしまして、事業費の内容等も詳細に洗いまして、その結果といたしまして、検査報告一つ掲げてあるのもあるわけでございますが、事業費も諸掛が非常に高価でありまして、そのために手数百万円を回收させたような事例もあるような次第でございます。先ほどもお話がありましたように、公団の次々に解散するものもありますし、一面間もなく解散するような公団もあるわけでございます。ただいま申し上げましたような指導的な検査もやつて参りましたが、一方解散気構えによりまして、公団職員が相当動揺いたしておるというような関係もありまして、不正の防止という観点から検査をいたしますことが非常に重要と認めまして、この点につきまして十分に昨年来注意もいたし、今後一層その点に重点を置いて検査をするような建前で参つておる次第であります。今回新聞紙上その他ですでに御承知の通り、大きな不正事件があつたような次第でありますが、鉱工品公団検査につきまして具体的に申し上げますと、私どもの方といたしましては、昨年八月検査をいたしました際には、現物の確認とか、事業費内容の検討とか、資金の回収等につきまして最も重点を置きまして、それに先ほど申し上げましたいろいろな事項も含めましてやつたのでございますが、検査の対象が経理の期間といたしましては、二十三事業年度の後期決算の承認をいたさなければいけない関係上、主として二十三年十月から二十四年三月までの期間を検査いたしました。御承知の通り公団の経理につきましては、二十四年度からは政府関係機関の予算として国会の審議を経て、その決算国会提出されることになつておりますが、二十三事業年度までは前期、後期にわかれまして、その冬期ごとに安本それから私どもの承認を経ることになつております関係上、二十三年の上期の決算につきましては、昨年の初めあるいは二十三年の暮れであつたかわかりませんが、すでに決算の承認もいたしておりまして、去年の検査のときには、今申しましたように二十三事業年度の後期の決算の承認をしなければならない関係で、勢い二十四年の三月までの検査を主としていたしました。しかし私どもといたしましては、常時的確に検査をしなければいけないという建前になつておりますので、二十四年七月までの資産表その他の勘定の内訳等も公団から徴しまして、検査は二十三事業年度の後期の分と同様に並行してやつて来た次第でございます。検査の結果につきましては、物品のことにつきましては大体特に非常に悪いというほどのこともなかつたのでございますが、資金回收の関係とか事業費の面等につきましては、遺憾の点もありましたので、注意もいたしたような次第でございます。ただ今回の事件がどうして発見ができなかつたかということでございますが、ちようど事件の発端が六月末になつておるようでございます。そこで私どもといたしまして、当然その芽生えを摘発して、こうした事件が起らないようにいたすべきであつたわけでございますが、先ほど申し上げましたような決算の承認等の関係から、二十四年度はあらためて検討したいというような関係もありましたし、一方公団帳簿、証拠書類等につきまして検査をいたすのでありますが、收入支那い等につきまして、現金預金等も帳簿の記載とか、あるいは銀行の残高証明書などを徴しますと符合しておりましたような次第で、これを是認するはかなかつたような次第でございます。一方支拂いでございますが、この支拂いも相手方の領收証書が徴してありましたような次第で、これを信用いたしたような次第でございます。一方会計検査院といたしましては、一般の業者や銀行の帳簿検査する権限がありませんので、そうした関係から今度の不正事件に見るような浮貸しの事実等を発見することが、困難であつたというような事情もあろうか、こういうふうに考える次第でございます。御承知の通り三福関係に対します支拂い、これも正当な領収書と一見区別のできないような領收書が、使用されておりましたような次第でございまして、そうしたものを一応借用いたしまして、特に公団も私どもと同様公務員でありましたような関係上、公団の説明を帳簿等が一応そろつておりましたので、それを信用いたしましたような次第でございます。今にして考えますれば、もつと疑つて検査をいたすべきではなかつたかと考えられるような次第でございますが、犯罪事件を前提といたしまして調査する検察のような場合と違いまして、私どもの所管の会計検査の態様といたしましては、領收書等を一応信用してかかるというような次第でございます。その後事件が明らかにされましたので、全力をあげましてその事実の究明にかかつた次第でございますが、御承知の通り一件帳簿書類がほとんど全部取調べ当局に押收されておりまするので、詳細をきわめるに至つておりませんか、他の部の検査もただいま続行いたしておりますような次第でございます。ただいまのような御質問趣旨もございますし、これからは各公団の清算あるいは解散に至るまでの経理につきましては、できる限りの力をいたしまして検査いたしたい、こういうふうに思つておる次第でございます。
  153. 川島金次

    ○川島委員 事情は了承できるのですが、たとえば銀行等の預金などは調査する権限検査院ではない。そういう事柄もあつたという事情はわかるのですが、一例をあげれば、公団の買い上げた商品、それと帳簿と在庫品の実態のバランスがとれておるかどうか、あるいは厖大にわたる売掛金の停滞、その売掛金の実際についての調査というようなことは、おそらく会計検査院が調査をする権限は私はあると思う。にもかかわらず、そういう事柄の懸念がすでに検査の都度あつたというお話、またあつたであろうということも想像されるのであります。しかるにそういうことがあつたということと、そういう権限があつたというにかかわらず、今日かような鉱工品公団のごときは、実に一億に達せんとする巨額の問題であります。これがもし厘毫も回收が不可能であるということであれば、やがてそれは国民の血税をもつて補填しなければならぬという、金額の多少にかかわらず重大な問題になるわけであります。そこで一例をあげてお尋ねしますが、鉱工品公団検査の都度に商品の検査帳簿とのつり合い、あるいは売掛け代金等についての疑念が大いにあつたろうと思う。そういう疑念に対しての実際的な調査といつたことを、検査院としてはやられて来たのであるかどうか。ただ帳簿上の事柄について不審があつたからと、責任者に対する單なる注意にとどめて今日まで来たのかどうか。その点の事情はどういうことでありましたか。御説明を承りたいと思うのです。
  154. 池田直

    ○池田説明員 たいへんごもつともな御質問でございまして恐縮いたします。商品の検査あるいは売掛金の内容等につきましての検査は、私どもといたしましても相当範囲検査権限がありまするので、帳簿書類等につきまして検査をいたしたのでありますが、商品の関係につきましては、在庫高証明書等をとつてもらつております。全部の商品が営業倉庫にあるわけでありまして、一々各倉庫につきまして各品目ごとに検査いたしますことが理想的でありまするが、諸般の事情でこれもとうていいたしかねますので、営業倉庫等の在庫高証明を徴しまして検査いたしました。それによりますと格別特に不良と認められるようなものはなかつたのであります。ただいろいろ貿易物資の受拂い等につきまして帳簿の不備だとか、あるいは先ほどのお話の売掛金の回收関係でありますが、こうした関係についても整理等が悪いものがありましたので、口頭ではなく文書をもつて鉱工品公団の総裁あてに注意を促して参つております。     〔委員長退席、北澤委員長代理着席〕  それから別途これは昨年の結果ばかりでもございませんで、前から未拂金とか未收金の関係は、貿易物資との関係で、貿易会計の経理の運営に非常に関係が深いのでございますから、当時の貿易庁は、大体貿易物資の商品代金の回收あるいは支拂い等は、公団に一任してあつたような次第でございまして、貿易庁の方の主務官庁公団に対しまして相当の監督をし、あるいは指導をしていたたかなければ、公団の経理の運営も十全を期せられませんので、貿易庁に対しましても、文書をもちまして未收金あるいは未拂金、また商品の管理につきましても、十分に改善されるように注意いたして参つております。
  155. 川島金次

    ○川島委員 この問題はひとり鉱工品公団だけではなしに、各種公団がいろいろ国民の疑惑の的となつておる問題であります。また現に司直の手が伸びまして取調べに属しておる事件もあります。いずれも経理関係に属し、その経理の検査責任者会計検査院であります。いろいろ事情等がありまして、検査院としては最善を盡したことであろうと、私どもは好意に解釈はいたしたいと思つておるのでありますが、どうもいろいろ考えてみますると、この公団の経理関係について、かくのごとき天下の耳目を聳動するに足る大事件を発生せしめておりますのには、單なる公団関係の経理担当官その他の責任ではなくて、私は会計検査院のこうした検査に対する、どこかに何か欠陥があるのではないかと思う。たとえば人員の不足あるいはまた人員はおつて予算関係で、活動が不十分であるというようなことも考えられるのでありますが、そういつた面について、ついでに私はお尋ねをしておきたいのです。会計検査院としての機能が、十分に国民の期待するごとくに発揮のできないという欠陥が、どこかにあるのではないかというように思うのですが、そういう点についてはどういうふうな実情になつておりますか。この機会に大事なことでありますので、率直にひとつ検査院の当局の所見を漏らしておいていただきたいと思います。
  156. 池田直

    ○池田説明員 検査院といたしましては、はなはだ根本的な大きな問題でございまして、会計検査院意見ということになりますと、私の方から今すぐには申し上げられない次第でありますが、私の個人的な意見として、御参考までにお聞き取りいただければけつこうに存じます。  ただいま会計検査院の機能を十分に発揮するに至らない欠陥がどこにあるか、あるいは人員等の関係等について十分であるかどうかというような事柄が、主たるお尋ねの事項かと承りますか、それは権限の問題、あるいは検査院の性格問題等にも触れて参るかもしれませんが、先ほどもちよつと申し上げましたように、今度のような事件は一応私どもといたしまして、相手の公団が公的な機関であり、職員が公務員であるというような次第でございまして、帳簿書類等につきましても、直接公団の取引先であります業者の帳簿検査する権限がありませんので、その関係からして、かりにある程度の不正等のことを世間で耳にいたしましても、これを徹底的に究明するということは至難ではなかろうかと考えるのでありまして、そこに一つ権限問題が起つて来るのではないかと考えます。  それから会計検査院といたしましては、もちろん会計法上あるいは公団に対しましても経理面等につきまして、不正、違法等がございますれば、ただちにこれを摘発して是正させて、善後措置を十二分にいたすようにして参つておるわけでございます。もともと不正摘発というようなことよりも、むしろ是正改善をはかるという面を主にして、検査をやつて参りましたような次第もございます。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、今にして考えれば、多少考慮の余地があつたのではないかというふうに考える次第でございます。  それから人員の関係でございますが、人員は熟練した職員が数多くいて、事務費等も十二分に使えることが最も理想とは考えます。しかし会計検査院といたしましても、御承知の通り最近人員が戦前に比べて三、四倍には増加して参りましたような次第ではございますが、何分職員等の質もなかなか急には理想的な質の改善ということは期せられませず、一方公団の発足は二十二年からございまして、従来会計検査院といたしましては、官庁会計を主として検査して参つておりまして、その方面には相当熟練したエキスパートがいるのでございますが、公団の経理については、公団発足後間もない関係もありまして、ただちに公団検査が私どもとして十二分にできるというような態勢には、持つて行けなかつた次第でございます。従いまして、かりに人員を急にふやしましても、それだけ結局経費もいることでございますし、国民の血税をそれだけ使うことにもなるような関係もありまして、できるだけ最小限度の人間を擁しまして、それを逐次教育して参り、人員も漸次ふやして参りまして、そうして公団検査の万全を期したい、こういうふうな方針で、ここ二年ばかりやつて来たような次第でございますので、その点御了承を願います。
  157. 川島金次

    ○川島委員 その点は深くお尋ねを准めることを遠慮しておきましよう。  そこで最後一つお伺いいたしたいのですが、これは会計検査院にお伺いするよりは、むしろ通産省御当局か公団自体にお尋ねする方が適当だと思いますが、参考のために、この機会にお尋ねしておきます。最近の公団には非常に滯貨が多い。その滯貨の放出について、ことに鉱工品公団でもたいへん今苦心をしている事情は、私にもわからないわけではないのでありますが、こういう例は検査院としてはどういうふうに扱うかということについてのお尋ねです。たとえば滯貨の処分をいたします場合に、ここにも新聞にちよつと出ていることですが、納入価格が一ダース五十円の人造のテグス、これが最近六円で拂い下げられてしまつた。実に十分の一というたたき売りみたいなことになつている。二十四円のおもちやの竹へびが、実に驚くなかれ六十銭で拂い下げになつた。七十円のバケツが五円、二百七十五円のアルミの湯沸かしが実に驚くなかれ二十五円、こういうことが新聞に出ているわけです。これを見たときに、国民は一体どういう嘆じでこういう新聞記事を見るかということは、想像に余りあるわけです。そこでこういう滯貨の拂下げ等について、納入したときと経済事情か違つたといえばそれまででありますが、それほど日本はまだ物価の低落は見ておりませんにもかかわらず、滯貨を放出する場合に、かくのごとき国民的常識ではとうてい想像も及ばないようなボロ値で拂い下げている。その差額の欠損は、国民が必然的に負わなければならないというような形で、しかも国民は御承知のごとく、この困難なる経済と闘いながら、極めて過重なる税を納めて行かなければならない。  こういうときに、こういう価格で拂い下げられてしまつたという事柄に対して、検査院の立場としては、この問題について何らか処置が当然に行われなければならぬと思いますが、こういう問題について会計検査院としての立場から見られました考え方、あるいはこれに対する処置等がありましたならば、この機会に御説明をしてもらいた  いと思います。
  158. 池田直

    ○池田説明員 お答えいたします。主として滯貨処理は、輸出品関係あるいは輸入品もあると思いますが、貿易物資関係が多いような次第でございまして、一面他の公団では、あるいは石炭とか、必ずしも貿易に関係ない物資もあるのでございますが、会計検査院といたしましては、ただいまお話通り国内に放出します場合、買価と売価とそれだけの差がありますれば、当然国の財政に響いて参ります関係上、個々の案件について一々検討いたしております。輸出不適格品等を拂い下げます場合に、国内にはとうてい向かない、どうしても投売値みたいな安い価格にせざるを得ないという事態もちよいちよいありまして、そうしたものについては、売値と買値の差損もやむを得ないという態度で参つております。が、いろいろ国内の物価事情等について、もう少し高く売れるのじやないかというような場合には、これは値が宏過ぎる、もつと処分を有利にすべきだというようなことで、各公団について注意をいたして参つているのもあるような次第でございます。個々の案件について、特にこれから滯貨処理の関係も多かろうと思いますので、注意して参りたいと思つております。
  159. 川島金次

    ○川島委員 なるほど、ことに輸出品については、輸出品として買い上げたものが、たまたま輸出先の事情あるいは品物自体の不適格等によつて、それが輸出不能になつたという事情があるであろうということはよくわかる。ただいま例にあげました竹のへびのおもちやの二十四円が六十銭になつた、こういうことは、そうむちやな数は国内に竹へびたからといつて売れるものではない。相当安値に売らなければ国内でもさばき切れぬ。従つて落札の値段も安くなるであろうということはわかります。しかしながらここに出ているような一例をあげただけでも、一個七十二円のバケツが五円、三百七十五円のアルミの湯沸かしが二十五円、これはもうたといそれが輸出の不適格品であろうと、あるいはかりに買い上げたときの検査が不適当であつた等を考慮に入れましても、一個七十二円のバケツが五円に拂い下げられたり、二百七十五円もするアルミの湯沸かしが三十五円で落札された。こういうことに至つては、俗な言葉で言えば乱暴むちやもきわまる処置だと私は考えざるを得ない。心ある国民もまた同じ思いだと私は思うのです。こういう事柄が、ひいては国民の血税による負担にまわつて来る。重大な国損です。こういう事柄がすでに新聞紙上にも現われておる。さだめし会計検査院もこの事情はすでにおわかりであつたと私は思う。こういう問題についての処理こそは、検査院は断固とした態度をもつてこれに対する処置をすべきではなかろうか。そして検査院に対する国民の広汎な一種の信頼感にもこたえて行くことこそが、私は日本の道義国家の建設にも大きな役割を果し、それがひいて血税をもつて涙ながら納めております広汎な勤労者、中小企業の人たち、こういう涙をもつて納めている納税国民に対する一つのこたえでもなかろうか、こういうふうに私は真劍に考えておるものなのです。さだめし新聞にも出たことでありますから、これらのことは当局でもすでに判明いたしておる事柄であろうと思いますので、こういう事態に対しては、今の御答弁では——そういう場合もあります。しかしながら今私が例をあげた部分についての範囲においては、おそらくそういうことだけで処置はできない問題であろうと思う。バケツであろうと湯沸かしであろうと一旦買い上げたもので、これがバケツの形をなさない、湯沸かしの用をなさないというものであれば、また別に大問題であります。しかしながら買い上げた以上は——しかも時価で相当の相場で買い上げておる。しかもそれが滯貨拂下げ価格においては、実に驚くなかれ十分の一にも達しない。こういうことであつては私は問題にならぬと思う。こういう具体的な事実に対しては、会計検査院としては断固たる処置に出るべきであろうということを、私ども考えるのでありますが、この具体的事実に対して、あなたはどういう所見を持たれ、また今後どういう方針をもつて、この問題に対処するかというような事柄についての、検査院としての確固たる方針を、国民の前に示すべきが必要であろうと思いますので、重ねてお尋ねしておきます。
  160. 池田直

    ○池田説明員 たいへん激励のお言葉をいただきまして、私どもといたしましても十分お言葉に答え得るように、努力勉強をいたしたいと思つておる次第でございます。ただいまお示しの滯貨物資の拂下げの当場不当の問題につきましては、一々検査をただいま続行中でございまして、鉱工品公団関係は昨年八月検査いたしましたあとは、諸般の事情によりまして実地検査をいたしませず、証明等につきましても月々收支計算書等はとつておりますが、今お示しの例のことは近く検査を行う予定でおりましたとたんに、今度公団関係の経理の内容が各方面から検討批判されておるような次第でございまして、私どもが毎月どの公団につきましても的確に検査できなかつたことは、はなはだ不敏のそしりを受けなければなりません次第でございまして、遺憾に存ずる次第でございます。ただいま検査の方針といたしましては、まずもつて従来の検査とは相当程度方針を変更しまして、不正防止という観点を大いに堅持してやる方針で、目下鉱工品公団その他の公団につきまして、まず資金画、物資面等につきまして、できるだけ会社、銀行等の帳簿につきましても、会計検査院として直接権限のないところも公団職員を利用いたしまして、会社、銀行等から書類帳簿の写しをとるとか、あるいは帳簿を借りて来るとかいたしまして、目下いたしておるような次第でございます。  滯貨処理につきましても、ちようど昨年暮れからの滯貨処理関係が、頻繁に行われるようになつた次第でございまして、私の方といたしましては内部の検査報告処理とか、あるいは昨年末の配炭公団の在高調査等につきまして、全員をそちらに振り向けたような関係もありまして、去年八月以降実地検査を鉱工品公団にできなかつたことは、はなはだ残念であります。これからは不正防止ということを重点に置き、一方滯貨処理につきましても、経済事情あるいは物価事情等をよく調査研究いたしまして、いやしくも不当な拂下げ処分等あるいは不当な代金の回收等がございましたら、断固たる態度をもつてこれに当りまして、その詳細のおかり次第国会その他に御説明申し上げられるようにいたしたい、こういうように存ずる次第であります。
  161. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 ただいま公団の不正問題につきまして、通産大臣の出席を求めたのでありますが、大臣がいなくて通産政務次官が答弁をしておつたようでありますが、ややもすると、責任を回避するような物の言い方でありまして、会計検査院の調べたときですら発見できなかつたのだから、ましてわれわれはわかりつこないというような態度を示しておるので、ぜひ審査の場合は形式審査、いわゆる書面審査というような形でなく、内容に立ち入りまして物の整理状態、あるいは取引関係までも調べていただきたい、こういうことをお願いする次第であります。
  162. 池田直

    ○池田説明員 お答えいたします。取引先の検査でございますが、相手が政府関係機関であるとか官庁等につきましては、私ども直接そこへ行つて帳簿も実際に検討いたしまして検査ができますので、目下そういうふうにやつております。  それから一般の業者と公団の取引関係でございますが、これははなはだ遺憾ではございますが、目下の建前といたしまして、会計検査院といたしましては直接帳簿を見る権限がありませんので、公団の人に一緒に行つてもらつて会計検査院といたしましては商社の立場を十分に尊重いたしまして、いやしくも商社の自由権を侵すようなことが絶対にないように心がけまして、取引関係上の公団の人を利用いたしまして、できるだけの取引の真実をきわめまして、検査の公正を期しまして、御期待に沿うように努力中でございます。
  163. 三宅則義

    三宅(則)委員 私四点お尋ねいたします。ただいまいろいろ説明を聞きましたが、事前監査ということはやはり  四4期ごとにおやりになることと思いますが、もつと早く常時検査と言いますか、毎月検査と言いますか、ある程度国家機関につきましては早く監査いたしまして、これを当局なり、あるいは国会の方に報告するようにしてもらいたいと思いますが、いかがでしようか。
  164. 山名酒喜男

    ○山名説明員 事前審理という問題と決算検査という問題と二通りございまして、決算検査の問題になりますと、毎月の国の收入支出の済んたものにつ  いて翌月に計算書が出て来、証憑書類が出て来ましてそれを検査するという建前になつております。人体主務庁から送つて参ります。関係書類が遅れますと、それだけ遅れて参りますが、大体常時検査建前にいたしておりますので、ただいま仰せになりました毎月、例月順を追うて検査するという体制はただいまもとつておるわけでございます。ただ事前審理の問題はさような問題でなしに、向うの意見紹介に対するこちらの判断を同等するだけでございます。それからもう一つの問題は、毎月順を追うて例月検査した結果を、早く国会報告したらどうかという問題でございますが、そういう点につきましては、一応ただいまの憲法の建前は、決算検査報告国会提出するようにということでございますので、私の方も二十三年度決算検査報告をいたしますが、これにあわせて二十四年度の、現年度予算面におけるところの不当事項を、あわせて併記しておるような次第でございまして、御希望の点に最も沿い得る可能な限度において、努力をいたしておる次第であります。
  165. 三宅則義

    三宅(則)委員 第二点は、検査は物品の検査ということをやらぬようでありますが、これはぜひ帳簿検査と同時に、物品検査もしくは先ほど言われました銀行検査というようなものも、あわせておやりいただきたいと思いますが、この点いかがでありましようか。
  166. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいま御質問のありました物品の検査も、国の財産のうちの不動産及び動産についてもやはり同様に検査することになつております。しかし御承知の通り物品の一々の帳簿と現品を対照することは、非常に困難な点がございますが、私の方で検査いたしました結果、物品が非常に足らないという点をいろいろたくさんあげておりまして、二十三年度中にも国有鉄道の現品を物品の帳簿とが非常に合わない。それから特別調達庁の方におけるそういつたようなものも非常に合わない。現品と物品の帳簿面とが不符合であつて、しかもその原因の探求の仕方が不十分であるという批難が、毎年の検さ報告に載つておるのでありまして、各庁はこれに対する追究に努力しますとは言つておりますが、なかなか手がまわりかねておるような状況であります。なお検査院といたしましても、ただいまのような方向において、追究の手は依然として全然ゆるめる気はございませんが、二十三年度はことに物品の現在量について物品調査を嚴重にするように、金も大事であるか物も非常に大事だという点で追究をいたしております。
  167. 三宅則義

    三宅(則)委員 第三点は税務署の決算書類会計検査院がとつておるわけですが、これに対してとり足らぬというか、とり過ぎるということはないでしようが、とり足らぬようなものについては、命令を出してとるようにしておるのですか、その点伺いたい。
  168. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいま御質問のありました点は課税において、要するに課税標準に対して税率の適用の單純な形式上の問題だけでなしに、課税標準自体の捕捉の点に不十分な点があるということにおきまして、二十三年度においては相当件数をあげております。なおまた課税標準の捕捉において行き過ぎた点がある、とり過ぎておるじやないかという批難をいたしまして、納税者に返還させた事例を相当持つております。
  169. 三宅則義

    三宅(則)委員 第四点は、企業会計をする方はなかなかむずかしいと言つて官庁会計は普通の私企業に対してなお十分でないということを言われておるのですが、今後はこれに対しまする計算をするために、公認会計士もしくは計理士、監査員というものに委嘱せられたならば便利だろうと思いますが、そういう決心はないかということを承つておきたいと思います。
  170. 山名酒喜男

    ○山名説明員 ただいまの御質問のありました事項は、事業会計そのほか会社の経理会計について、検査員の職員がとかく不得手ではないか、民間のそういう人を選んで嘱託をしたらどうかという御質問でありますが、私どもの方ではただいま会計検査院職員は、ほとんど全部の職員が公認会計士の資格をとれる程度の勉強をしろ、また公認会計士の資格をとれということを奨励しておりまして——とりませんけれども、御説の通りでございまして、職員官庁関係のほかにそういつた会計に関する十分の知識と経験を積むように、真に職員もそれに努力しておりまして、教養機関において、各方面で簿記そのほかのそういう監査の仕方等については、熱意を持つてつておりますので、御了承を願いたいと思います。
  171. 前尾繁三郎

    前尾委員 本案につきましては昨日来相当審議をいたしましたので、ここで質疑を打切りたいと思います。一応お諮りを願います。
  172. 北澤直吉

    北澤委員長代理 前尾君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 北澤直吉

    北澤委員長代理 それでは予算執行職員等責任に関する法律案につきましては質疑を打切ります。     —————————————
  174. 北澤直吉

    北澤委員長代理 次に船主相互保險組合法案につきまして質疑に入ります。川島君。
  175. 川島金次

    ○川島委員 本案について二、三簡單にお尋ねいたしたいと思います。まず最初に、きのうも別の委員から若干お尋ねがあつたのでありますが重ねて私からも別の観点に立つてお尋ねをしておきたい。と申しますのは、この保險組合というものはきわめて基準が、——たとえば資本金が二百万円、人員が十五人、船数は百でしたか、そういう形で最低限度は出発されておるわけであります。規模の大きいほどけつこうと思いますが、この種の保險組合はある海岸地帶における特殊の地域に限られる点から出発するのでありますから、従つてその資本金といいましても、昨今の漁業方面の経済実況等から見ましても、なかなか有力な資金を集めるということは、容易ではないということが想像されるのであります。しかも漁業方面の今日の実況から申しましても、必ずしも芳ばしからざる経過を全国的にたどつておりますことも、御承知の通りであります。こうしたいわば弱体な基盤に立つての保險組合、こういう組合ができまして、相互救助の保險事業を行うという精神には、われわれあえて異論はありません。しかしながらその保險組合の実際の運営については、いささかわれわれといたしましても懸念を持つものであります。たとえば保險組合が発足間もなくいたしまして、不慮の災害、しかもそれが組合の加入者の大部分に及ぶような災害がないとは、神ならぬ身の保証はできないことであります。そういう問題がかりに出来をいたしました場合に、組合の資金関係、準偽金の関係等によりまして、せつかく結成されました組合の趣旨目的というものが、満足に果されないというような事情に立つ場合も、今後あるのではないかという感じがいたします。そういう場合にせつかく組合を政府としては勧奨してつくらせたが、実際の運営についてはその目的の半ばも達成することができないという事態に立ち至つては相ならないわけです。そういう場合に対して政府は一定の融資をするとか、何らかこれに対して非常の事態に対する非常の裏づけ的な措置がありませんと、弱体企業者の共同事業というものは往々にしてかえつて運営が困難となり、その目的は果せないで、せつかくの組合がいつの間にか解消しなければならぬということにならぬとも限らぬのでありますが、そういう事柄に対して政府は何らか特段の考え方、あるいは方針をもつて進んで行く考えでありますか。それがありましたならばこの機会に説明されてほしいと思います。
  176. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 お尋ねの点は主として木船相互保險組合のことではないかと存ずるのでありますが、なお漁船については漁船保險法というものがございまして、国営再保險を実施いたしておりますから、一応ある程度の救済保護手段があるわけでございます。その他の一般の木船については、お話通りその性質上、あるいはその航路の上からして相当の危險がありまして、相互保險組合ついてもなかなか負担かかかる場合も想像せられるのでございますが、そういつたものでありますから営業を損害保險会社において引受けない。従つて相互組織の保險が必要であるということに相なるのでございます。この簡素な形で保險をつくりますれば、むだな費用が省けまして、ほんとうに純保險料というものを各組合員が負担するということによつて、極力保險の負担は軽くなるわけ合いでございます。金融その他の資金的措置考えているかというお話でございますが、特にこれは考えておりません。別途運輸省におきまして木船という運輸行政の面から、あるいは木船保護の措置をとつておるかと考えますが、所管外でございますので、私からはお答えを差控えたいと存じます。
  177. 川島金次

    ○川島委員 その金融の事柄についてお尋ねします。これらの弱体の企業者が、船主が寄つてつくります組合で、非常の事態に遭遇して、その組合結成の目的が半ばも達成できないというような事態がないとは限らない。そういう場合における大蔵当局としての今後の方針として、特段の措置をするという裏づけ的な考え方を持つておられるか、どうかということを尋ねたい。
  178. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 その組合の出資総額は二百万円以上ということになつておりまして、ただいま具体的に考えております組合の組合員も百名以上になつておりますので、一人当りの支出総額はさまで大きな金額には上らぬので、特に国において施設をいたしませんでも、その出資の負担に耐え得るかと存じておるのでございます。保險料につきましてはすでに御説明申し上げましたように、実費主義で参りますので、特に大きな事故が続いて起ります際には負担も大きくなりますが、まあ通常そういうようなことは考えないでよろしいかと考えておる次第であります。
  179. 北澤直吉

    北澤委員長代理 川島君にお諮りしますが、運輸省の海運局監督第二課長辻君か参つておりますから、先ほどの質問に対しましてどうぞ……。
  180. 川島金次

    ○川島委員 お願いします。
  181. 辻章男

    ○辻説明員 ただいまの御説明についてちよつと補足させていただきます。今もお話にございましたように、漁船保險と比べますと本法案における木船の保險については、政府から何らの恩惠的措置考えられておりませんので、非常にこの点不均衡があるわけでございますが、御盆の通り弱小な基礎のもとに立ちまして、発足早々不慮の災害がございます際には、非常に苦境に組合が陥ることもあるわけでございます。これらにつきましては実は種々考慮したのでございますが、いろいろの客観情勢がございまして、どうしてもこの際政府の補助的な色彩があることは、好ましくないという事情がございますので、やむを得ずこのようなことにしたのでございます。それで現在の業界の実情を申し上げますと、先ほど舟山局長から御説明ございましたことく、一般損害保險会社におきましては、木船の保險というものを取扱つてはおりますけれども、非常に高率でございまして、とうてい正常な企業経営の基礎としてその保險の負担に耐えられない、そういう実情にございます。その料率か高いという点は、実は木船の業者の大部分というものがあまり保險の思想には無関心でございまして、大体保險会社に加入しているという業者は、非常に危險な航路に就航する船だけでありまして、いわゆる弱船だけの形になつております。それがためにますます料率を高くして行くというような、悪循環を来しているような事情がございます。それで本法案によりまして、ローカル的なごく小範囲で保險をやつて参りますれば、おのおのの危險負担におきまして、あるところにおきましては十分な損害の填補をするだけの料率にさせることもできますし、あるいはそれが非常に危險であると考えれば、一部保險的に料率を下げて、損害程度の一部にとどめて行くという運営もできるわけでございまして、業界といたしましては、とにかく何らかそういう共同的な措置を正式に認められるように、非常に望んでいる次第でございますので、お話のございましたことく、もう少し政府の恩恵を與えたいという気持もあるのでございますが、それはまたの機会に譲りまして、とりあえず業界の要望に応じまして、本法案提出した次第でございます。
  182. 川島金次

    ○川島委員 次にお尋ねいたしたいのは、この法案によつてつくられます組合に対する何か税制方面からする適切な特段の措置も、実は必要ではないかと思うのですが、そういう事柄について局長は何らか考えられて、折衝でもされたという経過がありますかどうか。その点をひとつ伺つておきたい。
  183. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 税の問題につきましては附則に二、三の規定がございまして、まず法人秘法につきましては、この組合が剰余金の分配をなします分につきましては、これは保險料の掛けもどしと認められるのでございますが、これは損金に算入するという規定に相なつております。それから木船相互保險につきましては、附則の四項において登録税を免除するということに相なつております。
  184. 川島金次

    ○川島委員 最後に直接これとは関係ないのですが、もう局長にお尋ねする機会がないと思うので、一言お尋ねいたしておきたいと思うのです。最近岡山あたりで一種の協同組合による信用組合方式の、名称は何か労働銀行など  というようなものをつくるべく発足して、当局に申請をして来ておるというようなことを聞いておるのでありますが、この労働銀行なるものの申請か現に局長の手元に参つておりますか。もしありといたしますれば、どういう趣旨で申請が行われておりますかを、参考にお聞かせおぎ願いたいと思います。
  185. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 労働銀行と名づける信用組合の設立の問題は、新聞紙上で拜見いたしたのでありますか、今日までまた中央に届け出ておりません。これは大蔵省の地方局である財務部を経申しておりますので、財務部にはこれは出ておるものと存じます。この名称のいかんを問わず、協同組合につきましてはこれが中小企業の金融上、裨益するところ多大なるにかんがみまして、できる限りこれを認めて行きたいという方針で臨んでおるのでございます。
  186. 川島金次

    ○川島委員 そこで続いてお尋ねしますが、先般労働大臣の方から何かの機会に談話として発表されたんだと記憶しておりますが、労働省としては独自の見解から、労働者のためにする労働銀行なるものをつくりたいという方針を持つておるという新聞を、私は拜見したような記憶を持つておるのであります。その問題について局長との間に現に何らか話合いがあつたかどうか。その点についてもお尋ねをいたしておきたいと思うのです。
  187. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 労働銀行その他の金融機関のお話は、私としては労働省からまだ受けておりません。
  188. 川島金次

    ○川島委員 実はこの問題について私は過ぐる第一国会の当時から、私なりの主張を持つて来ておるのです。ことに最近は産業界、漁業、農村方面の金融の問題が、非常に大きな問題になつておることは言うまでもない事柄でございますが、さらにまた一般の庶民層と言いますか、広汎な勤労階級等においても、それらが手取り早く簡單に零細な金融を受けるという機関は、今日のところ地方には府県もしくは市町村立の公益質庫、あるいは一般の私企業的な質屋というようなものがもつぱらでありまして、これとても最近の経済事情から見まして、公益質庫は至るところどこへ行つてももはや開店休業の実情であります。従つてその金融機関を活用せんとしておるほどに困つております勤労階級は、全国的に非常に大きな数になつております。しかも当座の必要なまじめな金について、せつかく飛び込んで行きましても、公益質庫は資金がなくてもはや閉業と同じような形になつておるというような実情からいたしまして、勤労階級の当面の零細な資金の需要を満たすことができないで、それが原因になつてさらに一層勤労階級の生計を、困難に陥らしめておるという実情にありますことは、局長もさだめし御承知だと思うのであります。そこで政府は、こういうことは勤労階級の経済実情に即した一つの金融方法として、従来となえられております労働銀行という名称はどうかと思いますが、そうした勤労階級の当面の生活上の必要な零細な資金の融通について、單に地方における市町村公立の質庫にまかすだけでなしに、政府みずからがこの問題の解決に当るという熱意をもつて、何らかの機関をつくるという考え方はないかどうかという  ことについて、この機会にお尋ねしておきたいと思うのであります。
  189. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 庶民階級の金融難というもののために、政府で何か金融機関をこしらえる意思があるかというお尋ねに対しましては、これは予算関連して参りますので、今年度予算については御承知の通りそういうことを考えておりません。今後といえども政府が直営的な金融機関をこしらえるということは、なかなかむずかしい問題があろうと考えるのでございます。その他民間の金融機関として、あるいは労働銀行、これははたして銀行法による銀行でありますか、あるいは信用組合でありますか、その具体的内容を承知しないのでございますが、こういうようなものにつきましては当局の考えといたしましては、中小の業者に対してはそれぞれの専門機関があつた方がよかろう。これは公益質庫が庶民階級を潤すのと同じぐあいでありまして、このそれぞれの専門機関というものができれば、それだけ金融は円滑に行くであろうとは考えておるのでございます。しかしいやしくも金融機関の設立を認可いたしますについて、注意いたしておりますととは、それか健全に発達して行くかどうかということでございます。昨今金融機関設立の希望も若干ありますが、それはともすれば資金も十分集まる目当もなく、ただ政府資金あるいは預金部資金等を漫然と流してもらえるのではないかという期待のもとに、当面の金の必要に迫られて借りることばかりを考えまして、金融機関をこしらえるにしても、あとの資金の回收、あるいは預金を集めるということにつきまして、深い考慮が拂われておらぬというような欠点もあるのでございます。そういう結果はどうなるかと申しますと、その金融機関は中途にして経営が振わなくなる。また経営者はそのしりを自己の責任において收拾するという気持を失いまして、ただ政府にしりぬぐいを押しつけるといつたような傾向があるのが通例なのであります。これらの点にかんがみまして、この金融機関の新設の免許ということは、当局の方針といたしまして必要な場所にはこれを認めて行きたいのでありますが、ただそれが健全に発達して行つて、金融機関の他の部分に迷惑を及ぼさない、あるいは預金者その他の取引者に迷惑を及ぼさないという点につきましては、十分審査をして参りたいと存じております。
  190. 川島金次

    ○川島委員 政府はそういう一般国恥の金融に関しましては、政府の投資によつてはあまりやらぬというような言葉でありますが、現に国民金融公庫をつくつて五万あるいは十万單位の金融機関をつくり、それに政府はある程度の理解と熱意を示しておる状態です。しかしながらこの金融公庫は、主として営業その他の資金として使われるための金融公庫でありますが、小面に先ほど申し上げましたように、一般勤労階級の不時の出費あるいは当面の出資等について、しかもその額たるやせいぜい一万円以下の零細な金額を必要とするような人が多い。しかもその一万円以下といつても万となるものは少くて、せいぜい二千円とか三千円、多くて五千円程度の不時の費用を必要として、公益質屋等へかけつけて行くというのでありますが、それができないので、遂には勤労階級でありながら、月に一割というような高利で借りてでも生計の補いにする。こういうような実情は非常に全国に多いのであります。そういうことからいたしまして、もし政府に労働銀行的なものをつくるという方針がないとすれば、現在ある公立の質屋というものに対して、政府が特段の措置をもつて何らか資金を貸し付けるとかいうような、もつとそれらの階級に対する理解のある、誠意のある態度を政治の上に示す必要が、目下非常に緊急なことではないかと私は思うのであります。そういう事柄については局長はどういうお考えでありますか、お尋ねをしておきたい。
  191. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 私の説明を補足いたしたいと存じますが、本年度予算におきましても、国民金融公庫の増資とか、あるいは住宅金融公庫の設立とか、国費をもつていろいろの形態の金融機関の補強、あるいは新設を考えておる面はあるのでございますが、ただ労働銀行というがごとき、御質問にありましたような趣旨の金融機関の設立は、現在考えておらないということを申し上げた次第であります。公益質屋につきましては、従来戰前におきまし  ては預金部資金等も運用せられて、この経営を助けておつたかと思うのでございますが、御承知の通り、現在預金部資金の運用については、きわめてきびしい制限があるということで、当面こちらの方面に金を流すことは考えられないような状況でございますが、こういう公益質屋のごときものは、庶民金融機関としてでき得るだけ助成して行くべきものと考えております。なお国費をもつては金融機関に対する補助、助成ということはなかなか困難でありますが、府県等においては、地方団体の費用をもつて相当金融機蘭に対して、たとえば信用保証協会に対する出資、その他助成をいたしておる例はあるように承知いたしております。
  192. 北澤直吉

    北澤委員長代理 河田賢治君。
  193. 河田賢治

    ○河田委員 ちよつと一つだけお伺いします。保險組合について実はよくわからぬので、最近国内の運航については、相当六千トン以上の船が内航に進出し、そのために木造船は今非常に弱つておると思うのです。こういう場合に繋船しておるような事実はありませんか。それから昨年あたりから盛んに木造船の燃料の配給なんかで、大分問題がありましたが、現在燃料なんかも十分に配船ないし使用ができておるかどうか。それだけをお伺いいたします。
  194. 辻章男

    ○辻説明員 今の御質問に対しましてお答え申し上げます。ただいま資料を持つておりませんので、詳しく数字的に申し上げられませんのは遺憾でありますが、現在相当数の木船が待船しております。しかもその主たる原因が油がないことによりまして待船しておるのでございまして、実はこの油の問題については機会あるごとに、運輸省から関係筋に増配方を懇請しておるのでございますが、種々の輸送の配分の問題等にからみまして、今なお実現を見ていないのは、はなはだ遺憾に思つております。なお今後も機会をとらえまして、できるだけ十分な燃料が木船の方にまわりますように努力いたしたいと存じます。
  195. 河田賢治

    ○河田委員 先ほど御説明の中には、保險組合をつくつてもらいたいという要望が船主から非常にある、こういうようにおつしやられたのでありますが、特に木船組合には船主が個人で持つておるというのと、そうでないものとがあると思うのです。特に保險組合を設立してもらいたいというのは、そういう個人の船主ではなくして、相当数を持つておる人だと思うのですが、その辺の事情はどうですか。
  196. 辻章男

    ○辻説明員 今木船の保險組合を要望しておりますのは、個人といわず会社といわず全般でございまして、その目ざすところは、先ほど申し上げましたごとく、非常に会社の料率が向いものでございますので、そうかといつて保險をつけずにおきますれば、一朝災害の際には全然損害の担保ができないということでありまして、個人とか会社とかによつての差別はございません。
  197. 河田賢治

    ○河田委員 それからこれはこの問題に関係ないのですが、京都の方で請願的に来ております。これは前尾さんの方が適当なんですが、銀行局長にお願いしたい。金融金庫の特別店舗設置の陳情なんです。これは三月一日付で申請して、当局でも考慮されておるという話らしいのですが、特に京都においては、すべての産業が中小工業である。しかも本店金庫がないという関係で、商工会議所会頭が陳情して、少くとも一箇所置く場合にはどこどこ、四箇所置く場合にはどこどこという希望を付しております。最近東京、大阪、名古屋、神戸、この四都市だけで三十五店鋪の新設、あるいは変更が発表されたのでありますが、京都の方においても今後こういう店舗の設定を御許可になるならば、何店ぐらいを置かれる予定でありますか。わかつておりましたら一応伺いたい。
  198. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 先般中小企業専門店舖を東京、大阪、名古屋、神戸に設げます場合に、京都市も問題にいたしたのでありますが、その当時は京都市の当局でも十分にお考えになるひまがなくて立遅れになつたのでございます。昨今お話もございましたので、その相談を進めております。近く二、三店ぐらいになるかと思いますが、専門店もほぼ出現するようでございます。
  199. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 本法案一般の保險会社から断られたもののみやるのだというように伺つておるのでありますが、これはその漁船について一応保險会社で持つてつたけれども断られた。こういうような場合、この船主保險組合と相互保險組合と木船保險会社と、どちらにつげてもさしつかえないのですか。
  200. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 この相互組織による保險組合は、営業保險会社で保險を引受けないものについて、その救済手段として実施しようとするものでございますが、具体的にどういう保險事故に対して組合でやるか、営業会社でやるかということについては、組合の方の定款をもつて定める予定になつております。営業会社で引受けますものについては、原則として組合ではやらぬということに相なると思います。
  201. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 この船舶の場合、たとえば北海道のようなあぶない地点に行く船もあります。また内海のように安全地帯を航海する船もありますが、この場合の保險料というものは同一にやつておるのですか。
  202. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 ただいまの説明が少しく足りませんでしたから、補足いたします。ただいま申し上げましたのは、主として船主責任相互保險についてでございまして、木船の方は現在損害保險会社でも相当引受けるのがございまして、その部面につきましては、業者の選択によつて営業保險会社に入つてよろしい、また組合に入つてもよろしいということに相なります。
  203. 長崎正造

    ○長崎説明員 ただいま御質問のありましたうち、保險料率について御説明いたします。木船保險料合法によつて木船保險を行つていたわけでありますが、その場合保險料率は全損と救助費を担保といたしまして、純帆船の場合は百円について三円二十銭、機帆船の場合は四円五十銭程度が最低であります。航路その他危險の程度に応じて百円について十円十銭という程度であつたわけでございます。ところがこの木船保險組合が解散いたしまして後は、民間の保險会社がこれを引受けることになつたわけでございますが、その場合全損と救助費とを担保にして百円について五円が最低でありまして、危險地域その他におきましては、最高百円について二十円五十銭という程度に高くなつたのであります。その上に戰時標準型船舶につきましては、その五割増しというようなぐあいで、木船保險組合がやつてつたときよりも相当高くなつております。木船保險組合については、政府再保險という制度もあつたというような違いはあるわけでありますが、こういうふうに料率は相当高くなつておるわけでございます。将来の木船保險組合は今度の船王相互保險組合法ができました場合、どういう料率になるかということは、地域によつてもまた木船の種類によつても違つて来るわけでありますが、どの程度になるかということは、ちよつとお答えいたしかねる次第でございます。
  204. 北澤直吉

    北澤委員長代理 ほかに御質疑ありませんか。
  205. 前尾繁三郎

    前尾委員 本法案についてはもう質疑もないようでありますから、質疑を打切りただちに討論採決に人られんことを望みます。
  206. 北澤直吉

    北澤委員長代理 前尾君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 北澤直吉

    北澤委員長代理 では船主相互保險組合法案につきましては、質疑を終了し討論、採決に入ります。討論は通告順に従つて行います。前尾繁三郎君。
  208. 前尾繁三郎

    前尾委員 ただいま議題となりました船主相互保險組合法案につきまして、私は自由党を代表いたしまして賛成の意を表するものであります。昭和二十三年七月木船保險法による木船保險組合が解散いたしまして以来、船舶海上保險について何らか措置がとられなければならぬという要望が強かつたわけでありまして、昨年の四月一日から船舶運行の方式が、船舶運営会の裸傭船から定期傭船に変更されました際にも、船中の負担費用及び責任の範囲が拡大されましたので、相互保險の必要が当時もやかましく言われたのでありますし、また最近四月一日から船舶の運行がすべて船主自身の手で行われるようになりましたので、その必要も強くなつてつた次第であります。幾たびか機会あるごとに、これに関連した法案の討論の際にも、船舶海上保險について何らか法案を出してほしいという要理もあつたことを記憶いたしておるのであります。現在の日本は、何と申しましても海運の輸送をますます増加いたしまして、その発展を期さなければならぬのでありますが、一面不時の損害に対しましてこれを補填するという道を開くのは、当然の措置であります。本法案が出されたのはまことに機宜を得た措置であります。私はただこういう組合保險はなかなか経営がむずかしいという点にかんがみまして、これを助長育成されることをお願いしなければならぬ反面におきまして、また保險料率の問題、責任準備金の積立金に対する問題というような問題で、不安のない保險行政上の監督を嚴にやつていただいて、ぜひこの法案の成果を上げていただくことを心から希望いたまして、本法案に対して賛成の意を表するものであります。
  209. 北澤直吉

    北澤委員長代理 川島君。
  210. 川島金次

    ○川島委員 私は日本社会党を代表しまして、本案に対し政府に強い要望を付しまして、本案に賛成をいたすものであります。本案の立法の趣旨とするところにつきましては、われわれも別段の疑義がございません。従つて法案自体に対する問題に関する限りにおきましては、賛成いたすものでありまするが、この機会に特に政府当局に強く要望をいたしておきたい点があります。それはこの種の協同的企業体による保險組合に対しましては、その組合自体が新しくその事業に携わるものでありまするので、もとより事務的な熟練者も少いのであろうし、また経営の面についても、これまた当分の間は未熟な過程において、この事業を運営して行かなければならない等のことからいたしまして、よほど政府におきまして、これらの事業に対する理解と熱意を持つた指導監督をいたしませんと、せつかくの保險組合の目的を満足に達成することが、不可能になるようなおそれがあるかと思います。さらにまた運営のいかんによりましては、單なる事業形態がボスの支配にまかされるというようなことになりましては、なお一層重大なことになりますので、そういう事柄については、一段の注意と関心とあわせて指導とをもつて当られんことを、切に要望するのであります。第二点といたしましては、これらせつかくの保險組合に対しましても、先ほどの御説明にありましたことく、こういう新しい事業体に対して、精神面はもちろんでございますが、経理面につきましても、政府が当分の間は特段の措置をすべき事情が多かろうと思うのであります。しかるにその事柄が不幸にいたして、目下のところでは実現不可能な事情にあるようでありますけれども、おそらく不慮の広汎な災害に遭遇いたします場合には、さだめしその保險組合員の加入者が、その損害をほんとうに補填できるような形にならない場合も、起つて来ないとは断言できません。そういう場合に対しましては、運輸省はもちろんでございますが、大蔵当局におきましても特段の措置を、特例な方法をもつてするという強い方針で臨む必要があるのではないかと、私は思うのでありまして、今の段階ではそういうことが不可能でありましても、できるだけ近い時期において、それらの助成的な対策というものを確立すべきではないかと思いますので、この点を強くつげ加えておく次第であります。     〔北澤委員長代理退席、委員長着席〕  最後に、また政府は近来協同組合的なこの種の事業に対しまして、税制の面におきましても、あるいはまた金融の面等におきましても、ややもすれば冷淡なところがあるように、私どもが深く感ずる点が往々にしてあるのであります。せつかく協同組合をつくらしたが、税制の面においては一般の利益追求の法人と同様にこれを処催したり、また地方税その他におきましても何ら仮借なく、非営利事業を営利事業と同様な処置をもつて、これを遇するというようなことでありまして、ややもすれば協同組合的専業に対しまして、政府は誠意がない、理解がないというような形が今日現われておるのでありますが、そういつたことではなしに、今回の保險組合等に対しましても従来のこれら協同組合事業を育成し、事業の社会化というものに対する一段の理解を示しつつ、この種事業に対する格段の理解を持つた措置を講じて行くことが、絶対に私は必要だと思いますので、そういう事柄についても政府は特に御留意を願つて、一日も早く実施に移されるように、最善の努力をしてほしいということを特に希望いたしまして、本案に賛成をいたすものであります。
  211. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 私は民主党を代表いたしまして、強い要望を付しまして、本案に賛成するものであります。今回の法案は、一応損害保險会社が引き受けないものを、船主相互保險組合をつくりまして、相互に保險し合うということはけつこうなことでありますが、保險制度としては旧制度に立ちかえる形で、保險の時代進歩に逆行するような感じかするのであります。鉄船を包含した場合は非常に合理的に行くのでありますが、木造船のみの場合だと、この危險選択の範囲が狭いために、運営が成功するかどうか非常に疑問になつて来るのであります。またこの危險選択を十分御研究なさらなければ、この運営は決して成功しないのだと考えております。それから責任の問題については、一応この各般主が支拂つた範囲内、いわゆる保險料の範囲内ということになるのでありますが、しかしそれのみにおいては当然できないので、補償責任の制度が必要であると思いますが、この場合船主の責任が発生した場合に、自己の補償責任を果すために、とうとうその金を拂い切れないで、この船舶保險に対する支拂いが不能になる場合もないとは言えないのであります。そういうような場合に、ぜひ政府において特別な措置を講ずるか、あるいはこれに対して金融機関から金を借りて決済をさせるというような、特別な親心を考慮していただくことの條件を付して、本案に賛成いたします。
  212. 川野芳滿

    ○川野委員長 河田賢治君。
  213. 河田賢治

    ○河田委員 私は共産党を代表して本案に反対するものであります。なるほど保險として、協同的にこれをやるということは、非常によいようには見えますが、現在の段階におきまして、どうしてもこの中小企業的な組織の中におきましては、特に先ほど川島委員からも指摘いたしましたことく、ボス的な支配によつて、小さなものに負担が多く転嫁されるという結果にもなり、同時にまた今日の状態からいいましても、この経営の運営というものは非常に困難であると私たちは思います。先ほども政府委員の話されましたように、現在相当繋船があつて、燃料の配分につきましても不十分である。ことに石油などは相当今日外国から重油が入つて精製はしておりますが、中小企業の要製している必要なところにまわつて行かない。従つてお互いに危險を冒しながらも、運航をやつておるような状態でありますから、結局この経営というものもきわめて将来において疑わしいわけであります。特に重要なことは、このようにして中小企業的なこれらの協同体が非常な犠牲をこうむりながらも、現在の政府の政策といたしましては、大企業に対して、やれ補給金だとか、あるいは資金の面におきましても、それぞれ有利な立場を與えるように、特に要請をしておることでありますが、こういう小さな木船などに対しましては、もうお前たちで損害は負担せよというような状態で、まつたく大企業のみに今日集中されまして、その犠牲は常に中小企業に全体としおつかぶされておるということが言えるのであります。特にこういうような点からして、現存の国内の運送ぎようむから考えまして、私たちはこういう保險事業などよりも、まず第一に、時代遅れにはなりますが、木造船などがすみやかに運航できるように、日本の経済態勢を切りかえて、同時に外航船などがもつともつとどんどん出て行く。言いかえれば海運事業に自主性を取りもどすということが、今日当然必要な段階だとわれわれは思うのであります。従つてこういう保險のような制度をつくりましても、これによつて実質上大して利益をこうむらないのであります。私どもはこういう点から、本案は業者にとつて大きな利益をもたらさないということを指摘し、同時に日本の海運業をもつと自生性のある海運業にして行かなければならぬという立場から、本案に反対するわけであります。
  214. 川野芳滿

    ○川野委員長 討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  215. 川野芳滿

    ○川野委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時九分散会