○佐藤(一)
政府委員 第七條、これは非常にむずかしい條文でございますが、ただいま
ちよつとお話がありましたように、わが憲法の建前からいたしまして、会計検査院と
政府というものは互いに独立し合
つて他を侵すことができないということが、一応の原則になりております。それでいながら、またお互いにこういうふうな
関係に立つということでありますので、勢いこの表現の仕方がむずかしくならざるを得なか
つた次第でございます。第七條の一項でございますが、この事前
審査の
規定は、実は私たちがこれを立案いたしまして、各省の会計課長
会議に諮りましたときにも、ただいまお話のあ
つたような問題が非常に起
つたのであります。つまり法令の解釈というようなものについて、結局会計検査院が決定権を持
つてしま
つて、
政府の各省というものは会計検査院の見解を伺うに汲々としてしまう。その結果何でもかんでも一面に相談を持
つて行
つて、
政府はもう動けなくな
つてしまうのではないかという心配でございます。しかしこれは第七條一項の立法の
趣旨ではございませんで、結果としてそういうふうになろのではないかという、いわば疑義を持たれるような
傾向もございますが、この第七條の一項は、條文をよく読んでいただきますとわかりますように、むしろ私たちがこの
規定を置きましたのは、会計検査院がしよつちゆう考えがぐらぐらとかわ
つて——現在でもそうでありますが、各省は会計検査院にしかられることをおそれて実際上相談に参ります。ところがその場合に係等が巨頭でも
つて返答を受けて安心しておると、実際は検査報告でも
つて批難を受けておるというようなことが、必ずしもないことはないのであります。これは手続きの行き違い等もあるのではないかというふうに考えておるのでありますが、できるだけそういう行き違いというものは、こういうふうに
責任が加重される以上、防いで行かなければなるまい、こういう気持でございます。会計検査院は一ぺん自分が相談を受けて、そうしてその
意見を表示しましたら、それを黙
つて今度はひつくり返して、それによ
つて決定するということは困るということを、ここで率直にその気持を表わしておるだけであります。もちろん誤りだということであれば、ただちにその誤りであることを表明して通達してもらえば済むことでありげます、が、そういうような気持をここに出しておるのであります。ただその結果といたしまして、ここにございますように支出等の行為に関し、疑義のある
事項について結局
意見を求める。そうすると各省は事なかれ主義ということにな
つて、検査院の言う
通りになる。結果といたしまして法令の解釈は、検査院が握るのではないかということでありますが、これはあくまで建前といたしまして、会計検査院はいわゆる事実の検査をするところである。もちろんそれに伴うところの最小限の解釈というものは、当然出て来るわけであります。しかしこの法令を立案するのは常に
政府であり、そうしてそれを決定するのは国会でございます。第一次的にはやはり直接
事務を執行しておる
政府が、自分の可なりと信ずるところの解釈のもとに行動せざるを得ない。最後に争いがありましたときには、決算
委員会その他の機会におきまして、国会にその見解を明らかにしていただく。もちろん法的にはそれをはつきり定めてもらう場合には、裁判所まで行くということになろうかと思うのであります。私どもそういう
意味で、ただすなおにできるだけ、会計検査院が
意見をぐらぐされて、各省が迷惑をごうむらないようにという気持で立法をや
つたのであります。ただただいま申し上げましたような疑義が、ある
程度どうしてもやむを得ず起
つて来るのであります。そこで一種の老婆心から二項と三項を置いたのであります。すなわち会計法規の立案に当
つており、また
政府といたしましては、その解釈について最後的な
責任を持
つておるところの
大蔵大臣が、これに関与する機会を与えてもらいたい。すなわちここにございますように、事実の認定については、これは会計検査院に文句を言う必要はないのでございますが、法令の解釈ということにつきましては、もしも
大蔵大臣が、いや検査院の見解はそうだが、
政府としてはそうじやないという見解を持ちました場合には、これを表示する機会を持ちたい。そのために二項でも
つて一応通知を受けまして、そうして三項でこういう條文を置いたわけであります。従いまして七條の第一項にある「支出等の行為に関し疑義のある
事項」と、一項は非常に広く書いてあるのでございますが、三項におきましては、「法令又は予算に定める
事項の解釈について会計検査院の
意見と異なる
意見があるとき」というふうに、主として予算の編成の
趣旨とは法令の解釈について
大蔵大臣がやはり見解を持ち、結局各省大臣は
大蔵大臣に聞いて参りますので、
政府の各省を代表する
意味で、こういうようなチャンスを与えてもらいたい。こういうことを老婆心として入れたわけであります。もちろんそれであるから、今度は会計検査院を
政府が拘策するということもできませんので、一応表示することができるという機会を与えてもらいたい。こういう気持で、あります。條文としてこういう機会を与えていただいて、正式に
大蔵大臣として
意見を表示しましたときには、会計検査院としても敬意を払
つて尊重していただけるものと、私の方では考えておるようなわけであります。
しかしながら多くの場合におきましては、事実上十分連絡をいたしまして、こういうような互いに見解が齟齬するというような事態の起らないように、運営を十分に連絡をよくしてや
つていただきたいと考えております。