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1950-03-09 第7回国会 衆議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月九日(木曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 大上  司君 理事 北澤 直吉君    理事 小峯 柳多君 理事 前尾繁三郎君    理事 川島 金次君 理事 河田 賢治君    理事 内藤 友明君       岡野 清豪君    奧村又十郎君       佐久間 徹君    塚田十一郎君       西村 直己君    三宅 則義君       田中織之進君    松尾トシ子君       宮腰 喜助君    竹村奈良一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  伊原  隆君         大蔵事務官         (理財局経済課         長)      吉田 信邦君         大蔵事務官         (管財局長)  吉田 晴二君         国税庁長官   高橋  衞君         経済安定事務官         (財政金融局次         長)      西原 直廉君  委員外出席者         專  門  員 黒田 久太君         專  門  員 椎木 文也君     ————————————— 三月九日  委員木村榮君及び河口陽一君辞任につき、その  補欠として神山茂夫君及び中村寅太君が議長の  指名で委員に選任された。 同日  委員神山茂夫君が辞任した。     ————————————— 三月九日、  日本勧業銀行法等を廃止する法律案内閣提出  第九六号)  銀行等債券発行等に関する法律案内閣提出  第九六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第四  七号)  有価証券移転税法を廃止する法律案内閣提出  第四八号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五一号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五二号)  富裕税法案内閣提出第五三号)  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五四号)  資産評価法案内閣提出第八三号)  相続税法案内閣提出第八四号)  所得税法等改正に伴う関係法令整理に関す  る法律案内閣提出第八五号)     —————————————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 ただいまより会議を開きます。  九税法案一括議題といたしまして、前会に引続き質疑を継続いたします。前尾繁三郎君。
  3. 前尾繁三郎

    前尾委員 ただいまいろいろの話が出ております通り、なかなか今度の法文はわかりにくいし量が多いので、あるいは的はずれの質問が多いかとも思いますが、一応事務的な問題についてお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、第六條の非課税所得のことでありますが、第六号のいろいろ学術研究奬励金というようなものに対して免税されるわけでありますが、大蔵大臣の定めるものというのは、省令あるいは具体的に何かおきめになりますか。その点をまずお聞きしたいと思います。
  4. 平田敬一郎

    平田政府委員 この非課税は新しく入れたわけでありまして、学術研究のための特別な奬励金等を、これによりまして免税する考えであります。具体的には国、地方団体等が出します場合は、無條件にこの條文に該当するということでいいと思いますが、民間の団体等で支出します場合におきましては、個別的に審査いたしまして、告示することによつてその関係を明らかにしたい。大蔵省の告示で、その関係をはつきりいたしたいと考えております。
  5. 前尾繁三郎

    前尾委員 ちよつとこれに付随してお尋ねしたいのは、昨年の湯川博士の例のノーベル賞に関してでありますが、この法律は遡及されるわけではないと思いますが、ノーベル賞については、おそらく湯川博士アメリカ住居が移つておる、あるいは居所が移つておるというような理由で、非課税になると思うのでありますが、この点はいかがでありますか。
  6. 平田敬一郎

    平田政府委員 湯川博士の場合は、家族とも一緒にアメリカ住居を移しておられるものに該当するものと考えますので、課税にならないと解釈いたします。
  7. 前尾繁三郎

    前尾委員 この問題に関しましては、もちろん取締りは必要ではありまするが、今後文化国家として十分御考慮の上、あまり嚴に過ぎないようにお考え願いたいと希望を申し上げる次第であります。  次に第七号につきましては、従来生命保險金について規定があつたのが削除されておりますが、その点はどういう意味でありますか、お尋ね申し上げたいと思います。
  8. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の点は單に條文技術的整理をいたしたにすぎないのでありまして、今回は「相続税法規定により相続、遺贈又は贈與に因り取得したものとみなされるものを含む。」ということに一括いたしまして、生命保險も死亡を原因としまして支拂いを受けた保險金は、従来通り非課税になるわけであります。
  9. 前尾繁三郎

    前尾委員 私はこの非課税規定の問題について、ちよつと意見があるわけであります。と申しますのは、従来法人に対して、法人から贈與を受けました分は贈與税をかけずに取得税で行く。というのは御承知のように従来贈與税は、贈與をいたしたものに課税されたものであります、従いまして法人納税義務者になるという点におきまして、おもしろくないというような点があつたからと思うのでありますが、今回は贈與を受けましたものが、非課税控除を受けるわけであります。従つて法人からもらいました贈與、確かにこれは贈與に違いないものがあるわけであります。そういう点からいたしますと、従来と違つて建前としてはやはり贈與は相続税という行き方の方がより理論的であるのではないかと思います。ことに三万円の控除というような問題とからんで考えますと、むしろ相続税で行かないと非常に酷にわたる場合があるのじやないかということを、懸念するわけでありまするが、その点について政府の御意見をお伺いしたいと思います。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 法人からの贈與は、性質個人間の贈與と異にする場合が、ケースとしましては大部分じやなかろうかと考えるのであります。法人からの贈與の場合におきましても、たとえば公共団体に対する寄付だとかあるいは公益事業に対する寄付とか、こういうものは純然たる贈與の性質を有するかと思いますが、一般の個人法人から贈與を受けます場合には、通常の場合は何らかの報償として受ける場合が多いのじやないか。直接の報償でないにしても、間接に何らかの意味報償的な性質を有するものが多いのじやないかと考えられるのであります。そういうものはやはり建前所得税を課するというのが筋道としてもいいんじやないか。従来におきましてもさようになつておつたのでありますが、改正後におきましてもそういう形をとつた方がいいと考えておるのであります。その点は額から申しますると、三千円を相続税におきましては三万円に引上げまして、個人間の贈與につきましては相当優遇することにいたしたのでありますが、法人の分につきましては、今申しましたような見地から所得税を課するというのが、やはり筋道が合うのじやないか、かように考えておる次第であります。
  11. 前尾繁三郎

    前尾委員 なるほどおつしやる通りに何らかの意味で贈與でない場合が多い。しかし明らかに贈與の場合と考えられる場合も私はあると思のであります。また法人がそういうような意思決定をすれば、私は贈與として取扱うべきじやないかと考えるのでありますが、これはまた意見にわたりますから、あとで申し上げることにしまして、三宅君にかわります。
  12. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は資産評価について、伊原理財局長にお伺いしたいのでありますが、時間がたくさん超過しますので、割合簡單に急所だけ質問申し上げまして、また時間があれば再質問いたしたいのであります。資産評価につきましては、わが国の経済の現段階としてきわめて重要な段階だと思います。今私の考えております事柄は、法人個人を問わず財産目録貸借対照表を完全にしておかなければ、はつきりした資産評価はでき得ないと思つております。現段階におきまして二十五年一月一日をもつてやられる、こういうような法律の趣旨でありまして、こういう基準昭和二十五年一月一日に定められましたが、むしろ私は昭和二十五年四月一日とした方がよいかとも思うのです。この辺に関係しまして、政府当局の御意思を承りたいと考えております。
  13. 伊原隆

    伊原政府委員 ただいま三宅先生仰せ通り資産評価をいたしますためには財産目録賃借対照表というものが非常にはつきりしておらなければならないということは、仰せ通りであります。基準の日につきましては、これは実はシヤウプ博士勧告によりましても、資産評価ということはできるだけ早く行いたい。実は経過的にも、勧告案が出たらできるだけ早く立法化し得る一等早い機会に、これを行うことが望ましいということもありまして、また所得税計算等においても、一月一日ということが望ましいものでありますから、できるだけ早くという意味におきまして、本年一月一日ということを基準にいたしたわけであります。
  14. 三宅則義

    三宅(則)委員 この範囲のことでありまするが、範囲は商業、工業金融業農業水産業並びに不動産貸付業医業等言つておるのでありますが、そのほか政令をもつてこの資産評価を定めますものをつくる、こういうふうに法律になつておりますが、どういうものを政令でつくろうとしておりますか。政府の御意思を伺いたい。
  15. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 お答え申し上げます。大体所得税あるいは法人税等関係が非常に密接でございますので、所得税等におきまして減価償却を認めるものはすべて含むという意味で、所得税等事業範囲に関する政令とあわせて進むつもりであります。
  16. 三宅則義

    三宅(則)委員 漁業権水利権特許権実用新案権意匠権商標権営業権試験研究費、こういうものはいわゆる無形資産と言いまして、中には水利権にいたしましても、特許権にいたしましても、実用のあるものもありますが、中にはあるいは架空的なと申しますか、内容的にはきわめて薄弱なものもありますが、これらについては相当研究する必要があると思いますが、政府といたしましてはどういう基準をもつてやりますか、承りたい。
  17. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 大体この無形固定資産につきまして再評価をいたしますに際しましては、私企業の場合におきましては帳簿に記帳されている価格ということがもとになりますので、おおむねそれに従つて行けばいいものと考えております。なおこれにつきましては具体的にはこまかい問題もいろいろあると思いますが、特に実際の価値よりもこの計算で再評価したならば高くなり過ぎるということも考えられますので、現在三十五條に陳腐化とかその他によつて時価よりも著しく高いものについては、政令で別に定めるということにいたしておりますが、なお微細な点はさらに研究をいたしてきめたいと考えております。
  18. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は伊原局長にお尋ねいたしたいと思いますが、もちろん私ども財産におきましていろいろありますが、たとえば農業等におきましては、立木いわゆる山林、土地、こういうものにつきましては植林のごときも相当費用がかかる。三十年も前に、あるいは四十年も前に植林いたして相当年月がたつておりますが、こういうものについてはこれまた相当なる減価焼却をしておりません。こういうものについての評価と、また工業用資産、あるいは農業等におきましても家財道具等もありましようが、こういうものについての資産評価につきましては、よほど嚴格にやつて行かないと過不足があつたり、不公平があつてはいかぬと思いますが、そうしたような農業所得山林所得等に対する事業資産に対しての評価はどういう基準をもつてやられますか、承りたい。
  19. 伊原隆

    伊原政府委員 今お示しのような農業資産工業資産につきましては、おのおの資産性質によりましてきまつた基準によつてやることに相なつております。
  20. 三宅則義

    三宅(則)委員 あまり問いつめることをいたしませんが、私の考えておりますのは資産内容におきまして、取得価格におきましては昭和二十四年六月の卸物価指数をもつてやりたい、こういうふうに政府考えておるのでありますが、昭和二十四年六月というのはなかなか物価が高かつた時です。今日は経済がやや安定しかかつて参りましたから、相当値下りしている部分がありますが、その高いところの六月を基準とされる予定でありますか。そる辺を承りたい。
  21. 伊原隆

    伊原政府委員 今お話通り、この法律には昨年の六月を基準にいたしております。これは実はシヤウプ氏の勧告が発表せられました直前というところで六月を選んだのでございますが、仰せ通り昨年の六月に比べまして物価がだんだん動くということもございますので、たとえば法人等におきましては、その再評価差益が、実際に物を売りましたような場合におきまして、物が下つて売れたというようなときには、その再評価差益からそれを引落すというようなことを考慮して、讓渡所得計算等におきましても調整をするというようなことを考えているわけであります。
  22. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は過日大蔵大臣池田さんにお伺いしたのでありますが、事務的にちよつと伊原さんにお伺いいたしたい。というのは、財産税調査いたしたのでありますが、その資産評価審議会とかあるいは調査会というものを設けることにつきまして、審議会を全国に設け、調査会を各国税局のいわゆる分店と申しますか、地方国税局管内に設けております。われわれ実際上から申しますと、多年の理想でありますが、各町村を單位といたしまして、もしくは税務署單位において資産評価をいたしまする基準を置くことが、穏健にして妥当だと思つております。これらについて政府はこういうような予備的機関を各税務署ごとにお設けになつて、それらの地方に適当な基準をお示しになることが、国としても一番穏健だろうと思いますが、この構想をお使いになるか承りたいと思います。
  23. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 お答え申し上げます。ただいまお話がございましたように、各地域に税務署ごと、あるいは市町村ごと審議会を設けるというふうにいたしますことは、理想的に申せば一番けつこうなことだと思います。ただ他面再評価の問題は非常に急がれておる問題でありまして、現実にきようあすにでも売買が行われれば讓渡所得税がかかつて来る。また減価償却も一日も早くやつて参りたいという考えからいたしますと、あまり愼重にやつてつて時期を失するということになりましては、また他面弊害が出て来ると思います。従いまして絶対的に確実とまでは行かなくとも、大体のところで確実なところまで行けるという程度におきましてやる方法といたしまして、この法案に書いたような行き方をとることにしたわけであります。これによりますと、一応各評価につきましては個別的な評価は一般的にはいたしませんで、それぞれの記帳価格あるいは取得価格などを基礎にいたしまして、それにこの法律できめました倍数をかけて具体的に算出する方法で参りまして、もしその申告に対して政府異議がある場合には政府更正決定をする。そうして更正決定をしたことに対してさらに納税者の側から異議があります場合には、單に税務署限り、国税局限りできめませんで、国税局單位資産評価調査会というものを設けまして、そこで各方面の御意見を承つて、その異議申立てを裁定するというような構想にいたしたわけであります。
  24. 三宅則義

    三宅(則)委員 時間がありませんからもう一、二点だけ伊原さんにお伺いいたします。第一年に二分の一、第二年に四分の一、第三年に四分の一、こういうふうになつておりますが、私はむしろ法人につきましてこういうようなことを算定いたしますについては、根本原則として強制をなすつた方が穏健だろうと思います。任意にやるということになりますと、一方の方はかつてにやる、一分の方はやらぬでおるということになりますと、今日の経済不安の状態において安定しない、かように考えますから、むしろ法人については強制的にやれ、こういう方法を講ぜられた方がよろしいと考えておりますが、政府はなぜそういうことをなさらなかつたかという点をひとつ承りたい。
  25. 伊原隆

    伊原政府委員 再評価は任意であるよりもある程度強制の方がよいというお示しでありますが、これにつきましてはいろいろの考え方がございまして、三宅委員仰せ通り、こういう画期的のことでありますので、会社経理を明確にするという意味で、全体のものを再評価をやつた方が望ましいということにつきましてはまつたく同感であります。ただ今日の経理の状況におきましては、企業の先行きその他を考えますと、政府で一律に強制をいたしますのはいかがと存じまして、一定の最高基準示しまするが、その範囲会社が任意に資産評価をいたしました場合には、償却がふえるとかその他非常に利益がありますので、それらの利益考えながら会社が自由にするということにいたしたわけであります。
  26. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は最後に一つお伺いいたします。この農業等に対するいわゆる個人につきましては再評価いたしましてから五箇年間、二十六年より五箇年間に云々することになつておりまするが、むしろこれらにつきましては、あるいはそれを延長いたしまして、あるいは六年とか七年とかいうことにしてもいい、あるいは自分で早く納めてもいいという人は早く納めてもいいと思つておりまするが、五箇年間に分納することを基準としておられまするか。その辺をお伺いいたしたい。
  27. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 原則として五箇年間に分納を認めることになつておりまするが、一年間に分納すべき再評価税の額が再評価をしたことによつて減額さるべき所得税額に満たないような場合には、さらに一年間延ばすことになつております。
  28. 河田賢治

    河田委員 平田局長にお尋ねいたしますが、現在の納税申告制度は、納税する者が確定申告をしましても、これは本人が書いて申告することが建前になつている。またそういう制度のもとにこれを助長して行くという指導をやつておられるかと思いますが、最近税務署におきましては、昨年暮れあたりから本年にかけて確定申告につきまして、新潟県あるいは長野県その他各地方において、税務署自体確定申告をこれこれであるというふうの書いて、そうしてこれを納めないときには、すぐに日歩二十銭の延滯金が加算せられて来る、税金がまた追徴税なんかでふえて来るというおどかしを、次に並べて書いてよこしているわけであります。これは申告制度の方針とは、法律上からいつても私はまつたく相反するものだと思いますが、これについて局長の御意見を伺いたい。
  29. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の点は河田委員はおどかしというふうにおとりになつているようでありますが、これは私は行き過ぎぬ限りにおきましては、むしろその方が親切だと解し得る場合も多いのじやないかと思うのでございます。と申しますのは、よく納税者の方々がうつかりしたとか、自分は知らなかつたとか、あとでいきなり更正決定が来て困つたという例が最近まで多かつたのでありまして、それに対しまして、事前税務署等におきましてなるべく親切に納税者にも知らせる。それから怠つた場合におきましてはどういう結果になるかということも通知いたしまして、納税徹底をはかるということは、一般的には私決して非難すべき事項ではないと思います。納税者の方方もそれをおどかしというふうにおとりになる必要はない。これはあくまでも法律に基きまして正しい申告をしていただきますればいいわけでありまして、税務署からは一応御注意を喚起する意味でさような通知をいたしているものと考えるのであります。従いましてそういうものが一がいに惡いとも言えませんし、場合によつては非常にいい効果を生ずる場合もございましようし、また税務署の態度次第では、場合によつては行き過ぎの場合もございましようし、いろいろあるかと思いますが、大体におきましては私はむしろそういう方法をやりまして、なるべく事前によく徹底をはかりました上で、円満な納税をはかるというのがいいんじやないか、かように考える次第であります。
  30. 河田賢治

    河田委員 そういう場合には決して各個々の納税者の実態を把握して、これに確定申告予想して出しているわけではない。大体はやはり外形標準等によりましてきわめて多額な更正決定をしているわけである。あるいは確定申告予想をしているわけである。綿密に調査した場合ならば、それは今局長の言われた通りりくつに合うのでありますが、御承知通り、今日の税務署調査能力というものはきわめて限定されたものでありまして、従つて多くの更正決定あるいは確定予想申告の要請というものは、水増しが多いわけであります。そういうことから現在御承知税務署納税者との間の間隙が、ますます深まつているわけであります。こういう場合に少くとも税務署としてそういうものを出すときには、大体基準がある。税務署がどのような算定に基いてそれをしたかということを、はつきりと証明してかけるべきが私は当然だと思う。ただ單に確定申告税金がこれこれだと言つて全額だけを出してやつて来るから、今日納税者は御承知通り、警察よりも税務署が世の中では一番おつかないという気持になつておるのであります。こういう場合に税務署がそれ相当の資料をもつてかけられるということ、確定申告に際してはそういう親切な手続が私は必要だと思う。それをやらずにただ全額だけを書いてやつたのでは、納税者の方では納得が行かない。現に私ども地方に参りましても、一月三十一日までに納めるものを、十二月十五日までに納めなければならぬと言つて、あわを食つておるような人もあつたわけであります。現在の全般的な納税者の水準というものと見比べて、税務署がこういう仕事をされる場合には納税申告制を発展させるためには、それだけの親切があるべきだと思う。今後納税の問題に対するいろいろな場合も起りますので、その点についての政府の御所見をもう一度お伺いしたい。
  31. 平田敬一郎

    平田政府委員 もちろん今河田委員お話のように、そういう場合におきましてはできるだけ税務署は正しい調査に基きまして、自信のあるところをお知らせするのが一番よい方法かと思いますが、今申しましたように、これは納税者に対する一種の親切だというふうに、納税者もとつてけつこうじやないかと思います。従つて自分自信のある根拠に基いて算出した所得税務署の見解と違つた場合におきましては、その所得で御申告になるのは一向さしつかえないのであります。ただややもすると今までは事前にそういうことを全然やつておきませんで、あとでいきなり来たというのはなかなか紛糾が多いのが現状でございますので、むしろ税務署もできる限り円満に納税してもらうために、ある程度そういう通知を出しておるものと考えておるのでございます。そういうものと納税者もおとり願いまして、正しく納税していただくということで私はよいのじやないか、かように考えます。
  32. 河田賢治

    河田委員 私は、納税額と言いましても、やはり基準を示すべきが必要だと思います。この点は議論になればやめますが、次に必要経費の問題であります。必要経費については大体大蔵省の方から、あるいは国税庁の方から指示が行つておるのでありますが、この必要経費算定については、各地方地方できわめて不十分にしか納税者に通達されておらない。税務署納税者を集めて、こういうような申告をしてくれ、必要経費はどうこうと言いますけれども税務署の方においては自分のとる方の説明はなかなか詳しくやります。ところが納税者が差引いてよい必要経費については説明がきわめて不十分です。たとえば百姓さんの作業衣から地下たび、こういうものも必要経費の中に入れることになつておりますが、こういうものはなかなか税務署の方でも説明しておりません。今後税務当局あるいは主税局等においても、この必要経費算定ということは十分にやつていただきたい。かりに税金が外形的にきわめて軽くなりましても、必要経費に加算されるものがされなければ、やはり税金は重いと同じことになります。たとえば医者あたりの報告を聞きますと——歯医者さんですが、これなんかは白い上着一枚しか必要経費の中に算入されない。しかし上着だけ着て、夏も冬もふんどし一枚で働いておるわけではない。こういう場合に少くとも医者が当然消費されるものは、ある程度必要経費として引いてくれなければ、とうてい今日の保險医者が保險料の方から分配される医療金ではやつて行けない。少くとも先生と言われる社会的地位を保つためには、自分のむすこ一人ぐらいはあとを継がせるために大学なんかにもやらなければならない。それにはどうしても最小限見積つて二万円の費用がいる。ところが今日では、それをやるには三十五人とか四十人とかいう莫大な人を診療しなければならぬが、そのためには十六時間くらい働かなければ、それだけの收入がないというふうな困難な状態をこの委員会にも請願しておる次第であります。そこでこういう必要経費について各税務署の末端にまで、また納税者にまでわかるようにできるだけ詳しいものを、必要経費のどれだけのものを引いてよいかということを、今後はつきりと明示される意思がありますかどうか。この点をお開きしておきます。
  33. 平田敬一郎

    平田政府委員 今河田委員お話になりましたところが、実際の運用上における最もむずかしい問題でありまして、御意見ごもつともなところが多いと思いますが、ただこの問題はなかなか一片の通牒等では解決できないような実際上のむずかしい問題がいろいろあるのでございます。もちろん政府としては、できる限り法令でまずその基準を明らかにする。法令の不足なところは訓令等をなるべく詳細にきめまして、それをできるだけ公開いたしまして明らかにするつもりでございます。農業所得については、一昨年大分詳しいパンフレツトをつくりまして、ひとり税務官庁のみならず、農業団体等にも全部利用してもらうことにいたしたのであります。その結果従来に比べまして、そういう点の誤解を大分少くしたところがあつたように思いますが、農業所得だけではなく、今後あらゆる所得計算について、なるべく詳細な解釈の内容を一般にも公表することにいたしまして、極力紛議を少くするように努力して参りたいと思います。ただ具体的に幾ら引くかという額になりますと、事実認定の問題と、解釈に基く判断の問題との二つがむずかしい問題になりますので、その点に関しましては税務官吏等に対しましても、趣旨並びに解釈の内容の徹底をはかりまして、できる限り円滑な納税が行われるように努力いたしたい、かように考えるのであります。
  34. 河田賢治

    河田委員 法人税並びに所得税法人税は三十八條、所得税は五十二條でありますが、ここには「裁判所が相手方当事者となつ国税庁長官国税局長又は税務署長の主張を合理的と認めたときは、当該訴を提起した者がまず証拠の申出をなし、その後に相手方当事者が証拠の申出をなすものとする。」まだありますが、こういうふうにこの條文は、裁判所がやる手続について書いておるように思う。一体裁判所は所得税法というこの法律に基いてやるものなのかどうか。この点をまずお聞きしたい。
  35. 平田敬一郎

    平田政府委員 裁判所に訴訟事件が起きたような場合におきまして、税法に基準して判断を下されることは当然なことと思います。税法の解釈上、非常にいろいろ問題になるべきことがございますので、そういう解釈等については、裁判所が独自の見解で判断を下されるということに相なるかと思います。
  36. 河田賢治

    河田委員 そうすれば別に裁判所がどう認めるか、こう認めるかということは裁判所自体の問題であつて従つて行政訴訟とか民事訴訟の方で、これは規定さるべき事項ではないかと思う。ここにこういうものを書いておられるのは、最近においては、税務署が、お前たちは裁判所に訴えるならば、証拠をもつておらなければならぬ、こう言つておどかしておるわけであります。裁判所はどの程度の資料を要求するか。これは裁判所の問題でありますが、こういうふうにおどかしてどんどん徴税をさせるという現在のやり方が、私はこの條文の中にはつきりと現われて来ておると思う。手続の問題ならばこれは裁判所の方の裁判の民事訴訟とか、行政訴訟の方に加えるべき問題で、ここに何もわざわざお書きになる必要はないと思う。この点は大きな資本家団体である日本租税研究協会でも発表しました。弁護士の方々なんかもこの問題については大分書いておられますが、こういうことまでもこの中に織り込んで、裁判所に訴訟するときには、お前たちの方からまずその証拠を出してやらなければならぬというおどかしの文句が、このままこの條文に入つて来ておると思う。この点について私たちは、この條文は決してこの中に入れるべきものではないということを考えておりますが、もう一度この点についてはつきりと政府の御見解をお示し願いたい。
  37. 平田敬一郎

    平田政府委員 この條文には証拠提出の順序等につきまして、一般の原則では課税事件についてはなかなかはつきりしない場合があるように、私ども法務府等から聞いておるのでございます。従つてなるべく事件の合理的な解決をはかりますためには、かような規定を設けまして、裁判所によるべき基準をはつきりさせておくということはいいことだと考えます。あくまでも裁判所の合理的判断ということを前提にいたしておるわけでありまして、この條文は全体といたしまして、私ども今後における訴訟の合理的な解決に資するところ多いものがあると信じておる次第であります。
  38. 河田賢治

    河田委員 それからこれは所得税法法人税法も同じ書き方だろうと思いますが、法人税の方の三十四條で税金の徴收を猶予しない。裁判所へ行つて再審査あるいはその他の異議を申し立てておるときに、税務署税務署のかけた一方的な税金を猶予しないということになつておるのでありますが これは税務署の側にきわめて有利に解釈した法律だと思うわけであります。私の聞くところでは、イギリス等では係争中はやはり人民の権利を守つて、それに対する税金の徴收はしないということになつておるそうでありますが、このように税務署がかつてに認定したものをそのまま徴收して行くということは、今日の民主主義の原則に反すると私は思う。やはり人民の利益、人民の生活を守るための法律でなければならぬと思う。その場合には、人民がそういう税務署と異なつ申告、また異なつた税額をやつた場合には、一応それだけを納めて、その争いのあとは裁判所なりまた決定に従つて納めるというのが、ほんとうの行き方ではないかと思う。今日までの古い税法そのままを踏襲して、今日税務署長が一方的にきめたものを取立てるということは、現在の時代精神に反するものだと思うのですが、その点についての御見解はいかがですか。
  39. 平田敬一郎

    平田政府委員 この條文は、お話のように従来からある條文通りでありまして、別に修正を加えていないのでございますが、もしも審査の請求をすれば猶予するというような制度にいたしますと、日本の現状からいたしますと、いたずらに審査事件を多くしまして、かえつて問題を円満に解決するゆえんではなかろうと思うのであります。そうしてかりに猶予しておきまして、あとで申立てが受入れられないで、原案通り確定したような場合におきましては、あとで一時に納税をしていただかなければならないというような関係にもなりますので、わが国の実情から申しますと、やはり現在のところはかような規定を設けることが妥当と考えておるのでございます。但しこの條文にもありますように、税務署長において相当の理由があると認める場合におきましては、税金の全部または一部の徴收を猶予することができるようにいたしておるのでありまして、実際に応じまして非常に苛酷にわたると認められるような場合におきましては、この但書の規定を運用しまして適正化をはかることにいたしておるのであります。
  40. 河田賢治

    河田委員 それから所得税法の二十六條の四でありますが、この法律全体については、私は税務署の役人を三十年やつておつたという人から、この法律を読んでもなかなかどうもむずかしい、ちよつと読んだだけでは理解できない、こういうような話があつたのです。それほど今度の法律はむずかしく書いておられます。ことにこの第二十六條の四などにおきましては、「当該帳簿書類に取引の全部若しくは一部を隠ぺいし若しくは仮装して記載する等当該帳簿書類の記載事順の全体についてその真実性を疑うに足りる不実の事実があると認められる相当の事由があるとき」ときわめてむずかしい言葉で書かれておるのでありますが、記載事項の中に、たとえば交際費があまり出過ぎたからこれを旅費にまわしたとか、あるいは何か改造費が修繕費になつたということは間々あることであります。こういうふうなほんの一部の記載事項がいけないと言つて、これを全部否定してしまうというのが、大体この條文の本旨になつておるようでありますが、こういう場合についてはやはりこの條文をどんどん適用して、税務署では申告をだめだというふうにお考えになる予定でありますか。これをまずお聞きしたいと思います。
  41. 平田敬一郎

    平田政府委員 この條文をむずかしくしておりますのはそれだけ苦心いたしておるわけでありまして、今お読み上げになりましたように、いずれも当該帳簿書類の記載事項の全体について、その真実性を疑うに足りる不実の事実があると認められる相当の事由があるときということになつておりまして、ちよつとしたことの誤り等がありましても、全体についてその真実性を疑うに足りる不実の事実があると認められる相当の事由があるという程度までに至らないものは、必ずしもこれに該当しないというようなことを意義づけるために、かようなむずかしい規定を設けておるのであります。そうして先般もお答えしましたように、結局こういう問題はある程度運用によりまして、非常識にわたらぬような運用をはかるということよりほかにないのでありまして、さような点におきましては先般三宅委員でしたか、お尋ねがありましたときにお答えしましたように、政府としましては十分留意をいたしまして、適正な運用をはかりたいと考えております。
  42. 河田賢治

    河田委員 その点、法律の趣旨としてはそうでありましても、これを実際に運用する面になりますと、税務署の官吏というものは今日ではやはりとるは大したものであるということをシヤウプ博士勧告の中で言われておるわけであります。事実平田局長がこれをおつしやつたか、おつしやらぬかとい方でありますから、できるだけたくさんとれば出世するのでありまして、そういう場合にちよつとした條文をひねくりまわして、やはり納税者に非常な迷惑をかける。ちようど警察官にピストルを護身用だと言つて持たせれば、これでどんどん殺人をするのと同じことになるので、あります。ですからこの点の運用については、政府当局納税者利益をはかつて行くという立場で、すべての法律の内容を解釈することが必要だと思います。今後主税局におきましても訓令とかあるいはその他の解釈について兆せられる場合には、そういうことを私は強く要望しておきます。  さらに、これは前に池田大蔵大臣にもお尋ねしたのでありますが、国立国会図書館調査立法考査局から出されておる税制改正に関する資料集の(一)の二ですが、これに平田局長が昨年六月八日に——これは世界経済新聞の九日付記事の一部ですが、その中に局長の談として、現在の税法はそのまま忠実に運用されてはおらず、もし税法通りに徴税すると徴税額の二倍以上の税收が上るようなことになる。このような不合理は改めねばならない、こういうことが書いてあるのであります。これは何も局長だけではなくして、御承知シヤウプ勧告の中にも、少くとも所得税だけでも二五%から一〇〇%の脱税がある。またその他法人税あるいは物品税等においても脱税がある。この額うことを私は問題にするのではなくて、平田局長あたりの御見解では、日本の今日の状態において、脱税額がこのように多額に上つておるかどうか。この点をお聞きしておきたいと思います。
  43. 平田敬一郎

    平田政府委員 先般も河田委員から何か御引用がありましたので、適当な機会にお話申し上げた方がいいと思つておつたのでございますが、今お尋ねがございましたので申し上げておきます。これは世間一般の常識でございますように、相当な脱税があるということは、たびたび私国会でも申し上げておりますし、各方面で申し上げておる通りであります。その脱税は大きなものもあり、小さなものあり、いろいろありますが、よく把握されておる勤労所得の場合におきましても、中小事業者に雇用されておる勤労者の場合でありますと、やはり相当脱けておる面もあるようであります。ひとりそういう場合でなくてもいろいろあるようであります。農業の場合も、常識上考えまして比較的よく把握されておるような状態でございますが、竹村さんからもお話がありましたが、やみ所得等はなかなか完全に把握ができていなかつたというのは、これはまた皆様の常識で御判断になる通りであろうと思います。営業者の場合にもやはり同様でありまして、所得税の場合におきましても各層におきまして税法通り完全に行つていないということは、私どもも率直に認めておりまするし、また今日の常識であろうと思います。しかしその額が二倍以上になるということは、私いまだそういうことを言明した記憾がないのでございますが、それは何かの都合で少し誇張してそういう記事になつたものと思います。二倍以上ということがかりにありましても、私の言ではないものとして御了解願いたいと思います。その額が幾らになるかということは、なかなかむずかしい問題でありまして、私ども責任のある数字は申し上げにくいということは、予算委員会等でも前々申し上げた通りでありますが、脱税が相当あるということは間違いございません。そのことをまず明かにしておきます。そういう状態でございますから、私ども税法の改正にあたりましては、できる限り税率は引下げ控除は引上げまして、税法自体は極力合理化をはかりまして、そうして課税はなるべく脱税額を少くして、それによつて国民負担の公平をはかりたい。脱税がありますことは、皆さんからもたびたびお話がありますように、脱税者が利益してまじめな納税者が損をする。だからそれをなくしますと全体として税率は下げられる。これは私どもたびたび強調しておる通りであります。今回におきましてもそういうラインは極力尊重いたしまして、極力税率等は引下げ、控除等は引上げて、合理化をはかりたいと考えておるのであります。所得税の見積りにおきましても、若干ながら計画的に把握増を見ておりますことは御承知通りでございます。そういうことによりまして、私ども税負担の実際の公平化をはかつて行くようにいたしたいと考えておるのであります。
  44. 河田賢治

    河田委員 次は法人の税率の問題でございますが、超過所得税を廃止して、今度会社等は一般に三五%ということになるわけであります。ところが日本の現在の産業の構成や、あるいはまた日本の大きな企業、あるいはまた中小工業というようなもののハンデイキヤツプというものが相当ありますから、この点から見て、超過所得税を廃止されまして、一般に三五%とされずに、たとえばアメリカでも一五%から三五%と四段にわけておる。またドイツ等でも三五%から六五%まで四段にわけておるようでありますが、こういうふうに税率についても多少変更されてそうして日本の中小工業あるいは独占的な企業に苦しめるものに対して、多少でも援助するというお考えがあるかどうか、その点をお伺いいたします。
  45. 平田敬一郎

    平田政府委員 超過所得税を廃止しましたのは、最近経済界が大分安定して参りまして、特別のインフレ利得と称すべきものが大分減つて来たということと、今河田委員からお話のありましたように超過所得はどちらかと申しますと資本金の少い小法人の方によけいかかりまして、必ずしも実情に即しない点がございまするので、今回これを廃止することにいたしたのであります。  さらに一歩進んで、法人税の税率を累進税率に改めたらどうかというお話でございますが、これはむしろ最近の傾向としてはそういう傾向になつておりません。ドイツも、最近になりまして五〇%一律の税率に改められたのであります。イギリスにおきましては、古くから四五%のいわゆるスタンダード・レートで、一律に課税をしておるのであります。アメリカにおきましては若干累進を用いておるのでありますが、これもきわめて軽度のものでありまして、法人税の累進税率と称するほどのものではないと考えておるのであります。アメリカの場合におきまする所得税の累進税率は、順々に小所得から中所得、大所得というふうにわけておるのでありますが、小法人の場合は、所得税の中以下に位するものに比肩すべきような法人利益も相当あるのでございまして、そういうものに対しまして法人税の一律の負担ではむりだろうというので、小法人に逓減する意味におきまして、若干の逓減税率を設けておることは事実でございます。ただ日本の場合におきましては、いやしくも法人利益をあげているといつたような場合におきましては、大体におきまして個人所得税と比べまして、個人の場合におきましては三〇%、三五%あるいは四〇%程度の税率の適用を受けるのに匹敵するものが大部分でございますから、特に法人につきまして累進税率等を設ける必要はなかろう、大体三五%一本で行くのがいいんじやないかという考え方で、一律な税率にいたしておるのでございます。
  46. 河田賢治

    河田委員 最後に資産評価について伺いたい。現在金融難、また産業の合理化が大体一巡しておるという状態でありまして、一方においては労働者の貸金等の切下げをやろうとしておりますが、資産評価をやることによつて、大体現在の中小企業あるいは労働者等に、どのような影響が来るかという政府の見通しでけつこうでございますから、この点について御発表願いたいと思います。
  47. 平田敬一郎

    平田政府委員 先般も竹村委員のお尋ねに対しまして、大まかなことはお答えいたしたのでありまするが、まず資産評価によりまする減価償却費負担の増ということになるわけであります。つまり減価償却費をそれだけ企業としてふやすすということでなければ、再評価意味がないわけでございまするから、そういうことになるわけでございますが、その点につきましては、現在すでに相当な收益をあげている場合におきましては、その收益が減価償却費だけ表面上の利益が減つて、出て来た利益がほんとうの利益として計上されまして、それに対して税金もかかつて来る。利益が減つただけ法人税等が減りまして、国庫がそれだけ腹を痛めるということになるわけでございます。私どもの見たところによりますと、相当多くの企業の場合におきましては、そういうことによつて吸收されるものも相当多いのじやないかと見ております。それからその次は、現在利益が十分出ていないという場合におきましては、何とかして利益を得るようにしなければ、償却ができないということになろと思います。その場合におきましては、結局生産品の価格を引上げまして、相手方に転嫁するか、あるいは企業の内部におきまして合理化をはかりまして、それによつて吸收するか。——その合理化で吸收する場合におきましても、またいろいろあろうかと思います。生産数量がふえて参りますと、自然に吸收できるという面もあろうかと思います。生産量等がふえないで吸收する場合におきましては、何か費用を削らなければできないという問題になるかと思いまするが、その辺の態様は、先般も申し上げましたように、各棟の企業によつていろいろだろうと私は思います。最近の見通しとしましては、公定価格等を引上げなければならぬようなものはだんだん減つて参りまして、特別に公定価格が非常に低位にすえ置かれているようなものにとどまるのではあるまいか。だんだん撤廃等も広く行うことにいたしておりまするので、公定価格を引上げまして吸收しなくてはならぬものは、私どもそう広汎ではないと考えているのであります。この影響は企業によつても違いまするし、個別的にも同じ種類の企業の間におきましても違うと思いますので、なかなか具体的に申し上げることは困難かと思いまするが、大体さような角度から御検討願いますれば、御判断がおつきになるのではなかろうか、かように考えておるのであります。なお個人讓渡所得の再評価は、まつたく所得税計算の合理化にすぎないのでありまして、これはまつたくそういう問題はございません。自家用住宅を建てたような場合におきましては、再評価をやるわけでありますが、これはまつたく所得計算を合理化いたしまして一部分はインフレによる名目所得と見まして、六%だけの課税で済ませ、再評価を越えております分を所得と見る。讓渡所得関係の再評価は、つまり再評価法ではみなす再評価と称しておりますが、これはまつたく税負担の合理化ということだけを目標としておるわけであります。従つてそれだけの効果を生ずるということに相なるかと思うのでありますが、いろいろな場合に違つておりますので、概要のお話だけ申し上げて参考に供したいと思います。
  48. 塚田十一郎

    ○塚田委員 いろいろお尋ねしたい点があるのでございますが、根本的な問題についてお尋ねしておきたいのは、今度の税法の改正で、政府のお考えになつておると申しますか、あるいは税制改正の基盤になつております日本経済の全体に対する認識が、最近非常に経済情勢がかわつて来たということによつて、私は大きな食い違いをひとつでかしておるのではないかというように考えるのであります。一つは予算の見積りの問題でありまして、政府がこの税法によつてお組みになつたあの税收入、一つはやはり個々の人たちの所得がそんなふうでありますから、ぐんと違つて来ておる、そういうように考えるわけであります。それともう一つ、物品税の問題でありますが、きようはその物品税の問題が、そういう経済情勢の変化で、どういうように実業界に作用しておるかということを、具体的な若干の数字でもつて申し上げて、政府がどういうようにお考えになつておるか、あるいは再考していただく必要があるのではないか、こういうふうに実は考えるのであります。私は物品税を納めておるある業種について、最近調べをいたしたのでありますが、調べました結果、今もお話があつたのでありますが、私は今度の税制改革後の日本の税制の運用は、これは税法通りに運用していただくということは、主税局長の御答弁のように私も絶対に必要であると考えておるし、またその方向にぜひ努力しなければならぬのでありますが、こういうような現実の事態に対して、税法通り税を徴收したら、結局日本の産業をつぶしてしまうという結末になるであろう。それでは税法というものは、産業をつぶすというようなことを頭に置いて、そうなることがはつきりしておつても、なおそういう税法を置いてもいいものかどうかということになると、これはまつたく本末を転倒した話であります。税法は、産業が成り立つということでなければならぬと考えます。こういう税法というものは、なかなかほうつておけないというように実は考えるのであります。そこで実は今これから申し上げるいろいろな数字は、具体的にある業種についての数字でありますけれども、実はこの調査をしまして、それを私が委員会で取上げようとしたときに、それはぜひやめてほしいという業者からの切なる希望があつたのであります。なぜやめてほしいのかと言つたらば、それが徴税当局にわかつて、今政府考えておられるように徹底的な徴税をされたら、私どもは参つてしまうからやめてほしいということであつた。従つて私もその希望をいれて、業種は申し上げないでおきますが、どうかそういうおつもりでお聞き願いたい。これは大体零細業者が多い業種なんでありますが、その業種のうち、甲という部類に属する比較的大規模な人たちの場合でありますと、大体こういうようになつておるらしい。家族が五人ぐらい、資本金は五十万円くらい、それでその五十万円をどんなぐあいに使つておるかと申しますと、流動資本として商品売掛金の分が二十万円、原材料が二十五万円くらい、加工賃が五万円くらい。こういう大体の内訳になつておるらしい。この場合には、主人が職工を二、三名使つて、大体一箇月三十万円程度の売上げをする。この業種には、物品税が三割かかつておる。そういたしますと、三十万円の売上げをしますと、物品税だけで九万円納めなければならぬはずの業種であります。     〔委員長退席、前尾委員長代理着席〕  ところがこの業種では、どんなにあれして三十万円売上げましても、五万円がかろうじてもうかる総利益だという。そういたしますとその五万円を、どういうぐあいに現実に使つておるかと申しますと、大体月に二万円程度の生活費がいる。五千円は経営費へどうしてもかかる。一万円はこれを物品税に充てておる。残りの一万五千円は所得税のための積立金にしておる。こういうのです。そういたしますと、物品税だけで九万円も納めなければならぬ業種が、一万円しか物品税に予定していない。そこでこの業種に対する政府——政府と申しますか、第一線の税務署当局の所得の認定は、この業種に対しては大体二割ぐらいをやつておるらしい。そうすると一万五千円を月月に積みました所得税の積立金が年十八万円、そから物品税として納めなければならない九万円というような数字を今の税法に照らして考えてみたら、これは全然問題にならない。物品税でも脱税がある。そうしてそれだけ脱税をして積み上げておる一万五千円の所得税に対する積立て、それに二割も売上げに対して所得認定をされたら問題にならないのであります。だから実際にはどういうぐあいにしてやつておるかと申しますと、こういうように物品税の上に危險を冒しながら、しかも売上げの申告というものを結局税法の半分程度しか出さない。三十万円程度売上げがあるのに、十五万円程度しか出さない。それでも十五万円で、年に百八十万円の売上げということになると、三十六万円の所得を計上されて、結局十八万円の所得税に対する積立てで辛うじて何とかして追つつく。そのかわり地方税なんかは全然納められない、こういうような状態になつておる。ところが最近になつて、物品税のいろいろな摘発が相当きびしくなつて参りましたので、ときどき業者の中でひつかかるものがある。ひつかかつても、何だかんだと言いまして、税法通り五倍脱税額全部にかけられたら、てんでやり切れませんから、ある程度のゆとりを見てもらつて、二、三十万円程度のたいてい追加の税金を納めて、かんべんしてもらつておるということでありますが、そういうことが続いておる限りは、結局税制の合理化ということができないことは、私がここで申し上げるまでもない。同じような業種でも、もう少し規模の小さいものの場合ですと、大体月に二十万円くらいの売上げをしまして、これは職人を使わないで主人と子供くらいでやつておりますから、利益と加工賃に当るものと合わせて、四万円くらいの收入がある。生活費が一万八千円程度、経営費が三千円程度、物品税は七千円くらい、それに納税の積立てを一万二千円、こういうぐあいにして辛うじてやつておる。この場合は従つて月に十一万円程度の所得申告しか表面に出さない、こういう状態になつておるらしい。そんなふうでありますから結局だんだんとやれなくなつて、この業種では非常に惡質な形というものが税法の観点からすると出て来ておる。それはみんな店を締めてしまつて廃業届をして、そうして表面はかつぎ屋か何かそういうものをやつておるような届をして、実際にはうちでこそこそと仕事をしておる。それでも何とか月に一万円や二万円くらいの收入ならば得られる。そういうものがどんどんと今度世の中に出て行きまして、また正規に税金を納める人たちの非常な障害になる。脱税品が競争に出て来るものですから障害になつて、ますます困難をしておる、こういう状態なんです。そこでこの業種全体で一箇年間にどれくらい生産をして、どれくらい税を納めるべきなのか、どれくらい税が納まつているかという大体の推定をしてみますと、昭和十七、八年ごろにはこの業種の年生産額は、税拔きで五千万円から五千五、六百万円ぐらいずつ物ができていたらしい。ですから今日の物価からすれば相当大きな、おそらく百億近い程度の額になるのですが、ずつと生産数量も減つておるらしいのです。今日年に十五、六億円から二十億円程度に同業者の調べでは製品ができておるだろう、生産されているだろうと言われておるのです。これの三〇%というとどうしても四億から六億ぐらいの物品税が納まらなければならないのに、ある税務署管内——これは東京都の六割の生産を占める業種がこの税務署管内にあるのでありまして、またその東京が全国の五割強の生産高を持つておる品物なのでありますが、その税務署管内におきましてたつた八百九十三万四千円、約九百万円しか税金が納まつていない。この物品を全国で推定してみると、三千万円程度しか税金が納まつていないと推定される。四億から六億くらいの税金がなければならないのに、これくらいしか税金が納まつていないということが推定されている。ですから最初の三十万円の売上げに対して、一万円の物品税しか見込んでいないという数字も、やはり統計の上にもほぼ近いものになつて現われて来ている。今日の物品税の持つております作用が、そういうように非常に産業の根本を損う惡い作用を持つようになつておる。これはおそらく地方税である附加価値税、固定資産税についても同様な影響を持つておるであろうということを、非常に心配しておるのであります。そこでこの前の国会で政府が物品税について非常に御努力を願つたことはよく承知しておりまして、あれ以上の物品税の軽減は今日の税法全般から見て、非常に困難であろうということは私はよく承知しております。先般物品税について再考慮する意思がないかと同僚の委員からお尋ねしたときに、大蔵大臣はそういう意思は毛頭ないと御答弁されたのでありますが、こういう事態をほうつておいて、ただ予算とかいうものにとらわれて、これを救済しないことは政治としては実に惡いやり方だ、こういうように私は考えております。おそらく政府側におきましてもいろいろな資料なんぞもお持ちでありましようから、若干そういう事態に近いものが出ておることは御承知なんであろうと思うのでありますが、私どもはそういう意味において、ぜひこの機会にもう一応物品税に対して、今日の変化した経済状態を頭に置いて、再考慮をお願いすることができないかどうかということを真劍に考えておるわけです。もし今度の物品税に対して再考慮していただけるとするならば、私どもは零細なる企業者がつくつております品物は、その製造業者が零細であるという理由だけで、十分に物品税をはずしていだたく理由があるのではないか、こういうふうに考えておるのであります。  以上長々と申し上げましたけれども、幾らか具体的な数字を申し上げませんと、抽象論ではこの問題は片づかない程度にまで行つておると考えますから、少し長々と申し上げたのでありますが、そういう事情を頭に置いて、主税局長がどういうぐあいにお考えになるかをお尋ねしたいと思います。
  49. 平田敬一郎

    平田政府委員 物品税につきまして、具体的な御研究の上での有力な御意見を承つたわけでございますが、確かに私どももこの物品税につきましては、経済界の情勢において購買力が減退いたしまして、需要が減つて来るというときになりますると、この税は納まりにくいだろうということは、今の一例をお聞きしましても、大体において判断はつくのでございます。戰後におきまして非常にまだ生産品の数量が少くて、少し増産すればすぐにそれが売れるという時代においては、比較的そういうことはなかつたのでございますが、最近は大分増産になりまして、しかも購買力の方がそれに伴つて増加していないことからいたしまして、お話のような結果になつている物品が相当あろうかと思います。ただ若干これにつきましては理想を申し上げますと、先般も言いましたように、やはり税がそれだけかかるということは法律できまつておるわけでありまして、最近はむしろ高くしたのじやなくて下げておる傾向でございますから、生産者としましては、そういうことを前提にして商品の生産をやつてもろう、そういうことを前提にして仕入れをしてもろうというのが、合理的な経済の動き方ではないかと考えるのであります。その予測がはずれるという場合に、生産者がその危險を負担するということがあるとしましても、これは合理的、純粹理論的に考えますと、やむを得ない場合も出て来ることになると思うのであります。かりに今のお話のような場合でありましても、最初から完全に各業者が全部税法通りつていたとしまして、各業者が見通し等につきましても十分見通しをつけまして、生産をしておるという場合を考えますと、物品税は何とか納まつて、物品税を引いた残りが所得として計算されまして、その所得があります場合におきましては所得税がかかつて来る、こういうことに行き得たであろうと私は思うのであります。しかしそれはりくつでありまして、実際はなかなかそうは行かぬというのがもちろん一般の傾向だろうと思います。特に最近情勢の変化が相当はげしく来ておりますので、予測を間違つたということにつきまして、業者の責任に必ずしも帰せられない場合が相当あるのじやないかと考えますると、なかなか今申しましたりくつだけでは解決できないことが多々あるだろうと、私ども考えておるのであります。先般物品税につきましては相当改正をやりまして、相当品物につきまして課税から除外したり、あるいは税率の引下げ等を行いまして、若干——今塚田委員お話になりましたような傾向に対処するつもりで、実は改正をいたしたのであります。ただ税率等につきましては、なお特に五〇%前後の税率の部分につきまして、なお奢侈品的な生産が多いという理由で、やはり引下げをいたしておりません。従いまして私はその辺のところにどうも大分むりがありはしないかと、現在も相当感じておるのでございますが、税率の方向といたしましては、今申しましたような一般的な事情に応じまして、物品税は少し下げる方向に行くのがいいのではないかと私は考えておるのであります。ただもう一点先般の改正で重要なことは、納期を一箇月延長したことであります。この納期の延長は、歳入予算に響く関係がございましたので、四月から延長することにいたしたのであります。この効果はまだ現実に現われておりません。しかし一箇月納期を延ばすということは、納税者にとりましては相当大きな金繰り上の便益を與えられるわけでありまして、私はこの機会に塚田委員お話になりましたようなむりがあつたとすれば、できるだけ経理の立て方を立てかえていただきますとか、あるいは相当正しい姿に行き得る可能性が多いのではないかと考えております。そういうことも考えまするし、なお今後の状態等もよく見合いまして、政府としましては十分事態の推移に応じました適切な策を講じたいと考えておるのでございますが、塚田さんからもお話になりましたように、何しろ一月から編成いたしまして執行しておるばかりでございますし、予算等にも関係がございますので、今すぐここでまたさらに相当な改正をするということは、ちよつと困難ではあるまいかと現在のところ考えておるわけであります。先ほど申しましたように、一箇月納税の時期が遅れることは、従来は振出しましてから一箇月ないし二箇月で納めていたのでありますが、今度は二箇月ないし三箇月の間に納めればいい、担保を提供しますればさらに一箇月延びてもいいということになつておりますので、ここしばらくそれで業界の情勢の推移等につきましても見まして、業界としましても十分ひとつそろばんをはじいて、アダプトしていただくように努めていただくよりほかにないのではないかと考えておる次第であります。
  50. 塚田十一郎

    ○塚田委員 主税局長は税を御担当になる立場でありますから、税の立場からそういう御議論になるのでありますが、しかし税を取られる国民の立場からすれば、たいへんなことなのでありまして、死ぬか生きるかの問題であります。この状態で正確に税を取られたら全然しようがないのであります。それで予算に響くからとか一月にかえたからとかいうようなことで、今度はこれを改正する意思がないというようにおつしやられてはまことに困るのであります。どうしても正確に出せない状態に国民をしておいて、正確に出せという徴税方針をうたつて行くということは、これはまつたく国民を無視した政治なんであります。今主税局長は理論的な方向というものを、税法にアダプトするようにやらなければならぬのだという御意見でありましたけれども、これはおつしやる通り自由経済考え方からすればそうなるべきであります。また生産ということを少くすれば、値段が上つてもうかるようになるからそうですが、これは同時に今の零細業者をたくさん失業状態に追い込むことになります。一方物品税が何がしかとれても、それによつて出て来る個個の人の犠牲をほうつておけるわけではありませんし、別な面で国家が救済をしなければならぬのですから、こういう状態になつて来た以上は、当然国の政治としては税の面をある程度讓歩してもらつて、これを直して行かなければならない、こういうように私どもは政治としては考えるべきだと思うのです。一月に直したばかりだから、お立場としては非常に苦しいことは私どもも了承するのでありますが、とにかく経済情勢がその後急速にかわつて来たという事態について、再考慮をお願いしなければなりません。さいぜんちよつと申し上げましたが、この問題ばかりではないので、実にたくさんの問題があるのであります。これは税法を主にして国民を従にするというわけに行かぬのでありますから、ぜひともわれわれは修正案を提出したいと考えておりますが、政府側においても国民の窮状をよくくまれて御同情願いたいというように私ども考えております。もう一度その点について御返答を賜わりたいと思います。
  51. 平田敬一郎

    平田政府委員 先ほど大分長く申し上げましたが、その中の一つの納期が一月延長になるということは、実際の物品税の納税の金繰りに際しまして、相当重要な効果を発揮し得るのじやないかと期待しております。これは四月になつて初めてそういうことになるわけでありますが、今後にそれが現われて来るということにもなりまするし、先ほどから申し上げておりますように、とにかく物品税といたしましては百億の減税であつたのであります。しかし実質的にはもつと減税せられておるのであります。と申しますのは、減税した結果ある程度生産がふえ、よくなるということをそろばんに入れまして、百億の減を見ておるわけでありまして、実質的にはおそらく物品税半減ぐらいの減税を行つたような形に相なつておるのでありますが、この際またすぐやるということはいかがであろうかと思われますので、よく事態の推移等を見きわめまして、政府としては時期を選ぶということに適切を期したいと考えておる次第でございます。
  52. 塚田十一郎

    ○塚田委員 物品税は一応終りにしまして、同じような経済情勢が変化して来ておるという問題に関連しまして、いま一点この機会にお尋ねしておきたいのです。  例の今度の改正によりまして、申告は前年度の実績によつてやる。非常にかわつて来た場合には徴税率というものを法律できめて、それによつてやるということになつておるのでありますが、この法律によつてやるということになりまして、もしもことしの徴税の場合に、若干の徴税率というものを考えなければならないとすれば、この国会において何らか用意しなければならないと考えられるのでありますが、政府において何かそういうお考えがあるかどうか、この点お聞きします。
  53. 平田敬一郎

    平田政府委員 情勢が一般的に非常にかわつて参りまして、所得が前年等に比べまして一般的に二割も三制も増減があるような場合におきましては、徴税比率で一般的な基準をきめたいと思つているのでございますが、若干増減があるような程度の場合におきましては、その比率を適用するのはいかがであろうかと考えているのであります。個別的には業種によりましてもいろいろ違うかとも思いまするが、ある種の業種が相当はつきりして惡いというような場合におきましては、昨日も奧村委員との間に質疑の交換を行つているのでございますが、税法におきましても事情が明らかな場合におきましては、二割以上減少する場合は、税務署長は承認しなければならないことにいたしているのでございます。そういうものの運用等によりまして、私は相当解決し得るのではないかと考えるのでございますが、本年といたしましては非常に所得が減り、物価が下るというような状態に行きますことは、目下のところ政府として考えていないわけでありまして、あらゆる対策を講じて、さようなことにならぬようにするというのが考え方でございますが、今すぐ基準法律を適用する用意は実はいたしていないのでございます。法律ではいろいろ考え方というか、基準を定めまして、具体的にいずれにするかは、政府がその基準に基いてきめるというような方向で、法律案を作成いたしたいと考えているのでございます。
  54. 奧村又十郎

    ○奧村委員 もう午前の審議はすぐ終ることと思うのですが、議事進行についてちよつと申し上げます。  先ほどたびたびお話が出ておりますように、所得税法はおそらく日本の国始まつていまだかつてないほど冗漫と申しますか、わかりにくい法律でありまして、これを逐條的に審議するということはなかなか困難でありまして、今日までの経過を見ましても十分逐條の審議が行われておらぬと思います。しかしわれわれ国会議員として十分この国会において審議し盡したいと思う。そこでどうやら近いうちにこの委員会で討論採決を行われるようでありますが、質疑の時間の予定について委員長の方針をまずお伺いいたしておきます。
  55. 前尾繁三郎

    前尾委員長代理 すでに一番最初に提案になりました当時から時間の割当をやつて、また質疑の通告をしていただいてやつて来ているわけであります。またその討論採決は明日の午後までにやつて、土曜日の午後の本会議にかけるということに一応相談が出来ているのでありますから、その予定で進行いたします。
  56. 奧村又十郎

    ○奧村委員 最初から税法関係の各法案が九案とも出そろつているならばよろしいけれども、非常に遅れて四、五日前に出ている法案もある。そういうことで十分の審議は盡されないと思います。あすの午後討論なさるならば、あすの午後までの質疑の予定をお伺いいたしまする
  57. 前尾繁三郎

    前尾委員長代理 できるだけ大勢の人にやつていただいて、本日も午後一時半くらいから再開して十分審議を盡してもらいたいと思つております。
  58. 竹村奈良一

    ○竹村委員 議事進行についてひとつ委員長にお伺いしたいのですが、先般本委員会におきまして委員長を通じて本月一日に対日理事会におきまするイギリス代表の発言による八大銀行の現在の独占的な金融処理による調査等が提案されましたが、これに対して本委員会において、国政調査の面においてこれを調査をしていただきたいということを委員長にお願いしたのでありますが、委員長理事会にはかつて、そういう調査をするかどうかを決定するという御答弁でありまして、いまだにそれに対する御回答がないのでありますが、これを本委員会において国政調査としてお取上げになるように決定されたらどうかという点をお伺いしたいのと、もう一つはやはりこういうような独占的に金融の八割をも占めるような行為が行われておるとかりに言われておるごときことになるならば、これは大きな問題でありまして、ひいてはいわゆる国民の所得あるいは税制の面にも非常に関係すると思いますので、ぜひともこれをお取上げ願いたいと思うのであります。それからもう一つは、もしこういう発言があつたということになつた場合において、日本政府は何かの資料を総司令部に提出したのであるか。もし提出したのであるとすれば、その提出されたものをわれわれもまた国民としてこれは見のがすことはできませんので、そういう資料を出されたとすれば、その写しでもできればわれわれに配付願いたい。これをお願いしたいのであります。
  59. 前尾繁三郎

    前尾委員長代理 資料の点は政府に聞かなければわらかぬことでありますから、それは後刻調べてお答えいたしたいと思います。  それから国政調査の件につきましては、必ずしも税法に直接関係しておる問題でもありませんから、税法が上りましたあとでもいいのではないかと思いますから、その点理事の方にお残りを願つてちよつと相談したいと思います。
  60. 大上司

    ○大上委員 奧村委員の議事進行の発言で、大体当委員会の運営は了知したのですが、そのような方向でお行きになりますと、過日私が当局に対して要求しておきました資料が、現在まだ私に配付されておらぬのでございます。もしもそれが手元に届きませんと、議事の進行は私といたしましては少し不満であります。従つてさらに念を押しておきます。過般の資料をちようだいして、あるいはこの立法と行政方面の中に入つておるところの通牒を要求いたしましたところ、平田主税局長は非常に厖大であるから、それを指名せよというお話でありましたから、あらためてここではつきり申し上げます。すなわちわれわれ委員が見せていただく上において、一番法律と関連性があるものというきわめて漠然とした要求をしております。しかるべく提出をしていただいて、それから後質問に移りたいと思います。
  61. 前尾繁三郎

    前尾委員長代理 先般の大上君の資料の要求はかなりむりな注文もあるようでありますから、よく政府と御懇談を願いたいと思います。  午前はこの程度にいたしまして、午後は一時半から再開いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  62. 川野芳滿

    川野委員長 休憩前に引続き九税法案一括議題として質疑を続行いたします。奧村又十郎君。
  63. 奧村又十郎

    ○奧村委員 所得税法の第五條の二の三項に「著しく低い価額の対価で第九條」云々とありますが、こういうようになりますと、一旦讓渡の所得に対して所得税がかけられる。それから同じ価額において相続されたものとして相続人に相続税がかけられる。こういうふうになるように解釈ができるのでありますが、その点具体的にどうなるか、御説明を願いたいと思います。
  64. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回讓渡所得税は、單に資産を有償讓渡しただけでなくて、無償で贈與した場合におきましても、その際に讓渡所得があるかないかを計算いたしまして、課税することにいたしたのであります。もちろん取得価額と、贈與した場合におきましては、その贈與したときの当該財産との価額の差額が所得になるわけでありまして、従つてその人が買つた値段よりも讓渡した当時の時価が下つておる場合におきましては、讓渡所得税の課税の問題はございません。反対に相当値上りを来しておるという場合におきましては、その値上りの差額が讓渡所得になるわけでございます。今度は再評価をいたしますので、実際問題といたしましては、再評価額と讓渡した当時の時価との差額が所得になるわけでございます。それがございますればとにかく所得税を一応課するわけであります。そうしまして所得税を引いた残りの分に対しまして、相手方が贈與を受けました場合におきましては、もらつた方に贈與税が課税になる。著しく低い価額で受けました場合におきましては、相続税法に従来から規定があるわけでありますが、もらつた方利益を受けた限度で贈與を受けたものとして相続税がかけられる、こういう関係になるのであります。
  65. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこでお尋ねいたしますのは、時価が再評価額よりも越えて高い場合には、その高い部分に対してはつまり被相続者に対して所得税がかかる。それからその時価の価額でもつて相続財産に対して相続人に相続税がかかる。こういうことになると條文では解釈できるのでありますが、ただいまの御説明によりますと、所得税を引いた額というようなことを言われますが、その点がはつきりいたしませんで重ねてお尋ねいたします。
  66. 平田敬一郎

    平田政府委員 相続の場合におきましては別に相続税法規定がございまして、十四條第二項の規定で、被相続人が当該財産について納付すべき所得税控除したものを、課税価額に算入するという規定を設けておるのでございます。
  67. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そういたしますと相続税の上に所得税が乘つかる、こういうことになるので、従来の税法と比較いたしますとどれだけ違うのか、お尋ねいたします。
  68. 平田敬一郎

    平田政府委員 相続税の上に乘つかるのではございません。相続税を課税する際に、課税価額から所得税額を差引きまして、残りに相続税が課税になるわけでございます。ある意味において乘つかるといえばまさに乘つかるのでございますが、これは今回讓渡所得税の課税の建前を、單に有償讓渡だけでなくて、とにかく財産を他人に移転した際に財産の値上りがありますれば、その人につきまして所得税の課税をやろう。こういうふうにしておるわけでありまして、これは前々から説明いたしておりますように、讓渡所得に対する課税につきましては、少くとも原則上は相当重要な変更を加えておるのであります。これはシヤウプ勧告も主張しておりますように、そういうことと、たとえば法人の課税等がうらはらをなすといつたようなことが、株式の課税の問題等と関連しまして、勧告の指摘しておる点でございます。
  69. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この点は私は従来の相続の場合と比べると、これはたいへんな変革である。もちろんシヤウプ勧告にも出ておりますが、ただいまのお話のような制度に相なりますると、たとえで言いますと、山林不動産などの財産相続の際には、ほとんどこれは手放さざるを得ない。売却して相続税を納めなければできない。しかもその上に相続税法が、今回一番率の高いのは九〇%になつておりますが、かようなことになるとすれば、五千万円以上の相続財産というものは今後なくなる。これは事実上はつきりなくなつてしまうが、政府はそういう政策的な考えを持つてここでおやりになるのでありますか。
  70. 平田敬一郎

    平田政府委員 相続税の税率は、五千万円を越えた場合にその越える部分に対しまして、百分の九十でございます。それから所得税を引いた残りを相続税の課税価額とするわけでございます。従いまして所得税部分は、引いた残りに相続税をかけますから、重なつて来るといえば重なつてかかるのでありますが、完全に重複してかかるわけではございません。それから所得税は、その財産が値上りしたことに対してだけかかるのであります。財産の価額がふえた場合にだけかかるのでございます。そうしまして今までの所得税は、山林所得相続があつた場合におきましては、あと相続人が引続き所有するものとみなして、課税していたのでありますが、今回は死んだ際に一応打切つて所得税を課税しようというわけであります。そうしまして相続人につきまして、今度はその山林を伐採した場合等の取得原価は、相続開始当時の時価をもとにしまして、それの差額が山林所得になるわけでございます。従来は被相続人が取得をしたときから、ずつと引続き持つておるものとして、計算していたわけでございますが、その点今度の建前はかわるということを御了承願いたいと思います。  なお相続税には従来から物納、延納の制度がございますが、資産を有償以外で讓渡した場合につきましては、相続の場合につきましては、ただちに現金化して納めることが困難な場合もございましようから、そういう際の所得税も物納ができる規定相続税法の附則に設けまして、むりのないようにいたしておる次第であります。
  71. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は條文をまだこまかく全部にわたつて読んでおりませんので、お尋ねいたしますが、相続税のかからない範囲は三十万円以内ですか。そういう財産相続の場合におきましても、時価が評価額よりも高い場合の相続については、所得税としてはかかるのでありましようか。
  72. 平田敬一郎

    平田政府委員 理論的にはそういう場合も課税するのがりくつに合うのでありますが、そこまで行きますことは技術的にむずかしゆうございますし、それから実際問題として見つかつたり見つからなかつたりすることによつてかえつて不公平がありますから、讓渡相続の方も所得額が三十万円以下の場合は課税しないことにいたしております。また贈與の場合におきましても、一年一人に対する贈與額が三万円以下の場合は、贈與所得税も課税しないことにいたしております。
  73. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこで重ねてお尋ねいたしますが、大体今日までの相続税財産評価財産税当時の評価額、あるいはそれに多少の手心を加えた程度であつたと私は考えるのですが、今回は時価というと相当開きがある。それでこの税法をいよいよ実施するとなると、特に山林などの相続においてはたいへんな問題が起る。ほとんど相続の際も山林などは売却されてしまう、こういうことになると思います。これは議論にわたるかもしれませんが、そういうことをすでに政府の方におかれましては覚悟の上と申しますか、見通した上でおやりになるのかどうか。その時価と財産税当時の評価とかなり開きがあると思うが、その点はそれを見越して、しかもそれに所得税を一旦かけてそして相続税をかける。この重大なる影響を十分お考えになつておやりになるのであるか。
  74. 平田敬一郎

    平田政府委員 山林につきましては御承知通り評価をやるわけでありまして、財産税当時の価格と最近の時価との差額に対しましては六%の課税しかいたしません。それを越えました部分につきましてだけ所得税がかかることに相なるのでございます。もちろんその再評価税とか所得税を引いた残りに対しまして、相続財産として相続税を課税することになります。従いまして今後九千万円以上の財産家の場合におきましては、相続税の税率自体が非常に高いのですから、もらつた人がそれぞれ五千万円以上ずつもらうということになりますと、その超過分に対しては御指摘の通りどえらい相当重い税がかかることになるのであります。前々から言つておりますように、同じ五千万円の財産相続しましても三人に分割されますれば、負担は相当減るというような関係になりまして、今御指摘になりましたようなケースは私どもといたしましては比較的少いのじやないか、かように考えております。
  75. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私はただいま局長の御説明に相なりますように、相続税としては三人に分割される、こういうことになりますからそれはそう大したことではないが、今度初めて行われる讓渡所得に対する所得税、被相続者に対する所得税、これが問題になると思います。そこで問題になる讓渡所得なるものはどういうふうに算出されるか。そうすると今回の再評価額の基準が問題になるのでありますが、その点をもう少しお伺いした上で、これはまた後の機会にお伺いいたしたいと思います。  次にお伺いしたいことは、変動所得の中の漁獲による変動所得であります。これは水産に関する限りほとんど八割程度のものは変動所得に該当するように私どもでは考えられる。しかもこの法律條文を見ますと、たとえば一年限りの変動所得のように読み取れるのでありますが、水産の変動所得は、たとえば五百万円の漁獲があり、二千万円の漁獲があり、あるいは千八百万円の漁獲があるというように、毎年の変動所得がずつと折重なつて五箇年続いて行くということが非常にあり得ると思う。そうなつて来ると、はなはだ事務も煩瑣になると思うが、そういうことを一応想定の上にこの法律をおきめになつたのであるか。大体水産の所得のうち変動所得になるものはどの程度であると、お見込みになつておられますか。
  76. 平田敬一郎

    平田政府委員 御指摘のような関係がございますので、漁獲による所得の分につきましては、五箇年間の原則通りの平均課税を行うことにいたしておるのでございます。広い意味の水産の所得の中に漁獲所得が幾らありますか、これは人によつて相当違うと思うのでありますが、加工等をやつておられる場合におきましては、これは別途の所得になるかと思います。ほんとうの漁獲から生じました所得の分につきまして、今申し上げましたような方法によつて五箇年間めんどうでも平均課税をやりまして、負担の公平をはかることにいたしておるのでございます。
  77. 奧村又十郎

    ○奧村委員 実はそれもお尋ねしたかつたのですが、水産加工は水産に付属したものでありまして、漁獲のあるときに加工が起る。従つて漁獲が非常に不漁であるときは加工も全然ない。加工事業そのものが変動所得の性格を漁獲とともに持つておるわけですが、加工は切り離して変勅所得とはしない、こういうことになるのでありますか。
  78. 平田敬一郎

    平田政府委員 加工となりますと、御承知通り加工だけを独立してやつておられる業者も中にはいるようでございます。こういう場合におきましてはやはり漁獲自体の所得よりも、よほど変動の程度は少いというふうに見受けられまして、そこまで拡張するのはいかがであろうか。その程度の変動はほかにもいろいろあるのじやないかというので、本来最も変動のはげしい漁獲によるところの所得につきまして、平均課税を認めることにいたしたのでございます。
  79. 奧村又十郎

    ○奧村委員 たとえば昭和二十五年度に二千万円の変動所得が生じて、四百万円ずつ平均に課税され、昭和二十六年度にも千八百万円の変動所得が生じて、これまた三百五十万円ずつ毎年繰越して行く。昭和二十七年度にも千万円の変動所得が生ずる。こういうようなことになつて法律條文にはそこまで規定してないが、以前にさかのぼつて四箇年分の変動所得が毎年重なつて来るということが、水産においては必ずたくさん生ずると思うのですが、これを頭にお考えになつておつくりになりましたか。
  80. 平田敬一郎

    平田政府委員 もちろんそういうことを考えましてつくつておるわけであります。ただ所得に変動がない場合におきましては、結局ある期間に納める総税額は同じになるのであります。所得の変動がある場合におきまして、初めて平均課税を行いましたことによつて、年々打ち切つて課税する場合と相当負担の開きが出て来るということに相なるのであります。なお御参考に申し上げておきますが、所得税の最高税率は五十万円超五五%でございますから、今御指摘のように、あまり大きな所得でございますと、実は平均課税を行いましても、行わなくても、大体同じ結果になりますので、その辺のところは納税者がひとつよく利害関係を考慮されまして、選択するかしないか、御判断願うようにお願いいたしたいと考えております。
  81. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この新税法によりますと、源泉徴收の制度を非常に強調いたしておられます。ところが私はこの源泉徴收の制度に起り得べき特に重大な問題があるのじやないかと思うのであります。たとえば、これは具体的に申し上げた方が話がわかると思いますが、国会で議員の歳費から所得税を差引いて国会から納める。議員としてはその源泉徴收票を自分の国で出して税務署申告する。税務署としては源泉徴收が行われたものとして、それだけを差引い徴税する。そこでその源泉徴收票を発行した分が必ず支拂者において納められておるかどうか。もう一歩つつ込んで言えば、源泉徴收票が偽造のものがあるかないか。これは偽造とまで言わずとも、徴收票は発行したが金は納められておらぬということがあるかないか。しかしそれは納めてなければ法律によつて罰せられますが、そういう意味でなしに、つまり源泉徴收票による納税額と、それから個々の給料受取者の納税の額とのつき合わせというものは、これは困難な問題でありますが、できておるかどうか。これはできていないような点もなきにしもあらずということを、私はちよちよ地方において聞いておりますが、これに対する対策をどういうふうにとつておられるか。参考のためにお聞かせ願いたいと思います。
  82. 平田敬一郎

    平田政府委員 確かにお話しのような懸念はあるのでございます。従いまして法律にも罰則を設けておるのであります。源泉徴收票を給料の支拂いを受ける者に交付しない場合、それから源泉徴收票に虚偽の記載をなして交付した者、これは一年以下の懲役、または二十万円以下の罰金に処するということになつておるのでありますが、嚴密に申しまして、すべての源泉徴收票を所轄税務署に提出する前におきまして、源泉徴收票をその管轄する税務署で確認すれば一番いいのでありますが、それはなかなか実際問題としてできませんので、これはやはりサンプリング調査と申しますか、拔き打ち的な調査をやりまして、それによつて一つ発見したとすれば、ほかもわかつて来るというような場合も相当あろうかと思います。そういう場合におきましては適当な制裁等を加えまして、確実化をはかるというよりほか道はないのじやないか、こう考えておるのであります。そういう監査は大都市の税務署におきましては、最近は相当やつておるのでございます。
  83. 奧村又十郎

    ○奧村委員 罰則の問題でなしに、あとの方の取締りの問題でありますが、具体的に申し上げますならば、支拂者と申しますか、源泉徴收してそれを納付すべき義務のある者が、管轄の税務署にはたしてその納付が行われておるかどうか。少くともそのくらいの整理ができておるべきはずであるが、具体的に調べてみると、どうやらその整理ができておらぬように感じられるので、そこのところをつつ込んでお伺いいたします。
  84. 平田敬一郎

    平田政府委員 御承知通り確定申告は一月三十一日までに出していただく。確定申告を出してもろう際に源泉徴收票を交付してもろう、こういうことにいたしておるのであります。従いまして一年間の源泉徴收税額を支拂者で計算しまして、所轄税務署の承認を受けて送るというのでは、実際問題として間に合わぬ場合が多いのでございます。従いまして直接納税者が支拂者から請求いたしまして、それを申告書につけて出すというのが通常でございますが、しかし多くの場合に、やはりその源泉徴收票を作製した会社の管轄税務署外に納税者がおることが多いのでございます。あるいはどこかで変なことをやつておりますと、結局見つかる可能性もございますし、あまりにそれに手数をかけますと、かえつて手数倒れになりますので、そういう方法で適正化をはかるということが、実際に即していいことではなかろうか。理想から申しますと、あるいは将来もつと能率よくすべての社会が動くようになりますれば、今奧村委員お話になりましたような方法を必ずとらせるということも、一つの方法であろうかと思いますが、期間等の関係もございますので、そこまで今は徹底して行つてないのが現状でございます。
  85. 奧村又十郎

    ○奧村委員 やみつけというか、実はいろいろ偽造券などがあつて、まさか源泉徴收票の偽造があろうとは当局もお考えにならぬようですが、実は私一、二見ております。どうか今後そういうことのないように、十分施策をお考え願いたいと思います。  次に今度の改正税法によりますと、過少申告の場合に対する加算税と、それから虚偽の申告の場合の加算税、これは別にしておるのですが、過少申告と虚偽の申告とはどう違うのでありますか。解釈によつては過少申告これまた虚偽の申告と言えるのでありますが、その解釈の相違点をお尋ねいたします。
  86. 平田敬一郎

    平田政府委員 最初に先ほどのお答えの続きを申し上げておきます。今回市町村民税におきましても、国税で幾ら所得税が徴收されたか。これば重要な材料になります。従いまして奧村委員の御指摘の源泉徴收票等はさらに一層重要性を帶びて参りますので、そういうものの不正がないように、適正な監督をいたすということにつきましては、国としても十分注意いたしたいと思います。市町村におきましても、注意することに相なろうかと考えるのであります。  それから第二の問題は、過少申告の要件と、それから重加算税を課する場合の要件と、どう違うかというお尋ねだろうと思いますが、過少申告の場合におきましては、とにかく申告が、あとではつきりきまりました税額に比較しまして少い場合、これは形式的にいかなる理由による場合たるとを問わず五%の加算税をかける。但しこの場合におきましても、あとで追加申告をして参りまして、税務署調査する前に申告を修正していただきますと、五%は免除することにいたしておるのであります。ところがそれよりももう少し度を越えまして、税務署に対して、あらかじめごまかそうというような、脱税の範囲と申しますか、脱税の認識をもつて申告を出しているという場合におきましては、虚偽申告に該当するわけでありまして、そういう場合におきましては、重加算税を課し得ることにいたしておるのであります。実際の運用におきましては、重加算税を適用する場合といたしましては、大体脱税犯として処分するかしないかというような問題に関連して、重加算税を課すべきか課すべきでないかということが、具体的な問題として出て来るのではないかと考えております。
  87. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は過少申告と虚偽の申告の解釈の相違をお尋ねしたのですが、もう一度重ねてお尋ねいたします。  虚偽の申告の場合は、罰則の意味を込めて相当率が高いが、過少申告の場合は幾分罰則の意味は込めていない、こういうことになるので、過少申告であるか、虚偽の申告であるか、そこの区分をはつきりしておかなければならぬと思うのです。お尋ねの仕方をひとつかえて、今度は罰則につきまして、詐偽その他不正の行為に対して罰則をつくるということについてお尋ねしますが、過少申告は詐偽その他不正の行為の中に入るものかどうかということを伺います。
  88. 平田敬一郎

    平田政府委員 過少申告の場合におきまして、詐偽その他不正の行為、つまり虚偽の申告で過少申告になつておる場合は、重加算税を課するが、單なる過少申告は加算税は課さないことにいたしております。一つの行為がありました場合におきまして、單なる過少申告に該当するにすぎないか、あるいは重加算税を課すべき要件に該当するか、いずれかによつて、いずれかの加算税を課するわけであります。これはいずれも一種の行政罰的な性質を持つておるものでありまして、過少申告の加算税はその程度が非常に軽いのであります。重加算税は脱税犯という刑事罰を課するほどではないが、比較的はつきり最初から脱税の認識を持ちまして過少申告した場合には、法律上重加算税を課する場合に該当する、かように考えておるのであります。
  89. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この問題は実は地方でたびたび解釈の相違で問題になつているのです。そこで重ねてお尋ねいたしますが、過少申告とは、税務署の決定と納税者申告との食い違いがあつた場合に過少申告と言うわけです。その場合税務署の方が正しいとするならば、過少申告もやはり詐偽その他不正の行為として解釈しても解釈はできるので、そういう過少申告の場合に告発しておる事例がございます。しかしそれは間違いであると思います。單なる過少申告で告発するということになりますれば、税務署においても、間違いで更正決定をやる場合があるのでありますから、一方的な処罰になる。そこで私は詐偽その他不正の行為という字句の解釈を、この際はつきりしていただきたいのであります。詐偽その他不正の行為というものは、單に申告が過少であつたということだけでなしに具体的に二重帳簿があつたとか、取引を隠蔽した事実があつたとか、そういう場合に限るべきものであると解釈するのでありますが、この解釈がいつもはつきりしないために、地方においてもかなり問題がありますので、この際明らかにしておいていただきたいと思います。
  90. 平田敬一郎

    平田政府委員 脱税の意図がなくして、單純に過少申告にしかすぎないという場合におきましては、單に過少申告加算税に該当するにすぎないと思います。これに反しまして、最初から脱税の認識を持ちまして申告自体も少くなるということになりますと、その申告はやはり詐偽その他の不正行為の一つに該当すると考えます。その場合におきましては、刑罰を課する要件にも該当し、重加算税を課する要件にも該当するのであります。これは両方並行して課せられる場合も考えられるのであります。ただ一つはあくまでも刑法上の罰刑でありまするし、重加算税はいわゆる民事罰と申しまして、何ら刑法上の罰則ではございません。でありますが、行政的にかような制度を設けまして、それによつて租税犯特有の効力発揮させようというところに、重加算税の性質があるわけであります。従いまして重加算税に対しまして、いろいろ紛議があります場合は、これは民事裁判になるのであります。これに反しまして告発して刑事事件になりました場合は、御承知通り刑事事件として処理ざれることに相なるのであります。大体の関係はさようなことになりまして、個々の事実につきましては、その事実に基いて、いずれに該当するか適切な判断を下して行くというよりほかに、仕方がないのではないかと考えております。
  91. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうもかんじんの点については、局長はいささかぼかしておられるのではなはだ困ります。いつもはなはだ明快に御答弁なさるのに、この点は明快になさらぬというのは、明快にできぬのでなさらぬのか、この際重ねてお尋ねいたします。  ただいまの御答弁によりますと、脱税の意図をもつて過少申告した場合はやはり刑罰になると言われましたが、国民はだれであろうとも、税金をよけい出したいと思つている人はありません、だれしも税金は少い方がよいという気分はあります。しかしそれをとる方の側で言えば、脱税の気分があつたと言えるのです。それで過少申告をしたらこれは罰せられる——過少申告ということにおきましても、たとえば税務署の解釈によつて物価の相場の見方、あるいは計算のやり方によつてどちらにでもりくつのつく場合、非常にあやふやな場合が相当ある。そういう場合に、納税者が、この苦しい際であるから税金は少い方がいいと思つて、幾分納税者の気分になつて低目に書いて出した。しかしこれが法律上、今のお話で行けば、脱税の意図をもつて過少申告をなしたと言うても、これは言えるはずであります。しかし法律の解釈はそれでは相ならぬ。私はあくまでも虚偽その他不正の行為で罰せられる場合の解釈を、もう一段と明らかにしていただきたい。單に税金は少い方がいい、申告税務署との意見の相違で納税者が少く書いたということで罰せられるということは、われわれとしては、国会議員としてこの審議は勤まらぬのでありますから、もう少し明らかに何かよりどころのある解釈の基準をお答え願います。
  92. 平田敬一郎

    平田政府委員 たとえばこういう例を申し上げればおわかりかと思います。自分は税法の解釈上、こういう所得はかからぬと思う、そういう見解のもとに、かからないものとして申告した。ところが税務署の見解によりますと、その所得はかかる。所得税を課税すべきだ、あるいは收入金に算入すべきだ、こういうことになつた場合におきましては、かりにそういう見解のもとに少い申告をしましても、脱税犯には該当しないと思います。しかしその人が、はつきりこれはやはり税法にかかるべきである事実につきましても、実際に自分は少い申告をするのだという認識をもちまして、過少申告をいたしました場合におきましては、これはまさに脱税犯の要件に該当すると考えております。そして二重帳簿等がありますれば、その意図——故意と申しますか、犯意がきわめて客観的に明らかであるというわけでありまして、それはもちろん該当するわけでございますが、法律の解釈といたしましては、それだけにはとどまらぬと思います。実際問題としまして、しからばそういうものを刑事事件として告発するかしないかという問題は、多数の犯罪についてありますように、これはやはり検事局等において判断をしてやるわけでありまして、脱税犯の中におきましても、現在もきわめて顯著な惡質なものに限つて告発いたしまして、制裁を課することにいたしておるのであります。
  93. 奧村又十郎

    ○奧村委員 国民は憲法によつて基本的人権が守られております。従つて罰せられることは、法律に該当して初めて罰せられる。そこでこうこういう場合は罰せられるという、これは罰せられる場合のケースがはつきりしていなければならぬ。ところがこの税法の罰則において、詐偽その他不正の行為という解釈が、どの場合ということがどもまだはつきり言われていない。單に脱税の意図をもつて事実に反した申告をした場合、これは不正の行為と言われますが、事実に反した行為ということが、二重帳簿をつくつたとかあるいは事実を故意に隠蔽するような事実があつた、こういうことに書かれておるならば、これは罰せられてもよろしいが、單に帳簿上の価格の開きであるとか、あるいは解釈の相違であるとかいうこともこの中に入つて来るとするならば、国民としては大した迷惑であります。こういうことがまた現実に非常に起つておる。この不正の行為というものは、具体的に事実隠蔽あるいは具体的にその工作をした、そういうふうに何かこの解釈を明らかにしていただかなければ、どうも私は納得が行かぬと思います。
  94. 平田敬一郎

    平田政府委員 この詐偽その他不正の行為によつて脱税犯に処するという條文は、多年行われておる條文でありまして、これに基きまして現在における告発なり、あるいは裁判等が行われておるのであります。ただ法律でその要件をこまかに書くという場合もございますが、脱税犯の構成要件としましては、こういう書き方が一つの書き方だと私ども考えております。しからば具体的に、どういう場合には限界線のところに該当しておるか、どういう場合には該当しないかは、これこそ裁判所のいろいろのケースによつてきまつて来ると思います。要するにこの條文につきましては、單に二重帳簿をつくつたのみでなく、ご承知通り確定申告というのは納税義務者が税法に昭しまして、自分納税義務を確定する一つの行為であります。これは重大なことでありますので、この行為をなします場合におきまして、脱税の認識を持ちまして虚偽の記載をした場合におきましては、これはまさしく私どもは脱税犯に該当する。二重帳簿をつくつたりなんかしております場合におきましては、そういう認識がきわめて明らかであるという意味におきまして、証拠明白であるということになるのでありまして、あえてそういう事実がある場合に限るとは解釈いたしておりません。以上のような問題が確かにあるわけでありますが、小さい個々のケースにつきましては、これこそ裁判所によりまして具体的にその範囲等がはつきりして来る、こういう性質のものであろうと考える次第であります。
  95. 奧村又十郎

    ○奧村委員 お説の通り、何もこの條文は今度初めてできたのではない。ところが一昨年以来この詐偽その他不正の行為でもつて、單なる過少申告税務署長によつて告発される。この告発ということが税務署長の武器として、かなりみだりに使われておるということがありますので特にお尋ねしたのですが、これ以上お尋ねしてもこれはむりでありますから、この点はやめておきます。  そこで税制改正の要項の中に、新税法に即して国税徴收法、国税犯則取締法の内容を幾分変更なさるということでありますが、これまた非常に重要な問題を含んでおると思うので、どういう内容の変更を企図しておられるかお尋ねいたします。
  96. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは今法案整理中でありまして、総司令部の承認あり次第提案しまして、さらにここで御審議願うつもりでございますから、その際詳しく御説明いたしたいと思いますが、国税犯則取締法のおもな改正点は、現在通告処分をやります場合におきまして、十日以内に履行しない場合は告発するということになつておるのであります。この十日が少し実際度題としてむりのようでございますから、これを二十日程間に引延ばしたいというような改正であります。それから刑事訴訟法が改正されましたのに伴いまして、国税犯則処分法もでき得る限り近代化したいというので、ごく細目の改正を行おうといたしておるのであります。これらの詳細につきましては、いずれ近く提案いたしますので、その際にお願いいたしいと思います。それから国税徴收法につきましては例の延滯金は国税徴收法で規定しておるのであります。二十銭の延滯金につきましては、延滯加算税に改めるというような改正を国税徴收法で行うつもりであります。その他技術的に若干の改正がございまするが、その内容は近く提案します際に御審議願いたいと考えておるのであります。
  97. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この改正所得税法によりますと、欠損の繰延べなどの画期的なかわつた規定が盛り込まれております。そうういたしますと、従来ありまする災害被害者に対する租税の減免の法律は事実に即しないことに相なりますので、これも変更しなければならぬ。政府におかれてはこれの変更の意図を有しておられるようでありますが、それの内容を概略お示しを願いたいと思います。
  98. 平田敬一郎

    平田政府委員 災害減免法につきましても、各税法の改正に伴いまして改正を行うつもりであります。ただ所得税法におきましては、今回は所得税法の基本法で災害による損害額を差引くことにいたしましたので、所得税につきましてはその部分は不必要になるかと思います。しかしそれだけでは補い得ない部分がございますので、その部分はなお存置いたす見込であります。その他相続税その他の各税につきまして、災害の場合にやはり救済的な規定を必要としますので、そういうものをすべて新しい税法の姿と照し合せまして、合理的に改正いたす見込みであります。これも近く国会に提案いたす見込みでございますから、詳細はその際にお讓りを願いたいと思います。
  99. 奧村又十郎

    ○奧村委員 最後にお尋ねいたします。第十條の五、「固定資産減価償却額の計算については、命令で定める方法」、この方法はもうすでに御準備になつておると思いますが、お示しを願います。
  100. 平田敬一郎

    平田政府委員 減価償却方法につきましては、法人個人と両方あるのでございますが、法人につきましては、現在の会計学で認められておりますところのなるべく多くの方法を、いずれか採用し得るようにいたしたい。最も代表的なものは御承知通り定率法でございます。それからもちろん定額法も認めることにいたしたい。それから鉱山等につきましては、例の生産高比例法という方法がございます。これは現在認めておりますが、そういう方法も認めたい。また企業によりましては、とりかえ法みたいな方法も認めたらどうか。これはなるべく最近の会計学の原則と照合するように、そういう方法を認めることにいたしたいと考えておるのでございます。これは非常に技術的な事項になりますので、政令をもちましてその旨を明らかにする考えでございます。  所得税につきましては、法人よりも少し簡單な計算方法によるのが納税者のためでもあり、また役所にとりましてもそれよりほかないのじやないかと考えまして、大体定額法または定率法の二つを主たるものにして、そのいずれかを選択するということにしたらどうであろうか。むしろ大体は、定額法によるようにしたらどうかと考えておるのでございますが、その辺の点はなお若干技術的な問題といたしまして、目下專門家等の意見を聞きまして、政府といたしましても適的なものをつくるべく努力いたしておるのであります。
  101. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは私最後に希望をまぜて申し上げます。先ほど申し上げましたが、今度の改正所得税法は長くて複雑で解釈が困難で、おそらく税務署の方といえども、各税務署でこれが十分頭に入る人は少かろうと思うのであります。シヤウプ勧告にまずはつきり書いてあるのは、精緻よりも簡明を好むということを言うておる。少くとも納税者が一通り読んだらわかるような法律にしてもらいたかつたが、このくらいに書かねば徹底しないものかどうか。非常に御苦心もありましたでしようが、あまりにも厖大になつたのでその点を承りますことと、それからこれを税務署徹底されるのはもちろんのことでありますが、一般国民にこの税法の根本精神を周知徹底せしめるのに、大蔵省としてうんと御努力を願いたい。なぜかと申しますと、実際この法律を読んでみますと、真の精神は変動所得の平均課税とか、あるいは損失の繰延べとか、今までと比べると大減税になつて、合理的なあたたかい法律ではありますが、実際のやり方にしましては、たとえば予定申告のごときものは前年の実績でもつて行く。これこそは、ほとんど今まで以上にきついことになるということで、納税者は最初これははなはだ食いつきにくい、反対が起ろう。その法律の精神を国民大衆に徹底せしめるための、大蔵省としての御用意があるかどうかをお伺いいたして、私の質問を終る次第であります。
  102. 平田敬一郎

    平田政府委員 御指摘の通り、單に所得税法のみならず、各税法とも相当むずかしい法文に相なつておるのであまりす。これは今御指摘の通り、原因が実に二つございまして、一つはいろいろの場合を考えまして、税法上極力公平化をはかろう。所得の違うごとに違つた課税方法をとつてみましたり、あるいは医療費を引くとか、あるいは災害費の損失を引くとか。原則として分離課税はやるが、資産所得は合算す中るとか、いろいろな方面におきまして、いやしくとも所得税に関する限りは、できる限り税法自体をまず公平化し合理化しよう。その税法は読めばむずかしいですが、よくのみ込んで、度は事実に税法通り当てはめてもらいますと、今までみたいにむりがなくて、比較的納まりやすい。今まではややともすると税法のむりと実際上の課税の手心等で、救済せざるを得ないという事情もあつたのでございますが、なるべくそういう方法は避けまして、税法自体をめんどうでもこまかく書いておきまして、事実を調べて税法に当てはめて、自然になるべく公平な負担になるようなものにする、こういう意味合いで非常に所得税法が複雑化しております。これが一つの原因。この点はシヤウプ勧告も、その簡素化と複雑化の矛盾調整には始終非常に苦労するのだ。しかしやはり税法としましては、不必要な複雑化は避けなくちやならぬが、負担の公平化と合理化のためには、あえて複雑化をいとわないようにならないと、結局実際がまたいいかげんなものになる。こういうことを言つたり言わなかつたり、いろいろしおるようでございますが、まさに所得税法はそういう姿を現わしておるのでございます。もう一つの点は以前でございますと、政令で相当こまかい事項を規定するということで、政令に讓つた事項が相当多かつたのでございますが、最近はなるべく法律に盛り込もうというので、ことにいろいろの手続き規定等を法律で詳細に書いております。それはたとえば審査の場合におきましても、手続き等はこういう場合には却下する、こういう場合には取消すと、一々処理の方法等を法律で詳細に規定しておる。従いましてそれを一見しますと、いかにごしやしやしましてわかりにくいようでございますが、しかし結局通牒なり何かで、命令その他ではつきりさせなければならぬ事項を、法律で最初からはつきりさしておく。そういうのが織り込まれておりますものですから、なかなかすらりと見ましてわかりにくい点が多いのでございますが、これは法律の作成方法といたしまして、最近私どもはやはりなるべく政令等に讓らないで書いた方がいいのじやないかという考えでおりますので、こういう少しむずかしいものになつたことを御了承願いたいと思います。なおアメリカとかイギリス、なかんずくイギリスの法律等は相当詳細でございまして、所得税法等はおそらくこのまだ四、五倍くらいの條文のようであります。アメリカ法律等も相当詳しいようであります。従いまして、なるべく私は法律がむしろはつきりすべての場合を書いておきまして、そうして、それをよく研究すればわかるようにして、よるべき基準を明らかにする方がいいのじやないかという考えであるのであります。もちろん短時間でございますので、くくり方その他につきましては、不十分な点があろうかと思いますが、そういう点につきましては、また将来機会ある際におきまして、実際の運用等とも関連しまして、よくすることに努めたいと思います。  なお最後に、周知徹底をはかれというお話でございまして、これはまことにもつともでありまして、私どもその点につきましては、全力を上げて参りたいと考えております。その際になかんずく申告書の様式等につきましては、今回は国税庁よりお願いしましていろいろな様式をつくつたらどうか。普通のごく簡單な納税者に配る申告書と、いろいろな所得があつて複雑な所得計算をつくる場合の申告書と、そういうようなものを少しくふういたしまして、簡單なものと少し手の込んだものと、二様のつくり方を研究してもらつたらどうかいうので、今研究していただいておるのでございますが、その辺のところにくふうをいたしますのと、それから解説等につきましても、あらゆる機会を利用いたしますし、また国税庁納税の新聞等も出しておりますので、そういう新聞等も極力利用し、また一般の宣伝機関等もお願いいたしまして、新法の普及に万全の努力をいたす考えであるのであります。
  103. 川野芳滿

    川野委員長 高橋国税庁長官がほかに用件がおありのようですから、長官に対する質問を先にいたします。内藤委員
  104. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 高橋さんに、非常に簡單なことでありますが、お尋ねいたします。これはきのうきようあつたことでありまして、新しいことについてお尋ねしたいと思います。実は各税務署は、それぞれ更正決定を先月あたりから出しておられるのであります。ところが豊鳥の税務署では、これはもちろん豊島税務署の人手が足りぬことからかも存じませんが、更正決定の際、審査を商業組合に一括して出してくれということを言つておられるのであります。それは手続きの関係でしかたがないと思いますが、シヤウプ勧告には嚴にこういうことは戒めてあることなのでありますが、こういう事実があるのであります。こういうことをどうなさるのでありますか、お尋ねしたいと思います。
  105. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ただいま御指摘のような事実がもしありといたしますれば、非常に遺憾なことでございますので、さつそく取調べをいたします。御承知通り審査の請求その他についての代理行為は、税務代理士法によつて、税務代理士以外には禁ぜられております。
  106. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 実は私は、こういう市街地関係のことはよく存じませんけれども、この市街地では自然発生的に納税協力会などをこしらえまして、一時に税金を納めるのはたいへんだからというので、平生からいろいろな心配をされているところが各方面にあるのでありますが、こういうふうな非常に善良なやり方をされているのに、税務署自身が商業組合を使つてそういうことをおやりになりますと、善良なものまでだんだんなくなるおそれがあると思います。これははなはだ残念なのであります。それで、これは王子の税務署でありますが、王子の税務署ではやはりこれと同じようなことをせられまして、王子の税務署が三業組合に対しまして、所得を一億五千万円と初め認定せられたのを、三業組合の幹部諸君と相談されて、一億二千万円に減らされたというようなことがあります。もちろんこういうことがあるから、シヤウプ勧告がこういうことをやつてはいかぬときめられたと思うのでありますが、これは都会地に比較的こういうことが多いと思います。こういうことはひとつ嚴重に、管下の税務署にしないようにしていただきまして、そうして善良な納税協力会というようなものを何とか保護して——これは小さな銀行の支店でありますとか信用組合あたりが、自己預金吸收のためにやつていることかは存じませんけれども納税者から申しますると、これはまことに平生からそういう心がけをすることが大事でありますから、何とか政府もこういうものを育てるように、いろいろお心配りをお願いしたいと思うのであります。王子の税務署にそういうことがあるということを、私は聞いたことでよくわかりませんが、お調べいただきまして、将来そういうことのないように願いたいと思うのであります。
  107. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 これは本日、田中委員より質問する事項であつたのですが、田中委員が見えませんので、簡單にちよつと伺いたいのであります。これは東京都下の問題ですが、とび職だとか大工、左官の勤労源泉徴收の問題です。昨年の十二月までは、組合交渉の結果源泉徴收をしておつたようでありますが、今年から、これは事業所得だから源泉徴收をやめるということを、税務署から宣告を受けたようです。昨年度は源泉徴收で、ことしは事業所得だとこういうふうに考えて行くこと自体がおかしい。またこの事業自体が、事業所得であるということは考えられない。たとえば中小商工業者というふうになれば、一つの事業だろうと考え考え方もあるだろうと思いますが、実際こういう方方の仕事というものは、ほんとうに勤労所得とより考えられない。また、たとえば二入か三人使つておられる場合を考えても、これはいろいろなことで経費が出て、道具がこわれたりなんかして、そういう意味利益というものは結局抹殺されてしまうのであります。そういうことで昨年度は源泉徴收をやつたが、ことしは事業所得だとはねつけられたのは大分おかしいようです。田中委員が、昨日陳情団の所へ集つていただきたいということで私も伺つたのですが、本日その方々も見えているようでありますが、ぜひこの問題について長官から御返答を願いたい。
  108. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 お話のような業態が勤労所得に属するか、事業所得に属するかという問題は、具体的にその一々に当つて決定しなければならぬ問題だと思います。包括的に一般的にこれを決定することは、非常に困難であろうかと思います。もちろん二、三人の方でも雇つておられまして、そうして事業をやつておられるというような場合におきましては、その二、三人の雇われた方については、お話通り勤労所得であると思います。しかしながらお雇いになつた業者の方自体としては、これは当然に事業所得に相なるかと思うのであります。そこにおいて徴收の便宜と申しますか、お互いの便宜のために、いろいろの方法を願いいたしましてやつて来たことはあつたようでありますが、所得税法の理論に従えば、そういう方向に持つて行くのが正しいのではないかと考えるのであります。
  109. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 関連して……。お話通りですが、ところが昨年の十二月までは勤労所得として納めておつて、忽然としてそれはそうじやない、事業所得だ、こうなつて来ますから、業者が実は困るじやないかと思うのであります。こういうことは非常に不自然なやり万でありまして、それは税務署の解釈が惡がつたかもしれぬが、ことしはこれで行くのだ、来年からこういうふうに改めるから……、こういうように予告的な態度であれば、私は今日ほどこれはごたごたが起きないのじやないかと思うのであります。こういうことは私は税務署のやり方として、いつも申し上げることでありますが、親切味がない。こう考えるのであります。それはどうでありますか。やはり親切味があるのでありますか。
  110. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 どうも辛辣なお言葉でありまして、まことになんでありますが、自由労務者と申しますか、そういうような非常にこまかいところの事業者にありましては、その徴收並びに申告書の書き万その他につきまして、非常に困難が多いために、従来そういうような方法を用いて来ておつたところもあつたようであります。従いましてそれを本来の通り行うにあたりましては、十分納得していただいてそうして先ほど内藤さんのお話通り、たとえば協力会とか何とかというような方法を通じて、それぞれの人に税法をある程度理解していただき、また源泉徴收の方法は、何と申しましても、月々蓄積して行く前に拂うということによつて納税の義務を円滑に果せると思うのでありますが、それにかわるべき方法を何とか育成して、円滑にせしめるということが、税務行政の運営として最も当を得たものと考えるのであります。
  111. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 ただいまのお話ですが、これはほんとうに勤労所得くらいの所得ではありません。これが年に何回か徴收されるということになると、おそらく手持の金がなくなつてしまうのではないか。こういう方々こそ源泉徴收をした方が、政府も便利じやないかと思うのでありますが、何とかそういう方法はないか。現に今までやつて来ておつたのであります。
  112. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 税法の本来の趣旨はそうなつているわけであります。ただ便宜的な措置としてそういうことをいたしますと、全体が乱れるという結果を招来する危險もございますので、先ほど内藤さんの御提案になりましたようなふうに、漸次準備的な貯金をしていただくというような方法にでもとりまとめていただきまして、そうして税を早期に納めていただいて、一時に課税が来ることによつて、非常に困難を招くことを避けるようにいたしたいと思います。
  113. 河田賢治

    河田委員 関連して……。この問題については昨日私も一緒に出たわけですが、たとえば労働省の方では、もちろん一定した雇い主ではないのでありますが、労働組合をつくれば、それを労働組合として認定するわけです。政府の方針はそうなつている。ところが雇い主というのは、日傭取りでございますから、三日で済むとかあるいは一週間で済むとか、雇う方は非常に不特定になるわけです。ここに問題がありまして、労働組合が税金の取立てをやることも妙なことです。これは本来あるべきことではない。しかし税務署自体としても、勤労所得でここでとつた方が割合にまとまつてつて行く。またトラブルも起らないというようなことで、税務署関係者自体は、そういうことを希望しているようであります。そういう点でやはりここでできるだけ徴税上の簡素化をはかるという意味において、税務当局は何らか一般的にこれを勤労所得でとるというふうに、お考慮を私は願いたいと思うのであります。申告の方で今度更正決定なんかが来ておりますが、たどえば大体あそこの最高賃金というものは一日三百八十円くらいらしいのです。これに対しまして十五万円、あるいは多い人になりますと二十二、三万円、六、七十のとびなんかの職人さんにかかつて来るわけであります。ところが税務署の方では、更正決定に対して必要経費をどれだけ引いておるかというと一文も引いていない。のこぎり一本そんなにいたむわけのものでもないので、必要経費もほとんど見ていない。こういうことでは、これはあまりにもむちやではないか。こういう点について特に今後の徴税を簡素化するということ、それからまた脱税者をなくして、少くともできるだけ働く人々の便宜をはかつて、こういうところでとるべきものは勤労所得としてとる方が税務署としてもとりやすいし、また拂う方でも月々納めれば楽なわけであります。これをたとえば事業申告といたしますと、御承知通り地方では事業税というものがかかるわけであります、これがまた非常に重いわけであります、こういう働く人はとればとつただけ生活費に繰入れておりますから、事業税がかかつて来ればまた税金が拂えない、こういう事態が絶えず起つておるのであります。事業税につきましても地方によりましては、ある県ではとつていないとか、ある県ではとつておる、こういうところが現にございますが、こういう点から申しましても、これはやはり国税の方でも一応はつきり大体どの辺で線を引くかをおきめになつて、こういうことが全国的にトラブルにならぬような方法を私は特に講じてもらいたい、こういうふうに考えるわけであります。
  114. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ただいまのお話のうちに、重労務者であつて転々と雇われ先がかわるという、單にそういうふうな状態であり、かつおそらくそういう場合には、個々の雇用契約があつたものと考えざるを得ないのでありますが、そういう場合においては、これは当然源泉徴收の所得税に相なります。しかしながらそれは徴收義務者は雇い主の方でありまして、雇われた方に義務があるわけではないのであります。なお先ほどお話のありましたのは、たとえばとび職が二、三人の人を雇つてみずからはその他の事業者との間に請負契約でありますか、何かの契約によつて仕事をするという場合は事業であります。また個人一人でありましても、それが雇用じやなしに、そういうふうな性格を持つた契約である場合においては、それは事業であります。こういうふうに申し上げたのであります。
  115. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 この問題については、社会党の田中委員がおいでになつたときまた質問になると思いますが、私はこれで終りといたしまして、本日全国の農村衣料全国協議会緊急大会というものがありまして、全国の農業協同組合の代表者が全部集まりまして、報奬物資に関する決議案というものをつくつて参つたのであります。これは今まで農村に対する報奬として行われた品物に対して物品税、取引高税、織物消費税が賦課したまま交付されておりますが、現在織物消費税、取引高税が撤廃になつた今日もやはり税負担があるし、またすでに引受けた人は全部税を拂つておる関係上、この問題について各府県の協同組合の代表者が、午前中から第一議員会館の第一会議室に数百人という方がおいでになりまして、この点についてちよつと尋ねていただきたい、こういう話があつたのであります。この織物消費税、取引高税が賦課されておるために、一般の市中で売つておるところの衣料品より非常に高いそうであります。それがために引受けができない。また金詰まりの関係もあろうと思うのでありますが、それがために農業協同組合は四苦八苦で、この状態で行つたら解散する状態になるだろう。激越な演説の中には、われわれは討死してもさしつかえないというような意気込みで来ておる方もあつたのでありますが、この点について政府はどうお考えになつておられましようか。平田局長さんから御意向を伺いたいと思います。
  116. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお話はおそらく取引高税なり物品税、織物消費税が製造場より出る場合に、あるいは取引高税でございますと、営業者が販売した場合に課税した税額が結局価格に転嫁されまして、商品の価格としてまた小売なり消費者の手に渡る段階にある。こういう場合におきましてそのもとでかかつた税金を何とか措置してくれないか。こういうお話かとも伺えるのでございますが、そういう話でございましようか。
  117. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 そうです。
  118. 平田敬一郎

    平田政府委員 そういう場合でございますと、前々から言つておりますように納税といたしましては、一応それぞれ販売したとき、あるいは倉出しをいたしましたとき納税義務はもう完結しておるわけであります。あとは実際上の値段の中に税金相当額が入つているか入つてないか。これは経済的な関係でありまして、それによつて価格が上つたり下つたりするわけでございますけれども、これは経済の取引の実態にまかせるよりほかない。そこまで行けば一々調べて、これは税金が幾らかかつておる、これはかからないというようなことをいたしまして、織物消費税につきましてはたしか還付をしてくれという声もあつたのでございますが、これは困難であるということで現在のところいたさないことにしております。またあらゆる物品等につきましてたくさんの関係業者の方がおられますが、適正な調査をいたしまして、返す等の措置をいたしますことは技術的にもむずかしい。とうてい困難なことではないか、かように私ども考えております。
  119. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 この問題を検討するにおきまして、いろいろ関連した問題があります。一部は農村の引受けたものが非常に不良品であるために、政府へ返そうという問題と税問題と二つあるのですが、政府はたびたび薪炭特別会計で何十億という赤字を出して政府の責任をのがれる対策を考えておりますが、農村が実際困つて来るとそういうものはわれわれは知らぬと、とぼけたやり方を再三やつておるのです。従つて今回のやり方も、政府が当然責任を負わなければならぬ事態のものではないかと考えるのです。従つてこの税の問題についても、すでに拂つた人々に対しても返してやるべきものじやないかと考えるのですが、どういうものでしよう。
  120. 平田敬一郎

    平田政府委員 税の問題は前々から言つておりますように、物品税にしろ織物消費税の廃止にしろ相当前から法律案等を提出いたしまして、それによつてそれぞれ経済取引をやつていただきますことを前提にして考えておるわけであります。従つてその取引をなされる場合におきまして、関係の方は相当御留意なさらないと、場合によりましたら不測の損害をこうむられる場合があるかと思いますが、業者により、あるいは政府のやり方によりいろいろな場合がありまして、そういうものについて一々妥当する措置を考えるということは、なかなかむずかしいのではないかと考えるのであります。配給等をやつておるものにつきましては配給の際そういう注意をするというようなことで、極力さようなことのないように努力すべきものじやないかと、私ども考えておるのであります。
  121. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 ちよつと関連してお尋ねしたいのですが、法の解釈は、まさに平田さんのおつしやる通りと私は思います。ところが報奬物資の配給価格をずつとながめますと、普通の商人のようにてきぱきと行かないのであります。これは農林省が商工省と打合せまして、どれだけ割当てる、どうする、こうする。それが県の連合会へ行く、連合会から單位組合へ行く、こういうことの間にずいぶん目がかかつて、現実に農家に配給されるのは、もう一月、二月になつてしまう。そのときは商人が持つて配給するものとの間には、非常に価格の開きがある。そうすると農家は高いものを、これは引受けられないというのはあたりまえなのです。きようも午前、午後と向うで会議を開いておるのでありますが、引取らぬものはみんなお返し申します。こう言つておるのであります。これは返しましたらたいへんなことになるのでありますから私は法律上の解釈は平田さんのおつしやる通りだと思うのであります。ところが実際問題はそれでは割切れぬものがある。これを何とかしなければならぬというのが、今の政治問題だと私は思いますが、今どういう決議をして参りますか存じませんけれども、おそらく五十億の衣料の報奬物資というものは半分くらいにしてくれ、そうでなけれど処理できない、こういうふうなことに言つて来るだろうと思うのであります。これはいずれ何か特別の法律をこしらえられましてまたここで御審議ということになるのかも存じませんが、そういうことをひとつ法律上の解釈と実際問題とよくかみわけて、適当におとりはからい願いたい。ことに取引高税のごときは、單位組合へ現物が渡りましたのは一月であります。でありますから、單位組合からメーカーに渡しますときは、もちろん取引高税はかけません。これは廃止になつておりますから……。ところが連合会がメーカーから受けましたときには、取引高税がかかつておるというので、そこに非常に問題があるのでありまして、そう法律解釈一点張りでなしに、これは農村としまして非常に大きな問題がありますので、政府としてもほうつておけぬ。ことに主要食糧の供出の報奬物資というやつかいなものでありますから、これは人事ではない、ただ單なる商業上の取引ではない、国家業務の一つなんだから、ひとつ考えいただいて、もし何ならば特別に今度配給した主要食糧の報奬物質に対して、その取引高税あるいは織物消費税は免除する、こういう法律を今度お出しになつて当然返してやる。これは堂々と法律なら法律で行かれた方がいいと思いますが、そういう法律をひとつ御用意なさるお心持がありますかどうか、これを伺いたい。
  122. 平田敬一郎

    平田政府委員 社会の安寧秩序を維持するために必要な場合、いろいろな場合におきましては、よほど思い切つた措置を講ずるこことがあることも当然だと思いますが、一般的には先ほど申し上げました通りでありまして、原因がどこにあるのか、状況がどういうことによつて出て来たか、いろいろ責任の関係もありましようし、複雑な問題がからまつて来るのではないかと思います。従いまして私はその問題に対しまして、そういう非常に深刻な問題でございますれば、なおよくお聞きしました上でお答えいたしたいと思いますが、課税の上で、ただちにそういうものにつきまして救済をやるといつたような例は、今までのところちよつと私の記憶にはございません。なかなか解決は簡單ではない問題がありはしないかと考える次第であります。
  123. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 これは実は通産省と農林省の責任なんであります。大蔵省もやはり政府の一部でありますから、これはあなた方のお仲間の仕事の不手ぎわから出て来たことでありますから、よそ事でなしに、真劍に特別な法律をひとつ御用意いただきたい。これは希望として申し上げておきます。
  124. 竹村奈良一

    ○竹村委員 これに関連いたしまして、実はこの問題も内藤さんから私の言いたいことを言われたので言いませんが、実情だけひとつお話しておきたいのは、従来大体通産省、農林省の関係だといつて通産省、農林省へ行きます場合におきましても、大体大蔵省で聞いてくれぬからということで問題はいつでも解決しない。大体協同組合等が引受けるところの衣料というものは、商売で利益のために引受けておるのじやない。政府が当然報奬物資は供出を同時に引きかえなければならぬといういわゆる法的根拠から、六箇月も前に協同組合に一応引取らしておる。つまり政府の必要な配給をする、いわゆる報奬物資を即座に引きかえて渡すという建前から、協同組合は何も先へ引取りたくないが、政府の御用を勤めて引取つておる。このことをひとつ大蔵省は認識してもらいたい。これを認識してもらえば、これは商売でないということがはつきりしますので、政府の御用を勤めた者が、特に損をするという班論は成り立たないと思うのですが、この点どういうふうに考えられておるか、ひとつお開かせ願いたい。
  125. 平田敬一郎

    平田政府委員 たいへんむずかしい問題でございまして、一がいにお答えしがたいと思いますが、あるときには自分のところに扱わしてくれ、こう熱心に頼んで扱つておる場合もありましよう。あるときには、今度扱うのはどうもぐあいが惡いが、将来のこともあるから扱う、あるいは場合によりますと、役所の方から言われまして、不本意ながら扱つておる場合がありましようし、いろいろな場合があるのではないかと思うのでありますが、私その辺あまり專門家でございませんので、この程度しかお答えいたしかねます。
  126. 竹村奈良一

    ○竹村委員 あるときには扱わしてくれと言う。しかしそれにはそのように言う原因があるのです。というのは、米を倉庫へ預かるのは大体協同組合です。そしてその報奬物資がほかの手へ渡つて、事実上政府が報奬物資を当人に渡すことができない。これは協同組合に順番制に渡してこそ納得が行く。そういう必然性からこれを扱わなければならないので、利益のために協同組合が扱わしてくれというのではない。その点をひとつ研究くださつて、この問題を処理していただきたい。
  127. 大上司

    ○大上委員 この前から資料を要求しておりましたが、その一部が届きましたので質問申し上げます。たびたび申し上げます通り、今次の法案の提出理由の説明の中の重要な部分として五項にわたつております。すなわち、私よく申すのでありますが、いかに税制の合理化ができてても、あるいは税務行政の適切な運営云々、あるいは負担の公平という言葉が随所に見受けられるのですが、その中に特に税務行政の改善をはかる、こう出ております。問題はいかなるりつばなところの法律をわれわれが審議いたしましても、これが実務者にわたつた場合に十分のみ込ませてないと、いろんな問題が起ります。その一つの例を申し上げてみますると、いわゆる法の運営上の実務者の質が非常に低下しておる。これは前々申し上げる通り、大阪国税局におきましても、一万人の收税官吏のうちに経験者が非常に少い、あるいは年齢も二十四、五才未満が多いという実例があります。さらにこれは会計検査院の昭和二十三年の決算検査報告書を読んでみますると明らかになつております。すなわち、同報告書の七十九ページには、「職員の犯罪に因り国に損害を與えたもの」とあるが、他方これは国民の納税思想に大きな反響がある。従つて不信任的な感覚を国民に間接に與えておると思う。その実例といたしましては、立川税務署ほか数署において、租税の横領額が五百八十九万余円となつております。しかもこのうち立川署の事件は、昭和二十二年十二月から二十三年の七月まで、すなわち優に八箇月にわたつて行われておる。これは監督者の不行届きのためか、あるいはわれわれが今問わんとする行政機構上の欠陷からこのようなことが起るのか、これを伺いたいと思います。とにもかくにも八箇月の長期間にわたつて行われた。しかもその横領金七十一万円でありまするが、これに関係した納税者は二十五名もある。こういう事実が上つているのですが、これについて会計検査院に対する大蔵省の回答、すなわち正式に申しますと、昭和二十三年度歳入歳出決算検査報告に関し、国会に対する説明書につきましては、会計検査院の調べた事実を大蔵省が認めておる。また一つの例を申し上げますと、大阪の福島の一收税官吏が驚くなかれ二百三十六万円余、東山税務署におきましては二人共謀で二百七万円横領しておる。そのうちもつとも百六十三万円は返しておるが、ここに一つの問題がある。どういう問題かと申しますると、これにつきましてはいわゆる納税義務者が延べ八百四名というものが関係しておる。その補填につきましてはどういうふうになつておるか、これもお尋ねしたいと思います。ここに実例がありますが、もう一つ観点をかえて申し上げます。神田の税務署におきましては、高崎某が二十三年三月所得税その他から十四万円を横領し、東京の財務局で、昭和二十四年三月その補填をしておる。しかもかかる行為——は該当者はなるほどそこまで良心的あるいは道徳的といいますか、監督は別といたしましても、財務局がこれを補填してやつておる。明らかにこれは財政法規、会計法規の違反であろうと思います。これも監督の不十分があると思います。しかも神田の税務署においては、その犯行をした人が行方不明である。わかり次第弁償するというようなことを書いて報告しておるのであります。あまりにも無責任ではないか。  今度は角度をかえますが、架空の名義で支出して、これを予算外に出しておるのがある。どういう実例かと申しますと、関東、信越財務局は、昭和二十四年四月に家屋購入で百三十六万余円支出しておるのですが、実際会計検査院が調べてみますとその家が実在しておらない。こんなばかげたことがあろうはずがない。しかも二十四年の十月会計検査院が調査に行つたら実在しておる。まつたくわれわれは驚くよりほかないのであります。その代金はどうなつているかというと、五月から八月までにおいて百六万円を同じ庁舎のペンキ塗りかえ代金として支出しており、あとは保管しておるという実例も見受けられます、さてその次は伊勢崎税務署の庁舎の問題でありますが、会計法規に違反した手続をもつて、すなわち入札方法をもつてこれを処理しておる。こういうふうに考えてみますると、われわれはほんとうの国民の代表として、皆さんに納得してもらつて、この法案の審議をして参つたのだが、その運営上においてはいろいろ疑念を持つようなことが起きておるので、先般通牒その他に関する資料の提出を御要求しましたが、いまだに出ておりません。  もう一つ魚度をかえて簡單に申し上げます。現行の税法施行上、徴税技術上から見ますれば、とりやすいと言われます源泉徴收の徴收不足が相当出ておる。これがなぜ徴收漏れになつているかということについては、会計検査院の報告によりますと、所得税調査資料整備の不十分と、いま一つ明らかに出ておるところは、法規の適用上の過誤であるということになつております。これは大きな問題であろうとわれわれは考えます。徴收漏れについては、豊橋の税務署は三百九十四万円を一会社から徴收漏れしておるし、そのほかにも各税務署の徴收漏れは相当あると思います。ところが今一番簡單と見えるところの源泉課税の分類をいたしてみますると、いわゆる給與関係に対するものに合計二億四千八十万円の徴收漏れがある。いま一つ配当、原稿料等が四十七万九千円、通行税において三十七万円、合計二億四千百六十余万円が徴收漏れになつております。これは税務署において事務整理不十分のため、徴收遅延されたものなりと会計検査院は判定しておる。最後に出納責任者に対する各省ごとの判定が出ておりますが、これによりますと、最低は裁判所で一件違反が出ております。最高は郵政省、これは郵便局を扱いますから相当出ておると思います。その中の実例を見ておりますと、法務府四十一件、外務省四件、文部省八十四件、厚生省二百四十八件、農林省三百五十六件、通産省九件と出ておりますが、この中に大蔵省が六百二十四件出ております。その金額たるや相当になるのであります。こういうような面は、もちろん大蔵省として專売公社その他が入つているとは思いますが、会計検査院の報告書を読んでおりますと、全般に租税関係が多いように見受けられます。これは事実であります。さらに会計検査院から大蔵省の方に対しまして、昭和二十三年度一般会計決算未確認額表について、その調査を要求しております。その要求書に対して、どういう事情か知らぬが回答していないものがある。所得税において、麹町税務署のうちで六百三十六万四千円に対して、回答をしておらぬものが六百二十四万二千円、回答をしておるのがたつた十二万二千円にすぎないという実例があります。さてそこで、今次青色申告その他によつて千五百名の人間を募集というか、許可をもらいたいということで、これは本年度の予算にも計上せられておりまするが、一番の問題は法の立法でなくして法の運営にあるのであります。これに対して国税庁の長官はどのようにお考えなさいますか。過去の事実をどう処理したかということは、いずれ決算委員会においてお聞きいたしますけれども、こういう実例から見まして、現在の行政機構すなわち改正されんとする行政機構と、いま一つはこの程度の陣容をもつて、言いかえればこの程度の国税徴收費用によつて運営できるやいなやを伺いたいと思います。
  128. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 税務の運営面におきまして、多数の非違の行為がありましたことは、率直に認めざるを得ないと考えるのであります。御承知通り終戰後申告所得税その他の原因によりまして、納税義務者の数が画期的に非常な増加を示したのであります。その当時一般の経済界におきましては、相当インフレが高進しておつた関係もありまして、官吏の待遇が一般経済界よりもはるかに低かつたというような事情もあつたでございまましよう。募集いたしましてもなかなかよい人を得ることが困難だつたのであります。しかしながらとにかくよい人を集めなければ、税務の運営がとうていやつて行けないという実情でありましたので、あらゆる方策を講じまして人間の補充を急いだ次第であります。その結果といたしまして、その中には質のよくない方だとか、年齢層においても非常に低い者を多数採用せざるを得なかつたという事情があつたことは、その当時の状況からして御了承願いたいと考えます。しかしながら漸次インフレも進行を停止して参りましたし、また官吏の待遇も向上して参りまして、最近においては、税務官吏を志望するところの者には、非常に優秀な者が多数現われるようになつて参りました。特に二十四年におきましては、相当数の行政整理等も行つた次第でありますが、それらの際におきましても、これらの惡質なる者を中心として整理をいたしましたし、また昨年の国税庁創設の際におきましては、特に税務職員の監督という面に非常に力を注ぎまして、御承知通り監督官並びに監査官の制度を新しく創設した次第であります。しかして昨年の四月から年末までに、相当多数の非違者を国税庁自体の機関においても摘発をし、これが整理をなして参つたのであります。もちろん非常に多数の職員でもあるので、これを絶滅するということは、今後においても相当困難なことは考えますが、一方において、今後の採用にあたつては、すべて試験による。しかもその調査を嚴重にすることによりまして、優秀な人間を採用する。また年齢層においても相当高い年齢層の者、また学歴においても高い学歴の者を採用するということによつて、これが質の改善をはかつて行きたいと考えておる次第であります。来年度におきましては、青色申告制度等の運用のために、千五百名の増員をお願いしておるのでありますが、完全なる税務運営のために、この程度の人間で十分であるかと申しますと、必ずしもこれで十分だとは国税庁当局としては考えていないのでございますが、非常に財政状態もきゆうくつな際であり、国費はできるだけ節約することが当然と考えますので、この程度の経費並びにこの程度の人員をもつてあらゆる努力をして、できるだけ理想に近いところの運営をして行きたいと考えております。なお先ほど御指摘のような事態が漸次出て参りましたいま一つの理由は、以前におきましては、徴收の面はすべて市町村に委託をいたしまして、徴收をお願いしておつたのであります。大上さん特によく御承知のように、以前は税務署におきましては、滯納になつたもののわずかな数だけを直接処理しておつたのでありますが、制度改正によりまして税務署の直接徴收に相なつたわけであります。従つて税務署のきわめて若い経験のない人間が各納税者のうちにまわり、それぞれ現金をいただいて帰るというふうな状況になつて参りましたために、しかもそれらの者が年齢層が低くて、必ずしも誘惑に打勝つことができないような状態にある者もございましたので、これらの事件が起つて来たのであります。何とかしてこれらの事件を、今後監督なり各種の方策を講じて絶滅して行きたいと考えております。
  129. 大上司

    ○大上委員 大体了承したのでありますが、私たちは過去を責めるのではございません。ただたびたび申します通り昭和二十四年度予算の説明の中に盛られたところの国税の徴收費用が、やや少な過ぎるのではあるまいか。これによつて円満なる税務行政が至難なような気がするのであります。一例を申し上げますと、今日ではどうかわかりませんが、国税徴收は御承知通り市町村にまかしておつたが、今度は收税官吏がやる。ところが今日は相当部厚い金を持つて参るのでございます。これが一朝途中で狙撃されたらどうなるか。こういうことに対しては当然国税庁としては特別の回送車と申しますが、日本銀行に運ぶところの自動車の設備、あるいは金綱を張るくらいのことは長官として考えてほしい。もう一つは現金出納でございますが、これは郵便局の窓口においてもそうでありますが、現金が、今日は千円札が出たといえども、ほとんど一人で五万、六万というものを数えておる。こういうことは、一枚のミスをしたならば、ただちに善良なるところの税務官吏はこれによつて損害を受けなければならぬ。また一面更正決定その他によつて地方の公務員はいざ知らず、地方税務官吏は手不足になつておりまして、地方の第一線に働いておる税務官吏はきわめて悲惨な私生活をしておるわけであります、さらにこれに加えて言いますと、今度の新規採用千五百人がはたして許されるかどうか。まだ見通しがついていないように私は聞いております。そういう面におきまして、もう少し徴税費を見てやる必要があるのではないか。この点を聞きまして私の質問を打切ります。
  130. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 お話通り相当現金を取扱いますので、それらの危險をおもんぱかりまして、弊害を少くする措置を講じております。大きな税務署においては、ほとんど全部銀行の出張所を——現金を受取ります窓口を税務署につくりまして、税務署に持つて参りましたものはすべてそこにまわして、そこで受取るというふうな措置をとつております。また出張しました際におきましては、必ずとりまとめてもよりの銀行、あるいは郵便局に拂い込ませるという措置をとつております。もちろんそれのみをもつて十分であるとは考えていないのでありますが、何分にも現在の旧制度のもとでは、なかなか問題の改善が困難なような状況であります。また超過勤務等につきましては、税務署は他の官庁よりは相当多くの超過勤務の予算をいただいておるのであります。もちろん十分であるとは考えられないのでありますが、ただ一つこの点についてさらに考えたいと思いますのは、仕事に熱心のあまり、やむを得ざることであるとは思うのでありますけれども、なるべくならば徹夜勤務とか、または非常な超過勤務を継続するということは、必ずしも全体の能率を上げるゆえんではない。ことに税のごとき、ほんとうに納税者の利害に緊密な関係を持つような、特に愼重を要する仕事につきましては、そういうような一時的などさくさの勢いでもつてやつた仕事には、よくミスを生ずることが多いのでございます。従つてそういう方法ではなしに、現在の超過勤務手当の予算の範囲内におきまして、できるだけ合理的な、仕事の能率の上るくふうをしてやつていただくというふうに指導しておるわけであります。
  131. 川野芳滿

    川野委員長 それでは、先日内藤委員から、経済安定本部財政金融局次長に対する御質問が保留になつておりますが、次長の西原君がお見えになつておりますので、この際これを許します。
  132. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 安定本部の方に国民所得のことをお尋ねいたしたいと思います。私どもにお配りになられました予算説明書の中には、二十五年度の国民所得は三兆二千二百三十億という数字が出ておるのであります。これを大蔵省が正しいものなりということで、今度の各種の税法が出ておるのであります。従つてどもは、この税法を審議いたしますのに、二十五年度の国民所得が今申しました三兆二千二百三十億というものが正しい数字であるかどうかということを、一応考えなければなりませんので、それでお尋ねいたしたいと思うのであります。実は三兆二千二百三十億というものは、どういう基礎計算から出て参つたものであるか。それをまず伺いたい。二十四年度の国民所得は二兆九千億ということになつております。そうすると二十四年度に比べまして、二十五年度は、三千二百三十億増となつておるのであります。私どもは、どういうそろばんをとつてみましても、これだけの国民所得がふえるとは考えられません。かりに一例を具体的なことによりまして考えてみますと、農林水産業でありますが、農林水産業の二十五年度の所得は六千五百三十四億となつております。これは昨年はどういう数字を出されておるのか、昨年の資料には出ておりませんのでわかりませんが、私どもは六千五百二十四億という農民所得というものが、はたしてあるかどうかということを、過日来私の手元にあります詳細な各種の資料によりまして推算いたしてみますと、どうしてもこういう数字が出て来ない。かりに一例を申し上げますと、昨年の收穫高は六千三百万石、四千二百五十円といたしましても、これは平均でありますが、もちろん昨年は米質が惡いのでありますから、石当り四千二百五十円とは行きません。もつと下るものと思うのでありますが、かりにこれにいたしましても、二千六百億となるのであります。その他の農業所得計算しますと、私どもは、まあせいぜい千四、五百億だろうと思います。だから全体では五千億で、千五百億ほど安本の計算が少しよけいに見積つておるように思われるのでありますが、三兆二千二百三十億というものを御計算なさつた基礎を、できるだけ詳しく——もしここでお答え願うのに時間がかかりますならば、その資料をいただきたい。あるいはこの計算は、前年度の国民所得に対して、おおよそ安本で計画しておる生産が二十五年度はこれだけになるだろう。たとえて申しますと、鉄鋼においては何パーセント上昇すると安本では生産計画を立てておられる。あるいは石炭においてこう、何においてこう、こういうふうなパーセンテージを前年度のものにかけられて、こういう数学が出て来たのではないかと思うのでありますが、もししからずとするならば、その基礎をなるべく詳しく、納得の行けるようにお教えを願いたいと思うのであります。
  133. 西原直廉

    ○西原政府委員 二十五年度の国民所得は予測でございまして、いろいろ計算に約束事なんかを考えなければならぬことになつております。ただいまお話のように一応経済安定本部の方で、昨年の十二月の二十日に推算いたしました昭和二十五年の分配国民所得は、一月から十二月まででございますが、合計いたしまして三兆二千二百三十億というふうに推計いたしております。これを年度に直して二十五年度にいたしますと三兆二千二百三十億、こういう数字になつておるのであります。これの概略の算出の方法と申しますか、根拠を申し上げますと、この二十五年の国民所得の推計は二十三年度の国民所得につきまして大体の実数が出ておりますので、これに雇用、生産、賃金及び物価等の今後の推移を織り込みまして予想したのであります。雇用と生産の推移につきましては、二十五年度において大体一応の見通しを立てておりますので、この推計を用いました。また物価、貸金につきましては、昭和二十四年九月の水準を基礎としたのでありまして、ただ質金については年末において幾らか賞與と申しますか、一時の手当のようなものが出ますのが通例でありますので、そういう点は考慮してあるのでございます。これを大体指数について申し上げたいと思いますけれども、いろいろこまかくなりますので、その点については資料を差上げるようにいたしたいと思いますが、ただいま御質問のありました農林水産業につきまして指数を申し上げさせていただきますと、農林水産業昭和二十四年度の生産額を一〇〇といたしますと、これの生産指数は、昭和二十五年度において、大体農業の生産指数としては一〇七%と見込んでいるのであります。また昭和二十五年度の物価指数は、昭和二十三年度の物価に比べまして一二一%になる。このように見込みました結果、ただいまお話がありましたように、たとえば農業におきましては昭和二十三年度の国民所得の実績が四千七百八十三億でございますのに対して、昭和二十五年度の歴年の国民所得としては六千九百七十三億、こういう数字に相なつておるわけでございます。
  134. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 これはひとつこまかい数字をいただきたい。それで了承したいと思います。
  135. 川野芳滿

    川野委員長 それでは前尾繁三郎君。
  136. 前尾繁三郎

    前尾委員 それでは、午前中に引続きまして質問を継続いたします。  次にお尋ねしたいのは第九條の二でありますが、御承知のように純損失について繰越しあるいは繰りもどしを許されておるわけで、しかもそれは青色申告書を提出した者に限られておりますので、本年で申しますと、昨年は青色申告書がございませんから、繰りもどし関係は全然できないということに相なるかと思うのであります。経過規定を見ましてもそういうような規定がないように思いますが、その点はいかがでありますか。
  137. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話のごとく損失の繰越し繰りもどしは、計算の正確を特に必要とする点がございますので、青色申告を出した場合に限ることになつております。従いまして初めて繰越しされますのは、今年度青色申告書を提出したものでありまして、来年度になつて本年度欠損が生じた。その損失を来年度に繰越すことができる、こういうことになるかと思います。二十四年分につきましての欠損は、繰越し控除は認めることにいたしておりません。
  138. 前尾繁三郎

    前尾委員 その点は、法人はどういうふうになつておりますか。法人については、私は個人よりも明確にされておるわけで、必ずしも青色申告書に限らぬように思いますが、どういうふうになつておりますか、一応承りたい。
  139. 平田敬一郎

    平田政府委員 原則としましては法人についても同様でありますが、ただ従来法人につきましては、一年限りの損失の控除を認めておりましたので、その点は経過的に同様のことを認めることにいたしております。
  140. 前尾繁三郎

    前尾委員 次に第十條の必要経費関係であります。今度は源泉徴收の加算税、重加算税、それから通行税について軽加算税、重加算税を必要経費から除かれておりますが、そこでかえつて私は疑問を生じたわけで、従来必要経費というからには、たとえば罰金というようなものは必要経費でないという解釈で考えておつた。従つてこういうようなものが必要経費だというその観念から除かなければならぬということになつて参りますると、富裕税についての罰金とか、あるいは所得税の加算税等についての疑問があるかと思います。また今度できましたいわゆる利子税についても疑問がある。従いましてその辺を明確にしていただきたいと思う次第であります。
  141. 平田敬一郎

    平田政府委員 自分自分所得税に関連して納めました加算税、利子税等は、ここの第十條第三項の所得税の中にそれぞれ入るわけでございます。従いましてそれぞれこの字句の中で算入しないことになるのであります。ただ個人の雇い主でありまして、源泉徴集義務者としまして徴收を怠つた等の場合の加算税はやや趣も違いますので、その点但書でその趣旨を明らかにいたした次第であります。罰金等は必要経費に入らないという解釈は従来からも明らかにいたしておる通りでありまして、その点は従来とかわりございません。
  142. 前尾繁三郎

    前尾委員 利子税については……。
  143. 平田敬一郎

    平田政府委員 利子税につきましても、所得税の場合におきましては所得税の中に入りますから、これは三項に該当するものとして差引かないことにいたしております。
  144. 前尾繁三郎

    前尾委員 源泉徴收の利子税は……。
  145. 平田敬一郎

    平田政府委員 源泉徴收の利子税は、他人の税金を納めなかつたことに対する一つの経理的なことと考えられますので、その方は引くことといたしております。  なお御参考までに申し上げておきますが、法人税の場合におきましては総益金から総損金を控除する。その総損金は相当広汎なことにいたしておりますので、利子税は法人税の場合は総損金として見ることにいたしております。
  146. 前尾繁三郎

    前尾委員 次は十條の四の関係でありますが、たなおろしをなすべき資産あるいは減価償却その他の方法について命令で定められる。これは午前中にすでにその内容をお聞きになつたので、この点については触れないのでありますが、ただ年の中途において変更するということについては、この規定のうちで見ますとどうもいかぬような感じを受けるのであります。その点をお聞きしたいのが一つ。それから十二月三十一日までに申請書を提出しなければならぬ。しかも終りの方に、第四項の申請書の提出があつた場合には、十二月三十一日までに承認または却下の処分がなかつたら、承認したものとみなすということになつておるので、たとえば十二月三十日ごろに申請を出すということになると、いかにもどうもむりなような感じもするのでありますそれに対する御意見が一つ。それからもう一つは、この場合に計算方法の相違によつて利益が出て来るわけであります。その利益はいずれの年に所属するか。これは考えようによつてはいろいろ問題があると思うのでありますが、その点に関しまする解釈はどういうことになりまするか、お伺いいたしたいと思います。
  147. 平田敬一郎

    平田政府委員 個人所得は、前尾委員承知通り、一月から十二月までの実績をもとにしまして確定申告をしまして、それによつて納税義務を確定することにいたしております。従いまして、税法の建前としましては、その年一年ごとに変更するかしないかを承認するのが正しいと考えまして、年の途中で変更する方法は認めておりません。一年ごとに一定の方法を選択して採用してもらうということに相なるのであります。なおこの年限につきましては、変更しようとする場合は、承認の申請は、前年の十二月三十一日までに提出するのであります。それに対しまして承認を翌年になつて與えるわけでありますが、その年の十二月三十一日までに何らの処分がなかつた場合には、承認があつたものとみなすということに相なるのであります。
  148. 川野芳滿

    川野委員 川島君の大蔵大臣に対する質疑が保留になつておりましたが、大蔵大臣がお見えになりましたので、この際これを許します。川島金次君。
  149. 川島金次

    ○川島委員 この機会に、大臣に二、三お伺いいたしたいと思います  大臣は先般来たいへんふしぎな放言をされまして、全国に異常な波紋を描き、大臣の地位にまでこれが及ぼすのではないかと側近の人たちが大分心配しておつたようであります。それほど大きな問題を投げた形でありまするが、大臣といたしましても、あの言葉は單なるそのときの舌足らずであるとの釈明をされまして、一応波風も治まりかけておるわけであります。そこでその直後におきまして、民自党自身におきましても狼狽のような形で、中小企業対策なども立てまして天下に発表されております。なおまた政府といたしましても、これを機会として中小企業対策に対しての、何らか具体的な方策が立てられつつあるやに想像いたしておりますので、この機会に、この年度末を控得ましてますます困難な方向に陷ろうといたしておる全国の中小企業を、いかにして救出し、この三月危機と言われまする危機を、中小企業をして突破せしむるかという事柄についての金融対策及び一般中小企業の振興対策について、具体案がありましたならば、この機会に明確に示してほしいと思うのであります。
  150. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の産業界におきまする中小企業の地位の重大性にかんがみまして、従来よりこれが振興策を考えておつたのであります。まず問題は、金融の問題あるいは中小企業者の税の問題であるのであります。税の方は幸いに今年から中小企業者に対しましても、相当の減税をなすことにいたしまして、ただいま御審議を願つておるのであります。前年の実績によりまする今年度の税が、一—三月にある程度かたまつて参りますので、これが金融対策につきましては、川島君御承知通りに先般来いろいろな手を盡しておるのであります。しかし何分にもインフレからデイスインフレヘの切りかわりますときのしわは、勤労階級にも農民の方々にも、またそれにもまして中小企業者の方々にも強く来るのでありまするから、私は日本の産業を復興し、また直接需要をふやす意味におきましても、早く二十五年度の予算を執行する。そうしてそれまでの端境期につきましては、極力金融の道をはかつて行きたいと努力いたしておる次第であります。
  151. 川島金次

    ○川島委員 今のお答えはまことに抽象的な政治的な言葉だけで、まことにわれわれも納得できないのでありますが、もう一歩進んで、大蔵大臣が今着手しつつある金融対策、あるいはこれから明年度にかけての対策として、確実に実行いたそうといたしておりまするところの金融対策の具体的な政策を、示してもらいたいと思うのであります。
  152. 池田勇人

    池田国務大臣 今までの問題はもうすでに御承知と思いまするが、重ねての御質問でありますので申し上げておきます。中小企業の金融対策として特にとつておりますのは、見返り資金の中小企業への直接投資であるのであります。しかしその他の一般金融としておりますのは、昨年末の預金部の百億円でございます。これは中小企業に非常に密接な関係のありまする無盡とかあるいは信用協同組合に対しましては、こういう政府資金からただいままでに二十五、六億円出ております。それから預金部の資金を公団の方に百五十億円まわすことにいたしまして、これがぼつぼつ動きかけておりまするが、これも間接には中小企業の金融に裨益するところがあると考えておりますし、また復興金融金庫の余裕金の八十億円の運用もいたしておるのであります。また政府の資金百五十億円を先般来出すことにいたしまして、きようぐらいほとんど出盡した、割当を済ましてしまつたと思うのであります。そういうふうなことをいたしております。なおこういう金を今後中小企業に直接に行きますように、政府資金並びに預金部資金の運用を特定の銀行に特にたくさん出しまして、たとえば勧銀だとか北拓というふうなものに出しまして、中小企業の中でも長期資金の円滑化をはかるようにいたしております。この効果が徐々に出て来ると思います。また別に昨年八月ごろは、日本銀行から月額融資として出しておりまする商工中金あるいは興銀、勧銀の分が十二億円であつたのが、今までにこのわくをふやしまして今三十九億円出しております。この三十九億円でも足りませんので、要求あり次第五十億でも百億でも月額融資を出すことに、日銀の方に指令をいたしておるのであります。私は金融につきましては、とにかくその方々が大体やつて行けるという場合におきましては、金に糸目のないように出す用意をいたしておるであります。今後におきましても、今の纖維関係その他におきまして必要であれば幾らでも出す。私は金を締めるという気持は毛頭ございません。できるだけ出すようにさしておるのであります。今後の問題といたしましては、たとえば農業あるいは林業、水産業におきましても、農林中金には二十二億円程度の見返り資金を出資する予定のもとに、これを基本として二十倍の長期債券を発行し、あるいは商工中金にしましても、今一億六千万円の出資でございますが、五億円に増資して見返り資金から五億円出し、合せて十億円にしまして、二十倍の二百億円の商工中金の長期資金をまかなうように法案を提出いたしたのであります。いろいろな手を使いまして、金融面につきましては十分の用意をし、準備をしておるのであります。  税の問題は、御審議願つておりますように、昭和二十四年よりも二十五年度におきましては、非常に軽減になると見ておるのであります。問題は地方税がどうかということもありまするが、われわれは地方税を加えましても、中小商工業者に対しましては相当の減税になると確信いたしておるのであります。これによりまして今までのインフレ時代のあのむちやな経済から日本の経済が全体的に立ち直りまして、しこうしてまた中小企業が堅実なる基礎のもとに業務にいそしみ、経済復興に貢献し得られるような立場になるということを、確信いたしておるのであります。また税の問題でなしに、産業経済復興のためには、やはり貿易の振興が必要でありますので、私は金融の面におきましても、また貿易制度におきましても、極力貿易を振興し、そうしてそれが中小企業の再建に役立つような施策を考慮しておる次第であります。
  153. 川島金次

    ○川島委員 だんだんにわかつて参りましたが、先般の委員会で私どもはおそらく委員全体が意外なことを耳にいたしたのであります。と申しますのは、ただいま大蔵大臣が御説明になりました一部の一、二、三の三箇月にわたつての一億円ずつの中小企業金融対策の問題であります。この見返り資金から出されまするところの一億円ずつの中小企業を対象とした金融が、せつかく政府がそれを実施に踏み入つたにかかわらず、今日に至るまでその合計三億のうち、二億何千万円かがいまだに融資されずに残つておる。こういうようないまどき考えるときわめて不思議な現象があるということが、この間の委員会で判明いたしたのであります。こういう事柄はどこに一体原因があるのか。今や全国の中小企業が市中金融機関に対しましてお百度を踏み、しかもなかなか容易に融資が得られず、そのために税金や金融難のために、中には自殺をしたという重役などもあるような有様でありますときに、せつかく政府が出した金を全国の中小企業がそれを使つておらない。こういうような事柄というものは、やはり市中銀行にも大いに責任があるのではないか。と同時に政府にもまたそれを積極的に中小企業及び国民に周知徹底させるところに、何か怠慢な事柄があつたのではないか。及び市中銀行に対するその問題についての熱意が足りないために、せつかくの三億の金が二億数千万円も残つて来ておるということになつているのではないかと思います。従つてこういうことを考えてみますと、今大臣がるる重ねて幾度もこの対策を金額までもあげて説明されたのでありますが、それが政府の意図するように、真に中小企業の打開に効率的に、しかも適時すみやかに融資されて行かなければ何にもならないわけであります。そういうことについて大臣はどのような処置を講じ、将来どうしようとするのであるか。これを徹底させ、しかも適時、即時融資させる方法といたしましては、どのような処置をとろうとしておられるのか。そういう事柄についての所見を承つておきたいと思います。
  154. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金から中小企業に直接融資いたしますことは、十二月の中ごろ過ぎにきまつたのであります。それから地方銀行等を中心にいたしましてこの制度を知らしめ、勧奬して参つたのであります。しかし御承知通りに担保を相当嚴選いたします関係上、一月におきましては七、八件で八百五、六十万でございます。二月には動き出しまして、二月末には五千七百万円ほど出たのであります。しかるに三月に入りまして急激にこれがふえて、すなわちスタートのときに遅れましたけれども、全国的にずつとやつておりますので、二月に五千七百万円であつたのが、三月の六日には一億四千万円にふえました。だから決して動いていないのではないのでありますが、しかし金を出したからといつてすぐ貸し出せるわけのものではないのでありまして、ことに相手は中小企業でありますから、籍すにしばらくの時を待つてもらわなければなりません。私は今の見通しでは、三月中にはその金は二億五千万円を突破すると思います。すなわち三月末日までには五千七百万円に加えるに二億五千万円を突破し、三億円を突破すると考えております。そういたしますとこの金が四半期三億円、月一億円というのでは足りませんから、私は関係方面に話をして、月一億円をもつとうんとふやすという計画でおるのであります。しかもこの事態と呼応いたしまして政府の百五十億円も特に勧銀、北拓、商工中金等に出しまして、別途通産省で計画いたしております優良なる、しかも将来性のある方面への貸出し資金を、大体A級で五十億円、B級で三十億円、合計して約百億円ばかり融資いたしております。個々の貸付先を特定の銀行に見せまして、通産省並びに銀行局そして特殊銀行業者と話合いをして、その面からも進めて行つておるのであります。この見返り資金の月一億円は今月だけで予定通り出てしまいます。来月になりますとこの額をふやして、この方面からの金融の円滑を期するように努力をし、また軌道に乘つて参るということを申し上げる次第でございます。
  155. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大蔵大臣に特に税の関係で二、三の質問をしておきたいと思います。見返り資金その他の問題に関する質問は、なお別の機会にいたしたいと思います。  まず私の大蔵大臣に伺いたいのは、今回の税制改革にあたりまして、今後外資導入その他の関係から外国法人その他外人が日本で事業をやる場合、あるいは日本で財産を所有するというような場合が現在でも相当ありますが、今後もますますそういう傾向が強くなつて参ると思うのであります。まず第一問としてお伺いしたいのは、そうした外国法人あるいは外国人の日本における事業所得あるいは財産の所有あるいは法人所得、こういうようなものに対する課税上の対策というか、態度というか、そういうものを大蔵大臣としてどういうふうにして行かれようという基本的の態度で、この税制改革案を御立案になられましたか。この点についてお答え願いたいと思います。
  156. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の経済再建には、われわれの努力によりまする資本の蓄積だけでは不十分でございます。ことに今アメリカの援助をもらつてつておるわが国といたしまして、この援助が漸減することを考えますと、経済再建のためにもまたわれわれ生活水準の向上のためにも、ある程度の外資を入れて来なければならぬと思うのであります。また一面日本の技術の点から申しましても非常に立ち遅れておりますので、資本と同様に優秀な外国の技術の導入もはからなければならないのであります。私はこの意味におきまして外資並びに外国の技術者に対しまして、租税上軽減あるいは免除の措置をとりたいと考えておるのであります。従つて具体的に申しますと、外国技術者がこちらに来られてわが国の技術指導をされる場合に、その人の給與所得については一定の軽減をいたしたいと思います。しこうして外国の資本で特に日本の産業、復興に必要なるものに対しましては、一定期間免税の措置をとりたいと思います。外国の事業家がわが国において事業をなさる場合、すなわち事業をなさるその事業所得に対しましては軽減免除の措置はとりません。また外国人がこちらに法人を設立しまして、その法人が特に日本の産業に役立つものでない——特定の基本産業と申しますか、日本産業復興に寄與するものでないと認めた法人につきましては、免除とか軽減の措置はとらないはずであつたのであります。従いまして私の考えておる軽減免除の分は、外国人にして日本の経済復興に寄與せられる技術家の給與所得と、日本の経済再建に必要なる外国資本に対しまして、一定期間特別の措置をとろうと考えておるのであります。
  157. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大体基本的な態度は一応わかつたのでございますが、たとえば今回提案されております相続税法を一応見渡してみますと、これはいわば資産の社会化と申しますか、そういう点から参りますと相当社会化の高度な線を実現しようというねらいが、われわれにも看取できるのでありますが、こうした形を徹底的に遂行して参るということになりますと、一定の期間を経過した後におきましては、日本においては中産階級以下中小の資産を持つておるものだけだというように相なるのではないか、われわれはかように思うのであます。従つて日本の経済全般がまだ社会化の段階が極めて低い現在の段階におきまして、今回のような社会化の相当進んだ段階にまで持つて行こうという相続税法の持つて行き方が、私がただいまお伺いをいたしました今後の外国資本の日本への導入、また外国人の日本における資産所有というような傾向が漸次強まつて来る前におきまして、これは日本の民族的な立場において考えなければならない問題だと思いますが、そういう面におきまして結局日本人全体といたしましても、ここに大きな開きが出て来るような気がするのであります。この点につきまして相続税法の立案にあたりまして、大蔵大臣としてそうした関係において御研究なされたこととは思いますが、その点についての御所信をお伺いしたいと思うのであります。
  158. 池田勇人

    池田国務大臣 相続税の税率は、従来のような家族制度のもとにおきまして、相続人一人が相続する場合の税率から比べますと、よほど高いものになつておりますが、民法の改正によりまして財産相続に関する規定がかわつて参りまして、分散の建前をとつておりますので、私は今の状態ではこの程度の税率でさしつかえないと考えております。
  159. 田中織之進

    ○田中(織)委員 どうもその点につきましては、われわれあらゆる面に社会化を主張する社会党の立場において、かような質問を申し上げるということについて、大蔵大臣としても一応奇異の感を持たれるだろうと思いますが、問題は最近強く一部において叫ばれております日本の植民地化あるいは植民地的支配というようなものに対して、側と申しますか口実を與えるような態勢を国みずからがとにかくやつておる、こういう一つの見方もなり得るという点から、その点について御質問を申し上げておるのであります。特に今回の相続税の税率の引上げの関係から見まして、これが実施されました場合に、農村方面等における資産相続の場合における負担が、相当過重になつて来ると私は思うのでありますが、この免税点につきましてもつとこれを免税すると申しますか、そういう課税対象になる範囲を現在の物価関係その他の点から、これを御考慮なさる用意があるかどうか、この点を伺つておきたいと思います。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 御議論の点はわかるのでありまするが、従来の相続考え方と根本的にかわつて来たのであります。免税点の問題なども従来は五万円でございます。そうして財産は長子相続的のことが多かつたのでありますが、今回は個々の人について十五万円であるのでありますから、よほど合理的になつたと考えておるのであります。農村の方々の相続の場合は高くなつて来るじやないかという御質問でありますが、今は田畑につきましては非常に分散しております。問題は山でありまして、山にいたしましても大した支障はないと考えておるのであります。前のようなやり方よりもやはり個人主義的、民主的な方向として相続税改正は適当であると私は考えておるのであります。
  161. 田中織之進

    ○田中(織)委員 次に法人税の問題についてでございます。けさ午前中共産党の河田委員から主税局長に対する質問があつたのでありますが、日本におきまして、法人のうちにおいても、いわゆる中小企業に属する部分が、これは数字的に申しましても私は非常に大きな部分を占めていると思うのでありますが、法人に対する課税にあたりまして、今回いわゆる超過所得と申しますか、そういうものを廃しまして、一律に三五%の課税をいたすことになつたのでありますが、この点に対するいわゆる法人における中小以下の部分について、もう少しこの率を段階的に下げるという点についての御考慮が拂われないものかどうか、その点を大臣からお答え願いたいと思います。
  162. 池田勇人

    池田国務大臣 この法人課税の問題でございまするが、十年前までは法人の数が七、八万、十万足らずであつたのであります。最近は二十七、八万、三十万近くになつておるのであります。超過所得の問題と兼ね合せての御質問でありますが、従来は超過所得はおおむね小法人に重い負担になつておつたのであります。従つて一時は小法人に対しまして、超過所得について課税の特例を設けておつたのであります。問題は小法人に酷だというところにあつたのであります。それは資本金が少いからでありますから、今回超過所得を切つたということは、小法人には非常に利益になるのであります。この点あなたのお話の点は十分盛られたと思います。私は適当な処置と考えておるのであります。もちろん法人課税というものは、今までの考え方と違つて個人の延長である、こういうように見る見方を強くしたのでありますが、すつかり個人の延長とのみ申せません。大体において昔のように法人個人とは別個の課税主体であるという税法を、個人の延長であるという英米系の税法に直したのであります。また個人から法人にかわりますいろいろ今までのような慣例等から考えまして、私は特別の低い税を小法人に設ける必要はただいまのところない。超過所得をやめることによつて法人は非常によくなつて来たと考えておるのであります。
  163. 田中織之進

    ○田中(織)委員 あと二点ほど大臣にお伺いしたいのであります。これは各委員から出ておることと思うのでありますが、きよう午前中の本委員会における質疑におきまして、相当の脱税がある。その意味におきまして、たとえばこれは勤労所得の面におきましても、中小企業等においては実際は相当の脱税があるのじやないか。また農村関係においてもしかりだというような答弁が主税局長からなされたのでありますが、たしかにそういう面における脱税というものを拾えば、相当数の額に達するであろうといういうことは、われわれも否定できない事実だと思うのであります。問題はそういう所得税務当局としての捕捉の能力の問題等にも関連して来ると思うのでありますが、私はそういう点から申しまするならば、勢いそういう面をできるだけ捕捉するとともに、基礎控除あるいは扶養控除等の控除額についての考慮を拂うべきだという平田君の御答弁があつたのでありますが、そういう観点で、特に最近の二十四年度の所得税の徴收に第一線の税務署がとつております点については、実に所得の捕捉については従来と比較にならないくらい嚴重なるものが行われて来ておるのであります。そういう点から考えまするならば、今回のそれはシヤウプ勧告案よりは千円引上げられて二万五千円になつておりますが、これを月割に直して参りますと、やはり二千円ちよつとであります。そういうことでありますならば、これは多くの議論があるところであると思いますけれども、少くともこれは生活控除という面まで引上げられなければならない。われわれはそういう面において、一面税率の問題と基礎控除の問題についての考慮が拂われまするならば、いわゆる脱税されておるような所得の面も浮び上つて来るのではないか。従つて税收全体の上から申しまするならば、そこに大した開きはないものだと大づかみに考えるのでありますが、基礎控除をさらに思い切つて引上げる。少くとも一箇月の生計費——いろいろの関係からこれは相当の段階のあるものだと思うのでありますが、少くとも一箇月に二千円そこそこのものでは、私は基準生計費というようなもののきわめて小部分にしか当らないと思います。そういう観点から生活控除部分までもつと基礎控除を引上げるということ、これはすぐにはできないかもしれませんが、この点税に深い造詣をもつておる大蔵大臣として、基礎控除の引上げの問題について、今後の課題になろうかと思いますけれども、私らはもつとこれを引上げて行くべきではないかと思う。そういう点によつて現在まだ税務署が捕捉し得ない所得を捕捉すれば、その意味において少くとも生活控除がなされる。こういう見地に立ちますならば、全体としての税收の上には大した影響のないものだと私は考えるのでありますが、その点についての大蔵大臣の御所信を伺つておきたいと思います。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 課税漏れがあるということは、私も遺憾ながら率直に認めます。従いまして課税漏れの場合を、われわれとしては極力追求してやつておるのであります。やはりまず大きい所得者についてやつた方が効果的でありますから、査察部あるいは調査官を置きまして、極力やつておることは御承知通りであります。課税漏れをなくしたならば、税收入が多くなつて、基礎控除あるいは税率等において加減ができるだろう、その通りであります。私はまず第一に財政規模を小さくして、とにかく国民の負担を少くしなければならぬというのが私の念願であります。従いましてお話通りに、シヤウプ勧告案よりもできるだけ財政規模を小さくしようというので努力したのでありますが、川島君の御質問であつたか、もしシヤウプ勧告案を動かすとすればどこを動かすかという御質問に対しまして、まず勤労控除一割を一割五分にしたい、その次は基礎控除だ、それから税率だ、こういうことを申したことがあるのでありますが、幸いに関係方面の了解を得まして、勤労控除の一割を一割五分にいたしまして、このために二十五年度の減收が百十八億円であります。それから次に基礎控除の二万四千円を千円上げて二万五千円、それによる減收が三十八億円であります。もしお話通りに最低生計費を引くというような観念で行きますと、税收入というものはぐんと減つてしまいまして、財政がもたぬということになるのであります。考え方としては、税の理論から申しまして、基礎控除というものは生計費を見ておるのだということを説く人もありますが、われわれはそういう説には賛成いたしておりません。一部にはそういう考え方もありますけれども、これは税率と兼ね合せての問題でありまして、生計費ばかりを見てやつておるのではないという考え方でおるのであります。従いまして財政規模が小さくて、国民の負担を軽減し得るようになりました場合におきましては、私は今後は基礎控除の問題にまず重点的に行く。それから税率の補正に行く。基礎控除と税率の問題は兼ね合いの問題でありますから、とにかく国民の所得税が非常にスムースに軽減をされるような方法として、基礎控除というものは非常に役立つものであるのであります。何分にも今の財政状況から申しますると、今千円上げただけでも三十八億円違うのであります。これを三万円にいたしますと、何百億のたいへんな減收になるのでありまして、よほど注意しなければならぬ問題だと思います。
  165. 田中織之進

    ○田中(織)委員 最後にお伺いしておきたい問題は、今回の資産評価税の問題、及びこれは前の委員会大蔵大臣からお答えを願つたのでありますが、地方税として考えておられます附加価値税あるいは固定資産税というようなものの関係から参りまする物価値上りとの関係、これは大蔵大臣はどの程度物価に影響を持つとお考えになつておられるか。われわれはこの附加価値税の問題等につきましては、この前も取引高税の再現ではないかということを大臣に申し上げたのでありますが、外形標準的な課税でありますから、そういうように見られないこともないけれども、本質的には違うというような意味の大臣からの御答弁があつたのでありますが、私はこれはやはり必然に転嫁される関係物価に響いて来る。地方自治法の関係におきましても、これについての物価との関係における資料が出ておるように思うのでありますが、資産評価関係からも、勢いこれは物価へのはね返りと申しますか、そういう影響を持つておると私は思うのでありますが、これは大蔵大臣が予算編成にあたつて、二十五年度のいわゆる物価水準というものを見通された線との関係において、どういう動きを示すであろうか、こういう点についてお伺いしたいのが一点。  最後でありますからもう一点お伺いしておきたいのは、これは先ほど大臣がお見えになる前に、野党の各委員から質問が出たことと思うのでありますが、現在日本にいわゆる土建関係の業者で、一人親方と俗に申しておりますが、あるいは左官、大工、植木その他の関係におきまして、一人で町方あるいは事業場等で働いておるところの労働者があるわけであります。これは労働組合法によつて労働組合を結成しておるのでありまして、この中にはいろいろの段階がありまして、労働組合に当然入ることができないで、企業組合あるいは協同組合というような形で事業主的な性格をもつておる部分があり、その点の見わけがちよとつきかねるというようなきらいも、私率直にあることは認めるのでありますけれども、一応労働組合法によつて、これは事業主あるいは経営主でないという建前において、労働組合法の適用を認められておる、こうした労働者があるのでありますが、これらの人の所得の押え方の問題でございます。     〔委員長退席、前尾委員長代理着席〕  これにつきまして、そういう労働組合の諸君の立場から申しまするならば、勢いこれは勤労所得だ。従つてこれは勤労所得税として源泉徴收をされてしかるべきだ。こういう建前をとつて、従来国税庁並びに地方税務署との間に折衝を続けて来たのであります。ことに昨年の七月二十何日であつたかと思いますが、東京の国税局におきましては、労働組合の結成されておるこうした労働者に対しまして、便宜的な処置として労働組合の組合長を源泉徴收者とみなしまして、昨年の末まで、前月分を翌月の十日までに税務署へ組合長からまとめて納めるというような形におきまして、これはたしか深川であつたと思いますけれども、全体で約九十万円の税金を納めて参つたのでありますが、年末の二十七日になりまして、これは税法上疑義ありということで取消して参りました。そして一月から二月へ入りまして、今度は更正決定としていわゆる事業所得としての更正決定を受けておりまして、連日国会に陳情をして参つておるのであります。私はこの点は今後地方税として、付加価値税のときにも当然問題になることであると思う。従来事業税のときにも非常に問題になつたのでありますが、こうした一人で働いておる者は、私はあくまで労働者だと思います。そういう意味におきまして、私はこれは勤労所得として取扱つてやるべきだと思うのであります。現に東京の国税局は、その通牒によりまして、去年半年問源泉徴收について相当の実をあげに参つたのであります。非常に集めにくいこうした零細な所得の労働者でありますから、苦心をして集めてそういう形で納税をして参りましたにもかかわらず、年末に突如としてそれを取消すような通牒が出まして、引続き事業所得、営業所得と同様の更正決定で、少からぬ税金を納めなければならぬはめに、これらの労働組合に所腐しておる諸君が追い込まれておるのであります。私はこの点は、たとえば請負ということの解釈の問題にも関すると思うのでありますが、あくまでこれは勤労所得として取扱つてやるべきだと思う。その場合に、あるいは一日、二日、三日というような形で雇用主がかわる。台所を修理するとか、あるいはふろ場の壁が落ちたとかというようなことで、一日なり二日なり雇つて参りました者に労賃を拂う場合に、雇用主が源泉徴收者として税金を納めるというような制度になつていないことは、大蔵大臣も御承知のことと思うのであります。そういう点で、源泉徴收者が、不明確ではございますけれども、東京の国税局が、便宜的に労働組合の組合長を源泉徴收者としてすでに半年、相当の成績をあげておるという実情から、私はこうした制度を踏襲されることを——これは法律の施行規則の中にでも明示していただきたいのでありますが、大蔵当局として考え方を統一せられまして、行政上の措置としても何らかの便宜的な処置をしてやつていただきたい、かように思うのであります。この二点につきまして、大臣からお答えを願いたいと思います。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 初めの御質問は、地方税並びに資産評価税等のために物価に影響を及ぼさないか、こういうことでございます。私はそういう点を考慮いたしましたから、再評価税にいたしましても、シヤウプさんの初めに言つておられた一定の倍数で評価し直すということをやめて、一定の倍数以下で任意にやるという態度をとつたのであります。従つて各企業家は、資産を再評価したあとにおける税額その他を考え、それが物価にどういうふうな影響を及ぼすかということを考えて、再評価をなさると思うのであります。従いまして、再評価によつて物価に影響があるようには考えておりません。  それから固定資産税につきましても、相当の金額になると思いますが、これは住宅は別でございますが、事業資産であれば法人税あるいは所得税の経費になつているわけでございますから、全体の所得税が御承知通りにふえないのでございます。法人税もふえないのでございますから、大した影響はないと思うのであります。また附加価値税につきましては、ある程度転嫁を予想しておりますが、これも総額におきましては四百二十五億円でございまして、今までの事業所得税とは大差がないのであります。事業所得税は転嫁を予定していない。附加価値税は転嫁を予定しておる。これで物価にそれだけ違うだろうということは、りくつはりくつでございます。税の性質からいつてそうなつておるのでありますがしかし事業所得税つて、転嫁は予定していないが、税金である以上は、ある程度転嫁されるというこも、考えられるのであります。総体の金額は大体四百二十五億を予定しておりますので、大体物価には影響がない。またそういうようなことのないようにする考えのもとに、税制改正をいたしたのであります。  次に一人大工とか、一人左官とか、あるいは一人植木屋とう問題につきましては、いろいろな点がもう十数年前からあるのでありますが、これを請負業として見るか、あるいは勤労所得者として見るかは、いつもかわつておるのであります。これはいかんせん一人大工の方の仕事自体が、ときには勤労所得者になつたり、ときには事業所得者請負業者になるのであります。早い話が、植木魔を呼んで庭をつくらしますのにも、十日間でやつてくれという場合もありますし、あるいはこれを幾らでももつてくれということもあります。十日間で一定の金額をあげれば勤労所得になりましよう。しかし一定の金額でやるということになりますれば、請負業であります。大工さんでもそうであります。材料をもつ来てここを直してくれというときに幾ら幾らで直せるというときには、これは請負業であります。こういうふうに実態がかわつて来るのであります。私は実態に沿うて税金をとることが法律性質だと思います。しかし実態がかわつて来るときにどうするかというと、やはり徴税の便宜ということも考えなければならぬし、納税者の立場も考えて適当な措置をとらなければならぬと思うのであります。昨年の暮れに国税庁とつた措置について、今どうこうという結論は私には出ません。出ませんが、思うになかなか困難な問題で、これはやはり大工さんの組合、あるいは植木屋さんの組合と話し合つて適当にやつて行かなければならぬと思います。植木屋さんの方で申しますと、常に日給でやつておるときに源泉課税をいたしますと、自分の畑にはち植えなんか置いておると、それによる所得もこれに加算する。こういうようなことも起つて来るのであります。なかなかやつかいな問題でございますが、せつかくの御質問でございますので、ひとつ実態を聞きまして善処いたしたいと考えております。
  167. 田中織之進

    ○田中(織)委員 これ以上私は大蔵大臣に御質問申し上げませんが、最後の点につきましては、やはりこれは労働組合法が適用されておる点から見まして、そうした大工さんの中でも二人とか三人とか持つておるものは、当然労働組合法の適用は受けられないで、一つの事業主という形に相なるのでありますが、労働組合を結成できる人たちは、あくまで純然たる労働者のように私らは理解するのであります。そういう意味で、東京の国税局では、去年の七月以来相当成果をあげた関係もございまするので、こうした形の徴收制度を今後考えていただくと同時に、ただいま大蔵大臣から理解のある答弁をいただいたのでありますが、各税務署等におきまして、末端の税務署においてもこの取扱いの問題で非常に苦慮されておるように聞いておるのであります。各税務署ごとにそうした労働者の団体と税務当局との間に話合いを進めて、むりのない徴收を、できるならば勤労所得としての取扱いをしてやつていただきたい。全国にこうした業者は、私らの調べたところによりますと二百五十万という多数に上つております。きわめて重大なる生活上の問題になつておりますので、特に大蔵大臣に今後この点の具体的な対策について、御研究を願いたいということを希望申しまして、私の大蔵大臣に対するきようの質問は終ります。
  168. 奧村又十郎

    ○奧村委員 時間もありませんから重要な一点だけ承りたいと思います。解釈その他の点については今までお伺いいたしましたので、政策的に特に大臣の所信を承りたいのです今回出された税法関係九件をいろいろ見ますると。特に変動所得の平均課税とか、あるいは損失の繰りもどし、繰越しなど、非常に合理的に、これをこのままほんとうに実施されるとすればたいへんな減税になりまして、国民にとつては非常に朗報であります。そういうふうに考えられるが。しかし一方かなりきつい面がある。そのきつい面のために、かなり今の内閣は国民に対して評判を落すのじやないか、そういう点が私ら二点見出せると思うのです。これはおそらくはそうなると思う。もう来る六月にそれが現われて来る。なぜかと申しますと。これはわが党でありますから私は何とかそういうきつい打撃のないようにしたいと思うのでお伺いするのでありますが、この予定申告規定であります。予定申告規定が、今回は前年度の実績をもとにしてやつて行こうということを非常に強く書いてある。まずその前年度の実績よりも越えた予定申告を出した場合は更正決定をいたさない。とすれば前年の実績よりもかなり大幅にもうかつてつて更正決定はやらぬ。それが一面前年の実績よりも減つた場合は税務署長の承認を得なければならぬ。その承認はどういう場合に承認をするかというと、災害あるいは事業の大幅な縮小。こういう場合であれば当然認めるが、それ以外の場合でありますと、大体十分の二以上所得が減るということがはつきり証明できた場合ということになつておる。その証明ができたということは、單なる物価が下るというようなことでは明らかにならぬということになりますと、税務署長としても、この実績主義を法律で裏づけされて、それでやつて行くということになります。納税者の側に立つてみると、この法律をはつきりわかると一たん更正決定その他で前年度の所得が決定されるとすれば、あくる年の予定申告にどうしてもこれをもつて申告しなければならぬ。申告を減らそうとするならば税務署長の承認を得なければならぬ。その承認がなかなか困難である。この困難であるということは すでに局長といろいろ議論したのでありますからこれ以上申しませんが、そういうことになりますと、事実上は今までの実績主義が法律によつて裏づけられて、納税者にとつては非常にきつくなる。この点は結局においてこの内閣のまずマイナスになりはせぬか、こう案じるので、この点大臣の御所信を承りたいと思います。  それからいま一つの問題は、相続の場合です。山林その他固定資産においても、相続のときに一旦時価で評価して、再評価額と比べて増加した分については讓渡所得とみなして一旦所得税をかける。そのあとにまた相続税をかける。これは二重にならぬと言われるが、確かに二重になる。所得税をかけた分だけを百パーセント引き去つて、それにまた相続税がかかるのでありまするから結局において今までよりは相続税としてはうんとふえる。今のいろいろな社会情勢の変革から、相続の場合に全部財産は国家に取上げてしまうのだという気分ならば、こういう法律も成り立つのかもしれませんが、特に山持ちなどの場合この法律徹底するとなれば、山林などの植林はおそらく起らぬだろうと思います。いまだに日本においては山林を植林して木を育てて、そうして財産を子孫に讓ろうという気分があつて植林が行われておる。木が育つて山の評価がふえれば、ふえた分について相続の際に一旦時価で評価して讓渡所得をかけて、その所得税をまず差引いて残りにまた相続税をかける。率においてかなりふえる。そういうことはもうたいへんな問題になる。この二つが私は非常なミスだと思うが、大臣の御所信を承りたい。
  169. 池田勇人

    池田国務大臣 初めの御質問は私も実はよほど考慮した問題でございます。国民にきつく当りはしないかということは実は心配したのであります。シヤウプ勧告案の原文まで見まして、何とかこれを緩和しようというのであそこまで緩和いたしたのであります。しこうしてこれが執行にあたりましては、画一的にならないように、私は、税務署長といたしましては今年この業種の景気はどうだというふうな商売上の状況をずつと調べまして、前もつて腹づもりをさせておきたい、こういう考えを持つておるのでありますが、ああいう今までにないような規定が設けられた。しかも今までの実情から申しますと納税者にきつくなる問題だと思つておりますので、施行上は十分の措置を講じたいと考えております。  次の点は、これはごく例が少いのでございまして、そうミスではないと思います。実際問題として相続税所得税の問題は、過去十数年間国会で議論になつたところで、奧村君は御存じだと思いますが、われわれはたびたびこの議論はいたしたのであります。今回は資産評価によりまして、それなかりせば納め得べき讓渡所得を六%に非常に減らしたのであります。そうして再評価した後におきまして相続が起つた場合において、それは今のように差額は変動所得としてとらなければなりますまい。しこうしてそれは当然発生する税金でございますから、相続価格から減らすことになります。私は二重課税にはならぬと思います。
  170. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 商法総則の中に、会社財産というものは取得価額と製作価額を越えてはならない、こういうことにして会社債権者を保護しておるような趣旨が諸々に見えるのでありますが、税法においては時価に評価して税をとろうという考えがあるようであります。秘密積立てなるものをこしらえることは税法上妥当でないと思いますが、その経営の現実性から考えた商法全体の考え方と、税法の考え方との間に大分食い違いがあるのです。こういう場合には税法が優先するものですか。それとも会社法が優先するものですか。
  171. 池田勇人

    池田国務大臣 会社関係におきましては、やはり商法の原則によつてつておると思います。何も商法の適用を除外してはおりません。取得原価によつてやることにいたしておるのであります。しかし商法の規定によらない場合におきましては、税法にはつきり明記いたしておるのであります。時価という問題は法人税法におきましてはそういう場合はないと思います。ただ今度政令その他で実際面におきまして課税上の適正を期しますために、たなおろし資産などについて指定する場合があるのでありますが、商法の原則をはずすようなことはないと思います。
  172. 川島金次

    ○川島委員 ちよつと局長に参考のためにお伺いしておきたいのでありますが、財産税の事柄であります。財産税を物納にいたしました当初の状況、及びその後国家が收納いたしましたその財産を売り拂つておりましようが、それの状況について具体的に数字をまずお示し願いたい。
  173. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 ただいま御質問のございました物納財産の問題でありますが、これはただいま手元に持つておりまする数字によりまして、国税庁から引継ぎをいたしました額が大体三十七億円、これは台帳価格のようであります。その後処分ができましたものは台帳価格で二十六億円、従つて現在額が約十億八千万円ばかりになるわけであります。
  174. 川島金次

    ○川島委員 物納財産で直税部から引継いだ三十七億円というものは、税金に相当する額でありますか。税金より多くなつておるのか。その評価はどういうふうになつておりますか。
  175. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 ただいま申し述べましたようにこれは台帳価格でありまして、つまり收納した価格であります。従つて売抑額というものはこれから多くなる場合もあり、少くなる場合もあるということになるわけであります。
  176. 川島金次

    ○川島委員 狭い範囲でありますが、私の承知いたしておるところでは、たとえば財産税を一万円納める。その財産税を納めるかわりとして、物納として二倍ないし三倍に相当するところの財産を物納しておるということと、実際に売拂いをいたしておりまする価格も、また政府が当初予定いたしました税額の二倍ないし三倍の額である、そういう関係はどういうことになりましようか
  177. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 收納されました財産につきましては、一般の国有財産として適正な時価で売拂いをするということに法律上なつております。その原則によりまして売拂いをいたすわけであります。従つてその場合最初の收納額から見てある意味において余剰ができるわけでありますが。それは当然国家の歳入として財産税の特別会計の收納になるわけであります。
  178. 川島金次

    ○川島委員 そうすると今の三十七億円のうちで、処分されたものは二十六億円、その結果において二十六億円というものは予定よりも多く国家に金が收納されたという形になつておるのですか。それとも予定通りか、あるいは予定以下になつておるか。
  179. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 ただいま申し上げました処分済みの二十六億円という価格は、先ほど申し上げました台帳価格計算のもとにこれを申し上げましたので、実際の処分済みの時価とは違うわけであります。これを收納した価格、元の価格に引直してみると二十六億、そうしないと現在額の十億に合いません。現在額の十億円というのも差引いた台帳価格であります。そこで御質問の点でありますが、その二十六億の処分済みのうち、二十三億というものが皇室財産中の、これは主として林野の所管がえのものが多いのであります。従つてこれを差引きますと、約四億近くのものになるわけであります。実際に売拂いのできました価格を見ますと、大体それが十億円になつておりますから、その割合で参りますと、全体では約二倍半になつておる勘定であります。
  180. 川島金次

    ○川島委員 物納をしたときは今から二年以上前、政府の卸売物価指数によりましても相当な倍率になつて来ておるのですから、台帳価格で收納いたしましたときには三十七億でありましても、実際の処分をいたしましたるあかつきにおきましては、相当名目価格におきましては政府の増收にならなければならない、かように思つておるので、その点をお伺いいたしたのでありますが、今のお話によりますと、大体二・五倍程度と解解いたしたのです。そこでさらにお伺いたしますが、この財産の売拂いをいたします場合に、政府は全国の土地建物等に関係のあるある特定のものに対して特定の委託をいたしまして、売拂いに関するあつせんの労をとらせて来たと思うのであります。ところがそのあつせんの労をとらせておる場合に、承るところによりますと、何か五万円以下の財産の売拂いの件に関して、その価格のいかんにかかわらず、その委託者に対して手数料は一件について五分、その上にまた売拂いの書類の一件ごとに対しまして、さらに二千五百円の手数料を出すという契約をして、今日まで来たというような話を聞いておりますが、それは事実ですか。
  181. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 これは御質問の通り、一件について五分の手数料で委託業者に委託しておつたわけでありますが、この物納財産については小口物件が多いものでありますから、そういう小口物件は委託業者の方で経費がよけいかかりますので、経費をまかない切れませんので、昭和二十四年の一月一日から二十四年の三月三十一日まで、昨年の二十三年度の終りまでで、その間に契約ができたものについてはただいま申し上げました正規の手数料五分のほかに、一件について二千五百円拂うことに昨年度いたしましたことは事実でございます。
  182. 川島金次

    ○川島委員 そのために委託者が故意かもしくは偶然か知りませんが、たとえば委託者が取扱いました売拂い価格が、一件についてかりに三千円か四千円しかない場合もある。それに対しましても、政府は五分の手数料のほかに二千五百円の報奬金を拂う。そうすると結局売拂い代金というものは、政府に一銭も入つて来ないというような形になつたものも、大分世の中にあつたというふうに聞いておりますが、そういう点はどうですか。
  183. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 ただいま御質問になりましたような点も理論上出て来るのであります。その点非常に不合理なわけでございまして、かりにそういうふうに差引きマイナスにならなくても、何と申しますか割合の高いところができて来る。あるいは小口に分割して売り拂うというようなことが、極端な場合は出るおそれがあります。それで本年度におきましては、ただいまお話になりましたような一件について、二千五百円というようなことをやめまして、たとえば五万円以下三万円までのものにつきましては百分の五だけを加算する。つまり率にいたします。すなわち基本手数料として売拂い価額の百分の五のほか、一万円以下のものは百分の十で計算する。一万円から三万円までのものは百分の七を特別の手数料とする。それから三万円から五万円のものについては、特別手数料は百分の五にする。そういうような割合による加算をいたすことになりました。従つてまあこれにいたしますれば、先ほどお話のような非常な不合理はなくなるというふうに考ましております。
  184. 川島金次

    ○川島委員 そこでさらにくどいようで恐縮ですが、従来の報奬金制度によりまして支拂いたしました件数の総額がそこにありましたならば、この際お示し願いたいということと、また一方における手数料の五分というのは、総額においてはどのくらいになつておるか。その計数をお示しいただきたい。
  185. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 これは実は昨年度の三月三十一日で一応やりましたところが、非常に成績が上りました。昨年の二十三年の予算では拂い切れない分が実はできたのであります。その手数料を拂う最初の売拂い見込みよりも、非常に成績がよかつたものですから、そういう結果になりました。そこで二十四年度の支拂いが、実際は二十三年度中に契約できだものと両方含みますので、数字が少しはつきりいたしませんので、実は調査中であります。一応二十三年度だけのものを見ますと、二十三年度では六千百二十一件の件数がございます。売拂高が二億八千四百万円、これに対する五分の手数料が千四百万円、そのほかの特別手数料が千五百万円、合せて手数料が二千九百万円ということになります。二十四年度分につきましては、まだ実はそういうわけで一応見込みはつけております。補正予算で一応の数字等を出したのでありますが、まだその実績が集計中でありますので、はつきりした数字はございません。
  186. 川島金次

    ○川島委員 二十三年度に取扱いました、しかもその拂つた額はわかりましたが、二十三年度に取扱いましたものは、まだ政府で手数料あるいは報奬金を二十四年度に繰越して、しかも拂わなければならぬという金額もあるのではないかと思うが、それはないのですか。
  187. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 それはございますが、ただいま実はその分と、それから二十四年度自体に拂うものを合計しまして、予算には五千六百万円と実は乘つておるわけであります。ただこの内訳がどちらの分にどれだけという数字が、実ははつきりいたしておりません。さらに調査いたした上でお答えいたしたいと思います。
  188. 川島金次

    ○川島委員 民間における土地、建物の紹介業というものがありますが、それらの業者に対してはやはり一定の公定された手数料というものがあるわけです。それと政府財産の売り拂いに対する委託者への手数料、その点は民間と同じ率になつておるのですか。それをとも違つておるのですか。
  189. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 民間の方の手数料というものは、実際上の取扱いがなかなかはつきりいたしません。大体われわれの聞いておりますところでは、極端なのは両方から一割とる。これは話合いでやつておりますので、その点ははつきりいたしませんが、極端なものはそういうものもあるように聞いております。中には両方から百分の五ずつとるというのもあるように聞いておりますが、その点はつきりした計数は出ていないように思います。
  190. 川島金次

    ○川島委員 私もよく知りませんが、民間では多分公定としては百分の五くらいではないか。しかるに政府の委託者に対して取扱わせまする手数料は、二十四年度から改めたという手数料につきましても、民間の公定的な率をはるかに上まわるような感じがいたすのですが、それはどういう関係でそうしなければならないのか伺いたい。
  191. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 これは先ほどもございましたように、物納の小口物件が非常に多い、それからまたいろいろ民間では依頼の物件についてこれを引受けるとか、あるいは引受けないということは自由でありますが、政府の委託したものについては、とにかく一応これは委託しておりましたものについては、その会社がたびたび現在の委託者等につきまして、売拂いの促進を政府にかわつて相当やらなければならぬ、その点についてなかなか処分が困難なのであります。従つてある程度かようなものについて手数料の増加をいたしませんと、処分の促進ができない。特に物納財産につきましては、原則として二十五年度完了を目途としておりますので、特別にこういうようなことをやつておるわけであります。
  192. 川島金次

    ○川島委員 承るところによりますと、この二十三年度中に実施しておりました五分のほかの報奬金の問題について、その支出に若干の疑点があるというので、会計検査院でも論議になつておるという話を聞いたのですが、そういうことはありませんか。
  193. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 あるいは何か地方の財務部あたりで具体的な問題はあるかもしれませんが、ただいまのところ私のところに参つているものは何も聞いておりません。
  194. 川島金次

    ○川島委員 これはえげつないことをお伺いいたすわけでありますが、私のところへ来ておりまする一種の怪文書とでも言いますか、この文書によりますと、物納財産の委託業務をめぐつて、われわれといたしましてはまことに不愉快な事柄を文書の上から見ております。一例を上げますと、何か元大蔵参與官であつたある人が、特別の会社に横合いから入つてつて、その会社の社長となつて大蔵省に一種の顔をきかせて、たいへん強引な事柄をやつておる。しかもそれのみならず、その某氏をめぐつて省内に——私はこれを信じたくはないのでありますけれども、いろいろな風聞がそこから持ち上つておる。こういうことが私の手元に参りました怪文書の中に出ておるのでありますが、私はその事柄について、ここで何も事荒立てて申したくは決してございません。しかしながら最近大蔵省といわず各官庁におきまして、とかくの疑惑を持たれ、そのために司法権の発動を見るに至つたような事件が、枚挙にいとまのないような次第でありまして、綱紀の弛緩が一般国民に憂慮されておることは御存じの通りであります。そこで私どもは、この際強く局長に警告を発しておきたいのであります。この怪文書について読み上げてもよろしいのですが、そういうえげつないことは私たちはいたしたくありません。しかしながら、この文書のどこかは、ほんとうではないかという事柄も、私には感知できる点もあるのでありますけれども、その事柄は一応保留いたしまして、この物納財産をめぐつて、全国に何百ありまするか知りませんが、それぞれの委託業者がおつて、その委託業者と大蔵省内の若干の人たちとの間に、おもしろくない関係が結ばれ、そのためにその支拂いや業務の取扱いについて、特殊な便宜がはかられたりするというようなことがあつては、断じてならないと私は考えるものであります。私はこれに対する質問は以上で一応打切つておきますが、民間の一部において忌まわしい風聞を立てられておりますので、従来もしそういうことがあつたとすれば、今後局長としては責任をもつて大いに自粛自戒せられ、将来一部の民間の中から、かりそめにも大蔵官僚の一部にかようなことがあるのだなどと、一片の怪文書などでも世間に流布されることのないように、ぜひとも粛正をはかつていただきたいことを強く念願いたします。この売拂い財産問題は、ことに国民が血の涙をもつて国家に納めたものであります。その国家に納めました納税者の立場から見ますれば、実に泣くに泣かれぬ立場において納めた方も、さだめし多かろうと思います。その泣きの涙で納めたわが家の財産をめぐつて、そういうようなことがかりそめにもあつたといたしまするならば、さだめし国民は憤激の涙を流すに違いなかろうということも、私どもには理解できるのでありまして、どうぞそういうことのないように、ぜひとも今後の監督の十分なる徹底を強くこの際希望いたしまして、この問題をお尋ねすることを打切つておく次第であります。
  195. 吉田晴二

    吉田(晴)政府委員 ただいまいろいろ御忠告をいただきましたのでありますが、私もある一部の会社について会社の内紛があつて、何か問題があるやに聞いておるのであります。ただいまお話しの通りこれは十分粛正をいたしまして、今後こういう問題を起さぬようにことに最後にお話のありました物納財産につきましては、国有財産一般についても同じでありますが、政府の売拂額が適正を欠いて拂い下げられるということになりますと、それだけの分が税の負担になつて参りまするので、その点については十分注意をして、職務を執行いたしたいと思います。
  196. 前尾繁三郎

    前尾委員長代理 明日は午前十時より委員会を開くことといたしまして本日はこの程度で散会いたします。     午後五時十三分散会