○塚田
委員 いろいろお尋ねしたい点があるのでございますが、根本的な問題についてお尋ねしておきたいのは、今度の税法の
改正で、
政府のお
考えにな
つておると申しますか、あるいは税制
改正の基盤にな
つております日本
経済の全体に対する認識が、最近非常に
経済情勢がかわ
つて来たということによ
つて、私は大きな食い違いをひ
とつでかしておるのではないかというように
考えるのであります。一つは予算の見積りの問題でありまして、
政府がこの税法によ
つてお組みに
なつたあの税收入、一つはやはり個々の人たちの
所得がそんなふうでありますから、ぐんと
違つて来ておる、そういうように
考えるわけであります。それともう一つ、物品税の問題でありますが、きようはその物品税の問題が、そういう
経済情勢の変化で、どういうように実業界に作用しておるかということを、具体的な若干の数字でも
つて申し上げて、
政府がどういうようにお
考えにな
つておるか、あるいは再考していただく必要があるのではないか、こういうふうに実は
考えるのであります。私は物品税を納めておるある業種について、最近調べをいたしたのでありますが、調べました結果、今も
お話があつたのでありますが、私は今度の税制改革後の日本の税制の運用は、これは税法
通りに運用していただくということは、
主税局長の御答弁のように私も絶対に必要であると
考えておるし、またその方向にぜひ努力しなければならぬのでありますが、こういうような現実の事態に対して、税法
通り税を徴收したら、結局日本の産業をつぶしてしまうという結末になるであろう。それでは税法というものは、産業をつぶすというようなことを頭に置いて、そうなることがはつきりしてお
つても、なおそういう税法を置いてもいいものかどうかということになると、これはまつたく本末を転倒した話であります。税法は、産業が成り立つということでなければならぬと
考えます。こういう税法というものは、なかなかほう
つておけないというように実は
考えるのであります。そこで実は今これから申し上げるいろいろな数字は、具体的にある業種についての数字でありますけれ
ども、実はこの
調査をしまして、それを私が
委員会で取上げようとしたときに、それはぜひやめてほしいという業者からの切なる希望があつたのであります。なぜやめてほしいのかと言つたらば、それが徴税当局にわか
つて、今
政府で
考えておられるように
徹底的な徴税をされたら、私
どもは参
つてしまうからやめてほしいということであつた。
従つて私もその希望をいれて、業種は申し上げないでおきますが、どうかそういうおつもりでお聞き願いたい。これは大体零細業者が多い業種なんでありますが、その業種のうち、甲という部類に属する比較的大規模な人たちの場合でありますと、大体こういうようにな
つておるらしい。家族が五人ぐらい、資本金は五十万円くらい、それでその五十万円をどんなぐあいに使
つておるかと申しますと、流動資本として商品売掛金の分が二十万円、原材料が二十五万円くらい、加工賃が五万円くらい。こういう大体の内訳にな
つておるらしい。この場合には、主人が職工を二、三名使
つて、大体一箇月三十万円程度の売上げをする。この業種には、物品税が三割かか
つておる。そういたしますと、三十万円の売上げをしますと、物品税だけで九万円納めなければならぬはずの業種であります。
〔
委員長退席、
前尾委員長代理着席〕
ところがこの業種では、どんなにあれして三十万円売上げましても、五万円がかろうじてもうかる総
利益だという。そういたしますとその五万円を、どういうぐあいに現実に使
つておるかと申しますと、大体月に二万円程度の生活費がいる。五千円は経営費へどうしてもかかる。一万円はこれを物品税に充てておる。残りの一万五千円は
所得税のための積立金にしておる。こういうのです。そういたしますと、物品税だけで九万円も納めなければならぬ業種が、一万円しか物品税に予定していない。そこでこの業種に対する
政府——
政府と申しますか、第一線の
税務署当局の
所得の認定は、この業種に対しては大体二割ぐらいをや
つておるらしい。そうすると一万五千円を月月に積みました
所得税の積立金が年十八万円、そから物品税として納めなければならない九万円というような数字を今の税法に照らして
考えてみたら、これは全然問題にならない。物品税でも脱税がある。そうしてそれだけ脱税をして積み上げておる一万五千円の
所得税に対する積立て、それに二割も売上げに対して
所得認定をされたら問題にならないのであります。だから実際にはどういうぐあいにしてや
つておるかと申しますと、こういうように物品税の上に危險を冒しながら、しかも売上げの
申告というものを結局税法の半分程度しか出さない。三十万円程度売上げがあるのに、十五万円程度しか出さない。それでも十五万円で、年に百八十万円の売上げということになると、三十六万円の
所得を計上されて、結局十八万円の
所得税に対する積立てで辛うじて何とかして追つつく。そのかわり
地方税なんかは全然納められない、こういうような状態にな
つておる。ところが最近にな
つて、物品税のいろいろな摘発が相当きびしくな
つて参りましたので、ときどき業者の中でひつかかるものがある。ひつかか
つても、何だかんだと言いまして、税法
通り五倍脱税額全部にかけられたら、てんでやり切れませんから、ある程度のゆとりを見てもら
つて、二、三十万円程度のたいてい追加の
税金を納めて、かんべんしてもら
つておるということでありますが、そういうことが続いておる限りは、結局税制の合理化ということができないことは、私がここで申し上げるまでもない。同じような業種でも、もう少し規模の小さいものの場合ですと、大体月に二十万円くらいの売上げをしまして、これは職人を使わないで主人と子供くらいでや
つておりますから、
利益と加工賃に当るものと合わせて、四万円くらいの收入がある。生活費が一万八千円程度、経営費が三千円程度、物品税は七千円くらい、それに
納税の積立てを一万二千円、こういうぐあいにして辛うじてや
つておる。この場合は
従つて月に十一万円程度の
所得申告しか表面に出さない、こういう状態にな
つておるらしい。そんなふうでありますから結局だんだんとやれなくな
つて、この業種では非常に惡質な形というものが税法の観点からすると出て来ておる。それはみんな店を締めてしま
つて廃業届をして、そうして表面はかつぎ屋か何かそういうものをや
つておるような届をして、実際にはうちでこそこそと仕事をしておる。それでも何とか月に一万円や二万円くらいの收入ならば得られる。そういうものがどんどんと今度世の中に出て行きまして、また正規に
税金を納める人たちの非常な障害になる。脱税品が競争に出て来るものですから障害にな
つて、ますます困難をしておる、こういう状態なんです。そこでこの業種全体で一箇年間にどれくらい生産をして、どれくらい税を納めるべきなのか、どれくらい税が納ま
つているかという大体の推定をしてみますと、
昭和十七、八年ごろにはこの業種の年生産額は、税拔きで五千万円から五千五、六百万円ぐらいずつ物ができていたらしい。ですから今日の
物価からすれば相当大きな、おそらく百億近い程度の額になるのですが、ずつと生産数量も減
つておるらしいのです。今日年に十五、六億円から二十億円程度に同業者の調べでは製品ができておるだろう、生産されているだろうと言われておるのです。これの三〇%というとどうしても四億から六億ぐらいの物品税が納まらなければならないのに、ある
税務署管内——これは東京都の六割の生産を占める業種がこの
税務署管内にあるのでありまして、またその東京が全国の五割強の生産高を持
つておる品物なのでありますが、その
税務署管内におきましてたつた八百九十三万四千円、約九百万円しか
税金が納ま
つていない。この物品を全国で推定してみると、三千万円程度しか
税金が納ま
つていないと推定される。四億から六億くらいの
税金がなければならないのに、これくらいしか
税金が納ま
つていないということが推定されている。ですから最初の三十万円の売上げに対して、一万円の物品税しか見込んでいないという数字も、やはり統計の上にもほぼ近いものにな
つて現われて来ている。今日の物品税の持
つております作用が、そういうように非常に産業の根本を損う惡い作用を持つようにな
つておる。これはおそらく
地方税である附加価値税、固定
資産税についても同様な影響を持
つておるであろうということを、非常に心配しておるのであります。そこでこの前の国会で
政府が物品税について非常に御努力を願つたことはよく
承知しておりまして、あれ以上の物品税の軽減は今日の税法全般から見て、非常に困難であろうということは私はよく
承知しております。先般物品税について再考慮する
意思がないかと同僚の
委員からお尋ねしたときに、
大蔵大臣はそういう
意思は毛頭ないと御答弁されたのでありますが、こういう事態をほう
つておいて、ただ予算とかいうものにとらわれて、これを救済しないことは政治としては実に惡いやり方だ、こういうように私は
考えております。おそらく
政府側におきましてもいろいろな資料なんぞもお持ちでありましようから、若干そういう事態に近いものが出ておることは御
承知なんであろうと思うのでありますが、私
どもはそういう
意味において、ぜひこの機会にもう一応物品税に対して、今日の変化した
経済状態を頭に置いて、再考慮をお願いすることができないかどうかということを真劍に
考えておるわけです。もし今度の物品税に対して再考慮していただけるとするならば、私
どもは零細なる企業者がつく
つております品物は、その製造業者が零細であるという理由だけで、十分に物品税をはずしていだたく理由があるのではないか、こういうふうに
考えておるのであります。
以上長々と申し上げましたけれ
ども、幾らか具体的な数字を申し上げませんと、抽象論ではこの問題は片づかない程度にまで行
つておると
考えますから、少し長々と申し上げたのでありますが、そういう事情を頭に置いて、
主税局長がどういうぐあいにお
考えになるかをお尋ねしたいと思います。