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1950-03-08 第7回国会 衆議院 大蔵委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月八日(水曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 大上  司君 理事 北澤 直吉君  理事 前尾繁三郎君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 河田 賢治君 理事 内藤 友明君       岡野 清豪君    奧村又十郎君       甲木  保君    佐久間 徹君       高間 松吉君    田中 啓一君       塚田十一郎君    苫米地英俊君       西村 直己君    三宅 則義君       田中織之進君    宮腰 喜助君       木村  榮君    竹村奈良一君  出席政府委員         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (理財局見返資         金課長)    大島 寛一君         大蔵事務官         (管財局長)  吉田 晴二君         国税庁長官   高橋  衛君  委員外出席者         專  門  員 黒田 久太君         專  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 三月八日  輸出信用保險特別会計法案内閣提出第九二  号)  保險業法等の一部を改正する法律案内閣提出  第九三号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出(第  四七号)  有価証券移転税法を廃止する法律案内閣提出  第四八号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五一号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五二号)  富裕税法案内閣提出第五三号)  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五四号)  資産再評価法案内閣提出第八三号)  相続税法案内閣提出第八四号)  所得税法等改正に伴う関係法令の整理に関す  る法律案内閣提出第八五号)     ―――――――――――――
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  九税法案一括議題として、前回に引続き質疑を継続いたします。大上司君。
  3. 大上司

    大上委員 二、三質問をいたします。前回委員会において、資料要求の場合にちよつと触れておいたのでありますけれども、今度の所得税法の一部を改正する法律案につきまして、あるいはそのほかの五法律案提案説明理由書によりますと、今次のこの税法改正相当長期間これを持続する。すなわちこの中には、今回の税制改正税制全般にわたる改正で、一旦改正された税制は今後相当期間持続せしめる前提のもとに立案した、このように提案理由に述べておりますが、もちろん今度のシャウプ勧告案によりますわが国租税体系というものが、これが機構の面まで及ぼして相当長期間にわたるということは、概念時には了とするのでありますが、私たち考えといたしましては、税それ自体がすなわち国民所得から生れるのであつて、今次制定せられつつあるところの税法と並行して、国民所得がそのように変動のないものであろうかどうかという立法趣旨を伺いたいと思います。なお補足いたしますと、この税と国民所得とは、論をまつまでもなく密接な関係がある。だから国民所得前提としてお考えなつ立案であるのか、あるいは法律によつて国民所得をそのまま持続せしめ得るものであるのか、この二点をまず伺いたいのであります。
  4. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回の税制につきましては、今大上委員が御指摘通り、なるべく長期に持続し得るような税の制度考えるということを前提にいたしております。それは結局におきまして、今回は非常に税の制度と申しますか、体系と申しますか、構成と申しますか、そういうことについて従来と比べますと、相当大きな改革を加えておるのでありますが、長期に安定した税制という場合におきましては、主としてそういう面から私ども考えておるのであります。また所得税制度の中等におきましても、それぞれ相当詳細な点を設けまして、各人の担税力に応ずるような課税システムを採用いたしておるわけでありまするが、そういう点につきましてはなるべく長く持続し得るような考え方で、立案いたしておる次第であります。ただ税率とか控除という問題は、若干そういう問題と別個の問題になりまして、これはやはりそのときの財政の需要それから国民所得変動等と関連しまして、そのときどきにおきまして適切な率をきめるということに行くべきものと考える次第であります。物価事情生産事情国民所得事情等変動がありますれば、これはもちろんのこと税率控除等につきましてもそのときの状態に応じまして、妥当な修正を加えて行くということは当然であろうかと思います。しこうして長期に安定した税制と申しますのは、税制のコンストラクションと言いますか、システムと申しますか、そういう点につきまして特にそういう角度を強調いたしておる次第であります。ことに国税府県税市町村税と、今回はつきり税源を配分いたしておりまするが、そういう問題はことにたびたび変事すべきではないか。それから直接税の場合におきましても、たとえば法人課税根本原則を修正いたしておりまするが、そういう点もあまりしよつちゆうかえるのはいかであろうか。主として税のシステムと申しますか構成と申しますか、そういう面につきまして特にさような点を強調いたしておる次第であります。国民所得変動物価事情生産事情等がかわりました場合におきまして、税率控除等調整を情勢の変化に応じましてやつて行くということは、これは私どもとしましては当然なすべきことではなかろうかと考えるのでございます。なお国民所得につきましては、私どもはしよつちゆうその国民所得がどういうふうに動いて行きつつあるか、分配の状況がどういう姿になつておるかということは、もちろん立案の際におきまして重要な検討資料にいたしておるのであります。そういう点につきましてもいろいろな角度から検討を加えまして、そのときとして妥当な税制を樹立することに努めておる次第であります。
  5. 大上司

    大上委員 前委員とあるいは重複しておるかとも思うのでありまするが、さすればこの税法を施行するにつきまして、いわゆる国民租税負担基礎條件たるところの国民所得を、安本案その他によつて大体の数字は承知しておるのでございますが、あらためて主税局長に本法案立法するにあたりまして、大蔵当局国民所得が大体どの程度にあるか。それからいま一つは大きくわけまして、これを産業別に申しまして、まず第一に中小企業国民所得が平均どのくらいになつておるか。農業所得、それから一般工業所得これを部わけいたしますと、紡績あるいは機械器具、造船というようにわかれまして非常に小さくなりますが、大体三大種目にわたつてお尋ねいたします。
  6. 平田敬一郎

    平田政府委員 国民所得推計仕事は、経済安定本部でいたしておるのであります。大体この経済安定本部国民所得研究には、主税局関係者もしじゆう参加させまして、できるだけ相互の研究の材料にするような考え方仕事を進めておるのであります。それによりますると、大体これは資料としてお配りしてあるかと思いますが、二十五年度におきましては二十四年度に比べまして、総額において二十四年度が三兆七百七十億が、二十五年度におきましては三兆二千五百二十億ぐらいに増加する。それから内訳は二十四年度はまず農業所得は五千九百六十一億ですが、それが二十五年度におきましては六千四百十三億円程度増加する。それから営業所得は二十四年度が九千二百十五億が、二十五年度においては一兆三百三十五億程度増加する。個人の賃貸利子所得等は、二十四年度が三百九十八億に対しまして、二十五年度は四百四十九億、大まかに言つてさようなところで、その他全体を合計いたしまして、先ほどのような増加をする見込みであります。これは物価水準は、大体九月の水準が横ばいという前提で計算しておりますが、主としては生産増加によりまして国民所得のふえる部分が大部分であります。従いまして今私どもがかような推計を立てておりますような状況に、国民所得が動いて参ります場合におきましては、今までの物価水準の單純な騰貴によりまする国民所得の名目的な増加と違いまして、生産増加による実際の国民所得の増でありますから、生産がふえるということが予想通り参りまするならば、あるいはまた政府施策としましては、そうふえるようにおそらくあらゆる施策を講じなければならないと思いますが、そういうことに相なりますれば、実質的に国民所得がふえて行く。従いましてそういう見地から申しますると、担税力増加するということも言い得るのじやなかろうかと思います。大体大まかなところはさようなところで、また小さいところはさらに御質問によつてお答えいたします。
  7. 大上司

    大上委員 その次にお尋ねしたい点は、前国会と思いますが、労農党の石野君が、本会議において管理通貨安定通貨の問題を出しておつた場合に、大蔵大臣は、現在は管理通貨なりということを言明したように心得ております。従つてどもも現在の通貨体制というものは管理通貨であるというように考えておりますが、さてその次に、もしも現在の管理通貨より、諸般事情によりまして安定通貨に引きもどした場合に、ただちにこれに応ずるところの徴收額と言いますか、これは大体において現金で納めるのが原則であり、物納というのは変則的なものであります。従つて大体は普通の通貨をもつて納付するようになれば、これが急に切りかえできた場合に、もちろん税の停止ということは、財政面より言わずと知れた不可能であります。そういう場合の体制主税局ではどのように考えておられますか。そういう通貨の切りかえあるいはその他諸般事情によつて現在の通貨が変更せられた場合に、税法上はどういう扱いをなされますか。
  8. 平田敬一郎

    平田政府委員 現在のところ政府としましては、通貨の切りかえ等のことを考えておりませんので、今申し上げるだけの準備はございません。
  9. 大上司

    大上委員 ではもう一つお尋ねいたしまするが、現在考えておられぬことは大体了承するのであります。しかしこれが急激に来た場合には、何らか税法上のいわゆる国税徴收法改正をせられなければならぬと思いますが、全然主税局としてはお考えになつておらないことと今の御趣旨でわかりましたが、それではあまりにも準備が不行き届きでないか。もちろん経済は動くのであります。従つて国民所得変動いたします。だからそういうものを、この税法立法趣旨が、相当長期にわたり改正せないという意思表示をなさつておる限り、もちろんその調整はさいぜんの扶養控除基礎控除等によつて調整して行くことは了承したのですが、少し考え方があまり場当り過ぎではないだろうかということを思われるのですが、これについてさらに局長のお考えを問いみたいと思います。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいま申し上げた通りでありまして、そういう問題は目下政府においては取上げておりませんので、問題が起きた場合におきまして、もしも起きるようなことになりました場合、その際に考えても十分間に合うと考えます。しかしそういうことは目下全然考えておりません。
  11. 大上司

    大上委員 ではその問題はそれでよくわかりました。さて次に根本的な問題でありますが、よく税務行政の改善をはかるという言葉を耳にするのでありますが、もつともはかなければならぬとは思います。その中で前国会にも私質問したのでありまするが、日本の租税終戰後、過去においては賦課税制度であつたが、申告制度なつた。ところがその申告制度を実施するにあたつて納税者それ自体扱いについてもなれておらぬためか、過去におきましてわれわれが徴税目標と言い、あるいは最後において努力目標と伺つておりまするが、各国税局並びに税務署で割当をした。従つてこれが形態として生れたのは例の更正決定でありますが、そうなりますと今度新法を使いまして、いわゆる青色申告制度というものが採用せられておりまするが、これにつきましても非常に疑義があります。たとえばこの申告制度を実施したにつきましても、役所といいますか、調査官の見方によりましてそれが狙う場合も、おのずから税法を見せてもらつておりますと、やはり更生決定というものにあるように思います。従つてこの申告制度賦課制度の問題でこの青色申告をどの程度主税局といたしましては、すなわち政府といたしましては認められますか、その点を伺いたいと思います。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 更正決定は別に目標制度と直接の関係があるわけではございませんので、これは申告税務署調査額と違う場合において、税務署は正しいと認めるところで更正決定を行うのであります。従つてこの制度は将来ももちろん制度としては残るわけであります。ただ更正決定をやる場合におきまして、極力実際をよく調べて更正決定をする。これが所得税の本旨でございますから、将来においては特にさような方向に努力いたしたいと考えております。なかんずく青色申告を提出いたしました納税義務者の場合においては、たびたび申し上げておりますようにその帳簿書類税務署がよく調べまして、なぜその帳簿書類に基いて御本人が申告なさつた事項政府調査した結果と違うか、その違う理由更正決定に付記しましてそうして決定をやる。もちろん事前によく話をしまして、極力申告で納めてもらうようにするということは必要かと思いまするが、建前といたしましてはさようなことに相なるのであります。従いまして、大体今回の趣旨に従いまして帳簿が正しく記載され、これに基いて申告が行われておる場合においては、申告通り更正決定はしなくても済む。しかし帳面の記載が事実に即していない場合、あるいはその記載に基きまする所得計算税法原則に即しないで申告されている、そういう場合においてはその理由をはつきりいたしまして更正決定をする、こういうことに相なろうと思います。希望といたしましてはできるだけ多くが申告できるような方向に行きますように、私どもとしましても鋭意努めたい、かように考えております。
  13. 大上司

    大上委員 大体わかつたのですが、さらに、では一番根本問題であろうと思いますが、所得税法條文の中に、所得とは総收入から総支出金を差引いたその残額を所得と言うということを、定義せられておるように心得ます。従つてその際において、既往でもそうでありますが、納税者側から申しますると、どうしても自分の方としてはこれだけ経費がかかつておる、あるいはこれは当然経費的な支出である、すなわち損金処分にすべきものであると言うておりますが、調査官によりますとこれは認められない。たとえば一例を申し上げますと、これは少しくこまかくなりまするが、大きなふろ屋さんがある。そのふろのボイラーがこわれた。従つてこれは大修繕になつて来た。その事業年度間における所得は、これだけ経費でかかつておるのだから、たとえばこれは当然利益から差引いてもらえるもの、すなわち損金処分としてやつてもらえる、こう考えておりますが、調べられた人はそれだけは経費に見られない。すなわちここに問題は償却という問題と、あるいは当期において不可抗力によつたところのその他の諸掛というような面を経費面で認めてくれない。ここに大きな相違が出て来るのではないかと思います。従つて善良なるといいますか、善意に解釈してこれを法人に適用した場合において、その経理担当者はこれは当然会社損金処分であるべきだというので、勘定科目を立てまして差引いたしましたところが、役所の調べによつてこれが否認せられたということになりますと、国民それ自体が善良に計算して出すという場合について、役所と大いに見解の開きがある。ここにおいて更正決定をしなければならぬということにつきましては、事前においてこれだけの経費は認めてやる。これだけのものは損金で落すことはできない。たとえば過去においてははつきりしておりましたが、この所得税は益金に入れて行く。ところが営業税は、これは同じ税金であつて、しかも同じ公課であるけれども損金として認める。こういう点をもつとはつきりした基準をお示しになる意向があるかないかお尋ねいたします。
  14. 平田敬一郎

    平田政府委員 所得税にしろ法人税にしろ、御指摘のように所得をどういうふうに見るかという問題が実は一番むずかしい。しかも重要な問題でありまして、この点についてはそれぞれ所得税法法人税法におきまして大原則は示しておるのであります。  それから今お話税金損金にするかしないかというような問題につきましては、所得税その他の――今度は住民税もそうでありますが、純然たる課税損金に見ない。しかし従来の常業税あるいは今までの事業税、今度の附加価値税、こういうものは当然損金に見るわけでありますが、そういう基本的の問題につきましては、税法等にも相当規定があるわけであります。しかしながらこれは非常に問題が多いので、もちろん結局においてすべての規定を網羅して規定することは困難でございますが、できる限り税法並びにそれに基く施行規則施行細則等でまず明らかにし、足らざるところは国税庁解釈訓令等に基いてはつきりいたさせまして、納税者にこれを周知せしむるように努めたいと考えております。ただ具体問題になつて参りますと、現実にそういう経費を出したかどうか、この事実の認定一つ問題だろうと思います。それからいま一つは、そういうある一定の金を出しておる場合において、それを損金なり必要経費に見るべきか見るべきでないか、やはりこの解釈の差が出て来る。相当大きな問題になりますと、その差はなかなか困難な問題がありまして、場合によりましたら訴訟等によつて、具体的なケースに対する解釈をきめて行くというような必要も出て来るかと思います。わが国におきましても行政裁判所判例等がそういう問題について多数ありますことは、大上委員の御承知通りでございますが、今後さような点につきましてはなるべく通牒の趣旨等を公開し、それからどうしても見解が一致しない場合においては、やはり裁判等によりまして判決をつくりまして、それによつてお互いに準拠して行くような方向に行きますのが正しい解決の道ではなかろうか。もちろん政府におきましても法の趣旨に従いまして、できる阪り実際に即し、かつ適正な解釈を下すことに努めるつもりでおります。
  15. 大上司

    大上委員 大体わかつたのですが、そういたしますと、法文の中にないところの、今言いました事実の認定とかあるいは解釈の差は、裁判におまかせになるということはよくわかりますし、その機構が確立せられることもわかつておりますが、そうなりますと、その認定官並びにその解釈の係官の調査能力というものが、国民の生活の上においていろいろな悲劇を生むであろうと思います。従つて今度の昭和二十五年度の予算の説明書の中に、国税局関係新規採用一千五百人の相当すべき学歴というものも出ておりますが、これも了承いたします。ところがたまたま私たち考えるのは、この判定あるいは今度の税法から見ておりますと円満に納得行くところの納税ではなくして、あるいは検事が――すなわち租税関係検事がたくさんおりますが、こういう面についてあるいは国民はその事犯的な問題は別といたしまして、非常に恐ろしいと申しますか、裁判がこわくて泣く泣く納めておるという事実をちよいちよい見るのであります。さてその際においてこの租税関係を扱つておる検事というものは、われわれから見ますとあまりにも貧弱過ぎはしないか。たとえば法理論的な解釈は別問題といたしまして、特に税の関係会計学あるいは財政その他簿記等調査する上においては、少し能力が足らぬような気がいたします。従つてこれについては過去税関係で非常に苦労して来たところの人間、すなわち熟練の士を検事として配属する意思ありやいなや。すなわち現在の機構をもつてしてはやや不満な点がありますので、この一番むずかしい事実の認定あるいは解釈の差について熟練の士、すなわち主税官吏中からこれを選定して――現在は副検事という制度を設けておりますが、これをやはり一歩上げて検事というようなものにする意思ありやいなや。もしありといたします場合にはこれに支障があります。たとえば公務員法におきまして職階という問題も出て参ろうと思いますが、この点をお尋ねしたいと思います。
  16. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお尋ねは法務府の方からお答えした方が適当かと思いますが、感想を申し上げておきますと、租税犯に関する刑事事件は、御承知通り実際問題として事件になりましたのがごく最近でありまして、従いまして検事の方々が十分租税法規等に精通しておられなかつたということは、確かに若干あつたろうと思います。でありますが、最近におきましては、おそらく検事の側におきましてもいろいろ研究し勉強され、あるいは具体的計数等についても、経験を積んで来ておられるようでありますから、私はさような点につきましては、急速によくなるのではないかと考えます。もちろん税務の非常に込み入つた取扱い等につきましては、税務官庁としましては十分検察当局と連絡をとりまして、遺憾なきを期するつもりであります。副検事等には、若干税務経験のある者を採用していただきまして、でき得る限り検察庁の仕事を助けるような方向でやつておりますが、今後におきましてはそういう点につきましては、なれて来るにつれまして、急速に改善されるものと期待いたしておる次第であります。
  17. 川野芳滿

    川野委員長 大上君に申し上げますが、午後法務総裁が当委員会に来ることになつておりますので、その問題はあらためて質問していただきたいと思います。
  18. 大上司

    大上委員 それでは質問をかえます。前国会におきまして、賦課課税と違う申告納税制度を設けまして、従つて第三者通報制度というものが現在規定してあります。従つてこれに要する経費も見込んでおられますけれども、この制度の実施に伴いまして、たとえば第三者通報制によりまして、投書を受けた税務官すなわち收税官調査して、これは何ら不正がなかつたという場合に、相当長期間しかも相当調査を受けて、会社損害を生じた場合があると仮定します。また事実あることを見受けております。その際において一方的な第三者通報制度を重視して、これがために生じたところの会社損害は、当然賠償してやる規定があるべきはずだと思います。ところが見ておりますと、そういう実例を見受けておりませんが、この制度を存続せしめる上においては、これによつて受けた会社損害を、何らかの方法をもつて弁償してやらなければいけない、このように考えますが、これに対する当局の御意見を伺いたいと思います。
  19. 平田敬一郎

    平田政府委員 第三者通報制度は、今お話のように申告課税原則に従いまして、かような制度を設けて今日まで運用いたしておるのであります。それによりまして、相当脱税事件を発見したような例もあるようであります。と同時に、必ずしも的確な通報ではなくて、所期の効果が現われなかつたものもあるようであります。この点につきましては、実は所得税法でも第七十三條に規定がありまして、他人の所得に対しまして、政府に対し五十四條に規定する事実に関する虚偽報告をなした者は、三年以下の懲役または一万円以下の罰金に処すということになつておりまして、通報される方におきましてもやはりよほど事実を確かめた上で、あるいは知つている範囲内におきまして確実な場合において通報してもらう。虚偽報告をしたような場合におきましては、それぞれ税法規定従つて制裁がございますので、そういうものによつていたずら会社等損害がないように努めるのが、法律趣旨であることを申し上げておきます。
  20. 大上司

    大上委員 私のお尋ねしたのはそうでなくして、なるほど虚偽申告をした者についての法的な国家の制裁はよく承知しておりますが、それに乘つて国税局すなわち政府当局が調べてみて、相手に事実がなかつたという場合に、その調べられたことによつて莫大なる損害をした場合に、国家が補償してやる義務があるべきではないかという点をお尋ねしておるのでございます。
  21. 平田敬一郎

    平田政府委員 政府調査権は、何もこういう一つ通報がない場合におきましても、必要がある場合には別に調査ができるわけでありまして、調査の方法等については、もちろん納税義務者の利害等に最小限度の影響しか與えない、なるべく影響を與えないような方法で調査すべきことは、これは一般原則として当然でございます。従いまして特にこの通報に基いて調査したために、損害を生ずるという問題は、私ども特別に考慮するのはいかがであろうか、かように考えております。
  22. 大上司

    大上委員 なるほど通報制に基かなくとも調査権限があることも、これも万々承知しております。ところが第三者通報制度ができて、それによつて調査を実施するということを收税官がはつきり言明した場合、そういう事実がなかつたならば当然補償してやるべきである。そういう制度があつて、当路者によつて調査を受けた場合には、明らかに一般の調査権限とは違うのであります。たとえば確定申告を出しまして、当然成規の調査を受けてさらに調査を受けた。それは第三者通報制度の実施されているためだというのは、これは社会通念でもわかる。その際において、会社が何ら不正な事実がないという場合に、しかもこれを見ておりますと帳面の差押え、ことによると小切手も切れない、あるいは常業も一時停止しなければならぬというような実例は、これは多々あつたと思います。そういうような場合に、特殊なものにそいての国家的な補償してやることを考えておられないかということを、さらにお尋ねします。
  23. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお話のような場合におきましては、先ほども申しましたように、虚偽の事実を報告した者に該当するものと思います。そういうものがはつきりいますれば、その規定に基きまして告発いたしまして、そういうことがないように努めることが一番大事じやないか、かように考えております。
  24. 大上司

    大上委員 あまりしつこいようですが、もう一点お尋ねいたします。なるほど虚偽通報をした者についての制裁はよくわかるのですが、そういう場合に対して、いわゆる国家がその調査したものに対して補償してやる義務があるようにわれわれは考えますが、それについて何らかお考えはございませんか。
  25. 平田敬一郎

    平田政府委員 国家の補償という問題は、特別に第三者通報によつてつた場合には補償する、そうでない場合には補償しないという問題ではないと思うのでありまして、公務員の一般の規定に従いまして、責任を負うべき場合におきましては、それぞれ国家が賠償の責に任ずる場合もございますが、それは一般原則従つて行うべきものでありまして、特に通報制度に基いてやつたからという問題ではなかろうかと思います。あくまでもこれはやはり報告する人に対して、虚偽報告の場合におきましては責任をただしまして、無責任な報告が行われないように努めるのが、解決の道ではなかろうかと考えておる次第であります。
  26. 川野芳滿

    川野委員長 竹村奈良一君。
  27. 竹村奈良一

    ○竹村委員 ちよつとお尋ねいたしたいのですが、資料をいただきました中で、税制改革それから補給金等の打切りによる減税の資料を、大蔵省からこの間もらつたのですが、これによりますと大体十五万円の所得で、家族が夫婦と子供二人のものでは、二十五年度は四・八六%が減税になる、こうなつておるのですが、この最初の表の一番しまいに、但しこれは資産再評価によるところの地代、家賃等の値上りは計算していない。しかし計算していないが、大体地方の寄付金において三百億ほど減少するから大したことはない、こういうふうに説明がついておるのでございますが、大体地代、家賃の再評価によつて、どれだけ現在の実賃等が上るかということをちよつとお聞きしたいのです。
  28. 平田敬一郎

    平田政府委員 先般も申し上げましたように、再評価によりまして物価をどの程度改訂するかということは、目下物価庁が各種の見地から検討中でありまして、でき得る限り物価の一般水準に及ぼさない範囲内におきまして、改訂をやるという方針であります。ただ具体的な問題は個別的によく調べた上で結論を出さないと、適正を欠きますので、目下物価庁におきましてその問題については愼重に考究中でございます。何しろ実行いたしますのは、再評価は少し遅れますので、十分愼重に検討しましても間に合うのではなかろうかと思つております。ただ固定資産税の値上りは四月からすぐ実行されますので、この分はただちにおそらく告示しまして、改訂されるのではなかろうかと思つております。その分ははつきり見込んでおるわけであります。
  29. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そうするとその見込んでおられるのは、どのくらい見込んでおられるのでありますか。
  30. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の表の二枚目に書いてありますが、それに現行と改正案との比を見ております。すなわち現在月額で地租と家屋税を含めまして、六十八円ほどの負担になつておる。税額で年額にいたしますと、従つて七百四、五十円くらいの負担になつておるのが、改正後におきましては約二倍半程度になるわけでありまして、百七十九円すなわち年ですと千九百円程度の負担になる。その負担の増は全部貸主の方に転嫁される、こういう前提で計算いたしておるのであります。
  31. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そうすると、一枚目の表の一番しまいに書かれてあるところの一応四・八六%の減税というものは、この二枚目の表の百七十九円値上りする分は含んでいないという意味ですね。
  32. 平田敬一郎

    平田政府委員 四・八六%の計算に際しましては、再評価によります物価の騰貴は見ておりません。これは先般も申しましたように、私どもは今の情勢ですと、全体としまして毎評価による原価の高騰と申しますか、それは今の利潤のうちに、あるいは今後における合理化等によつて吸收できる見通しを持つておるのでありまするが、例外的には確かに今の公定価格等に対しましても、改訂を加える必要がある。それにつきましては、これは個々に非常に事情が違いますので個々の事情をよく検討しまして、ひとつそれぞれ妥当な結論を下すようにいたしたい、こういう考えであります。
  33. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そこで大体それに続きまして、物価のいろいろな点、たとえば三枚目におきましては、間接税の値下りによるいろいろの表が出ておる。あるいはその次にはいろいろな生活品の値下り等を見込んで、総体的にこういうふうに出された。そういう表が出ておるのでありますが、そこでひとつお聞きしたいのは、こういうような間接税の値下り、あるいは物価の値上げ等も見ておられるが、いろいろな物価に対しては、大体その生活必需品全体を考えてみられたのか。あるいは今日の配給品だけを問題にして、こういうような表が出されておるのか。それをお聞きしたい。
  34. 平田敬一郎

    平田政府委員 公定価格の引上げによります家計費の負担の増は、大体配給品をもとにして考えております。最近の情勢はマル公を上げても、やみ価格はむしろ下りぎみでありまして、実際は私ども今後の物価の見通しといたしましては、これで見ます場合は若干是正せられたと申しますか、下りぎみに行くのではなかろうかと思つております。これはそれぞれマル公の改訂によりまして、配給品の値上りになる分はフルに見ているという計算でございます。
  35. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは大体そういう配給品のマル公を見ておる。あるいはもちろんマル公よりも値が下つておるのがあるから、あるいはこれよりも下るかもしれぬ、こういうお話でございます。そこでひとつ実際問題としてお聞きしたいのでございますが、たとえば今日家を借りるにしても、大体一間を借りるにも二万円くらいの権利金がいる。従つてやはりそういうものを権利金を出すにも、出す人間が持つているのなら別ですけれども、一応借りるにも、それの利子なんかも普通の利子では借りられないというような場合も、やつぱり生計費の中に私は相当部分を占めると思いますので、そういうような点は計算に入れてあるかどうか。
  36. 平田敬一郎

    平田政府委員 この表は先般も申し上げましたように現状との比較表であります。しかも標準的な場合を計算いたしておるのであります。例外的な場合でございますと、この表に必ずしも当てはまらないいろいろなケースがあると思います。すでに多額の権利金を拂つて家に入つておるような方は、現在でも非常な負担を受けておるわけでありまして、その権利金が今後において上るか上らないかということによつて、問題はそういう角度から検討しなければならないのではないかと思いますが、権利金がさらに一層上るというようなことは、今のやみ物価の状況等からいたしまして、いかがであろうかと思います。むしろ権利金なんかは今まで不当に上り過ぎてしまつておりまして、今後におきましては、あまり上らないのではないかというふうに私ども考えておるのであります。
  37. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それではもう一点お願いしたいのですが、もちろん権利金の方はそういうふうでありますが、しかしそうなりますと、これは年に十五万円の所得があつて、夫婦と子供が二人あるというところを一応標準として出されているので、これでお伺いしているのでありますが、しかしこれは全体の標準でありまして、そういう権利金を出している人、あるいはその他いろいろなものとは合わないとおつしやいましたが、そういたしますと勤労者の所得、たとえば税金の面においてはこの表を大体標準として出すのかもしれませんが、実際問題とは非常に違う。たとえば最近新聞紙上にも非常によく出ている勤労者の賃金の遅配、欠配等がありました場合に、やはりその人たちは一箇月も二箇月も遅配があれば、その間友人か親戚で借りて来て生活を補給しなければならぬ。それはただで貸してもらう場合ももちろんありますけれども、その生活費を借りましたならば、実質的にはいろいろな形で――利子というわけではないが、それに相当するものがやはり出費になつて来るのであります。そういう点などもこの中には計算されていないのですね。
  38. 平田敬一郎

    平田政府委員 この計算は大体において平均のところを計算せられているのであります。従いまして特別な事情のない人の場合におきましては、大体この前後に行くのではないかと思いますが、非常に異例なケースに該当する人の場合は、もちろんこれより非常に下る人もあるのでございましようし、あるいはそれほど下らぬという人もいろいろあると思います。しかし大体の大勢はこの表の示すところに行くのではないかと考えております。
  39. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういたしますと大体わかつて来たのですが、これは標準であつて、表の上では四・何ぼというものが減税になると出ておりますけれども、しかしそれは賃金も遅配なくもらい、いろいろ貯蓄もあつて、生活するのには安い物をよつて買えるというような人には、標準にあるような大体減税のような形になるけれども、しかし実際には遅配で生活費を一箇月も二箇月も人に借りなければならぬ。家賃も何とかかんとか言つてやみで少し上げなければならぬという人には、全体の税率の上からは減るけれども、生活費全体から見るならば下らぬということになるのじやないですか。
  40. 平田敬一郎

    平田政府委員 全体から見るならば下るのです。ただ例外的に今お話のようにこの表の示すところと違つた人がいるだろう。その人の中にはこの表の示すよりもより一層減る人もいるかもしれないし、これほど減らない人もいるかもしれない。それはむしろ例外だと考えているのであります。大体の傾向としましては、むしろ私どもとしましてはこの前後におちつくのではないかと見ております。
  41. 竹村奈良一

    ○竹村委員 これは議論になるのであまり申し上げてもしようがないと思いますけれども、そういたしますと、実際問題としては中小企業に働いている人は賃金遅配が多い。そういう面も計算に入れられていない。しかしそれが特殊なほんとうに安全な人だけを大蔵省は目標にしておる、こういうように考えるのですが、ほんとうに安全な人にはこの通りだけれども、安全でない人にはそういう特殊的なと言われますけれども、現在ではそれが非常に多いわけです。そこが問題なのです。これは議論になりますから別にいたします。  もう一つお聞きしたいのは、そういたしますと現在の年間十五万円というものが非常に上の部類になるのです。この所得は今日の賃金ベースから言うと非常に上になるのですが、それは別といたしまして、この十五万円で夫婦と子供二人、つまり四人がこれだけの税金を拂う。そしてこれは従来でも生活できなかつた、それ以外のいろいろな雑多な要素で生活して来たと思うのです。これが一応表の上で減税になる、こう言われますけれども、やはり問題になるのは生活だと思います。私は生活と税金とはこれはやはり切り離せないと思いますけれども、生活と税金は別にして、生活は生活、生活ができてもできぬでも税金税金だというこの根本方針はやはりかわらないのですか、それをひとつお伺いしたい。
  42. 平田敬一郎

    平田政府委員 税金が生活に密接な関係がありますので、こういう表をつくりましてお示ししておるわけでありまして、私ども決して生活関係と無関係に、いろいろな立案をいたしておるわけではございません。そういたしまして先般申し上げましたように、現状が黒字か赤字かというその全体的な’とにつきましては、なかなか判断いたしがたいので、今までと比べまして改正後においてどうなるかというのが比較的はつきりできますから、この表をお示しいたしたのであります。そういう点から、行きますと、普通の場合は――おそらく数から行きますと大部分と思いますが、その場合におきましては、大体におきましてこの表の示す傾向になるのではないかと思います。それから十五万円は相当高いじやないかというお話がありますので、この表にはそれぞれ十二万円の場合あるいは十万円の場合、いろいろな場合をいろいろな方法で計算いたしてお示ししておる次第でございます。
  43. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは表を離れてもう一つお聞きしたいのですが、大体基礎控除を現在二万五千円に引上げられた。基礎控除は前に比べて一千円か二引上げられて二万五千円にした、こういうことになつておるのでございますが、この二万五千円が生活と関係があるとすれば、大体二万五千円では生活ができないと私は考えるのですが、これは一体どうお考えになつておるのですか。
  44. 平田敬一郎

    平田政府委員 所得税はおそらく基礎控除扶養控除税率そういうものを一体として考えまして、各所得者に対してこの程度の負担がどうであろうかということで、税率なり控除を定めておるのであります。従いまして私ども現在の財政事情のもとにおきましては、この程度控除をするのが一番妥当ではないか。将来財政事情が少しゆるやかになりますれば、これは前々申し上げておりますように、さらに控除の引上げ税率の引下げ等を行うのにやぶさかでない。私はやはりそういう方向で行くのがいいと思いますが、今の実際の状況から申しますると、この程度でいいのじやなかろうか、こういう感じがいたします。なお今回の税法は、現在の税法がきまりました昭和二十三年の七月に比べますと、消費者の物価指数等は二割強の高さだけふえておりますが、今回の所得税法改正は、基礎控除は六割以上上つておりまするし、扶養控除も平均しますと七制以上上つております。それぞれ控除相当引上げられておりまして、最近までの物価の動き等と比べまして、今回の改正は私ども相当進んでいる。單純に物価の動きだけにスライドしているというよりも、さらに一層越えました引上げをやつておるということが言えるかと思います。大体そういういろいろな角度から考えまして、今回の案を立案したような次第であります。
  45. 竹村奈良一

    ○竹村委員 今度の農家のことで二、三お聞きしたいのですが、大体従来農家に対しまして所得を算定しますのは、各税務署等におきましては、大体農家のやみ売りというものを計算に入れて、これの所得決定をされておるのでございます。これに対しまして、今後というよりもむしろ現在は、外国食糧等の関係から御承知のように農家のやみがなくなつておる。こういう場合におきましては、今度の農家の所得の査定にあたりましては、こういう従来よりもやみのなくなつている分は、やはり所得の減少として計算されて査定されたのだと思いますが、この点どうですか。
  46. 平田敬一郎

    平田政府委員 従来からいわゆるやみと申しますか、そのやみもほんとに告発されまして沒收された場合におきましては、これは所得に見ません。沒收される前におきましてはやみでありますか、何でありますか、はつきりしませんが、要するに沒收に対しては課税しない方針をとつてつたわけであります。ただ実際問題としてはなかなか捕捉は困難でありまして、うまく行つてないところが多かつたように見受けられるのでありますが、考え方としてはそういう考え方をして行つておりますし、また今後におきましても同様な考え方を持つておるのであります。従いまして今後におきましては、もちろん実際に收入を正確に調べまして、それに対して所得を査定して行く、こういう方針は従来とかわりはないのであります。
  47. 竹村奈良一

    ○竹村委員 たとえば今までは米麦の生産地に対しましても、農業調整委員、食糧調整委員決定いたしました生産量、これに公定価をかけたもので出るものそれ以外にわらやその他を計算されておりますけれども、それを計算した上に、たとえば麦などは関西地方におきましては、生産割当より二割なら二割の増收がある場合、これをやみに流しておるという計算の上に立つて所得を査定されておるのでありますが、今おつしやるように実際やみ値が下つたならば、それだけ下げて所得を見るということなら、われわれも一応異議はなくなり、けつこうだと思うのであります。そこでもう一つ聞きたいのは、こういうところで問題になりますのは、やはり農家に対する何といいますか、申告である以上は、やはり一応必要経費というものが非常に問題になるのであります。この必要経費の部門において、元来大蔵省では一応の基準を出しておられますけれども、やはりそういう基準については、二十四年度と比べてどういうふうに考えられておりますか。この際はつきりお聞かせ願いたい。
  48. 平田敬一郎

    平田政府委員 所得の計算にあたりまして必要経費をよく調べる、しかも解釈を適正にしまして所得の正確な結論を出すというのは、実は一番むずかしい問題でありまして、農業所得の場合におきましても、従来からもはつきりしないところがあり、問題が相当ございましたので、二十三年度におきまして相当詳細な規準と解釈をつくりまして、税務署及び関係農業団体等にも配布いたして、なるべくその紛争を少くして納めるようにいたしたのであります。従いまして私ども大体基本的には、あの容量の示すところで行つてもいいのではないかと思います。ただ一番大きな問題は、今度資産の再評価をいたしますので、農業者は相当固定資産を持つておりまして、再評価が行われました場合におきましては、減価償却はそれに応じまして担当ふえて来ると思います。その他の経費につきましても、あるいは肥料代が値上りになりますと、当然それは増加することになりますし、その他値上りや値下りしたのはいろいろありましようが、大体経費收入といたしましては、前回つくりましたラインでいいのじやないか、減価償却だけが、再評価を行いました農家におきましては、担当大幅にかわつて来るのではないか、こういうふうに考えます。
  49. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そうなつて参りますと、大体前の非常に詳細なものを私は拜見しておるのですが、しかし問題は必要経費の部門で、これは地方的に等差がありますので、非常に問題になるのでありますが、大体必要経費の全国的なものを用いて、その上に地方的にある程度必要経費の差、今後これを詳細に示されるというお考えがあるかどうか。
  50. 平田敬一郎

    平田政府委員 先般作成しましたのは、これこそまつたくサンプル計算のほんの一つの例でありまして、見本を示しておるのであります。もちろん各地の実際によりまして、それに応じた標準率を作成しなければならないわけでありまして、その点につきましては、本年度においてもすでに今までと比べますと、相当細分いたしまして、各地の実情に適するようにいたしておるのでございますが、将来におきましては、その標準の実情化ということにつきましては、先般も申し上げましたようになお一層努力いたしまして、できるだけこまかく実情に応じたものにいたしたい、かように考えております。
  51. 竹村奈良一

    ○竹村委員 農家の所得の算定にあたつては、根本問題があるのでありまして、しかもその必要経費の面についてもいろいろ問題があるが、これはこまかくなりますから、特に例を一つつてお伺いしたいのです。たとえば農家が鶏を飼つている場合、大体全国平均で鶏一羽に対してどれだけの所得を見ておられるかということをお答え願いたい。
  52. 平田敬一郎

    平田政府委員 鶏一羽について幾ら見ておりますか、その資料はございませんが、これはおそらく各地の実情に応じて調べておるだろうと思います。あまり零細のものは、しいて課税しないところもあると思いますが、今ここで説明するような資料を持ち合せておりません。
  53. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大体一羽について七百円から四百円に見ておる。しかもこれは若鶏から、産卵する鶏から、しない鳥から、みなそういうように見るのですが、そういう見方に問題があると思うのです。こういう点は、今後改正される場合には、いろいろ実情を調査して改められるのが当然だと思うのです。たとえばここにこういうことを言うて来ている人がある。扶養家族三人をかかえて四反歩の農業をやつている者が、鶏を七十羽飼育した場合と、しない場合との所得税額を見るに、前者は二万四千円、後者は六千三百五十円となる。すなわち七十羽の鶏を飼うと飼わぬとでは、二万四千円と六千三百五十円ということになる。こういうふうに一般常識的にすでに農家では考えているのですが、こういう点は実際に即して改めなければならぬと思うのですが、どういうふうに考えておられるか。
  54. 平田敬一郎

    平田政府委員 今お尋ねの趣旨が少しわかりかねるのですが、税額の差でありますれば、そういう差が出て来るのが当然の場合もあろうかと思います。所得の差はそれほどないと思いますが、税額は御承知通り基礎控除あるいは扶養控除、あるいは累進税率でありますから、所得がある程度差がありますと、税額の差は非常に多いという場合がございます。これは累進所得税の性質上当然のことと思つておりますが、今御指摘の場合は、もう少しお聞きしませんと、正確なことはお答えできないかもしれません。
  55. 竹村奈良一

    ○竹村委員 この資料はあとでお渡ししますが、扶養家族三人で同じ條件の人か、鶏を七十羽飼うか飼わぬかで税率がかわつて来る。これはあまりこまかくなるので申しませんが、とにかく問題は、農村課税の問題について、農民がいろいろな問題を起しますのは――もちろんこれは法律通りかけられるのは当然でありますけれども、あまりにもこれが機械的に取扱われるところに問題があると思うのです。従つて今度改正税法におきましても、農民は一応申告制度になつている。しかもこれに対しまして、政府の方から言うならば、青色申告ではつきりしておいたらいいじやないか、そう言われると思いますけれども、この青色申告そのものが問題でありまして、第一、農民はそう日々つける数字を持つておらない。農業生産ができるかどうかということが非常に問題なのであります。そこに青色申告して全部出してしまつたならば、たとえば米の生産一つにいたしましても、片方ではパリティーで押えられておつて生産費は実際は切り込んでおる。そうするとこれをほんとうの所得に実際現せば、生産費に切り込んだだけ損失に出て来るわけだ。従つてもしこういう調子でとられるならば、農民は最近どういうことを言つているかと申しますと、これはひとつ土地を全部共同で出して、大きな会社組織にして、農業生産を克明に計算してみるならば必ず赤字になるから、税金一つもいらぬことになると言つておる。そうなると、一方におきましては勤労所得をかけることになりますが、勤労所得の方が安いのだということを言つております。これに対して政府の方は、そういうことを考えてみたことがあるかどうか。もし考えてみたとするならば、勤労所得なつた場合は現在と比較してどうなるか。わかつておればひとつ聞かせていただきたい。
  56. 平田敬一郎

    平田政府委員 現在農業の企業の実態は、内藤委員からたびたびお話を承つているのでございますが、今御指摘になるような形態をとるのは、むしろ実情に即しないのでありまして、さようなことになるということを前提として考えたことはございません。
  57. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それはたとえば一村で全部の土地を出して、協同組合等で共同経営をいたしまして賃金を拂うことになれば、おそらく勤労所得は源泉課税になるわけでありますが、源泉課税で拂つて経営をやるならば、必ず赤字になることはきまつているのですが、そういう形態が起つた場合にどうなりますか。それはいたしかたないと思われますか。
  58. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の農業の実情から申しますと、そういう形態は、私は合理的にはでき得ないのじやないかと思います。できるとすれば、何か仮想的にそういう計算をやるということだけだろうと思うのであります。従いまして仮想的にやりました場合には、もちろん事実を調べまして、事実に従つてそれぞれ課税して行くということになるのであります。單に形式上の仮想にはよりません。
  59. 竹村奈良一

    ○竹村委員 しかしほんとうにそれをやつて、耕作権、土地を持つています者は土地を、現物出資の形にいたしまして、協同組合でも会社組織でもいい、そういう形でやつた場合にはどうなるのですか。
  60. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいま申し上げた通り、仮想的なものでございましたならば、事実に従いまして、それぞれ実態に従つた課税をすることになるのであります。
  61. 竹村奈良一

    ○竹村委員 今度はそれを仮想ではなしに、真に現物出資でやれば問題はないのでしよう。
  62. 平田敬一郎

    平田政府委員 実際問題として、私ども合理的に考える限りにおきましては、そのような形態を考え得ないのであります。従いまして今お話のような例がありましたならば、実態をよく調べまして、実態に基いて課税したいと思います。
  63. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 ちよつと関連質問。今のお答えでありますが、それは仮想だとか仮想でないとか、これは問題は別ですから離れまして、要するに問題はこうじやないですか。つまりそういう形態と個人企業の形態と、その間に税において差額があるから、そういうところへ考えが行く。だから私たちはどういう場合でもその差がないような考え方で行かなければならないのじやないか、こう思うのですが、そこには私がいつも局長に申し上げておるように、日本の農業というものはどういう農業か、これは生活であつて生産なんです。日本の農業は生産というものは切り離せない。この小農経営というものは決して企業ではない。これすなわち生活なんだ。こういうものに対してはこういう課税をしなければならぬのじやないか。従つて農業專従者に対しても單に扶養控除だけではいけない。これは一種の勤労所得なんだから、勤労控除という点も加味しなければならぬのじやないか。それからきのうも局長お話合いをいたしましたが、支給する現物の評価についても、これは私はあなたの方からお出しになられました青色申告前提とする帳簿等についてというのを読んで見ましても、頭が痛くなるほどむずかしい。おそらくこういうことは農業者はやり得ない。日本の農業というものはそういう形のものではない。だから私は今委員長から発言を許されましたからお願い申すのですが、これはあなたの方の考えに従つた帳簿をひとつこしらえていただきたい。その帳簿によつて議論いたしましよう。そういうことがはたして日本の農業の実情に即するかどうかという具体的な議論をしたいと思うのであります。そうしませんと、いつも議論のからまわりでありまして、どうしても上りがつかないと私は思う。今の竹村君の御質問もこれは上りがつきません。そこでそういう方向に多少機運が向いているということは、私どもは村をまわつて見て考えられます。農村の人間というものは脱税の仕方を知りません。大きな会社のように税務署におられたくろうとをひつぱつて来て、専門的に脱税するというようなことは農民というものは考えない。だから鶏が三羽おる五羽おるというので、すぐさまそれにも課税されて泣寝入りしておるという現状であります。私は竹村君の質問に関連して発言を許していただきましたが、どうかひとつ主税局から青色申告前提とする帳簿等についてという、この様式に従う具体的な帳簿をひとつ資料として提供していただきたい。具体的な帳簿で議論をいたしましよう。これをひとつお願いいたしたいと思うのであります。
  64. 平田敬一郎

    平田政府委員 私先ほど竹村委員お話になりました点につきましては、今内藤委員からお話になりました通りでありまして、今の日本の農地の実際の状況、農業経営の実情から申しますると、会社みたいな組織をつくつてやるということが、はたして自然であるかどうか、実態がそうであるかどうかということに対しまして、多大の疑問を持つておりますので、今申し上げましたようなことを申したのであります。これに対しまして今内藤委員お話は、帳簿制度等を極力その実態に即して簡單なものにできないか、こういうお話だろうと思います。この帳面の記載の仕方等につきましては、現在大蔵省の省令及び国税庁告示で一応出しておりますが、これは特に私ども様式を示さないで、一定の様式によらないでもよいということにいたしているのであります。一定の様式にいたしますると、非情に画一的になりまして、実際に即してなかなか記載がむずかしいということになりますから、むしろ各組合等におきまして、大体この趣旨従つて様式を定めまして、それで普及をはかつていただくようにしたらどうか。そういう意味合いにおきまして、政府で様式をきめることは実は見合せたのでございます。でございまするが、将来組合などおきましてだんだんいい様式ができまして、なるほどこれならば政府で全国的にお勧めしてもよいというものが出て参りましたならば、場合によつては様式等を示しまして極力普及するように努めたい。かように考えております。なお告示の記載事項をごらんになりますれば、むずかしいようでありますが、そのうち農業の分だけピツク・アツプしてごらん願いますと、そう複雑なものではありません。また貸借対照表も営業者の場合は出さなくてはいけないのですが、農家の場合は特にここ当分のうち出さないでもよいと規定しておるのでありまして、営業者の場合と、農家の場合と、法人の場合と、あらゆる場合を一緒に規定しておりますので、お話のように非常にややこしく考えられますけれども、よくお読みになりますれば、案外そうむずかしいものを要求しておるではないということを、ひとつ御検討願いたいと思います。しかし趣旨といたしましては、私ども決して今の農家の実際と飛躍いたしまして、格段のむずかしいものを要求するつもりではないのでございまして、従いまして今度やりました結果等に基きまして、さらに一層必要最小限度の要請に合致します限りにおきましては、簡素化し簡單化することにやぶさかではございません。そういう点につきましては、なおひとつ関係者等の意見もよく聞きまして、十分善処したいと思います。なおその様式をつくります場合におきましても、農林省その他農業経営の專門家にも相当つていただいて、つくりましたものでありますことを申し上げておきます。なお一層簡素化することにさらに努めたいと思います。
  65. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 農林省だとか、農業関係のものの意見がこの中に入つておらない。だから私は申し上げるのであります。だから農業の方は簡單になつているんだというわけでありますが、それでいいと思いますから、ひとつこれに基いて標準型を資料として見せていただきたい。それによつて議論して、それがほんとうに日本の特殊な農業組織に合うか合わぬかということを、具体的に議論をしたいと思います。そうしませんといつもからまわりした議論ばかりでありまして、これは平田さんの雄弁に私どもはいつも負けているだけのことでありますから、それでは私はちつともものの進行にならぬと思います。だからそういう資料を提供していただきたい。
  66. 平田敬一郎

    平田政府委員 そういうことにつきましては、今後におきましても政府は常に改善をはかるにやぶさかではございません。そういう際におきましては、内藤委員等の御意見もよく尊重いたしまして、できる限り適切なものをつくることに努力いたしたいと思います。
  67. 竹村奈良一

    ○竹村委員 ただいま会社とか個人経営という問題を出しましたのは、内藤委員からお話があつて深く申しませんが、しかし問題は今日の農業というものが会社組織にすれば必ず赤字になる。そして個人経営でやつたならば税金をとれるような所得が見込まれる。問題はそこにあつたのです。その点を大体政府はいつも考えておると言いつつも、考えておられないところに問題があるのです。そういう議論は別にいたしまして、先ほどからいろいろお尋ねいたしますと、一応農村ではやみ物価が下つた。それだからある程度所得が減つた。そうしてもし今度資産再評価か何かやる場合におきましては、減価償却が多くなるということで、大体結局は所得は二十五年度はあまり農家では多くならぬということだけははつきりしたと思います。もう一つ申し上げたいのは、そこできのうからも議論されておつたのでございますが、たとえば農家の肥料が今度は八月から全体で二百三十億上る。それは消費者価格が上つて、別に米の値が上るのだからさしつかえない。こういうふうにおつしやつておられる。その通りであります。さしつかえないかもわかりません。そこでもう一つの問題は、米の値が上つたところで、実質的に政府はそれだけの米の値が上つただけ、農民に所得を與えておらぬという事実があるのです。これは前々からもお話申し上げたと思いますが、たとえば今度の説明におきましては、大体この間からの説明を聞いておりますと、二十四年度と二十五年度とは大体減税になつて、しかも地方税や何かでも少し減税になる。こうおつしやつておられますが、肥料の値上りの分は別にいたしましても、米の方ではたとえば一等米と四等米との検査の場合におきまして、四等米等をずいぶん多くしておられる。そうすると二十四年度産では大体百億ほど私の計算では違うのです。そういうふうにして米の値が上つたところで、実質的に農家に入る現金というものは不足している。所得が下つている。その証拠には、たとえば農業手形の利用なんかにつきましても、昭和二十三年度は二十四億円であつたものが、二十四年度は百四十九億円の農業手形の利用者がふえておる。それだけ農村では借金がふえて来た。この実情は結局所得が減つておる。これは大体想像がつくのであります。ところが税制改正及び資産再評価の要綱説明の中で十三の予定申告のところで、非常に私が疑問に考えているところが一つあるので、はつきりさしておきたいのですが、これにはどう書いてあるかというと、「予定申告に際しては、原則として、前年の所得金額又はそれ以上の金額により申告することとすること。但し、政府の承認を受けた場合においては、前年の所得金額に満たない金額により申告することができることとすること。  (2)(1)の場合においては、政府の承認を受けないで、前年の所得金額に満たない金額により申告した場合又は申告書を提出しない場合には、前年の所得金額に相当する金額により申告があつたものとすること。  (3)物価変動状況等を勘案して必要あると認める場合においては、政府は、別に法律で定めるところにより前年の所得金額に乘ずべき調整比率定をめることができることとすること。この要項なんですが、これが非常に了解に苦しむので、これは一体どういう場合に政府はお出しになるのか。個々の税務署考えて、前年よりも低くてよいと、こう考えられるのか。またはそうでなく、全国一律に前年よりも低くてよいという法令を政府が出されるのはどういう場合か、こういう点をひとつお聞かせを願いたい。
  68. 平田敬一郎

    平田政府委員 前年の実績による予定申告につきましては、先般三宅委員からもお尋ねがありまして、相当詳しくお答えいたしておいたのでありますが、最近のように事態が大分なだらかになりまして、大体物価も横ばい、若干生産がふえるだけ国民所得もふえるだろう、こういう見方でありますが、そういう状態のもとにおきましては、予定申告の段階で、一々その年の自分の所得が幾らあるかということをお互いに見積りまして、所得税を納めるということは、なかなか技術的にむずかしいのであります。人によつて非常に見方が違いますし、税務官庁においても的確な調査をいたすのに困難を感じておるのであります。従いましてその段階におきましては、前年の実績をもとにして申告をしてもらうというのが、相互に便宜ではなかろうか、こういう考え方でかような制度を設けたのであります。ただ実際問題といたしまして相当物価が変動するとか、あるいは所得に増減があるというように見越される場合におきましては、これは前年の実績で行くことはいかがであろうかということも考えられますので、一般的な状況が今年は相当所得がふえるとか、あるいは今年は相当減るとか、こういう情勢にある場合におきましては、別に法律で基準を定めまして、それによつて一定の率をふやしたもので申告してもらうとか、あるいは前年実績に対して一定の率を乘じたものを差引いた額で申告してもらう、こういうことを行うことができることにいたしまして、適切化をはかりたいと思つておるのであります。その法律で基準を定めるつもりでありますが、本年度といたしましては国民所得の見積り等におきましても、たびたび説明しておりますように、政府ではむしろ若干の増を全体として見ておりますので、この規定を適用するつもりはございません。従いましてこの点につきましては、将来必要がある場合におきましていかなる基準をつくるか、よく研究いたしまして、国会に提案しまして承認を経た上で、それに基きましてその妥当な率を定める考えであります。
  69. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういうように答弁されるだろうと思つてつたのです。だがそこに問題がある。つまり先ほどからいろいろ申し上げましたことは、たとえば農村においてはやみ物価が下つて、それだけ農家の所得が減つておる。あるいは米の質が惡くなつて四千二百五十円ときめられた米価でも、実際に全体から見ると百億円から農家の手取りが少くなつておるという現状で、また二十五年度はそれ以下に下るであろう。あそらくいもにいたしましても統制をはずすとか、雑穀におきましても統制をはずすという現状におきまして、またどんどん輸入食糧を入れられるという場合におきまして、実際の所得は下つて来る。これは畜産方面から見てもいろいろあります。たとえば卵一箇十七、八円しておつたものが十円で売つておる。これだけ農家の所得が下つておる。しかも二十五年度においては、物価はおそらく横ばいであり、従つてそういう総額においてはまあ前年とかわらない、下げる意思はない、また若干の税率において農家の税金は減らしておる、こうおつしやいましても、片一方において所得の減少したものを減少したと見ずして、そうして前年と同じ所得に見てかける。つまし率は下つておりましても、ない所得にあるとしてかけるのだから、低い率をかけても結局においては増税になるというのが私たち見解であります。これは議論になるから申しませんが、実際所得が減つたものを減つていないとして低い率をかけられても、結局ないものにかける税金ですから、これは今までよりも高くなると思うのです。私たちはこういう見解をとつておりますが、これに対してどう思われますか。
  70. 平田敬一郎

    平田政府委員 前年実績によつて課税するのは、あくまでも予定申告の予定納税額についてであります。もしも経済状況がかわりまして、一年間の所得の実績がある程度移動いたしました場合におきましては、その所得の実績によりまして、翌年の一月または二月に確定申告をしてもらう。その際に最終的に正しい税額をすべてに負担してもらうのであります。従いまして予定申告の前年実績というものは、一応の予定納税の場合の便宜の方法にすぎないので、実際の負担はあくまでも二十五年度でありますれば、二十五年一月一日から十二月三十一日までの所得の実績に基きまして、一月または二月に確定的に精算し、税金を納めてもらうのであります。その点は誤解ないようにお願いいたしたいと思います。  それから農作物などにつきましては、前から申し上げておりますように大体課税所得は私どもの調べによりますと、むしろ米麦等の主要食糧による所得が大部分であります。これにつきましては御承知通りパリティーが前年は一五四でしたか、それが本年の秋には一六八にふえるということを大体予定いたしておりますので、私どももその予想ですべての計画をいたしておるのであります。
  71. 竹村奈良一

    ○竹村委員 これは予定申告だ、従つて確定申告のときには、下ればそれだけ引くのだ、これはもちろん理論的にはごもつともです。しかし実際には、前年度と同じように予定申告をさせたものが、確定申告において実際上各税務署において、そんなものを減らすということはない。末端はここできめられたことをその通りにはなかなか行い得ない。また行われないのが特徴なのです。また米のパリティーの問題も計算に入れておるとおつしやいますが、もちろんそうです。大体五%の値上りを政府は見ておられて、今度は米の値段は四千五百何ぼかぐらいを大体予定しておられるようであります。しかし米の値上り、肥料の値上りその他を予定してあるとおつしやいましても、それだけでは農民は納得しない。このことは別の機会に讓りますが、結局におきまして予定申告でしたものを、確定申告で訂正するのだと言われますけれども、それは上で言うことであつて、実質上はそういうことは一ぺんもなされたことはない。異議を申し立てたうちのごくわずかしかそれはなされていない。問題は結局この要綱にある。予定申告は前年度よりというのを、時々刻々ほんとうに減少するならば減少しただけでも認めて行くという制度にしなくては、たとえば中小工業者があれだけ困つてつても、ああいうふうに言われるような今日の政府ですから、そう農民所得が減つてつても横ばいしておるとか何とかいつて、なかなか減つたとお認めにならぬ。その場合確定申告でもやはりこれが減つた考えて、そういう措置をおとりになることぼ政府はなかなかしない。われわれはそういうふうに考えておる。そこに問題があると思うのですが、この点については私はまた別の機会にいたしたいと思いますので、本日はこれをもつて私の質問を終ります。
  72. 木村榮

    ○木村(榮)委員 経済調査庁が脱税に果した役割をどのぐらいに評価しておられますか。
  73. 平田敬一郎

    平田政府委員 経済調査庁の調査の結果に基きまして、脱税が見つかつたという例も幾分かあろうと思いますが、私ども特にそういう点は非常に大きく考えて問題にしたことはございません。しかしもちろん資料があります場合におきましては、脱税事件としてよく調べまして、適正な結果を得るように努めておる例はあろうかと思いますが、それほど大きな問題には考えていないのであります。
  74. 木村榮

    ○木村(榮)委員 農業協同組合の預金通帳を本人の承諾なしに差押えた場合は、これは合法的ですか非合法的ですか。
  75. 平田敬一郎

    平田政府委員 協同組合の預金ですと、事業に関する帳簿書類ということに該当するのではないかと思いますので、そうすると検査権限があるわけであります。
  76. 木村榮

    ○木村(榮)委員 そうではなく、農民が農業協同組合に預金をして、その預金通帳は大体農業協同組合に預けておるのがほとんど現状であります。その場合税務署が差押えに行つて、農協に入つて、そうして管理している農業協同組合の事務員に預金通帳を出させて、それを差押えて持つて逃げだという場合には、これは合法的ですか、非合法的ですか。
  77. 平田敬一郎

    平田政府委員 滯納処分の実行としてやります場合においては、合法的な場合もあろうと思いますが、もう少し今のお尋ねの趣旨は、具体的にいろいろな事情を調べてお答えしないと、簡單には申し上げがたいと思います。具体ケースがございましたらよくお調べしまして、別途の機会にお答えいたします。
  78. 木村榮

    ○木村(榮)委員 朝大体夜明けごろに行つて、寝込みのところを外から戸をこじあけて入つて差押えた。こういう場合は合法的ですか、非合法的ですか。
  79. 平田敬一郎

    平田政府委員 具体問題は、單純な例でお答えするのはなかなかむずかしゆうございますので、なおよくその実際をもう少し詳しくお聞きしまして、その上でお答えいたしたいと存じます。
  80. 木村榮

    ○木村(榮)委員 いや現に私の知つておる部落に税務署員が三十名ばかり行つて、そうしてまだ夜明けでみな寝ておつた。その寝ておるのを外からどんどん戸をたたいて、戸をたたくのはいいけれども、あけないうちに外からこじあけて入つて差押えたというのがたくさんあるのです(「密造じやあないのか」と呼ぶ者あり)いや密造じやあない。あたりまえの所得税だ。これはどうですか
  81. 平田敬一郎

    平田政府委員 事業問題は先ほど申し上げましたように、あらゆる事情を調べた上でお答えしないと、簡單にお答えしてかえつて御迷惑を及ぼすような場合もありますから、実際のケースがありますれば、よく国税庁お話になりまして、監督官がおりますから、その監督官によく調べさせまして、適当な措置をとるということにしていただきたいと思います。
  82. 木村榮

    ○木村(榮)委員 所得税を差押える場合に警察官を動員して、最初に威嚇をして、そしてあとから税務署がやつて行くという行動、これはどうですか。そういうことをあなたは奨励しておられますか。
  83. 平田敬一郎

    平田政府委員 警察官は犯罪事件に対しまして捜索し調べる責任を持つておりますので、やはりこの脱税事件等につきましても、そういう権限があることはもちろんであります。ことに密造の取締り等になりますと、どうしても警察の協力を得なければ、完全な効果を期し得ないというのが現状でございます。
  84. 木村榮

    ○木村(榮)委員 それは密造とか脱税とかそういう犯罪的なものでなくして、所得税を異議を申し立てて、そうして今盛んに交渉中、こういう場合にやつた場合はどうですか。これは現にやつておりますが……
  85. 平田敬一郎

    平田政府委員 私の聞いたこういう例がありました。一つ税務官吏が調べに行つたら、多数が集まつた妨害的な手段に出た。あるいは出るおそれがある。こういう場合におきまして警察官に応援を頼みまして、警察官と一緒に行きまして目的なり任務を果す、こういう場合はあろうかと思います。それ自体としては、そういうことがあつても、私は状況次第によりましては妥当と考えます。
  86. 木村榮

    ○木村(榮)委員 それはこつちが先に不穏な形勢を示したということになれば、別個な問題になるでしよう。そういう形勢が全然ない場合においては、合法的ですか。
  87. 平田敬一郎

    平田政府委員 現実ありました問題は、そういう形勢があつたわけでありまして、九州ですかどこですか、最近聞いておりますが、そういう場合におきましては、今のような措置をとりますことは妥当であると考えます。
  88. 木村榮

    ○木村(榮)委員 それから連合軍の兵隊がやつて来て、人を集めて、お前らは税金を納めぬそうだから早く納めろ。こういう請求をして歩いていますが、あれは政府が頼んだのですか。
  89. 平田敬一郎

    平田政府委員 連合軍の行動は総司令部、向うの方でそれぞれ指揮してやつておられることと思いますので、私の方から答弁する限りではございません。
  90. 木村榮

    ○木村(榮)委員 しかしもしそういう行動があつて、そのことがかえつて善良な納税者の精神状態を刺激して、日本の納税を阻害するといつたことが判明した場合においては、大蔵省としては、そういうことはつつしんでもらいたいといつたふうなことくらいは申し込んでさしつかえないと思いますが、そういう御意思はございませんか。
  91. 平田敬一郎

    平田政府委員 連合軍の関係のことに関しましては、この席でお答えする限りでございません。
  92. 木村榮

    ○木村(榮)委員 そうしますと、どんな間違つた所得税決定があつて、それに対して納税者が異議の申立てをして、法規に従つて正規の方法によつてつて税務署の方と折衝中という場合に、私が今申し上げたようなことがあつた場合においても、税務署としては、いや実はこうこうこういうわけで、今合法的な場面においての交渉中だということさえも説明できないわけですね。
  93. 平田敬一郎

    平田政府委員 日本の税務官吏が行動する場合におきましては、少くとも合法的に行動すべきものだと考えます。
  94. 木村榮

    ○木村(榮)委員 いやそうではない。税務署はまあ合法的にやつておるというでしよう。それに対して納税者の側も合法的な交渉をしておる。この交渉をやつておるのを、連合軍の兵隊がやつて来て納税者の側ばかりに注意する。こういう場合にはこれは税務署の側としては、いやそうではない、これは今合法的にこういうふうに交渉しておるのだということの説明ができるか、できぬかということを聞いておるわけなんです。説明ができなければできないで、いいから、できぬと言つてもらいたい。
  95. 平田敬一郎

    平田政府委員 もちろん日本の税法はこうなつておる、法令はこうなつておるというようなことにつきましては、一緒に行動する場合におきましては、日本の税務官吏として当然努めるだろうと思います。まあそれは当然なことだと考えます。
  96. 木村榮

    ○木村(榮)委員 これは具体的にまた伺いますが、もしそういう場合に、末端の税務署がこの自分の不合理をごまかすために、その出先連合軍の方に虚偽報告をしておるというふうなことがもし明白にわかつた場合は、これは監督する本省としては、相当な監督権を持つて何かできますか。
  97. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお話は、起つた場合はとか、非常に簡單なケースを出してお尋ねでございますが、さような問題につきましては、今申し上げました通り国税庁に監督官の制度が設けられておりまして、事実につきましてはよく調べてそれぞれ適当な措置をいたすことになつておりますから、その方にひとつございますればお申出を願いたいと思います。
  98. 木村榮

    ○木村(榮)委員 間違つて超過した金額の税金を納めたという場合には、当然拂いもどしを受けますが、この拂いもどしを受ける場合には、大体どのくらいの期間をもつて拂いもどしされますか。
  99. 平田敬一郎

    平田政府委員 あやまつて納税したような場合におきましては、当然本人の請求に基きまして、国税徴收法規定によつて還付することにいたしております。これはすでに請求がありますれば、役所におきましてはできるだけすみやかに手続を取りまして、還付することにいたしておるわけであります。いろいろ事務の処理上遅れることが多うございますので、よくそういう非難を聞くのでありますが、これに対しまして政府といたしましては、できるだけ早く片づけて還付するようにいたしたい。未納の税金がありますれば、それに対しましては、還付すべき税金より充当することも御承知通りであります。なおさような場合におきましては、現在国税徴收法規定に基きまして、日歩十銭の利息に相当するものをつけることになつております。改正案によりますと、それを利子税と同じく四銭にいたす考えであります。
  100. 木村榮

    ○木村(榮)委員 これはちよつと何が違いますが、固定資産税の場合、農業用の何というのですか、生産機具と言いますか、こういつたものは大体どのくらいの程度――たとえば牛、馬、そういつたものもその中に入れられますか。あるいはその他小さいものは入れないとか、こういつた範囲はわからないのですか。
  101. 平田敬一郎

    平田政府委員 固定資産税につきましては、目下法案を整備しまして、近く国会に提出する見込みでございますから、その際にこまかいところは御質問つたらどうかと思います。
  102. 川野芳滿

    川野委員長 地方税の問題につきましては、法案が出ましたら連合審査会を要求したいと思いますので、そのときにお願いいたします。宮腰喜助君。
  103. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 関連質問をお願いいたします。昭和二十四年度の十一月ごろ更正決定を各納税義務者に発したのですが、ただちに納税義務者は、これに対し異議の申請を申し出たものが多数あるのであります。ところが人手が足りないから、これに対して意思表示しないということで、確定申告までその意思表示を延ばし、その間約四箇月間の期間というものは徴税課の方からはがきで拂え、そういうものが二度も三度も来るというので、とうとう当初仮更正決定されたまま納めないでおる人が相当あります。税務署に行くと、昨年度の定員法で大分人を減らしておりまして、人手が足りないと言つておりますが、そういうことがおわかりでありながら、どうして定員法で末端の税務署員の定員を減らすかということをちよつと伺いたい。
  104. 平田敬一郎

    平田政府委員 昨年定員法に基きまして定員を減らしましたのは、政府の一般的な行政整理の方針に従つたわけでありまして、役所といたしましては、單に事務上の見地だけ考えますと人数は相当多い方がいいにきまつておるのでありますが、全体の方針に順応いたしましてかような措置をとつたのであります。また今後税務官吏をできるだけ訓練いたしまして優秀な者に育て上げますれば、私ども改正後の定員で間に合うのではないか、かように考えております。でございますが、また今度の制度改正によりまして協議団その他若干の増加がございますので、これに対応いたしまして今回千五百名程度の増員を、目下お願いいたしておる次第であります。  なおこの機会に、前会お尋ねがございましてお答えしなかつた事項を一、二申し上げておきたいと思います。先般宮腰委員から第二会社の場合に、納税義務はどうなるかというお尋ねでございましたが、これは現行法令によりますと、第二会社の場合には旧会社の、親会社納税義務は承継しないことになつております。  それから先般三宅委員から納税準備金は積立金の計算上どうなるかというお尋ねがございましたが、納税準備金という非常に漠然としたものを積立金に見ないということには参りませんが、その期までに納付すべき法人税相当する一種の税金引当金的なもの、これは当然積立金には見ないことにいたしております。
  105. 川野芳滿

    川野委員長 それでは午前はこの程度にいたしまして、午後一時半から再開することにいたします。     午後零時三十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十分開議
  106. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長代理 休憩前に引続いて会議を開きます。  九税法案につきまして質疑を継続いたします。三宅則義君。
  107. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 昨日国税庁長官並びに主税局長から御答弁がありまして、納税者の納得の行くような税金にいたしたい、こういう御答弁でたいへん力強く、納税者も今後努力するであろうと確信いたしますが、先ほどの大上委員の御質問のあとを受けまして、主税局長第三者通報というものに対しまして信頼を置くようなお話でありましたが、第三者通報というものは現在どのくらいの通報を得られまして、またどのくらいの税金をおとりになつたかということをお伺いいたしたい。
  108. 平田敬一郎

    平田政府委員 後ほど取調べまして御報告いたします。
  109. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今主税局長からあとでお調べになるというお話でありますが、第三者通報というものは、往々にして業者間におきましても、やきもちをやくというような状態が発展いたしまして、はなはだ迷惑を感じておりますことは、先ほど大上委員の仰せになりました通りであると思つております。私は過少である場合におきましては、こういうような法律はむしろ削除いたしまして、もつと合理的になるように税務官吏の素質を向上し、もしくはこれらの人の手をあげて、実地調査をするのが一番便利でもあり確実であると思つて、在来から專門的な税務官吏の優秀な者を配置して、戸別的に調査せよと申しておつたわけでありますが、これに関する政府のお考えを承りたいのであります。
  110. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 この第三者通報に関するところの実績は、後ほどお答えいたしたいと思いますが、お話通り第三者通報の中には、あまり根拠のない嫉視反目と申しますか、そういうような点から来ておるのも確かにあるということを聞いておる次第でございます。同時にまた正しい経理感覚に基くところの通報もある程度ございまして、これが税務の参考になつておる事実もいなめないと思うのであります。何分にも税務職員の数をそうむやみに増加することはもちろんできませんし、国民全般が相互に相監視し合つて、税の公平な運営をするという点はやはり一つのいい点であろうと思いますので、こういう有効なものは選択を誤らないようにして、やつて行きたいと考えております。
  111. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は今国税庁長官お話になりました点に一本くぎを打つわけでありませんが、希望を申し上げたいと思います。何しろ業者間におきまして競争相手あるいはやきもち、非難、こういう点におきまして往々にやることがあり、また会社、商店等においても解雇せられたものがいやがらせをやる意味において、その所得を過大に通報したり、そういう行き過ぎの点がかなりあるのでありますから、これにつきましては署長なりあるいは直税課長なり、相当権威のある責任者がこれを判定した上において、第三者通報に対しては手をつけるべきであると思います。軽々に若い二十二、三歳の青年等がそれに乘り込んで行つて、暴言を吐きもしくは辛辣な調査をするということは、はなはだ不穏当きわまると思いますから、これに対する御判断を賜わると同時に、もう一つ聞きたいことは、第五十七條の仮装、隠蔽した者に重加算税をかけるという点であります。もちろん嚴罰に処すべき可能性もあるのでありますが、これらに対しましてはこの法律をつくつておくことがかえつて惡いのではないかと思います。この二点についてまず主税局長に承りたい。
  112. 平田敬一郎

    平田政府委員 第三者通報制度は、高橋国税庁長官からお話がありましたように、国民考え方を少しかえていただかないと御理解がむづかしいのではないかと思つております。と申しますのは、脱税と申しますと、納税者政府関係だけのようにちよつと誤認されるのですが、実際はそうではなく、脱税者は実は他の業者の利益を侵害しておるのであります。従いまして脱税者がありますと、そのためにほかの人が何らかの形で重くなつておる。こういう関係になりますので、これはお互いに国民同士の関係が強いということが考えられるわけでありまして、そういう意味からいたしましても、先ほどからお話になりましたように、正しい根拠に基いてかような制度が実際において行われます限りおきましては、私は相当な意義を持つものと考えておるのであります。  それから今のお話は重加算税を新しく設けた理由についてお尋ねでございますが、これはいつかもちよつと申し上げたかもしれませんが、実際において虚偽その他の事実によりまして脱税がある場合におきまして、そういう事件を全部刑事事件にするしかないか、これは今非常に問題がありまして、刑事事件にすべきものはその中の特に惡質なものを刑事事件にいたしまして、その程度に至らざるものは、むしろこういう行政罰的なものによりまして制裁を加えて行く。それによりましても相当な効果を生じ得ると思います。両面の制度考えて行きまして、初めて正しい納税への目的が達するのではなかろうか。そういう意味合いにおきまして、今回かような制度を設けることにいたした次第であります。
  113. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今主税局長お話になりました点を引用いたしまして、はなはだ恐縮でありますが、皆さんの御了解を得たいと思います点は、物品税等において、極端なものになりますと半分ぐらいしか納めていない。こういうような事柄は物品税が重いからでもありますが、こういうようなものをお互に通報し合うとしうことになるとたいへんな迷惑を感ずるのであります。これについては今日は物品税の方は出ておりませんので、御答弁を賜わることはできないかもしれませんが、これらも嚴罰主義で五倍ないし十倍という線があるのでありますが、これとの比較はいかがでございましようか、承りたいと思います。
  114. 平田敬一郎

    平田政府委員 物品税の場合は、まさにお話通り惡い納税者がおられまして脱税されますと、善良な納税者の利益をこれこそ直接に妨げることになるのであります。従いまして税法通り納めるということに持つて行きませんと、この問題は解決しない。惡質な納税者があります場合におきましては、私はむしろ同業者等において遠慮なく知らしてもらいたいと思うのであります。役所におきましても極力そういうものの調査を徹底せしめて、もつて正しく納税される人の営業の妨げにならぬように努めるのが当然ではないか。ただ税率その他につきましては、先般西村委員からお話がありましたように、状況の推移に応じまして極力合理化し、軽くする方向に行くべき点が多多ありますことは先般も申し上げた通りであります。
  115. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は法人税のことについて二、三点伺いますが、それについて御答弁を承りたい。他の法人から受けました配当所得に対しまして、当会社の今度の利益金には算入しない。これはもちろんのことであろうと思いまするが、これらに対して取得するに必要だつた経費は、もちろん経費として損金に入れるべきものであろうと思つておりますが、その方の解釈はどういうふうになつておりますか承りたいと思います。
  116. 平田敬一郎

    平田政府委員 他の法人から受ける配当金は益金に算入しないのであります。その株式を取得するために要しました負債の利子を引いた残りの分を、益金に算入しないことにいたしております。
  117. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 それから損失の繰越しもしくは繰りもどしについての問題でありますが、もちろん青色申告いたします法人につきましては五箇年間有効である、こういう行き方でありまするが、春色申告をした者と青色申告をしなかつた者についてのたいへんな隔たりがある。かように考える。青色申告をしなかつた者については一箇年認め、青色申告をした者については五箇年間認めるということになりますと、多少不公平と思われる点がありますが、これについては全般的に青色申告に切りかえるという制度を、むしろ設けた方が適当じやないかと考えます。これについて適切な政府のお考えを承りたい。
  118. 平田敬一郎

    平田政府委員 繰越し欠損の控除といつたことはかなかな技術的にむずかしく、かつ正確を要することでございますので、特に税法は青色申色の納税義務者に限定いたしておるのであります。またそういうことによつて同時に青色申告制度の普及もはかりたい、この点からいたしまして、やはりこういう非常に込み入つてむずかしい制度については、さような方法が正しいと考えます。但し毎々申し上げております漁り、災害等による損失は原因がはつきりいたしておりますので、この方は繰越し控除青色申告がない場合にも認めるのであります。
  119. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長代理 ほかに通告もたくさんありますから、三宅君次に讓つてください。竹村奈良一君。
  120. 竹村奈良一

    ○竹村委員 実は税金によつて物納された土地、家屋等についてですが、一体拂い下げるときはどういう形で拂い下げられておられるか。その事情と、それから全国で大体現在まで物納された家屋がどれだけあるかということをお聞かせ願いたい。
  121. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 ただいま手元に正確な数字を持つておりませんので、大体国税庁から引継がれました土地、家屋等管財局の所管で処分すべき不動産関係のものについて数字を申し上げますと、大体土地が十六億、立竹木が十六億、建物が三億、工作物が一億八千万、合計三十七億円というものが引継ぎになつております。
  122. 竹村奈良一

    ○竹村委員 この家屋に借家人が住んでおるという場合に、たとえば物納された場合、これの処分について大体どういう形でされるのか。
  123. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 これは原則として現在その建物に住んでおられる方に、なるべく買い取つていただくという方針で職務を進めております。
  124. 竹村奈良一

    ○竹村委員 借りておる人に買い取るだけの財力がなかつた場合、分割拂いなんか認められますか。あるいは一時拂いしか認められぬのですか。
  125. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 ただいまのところでは分割拂いということは考えておりませんので、原則として一時拂いでやつていただくことになつております。
  126. 竹村奈良一

    ○竹村委員 物納の価格と拂下げ価格とは相当相違があると思うのですが、そういう相違は非常に多い。拂下げ価格が高くて、物納せしめた価格が低い場合には、相当国は利益がある。そういう場合は利益を見込んで、実際住んでおる人が一時的に拂うことができない場合は、分割拂いを認めても、国家としては別に損はしない。そういう利潤をどう考えておられるか。
  127. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 拂下げ価格につきましては、適正な時価で拂い下げるごとに法律がなつておりますので、そこに收納価格と多少の差違が出ましても、これについては他の一般国肩財産と区別することになつておりません。ただただいまのお話のように、現在の局住者その他実際の事情を勘案して、あまりむりのない方法をとることについては私ども同感であります。なるべくそうしたいと考えます。
  128. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大体はつきりしたのですが、たとえばこういうことがあるのです。千葉市の今井町という所に、元の日興工業という軍需工場があつて、そこに社宅が約四百戸ございます。これが物納されて昨秋大蔵省の所管に移つた。それでそこに住んでいる四百戸ほどの者に対してそれを買えというお話ですが、なかなか買うことができぬ。だから分納を認めてくれと言つておるのですが、そういうことはできぬということです。物納価格は坪七百円であつたものが、今度は坪三千百五十円で買えということになつておるけれども、買うことができない。買わなければ立ちのかなければならないという問題が起つておるのです。これは一つの例に過ぎないが、実際買うことができない人に分割拂いはいかぬというので、他に立ちのくということが起つて来ると、非常に大きな問題だと思うのです。これに対して何とか方法はないですか。
  129. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 ただいまの具体的問題については私まだ聞いておりません。現在の交渉価格が高いか安いかにつきましては、さらに具体的に調査してみたいと思つておりますが、一般的な方法として考えられますことは、分納の方法がとれるかどうか。その方法がとれれば大体三年間の分割拂いの方法が一応考えられるが、ただ実際問題としてそういう場合の判定がなかなかむずかしいので、これを簡單に認めて参りますと、実際に処理が非常に遅れて来る。ことに分納の間の建物の管理や事務に煩雑を来しますので、できるならば一時拂いでやつて行きたいということで交渉しております。その点どうするかということは、具体的な問題になると思います。
  130. 竹村奈良一

    ○竹村委員 とにかくこれだけに限つたことではないのでありますが、一般的にただいまおつしやつたように片一方は住宅難で、政府の方では何とか住宅をこしらえなければならぬと言つておる。片一方ではたまたま国家の所有になつたものを拂い下げるのに、分納さえ認めれば問題は解決するのにそれをやらぬ。片一方は国民の金で住宅を建てるなどと騒いでおるときに、だれかに売ることになると、立ちのきとか値上げの問題とが起るのでありますか、これは実際の実情として、四百戸くらいの者を今ごろ放り出しても行くところがない。従つて全然拂わないというのなら別ですが、分納して納めさしてくれ、買わしてくれと言つておるのでありますから、そういう問題はよく御相談くださつて、適当にその本人に売るようにとりはからつていただきたいということを希望して、私はこの問題には触れない。  それからもう一つお伺いしておきたいのは、管理がえ処分が非常に遅れておるということで、各府県の農地委員会からどんどん言うて来るのですが、これはどういうわけですか。大蔵省の手続が正式にできたら早くやつてしまつた方がいいと思いますが、これはどういうふうになつておりますか。
  131. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 これは各地によりまして、具体的な実情が非常に違つておると思います。たとえばある土地については、農地委員会で農地に適当だからというように認めましても、また別に都市計画の方では、都市計画上必要であるというようなことで、両方の意見がなかなかまとまらない。また農地委員会がそういうようにきめても、地元の方でいろいろ別の意見がある。これを早急にやることになれば、あるいは地元の方で紛糾を起すというような見込みのものなどが具体的にありますので、そういう点で多少遅れておるものがあるかと思いますが、これを早くしろということで、実はことしの一月に各財務部に通牒いたしまして、三万末までに全部やれ。特に農地の管理がえが困難であるというものについては、具体的に一件ごとに調査するということに関係方面とも話ができたのであります。
  132. 高間松吉

    ○高間委員 私は一言主税局長にお伺いしたいのですが、先ほどの三宅委員質問を聞いておりますと、脱税者についての処罰は、他のまじめな納税者関係からも厳重にやらなければならめというような御説でありました。昨年の九月か十月ごろだつたと思いますが、新聞記事ですからはつきとした数字はよくわかりませんが、三菱化成の脱税が約九億ということを記憶しております。そうした、雄大な脱税に対して、その脱税者が納める税金が、他の納税者に按分比例の形によつて割当てられるというふうに今お聞きしたのですが、そういたしますと、その減税される方の部面は、各地区のつまり関信越なら関信越の地区の減税にされるものであるか、また日本全国を対象にするのでしようか、そういう点をこまかくお聞きしたい。
  133. 平田敬一郎

    平田政府委員 私はそういうつもりで言つたわけでは全然ないのでございまして、もう少し高い立場で実は申し上げておるのです。結局国家財政におきまして、税金財政上の需要で徴収するわけであります。従いまして所要の経費が幾らあつて、税額はどれくらいことし上げなければならぬということで、税率その他の計画を立てるわけでありますが、脱税者が多くて税收入が入つて来ないということになると、勢い税率なり控除等を動かさずるを得ないという結果になるのでありまして、そういう意味合いにおいて先ほど申し上げたのであります。ある脱税が見つかつたから、その分は行政でほかの方を軽くするという意味合いでは全然ありませんから、ひとつ誤解なきようにお願いしたいと考える次第であります。
  134. 高間松吉

    ○高間委員 その点につきまして、少い脱税ならば一応納得するのですけれども、九億という厖大な脱税ということになりますと、勢いそろばんの上からいつても、その地区なりあるいは日本全国なりの者の税額が減ることになるだろうと考えるのでありますが、その点はどういうふうにお考えですか。
  135. 平田敬一郎

    平田政府委員 そういう考え方は、まだ割当にとらわれておる御見解じやなかろうかと思うのであります。そういう趣旨でやるわけじやございませんで、あくまでも税法に従いまして、それぞれ收入を上げるわけであります。従いまして全体として租税收入が出て来ますれば、場合によればその次の年度の減税に充てるとか、追加歳出の財源に充てるか、いろいろな方法が考えられるわけであります。具体的に今お話のように、ある地区で相当脱税が発見されて収入が上つたから、行政的な見地からほかの方が下るというような考え方はいかがかと思うのでありまして、さような方法は、かりに誤解があるといたしますれば今までもやつておりませんし、今後も政府におきましては絶対にやらないということは、たびたび申し上げておる通りであります。
  136. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今回の改正案を見ますと、予定申告規定が現行法と比べると非常にきつく書かれてあります。前年度の総所得金額よりも予定申告の見積り所得が減る場合は、税務署長の承認を経なければならぬ、こういうことになつておるのでありますが、承認を得るという義務を持たすと、その予定申告ごとにその承認申請書を認めるか、あるいは却下するかは、全部税務署長がそれを処理するということになるのでありますか。
  137. 平田敬一郎

    平田政府委員 大体におきまして前年の実績額で予定申告してもらう実際的にはそういう考え方でございますが、法制技術的には、あくまでも予定申告は予定納税でありまして、いずれ確定申告の際に調整いたしまして、正しい額にすることを前提にいたしておるのであります。従いまして法律の書き方といたしましては、今御指摘になりましたような書き方をいたしております。そうして実際の適用といたしましては、まず第一に、ごらんになればわかりますように、災害等によつて減少する原因がはつきりしておる場合は、税務署は必ず承認しなければならないという規定を入れております。それから取引の記録等に基きまして正確な材料を提供いたしまして、それによつて所得が二割以上減ることが確実な場合も、税務署長は承認しなければならないことにいたしておるのであります。その他の場合におきましても、何しろ見積りであり享ので足かくはつきりした根拠がない。結局見解の差というようなことにおちつかざるを得ない場合におきましては、先ほどからも毎々申し上げておりますように、前年の実績額で一応予定納税してもらう。大体こういう考え方であります。従いまして自分が前年よりも所得が下るどうしても予定申告を下まわつてしたいというような人は、証拠資料を整えまして税務署長の承認を求めなければならない。しかし必ずしも今申しましたような事態に該当しない場合におきましては、承認しないという場合が多いのじやないかと思いますが、大体さようなことで運用して参りたいと考えております。
  138. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これは昨日か一昨日に、たしか西村委員からもお話がありましたが御当局にやわらかなご気分がありましても、末端の税務署の方に参りますと、この法律條文通り読んで條文通り仕事をやる。この條文を読んでみますと、現行法と比べるとたいへんきついものになつて、現行法によれば、予定申告というものは一応出しておけば、出した予定申告によほど誤りがあつた場合は、税務署がこれを修正することになりますけれども、大体それで通る。従つて従来は予定申告納税した税金よりも、確定申告においては相当訂正して税金が加わつて参る。ところがこれは最初から前年度の所得を基礎にしてそれよりふえて出すのはよろしい。もし幾らでも減らす場合には税務署長の承認を得なければならぬ。以前にありました実績主義と申しますか、ことしあたりでも大阪局管内あたりでは、期待倍数というような前年度の何パーセントというようなことをやつておる。法律の精神はそうでありませんが、末端においては実績主義あるいはそういう割当主義をやつている。今度はこの條文を見ると割当主義を法律で裏づけするように読みとれるのであります。今もお話のようにこれは災害があつた、あるいはよほどの変動があつたという場合は当然認めてくれますが、それ以外の場合は、つまり普通の事業の場合は二割以上の減収が明らかに認められる場合のみに限っております。二割以上の減収が明らかに認められるという証拠を出さねばならない。そうしますと五月一日にその一年一年を見越して二割以上の減収があるという証拠は、一体業者にとつて出せるものか出せぬものか。証拠が出せなければ前年通り税金をとられる。「これはおそらく実施上においては非常にきつ過ぎる條文になると思います。しかしこれは具体的にどれをつかまえてこうだということは、私ちよつと十分研究しておりませんので、これは追つて機会を見てはつきり申し上げてみたいと思いますが、あまりにきつい法律だと思います。そういたしましてこの十月の申告になりますと、今度はまた六月の予定申告よりもふえる場合は申告書を出せ、減る場合は修正を願い出よ、こういうことになると、ともかく税金をよけい出す場合は申告を出せばいいが、減らす場合は税務署長の承認なり税務署長の方に一切権限がある。この書き方もまた非常にむりな書き方であると思います。これも先来いろいろ問題がありますがこういう承認を得たりあるいは税務署長によほどの証拠物件を出すというようなことは、一般納税者にとつては経理上そう明るいものではありませんから、この仕事をするのがつらくてこれができぬから、うやむやに済ます。実際この法律が実施される場合、これははなはだ実績主義と申しますか、割当主義に堕するものと思うのでありますが、これは御答弁を望んでもしかたがないと思いますが、何か御感想があつたら承りたいと思います。
  139. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいま奧村委員お話になりました中で、前年の割当課税によることになるというお言葉がありましたが、そのお言葉は私ども承服いたしかねることをひとつ最初に申し上げておきます。前年の決定額あるいは申告額に基きまして、一応予定納税をしてもらうということであります。この決定は今後におきましては青色申告制度の採用、あるいは税務官庁の能率を高めまして、極力具体的な事実をよく調べた上で決定して行くということになりますことも、たびたび申し上げておる通りであります。しこうしてこの予定申告の段階において、その年の所得を見積つて出すということになりますと、先ほど御指摘になりました通り、まつたく最近までの運用の実際が実は非常な混乱を来しておりまして、その見積額なるものが必ずしも根拠がはつきりいたさないために、非常に低いところで一応出しておく。従いまして結局年末になつて確定申告の際に更正決定して相当多額の税金がが行く、こういうのが今までの実情でありましたので、そういう態勢を切りかえよう。従いましてこれは御指摘通り、全体としましては従来よりもよほど取扱いに差が来るということを、ひとつ事前に御了承置き願いたいと思うのであります。昔の所得税法は御承知通り実は全部実績で最後まで押していたわけであります。そういたしまして所得が半分以上減つた場合に減損更訂という制度がありまして、その場合にのみ翌年になつてから直しておつたのであります。予定納税という建前はかえておりません。あくまでも事前の予定納税であります。来年の一月になりますればその差がわずかでありましても、すべて過不足を清算するということにいたしております。その意味におきましていわゆる納税実績制とは本質的に異なるものでありますが、しかし予定納税の段階におきまして、従来よりも第一期からよけいな税金を納めておいていただきまして、年間としてなだらかに納めていただくようにしたい。その方が納税者の実情に即するのではないか。先般松尾委員からもお話がありました通りに、現在の申告納税の実情は上半期にほとんど入つて来ないで大部分が一月以降に入つて来る。結局入つて来るのが正しいのです。正しくないのはこれはあくまでも決定に対して不服を申されて、直してもらつてもいいと思うのですが、どうせ正しく納税しなければならぬ税金ならば、これはひとつ早くから納税してもらつた方がいいだろう、こういう趣旨を加味しておりますので、実際この制度によりまして私は申告納税は、相当今後は事前納税していただかなければならぬということにかわるということだけは、ひとつ御了解置き願いたいと考える次第であります。もちろんさつき申しましたような一定のはつきりした事由があります場合におきまして、税務署がむりをするということは妥当ではないと考えますが、一般的にはさようなことに相なりますことを御了承願いたいと思います。なおさような予定納税でありますから、公売処分は確定申告の時期に至るまで差控えることにいたしております。
  140. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長代理 ちよつと御相談申し上げますが、刑政長官の佐藤藤佐氏がお見えになりましたから、その質問を先にいたしたいと思います。
  141. 西村直己

    ○西村(直)委員 刑政長官はお忙しいと思いますが、簡單に二点ほどお伺いいたしたいと思います。実は法務総裁においで願いまして、司法全般に関係がありますので、総裁からお答えを願つた方があるいは適当かと思つたのでありますが、法務総裁はお忙しいと思いますので、刑政長官から代理の意味で御感想なり私の質問にお答え願いたいと思います。実は納税制度税法として全般に大改正いたしまして、今度のは比較的合理的な税である。しかも現在の日本のインフレ経済が終息するような段階において、また封鎖経済が解かれつつある日本の実情のもとにおきまして、はたして合理的な税制をしいた場合にある程度摩擦が起るかどうか。その点に対しましてシャウプ勧告では納税裁判機関という項目を設けまして、いわゆる現在日本にはないが、あまり遠くない将来租税專門の裁判所が設置されねばならない、こういうようなことが一つございます。納税者の持ち出す租税事件だけを聽取するために、新しい下級裁判所を創設する云々というようなことを勧告の中に入れております。おそらく私はこういつた申告制度をぐんぐん進めるかたわらにおきまして、義務づけられて申告制度になつておる場合におきましては、納税者がそれによつて今度は争つて行く。いわゆる納税者の権益擁護の面がもつとはつきりして参らなければならない。このいわゆる裁判制度と申しますか、こういうものにつきまして法務府におきましては何かお考えがあるかどうか。この一点をまずお聞きしたいと思います。もし御所管が直接でないならば、私は御答弁を留保願いまして、次の問題に入つてもよろしゆうございますが、こういつた問題を……
  142. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 ただいまお尋ねの点でございまするが、税制に関して特別な裁判制度を設けるということについては、法務府においてはまだ考えておりません。しかしながらお話のように税制に関する裁判については、特に租税行政に通暁している裁判官をもつて、適切に行わなければならぬということは同感でありますので、その辺につきましては検察方面においても、十分租税行政に通暁するように研究いたしております。
  143. 西村直己

    ○西村(直)委員 これは私だけでなくして、シャウプ勧告にはつきり出ておりますので、いわゆる納税者納税義務という思想を普及すると同時に、これに対してこの義務をかなり強化するわけであります。今回の税法で、また税務官庁自体も、新しい税法になると、どうしても今度こそ新しくなつたからしつかりやる、あるいは青色申告を出さないからこうだというような、いろいろ問題が起つて来る。そうした納税の確定について、あるいは確定後において問題が起つた場合に、どうしてもこうした租税事件だけを担当するところの裁判所を置くことが必要じやないか。この点は御研究の必要がある。  第二点は、刑政長官の直接の管下にあるところの税務検事の問題であります。実は現在の実情から見ますると、特に一つの例を中小企業者などに求めますと、たとえば私はこういう具体的な事例を知つておりますが、百万円の物品税の脱税をした、そうすると旧法によつて五倍ただちにかかつて来る。合計六百万円――しかも小さな中小商工業者は五百万円の赤字を出しておる。なるほど過去において百万円の脱税をしたことは惡いが、その人が五百万円の赤字に際して、さらに六百万円を出さなければならない。すなわち言いかえれば一千万円以上のそこに借金ができる。どうにもならない。それから税務署の方で、最後にはもし納めなければ告発をしますという、ただ簡單な答えがある。それからそれが検事局へ移れば、検事局ではただ犯罪の面だけやつて行く。そうすると一人の人が要するに刑務所に行つて、どうにもならないという現状が起つておるのを私は一、二見ております。また具体的な事例として、いまひとつ私は非常に遺憾な事例と思つたのでありますが、なるほど物品税を脱税しますのは犯罪でございます。そうしてそこに最低五倍の追徴がついて来る。しかもさらに経済調査庁方面が検事局と連絡をとつて経済事犯となる。私は前の国会で申し上げましたが、首をつらして足をひつぱるような印象を受ける。これはたまたま見つかつた者が不運であるというような印象を與えておる場合が多いのであります。私は経済の現状を考えますと、いわゆる税務係の検事さんが、よほど金融なり経済の実態をよく把握しまして、脱税者の事犯の扱いをなさつていただくように、強い御希望を申し上げたいのでありますが、特に一番業者その他弱体なもので脱税にかかつた者が弱つておりますものは、身柄が拘束される場合であります。中小商工業者におきましては、身柄が拘束される場合には、一家の事業が完全にストップするわけであります。一切こまかいことから大きなことまで一人でやつておるという場合に、ややもすると検事さんがそういう点についての十分なるお考えがない。いわゆる普通の強力犯と同じような考えで、判事の令状をもつてどんどん御執行になるということがあると私は思うのであります。それらの御監督をお願いできるかどうか。特に昨日大蔵大臣からもありがたい御答弁をいただいたわけでありますが、今回加算税、延滯金等は従来二十銭あるいは十銭というような高率であつたものを、四月一日から八銭なり四銭に切りかえる。しかもそれをさらに單行法をつくつて、今回国会にかけて、これが通過しますれば一月一日にさかのぼつてこれを実施して行く。すなわち納税者あるいは滯納者にとつては非常に便宜でありますが、いまひとつこれは検事局におかれましても、税制が四月から新しくなり合理的になるならば、過去の、しかも比較的みんなが見て鼻血も出ないような中小企業者に対しては、税金が納まらない、脱税したというような場合にも、できるだけ起訴猶予または不起訴、こういうような手をおとりになるように、検察陣に対しまして御指揮ができるかどうか、こういう点であります。御存じのように昨今は町におきまして話題になりますものは、金詰まりと税金、しかも話題の問題は中小企業者であります。この中小企業者が二十三年、二十四年のいわゆるしわの寄つた税金の滯納なり脱税なりに対して、最後には牢獄の手がまわつて来る。しかして四月一日から新しい税法が生れようとしている。この際に過去の問題に対しては、ある程度経済の実情に合うようにやつていただきたいことが一つであります。特にこれは検事さんの惡口を言うわけではありませんが、昨今検察当局をごらんいただきますと、外地からお引揚げになつ検事さんが相当つておられます。また民間からお入りになつた方もたくさんありまして、それらの方々には立派な方もあるが、一面においてずいぶん乱暴な検察をおやりになる方もあります。私も今日検事の資格審査の委員の一人にはなつておりますが、検事さんの行動に対してはなかなか監督が薄いわけであります。言いかえれば、かつては警察がファショであつたと言われたが、今日はうつかりすると検事ファショという言葉が出て来るのであります。そういう意味で経済方面、特に抵抗力の小さい中小企業、しかも今日非常に困難な立場にあるものに対して、むずかしい税法――しかも税法の切りかえが行われ、経済の波が荒れているときにあたつて、検察の最高幹部の方々といたしましては、十分な注意をもつて税法を施行されると同時に、従来の比較的――脱税はみな惡質と言えるでありましようけれども、生きるために脱税をしなければならぬ、あるいは企業採算がとれなくなつた結果として、どうしても税が納まらぬというような場合の扱いについては、今後施行になるであろうところの新税法が合理的であるだけに、合理的にやるならばそこに摩擦が起るという点についてお考えになつて、十分なる御監督なり御指示をいただきたいと思います。この点に対する御所見を伺いたい。
  144. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 御承知のように税務関係の事犯を取扱うために、税務係の検事を特定いたしているのでありまして、その税務検事はできるだけ経済界の事情に通じまして、具体的事件について適切な処理をなすように努力いたしているのであります。従来脱税犯につきましても、惡質重大なるものに限つてその摘発の対象としているのでありますが、実際問題につきましては、すべて国税庁の告発をまつてさらに調査を進め、捜査の結果起訴、不起訴の妥当な処置をとつているのであります。この具体的な事件の処理にあたりまして、その具体的な各種の事情を愼重に考慮する方針をとつているのでありまして、過大な罰金を科することによつて企業の維持を困難ならしめるというようなことは、努めて避けているのであります。今後といえどもその方針で進みたいと考えております。なおお尋ねの、今日の税法改正案によりまして、脱税額が五百万円を越えるような多額のものにつきましても、脱税額の一倍以下の罰金にするという罰金の法定額が非常に下げられたのでありまして、これはお話のように主として企業の維持を考えて、かような改正案が仕組まれたものと考えるのであります。従つて今後の脱税犯の検挙なりあるいは起訴、不起訴を定める場合におきましても、具体的な事情を十分に考慮して、企業の維持に困難を来さしめることのないように、愼重に事を取扱いたいと考えておるのであります。四月から税制改正になりまするので、それまでに旧税法によつて検挙、されておるものにつきましては、もちろん改正税法趣旨もともとと考慮に入れまして、検事は起訴、不起訴について具体的に妥当なる処分をするように、これは検事会同等においても全国の検事に徹底させておるのでありまするから、その懸案の事案を処理するにあたりましても、適切な処分を見ることと考えております。
  145. 佐久間徹

    ○佐久間委員 ただいまの質問に関連してお尋ねしたいと思うのですが、勾引状を発行したりあるいは家宅捜査の許可をする場合に、一体どこで許可をするのですか、お伺いいたします。
  146. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 勾引状並びに勾留状の発行を求めるのは、これは御承知のように裁判所でありまして、家宅捜索についてももちろん裁判所の令状なり、あるいは裁判所の許可がなければできないことになつております。
  147. 佐久間徹

    ○佐久間委員 今まで勾引状とかあるいは家宅捜索の令状を発行して、それによつて罪になつたその統計のようなものがありましようか。
  148. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 今まで裁判所の方でどのくらいの件数取扱つたかということは、裁判所の方の統計でわかることと思いまするが、その勾引状なりあるいは家宅捜索の令状の出た事件のうち、どのくらいが起訴されたか、あるいは有罪の判決を受けたかという割合につきましては、別に統計をとつたものはございません。
  149. 佐久間徹

    ○佐久間委員 私がなぜそれを尋ねるかと申しますと、最近頻々としてそういう事例があるわけでありまして、非常に簡單な問題でもただちに勾引状を出す、あるいは税の問題にいたしましても、たちまちのうちに家宅捜索をやる。それによつて個人の名誉がまるで毀損されてしまう場合が多いのであります。ところが実際におきましては、それほどの刑に処すべき何ものもなかつたというようなことがたくさん起つておるように思うのであります。この手続などについて、もう少し何とか愼重にやる方法はないものかどうか。それを私は伺いたかつたのであります。従いまして勾引状を紙ペラのように、どんどん出されるために、地方におきましてはむしろ濫発されておるのではないかというような観念を與え、国民に非常に恐怖の念を與えつつある。これがいわゆる社会不安の根源ではないかとまで言われておるように思うのでありまして、この点に対して私は特に御注意申し上げたいと思うのでありまして、できるならば先ほど申しました勾引状を発行し、あるいは家宅捜索令状を発行したことによつて、事実それに見合つて罪になつたかどうかという決定資料をお出し願いたいと思います。きようでなくてもけつこうでありますが、ございましたならば、いつかの機会にいただきたいと思います。
  150. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 税の関係だけ資料を持つておりまするので、お答えいたしたいと思います。御承知通り、査察関係仕事を開始いたしましたのが一昨年の中ごろであります。それ以来昨年の十二月までに査察いたしました件数は、千九百七十七件になつております。そのうち惡質な脱税者といたしまして告発をいたしました件数は、百七十一件であります。しかしてまたこの査察によりまして、脱税額として税を増額いたしました金額は百三十八億三千四百万円であります。
  151. 佐久間徹

    ○佐久間委員 税金の方にはまつたく負けて手をあげております。われわれ一般にいたしましても、すつかり調べられますれば多少のあれは出て来るのでありまして、これは税務署の方にはあるだろうと思うのでございますが、そのほかのものについては、そうでない場合が多々あるのでありまして、この点を十分に愼重にしていただきたいということを、私はここで要望するわけであります。これ以上重ねて質問はいたしませんが、この機会に加算税と追徴税のことでお尋ねしたいと思います。これは同僚議員からすでにいろいろ質疑をされておりますし、ことに改正も近きにありということを、大蔵大臣も言明せられておりますから、ただ私のお尋ねいたしたいのは、今までございましたレートによりまして過去のものに課税する場合に、その取扱いに関してどういう方法をやるのか。この前に平田局長お話では、今度改正になりまして、一月一日から新たに施行されるということになりますと、過去のものは過去の率によつてこれを処置して行くということになるだろうと思うのであります。ところが過去のあのインフレの苛烈な時代には、日歩十銭とか二十銭、あるいは二割五分というようなことも、しかたがなかつただろうと思うのでありますが、現在の経済状態におきまして、これに賦課するということになりますと、これは参つてしまいはせぬかというような気がするのでありますが、事業がいろいろの面において非常に困つておりますし、引締められつつある現在、非常な苛酷な税金を負担しなければならぬ、こういうことについてはずいふん苦しい場面が今日出て来るのではないかと思いまして、税務署の方々に聞いてみましても、この取扱いについては疑問があるように聞いておりますが、いかなる御感想を持つておられますか、承りたいと思います。
  152. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 加算税及び追徴税の取扱いにつきましては、昨日も大臣から御答弁がありましたように、一月一日まではさかのぼつてこの軽減が行われることに相なるかと思うのでありますが、昨年の十二月末までは、現在の税法に基いてそのまま実行せざるを得ないかと思うのであります。しかしながら税法規定規定といたしまして、実際問題といたしましては、税務の手も非常に手不足でもありますし、能力も十分でございませんので、私どもとしては主として二十三年度、二十四年度、この近い年度に中心を置きまして、もつぱらその面におけるところの公平を得るという建前をもつて仕事をいたして行く方針でございます。しかしながら過去のものにつきましても相当惡質なものもございますので、それらのものにつきましては、やはり確実な調査ができました場合においては、法の適用を避けることはできがたいと思うのでありますので、御了承願いたいと思います。
  153. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長代理 刑政長官に対する質疑があつたら先に願います。
  154. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 幸い刑政長官がおいでになりまして、税裁判については大いに研究する。こういう建前のように承つたのでありますが、シャウプ勧告案につきまして西村委員が先ほどお述べになりました通り、われわれといたしましては、今までの経験によりますと、大体二百数件しか行政裁判になつていないということを聞いておつたのでありますが、これと関連いたしまして、今後は二百数件ばかりでなく何千件というふうに、もつとたくさん出て来はしないかと思うのであります。これらは行政裁判関係になると思いますが、佐藤長官の御意見をひとつ承りたい。
  155. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 税制改正になりますれば、私の方の考えとしては、むしろ従来よりも税務署に関する行政訴訟が、相当ふえるのではないかというような見通しを持つておりますが、はたしてどのくらいの結果になりますか。今のところ予想はできないような状態であります。
  156. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今のお話によりまして、今のところは予想はできぬと仰せになるわけでありますが、なるべく税務署内で片づけ、税務署内で片づかぬものは国税局の協議団で片づけ、国税局の協議団で片づかぬものは訴訟という段階になつておりますから、私どもといたしましては、なるべく訴訟まで行かないで簡單に片づく方法を講じたい、かように考えるのが立法者の趣旨だろうと私は考えております。しかし万やむを得ず、国民のことでありますから最後まで争いたいという人には、これを阻止することはできないと思いますから、西村委員の御発言もございましたが、私からも一言それにつけ加えましてぜひ穏健妥当にして公平なる判断のもとに、直接国税が納入できますように一般と御努力賜わらんことを希望いたします。
  157. 木村榮

    ○木村(榮)委員 今の御答弁によれば、今後は行政訴訟がふえるというふうな見込みである、こういう御答弁でありますが、そういたしますと今まで平田主税局長などが説明されたのと相当趣旨が違う。と申しますのは、税制を改革していよいよ今度こそ民主的な税制になる。そうして今までのようなごたごたが今度はなくなつて行くといつたようなことが大体大ざつばに一貫した主張であつた。ところが同じ政府部内で、今度は法務府の方では相当行政訴訟などふえて来るということになれば、これはちよつとおかしいと思うのです。結局納税者の納得が行かないようなことを押しつけて来る危險性が多いから、従つて行政訴訟がふえる、こういうのが常識的な見方であるが、これに対して平田主税局長はどういうお見込みでありますか。
  158. 平田敬一郎

    平田政府委員 私が申し上げましたのは、あくまでも税法が合理的なラインで解決になるということは、たびたび申し上げておる通りであります。税の負担は、今までと比べますと相当下ります。これはたびたび申し上げておる通りで間違いありません。それから課税の仕方につきましてもますます勉強いたしまして、よく調べまして紛議を少くしようという考えであります。従いましてそういう意味合いにおきまするごたごたは大いに減ると思います。また減るように私どもは努力して参りたい。ただ今後におきましては、この合理的な解決をはかるという意味におきまして、たとえば解釈上の差とかあるいは事実認定につきましても、單純に話合い等で適当にやるといつたようなことは、どちらかと申しますとあまり好ましくございませんので、やはりそれぞれ合理的な主張なり努力は傾けまして、実際問題は片づけて行くということになるかと思います。そういうことになりますと、納税者の側におきましてもやはり正規のコースを経て、それぞれ納得の行くまでお互いに意見を交換して、それぞれ法律に服して行くということになるかと思います。そういうラインから行きますと、私はそういう意味の訴訟その他はあるいは相当ふえて来るかもしれない。こういう点につきましては今後の情勢次第でございますから、どういうふうになるかわかりませんが、合理的な解決をはかろうという気構えになつて考えますれば、あるいはそういう訴訟は場合によつてはふえるかもしれない。私もこういう考えでおるわけであります。ただ非常にわけもわからないでお互いに紛争し合うといつたような事態がややあるようでありますが、そういうことは極力少くするように努力しますし、またなり得るのではないか、かように考えております。
  159. 木村榮

    ○木村(榮)委員 従つてそのことから考えますことは、今までの徴税方法においては、そのわけのわからぬことを、税務署が一方的に強行しておつたということの証明が成り立つと思うのであります。従つて行政訴訟まで持つて行かなくて、また持つて行かないで巧みに強制しておつたということは、今までの平田局長の言で簡單に引き出すことができるのでありますが、そう解釈してさしつかえないですか。
  160. 平田敬一郎

    平田政府委員 いかに御解釈になるかは御自由でございますが、私ども率直に……
  161. 木村榮

    ○木村(榮)委員 いや、そうではない。そういう解釈になる。
  162. 平田敬一郎

    平田政府委員 率直に申し上げておるのでありまして、現在のところにおきまして、いろいろ納税についてトラブルがあることは当然認めております。決してそんなことをごまかしておるわけではありません。
  163. 木村榮

    ○木村(榮)委員 今私の質問に対して、刑政長官の方からは何ら御意見の開陳がないのですが、あつたら聞かせてもらいたい。
  164. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 明治憲法時代の行政裁判制度が改まりましてから、その後の税務に関する行政訴訟の提起の件数の傾向を見ますと、だんだん訴訟事件の数がふえておりますので、私が先ほど申し上げたのは、税制改革のいかんにかかわらず、だんだん税務に関する行政訴訟がふえて行くのではないかという傾向を申し上げたのであります。大蔵当局お話のように、今度税制改革によつて、合理的基礎によつて合理的に課税をきめられて行く。またその紛争についても、訴訟になる前に幾段階も裁決の方法が設けられておるのでありまするから、そういう意味からは、いわゆる実質的な合理的な裁判を求めるという訴訟は、あるいは少くなるだろうということも考えられるのであります。これはまつたく将来の新しい税制の運営いかんにかかわることではないか、かように考えております。
  165. 木村榮

    ○木村(榮)委員 つかみどころのない答弁であつたのですが、それでけつこうです。と申しますのは、それでは昭和二十四年度所得税なんかにいたしましても、末端税務署において所得税法を無視して、強行的に徴税をしておつたということが、いろいろな証拠によつて裏づけられて、これが行政訴訟その他の形において提起された場合は、裁判所はこれを取上げて徹底的に究明される方針ですか。それとも彈圧してやめさせる方針であるか、はつきりさしてもらいたいと思います。
  166. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 税務に関する行政訴訟が裁判所に提起された場合に、裁判所がその事件についてどういう方針で裁判するかというようなことは、これはもちろん私どもの所管外でございまして申し上げるまでもないのであります。具体的な事件について適切妥当な裁判をするだろうということを、申し上げるよりほかにございません。     〔前尾委員長代理退席、委員長着席〕
  167. 木村榮

    ○木村(榮)委員 現に末端税務署においては、行政訴訟の問題を出すと、今度は税務署の方がまた行つて、お前は行政訴訟云々と言つたそうだが、そういうことを言うなら今度はまた税金をうんとかけて、ひどい目にあわせるということを言つて歩く。こういうことが具体的に現実の問題として、証拠があつて出た場合はどうなるのですか。
  168. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 具体的な事件について証拠がありますれば、その証拠に基いて、裁判所はもちろん適切に裁判することだろうと思います。
  169. 木村榮

    ○木村(榮)委員 それで大体税金を納めますのに、やれ行政訴訟だとか何だとか、それを称して合理的な裁決とか何とかいうことは、そもそも最初にその税金のかけ方が惡いから起つて来る問題であつて税金のかけ方が適切であればそんなくだらぬことが起るはずがない。従つてどんな形であろうが、その数がふえるということは、最初が間違つてつたということを端的に表明したものだと私は思う。それに対しては平田主税局長は、今度の所得税法によつて、今度は最もうまくできたということを盛んに宣伝されますが、それは非常におかしいと私は思う。だからまだまだ不完全である。ようやくこの程度のものをこしらえたということを率直に認められた方が、この際いいのではないか。その点はどうですか。
  170. 平田敬一郎

    平田政府委員 所得税法がうまくできているかどうかは、皆さんの御批判におまかせいたします。
  171. 木村榮

    ○木村(榮)委員 いわゆる自信がないというわけですね。
  172. 川野芳滿

  173. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は與党の方でありますから、不完全とか何とかいうのではありませんが、しかし先ほどお尋ねしました予定申告の問題であります。先ほど来どうも議論がからまわりになりますので、少し具体的につつ込んでお尋ねいたしたいと思います。私はどうしてもこの予定申告の條項はきつ過ぎると思う。実際実施した場合、この法案の一番の欠点と申しますか、がんと申しますか、ほかの変動所得あるいは欠損の繰りもどし、あるいは繰下げなどは非常にいい制度でありますが、この予定申告の問題についてわれわれはよほどこれはよく検討しなければならぬ。具体的に申し上げます。局長の御答弁によりますと、一応先に拂うものは拂つておけ、そうして最後の確定申告によつて適正な課税をして、場合によつてはもどす、こういうことになるのですが、末端の税務行政においては、この規定が非常にきつく当つて来る。この規定を見ますると、一応前年度の所得申告を出して、それ以上ならばよろしい。それ以下ならば承認を受けろ。その承認はなかなか簡單には受けられぬ。その承認が簡單に受けられぬということは、これは私あとから申し上げます。かりにそう行くとするならば、前年度以上に大体申告納税の予定申告がなされる。その三分の一が納税されるということになりますから、六月三十日には大体前年度の納税額の三分の一程度税金が納められるということになるはずです。ところが今までの実績を見ますると、一昨年の実績は申告納税のわずかに三〇%余りが前年十二月までに納められた。昨年の実績でいえば、約四〇%が十二月三十一日までに納められている。ところが今度は三分の一が六月までにすでに納められる。いよいよこの税法が実地されるとすれば、現に年末までに納められるごとき金額が、すでに今年の六月において納められるということに具体的にはなる。三月危機と言つておりますが、われわれは六月危機がこれによつて生ずると思うのです。この点はその通りなるかならぬか、その点を一応お尋ねいたします。
  174. 平田敬一郎

    平田政府委員 今御指摘の点は、まず第一に私どもが今まで欠陷がありとして是正しようとしている点であります。今まで所得税申告所得税は上半期に納まらないで、年度末に一ぺんに納まつた。ことに一月の確定申告とかそれに対する更正決定で、ほとんど大部分を納めるというような実情にあつた。これにつきましては、こういう制度をとらない前におきましては、各委員から、もう少し何とか早く納まるような制度ができないものだろうか、というような御意見があり、そのために納税準備預金の制度を去年設けましたことは御承知通りでございます。税金というものはなるべく年間に分散しまして、なだらかに納めた方が納税者も納めいい。結局一緒に固まりますとえらいことになる。私どもも源泉で毎月差引かれておりますが、あの税額をかりに一月に至りまして一ぺんに納めるということになりましたら、どえらいことであります。そういう意味におきまして、私ども申告納税納税者の方々が、一月なり二月に至りまして一時に納税しておられるが、それはなかなかなまやさしいことではないだろうということは、たびたび申し上げておる通りであります。これをこのままにしておいたのでは、いつまでたちましても一ぺんに税金が行つて納税者が困るという事態が改善されませんので、せめて前年実績をもとにした額ぐらいまでは、ひとつ各納期ごとに予定申告で納めてもらおう、こういう趣旨であります。従いまして、お話通り、確かに今年はある程度早期に納税していただかなければならぬということは、私ども当然そういうことに考えておるわけでありまして、その点は御了承願いたいと思います。それからなお同時に、今度は予定申告を前年で申告してもらいますならば、更正決定はいたさないのであります。前年まで申告していただきますれば……。今まで、去年は御承知通り予定申告に対しまして、申告成績が非常に惡かつたので、やむを得ず中間で更正決定等を行つておりますが、更正決定を行いました結果が、なかなかこれはうまく行かないというような点がありまして、非常な問題が起つておるということも御承知だろうと思いますが、そういう問題も、この制度を導入することによつてよほど少くなることと思います。  それから最後に、実除問題としまして、今年は所得の計算は、御承知通り昨年よりもある程度増加するという前堤で、すべて申告所得税の見積りも立てておるのであります。従いまして前年実績で行きました税額は、予算の額よりも私相当少いと思います。相当少いのであります。従いまして、少うございますので、最初納めます分も、二期に納めます分も、予算額を三分の一した数字よりも相当少い数字だろう、かように考えます。それから農業所得につきましては、御承知通り單作地帶等は十一月と二月に二分しておりますので、この分はもちろん遅れるかと思います。しかしながら計画としましては、今奧村委員お話なつ通りでありまして、大体そういう方向に行くようにしなければ、いくらたちましても、申告納税の円滑な納税というものは実現困難ではなかろうかというので、シャウプ勧告に基きまして、かような制度を導入することにいたした次第であります。
  175. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今までの予定申告の成績が惡かつたのを、一挙に是正いたすために、大体各所得税を三分の一ずつに分割して、今度はぎつちり納めさせるようであります。従つて六月と十月にかなりの税金が徴收されるということでありますので、そこで今回は前年通りあるいはそれ以上の予定申告では、更正決定をいたさないというお話でありますが、このいたさない理由としては事務が繁忙でできない、こういう意味でありますか。
  176. 平田敬一郎

    平田政府委員 先ほど申しましたように、予定申告の段階におきましては、とにかく余裕を見積つて査定しなくてはなりませんので、今までの経験から申し上げまして、実際やつてみましたらなかなかむずかしい。従いしまてこれはむしろ大いに簡素化をはかる意味で、前年申告でやれば納税者もそれで予定申告は済んだということになるのでありまして、また政府におきましてもその段階で中間で調べまして、非常に申告が低いために、むりな、あるいは調査が十分行き届かないで早く決定をしなくてはならぬというようなこともなくなりまして、その点はかえつてなだらかに行き得るのではないか。従いまして実際問題の解決といたしましては、こういう方が日本の実情に即するのではないか、かように考えております。
  177. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこがかんじんなのです。つまり予定申告の場合は将来の事態を見越しての見積りであるから、更正決定はなかなか困難であるからやむを得ない、こういう意味でありますが、その通りでありますか。
  178. 平田敬一郎

    平田政府委員 今までの経験によりまして、そういう制度を置くよりも、前年実績で申告されますならば、それで一応予定納税をしておきまして、重ねてそれに対して更正決定をしないような制度の方が、より実情に即しましてうまく行くのではないか、こういう考えであります。
  179. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それならそれでおとりになる方の側としてはその方がお楽であろうと思うのであります。しかし今度はとられる方の側としては、この方法に非常に私は問題があると思うので、その点をひとつつつ込んでお尋ねいたします。そこで前年度以下の所得申告の場合、風水害とかあるいは大災難とか、あるいは病気で医療費を支出するとか、うそいうふうな災害など以外の場合で、前年度の総所得金額に対して十分の二以上減少する場合は、税務署長の承認を得なければならぬ、こうなるのでありますが、さて納税者として前年度の総所得金額の十分の二以上減少するということを申請するその申告書につけるところの証拠は、具体的に一体どういうことができるか。これが私は実に問題になろうと思う。この制度が実施されますと、納税者の頭になると、これはもう実績主義になつてしまつたのだ。一旦所得決定になれば、あくる年はもうそれ以下には絶対に減らない。減らさせようと思えば税務著長の承認を得なければならぬ。その承認をどうしてとるか。そこでまずお伺いいたしますのは、こういう災害以外に十分の二以上所得が減少する、つまり商売が非常にさびれるという場合の証拠、五月一日においてその年中の商売がうまく行かないという将来の見通しに対する証拠をどうして出すことができるか。私はここが重要な問題だと思う。それで事業を半分に減らす、店を締める、それならば明らかに証拠になるでしよう。しかしそれは税法として望むところではなかろう。したならば、十分の二以上所得が減少するということの原因の中には、物価が下つて、手持品が下つたために利益がないということ、これが第一の原因であろうと思うが、その原因は、証拠として認められるかどうか。つまり時価が下落したということが認められるかどうか。
  180. 平田敬一郎

    平田政府委員 それにつきましては取引の記録等に基いて計算したもの、事実を証明する書類を一緒に出してもらうことになるのであります。つまり五月一日現在におきまして、一月から五月までの状況が前年度に比べまして著しく惡いということが、帳簿等によりましてはつきりなります場合におきましては、これは私は有力な一つの材料だと思います。従いまして今の奧村委員お話のように、五月当時すでに物価が下落いたしまして、上期において利益が相当つているということが、記録等に基まきしてはつきりしている場合は、私は確実な相当有力な材料だと言い得ると思います。しかし将来下るかもしれない、上るかもしれない、その後における予想を織り込まないと、まだ二割減るかどうかわからない、こういつたような場合は結局水かけ論になりますので、先ほどから申しておりますように、予定申告でありまするし、お互いに簡單な道を選んだらどうかというのが、今回の大体のねらいでございます。
  181. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これはもうことし現実にこの法実施と同時に大問題が起ると思います。と申しますのは、おそらく中小商工業者にとつては、現在すでに昨年と比べて二割の所得減どころではない、物によつては半分あるいは三分の一に下落しております。そこで具体的にお尋ねいたしますが、五月一日現在において、昨年と比べて物価が半分に下落しているということが証明できますならば、この條項によつて税務署長が承認できるかどうか。
  182. 平田敬一郎

    平田政府委員 今お尋ねになりましたような事実だけでは私は証明はむずかしいと思います。一月から五月までの取引の記録に基きまして、前年度の同期に比較いたしまして利益がどの程度つているか。そういうものが一番確実な材料であると思うのであります。従いまして物価の下落が、たとえば去年の十二月末までにすでに始まつておるような場合、こういう場合におきましては、それほど去年の同期に比べましてことしの五月が下つておりましても、必ずしも利益は減らないかもしれない。それは一つのよるべき事実ではあると思いますが、それだけではちよつと困難かと思います。
  183. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これは大分むずかしい話ですが、しかし全国の各税務署長が今私が平田局長と議論をするようなことを頭に考えてやつてくれればよろしいが、なかなかこれがむずかしい。こういうむずかしいことを今実施しようとなさる。それで私はこれを速記録にもとどめる意味において、もう一つつつ込んでお尋ねいたします。それは前年度と比較してと言われるのは、昨年の一月から五月までの所得と比べて、ことしの一月から五月までの所得が十分の二以上減つておるということが証明できますならば、これは明らかに証明として認められるのでありますか。
  184. 平田敬一郎

    平田政府委員 この際きわめて形式的なことをあまりはつきり申し上げるとかえつてぐあい惡いと思いますが、正確に申しますと、今のような場合でありましたら私はこうお答えいたしたい。と申しますのは昨年一箇年の実績があります。それがわかつておるわけであります。それを元にしようというわけでございますから、それとことしの一月から五月までの分の実績が記録等によつてかりにわかつたといたします。一月から五月までの分を年間に引伸ばしてみるのであります。五月現在の状況がかりに大体同じように続くとしまして、年末まで幾ら利益があるだろうか、これは見積ります場合の一番合理的な方法でありますが、そういう方法をやりまして一月から五月までの実績に基きまして、年末まで五月の状況をもとにして引伸ばしてみる。その引伸ばしました所得か前年の実績と比べまして、はたして二割増減しておるかどうかというのが、これが私は一番よるべきいい材料ではないかと考えるのであります。もちろん個々の人の事情によりまして必ずしもそういう方法によれない場合もございましよう。それから季節的変動等もございますから、一年に伸ばす場合におきましては、やはり顯著な季節的変動のある事業につきましては、そういう実情も考慮しまして年間の所得を見積らなくちやならないかもしれません。しかしながらいずれにしても、極力そういう合理的な方法を用いまして、事実が明らかになつておりますならば、税務署長は二割以上減つておると認められる場合は、必ずこれは承認を與えなければならぬ法律にいたしておるのであります。
  185. 奧村又十郎

    ○奧村委員 重ねてお尋ねいたします。納税者の身にとつては、昨年よりも二割以上所得が減つておるのだということはおそらくみな腹に持つておるが、この條文に照して税務署長に承認させる申請書なりその証拠書類をどうつくるかということに、おそらく納税者の大部分が苦しむだろうと思う。その承認するかどうかを單に税務署長の裁量にまかせるということ、これが大体今までの税法の欠陷で、従つて場合によると問答無益で、いやなら警察にひつぱつて行けということになるので、ここを明らかにしておきたい。それがためにひとつ局長にお尋ねして、これを速記録に残してもおきたいので、今局長の御答弁はそこの言葉がぼけてしまいました、あつたじやないかと思いますでは、これは速記録に載せても証拠になりませんので、ここははつきりしておきたい。第一私はどう考えても税務署長に承認させるような書類が、どういう場合承認させられるかという場合が私は一つ考えられぬ。せめて一つでも二つでもここにはつきり残していただきたいから、つつ込んでお尋ねいたします。單に物価の下落ということは、これは承認のされるものでない。それは当然私から申し上げるまでもなく、物価変動の場合においては調整比率でもつて別にやるのでありますから、これは問題にならぬ、そうするとその個々の承認の証拠書類としては、どうしても前年度と今年度との状況に照らして行かなければならぬ。そこで非常に可能な場合としては税務署長がいわく、今までは一月から五月までは下つたけれども、五月から十月までにもうかる場合があるじやないか。それで逃げられるのでありますから、逃げられないようにはつきりさせると、昨年一年中の所得と、今年の一月から五月までの所得を実績によつて比べてみると、一年を通計してみて二割以上減つておるという帳簿上その他の証拠書類を提出することができるならば、税務署長はこれを承認する、こういうふうになるのでありますか。またさような通知をお出しになるかどうか、お伺いします。
  186. 平田敬一郎

    平田政府委員 先にも申し上げておりますが、確実な証拠があります場合におきましては、税務署長は承認しなければならないことに規定しております。しかしてその判断の基準をどのように求めるかということが、今奧村委員がたびたびお尋ねになつておるところだと思いますが、私は原則的な基準といたしましては、先ほど申し上げましたように一月から五月までの記録が明らかになつておる。ことに青色申告等を提出しておられる納税者の場合は、多分それが相当可能であろうと思いますが、そういう場合におきましては一月から五月までの期間を打切りまして一応所得計算をしてみる。その後の所得は、状況の変化は大体五月の末の現況によりまして判断しまして、年間に見積られるわけであります。その将来の見通しをそこに入れますと客観的な基礎かなくなりますので、大体におきまして五月一日の現況によりましてその後の状況を見積りまして、それによつて所得を年間に引伸ばしてみる。その引伸ばした所得というものが、前年の実績に比べまして二割増減があるかどうかということで判断するよりほかないと思います。従いまして季節的な変動が前の実績等によりましてないような事業、こういう事業の場合におきましては、一月から四月までの実績でございますから、それを三倍にした数字が年間の利益、その利益を前年の利益と比べてはたして二割余の増減があるかどうか。これが一つの有力なものさしだと思います。しかしそのものさしだけで妥当を得るかと申しますと、必ずしもそうじやない場合もあるかもしれませんが、一番基本的になるものさしはそういうようなものであろうと思います。それはなかんずく取引の記録を、青色申告制度を利用しておられる方々は、帳簿をつけておるはずでございますから、これに基きまして税務署に承認の申請をしてもらうということになるわけであります。そういたしましてそういう事実が明らかであります場合は、法律にもはつきりと税務署長も承認しなければならない規定に実はいたしております。従つてそういう事実があるにかかわらず承認しない場合には、審査の請求も可能なのであります。再調査の請求もできることにいたしております。
  187. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それで大体わかりましたが、相場の変動などのかなりはげしい事業については、一月から五月までの実績によつても証明はできないということになるのでありますか。その点はいかがでしよう。
  188. 平田敬一郎

    平田政府委員 その辺は結局個々のケースに基きまして判断するよりほかはないと思います。そういう事情がございますから、そこで所得計算その他には、非常にそういう問題については形式的に明らかにすることができないわけでありまして、そこは納税者の方から提出しました材料に対して、税務官吏が善意でよく調べまして判断を下して、それで問題を解決して行くというよりほかはないと考えます。
  189. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこで税務署長の承認、不承認に対して不服のある場合は再調査の請求ができるとおつしやいましたが、その再調査が今までの例をもつてみればはなはだ困難であつて、確定申告まで延びておるということが多かつたのでありますが、今回はそれが迅速に行われ得るという見通しは立つておりますか。
  190. 平田敬一郎

    平田政府委員 私は今後非常に経済界が変動いたしまして、所得が減少するという事実が発生した場合におきましては、今御指摘のような事件相当出て来るだろうと思いますが、今の大体の状況から申しますと、特殊な産業にはあるいは予想されるかもしれませんが、一般的な小売業、製造業等におきまして、前年度の実績より所得が非常に減るだろうというようなことは、まず考えられないと思います。従いまして一般的に減るだろうと予想されるような事態の場合におきましては、先ほどから申し上げておりますように、一定の率で前年度実績額を増減して、この法律を適用することにいたしております。従いまして一般的な変動がない場合におきましては、こういうものに該当するものとして出て来ますケースは、従来更正決定いたしますそのすべてのケースに比べますと相当少いだろうと考えます。従いましてかりにそういう紛議が起りましても、従来のように数多くの納税者を相手にしないで、比較的少数の納税者を相手にいたしまして、それぞれ処理をいたすことにいたしますから、よほど従来より合理的な解決がはかり得るのではないか。すみやかにそういう際は処理するように努力すべきものだと考えるのであります。
  191. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は二十一條の三の物価変動状況等を勘案いたしまして、いわゆる調整比率をきめるということは、少くとも業種別と申しますか、そういうようなことで行くべきであつて、全般的に一割増すとか、一割減るとか、そういうことは実際上あり得ない。業種別におやりになるのかどうか。
  192. 平田敬一郎

    平田政府委員 この法律につきましてはいずれ法律案として提出いたしまして、政府のよるべき基準を実はきめてもらおうと思つております。その程度を何割ぐらい増減がある場合においてこれを適用するか。それから今御指摘のようにある程度業種別にやるか。これも研究問題だろうと思います。こういう問題につきましてはよく研究いたしまして、別途法律案を提案いたしまして、適当なる機会にこの規定が働けるようにいたしたいと考えております。今年は大体におきまして政府は今のところある程度全体としては所得がふえるだろう。物価は若干下るかもしれませんが、まず前年度におきましてよりも今年の予定申告の際におきましては、さしたる支障はないだろうという考えでおる次第でございます。この法律につきましては今お話になりましたようなことも十分研究いたしまして、適切なる比率をつくるようにいたしたいと考えております。
  193. 奧村又十郎

    ○奧村委員 予定申告についてはまだありますが、また別の機会にお伺いいたしたいと思います。  次に第十條の四、今回のこのたなおろしの制度をお認めになりましたが、この「事業の種類ごとに、命令で定める方法のうちいずれかを」、この命令はいかなるものを予定しておられますか。
  194. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは、個人につきましては大体昨日大臣もお話になりましたように、原則として原価主義で行くという従来の方法を踏襲するつもりでございますが、原価主義で行きまする場合におきまして、法人と同じようにいろいろな方法があるわけであります。御承知通り、先入れ先出し法とか、先入れ後出し法とか、平均原価法とか、いろいろございまするが、そういう方法のいずれかを選択して用いることができます。しかし一旦用いました場合におきましては、その方法を年年かえることはできない。原則として同じ方法を踏襲してもらう、こういうことにつきましては命令で規定するつもりでございます。先般法人税につきまして、若干御説明申し上げておきましたが、大体そういう考え方で参りたい。時価主義は、個人の場合におきまして原則として認めない。原価主義で行くのがいいのじやないか、かように考えておるのであります。
  195. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これは原価主義ということでありましたので、私も納得はできました。ただ命令の内容を具体的に承りたかつたのですが、まだ案が出ておりませんか。
  196. 平田敬一郎

    平田政府委員 この点は会計技術士相当複雑なものでございますので、目下案を練つておりますが、大体今申し上げましたように、方法としましては御承知のように四つか五つの方法があるわけであります。そのいずれかの方法を納税者が選択できるようにする。ただ一旦選択しました場合は、その方法を変更しようとする場合には、税務署長の承認を経なければならない。こういう大体の命令の趣旨になるかと思います。
  197. 奧村又十郎

    ○奧村委員 第十一條の二に、「納税義務者の経営する事業から所得を受ける場合においては」ということになつておりますが、これは個人の形態をさすのであつて、もしその納税義務者関係しておると申しますか、主催する法人から受ける所得は該当しない、こういうように法律上は解釈できるのですが、事実は法人から入るものがかなりある。その場合はどうなるか。
  198. 平田敬一郎

    平田政府委員 この條文は御解釈の遡りでございまして、納税義務者が個人である場合に限ります。それから法人から受ける場合におきましては、それぞれ法人から給與所得、配当所得として受けるわけでありまして、それが実態がその通りでありますればその通りやります。同族会社の場合におきましては、行為計算の否認規定がございまして、不当に租税を少くする目的で、一定の計算をやつております場合におきましては、政府は別途の計算を用いまして、所得認定をやる場合のあることも御承知かと思います。
  199. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 先ほど奧村委員の御質問になりました通り、会計年度の上半期の方では非常に損する、下半期の方では非常にもうかるという場合がございますので、奧村委員も非常に心配された点でありまするが、これと同様に法人の場合におきましても、さようなことが言い得るのでありまして、これはむしろ会計年度を一箇年になさつた方がよろしいのじやないか。そうしてその半分なら半分だけを予定納入いたしておきまして、あとの半分は会計年度一箇年の終えました時に納める。こういう制度に切りかえた方が穏健だろうと思いますが、奧村委員質問に関連して御質問いたしたい。
  200. 平田敬一郎

    平田政府委員 法人の場合におきましては、事業年度が六箇月に定められております法人は、決算をそれぞれ六箇月ごとに行いますので、六箇月ごとに申告し、税金を確定して納税していただくことになつております。これに対しまして一年を事業年度とする法人がございます。この法人の場合には御承知通り六箇月で打切りまして、中間申告をしていただかなければならないのでありますが、その場合におきましては、前年の実績額の半分の課税標準で申告しました場合は、それを認める方針になつております。
  201. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今の主税局長の御答弁は、まことに当を得ておると思いますが、私どもの一番心配いたしますのは、一箇年の会計年度であつた場合におきましては、決算書を出さないで、ただ予定申告いたしまして、半額以上納めておいたならば、これが一番便利だろうと思います。その構想をなさつた方が、同族会社、かつての十九万五千円の会社等におきましては、一番便利であろうと思いまするが、局長の御答弁を承りたい。
  202. 平田敬一郎

    平田政府委員 前年実績の半分でやります場合には、なるべく手続きを簡素化したいと思つておりますが、目下その点につきましては、施行細則等の問題と関連いたしまして研究いたしております。御趣旨の点はよく研究いたしまして、できるだけ簡便な方法をとりたいと考えております。
  203. 北澤直吉

    ○北澤委員 一点だけお伺いいたします。当委員会におきましても、農業協同組合に対する法人税につきまして、いろいろ議論があつたのでありますが、今度の法人税法改正案の第六條を見ますと、「命令で指定する重要物産の製造、採掘又は採取をなす法人には、命令の定めるところにより、製造、採掘又は採取の事業を開始した事業年度及びその翌事業年度開始の日から三年以内に終了する事業年度において、その業務から生じた各事業年度所得に対する法人税を免除する。」こういう規定があるのでありますが、これは命令によりますと、金地金、石灰窒素、硫安、金鉱石、砂金鉱、石油、石炭、亜炭、こういうものが重要物産として指定されておるのでありますが、農業協同組合なり、中小商工業協同組合なり、あるいは漁業協同組合なりは、ある程度基礎が固まるまでの間、ここ一年あるいは二年ぐらいの間、法人税の賦課について何か特別の考慮を拂う余地がないかという点について、お考え方をお聞きしたいと思います。
  204. 平田敬一郎

    平田政府委員 農業協同組合は、御承知通り最近新体制に切りかえまして再スタートをしたことは、お話通りでございますが、その前身は相当古い沿革を持つているのでありまして、先般も申し上げましたように、今回むしろ税の公平という原則の方を重んじて御審議願つた方がいいのじやないか、こういう趣旨で提案いたしておるような次第であります。
  205. 北澤直吉

    ○北澤委員 そうしますと法人税法の第六條の、特に先ほど申しましたような物品に対しては、事業会社には三年の間は免税するということに規定しました理由を伺いたい。
  206. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは何と申しましても、日本の産業の発展に基礎的に重要な物資だけに限定いたしておるのであります。この中でも今度亜炭等はやめようと思つております。一部改廃をする見込みでございまするが、こういう種類の物産は何と申しましても、日本の産業再建に必要不可欠なものであり、これがふえなければ国民生活も一般の生産も、とうていうまく行かぬと考えますので、やはりこのためには存置した方がいいのじやないかという考えであります。品目等につきましては、そのときの情勢に応じて適当に定める。一時戰時中は相当広く軍需品の原料等を免税いたしておつたのでありますが、二十二年に相当大幅に整理いたしまして、現在の品目になつております。なお最近の事態に応じまして若干の加除をいたすべく、目下関係各省と検討中ということを申し上げておきたいと思います。
  207. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府の方でもいろいろ御都合があると思いますが、先ほど申しましたように農業協同組合なり、あるいは中小商工業協同組合なり、あるいは漁業協同組合というものが新体制に切りかえられて、新しくスタートをしたと見ても同じなんでありますが、やはり事業開始早々でいろいろ問題があると思いますので、私はここ一年でも二年でもいいと思いますが、何か特別の考慮を拂つたらどうかと思うのであります。もう一ぺん局長のお考えを伺いたい。
  208. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回は、御承知通り法人課税は、大体株主なり出資者がいる場合には、個人の負担を法人の段階でやるという考え方を多分に織り込んでおるのでございまして、結局法人の段階で課税しましても、個人の所得を総合します場合には二割五分の控除を認めることにいたしております。そういう点からいたしまして、今回の制度といたしましては、やはり同じような税率の方が、負担の公平上望ましくはないかという点を強く考えているのでありまして、奬励の必要があるかどうかということは、これは政策の問題でありまして、その必要がありますれば、むしろ補助金等によつて適切な措置をはかつた方が妥当ではないか。特別法人は性格といたしまして、前々申し上げておりますように、事業の分量に応ずる配当は益金に算入しておりません。従いましてこれは利益としては非常に少いのであります。少いから免税したらいいではないかという議論もありますと同時に、少いようでございましたならば、公平に負担してもらつてもさほど大きな影響を與えないから、負担の公平ということで、この際ひとつごしんぼう願うというように、お願いしたらどうか。こういう考え方で、今回は法人税全部一律の三五%の税率にいたしまして、提案をいたしておるのであります。
  209. 奧村又十郎

    ○奧村委員 関連して……。これはくどいようでありますが、ただいまの北澤委員お話なつた農業協同組合、漁業協同組合ですが、局長の御答弁によりますと農業協同組合、漁業協同組合はすでに前身があるのであつて、特に純然たる新規にできたものではない、こういうお言葉でありましたが、事実は法律の精神が根本からかわりまして、新たに出資をして以前の財産を買收するという形になつておりますから、事実これは新規になつております。その点を御考慮願いたい。  それからいま一つ事業分量によつて配当するのであるから、純益は少いというお言葉、これはまことにごもつともである。ところがその通りに行きますと、この農業や漁業協同組合は事業分量でどんどん配当いたしまして、いつまでたつても資金の蓄積というのをやらぬ。ということは、農村、漁村の中核体である政府の最も重大な政策上の組合が、いつまでたつても大きく育たないということになるので、その点は局長の方ももう少しお考え直しを願いたい。これは質問ではありませんが、北澤委員のお言葉に添えて申し上げておきたいと思います。
  210. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 酒税についてちよつとお伺いいたします。酒税は、シャウプ勧告案よりも今度の政府案が大分上つているようですが、その超過額は二百三十億となつております。御承知のように大蔵大臣委員長も酒屋でありますが、この点があまり関心を持たないようでありまして、酒屋さんが酒が売れなくて非常に困つているようです。何とか今まで通りこの酒の価格を維持して行きたい。この前の公聽会のときも、組合の会長をやつている方が、非常に不満のような公述をしておられたようでありますが、これがために密造が多くなつたり、不衞生な酒を飲んで身体をこわすというような場合が、非常に多いようでありますから、ぜひその点について御注意願いたい。こういうふうに考えますが、その点いかがでありましようか。
  211. 平田敬一郎

    平田政府委員 酒については先般委員長からも大分御意見がございまして、お答えいたしたのでございますが、私ども率直に申し上げますと、あまり酒の税金はかけない方がいいということは、そのつもりでございます。将来はできるだけ下げて行きたいというふうに考えているのでございますが、何しろ今回におきましては、酒は相当やはり増税をはかつてしかるべきだというようなシャウプ勧告もございますし、政府としましても、やはり若干の増税はいたし方なかろうという考えでございます。税收額は予算面から申しますと、大体二百八十億程度ふえておりまして、これが全部増税になるかのごとき印象を與えておりますが、これは先般も申し上げましたように、実は大部分は自然増收と、それから地方の酒消費税を統合したことによる増であります。すなわち自然増の分が百六十一億、地方の酒消費税の五%の分を酒税に織り込んだ分が六十二億、すなわち約二百七十七億のうち二百二十三億というものは、自然増と地方消費税の統合した分であります。これは増税と何ら言うべきものではございません。先般も申し上げましたように、最近原料のかんしよの取扱いは技術が進みまして、歩どまりがよくなりましたので、原価の切下げをしております。公定価格をかえるつもりであります。それによりまして約十二億円ほど増收になつている。差引きますと結局において約四十二億円程度が増税である。その四十二億円のうち、取引高税の廃止と附加価値税の増税によりまして、出て来る分が約二十億近くありまして、純粋の酒税の増徴と申しますのは、私どもは二十二億いくらの税の引上げであるということにしかならない、こういうそろばんでございます。酒の値段から見ましても、合成酒の二級は現在よりも引下げております。それから三級ウイスキーも現在よりも値段が引下げになる。上るものもありますが、下るものもあるわけであります。従つてこの際としてはこの程度はいたし方なかろう。しかし将来は大いに増産をはかりまして、酒税の税率の引下げに努力いたしたい、かように考えます。
  212. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 この酒税の決定の仕方ですが、大分地方の釀造家はアルコールの度によつて税をきめたらどうか、こういう意見があるようであります。それから今年度の米の酒が四十何万石と決定されているそうですが、地方では本年度は六十万石ぐらいつくらせるだろうという想像のもとに、釀造の設備を改善している方もあるようでありますが、この点をちよつと……
  213. 平田敬一郎

    平田政府委員 酒の税率をアルコール度数とにらみ合せてつくるというのも、一つ考え方でございますが、それだけでもやはりうまく行かないのじやないかと考えます。何となれば、たとえばしようちゆうのごときは御承知通り二十五年で今出しておりまして、一升の値段が現在四百二十五円でございます。酒の方は十五度ないし十六度で、御承知通り六百五十円前後の値段でございます。これを度数で行きますと、酒よりもむしろしようちゆうの方を高くしなければならぬ。ところがこれははたして国民の実際の消費の実情に即するかどうか。そういう点を考えますと、やはり度数だけでは参らないのではなかろうかと思います。同じ種類の酒につきましては度数の点を考慮することは、確かに一つの方法と思いますが、違つた種類の酒においてはさようなわけには行かない。ビールのごときはアルコールはわずか四%である。従つて度数で課税すると、ビールの値段は今の半分以下になるかと思いますが、それもいかがと考えるのであります。いろいろな点を考慮いたしまして、結局妥当なる税率をきめるという考え方であります。それから酒の造石につきましては、何と申しましても清酒は戰前は四百万石以上の米を実は酒に使つてつた。それが実に四十三万石に石数が減つたのであります。十分の一に原料がなつてしまつております。これはまつたく食糧事情の影響でありまして、そういう際におきましては私どもいたし方ないと思つていたのでございますが、今後食糧事情が緩和するに伴いまして、できますればこの数量を私どもとしてもふやしてもらいたいと思つております。本年も若干六万六千石だけ増加の原料で、五十万石程度の割当を受けることになりました。将来におきましては食糧事情の許す限りこれをふやしまして、正規の酒を増産して、値段はできるだけ下げて、やみ酒を駆逐して、国庫收入も入つて行き、いいかげんなやみ所得がないようにするという方向に極力持つて行くべく、努力いたしたいと考えます。
  214. 竹村奈良一

    ○竹村委員 この際ちよつと関連して、一点だけお聞きしたいと思います。大体農村に報奬用の酒を配給せられるのは、いつでも合成酒なんですが、これは農林省で割当てられるのか。大蔵省で合成清酒を割当てられるのですか。
  215. 平田敬一郎

    平田政府委員 農村方面は全部合成酒というわけではございません。工場、鉱山には合成酒が相当つていると思いますが、農村には普通の清酒も相当つているかと思います。この割当はやはり国税庁でやりまして、それに応じてやることにいたしております。もちろん農林省の意見に従つてやるのでありますが、どういう品種をどこにやるかということは、これは主として国税庁でやつているようであります。
  216. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大体農家の人たちはいつも言うのですが、自分たちは米をつくつて、安くとられて、今度は報奬用として合成酒をもらう。これはもちろん値段の方で、一升について三十円ぐらい親心で安く配給するという気持で配給されているのか知らぬが、これが大体大牛なんです。全部ではないだろうが、大体八割ぐらいが合成酒である。従つてこれは今あまりありがたがらない。そこにいろいろ問題が起るのであります。私は酒の税金について大蔵省がどういうふうに考えておられるか、この際聞いておきたいのは、大蔵大臣もここで二、三日前に言われたように、大体資本主義経済をいわゆる自由主義的にやつて行くのだ。自由経済にするのだ。しかし現在食糧はそういうわけに行わぬのだから、それだけは早急には自由にすることはできぬ。結局今日米価その他に対しては、政策的に――資本主義を自由にやるのだが政策的に、これだけはいたしかたがないから、とにかく押えているのだ、統制しておるのだ、こうおつしやつておられる。従つてそういう原則から行くならば、農民は政策的にこういう主食類を押えられておる。従つて自分のつくつた米からとるところの酒、しかも販売したりする場合においては許されないでしようが、農民が飲むだけの酒は、こういうべらぼうな高い税金をとらないで、自分がかつてにつくつてもよい。これは大蔵大臣の言う原則からいえば、自由ですからあたりまえです。もちろん販売するものは税金をとらなければならぬが、自分でつくつて自分で飲むだけは自由にされたらよいと思いますが、そういう構想はありませんか。できるならそうしてもらわぬと、大体農民は現金收入がなくて困つておる。
  217. 平田敬一郎

    平田政府委員 竹村委員は大臣の言葉を非常に極端にとつておられるようでありますが、自由経済だから何でもかんでも自由にしろ、財政上の必要からする免許許可等もやめてしまつたらよい、こういう御意見のようですが、そこまではなかなか行きがたいのではなかろうか。酒造の免許は、御承知通り現在では相当厖大な收入を酒税からとらなければならない現状であります。もちろん酒税を必要としない状況になりますれば、自由経済原則従つて酒は自由につくれるということになるのではないかと私は思いますが、それは望ましくないし、また不可能だと思います。世界各国いずれにおきましても、酒については相当嚴重な統制を財政上の必要から加えております。その必要は酒税の收入相当期待する以上は避けがたいと私は考えます。ただ農民の方になるべく清酒をよけいに配給するという、この考え方はまことにごもつともりであますので、今年増産になる分も、なるべく農村の方に安い酒とした配給いたしたいと考えております。  なおこの機会に、先般竹村委員からお尋ねがありました農民負担の総額の一応の計算を申し上げて、御参考にいたしたいと思います。所得税が前に申し上げましたように二十四年度は四百二十億、これが二十五年度におきましては二百二十二億になるのであります。それから事業税を二十四年度は大体四十三億円程度納めていたと認められます。改正後はこれはなくなります。それから住民税が、府県と市町村と合せまして、大体五十八億円程度納めていたのではないかと推計されるのでありますが、改正後におきましては、これが八十五億円程度にふえる。それから地租と家屋税を入れまして、二十四年度は大体五十四億円程度のものが、改正後におきましては百五十四億円程度にふえる。合せますと五百七十五億でありますが、それが改正案によりますと四百六十一億円程度に減少する。大体の傾向はさようであります。これは実際の徴收額でございますが、実際の新税法による賦課見込額はもつと差がたくさん出るようであります。何となれば二十五年におきましては、二十四年度の繰越額を相当所得税等に計上いたしておりますので、かようなことになります。これは一応の推計でありますが、かような数字をこの際申し上げておきたいと思います。なお地方税につきましては税率控除等につきまして目下最終的な案をつくつて、近く提案になると思いますので、その際に御審議願いたいと思います。
  218. 竹村奈良一

    ○竹村委員 今私の申しましたのは、酒の税金を全部やめろというのではない。ただ問題は、農民は安い米、いわゆる生産費を償わない米を買われておるのだから、農民が自分だけでのむ酒、いわゆるどぶろくですが、これだけは――さつきから聞きますと三千五百万円というような厖大な密造取締りの予算を組んで、そうしてそういうべらぼうなことをされるということだが、これはもちろん商売に売るものを取締られるのかもしれませんが、どぶろくをつくつて監獄に行つたという例も聞いておる。従つて百姓がつくて自分で飲むどぶろくだけは――売つた場合はもちろん取締つてもらつてよいのでありますが、自分でつくつて自分で飲むだけは、そういう取締りをしないで自由にしたらどうですか。その方がよいのではありませんか。
  219. 平田敬一郎

    平田政府委員 竹村さんは農村だけの見地から御判断になつておるようでありますが、たとえば都会の労働者はそれに対してどういう意見を持つておるだろうか。私たちはそれに対して賛成できない。個人的にも賛成できません。原料を持つておるから幾らでも自由につくつて、高い税金を納めないで飲んでもよい。都会の勤労者は財政上の事情から一千億円に及ぶ税金を含めた値段で消費しなくてはならぬ。これは負担の均衡を得ないと考えます。
  220. 川野芳滿

    川野委員長 本日はこの程度にいたしまして敵会いたします。     午後四時二十六分散会