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1950-03-07 第7回国会 衆議院 大蔵委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月七日(火曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 北澤 直吉君 理事 小峯 柳多君    理事 前尾繁三郎君 理事 川島 金次君    理事 河田 賢治君 理事 内藤 友明君       岡野 清豪君    奧村又十郎君       甲木  保君    佐久間 徹君       田中 啓一君    塚田十一郎君       苫米地英俊君    西村 直己君       三宅 則義君    宮腰 喜助君       木村  榮君    竹村奈良一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵政務次官  水田三喜男君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  伊原  隆君         大蔵事務官         (理財局経済課         長)      吉田 信邦君         国税庁長官   高橋  衞君  委員外出席者         專  門  員 黒田 久太君         專  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 三月六日  証券対策に関する陳情書  (第  五二九号)  法人税納税円滑化に関する陳情書  (第五三三号)  たばこ民営反対に関する陳情書  (第五四二号)  税制改革に伴う公共事業会社経営に関する陳  情書(第五  四七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第四  七号)  有価証券移転税法を廃止する法律案内閣提出  第四八号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五一号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五二号)  富裕税法案内閣提出第五三号)  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五四号)  資産評価法案内閣提出第八三号)  相続税法案内閣提出第八四号)  所得税法等改正に伴う関係法令の整理に関す  る法律案内閣提出第八五号)     ―――――――――――――
  2. 川野芳滿

    川野委員長 ただいまより会議を開きます。  九税法法案一括議題といたしまして、前会に引続き質疑を続行いたします。内藤友明君。
  3. 内藤友明

    内藤(友)委員 平田さんにお尋ね申し上げたいと思うのでありますが、昨日木村竹村委員からお尋ねがありました問題についてでありますが、昨日お聞きいたしましたところによりますと、二十五年度に減税になります九百億円の大部分は、前年度の価格調整費二千二十二億円を九百億円に減らされることによつて出て来ると思うのであります。それによりまして、肥料えの補給金も少くなり、従つて肥料値段上つたのであります。昨年まで硫安一トン一万二千円でありましたものが、この正月は一万七千円となつておりまして、約五千円の値上りなつております。なお七月以後になりますと、これがまた上ることになるのでありますが、これはやむを得ぬと思います。そこで一面においては減税になるけれども肥料値上り農家の支出から申すと、その減税はむしろマイナスになるのではないかというのが、きのうの木村竹村委員の御質疑でありました。これに対して主税局長は、いやそれは肥料値上りになるけれども値上りなつたものは、パリティー計算をやつておる今日の農産物価格決定方法であるから、それはやがてまた農家收入増なつて来るのであつて、決してそれはさしつかえないんだ、こういうお話でありました。これはその通りであつたのであります。そこで私がお尋ねいたしたいと思いますのは、パリティー計算をやつて価格をきめる農産物というものは、その値上りなつて投ずる肥料によつてつくられた農産物全部であるかどうか。全部であればこれは主税局長の御議論通り首肯しなければならぬのでありますが、それをまずお尋ねいたしたいと思うのであります。
  4. 平田敬一郎

    平田政府委員 御承知通り今日では、主食は大部分パリティー計算供出価格をきめることになつております。主食以外のものは、野菜等自由販売なつておりますことは、お話通りでございます。でありますが、もともと肥料に対して補給金を出す理由は、現在供出なつております主食値段をできるだけ低くいたしまして、それによつて勤労者生計費等に及ぼす影響をできるだけ少くして、そして物価の安定をはかるというのが、価格補給金を出す最大の根拠であると私ども考えておるのであります。さような点から申しますと、主食につきましては先日申し上げましたのと同じようなことに相なるわけで、ございまして、この点につきましてはパリティー価格肥料一定のウエートを置きまして、その肥料が高くなつただけは当然値段を高くする。そういう主たる関係がありまして、先日も申し上げましたように、春作は一六四、秋作は一六八というパリティーを、現在のところ大体予想されておるのでございますが、そういうところから申しますと、肥料補給金をはずしましても、その分は少くとも農家においては同じだということができるかと思います。ただこの補給金を本来出しております目的外部分については、これは確かにこの補給金をやめたことによつて、それだけ農家の手取りが減ることになるかと思います。たとえば野菜等については、最近は補給金を出す範囲を制限して来ておると思いますが、出して来ておる部分はそれだけ野菜価格が高くなります。野菜価格自由価格でありますから、この分についてはパリティー計算ではね返つて農家はただちに仕産費値上り消費者に転嫁できるという関係にならないことはお話通りであります。それと農家が現実に消費します分についても、それだけ生産費が高くなるということは当然でありまして、補給金を削るということはむしろ今の段階において必要ないのじやないか。一般の物価水準をなるべく低く押えて物価の安定をはかるという必要が顕著な場合においては、ただいま申し上げました主たる効果をねらつて補給金を出すというのが正しい見方だと思いますが、今の段階においてはそういうところまで影響を及ぼすような補給金を出すというのは必要性が乏しいのじやないか。補給金を極力少くするのが主たる理由じやないか。私どももかように考えておるのであります。事際問題としても農家收入のうち相当多くの部分、これは内藤委員の方がよくおわかりかと思いますが、主食販売代金による所得の分が最も多いのではないか、かように考えられるのでございます。ことに單作地帶等においては主食供出代金所得の大部分を占めるというのが現在の実情ではないか、かように考えておる次第であります。
  5. 内藤友明

    内藤(友)委員 補給金性質を今論じておるのじやないのであります。補給金というものは米の消費者価格を下げるために出しておるのだ、いやそうではないのだ、こういう議論を実は申し上げておるのではないのであります。ただ減税という今度の事実が、農家経済から見て、なるほど減税になるかもしれぬけれども、それは他の方においてそれより以上のものがとられるのじやないか、こういう質問なのであります。でありますから、お答え質問の要旨とはずれた別なことをおつしやつておられるのでありまして、今も主税局長お話なさいましたように、はね返つて来るものは米の三千六十万石と、それに麦、雑穀でありまして、この雑穀農林大臣は統制をはずすと言つておられますから、これはこの秋になりますればどうなるかわかりません。せいぜい米と麦だと私は思うのでありますが、そういうことを考えてみますと、この値上りなつ肥料使つて農家経済から考えますと、はね返つて来るものは、全体の三分の一ほどしかはね返つて来ないのじやないか、三分の二ははね返つて来ないとこう考えるのであります。今お話になりましたように、日本の米の生産は六千何百万石になつておりますが、半分は自家消費しております。この自家消費の分はどこからもはね返つて参りません。でありますから、そこを竹村木村委員が尋ねられたのでありまして、私はやはりきのう局長お話なつたように、肥料値上りというものは、全部はね返つて来るものじやないのだということを、ひとつはつきりしておきたいと思うのであります。そういうふうにはつきりなさいますか、なさいませんか。これは何も補給金というものの性質を論じておるのではありません。そういうことの需要があつたために補給金というものが出た。あるいはそういう意味もあつたかもしれないけれども、われわれからいたしますれば、農業経営という立場から考えて、補給金というものを出して肥料を安くしなければならぬ。昨年は肥料に対しての補給金は三百四十億でありましたが、今度の予算では百七十億になつております。硫安だけに対しての補給金も、昨年は百一億出ておりましたが、今度は四十四億ということになりました。これが今度のこういう肥料値上りなつて来たのであります。そういうことを私ども質問いたしておるのでありまして、補給金本質論をやつておるのではございません。だから局長は、それは全部はね返つて来ないのだ、一部はね返つて来るのだということに、きのうのお答えを御訂正なさいますかどうか。どうでありますか。それをひとつお尋ねしたいと思います。
  6. 平田敬一郎

    平田政府委員 私は大部分はね返つて来るということにお答えいたしておきたいと思います。と申しますのは、先ほどから申しましたように、野菜とかあるいは自家消費の分につきましては、なるほど内藤委員お話通りでございまするが、所得税が課せられております場合におきましては、御承知通り相当供出もあり、相当收入のあるクラス課税されておるわけでありまして、一方そういうクラスにおきましては、相当減税になるのでございます。他方そういう農家におきましては、御承知通り販売する主食の分が相当多いと考えられるのでありますから、そういう場合におきましては、供出代金と申しますか、その代金値上りという形で大部分は吸収される。しかし今お話通り自家消費の分とか、あるいは自由販売の分、そういう部分收入が、大部分農家の場合におきましては、確かにお話通りだろう、かように考えます。
  7. 内藤友明

    内藤(友)委員 実はこういうことをお尋ねいたしますゆえんのものは、今度の減税は、農家経済から見てはたして減税なりやいなやということを、私どもは実はせんさくしたいので申し上げたのでありまして、ただいま全部はね返るのではなく、大部分はね返るようにしたいとおつしやつたのでありますが、しからばその大部分というのはどの程度でありますか。これが問題だと思います。
  8. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは個々農家によつて大分違つて来るのじやないかと考えます。比較的供出の多い農家の場合におきましては、大部分が吸収される。供出の少い農家の場合におきましては、大部分が吸収されない、こういうことになるかと思います。自由販売野菜等をより多くつくつている農家の場合におきましては、それがほとんど影響がない。ただ現在でも野菜につきましては、ごく限定して補給金を出しているのじやないかと思つておりますが、その辺のところはなおよく調べましてお答えいたしますが、いろいろ農家によりまして影響は違つて来るのじやないか、かように考えるのであります。そうしまして結局におきまして、先ほど申し上げましたように補給金を減らします趣旨は、今日におきましては、そういう補給金の主たるねらいとするところの意義が乏しくなつたのではないか。そういう意味で廃止になると考えておるのであります。もちろん補給金を出すことによりまして、福利的に農家が利益を受けておるいろいろな部面が確かにあるわけでありますが、そういう面につきましては、この際としてはその必要はなかろうという考え方で、補給金を廃止することと相なつておると考えておるのであります。
  9. 内藤友明

    内藤(友)委員 これは議論でありますから、この程度でやめておきます。きのうの木村竹村両君に対しての御答弁も少しかわりましたから、それはいずれまたあとでお尋ねしたいと思いますので、ここで私は次の問題を展開したいと思います。  そこで私は所得税のことにつきまして、いろいろお尋ねしたいと思います。一つは、今度の所得税原則といたしまして、同居親族所得合算制を廃止せられまして、別算制をとられたのでありまして、これはまことにけつこうなことだと思うのでありますが、ただそれにつきまして、次の場合に限り合算して課税することと、こう書いてあるのでありまして、その「イ」の中に、事業主同一事業に従事する者の合算制を認めて、別算制を認められていないというのがここにあるのであります。これは御承知通り、ことに終戰後中小企業でありますとか、農業でありますとかいうものは、すべてが零細家族経営という形になつて来たのであります。親子が相携えて勤労するというふうなことになつて来たのでありますが、こういうふうな業態に対しまして、なぜ別算制を採用されなかつたのか、それをお尋ねしたいと思います。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回は原則としまして、資産所得以外の所得分離課税をすることにいたしたのであります。おやじさんが農家事業所得がある。これに対しましてむすこさんがどこか役場なり学校なりに勤めておるという場合におきましては、その勤労所得とは合算しないのであります。これは合算しない方が納税者に有利になるのでありまして、基礎控除も受けまするし、「さらに税率等も別個の累進税率適用になりますから、負担相当軽くなるのであります。家族労働の場合におきましては、まさにお話通り容ございまして、世帶主事業として一体として運営されておりまするので、所得原則としまして、そういう場合におきましては、家族所得おやじさんの所得というふうにわけませんで、課税することにいたしておるのであります。しかしその場合におきましては、今までは成年者の場合になりますと、扶養控除を認めていなかつたのでありますが、今回の改正では、そういう控除を認めることによりまして、従来の負担のむりなところを是正するということにいたしておる次第でございます。
  11. 内藤友明

    内藤(友)委員 それではこういう場合を想定してお尋ねしたいと思います。ここに二軒の相異なる農家があり、甲の農家にもむすこがおり、乙の農家にもむすこがおるといたします。そうして甲の農家むすこを乙の農家に持つて来る。乙の農家むすこを甲の農家に持つて来る。こうなりますと、別算制をとられることになります。しかもそれに対しては勤労控除がある。そうして一方の農家から見ますれば、それは経費として計算されて行く。ところがそうではなしに、その家族が自分の家族だとすると、單に扶養控除だけしかない。こういうことがあるのでありますから、私は事業主同一事業に従事する家族については、何らか別に考えなければならないのではないかと思うのであります。何らか考えるというのは、特別な控除をこういうものに対して認めるか、あるいは別算制をもう一ぺん考えるかということになるのでありますが、それに対してどうお考えになりますか。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 今内藤委員は、かりにという前提お話なつたようでございますが、かりにという前提お話になりましたようなケースが、むしろ私どもは不自然なケースじやないかと思います。日本における今の農業にしましても、中小企業にいたしましても、自然な経営の行き方としましては、家族労働者の場合におきましては、やはり業主の事業一体なつ仕事がなされ、それによつて一体なつ所得が生れているというのが実情ではないかと考えられるのでございます。従いましてその実際に即した課税方法をするのがいいのではないか、かような考え方であります。ただその場合に、扶養親族控除、つまり一万二千円の控除をいたすことにいたしております。この控除につきまして、もう少し考え直したらどうか。これは確かに一つの有力なる議論だろうと私は思います。理論的に申し上げますと、そういう考え方相当有力になることかと思うのでございますが、ただ実際を見ますと、しからばその家族従業者がフルに完全に事業主と全部仕事一緒にしてやつているかといいますと、あるいは半分手伝つている場合もございまするし、あるいは大部分従事している場合もございまして、その程度は非常に区々であろうと考えておるのでございます。従いましてこの限界をつけますのも、実際問題としてなかなかむずかしい問題でありまするが、大体におきまして私どもとしては、いずれにしろ扶養控除を受けるということで行きますると、その点が実際に即してかえつてよくなるのじやないか、こういう趣旨扶養控除を認めることにいたしたのであります。半分遊んでいるからその人が扶養控除になる。フルに三百日一緒に働いているから、これは基礎控除であるとすることが、日本の実際問題としましてなかなか困難ではないか、かように考えまして、今回の案ではさような制度にいたしておるのであります。この方がむしろ日本経営実情に即するのじやないか。しかし理論から申しますると、確かにいろいろ問題にすべき点が相当に多いのじやないかと私は思います。従いまして企業経営方法は、将来一層近代的な形に相たりますれば、お話のような方向に行く可能性もある。しかし税法だけ近代的にいたしますると、かえつて実際に即さないで、負担が非常に変な関係になりますので、現状といたしましては、かような制度が一番よろしいのじやないか、こういう実際的な考え方でございます。
  13. 内藤友明

    内藤(友)委員 そういたしますと、私はこういう傾向が生れて来ると思うのであります。この同一事業に従事する家族の別算制を認めないということになりますと、果樹経営むすこがやり、普通作の方の経営主人公がやる、こういう形をとつて来ると思う。つまり農業経営細分化という現象が、この課税の中から出て来るのじやなかろうかと思うのであります。そういうことで、私は日本農業経営から申しますと何でもないようでありますけれども、これは日本農業の将来について考えますると、いろいろな問題が出て来ると思う。今日農家としまして一番頭を悩ましているのは税金の問題であります。何とか税金を合法的に免れる手段はなかろうかと、幼稚な頭で常に考えております。私は先ほどこれはかりの一つのたとえお申しましたけれども、隣りのむすことのやりかえはやります。これでやつた方が農家は得なんですから必ずやります。同時に特殊作物裁培次男坊がやる。主人公はこつちのやつをやる。果樹栽培はこれだ、こういうふうにだんだんと経営細分化が行われて来るという傾向があるのであります。もちろん所得合算範囲を縮小されましたけれども、もう少し日本農業経営実態に即したようなお考えでなさらぬと、日本農業経営そのものが妙な形になつて行き十ますので、お尋ねいたしておるのでありまするが、どうにもならぬとおつしやるならしかたがないのでありまして、こういうことから日本農業経営がくずれて来るということをひとつお考えおきいただきたいと思うのであります。あと議論になりますから、これはこのくらいにしておきます。  それから次にお尋ねいたしたいのは、過去におきまして所得税の問題は、実は税法自体にも問題がありましたけれども、主とした問題は運営の点にあつたと私は思います。ことに農業関係におきまして一番問題になりまするのは、所得の把握並びに経費の算定、この二つに私は帰着すると思うのであります。政府は今回シヤウプ勧告によりまして、従来の反当標準を改められまして、各人ごと所得をきめられたのでありますが、これは青色申告という制度で何とかやつて行かれるというのでありましようが、それ以外に反当標準率を改めて、各人ごと所得を把握する何か具体的な対策がありますかどうか。青色申告書だけなのか、それを伺いたいと思います。
  14. 平田敬一郎

    平田政府委員 一番理想としますところは、個々農家におきまして一定帳簿をつけていただきまして、青色申告を出していただく。これが一番私ども理想だと考えておるのでございます。ただなかなか農家の場合はそこまで行きにくいということは、各委員からもお話になつた通りでありまして、やはり收入金を比較的正確に調べまして、少数の人につきまして実際の経費をよく調べて、大体の標準をつくり、各農家について收入金は正確なものを押え、経費一定の比率を計算して所得を見て行く、こういう方法をやはり相当範囲に用いざるを得ないのではなかろうかと考えます。この率のつくり方につきましては、最近までは反当りでしかも村ごとにきわめて大ざつぱにつくつておつたような状況であつたのでありますが、これについて将来におきましては一層の細分化をはかりまして、各人個人的実情によく即応するようにしたらどうであろうか。標準等も反当りというよりも、むしろ一石当りとか、あるいは收入金額百円当りに対する経費率を見ますと、反当りの場合よりもより実情に即し得るのではなかろうか。本年におきましては相当多くの国税局におきまして、かような方法に切りかえているようでございます。将来におきましてはこの標準率をさらに細分化し、個別的に実情によりよく適応するようにいたしまして、農家所得実態に即応するようにして行きたい。この標準率をつくる際におきましては、農業団体とかあるいは市町村等意見をよく聞きまして、実際に即するようにしたい。個々納税者の一々の所得額につきましては、団体関與は認めていないのでありますが、全体としての標準率作成等についてはよく意見を聞きまして、実情に即するようにしたい。またそういう方向相当私は改善の自信があると考えておる次第であります。
  15. 内藤友明

    内藤(友)委員 今度は標準経費率農業協同組合とかあるいは市町村当局といろいろ相談せられて、自信のあるものをおつくりになるという御返事であります。ぜひそうしていただきたいと思うのであります。  そこで次は青色申告のことでありますが、この制度はまことにいい制度であると私ども実は思つておりますので、できるだけこれを奨励しなければならぬものだと思います。ところが私どもは、ここでいただきました資料をよく見ますると、まことにその様式が複雑であり概念的でありまして、農家経済実情に実はマッチしておらぬのであります。これはしかし議論になりますからここでは申し上げません。私ども昭和七、八年の農村恐慌時代から簿記運動というものをしきりにやりまして、ずいぶんこの問題については苦労して参つたものでありますが、おそらく私はこういうやり方では、今までの農家の一割も記帳し得ないだろうと思うのでありまして、従つてもう少し今定められました簿記制度というものを、ほんとうに日本小農経営に適合するようなことにひとつお改め願いたい。これは希望でありますので、何も私はここでは議論を申すのではありませんが、そういうふうにしていただきたいと思うのであります。  そこで私が次にお尋ね申し上げたいのは、今度資産の再評価に伴いまして、減価償却費所得計算上、青色申告の有無とは無関係に、当然認められなければならぬものじやないかと思うのであります。ところが申告しないものについては減価償却を認めない。こうなつておるようであります。こうなりますと、非適用農家架空所得課税せられることになるのでありますが、架空所得に対して課税せられるということは、一体どういうことなのでありますか。これをひとつお伺いいたしたいのであります。     〔委員長退席前尾委員長代理着席
  16. 平田敬一郎

    平田政府委員 シヤウプ勧告によりますると、減価償却といつたようなものは、これは会計技術相当高度な計算を必要として初めて考えられる。従つて帳簿組織等が完備してない場合においては、減価償却は認めなくてもよいのではないかということになつておるのであります。それはいかにもわが国の実情からそういう制限をつけますのは、少しひど過ぎはしないかというふうに考えまして、減価償却原則として認めるのでございます。ただ今度再評価によりまする増価償却につきましては、これは資産の再評価事業用の資産につきましては任意にいたしまして、これはやはり各農家の場合におきましても、相当償却資産等を持つておられます場合においては、再評価の申告をしていただきまして、申告があつた場合に限りまして時価に基く再評価ができるわけであります。もつとも農具等は大分戰後に相当高い値段で購入しておられる部面が多いようでございます。こういう場合におきましては、再評価をいたしましても実益がないわけでございますが、ずつと昔から持つておる安い農具等の場合におきましては、今度の再評価の決定に基きまして、再評価の手続をしていただきますと、今の時価に即応した減価償却を認めて行く。その他の再評価の手続をしない場合におきましては、今までの実際の購入価格をもとにした償却を認めて行く。従つて青色申告制度の必要はないのでございます。
  17. 内藤友明

    内藤(友)委員 そういたしますと、青色申告はあくまでも奨励しなければならぬので、これは作業する人に対しては、いろいろな恩典を與えなければならぬと思うのでありますが、それは私どももよくわかるのであります。その逆に、申告しない者に懲罰的な考えを持つということは非常にいけないことでありまして、それはあつてはならぬと思うのであります。今お話によりますと、やはり架空所得に対しても課税せられることになるのでありますが、そういうふうな懲罰的な措置というものは、どうしても税をまじめに考える上においては、これはおもしろくないのではないかと思うのであります。それはやはりこういう制度に従わない者は、懲罰的に考えて、そうしてこの制度にみな追い込む、こういうお考えなのですか、これをお尋ねしたい。
  18. 平田敬一郎

    平田政府委員 最初はこの償却につきましては、全部強制的にやつたらどうかというのが、シヤウプ勧告の最初の勧告でございます。強制的に全部やりますと、時価で再評価しまして、そうして六%税金をとるかわりに、今度は減価償却は再評価されたもので償却が計算されて行くということになるわけでございますが、それはいかにも実情に反するのではないかというのが日本の一般の輿論であり、私どもの当初からの考え方であつたのであります。従いましてこのシヤウプ勧告に対しまして、その点については重大な修正を加えまして、減価償却資産の再評価は任意ということにいたしたのでございます。ただしかし任意ということになりましても、自分でやらない場合におきまして認める必要はない。やれば認める。そういう意味でございますから、間接的には一種の強制というふうにお考えになりましても、その限度におきましては正しいと考えておるのであります。従いまして私どもは、やはり相当減価償却資算を古く所得されて、相当価格のあるような企業の場合におきましては、大体において資産の再評価をやられるだろうという前提で、そのことを考えておる次第であります。むしろこの方が日本の企業の実情によりよく即応するのではないか、こういう考え方であります。
  19. 木村榮

    木村(榮)委員 きようは宮腰氏の順番でございますが、私はその間に二、三点だけお尋ねいたしたい。  最初にお尋ねいたしたいのは、最近各地におきまして特別調達庁の手で、土地の買收が強制的に行われておりますが、あの強制買收された土地の收入に対しては、所得として税金をかけますか。
  20. 平田敬一郎

    平田政府委員 強制買収されたのは、たとえば家屋等を接収されまして、それを買收されたというような場合でございましようか。
  21. 木村榮

    木村(榮)委員 家屋もあれば、土地もある。
  22. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは強制的でありましても、やはり買収の対価が入つて来ます場合におきましては、それは一種の譲渡所得收入ということになりまして、普通に売りました場合と同じように所得税課税されることになります。
  23. 木村榮

    木村(榮)委員 それはそのことによつて農家経営がもはや成り立たなくなつてしまうわけなんです。そこを買收されてしまいますから立ちのきするわけです。だからそれを所得と見てかけますのは、私たちはおかしいと思う。しかもこれは本人の希望じやなく、いやがるのを強制的に、やむを得ぬ事情だから立ちのけというわけになるのであります。これに所得として税金をかければ、相当のものがわかつて来ると思うのでありますが、これは何か特別の措置はないのですか。
  24. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話の場合は農地の場合かと思いますが、農地の場合におきましても、やはり譲渡所得として課税するのが、所得税の一般かち行きまして公平かと考えるのであります。ただしかし今度は要綱にもお示しいたしておりますように、農地につきましては大体やはり財産税当時の価格から、一定の倍率で引延ばしまして、その再評価をいたすわけであります。その再評価額に達するまでの価格で、しかも売れなかつた場合におきましては、実際売つた価格と、最初の財産税評価額との差額に対しまして、六%の再評価税を課するにとどめまして、所得税はかからない。再評価額を越えまして、例外許可等を受けまして高く売りました場合におきましては、これはさらに差額に対しまして、所得税が総合されて課税されて行く。こういう関係にいたしておるのであります。インフレーシヨンによる値上り所得に対しましては、六%だけしか課税しないということにいたしておりまして、そのくちいの程度のものはインフレーシヨンによりまして、相当の損失をこうむつておるものがあります際におきましてやむを得ない、妥当であると、かように考えておる次第であります。
  25. 木村榮

    木村(榮)委員 これは結果的に本人の農業経営を破壊するわけですから、もし実情がそういうものであつたならば、むしろ損害をこうむつたわけなんだから、税金を免除するというようなことはできないのですか。
  26. 平田敬一郎

    平田政府委員 そのような場合におきましては、おそらく買収する場合の対価を、公正な対価できめるというのが本筋じやなかろうかと考えるのでありますが、公正な対価で支拂われた場合におきましては、やはり原因が統制であろうと自由販売であろうと、やはり今申した所得税法あるいは再評価法等の原則に従いまして、それぞれ一種の評価差額が出て参りました場合におきましては、所得税課税する方がより公平ではないかと考えるのであります。あるいはよほど特別なケースでありますれば、少し具体的に研究いたしてもよいと思いますが、大体原則はさような考え方で、そういう場合には処理しておるということを申し上げておきます。
  27. 木村榮

    木村(榮)委員 附加価値税で農業協同組合に大体課税をする。その結果は大体全額で十億円ぐらいの税金がかかるということになつておるそうですが、これは間違いないですか。
  28. 平田敬一郎

    平田政府委員 農業協同組合に幾ら附加価値税がかかるか、私どももまだ詳細に調べたものはございません。しかし現在の事業税に比べますと、相当ふえるだろうと思つております。と申しますのは、農業協同組合等は剰余金が比較的少い。これに対しまして事業相当事業を営んでおりまして、支拂う人件費等も相当な額に達しておりますので、附加価値になると税額が相当ふえるということになるかと考えます。今お話の十億円になるかどうかということは、今ここではつきりしたことはお答えしがたいと思うのでありますが、相当ふえるということは私どもも予想しております。
  29. 木村榮

    木村(榮)委員 固定資産関係で、今度の農地改革によつて、買收して売り渡した売渡し価格の大体三分の一程度税金を一反歩についてかける、こういうお話ですが、これも大体間違いないですか。
  30. 平田敬一郎

    平田政府委員 今申しましたように、売渡し価格の高さが幾らになるか、それは問題でありますが、今再評価法で定めております高さ以内の売買、この間でありますれば單に六%、しかも財産税の評価額と、売つた価格との差額の六%だけしか今後は拂わなくなる。しかしその再評価額より越えて高く売りましたときにおきましては、その越える部分については一般所得税に総合してかかるのでありまして、小農の場合はあるいはかからないかもしれませんが、相当大農の場合におきましては、高い税率の適用を受けるかもしれません。これは人によつていろいろ違つて来るかと思います。しかし今の場合に、農地価格が幾らであるかによつてきまるわけでありますが、大体今度の農地につきましては、土地価格指数の一般騰貴率によつておるのでありまして、財産税の評価当時の価格に比べまして、十五倍の線以内で売りました場合におきましては、差額の六%だけしか課税にならない。従いまして三分の一かかるという場合は非常に特別な場合で、よほど高く買收してもらつた場合だけであろうと考えております。大体は財産税の評価額と売値との差額の六%だけ再評価税を納めればよいというのが、大部分ではなかろうかと考えております。
  31. 木村榮

    木村(榮)委員 保有米を割つて供出した場合には、還元配給があるということになつておる。その場合における農村の所得並びに必要経費というものは、別に計算しなければ計算が合わないと思うのでありますが、その点はどのようにお考えですか。
  32. 平田敬一郎

    平田政府委員 保有米を割つて供出したというお話でございますが、所得税所得計算の際におきましては、農家の場合はすべて生産価格で收穫高をもとにして收入を見るということになりますから、供出が多いか少いかということよりも、全体の収穫高が幾らであつたか、それに対して公定価格たる生産価格適用して收入金額を見ることにいたしておるのであります。お話はどういう意味でございますか、もう少しあるいはお尋ねがございましたらお答えいたします。
  33. 木村榮

    木村(榮)委員 還元配給を受けますと、消費者価格でもろうから石二千円ばかり高くなるわけです。そういたしますと、必要経費がかわつて来なければならぬ。
  34. 平田敬一郎

    平田政府委員 お尋ねの還元配給を受けた場合におきましては、そういう制度自体が供出制度としてあることがどうかと思いますが、現実にかりにあるといたしましても、その場合におきましては、やはり農家が新たに消費者と同じように米を買うという関係になるわけでありまして、その場合におきまする消費者価格生産価格との差を、特に税金で負けるというような問題は、税の方ではどうも出て来ないのではないか、かように考えております。先ほど申し上げましたように、すべて収穫局をもとにしまして、それに対して生産価格を乗じまして、收入金額を見るということになつておりますので、それ以上税の上で考える余地はないのではなかろうかと、かように考えておるのであります。
  35. 木村榮

    木村(榮)委員 それは所得の税の面だけじやないのです。必要経費というとおかしいのですが、保有米を割つて出した場合に、今度は還元配給を受けますと、農業経営が破壊されておりますから、農業経営じやないわけです。何と言うのですか、簡單に言えばその面においては失業者みたいなものです。そういつた場合に、保有米を完全に確保して経営をした農家と、今年などは生産農家で保有米を割つて供出する農家が特に多いのですが、それを同じように計算してもらつたんでは農家経営が成り立たないわけです。石二千円も高いものをたくさんに買いもとして、半年間もそれを食つて農業経営を続けて行かなければならぬ。これを同じような所得に見てやつて行けば、どうせやつて行けなくなる。その場合はどのような方法で処置されるか。これは何か対策がなければいかぬと私は思うのです。
  36. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお話は、おそらくむしろ還元配給をいたしまする場合におきまする農家えの売渡し価格を、どうするかという問題ではなかろうかと思います。それで、生産価格で売り渡すことにするのか、消費者価格で売り渡すことにするのか、それをどうするかという問題は、いろいろ検討すべき問題があううかと思いますが、それを税金の上で控除するという余地は、所得税の根本的な考え方からいたしまして、どうも考え方として成り立たないのではないか。先ほど申し上げましたように、所得税は最初からすべて生産価格收入計算しているだけでございます。それを消費者価格で買い受けた場合におきまして、特別にそれを課税上どうするかという問題はどうも出て来ないのではなかろうか、かように考えられるのであります。また還元配給をします場合におきまして、消費者価格で還元配給をするということがよいかどうか、これは相当問題があるのではなかろうか、かように考えるのであります。
  37. 木村榮

    木村(榮)委員 それはおかしいです。たとえば風水害とか旱害とか虫害とかいうふうな場合で、農業共済保険金の給付を受ける、あるいはまたその他の特殊ないろいろな事情で免責されるような場合があるでしよう。今度の所得税法でも、何か特別な場合は相当大きく免責をするといつたようなことが書いてある。今私が申し上げましたような場合は、こういつたものと大体似通つたものだと思う。従つて農家経営の場合思わざる災害を受けたと同じような結果になつておりますから、これを考慮に入れて、やはり税金の上で何か考慮できると思うのですが、そういうことはお考えにならないのですか。
  38. 平田敬一郎

    平田政府委員 災害等で損失を受けた場合に控除しますのは、それだけ担税力を喪失するわけでありまして、所得自体がマイナスされることに相なりますので、さようなことをいたしておるのであります。ただ購入価格が自分の生産価格よりも高い価格で買つたからということになりますと、消費者の場合におきましても、普通の場合におきましても、何か特別の控除をするかしないかというような問題にまで発展すると考えるのでありまして、所得税所得計算理論から申しますと、その差額を控除するというような考え方は、いかにしても出て来ない、かように私ども考えております。
  39. 木村榮

    木村(榮)委員 これはわからぬからやめますが、食糧確保臨時措置法をそのままにやつてつて供出させておれば、あなたのおつしやる通りなんです。食糧確保臨時措置法そのものを無規してやつておるわけです。そのために農家に対してたいへんな損害を與えておるわけです。このことをよく実情調査をしてみればわかるわけなんで、その場合にはやはりあなたの方は御考慮があるかないかという問題を聞いておるわけです。
  40. 平田敬一郎

    平田政府委員 この問題は大分前にもよく農業関係の人から聞きまして、私どもいろいろ研究していたのでありますが、理論的に所得計算上その差額を差引くということは、いかにしても出て来るという結論を見出し得なかつたのであります。現在においても同様であります。今申しましたように、むしろこれは供出自体の問題であり、それから還元配給をします場合の価格をいかにするか、そういう問題として問題があれば解決すべきでないか、かように考えております。
  41. 内藤友明

    内藤(友)委員 ちよつと関連質問で……。以前からお尋ねしておりました保有米の所得計算のやり方でありますが、あれはどうなりましたでしようか。あの不合理をお直しなさいましたでしようか。
  42. 平田敬一郎

    平田政府委員 保有米の所得計算に際しましては、前から議論がありますように、大体生産した年のそのときの生産価格によつて見積るというふうにいたしておるのであります。消費者価格にはよつておりません。それから現実消費した年の値段評価したらどうか、こういう説がありますが、その点に関しましては、むしろ私ども生産した年のそのときの生産価格評価して課税するというのが、全体を通じて見ると確実であり、その方法がいいのではないかと考えております、ことに今後におきましては、大体問題は実質問題として解消すると思いますが、値下り等の場合におきましては、逆にあとなつて値下りで收入が減つたときに、かえつて高い課税標準課税されるといつたようなことにもなりますし、まずやはり今の制度の方が実情に沿つておるのではないか、こういう考え方であります。
  43. 内藤友明

    内藤(友)委員 それは実情に即しておらぬのでありまして、私どもは値下りの場合とか値上りの場合とかいうことを考えていないのであります。ただ今農家が消費しおる米は、これは何もこの秋の米じやなくして昨年の米なんだ。従つて現在消費しておる米の米価というものは、昨年の四千二百五十円で計算すべきが至当ではないか。これこそ実情なんでありまして、それを今年の十月に行つてきめられる。あなたの話によりますれば、四千五百円ぐらいになるだろうという計算でありますが、それで計算されては石について二百五十円だけ架空所得所得として計算されるということになるのでありまして、これは以前から申し上げておることでありますが、いまだ依然として実情に沿わないようになさつておられるということは、まことに残念しごくであります。もう一ぺん御再考なさるお心持はございますまいか。ほんとうに実情に即するようにやつていただきたい。何も値下りになるから農家が損だとか、値上りになるからどうだとかいうことではないのであります。今食べておる米は、これからつくる米ではないのであります。これからつくる米はこの秋できるのである。今食べておる米は去年つくつた米だ。去年つくつた米ならば四千二百五十円できめるべきで、それを四千五百円というこの秋の米価で計算されることは、農家としてはまことにりくつに合わないのじやないかと思うのでありますが、依然として非を改められないのでありますか、この際改められますか、それを伺いたい。
  44. 平田敬一郎

    平田政府委員 今内藤委員お話ですと、何か架空なものに課税しておるというお話でありますが、架空なものではないと思つております。ただいつの年度の所得に見るかという差があるだけであります。いつかは同じ結果になるのであります。甲年度で課税するか、乙年度で課税するかというその差でありまして、大体所得税法ができて以来、ずつと生産した年の収入と見る。収穫がありまして、それだけ農産物を現実に処分し得る状態に相なりますれば、そのときに所得が発生したものと見る。前後一貫しておるわけであります。これで一貫することによりまして、全体を通じますと決して架空課税にはならないと考えております。
  45. 内藤友明

    内藤(友)委員 そうしますと、今農家の食べておる米をあなたのところに持つて来れば、四千五百円に買い上げていただけますか、それを伺いたい。
  46. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお尋ねの趣旨がよくわからないのでありまするが、持つて来れば……。
  47. 内藤友明

    内藤(友)委員 それならはつきり申し上げましよう。今農家が食べておる米は、これは去年つくつた米なんですよ。今食べておるのは、何もこれから苗代をこしらえて秋に行つて収穫する米ではない。去年の米が四千二百五十円だ。そうすると四千二百五十円で計算するのが至当ではないか。それをあなたは秋の値段計算することになつておる、こうおつしやるので、それこそむしろ実情に沿わないと思うのでありますが、それでも実情に沿うのですか。
  48. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお話は、所得と見る場合は現実にそれを消費した年の所得に見なければおかしい、こういう大前提に立つておられると思うのでありますが、その前提がいろいろ考え方があるわけでありまして、その考え方として私どもは、今の所得税法のようにずつと昔から、現実に生産物を収穫しまして処分し得る状態になつた年の所得と見る、こういう行き方もあると思うのであります。結局それが絶対誤りだということは私どうも考えられない。いずれがいいかという問題になりますと、これはいろいろ可否の議論はございましようが、いろいろ検討いたしまして、やはり現在のような課税方法がいい、かように考えておるのであります。必ず消費時の所得と見て課税しなければ理論的に成り立たない、こういう見解は賛成いたしがたいのであります。
  49. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長代理 宮腰喜助君。
  50. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 私はほかの委員の御発言で大分遠慮して来たのですが、中小工業の問題について委員から再三質問があつたのでありまするが、この点についてもう一度お伺いいたします。  中小工業に関しましては、一応この方々が災害を受けたり不時の病気があつたという場合には、いろいろ控除があるようです。しかし勤労者には基礎控除がありまして保障されておりますが、中小工業の中には実際勤労者と同様な生活をしておるにかかわらず、基礎控除がないのでありますが、こういう点はどうして基礎控除をしなかつたか。それからまた同じこういう中小工業でありましても商店にしても、その中の設備などは一年に一ぺんぐらいかえて行く。たとえば喫茶店だとか洋品雑貨店あたりは年々、一年に一ぺんぐらいずつ店内を改造して行く。ところが個人であるからといつて減価償却を全然否認しております。これは農家の場合も同じと思います。農具とかそういうものは全然減価償却の中に入れてくれない。こういう欠点が大分ありまして、中小工業の方々はそういう非難を議会に持ち込んだことがあります。その点をまず一点お伺いしたいと思います。
  51. 平田敬一郎

    平田政府委員 減価償却につきましては、所得税法の施行規則で、個人の事業者の場合におきましても認めることにいたしておるのであります。従いまして今お話のような点は実際の運用の問題かと思いまするが、これも極力標準率等をつくります場合においても、ある程度減価償却費計算いたしまして、それによつて所得計算しておるような次第でございますので、全然認めていないというようなことはないかと思いますが、ただその認める程度につきまして、帳簿等が完備せず、はつきりしない場合におきましては、なかなか妥当な結論は得られない場合が実際問題としてあり得るということは、確かに考えられるかと思います。従いましてこの点については相当償却資産等を多く持ちまして、それによつて所得計算相当つて来るという場合におきましては、極力特色申告等の制度を利用していただきまして、適正な減価償却計算ができるようにお願いいたしたい、かように考えておるわけであります。  それから基礎控除の点につきましては、先ほど内藤委員お答えいたした通りでありまして、日本中小企業及び農業実情から申しますると、やはり家族控除と同額の控除が現在のところはいいのではないかという考え方であります。従事しておると申しましても、どの程度従事しておるか。なかなか実際問題としてはつきりしない場合が多いのではなかろうか。ことに日本の場合におきしては、都会で失業しますと農村なりあるいは中小企業等に家族は帰りまして、事業に従事するといつたような例が相当多いかと思いますが、そういう判別がなかなか困難ではなかろうか。従いましてむしろ扶養控除にいたしますると、その点が非常に簡單に行きまするし、実際問題としましても現在に比べますとそういう点がいいと考えておるのであります。  なおお話のもう一点は、事業所得についても勤労控除を認めたらどうかという質問かと思いますが、この点につきましては、今度の考え方は実はそれを裏の方面から解決しているわけでありまして、勤労所得者の控除を圧縮するという形によつて、そのバランスをはかつておるのであります。そうしまして、結局控除税率等で全体としての負担考えて行くというわけでありまして、この点もたびたび御説明いたした通りでございますので、なお少し進んだ御質問がありますれば、お答えいたしたいと思います。
  52. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 少し大きい問題ですが、企業再建整備法によりまして、ごく最近認可になりまして、第二会社ができて参りますが、その親会社の脱税処理の上におきまして、第二会社というものはどういうふうになるか。その税金は法律上からいえば親会社に納むべき義務があるのでありますが、第二会社では、どういうふうに処理をするのか。親会社がこれで解体するということになりますと、結局資産を償却しまして、親会社はからつぽになつてしまうそういう場合にはどういう処理をされるのですか。
  53. 平田敬一郎

    平田政府委員 具体的な問題でございますので、もう少し具体的にお聞きしませんとなかなかお答えいたしがたいのでありますが、税法はそれぞれ会社ごとに所得計算しまして税金を納めさせるということになつておりますので、税金課税が申告と違つた場合において、親会社の方に影響を及ぼす場合もあろうかと思いますので、一応それぞれの会社ごとに所得計算しまして、正しい課税をするということになつておるのであります。御質問趣旨が少しわかりかねますので、もう一度お願いいたします。
  54. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 たとえば企業再建整備法によつて認可になる会社が脱税をしておつた。そこで一億なりの税金がきまつた。ところがそのきまつた後にただちに第二会社ができてしまつたというような場合に、第二会社がその税を拂うのか、旧来の親会社がその税を拂うのかということについて、疑問に思われる点があるのです。
  55. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお尋ねは、あるいは親会社の税金を親会社が拂えない場合におきまして、第二会社が支拂う義務があるかどうか、こういう問題でございますが、第二会社の場合におきましては、合併法人の場合におきましては、通常合併しまして新しくできた法へが、合併によつて解散しました法人の納税義務を負担することになつておりますが、第二会社の場合につきましては、法令をもう一ぺん調べまして正確なところをお答えいたしたいと思います。
  56. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 今の再建整備法の問題に関連しまして、この税の問題がたしかあると思います。後日ぜひこれをお伺いしたいと思います。  それから千二百億の公債償還の問題ですが、なるほど千二百億の公債を償還する場合には、おそらく市中銀行が持つておる戰時国債を償還するだろうと考えるのであります。この千二百億を償還した場合は、一応なるほど形の上では中小私企業に資金がまわる。その金が市場にまわると考えますが、実際においてはこの国債の所有権というものは、日本銀行で保有されておるものが多いではないか。従つてそういう親心ある考え方から出したところのこの金は、全部日銀のふところに入つてしまう。こういうことでは決して一般の中小私企業に役立つことにもなりません。そこでわれわれはかえつてこの千二百億を減税にまわしたらどうかと考えておるのですが、政府はどういうお考えですか。
  57. 伊原隆

    ○伊原政府委員 二十五年度の公債償還は今お示しのように、大体千二百億と考えておるのでありますが、これをどういう方面に返して行くかということについては、現在いろいろ研究をいたしておりますが、今までに到達いたしました考え方では、一部分日本銀行からの各種の赤字的の借入金がございますので、それらの借入金を二百八十億程度返して行く。それからあと九百二十億ほど残りますが、そのうち国債の証券になつたものとか、非常に所有者のこまかい国債が七十二億ほどございますのでこれをまず返して行こう、あとはどうするかという問題でございますが、そのあとの残りのうち三百五十億程度は預金部の持つておる公債を買い取る。それからその他につきまして、できるだけ市中銀行の持つておる公債を返しまして、市中銀行が持つておる公債も非常に少くなつておりますので、その残りはおつしやつたように日銀の公債が買えというふうになると思います。この債務償還の仕組みにつきましては、今までもいろいろ御議論があつたと思いまするが、一般市中銀行の持つておりまするものを返しました場合とか、預金部の持つておりますものを返しました場合におきましては、市中銀行ないし預金部から産業資金として流して行く。それから日本銀行に返しました場合におきまして、それの相当額というものは、日銀の貸出しなりマーケツトオペレーシヨンというようなかつこうで金融界に還元し、また金融界から産業界に貸出しをして行くというような考え方をとつておりますので、債務償還の仕組みによります産業金融というふうなものは、円滑に行われると期待いたしておるわけでございます。
  58. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 まだその点は不十分のように思いますが、いずれあとに譲りまして、大臣にもお尋ねいたしたいと思います。食管の運転資金を租税收入から出しておるのでありますが、こういうものは一時借入金でまかなうことができないかということを、私どもは心配するのであります。これはこの間の食管の問題でわれわれは委員会でも本会議でも反対をして参つたのであります。租税收入で運転資金をまかなうということはわれわれは妥当でないように思うので、一時借入金なり何かでできるのじやないかと思いますが、その点をちよつとお伺いいたしたい。     〔前尾委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 伊原隆

    ○伊原政府委員 私からお答えするのは適当かどうか存じませんが、食管の運転資金を結局租税でまかなうというようなことにつきましても、これも議論がいろいろあるのであります。御存じのように食糧の買入れは供出時期になつて、非常にふえて参り、それらに一時に要します金は、今でも食糧証券の発行によりまして、たしか三月末現在が千百億以上であつたと思いますが、一定の一時借入金の限度がございまして、一時借入金による食糧証券の発行によりまして食糧を買つて、そしてだんだん売つているわけであります。ただ常時の残高がふえる部分につきましては、これをただいまお示しのような繰入によつてやるという考えでございまして、これはたとえて申しますと、常時固定すべき運転資本、すなわち持高が常時ふえておる部分につきましては、これを資本金に相当する繰入れによつてつて行くことが、健全であるという考えに立つておるものでございます。従いまして減つたりふえたりする部分、暮れには食糧証券が非常にふえるのでありますが、これらはただいまはだんだん償還になつて参りまして、三月の末には千百億をちよつと越えるところになるわけでありますが、この年間にふえたり減つたりする部分につきましては、これは一時借入金によりまして調達を今でもいたしておる、こういうわけでございます。
  60. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 これは地方税の一つでありますが、附加価値税の問題につきまして、この前に公聴会で伺つたある一連の方の言われるには、この税は受益者負担金に相当するものである。利益がなくても課せられるものだ。たとえば道路だとか橋梁を使用するという意味合いから負担すると同様なものだ。こういう公述人の説明があつたのであります。もしそういうような性質であつた場合は、これは住民税なり何かでとつて、附価値税でとるべき性質でないような気がするのですが、その点をちよつと伺いたい。
  61. 平田敬一郎

    平田政府委員 事業税は確かにそういう面も持つておるのであります。ただそれが全部かと申しますと、全部ではないと思うのでありますが、地方税たる事業税といたしましては、多分にそういう面を考え課税標準を選ぶのが一番いいのじやないかということが考えられるのでありまして、そういう点から申しますと、事業に対する課税といたしましては、大体におきましの事業のボリュームを現わすのは附加価値であると思います。従いましてこの附加価値を課税標準にしまして税金を課するというのは、地方税としては相当有力な根拠が成り立つのではないかと考えておるのであります。ただ住民税でやつたらどうかというお話でございますが、住民税は今回市町村民税にいたしまして、しかもこれは相当な増税をはかりまして、市町村の財源にするということにいたしておりますので、さらにこのほかにまた府県民税等を附加して課税するというのはむしろ適当ではない。そんなことをやるくらいなら、むしろ附加価値税みたいなもので四百億円程度收入をあげるような税を、税全体の中に織り込むのがいいのではないか。これが附加価値税の考え方だろうと考えておるのであります。
  62. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 この附加価値税の問題ですが、これにはいろいろな陳情書や廃止してほしいという希望が大分あるようです。ことに新聞なんかについて盛んにいろいろな書類をもらつておるのでありますが、新聞にどういう意味で附加価値税をかけたかということについてちよつと伺いたい。
  63. 平田敬一郎

    平田政府委員 新聞に対して特別に附加価値税を課税するというのではなくて、大体一定事業をやつております場合におきましては、その事業かち附加価値が生れて来る。その事業は大体さつき申しましたように、地方団体等からも便益を受けておりまするし、原則として課税するという、その原則から出て来たものと考えます。特別に新聞の事業を対象にして課税するというのではなくして、事業一般の性質から出て来たものでございまして、特別な意義を持つておるものとは考えていないのであります。
  64. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 これは参議院の方で一度問題になつたようでありますが、司令部の方のお考えでは、もし国会でこれを修正するという意思があるなら、司令部ではその方は認めてもいいんだというようなことがあつたようですが、そういう事実がありましようか。衆議院なり国会で修正する場合は、それを認めてもいいんだという空気があるということを伺つたのですが……。
  65. 平田敬一郎

    平田政府委員 私は別にそういう事実を承知いたしておりません。
  66. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 その陳情書の中にたしか印刷されてあつたと記憶しておりますが、参議院の討論の中にもありましたが、国会で修正した場合にはいずれ向うからオーケーをとらなければいかぬでしようが、ニュース関係について税をかけるのは私らも不合理に思うので、あの陳情書を見た場合になるほどと思つたのですが、これは全然国会では修正を認めないお考えでしようか。
  67. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の問題は私からお答えするよりも委員長からお答えしていただいた方が適当かと思います。
  68. 川野芳滿

    川野委員長 ちよつともう一回お願いします。
  69. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 新聞の附加価値税について国会で修正することは、司令部でも認めてもいいという空気があるというお話ですが、もしそれがよろしいという場合には国会で修正してさしつかえないかどうか。
  70. 川野芳滿

    川野委員長 それを皆さん多数の方が修正すべし、こういうことになりますれば、当然関係方面に折衝した上で修正可能であると認めます。
  71. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 今までに大分税金の取立てのあらしがありまして、大企業にしても中小企業にしても、脱税を押えることは非常にいいことでありますが、大分業界の方々も心配をされまして、相当額の税金を取上げられておるようです。ことに法人なんかは四百八十億も自然増收があるようでありますが、なお今に至つても証拠があがらないにかかわらず、嚴重なる取調べを三箇月も継続しておるところがあります。今までの過去のインフレ過程を考えてみますと、実際に名目上の利益がありましても、実質上には利益がなかつたように考えられます。そういう場合に税金を百パーセント取上げるということは、結局資本を食つてしまう——インフレ過程においてはあるいは一%なり二%くらいのものは、税務署でも国税庁でも大目に見ていただかなければ、最後には資本を食つて結局つぶれてしまう、こう考えるのですが、現在のやり方を見ますと過去のインフレ過程における脱税取締りをやつてつたやり方と同じように、ほとんど百パーセントとると言つておる。ある大きな会社あたりはもうこのままで行けばつぶれるんだというようなことを再三聞いておりますが、今後そういうようなことでびしびしやつて会社をつぶしてしまうつもりか、その点を伺いたい。
  72. 平田敬一郎

    平田政府委員 会社につきましては査察部調査課、あるいは査察課等で的確な調査を目下進めておりますことはお話通りでございますが、これによりまして一般の法人税の申告成績は大分いいようであります。ただ今四百億自然増收というお話でございますが、大体本年の予算は五百億と見ておりまして、法人税は若干増収にはなるだろうと思つておりますが、お話のようなことはございません。それから調査につきましては、もちろん税法の規定に従いまして大きな会社であればあるほど正確な調査をする。しかしその問いやしくも税法違反をやりましたり、あるいは事実の明らかでない場合におきまして、むりな認定をするといつたような場合におきましては、極力注意しておるのが現状であります。なおさような点につきましてはよく注意して参りたいと考えておるのであります。
  73. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 これは再三ほかの委員からも質問されたと思うのですが、農業者の税の軽減総額と米価の値上り総額をちよつとお伺いしたい。
  74. 平田敬一郎

    平田政府委員 税の増減総額につきましては、昨日も申し上げましたように、国税の方はすべて明らかになつておりまして、昨日申し上げたのでありますが、地方税の方がきまりかねていましたので、若干正確な計算ができていないのであります。しかし今大体のところで計算しておりますので、本日午後あたり御説明いたしたいと考えます。米価の値上りにつきましては簡單でございますから、あと計算しまして御説明いたしたいと思います。
  75. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 農業者の問題について、今度の税制改革について大分いろいろな人から議論があるようですが、主税局長としては、農村に対してまだまだ物足らない、こうしてやるならばなお農村のためには明るい生活ができるんだという点につきまして、この税制において局長がまだ残念に思うのだという点はどういう点でしよう。
  76. 平田敬一郎

    平田政府委員 理想を申し上げますれば、まだまだいろいろあるかと思いますが、本年度の計画といたしましては、財政経済諸般の事情から、目下提案しておりますような案で行くよりほかない。またこの案がいいと考えておるのであります。
  77. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 先ほど内藤委員がお尋ねになつたことでございますが、私が主税局長にお伺いいたしたいことは、個人に対する固定資産減価償却を認めていない。これは確かに法人と違いまして、個人の経営は先ほどもたびたび各委員も御説明になりました通り、この固定資産減価償却でありますとか、あるいは個人の給與というものは全然認めておらないのでありますが、これに対して、今回の改正におきましては、個人経営でも嚴格な帳簿をつけたものに対しましては、固定資産減価償却並びにたなおろし等については、相当の値下りはこれを認める。こういう寸法であろうと考えておりますが、これに対して政府は準備しておられるかどうか。また貸倒れ準備金については、これは従来から問題があつたことでありますが、これについても、個人においても認められる用意があるかどうかというこの二点について御説明願いたい。
  78. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話通り、従来減価償却については計算がはつきりしないために、はつきりした基礎に基いて見るということができなかつた場合が相当あるだろうと思います。しかし税務計算におきましては、やはり標準率等で便宜所得を算定する場合においても、この標準率を見ます場合のサンプル調査の場合においては、やはり一定の平均的な減価償却を織り込んで計算することにいたしております。ただ各個人の場合、帳簿等は十分整わない、また税務署の調査も行き届かなくて、十分これに応じた償却的な措置ができなかつたということは相当つただろうと思います。この点については、今回そういう資算の多い企業は、ことに私はぜひひとつ青色申告制度を御利用願いたいと思います。そうなりますと、よほど的確に行くのではないか。また再評価によりますと、増加評価額は再評価法の第百二十一條にはつきり規定しておりまして、税法上必要経費に算入するという規定もさらに明らかに設けまして、その関係を明瞭にいたしておるのであります。
  79. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 ただいま主税局長からたいへん親心ある御答弁がありましたが、これらの各税務署に対しましては、どうかそうしたような小企業者、零細企業者等に対しては、必要経費というものを相当見る必要がある、かように考えておりますから、その由を下僚官僚に伝達してもらいたい。  もう一点伺いたい点は、この再調査を申請する。これに対しましては、三箇月以内に今回は調査いたしまして可否を決定する。次にもう三箇月済みますと審査請求ができる。そうして六箇月以上になりますと訴訟ができる、こういう素案になつております。この三箇月以内に、ぜひ再調査に対しましては、一応の目を通すという態勢を整えてやつてもらいたいと思いますが、これに対して政府委員として力ある御答弁を承りたいと考えます。
  80. 平田敬一郎

    平田政府委員 この問題は前々から私が申し上げましたし、また国税庁長官も話したと思いますが、今三宅委員お話しになりましたような方針で、役所といたしましては極力努力するということを申し上げておきたいと思います。
  81. 前尾繁三郎

    ○前尾委員 ちようど伊原理財局長も見えておりますから、けさの毎日新聞に、見返り資金の今月中の放出量なり、またその出します面がざつと出ておるわけであります。この詳細についておきまりになりました点、なおまたそれがどういうふうな方面に流れて、今月中の通貨の発行高が、そういうようなものにどういうふうな影響を持ちますか。その点をはつきり御答弁願いたいと思います。
  82. 伊原隆

    ○伊原政府委員 見返り資金の三月中の放出の見込みにつきまして、ただいままでのところについて概略を御説明申し上げたいと考えます。結論から申し上げますと、三月六日以後の計算によりますと、見返り資金はいわゆる電力、造船、石炭その他の私企業の直接投資といたしまして、あと百一億の金が出るだろうというふうに見込んでおります。それから復金債の償還という点におきまして百四十三億、合計二百四十四億ぐらいの金が、三月六日以後、三月中に解除になつて、現実に金となつて出て行くであろうというふうに見込んでおるわけでございます。  この私企業の投資につきまして少し詳しく申し上げますと、三月六日現在で、司令部から許可を受けております金額は百九十八億ございます。電力が六十九億、船が八十五億、石炭が二十億、鉄鋼が十四億、いわゆる中小企業が三億、肥料が一億、化学が三億というふうに許可を受けておりまして、現実に三月六日までに金が出ておる金額は、ただいま許可がありました百九十八億のうち、百四十九億だけ現実に金が出ております。従いまして今後私どもとしては、大体昭和二十四年度中に私企業の投資二百五十億の許可が認められ、かつそれが全額資金が放出せられるであろうという予定をいたしておりますので、今後許可を期待いたしまする額が、私企業といたしましては六十八億ということになるわけであります。現実に金が出た面を申し上げますと、ただいままで百四十九億金が出ております。内訳を申しますと電力五十七億、造船に五十八億、石炭に十七億、鉄鋼に十四億、中小企業につきましては、本日出た金を入れますと七千四百万であつたかと思います。それから肥料で一億という金が出ておるのでありますが、今後現実に、ただいま申し上げましたように百一億ぐらいの金が出るであうう。それから今後出るであろうという内訳は、電力につきまして四十三億、船につきまして二十七億、石炭につきまして二十三億程度中小企業あとの三億の残り全体二億三千万程度、それから化学肥料あと二億程度ということになつておりまして、なお復金債はただいま申し上げました百四十三億の金が今後出るという計算なつておるわけであります。二月中も実は見返り資金といたしましては、さらに相当の金額が出たのでありまして、直接投資としまして七十二億の金が二月中に電力、海運等を主として出ておるのでありますが、この三月には、ただいま申し上げましたように、百一億程度の直接投資が出ますし、それから復金債の償還についても、これはいずれも預金部と農林中金が持つておるのが多いのでありますが、預金部が五十億、農林中金が八十九億、市中が三億三百万という金を持つておるのであります。日銀以外の部分が金を持つておりますので、この直接投資の百一億と、復金債の償還の百四十三億、すなわち二百四十四億というようなものが、今後復金債の償還なり、直接投資の形で、年度末までに放出をせられることが期待できますので、私どもといたしましては、これが金融の緩和に非常に役立つであろうということを期待いたしておるわけであります。国庫金につきましても、昨日発表いたしましたように、百五十億の指定預金をいたすことになつて、これを実行いたしておりますし、かたがた年度末までの金融対策といたしましては、この見返り資金の活発な活用を中心にいたしまして、産業資金の供給ということは相当豊富に行われるという見通しを持つておる次第であります。
  83. 川島金次

    ○川島委員 非常に重要なことでありまして、さらにつけ加えてお尋ねしておきたいのですが、二十四年度の見返り資金勘定は多分千二百億くらいでなかつたかと記憶しておりますが、この予算額と見返り資金勘定の現状、それから今お話になりましたのは今後の分だけのようでありますが、予算額を基底として全体の運用が公私ともにどれくらいになつておるのか、それもちよつとついでにお示しを願いたいことと、それから今毎日新聞のお話が前尾君から出ましたが、農林中金の持つておる復金債を償還して、二十七億を農協組合えこれをさらに還元して行くというような質問も出ておるが、こういうことも事実であるかどうか、あわせてお示し置きを願いたい。
  84. 伊原隆

    ○伊原政府委員 先ほどの、三月六日の現在についてもう一度申し上げます、三月六日現在におきまして、見返り資金として入りました方におきまして、千二百十二億でございます。これは貿易資金からの受入れが千百九十九億、それから利子等が十二億、合計千二百十二億というものが入つております。これに対しまして先ほど申し上げましたように、現実に金が出ました金額は、復金債の償還の四百八十一億六千七百万円、それからいわゆる公企業投資、鉄道並びに電通に対しまして二百七十億、これは全額すでに出ております。それから私企業投資が百四十八億九千万何ぼ、その金の残りと申しますか、三月六日現在のバランスが三百十一億三千八百万円、これに対しまして食糧証券を三百八億持ち、あと三億三千万程度の現金を持つておる、こういう計算に相なつております。改訂予算では千五百八億と心得ておりますが、現実に三月中に千五百八億だけの收入に相なるかどうかという点については、ちよつと今見通しを持つておりません。これがもう少し減るのではないかというふうに考えておるわけであります。
  85. 川島金次

    ○川島委員 それに関連して、先ほど中小企業に二億というお話でありましたが、きのう、おとといあたりの新聞によりますと、十二億を中小企業に融資するという話が進んでおるというようなことも、新聞に出たという記憶があるのですが、その点はどうなつておりますか。
  86. 伊原隆

    ○伊原政府委員 中小企業に対しましては、先ほど申し上げましたように、今年の一月、二月、三月というふうなものに対して一億ずつの割当がございます。すなわち一四半期ごとに三億というものでございまして、二月の分として多分本日か、明日でありますが、七千六百二十四万円だけ中小企業に出ましたので、あと三月中に二億二千四百万円というようなものが出ることが期待せられておるわけであります。日本銀行に現在までに一億四千万程度の申込みが、すでに参つておるそうでございますが、実ははなはだ申訳ないのは、宣伝といいますか、趣旨の徹底等か多少不十分かと思うのでありますか、私どもつたほど出ておりませんので、三月末までには何とかしてこの三億を使い切るということについて、努力をいたしておるわけであります。なおもしこれが需要が非常に多いようでありますれば、関係方面においても三箇月三億という金については、これを増額してもらう用意があるように思いますので、なおこの点についても努力いたしたいと考えます。
  87. 川島金次

    ○川島委員 大分耳寄りな話ですが、それだけの政府の用意があるにかかわらず、需要があまりにない。これは何か宣伝の行き届かぬこともあるでしようが、手続等がめんどうなこともその原因でありましようが、その手続はどういうことになりますか。
  88. 伊原隆

    ○伊原政府委員 この点は、いい機会でございますので、申し上げておきたいのでありますが、大体見返り資金の申請について手続がめんどうであるとか、書類がやかましいという御非難が非常にあつたのであります。これは一般の問題につきましては、新年度からは全部簡素化いたして行くつもりでございますが、中小企業につきましては、実は非常に簡單にやつておりますので、中小企業の方が銀行にお話をしていただけば、銀行が日本銀行の支店と協議をいたしまして、そこできまつてしまうわけでありまして、日本銀行の本店はもちろん、大蔵省本省におきましては何らの審査はいたしておりません。金がまとまつて要求があれば、小切手を切るというだけでございまして、実質的には地方の銀行と日本銀行支店との話合いできまつてしまうわけであります。なおよく地方の役所の証明というようなものがいるように、誤解をせられておる向きがあるのでありますが、むしろこういうものは私どもとして排除して参りたい。役所が金融のせわをするというようなことは、およそ邪道でございますので、むしろ銀行が直接に企業者と話をいたしまして、そうして日本銀行の支店と話合つて進めて参るということにいたしておりますので、これは書類も簡單でございますし、手続も非常に早く行つている、また早く行くようにいたしておるという点を御了承願いたいと思います。
  89. 川島金次

    ○川島委員 さらに続いてお伺いしますが、その融資の最高限度、それから担保を必要とするのか。また期限、利子等はどういうふうになつておりますか。
  90. 伊原隆

    ○伊原政府委員 まず第一に、これは見返り資金の特色といたしまして、設備資金だけに限つております。それからちよつと数字を持つて参りませんでしたが、期限は多分五年であつたかと思つております。なおその他の條件等につきまして、もし必要でございましたら、午後でも申し上げさしていただくと都合がよいと思います。
  91. 前尾繁三郎

    ○前尾委員 ただいま川島委員から、なぜこの中小企業に対する見返り資金が出ないか、手続が非常にむずかしいのではないかというお話でございますが、ただいま伊原政府委員からの説明の通り、私も手続は非常に簡單なものだと承知しておるのであります。出ないというのは、結局銀行がそれだけの熱意を持たない。また中小企業に対する貸付に対しましては、相当割が合わないというような感じを強く持つておるのではないかと考えておる次第であります。この際十分その趣旨の徹底ということについて、政府から銀行に十分勧告なり注意をしていただくことが必要ではないかと思いますので、この際私はその点を強調して希望を申し上げる次第であります。
  92. 伊原隆

    ○伊原政府委員 ただいま前尾委員のお示しの通り中小企業の問題につきましては、趣旨の徹底に努めることが非常に大切でございますので、日本銀行の支店を通じまして、各銀行には何度も趣旨の徹底方を申しております。従いましてただいままで一月から始まつた制度でございますので、なおいろいろ考えられる点もあるのだろうと思いますが、さつき申し上げましたように、きのうまで日本銀行の本店に集つておりますものが、一億四千万円程度あるそうでございますので、三月中にさきに申し上げました三億の残りに二億以上の金は、中小企業に出るということを期待をいたしております。趣旨の徹底につきましては十分に注意いたしたいと思います。
  93. 川野芳滿

    川野委員長 午前はこの程度にいたしまして、午後は一時半から再開することにいたします。    午後 零時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  94. 川野芳滿

    川野委員長 休憩前に引続き、九税法案を議題として質疑を続行いたします。北澤直吉君。
  95. 北澤直吉

    ○北澤委員 大蔵大臣に数点お伺いいたします。  第一点は、今度の税制改正に関しまする政府の提案理由を見ますると、中央及び地方を通じて、恒久的かつ安定した税制の確立を求める、こういうような説明でございまするが、終戰以来今日まで、五年間、日本の政治、経済、社会、あらゆる方面に非常な変化があつた。特に経済方面におきましては、非常な速度をもつて進んでおりましたインフレーシヨンというものが、いわゆるドツジ・ラインによりまして、一応安定の段階に入りつつあるわりでありますけれども、いまだ日本の経済状態は、決してノーマルなものではないと私は思うのであります。こういうようなアブノーマルな時代におきまして、恒久的かつ安定した税制を実行するということにつきましては、これはいろいろ注意をする必要がある、ほんとうに日本の経済状態が安定した場合におきましては、こういうふうな恒久的、かつ安定した税制をしくのもいいと思いますが、過度的な非常に変動のある時代におきましては、やはりある程度過渡的な措置を考える必要がある。こういうふうに考えておりますか、これに対する大臣のお考えを承りたいと思います。
  96. 池田勇人

    ○池田国務大臣 まことにごもつともでございまして、われわれとしては、今の状態から申しまして、やむを得ないのでありますが、やはり税金が高過ぎるという気持を持つております、高過ぎる税金をできるだけ納めやすいような租税制度を立てなければならぬと思います。従いまして、全体的にはます租税の簡素化をはかりまして、大した税金でないものは、できるだけはずして行つてしまつて、税目を少くするという方向に進んでおるのであります。地方税の方におきましては、地方自治強化の関係から、ああいうふうに全面的に改正を加えたのであります。私は租税制度としては、このままで大対いいのではないか。今後の問題は、各税にわたりましてできるだけ税率を引下げる、こういう方向に持つて行きたいと考えております。所得税につきましても、昔の税制に比べますれば、よほど日本実情に沿つた改正が、今回行われることに相なりましたので、今後主として税率の引下げに主力を注いで行きたい、こういう考えを持つておるのであります。
  97. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府におかれましても、現在の日本の時代に即応するように、いろいろ配慮しおられるということにつきましては、私も了承いたすのでありますが、特に今度の税制改革を見ますと、直接税中心主義というものを、まずとつておるようであります。もちろん理想的な安定した状態におきましては、これもいいのでありますけれども、とにかく終戰以来の日本の状態を見ておりますと、国民の道徳水準と申しますか、そういう道義観が相当つておる。国民の納税観念というものも必ずしも満足すべき状態でない。従いまして所得を正確に把握するということは、現在の日本においては相当むずかしいのではないか。せつかく申告納税制度を採用しましても、納税者の道徳観念と申しますか、そういう点から申しまして、なかなか正確に所得を把握することができない。こういうような状態におきまして、あまりに直接税中心主義をとりますと、どうも税制というものがうまく実施できないと思うのであります。せんだつて主税局長お話によりますと、国税、地方税を合してみると、直接税が大体六〇%というふうなことでありまするが、こういうような直接税中心主義というものにつきましては、私はもう少し日本の経済状態が安定したときにはもちろんけつこうでありますけれども、それまでの道程におきましては、やはりある程度過渡的に、間接税あるいは消費税もしくは流通税というようなものも、相当程度に利用する必要があるのではないか、こう思うのでありますが、これに対する大臣の御所見を伺います。
  98. 池田勇人

    ○池田国務大臣 直接税と間接税の比率の問題は、租税制度の根本をなす重要な問題であるのであります。従いまして、従来この点につきまして相当検討を重ねまして、戰時中におきましては、国税におきまして、直接税が六十四、五パーセントになつたときもあるかと記憶いたしております。今回は大体直接税が国税におきまして、五五%、間接税が専売益金を入れまして、四四%に相なつておると記憶いたしておるのでありますが、組税制度の本来の姿といたしましては、私はやはり直接税中心主義が租税制度としてはいいと思います。ただお話のように、所得税の把握が非常にむずかしいときにおきましては、えてして間接税の方に重点が行くのであります、私は敗戦後の一、二年、二、三年のところは、ああいう状態でありますので、間接税に相当重みを持たしてもいいと思つてつたのであります。今後はやはり直接税中心主義で行くのが、理想的なやり方ではないかと考えております。直接税と間接税以外に、いわゆる流通税のごときものを入れるという税制の考え方もあるのであります。しかし流通税は取引高税以外におきまして、あまり收入の期待ができません。取引高税は一面にはいいところはありまするが、施行してみますると、御承知通りに非常に悪い面が出ましたので、やめたのであります、しからば、今後間接税のどこに力を入れるかということになりますと、御承知通りタバコの益金も相当高いし、酒も外国にその例を見ないほど高いのでございまして、もうほかに間接税に持つて行く手はないと思うのであります。今後の問題といたしましては、私は直接税を下げろと同時に、間接税につきましても、相当下げなければいけない。大体比率といたしましては、流通税を除外いたしました場合におきましては、五十五か六十、間接税が四十程度ぐらいがまあいいところではないかと考えております。地方税を加えますると、五十五の直接税が六十余りになつて来ると思うのでありますが、これはやはり租税制度としては、先ほど来申し上げましたように直接税中心主義で行き、そうして間接税は消費の面からこれを補つて行くという考え方がいいだろうと思います。従つて直接税中心主義で行くとすれば、所得の把握について十分の努力をしなければならぬということは御説の通りであります。大体経済も常道乗つて来つつありますので、中央地方を通じまして、所得の把握につきましては今後とも十分力を入れて、課税の適切公平を期して行きたいと思つております。
  99. 北澤直吉

    ○北澤委員 今回の税制は、税制そのものとしましてはほとんど理想的にできておると私は思うのであります。非常に合理性をもつて一貫しておるものでありまするけれども、ただ日本の実際の状態、ことに日本の国民性あるいは日本の伝統というものから申しますと、どうもわれわれ日本人の考え方あるいはやり方は、必ずしも合理性を持つておらないのであります。ですからアメリカのような、国民自体が非常に科学的にできており、ものを合理的、科学的に考えるようなところにおける場合と、日本のようなところにおきます場合とは、税制を考えるときにおきましてやはり国民の伝統とか、あるいは国民性というものにマッチするようなものでなければならぬと思うのであります。今回の税制を見ましても、たとえば青色申告というものが出ておりますが、私がせんだつて仙台に参りましすときに、仙台の国税局で聞きましたところが、東北六県では一月三十日現在で青色申告の届出をした者が、個人では百人に一人、法人では四分の一、こういうふうなことでありまして、こういう制度を実行しようとしましても、国民自身がなかなかそういう気持になつていないという状態であります。でありますから、私はやはり日本の国民性というものをよく考えて、漸進的にやつて行かなければならぬと思うのであります。税制そのものとしては非常にいいのでありますが、これを日本の国に実施する場合におきましては、日本の国民性というものをよく考えて、なるべく時を與えて順次やつて行くことが必要だと思うのでありますが、大蔵大臣のお考えを承りたいのであります。
  100. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御説の通りでありまして、租税というものは国民から納めていただきますので、国民の実際生活、実際経済状態に沿うようなものにしなければならないことは当然であるのであります。しかしやはり税の進歩ということもありますので、徴税その他につきまして合理的な方法をとつて行かなければならぬことも、また忘れてはならぬことであるのであります。今回の青色申告制度は、今までの納税者と徴税官署の間の摩擦をできるだけ少くして、適切な課税をいたしますのには、一つのよいアイデアではないかと考えております。何分にも今の日本農家においてはもちろんのこと、商家におきましても、今まで記帳が非常にルーズになつておりますので、ただちにこの青色申告制度が全般に行き渡るということは、なかなか困難な問題であると思うのであります。しかし記帳その他を簡素化し、たくさんの方に青色申告制に乗つかつていただきますならば、今までよりもよほど適切公平な課税ができるのではないかと私は思つております。今年よりやり始めるのでありますから、初めから万全を期するわけには行きませんが、とにかくできるだけ納税者がそれに乗つかつて来てくださるように、努力いたしたいと思つております。
  101. 北澤直吉

    ○北澤委員 アメリカの元極東部長をしておりました、日本についての権威者でありますバランタインという人は、先日どうも日本は民正化を急ぎ過ぎる傾向がある。アメリカ人は外国人を律するのにアメリカ人の考え方をもつて律するが、それは間違いである。日本に臨む場合には、日本人の考え方をもつて律しなければならぬということを、あるところで言つておりますが、終戰後今日までの占領政策を見ておりますと、どうもアメリカ人の尺度をもつて日本人を律しているというような感じを受けるわけであります。今度の税制改正におきましても、そういうようなアメリカ人の尺度をもつて税制改革をやろうとしておるように見えますが、日本の伝統とか、国民性とかいうものをもう少し織り込んだ税制が必要ではないかと思いますので、これにつきましては、今後税制を実施するにあたりまして、いろいろな御考慮をお願いするものであります。  次にお伺いしたい点は、今度の税制における相続税法によりますと、日本家族制度というものに対しまして、どうもあまり考慮を拂つていないように思います。配偶者が相続する場合には半額の控除でありますが、成年に達した子供については、そういう考慮がない。やはりアメリカ式の家族制度考え方で、日本の相続税というものが考えられておるように思います。やはり日本の古来の美風でありますところの家族制度に対しましても、担当程度の考慮を拂うべきだと思いますが、これにつきまして大臣のお考えを伺いたいと思います。
  102. 池田勇人

    ○池田国務大臣 民法におきまして、従来の日本家族制度というものが根本的にこわされたと申しますか、かわつて参りました。長子相続制というあの原則がなくなりました以上は、相続税におきましても、やはりその思想を取入れざるを得なくなつたのであります。今の民法の規定から申しますと、やはり相続税といたしましては、こういうようにせざるを得ない状況であるのであります。民法改正のときに、民主化という線に沿いまして、ああいうふうに改正されました関係上、実は相続税におきましても、こういうふうな改正なつた次第であります。
  103. 北澤直吉

    ○北澤委員 アメリカみたいな国に行きますと、親が年とつても子供は親を養う義務はないのでありますが、やはり日本におきましては、親が年をとつて働けなくなれば、子供は親を扶養するというのが日本古来の伝統だと思います。もちろん民法におきましては、お話通り家族制度というものをこわすというアイデアの問題はありますが、日本実情は、家族相互間の相互扶助ということが、やはり日本社会の基本になつておると私は思いますので、私は相続税の問題につきましても、日本家族制度につきましても、好意的な考慮を拂つてもらいたいと思うのでありますが、これにつきましては、これ以上は議論でありますので避けます。  次にお伺いいたしたいのは、今度の税制改革におきましては、国税は大体九百億円見当引下げられるが、地方税は大体四百億増徴ということになつております。これも御承知のように中央の徴税機構と地方自治体の徴税機構というものを考えますと、地方の自治体の徴税能力というものは、相当に劣つておると思います。そこで徴税能力の比較的よいところの国税を避けて、徴税能力の比較的劣つておる地方に対しまして増税させるということは、どうもやはり少し行き過ぎておりはしないかと思います。将来日本の地方自治体はだんだん発達しまして、徴税能力もよくなつて参ると思いますが、地方自治体の徴税能力が不完全である間は、やはり中央が相当地方のめんどうを見てやる。従いましてむしろ地方税の方はそう上げないで、中央の力である程度税をとつて、地方に平衡交付金というような形でわけてやつた方がいいのではないかと思うのであります。もちろん日本においては、地方自治の発達ということが最も大事でございますので、将来なるべく地方というものが中央税に依存しないように持つて行くのが、もちろんよいでありましようけれども、現在の日本実情から申しまして、どうしても時を與えてやらなければならぬと思うのであります。今回税制改革を実施しまして、その結果を見る必要があるのでありますが、どうも日本のこういうような事情、特に地方農村の事情を見ると、やはり地方の自治体の徴税能力というものにつきましては、いろいろ心配になる点が多いのであります。こういう点につきましても、私はある程度時をかすことが必要であると思うのであります。そういうふうでありまして、私は今度の地方税の改革につきましても、どうも少し急ぎ過ぎておるというふうな感じを持つのでありますが、この点につきましても、将来いろいろ政府当局の御考慮を促したいと思うのであります。  次にお伺いしたい点は、今度の税制改革を通じまして、資本の蓄積という線が非常に大きく出て来るわけであります。たとえば五十万円を越える所得につきましては五五%以上はかけない。あるいは法人税につきましては、三五%以上はかけないということになりまして、資本の蓄積という点に非常な重点が置かれておるように思うのであります。現存の日本の状態から申しますと、何をおいても資本の蓄積というものが一番大事だと思うのであります。ここで私はこの資本の蓄積という目標をもう一歩推し進めて、いわゆる利子の所得、配当所得につきましては、相当程度の優遇を與えておりますが、銀行の利子とかあるいは債券、社債というものに対する利子所得につきましては、配当所得に比べてある程度虐待しておるというような感じを持つのでありますが、この点について大臣のお考えを承りたい。
  104. 池田勇人

    ○池田国務大臣 地方税等については、徴税上相当の困難を来しはしないかという御意見は、われわれも懸念しておるのでありますが、しかし今度府原でとります附加価値税につきましては、かなりの手数がいると思うのでありますが、市町村の住民税につきましては所得税が基本になりますから、税務署の方でできるだけ協力いたします。また固定資産税につきましても、当初はちよつとやつかいでありますが、一ぺんやつてしまえば大したことはないと思います。いずれにいたしましても、一度に固定資産税、附加価値税が行われますので、府県と市町村には相当の手数がいることはもちろんでございますが、これはもう前もつて準備をしておけば大したことはないと考えておるのであります。  次に配当と利子との課税についての不均衡でございますが、これは沿革的には配当が非常によくて、利子の方が悪かつた場合もあります。しかし今回の税制改正におきましては、法人を個人より独立した一つの企業体と見るという今までの対立的の考え方を改めまして、法人企業というものは個人の延長であるという考え方にかわりましたために、今までの配当に対する課税がよほど緩和せられ、法人につきましても、緩和されたのであります。利子は配当とは違いまして、他の所得と同一に考えなければならぬと思うのでありますが、今度は配当の方も法人関係の方が非常に軽減せられたということが、目に見えるようになつたと思つておるのであります。根本的に考えますと、大した差はないのではないかと考えております。
  105. 北澤直吉

    ○北澤委員 配当所得と利子所得課税につきまして、大した差はないというお話でございますが、申すまでもなく現在の日本におきましては、資本の蓄積増加ということが最も大事でありますので、やはり利子所得につきましてもある程度の優遇を與えて、そして国民が喜んで銀行に預金をし、また社債あるいは債券を買うというように仕向けて行くことが必要であると思うのであります。シヤウプ博士の勧告によりますと、銀行の無記名預金はいけないというような解釈でありますが、これもほんとうに安定した経済状態ならばそれでよろしいのでありますが、今日のように、敗戰のどん底から日本が立ち上がるために、どうしても資本が必要だという場合には、こういう無記名預金につきましても理論通りでなく、ある程度日本の現在の実情というものをよく勘案してやることが、必要であると思うのであります。従来無記名預金が相当銀行に多かつたのでありますが、今度のシヤウプ勧告によりますると、こういう無記名預金はいかぬということで、すべて預金は記名式にして、預金の利子に対して相当所得税を課せられることになつておりますが、やはり今日の日本実情から申して、どうしても資本の蓄積ということが焦眉の急務である現在におきましては、無記名預金につきましても、できるならばある程度公平に考えなければいかぬと思います。無記名預金廃止ということについては、なるべく延ばすということが必要であると思いますが、無記名預金は、いつごろから廃止するつもりであるか、伺いたいと思います。
  106. 池田勇人

    ○池田国務大臣 無記名預金の存続につきましては、議論をいたしたのでありますが、シヤウプ博士の勧告をまつまでもなく、昭和十一年の馬場大蔵大臣のときに、無記名預金の問題で相当議論があつたのでありまして、そのときに結局妥協案としまして、源泉課税という方法を設けたことは御承知通りであるのであります。しかし一面課税の充実ということから考えますと、すなわち所得の捕捉の点から考えますと、ぜひとも記名預金にしなければならぬという点もあるのであります。また資本の蓄積ということになると、無記名預金制度を置いておいた方が、便利のいい点があることはもちろんわれわれも考えたのでありますが、課税の適正ということを第一義といたしましたために、無品名預金ということを今回なくすることにいたしたのであります。その時期は九月の末になくすることにいたしておるのであります。
  107. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほど申しましたように、資本の蓄積という点から申しますと、無記名預金はできるだけ存続してもらいたいのであります。これと同じように株式の名義書きかえという問題でありますが、この株式の名義書きかえの期間を短縮して実行するということは、やはり国民が株式に投資をするということに対しまして、相当影響を與えるということを考えますので、株式の名義書きかえの実施ということは、なるべく延ばした方がいいと思うのでありますが、政府におきましては、株式の名義書きかえはいつごろから実施するお考えであるか承りたい。
  108. 池田勇人

    ○池田国務大臣 株式の名義書きかえを一箇月にしろというシヤウプ勧告が出ておりますが、今の状況から申しますと、最近の増資の場合におきましては、ほとんど拂い込みの預り証になつており、実際の株券というものは、ほとんど出ておらない状況であるのであります。しかしてまず株券の印刷ということもあり、また株券の印刷ができましても、株主名簿が本店にしかないという場合におきましては、そう毎月々々名義を一箇月以内に書きかえるということはとうてい困難で、ほとんど不可能な状態であるのであります。従いまして私といたしましては、簡易な名義書きかえ機関を設けてやつて行くよりほかにないと思います。従つて本国会におきまして、簡易な名義書きかえ機関を設けるための法案を出しますとともに、他面株券印刷その他にも力を入れて行きまして、大体この両者、が並行して進んで行つて、初めてシヤウプ勧告案の趣旨に沿うことができると思うのであります。ただいまのところ、いつごろから実施できるかという問題につきましてはなかなか見通しがつきませんが、できるだけ早い機会に名義書きかえ機関をつくります。また他面株券の印刷等をはかつてつて、適当な機会に実施して行きたい。ただいまのところでは、いつとは、はつきり申し上げるだけの資料を持つておりません。
  109. 北澤直吉

    ○北澤委員 やはり資本の蓄積に関連する問題でありますが、シヤウプ博士の考えによりますと、法人の積立金に対しましては一%の税金をかけるということになつておりますが、今回の政府提案の税制改革案を見ますと、二%ということになつております。やはり私はシヤウプさんは資本の蓄積という点を考えて、法人の積立金に対して一%ということを提案したのでありますが、政府がこれを二%にかえた理由につきまして伺いたい。
  110. 池田勇人

    ○池田国務大臣 積立金に対しまして課税しますのは、個人に配当いたしましたときには——株主に配当いたしましたときには所得税の対象になる。配当しないため積立金になつておりますから、これに負担力ありとして、積立金に特別の課税をすることは適当であると思うのであります。しからば幾らの課税をするかと申しますと、シヤウプ博士の言われるように、一%の課税だと、金利の点から申しまして三分ぐらいに相当するかと思うのでありますが、今の日本の金利の状況から申しますと、配当せざりし場合に三分程度負担というのは少し低過ぎるのではないか。やはり六分程度に相なりますように、二%とした方が適当と考えまして、とにかく積立金に対する課税趣旨から申しまして、一%よりも二%の方が適当と考えた次第であります。
  111. 北澤直吉

    ○北澤委員 今回の税法を見ますと、もちろん負担の公平、それから課税の適正という点にも重点が置かれておりますし、また一方においては資本の蓄積という点にも重点を置かれておりますが、私はやはり現在の日本実情から申しますと、むしろこの資本の蓄積の方に重点を置いてやる。多少負担の公平あるいは適正という点には欠点がありましても、むしろ資本の蓄積という点に重点を驚くべきだと思うのでありますが、この点につきまして、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  112. 池田勇人

    ○池田国務大臣 資本の蓄積は根本問題であるのであります。全体的に資本の蓄積を達成しなければならぬと思つております。ただ積立金の課税趣旨が、そういう配当をした場合を予想しての趣旨でございますから、配当した場合と大体均衡のとれるようにするのが適正ではないかと考えます。配当いたしましてもこれが資本の蓄積にならないというわけのものではないのでありまして、個人に配当いたしましても個人がそれを蓄積すればいいのであります。個人に配当した場合の負担と、それから配当せざる場合の負担との均衡をとるためにいたしたのでありまして、お話通りに資本の蓄積ということはあらゆる方面から考慮しなければならぬ重大問題と考えております。
  113. 北澤直吉

    ○北澤委員 予算委員会の方から大臣の出席を求めておられるようでありますから、もう一点だけお伺いいたします。  今度の税制改革におきましては、やはり資本の蓄積という点に考えを置きまして、外資導入ということを考えて、やはり税の面におきましても特例を認めるという考え方のようでありますが、私は今度の税制を見まして、日本の輸出貿易の振興という点について、あまり考慮が拂われてないように見受けるのであります。特にその問題で注意を要するのは、地方税の附加価値税の問題であります。御承知のように、附加価値税というものは転嫁されるというふうにお考えでありますが、この附加価値税というものが、あるいは運賃なりあるいは保険料なりあるいは倉庫料なり、そういうものに転嫁されて来ますと、私は日本の輸出品のコストが非常に高くなつて、国際貿易上において、日本の品物の競争力を弱めるハンディキヤツプをつけることになると思いますが、今度の税制改革におきまして、政府は輸出貿易の振興という点について、どういうことをお考えなつておりますか。この点を伺いたいと思います。
  114. 池田勇人

    ○池田国務大臣 輸出貿易の振興はわが国経済自立に最も重要なることでございますので、われわれとしては常に考えておるのであります。しかし今回の税制改正におきまして、輸出貿易振興のためにどれだけの措置をとつたかと聞かれましても、実は税制の方はとつておりません。全体的にできるだけ税を安くするよりほかにはないのであります。従つて附加価値税で、ある特殊の産業につきましては、従来の取引高税あるいは事業税を加えたもの以上に多くかかる部類があるかもわかりません。しかし全体から申しますると、取引高税と事業税を加えたもの以上に、附加価値税がかかることはないのでございます。それは取引高税の四百数十億円、事業税の四百数十億円とを加えたものの半分程度にしかならないのであります。特に貿易に対して、積極的に税法において貿易振興の考えを盛つたものはございませんが、悪くしたところもないのであります。私は貿易の振興に対しましては、やはり金融面で極力今後の便宜をはかつて行きたいという考えを持つております。
  115. 北澤直吉

    ○北澤委員 ここに東京商工会議所の調査がございます。これによりますと、法人の今度の税制改革の税負担の増加でありますが、法人税、附加価値税、それから固定資産税、再評価税というようなものを全部ひつくるめて、特に税負担の増加の多いものをあげますと、たとえばある電力会社は十九・四倍、某運送会社は十六・八倍、某生命保険会社は十四・九倍、某鉄道会社は七・三倍、某ホテルは七・二倍某倉庫会社は六・七倍というふうに、中央税と地方税を両方ひつくるめますと、こういう事業におきましては相当程度に税の負担がふえる。そういうような調査が東京商工会議所にあるのであります。こういうふうになりますと、私は法人企業というものが、国際経済上において外国の事業等と競争する場合において、不利の地位に立つて行きはせぬかということを心配するわけであります。その点につきまして大臣はどういうお考えを持つておりますか。この点だけお伺いいたしておきます。
  116. 池田勇人

    ○池田国務大臣 北澤さんのお持ちになつております資料の内容がわかりませんが、今までわれわれの聞くところによりますと、固定資産税の評価につきまして、かなりわれわれの考えておるのと違う点があるのではないかと思うのであります。なるほど附加価値税につきましても、よほど計算方法がかわつたやり方でおやりになつている点があるのではないかと思うのであります。それは固定資産税につきましても全体を五百二十億円で押えておるのでありますから、地方自治体においてはその程度のものをおとりになればいい。五百二十億円にいたしますと、今までの土地と家屋だけで相当とれるのであります。従いまして償却すべき資産に持つて行く部分はよほど少くなつて行くのではないか、こういうことから考えますと、固定資産税につきましても大したことはない。また附加価値税につきましても、四百数十億円の見込みであるのでありますから、前の事業税と大体かわりがない。取引高税を加えました分の半分ぐらいしかとる必要はないのであります。その点は税の執行上、地方自治団体でよほど考慮すべき問題だと考えております。
  117. 川野芳滿

    川野委員長 それでは主税局長並びに国税庁長官に対する質疑があれば、この際許します。西村直己君。
  118. 西村直己

    ○西村(直)委員 国税庁長官にひとつ眞剣に聞いておいていただきたいことがあるのであります。それは今度新法がしかれる場合における税務署職員の態度の問題であります。実は国税庁長官は、この席では非常に適切妥当な御答弁をなさつておりますが、末端におけるところの税務署員の動きというものは、あなた方の御趣旨とはかなり違つた姿で動きやすいのであります。従来警察官というものが、かつて政府の時代に、いかに警察の主脳部がやかましくいいましても、末端において怨嗟の的になつておつたことは御存じの通りであります。いかにあなた方が口頭の辞令、口頭の訓辞を與えられましても、末端における税務署の官吏というものが、新法をどういう気持で動かされるかという問題はたいへんな問題であります。たとえば物品税というものがこの間改正された。今度からはきつちり取立てるぞということでなさる場合に、今度の税制改正でも、今度こそはシヤウプ勧告案によつて一つ理想的な税制ができた、一つの合理的な改正ができた、さあやるぞという場合においては、末端の業者は非常に困るのじやないか。いかにしたら皆さんの、特にこの国税庁長官一つのあたたかい答弁を末端に停透させるかどうかという問題は、これは眞劔になつてごくふう、御指導をいただかなければいけない。ひとつ例を申上げますと、査察部なら査察部からおいでになつた場合は、まず地元の税務職員を督励して、中小商工業者の門と入口に立番をして、電話を押える。電話を押えるときの態度、言葉が、もしあなた方が電話をかけるなら、すぐ検事局にやつて、あなた方は刑務所に入れるのだ、こういうような口調でもつて押えて来るのであります。そういうような場合に、あなた方の考え方、気持とは全然正反対な実情が起る。あるいは今度は帳簿を出しなさいと言つて出させる場合には、過去の財産税のときから一切を洗いましよう、こう言つて来る。そこに必ず増加所得なり何なり、脱税が出て来る。あの手この手で責めて来るから、結局はやられた人間は運が悪い、こういうような状態に立至るのであります。私は新法施行と同時に税務署職員に対して、どういう態度で国税庁長官がお臨みになるかという点は、ひとつしつかりお聞きしておきたいと思つておるのであります。
  119. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 御承知通り、現在の税務職員が、一つには年齢が非常に若い者が多いということ、並びに経験年数も割合に少いものが多い関係からいたしまして、実際の調査にあたりまして、間々その態度やり方等において当を得ないという面が生じておりますることは、私どもも率直に認めざるを得ないところでございます。従いましてこれらの点を矯正いたそうと考えまして、実は国税庁創設当初から六十名の定員の監察官を配置いたしまして、それらの非違を正しまするとともに、本庁並びに各国税局に苦情相談所を設けまして、それらの税務官吏の態度の是正という面に、非常な努力を傾注して参つた次第でございます。しかしながら何分にも多数のことでございますので、それらの税務職員をよくするという面につきましては、納税者の各位または国民の各位からも十分な協力をお願いいたしたいと考えております。税務職員の事柄につきまして何か言うと、必ず報復を受けるというような観点から、たとえば相当な非違がありましても、それを全然お知らせくださらぬという面も、相当あるというふうに聞いておりますが、われわれの方といたしましては、そういうふうなことが絶対にないように、お教えいただきました方々に絶対に迷惑のかからないような方法でもつて、これらの税務官吏の非違に対して、適当な処置をとり得るようなふうに努力し、また是正をして行きたいと考えておるのであります。シャウプ勧告におきましても、税務行政の面につきましては相当の批判をし、現在の税務行政が決していい状態にないということを指摘しておるのでございます。これらの、状態につきましては特に今後注意をいたしまして、これが改善に努力して行きたいと考えておるのでございます。  ずなわちその第一点は、先ほども私申し上げましたように、税務官吏の非常に若いということ、未経験であるということの面を是正いたしますために、今後たとえば協議団の要員等を御増員願つておるのでありますが、これらの者の採用につきましては、原則として三十歳以上の者、また学歴も高い者を試験によつて採用することにいたしております。またこの二十五年度からは税務講習所の機構も相当拡充いたしまして、常に新しい採用者はもちろん、古い職員につきましても、四十日ないし二箇月程度の講習を繰返し繰返し東京においていたしまして、漸次訓練されたところの品性のいい税務職員をつくるように、努力して行きたいと考えております。もちろんそれらのことによつては、急にこれをよくして行くということは困難であるのでございますが、他面また通信教育とか、または本庁のいろいろの方針あるいは心持というものが末端に浸透いたしますように、あらゆる機関を動員いたしまして、たとえば国税庁報を末端まで迅速に徹底するように配布いたしますとか、またはその他の方法をもちまして、監督官その他の機関も絶えず巡回することによりまして、本庁の意思が十分に末端にまで及ぶ、そしてこれらの非違が一日も早くなくなるようにという努力をいたして参ることを、考えておる次第でございます。
  120. 西村直己

    ○西村(直)委員 非常にけつこうなことで、国税庁の長官のお話は大体よくわかるのであります。しかしこれを現実とどうしてマッチするかということについては、実にわれわれも——むしろいわゆる民間の声を痛切にわれわれのところに訴えて来る場合に、どう打開するかということを、われわれは自分たちの気持としても、国税庁長官に対していかに御質問申し上げたところで、大体の心持はわかるのであります。ただ問題はこれを末端にまでどう現わして行くかということ、もちろんこれについてはいろいろ経済の外的條件もありますが、ちようどやみが盛んな時代に、警察とやみが追いかけておつたように、今日は税務署の官吏というものに対しましては、国民はいかにして逃げようかという状態で、税務署職員に対してそういう非難の気分はわかるのであります。しかしながらいくら税務署の職員の諸君が真劍になつても、その業者の立場を理解して、しかも必要な徴税をはかつて行かないで、あくまでも国民と対峙するものであつたならば、私はこの問題は解決して行かないと思うのであります。ただ上から訓示を流し、公報を流したところで、税務署の職員の気持が、業者の実際のその経営をやる場合に、どうであるかという建前をとつて行かないといけないのであります。中には実情をよく見ると、私は税務署官吏は勤まらぬという声もある。そこに今度はいわゆる民間が疑いを持つて来るのは、水増しであるか割当であるかということであります。たとえば企業の採算が全然とれぬところえ税金を求めて来るということが現実に起つております。もう刑務所へ行く以外にはない。たとえば一つの例を申し上げてみますと、物品税なら物品税の場合に、少くとも過去においては物品の脱税に対して五倍の罰則がついておる。今回はあるいは税法その他の改正で五倍以下になつておるかもしれませんが、少くとも五倍というものがついて来る。百万円の物品税の脱税があつた場合には、六百方円の罰金になる。そうすると、土地建物を売つても二百万円に及ばない場合は、税務署の態度は簡單であります。告発をいたします。そうすれば、人を牢屋へ入れたらいいということになつてしまう。何のことはない。ただ最後は牢屋へ行きなさい。これではやはり国民は納得しないと思う。どうしてもとれないものならばしかたがないのであります。そこのところを告発する。そして私が特にこの機会に強調したいのは、直接国税庁長官の指揮下ではありませんけれども、検事局の税務係の検事の態度がまたいけないと思う。私は警察の出身でありますから検事局のこともよく知つております。税務官吏の諸君や検事の諸君が、金融なり税の実態についてよくわからぬで、とにかく普通の犯罪者と同じような態度をもつてこれを受取つておどかす。そうすると国税庁の方は、大体検事局へ事件を移したから楽であるというような気持になる。ほんとうのまじめな力の弱い、しかも中小企業者は、一方において税務署からぐつと経済的に押えられて来て、最後は牢獄の門の中に行く以外にはない。そうすれば中小企業というものは、一人の人間がほとんど中心になつて、わずかな使用人を使つて企業をやつておりますから、そこで一月なり二週間なり、あるいは最少三日とめられましても、すぐ手形の割引なり一切の操作はこわれてしまう。実際は女子供では中小企業の内容はわからぬのであります。そういう現実をつかむことは税務署の若い官吏諸君ではむりだと私は思うのであります。老練な人たちによく見ていただかなければならぬ。ところが老練な人たちになると、よく言いますことは、私は税の名医でありますから、ひとつ御診断申し上げましよう。いなかのやぶ医者では気に食わぬかもしれませんから、それでは財産税以外の一切の帳面をお出しなさい。そういうようにこまかく内容を見れば、必ず私は脱税の問題があると思う。それをつかまえて、そらごらんなさい。あなたはこの通り悪いことをしておるではないかと言つて突いて行く。そしてあらゆる面からしぼり上げて、結局最後は刑務所へ行くかつこうにしておとして行くのでは、いかに国税庁長官がいいことをおつしやつていただきましても、なかなか国民と税務署との対立は抜けて行かない。先ほどもやおちよう質問だとおつしやいますが、私は與党の立場からといえども、この問題は税務署の方もあるいはわれわれ代議士も、眞劍になつて研究して行かなければならぬと思う。特に私が一番心配していますのは、新税法がしかれる結果といたしまして、あるいは特に昨今池田蔵相をめぐるああいう問題があつた結果として、中小企業者の気受けはよくない。その機会にまた悪いもの、悪貨がはびこる。それだから、われわれは税金を納める必要はないという声にかわつて来た場合には、問題が混乱してはげしくなつて来る。この点は国税庁長官をいつもいじめることはお気の毒だと思いますが、そういう意味で、国民の末端の中小企業の業者の立場をよくからだにつけて徴税するように御指導をいただきたい。税務官吏の前に行きますと、業者は弱いからなかなか言いません。私どもがかわつて言わなければそういう声が出て来ないのであります、どうかその点をお願いいたしたいと思います。  次に平田局長にお伺いいたしたいと思うのでありますが、これは税法の問題であります。今回の税法を通じまして、平田局長のお考えはどうでありましようか。中小所得者のところに負担の公平ということがありましようか。その点を伺いたいのであります。要するにしわが中小企業、あるいは少くとも中小所得者のところに行つていはせぬか。私が申し上げますことは、私が知つております一税務署長が端的に私に訴えたことです。どういうことを訴えたかというと、十万円から二十万円の所得者のところが一番しわが多いのではないか。自分が税務官吏の立場においてもこの辺が一番とりにくい。何となれば、生活費の中にそれが食い込んでおるからだということであります。それでその点の税率をもう少しかえていただくならば、かえつて実績は同じようにあがるのではないかという苦哀を訴えた人があるのであります。あなたの御感想をお伺いしたいと思います。
  121. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 税務の運営につきましては、もちろん税法従つて公平にこれをするということが第一のことだと思いますが、それと同時にもつぱら親切にいたしまして、納税者の協力を得るということが最も必要なもう一つの要件であると思います。従いまして、物品税の検査等におきましても、できるだけ事前に調査をいたしまして、摘発主義ではないようにしたいと考えております。何分にも中には相当悪質な脱税の事件もありますので、やむを得ずそれらの方につきましては摘発せざるを得ない感があることは、はなはだ遺憾に存ずるのであります。申告納税制度に全部かわつたのでありますが、申告納税制度は、御承知通り少くとも半数以上の方が、自発的に正直な申告をするということによつて、初めて運営の全きを得るのでありまして、今日のごとくほとんど大部分の方に更正決定をするという状態は、一日も早く脱却しなければならないと思います。これがためにはどうしても納税者の各位の心からの御協力を得なけれぱできないことでございますので、その面については今後も十分の努力を沸いたいと考えております。実は今回の更正決定にあたりましても、確定申告額と税務署の調査の額とが違つた場合には、今までの更正決定を続けるようなやり方をしておつたのでありますが、そういうことでは十分に協力を得ることが困難であると考えます。また現在の経済情勢が非常に困難な事態であることも十分察知いたしまして、われわれといたしましては一々調査の完了した方につきまして、その方に税務署の考えているところを御通知申し上げ、またおいでを願つて説明申し上げるという手段をとるようにいたしたのでありますが、何分人員も少く手が足りないということで、なお十分に御了解を得るに至つていないことをはなはだ遺憾とするのでございます。しかしながらその方向に何とか一日も早く改善して行きたいと考えて、努力を続けておる次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  122. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまの御質問は、今度の税制改正が中小の所得者にはあまり軽減になつていないじやないかということでありますが、前々から申しておりますように、一番影響が大きいのは所得税だろうと思います。所得税におきましては、小所得者は相当な軽減になつていると私は思います。でありますが、中ころの所得者は軽減割合が比較的少くなつております。と申しますのは、小所得者は基礎控除改正によりまして、負担が減ることになるのでございます。中ころの所得者になりますと、基礎控除はその額がふえるだけでありますから、割合に響くのが少いのでございます。そういう点がございます。もう一つは税率の方も大体現行法と比べると、是正してありますが、やはり中ころの所得者の税率はまだまだ相当高くなつておるのであります。所得二十万円から三十万円と申しまするか、その辺の税率におきましては、表面の税率は現在よりも下つていないというブラツケツトもあるのであります。もちろんこういうところにおきましても、基礎控除等の改正によりまして負担は下がるわけでありますが、下がるのが確かに低いということは言い得るだろうと思います。ただこの場合におきましてももう一つ改正は、家族の多い人の場合はこれがまた大分違つて参りまして、今までは税額千八百円の控除から所得一万二千円の控除に直してあるのでございます。その結果所得の大小によつて今までと大分違つた結果になつて来る。この方は逆に小所得者よりもむしろ中上の所得者の方によけいの額を、従来から比べると引くことになるわけでございます。たとえば三〇%の税率の適用を受ける所得のある人の場合におきましては、一万二千円の控除ということは、税額に引直しますとちようど三千六百円になるわけであります。四〇%の場合でありますと四千八百円になるわけであります。従いまして従来の千八百円に対しまして、比較的高い税率の適用を受けるものにおきましては、やはり控除の額は大巾に引上げることになるわけであります。従いまして、この表をしさいにごらんになればわかりますように、中ころの所得者でありましても、扶養親族相当多い方は、現在と比べまして相当減ることになつております。勤労所得の場合におきましては、たとえば月收二万円前後でありますと、家族が、たとえば奥さんと子供三人といつたような場合におきましては、現在の税額が四千八百四十七円に対しまして、改正後は三千百八円、千七百円ほど軽減になります。これは月額であります。そうすると三割五分ほどの軽減になるのであります。住民税等が、大体税額の二割以内にかかることになりますが、そういうことを考慮いたしましても、この辺のところは負担が下るようであります。ただその反面、たとえば同じ二万円の所得者で独身者の場合、家族が非常に少い場合を考えますと、減り方は少い。現在五千四百四十八円が、四千八百五十三円でありまして、五百九十五円の減税にしかならない。家族が奥さんと子供三人ですと、千七百円の減税になるのに対しまして、独身者の場合ですと、わずか五百九十五円の減税にすぎない。割合から行きましても一割強の減税であります。従いましてこの辺のところになりますと、おそらく今度の住民税を加えますと、私は負担のふえる人が出て来るかもしれないということは、前から申し上げておる通りでありまして、この辺のところの負担が比較的今度の税制改正では軽くなつていないということはお話通りであります。従いましてこれが主たる理由は、税率の構成から来るわけでありまして、この税率の構成が比較的下の方からぐんぐんと小さいきざみで累進率がかかつておる。そういう税率の構成から来ておるのであります。これは一にかかりまして所得税でどの程度收入を期待するかという問題にも関連して来るわけでありまして、現在程度所得税收入額を期待するということになりますと、どうしてもこういうような税率にならざるを得ない。しかしこの点につきましては、率直に申し上げますと私は将来さらに財政事情が許し、それから所得税收入があるいは自然増收でふえれば、それもけつこうでありますし、さらにふえなくて、財政の歳出が減りまして、所得税のさ、らに一層の減税ができるということになりますれば、この辺の税率のきざみ方等につきましては相当考究の必要が、あるのじやなかろうか、かように考えておる次第であります。大体ご指摘の点の影響のおもなる問題は、さようなところにあろうかと考えております。
  123. 西村直己

    ○西村(直)委員 大体わかりました。少くとも中小所得者あるいは中小企業の方にしわが寄りやすいということは、御説明でわかつたわけでありますが、将来の問題としてこれは十分に御考究願いたい。同時に單に税のみならず他の面からもそのしわが寄つて行く。言いかえれば中小企業は抵抗力が非常に弱い。その基礎の上に立つて、しかも他の面から波が寄つて来る。たとえば税の面でもどちらかというと負担が比較的重い。また一面において、一つの例をとれば、今度運賃改正で八割という問題が起つて来る。あれは声を大きくするような業界に対してはなるほど折衝は開始されておりますが、声のないような業界に対しましては、十六億円を結局八億円くらいに減らして、しわを中小企業にずつと寄せて来る、こういう現象がある。運賃の方面からもしわが寄つて来るというような現象があるのであります。  次に私は特に平田局長に御意見を伺いたいのは、物品税の問題であります。これも中小企業に対してしわが寄つておる一つの大きな問題だと思います。私は原則としてこれは悪税である。物品税はいい税ではないと思います。この点を平田局長はどうお考えになるか。かりに物品税そのもののうちで、奢侈品的なものに対しては残すことはいいでありましようが、問題はまだ今のように比較的大きい面に物品税をぶつかけてとるということは、徴税の技術において実におかしい現象が起つて来る。物品税でいじめて、物品税が捨てられたら所得税というように絶えず関連を持つていじめるために、業者は非常に悲鳴を上げておる現状であります。いま一つは小売課税の問題、理論的に言えば大蔵省御当局の部内にも、小売課税の問題は消費者転嫁の方法としては、一つ方法ではないかという議論相当あるのであります。従つて物品税の範囲を小さくしまして、奢侈品的なものに落して、しかもそれを小売課税でもつて消費者に転嫁しなければ——言いかえれば中小企業家は物品税の分まで資金負担をして行く。これだけで中小企業者の金詰まりをさらに増大しておるのが現状ではないかと思う。物品税ははたしていい税とお思いになるか。またこれに対してどういうお考えであるか。特に大蔵大臣にお聞きしたいのは、所得税を第一にとつて、物品税の方は第二にまわしたいというお考えのようであるが、今日のように中小企業が大きく登場しておる。しかも経済行為において物品税も税でありますから、どちらを先にとるか。簡單に物品税をあとまわしにして、所得税減税に充てられるということが言い切れるかどうか。この点について平田局長のお考えを聞きたいと思うのであります。
  124. 平田敬一郎

    平田政府委員 最初に先ほどの続きをちよつと申し上げておきます。今西村委員から中小企業というお話がありましたが、小企業の場合は私は所得税相当軽減になると考えております。中ころの企業、あるいは中ころの勤労所得者、中の上くらいなところが、先ほど申しましたように税率の構成その他の関係で。一番下り方が少いと思つております。地方税を加えますと、人によつてはふえる人があるかもしれないというように、正確には申し上げさせていただきたいと思います。  なおそれからそれに関連してもう一点申し上げたいのは、附加価値税が盛んにふえる面だけをあげて議論があるのでございますが、その反面に減る人があるのであります。総額におきましては、今の事業税の四百四十億円程度を附加価値税で上げようというわけでありまして、従いまして負担相当上る反面、減る人があるのであります。附加価値税によりまして負担の上る面は、よく例にされておりますように、主として大企業、しかも工業と申しますか、多数の労務者を使つて相当分量の大きい仕事をやつておりまして、今まで必ずしも純益が事業の分量に及んでいなかつた。こういう事業の場合は確かに相当ふえるのであります。その反面中小企業、なかんずく商業、一番数の多いところの小売商等におましては、附加価値税の負担は従来の事業税に比べますとよほど減るのであります。これは簡單なりくつでわかつておるのでありまして、使用人の少い中小企業、商業等の場合におきましては、純益に比べまして、附加価値になりましても増加する部分が比較的少いのであります。従いまして課税標準がかりに附加価値になつたために、今までの純益に比べまして、二倍になつたといたしましても、税率が四分の一程度になるのでありますから、負担は半分になるといろ計算に相なるのでございます。従いまして、総体といたしまして、附加価値税は今日のことに中小企業については、今までの事業税に比べますとよほど負担緩和になる。むしろ逆に言いますと、今までの事業税の方が、大企業がたまたま利益がないからという理由で、事業税としては著しく少い事業税しか納めていなかつた。反対に中小企業事業の分量から行きますと、大工業等に比べまして著しく多い事業税を賦課されていた。これが今度の改正におきまして相当是正されるわけでありまして、附加価値税に関しまして、よく負担がふえる例をあげて御議論なさつておるようでありますが、相当減る部面もある。ことに今問題になつております中小の企業にとりましては、附加価値税の方が私は一般的に相当減るということも、この際つけ加えてはつきりさせておきたいと考える次第であります。  それからさらに物品税についてお尋ねがございましたが、物品税はいろいろ議論があろうかと存じます。純粹に理論的に考えますと、やはりほかの間接税、なかんずく今度廃止になりました取引高税、あるいは織物消費税等に比べますと、物品税の方が妥当である。と申しますのは、物品税の中には純粹奢侈品と準奢侈品と言いますか、いろいろ奢侈の程度には御承知通りだんだら坂がありまして、程度があるかと思いますが、どちらかと申しますと、生活上の必要品は極力除外するという考え方でできておるのであります。そういうものさしからいたしまして、まだ完全でないのではないかという議論もございます。そういう点につきましては、私どももよく検討をして参りたいと思つております。建前といたしましてはさような考え方からできております。そうなりますと、やはりこういうものといたしましては、消費税を課する場合においては、税制の理論から申しまするとまあ妥当と申しまするか、適当であるということにならざるを得ない。そこでたとえば同じ家具でもきりだんすであつたら、これは相当奢侈——奢侈でなくとも高級であつて、買う人は担税力がある。普通のその辺の整理だんすでありますと奢侈とは言えない。従つて整理だんす等は免税しまして総ぎりだんすは課税する。こういう結果でありまして、その判断する場合におきましていろいろなものさしの入れ方があると思いますが、考え方としましては、やはり物品税というものはそういう消費税の本質に従いまして考えた税でありまして、理論的には確かに私どももほかの酒、タバコ以外の他の大衆的な間接税に比べますと、まだ物品税の方がいいのではないかと思つております。ただその点におきましても、奢侈か必要品かその判断がやはりときのよつてなつて来なければならない。戰時中のごとく非常な消費規正をやりまして、だんだん生産を減らす。むしろ一般の民需品は消費を減らした方がいいという時代におきましては、相当広範な課税をしてもいい。しかしだんだん生産がふえまして、消費を促進した方がいいという場合におきましては、その程度を広げましてなるべく課税を少くするという必要があろうと思います。そういう意味におきまして、私ども今後やはり物品税の課税対象につきましては、今後における状況の変化と対応しまして、やはり整備するという方向に行くのが、これは方向としては理論的にも正しいと考える次第でございます。  それといま一つ実際上の問題になりますと、御指摘の通りなかなか高率な物品税等は転嫁がよくできない。これは間接税でありまするから、当然転嫁を前提にして理論上成り立つ税でありますが、生産者が負担するということでありますれば、税が本質的に成り立たないのであります。従いまして転嫁が可能なような状態の場合に課するのが一番いいので、不可能なことになりまするとなかなかこの税金が納まらない。そのために生産者等が非常に困るという実情が生ずる。それは御指摘の通りでございます。従いましてそういう点もよく事情を考えまして、今後対処して行かなければならぬと思います。ただこの点につきましてももう少しりくつを申しますると、実は税がかかつているということを前提にして、企業がそれにアダプトして生産の調節をはかつて行けばいいのでないか。もう一歩徹底しますと、そういう理論もあるわけであります。理論から申しますると、私はそういう理論も学者の説としては成り立つ。従つて物品税は理論の方から行けば、程度の判断はときによつてなつて行かなければならないと思いますが、やはり悪い税ではないと考えております。しかし実際は御指摘のような点、今申し上げましたような点がございますので、実際の状況の変化に対応しましてやはり順次税率も低くし、整理するという方向に進むべきものではないか、かように考えております。  小課税の問題につきましては、特にこれは徴税技術の問題でございまして、理論から申しますると小売課税がいいのであります。なぜなら消費者が購入する直前に課税することが一番いいのであります。しかし何しろ小売課税になりますと、納税者の数が非常にふえます。それから特に品目も相当ありますが、そういう品目に対しましては小売課税にいたしますと、お互いに非常に徴税が煩瑣になり、納税義務者も煩瑣であります。税の方もはつきりした取締りができなくなります。それで原則として生産課税に主として徴税技術上からいたしておる次第でございます。これはしかもあまりたびたび制度改正いたしますと、かえつてなれるのにお互い困りますので、やはり課税の建前といたしましては、原則として生産課税によつてつた方が、今後もよろしいのではないかと考えておるのであります。
  125. 西村直己

    ○西村(直)委員 今の小売課税の問題は十分御研究いただきたい。物品税は奢侈税であり、しかも消費者に転嫁させるという場合には、徴税技術の問題が一つ残るわけです。しかし写真のように全部が整理されて来る場合においては、私は必ずしも今おつしやつた——議論になりますからやめますが、正しいとは思いません。それからいま一つは、現在の実情が小売業者を洗つて物品税の税率を帳面につけて行くという場合には、徴税技術者としては煩瑣とは言えない。言いかえれば小売業者を洗つて来て元にかえつて元のところえ税をかける。しかも納期の関係から手形を落す関係の期間から、いわゆるメーカーの方がこれを負担しておるという実情はあると思います。そこらのところは單に理論の立て方はどちらにもなるのであります。現実に即して私は考えて行つた場合に、はたして今の状態が妥当であるかどうか。また整理されたあかつきには、こういうものは小売課税にすべきではないかというな議論一つ出て来るのではないか。あるいは外国の例をお調べになつてもこの点はたくさんありますが、考える必要はないかということを申し上げまして、私の質問を打切ります。
  126. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の小売課税の問題につきましては、確かに品目によりましては小売課税にした方がよさそうなものもあるわけですが、たとえばラジオのようなもの、それから時計を将来課税するかどうか問題ですが、時計、写真機、楽器等にいたしましても、どうしてもやはり課税するということになると、相当広範になりましてお互いに不便なところが多いのではないか。むしろやはり生産者で課税するのが原則としてはいいのではないか。ただ貴金属製品とか毛皮製品といつたものになりますると、取扱つている小売店も比較的少いということになりまして、そういう品目によりましては、確かに御指摘のような点も研究しなければならないと考えているのでありますが、ただこれもたびたび課税法をかえますと、かえたことによつてまたトラブルが出て来るといつた点もございますので、そういう事項をよく検討いたしまして、なお研究はいたして行きたいと考えておる次第であります。
  127. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 ただいま西村委員からお話になりました徴税官の態度の問題ですが、これは高橋長官のもとにおられる官吏の待遇の問題で、その方々からも再三話があつたのでありますが、第六国会の委員会の場合にも長官にお願いしておつたのであります。実は査察官の待遇の問題では、当初一般税務署から優秀な人材を集めたのでありますが、その当初の約束で現給料より一割増しで待遇をするのだということで、全国の優秀な徴税官吏を集めたそうですが、事実においてその待遇どころかまつたく手当も少くて大分弱つておるようです。従つてその職員の方々はあるいは正当に予算はもらつておるが、他の設備の方面にこの金を使つているのではないか。こういう疑いがかけられて参つておるようです。ごく最近のお話を伺いますと、もうやめたいという退職希望者が続出しておるようですが、これもやはり待遇改善というものを十分やらないために、結局納税者に臨む場合も一般国民に対して不親切な点があるのではないか、こういう問題も考えられる。また一箇月の出張旅費がわずか二、三百円の電車賃ぐらいしか出さぬということもあります。それから従来からの人と新しい人との待遇が大分違う。新しい人は新しい給料の計算でやるが、古い人はそういう待遇はしていない。おもしろくないという不平を言つている人がたくさんあります。前長官はその点は十分考慮すると約束しましたが、今もつてつておらぬようでありますが、これらの点をお伺いいたします。
  128. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 お話通り査察官の仕事は非常に困難な仕事でもあり、また精神的な苦痛を相当伴う仕事でございますので、その待遇はできるだけよくして行きたいと考えておるのであります。何分にも現在の公務員法並びに給與に関するところの法律に基きますと、査察官のみを特に取上げて待遇をよくするということは非常に困難な状況でございます。お話の点は、多分本庁の査察官についての問題であると考えるのであります。この問題につきましては、実は私自身も相当心配をいたしまして実情も調査して見ておるのでありますが、実は本庁につきましては本庁設置後、本庁のどの部分について税務特別職の給與を與えるかという問題について、なお人事院と折衝中でございまして、その折衝がまとまりませんために、待遇の是正等の問題もいまだに決定に至つていない状況であり、はなはだ遺憾としておるところであります。しかしながらこれも近日中に即急に決定いたしまして、全部の是正をいたしたいと考えておるのでございます。その他の点につきましては、たまたまそういうふうな事例もなかつたのではないのでありますが、これは即時に是正をいたしまして、そういうふうな不都合はないように、ただいまではなつておると考えておる次第であります。
  129. 川島金次

    ○川島委員 ちよつと私は別な観点で長官にお尋ねをしたいのでありますが、二十四年度の納税をさせますためのその督促などによつて、あるいは更正決定などによつてつて参ります例の加算税、延滞金の総額は、一体二十四年度はどのくらいになつておりますか。これを資料があつたならば示してもらいたい。
  130. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 今年度の分につきましてはまだ集計ができておりませんので、最近までの分をとりまとめて、後ほど資料としてさしあげることにいたしたいと思います。
  131. 川島金次

    ○川島委員 そこでお尋ねしますが、徴税官が納税者の店舗もしくは家庭に入りまして、調査をいたします権限の範囲というものはどの程度なつておるか、それをまず伺いたい。
  132. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 税務官吏は納税者に対して、質問または検査をする権限を持つております。その質問に対して答えず、または検査を拒むという場合におきましては、それに対してそれぞれ罰則がついておるのであります。
  133. 川島金次

    ○川島委員 たとえばこういう場合はどういうのですか。徴税官が営業者の店舗に行きまして、店舗範囲内のいろいろの質問、あるいは証拠品などを示すための指示をする、それだけにとどまらずして、今度は住居にまで上り込んでいろいろの調査をし、中には金庫などを明けさせる、こういう強要的なこともままあるわけです。そういう権限を付與されておるかどうか。
  134. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 判事の令状をもらつております場合においては、令状に記載されておる物、人、部分、家屋、それぞれすべて臨検検査をなし得るところの権限を持つております。
  135. 川島金次

    ○川島委員 ところがその令状を持たずしてそういう事柄が行われることが多いのであります。店舗のみならず住居にまで上り込んで行つて、戸だなをあけさせたり、あるいははなはだしきは金庫をあけさせて書類現金などを見させたりする。こういう事柄に対して権限外とすれば、納税者の方で拒否してしかるべき筋合になると思うのですが、その点はどういうのですか。
  136. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 そういう場合におきましては、任意に御提示を願つておるものと考えるのでありまして、拒否をせられた場合におきましても、拒否についての罰則はございません。
  137. 川島金次

    ○川島委員 どうもそういうことになつているのではないかと私は信じておつたのですが、実際問題としては、なかなか長官の考えておつたり、期待しておるようなわけに行つておりません。私どもの見聞いたしております範囲内だけでも、徴税官が店舗のみならず住居に上り込んで、納税者が非常に不愉快な思いをするような態度で、あたかもそういう権限があるかのごとき態度をもつて、往々納税者に接しているという事態があるわけです。そういう事柄がもしあつたといたしましたならば、その税務官吏に対しましてはどのような処置がとられるのでありますか、それを一応聞かしていただきたい。
  138. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 先ほどの答弁が少し正確を欠いておりましたので、もう一応申し上げますが、税務官吏は質問をなし、または帳簿その他の物件を検査することができるという規定になつております。従いましてたとえば金庫等を検査することはできるわけであります。また拒否された場合には罰則が適用されるわけであります。ただ判事の令状がなければ実力を行使することができないという状況に相なつておるわけであります。
  139. 川島金次

    ○川島委員 そうすると、そういう場合に納税者が拒否をしても、それは別に犯罪にならないわけですね。
  140. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 拒否をせられた場合においては、拒否についての罰則が適用せられるわけであります。
  141. 川島金次

    ○川島委員 その場合に現金の検査をする権限がありますか。
  142. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 帳簿その他の物件と書いてあるのでありまして、この中には当然現金の検査をなし得る権限を含んでいるものと解釈いたします。
  143. 川島金次

    ○川島委員 そうすると、税務官吏というものは、令状を持つておらないでも、その範囲内においては、いかなる行動でもできるということになるのでありまして、まことに納税者にとつては不愉快であるのみならず、危険なことになると思うのでありますけれども、そういう事柄について別に政府としては研究をいたしたことがないのでありますか。
  144. 平田敬一郎

    平田政府委員 現在の法令をちよつと私から御説明申し上げますと、所得税法第六十三條に、收税官吏の質問権と検査の権限を規定いたしております。それによりますと、先ほどの長官の説明と大体同じでありますが、ただ範囲はやはり税法におきましても限定いたしておりまして、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査する権限があるのであります。従いましておのずから事業に関する帳簿書類その他の物件の範囲内におきましては検査権がある。ただこの検査権は、実力をもつて強制的に検査し得るというのではなくて、これに応じない場合におきましては罰則があるにすぎないのであります。そういう意味におきまして権限はありますし、また納税者もある程度義務づけられておるわけでありますが、実力をもつて検査するような場合におきましては、今度は別に国税犯則取締法に基きまして、裁判官の令状を持つて行かなければならないことに相なつておるのであります。大体今の所得税あるいは法人税、その他すべてそういうようなことに相なつておる次第であります。
  145. 川島金次

    ○川島委員 その事業に関する範囲に関しての質問あるいは調査をするということはわかるのでありますが、ややもすれば、その範囲というものはこの解釈のしようで非常に幅のあるものです。私どもが最近聞いております事柄というものは、常識的には事業の調査の範囲を逸脱しておるのではないかというような事柄が間々あるのであります。たとえば甲という納税者があつて、乙という地域に店舗を持つておる。その店舗に対していろいろの質問をしたり調査をする場合がある。それにあきたらずして今度は、その甲が丙という場所に住居を持つておる。その住居にまで出かけて行つて、さらに上り込んでいろいろな調査をする。はなはだしきに至りましては仏壇の検査をするというような事柄もある。そのために国民としては、まだいろいろの点から、何といいましても仏壇とか神だなというようなものは相当尊重されておる。その仏壇の中を何か疑いを持つて調べる場合に、その納税者自身に要求をして、その品物を下させたり何かするのではなくて、積極的に徴税官自身が、これは何だと言つて手をつけて行くような場合がある。これは私は明らかに一つ範囲の逸脱だと考えられるのでありますが、そういう場合はそれでも適法であるのかどうか。
  146. 平田敬一郎

    平田政府委員 私から先に少し御説明申し上げますが、質問の方は、所得に関するあらゆる事項を質問できるのであります。しかし調査は、書類その他の物件の検査は事業に関するものだけに、所得税法上限定いたしておるのであります。従いまして今お話のように臨検、捜査に類するようなことをやりまして、帳簿、物件その他を調べるというような場合は、所得税法の本来の規定から行きますとやはり行き過ぎでありまして、そういう場合におきましては裁判官の令状を持つて、国税犯則取締法に基く令状を所持した方へ行くべきじやないかと考えておるような次第であります。
  147. 川島金次

    ○川島委員 そういう事柄に対し、常識的にわれわれの納得ができないような行動を起しました徴税官に対する何か処罰とか、処置する方法はあるのでありますか。
  148. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 業務の執行が適切妥当でない場合におきましては、公務員法によつて処断するということ以外には方法はございません。
  149. 川島金次

    ○川島委員 ついでにお尋ねしますが、最近国税庁あるいは各国税局で差押えを陛続とやつておるようでありますが、しかも競売が東京市内でも各所で行われております。この競売について、徴税の目標と競売いたしました結果の実績というものは、どういうことになつておりますか。大体のところでよろしいのですが、聞かしてもらいたいと思います。
  150. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 その数字は、あつたらすぐ調べてお答えいたすことにいたしまして、先ほど御質問の加算税及び追徴税の二十三年度の実績がありますから、これを御説明申し上げておきたいと思います。二十三年度は、所得税におきまして加算税が四十億七千万円、追徴税が九十四億九千七百万円、また法人税におきまして加算税が十一億六千四百万円、追徴税が七億二百万円と相なつております。なお二十四年度の公売の状況は、差押えの件数が六万件であります。金額にいたしまして二百六十八億五千四百万円であります。なおそのうち公売になりました金額が三億一千二百万円、件数か一方九千件であります。
  151. 川島金次

    ○川島委員 さらにお尋ねいたしますが、納税者は再調査の要求をすることができる。それでまたさらに更正決定に対しましては審査の請求ができる。その審査に対して不服がある場合には、それぞれまた訴訟をやるということになつておるのであります。この審査制限というようなものは、今度の新しい法によりましても、あまりへんてつがないようであるのでありますが、もう少しこの制度を簡素化する意思はないか。たとえば調査を要求する権利が納税者にあり、審査請求に関する国民の保護のための期間かあつても、なかなか実際においては税務署等の人員の不足等もございましようが、納税者の期待するような進捗率を見せないというような大勢であります。そういうことであつては、適当なる納税義務者の権利の保護にはならないのではないか、かように思うのでありまして、もう少し調査期間あるいは審査期間というものを短縮して、さらにその短縮期間が経過いたしますれば、それは申告者の申告が正しいものと認めて、自然発生的にそれが効力を生ずるというような形にする方が、非常に簡素化になり、また税務当局としても、それらに対する申告、審査に対する責任は非常に加重されて、能率を上げて行くというかつこうになるのではないかと、私はひそかに思つておるのでありますけれども、その点についてはどういう考え方を持つておりますか。研究いたしておるものがあれば、それを聞かしてもらいたいと思います。
  152. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回所得税法並びに各税法全部を通じまして、今お話のようにまず第一段階は再調査で片づける。それで片づかないものにつきましては成規の審査の請求で片づける。それで片づかない場合におきましては訴訟で片づけてもらう、こういうことにいたしたのであります。従来は制度の上におきましては、いきなり国税庁に対して審査請求を出すということにいたしていたのでありますが、実際問題といたしましては、大部分が税務署におきまして審査を処理するというような状況になつておりまして、制度と実際とが必ずしも的確に行つていなかつたのであります。この点はむしろ現在の実情に合せまして、まず第一段階は当該税務署長において責任をもつて解決する。それで解決しないものを国税局長に持つて行きまして、審査で片づける。こういう制度にはつきり改めたのであります。従いまして今後におきましては、この制度通り運用して行きますれば、従来に比べましてよほど合理的な、迅速な解決が望み得るのではないかと考えております。ややもすると従来は税務署で抱き込んでしまつておりまして、なかなか当該国税局長のころに書類が行かない。また国税局におきましても十分な人間がいないものですから、勢い税務署にまかせ切りになる。それがずるずるになりまして、なかなか解決しないという点が多かつたのでありますが、今度はそれをはつきりわけましたので、その点はよほど運用が合理的に行き得るのではないかと考えております。そうしまして審査の段階におきましては、單に調査をしました税務官吏にあらずして、別途に専門の審査だけを扱いますところの協議団というものを設けまして、そこで審査事件を処理するということになるのであります。従いまして従来に比べますと、勢い立場が違つて参りますから、審査のケースにつきましても、おそらく最初に調査した担当官より真劍に調べ、納税者の利益も十分擁護するようなことに、自然なつて行くのではないかということを期待いたしておるのであります。  それから今お話の、一定期間たつたら当然要求が認められることにしたらどうかという話でございますが、その制度は私どもいろいろ考えていたのでございますが、これを下手にやりますと、かえつて期限が切れますとまた無責任にどんどん片づけてしまう。これは比較的やり方によつては簡單でありまして、そういうことになりますと結局問題の実質的解決にならない。これは先ほども三宅委員からお話がありましたように、役所においてもまじめに解決するつもりでやらないと解決しないことでありまして、今度のような制度になりますと、とにかく税務署は三月という目標が法律上はつきり與えられておりますから、その中で極力片づける。片づかないものはどんどん審査の方に持つて行く。今度はそこで真劍になつて片づける。そうしましても片づかないものは初めて訴訟で片づけてもらう。こういうことに行つた方が今の実情に即し、かつ実情相当合理的に改善をはかるのに一番よい制度ではないかという趣旨で、今回のような改正案を立案した次第であります。
  153. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 川島委員の御質疑に関連してちよつと申し上げたいと思います。いつも私は国税庁長官に申し上げまして恐縮でありますが、今主税局長が仰せられましたけれども、事実は審査の請求を一年もうつちやつておいて、国税庁に行つていないと思います。私はひとつこのことを税務署に対してお調べを願いたいと思います。一体各税務署にどれだけ審査請求が出たかということ、そうしてほんとうに審査してくれたかどうかということ、もう一つは国税局へまわしたものと、その区分を示していただきたいと考えます。これは私どもは零細企業の商人でありますとか農民に対しましては、非常に気の喜に感じておるのでありますから、この際親心をもつてひとつまじめに御答弁を承りたい、かように考えております。
  154. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ただいまお話通り、従来審査の処理が非常に遅れまして、納税者の皆様に御迷惑をかけておつた点が相当つたかと思うのでありますが、昨年以来その点に非常な力を注ぎまして、実は昨年の更正決定の件数は五百二十万件であつたのでありますが、これに対しまして百八十万件余りの審査の請求がございました。これはきわめてわずか残つておるようでありますが、十月までにほとんど大部分、九割七、八分までは審査を完了いたしております。なお今年におきましては審査の期間を相当短縮したいと考えまして、昨年までは三月、四月の候は直税課の職員も全部あげて滞納整理の方面に従事せしめておつたのでありますが、今年度は三月、四月におきましても、直税課の人間にはもつぱら審査の処理を急がせるという方針に変更いたしましたので、今年は昨年よりも審査の処理がはるかに促進できるかと考えておる次第であります。
  155. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今の国税庁長官お話によりますと、更正決定に対しまする審査の請求が百八十万件、約三分の一の審査請求が出たものと私は解釈するのです。その中ではなはだ失礼でありますが、税務署内でこれを片づけたものが何件、もう少し進みまして地方の国税局にまわして片づけた件数がどんな件数でしようか。私は大部分は税務署内で簡單に片づけたものではないかというふうに感ずるのです。その点はどんなものでありましようか。
  156. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 その区分された詳しい数字はただいま手元に持つていないのでありますが、御指摘の通りほとんど大部分は税務署の段階において片づけられたものでございます。大体各国税局の手において調査をし、決定をいたしたものはきわめてわずかであります。
  157. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 平田さんにお伺いしたいと思いますが、今度はたいへんよい制度をお設けになりまして、私もややわが意を得ておるわけでありますが、実際面に対しまして、あなたの御構想によりますと、同じく署内の協議団にまかせる、こういうお話でありますが、どうも同じ穴のむじなでありまして、おもしろくない、かように私ども考えるのであります。むしろこれは別格の協議団として、税務署なりもしくは国税局と離した方がよいかと思いますが、そういう御構想はないでしようか。たとえば検事と判事をわけるようにわけた方がよいかと思いますが、その辺はどうでありますか。
  158. 平田敬一郎

    平田政府委員 今度の協議団は税務署内には設置いたしません。国税庁または国税局の付属機関であります。そうしましてこれは先ほども申しましたように、担当官が審査だけを分担してやるのであります。従いまして調査した担当官は、おのずから立場が相当フリーになります。そうしますと納税者の言うことも通るところは相当通るという考えであります。ただこれを全然行政系統を異にしたものでやりますことは、あまりにもまた本来の行政と離れて参りますので、この程度の独立性のある機関を設置しまして、そこで解決した方がよいのではないか。それで解決しないものは、今度は純粹の裁判所の機関で片づけてもらう、こういう構想であります。
  159. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今の平田さんの御構想はまことにけつこうであると思いますが、もう一つこういう点を御考慮の中に入れていただきたいと思いますが、いかがでしようか。同じく国税局に別の団体を設けられるわけでありますが、そういたしますと、税務署の署員が一旦自分の決定いたしたことに対しまして、上の国税局の協議団がこれをくつがえすという面になりますと、非常に面目を失墜するというような意味合いにおきまして、また税務署の署員がこれに対して反発的な行為に出て、次の決算期とかあるいは次の年度において、また過重に決定するおそれがないかということを私は心配するのですが、どんなものでしようか。
  160. 平田敬一郎

    平田政府委員 日本人の常として、よくそういうことが場合によつてはありがちだと思いますが、その辺は私どもやはり物事を合理的に、それぞれ処理して行くということに行かなければ、万事は解決しないと思うのであります。こういう制度になりますと、お話のような弊害がなきにしもあらずと思いますけれども、しかしそういうことよりも、やはりそれぞれ立場を異にして、よく調べて、責任をもつて仕事をして行くということになつた方が、結局全体としては納税者のためでもあり、またそれがひいては正しい課税の道であろう、かように考えております。
  161. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今の主税局長お話によりますと、国民の道徳が大分よくなつて来る、こういう構想のもとにそうおつしやつておるのでありまして、私もそうなることを期待いたします。ただ高橋長官に伺いたいと思いますが、現今の税務官吏において事実あつたことなのであります。名前をはつきり申し上げてもよいことでありますが、ここでは遠慮しておきますが、ある税務署の中におきまして、あなたのところの所得は、すでにわくをきめて国税局の方に申告いたしましたから、この際御異議がありましても、簡單には直りませんぞ、こういうことをいたしておるのであります。私はかつて第五、第六、第七の三国会において、主税局長並びに国税庁長官から承つたところによりますと、そんなことはない、こういうことでございますが、末端には事実あるのであります。はなはだけしからぬと思いますが、これに対して血税局長並びに国税庁長官は、どういうふうに考えておられるか承りたいと思います。
  162. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 もしそういう事実がありましたならば、ぜひ私のところまでお知らせ願いたいと思います。必ず是正いたします。
  163. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 それではたいへんよくわかりましたから、そういうことのないようにこれから絶対に進言をいたしたい、かように私は意を強ういたしまして、国民とともにこれを喜びたい、かように考えております。  次に主税局長にお伺いしたいのでありますが、今度の改正案におきまして、原稿料、著作権、こういうものに対しまして百分の二十を第一の源泉課税でおとりになる、こういう構想でありますが、これらのものは税金をとることがなかなかむずかしいと思うのであります。原稿料などについては、はなはだおかしな点があるのではないか。これらの点に対して、政府はどういうふうな御対策をなさいましようか、承りたいと思います。
  164. 平田敬一郎

    平田政府委員 原稿料、著作権等の收入に対しましては、今までは一五%の税率で原泉で課税していたのでありますが、これを二〇%に引上げたのであります。今どき減税する際に引上けるのはおかしい、こういうふうにお考えになるかもしれませんが、実際問題といたしましては、実は大部分確定申告で、大きな徴收不足額を生じまして、申告で納めていただかなければならぬという現状であります。しかし実際で行きますと、なるべく源泉でまず納めていただいた方が、あとで確定申告の際に納めていただく額が少くて、この方が納税者のために、はるかに容易になるのであります。それならば、もつと上げたらどうかというようなお話もあるかもしれませんが、そこまで行きますとまたあとで返すといつたような問題にもなりますので、この程度で行きますのがよいのではないか、かように考えております。これはまつたく確定申告で追徴しなければならぬ差額を、なるべく少くしようという趣旨であります。
  165. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 次にお伺いしたいことは、日雇い労働者に対しまして一箇月二十二日と決定なさつていらつしやる。もちろん雨が降つたり風が吹いたりして、あぶれたりする日があるからけつこうでありますが、これらに対して雇用主の方から源泉徴収をするということは、なかなかむずかしいと思うのであります。こういうものに対しましては、むしろある程度まで撤廃されたらどうかと思いますが、政府はどうお考えになりますか。平田さんのお考えを承りたい。
  166. 平田敬一郎

    平田政府委員 日雇い労働者に対する税額は、今回相当大巾に引下げたのであります。と申しますのは従来は三十日で計算いたしております。もう一つ扶養親族の数を、今までは二人と見ていたのでありますが、今度はそれを三人と見まして税額を計算いたしております。従つて、ここには簡單な表しかございませんが、よく精細に御検討願えばわかりますように、従来の税額と今度の税額は相当開きがあると思います。この制度をやめて、むしろ申告納税にしたらどうかというお話だと思いますが、これは私ども所得税の幾多の経験からいたしまして、なるべくやはり源泉で差引いて納めていただいた方が、納税者としても納税しやすいのじやないかというような考えを持つておりまして、この制度はやはり残した方がよろしいのじやないかと考えております。
  167. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 それでは法人税について宮腰委員から御質問があつたと思いますが、一応伺いたいと思います。今度の法律によりまして法人税は全国一本、これはまことにけつこうで、今までは超過所得というものが何回も何回もかかつて各人が困つてつたのでありますが、今度はそれが廃止されて、いわゆる二十四年度、二十五年の三月三十一日までのものは旧来の税法がかかると思つております。これを幾分是正せしめたいと思つてつたのでありますが、今日は税法の取扱い上困難であると主税局長は仰せになつたのでありますけれども、解散されたような場合におきまして、期の途中でありますが、そういうものにつきましては将来どういうふうにおとりになりますか、承りたいと思います。
  168. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回法人の所得税は普通所得税だけにいたしたわけでありまして、この適用昭和二十五年四月一日以後終了する事業年度分から適用することに相なるのであります。すなわち一年の事業年度の分につきましては、中間ですでに納めておりますので、その中間申告で三月三十一日以前に納めるべき分については、超過所得税はその分応対しましては課税されることに相なるわけであります。お話の点は解散、合併の分かと思いますが、この点も大体歩調を合せまして、税法施行前に解散しまたは合併になります分につきましては、それぞれ旧税法によることになります。税法施行後に解散または合併した分については、新税法によることになるのであります。それから普通の場合におきまして解散しました場合におきましては、解散までの年度を一事業年度と見まして、法人税計算課税することに相なつております。
  169. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 これと関連いたしまして、ちよつと立法を企てておられます平田さんにお伺いしたい。御承知通り税法におきましては、昭和二十四年一ぱい、いわゆる一月一日から十二月三十一日までの間における所得計算することになつております。ところがこの間高橋長官にちよつと伺つたのでありますが、非常に物価の変動があります。たとえば十二月になつて三分の一あるいは四分の一に下つているものがあるにかかわらず、所得計算する段階におきましては、これは仕入れ金額——高い金額をもつて算定せられるという意味におきまして、非常に税金が過重になるおそれがあります。この際これに対しまして、これを救済する意味において、物価の低落いたしたものに対しましてはある程度吟味いたしまして、しんしやくをいたしましてやることが、ほんとうの政治的方策であると思いますが、平田さんの御構想を承りたいと思います。
  170. 平田敬一郎

    平田政府委員 法人税の場合は御承知通り、たなおろし計算の会計上の原則によりまして、期末における商品等の時価が下つている場合においては、その時価の範囲内で評価することができることになつているのであります。従いましてそういう場合においては、会社が計算して来ました場合は、それは認めることになつているわけでありますから、自然負担は下つて来るかと思います。そういたしまして、個人の場合におきましては、所得計算原則を違えておりまして、大体收入金額から必要な経費控除するという課税方法なつておりまして、原則としてすべて商品は原価で計算することになつております。従いまして実際問題といたしまして下りぎみの際は、場合によりましては納税に困難を感ずるという場合があろうかと思いますが、これをかえないか、かえるかは大問題でございます。今回の建前といたしましては原則としてそれを踏襲いたしたい。ただ青色申告を用いておるものにつきまして、法人のような計算方法を用いるか用いないか、これは今後の一つの研究問題だろうと思います。
  171. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 地方の声を代表して意見を申し上げるわけでありますが、御説の通り法人の方におきましては、いわゆる時価主義と申しますか、現在の相場主義、こういうことになるわけでありますが、ひとり個人に関しましては、旧来の昭和二十三年もしくは二十四年の初期に仕入れた値段をもつてこの期末に算定する、こういうことになるのでありまして、非常に迷惑を感ずると思うのであります。政治家というものは御承知通り、これからのことを考えることはけつこうでありますが、現に困つておる者については、もう一歩何とか進めて緊急措置を講ずるお考えがあるかどうか、お答え願いたいと思います。
  172. 平田敬一郎

    平田政府委員 繰返して申し上げますが、法人の場合には時価が上りまして、上つたところで納税者評価して参りますと、この場合当然利益になるのであります。個人の場合はそういうことはございません。大体原価で行くというのが今までの税法の建前でありまして、多年やつて来た原則でございますから、いろいろ問題はあろうかと思いますが、根本的にはそういう方針を踏襲せざるを得ないと思います。ただ課税の実際におきましては、その間著しい下落があつたような場合におきましては、実際上所得計算等で、ある程度考慮する場合があるかと思うのであります。これはやはりそのときどきの状態によつて適正化をはからなければなりませんので、一般的に考慮するということは、おそらく国税庁長官もここで申し上げにくいのじやないかと思います。
  173. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 国税庁長官並びに主税局長は、非常に法律的にお考えなつていらつしやいますが、実際面においては、やはりある程度までしんしやくするという線を御支持あらんことをお願いたします。  次にお伺いいたしたいことは、かつて他の委員からも御質問があつたのでありますが、法人は御承知通り営利法人が中心でありますが、営利法人にあらざる農業協同組合、水産業協同組合、こういうものも多少あると思います。これを一様にされたというのは、他の会社等との比率を考えられたことと思いますが、これに対しまして部分的に多少差をつけるということが、最も穏健であろうと思つたのでありますけれども、どうして差をつけられなかつたかを承りたい、
  174. 平田敬一郎

    平田政府委員 その問題は昨日もお答えいたしたかと思いますが、法人税はすべて法人から所得があります場合においては、大体三五%課税をするということでありまして、利益が少ければおのずから税の負担が下る。特別法人の場合でありますと、事業の分量に応ずる配当をする場合におきましては、これは所得には見ないのであります。これはそれぞれ組合員の事業所得の中に算入されまして、法人には課税されないのであります。従つて特別法人におきましては、法人税としては、それほど大きな実際上の影響はないのじやないかと思います。  いま一つはこれは昨白申し上げなかつたのでありますが、今回剰余金を分配した場合においては、二割五分控除して課税するという制度を採用しております。つまり法人に課税するというのは、持ち分なり、出資者、株主が所得税をその段階で納めているという考え方をとつておりますので、あまり税率に差を設けますのはいかがであろうかということも考えておるわけでありまして、大体さような点から、まず同じ税率の方がよろしいのではないかという考え方でございます。
  175. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 専門的になりまして恐縮でございますが、積立金に対して法人税をかける。こういう事柄は資本課税であると考えられるのですが、これはおやめになつた方がよいのではないかということを考えておつたのであります。今回法人の積立金の総価格に対して百分の二をかけるということになつておりますが、これに関連いたしまして、納税準備積立金というような積立金等に対しましても、百分の二の税金をおかけになるつもりでありましようか。その辺を承りたい。
  176. 平田敬一郎

    平田政府委員 積立金に対しまして、百分の二課税します趣旨は、先ほど大臣からもお話がありましたように、配当しないで会社に利益を留保しておく、そうなりますと配当した場合に比較して課税が遅れて来るわけです。いつかは配当として、あるいは剰余金の分配等といたしまして株主に帰属いたしますが、遅れている間の金利をとろうというのであります。その金利といたしまして百分の一では少い。どうも計算してみますと年三分三厘くらいにしか当りませんので、少し低きに過ぎますので、今の日本の金利の状況から行きますと、六分程度の金利で計算して課税した方がいいのじやないかという考え方で、積立金の課税をすることにいたしておるのであります。納税準備金につきましては、これは積立金の名義の何たるを問わず、すべて会社の中に留保したものを積立金として見ることにいたしております。
  177. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今の構想で言いますと、積立金はその名前の何たるを問わずかける、こういう線でありますが、税金に値するようなものに対しましては、かけない方がいいじやないかというような構想を私は持つておるわけであります。これは少し行き過ぎじやないかと思うのですが、政府の方も行き過ぎじやないか、かように考えるのであります。これを御研究なさつて答弁をしていただきたい。  次に申し上げたいことは、同族会社によつては、五十万円を越えたものに対しましては積立金に対しまして別にかける。百分の七というような高い税金をかけることになつておりますが、これはどういうわけでしようか。もう少し緩和した方がよろしくはないかと思いますが、少くとも五十万円以下に対してはかけないで、五十万円を越える金額だけにかける構想でありますか。その辺二つの点についてもう一ぺん聞かしていただきたい。
  178. 平田敬一郎

    平田政府委員 同族会社の税率を高くいたしましたのは、これは同族会社の場合は税金関係を考慮いたしまして、よく留保しようか積み立てようか配当しようかという点で、決算をされる場合が多いのであります。従いましてなるべく個人との負担考えまして、法人の同族会社の負担が、全部配当された場合に比べてそう低くならないように、特にする必要があるわけでありまして、そのような意味におきまして、特別な税率で課税することにいたしたのであります。大体これだけ課税いたしますと、全部配当いたした場合に比べまして、負担において大差ないというところを見込みまして、この税率を定めてあるのであります。
  179. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 それではちよつと伺いますが、この積立金にまわさずして、資本に組み入れた場合におきましても、やはりそうしたような税金を一旦拂つて、しかる後にこれを組み入れるものであるというように解釈するのですが、政府の方の解釈はいかがでありましようか。
  180. 平田敬一郎

    平田政府委員 なお先ほどお尋ねになりました五十万円を越えた場合におきましては、もちろんその越える分に対してだけ百分の七でありまして、たとえば百万円ありましても、百万円のうち最初の五十万円は百分の二、残りの五十万円に百分の七というふうな関係になるのであります。  それから資本金に組み入れた場合というお話でありますが、これは今度の再評価積立金はこの積立金に算入しないことにしております。この部分を資本金に組み入れましても問題はないのでありますが、今後お話の点はどういう問題でありますか。新商法では積立金を資本に振りかえるようなことを認めるような改正案が出ておるようでありますが、その点につきましては、全般的に商法の改正の実施が来年以降になりますので、法人税についても目下研究中であります。
  181. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は旧商法のことを申し上げてはなはだ恐縮でありますが、旧商法では資本の四分の一に達するまでは、会社の基礎を相当堅固にせしめるために、毎年法定準備積立金というものをやつてつたが、この法定準備積立金の範囲に属しますものにつきましても、五十万円以上の場合におきましては税金をおかけになるつもりなんでありますか。これは法人といたしましては完全なものであると思いますが、どうでしよか。
  182. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは先ほど申し上げましたように、要するに利益が会社の中に留保されておるために、そうでない場合に比較いたしまして、結局において課税が遅れることからの金利でございますから、これは法律上強制的に積み立てられる場合というような場合といなとを問わず、かけるのが公平じやなかろうかと考えます。
  183. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 ただいまの御構想でわかりました。私の考えでありますと、この法人には御承知通り社団法人、財団法人というものがあるわけでありますが、こういうものに対しましても、収益事業範囲に属するものは課税する、こういう線だろうと考えておりますが、現在の段階において、社団法人とか財団法人とかにおいて相当の収益ありと考えられておりますか。その実績がありましようか。ありましたら資料で簡單でよろしゆうございますから、お示し願いたい。
  184. 平田敬一郎

    平田政府委員 公益法人で收益事業を営んでおる例は、御承知通り大分ございます。ことに弘済会あるいは何とか協会というので出版事業とか、物品販売業等を行つておる法人がございますが、こういう法人の場合におきましてはある程度収益が上つておりまして、課税額が出て来ると思います。ただ全体といたしましては、これはむしろ増收をはかるという面にあらずして、税制全般がかように改正された機会に、極力負担の公平化をはかるという趣旨でございますので、收入額としては全体の中では大した額にはなつていないと思います。正確な数字は後ほど申し上げます。
  185. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 同族会社というものにつきましての範囲をちよつと聞くわけでありますが、これは株主一人じやなくて数人の者、使用人であるとかあるいはそれに関連したものを、同族会社というふうに考えておるのでありますが、今の大きい会社になりますと、ほとんど同族会社というものがなくなるわけであります。ことに私の心配いたしますのは、大企業になりますと、資本の十分の一以上持ちたるものは、その会社の支配権があると言つておりますが、そういうものは同族会社でありませんが、実際上は支配しておるのであります。これと旧来の同族会社との関係はどういうふうになりますか。私はむしろ資本の十分の一でありましても、相当力強くこれをかきまわしておるようなものは、同族会社と同じような形式になると思いますが、政府はどう考えておりますか、承りたい。
  186. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回同族会社の範囲を若干拡張いたしまして、今まで一人の株主及びその関係者が五〇%以上占めておる場合においては、同族会社に決定いたしておりますが、今回は株主の数によりましてその占める割合を異にする法律にいたしたのであります。一人の場合は三〇%以上、二人を中心とする場合には、その合計が四〇%以上、順次増加いたしまして、五人の関係者が入つた場合におきましては、七〇%以上を持つておる場合は、これを同族会社にすることにいたしたのであります。従いまして従来と比べると相当拡張になることはお話通りであります。たださらに一層徹底して、一割程度を持つておるものまで拡張するということは少し行き過ぎじやないか。そういうものは同族会社でありましても、株式を一般に公開しておるような会社の場合もございますから、そこまで行きますのは少しいかがかと考えますが、大体今度の改正程度でよろしいのではないかというふうに考えております。
  187. 川野芳滿

    川野委員長 大臣がお見えになりましたのので、大臣に対する質疑を継続いたします。西村直己君。
  188. 西村直己

    ○西村(直)委員 御希望者もあると思いますので、私は簡單に二、三点お伺いしたいと思います。  先ほど国税長官に申し上げましたのは、いわゆる中小企業者に対する徴税官吏の態度の問題で、私国税庁長官にさいぜんお伺いいたしたのでありますが、特に大臣におかれましても、徴税官吏の実情を機会があれば十分にごらんいただきまして、国民と税務官吏とが対立する。——従来はやみをはさんで国民と警察官が対立した。今日は納税をはさんで税務官吏と国民が対立する。特に新法が施行になります場合における納税官吏は、よほどこれを末端に浸透して行かないと、えらい摩擦なり混乱が起る。現に今回問題になりました大臣の言動を中心に、中小企業者は、それだから税金なんかわれわれは納められないのだという気持が、ある程度やはり下え浸透して来るわけであります。特にこの際お伺いいたしたいのは、経済統制が漸次自由に返つて参りますので、従つて過去のいわゆる経済事犯の人たちに対する裁判所、検事局の態度も今後次第に緩和されて行くだろう。税におきましても、二十三年度あるいは二十四年度における加算税その他こういつた税、あるいは本税についていろいろ問題を聞くのでありますが、かなり企業に対して打撃を與えたこの加算税等につきましては、四月一日から新法がかりに施行になりますれば、非常にけつこうな減額の方法がとられるわけでありますが、これらを過去にさかのぼつてなさる方法があるかどうか。またなされるお心持があるかどうか。これを大臣にお伺いしておきたいと思います。
  189. 池田勇人

    ○池田国務大臣 納税者の方々と徴税官吏が対立するようなことがあつてはいかないのでありまして、われわれは嚴にそういうことのないように部下を指導しておるわけでありますが、やはり数多い中でございますので、そういうことの絶無を期することはなかなか困難でございます。従いまして、先般も発表いたしましたように、もし税務官吏にして非常識の行動があつたならば、国税庁長官の方に申し出ていただくようにというようなことでやつておるのでありまして、できるだけ納税者と税務職員とが和気あいあいのうちに、円滑に納税し得るように努めて行こうと考えているのであります。お話のごとく四月一日より、従来非常に高かつた加算税あるいは延滞金を相当引下げることにいたしております。加算税は従来十銭であつたのを四銭にし、また延滞金は日歩二十銭であつたのを八銭にすることにいたしておるのでありますが、現在の経済情勢及び納税の状況から考えまして、四月一日からやるのならば、私はこういう状態でありますので、これをさかのぼつて本年の一月一日から施行してはどうかというので、先般来検討を加えておつたのでありますが、関係方面とも話がつきましたので、四月一日からいたしまする加算税、延滞金の減額を、本年の一月一日にさかのぼらすような法的措置を今準備いたしておるのであります。ただいま御審議願つておりまする税法改正するよりも、單行法を早急に出しまして、本年の一月一日から加算税の十銭を四銭とし、延滞金の二十銭を八銭とする、こういう法的措置をとるつもりであります。一月一日以後すでに納めておられる方につきましては、非常に手数でございまするが、申請がありますれば還付することにもいたしたいと考えております。この法律はできるだけ早い機会に皆様方に御審議願うようにいたしたいと努めております。
  190. 西村直己

    ○西村(直)委員 その点大臣の御答弁は非常にありがたいと思うのでありまして、これは一日も早く審議され、さかのぼつて実施されることを希望する一人であります。  第二としまして、金融の問題につきましてお伺いしておきたい。午前中も前尾君からお話がありました中小企業に対する各種の金融の手は、政府におきましても着々御準備になつているように思います。相当高額な金が流れて行くわけでありますが、問題は、いつも大臣が言われるように、馬を川まで連れて行くことはできるが、水を飲むのは馬である。それで水を飲むことの意思ということになつて来るのでありまして、政府の方からお出しになりましても、それが末端の必要なところまで流れて行くかどうかという点につきまして、いかに国会内部においてこれが論議されましても、現実の問題といたしまして銀行あるいは信用組合、こういつたものと中小企業との間の結びつきがどうか。この資金の貸付が償えるかどうか。これは業者の組織の問題もありましようが、同時に政府御当局においての督励の仕方もあろうと思うのであります。この点についてお伺いしたいのが一つ。  第二は、本年度の予算におきまして大きな問題となつております千数百億の債務償還であります。これをいかなる方法でいかなる時期に償還して行くかということは、わが国の金融に非常に大きな影響を與えるのであります。これに対しまして、大蔵当局においてすでに案を練つておられるならば、承りたいのであります。
  191. 池田勇人

    ○池田国務大臣 最近の金融情勢を考えまして、政府の資金並びに預金部資金をどしどし出しておるのであります。お話通りに、昨年やりました結果から考えまして、金を出しましても実際の需要者との結びつきが問題になるので、われわれといたしましては、大企業には行きやすうございますが、中小企業等にはなかなか困難でございますので、金の出し方につきまして、中小企業の早く行くような方面にたくさん出すようにいたしておるのであります。従いまして、今般の政府資金の百五十億円の預け先につきましても、中小企業の長期金融を従来やつております勧銀とか北拓にまず優先的に出す。次に無盡その他の信用組合に出す。そうして地方銀行に第三番目に出しまして大銀行をおしまいにする。こういうよりなやり方で結びつきを考えているのであります。ことに中小企業の長期資金につきましては、通産省におきまして先般来調査いたしましたA級、B級にわけまして、約百億円の資金需要先がわかつておるのであります。私はこの需要先がわかつておりますものを、勧銀とかあるいは北拓とか農工中金等に話をしまして、そういうところから優先的に貸し付けるようにいわゆるパイプをつけつつあるのであります。また金融の問題で忘れていけないのは貿易金融でありますが、やはり中小企業等を潤すためには、貿易金融を今度は画期的にやつて行きたい。組織的にプラント・リストの問題とか、あるいは輸出手形の問題、あるいは輸入手形の問題、こういう貿易金融の特殊な面につきまして、一つ制度というと語弊がございまするが、専門的な一つの銀行を選定いたしまして、主としてこういう方面に当らせたいという考えをもつておるのであります。  次に国債償還千二百八十億円を計画いたしておりまするが、これは借入金の弁済等をいたしますると、いわゆる既発行の国債につきましては大体九百九十億——千億円であるのであります。この返し方をどういうふうにするかという問題であるのでありますが、この支拂いの方法は、まず二百六億円の前年度剰余金はすでに手持があります。一般会計からいたします五百億円の分は、来年度が初まりまして歳出と歳入との差額を見て出すのであります。見返り資金から出します五百億円、これとガリオアの輸入の状況によりまして、毎月どのくらい出て来るか予測はできません。予定の通り千五百億円が今のところは少し困難ではないかというような見通しもないではないのでありまするが、それも月によつてずれて参りますので、何月どれだけの債務償還ができるということは、今手持のものは二百六億円しかないのであります。こういうようにやつて行きますと、やはりそのときどき適当な方法で適当な額を返すよりほかにないと思うのであります。そうすると、返す先の国債はどこが持つているかと申しますと、日本銀行預金部、一般市中銀行であるのであります。日本銀行にまず返すということは、これは通貨の非常な縮小になりますので、策の得たるものではないと思うのであります。預金部を先にするか銀行を先にするかという問題があるのでありますが、これはただいまのところまだ結論には到達しておりませんが、預金部資金をまず先に考えてみたい。預金部資金の次には市中銀行を考えなければならぬ。預金部への償還をみなしてしまうまでは市中銀行にはしないかというと、そうは行きません。やはり預金部を頭に置きながら、その次に市中銀行というわけで、両者を見合いながらやつてつて、今後御審議を願いますところの興銀、勧銀、あるいは農林中金、商工中金の長期債券の発行と見合いにして、国債の償還に充てて行きたいという考えを持つて、ただいま具体案を検討中でございます。
  192. 西村直己

    ○西村(直)委員 先の問題につきましてですが、地方銀行等で外資銀行の代理店になりたいという場合には、いわゆるオーバー・ローンになるので非常に心配しておる。それですから日銀に融資のわくを設定しまして、地方銀行がすでに日銀に返す。銀行自体が負債が多いということは、外資銀行の代替をやる場合には、関係方面と申しますか、そういうものがやかましいので、言いかえますれば日銀から金を出しても、銀行からまたすぐ還流するという地方銀行の状況があるわけであります。その点について大臣のお考えを承りたい。
  193. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは預金部資金やあるいは政府資金を出しましても、その金額は地方銀行にはわかりませんので、金が入つて政府から預金いたしましたときに、それを自分の金庫の中に入れておくよりも、やはり一応日本銀行に預けておいて、除々に貸付の計画を立てて行くと思うのであります。従いまして昨年末百億の預金部資金を出しましたのが、七十億とか六十五億日銀に返つた。こういつて、せつかく出した効果がないというようなことを言いますが、銀行の経営者としてみれば、やはり日銀から相当借りておるのでありますから、一応返しておいて、除々に貸出先を見つけてまた日銀から借りる。これはやむを得ないことだと考えております。今のお話の地方銀行が外国為替銀行たり得るために、日銀からの借入金を少くしたいという気持はあると思うのでありますが、ただいまのところ外国為替取扱い銀行が当初十一を指定いたしまして、その後北拓が入つて来たやに聞いておりますが、まだ確定的のことは聞いておりません。地方銀行が外国為替取扱い銀行になるということはいかがなものかと思う。そうして外国為替銀行の下引受けの銀行になるということは、われわれ想像しておるのでありますが、その点につきまして日銀の貸出しが多いとか少いとかいうことできめることは、いかがなものかと思います。日銀の貸出しが多いから、あるいは少いからというようなことは決定的な要素ではないと考えております。
  194. 内藤友明

    内藤(友)委員 池田さんに一、二お尋ね申し上げたいと思いますが、池田さんが率直にお答えをせられまして、私どもその点につきまして好感が持てるのでありまして、これから一、二お尋ねいたしますことも、従来にかわらず率直に御返事を願いたいと思います。  まずお尋ね申し上げたいのは、所得税法の一部を改正する法律案外五法律案の説明の中に、二十四年度に比較いたしまして国税の軽減額は相当に達するのでありますというのでありまして、なるほど予算を見ますと九百十三億の減税なつておるのであります。ところがなるほど予算の上では九百十三億の減税ではありますけれども、大よそものが減つたとか、ふえたとかいうことは何かのものさしによつてはかるべきものでありますので、そのものさしが二十四年度に比べて減つたというだけのものさしでありますか。それともその他に、たとえて申しますと国民の所得についてこうだからそれは減つたのだというのか。そのものさしはどういうもうのさしかということを一応伺いたいのであります。
  195. 池田勇人

    ○池田国務大臣 二十四年度に対して減つたというのであります。しかもその計算の根拠は、所得が同一であつたならばこういうふうに減りますということを言つておるのであります。また他方面におきましては、徴税額がこれこれであつたのがこれこれになつたという見方であるのであります。
  196. 内藤友明

    内藤(友)委員 それではさらにその問題を掘り下げてお尋ねしたいと思うのでありますが、今度この税金を課せられますのに、政府は国民所得を三兆二千二百三十億と計算されておるのでありますが、二十四年度は二兆九千億でありました。二十五年度は二十四年度に比べまして三千二百三十億の国民所得が多いと計算されておるのであります。私はこの三兆二千二百三十億の国民所得そのものに実は疑義がありますので、これからまず考えなければならぬのでありますが、かりに私ども関係しております農林水産業を例にとつてみますと、政府の予算説明の中では農林水産の所得は六千五百二十四億、こう言つております。私どもはどういうそろばんを置いてみましてもどうしてもその数字が出て来ない。     〔委員長退席前尾委員長代理着席〕  そうしますとなるほど一万円の所得のある者に対しての税率が下つたのだから、それに応ずる税金が下つたということになるかもしれませんが、一万円であつたものを二万円の所得であるというように見積りますれば、同じ経営であるということを前提にいたしますと、その人は決して税金が減つたとは考えられないのでありますが、この国民所得を三千二百三十億ふやされたということの根拠を、お尋ね申したいと思うのであります。そうしませんと、なるほど二十四年度に比べまして二十五年度の予算は九百億減つたとは申せ、また一万円当り課税が減つたとは申せ、国民所得を水増しいたしましては、羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいではないかと思うのであります。でありますから三兆二千二百三十億と見積られた根拠を、お伺いいたしたいのであります。
  197. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国民所得計算方法は御案内の通りなかなか困難な問題であるのであります。安定本部は一定の方式を定めまして計算しておると聞いておるのであります。しかも国民所得のふえるのは生産が増加するという建前で、そういう計算をしておると思うのであります。結果は聞いておりますが、私自身が計算したわけではないのでございまして、別の機会に安定本部の係官かあるいは安定本部長官がお答えなさるのが適当かと思います。しかし私はその計算方法は、増産による増加が主たるものだということは認めております。金額も大体そのくらいであろうということも私は納得できるのであります。一応政府といたしましては、三兆二千何ぼとかの国民所得がありとして考えておる次第であります。
  198. 内藤友明

    内藤(友)委員 実はそこに私はからくりを考えられますが、しかしこれはいずれまた安本の係の方に詳しくお尋ねいたしたいと思います。  そこで次にお尋ね申し上げたいのは、二十四年度に比べまして二十五年度は九百十三億の減税なつておる。これはどこから出て来たかと申しますると、価格調整費から出て来たものと思うのであります。この九百億円の減税というものがほんとうに政府の冗費を省いて出て来た減税ならば、ほんとうの減税でありますけれども価格調整費を、二十四年度は二千二十二億あつたものを今度は九百億にした、一千百二十二億減らした。従つて国民生活やまた生産の上に影響を及ぼしておる。たとえて申しますると、肥料に対する補給金が昨年は三百四十億ありましたが、三十五年度は百七十六億となつております。硫安について具体的に申し上げますると、二十四年度は百二十一億でありますが、二十五年度は四十四億になります。こういうことが端的に肥料価格影響いたして来まして、現に硫安一トン一万二千七百九十四円のものが、一月、二月は一万五千三百五十二円となりました。それが三月現在は一万七千二百七十一円となつております。これは春肥反当りにいたしますると——全国の田畑合計いたしまして五百七十一万町歩に割当てますると、一反歩九十七円の値上りなつておるのであります。従つてなるほど税金の上においては、九百億の減税なつたか存じませんけれども、その減税したということが冗費を考えてその減税を見たのならば、それはそのままわれわれは減税として受取れますけれども、それが肥料値上りということになる。私は肥料一つをとつたのでありますけれども、おそらくこの補給金が減らされたということは、生活物資においても影響を及ぼしておると思います。今申し上げましたように、生産必需物資にもこういう影響を及ぼしておるのであります。そうしますと、国民の手前から考えますれば、税金の方で減つたか存じませんが、こちらの方でふえておるという形になつておる。こういうことは、なるほど税金は減つたけれども、他の方面でふえておるということになりますると、その差引きはどうなるか、こう考えられるのでありまして、それでも池田さんは減税となるということを、常に非常な大手柄のようにお考えなつておられまするが、これは国民個々の経済から申しますると、減税であるかどうかと思われるのでありますが、これについて御所見を承りたいと思います。
  199. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今回の減税の財源を価格調整費に求めた、こういうお話でございますが、それはどうかと思います。価格調整費もありましようけれども、行政整理によりまする節約も原因をなしておるのであります。あるいはまた一般会計から特別会計への赤字補填費、あるいは運転資金への流出も非常に減らしまして、いろいろな施策の結果、公共事業費をふやしたり、あるいは必要な経費をそのときどきに必要に応じてふやす、こうして行つたのであります。価格調整費減税の唯一の財源であるとは言えないのであります。しかもまた価格調整費にいたしましても、これは冗費でないようにお考えになりますが、相当冗費の場合もあるのであります。それは価格調整費を切りましただけ物価は上げておりません。企業の合理化の方にも相当持たしておる。少くとも企業の合理化に持たした分は、私は冗費の節約と言えると思います。価格調整費を削つたから肥料が上つた肥料が上つたから農民は困るというお話でありますが、税金を徴収して肥料を安くするということよりも、税金を少なくして肥料の値を上げた方がほんとうだと思う。とにかく政府のやる仕事はできるだけ少い方がいいということが、われわれの考え方であるのであります。もちろん肥料があがりましたために、米価に影響がありましよう。従いまして私は昭和二十五年産米の米価につきましては、肥料の値が上つただけ、バリティーが上つて行く。農家の生計費に、所得にさしたる影響を與えないように努力いたしておるのであります。ただ問題は、農家が全部でき上つた米を売るわけではないし、今まで公定価格のないものにつきましても、肥料をやつてつたというようなことにつきましては、これはちよつと転嫁できぬ場合もありましよう。これはほんとうの姿ではない、そういうことを考えますから、農家の方に対しましては、ほかの中小商工業者あるいは勤労階級よりも、より以上の減税をしている。農家の立場をできるだけよくしようと努力いたしておるのであります。
  200. 内藤友明

    内藤(友)委員 その点についてはお晝前お隣の平田さんと、いろいろお話合いをしたのでありますが、これは農家経済の立場から申しますと、ちよつぴりの減税肥料のうんとこさの値上りになりました。なるほど今お話がありましたように、パリティー計算ではね返つて来るのであります。これはお晝前、平田さんと事こまかに話合つたのでありますが、はね返つて来るものは三千六十万石の供出米と、今度は雑穀の統制がはずされるというのですが、これはわかりません。おおよそそういうものだけである。値上りなつ肥料を使う他の農作物、並びに自家消費のものにつきましては、どこからもはね返つて参りません。肥料値上り値上りだけ、それだけ農家経済の支出になるのであります。でありますから、税金は少し減つたかも存じませんけれども、今度はこの施策によりまして、農家というものは非常に立場が悪くなつたということが考えられるのでありますが、これは、平田さんは価格調整費というものは米の消費価格を下げるために、消費者のためにやつたのであるという御議論でありましたので、これはそういうことからできたものであるかも存じませんけれども、今日の農家経済から申しまして、今日の肥料の一トン一万二千七百九十四円というものは、これでやつてもなお農業経営が困難なのでありまして、それ以上ふえるということは農業経営の破綻になると考えるのであります。しかしこれは議論でありますからやめておきます。とにかく今大臣のお話から、税金は下つたけれども、ほかのものは上るのは当然の姿だというふうに率直なお答えを得ましたので、これはありがとうございました。私どもはこれからまたいろいろ問題を展開したいと思うのであります。  それから、その次にお尋ねを申し上げたいのは、実はこまかな計算をしてみますと、今度の所得税改正では五万円から十五万円ぐらいの少所得者は、実は軽くなつておらぬのであります。正直に申しますと、一切の間接税を含めて四%以下ほど減つておるようであります。ところが地方住民税を見ますと、前年度の所得課税標準といたしておるのであります。こうなりますと差引き、これは負担の増になつております。ここに国税及び地方税を通じて、負担の公平をはかることを目途としたと書いてありますけれども、それがあるいは一つのねらいかも存じませんけれども、とにかく少所得者に対しては負担が重くなります。減税になるのは三十万以上、また超過所得廃止の恩典を受けた大企業の法人というようなものが、あるいは減るかもしれません。そこで私がお尋ね申し上げたいのは、政府の今度の税制改正というもののねらいは、端的に申しますと平生大蔵大臣がお話なつておられます自由経済というものを基礎に考えられて、この制度を立てられたかどうかということであります。
  201. 池田勇人

    ○池田国務大臣 われわれは資本主義自由経済をモットーとする財政経済をやつておるのであります。当然今度の税制もそういうふうにやつておると考えております。なお価格調整補給金を減らしまして、それが個々価格には影響いたしますが、全体といたしましては、多少下つて來るものもありますので、物価水準には大した変動はないと思います。なお少所得者に対しては減税がないようなお話でございました。これは主税局長より答弁いたさせますが、いずれにいたしましても国税と地方税の総額は、前年より減つておるのでありますから、これは私は国民負担の状況から申しますと、全体の部分相当つておると思います。ただ十万円前後あるいは十五万円以下の人には、増税になつているというお話でございましたが、そういうことはございません。それは御安心なすつてけつこうだと思います。
  202. 内藤友明

    内藤(友)委員 税の考え方の根本は自由経済の立場だと聞きまして、これで私のお尋ねせんとすることに率直なお答えを実は得たのであります。それで、これは質問じやない、希望になつて來るのでありますが、自由経済の前に一体農業というものはどういうことになるかということであります。自由経済というものは非常に魅力のあるものでありまして、一たびこの考えにとりつかれますと、世の中のことは非常な勢いでこの方面へ突き進んで行くのであります。現に明治の中ごろから入りました自由経済思想のために、一切のものがもうけ主義に頭が向つてしまつたのであります。教育にいたしましても、本来教育というものは人物を養成するというはずのものが、金もうけの手段となり、宗教でさえもが金の前では頭を下げてしまつた。そういうふうなことになりますと、農業のような自由経済の前には何の力もない。——御承知通り農業には報酬漸減の法則があります。農業というものは資本を投ずれば投ずるほど、もうかるものではございません。資本を入れれば入れるほど、ある限度を越しますと報酬が零になります。とうてい自由経済の前におきましては農業は成り立ち得ない。むしろこれは私の希望になるのでありますが、大蔵大臣の立案されましたこの法律を見ますると、実は自由経済という考え方がにじみ出ております。たとえて申しますと、所得税五十万以上を一本にせられたとか、あるいは法人に対しては非常に優遇せられておるとか、あるいは富裕税が非常に少いとかいうこと、また農業者、中小企業者が唯一の自己防衛の手段であるとして組織しております協同組合に対しましては、すべてこれをただ一本にしてしまわれた。現にこの協同組合に対する課税も、戰前におきましては非課税原則がとられ、戰争中は、なるほど税金はかかつたのでありますけれども、特別法人という名前のもとに軽減されておつたのであります。昨年のインドにおいて開かれました国際連合の農業機構の発起人会におきましても、協同組合に対しては税金をかけてはならぬということを決議いたしておるのであります。せめて農業者なり中小企業者は、この協同組合の中に立てこもつて、資本主義自由経済と相対抗しよう、こう一生懸命にとりかかつておるのであります。その協同組合に対しましても、今まで與えられておつた唯一の税に関しての特権も剥奪されておる。これはあなた方のお考えが私はにじみ出ておると思うのですが、しかしこの税法のもとにおきましては、とうてい農業というものは成り立ちませんということを、ひとつ大臣はお考え置きいただきたい。農業というものは決して自由経済の前には成り立ちません。明治初めごろに入りましたあの経済思想のために、農村は疲弊困憊に陷りまして、非常な気の毒な状態になつたことは大臣も御承知のことと思います。昭和七、八年になりまして経済更生運動が起きまして、何とかこの問題を片づけたいというので、負債整理組合をこしらえていろんなことをやりましたけれども、どうしてもこれは何ともすることができなかつたのでありますが、今また私どもはそういう轍を踏まなければならないような気持がいたすのであります。どうかその点は大幅の御修正をお願いしたいということを申し上げるのであります。  最後に一つお尋ねしたいのは、さつき西村さんから税について、国民と税務官吏との対立ということを指摘なされたのでありますが、それは対立とまで行きませんけれども、今日国民は税に対しましてほんとうに政府を信頼しておりません。また政府も国民に対しまして税については信頼しておりません。こういうことは私は国を建てる上におきまして、非常に不幸なことだと思うのです。政府は民を信じ、民はまた政府を信ずるという考え方で行かなければならぬ。今日一般の人は税務署の役人といいますると、まつたくかたき同然の気持を持つております。これではどうしてもいけない。でありまするから蛮勇を振つて、二十五年度なら二十五年度は国民の申告したものを、かりに税金が減りましても、一応それをだまつて取上げて国民の自覚を進ます、こういうふうなところへ行かないものか。これについて御所見を伺いたいと思います。
  203. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は資本主義自由経済のもとに、いろんな財政経済の施策をやつておるのであります。ただ今の、農業に対しましてお話がございましたが、これは現段階におきましては強力なる統制をやつておることは御承知通りであります。これは私としてはできるだけ早くやめて行つて、自由な姿にいたしたいと考えるのであります。しかして農業が自由な姿ではなかなかやりにくいというときに、これはまた別な方面から考えなければならいと思います。日本農業というものが、今まで朝鮮統治の関係上、朝鮮を持つてつて、向うから相当米を持つて来る関係上、農民が相当の苦しみをなめられたことは事実であります。しかし戰争前とはよほど日本農業は條件がかわつて来ます。また今後日本農業のあり方は、米麦のみに依好するやり方はかえて行かなければならぬ。それにはいろんな方法があると私は考えておるのであります。  次に、納税者と税務官吏の対立という言葉でございまするが、対立というのはあくどい言葉で、われわれは先ほど申しましたように協調し、円満に税務を執行して行かなければならぬという信念のもとに、指導いたしておるのであります。しかしそういうことがあつたからといつて、申告納税の今までの状況にかんがみまして、納税者が申告したままでがまんして、政府は何にもするなということは、負担の公平上よくございません。で私は、あなたのおつしやるような気持になりまして、今度は青色申告制度を置いたのであります。青色申告制度納税者がこうだと言つてお出しになれば、政府はそれをのんで更正決定はしない。もし青色申告政府がのめぬような場合には、調査してでないと更正決定はしない。この気持は、あなたのおつしやる納税者の申告にわれわれが準拠して行こう、こういう気持の現われの一端と御了承願います。
  204. 内藤友明

    内藤(友)委員 そこで私ひとつ農業に関しての所得税の問題でありますが、実はこれは前年でありましたか、この委員会で、専門委員の方にお調べいただいた資料によつて、いろんな職業別の所得税調べを見ますると、農村の所得が非常に重いということを大蔵大臣に申し上げましたら、それは所得のあるところに所得税をかけるのだから、決して重い軽いということはないのだ。それはその通りであります。決して私はそれを負けるというのではございませんが、問題は、私は税法自体の問題よりも、むしろその運営が問題になると思うのであります。と申しますのは、所得の把握と経費の見積り方、この二つであります。農業においては、他の職業に比べて割合に所得の把握がしやすい。ことに單作地帯はもう米一本でありますから、秋のできばえを見れば所得税が幾らあるか、これは本人よりも人様が知つておる。それから経費の点もすつかりわかる。こういうのが農業の特性である。ところがほかの仕事はなかなか所得の把握ができない。こう申しますると、勤労所得者の方は、われわれの方がもつとはつきりするじやないかと言われまするけれども、今日いろいろ税金のかからない所得があります。われわれも大きなことを言われませんが、滞在費とやらは税金がかからないので、それをふやしてくれという希望があるのであります。現に大蔵大臣も毎日自動車に乗つておられると思うのですが、その自動車賃を一体あなたの所得計算なすつておられるかどうか。これは平田さんは常識上いかぬじやないかと言われますけれども、きのうも私どもはこんだバスに乗つておりますと、水田政務次官がすうつと自動車で行かれた。おそらくあの自動車に乗る乗り賃というものは私は水田さんの所得計算に入つておらぬと思う。なるほどわれわれはパスをもらつておる。けれども自動車に乗ろうと思えば八百円も九百円もとられる。こうなりますると、あなた方の所得とわれわれの所得との間に把握の仕方がどうしても違う。こういう問題が実はあるのであります。これは決して笑い事ではない。まじめに真剣に考えたら、私は当然これは考えてもらわなければならぬと思う。そういう所得の把握の問題でありますので、その把握が割合にやさしくできる、もうピンからキリまで計算に乗つて来るというような職業に対しては、特殊な考えを持つことが当然ではないか。従つて農業に対しては、ことに單作地帯に対しては、特殊な税率をかけることが負担の均衡になるのです。税金というのは均衡論でありまして、もちろん負けた国でありますから、よけい負担しなければならないことは覚悟しておる。けれども彼もわれも重いのならさしつかえないが、彼は軽くして、われは重いということになると、そこに問題が起る。これが納税の公平であります。でありますから私は農村の課税に対しては、特殊の税率をかけて行かなければならないと思うのですが、その点について御同情のある御返事を願いたいと思います。
  205. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話通りに、所得の把握がうまく行かなければならないのでありますが、勤労階級あるいは農業者の方々は、所得の把握が他の仕事よりも楽だ。かるがゆえに課税について考えろという御議論でありますが、所得の把握は所得税の根本であるから、今まで把握のむずかしかつた方に力を入れて、把握を十分にすれば均衡がとれると私は考えておるのであります。従いまして青色申告とかあるいは徴税機構の強化、税務官吏の素質向上等によりまして、所得の把握の万全を期する方に向つて行きたいと考えておる次第であります。
  206. 内藤友明

    内藤(友)委員 そうするとその所得の把握が完全にできますまで、どれだけの期間がいるのでありますか。その間に農業者がぶつぶつ不平を言いまして、納税思想の稀薄ということになりますと、これは恐るべきことでありますが、二十五年度中にちやんとその把握ができるのでありますかどうかということをひとつ承りたい。
  207. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先般来把握につきましては、査察部とかあるいは調査部等を置きまして、万全を期しておるのであります。今後とも十分努力してりつぱな所得税を施行して行きたいと考えております。
  208. 奧村又十郎

    ○奧村委員 昨日お尋ねしたことについて、大臣の時間の都合で中途半端になりましたので、一点だけ希望を申し上げておき、それに関連してお尋ね申したいと思います。公団でも、特に食糧公団の今度の予算がかなりずさんであつたということは、政府委員の方も認めておられます。しかしこれは最近こういう制度になりましたのですから、ある程度やむを得ないと思うのであります。しかしまた考えてみますと、この公団が来年の三月で解散する。もうすでに解散の準備をやつておるので、よほど政府が監督を十分にいたしませんと、單に予算だけで行きますと、いわゆるわけどりというような観念が実現しないとも限らぬと、私は非常に不安を持つのであります。この予算を組みかえるということはめんどうでありますが、幸いにしてこの国会において、政府が特に公団等について支拂いの承認制度をとるということをなさつた。これはおそまきながら非常にけつこうであります。支拂い承認制度でもつて、実行予算においてどうかこの支拂いを切詰めてやつていただきたいと、要望申し上る次第であります。そこでその要望について私は食糧公団において、收入の面においては、たとえば輸入食糧の小麦粉などの配給においてかなり配給辞退があるから赤字が出るのではないか。その收入の面の状況とにらみ合せて、支出の方の支拂い承認をしつかりやつていただきたい。ところがただ一つ疑念がありますのは、国会で承認した公団の支出の予算を、大蔵大臣の手でもつて支拂い承認をもつて押える。そういう場合国会の承認を得た予算が、支拂い承認制度でもつて、実際は年度末において百億円も節約したということがかりに起つた場合、その国会の議決を経た予算と、それを單に大蔵大臣の承認の権限でもつて、百億円も切詰めることができるというようなこととの関係は法律的にどうなるか。この一点疑念を持ちますので、この点について大蔵大臣の御意見を承りたいと思います。
  209. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御質問とか御希望の第一段の公団の経理につきましては、薪炭特別会計のああいう状態から考えまして、大蔵省としては深甚の注意をもつてその運営を見ております。また別に経済調査庁も先般来調査に当りまして調査を進行し、あるいは調査の済んだところもございます。会計上不都合のないように、十分会計検査院も調査庁も、あるいは大蔵省主計局におきましても、その分に応じまして深甚の注意を拂つてつておるのであります。御了承願いたいと思います。  次にまた公団の支拂いにつきまして承認の制度をとります。これは一般会計あるいは特別会計においてもやつておることでございまして、予算の執行につきましては、大蔵大臣の責任をもつてそういうことをやつておるのであります。しこうして支拂い予算を認めなかつたために剰余金が出るとかいうときには、これは一般会計、特別会計の不用額として整理するわけであります。翌年度に繰越す場合もありますし、特に厘毛もそまつにしないように、また経済界の状況に応じまして予算の執行をやつておるのでございます。
  210. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私はこの際大蔵大臣がおいでになりましたから、二点だけを西村君に関連してお伺いいたしたいと思います。  まず第一点は、先ほど平田主税局長と多少資疑をかわしたのであります。この点はやはり法律の解釈問題になるだろうと思いますが、法人においては最初の年末決算においては、いわゆるたなおろし計算は結局原価主義でなく時価主義になるのであります。個人の方は年末になつて時価主義ではない。当初の、年の初めの仕入値段によつてきまる。こういうことを言われたのでありますが、西村君の資間に対しまして、大蔵大臣は、今度昭和二十五年一月からは特に罰金とか税金の延滞金につきましては日歩を下げてやる、こういうふうな單行法を出そう。たいへん親心のある御同情ある御立法をなさるということを聞いておるのでありますが、この際場合によりましては、二十四年一月と二十四年十二月とはがた落ちになつて、三分の一くらいになつ事業もあるわけですから、そういうものに対してはぜひ大臣も同情ある見解のもとに、そのたなおろし計算は個人でありましても、やはり時価主義をもつてつた方が今日の場合はよろしいと考えるのでありますが、これに対して便宜の御立法をなさるようなお考えをお持ちでありましようか、どうですか。ぜひお願いしたいと思うのであります。
  211. 池田勇人

    ○池田国務大臣 法人と個人との税率の計算につきましては、三宅さんは従来から御承知通りそのやり方が違つておるのであります。これは今では大分いろいろな点が似て参りましたが、所得の発生主義とか源泉主義とか言いまして、やり方が違つておるのであります。二十四年におきましては中に下つたものがありますから、特別でやつたとしますと、これまた将来の問題になるのであります。非常に税金が過重されるような場合があるのであります。そこで私はそういうような根本的の改正は、この際やはりすべきではないのではないか。人によつて得になるようなこともありましようが、また人によつては非常に損をする場合もあるのでありますから、私は今のところ仕入主義を時価主義に改めることは、かえつて困難を来す問題ではないかと思つております。
  212. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 たいへん飛びまして、大臣にも恐縮でありますが、ひとつお話を承りたいと思います。実は資産評価のことになりますが、私の多年の経験からいたしますと、一方的に各税務署の決定によつてきめることは行き過ぎである。こういう観点からいたしまして、やはり公選もしくは官選せられた人格、識見、学識の高い者によつてある程度きめたい、こういう線を前にも出しております。そこで私の試案を第五国会のときにおいて大臣に申し上げたと思いますが、これは各地に所得税調査員が戰前まであつたわけでありますが、戰時中なくなつたと思つております。これにかわるような構想のもとに、今回資産評価に対しましても、原案によりますと国の資産評価審議会、あるいは各地方の国税局ごとに、資産評価調査会というものを設けられることになつておるのでありますが、もう一歩掘り下げまして、各税務署管内ごとにこれの準備をいたしまするごとく、名前は何でもけつこうでありますが、資産評価調査準備会、こういう線をもちましてもう一つ下の線に掘り下げて、その地域の事情に適当するような課税をするための原案をつくり算定をする基礎をここに置きたいと思いますが、大臣の御構想を承りたいと思います。
  213. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話ごもつともの点もあるのでございますが、所得決定のような場合とは違いまして、大体標準がきまりまして、それ以下ならば任意という体をとつておるのであります。ただ任意にいたします関係上、同じ業種におきましても不符合があつては困るから、一応は任意でございますが、非常に差があつたような場合のときを考慮いたしまして、資産評価調査会、審議会を置いておるわけであります。業種別に大体この程度ということの標準さえきめればいいのだと思いますから、税務署ごとに置くほどのものではないと考えております。
  214. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 それでは先にもどりまして、また恐縮でありますが、この前も一応大臣にお伺いしましたから、大体了承しておるのでありますが、国税局に置かれる協議団には、相当民間から有力な人物を採用するというような御答弁でありましたが、どの程度、たとえて申しますと四分の三とか、二分の一というような構想でございましようか。それとも大部分は税務官吏の優秀な者を持つて来る、こういう構想でございましようか。それをこの際承われば仕合せだと思います。
  215. 池田勇人

    ○池田国務大臣 実は私といたしましては、たとえば三人で協議団を組織いたしますれば、民間から二人くらいは入つてもらいましてやつて行きたいという考えのもとに、千五百人の増員を要求し、予算はとれておるのであります。しかしこの際政府全体といたしましては、できるだけ人を少くしようという考えがありまして、予算はやつておりまするが、まだ定員法の方で今審議中であるのであります。従いまして千五百人の増員が認められました場合におきましては、相当多数の民間の方々に入つていただいて、そうしてこれは役人としての資格において、協議団の使命を果すようにして行きたい、こういう考えをもつて今折衝を続けておる次第でございます。
  216. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後五時二分散会