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1950-02-28 第7回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月二十八日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 大上  司君 理事 北澤 直吉君    理事 小峯 柳多君 理事 小山 長規君    理事 島村 一郎君 理事 前尾繁三郎君    理事 川島 金次君 理事 河田 賢治君       岡野 清豪君    奧村又十郎君       鹿野 彦吉君    甲木  保君       佐久間 徹君    苫米地英俊君       中野 武雄君    西村 直己君       三宅 則義君    宮幡  靖君       宮腰 喜助君    竹村奈良一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君  委員外出席者         專  門  員 黒田 久太君         專  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 二月二十八日  造幣庁特別会計法案内閣提出第六八号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十七日  株式譲渡名義書換期間制限に関する陳情書  (  第四六七号)  同  (第四七四  号)  所得税公正課税に関する陳情書  (第四七九号)  関税改正に関する陳情書  (第四八一号)  車両工業税制改革に関する陳情書  (第四八三号)  株式譲渡名義書換期間制限に関する陳情書  (第四九〇号)  めのう並びにその製品に対する物品税率変更の  陳情書  (第四九六  号)  株式譲渡名義書換期間制限に関する陳情書  (第五〇〇号)  関税法の一部改正に関する陳情書  (第五〇六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第四  七号)  有価証券移転税法を廃止する法律案内閣提出  第四八号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五一号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五二号)  富裕税法案内閣提出第五三号)  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五四号)     ―――――――――――――
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議開きます。  前会に引続き税法法案に対する質疑を続行いたします。三宅則義君。
  3. 三宅則義

    三宅(則)委員 私はこの前総括的質問をいたしたのでありまするが、本日は多少時間を拝借いたしまして、各論にわたつてお伺いいたしたいと思います。この前に少々伺つたことでございまするが、この基礎控除につきましては、政府委員の御答弁によりますると二万五千円が適当であろうということであります。こういう線でおやりになつたと思いまするが、ただ私の心配いたします点は、扶養控除に関しまする一人一万二千円の源泉控除であります。それにつきまして扶養親族との関係について、もう一度詳しい御説明を賜われば仕合せであると思います。
  4. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回の扶養控除についての一番大きい改正は、従来千八百円の税額控除でありましたのを、一万二千円の所得控除に改めた点でございます。税額控除方法がいいか、所得控除方法がいいか、これはいろいろ議論があるところでございますが、やはりこの扶養控除本質論から申しますると、一定の生活費的な控除をするという意味におきまして、むしろ所得控除の方が合理的じやないかと考えておるのでございます。従いまして所得一万二千円の控除にいたしたわけでございまするが、一万二千円の控除額がはたして基礎控除の二万五千円と比べて、合理的であるかどうかということは、相当検討をする必要があるのでございまして、私どもいろいろな見地から考えたのでございますが、さしあたり本年度といたしましては、この程度改正が妥当じやないかというふうに考えたのでございます。と申しまするのは、一万二千円の所得控除ということは、税率違つた適用を受ける人ごとに、税額から申しますと違つて来るわけでございます。たとえば二〇%の適用を受ける税率の人の場合でありますと、一万二千円の二〇%すなわち二千四百円の税額控除に相当するのでございます。それからかりに三〇%の適用税率を受ける人の場合でございますと、一万二千円の三〇%すなわち三千六百円の税額控除になるのでございます。従いまして三〇%の税率適用を受ける人の場合におきましては、従来の税額控除の千八百円が三千六百円になりますので、ちようど二倍の引上げに相なるのでございます。それからかりに五〇%の税率適用を受ける人でございますと、さらにそれが高くなりまして年額六千円の税額控除に相当するわけでございます。かようなわけでございまして、今回の扶養親族に対する控除改正は、額から申しますとごく簡單な改正のようでございまするが、実は負担関係には相当大きな差をもたらすものでありまして、そのために所得税の収入も大幅に減少する見込みをすでに立てて予算を組んでいるわけであります。他面扶養家族扶養親族の多い人と少い人との間の負担開きが、従来に比べますと非常に多く出て来ますことは御承知通りでございます。その方がむしろ所得税としては公平だという意味におきまして、さようにいたしたのでございます。たとえば勤労所得の場合でございましても、独身者所得税は従来に比較いたしますと、大体一割から二割ぐらいの減少にしかなつておりません。これに対しまして扶養親族が四人も五人もある所得者の場合におきましては、四割ないし五割の負担減少になるのが通例でございます。そのように従来の税法に比べますと、同じ所得額でありましても扶養親族の多いか少いかによつて相当大きな開きがついて来る。それが所得税負担として公平である、こういう見地に立つておるのであります。この改正ちよつとした改正のようでありますが、納税者負担には非常に重大な意義を持つということを、御了解願いたいと思います。  次に扶養親族につきましては、範囲を大幅に拡張した点であります。三宅委員お話もあるいは範囲の点かと思いますが、範囲につきましては、従来は御承知通り外形的な標準で、扶養親族法律できめていたのであります。年齢が十九歳未満と六十歳以上、配偶者なつておりまして、どつちかと申しますと、年齢等によつて外形的な標準扶養親族を認定する方法参つたのでございますが、今度の所得税法年齢の差は設けないことにいたしたのであります。そうしていやしくも所得が一万二千円以下であれば、ある所得者から扶養を受けておる事実がある以上、すべて親族である限りにおきましては、所得税法扶養親族に該当する者として控除することにいたしたのであります。その結果今まで十九歳以上の学生等がおる場合におきましては、全然控除を受けなかつたのでありますが、今後は控除できることに相なるのであります。極端に申しますと一時仕事がないために相当な成年者がある所得者に寄食しておるとか、ぶらぶら遊んでおる場合でも、それが所得がなくて、ある所得者から扶養を受けておる場合におきましては、当然これが控除の対象になつて行きます。もう一つ地方農業とか商工業で、家族労務者として家業を手伝つておる成年男女、こういう場合におきましては、それぞれやはり一万二千円の扶養控除を受けることになつたわけであります。かような点から申しますると、その範囲の点においても相当拡張になつたのでございます。ただこの所得の一万二千円以下に限定したことでございますが、これは前会の川島委員の御質問に対してしばしばお答えいたしておきましたように、今度は原則として所得は合算しないで、分離課税を行うようになつたのであります。従いまして分離課税を受けますれば、基礎控除の二万五千円をみな受けることになるのであります。それと累進税率等関係も総合して課税される場合に比べますと、よほど負担が緩和されるわけであります。そういう方々はそれぞれ分離して負担がきまるということになりますので、一定以上の所得がある場合におきましては、扶養家族としての控除をする必要はないということに相なつたわけであります。ただ純然たる資産所得の場合におきましては、これはやはり法律上合算いたしますので、配当所得利子所得不動産所得等資産所得がある場合におきまして合算されている。こういう場合におきましては、その種の所得が一万二千円以上ありましても、扶養家族として控除するということにいたしておるのでございます。以上申し上げました点が扶養親族控除等改正のおもなる点でございます。従来の所得税法に比べますと相当重要な改正であり、かつ私どもとしましては、大きな合理化が行われたものと確信いたしておる次第でございます。
  5. 三宅則義

    三宅(則)委員 今主税局長から詳細な扶養親族に関するお話がありましたが、勤労控除に対しまして、收入金額二十万円までの金額といたしましては百分の十五となつております。また退職所得につきましても、收入金額の百分の十五を控除すると言つておりますが、もう少しく控除した方がよろしいかと思いますが、その辺の構想を承りたいと思います。
  6. 平田敬一郎

    平田政府委員 勤労控除を何パーセントに定めるかということは、これは実は二つの観点からお考え願う必要があるかと思います。一つは、純粋勤労所得は他の所得に比べまして担税力が低いという見地一つ、もう一つ給与所得等につきましては、ほかの事業所得等と違いまして、経費的な控除を全然しておりません。実際上全然ないかと申しますと、たとえば通勤費等必要経費と言えば言えないことはないのでありますが、これらの経費は実際上見るのがなかなか困難でありますのと、また金額がさほど大きくないという意味におきまして、所得計算上そのような経費控除をいたしません。事業所得等の場合におきましては、それそぞれみな経費等控除いたすわけでありますが、そういう控除をしてないわけであります。主としてその二つの点から申しまして、勤労所得控除を従来の税法もいたしておりますし、また各国の税法アメリカ所得税法を除きますと、大体やはり勤労控除を認めておるのでございます。アメリカ所得税法におきましては、御承知通り現在は勤労控除はございません。そのほか人的控除各人ごとに、あるいは扶養親族につきましても、すべて本人と同額の人的控除を行つておるのでございますが、勤労所得控除はないのでございます。わが国の税法におきましては、従来は二割五分の勤労控除を認めていたのでございますが、この際といたしまして、これをシヤウプ勧告では一割に圧縮したらどうかという意見であります。シヤウプ勧告におきまして一割に圧縮する理由は、これは相当大きな理由があるのでありまして、一つ事業所得者との負担の比較なのであります。先般もここでどなたからか御質問がございましたが、小事業所得の場合には、御承知通り自分自家労賃部分が相当入つておることは申し上げるまでもないのでございます。農業所得の場合でございますと、例の家庭生産費計算してみますと、やはり農業所得の六割ないし七割一くらいが、自家労賃に相当する部分といつたような計算を農林省でやつておるのは、御承知通りでございます。小さい営業者の場合におきましても、同様に自分が働いた部分所得がその事業所得の中に入つて、その純粋の賃金に相当するような所得と、その他の企業利潤的なもの、場合によりますと資本利子的なものも入りまして、それが事業所得に相なるわけでございます。そのような次第でございますから、勤労所得について相当大幅な控除をいたすということになりますと、少額事業所得につきましても、やはり同様に勤労所得的控除を認めたらどうかという議論がございますことは、この委員会におきましても各委員からお話通りでございます。従いましてシヤウプ博士はこのような考え方でやつておられるのでございます。と申しますのは、純粋所得給与につきまして二割五分の控除を認めるならば、少額事業所得等につきましても、一割五分くらいの勤労控除を認めたらどうかという考えであります。御承知通り今の所得税納税者のほとんど九〇%というものが、勤労所得者少額事業所得者であります。ほとんど全部の納税者について、ある人については二割五分の控除を認める、他の人については一割五分の控除を認めるということになつて参りますと、その差の一〇%だけ残しまして、あとは基礎控除税率等で調整をはかるのと結局同じではないか。むしろその方が技術的にも簡単でよいのではないか。残るのは不動産所得者配当利益者事業所得者との若干の負担のバランスの問題でありますが、今日におきましては、実際問題として、ほとんどそれほど大きく言うに値しない。むしろその点は控除をなるべく必要のある限度にとどめて、簡単化をはかつたらどうかと思うのであります。さような見地から考えまして、結局一割だけ給与所得控除として残すという見地に立つているわけでございまして、その点私どもはいろいろ考えておるのでございます。それにいたしましても、従来二割五分の控除を認めておりましたのを、一割に圧縮するということは、勤労者の租税の負担に及ぼす影響がいかにも大きいので、政府といたしましては、一割五分の控除が妥当ではないかと考えた次第でございます。それともう一つの点は、事業所得捕捉がなかなか困難であり、給与所得源泉課税であるから、捕捉が簡単であるということが実際問題としてあろうかと思うのでありますが、この問題は理論といたしましては、あくまでも所得税法によつて早く正しく把握されなければならないのであります。従いましてそういう点は理論上の根拠にはならぬと思うのであります。ただ実際問題としてはそういう点もございまするので、勤労所得控除をきめる場合におきましては、そういう点もあわせ考えて、実際上妥当な控除率をきめようということを考えたのであります。そういう意味合いからいたしまして、さしあたり一五%程度勤労控除を認めるのが妥当ではないかと、われわれとしては考えておる次第でございます。
  7. 三宅則義

    三宅(則)委員 退職所得に対するお話はなかつたのでございますが、その点について承りたいと思います。  また特別控除につきましては、昨日も小山委員から御質問がありまして大体了承いたしましたが、扶養親族である不具者に対しましては、一万二千円よりもう少し額を高めた方が穏健ではないかと私は考えておるのであのますが、この点について承りたいと思うのであります。
  8. 平田敬一郎

    平田政府委員 退職所得は大体給与所得の延長とでも称すべきものでありまして、性質が給与所得と同じでございますから、これはシヤウプ勧告にはないのでございますが、特に一割五分の控除を設ける意味法律案の作成をしたのでございます。  それから不具者につきましては特別に控除するわけでありまして、不具者所得者の場合におきましては二万五千円の基礎控除が別にできるのでございます。二万五千円の基礎控除を受けたほかに、一万二千円の控除をする不具者が、ある所得者扶養親族に該当する場合におきましては、その不具者所得が一万二千円以下である場合におきましては、その不具者は一面におきましては、扶養親族の一万二千円の控除を受けるとともに、そのほかにさらに一万二千円の控除を受けることになるのであります。さような点を考えますと、扶養控除金額一万二千円が低いかどうかということは、若干御議論がございましようが、この際としてはこの程度が妥当ではなかろうか。将来相当所得税からの歳入を減らすことができるという場合になりましたならば、扶養親族控除の額とあわせまして考究してみたいと考えております。
  9. 三宅則義

    三宅(則)委員 今主税局長は大分御同情ある御答弁でありましたが、将来不具者の税につきましても、一段と御同情を賜りたいと考えております。昨日も小山委員から御質問がありましたが、震災、風水害、火災、盗難等によりまして損失があり、所得の十分の一以上を超過した場合は十万円以下を控除する、こういうふうにしたらどうかと考えておるのであります。金額が相当あります場合、ほとんど全所得のうちの過半数が損失になるような場合は、たいへんに影響があると思いますので、これに対しましての方策を承りたい。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 医療費につきましては最高十万円の制限があるのでございますが、これは療養等をする費用を全部所得から引きますのは、いかがであろうという意味におきまして十万円の限界を設けておるのでございます。災害による損失につきましては、限界を設けておりません。これはいくら多くても、その損は控除するわけでありまして、その年限りで引き切れながつた場合には、さらに五年間にわたりまして控除するのでございます。ただ普通、所得の一割を越える部分金額に限るのでございますが、この金額いくら多くても、上の方の制限はございません。年限も五箇年間は繰越し控除を認めるわけでございます。
  11. 三宅則義

    三宅(則)委員 その場合のことをお伺いするわけでありますが、私はこの算定基準をどこに置くか。これが問題になつて来ると思う。たとえて申しますると、風水害におきましては、あるいは町村とかあるいは地方事務所等でやるかもしれませんが、盗難の品物の損等につきましても、やはり村長でありますとか、町長でありますとか、あらゆる行政機関の長が証明することになると思いますので、証明方法等につきまして、今構想を持つておられましたら承りたいと思います。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 今私ちよつと間違つたことを申し上げましたので修正しておきます。個人の損失控除は三年でございますから、三年間は繰越し控除を認めます。これは普通の常業の損なんかと違いまして、原因がはつきりいたしておりまするから、青色申告書を提出することを必要としません。青色申告を必要としない普通の納税者の場合におきましては、その年及び爾後三年間繰越し控除を認めるわけでございます。  もう一つ、認定の方法であります。これは実際問題として昨日小山委員も話になりましたように、なかなかむずかしいところがあるので、やはり災害の発生しましたときに、役所といたしましてはなるべく詳しい調べをするのが第一であろうと思います。それから第二といたしましては、やはり個々の納税者からなるべく詳しい材料をとりまして、その材料に基きまして査定をすることに相なろうかと思うのであります。その際におきましては、関係市町村その他公共的な団体の資料は、有力な材料として使つたらどうだろうかと考えるわけでございます。非常に大きな納税者の場合におきましては個別的に調査して適正を期する。それほどでない中小の納税者の場合におきましては、やはり実行上ある一定基準等を設けまして、それによつて評価額を査定するといつたような方法をとらざるを得ない場合もあろうかと思います。実情によりましてできる限り適正を期するべく努力いたしたいと思います。
  13. 三宅則義

    三宅(則)委員 医療に関しましては先ほどもお話があり——もちろんこれは健康保険等とも関連があるわけでありますが、これに対しましては、町の医者証明書でありますとか、病院に入院いたしました場合の受取書であるとか、いろいろ計算基準があると思うのであります。かりに何人おりましても、やはり最高十万円でお切りになる御予定でございますか。それをもう一ぺん承りたい。
  14. 平田敬一郎

    平田政府委員 医療費につきましては、当該医者証明等を添付せしめるつもりであります。額につきましては、これはやはり所得税基礎控除なり家族控除その他に制限がありますと同じように、普通一般の人ができないような非常に高価な治療をした場合にその分を所得税から差引くことは、一般所得税の重い際にいかがかと考えまして、十万円程度制限をしたのでありまして常識上この辺が妥当ではないかと考えているわけであります。
  15. 三宅則義

    三宅(則)委員 次にお伺いいたしたいのは税率の引下げの点であります。五万円以下の金額でも百分の二十とつておりますが、これは百分の十五とかあるいは十というふうに、多少免税するという意味合いにおいて、税率を下げられた方がよろしかろうと考えますので、この構想を承りたい。また現段階におきましては、およそ十五万円以上もしくは二十万円以上の方々は、この改正案によりましても前とかわりは少い、こういうことを言われておるので、主税局長といたしましてのこれに対する御感想を承りたいと思います。
  16. 平田敬一郎

    平田政府委員 五万円以下百分の二十でありますが、この五万円以下と申しますのは課税所得五万円以下でありまして、結局基礎控除をし、勤労控除をし、扶養控除をした後の所得額が五万円であります。従いまして、二〇%の税率は一見高いようにも考えられますが、それだけ引いた残りの所得に対しまして二〇%でございますから、累進税率といたしましては、比較的なだらかに上つて行くことに相なります。従いまして今度の改正によりまして、少額所得者の場合は相当な軽減に相なつていると思います。お配りしました要綱をごらん願えばわかるのでございますが、給与所得者事業所得者も、少額の場合におきましては、現在の税額に比べまして相当低くなつております。また課税される場合におきましても、税の軽減割合は相当多額に上つております。税率としてはこの辺のところが妥当ではないかと考えます。     〔委員長退席島村委員長代理着席
  17. 三宅則義

    三宅(則)委員 今税の要綱を承りまして大体了承いたしたのでありますが、私の聞かんといたしますところは、二十万円以上三十万円見当の人々はさほどかわつてはいないということが言われているので、そのことにつきましてもう一度御答弁を賜わりたい。
  18. 平田敬一郎

    平田政府委員 今は五万円以下のことをお答えいたしたのでありますが、もう少し上の二十万円前後のところになりますと、結果において大体御趣旨のようなことになつております。その辺のところになりますと、基礎控除引上げ家族控除引上げによる影響が比較的少い。税率あまり下つておりません。従いまして全体としての負担の減り方が比較的少い。しかしながらそういう人におきましても、家族の多い人の場合は、扶養親族控除影響を受けまして負担が相当低くなり、家族の少い年額二、三十万円程度の人は税率あまり下つておりませんから、お話通り負担の減り方が比較的少いということになつております。現在なお予算で二千五百億円程度收入を期待しておるわけでありますから、所得税から相当多額收入を期待するということになりますと、勢いその程度所得者につきましても、ある程度負担をしていただかなければ出て来ない。この辺の税率を下げますと、歳入面におきまして全体としての財政需要を満し得ないことになりますので、今回はこういう税率にしておるわけであります。将来財政上さらに一層の減税が許されることになりますれば、この辺の税率ももう少し合理化するかどうか大いに検討いたしてみたい、かように考えております。
  19. 三宅則義

    三宅(則)委員 今主税局長は、二十万ないし三十万程度につきましては、税金を納める一番の中核体である、こういうふうにお話なつたと了承するわけでありますが、さて五十万を越えます金額、これはいわゆる高額所得者でありますが、この高額所得者に対しまする税金比例等がわかわますれば、この際お示し願えればけつこうだと思います。
  20. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回の所得税法におきましては、五十万円を越える場合は五十五の税率というふうにきめたのであります。これは先般も大臣からお話がありましたが、一つ所得税としましてあまり高率になりますると、結局まじめな納税意欲を阻害しまして、正しい課税がなかなかむずかしいという点と、それからもう一つは、この辺の所得自体にあまり高率な課税をしますと、やはり事業意欲と申しますか、そういうところに重大な影響がある。そういう意味で五五%にとどめたのであります。ただその一面におきまして、地方住民税課税になるのでありますが、住民税が約二割程度課税になりますと六六%の税金になります。それと高額所得の中で財産所得につきましては、これは別に富裕税がかかりまして、これが相当な負担になるのであります。基本としましては、ある人が所得を生んだ場合におきまして、その所得自体が相当多いからというて、それに対してあまり高率な課税をするのはいかがであろうか、むしろその所得が蓄積されまして、財産の形で個人に帰属しまして、その財産から相当の所得がある場合におきましては、その所得に対してはやはり負担公平の原理に即しまして、相当高率な課税をしたらどうかというのが今度の富裕税の考え方でありまして、富裕税は最高千分の三十であります。ところがこれは元本たる財産額にかかりますので、これは收益に引直して計算しますと相当の負担になります。たとえば元本に対しまして所得が一割あると考えますと、千分の三十の富裕税は、所得に対しましては百分の三十の負担になるわけであります。従いましてほんとうの金持の所得には、百分の三十の富裕税とそれから所得税の五十五を加えましてやはり八十五という負担になるのであります。従いましてほんとうの高額財産所得者、これは一番担税力のある、最も着目すべきものでありますが、こういう人々につきましては、所得税と富裕税を通じまして負担の公平化をはかろう。この点に関しましては、やはり相当高い累進率がかかることをお忘れないようにお願いしたいのであります。もちろん所得に対する利回りが一割以下になりますれば、もつと高い課税になるわけであります。反対に財産に対しまする収益率が一割よりも多い場合におきましては、それよりも低い負担率になるわけでありますが、このように高額所得者に対しましては、所得税一本で考えないで、富裕税と所得税と二本建で行くというところに、今度の大きな一つ改正点があるのであります。現在アメリカ、イギリスにはかような富裕税はございません。ドイツにはございますが、ドイツの財産税は非常に低くて、千分の七十五パーセントになつております。それに比べますと、今回の日本の富裕税は相当高率であります。  それからもう一つそれに関連して注目すべき点は、やはり相続税の形で非常に高度な累進課税を行おうという点であります。結局所得税だけで累進税率負担を考えないで、所得税と富裕税と相続税と三つを通じまして、直接税の中におきまする担税力のある課税をしようというのが、今度のシヤウプ勧告の相当大きな特色と称すべき点であります。従いましてこの相続税は最高五千万円を越える場合におきましては、九〇%という高い税率なつております。従いまして資産者につきましては、私は今度の税制は相当高度の累進税率を採用しているということは、確かに言い得ると考えるのであります。所得税最高税率を五五%にしたいということだけを引きまして批判すべきでなく、税制全体を通じて御批判願いたいと思つております。
  21. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は今承りましてよく了承いたしましたが、ただ今までの税制から考えますと、総合課税が非常に悪いということであります。今回の改正によりまして、総合課税はなくなつたものと考えておりますが、要綱についてみますと、一部分はなお残つておるようにも考えられるのでありますが、全所得者に対しまして、同居親族等でありましても、勤労所得等に対しましては総合課税はしない、こういう方針でありましようか、承りたいと思います。
  22. 平田敬一郎

    平田政府委員 総合課税とおつしやるのは合算課税意味だろうと思いますが、合算課税につきましては、たびたび申し上げておりますように、原則としていたさないのでありますが、ただ利子所得配当所得と不動産所得、この純然たる財産所得であることと、それから配偶者、未成年の子供さん、この二つを要件にいたしまして、その場合には合算をする。それから扶養親族として控除の申請をして来た人に所得がある場合におきましては、これは合算する。分離して課税を受ければもちろん合算しない。この二つの点を例外としまして、合算するわけであります。あとの場合は一切合算しません。従いましておやじさんが商売をやつていて事業所得がある、むすこさんがどこかに勤めておるという場合においては、おやじさんの收入とむすこさんの給料は合算しないで、分離課税をするわけであります。おやじさんもむすこさんも両方勤めているという場合も、同様に合算しないのであります。要するにそういう配当所得利子所得と不動産所得、こういう資産所得がある場合と、しかもその相互の関係配偶者であるか、あるいは未成年の子とお父さんという関係にあるか、そういう場合に限るわけであります。ただ後者の場合につきましては、孫さんとおじいさんと一緒に住んでいるという場合にはやはり合算するのでありますが、非常に例外的な場合に限つておるということであります。
  23. 三宅則義

    三宅(則)委員 今度の税法改正によつて合算税が廃止になるということでありますが、今御説明になりました通り、一部分利子とか配当とかにつきましては総合されますが、あとはやらぬということで賛成であります。  次に私の心配いたしますことは、損益繰りもどしの点であります。この要綱にも書いてありますが、損益を通算いたして、一時所得がありましても、また欠損のあつた場合等におきましては三年間認めるということであります。繰りもどしにつきましては、相当技術的にも内容的にもこれを検討してみる必要があると思いますが、その辺の構想を承りたいと思います。
  24. 平田敬一郎

    平田政府委員 ある年に損失が発生して、しかもその損失をほかの所得と差引ましてなお欠損であるという場合を、所得税法は純損失と称しております。この純損失が生じた場合におきましては、爾後三年間控除を認めるわけでありますが、前には一年間だけさかのぼつてその純損失を引きまして、その結果すでに縮めた税額が納め過ぎになるという場合には、これを還付するということにいたしております。その手続き等につきましては、所得税法第三十六条の規定に詳細記載してございますので、その条文をごらん願えれば大体おわかりになると思います。
  25. 三宅則義

    三宅(則)委員 純損失を検討いたすわけでありますが、青色申告のときはもちろんでありましようが、青色申告でなくても風水害等には引くわけであります。これに対しまして納税者の方では、なるべく平均を出してやりたいというような構想を持つ人もあろうかと思いますが、これに対しまして当局はどう考えておりますか、承りたいと思います。
  26. 平田敬一郎

    平田政府委員 繰りもどしを認めましたのは相当異例でございますので、これは原則として青色申告書を提出した者に限ることにいたしております。災害等による損は、むしろその年あるいは爾後三年間に差引くということにいたしております。従いましてこの手続は相当異例でございますので、手続といたしましてもいろいろ法律に詳細に規定しておるのであります。その手続に従つてつた場合におきましてのみ、繰りもどし控除を認めることに相なるわけであります。
  27. 三宅則義

    三宅(則)委員 私の一番心配いたしておるのは変動所得、いわゆる水産業とか、原稿の收入とか、作曲とか、著作権等々によりますこの変動所得の平均課税ということにつきましては、私はなるべく妥当性を帯びたいと思いまするが、これについてひとつ主税局長から明細な御説明を承つて、しかる後にもう一度お伺いいたしたいと思います。
  28. 平田敬一郎

    平田政府委員 変動所得の平均課税に関しましては、所得税法の十四条にその詳細を規定しておるのであります。これは何をまず変動所得とするかという問題でありますが、十四条に規定しておりまするように、漁業から生ずる所得、原稿及び著作、作局の報酬、著作権の使用料による所得、それから退職所得、山林所得、讓渡所得、これらの所得を変動所得といたしまして、それの所得についてだけ平均課税を認めるわけであります。しこうしてこれの所得がほかの所得に比べてわずかである場合におきましては、平均しましても負担関係にあまり大差はございませんので、ほかの所得、普通所得に対しまして変動所得が二割五分以上ある場合におきまして、そのある場合に対してだけ平均課税を認めるのであります。しかもその場合においては、納税者自分で申告の際に選択していただかなければならないというふうにいたしております。この選択を怠りますと普通の通り課税をする。従いまして納税者自分は年々原稿料の所得がかわらないという場合にはしいて選択しない。しかしある年は多くあり、ある年は少くあるだろうという場合におきましては、当然平均課税方法を選択していただくということになると思います。そういたしまして、五箇年間に平均課税があるわけであります。従つてある変動所得がありました場合、まずその変動所得金額を五で割りまして、五分の一だけをその年のほかの所得と総合いたしまして税金を算定するわけであります。そうして出て来た税額を五分の一だけ合算して積算しまして、所得金額で割りますと、所得税負担割合が出て来ます。その割合において残りの五分の四の分についても乘じて税額を出しまして、その出て来た税額と本来の税額と合計したものをもつてその年を一応算定する。そのうち五分の四に対しまして一応納めた税額——これは一種の仮定的に納めた税額ということに相なるわけでありまして、その税額の分は、ずつと五箇年間事後変動所得の平均課税を行うことによつて、過不足を調整して行くということに相なるのであります。この計算は具体的には大分むずかしいことがありますから、今計算いたしておりますので、それをごらんいただけばおわかりになると思いますから、それによつて御了承願いたいと思います。
  29. 三宅則義

    三宅(則)委員 それでは大臣も見えましたから、この次の機会に詳しく質問することにいたしまして、私の質問を打切りたいと考えます。
  30. 島村一郎

    島村委員長代理 ただいま本多国務大臣が御出席になりましたので、本多国務大臣に対する質疑を許すことにいたします。北沢直吉君。
  31. 北澤直吉

    ○北澤委員 今度の税制改革によりますと、中央地方を通じまして負担の公平をはかるという点が、大きく出ておるわけでありますが、結局税を納める納税者の立場から申しますと、中央の税も、地方の税も同じにかかるのであります。従つて結局課税の公平を期するということになりますと、国税、地方税両方合せて公平を期するということが必要でありますが、そういう意味におきましてこの委員会において今は国税の方を主として審議しておりますが、地方税とにらみ合せて負担の公平をはかるという点を、われわれは研究しなければならぬと思うのであります。そこで新しい地方税に関しまする法案は大体いつごろ議会に出ることになりますか。
  32. 本多市郎

    ○本多国務大臣 地方税の改正案がたいへん提案が遅れまして、まことに恐縮しておるのでありますが、何分にも国税以上に地方税におきましてはまつたく根本的な改革でございますので、その審議に非常に時間を要しますことと、さらに司令部方面との折衝に時間を要しておる次第でございます。ただいまのところ政府におきましても、大体においては成案を得ておるのでございますが、ただ画期的の大改革であり、税負担に非常な変動もある改革のことでありますから、多少の変動摩擦はやむを得ないところではありますけれども、少しでもこれを円滑に実施できるようにと考えまして、この点につきまして司令部に政府の意のあるところを訴え、折衝をいたしておるのであります。その点と申しますのは、府県税における附加価値税の標準税率、これをいま少し緩和すべきではないかという点、いま一つは市町村民税でありまするが、市町村民税の中の均等割所得について、これをもう少し標準税率を下げるべきではないかという点であります。さらにもう一つは市町村税の中の固定資産税についてですが、この固定資産税は実はほかの税と違いまして、附加価値税にしても、市町村民税にいたしましても、標準税率でありますが、固定資産税に限りまして、二十五年度に限り一定倍率の税率をもつて実施する。この点はシヤウプ博士も勧告しておりますし、その線で進みたいと思つておるのでありますが、この点において土地家屋の倍率が、実情等を勘案いたしました場合に、いま少し緩和すべきではないか。すなわちシヤウプ氏の勧告によりますと、土地家屋の倍率を一千倍にすべきであるとありますのを、それを七、八百倍くらいのところまではこれを緩和しておいた方が、この税の実施にあたつても円滑にこれを遂行することもできるし、また納得せしめることもできるというような点から、徴税の見込額においては確信があるからということで、折衝を今いたしておるわけでございます。こうした点につきまして何回となく折衝を続けましたけれども、了解を得るに至りませんで今日に至つておるのであります。本日あたり最後的な折衝で向うの意見が出ることと存じます。その司令部側の最後的な意見を確めました上で、政府として案を決定して、その上で実はさらに法文としての承認を今度は求めなければならない。そういう日数を勘案いたしますと、本日かりに案としてまとまる前の、司令部との折衝の最後の段階であるといたしましても、やはり七百条に上る法文の英訳のすべての審査を向うでしてもらうことになつておりますから、十日間ぐらいはかかるのではないだろうかと思つております。これはお話通り中央と地方を通じての一貫した税制の改革でありまして、国税の税制のみが改革せられて、このとき地方の税制が改正できないということになりますと、まことにこれは不均衡なものになるおそれもありますし、また国税において減税されるこの機会に地方税を改正して、そのために一部税が高くなる納税者もありますけれども、その人も国税の減少されたものとこれを勘案いたしますと、それほどの増税にはならないという、実に改正するならばこの機会であると思いますので、ぜひこの機会に改正をいたさなければならぬと思つております。政府といたしましてはシヤウプ氏の勧告を全面的に受入れることになつておりますので、最後的な——本日もしくは明日、私は本日も向うからの通知を待機している次第でございますが、その結果によつてそれを最後として、ただいまのような順序に運びたいと考えております。
  33. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまお話のように今回の税制改革の基本方針としまして、地方自治を強化助長するために地方財政を強化する。そういう目的をもつて地方税の根本的改革を今回実施するという方針で、政府は行つておられるのでありますが、申すまでもなく日本におきまする民主政治というものを徹底するためには、この民主政治の基本である地方自治の達成ということが最も大事であります。従いまして地方自治体の財政を強化するということが、地方自治の達成には最も有効な方法であると思うのであります。そういう意味におきまして、今回の税制改革において、この地方財政の強化をはかるという点に着目されましたことにつきましては、まことに時宜を得たものと思うのでありますけれども、私の心配いたしますることは、あまり早急に財政の面だけにおいて地方分権、地方に権限をまかせ過ぎて、実際上それを実施する場合においていろいろな不便が生じはしないか、こういう点を私は心配するわけであります。御承知のように日本の地方制度は、明治時代に大体ドイツの例をならいまして、日本に地方制度をしいたのであります。従いまして米英と違つて日本の地方政治というものは、いわゆる中央集権の色彩が非常に濃厚である。従つて権限をなるべく中央政府に取つておいて、地方に対する権限の委讓というものが非常に少かつた。そういうわけで今日に至りましても、この地方自治というものがなかなかうまく行かない。それを回シヤウプさんが来られまして、まず財政の面から地方の自治を達成し、さらに別の方面にもこの地方自治を及ぼすという考えであると思うのでありますけれども、とにかく明治以来の日本の伝統から申しまして中央集権が非常に強かつた。何をするにも東京まで持つて来なければ仕事がまとまらぬ。この間も私は横須賀のアメリカの海軍司令官といろいろ話したのでありますけれども、実際日本という国は中央集権だ。つまらぬことでも結局東京に持つて来なければ仕事がまとまらない。こういうことでは仕事の能率に関係するんだ。この点からまず日本は直さなければならぬということを言つてつたのでありますが、まことにその通りであります。そういうわけでありますが、これまでの日本の伝統から申しまして急に地方分権と申しますか、地方にあまりに権限を与えましても、地方の自治体においてこれを受入れるだけの能力がないというふうなことを、私は心配するわけであります。特に今回地方税におきましては世界に例のない附加価値税とかあるいはまた固定資産税とか、これはずいぶん高い、新しい税を設けるわけでありますが、こういう附加価値税とかあるいは固定資産税を実施する場合におきまして、地方自治体においてはたしてこれを十分に実施する能力があるかどうか。あるいは能力があるといたしましても、そのために相当人的その他の面において、地方自治体の徴税機構の整備をはかるというようなことまで必要と思うのであります。でありますので、私はもちろんこの地方自治の達成のために財政の面において地方分権はいいのでありますが、やはり財政以外の面においてもなるべく地方分権の思想を持つてつて、そうして地方自治の達成をはかる。財政の面その他の面と並行して地方自治の強化をはかることが必要であると思うのであります。地方の実際を見ますと、町村においてはなかなか地方自治がうまくまとめられていない。相かわらずボスがおりまして、このボスの力によつて市町村の手で行われておる、こういう実情でありますので、もし今度附加価値税とかあるいは固定資産税を実施しまして、しかも相当税率が高い、こういう場合におきまして、結局市町村とそれからそこの納税者との間にボスが介入いたしまして、地方における税制の実際の執行にあたりましてはいろいろの支障が起こりはせぬか。今日の地方の実情から申しまして、相当高い税率の固定資産税とかあるいは附加価値税を課する場合におきましては、私はいろいろの支障が起りはせぬかということを実は心配するわけであります。従来も市町村の戸数割等におきましては、あるいは市町村会議員とかいうような者がいろいろやりまして、どうも必ずしも公平に、戸数割負担は同じでないというようなことを聞くのでありますが、私は今日の日本の地方の実情を基礎として考えますと、あまりにこの際急激に財政面だけにおいて地方分権を実施して、そうして大幅に地方の市町村等に権限を委讓するということにつきましては、相当慎重にしなければならぬと思うのでありますが、この点に対する本多国務大臣の御意見を承りたいと思います。
  34. 本多市郎

    ○本多国務大臣 今回の地方税の改革は、行政事務におきましては現状のまま財源を与えるということになつておりますので、これによつて特に地方に事務が委讓されるということにはなつておらないのでございます。但し今日まで政府から直接交付しておりました補助金三百五十種類くらいに上ると、シヤウプ氏の調査によりますと出ておりますが、この補助金の大部分を平衡交付金に統合いたしまして、三十種類ばかり例外的なものは残つておるかと思いますけれども、大体においてはこれに統合されたのでございます。こうしたことになりました関係から、今日まで政府の補助金政策でやつていた行政事務が、国家の要請に沿うように一本の平衡交付金で交付を受けた財政の中で、自治体がはたして遂行するかいなかという点におきましては監督を要する点だろうと存じます。この点につきましては平衡交付金法の中に、それぞれ政府の要請する程度の施設、運営をしなかつた場合にはこれを監督是正し、また一回交付した平衡交付金も返還を命ずることができるというような規定も残つております。この点が大きな相違でありますけれども、これは一万二千にも上る市町村という自治体が、三百五十種類にも上る補助金につながつていたこの複雑な状態は、どうしてもこうした方法で自治体自体の仕事というふうに切りかえて行くことはやむを得ないことだろうと、シヤウプ氏の勧告に共鳴をいたしておる次第でございます。こうした点におきましては、そこに政府が直接一つ一つの補助金のわくについて干渉しないという点にかかつて来ますけれども、それぞれ主管大臣が注意をいたしまして、ただい申まし上げました通り妥当でないものについては是正する権限を持つて行く。それでやつて行くつもりでございます。さらに今回の地方税は、附加価値税のように新しい課税標準を設けることになつておりますために、たいへんむずかしい複雑な税制であるかのごとく感ぜられるのでありますけれども、これは国の実質的課税所得の調査などと比較いたしますと、附加価値の外形をとらえるだけでありますから、それぞれ税務署等に提出せられました決算書の中から拾い上げますと、きわめて簡単に出て来るのでございます。熟練いたしましたならば、それほどむずかしい税法ではない。最も簡単にして営運できる税法であると思つております。ことに固定資産税のごときは、その市町村内の固定資産でありまして、それぞれ台帳に上つておるものを集計して行て。それ以外の償却固定資産にいたしましても、考課状等にみな出て来るのを、いずれも税務署から通知をしてもらいまして、そしてそれに基いて課して行くのでありますから、これも一年で完全なる台帳ができないにしても、とにかく一年、二年と固まるばかりで、くずれることのない税法でありまして、まことに簡単であると思つております。また住民税にしましても均等割が明白でありますし、所得割は国の所得税の根拠になりました課税所得、あるいは総所得、あるいは所得税額等を基準としてやることになつておりますから、これも台帳さえ完備してなれて来ますと、きわめて簡単であると思つております。その他もちろんいろいろな複雑な規則は、いずれの税法にもつきものでありますが、骨組みとしては、なれて来ればきわめて簡単だと考えておるのでございます。しかし本年は税法の成立が相当遅れる見込みでありますし、初めてのことでもございますから、地方でこれを完全にやつてもらうにつきましては、心配はいたしておりますけれども、それぞれシヤウプ勧告の趣旨を体して、各市町村でもこの研究を進めてくれておりますので、また非常に地方財政が強化されるというところに、市町村長も熱意を持つてこれに努力してくれておりますので、これがきまりましたならば、大なる支障はなしにやれるものであると考えておるのでございます。この地方の徴税のために、おそらく府県において二千人くらい、市町村においては、一万五、六千人くらいの人は、徴税職員として増加されるのではないかという見込みであります。そうしたこともそれぞれいろいろ準備をいたしておりますので、これはぜひともことし実行しなければならないものであるという覚悟のもとに準備を進めておりますから、やれるものとただいまのところ考えております。  なお中央の事務を地方に委讓することについては、慎重にやるべきではないかというお話につきましては、まことにごもつともでありまして、この問題につきましては、実は地方行政調査委員会議というものができまして、そこでいかなる事務は国でやるべきか、いかなる事務は府県でやるべきであるか、さらに残りはいかなるものを市町村にやらすべきかという三段階に、中央、地方の行政事務の再配分という見地から、ただいま研究をいたしておるのであります。この点につきましては、政府といたしましても慎重にやりたいと思つております。
  35. 北澤直吉

    ○北澤委員 大臣のお話によりますと、地方住民税につきましても、あるいは附加価値税につきましても、固定資産税につきましても、シヤウプ氏の勧告案よりもなるべく税率を下げたいということで、目下司令部と折衝中であるというお話でありますが、この税率が低ければ、新しい税を実施しますにつきましても、そう大した支障はないと思いますが、もし非常に税が高くて、納税者負担が非常に重いということになりますと、なかなかそこに税の実施の面において、いろいろな支障ができはせぬかと思うのであります。この間もあるところの市長さんの話では、この附加価値税あるいは固定資産税というもののいかんによつては、市町村長の命取りになりはせぬかというふうに心配しておる向きもありますので、いろいろ伺つたわけあります。お話のようにもし税率の方がある程度緩和されましたならば、この新税の実施につきましても、円滑に行くのではないかというふうに私も考えております。  次にお伺いしたいのは、こういうふうに地方財政を強化するということは、結局地方財政というものをなるべく中央から独立させる。これまでのようにあまりに地方財政が中央に依存していると、どうしてもこれは中央集権になる。なるべく地方財政というものは中央に依存しないようにしようというのが、今度の税政改革の目的ではないかと思うのであります。ところが現在の日本の地方制度を見ておりますと、あるいは府県にしましても、あるいは市町村にしましても、非常に小さいところがある。そのままではどうしても財政的には独立できない。地方税を増徴しましても、地方財政の独立のできないような行政区画があると私は思うのであります。だからある程度地方の府県なり市町村なりの区画を変更せられ、できるだけ早く地方財政の独立のできるように、地方の区画をかえる必要があると思うのであります。この点につきまして大臣のお考えを伺いたいと思います。
  36. 本多市郎

    ○本多国務大臣 税率の点にお触れになりましたから、その点についていま一点お話申し上げたいと思いますが、案は標準税率を下げればいいというふうに、ちよつと一般に言われておるのでありますけれども、これは実は平衡交付金算定のための標準税率でありまして、この標準税率を下げることになると、財政需要額に対する税の收入額がたいへん差が大きくなつて参ります。その大きくなつただけのものは平衡交付金で補填してやるという建前になつておりますが、平衡交付金は増額にならない。標準税率が下るということになると、政府としても追加予算でも出して平衡交付金を増額してもらわなければ、処理ができないということになつて来るわけでありまして、この平衡交付金算定のための標準税率でありまして、この標準税率は、市町村の実情によつて制限税率はありますけれども、それを軽減するのはまつたく市町村の自由であります。一応標準税率で、附加価値税にいたしましても、附加価値の百分の四と、こうシヤウプ氏は勧告しておりますが、これは標準税率でありまして、それ以下に下げるのは全然無制限に市町村の自由であります。一応の平衡交付金を出す政府といたしましては、一般標準をもつてとればこれだけの税は上るわけである、それを基準に不足額を平衡交付金から交付する、こういうことになつておるのでありまして、その点を特に一点つけ加えておきたいと存じます。但しお話通り固定資産税につきましては、本年一年限り一定倍率、一定税率でとれということになつております。その他の税は、ただいま申し上げました標準税率でございます。  さらに、地方財政的な自治権を拡大する。それと同時に、この地方一つの自治体として財政的にも適正な規模になつて、ほんとうに自治が強化されるように、その区画の配合等を考慮すべきではないかという御意見でありまして、そういう例はたくさんあるのでございます。一つの新制中学を持つのに、四箇村、五箇村も集まらなければ学校を建てることができないという事例すらございます。そうしたところは統合して、その自治制というものを強化して行くということは望ましいことであると考えております。但しやはりこの問題につきましては、その配合等には最も慎重を期さなければなりませんので、この点につきましてもシヤウプ氏の勧告に基きまして地方行政調査委員会議であわせて御研究を願つておるのでございまして、その結論を得た上で、政府としても方針を決定いたしたいと考えているのでございまして、具体的な問題には、今日政府として方針がきまつておりませんので、触れかねる点は御了承願いたいと思います。
  37. 北澤直吉

    ○北澤委員 今度の税制改革によりますと、国税の方は相当に減税になつている。ところが地方税の方は相当程度引上げになる、こういうわけでありますが、申すまでもなく国税の徴税機関であるところの税務署の徴税能力と、地方税の徴税機関である市町村の徴税機構との間は、どうもやはり税務署の方が専門でありますから相当まさつておる。そこで専門の税務署の扱う方の税は安くして、ふなれな市町村の徴税機構の方の税は上げるということになりますと、そこにいろいろな支障も起りはせぬか、こういうふうに思つておるのであります。特に日本の地方の現状から申しますと、地方税を急激に上げると、先ほど申し上げましたようにいろいろな支障が起りはせぬか。国税の減税の程度をもう少し少くして、地方税の引上げをもう少し減らす。もう少し中央が徴税するのを多くして、地方負担を下げた方がいいのじやないか。そうしてだんだん地方の能力が増すにつれまして、シヤウプ勧告の線に沿うて地方財政の自由を与える。今すぐやらずにやつたらどうか。たとえて申しますと、今度の税制改革の線よりもう少し所得税を上げて、それだけ平衡交付金をふやして、地方の固定資産税なりあるいは附加価値税をもつと下げたらどうか、こういうふうな考えを持つのでありますが、これに対して大臣のお考えを承りたいと思います。
  38. 本多市郎

    ○本多国務大臣 シヤウプ氏の勧告によりますと、現状のままの行政事務を府県市町村が処理して行くにつきまして、一千億の財源不足である。これを与えてやらなければならぬ。これは税において、あるいは平衡交付金において、災害の復旧費において、いろいろな面でその起債等も含んでの勧告でありますが、今日までの地方団体は税としてその財源を得ようとしても、税法のわくに縛られて税をとることができなかつた。そのためにやむを得ず寄付等の手段によつて法律によらないで金を集めて糊塗して来たというような実情もありまして、これは今後自治制というものを発達せしめる上におきましては、シヤウプの勧告の線はまつたく妥当な見方であると考えておるのでございます。今回の税法地方にわくは与えるのでありますけれども、そのわくの一ぱいをとるか、それともそれよりも下をとるかということは、法律上強制はしないのでありまして、今までわくがないために寄付等で糊塗したものを、合法的にしかも均衡のとれた制度のもとに、金をそれ以上集めることができるということになりますから、これは一歩改善であると考えております。さらに府県市町村の徴税能力という点から考えて、漸進的に進むべきではないかというお話でありますが、これはごもつともであると思うのでございます。今回の税法の実施にあたつては、さいぜんも申し上げました通り、ほとんど大部分が国税のために税務署の調査した資料がもととなつて、課税される建前になつておりますので、これは緊密なる連絡のもとに行つて行くのであります。しかし大体方向といたしましては、私どもはさらに中央において減税し、地方において徴税機構の強化あるいは地方自治制の発達の度合いに応じて、さらにこれは地方重点になつて行くものではないかと考えております。今回の程度のことは処理できると考えておりますので、ただいまお話のありましただんだんにというその第一段階、かように考えておる次第であります。
  39. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまの大臣のお話によりまして大体了承いたしました。もう一点伺いたいのは、先ほど申しましたように、税の負担の公平をはかる場合におきましては、国税と地方税と両方合せて、その負担の公平をはかることが必要だと思うのであります。そこでお尋ねしたいのは、中央におきましては総合所得税をかける、これに対しましていわゆる所得税の補完税として附加価値税あるいは固定資産税というものがあるわけであります。この附加価値税というのは、もとの営業税と取引高税を合せたようなもので、一つの収益税である。それから固定資産税も一つの財産の収益税である。こう考える場合におきまして、これは営業所得には少し重過ぎはせぬか。勤労所得につきましては、御承知のように一五%の勤労控除がある。これによつて事業所得勤労所得の間のバランスをとつておる。ところが事業所得については、さらに地方において附加価値税と固定資産税というものがかかる。農業所得につきましては、大体固定資産税だけだろうと思うのでありますが、特に営業所得につきましては、土地家屋のみならず、今度は減価償却のできる事業用の資産、たとえば工場、機械というものに附加価値税、固定資産税がかかることになりますと、私の見るところでは、営業所得については、農業所得あるいは勤労所得に比べて少しよけいかかりはせぬか。戦前に日本に営業税のあつた時代には、営業用の土地に対する地租は、二重課税にならぬように、営業税から差引くというようなことがあつたのでありますが、今度の案によりますと、常業所得につきましては、もちろん附加価値税がかかり、営業用資産、土地家屋、機械、工場について固定資産税がかかることになりますと、常業所得に相当重くかかりはせぬか。特に営業の中で、たとえば鉄道とかあるいは船会社あるいは倉庫会社、そういうふうに会社の資産の中で大部分が固定資産に占められておる——私の聞くところによりますと、たとえば倉庫会社などは資産のうちの八〇%が固定資産である。あるいは鉄道会社などはやはり七〇%ないし八〇%が固定資産である。あるいは船会社なども固定資産の占める部分が相当大きい。こういう鉄道業とか倉庫業とかあるいは海運業のようなものにつきましては、相当高い固定資産税がかかつて来る。今度の案によりますと、事業用の資産に対する固定資産税は、全体の固定資産税の中で大分三分の一を占めておる、こういうふうに見ておる人もあるのでありますが、そうしますと、事業用の固定資産をたくさん持つておるところの営業者、会社の負担というものは、ほかに比べて少し重過ぎはせぬかという点を考えるのでありますが、この点につきまして、大臣と主税局長のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  40. 本多市郎

    ○本多国務大臣 まつたく中央地方を通じての税制の根本的改革でありまして、個々の納税者にとつて負担の変動があるのでございますけれども、この機会にこれを一貫して行いますと、総合的にそこに負担計算をすることができるのでありまして、中央の国税の面におきまして廃止になる取引高税あるいは軽減されます法人税、その他の軽減される面と、地方税として増税される面とを総合的に計算いたしてみますと、そうはなはだしく増加する納税者はないように考えられております。もちろん納税者負担に変更を来して、不均衡を是正しようという税制改革でありますから、相当の変更のあることはやむを得ないのでありますが、ただいまのところではそう極端なものは出て来ないように考えております。ただ旧地方税と今度の地方税と、地方税のみをとりますと、あるいは十倍あるいはそれ以上のものが出て来るかもしれませんけれども、中央の減税と総合いたしますと、それほど極端に出るものはないように考えております。  この附加価値税は従来の事業税に見合うものでありますが、従来の事業税でありますと、市町村の中に相当規模の企業をやつておりましても、所得がないと事業税はとれないということになつております。この点について附加価値税はそこで創造された附加価値に対して、実質的な純益の有無にかかわらず課税するという点に相違があるのでありますけれども、この点につきましてはお話通り、昔の売上高課税をやりました外形課税標準の営業税、これに似た面があります。しかし昔の営業税は総売上金額に何回もかけて行くのでありますが、附加価値税はその場所において、その事業において創造された附加価値をのみを対象といたしますから、その点においてどちらかと言いますと所得に近いもの、少し異質を含むものというものになるのであります。ですから実質と外形との中間的なものということになりますが、自治体の財政の基礎を強化するために、その自治体内において附加された価値をとらえて課税標準とするということは、まことに妥当なものではないかと考えております。  固定資産税等につきましても、ただいま御指摘のありましたような、設備に非常に大規模を要するようなものは、それぞれ固定資産税というものがやはり相当な金額になるのでありますが、そうした点につきましても中央と総合して計算をしてみますと、今回の法人税等の軽減、取引高税、あるいはまた法人につきましては今日までかかつておりました住民税というものも、均等割だけになりますと、地方税の事業税というものが、これは個人の方もなくなるのでありますが、こうしたものがなくなります。それを総合してみますとそう極端な面は出て来ないものと考えております。なおひとつ十分調査いたしたいと思います。
  41. 平田敬一郎

    平田政府委員 直接税の負担は、なかんずく中央地方を通じて考えなければならぬことは、御承知通りであろうと思います。ただ附加価値税につきましては、その性質をいかようなものと見るかということは、これはむしろ今後の理論上の研究にまかせた方がいいのではないかと私どもつておりますが、考え方といたしましては従来の取引高税と申しますか、広い意味の売上げ課税の一種という性質を有するものと見で、むしろこれは原則として相手方に転嫁される可能性の多い税だと考えた方がいいか、それとも納税者たる事業者の負担に帰するものと考えた方がいいか等、いろいろ問題があるようでございます。しかしながら事柄の性質は純益があるかないかを問わないで、一応一定の事業をやりまして、その事業から一定の附加価値が生れた場合におきましては、課税をするという性質のものでございますから、私どもとしましては相当商売をやる際に、附加価値税が幾らかかるかということは、当然採算に入れて営業をやるということに相なるわけでありまして、どちらかと申しますと転嫁する可能性が、相当多いのではないかというふうに考えておる次第であります。従いまして今お話のように大きな営業者等の場合におきまして、従来純益が非常に少かつたところは、附加価値税のために相当負担がふえるという関係もありますが、そういう事業の場合におきましては、一面におきましては従来の取引高税がどうであつたか、あるいは運輸業等の場合におきましては通行税を廃止いたしましたが、廃止いたしました結果運賃をどうするかとか、そのような問題を一体として考えて、はたして妥当であるかどうかということを御判断願つたらどうか、かやうに考えております。それから固定資産税は、これは御質疑の通り一種の物的財産税と申すべきものでありまして、これは年々課税するものでございますから、もちろん大体におきましては収益力を基準にしまして、それに対して課税するということが言い得るかと思います。従いましてこの税率があまり高過ぎますと実質的に財産税になりまして、年々の課税としては不適当であるということになりますので、今提案されておりますように百分の一・七五あるいはせいぜい最高三%ということになつております。その程度になりますれば、大体年々の収益力に対する課税として考えるものとしまして、妥当ではなかろうかというふうに考えております。従いましてこれは当然直接税として考えなければならぬと思います。ただここにおきまして地代家賃につきましても現在御承知通り非常に厳重な統制をいたしております。従いまして今のままでありますと地代家賃が実勢によつてきまらないで、一種の統制によつてきまつておる。従つて固定財産税を増徴しますと、勢い地代家賃として、固定財産税をかえて相手方に転嫁するというような関係にもなろうかと思いますが、その場合におきましては地代家賃は本来転嫁すべきであつたのでありますが、増税の機会に転嫁させたのだと、こういうべきですかどうですか。その辺まだ理論上問題があろうと思いますが、しかしこの方は所有者の負担に属するということになるのじやないかと思います。そのような点を考えまして、中央地方によりまして負担関係を私どもいろいろ研究しておりますが、営業者につきましていろいろ計算してみますと、現在よりも普通一般の個人営業者の場合ですが、改正後において重くなるということはないようでございます。一応私ども個人の常業所得は二十万円ぐらいの平均ですが、二十万円の場合におきましては何しろ現在の事業税が相当高いものになつております。従いまして全体としまして計算いたしてみましても、所得税の減税、事業税の廃止と附加価値税の創設、それから取引高税の廃止、こういつたようなものをあわせ考えますと、相当下るように見受けられるのでございます。一応計算してやつたところによりますと、現行で所得税、地租、家屋税、住民税、この五つの税で約七万八千円程度、これが改正案によりますと一応五万百円程度に下がります。ただ従来取引高税が同じような事業の場合におきましては、そのほかに一万三千円ばかり納めていたのではなかろうか。今回新たに附加価値税が一万八百円程度負担することになりました。従つて附加価値税の一万八百円を入れましても六万九百円程度になるというようなわけでありまして、個人の一般営業者の場合において、従来の税に比べまして相当下るのではなかろうか。これに反しまして法人の場合は今計算がございませんが、どちらかと申しますと純益の割合の附加価値が非常にふえた面が多いのであります。と申しますのは今まだ法人は投下資本に対比しますと非常に少い利益しか上げていない。従つて利益率が新しく附加価値税になりますと、人件費、資材、金利等も入つて来ますから相当課税標準がふえる。その関係で従来の事業税に比べますと、法人、ことに大企業の場合は、附加価値税が相当ふえて来る。これに反しまして今申しましたように個人の企業の場合は、負担が従来の事業税に比べまして相当大幅に下るものだと思つております。そういう関係でございますので、法人の場合におきましては中には相当ふえる法人もあろうかと思います。従つて先ほど本多国務大臣のお話のように、税率としましてはでき得る限り低い合理的な税率をきめるのが妥当ではないかと、かように考えるのであります。
  42. 北澤直吉

    ○北澤委員 附加価値税の性質につきましては、いろいろ理論的に議論があると思うのでありますが、ただいま主税局長お話によりますと、要するに転嫁しよう、こういうお話でありますが、たとえば倉庫の場合あるいは船会社の場合、倉庫料というのはマル公できまつておる。船賃、保険料もきまつておる。そうなるとなかなか転嫁できない。それから日本の大きな貿易政策、輸出貿易を振興しようという点から申しますと、なるべく日本の輸出品のコストを下げるということが必要である。従つて輸出品の製造原価のほかに倉庫の保管料、あるいは日本の船で運ばせて船賃を安くすることが、日本が国際貿易において競争するときに非常にいいわけである。従つて転嫁できるとしても、私はこういうような倉庫料とか船賃とかいうものは上げない方がいい。上げると国際的には日本は競争に負ける。結局倉庫会社なり船会社がこれを負担するということになるとこれはやはり直接税になつて来るのではないかと思いますが、そういう点からいたしますと、ただいまお話通り個人企業の場合には相当下るわけでありますが、法人の営業者、船会社、倉庫会社、鉄道会社、こういうようなものにつきましては、どうもこれは相当負担がふえるのじやないかと思うのであります。勤労所得については、いろいろもう少し勤労控除をふやした方がいいのじやないかという議論もありますが、勤労控除については、国税の所得税については一割五分の控除がある。地方住民税の場合にはやはり所得割について、所得税に準じて勤労控除があると私は思うのでありますが、そうすると勤労控除の場合には国税、地方税を含めて二重に控除を受ける。ほかの事業税の場合にはない。こういたしますと、むしろ勤労所得の方が非常に待遇がいいのじやないか、こういうふうに考えますが、その点に対しまして主税局長はどうお考えになつておりますか。
  43. 平田敬一郎

    平田政府委員 附加価値税と公定価格の関係でございますが、これはまだ最終的には決定いたしておりません。私どもの見解といたしましては、やはり企業が相当原価計算のフアクターにおきまして、合理的な経営をやりまして、原単位がすでに合理化されて計算されている。それから操業能率等も相当よくなつている。稼動率の低いのは計算していない。こういう計算の場合におきましては、また当然公定価格の際にどの程度附加価値税がかかるかというようなことはやはり入れて公定価格を算定すべきじやないかという、私どもとしましては見解を持つております。この辺はしかし公定価格全体をどうするかということは、他面におきまして、物価政策全体をどうするかということと関連して参りますので、政府といたしましては全体を総合いたしまして、やはり妥当な解決をはかりたいと思います。極力倉庫料その他につきましてもなるべく低くしまして、国際競争に耐え得るようにすることは当然のことだと考えますので、それはそういうことといたしましても、しかしいやしくも公定価格があります以上、公定価格はやはり税制等に対応して、合理的にきめて行くべきものではなかろうか、かように考えております。
  44. 北澤直吉

    ○北澤委員 大臣に対する質疑はこれで終ります。
  45. 小山長規

    小山委員 大臣がちようどお見えになりましたから、地方税のことでかねがね承つておきたいと思つておりましたことを、三点ばかり伺いたいと思います。  一つは今度地方税が改正になりまして、それの補完として地方平衡交付金というものが交付されるのでございますが、御承知のように付加価値税を非常によけい取れる府県においては、平衡交付金を出さなくてもいい県が出て来るのではないか。そういうことになりますれば、従来の平衡交付金の各府県に対する配分の率というものは、貧弱な府県に対しては相当大幅に増加されるように考えるのですが、その点はどういうふうになつておりましようか。東京都とかあるいは神奈川とか、大阪とかいうような大都市を持つておるところの府県は、附加価値税が相当入つて来まして、従来の予算以上の税收入があるであろうが、その余つたものは全部その他の貧弱な府県に、大幅に増加されるおつもりでありますか。まずそれについてお伺いいたします。
  46. 本多市郎

    ○本多国務大臣 結論といたしまして、お話通りになると思います。それは標準財政需要額と標準収入額との差額を出しまして、そうしてその標準財政需要額に満たないところだけに、平衡交付金を出すのでありますが、今日予算に載つておりまする金額を、その町村の満たない額に按分することになりますから、財政需要額以上に収入の多い町村が多ければ、それだけ不足する町村に対する分は、按分によつて増額されることになると思います。
  47. 小山長規

    小山委員 ちよつと今のところあれなんですか、全然地方平衡交付金が出ない、つまりゼロの府県が相当出る見込みではないのでありますか。
  48. 本多市郎

    ○本多国務大臣 実は資料を持つておりませんので、確かなところはわかりませんが、相当出るつもりでおります。これは標準税率計算いたしまして、相当出るつもりでおります。
  49. 小山長規

    小山委員 それと関連しまして、地方税の所得につきまして、相当なれない仕事を府県がやることになりますので、市町村にも税務員を置かなければならないということになり、また地方そのものが税務官吏を雇わなければならぬことになるのでしようが、この府県あるいは市町村の税務官吏の増員、そうしてそれはどの程度地方財政上の予算の増額になるかということは、計算されておりますか。
  50. 本多市郎

    ○本多国務大臣 約六十億を要するだろうと思つております。
  51. 小山長規

    小山委員 これで最後でありますが、附加価値税の中で、少し変ではないかと思うのは——これは主税局長かもしれませんが、一貫作業をしておるところの工業会社は、一貫作業をしないものに比べて、計算上税負担が相当重くなりはしないか。その点はどういうふうに考えておりますか。
  52. 平田敬一郎

    平田政府委員 その点かまさにシヤウプ博士が、附加価値税は経済的に中立だと言つておられる点でありますが、取引高税でございますと、一貫作業をやつている場合と、一貫作業ではなくしていろいろ下請に出している場合と、非常にその税の大衆消費者に転嫁された場合における負担が違つて来る。その結果非常に取引高税は、理論的には企業の縦断的な傾向を生ずるというような非難があるわけでございます。附加価値税はそういうことがなくなつて、一貫作業をやりますと、そういう場合におきましては、その企業で生れた附加価値が非常に多くなる。非常に初めからしまいまで多くの仕事をやつておる。従いまして労働者の支払い賃金の総額も多くなる。もちろん純益もそれだけ多くなるということであります。それに反しまして下請等に出しますと、下請工賃を差引きますから、それだけ附加価値が少なくなる。それだけ事業に対しては少ない税がかかつて行く。しかし下請になりますと、下請段階で附加価値税がそれぞれかかつて来ますから、同一の商品に対する一貫作業の場合とほぼ同じになる。結局附加価値税としてかかるところの負担が、いずれの事業形態の場合であろうと、負担としては同じでございます。それがむしろ税としては、かりに転嫁されると考えた場合においてもいいのだ。かりに事業者の負担だと考えた場合におきましても、一貫作業として相当厖大な事業の分量をやる場合と、下請に出す場合と違つた附加価値になるのがあたりまえだ。むしろその方が収益税的なものとしても当然である、こういう考え方でありまして、その点がまさに取引高税よりも附加価値税の方がいい。逆にまた応益課税としての地方の収益税として考えましても、取引高税よりもむしろ附加価値税の方がいいだろうというような点に、一つの問題があるかと思います。
  53. 小山長規

    小山委員 そのお考えは税を取るお立場、あるいは予算として税収を幾ら取るかという立場から言うと、なるほどその通りなのであります。附加価値税は転嫁できない場合が相当多いであろう。ことに貿易の場合にはその附加価値税相当額のものがちよつと加わつただけでも、輸出貿易がとまつて来はしないかというような限界点に来ている産業が、相当ありはしないかということを聞きました場合に、一貫作業をしているということはそれだけコストを安くしておるわけでありますが、その一貫作業をしてコストのぎりそれまで来ているにもかかわらず、他の一貫作業をしない産業との間の税の負担の不公平ということが、この附加価値税の取り方の中に現われて来はしないかということが心配なのであります。
  54. 平田敬一郎

    平田政府委員 一貫作業をしておる場合におきましては、私の知つておる限りにおいては、いろいろ請負等に出しておる場合よりもコストは低くし得るのが普通じやなかろうか。そう考えますとむしろ御議論の点はいかがかと思います。一貫作業をしてない場合においてはそれぞれの段階におきまして附加価値税がかかるのであります。一貫作業をしておる場合には、その企業一本にかかつて来るということになるのであります。しかも今お話のような附加価値税の場合は、概して相当合理化をはかつておるような企業が多いと思いますから、そういう場合に附加価値税としてかかるということは、取引高税の場合に比べましてかえつて附加価値税の方が合理的ではないかと思います。
  55. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう少し研究しましてごの問題を……
  56. 島村一郎

    島村委員長代理 午前中はこの程度にして、昼食のため休憩いたします。午後は本会議との関係もございますが、こちらの法案関係上、二時から開会することといたしますから、さよう御承知を願います。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後三時十五分開議
  57. 川野芳滿

    川野委員長 午前に引続き会議開きます。  税法六案に対して質疑を続行いたします。北沢直吉君。
  58. 北澤直吉

    ○北澤委員 大臣かおいでになりませんので、大きな問題は留保いたしまして、その他の問題につきまして主税局長質問いたします。  第一点は、今度の税制改正法案によりますと、異議の処理方法改正いたしまして、新たに国税庁及び国税局に、専門の協議団を設置するということになつておるのでありますが、これは一体全国のどういう場所に、また何人くらいの人間を置かれるおつもりでありますか、お伺いをいたしたいと思います。
  59. 平田敬一郎

    平田政府委員 協議団の組織につきましては、大蔵省設置法の改正案を後日提案いたしまして、詳しく御協議を願うつもりであります。現在のところといたしましては、さしあたりはあまりたくさん置かないで、状況によりまして漸次ふやすという方法がいいのじやないかというふうに考えております。協議団は国税庁に設置する協議団と、国税局に設置する協議団と二つ置くわけでありますが、国税局に置く協議団は全国に相当多数置く見込みであります。少くとも一県に一箇所の派出所を設けておく。しかし大都市におきましては、とうていそれでは間に合いませんので、相当多数置く。今の一つの案では、全国に大体七十箇所置くようにしたらどうかというのが一案でありますが、なおそれではたして十分間に合うかどうか、目下研究中であるのでございます。
  60. 北澤直吉

    ○北澤委員 シヤウプ博士の勧告によりますと、租税に関する問題を最終的に決定するために、特別の裁判所を設けるというふうな案があつたのであります。今度の税制改革の案におきましては、そういうものはないようでありますが、政府としてはシヤウプ勧告の案を採用しない、こういう意見でありますか。
  61. 平田敬一郎

    平田政府委員 租税に関する裁判所につきましては、現在大体地方裁判所の民事部がこれを取扱つております。従来古くからのケースにつきましては、暫定的に東京の高等裁判所が取扱うことになつておりますが、最近における新しいケースを集めて、それぞれ各地方裁判所の民事裁判で取扱うことになつております。多くのところを聞いてみますと、件数の多いところにおきましては、民事部で適当な部を設けまして、そこで審査し裁判をつけるような例を聞いております。この際すぐ租税部といつたようなものを民事部から独立せしめて設けまして、特別な組織で行うかどうかにつきましては、法務庁当局においても研究いたしておりますし、量高裁判所におきましても、さような点について御検討願つておるようでありますが、さしあたりとしてはまずそこまでの必要はないじやあるまいか。将来状況の推移を見まして、さような点につきましても、適当な解決を下すようにしたらどうであろうかということに相なつておる次第であります。
  62. 北澤直吉

    ○北澤委員 次にお尋ねいたしたいのは、進駐軍に接収されておる倉庫とかいろいろな設備があるのでありますが、今度の税制改革によりまして、たとえば資産の再評価をする、あるいは固定資産税をかけるというような場合に、こういう接収財産の評価、あるいは固定資産税をかける場合の課税標準と言いますか、これをきめる場合一体どういうふうにしますか。
  63. 平田敬一郎

    平田政府委員 固定資産税につきましては、前回も申し上げましたように、この税金は当然それぞれ地代、家賃の中から払うわけでありますが、地代、家賃につきまして一定の公定価格なり、あるいは接収家屋につきましては大体公定価格に基きまして、公定価格に準じた料金を支払うことになつておりますが、かような料金につきましては、今度の固定資産税の改正に伴いまして、負担のふえる部分は当然増額せしむべきものだと考えております。たしか本年度の予算におきましても、その点はある程度増額して計上しておると考えておるのであります。地代、家賃の統制令等も少くとも固定資産税の分は当然改訂になることになつております。この点に関する限りは、関係官庁の意見もすでに一致いたしております。なお再評価の分に伴いまして、どの程度地代、家賃を引上げるかという問題につきましては、目下物価庁方面におきましていろいろ検討いたしております。これは私どもといたしましては、それぞれ料金算定の基礎になつておりまする各種の原価の内容につきまして、あくまでも合理化をはかる前提で計算をいたしまして、なおかつ現在の公定価格、公定料金とでまかなえない場合におきましては——時期は相当慎重に考慮する必要があるかもしれませんが、またその程度につきましても一ぺんに改訂するというわけに参らぬ場合も出て来ると思いますが、一般物価に及ぼす影響等を考慮いたしまして、極力再評価後における減価償却が可能なような公定価格なり料金にするのが、理論的じやないかと考えております。ただ最後の点につきましては、目下なお研究中でありまして、さような方向で今研究しているということを申し上げておく次第でございます。
  64. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に相続税の問題についてお伺いしたいのですが、例の政党に対する献金については、一体税額はどうかということをお伺いいたしたいのであります。
  65. 平田敬一郎

    平田政府委員 相続税法も日本政府におきましては確定案を得まして、目下総司令部の承認を得つつある次第でありまして、近く提案する見込みであります。それによりますると、政党に対する献金に対しましては、原則としまして相続税を課さないという考えであります。これはやはり一種の公益を目的とする団体と考えるわけでありまして、その意味におきまして政党が個人から献金を受けた場合にはかからないことになるのであります。さらに政党から党員が選挙資金等をもらう場合におきましては、政治資金規正法に基きまして、合法的に得る分につきましては、これも相続税を課税しないことにいたしておるわけであります。
  66. 北澤直吉

    ○北澤委員 従来は政党に対する献金についても税がかかつてつたのです。それで実際上は政党に献金があつた場合に届け出たいという気持がありましても、届け出ますと相続税をたくさんとられる、贈与税をたくさんとられるというので、やみからやみに献金が行われて、そこに政治の腐敗というものがあつたのでありますが、ただいまの局長のお話で、そういうものは課税しないということになりますれば、政党献金にからまるこれまでのような悪い面もなくなると思いまして、非常に喜ばしい次第であります。  次に伺いたいのは、いろいろの調査に対する費用、調査のためにする寄付金であります。イギリスなどの例を見ますと、調査の目的のために寄付するような場合は免税ということになつております。従いましてたとえば各方面の調査のための費用が、非常によく調達されておるということでありますが、今度の日本の相続税法におきましては、こういう調査のために寄付するときには、一体税をかけるのかどうか。
  67. 平田敬一郎

    平田政府委員 なおいま一点政党に関連した寄付金といたしまして、選挙の候補者が政治資金規正法に基きまして、適正に政治資金として届け出ました寄付金につきましては、個人から寄付を仰ぐ限りにおきましては、やはり同じく非課税にする規定を設けるつもりでおります。但し今申しましたのはいずれも個人からの贈与、寄付でございまして、法人からの贈与は税法の建前を全面的に異にしておるのでございます。個人からの贈与または寄付は、すべて今までの相続税及び贈与税、今回の新しい贈与税の課税の対象になるわけでございますが、法人からの寄付なりあるいは贈与は、原則としまして所得と見て課税する建前にいたしております。その点税法の立て方が根本的に違つておりますことを、御了承置き願いたいと思うのであります。  なお今最後にお話のありました調査費用でございますが、公益法人の公益事業に対する寄付金は、今度は相続税を全面的に課税しないことにいたしておるのでございます。従いまして政党の場合におきましても、政党が本来の政治活事行いまするいろいろな調査のための寄付金でありますれば、やはり当然公益目的のためにその金を使うという解釈を下すべきものと考えますから、そういう種類の寄付金も当然非課税にすべきものじやないかと考えております。ただ民間の普通の調査機関で、はたして公益事業と見るべきかいなか疑問のものが相当あるかもしれませんが、そういうところまでは免税というわけには参らないのじやなかろうかと考えられておるのであります。たとえば学校だとか国だとか、こういうところに対する寄付金は、先ほど申しましたように、これも個人の寄付金であります限りにおきましては、全額免税することにいたすつもりでございます。
  68. 北澤直吉

    ○北澤委員 次にお伺いしたい点は、去年の八月一日の司令部の覚書で、日本人の技術者が海外に渡航できるようになつた。その目的は覚書にもありまする通り、結局日本の技術者が海外に出まして日本の技術を教えて、そして日本の機械類などの製品の輸出を促進するということが、大きな目的のようであります。この間も予算委員会で私は通産大臣に質問したのですが、最近インド方面から日本の技術者の招聘が大分ありまして、通産省などにおきましても、日本の機械などを南方に輸出するためにも、日本の技術者を南方にやつて機械の使い方を教える、こういうような見地から司令部の方でも、日本の技術者の海外渡航については全面的にこれを支持しておる。こういうわけなのでありますが、実際問題としましてこういう人たちが外国へ出まして、外国の政府もしくは会社から俸給をもらう。現場で使う金はその国の通貨でもらうのでありまするから、その一部を内地の留守宅に送金する。こういうふうになるわけでありますが、どうも住所が日本にありまする関係上、そういうものには日本で所得税がかかり、外国でもかかるというわけで、せつかく日本の技術者が外国へ出ようと思いましても、そういう税金の点でどうもあまりおもしろくないということで、外国へ出ることを躊躇しておる人が非常にあるように私は聞いておるのでありますが、大きな目的から考えまして、要するに日本の輸出を増進し、日本で外貨を獲得するという点から申しましても、こういう日本の技術者は続々外国へ出て行くのがいいと思います。そういう点にかんがみまして、外国へ招聘された日本技術者の日本における所得税につきましては、何らかの軽減措置を講ずる必要があると思うのですが、これにつきまして政府の御意見を承りたい。
  69. 平田敬一郎

    平田政府委員 今お話の問題は、技術者が日本から外国に住所を移したかどうか、それによつて税法の解釈が違つて来るのではなかろうかと思います。相当長期に外国に参りまして、そこに住所を移して、向うで一定の仕事をする場合におきましては、これは当然日本から住所を移しまして、住所は海外にあるということになりますから、この際における所得税法適用はないということに相なるかと思います。この反面、一時出張等によりまして出かける、あるいは短期間滞在して勉強してまた帰つて来る、こういう場合におきましては、どうも日本から住所を移したものとは言いがたいのではなかろうか。さような場合におきましては、もちろん所得税法の第一条の原則て従つて、その人の所得に対しては所得税を課することに相なつておるわけであります。実際問題といたしましては、住所をはたして移転したものと見るべきか、見るべきでないか疑問の場合もございましようが、原則は大体そのようなことで運営して参るよりほかないのではないかと考えております。
  70. 北澤直吉

    ○北澤委員 司令部と日本政府との話合いでは、そういうふうに外国の会社または個人に雇われるために、日本の技術者が外国に行く場合には、技術者の給料の一部は技術者の日常の費用に充てるために渡航先の通貨で支払われる、残りの部分は外貨で日本に送金され、これは連合国最高司令部の商業勘定に入る。そうしてこれを円にかえて留守家族扶養に充てることになつておりますが、この技術者は家族とともに行つてはいかぬ、単身で行け、こういうことになつております。そうしますと実際問題としては、住所が日本にあることになるのではないかと思います。従つて所得税全部がかかつて来る、こういうふうになると思うのですが、どの程度の期間ならば住所が一体外国に移せるものか、その辺何かお考えがありましたらお伺いしたい。
  71. 平田敬一郎

    平田政府委員 実際問題として判断の困難な場合が相当あろうかと思いますから、具体的に申し上げるのはなおよく調べた上で御返事いたしたいと思いますが、大体日本に住所がないという解釈がつきます場合におきましては、原則として留守宅に送金した部分課税にならない、こういうことであります。向うにおいて一定の仕事をして、その仕事に基いて収入がある。その収入に対しては、日本に住所がないということがはつきり解釈がつきます場合は、かりにそれが日本に送金になりましても、その部分所得に対しては税金がかかりません。そのかわりおそらく当該派遣地の所得税等が、課税されることになるのではないかと考えます。これに反しまして、日本に住所があるということになりますと、原則としてすべての所得課税されることになるわけでありまして、住所があるかないかによつて大分違つて来るわけであります。さつき申しましたように、家族が一緒に行かなかつた場合においては、なかなか住所が外国に移つたということを認定するのは、困難な場合が多いのじやないかと思いますが、しかしその期間が相当長期で、しかも向うできちつとした一定の仕事を持つて、その間研究して来るということでありますれば、これは住所が移転したという解釈もできるかと思います。なおその辺の具体的なことは取調べまして御返事いたしたいと思います。
  72. 北澤直吉

    ○北澤委員 今度の税制改革におきまして、貸倒れ準備金の制度によりまして、これを損金に算入することになつております。貸倒れ準備金というのは主として銀行等の場合と思いますが、たとえば倉庫の場合を見ますと、いわゆる弁償準備金というのがある。というのは倉庫業者あるいは運送業者におきましては、運送あるいは保管の途中においていろいろの物が紛失する。あるいは水害、火災、あるいは損耗というようなことでいろいろのクレームがありまして、それに対して弁償するために弁償準備金というものが各倉庫会社、あるいは運送会社にあると思うのでありますが、私はこれはやはり現行の貸倒れ準備金と同じような性質を持つおるのではないか。そういたしますと弁償準備金というものは、貸倒れ準備金と同じように損金に算入するようにした方がいいと思うのですが、この点についてどうお考えになりますか。
  73. 平田敬一郎

    平田政府委員 今回の貸倒れ準備金として、一定制限のもとに損金に算入することに予定しておるのでありますが、これは単に銀行だけに限つておりません。一般の消費者、もちろん倉庫業者の場合においても、期末の未収金と申しますか、期末の債権等に対しまして残高の一定歩合と、当該事業年度末の利益の一定歩合と、二つ制限を設けるつもりでございますが、その制限範囲内においてでございますれば、損金に認めるつもりでございます。今お話の点はもう少し具体的にやつてみなけければわからないのでありますが、倉庫会社におきましても、未収金といいますか売掛金に類する債権でございますれば、その債権に対しまして一定の額だけは、貸倒れ準備金として損失に認めるつもりでおるのであります。
  74. 北澤直吉

    ○北澤委員 私がお尋ねしましたのは、倉庫会社もしくは運送会社が損害賠償を支払う。物品が運送中、保管中において損害を受けたからこれを支払う。こういう場合は非常に多いのであります。従つて運送業者、倉庫業者はそういう場合に弁償するための準備金というものを積み立てるわけでありますが、それが貸倒れと同じような性質であれば、損金に入れた方がいいのじやないか、こういう考えであります。その点についてお尋ねしたい。
  75. 平田敬一郎

    平田政府委員 損害賠償準備金でございますと、これが期によつて多いときと少いときとあるから、少いときには準備金を設ける、こういう御趣旨かもしれませんが、そのようなものを全部いたしますと、またいろいろな危険負担、特別の危険の準備金とか、すべて準備金につきましても同様な種類のものがたくさんございますので、そういうところまで拡張するかどうかは、相当研究を要するのではなかろうかと思います。今申し上げましたのは、要するに期末におけるまだ回収していない代金、料金等につきまして一定歩合は認めることにいたしたい。お話のような点につきましてはもう少し研究いたしてみたいと思います。
  76. 北澤直吉

    ○北澤委員 それでは次に、今度の税制改革によつて行われた日本における税と、外国の税との比較の点についてお伺いしたい。いよいよ講和条約が結ばれて、海外との往復交通が開始されますと、もし日本におけるよりも外国における方が税金が安いということになると、私は日本の資本が外国へ逃げて行く、資本の逃避ということがあると思うのであります。もちろん為替管理を厳重に実施すれば、資本の逃避は多少防ぎ得るかもしれませんが、海外との交通が円滑になりますると、もし外国における方が日本におけるよりも税が安いことになりますと、日本の資本が外国に逃げて行くことも起り得るかと思うのです。ところが日本は御承知のように、今はむしろ外資を導入することが最も大事なことでありますので、日本の資本が外国へ逃避するということは、われわれとしてはどうしても避けなければならない問題だと思いますが、そういう点を考えまして、一体今度の税制改革を実施した結果、特に法人の事業の点を考えるのでありますが、日本における税と外国における税とどういうような比較になりますかお尋ねいたします。
  77. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の問題として考えなければならないのは、一つは法人に対する課税、いま一つは個人の所得税の問題だろうと思います。その二つの問題のうち、法人の課税に関する限りにおきましては、今度の日本の税制は外国の税制に比べて決して高くございません。アメリカの法人の所得に対しましてもアメリカ所得税課税になりますが、この場合におきましては、大体普通の法人企業でありますと、三八%ぐらいの税率なつております。今度の日本の法人税におきましては、超過所得税を廃しましたし、普通所得税だけ残しまして三五%になるわけであります。市町村民税も賦課されませんので、大体におきまして所得に対する直接税に関する限りにおきましては、日本の方が低いと考えております。なお固定資産税・附加価値税等の問題になりますと、外国にもそれぞれいろいろな税がございまして、アメリカの財産税、これは大部分市町村で徴収しておりますが、相当高いのでございます。日本の今度の固定資産税よりも市町村によつては高いところもある、あるいは低いところもあるというぐらいの状態でございまして、こういう点から言いまして、これもそう大きな障害にはならないのではないかと思います。それからイギリスの場合におきましては大体百分の四十五でありまして、これも日本より高いわけであります。但しそれ以外の、ドイツはたしか百分の五十ですが、その他の非常に未開発の国におきましては、直接税は非常に低うございますから、これはそういう国々に行くということは考えられるかもしれませんが、また一面から申しますと、さようなところにはたして今お話のような逃避という形において行くかどうか、これは疑問でありますので、法人税に関する限りにおきましては、御懸命のような点はまずなかろうと考えるのであります。もちろん日本におきましては為替管理法を当分のうち施行いたしまして、さような点を防止することになつておりますこともお話通りであります。これに対しまして個人の所得税は、何と申しましても平均所得が、たとえばアメリカと日本と比べますとえらい差が出て来まして、三百六十円で換算しますと、国民所得の平均はおそらくアメリカの一人当りは日本の十倍以上になつておると思います。所得税として徴収します総額は、国民所得に対して、比率から申しますと、日本の場合とアメリカの場合と比べると、日本の方がちよつと高いかもしれませんが、そう高くはございません。しかし一人当りの平均になると日本が非常に低うございます。従つて税率としましては、日本の場合はアメリカと比べますと相当高くなつております。この点はイギリスに比べましても非常に重税でございます。同じ金額所得で比べますと、日本の方が相当高いのでございます。従つて所得税につきましては、今お話のような懸念があると言えば確かにあるのでございます。しかしこの方は何と申しましても、今の所得税は税収入の大宗でありまして、大部分これに依存せざるを得ない。そうしますと結局先般もある委員の方にお答えしたのでありますが、やはり今の日本の個人の所得水準を前提にして、所得税を考えなければならぬという結果、今のようなことになつたのではないかと思います。これはある程度差がつきましてもいたし方がないのではないかと考えております。ただ大蔵大臣も前々言つておられるように、もしも財政事情が許すならば、やはり個人の所得税をまつ先に減少する方向に行きたいと考えておるのでございます。反対に日本から資本が逃げるということよりも緊要なのは、アメリカ等から日本に資本が入つて来るということが緊要なのでありまして、資本に関連しましてやはり一定の管理者、技術者等に入つて来ていただかなければなりませんが、そういう人が入つて来ます場合に、日本の今までの所得税法をそのまま適用いたしますと、非常に高率になりますので、この点につきましては前々から申し上げておりますように、特別措置を考えまして、外資導入を容易ならしめるというわけで、目下その法案を準備中でございます。大体そういうような状況でございます。
  78. 北澤直吉

    ○北澤委員 今度の税制改革について、お話のように法人税だけについて申しますれば、やはり附加価値税とかあるいは固定資産税を合せて考えますと、これは相当高くなりはせぬか。アメリカにおきましても各州において財産税がかかるとして、従つて連邦の所得税と各州の財産税を合せれば、ある程度多いと思うのであります。要しますのに法人が納めます全体の税、所得税、財産税、収益税、こういうものをひつくるめた場合に、日本において法人事業をやる場合と、アメリカにおいて法人事業をやる場合と、一体どういう差があるかということを考えて、実はお尋ねしたのでありますが、日本における方が低いということでありますれば、そういうような資本の逃避も避けられると思いますが、この点はもう少し御研究を願いたいと思います。  それからもう一点伺いたいのでありますが、今度の税制の改革によりますと、直接税と間接税の比率は、これは地方税を含めてのことだろうと思いますが、直接税が五四・五%、間接税が四四%となつております。こういうわけでだんだんと直接税中心主義に向つて進んでおると思うのでありますが、現在の日本におきまして、そう急激に直接税中心主義をとつていいかということにつきましては、私疑問を持つておるのであります。と申しますのは、アメリカ、イギリスの比率を見ますと、アメリカ合衆国の中央税だけの比率を見ますと直接税が八一・八%、間接税が一四・九%、イギリスの国税だけを見ますれば直接税が五六%、間接税が四一・二%となつておりますが、イギリスやアメリカは御承知のように日本に比べて資本主義がずつと早くから発達しておる。従つて法人企業というものは非常に進んでおるわけであります。法人所得が非常に多い。アメリカでも同じ所得税でも法人の所得税と個人の所得税を比べてみますと、大蔵省からいただいたこの表によりますと、一九四九年度におきましては個人所得税が百九十一億三千五百万ドル、法人所得税が百二十二億五千二百万ドルで、法人所得税は個人所得税に比べて三割方少いという程度であります。ところが日本の場合を見ますと、二十五年度の歳入表を見ますと、個人所得税が二千四百八十六億八千三百万円、法人税が三百八十六億というわけであります。法人税の収入は、個人所得税に比べまして個人所得税の六分の一である。こういうわけでありまして、日本における法人の所得と英米における法人の所得というものは非常に違う。英米においては非常に多いのであります。そういうわけでありますので、英米におきましては直接税は相当多く取れるわけでありますが、こういうように法人所得の少い日本において急激に直接税中心主義を採用していいものか、非常に疑問を持つておるのでありますが、その点についてお伺いしたい。
  79. 平田敬一郎

    平田政府委員 直接税と間接税の比率に関しましては、いろいろな議論があろうと存じますが、今回の税制改正におきましては、取引高税とか織物消費税、通行税、それから物品税の一部等につきましては、相当廃止または軽減をはかつたのであります。つまりシヤウプ勧告によります税制の建て方としましては、大衆課税的な性質の多い間接税は、廃止または縮減するという方針になつておりまして、さような考え方で私どもも立案いたしておるのでございます。ただ一面におきましては、酒の数量が相当増加いたしましたし、タバコの消費が何と申しましても相当多額に上つておるといつたようなところからいたしまして、酒とタバコだけでそれぞれ千二百億及び千三十億という巨額な収入をあげておりますので、間接税がなお相当多くの部分を占めております。今御指摘になりました比率は、地方税を入れない比率でございまして、地方税を入れますと、さらにもう少し直接税の比率が多くなるようであります。すなわち大体五六%程度が直接税でありまして、間接税が三七%、その他が七%になるかと思います。しかし附加価値税は一応その他で計算しておりますので、これを直接税に入れますとさらにふえまして、六〇%前後が直接税に入るということに相なつております。これは今申しましたように、大衆課税的間接税は極力なくしますが、酒タバコの間接税が相当多くを占めて来たということが大きな原因でありまして、税制自体の表面から見ますと、実はこの表の示すものよりもさらに一層間接税が減りまして、直接税が多くなるわけでありますが、比率として申しますと、改正前に比べますと、それほど直接税は増加いたしておりません。むしろ二十四年度に比べますと、若干直接税の方が減つております。これは所得税等におきまして、五百億円程度の減税を行つたからでございます。さような状況でございます。日本も戦前におきましては、これに対しまして直接税は五〇%以下でございまして、大体四五%かそこらを占めていたのでございます。間接税がむしろ多くて五〇%前後を占めていたのでございますが、戦争中を通じまして、直接税について相当増税をし、また戦争中は法人の事業所得が多くて、法人税が相当入つて来ましたために、直接税がふえて来たのであります。それが戦後は逆転しまして今申しますような事情によつてまた間接税が増加して来たというのが現況であろうかと思います。外国の場合と比較しますと、アメリカは非常な直接税中心主義でありまして、御承知通り八〇%以上も直接税でまかなつております。イギリスも昔からあまりかわりませんが、やはり直接税中心主義であります。これに反しドイツ、フランス等の大陸諸国におきましては、むしろ日本と同じように直接税の方が少いのであります。ことにフランスドイツにおきましては、その他に属する売上げ課税が相当多く占めておりまして、ドイツでも二〇%前後売上税が占めております。フランスにおきましても取引高税、生産税等の流通課税が約三〇%以上も占めておるような状態でございます。直接税の比率は比較的少くなつております。しかし税収入といたしましては、シヤウプ勧告は特にその点強調いたしておるのでありますが、やはり直接税の方が理論上よい。従つてやはり理論上よい税金をまともに徴収しまして、それによつてほんとうにデモクラシーの原則に即応する政治をやるのがよいのだ。これは負担力の点からはもちろんのこと、あらゆる見地からしましてその方がよいという意見のようであります。従いまして今回の改正案も大体そのような傾向を持つておるのでございまして、考え方としまして、最近だけの現状をとらえますと、あるいは間接税の方に依存した方が相当よいのではないかというふしもございまするが、たびたび説明しておりまするように、税制はたびたび改正するのはどうも関心しないのでございまして、なるべく一旦改正しました税制は、その情勢が著しき変化がない限り、ストラクチユアはあまりかえない方がよいという前提に立つておりますので、やはり直接税を中心とした税制ということに結論がなつたものだと考えておるのでございます。さような状態から考えますと、日本の税制はむしろドイツ、フランス、イタリア等の大陸の国よりも、さらに一歩進んだ米英のシステムに近いものになつたということができるのではないかと考えるのであります。御指摘の、法人の業績がもう少し振いまして、この方の税金が相当ノーマルな状態に帰つて来ますれば、もつと直接税の比率が多くなつて来るような税制になつております。そういう点から申しますと、相当理想を追つた課税制度ということは確かだと考えるのであります。最近は大きな法人が、実際の仕事のボリウムに対しまして利益が少い。資本金もまだ再評価しない昔のままの資本金でございますので、増加はしておりますが、固定資産の実質から申しますとまだ少い。従つて利益も相対的にまだ少いものになつております。これが法人の税金の多くない最大の原因だと考えますが、私はおそらく今後経済が徐々に平常化し、発展するに伴いまして、法人の税金というものは相当急激にふえて来るのではないか、またふえて来るようでなければ、ほんとうの経済の発展は期せられない、かように考えておるのであります。そういうことになりますと、さらに一層直接税が多くなつて来るような税制になつております。そういう税制を実は今回全体として作成して提案しておるような次第であります。
  80. 北澤直吉

    ○北澤委員 お話のように、税制の理想から申しますと、大衆課税である間接税を避けて、直接税にした方がよいということはその通りであります。しかしながら日本の実情から申しまして、特に終戦以来の日本の実情から申しますと、残念ながら国民の道徳が非常に頽廃しておる。従いましてせつかくアメリカ式の申告納税主義をとりましても、なかなかまじめに申告しない。またアメリカ人やイギリス人に比べまして、どうも日本人は公徳心に欠けておる点が相当多い。従いまして税金はなるべく免れた方がよろしいというふうな空気が非常に多いのであります。こういう国柄あるいはこういう国民性の国において、英米流の直接税中心主義をとるということに行つてよいかどうか、私は疑問を持つておるのでありますが、これもだんだんと日本の経済も安定し、国民の道義心も高まり、国民の公徳心も高まつて、ほんとうに国家の税金を進んで負担するということになりますれば、もちろん米英流の直接税中心主義でよいと思うのでありますが、何分にも日本の国民性、特に終戦以来の道義の頽廃した日本におきまして、そういうふうな直接税中心主義をそのまま急にとるということにつきましては、私は疑問を持つておるわけでありますが、政府のお考えもわかりましたから、この点に関する質疑はこれで打切ります。  もう一つ伺いたいのは、やはり直接税中心主義でありますが、国の状態がインフレの場合と、デフレの場合と、この二つの場合において一体直接税中心主義をどうとるか。インフレの場合には、御承知のように通貨の下落によつて国民大衆は税金をとられるのと同じような状態でありますので、私はインフレの時代には直接税中心主義もよいと思うのでありますが、デフレになつて、国の経済が不況になるというふうな状態になりますと、多少そこに手心を加えて、やはりある程度間接税というものを用いる必要があるのではないか。インフレの場合とデフレの場合について、直接税中心主義をとるにつきましても、手心を加える必要があるのではないかと考えますが、この点に関する御所見を承りたい。
  81. 平田敬一郎

    平田政府委員 なお先ほどの説明に若干つけ加えておきたいと思いますが、税制の理論から申しますと、やはり直接税の方がよいということの疑問の余地のないことは、お話通りでございます。そういたしまして今の日本の実情から申しますと、たとえば申告所得税等はたしかに徴収成績が非常に困難をきわめておりまして、納税者も納めにくいし、政府の方もなかなか適正な徴収に手を焼いておるというのが現状であります。しからばこれを捨てて何かほかの方法によるかということになりますと、やはりそれではいけないのじやないか。どうせ戦後におきましてはいろいろ条件が悪くなつておりまするが、しかし向うべき方向はやはり民主主義の原則に従いまして、正しい財政なり、正しい政治を運用して行くということにあるといたしますれば、やはり税制の面におきましても、そういうことに即する税制を打立てて行くか、税制を通じてあるいは税制自体の中におきましても、正しい理想的な方向に向つて進んで努力して行くというのが、行くべき方法じやなかろうかというのが、シヤウプ博士の強い見解のようでございます。それは決して不可能の道ではなくて、相当お互いにめんどうではあり、あるいは過渡的に困難であり、トラブルもあるだろうが、努力次第では十分できるのではなかろうか、またそういうことにならなければ、ほんとうに健全なる民主主義に基く財政及び政治の運用はできないのじやなかろうか、こういう考え方のようでございます。ことに市町村等におきましては、特にそのことが強調せられておりまして、市町村はほとんど固定資産税を、新しい住民税で九〇%以上まかなうことに相なるのであります。これは納税者からまともに納めてもらう税でありまして、そのことによつていろいろ税自体に対しましても文句がございますし、こういうことを通じて市町村税等に対しましても、住民が非常に強い関心と批判が生れて来る。それによつて初めて市町村税等も民主主義の原則に適合して非常によいものになる。それに合格しなかつたらほんとうによい政治はできない。こういう考え方が大分あるようでございます。これは私どもも理想といたしましてはまさにその通りでございますので、方向としましてはこういう方向に向うことにいたしたのでございます。  それからいま一つの論点でございますが、インフレの場合は直接税がよくて、デフレの場合は直接税だけでは不十分ではないかという御議論でございますが、この点に関しましても、実はこれは私政府の考えというのではありませんが、最近の有力な考え方は、インフレの際には税の収入がふえまして、インフレをチエツクするという作用を営む。財政におきましても税の収入がふえ、剰余金を生じて、国債等は返すというような租税制度が理想的である。そうなりますと、相当インフレを押えるという力がありますから、そういうような税制がよい。その点から行きますと、ことに累進所得税が一番よいという考え方のようでございます。累進税率でありますと、所得がたとえば一割ふえますと税収入は一割五分ふえる。所得が二割ふえますと、税収入は三割もふえるというような関係になるのでございます。そういうような状態でございますから、やはり累進所得税がよいのではないか。その反対にデフレの場合におきましては、これは一つの相当進んだ考え方だと思いますが、むしろ相当はげしいデフレになりそうな場合、あるいはなつた場合におきましては、税収入は相当減つてもよいのではないかという考え方のようであります。そうしまして場合によりましては、国庫は赤字を出しましても、必要な公共事業等を行いましてそれによつて投資を促進し、購買力を増加して、景気の回復をはかり、デフレからの回復をはかる、そういう財政政策がよいのではないか、こういう有力な学説がございます。そういう説に従いますと、累進所得税の場合、所得税が二割減りますと税収入が三割も四割も減るという関係になりますし、また実際納税者負担から行きましても、デフレで所得が減つた場合におきましては、税率所得が減つた以上に税の負担が減ることになりますれば、かえつていいのではないか、こういう見方があるのでございます。そういう点から行きますと、やつぱり個人所得税、ことに累進所得税を中心に考えた方がよいのではないかという有力な説でございます。しかしこの辺につきましては在来の常道論から申しますと、デフレがあつて、国庫財政が非常に収入が少くなるという点から申しますと、あるいは直接税よりも間接税の方がいいのだということも言い得るかと思いますが、この辺のところにつきましては、いろいろ今後検討に値する問題があろうかと思います。一説を御紹介しておきます。
  82. 北澤直吉

    ○北澤委員 お話のように、理想としてはどこまでも直接税中心主義で行かなければならぬのでありますが、日本の実情、日本の国民性、日本の歴史的伝統というものから考えますと、やはり漸進的に時を追つてつた方がいいということを申し上げただけであります。あとは大臣に対する質問は留保いたしまして、私の質問は打切ります。
  83. 河田賢治

    ○河田委員 この前委員会が始まりまして、十種類ばかり資料の要求をしてあります。国税庁関係が多いのでありますが、できるだけ早くお願いいたします。
  84. 川野芳滿

    川野委員長 承知いたしました。  明日は大蔵大臣、農林大臣も出席されることになつております。さらに総理大臣もあるいは出席されるかとも存じますので、ぜひ定刻に御出席を願いたいと存じます。  それでは本日はこれにて散会いたします     午後四時七分散会