○湯地
政府委員 証券取引法の一部を改正する
法律案につきまして提案
理由を御説明いたします。
現在施行されている
証券取引法は、
昭和二十三年四月公布以来すでに二箇年近くを経過しておりまして、その間証券
行政の執行上いろいろ不備の点も発見され、また経済情勢の進展に照らし、取引の公正の確保及び投資者保護のために、さらに積極的な施策を織り込む必要も生じて参
つたのでありまして、ここに同
法律の一部を改正するため、本
法律案を提出することと
なつた次第であります。
今回の改正案の主眼とするところは、証券業の健全化をはかることと、シヤウプ勧告の線に沿
つて証券取引法の規定により提出される財務諸表の基準を定める権限を、
証券取引委員会に與えること等でありまして、以下改正の主要なる事項につきまして、逐次その大要を御説明いたします。
その第一点は、証券
業者及び証券取引所の健全化に関するいろいろな規定を設けたことであります。この点をさらに詳しく説明いたしますと、その
一つは、証券
業者は、営業用純資本として最低額五十万円を常に維持しなければならないこととし、この額に満たない登録
申請者は登録を拒否され、また証券
業者であ
つてその営業用純資本額が五十万円を下
つた場合には営業の停止と命ぜられ、さらには登録の取消しを受けるということにいたしまして、証券
業者の資産内容の堅実化をはかり、も
つて投資者の保護を全からしめんとしたのであります。
現行法におきましては、証券
業者の資本
金額には別段の制限はないのでありまして、
従つて弱体証券
業者の濫立を来し、投資者の保護にも欠けるおそれがありますので、銀行、信託、保険、無盡等に関する
法律と歩調を合せ、証券
業者になるためには常に五十万円以上の営業用純資本額を保有するを要することとしたのであります。しかし現在の証券
業者に対しては、すぐにこの制限規定を適用することは困難でありますので、三年後より適用することに相な
つております。
その二は、証券
業者が営業または財産
経理の
状況に照らしまして、過当な数量の売買取引、不健全な
方法による売買もしくは借入れをなし、または不良と認められる資産を有する場合においては、
証券取引委員会は当該行為を制限し、不良資産を償却する等の命令をなすことができることとして、証券
業者の健全化をはかることとしたのであります。
その三は、営業の盛衰 はげしい証券
業者の特殊性にかんがみまして、その損益の平準化をはかるために、証券
業者の営業年度を、現在六箇月であるのを一年に改正することにしたことであります。
その四は、登録取消しの処分を受けた証券会社の役員は、五年間証券会社の役員に就任することができないこととする等、現在の登録拒否または登録取消しの條文の不備を整備したことであります。
その他、証券取引所に関することでありますが、
証券取引委員会は、証券取引所が上場しようとする証券が、公益または投資者保護のために不適当と認めるときは、その上場を拒否すべき旨を命ずることができることとし、また証券取引所自体の登録拒否の條項を整理するなど、証券取引所の健全化をはかる規定を設けることといたしました。
第二点といたしましては、シヤウプ勧告にうたわれている線に従いまして、
証券取引法の規定により提出される貸借対照表、損益計算書等の財務書類の用語、様式及び作成
方法を、
証券取引委員会規則をも
つて定める権限を
証券取引委員会に與え、企業
経理の内容を明確にし、投資者の理解を容易ならしめ、証券投資の普及に役立たしめんとするとともに、ひいては不統一をきわめておりますわがわが国企業会計
制度の整備に資せんとしたことであります。またこれらの財務書類は、それを提出する会社と特別の利害
関係のない公認会計士の監査証明を受けなければならないこととし、財務書類の信頼性または利用性を高める措置を講じ、さらにこの監督証明は、
証券取引委員会規則で定める基準及び手続によ
つて行わなければならないこととして、わが国で初めての経験である外部監査
制度を実効的ならしめることとしたのであります。ただその実施にあたりましては、公認会計士の現状に照らしまして、監査証明を受けなければならない会社等は、
証券取引委員会規則で逐次漸進的に指定して行くこととして、これに必要な法的措置を講じた次第であります。
第三点は、有価証券の募集または売出しに際して、
証券取引委員会規則で届出を免除することができる範囲を、現在の募集または売出し券面
総額五百万円よりこれを千万円に引上げて、経済の実情の変化に即応し得ることといたしたのであります。
第四点は、投資についての判断を提供すべき
新聞、雑誌等の記事に関する取締り規定を設けたことであります。これはアメリカの証券法の規定にのつとりまして、このような記事を公表することについて、有価証券の発行会社または証券業
者等から対価の提供を受けているときは、その旨をあわせて表示しなければならないこととして、投資者の判断に誤りなきを期せしめることとしたことであります。
第五点は、
証券取引法の規定に基いて設立された証券業協会について、その活動に実効性を與えるため、事
業者団体法の適用をしないこととしたことであります。
第六点は、
証券取引委員会の
委員長及び
委員は、その職務の特殊性にかんがみまして、内閣総理
大臣が再議院の同意を得て任命するものとし、特別職とすることであります。
以上が大体改正案の要点であります。この改正整備によりまして、
証券取引法の目的でありまする有価証券の取引の公正と、その流通の円滑化をはかり、また投資者の保護に一段と厚きを加えることとなる次第でありまして、
政府としてはこの
法律案が一日もすみやかに成立することを希望している次第であります。どうぞ十分御審議の上、御
賛成あらんことを切望いたす次第であります。