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1949-12-22 第7回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十二月二十二日(木曜日)     午後一時三十八分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 北澤 直吉君 理事 小山 長規君    理事 前尾繁三郎君 理事 川島 金次君    理事 河田 賢治君 理事 内藤 友明君       江田斗米吉君    岡野 清豪君       佐久間 徹君    塚田十一郎君       苫米地英俊君    西村 直己君       三宅 則義君    松尾トシ子君       宮腰 喜助君    竹村奈良一君       中野 四郎君  委員外出席者         議     員 風早八十二君         国税庁長官   高橋  衛君         專  門  員 黒田 久太君         專  門  員 椎木 文也君     ————————————— 十二月二十一日  昭和二十四年度所得税事業税等年末年始に  おける納税延期に関する決議案野坂參三君外  四十一名提出決議第一三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十四年度所得税事業税等年末年始に  おける納税延期に関する決議案野坂參三君外  四十一名提出決議第一三号)  本年度徴税に関する件     —————————————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 開会いたします。  本年度徴税に関する件を議題といたしまして、昨日に引続き質疑を継続いたします。三宅則義君。
  3. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は昨日高橋国税庁長官より、いろいろ御答弁を承つたのでありますが、なお数点残つておりますから、今日継続いたしたいと思う次第でございます。  御承知通り高橋長官もこまかいことはなかなかおわかりにならぬかもしれませんが、根本事柄は十分御了承だろうと考えております。つきましては各国税局に対しまして、所得決定いたしました金額を、それはたとえば農業所得ならどうとか、商業所得ならどうとか、商業でもまた部類別にたしか情報を取つていらつしやることと考えます。その取られておりまする情報等を総合いたしまして、ぜひ本委員会提出せられたいのです。その徴收状況がむりのないようにしたいというのが、私ども国民としての念願であります。こいねがわくは長官下僚官僚を督励せられまして、そうしたような資料について一応お示し願えますならば、われわれが検討するに最も便利だと考えております。御答弁を賜わりたいと思います。
  4. 高橋衛

    高橋説明員 御承知通り第二回の予定申告の期日は十月末でありまして、その後昨日も御答弁申し上げました通り、できるだけ申告をしていただきたいという建前をもちまして、それまでに税務署でいたしました実額調査基礎にいたしまして、それぞれ修正申告を出していただくというように、ずつと続けてお願いして参つたわけでございます。しかしながらその状況が、必ずしも私どもの考え方からいたしますると十分でございませんので、今年の十一月から今月にかけて、ある程度の仮更正決定を大体各税務署ともやつておる次第でございます。従いましてそれまでの予想数字というものは、割合にわずかなケースに基いたところの数字でございまして、あまりに信頼ができがたいと思うのであります。今度の仮更正の結果を一月中ぐらいにとりまとめまして、そのころには大体検討がつくかと思いますので、そのころまでお待ちを願いたいと思います。
  5. 三宅則義

    三宅(則)委員 今長官からたいへんに都合のいいお話を承つたのでありますが、私どもから言いますると、過去の実績等相当あるのでありますからして、更正決定をなさいましたその数、金額等は後日に讓るといたしましても、今までの実績調査いたされまして、十月なら十月現在でどういうふうに納めておるかどうか。また各署とも予定申告と申しますか、あるいは努力目標といいますか、おのおのその方面に対します目標があるはずであります。その目標についてひとつこの際お示しを願いますならば、これが穏健妥当であるかどうか、あるいは上まわつておるかどうかということがはつきりするわけであります。そういうような目標をお示し願うことができますかどうか、願わくはお示し願いたいと思います。
  6. 高橋衛

    高橋説明員 三宅さんもよく御承知通り目標と申しますのは千七百六億円でございますが、今年度の予算すなわち目標であります。しかしながらこれを各局各署割当てるということは絶対いたしておりませんから、従つて千七百六億円が妥当なりやいなやという問題につきましては、先般の国会においてその基礎等について十分御審議を願つたことと思いますが、それ以外の資料というものは、私ども手元には持ち合していないのであります。その点御了承願います。
  7. 三宅則義

    三宅(則)委員 今長官も御答弁になりましたが、私は各下級官僚、いわゆる長官以下の部長とか課長とかいうものにつきましては、相当こまかい数字を今までとつておるのが普通であると思うのでございます。長官御存じないかもしれませんが、物価庁等におきましてはきわめて明細なる調査があるはずであります。私がかりに税務署に行きまして税務署長に面談しました結果、君たちはどういう目標でやつているかと言いますと、実は今までは割当がありましたが、本年は割当がない。しかしどのくらい努力するかという目標は、各国税局提出してありますから、国税局行つてお聞き取り願いたいと言つております。こういう線から聞きますると、必ず国税局本庁国税庁申告せられているものと私は思う。しかるに長官は今そういうことをおつしやらないのですが、ひとつ調べてわれわれの納得の行くような線を示していただくことが、一番かんじんのようであります。このことについてくどいようでありますが、もう一ぺんお伺いいたしたいと思います。
  8. 高橋衛

    高橋説明員 昨日も御答弁申し上げました通り、私どもといたしましても、年度内にはたして予算に計上せられた程度税收入が確保できるかどうかという点につきましては、非常な関心を拂つております。またそれについて相当責任も感じておりますので、大体二月に一回程度各局見込みはとつておるのであります。しかしながらその見込みは時々変動いたしておりまするし、またその見込みの是非という問題につきましても、たとえば個々納税者について、一つ一つ拔き出して調査をするというようなことによつて、批判をして参つております。
  9. 三宅則義

    三宅(則)委員 今長官仰せは大ざつぱな御答弁でありますが、私がかりに長官だとするならば、こういうふうにいたしたい。各税務署ごとに対しまして、業者たとえば商業者にいたしましても、物品販売でありますとか、あるいは工業者にいたしましても、鉄をつくる者でありますとか、あるいは雑貨をつくるものでありますとか、あるいは衣料をつくる者であるとかいうふうに数店にわけまして、その数店にわけましたものを各税務署ごとにその所得決定をいたし、しかる後に各局にまとめてこれを本庁に答申するということが当然であると思う。こういうことが今やられていないとするならば、私はこの際国会を通じて、そういうような状況を精細に調べることを命じたい。しからずんばいつまでも官僚諸公にやられてしまつて民論というものは反映しないと私は感ずる。こういう意味合いにおいて今申し上げたわけでありますが、これについて御答弁が賜われますれば賜わるし、賜わらなければ私どもは覚悟がある。われわれといたしましては法律をつくる権能があるのでありますから、これをつくらなければならぬということを痛切に感じます。  次に申し上げたい事柄は、日歩二十銭というのは昨日もちよつと申し上げましたが、年に直しますと七割三分に値する。こういうものをこの年末にとられるということになりますと、この金融難折柄きわめて困難を感じておるのであります。私は政府與党ではありまするが、国民の心意を察しましてぜひ長官にお願いいたしたい。この年末に際して、大金融には政府相当援助をいたし、また銀行も従来の実績からいたしまして援助をいたしておる。しかるに中小企業、たとえば三百万以下とか二百万以下とか百万以下の金額に対しましては、調査に二月も三月も半年もかかつて、しかる後けつている。これが実情である。こういうのは銀行によらなければなりませんが、かような状況でありまするから、市中金利はあなたも御存じでありましようが、月に一割どころではなく、十月に一割のところもあり、はなはだどうも高金利であると思つておりまするが、まことに市中の金融ということにつきましては恐ろしいほど苦しみを感じておるのであります。こういうものを借りましても国税を納めたいというような念に燃えている人もありまするが、それでは穏健にして妥当なる納税はでき得ないと思う。これにつきまして政府といたしましては多少親心をもちまして、年末年始等におきましては差押えであるとか、あるいは強制執行であるとか、競売であるとかいうような点につきましては、多少遠慮してもらいたいと思いまするが、これに対しまして長官の親心ある大乘的な御答弁を賜わりたいと思います。
  10. 高橋衛

    高橋説明員 延滯金加算税等が非常に高率でありまして、そのために滯納になられた方々の負担が非常に激増しておるということは、私どもも認めておる次第であります。従つて新しい法律におきましては、ぜひこれらの率を相当に軽減していただきたいということを、われわれ徴税の衝に当る者からも強くお願いをいたしておる次第であります。ただ延滯金または加算税等について、年末年始において相当緩和したらどうかというお話でありますが、これは時期的に差をつけるということは、いわゆる税の公平の観点から申しまして、必ずしも当を得ないというふうに私ども考えております。しかも延滯金を免除すべき場合というものは、法律相当嚴格に限定されておりまして、これは国税庁当局税務当局にまかされた権限のうちではないのであります。むしろこれを徴收しないことが法律違反になるかと思うのであります。できますればそれらの点は十分法律上の処置をもつて、善処をお願いいたしたいと思います。
  11. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は長官下僚諸君に対します責任をとれということではありませんが、実際そういうものが各税務署にありますから、御注意までに申し上げたい。昨日も質問いたしておきましたが、現在の税務官吏というものは、割合に年齢が少いのでありまして、二十三歳半、経験年数は二箇年半弱というようなきわめて未熟なる者が陣頭に立つて、第一線に立つて決定いたしております。しかるに私の調査によりますと、法人等におきましては、昭和二十一年度もしくは二十二年度を今日決定いたしておりまして、二十三年、二十四年はまだ当然来ません。かようにいたしますと、先ほど長官お話になりました通り、これが更正決定せられる場合におきましては、御承知通り、二箇年半分も二箇年分も延滯利息あるいは加算税、追徴税等がとられますと、本税よりきわめて多いところの、罰金に類する税金を拂わされるということが往々にあるのであります。これはもちろん長官一人の責任ではありませんが、下僚官僚が、ことに法人に関しましては能力が足らない、経験が薄い、人格がそこまで行つてない、こういうようないろいろな事由もございましようが、あまりに延期されるということになりますと、納税者は非常に迷惑をするのです。この際長官下僚官僚に対しまして、特に簿記会計学をよく習得いたしました練達なる士を、法人係にまわす必要があると思いますが、長官の御意見を承りたい。
  12. 高橋衛

    高橋説明員 法人税調査に当ります職員の質並びに数において、非常に欠陥があるということは私どももまことに御同感であります。従いまして本年当初から法人税につきましては、特に優秀なる人間をまわす。同時に現在従事している職員訓練にも非常に力を注ぎまして、最近百名ないし二百名程度ずつ、四十日間程度短期講習東京において行つておるのでありますが、これもほとんど法人税を中心にいたしまして、簿記会計その他法人税法取扱い等について講習をいたしまして、その質の向上訓練というものについては、最大の努力を拂つておる次第であります。ただいまのところまだ未決の件数を一掃するということには、ちよつと時を要するのであります。しかしながら一日も早くこれを常態にもどしまして、そういうふうな御迷惑のかからないようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  13. 三宅則義

    三宅(則)委員 いろいろな資料がたくさんあるのでありますが、あまり長く一人で時間をとるといけませんから、なるべく簡略にいたしたいと思つておるのであります。  私の一番心配いたしておりますのは、ことに東京とか大阪とかいうような大都会におきましては、製造業者が多いのです。ところが物品税というものに対して昨日もちよつと触れておきましたが、ある意味におきましては相当納めておりますけれども、大部分の者が納める方が少くて、納めない者の方が多い、こういう状況にあるのです。これにつきましては、物品税は御承知通り製造業者にかかるのでありまして、庫出しのときにかかるのでありますが、これがたまたま庫出しのときの精細なる調査をせずいたしまして、品を出しておるものが多いのであります。これにつきましての私の観点から申しますると、いろいろありますが、きわめて零細なる商品に対しましては、これを免除いたしたいという私の気分でありまして、その免除いたします資料として私はお願いいたしたい。各物品税に対するところの徴收した金額明細がわかりましようか、わかりませんか。長官ではわからぬかもしれませんが、下僚官僚を督励されまして、各種別明細をひとつお示し願いたいと思いますが、それに対する御感想を承りたい。
  14. 高橋衛

    高橋説明員 ただいま御要求になりました資料につきましては、後ほど調査をいたしまして、私ども手元にあります程度資料を差上げることにいたしたいと思つております。
  15. 三宅則義

    三宅(則)委員 私はここに今回改正せられました法律を持つております。     〔委員長退席小山委員長代理着席〕  しかし往々にいたしまして、この実情に対します訓練と申しますか、内容というものにつきましては議員はお知りならぬ。これは前国会におきまして、私は特に政府当局にお願いいたしまして、資料の一部を出してもらつた。ところが今度は改正税法につきまして、こういうふうに物品税改正なつた。中にはきわめて零細なるもので除きたいものが相当ある。たとえて申しますと、私が今注文を出しますから、これに対する御感想があつたらひとつ承りたい。これははなはだ失礼でありますが、ここに碾茶というものがあります。碾茶というのはお茶の一部でありますが、緑茶は免税になり碾茶は三割として残つておる。この碾茶などというものはきわめて少いものであると思いますから、これは一体どのくらいあるか調べてもらいたい。私の計算によるとおそらく二、三十万円ではないかと思う。こういうようなものもありますが、しかし今ここで資料を出せと質問をいたしましても、おそらく答弁はできないでありましよう。ですから明日でもけつこうですから、私の今から申し上げますことをよく書き取つておいて、これをひとつ命じてもらいたい。一つ碾茶、二番目はかみそり、これは生活必需品の特に身辺細貨、三番目はアルバムもしくは色紙、短册、これは文房具類の一部でありまして、今度文房具類免税なつた。ところがそういうものは三割残つておる。こういう部分に対してどのくらいの数量をとつておるかということを見たい。きわめて零細なものだつたら、本期国会におきましても、改正案を私は議員提出として出したい。かように考えておる。次にはガス器具、それからもう一つわれわれの日常使つておりますカバンです。こういうカバンというものにつきましても、高級品はともかく、日用雑品につきましては、なるべく免税したいという気分を持つておるのでありますが、これに対する意見を聞きたい。  次に日用雑品の中の、嫁入り道具一つでありましようが、家具、これらの点につきましては、新世帯を持つに必要なねずみ入らずでありますとか、火鉢でありますとか、あるいはまたその他げた箱などもありましようが、それらに対する税金、もう一つつけ加えて申し上げておきますのは、われわれの要求いたしますところの、どういうものがどれだけという調査した資料がないということでありますならば、これから後もいろいろな点を改廃するに都合のよろしいように、下級官吏を動員いたしまして、資料明細につくつていただきたいと思いますが、これに対する御答弁を賜わりたい。
  16. 高橋衛

    高橋説明員 ただいま御要求資料につきましては至急に調べまして、できるだけ早く提出いたしたいと思います。なお零細なる物の免税等に関する感想を話せというお話でありますが、私の方は税の執行面を担当しておりますので、個人的な感想を申し上げることは、かえつて妥当ではないと考えますので、差控えさしていただきたいと思います。
  17. 三宅則義

    三宅(則)委員 ただいま長官仰せになることももちろん至当です。長官は御承知通り立法者ではない。行政官です。行政官にあまり立法者のようなことを聞くのは失礼でありますが、しかし立法いたしますには、行政官から出た資料によつて立法するのが当然であります。でありますから大蔵省主税局長要求したときにのみ、資料提出するというようなことでなく、議員提出いたしました場合においても、極力これを出すような親切と雅量をどうぞ示してもらいたい。かように考えておりますが、その点についてもう一ぺん御答弁を賜わりたい。
  18. 高橋衛

    高橋説明員 もちろん主税局要求いたしますときと同じように、私どもはでき得る限り多数の資料を差上げたいと考えております。
  19. 三宅則義

    三宅(則)委員 大分時間をとりまして、あとの野党の諸君の御質問もありますから、あまり長くなることは遠慮いたします。  私は昨日もちよつと触れましたが、ひとつ長官から親切な熱心な、きわめて合理的な、またきわめて同情ある御答弁を賜わりたいことがあるのです。その事柄は、執行面を担当せられております国税庁長官に言うことはどうかと思いますが、実際考えてみますと、日本の民度というものはまだ民主的に、自主的に、自発的に納税を計算して納めるところまで行つていない。こういう面から見まして、私はぜひとも第三者、たとえば模範工場あるいは模範農業者模範商人、こういうものを選定して、その線に沿うということが一番便利であると思いますが、長官としてのこれに対する御感想を一ぺん伺いたいと思います。
  20. 高橋衛

    高橋説明員 御承知通り現在各納税者におきまして、正確な帳簿を確実につけていただいておる方は割合に少いのであります。従いまして私どもが大体所得の実相をつかみたいと思いますときは、ただいまお話のありましたような模範的な方々実績を調べまして、それらの実績から推して他の方々所得を推定する。またその他外形標準等によつてその人の所得を推定するということ以外に、方法がない場合が多いのであります。しかし何と言いましても所得税というものは、所得の実態に即することが根本なので、私どもといたしましては、今年は昨年よりは相当多数の実額調査もいたしましたし、またその他資料收集相当多数できたと思います。言いかえますならば、昨年よりは相当改善のあとがあると、私どもは下部の機関を監督して認めておるのであります。先ほどもお話いたしました通り税務官吏も若くはありまするが、漸次なれても参りましたし、教育の効果も漸次上つて参つております。もちろんこういうふうな理想的な税の執行ということは、一日にしてはなかなかなり得ないことでありますが、年一年と何とかして少しでも早く改善いたしたいと考えております。  また申告所得税という制度は、必ずしも日本の民情に合わないのではないかという御意見であります。それらの点について、実は私どももそういうふうな感想を当初は持つておりましたが、何と申しましても最も民主的な最も進んだ制度でありますので、われわれといたしましては何とかしてこれを完成する方向に努力して行きたい、そういうふうに考えまして、各申告期におきましては、納税者方々個々説明を申し上げ、そうして申告成績向上をはかつて参つておるのであります。従いまして今年度におきまして、第一回において予算に対してとにかく四割八分の申告成績を得ましたことは、将来においてこの申告納税制度は必ず完成し得るという自信を與えたものだと考えております。
  21. 三宅則義

    三宅(則)委員 ただいま国税庁長官は、四割八分でしたからまことにけつこうであると言う。私もその線が十分に助長せられまするならばけつこうであると思いますが、なかなか国民の心理がそこまで行つていないと思います。つきましては、ひとつこういう重大な問題を申し上げたい。われわれが正直に申告をしたにかかわらず、お前のうちは評判がいいから二倍であろう、三倍であろう、もしくは広くやつておるから五倍であろうというように、若い二十二、三歳の官吏が出て来ましてやつておる姿を見る。そうして相当な年輩の社長であるとか、あるいは重役でありましても、若い官吏にぺこぺこしておるということがある。そのために弱年で未経験な者が権力を濫用するおそれがあります。つきましては、われわれが異議を申請しました場合には、必ず三箇月なら三箇月以内にこれを処理決定する決意があるかどうか。もちろん人間が足らぬとか経験が足らぬとかいうことが多いことはわかりますが、現に一年もほおかむりしておるものがある。これを何と考えておるか、御答弁を承りたい。
  22. 高橋衛

    高橋説明員 審査請求に対しまして、お話通りこれをできるだけ速急に解決するということは、ぜひともなさなければならないところであります。しかしただいま御指摘のありましたように、税務官吏能力、また数が、この厖大な件数に対処するためにはとうてい足りないのであります。今年二十三年度の更正決定をいたしました数は、たしか五百二十万件であつたかと思うのであります。これに対して審査請求のありました数が百八十万件に上つておりまして、全体に対して三割五分に当つております。従つてこれを一々調査して解決して行くには相当な時日を要するのであります。今年の当初以来、この審査処理を一日も早く片づけたいということで、各税務署を督励いたしましてこれが促進をはかつたので、どうやら十月一ぱいをもつてほとんど大部分のものは解決済であります。きわめてわずかまだ残つておりますが、これは調査の対象が非常に複雑であり困難であるとか、または相当調査をしたけれども、なかなか御納得を得るに至らないという種類のものであります。なお来年度は今年度よりもさらにこの期間を短縮いたしまして、納税者方々にできるだけ御迷惑のかからぬように考えたいと思います。ことに来年早々取引高税も廃止になります。取引高税のために従事しておりました職員が五千人余りございますから、これらの人間訓練をいたしまして、所得税関係に振り向けるというような方法によつて、ある程度その点も緩和されますので、来年は本年より相当改善され得るというふうに考えております。
  23. 三宅則義

    三宅(則)委員 われわれが異議申請をいたしました場合は少くとも三箇月、最大限六箇月以内に必ず審査処理決定すること、この審査を怠つた場合は納税者申告通り是認するようにしてもらいたいと思うのですが、これに関する御感想を承りたい。
  24. 高橋衛

    高橋説明員 異議処理の問題につきましては、ただいま主税局におきまして法案を立案中であります。できるだけ納税者の利便をおはかりし、納税者の言い分を十分にお聞きし、不公平のないようにして、御納得を得るような制度に相なることと存じます。
  25. 三宅則義

    三宅(則)委員 今日苦情処理機構が設けられることになつておりますが、審査請求を出しますと、今度は帳簿があるかないか。かりに帳簿がありましても、この帳簿間違つているというようなことで、劍もほろろに帰される場合が往々にしてある。苦情処理機関を設けますについては、官吏だけが一方的にそれに携わつてはいかぬと思いますから、民間の各業者代表、もしくはわれわれの選出いたしました所得調査員とか税務調査員というようなものを加味いたして、これを決定することが穏健妥当であろうと思いますので、長官の御感想を承りたい。     〔小山委員長代理退席、委員長着席〕
  26. 高橋衛

    高橋説明員 税務の執行につきまして最も大切なことは、公平と親切ということであろうと考えます。お話のように、若い者で必ずしも態度のよくない、納税者に対して親切でない者もときどき見受けまするので、これらは嚴に戒めまして、そういうふうなことを絶滅するように努力をしておる次第であります。特に二十四年度におきましては、今までの実績から見まして、最も重い税ではないかというふうな感じもいたしまするので、納税者の血の出るような思いを身にしみて考えまして、同情をもつてほんとうに親切に対処することにいたすように、絶えず訓練をいたしておるのであります。しかしながら何分にも多数の税務官吏のことでもありますし、間々間違つたこともございますので、そういうようなものは遠慮なく御指摘を願い、われわれの方で是正して行けるように御注意をお願いいたしたいと考えます。  なおただいまのお話苦情処理機関につきましては、立法の問題になりますので、私から答弁は差控えたいと考えます。
  27. 三宅則義

    三宅(則)委員 ただいま長官は、苦情処理機関については立法の問題であるから、答弁は差控えるということでありますが、もつともなんであります。私の構想いたしますところによりますと、ぜひこういう構想があることを一ぺん税務当局、特に国税庁長官としての御感想を承りたい。この点は今までは皆さんも御承知通り兵隊の義務、教育の義務、納税の義務、これが三大義務であつた。ところが徴兵の義務がなくなつた。してみますれば教育の義務と納税の義務がわれわれに対しまする二大義務であると考えておる。教育は六・三・三制によつてあるいは高等学校、大学等ができまして相当進歩いたしておるのでありますが、ひとり納税の方になりましてははなはだ苦情が多かつたり、また圧迫するような点があつたり、あるいは所得よりも上まわつて決定するというような矛盾きわまるものがたまにはある。こういうことはいかぬと思います。次に特に東京とか大阪等の大都会において往々に見られます点は、長官もよく知つておいていただきたい。業者が税が高いというので移転をしてしまう。たとえば日本橋におつた者が高かつたために急に品川へ行つてしまつたとか、あるいは葛飾の方へ行つてしまつたというような場合におきまして、たとえば二十三年に五十万円を決定された。こんなに高く決定されては困るというので逐電してしまつた。移転してしまつた。移転先の品川でまた昨年のごとく申告すればけつこうでありますが、申告しない。してみますれば税務署調査の方は、私の考え方によりますと一割ないし一割五分しか調査しておりませんから、これを幾何級数的に計算いたしますと、五年目ないしは七年目に一ぺんまわつて来るという段階になります。してみますれば三箇年間ぐらいは品川の方でだまつてほおかむりをして、相当の利潤がありますにもかかわらず、納税をしなくても済むということになると存じます。はなはだしきに至りましては東京に十三年おつたが、一ぺんも税金を納めなかつたというやからもあります。これに対しますところの御感想をひとつ承りたい。  次に希望を申し上げたいことは、こういうようなことを防ぎますためにはぜひ税籍簿をつくつて、各区役所に戸籍簿と同様に税籍簿をきちんと置いていただきたい。少くとも私は二十歳になつたならば徴兵の検査はないけれども納税の義務は負うのだ、こういう意味において税籍簿に登録し、かりに日本橋から品川に移転しましても、また葛飾に移転しましても税籍簿がついてまわる。しかして二十三年度はどこで幾ら納めておつた、二十四年度はどこでどれだけ納める、二十五年度はどこでどれだけ納めるということがきちんとついてまわる。こういう制度をしつかりいたしますれば、穏健妥当で公平な負担をする端緒であると考えておりますが、税務当局の総取締りであるところの高橋長官はどうお考えか承りたい。
  28. 高橋衛

    高橋説明員 ただいま御指摘のように、転居その他の事由によりまして課税漏れになつたという方がまま存在することは、私も非常に遺憾に考えておる次第であります。従いましてこれを一掃するということの努力は、実は今年も相当いたしておるのであります。御承知かと存じますが、先ほど御指摘のように実際の帳簿について税額を調査できますのは、一割五分か二割程度のものであります。その他のものにつきましても必ず今年は戸順に、この家は何をやつておるか、この家はどのような所得があるかということを一応戸順に全部調べることにいたしております。そういうことにいたしまして、そういうように何年も納税をしておらない、または転居によつて一時免れておるという方々を見つけて行くという努力を、今年は相当いたしておるのであります。お話のような完全な税籍簿がもしもできますれば、私どもとしては最も望ましいことであるのでありますが、おそらくそれについては納税者に対して、または国民に対して申告または登録の義務を命ずるとか、そういうお手数をかける点もあるでありましようし、また一方登録簿自体についても、完全なものをつくります際においては、相当な費用と職員とを必要とするかと思うのであります。現在の徴税費の予算の範囲内では、なかなかその程度まで及ぶということは困難であろうかと思います。
  29. 三宅則義

    三宅(則)委員 たいへん長くなりましたからこの辺で打切りたいと思いますが、もう一、二点だけお許し願いたいと思います。  私の一番心配いたしますのは赤字経営で税金を納められないものが相当ある。これはもちろん労働者の攻勢がございましたり、あるいは業種の転換等がございまして、相当に納められないような状況にある場合もあります。この赤字経営ということに対しましては個人たると法人たるとを問わず、徹底的に調べて善導して赤字の出ないようにするということも、一つの務めであろうと思つておりますが、これに対しまする長官の御感想をひとつ承りたい。
  30. 高橋衛

    高橋説明員 税務官署といたしましては、所得の実相を把握するというところにもつぱら主力を注いでおります、経営の改善についていろいろと申し上げるということはとうてい手も及びませんし、またそういう大それたことを税務官吏が考えることは、いかがであろうかと私は考えます。
  31. 三宅則義

    三宅(則)委員 私はこういう例を聞いている。はなはだふしぎ千万であると思いますが、ひとつ御参考までに申し上げたい。お前のところはほかに頼んでおるそうじやないか。それよりむしろ私がやつてあげましよう。税務署の人が私の方でやつてあげますから、そうしなさいと言つてまわつたのがあると聞いております。これははなはだ官吏にあるまじきものだと思いますが、これに対する感想を伺いたい。
  32. 高橋衛

    高橋説明員 ただいまお話のような者がもしもあるとするならば、これははなはだ不届き千万なことでありますので、しかるべく懲戒処分をいたすべきものであると考えますから、できれば氏名、事実を私どもの方にお知らせをお願いしたいと思います。
  33. 三宅則義

    三宅(則)委員 今長官は下僚官吏に対して徹底的にこれを懲戒するという御答弁を承りまして、私も安心いたしました。今後そういうものが見つかつた場合におきましては、ただちに長官に伝達いたしますから、嚴重に調査をせられた上において善処をせられたい。  次にもう一つ申し上げたい事柄は、これはあなた方に御関係がないかもしれませんが、相続税等につきまして死んだ後に地方税たる事業税が決定せられる。こういうものは当然相続財産から差引くべきものであるというように考えておりますが、どういう御感想でありますか承りたい。
  34. 高橋衛

    高橋説明員 それはちよつと今……。
  35. 三宅則義

    三宅(則)委員 それではあまりこまかいことになりますと專門的になりますから、長官では少しむずかしい問題と思います。今後税に関します問題となりましたときには長官ばかりではいかぬ。やはり課長、部長等もひとつ列席してもらつて、場合によりましては真劍に討議し、また研究し、あるいはわれわれの足らざるところを補つてもらいたい。これは当然であると思いますから今後はそういうふうな方式で進まれたい。  最後に一言申し上げたい。二十四年度の所得税及び事業税等につきましては御承知通り非常に困つておる。この困つておる原因は少くとも金詰まりであり、また金融難の点からであろうと考えておりますが、この際ぜひ長官下僚官僚諸君に対しまして、命令はできないかもしれませんが、もう少し雅量のある、お互いに納税者が楽に納付をして納められるような方針にまで進めるべく善処せられたい。この善処の方法にいろいろありますが、少くとも、年末年始に際しましては多少の手心をする。こういう大衆的なお考えを承ることができますならば、光栄しごくと考える次第であります。
  36. 川野芳滿

    川野委員長 ちよつとこの際三宅委員に申し上げておきますが、高橋長官は直税部長を兼務されておりますので御了承願いたいと思います。
  37. 高橋衛

    高橋説明員 この十二月十日の租税歳入の実績予算に対して五七%余になつております。昨年はたしか四三%ちよつとであつたと思うのでありますが、昨年の同期に比較いたしましては、一四%だけ改善になつております。しかしながら申告所得につきましては、まだこれが三五%にしかなつておらないのであります。昨年の同期が二九%ちよつとでありましたから、六%程度改善を見ておるにすぎないのでありますが、御承知通り本年一月から三月、四月の候にかけましては、徴税旋風と言われるまでに非常に財界にも衝動を與えましたし、またそのために生じたいろいろな惡影響も必ずしも少くなかつたというふうに考えております。私ども責任といたしましては、どうしても今年度の見積もられた歳入予算は確保するということが、私ども一つ責任であろうかと思うのであります。同時にすべての納税者方々納得を得て納入していただくということが、また一方における一つ責任であろうかと思うのであります。ところがこの二つのことを同時に行うことはなかなか困難なのであります。勢いそこにはある程度双方の要請を妥協せしめるということが、必要になつて来る場合が多いのであります。私どもといたしましては今年春のような事態を起さないように、早期に税務官吏努力する。そうして早期に努力するということは、納税者方々に対してぎりぎりのところまで行かないで十分納得を得て、少しでも納めていただくように考えるということなのであります。御承知通り年末においては、何と申しましても金の出まわりが非常に多いのであります。言わば納税資金においてもそのときにおいては一番多くあるときなのでありますから、こういうふうなときに少しでも得られた所得を税として納めていただく。そうすることによつて延滯金なり、加算税というふうなよけいな負担を免かれていただくということが、私どもとしては納税者方々に対して親切なる方法である。また当然なすべき事柄であるかと考えますので、そういうふうに各税務署においては特に努力しておるかと思うのであります。
  38. 三宅則義

    三宅(則)委員 大分時間が経過しましたからこの辺でやめたいと思いますが、一言私はこの納税危機と申しますか、この年末に対する対策といたしまして、ぜひわれわれの意見を尊重せられたいという希望を申し述べたわけであります。ただいま長官お話でありますが、私どもは決して政府に対して協力しないものじやない。ところが同情すべきものがあります。たとえば自分の家の財産、不動産を売らなければ納税できないというようなものも間々あると私見ております。こういうものに対しては多少限界点と申しますか、最後の生活権擁護と言いますか、とにかくある程度の心がけをするのがわれわれの人情である。税務官吏も鬼ではない。人間です。ですからこうしたような不動産を売らなければならないというものに対しましては、相当の考慮をもつて当られることがけつこうだと思いますが、この事柄に対します御答弁を最後に承わりまして私の質問を打切りたい、かように思うのであります。
  39. 高橋衛

    高橋説明員 よく税の問題につきまして納税者方々お話を承りますと、なるほど所得税務署で調べられた通りある。しかしながら金は現実にないので、納められないのだというお話が非常に多いのであります。それも結局年末、年度末にさし迫つてあとになつて納めていただくようなことになるために、そういうような結果を生ずるのでありまして、私どもといたしましては一日も早く納めていただいて、そういうふうな非常に苦しいはめに陥らないようにお願いをするということが、私どもの責務であると考えておるのであります。  なおもちろん税務官吏人間でございますし、また親切を建前とするものでございますから、法の許す限りにおいては十分に同情ある態度を、みな持つてくれておるものであると考えておるのであります。     —————————————
  40. 川野芳滿

    川野委員長 徴税に関する問題についてはまだ質問者があると存じますのでこれをあとまわしといたしまして、昨二十一日本委員会に付託に相なりました昭和二十四年度所得税事業税等年末年始における納税延期に関する決議案を議題として審査に入ります。まず提出者よりその提出理由の説明を聽取いたします。竹村奈良一君。
  41. 竹村奈良一

    ○竹村委員 まず案文を朗読いたします。    昭和二十四年度所得税事業税等年末年始における納税延期に関する決議案   政府は、現下の事業不振、政府支拂の遅延、金ずまり、災害、食糧の減收、失業増大などによる国民の苦境を無視し、過度の年末更正決定、差押え、競売、延滯利子の加算等の徴税措置を強行しているが、これは国民生活、特に中小業者の生活を破壊に導くものである。   政府は現下国民の窮状にかんがみ、昭和二十四年度所得税事業税等年末年始における納税延期を認め、且つこの期間は更正決定、差押え、競売、延滯利子の加算等の徴税措置を即時中止すべきである。   右決議する。 この決議案提出いたしましたのは、これはあらためていろいろ説明するまでもないと思うのであります。おそらく各党各派におかれましても、国民のいろいろな階層から、特に中小商工業者あるいはその他の方面からの陳情等が、非常に参つておることと私たちは考えるのであります。しかも本年度のこの更正決定にあたりましては、先ほどからの質疑された中にもありましたように、いろいろな形においてむりな更正決定が行われておる。もちろんこのむりな更正決定を行わなければならない事情は、長官からもるる述べられておりますが、しかしそれが抜取り的に調査されて、一部分調査によつて全体がかくあるものだというような更正決定が行われますがゆえに、非常なむりが生じておる。その一例を——まだまだいろいろあるのでございますが、一例を申し上げますれば、これはほんの一部分でありますけれども、こういうような問題が起つておる。というのはこれは東京都の北区赤羽でありますけれども、袋小学校の小使をしておる人が、濠舎住いで自転車預り所を営んでいたが、不振のため本年五月廃業のやむなきに至つた。昨年度所得は六万五千円で確定した。廃業以来小学校の小使として勤務中、去る十二月七日九万円との更正決定通知を受けた。  あるいはまた東京都北区袋町、これは金子啓太郎という人でありますが、袋町一丁目日本火薬東京作業所に勤務中、終戰とともに失職、ふなれの茶商を開業したのであるが、六月末八万五千円の予定申告をしたところが、去る十一月初旬王子税務署の直税課鎌田事務官が来訪、調査の結果十二万円と修正申告をなしたところ、数日を出でずして十八万円との更正決定通知を受取つた。大いに狼狽し王子税務者に出頭し鎌田事務官を追究したところ、私の調査では貴殿の所得は十二万円であるが、上司の命令で十八万円としたもので、私どもには何ともしようがないから、まげて納得してくれ。言いかけたらいろいろあるのですが、ともかくこういうような決定が至るところに行われておる。これではわれわれといたしまして、その人々は安心して仕事に従事することができない。しかも仕事に従事するよりも、むしろおのおのの営業というものが破壊されて行くことが問題でありまして、もつとも新聞紙上で御承知のように、本年度におきましても中小工業者、あるいは小さな商人が死者狂いで売出し等をやつておるその際に、やれ更正決定通知、やれ差押えというようなことになりますと、その商売をつぶしてしまわなくてはならぬ。結局国民のこういうような仕事を破壊しておきますならば、おそらくいくら税金をとろうとしてもとることはできない。しかもこういう際にこれの異議申立てとかいろいろでき得ないような人たちは、これは本日の新聞でありますけれども税金を苦に自殺。二十日午後五時ごろ大田区大森二の一七四魚商鳥澤孝一(二七)さんは、自宅でねこいらずを飲んで自殺したが、二十二万円の営業税が拂えぬのを苦に」というような悲惨な状態を現出している。そこで私たちがこの決議案を出しましたのは、ともかくこういうようないろいろな不備をなくするだけの調査期間を置いて、しかも国民が一応本年度の年末、あるいは年始にかける間だけを一応この徴税を猶予されて、その間にこういうような不当なものを十分税務署の方において調査をして、そうしてむりな徴税を行わないというほんとうに正しい観点からこれを是正するために、この決議案をわれわれは出したわけであります。しかしこれも各党においてこの決議案の大体の趣旨を了承されて、一致してこれに賛成をしていただくならば、われわれは單独に出しましたこの決議案を引込めてもいいのでありますが、その点はひとつぜひとも各党が御了解されまして、できるならば案文等に加わつてけつこうでありますが、趣旨だけでも通ればよいのでありまして、御賛成をお願いいたしたいと思います。
  42. 川野芳滿

    川野委員長 本決議案に対する質疑がございますれば、この際これを許します。中野四郎君。
  43. 中野四郎

    ○中野(四)委員 ちよつとこの機会に関連してお聞きしたいのですけれども、愛知県の例をまずあげてきわめて具体的に聞きたいのであります。愛知県の各税務署では、業者を本年六月に各税務署ごとに集めまして、そうして本年は昨年決定税務署の通知に対して、二割から大体七割くらいまで、平均四割くらいを増して申告をすれば、これ以上は次の更正決定は出さぬということを、明確に言明したわけであります。そこで各業者はこれに応じて、五割あるいは四割、それぞれ適当なる増額申告をしたわけであります。ところがこの官庁の約束に反して、実質上十一月に更正決定がおのおの手元にまわされ、その金額は平均八割という率でありましたが、はなはだしきに至つては、最高三十割から三十七割という更正決定が来たわけであります。このように官庁が国民に親切を失つて、虚偽の課税をするというようなことははなはだけしからぬと思うのでありますが、ひとり愛知県のみならず、全国の国税局に向つてこのような指令を出されたのか。あるいは單に愛知県の国税局が県内の税務署に命じて、このような行動をとつたのか。この点をまず国税庁長官に伺つておきたいと思います。
  44. 高橋衛

    高橋説明員 ただいま御質問の六月におけるところの申告の慫慂と申しますか、その際各税務署において納税者方々に申し上げましたことは、経済上の事情に大きな変動がなければという條件と、それからただいま更正決定というお話をしておられますが、仮更正決定を出さない見込みであるということを申し上げたのだろうと思います。なお私も先般名古屋に参りまして事情を聞いてみたのでありますが、今回の更正決定の水準は、もちろんまだ計算は出ておりませんけれども、大体の見通しはただいまお話のありますような、昨年に対して八割増しというような数字は全然出ておりません。むしろ非常に低い水準に出ておりまするので、これでは本年度の歳入の確保ができるであろうかということを、実は私ども懸念をしておる次第であります。なお申告をお願いいたしまする際の各税務署のやり方につきましては、細部にわたりましてはもちろん各国税局または各税務署の考え方によつてつておりまするけれども、全体として六月においてとにかく申告をしていただく。それからできれば、今年は当初十一月に予定されたところの仮更正決定をやめて、その期間をずつと実額調査に充てて、そうして確定更正決定一本だけで行きたいということが私どもの念願であります。ところが実際にふたをあけてみますと、申告していただきました人の数、またその所得金額等が予想に反してあまり改善されておらないというところから、今年の歳入を確保するためには、どうしても仮更正決定をやつて行かなければ、本年の歳入の確保ができないという結論に到達いたしましたので、やむを得ず各局とも——全部ではありませんけれども、ぽつりぽつりと仮更正決定の通知を差上げておるかと思うのであります。
  45. 中野四郎

    ○中野(四)委員 徴税方法についてはある程度まで了承することはできるのですが、実情は大分あなたの方の考えと食い違つた面があると思います。税金というものは普通の国からいえば——敗戰国は別と考えましても、食つてから利益に対して税を出すというのが本来の行き方なんです。ところが日本では税を拂つてから食つて行かなければならぬというような苦しい場面にあります。食わなくても拂えというなら、財産があるのですからこれを処理して、しかる後に食つて行くというならこれはわかるのです。今度の一般中小工業者に與えられた仮更正決定というものは凹凸が調整されておらぬ。この委員会でも再々言われたことだと思います。また予算委員会でも言われたことだと思います。本年度の更正予算を見ますと、二百億の前年度の自然増は、私は惡く言えば、ざつくばらんの話ですが、水増し税が結局ここへ来たのじやないかと思えるのです。たとえて言えば、税務署の方でも片方のとれないところをば予算に入れて、とれる業者の方へ一般に多く割当てて行く。元来割当という制度はあり得ないのです。愛知県の例をあげてはなはだ恐縮なんですが、これは実際にぶつつかつておるのですから申し上げよいと思うのですが、いまだに業者々々に割当てておる。この割当が非常に均衡を欠いておる。妥当を欠いておる。従つて今日限りもう商売を放棄しなければならぬ。放棄すればあすからの生活の道が求められないというような、悲惨な事実がたくさんあるのであります。このわずかな自然休会の間に私らは各省を見まわつて、その事実を一つ一つ拾い上げて持つて来ております。従つてこういうようなことは国税庁長官として、当然八つの国税局に命じて嚴に戒めておられるはずだと思うが、事実はまつたくこれに相反しておる。仮更正決定を受けた愛知県の中小商工業者の心境は、私は非常に大きな打撃だと思う。ひとり愛知県ばかりではない。全国だと思う。そこで私が伺いたいことは、あなたの方は今度愛知県の国税局に大体どのくらいの割を割当てられるか。おそらく八つの国税局にわたつて名古屋国税局は幾ら、仙台国税局は幾らというふうに割当てられておるはずであろうと思う。この点を明確に伺いたいと思います。
  46. 高橋衛

    高橋説明員 先ほども三宅委員にお答えを申し上げました通り、今年度は各国税局または各税務署に対して割当ということは全然いたしておりません。私ども目標といたしておりますのは全体として千七百六億円、これは先般の臨時国会において元の千九百億円を修正されまして、約二百億円の減收を見込まれて千七百六億円と御決定になつたのであります。私ども責任はこの予算に盛られたところの税額を、何とかして国家の收入にするということが私ども責任であろうかと思いますので、そういうふうな面に向つては全面的な努力はしておるけれども、しかしながら各局割当てるということは全然いたしておりません。またただいま各同業組合でありますか、そういうようなものに対して割当をしておる事実があるというお話でありますが、これは先般のシヤウプ勧告におきましても、そういうような事柄が税の本質から見て当を得ないという御指摘がありますし、また私どもはそういう点にある程度の弊害を考えておりましたので、本年は何とかしてそういうことでなしに、具体的な資料をつかんで個々決定して行きたいという努力をいたしております。もちろんあらゆる資料收集するという意味におきまして、同業者の団体の方からいろいろな資料をいただいて、それを参考にするということはいたしておりますが、しかしながらそれはどこまでも資料であつて、われわれの考えとしては何とかして確実な資料をあつちこつちから集めまして、そういうようなことによつて、業種間の不公平とかまたは地域間の不公平をなくして行くことに、全力を注ぎたいと考えるのであります。
  47. 中野四郎

    ○中野(四)委員 国税庁長官の気持はわれわれと同感であつて、たいへんよろしいと思います。ところがそれが末端へ行くと行われておらないのです。事実上においてシヤウプ勧告による税制改革が来年度より行われる。本年度行われていないこの間隙を縫つて、ややもすれば税務署が昨年と同じ形を踏襲しておる感が深いのです。特に同業者間に割当てないとおつしやつたけれども、これは三宅君からもお尋ねがあつたと思いますが、私と選挙区が同じですから、同君の方が詳しいと思いますけれども、同業者間に割当てておる。いま一つ考えなければならぬことは、一体税務署職員諸君は、国民にほんとうに親切に当るべきであるにもかかわらず、近来、名前をあげては惡いかもしれないが、名前をあげてよろしければ幾らでもあげますが、不当な課税に対して折衝に来る個人には会わない。団体にはもとより会わない。会えないというよりも会わないのです。個人の折衝も団体の折衝も、会いに行つても一切受付けない。一体どこへ持つて行つたらいいか。今ここに決議案が上程されておりますが、この今付議されておる決議案の内容から言つても、特に年末に際して困り切つておる。今度の税金についてはサラリーマンや法人関係は比較的冷淡に見ておりますけれども、中小商工業者にとつては大問題です。今言われるのを聞いておると割当ててないということですが、事実末端の税務署では割当てておるのです。あなたのおつしやる言葉が真であるか、私の言葉が偽であるか、これを確かめるには、あなたの方から監督官なり調査官なりを派遣されて、愛知県下をお調べになればわかることです。特に三河地帶がひどいのです。近来調査査察官というのですか、ああいう方々が非常な暴言を吐いてやつておられるようですが、私どもの方では屠殺官と言つておる。あれに見舞われると一家全部屠殺されるというので、調査屠殺官という名前で呼んでおる。末端の税務署においては、いま少し親切に個人あるいは団体と折衝されて、仮更正が三十割、四十割というようなべらぼうな不当なものに対しては、十二分に相談をする準備がなければならぬ。ところが税務署では一応は仮決定をやつたけれども、これは十分相談する余地があると言つておる。私も現にその応対ぶりを聞いておる。してみるとこれは水増し課税と言わなければならぬ。たとえば五十億とろうとすれば八十億くらいぶつかけて、あとでだんだん調整をする。調整するのもけつこうだが、調整する場合に一体どういう方法で調整をするか。全然個人でも折衝できないし団体でも交渉できない。こういうふうになると非常に困るのは業者ばかりである。この点が非常に徹底しておらぬと思う。あなたの方でもし幸いにそういう割当制をやつておらぬとおつしやるのならば、すみやかに愛知県下をお調べになつて、その報告を求めたいと思うのであります。こんなことをくどくど申しておつても同じことですから、率直に申し上げますが、この愛知県下の特に中小商工業者に対する割当課税というものは、非常に過重なものである。とうていこれは受入れることのできない状態にある。愛知県下の菓子屋さんなどは、全部廃業しなければならぬという悲惨な立場にある。これはぜひお調べを願いたい。私はほかにお聞きしたいこともありますが、共産党から重要な問題が提案されておりますので、端的に私はこれだけ聞いておきます。
  48. 高橋衛

    高橋説明員 納税者方々に親切に応対しなければならぬということは、私どもの常に念願しているところであります。従いまして個々納税者の方方がお見えになつたときに、それに会わないというふうなことがもしも頻繁にあるとすれば、これははなはだ不当なことでありますから、十分に訓戒いたしたいと思います。  なお団体交渉に関しましては、シヤウプ勧告においてもこれは妥当でない。税というものは政治的に決定すべきものではなく、個々の税の実体をいかにしてつかむかということに努力すべきであるということが述べられておりますが、私どもはまことにその通りであると考えております。なお割当という事柄の内容が、いかなることを意味するのかちよつとはつきりはつかみかねるのでありますが、おそらくは各同業者団体の方々に、いろいろな資料税務署においては出していただいております。従つてその資料を出していただくことが、割当に該当するかのごとき感を與えておるのではないかという感じもいたします。しかしながら税務署としましては、それのみによつて決定することは何とかして避けたい。ほかの資料をいろいろ集めまして、また各地区間の公平をはかりますために、国税局調査官または国税庁調査官あるいは監督官も、その方面に絶えず働いておるわけでありまして、抜き検査をいたしまして公平をはかつておるのであります。  なお仮更正決定に対しましては、今回はたいていの場合におきまして、事前にこの程度修正申告をぜひお願いしたいということを、一々申し上げておるつもりであります。これは非常に手数のかかることでもありますし、非常に苦痛なことではありますけれども、何とかして納税者方々税務署の見解を申し上げて、仮更正決定というふうなものを、やぶから棒を突きつけるというようなことでなくやつて行きたいということで、税務署においでを願つてお話を申し上げておるのでありますが、先般私が参りましたときにも税務暑におそらく七、八十人あるいは百人程度の人が来ておられまして、それぞれ熱心に係員とお話合いをしておられました。こういうふうな状況を見まして、私はむしろ非常によくやつてくれるというくらいに見て参つたのであります。個人でも団体でも全然相手にしてくれぬという感じは、実は持たずに見て参つたわけでありますが、どうぞそういうふうな点を御了承をお願いしたいと思います。
  49. 中野四郎

    ○中野(四)委員 あなたたちがお行きになるときは大いによくするのです。そんなことは論をまたないことで、近ごろ少しえらい人が視察に行くといえば、よごれたところはすつかりぞうきんをかけていいところだけを見てもらつて、惡いところを見てもらおうとはだれも考えておらない。学校に、公会堂に、あるいは税務署に呼びつけて、税務署長がいろいろお話になつたのですが、そのときに今言うように——今年の六月ですが、それが大体二割から七割、平均四割の増加申告をすれば、本年度は仮更正決定を出さないというお話でしたので、業者の連中はそれに応じております。いま一つあなたと話の食い違つておる点は、たとえば菓子なら菓子、自転車なら自転車、そういう業者別の代表をみな集めたその席上で、大体この意見を述べたあとで、出したものに対してそれぞれ検討を加えて報告をされたものですから、業者の連中はそれに応じてそれぞれ出したわけです。その出したものに対して三十割、三十割というふうな過重なものが来る。これに対して折衝する。税務署に具申をして訂正すべきものを訂正したいというのだが、個人的な折衝は受けない。あるいは団体というのは——私の言うのは団体交渉じやない。たとえて言えば組合の代表を集めて言われたのなら、その組合の代表が来て、組合全体の問題について訂正あるいは調整方を頼みに行くわけです。ところがそれには応じない。一体寄りつくところがなくなつてしまう。あなたのお言葉を聞いておれば、まことに税務署の人がよくやつて、スムースに行つているように思われますが、私が考えるのとはまつたく相反している。ここでは私はくどいことは申し上げませんが、ひとつ率直に愛知県の方を調べて、あなたの方の資料を出していただきたい。やつておるのかやつておらぬのか。事実やつておるのです。その調整の方法がついておらぬ混乱状態ですから、ぜひお調べを願つて報告していただきたい。私もそれに対して資料を提供することは、やぶさかでないということを申し上げておきます。
  50. 川島金次

    ○川島委員 この決議案の審議にあたつて、関連して一言長官にお伺いしておきたい。先ほど三宅君の質問に対して長官は、年末は年末資金が流れるときだ。その流れのときだから大いに徴税をやりたい、こういつた意味のことを言われておつた。まことに長官に似合わない奇怪な言葉だと私は聞いておつた。言うまでもなく昨年の源泉徴収を除いた他の申告所得予算というものは、千二百億だと思います。今年はそれが予算は千九百億に増大されておる。しかも昨年末の通貨の発行量は、年末において三千六百億になんなんとしておつた実情なのであります。ところが本年度は年末通貨の発行量の予定高は、政府は三千五、六百億、すなわち昨年末の発行量と同程度になるであろうということを予定し、議会でもしばしば言明して来た。ところが通貨量は昨日でも三千八十億で停滯しておりまして、しかもこの通貨量がわれわれが予想し、もしくは政府が予定しておつたように上昇の気配が今もつてない。そこでその反面には千九百億、昨年に比べれば六、七百億の余分な徴税をする段階に来ておる。そこに私は非常なむりがあるのだと思う。これを言いかえれば、本来ならば昨年の千二百億、今年の千九百億、それと通貨の発券高を組合して考えれば、少くとも本年の今ごろでは、昨年の通貨額あるいは徴税額等を勘案すれば、どんなに少くとも四千億くらい出ておれば、あるいはまた昨年末のような徴税が行けるのではないかということになるのだが、実際はそれと逆に非常な金詰まり、そして金詰まりの上に持つて来て、徴税予想高というものは昨年よりも六割もふえておる。こういうことの実情を見れば、長官の言われるように年末には年末資金が流れるのだという、この恒例的な考え方はきわめて誤りであり、危険な事柄じやないか、こう思うのです。そういう観点に立つて、先ほど長官は年末資金が流れるというお話をされたように私は覚えておるのですが、その事柄に対して、どういうふうな考え方を持つてこの徴税に当つておるのか。これをひとつお聞かせ願いたいと思う。
  51. 高橋衛

    高橋説明員 本年度の申告所得税予算は、御承知通り千七百六億円であります。昨年の千二百億円に比較いたしますると、約五百億円ほどの増加になつております。私どもの見解といたしましては、昨年におきましては賃金ベース並びに物価の改訂が、年の中途において行われたのであります。物価の改訂はたしか八月ごろから始まつて、十月ごろに大体終つておる。しかもその物価の改訂が相当大中でありました。また通貨の発行高につきましても、年の初めと年の終りにおいては、たしか一千億円程度の増加があつたように思うのであります。そういうふうな観点からいたしまして、また一方生産の指数を見ましても、昨年は年初と年の終りの近くにおいては非常な躍進を見ておりますが、今年は年の当初から相当上つた水準において、今日まで大体維持されているような現状であります。従いまして理論的にはまたいろんな計数から考えまして、これだけの歳入があり得るものだというように、私どもは考えているのであります。これは主税局の主観でありまして、先般の臨時国会において十分御審議を願つたと思いますので、あらためて繰返すことはいたしたくないと考えます。  なお関連いたしまして、年末においては金が流れるから、その機会にできるだけ税を納めていただくということにつきましては、年末においてはすべての決済が行われるときであります。何とかして滯納になつている税金も、苦しいではありましようが、この機会にできるだけ多くお納め願つておいて、加算税なり延滯金が累積することによつて将来非常な禍根を残し、非常な苦しい目にあうというようなことがないように、この機会に十分各納税者に御注意を申し上げ、少しでも多く納税していただくということは、税務官吏として当然とるべき態度であり、また責務でもあろうかと考えまして、そう申し上げたのであります。
  52. 川島金次

    ○川島委員 どうも私のお尋ねした趣旨とちよつと遠い、的はずれのようなお答えで不滿であります。私の言うのは、年末の通貨の現状と徴税の予定額と、昨年に比して非常な違いを見ている。その変貌しているもとにおいて、この年末に昨年と同じような心構えで徴税しようという考え方が正当である、むりがなく行くのであるという考え方を持つているのかどうかということを、私は長官自身の所見を承りたい、こう思つてお尋ねをいたしたのであります。それについての所見を承らせてもらいたいと思います。
  53. 高橋衛

    高橋説明員 先ほど三宅委員の御質問に対してお答えいたしましたように、二十三年度におきましては一月から四月に至る間において、非常に大きな税の徴収を行いました。これは予算の確保のため税務官吏等も非常な努力をいたしまして、従つてまた納税者方々にも非常な影響を與え、経済界にも衝撃を與えた点が相当あつたかと思うのであります。そういうことを繰返したくないという意味をもちまして、今年は年度当初から非常な努力をして参つたのであります。しかしながらその状況は必ずしも楽観を許さないという状況でありますので、私どもとしましては、今日の税の納入をお願いするという態度を、一月ないし三月につきましても大体同様の程度に持つて行きたい。一——三月になつてあわてて狂奔するということが起らないようにいたしたい。現在の大体の態度でずつとそう御迷惑もかけず、そんなに大きな衝撃を與えないような方法で、ぜひやつて行きたいと考えております。年末だから特にとか、またはこの際やつておかなければならぬというような感じでなく、なるべく平均的に十二月、一月、二月、三月というように各月において收入をあげて行きまして、日本の経済に惡影響を與えないようなことに扱つて行きたい、こう考えている次第であります。
  54. 川島金次

    ○川島委員 長官のその言葉については、しごくもつともに聞えるのですが、先ほども三宅君や中野氏からも言葉強く言われたように、そういう言葉の通りには実は行つておりません。この金の詰まつたきわめて深刻な年の瀬を迎えて、全国の税務署がおそらく総力をあげて、強引な徴税攻勢とも言うべき態度をつくつてつております。先ほど共産党の方からも言われたように、例をあげれば実に枚挙にいとまのない話であります。今都市における営業者などは、年末を控えてそれぞれ売出し、特売などをやつておるところが多いのです。ところが昨年末と違つて、先ほど私が申し上げましたように、政府の支拂いが遅延しておつたり、その他のいろいろな経済的な諸條件が重なつて、昨年に比しては格段の相違のある深刻な金詰まり、従つて金のめぐり方がきわめて停滯的な実情である。そこへ持つて来て、一般の消費者階級であるべき労働者、公務員、こういつた方面の手当なども若干きまつてはおりますが、まだ出ておらない。こういつたことで売出し、特売というようなものはほとんど採算を割つてのダンピングをやる。しかもそのダンピングをやる有力な根拠は、何とか税金を納めなければ店をつぶされる。こういつた恐怖の心持の中でダンピングをやつておるという実例が多い。そういう最中に入つてむりな一方的な査定をしたり更正をして行くというこの徴税態度というものは、法律の上からいえば、それは当然だといえばそれまででありますが、全体の日本の経済再建ということも考えなければならぬし、国民の生活の確保安定ということも、これはいかに国税長官といえども総合的に考えて行くべき立場のものであろうと私は政治的には思う。にもかかわらず、実態は先ほどから申されたように、実に年末攻勢のはなはだしいものが、われわれから見ましても実際にあるわけであります。そういう形においてでなく、もつと何か国税長官日本国民の、しかも零細な営業者、零細な所得階層に対するところの強行的な態度を改めて、もつと国民納得の行くような、この年の瀬にあたつた税指導、納税指導というものをやる必要があるのではないか。そうでないと、先ほどからも言われたように、もう店を閉めなければならぬ。元を切つてダンピングをしなければならぬ。元を切つてダンピングをしたのでは、せつかくの納税金も残つて来ないということになつてしまつて税金は入らぬ、営業者は破産をする、こういうことになるのではないかというおそれが十分にあるのでありまして、そういう態度、方針をこの際極力改めて行く必要があると思う。その事柄について長官はどのようにこの際考えておるかということを、重ねてお尋ねしておきたいと思う。
  55. 高橋衛

    高橋説明員 御承知通り所得税は一月から十二月までの実際の所得に対して納税をしていただくのでありまして、もしもダンピング等によりまして元を切つて売るというような場合におきましては、当然その場合においてはある程度の損金が生ずる。従つて一年の所得に対して相当な影響を及ばすということは当然であります。本来所得は一年を終りまして、初めて実際の実額が把握できるのであります。確定決定の際においてそれらの間を十分に含めて御申告願えれば、けつこうだと思うのでありますが、仮更正決定をいたします際におきましても、そういうふうな情勢は十分に織り込んで、実際の調査に当つたものを基本にいたしまして、仮更正決定をしておると思うのであります。もちろん非常に多数の方々全部について当るということは、非常に困難なのでありまして、相当数の方々に対しては推定の課税にならざるを得ぬのであります。それらの方々につきましては審査請求等によりまして、これをさらに具体的に調査をして訂正をして行くことにいたしたいと考えるのであります。  なお私ども先ほどお話いたしました通り、年末は資金が流れるときでもありますし、またすべての決算をする習慣になつているときでもありますので、こういう際にできるだけ多くの納税者方々のところへ伺つて、早期に納税の義務を果していただくという努力をすることは、当然必要なことであると思うのであります。しかしながらその際にいやしくも権利にのみ頼つて、不親切なまたは過度の事柄があるとすれば、これははなはだおもしろくないことであると考えまして、ぜひそういう点は修正してやつて行きたいと思つております。
  56. 川野芳滿

    川野委員長 風早八十二君が委員外の発言を求めておりますが、これを許すに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 川野芳滿

    川野委員長 御異議がないようでございますので、この際これを許します。風早八十二君。
  58. 風早八十二

    ○風早八十二君 元大蔵委員のよしみで委員外発言をお許しくださいまして、まことにありがとうございます。皆さんに感謝いたします。私が特に今日参りましたのは、この問題が今年末差迫つて最も緊急な問題であるという意味で、通産委員であります私としましても、とうてい捨てておけないという意味で上つたのでありまして、この決議案に関連いたしまして、私も若干の質問のような発言をさせていただきたいと思います。  この更正決定の問題は第一に実情に沿わないということであります。今更正決定をただ延ばしてくれ、やめてくれといつたことを頭ごなしに言つておるのではないのでありまして、もう実際にかかつて来ておるのであります。それを実際に見ましても、実に言語道断なひどいものであります。たとえば昨年十七万であつたものが今年は五十万であるというように、枚挙にいとまのないほどひどいものであります。先ほど高橋長官はいろいろ調査した上でやつた、財政上の必要上やむを得ずやつたというお話であります。財政上の必要ということと、それから生活の実際の窮迫という実情の、この二つをどう調和するかという問題は、あとで触れたいと思いますけれども、いずれにしましても調査をやられたという。ところが実際調査はやつておりません。全然調査をやらないで、やぶから棒にやつておるという実例を幾らも私はつかんでおる。しかも調査をやつたという場合におきましても、いわゆる間接調査と申しまして、これは調査と言つておりますけれども調査ではない。知らない間に調査されておるのでありまして、実際の実情はそれに合わない。その業種で大体のところを見当をつけてやつたと言われるのでありますが、その計算の比率、つまり利益率の割合なんかは実にべら棒なものであります。收支計算のごときはもう八割も——これも地域によつて非常に区々まちまちでありますけれども、八割の利益をかけられておるといつたような実例もあるのであります。そういうことを考えますと、この調査そのものがはなはだ問題である。そういう意味で私は根本的に今回の仮更正決定実情に沿わない。この点が第一の問題であります。ここからやはり問題を出発していただきたい。実情に沿わないのです。これについて私は長官に伺いたいのでありますが、私ども納税通信という新聞を読んでおります。その新聞に先般阪田国税局長の談といたしまして、十月二十七日全管内署長会議で言つておられます。それによりますと、所得税については前年比較を念頃に置かず、実情に即した課税をやれということを強調し、かつ前年より收入の増減があつても問題はない。威信の回復のために、調査済みでなければ仮更正決定行つてはならないと書いてある。こういうことははなはだけつこうであります。その通りども納得します。こういう発言に対しまして、長官はどういうお考えでありますか。やはりこれは長官から指示せられました趣旨に従つた発言だということを認めていただけますか。この点をちよつと伺いたいのです。
  59. 高橋衛

    高橋説明員 予算決定されました以上、その予算額を確保するために努力することは当然でありますけれども、結果としてそれに至らない場合、またはそれより増收を見ることは当然あり得るのであります。従いましてそれに拘泥することなく、実情に即して常に実態を把握してやつて行くということが、私どもの常日ごろの念願でありまして、今まで税務官吏の不足または質の低下等のために、必ずしもその目的が達成できないで参りましたことは、はなはだ遺憾とするところであります。連日それらの努力を重ねまして、今後何とかしてその理想に到達するように努力をいたして行きたい、こう考えておるのであります。また阪田局長の言つておりますことは、その通り私の意見でありますから御了承願います。
  60. 風早八十二

    ○風早八十二君 たいへんこれはありがとうございます。私どもはその趣旨に従つて、上の方ではやられるということだけは十分確認します。それだけに実際の実情を見ますと、先ほど中野委員からも御発言がありましたように、これはもうあなたの御趣旨どころか、先ほどあなたがある税務署を視察されまして、実際にうまく行つておるというような御報告もありましたが、それはまつたくそのときだけのことでありまして、われわれがどんな報告を受けましても、また私どもが事実業者諸君と一緒に税務署に参りましても、その業者に対する扱いたるや人間扱いではない。会うとか会わないとかいう問題じやありません。てんで人間扱いしてない。まつたくばかやろう呼ばわりしてやつておるわけでありますが、そのためますます業者諸君は萎縮して、結局自殺しなければならない。これは今税金による自殺ということは見つけるのにほとんど手間をとらない。どこの新聞を見たつて毎日何かかんか出ておる。そのくらい年末にあたつて税金の徴収というものが、業者にも面接生きるか死ぬかの打撃を與えておるのであります。こういう点はもつと深刻に実情をお考え願いたい。ただ公平であるとか公平でないとかというような段階ではない。実際にとられるかとられないか、生きるか死ぬかという問題になつておるのであります。そういう意味におきまして私はこの問題を出しておるのでありまして、財政の必要ということと、生活の実情ということと、この三つのいずれをとるべきかという問題になつておる。かりにそれで財政に穴が明いてもしかたがない。実際実情に即してやらなければならぬというのが阪田局長の趣旨であり、またそれこそは、今長官が御自分でやはりそういうふうな趣旨の指示を與えておるということでありましたから、私は安心したけれども、実際問題はそういう場合と、それから財政の必要ということが矛盾する場合に、どつちをとるかという問題まで来ておるわけです。その場合にはどうしてもまず国民は生きなければなりません。国民を生かさずして何の財政ぞやと言いたいのであります。でありますからこの際はひとつ勇断を振つてこの問題に対処していただきたい。  私は次に民自党の皆さん方に特に訴えたいのであります。それはこの問題は決して政党政派、あるいは一会一派の問題ではありません。これはまつたくほとんど全国民に共通した問題であります。従つて国会内におきましても、この問題はどこまでも政党政派を超越して、民自党であろうが共産党であろうが、そんなことはもう言わないで、とにかくこの問題の実態の御趣旨に賛成願いたい。われわれはその場合におきましては、全会一致ということになりますれば、この案文その他はおまかせしてもいい。またわが党の発案でありますから、そういうものは撤回してもかまわない。とにかくこれで実際に政府を動かして、この年度内に実効を上げるということが問題でありますから、その意味におきまして、ひとつ民自党の皆様方の絶大な御支持と御賛成を得たいのです。実は先般来民自党の方へも、東京の各地域のいろいろな業者の団体がほとんど漏れなく押しかけて参りまして、廣川幹事長も会つておるはずで、皆様も御承知のはずです。また東京商工団体協議会などは、たびたび参議院会館などで大会を持ちまして、そこへ各党の議員諸君を招いたのであります。私どももそこへ何回か参りましたが、実は実情を聞いてみればじつとしておれないような状態であります。そこで特に民自党の皆さん方にお願いしたいのだが、これはおためごかしを言うわけじやないのでありますが、民自党の非常な有力な一人であります委員長を前にして、はなはだあれでありますが、酒屋さんたちが今度は同業組合をひつさげて陳情、請願にどんどん来ておられる実情であります。これは廣川幹事長のおひざ元の目黒でありますが、業者が全部署名して来ておる。これは廣川幹事長も、十分考慮するというような言質を與えておられるほどであります。この際どうか政党政派を離れまして、問題の重要性にかんがみて、ぜひとも民自党の諸君の御賛同を得たいのです。  その形式その他につきましては、急ぐことでありますから、明日でもさらに委員会を開いていただきまして、さらに案も練り直して、今日明日でなければ本会議もなくなると思うので間に合わないと思いますから、ひとつ御善処方をお願いいたします。  なお政府当局に申しておきたいのですが、池田大蔵大臣が今日の各新聞に、たとえば日本経済を見ましても、証券業者に対する税金の査察は当分やらないというようなことを言つておりますが、こういう処置もできるのでありますから、更正決定年末年始に一時たな上げにすることくらいは、行政措置としてできるわけであります。その点はできることを私どもは申し上げておる。できない非常なむちやくちやなことを言つておるわけじやない。そういう意味でこれはさつそく閣議に諮つて、大勇断を振われることをぜひお願いいたしておきたいと思います。一方におきまして金詰まりの問題がまずこの前にある。その点につきましては政府は証券業者に対しましては、多くの株の暴落に対する対策でありましようが、手持株価の評価につきましては、今までは一割を最高にしておつたのを、大体一割五分というような非常な含みを今度は與えておるというような実情にあるわけであります。そうしてみれば証券業者どころではない。ほんとうに今働いてそうして困つておる業者諸君のこの実情を考えられれば、当然やるべきことであり、またやれることであるということをひとつ確認されまして、しかるべく善処していたがきたい。ただこの点につきましてそういう可能性はある、あるいはそれについて検討する用意はある、こういうこについて、あるかどうかということにつきまして、長官の個人的でもあるいは公でも御意見を伺いたいと思います。
  61. 高橋衛

    高橋説明員 御承知通り国税庁法律をそのまま実行するということを命ぜられておる役所であり、役人であります。従いまして法律のわく外に出るということは、絶対に許されざるところであると思うのであります。もしもそういうふうな措置を必要といたしますならば、われわれが法律違反でないということになるように、国会においておはからいをお願いいたしたいと思います。
  62. 風早八十二

    ○風早八十二君 今私どもがここに決議案として出して来ておりますが、これは法律違反にも何にもならない。むろんそういうものになる気づかいはない内容のものでありまして、具体的にこの点につきまして、今私が申したような処置、つまり年末年始を一時延期するわけです。ただそれだけの話です。今売出しで夢中になつておるその売出しも、例年とは違つて、例年ならば十二月は十一月の三倍くらい売上げがあるわけですが、今年は半分しかないということを訴えておる。そういう実情のもとでそういう税金が来たら、これが致命傷であることはだれでもわかるわけですから、そういう場合に一時延期するということ自身が、実情に即した課税をやると言われるその税件の根本趣旨に、まつたく合致しておるとわれわれは確信してはばからないのです。そういう点で具体的にこの問題につきまして、その措置をやるとした場合に、それが遵法になるかならないか。税法の趣旨やまた本質におきまして反するか反しないか。この点について御意見を伺いたい。
  63. 高橋衛

    高橋説明員 仮更正決定につきましては、すでに御承知であろうと思いますが、仮更正決定の通知を差上げましてから一箇月後を納期といたしております。現在仮更正決定の通知を差上げております趣旨は、年末においていろいろ金の出入りもあろうと思いますから、そういう際に、大体この程度の税は予定して準備をせられることが妥当であろうという趣旨をもつて、今通知を差上げておるのであります。今ただちに納期になるものではないのであります。その点について御了承を願います。
  64. 風早八十二

    ○風早八十二君 その仮更正決定は大体十一月に出たと思うのですが、今この二十日からみな取立てられるというので、それでみんな戰々きようきようとしておるのです。あなたの言われるのはほんとうですか。今これから先一箇月、税金をとらないということはほんとうですか。
  65. 高橋衛

    高橋説明員 これから更正決定を出すものについての問題であります。今まで出してしまつたものにつきましては、納期はおそらく来ているものもあろうかと考えます。
  66. 中野四郎

    ○中野(四)委員 この決議は民自党諸君の回答を得なければおそらくきまらないと思います。本日はこの程度にして、明日さらに民自党の諸君答弁をいただくということにして散会をしたらどうでありますか。
  67. 川野芳滿

    川野委員長 それでは本決議案に対しましては、各党とも党に相談の点もあるかと考えます。なお本会議も始まりましたので、本日はこの程度にて散会いたします。     午後三時十四分散会