○
鈴木(善)
委員 水産業
協同組合法の一部を
改正する
法律案につきましては、
委員会から
漁業制度に関する小
委員会に移されましてから、二回にわたり小
委員会を開催いたしまして、愼重審査を進めたのであります。その結果、小
委員会といたしまして、一応の修正草案を作成いたしたのであります。しかしながらこの
協同組合法は非常に重要な
法律案でありまする
関係から、参議院と十分
意見の交換をいたしまして、参議院の
水産常任
委員会の修正草案と、当小
委員会の修正草案とを持
ちよりまして、でき得れば両
委員会の
意見の一致したところをもちまして修正案といたしたいという
考え方で、当
委員会が作成いたしました修正草案を参議院の
水産委員会に御
説明を申しあげ、参議院のご
意見もいろいろ承りまして、以下申し上げるところの大体の中間的結論を得た次第であります。
その要旨を申し上げますと、まず第一点は組合員の資格の問題であります。現行法におきましては「
漁業を営み、又はこれに従事する日数が一年を通じて三十日から九十日までの間で定款で定ある日次をこえる」もの、これが正組合員の資格に相な
つてお
つたのを、「一年に九十日以上
漁業を営み、又はこれに従事する」ということに改めたい。その理由といたしましては、最低三十日の就業日数をもちまして
協同組合の正組合員にいたしますことは、專業者にあらざるところの、非常に軽度の兼業者までも正組合員の資格をこれによ
つて付與されることになるのであります。農業
協同組合及び
漁業協同組合の成案にあたりましては今後の農業団体、
漁業団体は、農民にあらざる者の支配から農
漁民を解放して、真に働く農
漁民の自主的な協同組織として、これを民主化すべきであるという指令があ
つたのでありますが、この三十日から九十日ということでは、北海道あるいは三陸その他の
地方におきまして、いかの漁期その他等にも見られますように、宿屋の主人であるとかあるいは風呂屋の番頭であるとか、あるいは学校の先生たちが、ほんとうの片手間に沖に出て、副職的に
漁業收入を上げているのですが、それが三十日以上になるということは、さしたる
努力ではないわけであります。その結果真の專業
漁民にあらざるところの、これらの非
漁民とも称すべき人たちが、正組合員とな
つて議決権を持ち、役員の被選挙権を持
つて組合を支配するということは、先般申し上げました指令の精神にも合致せざるものであり、組合の純化を妨げるものとして、かように修正いたしたいと
考えておるのであります。
第二の点は、これは准組合員の資格の中で、第十八条の第三項第一号の
改正規定中、「住所」の下に「又は
事業場」を加える。また同項第号の
改正規定中、「及び
漁業を営む
漁業協同組合」を削り、さらに同項第四号の
改正規定中、「三百トン」を「五百トン」に改めたい。まずその
関係を御
説明申し上げますが、この十八条の第三噴第一号の
改正規定中「住所」の下に「又は
事業場」を加える。このことは
政府提案のミス・プリントとでも称すべき点でありまして、これは当然「又は
事業場」を加えるべきであります。その次の同項第二号の
改正規定中、「及び
漁業を営む
漁業協同組合」を削る。この問題は
水産業
協同組合の准組合昌に
漁業を営む
漁業協同組合が准組合昌として加入するという規定であります。
協同組合が
協同組合の准組合員になるということは、
協同組合の組織法といたしまして非常におかしな規定であります。もしも二つの
協同組合が一緒にな
つて仕事をする必要がありますならば、一対一の
関係に立
つた連合会をつくり得るわけであります。二つ以上の
協同組合が集まれば連合会をつくれるという規定があるわけでありますので、これは准組合員などとして加入するような組織法でなく、その際は連合会組織で行くべきである。こういう
考え方からこれを削除いたしたい。
次に「三百トン」を「五百トン」に改める点でありますが、この
協同組合の准組合員になりますところの法人の資格を、常時使用する者三百人、また使用漁船の総トン数三百トン、こういう条件にな
つておるのでありますが、常時使用する従業員が三百名ということにべースを置きますと、その使用漁船の総トン数は、五百トン程度になることが妥当であります。常時従業する従業員が三百人であり、総トン数が三百トンということは、これは明らかに
漁業の実態を知らざるところの、バランスのとれない規定に相なるわけでありまして、三百トンと総トン数を押えますれば、三百人を常時使用する者というこの三百人の規定は、実質的には百五十人なり二百人なりの制限に相なるわけであります。でありますから常時使用する者、従業員三百人というものにベースを合せますためには、使用トン数を五百トンに改めるのがわが国の
漁業の実態から妥当である、こういう結論であります。
次に第三十六条の二の
改正規定中「競争
関係にある
事業」の下に「(当該組合の組合員の営みまたは従事する
漁業及び当該組合の所属する
漁業協同組合連合会の行う
事業を除く。)」を、「これに従事する者」の下に只当該
事業を営む法人その他の団体の役員及び職員を含む。)」を加える。こういうことに修正いたしたいと
考えておるのであります。この
政府提案によりますれば、競争
関係にある
事業は
漁業であろうと流通過程心おける
事業関係であろうと、全部一切組合の行う
事業と、組合員の行う
事業とが、競争
関係にある場合には、役員に
就任できない。あるいは主要職員に
就任できない。こういうこと厚な
つておるのでありますが、その中で
漁業に関する限りは競争
関係に立つものと解釈はできないのであります。たとえば
漁業協同組合が、定置
漁業を組合自営によ
つてやるごとになりました場合に、
漁民が自分の生業として
漁業をや
つているために、
漁業自営の組合の役員に、その当該組合の
漁民がなれないという結果が、これから出て来るようでは、真の立法の精神に反することに相なりますので、
漁業に関する限りは、競争
関係にはないという
見解のもとに、このように改めたい。こう存ずるものであります。
次に、第四十三条第一項中「貸借対照表」の下に「損益計算書」を加えるる。また第四十八条第一項第六号中「貸借対照表」の下に「損益計算書、」を加える。こういう点でありますが、これは組合の
事業報告書の中に、当然損益計算書も入
つておるという解釈から、
政府の方では
改正案に盛
つていないのでありますけれ
ども、これはやはり
はつきりと貸借対照表と損益計算書というものを作成することが、かえ
つてはつきりするわけでありますのでで、かように修正いたしたいと
考えておるのであります。
次に、大きな修正点といたしまして
都道府県の区域を越える区域を地区とする連合会に関する規定であります。その第八十九条を削除いたしまして、第八十七条の条文を
改正いたすことによりまして、次のように連合会を組織し得るようにいたしたいと
考えておるものであります。
農業
協同組合の場合と大体同じ構想でありまして、
都道府県の区域をこえる区域を地区とするところの連合会としては、信連、販連、購連、指導厚生連、こういう四本建の連合会がつくれるようにいたしまして、それに、それぞれの連合会は他の
仕事を兼ねることができないという
事業面の制限を加えながら、従来
法律で認められなか
つたところの全国的な規模の信連、販連、購連、指導厚生連を設立できるような道を開こう、こういう修正であります。このことは現在
統制撤廃その他の経済諸情勢によりまして、商業資本の攻勢が非常にはげしくな
つて参
つておるのであります。しかるに
沿岸漁民が共同の力によ
つて漁村の振興をはかり、
漁民経済を安定せしめるためには、どうしてもこのような系統的連合会の全国組織によ
つて、商業資本に対抗しなければ、自分の環境を改善向上せしめることができないという観点から、ぜひこのような修正をいたしたいと
考えておるものであります。その他字句上の正誤にも相当する小修正が各所にあるわけでありますが、そういう点をこの機会にただいま申し上げましたおもな修正点と合せまして、お
手元に配りました修正案を用意いたしたわけであります。参議院及び衆議院の小
委員会が、
意見の交換を遂げまして一応このような成案を得ましたから、これをも
つて衆参両院一緒にな
つて、
関係方面その他との折衝をいたしたいと
考えておるものであります。この点を中間報告をいたしますと同時に、
委員各位の御了承を得たいと存ずるものであります。