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1950-04-11 第7回国会 衆議院 水産委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十一日(火曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 石原 圓吉君    理事 奧村又十郎君 理事 川村善八郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 夏堀源三郎君    理事 平井 義一君 理事 松田 鐵藏君    理事 林  好次君       小高 熹郎君    川端 佳夫君       高木 松吉君    田口長治郎君       田渕 光一君    玉置 信一君       福田 喜東君    井之口政雄君  出席政府委員         総理府事務官         (地方自治省財         政部財政課長) 奧野 誠亮君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君         農林事務官         (水産庁次長) 山本  豊君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         漁政課長)   戸嶋 芳雄君         農林事務官         (水産庁漁政部         経済課長)   久宗  高君         專  門  員 齋藤 一郎君 四月十一日  委員中崎敏君辞任につき、その補欠として佐竹  新市君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員選任に関する件  水産金融に関する件  地方税法案につき地方行政委員会に申入の件     —————————————
  2. 石原圓吉

    石原委員長 これより会議を開きます。  水産行政に関する件を議題といたします。本日は大蔵省銀行局長舟山正吉君、水産庁次長山本豊君、同経済課長久宗高君等が出席になつておられます。本日は舟山銀行局長がお見えになつておりますので、同局長に対し、質疑のある方には、この際これを許します。玉置信一君。
  3. 玉置信一

    玉置(信)委員 昨日の委員会におきまして、金融小委員長夏堀さんから、大臣並びに局長に対して、詳細にわたつて質疑をされ、大体私ども全般を了解しておるのでありますが、さらにここでもう少しつつ込んで政府当局の御方針を承りたいと思うのであります。それはこの金融機関設置の問題でありますが、第五、第六国会、並びに第七国会の初めから今日まで、しばしばこの問題で政府側質疑をし、個人的に意見の交換もして参つておるのでありますが、何と申しましても、この水産金融というものは、独自な機関をやはり設置していただかないと、十分に今日の水産企業を発展せしめて行くことは容易でないのでありまして、発展というより、むしろ夏堀委員長がしばしば申されるように、日本水産業というものは、ほんとう危機に瀕しておるのであります。この危機を打開し、水産復興をはかろうというには、金融の問題が一番重要な役割をなすことは言うまでもないところでありまして、こうしたことからしても、政府においては、水産業独自の金融機関をつくることに、格別の御盡力をわずらわしたいと私は思うのであります。これに対する当局の重ねての御意見を拝聽いたしたいと思うのであります。  前会から承りますと、関係筋においては、水産金融独立機関をつくるということには、いささか難色を示しておるやに聞いておるのでありますが、今日の事態でもなおかつそういうようなことになつておりますかどうか、この点も重ねてお伺いしたいのであります。
  4. 舟山正吉

    舟山政府委員 水産業に対して、資金の円滑なる供給をしなければならないということは、当局におきましても、重々認識しておるところでございます。そのために新しい金融機関をこしらえるかどうかという点につきましては、当局といたしましても、あながちこれを初めからいけないときめてかかつているわけではございません。しかしおよそ金融機関ができますれば、その金融機関が健全に発達して行くかどうか、あるいは資金供給が十分にできるかどうかということを見通さなければならないのでございます。およそ金融機関は、ある特定業種だけで、その金融機関を構成いたしますと、資金需要というものが一時に輻湊いたしますし、またその預金等の面につきましても、金が足りないときには、同じ業態のものが一斉に足りないといつたようなことで、なかなかうまく行かないようなわけでございます。従つて水産專門金融機関をこしらえるということにつきましては、やはりこれに預金部資金であるとか、特殊の資金を流すということが前提となつて参るかと思うのであります。預金部資金見返り資金、これらの特殊資金の使用につきましては、現在のところ非常な制約がございます。それで金融機関はこしらえたが、なかなか金が集まつて来ない。従つて金融もできないという事態が起るのではないかと考える次第でございます。従つて、当面緊急の需要を満たしますためには、何と申しましても現在ありまする金融機関を利用する。これがためには、その金融機関資金を流す方が、効果が早いのではないかというふうに考えておる次第であります。漁業関係につきましては、協同組合とか、あるいは農林中央金庫系統機関もございますので、極力これに資金を流すことにし、また水産業に対して資金を融通するように鞭撻しておる次第でございます。大体金融機関新設ということにつきましては、ただいま申し上げましたよう考えを持つておる次第でございます。これが新設につきまして、関係方面でどう考えておるかというようなことは、二の次にいたしてよろしいかと存じます。しつかりした金融機関ができる見通しがつきますれば、これは万難を排してでも懇請するという方向に向うべきものと考えておる次第でございます。
  5. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいまの舟山局長さんのお話は、昨日の御答弁と同じように受取れたのであります。一応当局として、政府としての方針から行きますと、その程度のことであろうとは想像はいたしますが、繰返して申し上げることになるのですが、何としてもこの独立機関がないということは、ひとり金融機関あるいは金融の問題でなくして、あらゆる行政を見まするのに、どうしても便乘をしなければならないという立場に立つものは、得てして軽視される傾きに相なるわけであります。現に水産庁そのもの農林省の外局にあるだけに、農林省全体をながめたときに、他の農林行政部門水産行政部門を比較いたしますと、どうしても水産行政が非常に軽んぜられておる。これは現実の問題であります。従いまして、農林中金あるいは商工中金より融資を受けるということになりましても、大蔵省当局のお考えが、ほんとう独立機関を持つて水産業融資をするのだという基本的な考えを持つて融資のあつせんをしてくださるということになれば確実でありますが、従来の状況でありますと、これはどうしてもお話通りには現実面では参らないのであります。従つてどうしても單独機関ではだめだということになりますれば、農林中金あたりを、ひとつ農林水産中金というようなことにでもして、水産をそこへさし加えて、対等の地位に水産を見るというところまで政府考えが行かなければ、私はなかなか御答弁ような趣旨には、現実には参らぬと思います。現に今日の農業水産とを比較してみまするときに、私がここでくどくど申し上げるまでもなく、御承知通りの状態でありまして、非常に農業水産との差別がはなはだしいのであります。こういうようなことを考えてみますと、どうしても單独機関というものがだめであるならば、農林水産中央金庫ということにしていただきたいと思うのであります。この点に関して局長はどうお考えになりますか。
  6. 舟山正吉

    舟山政府委員 独自の專門金融機関設立につきましては、先ほど意見は申し上げたのでございますが、さしあたつて焦眉の急に間に合せますために、農林中金機能改善して行くということにつきましては、当局といたしましても御同感でございます。実施の面におきまして、いろいろ指導して参りたいと考える次第でございます。農林中央金庫の名称を、そのためにかえなければならぬかどうかということにつきましては、いろいろ御意見もございましようが、問題は、できるだけ実質的に水産金融の方にも十分力を盡し得るように努めさすことが、先決問題かと考えるわけでございます。
  7. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいまのお答えの点で、この問題に私どもも一番重大な関心を持つわけでありますが、今日までの情勢では、各委員がそれぞれ数回にわたつて申し上げておりますように、実質的に実は行つていない。こうしたことを心配して、昨日も夏堀委員から広範にわたり、詳細に基本的ないろいろの問題を取上げて、政府に要望いたし、大臣からも水産金融に対しては考慮するという言質を與えられておるわけであります。従つて何としてもこのままでは、今の御答弁ように、おそらく私は水産金融が円滑に行くとは考えられないのであります。いずれは小委員長中心として、具体的に金融対策を講じ、一通りの案を持つて政府に要望することに近々なると思うのでありますが、特にこの機会にお伺いしておきたいことは、きよう新聞でありましたか、金融引締めの問題について、一万田総裁の言が載つてつたようであります。私は新聞の内容を見ませんで、見出しだけを見て参つたのでありますが、これが昨日の大蔵大臣の御答弁信用インフレに関連いたしまして、こうしたことになるということになりますと、その信用インフレの対象となる融資関係は、主として中以上の企業でありまして、中小に属する水産業、その他農業もございましようが、そうした面はなお届かなくて、より一層この金融にきゆうくつさを感じて来るのではないかという心配があるのであります。私はこの金融財政方面については、きわめて知識が浅いのでありまして、全面的に意見を申し上げるまでに研究をいたして参つておりませんが、少くとも産業人として常識的に考えまして、そういうような結論が出るのであります。これに対して銀行局長は、いかにお考えになつておられますか。
  8. 舟山正吉

    舟山政府委員 農林中央金庫の問題につきまして、申し落したことがございますので、つけ加えて申し上げますが、農林中央金庫商工中央金庫等組合金融のあり方につきましては、これは政府においても根本的な研究をいたしまして、改善を加えて行くことに相なつておるのでございます。ほかの特殊銀行につきましては、今国会特殊銀行廃止法律案が出まして、普通銀行に改組せられたのでありますが、金融界として残る問題は、これら組合系統金融機関をいかなる形に持つて行くのが一番よろしいかということでございます。関係方面の指示もございますので、おそらく次の通常国会目標に、いろいろ改善案を練つて行くこととなる見込みでございます。そういう際には、水産業金融に対しまする改善方策に対する輿論も十分織込みまして、万遺憾なきを期して参りたいと考えておるのでございます。  次に現在の金融情勢につきまして、とかくの論議がございますが、関係方面におきましても、現在少し信用が膨脹し過ぎてはいないかという疑問を持つているのでございます。この点については、私どもも今後におきましては、必要な資金を円滑に流して行くように、十分資料も整え、日本の現在の経済分析をして、理解に努めまして、資金の枯渇のために、この産業、特に中小産業方面で困られることのないように、骨折つて参りたいと考えておる次第であります。ただいまのところは、関係方面にそういうような見解がありますために、預金部資金であるとか、あるいは見返り貸金であるとかを出すことの時期等につきましては、いろいろ私ども意見の相違もあるという現状であることを御了承願いたいと思います。
  9. 川村善八郎

    川村委員 私は舟山銀行局長に二、三要望しておきます。水産金融の行き詰りによつて水産業がもう進退きわまつておるということは、過般来この委員会でも非常に論議されておることは、御承知通りであります。これに対して具体的に取上げない限りは、いつまで議論をしても、ただ議論議論倒れで、実際に水産金融というものがほんとうに行き詰まり、その水産の行き詰まりのために餓死しなければならないことに相なるのでございます。昨日大蔵大臣からも、銀行局長からも、同じような御意見を伺いました。すなわち今これを実現するには、われわれの方でも十分その案を立てておるが、実行面として、すみやかに水産金融に関する諸問題の実施にあたるところの資料を提出して、それをよく検討して、着々実行に移すことをやろうということでありました。まことにけつこうであります。これはわれわれとしても、水産庁にもその案を具申いたしたいし、すみやかに調査もいたしますけれども、これも長引いたのでは、やはり死んでしまつてから注射をするようなもので、何にもなりません。従つて水産庁の方も案を早く立て、あなた方の方でも早く貸出しの実行をするように強く要望しておきます。  それから第二点は、先ほど玉置君の質問に対して、漁業だけの金融機関、つまり一つ産業金融機関というものは、貸出しも一緒になれば、あるいは貯金一緒になるから、偏在して、金融機関としての銀行経済が成立たない。またその産業に対して融通する部面も、はなはだ危險であるといつたようなことを仰せられておりますが、水産業というものは、年間を通じて幾多の漁業があつて局長考えておるようなものではない。水産はかようなものでないということを実例をあげてお話して、あなたにその考え方を翻していただき、ぜひこの水産金融金庫という独自なものを設立して、水産金融を確立してもらいたいと思うのであります。北海道の例をとりますと、ただいまはにしん漁期であります。その他の漁業というものは、ほとんど休んでおります。つまり春はにしん、夏はいかとかいわしとかさばとかいうようなものが、北海道では大量にとれます。またこんぶというような海草類も、これまた大量にとれるのは、夏から秋にかけてであります。それから冬はたらとか、その他秋にはさけもとれます。冬はたらとかかれいとか、そうした機船底びきが非常に勢力が強くなります。一年を通じて数種の漁業が常に転換しておるというようなことで、むしろ農業よりも漁業の方は一緒になつておらない。一年を通じて各種の漁業が常に動いておるということを言われるのであります。従つて農林金融金庫といつたようなもの——もちろんその農林中金には漁業も含んだ資金融資もしておるけれども農業方面よりも漁業というものは、一年を通じて転換する資金融通面が多いのじやないか。かよう考え部面があるのであります。北海道に例をとりましても先ほど申したようなことですし、全国の例をとつてみましても、相当漁期がかわつてつて、いわゆる金融面にも貯金面にも回転をしておるというようなことが考えられます。この際漁業というものは、ある時期には一緒資金が出て、あるときには一緒貯金が入るんだから、金融円滑化をはかることができないといつたよう考え方をやめていただきたい。むしろそういうお考え方であるならば、もう少し水産というものを研究して。さらに水産独自の金融機関を設けるかどうかということをよく御研究なすつた方が、よくおわかりになると思いますので、ぜひそうした面をこれから研究をいただき、水産金融機関として独立したものを設置するように要望しておきます。
  10. 舟山正吉

    舟山政府委員 川村委員のお尋ねのうち、前半の水産漁業金融ということにつきましては、特定の土地におきます特定融資というものも非常に多いかと思うのでございます。これらにつきましては、監督官庁といたしましても、極力融資のごあつせんその他に努めまして、それを解決して参りたい。いたずらに機構の改正にまつことなく、一つ一つの問題を取上げて解決して行きたいという熱意を持つておることを、申し上げたいと存じます。  次に專門金融機関ということで、先ほど申し上げたことについて御批判をいただいたのでありますが、私は專門業者だけで專門機関をこしらえるということにつきましての一般論を申し上げたのでございまして、ただいまの御説の通りであろうことは少しも異論はございません。その通りだと存するのでございます。ただ私の申し上げたいと存じますことは、一定の業種の方だけで金融機関を構成いたしましても、なるほど時期的には資金需要というものは違いますが、一面それらの業種の方に預金をしていただかなければ、なかなか資金というものが集まつて来ないということを申し上げたかつたのでございます。それでありますから、見返り資金とかその他の特殊の資金を使うということが前提となつておりますと、当面の事情といたしまして、特殊資金の放出も意にまかせない。そうすると特殊の機関機能が十分に果せないことがありはしないかということを申し上げたつもりでございます。御了承願います。
  11. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 私は昨日の委員会に所用のために欠席いたしましたので、お尋ねいたします点が、昨日すでに論議され、御当局からの御答弁もあつた点と重複するかもしれませんが、この点はあらかじめ御了承をいただきたいと思うのであります。  まず第一点は、最近農村におきましても、また漁村におきましても、恐慌前夜の兆候が濃厚に出て参つておるのであります。わが国の農漁業に対する政策は、多年補助政策を採用して参りまして、原始産業という特殊な関係にある農漁村経済を助長育成いたしますために、各般の補助政策がとられて参つたのであります。しかしながら終戰後における政策の大転換によりまして、一切の補助政策はこれを放棄いたしておるわけでありますが、私ども考えますに、こういう農林漁業に対する補助政策が採用できない現段階においては、どうしてもそれにかわるところの長期金融対策が裏打ちされなければ、現在の農林漁業復興は期待できない、こう考えておるわけでありまして、その面からいたしまして、わが漁業に対する面におきましても、長期金融政策が一日ですみやかに確立しなければならない、こう考えておるものであります。しかるに、先般復興金融金庫及び農林漁業復興金融廃止になりまして以来、ほとんど漁業に対する長期金融という道は開かれていないのであります。最近漁船建造にいたしましても、あるいは老朽船の修理、あるいは代船建造にいたしましても、長期金融を確保する道がありませんために、漁村は非常な困難に立至つておる現況であるわけであります。  そこで、政府にこの際お尋ねいたしたいのでありますが、農林中金あるいは日本勧業銀行、あるいは北拓等長期金融機関としての機能をすみやかに強化されて、漁業面に対しても、長期金融需要をまかない得る態勢を、すみやかに確立される要があると考えるのでありますが、これに対して、政府はいかなる御計画をお持ちになつておるか、また具体的には、農林中金に対しまして、二十億の見返り資金を導入いたしまして、そうしてさらに、農林中金資金を、四億を八億にし、さらに債券発行を二十倍認めまして、長期金融の給源を約百六十億くらいの線までこれを充実しようという御計画を、政府はお考えになつてつたようでありますが、その後どういうぐあいにこの問題が進展されておるか、政府は今後関係方面に対して、どういう決意を持つてこれが実現に当られようとしておるか、その点をまずお伺いしたいと思うのであります。
  12. 舟山正吉

    舟山政府委員 水産業、特に小規模の漁業等につきまして、漁船建造その他の資金供給しなければならないのでありますが、これは、従来地方銀行あたり相当力を入れておつたところもございます。戰後におきましては、復興金融金庫等からも資金が出まして、相当効果もあつたことと考えるのでありますが、最近銀行制度に対する考え方がかわりまして、普通の市中銀行あるいは地方銀行では、長期貸付をしないという建前に相なりました。勧業銀行などにおきましても、また長期貸付を停止しておるのでございます。復興金融金庫機能は、昨年四月以来停止されております。この長期資金供給の不足ということは、経済界一般に対して非常な不便を與えておる次第でございます。この点にかんがみまして、政府といたしましては、今般国会の御協賛を得まして、銀行から債券発行する、そうして長期資金を出すことができるという法律案を出し、これが成立いたしたのでございます。農林中央金庫におきましても、また同様でございまして、お話のありましたよう長期資金計画を持つておるようなわけであります。それから勧業銀行あたりにつきましても、従来水産方面にも相当資金を出しておつたのでありますが、近年それが、比較的機能がとまつてつたかと思うのでありますが、今度債券発行が認められることになりましたにつきましては、勧業銀行を督励いたしまして、そちらの方にも資金をまわしたいと考えておる次第でございます。しこうして最近の情勢において、見返り資金の出資、あるいは預金部資金等によります債券発行が、どの程度進行するかということにつきましては、まず勧業銀行の十億の増資というものを近く司令部方面と折衝いたすのでございまして、増資実現については、いささかの懸念も持つておらぬ次第でございます。農林中央金庫につきましても、二十億の増資を近く申請するはずでございまして、この農林中央金庫におきましては、その他の特殊銀行と違いまして、ほぼ倍額の、二十億の見返り資金増資ということを申請いたす予定になつております。別途、自己増資によりまして、四億円を増すという計画のあることも、お話通りであります。しこうして、この見返り資金増資ということは、ただいま申し上げましたように、軌道に乘つて話が進行しておると思うのでございますが、債券発行につきましては、なるべくこれを市中消化を先にべすきであるという意見があるようでございます。私どもといたしましては、ぜひとも預金部資金を活用しなければ、金融政策が円滑に行われないという確信を持ちまして、この方向に向つて努力しておる次第でございますが、資金需要につきまして、一時に全部の了解を得るということは、なかなか困難かと考えられる面もあるのでございます。すなわち、金が必要で、出て行くに伴いまして、そのときの経済状況とも合せまして、いろいろ申請をして行かなければならぬという技術的な面もあるかと思うのでありますが、私どもはこれについて、今年度の大きな目標といたしまして、銀行からの長期資金供給ということにつきまして、全力を盡して参りたいと考えておる次第でございます。
  13. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 政府の方では、銀行局中心といたしまして、ただいまの御説明のように、長期資金の問題についていろいろ御構想を持ち、手を打つておられるようでありますが、そこで問題は、今国会の措置によりまして、債券発行等実現をいたしまして、さてこれを現実に貸出しをいたします場合に、御当局の意図が十分末端金融機関に浸透しないために、とかく農林漁業、特に漁業方面に対して、長期金融供給が非常に手薄になるということを、過去においてわれわれは非常に痛感させられておるのであります。たとえば、政府がおとりになりましたところの中小企業に対する見返り資金貸付の問題にいたしましても、中小企業に位するところの漁業経営者が、相当多数市中銀行その他に申込みをいたしておるのでありますけれども、その実際に貸出しされたものは、きわめて蓼々たるものがあるわけであります。これは、市中銀行等漁業に対する理解、認識が薄いということに原因があると思うのでありますが、先ほど私が申し上げましたように、政府農林漁業に対する補助政策を放棄したのであるから、少くとも金融面については、農林漁業に対しては、銀行等運営に対して、強く指導されるということが、政府としてとるべき当然の責任であるとわれわれは考えるのでありますが、その点が制度なり、わくなりをつくりましても、ほとんどその運営市中銀行営利主義におまかせをして、政府は何らこれに対して強い積極的な指導を加えてないという結果が、とかく農林漁業が、金融機関からうとんぜられる結果になり、政府の意図するところが、十分末端に浸透、反映しない、こういう結果になつておると思うのであります。そこで、今後特殊の銀行等に対して債券発行の道が開かれ、相当額の長期資金の給源ができるわけでありますが、今後これらの長期資金が、漁業方面に対してどれだけ現実に出るかということは、一にかかつて政府のこれら機関に対する強力なる指導いかんにあると、私は思うのであります。この点特に舟山さんに御善処方をお願いするものであります。  次に、漁業金融の恒久対策として、漁業権証券を担保にするところの金融措置ということが、今業界では大きな期待を持つて取上げられておるわけであります。特に百六十億程度の漁業権証券のうち、百三十億は、零細な沿岸漁民を中心としたところの漁業団体に交付さるべきものであります。そこで、この一番金融上惠まれないところの沿岸漁業団体に交付される百三十億程度の漁業権証券を、これをばらばらにさせるようなことなく、まとめてこれを漁村の有力な一つ信用の基礎にいたしたいというのが、私どもの念願であるわけでありますが、その漁業権証券を担保にした恒久的な漁業金融対策をも大蔵当局は今から御研究をお進めになつていただきたい、こう思うのでありますが、ただいまのところ、いかなる構想を舟山さんはお考えになつておるか、その点をお伺いしたいと思うのであります。     〔委員長退席、奧村委員長代理着席〕  なお、それに関連いたしまして、漁業権証券の取扱い金融機関の問題でありますが、農地証券につきまして、勧業銀行政府はお使いになつておるのでありますが、今私が申し上げましたように、百六十億の漁業権証券のうち、百三十億程度は、沿岸漁業団体に交付されるものでありますから、その系統金融機関とも称すべきところの農林中央金庫にも、勧業銀行等と同じよう漁業権証券の保管その他の取扱いをさすべきであると考えるのでありますが、これに対して、大蔵当局はどういうぐあいにお考えになつておりますか、この点をお尋ねしたい。
  14. 舟山正吉

    舟山政府委員 銀行債券発行して、長期資金を出すことになりましたについては、水産業に対して十分の融資をするように督励せよという御意見を承りましたのでありますが、この金融機関の問題につきましても、最近の考え方は、特殊銀行もなくなしてしまう、そうして金融機関は独自の立場で活動するといつたような制度上の考え方が濃厚になつて参りまして、なかなかやりにくい点はあるのでございますが、しかし債券発行いたします金融機関につきましては、見返り資金とか、あるいは預金部資金とか、特殊の資金も出ることでもございますし、この点は、今後私どもにおきましても、十分督励、指導というものを加えて行きたいと考えておる次第でございます。  次に、漁業権証券につきましては、その構想がごく最近まとまりましたよう関係で、水産庁といろいろお打合せいたしておりますが、その運用につきまして、具体的な方策を申し上げる段階には、まだ達しておりませんが、国会の御意見その他を十分尊重いたしまして、運用方法を考えて参りたいと考えるのでございます。  なお、漁業権券をどういう機関に取扱わしたらよいか、あるいは農林中央金庫あたりに取扱わすべきでないかということにつきましても、まだ確たる方針はきめておらないのでございますが、できるだけ御要望に沿うように、実施方策をきめて参りたいと存じます。
  15. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 もう一つ最後に、これは具体的な問題でありますが、特に銀行局長の特別な御盡力を煩わしたい、こう思うのであります。それは、御承知ように三陸の沿岸は、昭和八年に大きな津波に襲われまして、沿岸の漁船が一瞬にして全部流失、破壞されたことがあるのであります。そこで当時政府は、国の匡救事業といたしまして、低利資金を出して、そうして津浪によつて一挙に流失、破壞されましたところの代船の建造を行つたことがあります。ところが、その当時からすでに十数年を経過いたしまして、今日三陸沿岸の船の船齢は、全部老朽の域に達しておるのであります。これは他の府県には全然見られない特殊な状況であります。一ぺんに船を失い、一ぺんに代船建造をいたしましたために、一ぺんに老朽の域に来ておる。しかも戰時中資材難、資金難、その他の関係から、逐次計画的に代船の建造をやることができなかつたという悪條件から、今日老朽代船の建造が、ここ二、三年に非常なしわ寄せになつて来ておるのであります。この特殊な関係にあります三陸の代船建造の問題を、市中銀行等の、いわゆるそろばん本位で行くところの、営利主義に基く銀行経営に依存しておりますのでは、とうていこの大きな問題を解決することができない。関係漁民は非常に深刻な悩みに襲われておるのであります。そこで、こういう特殊事情下にあります三陸二十万の漁業者、しかも比較的零細な、小型の漁業でなければ生活ができない、これらの者の代船建造資金をいかにしてまかなうか、それは農林中金等の系統金融を通じてやるか、あるいは勧業銀行等の、今回債券発行を認められましたところの特殊銀行を通じてやるか、これらの点について、ひとつ政府の特段の御配慮と御指導によりまして、この問題を解決いたしたい、こう念願いたしておるのでありますが、これに対してどういう御処置をお願いしたらいいか、舟山さんに御指導いただきたいと思うのであります。
  16. 舟山正吉

    舟山政府委員 三陸地方の老朽漁船の代船建造と申しますか、その問題につきましては、大分專門的な問題になりますので、ひとつ水産庁に案を立てていただきまして、それを十分伺いまして、金融の面についても、できるだけの御便宜をはかりたいと考えております。
  17. 田口長治郎

    ○田口委員 私も、この機会に二、三の点について銀行局長の御意見を承りたいと思うのであります。この水産金融で特にお考え願わなければならない問題は、農村問題と多少趣きを異にしておりまして、小から大まで階段がある、こういうことをまず念頭に置いていただきたいのであります。この小業者は、大体において協同組合という形をつくつて金融の道を講じておる。この協同組合金融につきましても、いろいろな問題があるのでございますが、とにかく組合金融によつて道を打開しようとしておる。大企業者は、これは日水あるいは大洋のごとく、自己の信用金融の道を講しておる。今中小企業と同じ運命にある業態が、やはり水産事業にもありまして、中企業者の金融が、ほとんど組織あるいは信用というような面からも考慮されないで、やり方に非常は困るという問題が、一般の中小企業金融と同じ状態において水産界にもあるのであります。この中小——水産の場合は特に中でございますが、この中に対していかなる金融をするかという問題につきましては、いろいろの点が考えられると思うのでございますけれども、やはり一つの組織によつて、皆が集まつてそうしてその信用のもとに金を貸す、その信用のもとに金を借りる、こういうようなことよりほかに想像がつかないと思うのでありまして、この点から考えて、この業者自体が寄り集まつて、保証金を積んでそうして金を借りる、いわゆる漁業手形の制度というものは、非常にいい制度でありまして、これは水産の方で実際に先鞭をつけたのでありますけれども、今の一般の中小企業者の金融というものは、やはりこういう組織によつて進んで行かなければ方法がないのでないか、こういうふうに考えるのでありまして、一般中小企業に先鞭をつけた漁業手形である、こういうような意味からいたしまして、ただいまの漁業手形の状態は、必ずしも芳ばしくない部分もありますけれども、これはほんとうに始めてからまた時期がない。私から言わせますと、内容について改善すべき点が多々ある。そういう点を漸次改善すれば、必ずりつぱな金融の道が開けるのでないか、こういうことを考えるのであります。従つて、最近漁業手形の問題についてとかくの議論がありますけれども、そういう意味におきまして、漸次内容を改善することによつて、この制度、この組織を完全に育て上げなければならぬ、こういうことに考えるのでありまして、この点についていろいろなうわさ、あるいはいろいろな考えがありましようけれども銀行局長としては、ぜひこの制度を各中小企業の模範の型として育てる、こういう意味でひとつ進んでいただきたい。これは銀行局長に対する要望でございます。  第二に、短期資金の問題について、金額が大きい場合におきましては、いろいろ政府との折衝の結果、おちつくところは日銀のあつせん、こういうことにおちつく場合が非常に多いのであります。また日銀内にあつせん部を設置しておられる点も、そういう必要からと思うのでございますが、さてこの方法でわれわれが進みました際に、政府としても、なるほど必要である、あるいは日銀におきましても、何とかしましよう、こういうような話になるのでありまするが、いよいよ第一線の金を貸す地方銀行のところに持つて行きますと、なかなかそれが徹底をしない。そのうちに三箇月、六箇月、一年と経過してしまう。しまいにはしりがぼけてしまう。こういうようなことで、日銀のあつせんによつて地方銀行がその通り実行するということが、非常に少いのであります。いろいろな事情から考えまして、日銀の資金をひもつきにして地方銀行にまわすというようなことは、むりとは思いますけれども、今までの実例として、実を結ばなかつたということから申しまして、必要なる資金を何とかするという点から申しまして、ひもつきか何かで、政府あるいは日銀でも融資をやろうという、この意思を実現するような方法はございませんか。その点を一点お伺いいたします。  それから第三に、漁業協同組合金融が非常に逼迫しておる。これは各委員から申されました通りでございますが、その内容を一歩つつ込んで考えてみますと、長期資金でまかなうべきものを短期資金でまかなつておることが非常に多い。これはどうしても、組合の資金計画ばかりでなしに、各事業の資金計画か、長期でまかなうべき資金を短期にまかなつた場合におきましては、何としても漸次じり貧になつて来る。目下の協同組合金融難は、全般的な問題もありますけれども、主として——あるいは重大なる幅におきまして、この長期資金でまかなうものを短期資金でまかなつておる、こういう点にも非常に大きな原因があると思うのでございます。この点から申しまして、先ほどからお話がありました農林中央金庫増資、あるいは見返り資金増資、あるいは債券発行、この問題を何とかすみやかに解決してもらわなければ、なかなかこの協同組合関係金融の緩和ということはできないと思いますが、この点をひとつ一層促進していただくような方法を、ぜひ考えていただきたいのであります。  それから第四に、加工資金の問題であります。最近貿易関係は、通商協約が決定されて、それによつて物が動く、こういう状態のものが非常に多いのであります。この通商協定の問題は、いろいろな政治的の関係からいたしまして、決定がとかく遅れがちである。ところが輸出すべき品物は、ことに水産物におきましては、漁期関係がありまして、一定の期間に製造をしなければならぬ。で、自由貿易時代におきましては、ちやんとあらかじめ製造をしておいて、そうして必要な時に送る。こういうことができたのでありますけれども、現在の状態におきましては、どうしてもこの製造時期というものと、通商協定の締結というものがちぐはぐである。こういう状態におきまして、この輸出加工品の製造は、どうしても盲製造をしなければならない場合が非常に多いのであります。実際には貿易品でございますから、契約ができれば貿易資金の方からまわるのでございますけれども、その契約ができない間に、漁期か来て製造をしなければならない。その時期に製造をしなければ、一年を通じて製造する機会がない。こういうような状態におきまして、盲加工、盲生産をやつておるので、資金関係で各業者は常に非常に困つておるのであります。たとえば長崎でトマトのカン詰を製造して、盛んに輸出をするのでございますが、日英通商協定なんかの締結が遅れますために、結局貿易の資金なしに製造をしなければならぬ状態です。しかも国家としては、外貨の獲得をぜひやる必要があるのだか、手元の資金がない。こういうような状態におきまして、資金の点で製造に困つておる。これはひとりトマト・サージンの問題ばかりでなしに、いろいろな輸出商品というものの製造が、すべてこの協定の締結が遅れるということで非常に困る。こういう問題は国家的に考えて非常に必要であります。しかもその時期に製造をしなければ、一年を通じて製造する時期がない。製造したものは必ず外貨獲得に貢献をする。こういう性質のものでございますか、これについて何らか資金供給の方法はありませんか。その点について御意見を承りたいと思うのであります。  それから長期金融を必要とする業者に対しましては、不動産銀行の設置もまた一つ金融の方法と思いますが、不動産銀行の設置については、大蔵省は積極的にお考えになつておるといううわさも聞くわけなんでございます。これに対して、新しい舟山銀行局長はいかなるお考えを持つておりますか、御意見を承りたい。はなはだ簡単でありますが、以上四点について御意見を承りたいと思います。
  18. 舟山正吉

    舟山政府委員 まず第一の漁業手形の問題につきましては、田口委員の御意見にまつたく御同感でございます。漁業金融が危險視されますのも、貸倒れの危險が多いとか、あるいは漁獲が不規則であるといつたような疑惑に出発するところが多いのだと思うのでございまして、この点漁業者御自身が、お互いの結合によつて信用を高め、それによつて金融を受ける態勢を整えるということは、ぜひとも必要であろうと存ずるのでございます。昨年漁業手形の制度を創設いたすことにいたしまして、一方では共済積立金をし、その何倍かは漁業手形を振り出すことができるという制度を始めたのでございますが、昨年の実績といたしましては、積立額は約一億円以上、それに対してとにかくつた融資といたしまして、八億円ばかりの金が出ておるという状況でございます。今後この制度につきましては、極力助成をいたして参りたい。また一方漁業関係者におきましても、この積立金を励行することによつて融資を受ける信用を強化することにお努め願いたいと念願する次第でございます。  次の短期資金につきましては、日銀のあつせん等にまかすが、現実に金の出る部面が非常に少いというお話でございます。この問題は、現在の建前といたしまして、漁業に対する融資については国家保証その他がございませんで、終局において融資の責任は金融機関が負わなければならぬことになつておりますために、理解のない金融機関におきましては、漁業関係に対する融資を澁るようなことがあるのではないかと考えるのでございます。こういうような事情でございますから、たとえば日本銀行からひもつきで金を出しましても、最後の責任はその金融機関が負わなければならないということでかりにひもつきにいたしましても、現実融資する度合いがそれだけ増すというふうにも、必ずしも考えられたいのでございます。根本はこの金融機関理解というものを求めたけれはたらないかと考えるのでございます。地方銀行等におきましても、漁業地にある銀行などは、きわめて漁業理解があり、他の銀行では貸し澁るよう貸付もやるというような実例も聞いておるのでございます。なお小規模の金融でございますれば、銀行のほかに、たとえば信用組合とかその他の中小金融專門といたします金融機関におきましても、この点十分認識なされまして、命の出るようにし向けて参りたいと考えておるのでございます。  それから次の長期資金供給不足の問題でございますが、これは先ほど来お答え申し上げております通り債券発行いたしますことになりました勧業銀行なり農林中央金庫なりを十分督励いたしまして、長期資金漁業方面にも出させますように、指導して参りたいと考えておる次第でございます。  次の加工資金の問題につきましては、あるいは考えようによりましては、これはいわゆる水産金融という種類から離れまして、商工業資金の疏通の問題であるかとも考えられるのでございますが、これにつきましては、おおむね業者は中小規模のものが多いと思われますので、政府といたしましては、中小金融疏通の一般方針によりまして、できるだけそちらの方に金を流してもらいたいと考えるのでございます。  最後に不動産銀行の設置につきまして当局考えを申し上げますと、不動産金融の梗塞ということが、現在金融界一つの重大な支障になつていると考えております。そこで昨年来不動産金融機関をつくつたらばどうかということも考えたのでございますが、何分新しい金融機関をこしらえまして、それが採算が立つて行くためには、相当資金量も扱わなければなりませんし、また不動産金融のごとき長期融資をいたします銀行の利ざやというものが比較的細いために、なかなか採算が成立つという見込みか少いのでございます。そういうことで不動産銀行の設立が遅れては目下の役に立ちませんので、最近におきましては構想をかえまして、勧業銀行とか農林中央金庫とか、その他の旧特殊銀行、つまり従来債券発行し、長期資金の融通の経験のあります銀行を、もとの機能に復させるという方式をとつたわけでございます。しかしこの不動産金融機関が必要であれば、またこれが成立つて行くという見込みが立つものであれば、これは認めて行きたい。これは他の銀行一般についても同様であります。健全なる金融機関の必要があれば認めて行きたい。あながち既存の金融機関だけにその業務を限るという気持はないのでございまして、不動産金融機関につきましても、同じよう考えを持つておる次第であります。
  19. 田口長治郎

    ○田口委員 ただいま銀行局長の御答弁によりまして、大体御了承いたしたのでございますが、この日銀のあつせん資金につきましては、貸出し銀行が危險を負担する。その点はまさにさようでございますが、貸出上銀行企業の内容をよく知つております。その点については、さらに不安がなしに、資金があれば貸してもいい。こういうような状態におきましても、なかなか日銀の方でひもつきにしない。強力にあつせんはいたしますけれども、貸出し銀行が全般的に資金に困つたときに何とかする、こういうようなことでございますから、必ずしもこの貸出し銀行が危険を負担する、あるいは回収に困る、そういうような観点に立たない場合におきましては、どうしてもうまく話がまとらない。そういうが非常に多いのであります。いろいろな関係からいたしまして、これだけ貸せ、その金は日銀から出す、こういうことはできないと思いますけれども、貸出し銀行が貸そうというようなときに、その資金がひもつきでないという、ただその一点でうまく行かない。こういうような事情になつておることを御承知を願いたいと思うのであります。  第二に漁業手形の問題でございますが、現在の制度は私から申しますと、あまりに画一的になつておる、これも全般的の仕事をされる上から言いますとむりからぬこととは思いますけれども、あまりに画一的である。言いかえてみますと、どの種類の漁業も、また員数が多いのも少いのも、すべて毎月五%ずつ保証金を積め、そうして毎月二〇%ずつ償還をしろ、期間は六箇月だ、こういう画一的な金融では、どうしてもうまく行かないと思うのであります。各漁業漁期考えて、もし半年で終る漁業でありますれば、半年の期間でもけつこうでありますが、一年を通じて経営をしなければならぬ漁業であれば、どうしても六箇月という中途半端な期間で全部の金を償還するということは非常にむりであります。一年間の一漁期間に、借りた金を返還するのでなければ困る。また貸出し資金にいたしましても、どの漁業も同じ金額を貸す。この点は大体一箇月々々々の収入から割出して目標を立てるのでございますから、員数から申しましても、わずかの人がやつておる場合と、百人、二百人か集まつてつておる場合とでは、この保証金の金額の効力というものが非常に違うと考えるのであります。私は最初この制度が創設されましたときに、何ゆえに保証金積立てを五〇%というような高率にしたのであるか、こういうことを日銀の総務部長に聞いたことがあるのでございますが。別に理由はない、復興金融金庫がやつてつた場合に、この支拂い保証を五〇%にしておつた。だから五〇%にしたんだ、こういうような御意見でございましたが、舟山局長も御承知ように、復興金融金庫の支拂い保証というものは、期間が一年後に初めて発生するものでございまして、償還期間が一年を経過したために、その間に大部分のものは償還されてしまつておる。かりに一千万円金を借りておりますと、そのうちの九百万円は償還をしておる。あとの百万円だけが一年後に残つておる、この百万円に対して五〇%の保証をする、こういうような性質のものでありますから、一千万円の借受けに対して五百万円保証するという意味ではない。残つた金に対する五〇%の保証という意味であるから、この日銀の積立金五〇%、この性質は復興金融金庫の五〇%と非常に違うのじやたいか、また保険の性質を持つておる、この金融に対しては五〇%というような高率な保証金を積み立てないでもやれるはずである。こういうことを言つてつたこともあるのでありますが、いかにいたしましても多数の人が集まつて、そうして金融を共同責任においてする。この場合におきましては、五〇%の積立金がなければ百%の金が借りられない。この点も非常にむりと思うのであります。たとえば長崎の底びき綱で百三十組のものがあるのでありますが、これが共同して漁業手形制度を運用しておる。こういう場合に、あそこの組合で、遭難して船をなくして将来漁業かできない。こういうよう事情になるものが一年を通じて二組程度ある。こういう点から、仕事をしておりますれば、とにかく償還もできる。こういう関係から考えましても、多数の人が相互保証をして金を借りるという場合におきまして、五〇%の積立てをしたければ百%の資金が借りられない。このことは非常にむりと思うのでありまして、漁業の種類によつて、また漁期によつて、この率と、そうして貸出しの期間というものを相当研究しなければならぬところに、現在の漁業手形の大きな欠陷があるのじやないか、こういうことを考えます。この点もぜひ銀行局長におきましてお含みを願つておきまして、この制度の将来の研究にぜひ御参考に願いたい。こういうことを考えております。
  20. 舟山正吉

    舟山政府委員 第一に御指摘になりました、銀行漁業貸金を出す場合に、ひもつきでなければ出せないという点でございますが、私考えまするのに、銀行が貸す気になりますれば、貸金不足の場合には銀行から日銀に資金融通を求める手があるのでございまして、最近の金融情勢下においては、日銀からそういうよう資金は比較的容易に出せるようになつておるのでございます。もちろんその銀行資金繰り全体について調べてみることも、やらなければならないことでございますが、日本銀行に対して、貸出しを受けるという道があるわけでございます。そこで銀行資金がないから金を貸さないという事例につきましては、はたしてそうであるのか、あるいは資金がないということを断りの口実にしておるのかといつたような問題が残されておると思うのでございます。なお融資あつせんもし、そうして銀行が貸し出してもいいと考えておるのに、金が結局出ないというような問題につきましては、これを具体的に取上げて、その事情も調査してみたいと考えておる次第でございます。  それから漁業手形の問題につきましては、昨年復金保証の制度がなくなりました後において創設された制度でございますので、現在の制度そのままが万全の策であるとはもちろん考えておりません。いろいろ改善すべき点は、実績等も参酌いたしまして改善するよう研究して参りたいと思つております。
  21. 井之口政雄

    ○井之口委員 先ほどから各委員の方々が、金融問題に対して非常に心配しておいでになつて、その実情を訴えておられました。あの声は、中以下の漁業者のほんとうの叫びなんであります。どうしても金融方面にもつと銀行局の方々が、ひとつ魂を打込んでやつてもらわないと、今日もう漁業は破壊の状態に達しております。すでにもう恐慌も始まつておる。なおかつこの資本主義内に存在しておる遅れた産業としての破壊の傾向は、時々刻々、年々高まりつつあるのでありますから、これの根本的な漁業金融対策を、銀行局においてお持ちになりませんと、この傾向は将来ますますはげしくなつて来るとわれわれは思つています。中小企業金融難で破産する、中小企業者が自殺する、一家十人心中か起るというふうな現象は、漁業方面においては、もつともつと深刻な形で起るかと思います。この点は非常に考えていただきたいものたと思います。ところで政府のこれから新しくやられる方針というものが銀行に対しましては、長期貸しと短期貸しと、そのおのおの任務を別個に持つた方法に区分してやるというよう方針で、商業銀行をして商業銀行たるの職務を務めさせるという、この資本主義的な大道に向われるというのが今までの御返事だと思いますが、これはけつこうなことであります。まつたく今までのああいう官僚的な統制経済における金融政策が、独占資本を自分に有利に導いて、それで今日の日本産業一切をこれほどの破壊に到達せしめているということは、われわれが明らかに経験して知つておる通りであります。そこでその跡始末でありまするが、第一に復金から今まで水産方面融資したところのものでも、われわれの調べでは二九%ぐらいしか償還されていないと思うのであります。こういうことに対しまして銀行局の方ではどういう態度をお持ちになつて、そうしてどういう理由でこうした回収ができないのか。やたらに復金が食い物にされて、例の肥料会社の日野原事件などもございましたが、水産方面においても、まだ二九%しか回収されていないというふうな状態であつたならば、国家の財政が依然として大きく食いつぶされて行くということを、われわれは認めなければならぬのです。新しい方針を採用されたというならば、古いところはその方針によつてやつぱり整理されなければならぬのだか、なぜそれをやらないのか。やつぱり新しい制度をおつしやいながら、古い制度はちつともかわつていないじやないか、こう思うのであります。  もう一つはこの荷受け機関でございまして、銀行業がどれくらいの融資を現在しておるのか。これが大きな焦げつきになつてしまつているのではなかろうか。こういうことを非常に懸念いたします。もしもこれか焦げつきになるような状態であつたならば、またそれの補償問題が、国会に何らかの形において出て来るんじやなかろうか。そうして国民に負担がこれ以上にかぶさつて来るのではないか。今でさえも重税に悩んでおる。この重税には漁業家といたしましては、とりわけ中小漁業家は非常に重税に悩んでおります。地方税の問題もあとで問題にいたしますが、附加価値税が漁業に対して除外されていないということも起つているので、魚価に対しまして、この点は非常に重大な関係がありまするから、この荷受け機関への貸出しの内容につきまして、銀行局においてお持ちになつていらつしやる調査の状態を、ひとつ知らしていただきとうございます。  それから国民の零細な金——農村並びに漁村の小学校の子供までも動員して集めた零細な金による預金部の金の運営方法でありますが、この預金部の金が、二十五年度におきまして、今度は地方公共団体へ貸付けするものが約五百億円、それから金融債の応募買入れをやるために約二百二十億円、それから産業資金として四百億円、こういうふうな大体の見当がついておると思います。ところかその内容を見てみますと、これはすでに一月中に百五十億円からの金が貸し付けられている。その百五十億円の金を貸し付けるについては、みなひもつきで、それが貿易公団の滞貨への融資であるとか、繊維公団の滞貨のための融資二十一億円とか、それから今までこういう公団で未回収になつて穴が明いている、その穴埋めのための融資として四十九億円を貸し付けるとか、それから鉱工品公団の滞貨処分に対しても六十二億円、未回収に対して百五億円というように、厖大なる金が、みんなこういうふうな公団の不始末のために政府から融資されておる。こういうふうな預金部の金の出方。融資の仕方というものは、まつたくでたらめだとわれわれは考えるのであります。これだから農民が自分が出した金がみなどこへ行つたかわからぬ、漁民の出した金がみなどこへ行つたかわからぬ。自分らは長期資金に欠乏している、あるいは短期資金に欠乏している。しかもその融資が得られない。先ほどから委員の方々も、融資が得られないということで、非常に苦悶の声をあげておいでになりましたが、こういう結果に立ち至るんじやなかろうか、こうわれわれは考えるのであります。この点も銀行局として、一体今の新しい方針から見て、ちつともかわりはせんじやないか、元の復興金融金庫時代とあべこべに、かえつて悪くなるような状態になるんじやないか、こう思います。  なお、そのほかにも、私たちが見てみますると、日銀のマーケット・オペレーシヨンによつて融資されるところの金が、どういうふうに使われているかというと、アメリカ式のきんちやく網の建造のために。潮水産とか、五洋水産とか、日魯漁業とか、その他の水産会社に約一億数千万円の金が融資されておる。こういう独占漁業には、おしげもなく金融が行われている状態でございます。さらに小笠原捕鯨事業に対しましても、二億数千万円の融資が日銀のあつせんによつて行われておりますし、南氷洋の捕鯨事業に対しましても、三十九億からの融資日本銀行のあつせんによつて行われており、さまざまこういう大独占資本への融資が、至れり盡せりの形で行われてはおりまするが、中以下のものに対するところの融資というものは、ほとんど見るべきものがない。そうして地方銀行がこれから手形融資によつてやるであろうというくらいの方針しか政府は持つていない。むしろこうなつて来ますと、地方銀行が商業銀行の形に帰つたというふうなことでも、かえつて漁業への融資を阻害しているような結果に事実は立ち至つている。地方銀行融資ようと思うならば融資するだろうとおつしやいますけれども、なかなか融資ようと思わない。ほかの方面融資してしまつて、こうした遅れた産業を育成するという方面へは融資せられたいと思うのであります。この点を将来どうやつて行こうとお考えになるのか。  それから、とりわけ漁業協同組合に対するところの資金が非常に欠乏しています。長期の性質を持つ資金も欠乏しているのみならず、短期のいろんな資金も、小さな協同組合においては、取引銀行がなかなか貸してくれない。手形の割引なんかにも応じてくれないというので、非常に困つている。
  22. 奧村又十郎

    ○奧村委員長代理 井之口委員にちよつとお願いしますが、この問題は昨日も論議されており、あとの質問もありますから、なるべくひとつ簡単に願います。
  23. 井之口政雄

    ○井之口委員 非常に簡略に、要点だけを申し上げて、終始一貫連絡のあるように話しておりますから、お答えも簡単にできるだろうと思います。  かつ、協同組合にいたしましたところで、今度は協同組合法が改悪されて、これにいろんな法人が加盟することができるということになると、おそらくそういう方面に対しては融資が入つて来るだろう。そういう方面では、いろんな短期の融資の機会も得られるでありましようが、漁民を育てて行くという方面からの融資は、この協同組合には依然として欠乏し、ほんとうの零細漁民が、自分らの漁業の遅れた制度を進めようとするための金融には、何ら役に立たなくなるということを懸念するのでありますが、ほんとうの人民のための政策を国家が採用するのであつたならば、漁民のための政策もまた採用してもらわなければならぬ。そういう方面については、政府はお考えになつておることがあるのかないのか、ひとつお聞きしたいと思います。  大体いろんな矛盾があります。統制経済をやつている時分には、それ相当の不正か起つて来る。特殊銀行をみんなで食いつぶしてしまつて、国民に大きな負担をかけて、そのために刑務所に引張られている人間が、政治家にもたくさんいるという状態であります。そうかといつて、今度は自由経済になつて来るというと、自由経済になつても同じである。今度はかえつて合法的に、大金融閥の力が国家の権力と結びついてしまつて、そうしてこの金が大漁業には流されて行くけれども中小方面へは流されて行かない。ようやく残された協同組合のこうした自主的な組織でさえも、もはや商業資本の末端によつて絞めつけられて来るというふうなことで、みんな金融業者の一貫した操作によつて、国民の生活が漁業方面までも破壊されて行くという結果に立ち至るとわれわれは思いますが、これから抜け出す道としては、どうしてもこの大産業、大漁業方面の大会社を国営にしなければならぬ。国有にし、人民がこれを管理しなければ、他に行く道はない。
  24. 奧村又十郎

    ○奧村委員長代理 井之口委員に御注意いたしますが、ひとつ議論はやめて、お尋ねしたいことだけ簡単にお願いします。
  25. 井之口政雄

    ○井之口委員 それに対して、銀行局長はそこまで考えておいでになるかということを聞いておるわけだから。それは、われわれ各党で政策が違うのですから、各党の方針として、いろいろ聞く方法はございます。そこは、委員長はよく御存じのことと思います。
  26. 奧村又十郎

    ○奧村委員長代理 時間の関係もありますから……
  27. 井之口政雄

    ○井之口委員 それで、一言結論だけ申し上げます。そういうふうにわれわれは思いますから、そういう方針に対して、政府としては考慮されたことがあるのかどうか、この点をひとつお聞きして、私の質問を終りたいとと思います。
  28. 舟山正吉

    舟山政府委員 復興金融金庫の回収が二九%しかないとの仰せであります。これは水産業関係とお聞きいたしたのでありますが、その点の資料は持ち合せておりませんけれども、大体復興金融金庫融資は、設備資金中心とする長期融資でございまして、昨年の四月以来回収に努めておりますが、復興金融金庫全体の回収状況は、きわめて良好だと考えておる次第でございます。短期資金でなくて、長期資金融資でございますから、回収も当初の計画によりまして相当長くなつておる。従いまして、この水産業について、この数字を確認する資料を私は現在持つておりませんが、全体としては回収状況は悪くないと考えておるのでございます。  次に、荷受け機関に対して資金が焦げついておるかどうかということでございますが、これは魚類の配給統制時代には、現金で品物を売買いたしておりましたから、末端から吸い上げました資金が、荷受け機関通り、生産業者に円滑に通つておりましたのが、この配給統制がやまる段階になりますと、荷受け機関の方が、将来の自分の営業の都合その他を考えまして、末端から集まつて来た金を生産者の方に送らないという事例が起つておるように聞いておるのであります。従つてこの金は、消費者からは吸い上げられますが、それが生産者まで帰つて行かないという事態が起つてつて、これは荷受け機関が一時資金を流用するといつたようなことで、はなはだ好ましくないことであると思つておりまして、配給統制の廃止に伴いまして、そちらの方面から、これは適当な措置を講じ、資金をとりもどしたいと考えておるのでございます。いささか銀行行政からは離れる問題になるかと存じますが、そういう資金の焦げつきがかりにありましても、それとは別に、今後の生産並びにこれが消費者への配給には事欠か、さないように、地域によりましては、今後の商品の授受資金につきましては、たとえば荷受け機関信用状をとつて、これだけは確実に荷受け機関において支拂い能力ありと認めて、これを生産地にまわしまして、そこで生産業者に対して金融をつけるといつたようなことも考えておるのでございます。  それから、預金部資金につきましては、御指摘の通り、国民の零細預金が集まつて参りますのを、これを十分に市中に還元できない状態にあることは、金融界にとりまして好ましくないことであると考えておるのでございます。申し上げるまでもなく。戰前は預金部資金が各地の組合等に十分に行き渡りまして。低利長期資金供給源となつてつたのでございますが最近の預金部資金を使う使途といたしましては、国債。地方債の引受け、あるいは公団等、政府機関に対する融通というようなことに限る旨の指令が生きておりまして、私どもは、預金部資金が国民経済に十分の貢献をなすように。これらの改善策には鋭意努力中でございます。  それから、漁業協同組合法の改正によつて、むしろ大企業者に金を吸いとられることになるであろうというような御見解につきましては、立法の当局者でありますところの水産庁にお尋ね願いたいと存じます。  最後に、大企業に対する国有。その他の政策論につきましては、私からは御答弁の限りでないと存じます。
  29. 林好次

    ○林(好)委員 ごく簡単に、率直に水産庁に私は伺いたいと思うのですが、この漁業手形制度の問題、及び水産預金の問題に関しまして、水産庁に伺いたいと思うであります。  御承知ように、昨年漁業手形制度が設けられましたわけでありますが、銀行局長の御説明によりますと、きわめて利用度が低いということであります。私はまことに遺憾に思うわけでありますが、内容につきましては、田口委員からもいろいろ御意見がありましたように、もちろん悪い点は大いに是正をしなければならぬと思いますけれども、とにかく非常に利用度が低いということであります。さらにまた、中金の預金におきましても、農村方面には相当預金があります。すなわち系統機関を通じて預金をいたしておりますが、水産方面におきましては、中金の預金ほんとうに僅少でしかないというような現況でありまして、この点が水産金融に対する非常な隘路になつておるのではなかろうかと考えておるのでありまして、かような点に対しまして、水産庁は今日までいかなる指導をしておられますか、それをひとつお伺いしたいと思います。
  30. 戸嶋芳雄

    ○戸嶋説明員 お尋ねの第一点の、漁業手形制度の活用が非常にされておらないという点でありますが、実は当初始めましたときに、これでもつて大体七十億から百億くらいを目標にしておつたわけであります。ところが、現在はおつしやるように、現金が現実融資されておる額が、大体十億あまりでありまして、われわれの予想の十分の一というような状態であります。その原因がどういうところにあるかという点について、われわれ出張のたびごとに、係官にそういう面の調査をさしておりますが、大体において一番隘路になつておるのは。結局業者同志の信用に結びついた基金というものが銀行の方の担保になつておるという点、それともう一つは、これから揚るであろう水揚げの状況というものが、大体銀行なり、あるいは中金といつた金融機関の唯一の担保になるわけでありまして、その見通しの限界が、結局金融業者と漁業関係者との間に食い違いがある。なおそれに加えて、県の指導力というものがその間に入りますと、業者の話が非常にうまく行く。ところが県によりましては、その指導力が非常に鈍い。そこで業者の話がなかなかつかない。こういつた事情が一番大きな原因であるようであります。そこでわれわれといたしましても、昨年度あれを始めたのが、ちようど年度の中途でありましたので、予算措置を講ずることができなかつたので、二十五年度こそは、地方においてこういつたもののあつせんについての職員を置くための費用に対して、国庫が助成をする、あるいは委員会の費用に対しても助成するとしりような方法をもつて行きたいというので、予算も組んで、大蔵省に最後までがんばつたのでありますが、大蔵省の方でどうしても認められないというようなことになりまして、二十五年度は見送るというような状態であります。われわれは、なお続けて、そういつた県の指導力というものを強化する面について、できるだけ皆さんの御協力を得まして、予算措置なり、その他の措置を講じて行きたい、こう考えております。  それから第二点の、中金に対する漁業協同組合の方との関係でありますが、おつしやる通り、これはこの前お手元に配付した資料でもおわかりのように、現状は農業関係資金漁業協同組合関係の方でむしろ逆に使つておるような状態になつております。従つて中金としても、漁業に対する認識がないわけではないのでありますが、やはり金融機関の立場からもまた漁業協同組合に対するいろんな考慮から、どうしても預金と見合せて資金を出すというようなことになりますので、勢い漁業に対する融資が、何か農業に対する融資に比して、まま子扱いをされておるというような状態が見えるのでありますが、一方われわれは、これに対して、やはり漁業協同組合の自己蓄積という面から、もう一度反省して行く必要があるのではないか。そこで昨年の暮から各地にブロック会議を開きまして、漁業協同組合の事業としては、まず信用事業というものを強化して行きたい、こういう運動を始めまして、御承知ように中央金庫で、蓄積運動の一つといたしまして、大漁定期というものをやりまして、これは大体目標通り、三億円にやや近い数字を上げて、われわれまた二回目のそういつた企てをやろう、そうして自己資金の蓄積というものを考えながら融資の円滑をはかりたい、こう考えております。
  31. 林好次

    ○林(好)委員 よくわかりましたが、とにかく、いかなるよい制度を設けられましても、それを活用しなければ意味がないのであります。私は御承知ように、北海道の網走から出ておる者でありますが、私どもの方の協同組合では、漁業手形を高度に利用いたしておりまして、大体昨年あの制度が設けられましてから、一千五百万円ばかしは、手形の見返りとして積んでおりまして、それに対して、春の着業資金として融資を受けておるのでありまして、すなわち指導のよろしきを得なければ、幾らいい制度が設けられましても、よい結果を得ることはできないということであります。さらにまた、預金の問題につきましても、あわせてひとつ水産庁で、今後積極的な御指導をいただきますように、強く要望して私の質問を終ります。     〔奧村委員長代理退席、夏堀委員長代理着席〕     —————————————
  32. 夏堀源三郎

    夏堀委員長代理 次は、地方税法案につき地方行政委員会に申入の件を議題といたします。奧村又十郎君。
  33. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は、ただいまの議題に関しまして、財政課長にお尋ねをいたしたいと思います。先般の水産委員会、大蔵委員会地方行政委員会の連合委員会において、お尋ねいたしたのでありますが、その際において、あいまいな御答弁もありましたし、なおつつ込んで政府の御見解を承つて、われわれ水産委員会における、この地方税に関する修正案の参考にいたしたい、こう考えるのであります。時間がありせんので、要点をお尋ねいたします。  まず、漁業法の新法による漁業権に関しては、漁業税は賦課しない。こういうことを本多国務大臣答弁しておられるのでありますが、なぜこの條文の中に御規定にならないのか、この点をお尋ねいたします。
  34. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 本多大臣がどう述べられたかということは、正確には承知いたしておりませんけれども、あるいは本多さんの考え方方向お話になつたのじやないかというふうに想像するわけであります。法律上は、やはり漁業権税として課せられるわけでありますが、ただ私がこの前に申し上げましたように、課税標準を賃貸料にとつておるわけであります。新しい漁業法では、漁業権は、貸付目標とすることができないわけでありますから、その際においては、かりに存続すると決定いたしました場合には、課税標準を他にかえなければならないだろうというふうに考えておるわけであります。そういう問題はあるわけでありますけれども、新しい漁業法か施行された場合に、漁業権税を廃止するということは、この地方税では別に確定はいたしていないわけであります。  それから先ほど、前にあいまいな答弁があつたというお話がありましたので、ひとつお断りしておきたいのですが、この前奧村さんは、漁業権税の対象となるものは、定置漁業権と区画漁業権だけだつた、こういう御質問だつたのでありますが、私はもう一つあるのじやないかと思うのだが、忘れて現在しつかり覚えていないということを申し上げて、さらに、登録されて物権とみなされるものは全部対象となる、こういうふうにお答えをしたわけであります。ところがもう一つあると考えるがという漁業権は、特別漁業権であります。特別漁業権はなお二年間存続しておりますので、正確には特別漁業権と区画漁業権とが対象になる、こう御了承願いたいのであります。
  35. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの御答弁によりますと、それでは二百九條の漁業権と称するものは、現在施行せられておる漁業法における漁業権と、それからなお将来二箇年間存続する旧法による漁業権と、双方を意味する、こういうことに、ただいまの御答弁では解釈されるわけでありますが、そうでありますかどうか。そうすると、この漁業権の中に入らない許可漁業は、もちろんこれは漁業権には入らぬのですから、課税されない。ところが現在は、各府県すべて許可漁業に、これは各自はどうなつておるか知らぬが、漁業権税がかけられておる。これは全然なくなるのか。この点をお聞きいたしたい。
  36. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 現に漁業権として存続しておりますものしか課税の対象になりませんので、新しい漁業法に基きますところの漁業権というものが生れていない間は、当然旧法によりますところの漁業権が課税の対象になるというふうに御了承願いたいと思います。  それから、許可漁業権に対する課税の問題は、この前に申し上げましたように、そういう種類のものにまで課税したいということで法定外の独立税を起して参ります場合に、将来は地方財政委員会の許可ということになるわけでありますけれども、地方財政委員会が許可いたしました場合には、課税ができる。地方財政委員会が許可するかしないかは、これは別問題であります。
  37. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それで大体わかりました。許可漁業については地方財政委員会の許可によつて、あるいは法定外の普通税として課税されるかもしれない、こういう御答弁であります。そこで、いろいろお尋ねがわかれて来るわけでありますが、許可漁業が法定外の普通税として課税される場合に、新漁業法により免許も許可された場合の、その許可漁業にかけられるかどうか。これはやはり、最初にお尋ねしたように、新漁業法による漁業権に漁業権税がかけられるかどうかということと関連するわけでありますが、御存じの通り二年後からは、免許料、許可料が国から課せられる。それにまた、この新漁業法による許可漁業に法定外の普通税が課税せられるということになりますと、二重課税になる。法定外の普通税というものは、国税と二重になる場合は、地方財政委員会はこれを許可しない、こういう規定がここに盛り込まれてありますから、新法による許可漁業にはかけられない、漁業権税はかからない、こういうぐあいに解釈できるのですが、その通りがありますか。
  38. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 二年先になりましたら、定置漁業権と区画漁業権、これ以外の漁業権税はないわけであります。法律上の漁業権税はないわけであります。しかしながら、それ以外の許可を受けて行いますところの漁業につきまして、それを一つの権利課税を行いたい、こういうふうに地方団体が考えました場合には、地方財政委員会の許可を得なければならない、こういうことになるわけであります。それは禁止していない。しかもまた、そういうことは国税との二重課税という問題は起きていないのではないか、現に国税はそういうものについて権利課税を行つておるわけではない、こういうふうに考えます。
  39. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、現在施行の漁業法により免許、許可をされた場合は、漁業権及び許可に対して、この免許、許可料を国が徴収する。これは大体漁獲高の三%程度になるのでありますが、これは税として認めない、こう御解釈でありますか。
  40. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 漁業免許料、漁業許可料は国税ではないと考えております。
  41. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、水産庁当局に、この点をお尋ねいたします。
  42. 久宗高

    久宗説明員 漁業法が施行になりまして、漁場の切りかえで行われましたあと。漁業権の免許並びに漁業の許可につきまして、免許料、許可料を徴収するわけでありますが、これは形式上の意味で国税ではございません。しかしながら実質的には、これは国による賦課金でありまして、その取扱いにつきましては、形式上の国税ではないからという取扱いはできないと思います。実質上は、それがいかなる形で課せられるか、いかなる内容のものであるかということによつて、実質上の競合関係に明確に起つて来ると思うのであります。従いまして、私どもの見解といたしましては、漁業権税と漁業権の免許料、許可料というものは、明確に競合すると考えております。
  43. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの水産庁政府委員の御答弁にもありますように、形式上は税でないかもしれないが、税と同じ性格のものであり、要するに負担力の問題でありますから、税と同じ負担を受ける以上は二重課税になる。こういうふうにわれわれは解釈しておるのであります。しかしこれは奧野政府委員にこれ以上お尋ねするのは少しむりかもしれませんので、この点は問題があるということにして、御答弁は要求いたしません。そこで奧野政府委員のただいまの御答弁によりますと、新漁業法によつては、賃貸は認められていないということであります。ところがこの地方税法の規定によると、賃貸料が課税標準になつておる。従つて二年後においては、この條文によつて何らか考慮されなければならぬ。つまりこれによつて二年後、漁業権税というものは廃止するとかなんとか、政府も考慮する必要がある、こういうような意味でありますか、逆に二百九條には漁業権として、「(共同漁業権及び入漁権を除く)」と御丁寧に註釈してある。共同漁業権というものは二年後でなければこれはできぬものであります。漁業法によつて、二年間は原則として漁業権は免許、許可されない、共同漁業権も認可されない。二年後、三年目からこの共同漁業権か生ずる。ところが御丁寧にこの共同漁業権を除くと規定してある以上は、なお三年後も漁業権税を課するという前提のもとにこの規定があることになる。なお漁業権税に関する最後の條項には、專用漁業権だけは共同漁業権とみなすという丁寧な註釈まで用いておるから、この條文の規定から行けば、二年後においても新法による漁業権に対して、漁業権税を課するという精神が読みとられるのであります。この点はいかがですか。
  44. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 地方税法案政府案として国会に提出するに至りましたまでの間において、水産庁といろいろ話合をいたしておるわけであります。率直に申し上げたいと思います。水産庁からは漁業権税をやめてほしいという御注文があつたわけであります。これに対しまして、私はこういう見方をしております。漁業免許料、漁業許可料というものは、会までの漁業権が全部買収され、それが全部新しい漁業権者に渡される。その対価として三十年未満の範囲において、漁業免許料、漁業許可料というものを国に納付して行く。それが完了すれば完全な漁業権というものが、新しい漁業姉者において取得されるということになるのじやないか。従来漁業権を借りておつた人たちはある程度使用料を拂つている。今度にその使用料ではなしに、許可料を納めることによつて、完全な漁業権の使用者になるのではないか。そういう場合を考えれば、漁業の免許料、許可料というものは、一種の年賦による漁業の買い取り料だという見方もできるのではないか。こういうことを申し上げておつたわけであります。しかし漁業者のいろいろの状態も総合的に判断しなければなりませんので、さらに考えて行きたいという希望を持つております。そこで漁業権税というものを、漁業免許料の創設によつて、やめなければならないというふうにはわれわれは考えない。従つて漁業権税は、新しい漁業法が完全に施行されたあかつきには廃止するということは規定しない。しかしながらさらに将来においては考えたい。そこでこの賃貸料というものを課税標準にとるといたしますれば、どういたしましても、これは不備たるを免れざるを得ない。新しい漁業法が施行された場合は、これは当然に施行されなければならないので、その際にさらに修正を考えて行きたい。こういう希望をわれわれ持つおるのであります。制度としては今申し上げたような意味で、新しい意味を持つ漁業を持つ漁業権税は存続できる。従つて共同漁業権ということも、その場合のことを考えて、課税から除外するための規定もしております。さらに專用漁業権を旧法が存続いたします間は、共同漁業権と読みかえるというふうな規定を、別のところに置いてあるわけであります。従来の專用漁業権、将来の共同漁業権、これはその性質上、課税除外にしておる。こういうことを明確にいたしておるわけであります。
  45. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大体政府の御意見はわかりましたが、本多国務大臣が二年後は新漁業法による漁業権には、漁業権税は、漁業権税はかけないと言うた言葉、それから荻田財政部長ですか、予算委員会において、はつきり新漁業法による漁業権には漁業権税はかけないという答弁をした。これも記録に載つておりますが、それとただいまの奧野政府委員の御答弁と全然これは食い違つておるお奧野政府委員の御答弁によれば、二年後にまた考え直すというだけで、廃止するという意思は今毛頭持つていない。こういう御答弁ように解釈いたします。その通りでありますか。
  46. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 私は個人の考えとしてでなしに、この地方税法案からそう読みとつていただける、こういうふうに考えております。
  47. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そういたしますと、漁業権の免許料、許可料を国が徴収するということによつて漁業権税は明らかに二重課税になる。この点をわれわれはあくまでも明らかにして、修正しなければならぬと思います。これ以上のことは議論にわたりますから申し上げませんが、ただ一つつけ加えて申し上げますと、ただいまの奧野政府委員のお言葉によれば、なるほど二年後、免許料、許可料を漁業者が拂うかもしれぬが、それは今までの漁業権に対する補償として拂うんだ、あとは新たにその漁業権を漁業者が取得するのじやないか。従つてこれは免許料も許可料として拂つても、何も税の性質ではない。漁業権税に対する負担能力はあるはずだ。こういうお言葉のように承つた。これは遺憾ながら水産庁と財政当局との間に十分のお話合ができておらなんだ証拠と私は思う。水産庁の方の御説明が足りなかつたのかもしれません。というのは、従来の漁業法と今回の漁業法では、根本的に性格が違うのであります。つまり漁業権なるものの観念が根本からかわつたのです。従来は漁業権は二十年存続した。また更新が認められた。今回の新漁業法においては、五箇年で免許の存続期間かなくなる。そこでまた新たに下付され、しかも優先順位、適格性、これはすべて従来の漁業権というものとは観念が違うのだ。これは国の政策によつて漁業権というものが根本からかわつたということがあなたに御理解されておらぬ。地方財政委員会理解されておらぬ。ここにこの漁業税の問題の観念に根本的に相違が生じておるということを申し上げておきたいと思うのであります。これは御返答していただく必要はありません。  それからもう一つ附加価値税に関しての問題でありますが、附加価値税に関しては主として自家労力を用いて行う水産業に対しては課税しない、こういうことになつておるのでありますが、その「主として自家労力を用いて行う」という政令の規定の案を見てみますと、單に「事業延日数の中その三分の二以上が事業者又はこれと雇傭関係のない同居の親族によつて行われているもの」。こういう規定があります。そういたしますと、もしただ一人でも他人を雇用して漁業をしておる者には、附加価値税がかかる。こういうことに解釈されるのですが、これはどうなんですか。
  48. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 附加価値税を課さない自家労力によつて行うものの範囲は、たびたび申しましたように、総労働延べ日数のうちで、三分の二以上が自己または同居親族の労働によつて行われるものであります。従いまして同居の親族が多ければ多いだけ、雇用の労働数も多くてさしつかえないということになると考えております。ひとり自己労力だけであつて、同居親族の労力がない場合を御説明になつておりますが、同居親族の労働力が多ければ、それだけ雇用の範囲も広くなるわけであります。
  49. 奧村又十郎

    ○奧村委員 同居親族と申しますが、親族の範囲はどういうことになりますか。
  50. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 民法上の親族の問題であります。
  51. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこでこの政令の條文が私どもはつきりわかりませんから、自治庁からいただいたこの要綱で見ておるのですが、その要綱の運営事項の欄に、これは政令の案として出ておるのですが、ただいまお述べになつたような規定にはなつておりません。これを読み上げてみます。「主として自家労力を用いて行う第二種事業と事業延日数の中その三分の二以上が事業者又はこれと雇傭関係のない同居の親族によつて行われているものをいうものであること」。つまり一年のうちと申しますか、その事業の経営の日数のうちの三分の二以上を、事業者及びその親族でやつておるのだ。つまり三分の一までは他人を雇うて事業してもいい。しかし三分の二以上はこれは事業者及び雇用関係のない同居親族でやるのである。それでなければ附加価値税はかかる、こういう意味でありますか。この條文と違うのでありますか。
  52. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 そこに書いてある通りでありますが、御解釈があるいは違つておるのじやないかと思います。そこに書いてある意味をもう少し詳しく申し上げますと、たとえば夫婦共かせぎをやつていて、一年間のうちで六百日働いて、三百日だけは別な労働力を雇用しておつた場合、その三百日を超えております場合には課税の対象になりますし、三百日を超えていない場合は課税の対象にならぬわけであります。
  53. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでわかりましたが、それではもうひとつ具体的に申しますと、事業主が一年のうち三百日働いた。それからその弟が一年のうち二百日働いた。それからむすこが一年のうちその事業に百日働いた。合計六百日働いた。それに他人が入つて三百日働いて、全部で九百日、つまりその三分の一の三百日は他人を雇うてもいい。それ以上雇つた場合は、これはつまり附加価値税がかかる、こういう解釈になるわけですが、その通りでありますか。
  54. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 お説の通りであります。
  55. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それではほとんど漁業は附加価値税がかかつてしまう。これもまた水産庁の方で、もう少し漁業の実態を地方財政委員会に徹底していただきたかつた。この條文の通りに行きますと、ろ船と申しまして、ろこぎで、一人でろを押して出て行く漁業者はそれに該当する。しかし少くとも機械で船を動かす場合、必ずかじとりがいる。それから機械船には機械の運転手と申しますか、機関士がいる。それからとも乗りと申しまして、さおさしがいる。どうしたつてなんぼ最低の漁業者でも三人はいる。そうするとおやじはかじとりをやつておる。あと二人はよそから入つて来る。あるいは一人はむすこが乗つておるかもしれないが、一人はよそから乗つて来る。その上にもう一人たれか乗れば完全に税金がかかる。こういうことになつて、全然これではほとんどの漁業かかかるということに解釈される。しかしこの点はこれ以上押してみても議論になりますから、そういう実情になるということを申し上げておきます。しかしもう一つ念のためにお尋ねいたしますが、沿岸漁業の、特に零細漁民の漁業の実態は、まず一そうの船に五人か七人くらいが乗つて出漁して、そして一本づり、あるいは、はえなわとか、そういう零細な漁業をやる。それは大規模の漁業なら百人なり二百人が従事しますが、自家労力による零細漁業でも、少くとも五人や六人は乗ります。その五人や六人乗る場合に、大体みな一家の世帯主が乗るのです。そして五人が乗り組んで、船主に一人分をやつて、それであとの水揚げ分を五人で平等に分配して帰る。こういうのは事業とは言えぬのです。実際には船の借り賃として、船主に一人分やつて、あとの五人で水揚げしたものを平等に分配をして帰る、こういう漁業形態が多いのです。こういう場合もこれはこの條文において自家労力における経営として課税からはずされるのであるかどうか、これは一番該当事項の多いところでありますから特にお尋ねいたします。
  56. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 今お話になつております事例が、具体的にどういうものであるか、正確に私把握いたしかねるのでありますが、船主と船子との関係につきまして、従来船子に対する事業税の問題が争いになつております。現に長崎県におきましても争いになつて、一審の判決はあつたわけでありますが、さらに控訴するようたかつこうになつております。われわれは今お話になりましたよう通りであれば、私は個々の者が事業を行つているものと見るべきであると考えておつたわけであります。これに対しましては、水産庁その他においても異論を持つておられたのでありますが、われわれはそういう判断をしておつたわけであります。もしそれがそのままでよろしいということか、さらに判例の上でも確定せられるならば。もとよりそういうものは、主として自家労力によつて行うものといつた範囲として、附加価値税は課せられないことになるものだと考えております。     〔夏堀委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この点は非常に重大でありますから、重ねて明らかにしておきたいと思います。ただいま問題になりました長崎県における訴訟の事例は、私も長崎県水産部長から報告を受取つて読んでおります。そこで問題は、今後ともこういう問題は起ろうと思うんで、一番問題になつて来ると思われるこの條文の雇用関係というものは、どういうことを意味するものであるか、漁業だけは特殊な事情が多いのであります。板子一枚底地獄で、死なばもろともという事業でありますから、大体雇用関係でなしに、漁獲局のわけとりという制度であります。それで船はたれかものであるし、その船はみんなが共同で借りる。そうして水揚げは平等に分配する。だれからも雇われたわけではない。漁獲高は平等にわける、こういう場合はこれは雇用関係でない。これは長崎県の例でもはつきりしたわけです。奧野課長のただいまの御答弁によると、これは雇用関係でないと言われたようでありますが、それでは漁業の場合には、どういうものを意味するのか、雇用関係についてこれをひとつお尋ねいたします。
  58. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 民法上の契約関係になつておりますものは非常に明確なんでありますけれども漁業については特殊な古い慣習かあると聞いております。その場合に、私は税法の運用にあたりましては、収支の計算を自分のものとして載せさせておるのかどうかということが、一つの大きな判断の基礎になるのではないかと思います。こういう点から収獲物を山わけにする、あるいは必要な経費をお互いに分担しあつているというようなものは、それぞれ事業を行つている者であつて、雇用されているものではないというふうな解釈をして行きたい。それが従来長崎県の課税にあたりましてもとつた方針であつたわけてありますけれども、現に争いになつているわけであります。その結果とも照し合せまして、さらにまちまちな取扱のないような、運用を考慮して行かなければならないと考えております。
  59. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これで私のお尋ねいたしたいことは、大体はつきりいたしました。それでそういう雇用関係でなく、漁獲高を自分の計算の上において分配する。そういう特殊の経営組織が、今回はこの水産業協同組合法によつて漁業生産組合として、法人組織として、法によつて認められておる。そういう場合においては、これは雇用関係ではない、つまり課税の対象とならない、こういうふうにいたせば。最もはつきりすると思うのであります。しかしこの点は、今課長にはつきり言明してもらおうと申してもむりでありますから、そういう事柄になつておるということをお耳に入れておきたいと思うのであります。  最後に、この附加価値税に対しては、漁業協同組合その他水産協同組合漁業の自営については、附加価値税をかけないということに、われわれはぜひいたしたいと思うのでありますが、これに対して、御意見を伺いたいと思います。
  60. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 お尋ねは、漁業協同組合に対して附加価値税を課さないようにしろという御意見でありますか。
  61. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今度の漁業法の改正によつて漁業協同組合漁業の自営というものを国が勧めておるのです。この條文によると、漁業の自営に対して、税金がかかることになつておるのでありますが、われわれとしては、少くともこれだけは課税からはずしたいと思うが、これに対してどういう御意見を持つておられますか。
  62. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 附加価値税を課税いたします場合には、なるだけ同じような扱いをして行きたいというふうに考えておりますけれども原始産業につきましては、自家労力によりますものについては、課税をしない。これはいろいろな理由から、そういう措置を講じているわけでありますけれども、そういう措置が別途にあるが、半面また同じようなやり方を、單に組合形式を講じてやつている。従つてそれに対して附加価値税が課されて来るというふうな、形式的な取扱いをとらざるを得ない。こういうふうな面につきましては、やはりその組合の行つております事業の実態というものをよく調査いたしまして、その内容に応じて減免の措置を講じて行くべきものではないか。一律的にある法人、ある組合だけを不公正にするということになつて参りますと、その営んでおります事業の内容というものは、やはり区々であろうと思うのであります。従いましてもそこにある程度実態をきわめまして、主として自家労力によります原始産業を課税からはずして、それとの均衡から見て、実施することができるかどうかということを、府県自身が判断いたしまして、きめて、課税して行く。こういう方針が最も適当ではなかろうかと考えております。
  63. 久宗高

    久宗説明員 先ほどの奧野政府委員お話と関連いたしまして——奧村委員の御質問の状態と、奧野政府委員お話になりました状態との間には、実は非常な大きな差がありますので、この点につきまして、水産庁の見解を明確にしておいて誤解を避けたいと思うのでございます。  先ほど奧村委員から、沿岸漁業一つの典型としてお話になりましたごく小規模の、五、六人乗り込んで、船主には一しろ拂い、あとの乗り込んだ人たちが、漁獲高をわけるというような形態、これは沿岸漁業で、大多数の者がこういうことをやつておるわけでありますが、それと、奧野政府委員の方からそれと関連してお話のありましたただいま係争中の長崎県のあぐりの問題とは、状態が違うのであります。それについて、先ほど奧野政府委員の方から、水産庁でも、これについては雇用関係があるというふうな考え方があるというお話でありまして、一般に歩合の問題につきましては雇用関係前提とするようお話があつたのでありますが、これは違うのであります。私どもといたしましては、先ほどの例で申しますと、ここに一つの船があつて、それにその船の持主がいる。それも乗り込んでいる。さらに独立の生産者がその中に乗り込みまして、船主には一しろ拂い、あとのものを平等にわけるというようなものにつきましては、その船主と、さらに乗り込んだ独立の生産業者との間には、雇用関係はないと思うのであります。従つてそういうものまで雇用関係があるとして、事業税をどうこうしろということを自治庁の方に申し上げたことはないのであります。そういうような場合には、雇用関係前提とされませんから、個々の事業者として取扱つていただいてかまわないと思うのであります。ただたまたま問題となつおりました長崎県のあぐりの問題に対しましては、これと違うのでありまして、これは明確にこの委員の方におわかりになると思いますが、あぐりの非常に大きな経営でありまして、雇用関係前提とされている。この二つの違いは、法律上はきわめて明確に言えるのでありまして、前者の場合、つまり雇用関係前提とされる相当大きな規模の漁業につきまして、かりに歩合制という形が、表現としてとられておるといたしましても、それは明確に雇用者、それから雇われる者というものがわかれておりまして、法律的に申しますと、漁獲物は共有でないということで、その点ははつきりするわけであります。なお今の五、六人乗り込むようなものにつきまして、船しろ制をとつておりますものにつきましては、漁獲物が共有である場合が多いわけであります。共有であるか、共有ではないかによつてこの問題はわけていいわけであります。従つて、先ほどの奧村委員の御質問に対しまして、その点が事業税と関連いたしまして非常に混雑いたしましたので、水産庁の見解を明らかにしておきたいと思うのであります。  それからもう一つ、沿岸漁業の場合において、家族労働がどのくらいなるという形で線を引く形になつておりますが、そういう場合の家族労働というものについて、典型的に考えられるものといたしましては、かりに私が船を持つており、そして漁に出る。むすこを一人連れて行く、あるいは他から一人雇つて乗せて行くというような、こういう小さな規模のものもあるわけでありますが、この場合、先ほどお話の漁獲物がみんなの共有という形で、特に雇用関係がないというものとは別でありまして、私が雇う労働者につきましては、そこに明確に雇用関係があるということで考えて行くべきものであると思うのであります。その点を三つ混雑してお話になりましたので、誤解を避けたいと思いまして、申し上げた次第であります。
  64. 奧村又十郎

    ○奧村委員 非常に水産庁政府委員から、適切なお話がありましたので、それに関して私も申し上げますが、これは日本の沿岸漁業の経営形態は、各種各様、種々さまざまで、決してはつきり一律にきめられぬと思う。それで久宗説明員の言われたように、雇用関係と認められる場合もあり、また雇用関係がないと認められる場合もあるということは、あぐり網あるいはきんちやく網と申しますか、大規模の漁業についてそれが確かにあるというようなことは、何をもつてはつきりさせるかというと、漁業生産組合をもつてはつきりさせればいいと思う。それで久宗説明員の言われるお言葉によると、全部漁夫が出費して行く。従つて全部漁夫か漁獲高をわける。こういつた場合でなければいかぬというお言葉になるが、今度の水産業協同組合法によると、三分の二以上は漁夫として乗り込んで、事業に携わる。三分の一以内は、出資のみでもいい。これが漁業生産組合である。これでもつて行くならば、私ははつきり理解できると思います。一人でも出資さしておつたのでは、これは雇用関係があるんだ、課税の対象になるんだということならば、せつかくのこの水産業協同組合法による特殊の漁業生産組合というものは成立たぬ。この意味において、私は漁業生産組合なるものは、これは課税の対象からはずのだ、しかも雇用関係でない、こういう解釈に統一せられたら一番いいと思いますが、重ねて水産庁政府委員に御意見をお聞きします。
  65. 久宗高

    久宗説明員 今の共同経営のやり方につきまして、新しく漁業生産組合という形が與えられ、それが法人格を與えられることによつて一つの解決されたわけでありますが、今まで税関係で問題になつておりましたのは、そういうものではなしに、いわゆる業界でも、あいまいに、共同経営だというようお話をしておりますものにつきましては、いろいろ規模、段階があるわけであります。この点につきましては、実際の行政の適用などにつきまして、地方自治庁ともいろいろお打合せしておつたのでありますが、理論的に言えば、これは雇用関係があるなしによつてきめるということになるわけであります。ただそれを明確に法的に規定し得ないということで、大分議論が堂々まわりしたのでありますが、私どもといたしましては、法的には、漁獲物が共有であるかどうかという点で明確に区分できる。それで、実質から申しますと、相当大きな規模のものは、明らかに雇用関係にあるのであつて、それより小さな方に参りますと、必ずしも雇用関係にないものがある。この辺が非常にあいまいだということが、漁業について詳しくない方から言われるのでありますが、これをつつ込んで考えました場合に、法律的には、やはり漁獲物の共有関係によつて明確に線が引けるのでありまして税の関係におきましても。あるいはこういうものの解釈にいたしましても、その点で法的に明確に線が引けるということを考えておる次第であります。
  66. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの点、漁獲物の共有であろかないかということによつてきまる。しかし百名以上も従業する漁業において、一人や二人、あるいは一割や五分くらい、資本のみを出資する人があつても、これは雇用関係が成立するということであつたのでは、これは全国の漁業全体にとつて非常に重大な問題である。漁業生産組合なるものは、三分の一以内が資本関係だけにつながつておるものがあつても、漁業生産組合として認められておるのだから、その法律の精神によつて、この雇用関係というものを律したらいいと考えます。
  67. 久宗高

    久宗説明員 ただいまの生産組合ないしは漁業会の自営の問題につきましては、法人格が與えられておりますので、それ自体が経営なのであります。今申し上げたのは、ある経営体の中で雇用関係があるのかないのかという点が明確でないものについてのお話であります。ですから、生産組合と協同組合の問題は一応別にしていただきたいと思います。ただ内容的に言つて、そういうものを、たとえば一般生産組合で行けば、内容、形式ともに整うじやないかというお話なら、わかるのでありますが、これは一応経営主体としての法人格が別にあるわけでありますから、先ほど奧野政府委員の方からお話のありました長崎の係争事件と、奧村委員の方からお話のありました沿岸漁業の方で行われている零細な規模のもの、その中における雇用関係という問題とは、一応別箇に離して議論していただきたいと思います。
  68. 田口長治郎

    ○田口委員 ただいま久宗課長の御意見で、共同経営か、あるいは雇用関係にあるかという問題を、主として漁獲物が共有であろかどうか、その点において決するのだ、こういうふうに承知いたしたのでございますが、漁獲物が共有であるかないか、この問題の判定基準をどこに置くのでありますか。普通の場合におきましては、大体漁獲の責任は漁業者が持ち、とつて来たものの販売は陸上の者がやる。そうし「売り上げた金額は、諸経費を差引いて、漁獲責任を持つた漁業者が四〇%、あるいはいわし漁業にいたしますと五〇%、販売責任者の方が五〇%、あるいに漁業によつて六〇%、こういうふうに分ける、いわゆる魚でわけてもしようがないから、一しよにまとめて処分をして、そうして売上金を場合によつてわける。こういうような制度が大部分のもののよう考えるのでございます。そういう点から考えまして、漁獲物が共有でないから、これは雇用関係である、こういうような御解釈のよう考えるのでございますが。そういう制度の場合におきまして、普通の常識からいたしますと、むしろ共有である、こういうふうに考えるでございますが、何か明確に共有でないという根拠になる点がございますれば、ひとつ御指示願いたいと思います。
  69. 久宗高

    久宗説明員 この問題は、しばしば議論される問題でありまして、ちようど税と関連いたしまして、自治庁ともいろいろ議論を繰返したわけでございますが、一般に水産業の業界におきましても、非常にあいまいな共同経営論というものがあるわけなのであります。そのことがたまたま税の場合に、税をおとりになる方の側から問題にされて私どもといたしましては、その点を明確にする必要があつたわけであります。その際に、漁業にはいろいろ規模もございまして、その賃金形態も千差万別なのでありますが、一般に歩合制というものがよくとられております。その歩合制というものは共同経営なのかというような一般問題がよくあつたのであります。しかしながら、これは業態によりまして、漁業の規模によりまして、おのずからそこに、雇用されている者、雇用している者というものは明確にわかれるような規模の産業と、外から見た場合に、もう少しそれがあいまいなものとあるわけであります。そこで、どこかで明確に線を引く必要があるということで、雇用関係のあるなしでわけて行こうと言う。理論的にはまさにそうなのでありますが、それを実際上明確な形で、純粋に法的に規定しようといたしますと、先ほど申しましたような、漁獲物の共有という点を議論すれば、はつきりするのじやないかというところにおちついたわけであります。ただその場合においては漁獲物の共有とはどういうことなのかと申しますと、普通に共同経営と言つておられる方に例をとりますと、それではあなたの舟子が漁獲物をかつてに処分してしまつたという場合に、それについて全然文句が言えないかということになれば、そんなことはない——これは当然のお言葉だと思います。当然そういうお答えが出るのであります。実際売る物理的な行為を漁夫がやるかもしれませんが、それを決定することについて、対等の立場で舟子が問題を出すいうことになれば、それでは困るこの漁獲物の処理権は自分にあるのだということを、船主としては言わざるを得ないと思います。先ほど小さな漁業について申しました共有ということになれば、船主の方は舟しろとしてとつておいて、あとはみなそれぞれかつてに処分できるということで、大きな形態とはまるで違うのであります。そういう意味で、突き詰めて参りまして、裁判で問題になるときになれば、法的には共有であるかどうか、処分権の問題をめぐつて明確に一線が引ける、こういう意味であります。
  70. 田口長治郎

    ○田口委員 どうも共有という問題が、今のお考えように、漁獲物を無断で処置した場合に文句がないか、こういう問題は、販売に対する責任を持つておるという点から申しましても、あるいは六〇%のわけ前をとるという点から言つても、業漁者がかつてに処分するということは、その点から非常に困るので、もし百箱の漁獲があつて、これを販売責任者の前で四〇%だけ持つて行く、これならば何も文句はない。結局それは管理の問題で、共有の問題ではないと私は思いますが、販売責任者の前でやることはさしつかえないが、販売責任者がいないところでこつそりと、おれは四十%持つて来た、これでは管理上非常に困るという点において文句がある。これが共有物だから、こうしてもさしつかえないじやないかということは、ちよつと的はずれの見解じやないかと思うのであります。もしこれが雇用関係にあるということであれば、漁獲の共有という点からでなしに、ほかの方面から立証されなければならぬと思うのであります。
  71. 久宗高

    久宗説明員 今の私の説明は、漁獲物全体についての説明がないのであります。いろいろ歩合制というあいまいな言葉が使われておりますが、本来雇用関係を伴うような歩合制と、そうでない船仕事も一般的には歩合制と言つております。しかしながら税法の適用とか、あるいは労働関係法の適用といつた場合に、ここに明確に線を引かなければならぬ。雇用関係があるなしということが問題になるわけでありまして、そのときに一番最後になる線を申し上げたのであります。ここに雇用関係があるということは、企業関係からずつと、それに対して業者がどういうふうにタッチして行くかということまで詳しく申し上げなければいかぬと思うのでおりますが、そう言いましても雇用関係のあるなしということははつきりしないじやないかというのが一般の常識なのであります。そうではなくて、法的に一番最後に問題になるのは漁獲物の共有という問題でもつて、処分権の問題できちつと線が引けるということを申し上げたのであります。決してこれだけではかるというのではなくして、最後には集中的に表言されるから、決してその関係は不明確で線が引けないのではないということを申し上げたのであります。
  72. 田口長治郎

    ○田口委員 了承しませんが、時間の関係がありますから私は質問を打切ります。
  73. 玉置信一

    玉置(信)委員 非常に時間が過ぎたので、ごく簡単に奧野財政課長にお尋ねします。本日は、本多国務大臣に御出席を願つて相当詳細にお伺いしようと思つたのでありますが、大臣もお見えになりません。  附加価値税の問題と、固定資源税の問題についてお伺いしますが、附加価値税の問題につきましては、先般の地方行政委員会、大蔵委員会水産委員会の合同審査の場合に、当委員会からも夏堀委員、奧村委員、私がいろいろと質疑をいたしました。その点から見て、私ども考えとしては、附加価値税は漁業には非課税とすべきであるという信念を持つているのでありますが、その後大臣と事務当局の間で、この問題について検討されたことがありますかどうか。  次は漁業のみでなく、水産業の面の企業という点もからみましてお伺いするのでありますが、この附加価値税は概計標準課税でありますので、どうしても企業の負担が過重になるということは、何人も否定し得ないところであろうと思うのであります。ことに担税力を正確に把握することは困難であります。たとえば取引高税は、かつては消費者に転嫁させることができたのでありますが、現在のデフレ傾向から見まして、物がだんだん売れなくなつて行く。しかしこの附加価値税の建前からすると、損をしてもかけることになるのでありますから、企業自体が全部これを背負い込むことになるのであります。ところで、この附加価値税の対象となるのは、資本価値の面から見ますると、利益と利子と賃貸料と支拂給與額だと思うのであります。これは会社でも個人でも同様でありますが、利益のないものにもかけることになりまする関係上、自然人件費にこれが多くかかつて来ることになると思うのであります。合理化をすればよいという議論も出て来るでありましようけれども、しかし合理化するといつて、能率的な機械なんかを水産工業の面に入れるとしましても、つくつた品物がどんどん右左に売ればよいが、売れない現状でありますから、非常な負担を背負わなければならぬことになるのであります。この点に対して、前段申し上げたように、非課税とする見解を持つておるのでありますが、一般的に見まして、こうした私の所見に対して、奧野財政課長はいかなるお考えを持つておりますか。  次は固定資産税の問題であります。これは当然耐用年度の長期である資産に賦課すべきである、かように私は考えているのであります。漁業の面にとつて申し上げてみると、漁業の漁具、漁船その他の資材は、非常に短期のものが多い。また長期性のある漁具等におきましても、この前の委員会でも申し上げたのですが、農家と違いまして、漁業は年に数回災害をこうむる。そうすると大きな財産を一挙に拾てるというようなことがあるのであります。こうした長期である資産に賦課して短期なものにはかけないというのが正当であるように思うのでありますが、これに対してどういう考えを持つているか。同時にまた資産を評価する場合に、当然審議会等で決定をすることでありましようが、漁船建造した場合に、これは保険法によりまして、その船の価格の半分しか保険をかけることができないという事情になつております。従つてその船の価値——造船費用が半減されるわけでありますから、資産を評価する場合には、よほど手加減を必要とするのであります。これらに対して、監督官庁としては相当指導せねばならぬと思うので、こういう点に関しての御所見を伺つておきたいと思うのであります。
  74. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 附加価値税の問題につきましては、大臣中心に再三協議をいたしました結果、現在お示ししております地方税法案を、さらに将来それを基礎にしまして、政令で範囲を明確にして行きたいと、たびたび申し上げているような方法で現在のところ予定しているわけであります。なお附加価値税の問題につきまして、赤字企業にも課するではないか、あるいはまた勤労所得に対して重課するではないかというふうなことを中心に、御意見をお伺いしたわけでありますが、大ざつぱの御説明の仕方を申し上げますと、附加価値税は総売上金額から外部に支出した金額を控除した額、これを附加価値と呼ぶことにしているわけであります。この附加価値を全部集めて行きますと、生産国民所得の総額にたるわけであります。この附加価値は、少しものがさないで全部捕捉して行きたい、反面に、またこの附加価値を重複して課税しないようにして行きたい。純粋の附加価値だけを捕捉して課税して行きたい。こういう考え方を持つているわけであります。その結果、これを裏から分配国民所得の観念で見て行きます場合は、利潤と、支拂い給與額と、地代と家賃とそれを合計した額になるのであります。裏から申し上げますと、勤労所得のみに重課するではないかという御意見が出て来るが、この附加価値税の一つの大きな特色は、取引高税と違いまして、決して二重には課税しない。取引高税でありますと、一ぺん課税したものも、二へんでも三べんでも取引の段階ごとに課税されるわけでありますが、附加価値税は一度課税したものは二度と課税しない建前をとつているのであります。言いかえますれば、外部から購入したものは、それを売りましたときに附加価値税が一ぺんかかつているわけでありますから、これには課税しないわけであります。別に勤労所得に課税するわけではないのでありますが、勤労所得の面につきましては、支拂つたところで価値を生んだんだと見て行く。従つてその段階で課税するものですから、そういう誤解を招くように思うのでありますけれども、とにかく全部課税されるわけであります。土産国民所得としてすべて課税される。生産国民所得というものはどこで価値を生んだものと見るかという場合に、総売上金額から外部に支拂つた金額だけを控除するわけです。よそから買つて来たものはすでに課税されているから、控除するわけです。また支拂い給與額については受けた人に附加価値税を課税するのでありますから、これは控除してよろしいのであります。しかしながらそれを受けた人に附加価値税を課しませんものからは、それを控除いたしませんで、その段階で生んだ価値として課税しておるのであります。あらゆるものを同じ扱いにして参るわけであります。それじやこのような課税の仕方をしては、赤字企業に酷ではないかということを申し上げますならば、その企業で生産されたものを買つて行く人は、なるほどよそから買つて来て、それに手を加えて売る。よそから買つて来た価格というものは、さらに加工されたものは、当然買う人がその代価を含めて買わなければならぬわけであります。さらにまたその段階で地代や家を支拂う額も、これはその額だけは含めて買わなければならぬと思うのであります。同様にその企業が行われておりますと、やはり地方団体のいろいろな恩恵にあずかつておるのであります。道路施設あるいは衛生施設の恩恵にあずかつておるのであります。それだから地方団体の用役に必要とする金額を含めて買つて行かなければならぬじやないかという観念が生れて来るわけであります。赤字企業であるか、利潤を生んでおる企業であるかということは考える必要はない。流通税の観念、立場から、地方団体として必要な金額、言いかえれば、企業家が拂う必要な金額、つまり労働者に支拂う労賃あるいはよそから買つて来た原材料に支拂う代価、こういうものを含めて買つて行かなければならぬ。それじやその企業に対して地方団体として必要な経費を負わせるのに、何を基準にして考えればよろしいかということになりますと、やはりこれは事業の分量だと思います。事業の分量ということになりますと、従来の取引高税のように、総売上金額を標準に課税しで行きますと、物品販売業なんかになりますと、酷になると思うのであります。やはりよそから買つて来たものを差引いた額だけを控除した額というものが、その企業の事業分量を最も的確に現わすものだと思うのであります。言いかえれば、附加価値額というものを標準にして課税して行きますものが、事業の分量について地方団体として必要な経費を分担するということになつて参るだろう、こういう考えをいたしておるわけであります。  それから水産関係の固定資産に対する固定資産税の問題でありますが、固定資産税を創設いたします結果、相当負担の増加を来す面のありますことは、経済界の実情その他から考えまして、いささか心苦しい感じがいたすわけであります。しかしながら、固定資産税につきましては、やはりこの税の性質から考えますと、固定資産たる限りは一律的な課税をする必要があるのではないか、資材の用途その他の面から、いろいろ区分して行くことは、非常に困難ではないか。これはもとより物税でございます。物に着目して課税して行くものであります。ただそこに用途その他から課税の上に区分して行きますことは、非常に困難を来すのではないかというふうに考えているわけであります。もとよりこれは課税標準価格でありますために、その物の価格がつくつたときよりも、すぐに非常に低いものになつて行くような性質がございますけれども、もとよりそのときどきの価格でありますから、漸次減額した評価をしたがら、課税の基礎に使つて行かなければならない、こういう考え方をしているわけであります。
  75. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいまの事業分量の点について意見もありますが、流通という点から行けば私は共鳴する点が多々あるのでございます。固定資産の面についてもいろいろ御意見もありますし、漁業保険等については御答弁がありませんので、これをここで質問してみても、おそらく解決つかぬと思いますので、先般連合審査会において申し上げましたように、書面をもつて意見を提出いたしたいと思いますから、そのお含みであらかじめ御検討をしていただくことをお願いして、私の質問を打切ります。
  76. 田口長治郎

    ○田口委員 附加価値税についていろいろお伺いしたいのですが、時間の関係がございますから、一点だけお伺いしておきます。租税は、結局担税力のあるところに多く課け、担税力のないところに少く課ける、こういう原則はあくまでも堅持されなければならぬと思うのでございます。今回の附加価値税については、その点が非常に疑問の点があります。たとえばあの東支那海で操業しております以西底びきについて計算してみますと、現在以西底びきは、大体一航海百五十万円とつて来ますと、プラスにもならない、マイナスにもならない。いわゆる採算点が百五十万円、こういうことになつております。今までの事業税は、この百五十万円より下つたものは金額は少くなる、あるいはゼロになる。百五十万円より余計漁獲したものに課かつて来る。こういうような形になるわけでございますが、今回の附加価値税は、百五十万円以上とつたものは、従来の事業税よりも非常に軽くなる。その反面において百五十万円以下の漁獲のものはも従来の事業税よりも非常に重くなる、こういうよな計算になるようでございますが、これは担税力のない百五十万円以下からとる、あるいは担税力のある百五十万円以上のものは少くなる。こういうような結果になるのでございますが、その点について、課長は立案した場合に、その点をどういうふうな解釈をされたのでありますか、その点だけをお伺いしたいと思います。
  77. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 私は課税のかつこうとしては附加価値税、固定資産税、そういうような地方税においては、各企業同じような線で全部課税する。その上で利益の余計上つておるところについては、所得税や法人税でこの能力の差異に応じて税を負担してもらう。こういうようなことは、国税、地方税と比較して、徴収して行きます場合に、適当なことではなかろうかというふうな考え方を持つたわけであります。しかもまた附加価値税は、全体として取引高税、事業税と比較いたしました場合には、相当負担の軽くなることでありますし、またこの税の性質が流通税であると考えますならば、そこに当然そのようだ負担が重くなれば、ある程度価格の面にも響かざるを得ないのじやないかというふうに考えるわけであります。ただ問題か、転嫁か困難であるか、困難でないかということになるわけでありますけれども、附加価値額に対して四%のものでありますから、決してこれか附加価値税だけの面から、その企業に耐えがたい負担の加重を来すということは、まずないじやないか、こういう見方をしておるわけであります。総売上金額の四%ではございません。原始産業でありましたならば三%であります。総売上金額から外部へ支拂いました金額を控除して、残つたものについて三%であります。税率が高い場合には、お話になりましたよう意見が、特に重要になつて来るわけでありますけれども、この程度のものなら、まず制度の根本的な改革を行うべきときでありますから、ある程度忍んでもらうより仕方がないのじやないかというよう考え方をいたしておるわけであります。
  78. 井之口政雄

    ○井之口委員 この間ちよつと御質問いたしまして、あのときに資料を持つてないというので、あれだけになりましたが、きよう水産委員会の方に参りましたのでちよつとお聞きしたいと思いますが、この附加価値税が実際課けられる場合にどうなつて行くか、先ほど奧野政府委員からも仰せられた通り、不安定な状態にある。そこで附加価値税が漁業方面に対してどれくらい課けられることになつているか、予想といたしましては、大蔵省としてどれくらいお持ちになつているか、それから固定資産税並びに住民税について、漁業関係でどれくらいの予定を組んでおるか聞きたいと思う。
  79. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 附加価値税といたしましては、水産業について約五億七千万円という数字を見込んでおります。固定資産税について、水産業だけと言われますと、ちよつと計算がむずかしいのではないかと思います。
  80. 井之口政雄

    ○井之口委員 それからどこか漁村をつかまえてモデル地区をつくるというお話でしたが、それをつくつてどれくらいになるか伺いたい。
  81. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 別にその問題について、必ずやりますということをお答え申し上げたわけではないのでありますけれども漁業の形態によりましても、また地区によりましても、非常に種々な結果か出るのではないかというようなことも考えられますし、至急にそういう調査もできがたい情勢にありますので、現在のところ手をまだつけておりません。
  82. 夏堀源三郎

    夏堀委員 八日の地方行政委員会においての合同審議会で、私水産委員会を代表いたしまして、ずいぶんつつ込んだ質問もいたしました。與党としてちよつと遠慮をしなければならぬようなことも、やむを得ず申し上げたのであります。世界に類例のないこの税法を断固として実施するということは、確信があつてつたことでありましようけれども。しさいに内容を検討しましたならば、絶対にできるわけはないと考えております。地方税制を根本的に改革して、国民の地方税負担の合理化及び均衡化を確保するということが、目的の中にあるのであつて、私がしばしば申し上げた通り。その目的を果すどころか、非均衡化という方向に深く突入するおそれがある。これは全体の中企業、特に中漁業者の点において、非常にこれが大きいのであります。これは数学的にはつきりと合同審議会において説明を申し上げた通りでありまして、合同審議会で私が申し上げたことについて、大体水産常任委員会としては修正案を作成して、地方行政委員会に申入れるということを約束して散会いたしたのであります。各委員から先ほど来質問になりました点を総括して申し上げますと、まだいろいろ考えている点もありましようけれども漁業者はこの課税実施によつて壊滅状態になるということです。あなた方は転嫁云々ということを言つておりますけれども、統制が撤廃になつて他に転嫁されるべきものではないと思います。結局経営が非常に困難になつておりますそのままの姿において、これを負担して行かなければならぬので、その根を枯らして政府の財政、あるいは地方の財政が健全となるということは、考えられない。おそらくこれを二年、三年と継続して、事業は成り立つかというと、成り立たないということを私は断言できると思います。それで私は全面的にこの附加価値税及び固定資産税に対して修正案を作成し、地方行政委員会に申入れしたいと思うのであります。一応案をつくつてみましたから、專門員の方から朗読いたさせます。     〔專門員朗読〕   地方税改正に対する修正意見主旨  国民の地方税負担の合理化とその均衡化を確保することが今次地方税法改正の大眼目であるか水産業においてはまだ極めて不合理及び不均衡が多い。修正意見及び理由一、附加価値税において水産業は非課税とすること。    理 由  同じく原始的産業である農業及び林業が非課税であるのに水産業が課税されることは不合理かつ不均衡である。  農業林業においては土地家屋等の固定資産税が著しく増徴されると云うが水産業の固定資産税の負担は実情において決して農業林業に劣ることはない。  農業においてその附加価値相当額が四十万円以上に及ぶものが非課税となるのに水産業の附加価値九万円以上のものが課税される。  農業に附随して行う畜産(非課税)を兼営する北海道農業及び林業における附加価値相当額は右を遥かに超えるものがあるがこれ等はすべて非課税である。水産業は自然の制約を受けることが極めて強く、絶えずその生命財産を直接不可抗力の危険にさらし、いわゆる未だ産業として確立を見ていないものであつて、かつその機械的合理化、計画的生産は極めて困難で将来産業として確立し得る見込のものもまだ極めて少ない。従つて労賃等の支出は多額であつてその附加価価額の総収入における割合は一般産業に比して極めて高い。  このことは水産業中いわゆる中漁業において顕著であつて今次の国税地方税の改革によりその平均漁獲において税の負担増加率は国税地方税を通じて十倍乃至二十五倍となる。しかも現状においては漁具漁獲につき何等の共済制度、保険制度等救済策がない。シャウプ使節団が所得税において変動所得及び損失の繰延繰戻を勧告した主旨にも添はないものがある。鉱山業砂鉱採取業については鉱区税を課する関係もあつて非課税としておるようであるが、水産業には漁業権税が課せられている。  昭和二十七年度からは漁獲高(漁業所得ではない)の平均三%に及ぶ免許料許可料が徴収される本税の負担力は極めて薄弱となる。二、漁業権税は昭和二十七年度以降廃止すること。    理 由  昭和二十七年度からは新漁業法に基いて免許料許可料が徴収される。これは漁業権税と重複する所が多い。三、固定資産税において漁船の課税標準はその価格の二分の一とすること。    理 由  漁船は自然の制約にしばられることが極めて強く、絶えず直接に不可抗力の危険にさらされている。従つてその危険及び事故は極めて多く、土地家屋その他の一般陸上償却資産のごとくこれを保護すべき十分なる保險制度を活用することは不可能である。  現在漁船保險において建造後四年未満の総噸数三十噸以上の漁船については保險金額は保險価格の五割を超える額を引受けないことになつている。危險性の多い漁船であるために資産の保護制度さえ十分に認められていないのである。  資産保護制度の不十分及び償却の不安定性の理由から漁船についてその課税標準につき別個に特段の措置をなすべきである。             以 上
  83. 石原圓吉

    石原委員長 ただいま夏堀委員長より御説明のありました修正意見の案文についてお諮りいたします。本意見を当委員会の修正意見として、地方行政委員会に申し入れることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 石原圓吉

    石原委員長 御異議なしと認めます。さように決定いたします。  なお字句の整理、申入れの方法につきましては、委員長に御一任願います。     —————————————
  85. 石原圓吉

    石原委員長 この際小委員の選任を行いたいと思います。先日保留いたしておきました荒廃漁場復旧に関する小委員に、奧村又十郎君及び林好次君を指名いたします。     —————————————
  86. 夏堀源三郎

    夏堀委員 政府委員にちよつと最後に伺いたい。あたな方がこの法律を改正するときに、水産庁とどの程度に打合せをなさつておるか。私、各業種別に調査いたしました結果を、連同審査会で詳細に数字的に申し上げました通り、旧漁業は、大体今の理由にもありましたが、十倍ないし二十五倍の、いわゆるそのベースが非常に高いばかりでなく、倍率が非常に増大するのであります。ここに目的と相反するということは、そこを私はついておるのであつて均衡どころの騒ぎではなくて、不均衡であり、そうして生産を壊滅状態に陷れることはだれの責任であるか。これは私は政府を、連同審査会で強くついたのであります。結果において現われてから、これはどうもならぬとか、何とかかんとかというりくつがついても、もうすでに遅い。これはあとに残る問題でありますから、詳細にこれを調査してやつたのであるかどうか。この案は非常に急いでおるそうでありますが、どういう取扱いをするかわかりませんけれども、あとでこの地方税の問題は国民の負担か耐え切れない。そしてもう最後の段階に追い込まれるということを私は予想しておりますので、この問題は深く後日に残される。むしろ大きく歴史の上にこれは残るであろう。今まで世界に類例のない税法を、初めて日本の——敗戦国ではありますけれども日本のこの小さい中小企業の面において、再建ができない程度まで追い詰められるという税法の改正は、非常に遺憾でありますので、これを調査してやつたのであるかどうか。もし調査してやつたのであれば、あとでもよろしいから、本委員会にその調査の資料を提出されんことをお願いしておきます。
  87. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 水産庁とは十分打合せをしたわけであります。ただ水産庁の御意見に従つた点もありますし、遂に従えなかつた点もあるわけでありまして全体的に見て、政府としてこの案が適当であるというふうな考え方のものとに提出されておるわけであります。水産関係について特に申し上げますならば、漁業権税の面につきましては、今回の改正によりまして、專用漁業権、新しい漁業法で言いますと同漁業権、これは課税いたさないということに変更いたしたわけであります。さらにまた附加価値税の面については、従来事業税が水産業について全面的に課税されておつたわけであります。しかし今回の改正は、附加価値税としては、主として自家労力によるものには課税しないという原則を立てておるわけでありまして、主として自家労力による範囲につきましても、いろいろ打合せをし、数度変更を見たわけでありますけれども、先ほど来御説明申し上げた方法によつて、まず適当であろうというふうな考え方をいたしておるわけであります。
  88. 夏堀源三郎

    夏堀委員 まず適当であるというようなあなたの一方的な見解によつて——私は連合審査会においては、中小企業は全部影響を受けると思う、特に漁業の面においては、壊滅状態であるということを申し上げたのでありますが、適当なお考えによつて漁業を壊滅状態に陥れるということに対しての、政府の責任はあとに残ることであります。私は與党としてこういうことを申し上げたくはないのでありますけれども、三百万漁民、これに対する数千万人のその生活苦、経済の破壊ということを考えますると、どうしてもこの間申し上げたように、強い発言をやはりしなければならぬのでありまして、水産庁の方々が、どういう資料を與えてこういうような苛酷な地方税をここに現わしたかということは、今ここでりくつを言つてもしようがないわけでありますけれども、一応このいきさつをはつきりしておきませんと、あとで責任の所在がまたやみからやみへと葬られるおそれがありますので、水産庁とあなたの方の地方自治庁との間において、どういう資料に基いてこれをやりたかということの資料をお出しになつていただきたい。そうして私の出した資料によつての説明が正しいことであつたか、あなた方の出した資料が正しかつたということは、これは施行後においてはつきりと現われることであつて、そうして産業を壊滅状態に陷れるということを、私が口をきわめて、議会を通じて申し上げたことは、それは確かにその線に沿うてその通りに行くであろうということを、私の考えによつて申しあげておるのであつて、その反対に、あなた方がこれが妥当であり、適当であると言うことは当つておれば、それはよろしいでありましようけれども産業は必ずここに壊滅状態になるということを予想して、私は強く主張するのであつて、その意味において、ぜひともあとに残るその資料によつてものを言う機会を、私は保留しておきたいのでありますから、その資料はぜひ明確なものを提出していただきたいということを、最後に申し添えておきます。
  89. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 もうお答えする必要を夏堀さんは考えておられないのかもしれませんが、私から一言お答えいたしておきます。もとより租税を課する範囲が、少くあればあるほど好ましいのでありますけれども、遺憾ながらいろいろと財政需要がありますために、現在提出されております程度の地方税の収入をあげなければならぬわけであります。もし水産業において附加価値税もとらない、固資産税もとらない、漁業権税もやめるということになりますと、それを他のところから收入をあげて来なければならないわけであります。もとより水産業につきまして、全然今の実情を考慮していないというつもりではないのであります。しかしながらこれを他に求めると、どこに求めるかということであります。その二つを比較いたしてみまして、どちらが穏当であるか、こういう問題を判断しなければならないのでありまして、比較の問題であろうと思うのであります。総合的に見まして、この程度負担してもらうよりしかたがない。この程度の判断をいたしておるということを、御了承願いたいと思います。  なお資料の点につきましては、地方税法案政府案として提出しておるのでありまして、たいへん形式的なことを申し上げて恐縮ですけれども、地方自治庁として提出しておるのではありません。政府案として提出しておるのでありまして、その案を得るためにはいろいろな角度から考えておりますし、いろいろな案が出て、従つて水産庁とどうであつたというふうなことを、政府から資料を出すことは、むしろ穏当ではないというふうに考えております。御質問の具体的な点につきましては、できるだけわれわれの資料は出したいと思いますが、その辺のことは御了承を願いたいと思います。
  90. 石原圓吉

    石原委員長 本日はこの程度で散会いたします。     午後二時十八分散会