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1950-02-20 第7回国会 衆議院 水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月二十日(月曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 石原 圓吉君    理事 川村善八郎君 理事 鈴木 善幸君    理事 夏堀源三郎君 理事 松田 鐵藏君    理事 林  好次君 理事 早川  崇君       川端 佳夫君    田口長治郎君       田渕 光一君    玉置 信一君       冨永格五郎君    永田  節君       二階堂 進君    福田 喜東君       小松 勇次君    岡田 勢一君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君  委員外出席者         農林事務官  松任谷健太郎君         農林事務官   奧田  孝君         農林事務官   水野  榮君         経済安定事務官 田中  覺君         経済安定事務官 岡崎 三郎君         経済安定技官  北原 恒造君         專  門  員 齋藤 一郎君     ――――――――――――― 二月十六日  大江漁港築設の請願原田雪松君外三名紹介)  (第八一八号)  香深村に北方新魚田開発策源地としての諸施設  実現の請願玉置信一君外一名紹介)(第八三  五号) の審査を本委員会に付託された。 同月十五日  さばきん着網漁業許可に関する陳情書  (第三六六号)  日本海区水産研究所を七尾市に設置の陳情書  (第三八四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  水産行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 石原圓吉

    石原委員長 これより会議を開きます。  水産行政に関する件を議題といたします。ただいま奧田統制課長岡崎物価庁生鮮食品課長北原経済安定本部技官水野加工水産課長松任谷漁政部長が御出席であります。なお地方自治庁次長が後刻出席の予定であります。  まず水産課税漁政統制貿易等の問題について審議を進めます。さしあたり水産課税説明漁政部長より求めたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石原圓吉

    石原委員長 それでは松任谷漁政部長、どうぞ。
  4. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 漁業に関します税制の問題につきまして、経過内容につきまして簡單に御説明申上げたいと存じます。御承知のように、税制改革につきましては、シヤウプ勧告によりまして国税地方税全般にわたりまして均衡予算をもととする各産業間並びに業者間の均衡のとれた税制を確立するといつたような目標のもとに進んで参つたわけでございまして、本国会にこれに関する税制改革法案が出るというような状態になつておるわけでございますが、その改革案につきましての漁業関係の税といたしまして、国税関係といたしましては所得税問題がございます。地方税関係といたしましては、附加価値税漁業権税といつたような主要な問題がございまして、これらに対しましていろいろと漁業経営の案の立場から、われわれといたしましては税制改革案そのもの漁業特殊性に応じて適正な税制が確立されますように、要求しておるのでございまして、いろいろと国会中心としておせわを願つておる次第でございます。  それで一番初めに経過から申し上げますと、昨年の四月に国税に関する改正要綱大蔵省に申し入れたわけでございますが、それを出発点といたしまして、その内容といたしましては、家族労働対価必要経費に入れてもらいたいとか、あるいは漁業施設欠損は繰越して翌年度以降の所得で相殺するようにやつてくれとか、のりに対する物品税を廃止するというようなことをその当時申し入れまして、おのおのの国税につきましては、所得税変動所得といつたような、五年を期間とする変動所得に対する税というものを認めてもらうとか、のりにつきましては物品税の廃止について考慮してもらつたというような成果があつたのであります。その後シヤウプ勧告の発表があり、本格的に税制改革の問題が起つたのでございますが、この点について、関係方面にわれわれの方といたしまして問題を出しましたのは五点ほどございまして、第一は変動所得の計算とか青色申告の様式は、漁業実態に即した簡便なものにしてもらいたいというのであります。第二は協同組合に対する法人税をすえ置いてもらいたいということであります。第三は資産の再評価に巾を持たせてもらいたいということ。第四は附加価値税税率を下げまして、小漁民免税にしてもらいたいということ。第五は免許料許可料を徴收する場合におきましては、附加価値税漁業権税を、二重課税にならぬように、とらぬようにしてもらいたいという五点を要求して参つたのでございます。従いまして問題はもつぱら地方税の問題になて参つておるのでございます。地方税の中で特に附加価値税の問題と、漁船に対する固定資産税の軽減の問題と、免許料許可料をとる場合におきましては、漁業権税並びに附加価値税を廃止するといつたような問題になつて参つておるのでございます。われわれの方といたしましては、関係方面並びに地方自治庁にいろいろと折衝いたしまして、水産関係の特殊な立場からいたしまして、何とか税の改革がそれに合うようにということで、現在も努力を続けておるのでございます。  内容的に申しますと、第一点の附加価値税の問題でございますが、御承知のように附加価値税は、いろいろと労働部面が多いと申しますか、企業生産過程において、固定設備の少い、自家労働者が多い場合でありますとか、あるいは地代部面が多いというところに対しましては、非常に重くかかつて参るというような関係になつて参つておりますので、漁業関係から申しますと、他の産業に比べまして、附加価値を生ずる部面が非常に大きいという関係になつておるのでございます。従いまして他の産業とつり合いのとれた附加価値税が課せられますように、いろいろと考慮する必要があるのでございますので、第一番の問題といたしましては、主として自家労力による事業に対しましては、すべて免税にしてもらいたいということを言つておるのでございます。  それから附加価値税をかけるような漁業、すなわち自家労働部面割合に少いというような企業的なものにつきましても他の産業と比べますと、税率を同じように適用すると税が重くなりますので、少くとも半分くらいの税率にしてもらいたいということを要求しておるのでございます。  それから第三点といたしましては、漁業は、非常に漁があるときとないときとございますので、漁がなくて損をするようなときに、附加価値税をかけられるということは、税の建前から申しましてもおかしいというような意味合で、漁業欠損をするというような場合におきましては、附加価値税を免除しろということを言つておるのでございます。  それから第四点は、先ほど申し上げました漁業法の実施によりまして、免許料許可料を徴收する場合につきましては、全漁業について附加価値税を全部免除しろという、四点にわたりまして主張し、要求をしておるのでございますが、この実態については、御説明を要するまでもなく、漁業というものは九十パーセント以上が世帯経営によつて行われておるという点でございますとか、あるいは労働部門設備部門との割合が、他の産業と非常に異つて自家労働世帯労働中心にして営まれておるというような実態に即して要求しておるのでございます。  それから第二番目の点は漁業権税でございます。この点は、現在免許料許可料を徴收していない場合におきましては、二重課税になるというようなことは、地代部面との関係でないというようなことにもなりますが、いやしくも免許料許可料をとりました場合につきましては、二重課税になることは明らかでございますので、この場合は全廃することを主張しておるのでございます。これはむしろ漁業法中で改正すべしというような御意見もございますが、今税制を全般的に改革している最中でございますし、当時検討中でございましたので、これは税法中に規定すべきものであるというような意味合いから、われわれは主張しておるのでございます。  なおその他協同組合課税の問題がございますが、これは御承知通り、過去におきましては免税といつたような取扱いを受け、戰時中特別法人税というものが立てられ、引続いておるのでございますが、この勧告案によりますと、その税率をまた高めなければならぬというようなことにもなりまして、現在育成過程にある協同組合経営に、非常な脅威を與えるということにもなりますので、この協同組合に対する税の問題につきましては、現行すえ置きということを主張しておるのでございます。具体的な数字にわたります資料につきましては、先ほどお配り申し上げました漁業関係税制改革概要とその参考資料に、一つ一つの税につきまして、例を上げて御説明申し上げてございますので、省略いたしたいと思います。  以上、はなはだ概略でございますが、税の経過の問題とその概要につきまして御説明申し上げた次第でございますが、何分漁業関係基礎資料と申しますか、そういうものがなかなか整つて参らなかつた、最近になつてようやくお手元に配られる程度資料ができたというようなことでございまして、われわれといたしましてははなはだ慚愧にたえない次第でございますが、漁業実態というものがきわめて複雑な内容を持つており、将来漁業経営というものが、金融と租税といつたような二つの部面から、非常に影響するところが大きいというようなことにもなりますので、国会の御指導によりまして、われわれはさらに強く調査して参りたい、かように存じておる次第でございます。
  5. 石原圓吉

    石原委員長 御質疑がありますか。鈴木君。
  6. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 ただいま漁政部長から御説明のありました漁業諸税の二、三の点につきまして、御質問したいと思います。  まず法人税のことでお伺いしたいのであります。この法人税は、従来の税率よりも大分高率になつておるようでございますが、農業協同組合漁業協同組合の場合に、何ら差等のない税率であるかどうか。と申しますのは、農業協同組合については、漁業協同組合よりも税率を低めるという意見が、一部に強いようでありますが、その関係をお伺いしたいのでございます。  それから、かつてはこの法人税特別法人税言つて協同組合に対しては特別の低い課税をいたしておつたのでありますが、これで参りますと、一般株式会社等法人と何らかわらない取扱いをしておる。これは協同組合本質にかんがみまして、むしろ改悪ではないかと考えるのでありますが、この点何ゆえに株式会社等法人と同じような税率にしなければならないのか。また農業協同組合漁業協同組合との間に何ら特別の差等がないかどうか。法人税についてまずその二点をお伺いしたいのであります。
  7. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 お話がございましたように、協同組合法人税の問題につきましては、とにかく営利性がないということと、それから人件費が非常に多くかかつて固定資産でありまするとか、あるいはその他の設備資産が大きいというような点から、一般税率を適用しますると、共同して組合員がお互いの地位を向上するために設けた組合であるという本質を伸ばして行くという点に、非常にさしさわりがあるのでございまして、われわれといたしましては、一般企業とは違つた税率を適用すべきである、むしろ免税にすべきであるというような考え方を持つておるのでございまするが、現在のところ、国家財政あるいは税制全般建前からいたしまして、特殊法人税といつたようなものがかかつておりまするし、ある程度税率の適用を受けるということは、やむを得ないという気持であるのでございます。しかしながら、これが一般企業並にこれを適用されるということは、はなはだ不都合だと存ぜられますので、少くともこの税率を増すというようなことにつきましては、極力反対をいたして、現行税率、すなわち二五%というものをすえ置いてもらいたいということを主張しておるのでございます。  それから農業協同組合の差があるかどうかということにつきましては、協同組合というものにいやしくも差があつてはならぬと考えておるのでございまして、農林省全体といたしまして、官房の方で全部これを調整して、それを通じて農林省意見として要求いたしておるのでございまして、現在その差があるというようなことはないのでございます。
  8. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 この法人税の件につきまして、協同組合は農協であろうと、漁協であろうと、協同組合本質に合うように、しかして営利法人本質的に違う建前から、この税率を少くとも現行税率にすえ置くという線で、なお今後も一層の努力をお願いしたいのであります。  なおこの法人税の面でお伺いしたいのでございますが、それは申すまでもなく、協同組合営利法人と違いまして、組合共同販売なり共同購買なりの事業面で相当の利益があがつたとしても、これはもとより手数料による收入でありますが、その場合に従来協同組合組合員事業利用分量に応じて歩もどしの制度行つてつたのであります。これは株式会社の株に対する利益配当というものとは、本質的に違うのでありまして、協同組合組合員のための施設という見地から、必要以上に手数料收入があがつて参るものは、組合員事業利用分量に応じて歩もどしするということにいたしておるわけでありますが、その歩もどし等に対して課税対象にならないかどうかという点を、重ねてお伺いしたいのであります。
  9. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 お話のありました協同組合利用分量による配当という点につきましては、組合員組合利用するということの関係で、組合はただ実費をとつて余つた分組合員に返されるという関係になりますので、組合といたしましては、配当金といろものにつきましては損金に計算して、これを課税対象から除くというふうな取扱いに大体話がまとまつているようでございます。
  10. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 法人税に対するお尋ねはその程度にいたしまして、所得税関係についてお尋ねしたい。それはシヤウプ勧告によつて変動所得として五箇年平均の收入に対して課税をするという道が開かれましたことは、非常に組合の実体に即する行き方であると思うのであります。しかしながら、ここで問題になります点は、総收入から控除いたしますところの必要経費はどういう内容のものを認めるか、必要経費として認定するかということが、非常に大事な点だと思うのでありますが、水産庁当局が現在御折衝中の必要経費内容について、御説明をお願いいたします。
  11. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 お話のように、この所得税の場合の必要経費控除という点の内訳につきまして、非常に問題だと思うのでございます。たとえて申しますと、網の償却、その他漁業特殊性から申しまして、他の農業その他とは違つた控除関係があるとは思うのでございますが、現在のところの細目にわたりましては、まだ交渉をしてないのでございまして、いろいろと資料を現在集めておりますが、よく集計をし、検討をいたしまして、必要経費控除につきまして今後折衝をして参りたい、かように存じておる次第でございます。
  12. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 お尋ね必要経費の面について、まだ固まつていないようでありますが、この必要経費の問題は、所得税また附加価値税等の面に直接関係いたしますところの要件でありまして、この必要経費をどの程度認定するか、特に漁業のように一般企業と相当特殊な事情に置かれておりますところの事業といたしましては、この必要経費認定ということが、非常に漁業者税負担の上に大きな影響を持つわけでありますので、できるだけの必要経費につきまして、関係方面その他大蔵省、あるいは地方自治庁等々と、最後的なお打合せを早急に願いたいということを、希望申し上げるものであります。  なおこの必要経費と関連いたしますが、従来から漁業関係税負担の面を見ますと、株式会社等の方針におきましては、必要経費認定、及び会社経理の整備、あるいは申告の技術的な関係から、法人の場合は比較的所得税等負担が軽くなつておりますが、零細な沿岸漁民の場合は、この必要経費認定、その他経理の不明確化申告の技術的な稚拙等関係から、非常に負担が重くなつておる。担税力の低い面にむしろ重く圧迫が加わつておるというのが、わが国の実情であります。そこでこの青色申告の問題と関連いたすのでありますが、魚価に対して、すみやかに必要経費はつきりときめてこれを明示され、青色申告等の問題につきましても、十分徹底せる指導を必要とすると考えるものであります。この点は強く水産庁に御希望申し上げておく次第であります。  次に附加価値税の問題でありますが、改正案によりますと、免税点が年間九万円以下のものについては附加価値税を課さない、免税するということに相なつておりますが、これを農家の場合に比較いたしまして、そこに不平等、不公正な取扱いがないかどうか、農業に対する附加価値税との関連において、この点を御説明を願いたいと思います。
  13. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 第一番の青色申告の問題につきましては、お話がございました通り、われわれの方といたしましても、各方面からのそういつた実情に対する御要望がございましたので、現在漁業協同組合中心に、青色申告というものの書式並びに記入方法といつたような点につきまして検討をし、さらに申告の手続その他については、漁業協同組合を通じまして、零細漁民指導に当るというふうな態勢で進んでおるのでございます。  それから第二番目の附加価値税の問題につきましては、お話にございました通り農業関係については、地租関係、農地の租税といつたような関係でございますとか、あるいは主要食糧供出制度の励行といつたような建前から、附加価値税が免除されるということになつておるのでございまして、われわれといたしましては、この漁業に対しても同様免除すべきものであるというような交渉を当初やつたのでございますが、シヤウプ勧告の中で、漁業につきましては、はつきりとそういう点が明示されていないことと、さらに漁業については、ある程度実態を考慮して附加価値税をかけるべきであるといつたような、はつきりとはいたしませんが、そういつた意味のことが書かれてあるというような関係で、漁業につきましての附加価値税免除ということが、初めから問題に実はされなかつたのでございます。従いまして、われわれといたしましては、二段構えといたしまして、先ほど御説明申し上げましたように、家族労働を主体とする場合においては附加価値税を免除してもらいたい。それからたとい家族労働関係のない企業的な漁業にかける場合につきましても、一般産業とつり合いのとれた税率ないしは税額で徴收してもらいたいということを要求しておるのでございまして、その点はわれわれといたしましてははなはだ遺憾とは思うのでございますが、附加価値税を免除することが不可能であるということでございますので、そういつたふうな意味合いの、実質的に均衡のとれる、また漁業経営上さしつかえない程度税率であつたならばということで、要求をしておるのでございます。
  14. 石原圓吉

    石原委員長 ちよつと申し上げます。ただいま主税局長がお見えになりましたから、あわせて御質問願います。
  15. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 松任谷部長にもう一点だけお尋ねをいたしまして、主税局長その他に対する御質問をあとに申し上げたいと思います。  今度は船舶税舟税というようなものが固定資産税にかわるようでありますが、従来漁業関係船舶税舟税貨客船の方にかかるところの船舶税税率との間において、非常な差等があつたのでありますが、今回はそういうような漁業だけに差等をつけて、重く課税をするというようなことがないかどうかという点をお尋ねしたいのであります。
  16. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 従来はお話通り貨客船漁船との舟税なり、船舶税において、多少均衡のとれない部面もあつたようでございます。具体的に申しますと、大型になる程度に応じてその逓率を適用するという関係のために、そういうことが起つたのでございますが、今度の改正案によりますと、いずれも時価中心にして固定資産税がかけられるのでございまして、しかも市町村ごとに設けられる評価委員会が決定して参るということでございますので、この評価委員会の運用のいかんによつて漁船に即応した時価の算定ができて、それに対する一定の税率が課せられるということになりますれば、従来のような不公平はなくなるというふうにわれわれは考えているのでございます。
  17. 夏堀源三郎

    夏堀委員 主税局長がお見えになつておりますから、一応簡單質問をいたしたいと思います。  漁業附加価値税課税するということは、私どもの考えからすれば、はなはだ不合理であると思うのであります。その理由としてはいろいろありますが、先ほど漁政部長からるる御説明がありましたが、この点については私ども意見は一致しております。大体全般論から申し上げまして、この附加価値税というものは、世界に類例のない課税方法だそうであります。ここにいわゆる法律上の性格と申しましようか、どことなくこれまでの事業税と、国民の非常にきらつた取引高税との合いの子でもあるかのような感じがするのでありますが、これは一種の消費税の役目をするような感じがいたすのであります。もしそうであれば、漁業に附加するということは当らない。これはシヤウプ勧告書にもあります通り漁業のことがよくわからないとあちらでもはつきり言つております。その実態をつかみ得ないのだ、その中で立案された政府当局が、はたして漁業実態をつかんで立案したであろうかということに、私どもは疑問を持つているのであります。その間に水産庁とはたして緊密な連絡が保たれてあつたかどうかということに、疑問を持つておるのであります。たとえば農業の場合は課税しないと言つている。そうして同じ原始産業でも漁業の場合は課税をするのだ、林野業のようなものには課税をしないのだと言つているが、同じ原始産業であつて、そういうような差別待遇をすることはどうかと思う。またその理由として、シヤウプ勧告には地租云々ということもあります。農業に対する地租税ということもあるし、あるいは供出という面もあるという説明が書いてありますが、地租と同様のいわゆる固定資産で、農業漁業と比較してどちらが重いかということになると、これはすでに調査になつている面もありますが、むしろ漁業の方が重いのではないかと思う。そうすると地租であるがためにという理由は当らないと思います。また統制関係においても、同じ食糧統制関係において、一方は主食であり、一方は副食であるという違いだけであつて原始産業であるがために、漁業は実際に採算がとれなくても、その人たちの生業として営んで行かなければならぬのである。陸上の工場のように、採算が合わないからやめようというような簡單なものではないのでありまして、そこに現在の日本の原始産業に対する労働問題とか、いろいろな問題が考えられるのであります。こうした面を考えて、労働より生ずる附加価値ということに対して、工業方面においては、能率の向上から考えて、新しい設備によつて生産を上げようということは自由であり、可能であるけれども原始産業の場合はそれはできないことであつて、やはり原則として労働にたよるより以外にないのである。特に先ほど漁政部長説明された通りに、漁業法によつて定められた免許料許可料というものは、税であつて、損はあつても拂わなければならぬ、またあわせて労働より生れる附加価値というものに対しても、損はあつても拂うのだということになれば、おそらく漁業者手数料と合せて一割以上の損があつて支拂いをしなければならぬという、一つ課税的な義務が生れるのでありますが、こういうことは産業萎靡縮小であつて、こういう経済の復興ということを目指して進んでいる場合には、非常に不合理な課税であると自分は考えているのであります。大体大ざつぱなことを申し上げましたが、一応私の申し上げたことに対するお考えを承りたいと思います。
  18. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 今のお尋ねは、漁業に対して附加価値税課税するのがいいか、悪いかという根本問題に関する御意見のように承つておるのでございますが、今度の附加価値税は、確かに性質としては若干割り切れないところが、率直に申し上げてあるのでございます。しかしさればと言つて、今までの事業税はつきり割り切れておるかというと、これも若干不透明の分があつたのでありますが、今度の附加価値税の性質は、今御指摘の通り取引高税と今までの事業税の合の子というふうにお考えになるのが一番正しいかと思います。しかし純粹の收益があつた場合にかけるというのにあらずして一定の事業を行つた場合におきましては、その事業の生んだ附加価値に対してかける。事業主自体としましては、單に事業主の純益だけじやなくて、やはり賃金、金利というものはその事業から生れておる一つの価値でありまして、これはやはり事業がつくり出した一つ所得でございます。そういうものを全部取入れまして課税しようということになつたのでございまして、どうしてそういうふうになつたかと申しますと、これは今までの事業税の欠陷を一つは直そう、さればといつて取引高税のような不合理もまたないような考え方をとつたらどうか、こういうわけでありまして、御承知通り今までの事業税でありますと、厖大な施設を持つて相当な事業をしておる場合でも、純益が出て来ないと一つも税を納めない。地方などで厖大な工場で相当多数の労務者を使い、相当大きな事業分量を持つて、いろいろ府県なり市町村にもやつかいになつておるにもかかわらず、純益がないと税金を納めない。それが不合理だというので、あつちこつち調べて見ますと、そういう場合に多く寄付金の形で押しつけまして、何らかの違つた形で税金を賦課しており、必ずしも適正な税金ではない。ひどい所になりますと、設備のうちで、いろいろものさしをとりまして、特別な課税をしておるところもあるのでございます。これはいかにも不合理なことでありますので、純粋の企業主の純益だけをとらえて課税する事業税は、そのままの形では不合理なところが多い。これを何か是正したらどうかというのが一点。しからば昔の営業税式に、売上金みたいなものを課税標準にして課税するということになりますと、これは取引高税に関してありました議論のように、適切なものではない。一段階でありますと、取引高税負担は非常に少くて済む。いろいろ下請に出したり、他から原材料を仕入れたりしております場合、あるいは卸から小売に至り、消費者にまで行く間に、いろいろ段階の差がございますと、それだけ取引高税がよけいかかつたり、少くかかつたりする。これも不合理と言えばまさに不合理で、取引高税に対する一番大きな不合理はそこにあつたわけですが、その不合理をなくしようというのが附加価値税であります。附加価値税によりますと、縦断して一貫してやつておりますと、附加価値がそれだけ大きなものになる。反対に非常にその間いろいろな形態にわかれておりまして、一部は下請に出し、原材料を他から買つておるという場合におきましては、その段階におきましては、それは差引きますから、重複してはかからない。そのかわり原材料を提供した段階において生んだ附加価値税がかかつて来る。結局合計すると、物の最終消費者価格になつて来る。物の最終消費者価格に対して一ぺんかかつたと同じようなことになる。その方が取引高税よりははるかに課税としては合理的である。こういう見地から、今までの純益課税の欠陷を直して、さればといつて取引高税のような純粹流通税のような欠陷もなくしたいというので、生れたのが附加価値税でございます。御指摘の通り、この税はまだそのままの形で実行しておるところはございません。アメリカで盛んに議論が行われておるようでございますが、実行しておるのはございません。ただやはりフランスあたりで一種の生産税として、取引高税の一種の税を課税しておりますが、これは大分近いところをねらつておるのでございます。けれども純粹な附加価値税的な課税はないわけであります。しかし今申しましたような見地から考えますと、これはやはり事業税に比べましても一つの改善でありまするし、取引高税に比べても改善である。これをもちまして相当重要な財源として府県の財政をまかなつて行くというわけでありまして、私は今までの事業税よりもたしかによいと思つております。  結果はどうなるかと申しますと、今までの事業税でありますと、先ほど議論になりましたが、ことに中小の事業者の純益の中には、御指摘の通り自分の賃金部分が相当入つておる。これに反しまして、大企業で行われる場合におきましては、賃金を利潤から差引きますから、賃金部分は全然課税標準に入つて来ない。利潤プラス金利というものが入つて来る。そういうアンバランスもあつたわけでありまして、この附加価値税は四百四十億を目途としており、今までの事業税と同様でありますが、その四百四十億をあげ得る程度におきまして、税率は下げるということになつておるのであります。大体まだ本ぎまりしておりませんが、少くとも四%と三%、できるならば私どもは三・五%と二・五%くらいにしたいと思つておりますが、かりに四%になりましても、今までの営業者の場合ですと、大体一八%ですから、四分の一以下になる。営業者以外の事業の場合は一%くらいの開きをつけようと思つておりますが、三%になりましても、従来十二、三パーセントかかつておりましたのが、これも四分の一くらいになる。二・五%になりますと、もう少し下るというわけでありまして、税率が相当大巾に下りますが、それだけ大企業課税標準は大きくふえる。小さい企業主の課税標準は、附加価値税になりましてもあまりふえません。ことに漁業なんかのように一本で、ほとんど一人と家族労働とでやつておる場合におきましては、今までその部分の賃金か純益の中に入つておりますから、附加価値税になりましても、課税標準がふえる割合は非常に少いようです。小事業者の場合は、せいぜい純益所得百に対して附加価値は百五十か二百くらいにしかならない。五割か二倍くらいにしかふえない。これに反しまして、大工業の場合は、今まで賃金を除外しておりましたので、利潤に賃金を加えますと、五倍にも、あるいは十倍、はなはだしいのは二十倍にもなるのが出て来ます。従いまして、そういうところは税率が下りましても、負担は上る。反対に小事業者の場合は負担が相当下つて来る。これは漁業所得の場合におきましても、今までの課税が、十五万円ないし二十万円以下ぐらいの非常に少い漁業所得の場合——大部分の漁業所得者が日本ではそうだと思いますが、そういうところの事業者の負担というものは、今度は顯著に下ります。今度の新しい改正法によりまして、そういう姿になるわけでございますが、そういう面に対しまして、負担がふえる面から今盛んにいろいろ反対の議論が出ておるわけであります。これは過渡的に申しますと、たしかに大工業なんか相当ふえるわけでして、問題があるわけでありますが、しからば今までの負担がよかつたかどうかということを考えてみると、どうも必ずしも適正でない。むしろ私どもやはり今度の方が姿としてはよいのではないか、結果におきましても、大きな工業の負担はふえるわけですが、実際問題としても、その方が長い目で見るとよいのではないか、過渡的に減る方は問題はございませんが、ふえる方は相当問題になるのはあたりまえでございまして、企業からいろいろ意見が出て来ますことは、率直に申しまして、私どもも非常にもつともだと思う節が多いのでありますが、しかしこれもある程度、若干時期を要するかもしれませんが、企業自体がそれに応じて行かなければなりませんし、また応じてもらうことができるのではないかと思つております。そういうようなことになりますので、この際としまして、私どもやはり附加価値税を創設した方がよいのではないかという結論であります。  その際に、今御指摘の、農業には課税しないで、漁業課税するのはどういうわけか、こういう議論があるかもしれませんが、今申しましたような観点からいたしまして、大体原則として事業の生んだ附加価値には課税しようというわけで、今の事業税と同じく、たとえば医師、弁護士、その他の自由職業の附加価値にも課税することにいたしております。従いまして、原始産業附加価値にも原則として課税するわけでありますが、農業は今御指摘の通り、実は地租負担では、固定資産の形で今度は相当増加いたします。漁業の場合も、従来の漁業設備に対して固定資産税がかかりますので、その面の負担はたしかにふえますが、程度の問題だと思います。たしかに地租等の負担が相当ふえるということと、それから今まで事業税におきましても、主食等に対しては課税していなかつたというような沿革上の理由に基きまして、農業に対しては原則的に課税しない方がいいのではないか。これに対して水産業の方は——いろいろ水産業の中にも態様があると思うのですが、むしろ原則として課税した方がいいのではないか。しかしあまり零細な附加価値の場合には、課税しない方がいいではないかというので、年九万円以下のものには課税しないこれはほんとうの小さい副業的にやつておる場合は、それ以下は課税しない。大体独立しておる場合は免税はないと思います。性質は、全部なるべく総合して、すべてのものに対して課税するのがいいのではないか、かように考えておるのであります。小さい方の漁業者負担も、現在の事業税に比べますと、私は相当下ると思います。大きな漁業で多数の人件費等を出しておる場合は、今の事業税よりかえつて上るかもしれません。その点いろいろ差が出るかもしれませんが、この際府県に相当有力な財源として、さつき申しましたような趣旨で附加価値税を、従来の事業税を変形して残すというような場合におきましては、やはり水産業等にかかるのはやむを得ないのではないかと考えております。ただ税率は現在事業税の方におきましても差をつけておりますので、従来の純粋の営利的な企業の場合と、自由職業とか、水産業とかいつたような場合には、税率に差別を設けまして、さつき申し上げましたように一般税率が四%の場合は、水産業とか自由職業の場合は三%にする、もしも三・五%に一般税率を下げるといたしますれば、この方は二・五%ぐらいにする、そういう考え方で現在のところおるわけであります。この問題は目下総司令部と最終的に打合せをしておりますので、近々まとまりますれば国会に出したいと思つております。
  19. 夏堀源三郎

    夏堀委員 政府ももうすでにお認めになつておる通り、不合理の点があるということはいかんとも否定することができないと思います。私、先ほど申し上げました漁業者農業者とのいわゆる差別待遇という点について、シヤウプ勧告案にあるその問題、あるいは統制の問題、こういうようなことも理論的にはその根拠を見出すことはおそらくできないだろう。なぜならば、実際問題として、これは兵庫県の姫路市で標準の農業漁業のその比例を見たものがあります。これは漁業者の場合において、固定資産というような種類のものでありますが、三・八九%になつており、農業者の場合は三・三〇%になつておる。この差の〇・五九%というものは、漁業者がいわゆる多く拂つておるという事実があるのであります。これは一班を推して知るべきであろうと思うのであります。統制の問題、これはなお漁業の場合は一部撤廃になつておりますけれども、大部分は統制品であります。そうしてどちらも原始産業であります。こうした面から言いますと、差別待遇して漁業者に賦課し、農業及び林野業には賦課しないでよろしいという根拠はどこにあるかということを、私はお尋ねしておるのであります。敗戰国であり、しかも世界に類例のない附加価値税というものを試みにやつてみたらどうかということに対して、これは服しなければならぬ点があるかもしれませんけれども漁業のことはわからないとはつきり明示しております。そうわからないとおつしやつておるのだから、政府がかわつてわかる資料を提供して、これに対する適正な措置をとることが政府の責任ではないか、こう思うわけであります。私、原始産業と近代産業に対する見方を御参考のために一応申し述べておきたいと思います。漁業特に船舶漁業というものは、漁業労務者によつて生産をあげておることはその通りでありますが、しかもこのあり方は、企業の名目はなるほど船主、企業者の名目になつておりますけれども経営の事体というものは漁業労務者、船長以下船員がその実体をにぎつておるのでありまして、結局善意の生産管理であるということにも、私どもは考えておるのであります。たとえば相談の上で資材を整えて沖合いに出ると同時に、どこへ行つて魚をとろうと、どこへ行つて魚を売ろうと——特に遠洋漁業の場合はそうでありますが、それは船主の指示命令によつて動くという点よりも、沖合いにおる船長及び船員が、適当にその操作によつて自由にすることであつて、そういうような産業のあり方、そして原始産業のあり方というものは、その経営主権は漁業者、乗組員にあるとさえ考えていいのではないか。そうしてその労務によつて価値づけられた魚というものは、その金額のおそらく平均して六〇%ないし七〇%、はなはだしいのは九〇%も、いわゆる漁業の労務によつて価値づけられたものではないかと思う。そういたしますると、漁業労務者の労務によつて生じた利益は、共同経営によつて配分された、いわゆる共同経営の形になつておるのであつて企業を持つている関係で、その分の課税も船主がこれを支拂わねばならぬという矛盾がここにも現われるのであります。捕鯨の場合は違います。捕鯨のような近代産業は資本の力、科学の力によつて大きく、いわゆる国際的に伸びておりますので、これに対して賦課すべきは当然であると思いますけれども原始産業的なあり方に対しては、これは検討すべき余地が多々あると私どもは考えております。  なお一応私の意見として申し上げたいことは、もしこれが不合理な課税であるということになれば、これをもつと合理的に、附加価値という名目はあるいは当らぬかもしれませんけれども、結果においては、政府は收益によつてより以上のいわゆる賦課し得る機会と、その金額を求めることができるということを、私どもは考えておるのであります。それはかりに六〇%に対する税率三〇%程度ということになりますと相当の金額になります。そうした損はあつてもこれは支拂いしなければならぬ義務を生ずるのでありますから、これを一つ漁業生産の再生産という意味において、何か活用の方法を、これは自立経済という建前から考えたのでありますが、政府では漁船に対する保險ということも、これはなかなか基金を一般から生み出すということに対する相当の議論もあることは聞いております。私どもは今農業にあるような農業保險、いわゆる漁業災害保險、こういうようなものを考えておりますけれども、この基金がなくて困つております。そういう方面に特別会計によつて費用を求める、そして実際の産業を伸ばして行く。もちろんそういう方向で行きますと、相当な産業上の、いわゆる收益をあげることは当然でありますので、その收益に賦課することによつて附加価値税と称して賦課される金額より以上に、自然の收入大蔵省で賦課すべき金額を見出すことであると私は考えております。そうなりますると、産業復興の意味からいつても、非常に効果的であると考えるのであります。結局政府はある程度その税を徴收するのだ、その徴收の目的を達するということになれば、産業の復興の目的も達し、かえつてその方がいいじやないか、こうした点がもし妥当であれば、政府の方で関係筋の方と、その意味を十分に御折衝なさつて、そうしてより以上の税の徴收方法を見出す方法はここにある。よつて農業と同様に、この附加価値税ということは免除すべきものであり、かわつてこういう自立経済の面からいつて漁業が将来立ち行くためにこういう方法を考えたらどうかということを、御折衝になることはよろしいことであると私だけは考えております。これは建設的意見であります。  なお家族労働、この間予算総会で質問の際に、漁業家の家族労働に対しての免除云々ということは、免除点は九万円ということのようでありますが、何か政令によつてあとでこれを発令することになつておるかのように聞いておりますが、この点はどうでありますかこれをお伺いしたい。
  20. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 漁業に対して附加価値税を課することが不合理であるということは、私申し上げたことはないのでありますが、ただ農業免税している点、バランスの点から行きますと、いろいろ御議論があるだろうことは考えられますが、原則としては今度の附加価値税こそは、この漁業の自家労賃にも課税しておるので、工業においても今までの純益課税の場合におきましては、労賃分は除外して課税しておりました、中小、ことに自分が働いて得るところの所得の場合におきましては、その中に自家労賃が入つているのに対しまして課税していた、今までの事業税は、実はむしろアンバランスがあつた、それを今度はその点は原始産業等の自家労賃の部分が附加価値税の中に入つて来ると同時に、支拂い賃金もその中に入つて来る。むしろ今度の方が今までの事業税に比べますと、原始産業等に課税しても公平な物差しになるということは言い得ると思います。その結果が先ほど申し上げましたように、大産業の方は同じ四百四十億とる場合におきまして、事業税負担がふえまして、自家労賃に依存しておるところの原始産業あるいは小事業者の場合は、相当猛烈に下ることになるわけであります。それによつて初めて私は負担のバランスがはかり得られるものではないかと思います。その意味におきまして、あるいはそうなつた場合におきましては、相当自家労賃が入つておりますところの原始産業、あるいは小事業者の場合におきましては、事業主に課税していいという方向に行き得るのではないか、かように考えております。それから水産業の場合には、おそらく企業の形体は、農業の場合よりもさらにバラエテイーがあると思いますが、企業経営自体といたしましては相当普通の工業と申しますか、小工業に準じた経営状況になつておる程度が相当あろうかと思います。反対にそうでない程度のものも多数あると思いますが、今申しましたように自家労賃に大分依存しておる場合におきましては、よほど今までの事業税よりも負担が下りますが、今度は附加価値税は府県税として最も大きな主要な財源に相なりますので、この際として水産業課税するというのは、私どもとしては妥当でないか、かように考えておるのであります。重ねてつけ加えておきたいと思います。  なおいろいろ保險との関連において御意見がございましたが、その点は私ちよつとよくのみ込めない点がありますので、御答弁は差控えますが、所得税におきましては、家族労働は法律ではつきり一万二千円の控除を認めることにいたしております。今までは御承知通り扶養親族として控除しておりますのは、年齢満十八才未満と六十才以上の者に限つていたのでありますが、今度年齢のいかんを問わずすべて所帯主の扶養を受けております者につきましては、その人自体の所得が一万二千円以上ない限りにおきまして、すべて一万二千円の控除を認めることにいたしております。従いまして漁業等の場合におきまして、おやじさんとむすこさんが従事している場合におきましては、今まではおやじさんの所得に全部なりまして何ら控除がなかつたわけでございますが、今度はそのむすこさんにつきましても一万二千円の控除をするということになりまして、負担関係はよほど違つて来るようでございます。一例を申しますと、現在年所得が十五万円で、従来の扶養親族に該当する家族が四人おる。奥さんと小さいお子さんが三人あるいは老人が一人おるとか、従来の所得税法で控除できるような家族の人が四人おる、そういう場合になりますと、今度は所得税法の改正によりまして、現在の所得税は三万四千七百十八円ですが、改正案によりますと一万五千五百九十八円、半分以下になりますが、そのほかにさらに今まで控除ができなかつたところの弟さんが今度控除できる。そういう人が一人よけいおりますと一万二千五百八十九円になる。さらに兄弟二人おやじさんと一緒に従来控除を認められなかつた人がおられるということになりますと、九千六百七十八円になるというぐあいでございまして、その関係ほ従来に比較しましてよほど所得税負担が合理化される、かように考えておる次第であります。これは法律ではつきりそういうようにいたしまして国会に提案する考えでございます。
  21. 夏堀源三郎

    夏堀委員 それは見解の相違であると申さなければならぬと思うのでありますが、今の労働者に対する附加価値税ということは当然である、こういう御説でありますけれども、日本の現状からして、この通り人口が多くて、その人口の調整をどうしようという場合、失業者は続々出て来るという場合、政府はこの失業者に対して、予算をとつて失業保險などいろいろなことをお考えにならなければならぬという場合、そういうような事情にあるにもかかわらず、原始産業的な労働というものに対して、附加価値税という名称のもので、損があつてもかわつて企業者がこれを支拂いしなければならぬということに明らかに矛盾があると思います。徴税の根本の方針は收益から、資産から、こういうお考えは当然だろうと思いますけれども、損してもこれを課税しなければならぬという考え方は、これはどこからどうついても永続性はないだろうと思います。私は先ほど、世界に類例のないような課税方法を今政府が立案されたということに対しては、これは後日大きな批判の的になるであろうということを申したのでありますが、五年、六年連続損してもなおこれを支拂いしなければならぬということに問題が残されておるのであります。しかし悲しいことには、原始産業農業漁業というものは、合わないからただちに転業をするというわけにも行きませんので、どうにか食える程度でこれにとりついて行かなければならぬという哀れさを持つているのでありますけれども、それはいかぬ、どうしても課税するということになれば、いわゆる日本の原始産業的な農業及び漁業は、農業免税になりますけれども漁業は早晩事業的に成立たぬという段階に陥るのではないか、これを私たちは憂慮しておるのであります。しかしそれでもなお課税するということになれば、試験的にやれということになれば、これはやむを得ないことでありますけれども、ここは先ほども申し上げました通りシヤウプ使節の勧告書にも、まだよくわからぬのだからということがうたつてありますから、政府の立案の方法によつて水産庁ともう一応十分にこの案の内容検討して、そうして私どもも、きようあらためてこれを取上げたものでありますから、議会としてもこの問題に対して愼重に審議いたしまして、政府に要望する点は、何かあとで書類によつて提出したいと考えております。私のこれまで申し上げたことは、いわゆる課税の法律的の根拠と申しますか、これが薄弱である、こう申し上げておるのであつて、理論的にこれならば納得が行くというのであつたならば、関係筋の方でもこれに対して、いやそれでもぜひやれというようなことはなかろうと存じます。今折衝中だというお話でありますから、どうぞこの問題は、十分に水産庁及び地方自治庁大蔵省との間において愼重に御審議されたい。私どもの方でもこれに対する意見書は提出したいと存じております。日本の漁業の将来に対して重大な危機の迫つている現段階において、なおこうした課税において最後の悪條件に追われて遂に日本の漁業というものが、日本から消えてなくなるであろうということを恐れておるものでありますから、どうぞこの点も十分御賢察くだされたいのであります。私どもの申し上げておることは、理論的にも根拠があると私は考えております。これ以上附加し得べき根拠がどうしても見出されて、そのしなければならぬということになれば、これはやむを得ないことでありますけれども、私はそうは考えておりません。どうぞそうした点をおくみとりくださいまして、この重大な時期にあつて、この重大な課税の方法にあやまちのないように御処置あらんことを希望して、私の質問を終ります。
  22. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 平田局長にお尋ねしたいと思います。夏堀委員の御質問に対する平田局長の御答弁で、附加価値税の問題に対する局長の考えがややわかつて参つたのでありますが、その中で、農業に対しては附加価値税を免除するが、漁業に対しては課税するのが至当であるという御見解の根拠は、要約いたしますと二つあるように私承つたのであります。一つ漁業農業の場合の地租に相当する面がきわめて少いということと、農産物は主食として供出統制対象になつておるが、漁業の場合はそれを軽く見ておるという二点に要約されておるように思うのであります。しかしこの二つの面につきまして、私ども農業漁業とを、さようにはつきり区別をしてお考えになつております当局の御見解を、はなはだ疑問に思うものであります。シヤウプ勧告におきましても、シヤウプ博士は、漁業者地租の影響をほとんど受けないから、附加価値税を納付する力があるように思われる——あるように思われるという表現を使つておるのでありまして、シヤウプ博士も、決して漁民附加価値税を納付する力があるのだということを断定はしていない。多分に疑問を持つておられ、かつ今後の愼重な調査によつて結論を出すべきであることを示唆しておるように、私ども考えるのであります。ところがただいまの平田局長の御見解によりますと、シヤウプ博士でさえ多大の疑問を持つておりますこの点を、大蔵当局ははつきり割り切つて漁民は農民に比して附加価値税負担し得る能力あり、こう断定しておるように思われるのでありますが、私どもはこの点につきまして、若干漁業実情を申し述べまして、平田局長の御見解をただしたいと思うのであります。  この漁業権に対する課税検討いたしますと、各府県によつて相当の開きがあるのでありますが、定置漁業におきましては、現在におきましても、多いものは四万円、五万円という漁業権税を支拂つておる。またその他の団体の持つております專用漁業権税は低いようでありますけれども、個人の持つておる漁業権は、現在でも相当の課税をいたしておるのであります。しかも第六国会において通過いたしました新しい漁業法によりますならばわが国の漁業関係者は一箇年に約十億円程度に及ぶところの免許料及び許可料を納付しなければならない、もとより漁業権を一齊に消滅いたします場合に、政府は約百六十億の補償料を出すのでありますけれども、それは二十五箇年程度に及ぶ漁業権証券をもつて交付される。しかし免許料許可料は、毎年十億になんなんとする免許料許可料を支拂わなければならぬわけであります。個々の漁業についてこれを見ますならば、以西底びきのごときは、一箇年に七十万ないし八十万円程度許可料負担することに相なるのであります。定置漁業におきましても、十万ないし三十万円の免許料を支拂うことに相なると思うのでありまして、その他かつを、まぐろ漁業にいたしましても、あるいははいなわ漁業にいたしましても、今後その程度負担をして行かなければならない。こういうことに相なるのでありまして、漁業者が農民の地租に相当するより以上の負担を現在——さらに将来においては一層重い負担を課せられる、しかもこの免許料許可料は、漁があつてもなくても、漁業に損失がありましても毎年とられる。これは税金に相当するものでありまして、これを考えますならば、地租の影響をほとんど漁業者は受けないという考え方は、これはまつたく誤れる考え方である。こう私どもは考えます。  それから第二点の水産物の供出の問題でありますが、私はただいまの平田局長の御説明によつて、大蔵当局は事業税を創設した当時の誤りを再び繰返そうとしておることに警告を発したいのであります。当時水産物はほとんど全部強度の統制を受けておつたのでありまして、主食と何らかわりない嚴重な国家計画に基く統制をやつておる。農民に対しては事業税を当時も免除して、漁業者に対してはこれを課して参つたのであります。これは全国三百万の漁民諸君が、農民とのアンバランス——不公正に対しまして猛熱な反対をして参つたところであります。しかるに今回事業税の不合理を是正いたしまして、事業税を廃止し、附加価値税を創設いたします場合に、農産物の場合と水産物の場合とを同じように考えずに、水産物の統制関係を、主食でない、ただ副食物であるという観点から、これに対して別途の取扱いをなそうとなさることに対しましては、漁業事業税の誤りを再び繰返すものであると、われわれは考えるわけであります。こういうぐあいに、全国の漁業者は今回の附加価値税に対しまして多大の疑問を持つておるようでありますが、この漁業権と地租との関係、それから農産物の統制と水産物の統制関係について、何ゆえに異なつた御見解を持つておるか、この点をお尋ねしたいと思うのであります。
  23. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 漁業に対して附加価値税課税することについて、重ねての御意見のようでございますが、先ほど申し上げましたように、私は今度の附加価値税のシステムになつたら、むしろ漁業等に対しても、今までの事業税よりも課税するという理由は十分にあるのではないかと思います。ただ先ほどからいろいろ御指摘がありますように、農業者は附加価値税を免除した関係において、漁業者をどうするかという問題は、確かにいろいろ御意見がおありになるだろうと思います。それは先ほど御指摘の通り農業におきましては、何と申しましても新しい不動産税が相当な負担になるということと、なかんずく主食等につきましては、従来から嚴重な統制がしかれておりまして、従来は事業税といえども課税していなかつた点がありまして、そういう点にかんがみまして、免税ということになつてつたのでありますが、それらの点を除きますと、特別に考慮するという点はないのじやないかと考えております。それから水産業につきましては、企業の形態がおそらくいろいろあるのじやないかと思います。本来の意味における原始産業に近い性質のものと、あるいは相当近代化されているものと、いろいろあると思いますが、その場合におきまして、さつきから繰返しておりますように、今度の事業税が、むしろ課税としては今までより上る。——多数の労務者を使いまして、近代的にやつておる漁業の場合は、これは相当今度の負担は上るかもしれません。反対にほとんど労務者も使わないで、自分で漁業をやつておる小漁業者の場合におきましては、今までの事業税に比べまして相当下ると思つておりますが、そういうようなシステムに今までの事業税をかえるわけであります。そういう見地から行きまして、やはり附加価値税は、新しい意味からどうかというような御議論もございますが、いいのじやないかと考えております。ただこの税率は、先ほど御指摘もありましたが、利益を重要とする企業主に課税する、従つてこの税率があまり重くなりますと、これは私は成り立たない税だと思います。あくまでもこの税は事業分量に応じて、その税をあらかじめ採算に入れて、そろばんをはじいて企業経営する、その税金というものは相手方の買主に転嫁することを考える場合もございましよう、合理化によつて負担するという場合もございましよう、いろいろあると思いますが、要するに企業は当然府県に対して事業分量に応じて、この程度附加価値税を拂うのだということを事前に考え、コストをその場に入れまして、それで企業経営をやつてもらう。従つていろいろな家賃を拂つたり、地代を拂つたり、あるいは今の御指摘のような免許料を拂つたりするのと同じような意味における税金として、コストに算入して、この税金をそろばんに入れて企業経営する。そしてその中から税金を納めてもらう、こういうわけの税であるのであります。従つてその意味において、本来の純粋の意味においての所得課税とは性質が異なりますし、また完全な所得課税とももちろん言いかねますが、これは一種の流通課税と言えば言うこともできると思います。そういう税でございます。従いまして税率があまり高かつたらこの税は成り立たない。従つて相当税率は低くなければいかぬと思います。低い税率でございますれば、やはりそういう事業は、府県におきましても相当便益を受けるわけでございますから、こういう税が税制全体の体系の中で、四百億前後收入をあげる税として十分成り立つのではないか、こういうふうに考える次第であります。なお漁業のこまかい点につきましていろいろ御意見がございましたが、さような点については、なおよく検討いたしたいと思いますけれども、大体基本的な考え方は、今まで申し上げました通りでございます。御了承願います。
  24. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 どうも御説明を何度お聞きいたしましても——農業地租と、それから漁業権税、今回の新しい漁業法の施行に伴うところの相当重い免許料許可料との関係について、計数的にひとつ大蔵当局にでも御検討を願つて、農民と漁民とが、漁業権と地租との間において、どのような負担の度合いになつているか、そのことを具体的に御研究を願いたいということ、それからもう一つの点は、農産物の供出と水産物の供出との間に、政府がそのように区別をして考えなければならない問題があるかどうか、従来事業税負担したのだから、それよりは合理的になつているのだからということは、われわれは納得できないのでありまして、漁業事業税を賦課したそのとき自体が誤りであつた。主食の供出にしても、水産物の統制による供出にしても、本質的に何らかわつていない。それを一方は事業税を免除し、一方はこれに課税して来た、その出発の当初を誤つているのでありまして、それを延長いたしまして、今回の附加価値税にあたつても当然負担すべきものであるという考え方は、われわれは是正していただかなければならないと考えているわけであります。  もう一点お尋ねしたいのでありますが、免税点を九万円に現在考えているようでありますが、この免税点をもう少し是正なさる御意向がないか、この九万円程度でありますと、家族労務をもつていたしておりまする漁業では、免税の恩典に浴し得ない漁家がたくさん出て来る。農家でありますと、おそらく四人、五人の家族労務を使うところの農家でありますれば、二十万、三十万の收入があると思うのでありますが、漁業の場合でも、数人の家族労務を使つているのがわが国の漁業実態であります。そういう面からいたしまして、この免税点をもう少し改める必要があると思うのでありますが、これに対する御見解を御発表願いたいと思います。
  25. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 今お話免許料との関係につきましては、なおよく検討しましてお答えいたしたいと思います。  それから免税点の問題につきましては、大体この附加価値税は、先ほどから申し上げました性質の税でございますから、実はあまり免税点を設けるというのは、本来の理論からいうとおかしいのであります。所得税と性質が違いますので、あまり高い免税点を設けますと、やはり免税点の上になる企業と下になる企業と競争が変なことになりまして、かえつて課税の公正を欠くことになりますから、あまり高い免税点を設けることはどうかと思います。しかし一面におきまして、徴税の便宜等から考えまして、零細なものに課税するということはどうかと思う。それからまた、あまり小さい企業の場合におきましては、免税して、その小企業か若干くらい有利になりましてもいいじやないかという趣旨から申しまして、今の年額九万円くらいの免税点がいいのじやないかというふうに考えておるのでございますが、これはいろいろ御意見がありましようけれども、大体はさような趣旨で附加価値税免税点を考えております。所得税免税点というものと性質が大分違うものだということを、御了承願いたいと思います。
  26. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいまの両委員の質疑に対する局長の御答弁で、大体趣旨はわかりましたが、ただ一つお聞きしたいのは、もちろん大企業と小企業とのアンバランスを調整するということは、確かにその通りであり、また今後小企業負担が公平になるということも肯定するわけですが、ただ先ほど来繰返されておりまする、損をしても拂うという点でございます。この点はどうしても私は納得ができないのでありまして、取引高税というものは、非常に悪税なりという国民の指彈を受けたのでありますが、しかし今の附加価値税と比較してみますと、むしろ取引高税の方が、負担をする側においては合法性を認め得ると思うのであります。いろいろ理論的に申しますれば意見もありまするが、これはまたの機会に譲りまして、もちろんこの価値に対する附加の原則も私は一応は了承いたしますが、どうしても負担をしなければならぬという税制改革というものは、私は非常に悪法ではないかと考えるのですが、取引高税を廃して財源に苦しむところから、こういうようなことを考案したのじやないかというような、国民全体の非難を受けないとも考えられないので、これに対する局長の見解を承つておきたいと思うのであります。
  27. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 この税は財源としましては、まさに今の事業税のかわり財源にしよう——純益附加税の事業税が、大体府県市町村を通じまして、現在やはり四百億ないし五百億くらい財源になつております。これは府県市町村の財源としては相当大きな財源でございまして、これをどうするかという問題を実は研究いたしたわけでございます。ところで先ほど申し上げましたように、純益附加税ですと、利益が出なければ拂わないという面においては、これは確かにいい税なんですが、しからば厖大な事業をやつていて、利益がないからというので、地方団体に全然税を納めない、これは地方税としてはたしていいかということを考えてみますと、さつきから言つておりますように、どうもやはりおもしろくないことがある。結局そういう場合におきましては、何らかの形で、町村会あたりで決議をして寄付金を押しつけて来る。厖大な事業をして純益がなければ税を納めない。そういうことがありますと、やはり関係市町村なり、府県なんかに相当迷惑をかける。施設等も利用しておるというわけでありますから、全然純益がないからと事業税を納めないで、涼しい顔をしておられない。いろいろな形で、結局は隠れた税金を納めておる。こういうものはやはり純益附加税の事業税本質的な欠陥でございますから、これはむしろ何らかの外形的な標準にかえたがよかろう、こういうわけで、実は附加価値税を創設することになつたわけでございます。取引高税もその際やつたらどうかということも一つの考え方でございますが、取引高税ですと、さつき申しましたように、ほんとうの事業分量を現わさない。卸売事業なんかですと、べらぼうに大きな取引高税がある。製造業は比較的に少い。周旋業は手数料だけですからえらく少い。これが課税標準になるというわけで、今申しましたように、相手方に負担が転嫁すると考えますと、段階による負担の差がある取引高税が一番いい。簡便で比較的早く收入が入つて来る。毎月課税ができますから、計算も割合簡單ですから、財政の非常に困窮しておる際には、こういう税を起して、財政の窮乏を救つてインフレをとめるという役割を果す意味においては、これを用い得るのでありまして、貧乏国などは取引高税があるのであります。幸いにこの税は本年度で依存しなくてもいいということになつたので、やめることになつたのでありますが、従つて取引高税を課するということにするよりも、むしろ財源としては今の事業税をこういう形にする。こういう形にしたときに、税の性質は取引高税に似通つたところもある。従来の純益附加税の事業税とは相当違つております。むしろこの税をさつき申しましたように企業があらかじめ採算に入れて、利益があつたら拂うという所得税とは違いまして、附加価値税がかかるということを、事前にコストの中に入れて商売をやつていただく。その限度において納め得るような税率でなければいかぬ、あまり高くてはいけない。こういう税でございますことを、御了承願いたいと思います。
  28. 石原圓吉

    石原委員長 税の問題はこの程度にとどめまして、統制撤廃についての説明を田中安本食品課長よりお願いいたします。
  29. 田中覺

    ○田中説明員 水産物の統制問題に対して、現在政府で考えております結論的なことと、それからそれを実現するために現在までとつて参りました措置の概要を、まず最初に申し上げたいと思います。  昨年末漁業用資材に対する補給金の撤廃問題が決定せられましたときに、われわれとしましては、当時国会の要望もございましたし、大体水産物の統制撤廃の時期を本年の四月ということに想定をいたしまして、諸般の準備をして参つたのであります。しかし当時補給金撤廃問題が決定いたしたときに、司令部といたしましては、この問題と水産物の統制問題とは全然別個である。少くとも補給金を撤廃したがゆえに、水産物の統制を撤廃するというような必然的の関連はないということを、重ねて申してはおりましたけれども、私どもといたしましては、当時から大体の目標を四月において準備して参つたのであります。安定本部、水産庁、物価庁、それぞれその職分に応じまして、必要な資料の整備をいたして参りました。最近に至りまして三者の資料も整備せられ、かつまた内部的に意見の一致を見ましたので、司令部に対しまして次のような案を提起いたしたのであります。それは水産物の統制は、現段階においてはあまり大きな意味を持たない、むしろ撤廃をしてもこれで実質的に国民の生計費の支出の増嵩を来すことはない、しかしてその実施の時期は四月一日といたしたい。こういう申出をいたしたのであります。それに対して司令部側では、いろいろ議論もございましたが、その当時議論をいたしました結果として、一応水産物の統制を撤廃してもよろしいということは認める。しかしその実施の時期については、四月一日は時期尚早である。あるいは五月といい、あるいは六月といい、あるいは七月が適当ではなかろうか。いずれにしても撤廃の時期についてはあらためて相談をしたい、こういうような申出があつたのであります。その後司令部側では、そういう考え方から関係官庁の課長を呼びまして、いろいろの資料説明なり、あるいは提出を求めておるのでありますが、その間にいろいろ空気から判断いたしまして、またもや統制の撤廃そのものについて基本的に疑問であるというような意見を漏らしておるということを伺いましたので、安定本部から先般それに対して、水産物の統制問題は、先般の会議の席で撤廃をするということは決定した。ただその時期について若干問題が残つたので、それについてあらためて討議をするということになつておる。しかもその撤廃の時期が六月とか七月とかいうことに相なりますと、またあらためて統制問題を論議しなければならぬことになつて、今回水産物の統制は撤廃するということをきめたことの意味もなくなる。従つてこの前の会議の結論から言つて、水産物の統制撤廃問題は、一応撤廃するということに決定をされ、かつその時期について四月がいいか、あるいは五月がいいか、きわめて短期間の時期の相違があるというふうにわれわれは了解しておるということの、確認を求めたのでありまして、それに対して向うも、いましばらくその時期の問題については資料の整備をするから待つてもらいたいということで、そのまま議論は絶えておるのが現状であるのであります。そこで日本政府側が、かような意見を司令部側に出しまして折衝いたしました主要なる根拠は、一つは水産物の供給の問題であります。これは水産庁におかれまして、統制開始直前から最近に至るまでの各年度の漁獲高の推移、それから六大消費都市に対する入荷量の推移、従つてそれから計算せられるところの消費者一人一日当りの消費量、あるいは配給量、また海なし県に対する入荷量といつたような、いろいろの数字を年次別に用意をせられまして、それから大体結論せられることは、漁獲高も大体統制前の七五%程度に回復して参つておりますし、また六大消費都市におけるところの消費者の一日当りの消費量も、ほぼそれに近い水準にまで回復して来ておるということから、大体統制を撤廃してもよろしいという一つの根拠がこれから出て来るという説明をいたしたのであります。次は消費の実態でありますが、これは主として物価庁において、CPSの分析からいろいろの資料を整備せられまして、その結果として魚の公定価格が実質的に市場価格に終つておる。すなわち非配給のやみ価格に対しては全然影響のないのはもちろんのこと、配給品の価格に対してすら、必ずしもマル公が守られておらないというような事実も明らかになりましたし、また最近におけるところの実効価格の推移というものが、非配給の価格すなわちやみの価格にほとんど追随いたしておりまして、しかも最近においては、ほとんどその両者の価格のカーブが一致するごとき状態に相なつておるのであります。そのことは、言いかえれば、すなわちマル公というものがほとんど意味がない。また配給というものが数量的にあまり大きなウエートを持たないことを説明するわけでありまして、そういう観点から、この際水産物の配給並びに価格の統制を撤廃してもよろしかろうという一つの根拠が生れるという説明をいたし、かつまた撤廃の時期につきましては、各魚種の季節的な価格の変動を検討いたしますと、大体四月から六月にかけては、毎年定期的に魚の価格は下るのであります。従いまして大体下り始める直前の時期、すなわち四月に価格をはずすことが、その悪影響の発生を未然に防止するという建前から申しても、きわめて適当であるというような一応の説明をいたしたのであります。しかしいずれにいたしましても、供給の問題にいたしましても、あるいは消費の実態、価格の変動にいたしましても、対司令部折衝におきまして、いまだもつて完全に戰前の状態にすべてが返つたという説明はできないのであります。従つて水産物の統制を撤廃してもよろしいという、確実なきめ手がないというのが一つの欠陷であつたのであります。そこで安定本部では、これに対する一つの対策といたしまして、先般新聞紙にも発表いたしましたが、本年の一月現在の数字をもちまして、昭和二十五年度の日本経済の見通し作業というものをやつたのでありますが、その見通し作業に基くところの国民所得、あるいはさらにその国民所得から出て来るところの魚に対する有効需要といつたものと、水産庁の推定になるところの魚の供給量というものの両者の見合いにおきまして、統制を撤廃した場合に、はたして消費者の家計費の支出の実質的な増嵩を來すような価格の高騰が起きるかどうかということを、理論経済学的に分析をいたしまして、その結果一応の魚の供給量が二%増、一人当りの配給量にいたしまして、一日十二匁くらいの配給が確保できる程度に供給がありますならば——もちろん季節的には魚の価格の変動は起るではありましようし、あるいはまた統制を撤廃した当初においては、一時的な価格の高騰も起り得るかもしれません。また魚種によりましては、あるものは高く、あるものは下るというようなぐあいに、いろいろ別個の動きを示すかもわかりませんけれども、魚全体としての価格の変動は、実効価格としては影響がない。すなわち家計費の支出には実質的に影響がないということを、一応数字的に結論をつけまして、それをもつて水産庁あるいは物価庁のそれぞれの資料に基く根拠とともに、司令部に説明いたしたのであります。それに対する司令部の態度は、安定本部でいろいろ理論経済学的なフオーミユラで説明いたしましたものに対しては、その理論あるいは根拠については、まつたく異論をさしはさむ余地のないことは認めたのでありますが、ただかくのごとくフオーミユラの方式によつて算出をした数字に基いて、この現段階における水産物の統制問題を議論することがいいか悪いかということについては、若干疑問があるというようなことを言つてつたのでありますが、結局、結論としては水産物の統制撤廃を認める。時期について、最初に申し上げましたように、なお今後検討を加えてきめたいというようなことにいたしたのであります。なおこの供給の問題、あるいは消費者の実態、価格の変動の実態、あるいは安定本部で理論経済学的に算定をいたしましたその根拠については、ここに担当の課長なり係官の方が来ておりますので、もしお許しを得ますならば、具体的な御説明をいたしたいと思います。とりあえず私から結論的な問題、その経過概要だけを御説明しておきたいと思います。
  30. 玉置信一

    玉置(信)委員 私はごく簡單お尋ねをしておきます。卑近な実例をもつて質問申し上げるのですが、御承知のごとく、かつて豊漁時代には、大衆魚であるにしんの漁獲が、北海道全体の経済を動かすとまで言われたあの大きな事業が、すでに目睫に迫つておるのであります。最近統制をはずすというようなうわさが出まして以来、金融面においても非常に支障を来している。しかも統則をはずすかはずさないかということに対しては、輸送船団の組織化の問題、それから販売先の確保の問題、それから身欠き等の加工製造に対する計画の問題、あるいは生産者の保護対策の問題、自治統則の問題等いろいろ大きな問題がこれにはからまつているわけであります。従いまして、もし四月一日からこれがはずされるということになりますと、前段申し上げたいろいろな点において、生産者はもちろん当局においても、これに対する対策を講じなければならぬと思うのであります。漫然として過しておつて、そして四月以降五月のころになつて、万一これの統制をはずしたということになりますと、相当大きな混乱を来すのではないか、かように心配されるのでございます。もし四月一日から統制をはずすということになりますと、御承知のごとく、わくをはずしつぱなしでは非常に混乱を来すために、北海道におきましては、各業者が打つて一丸となつて、自治的な統制でこの混乱を未然に防ごうというようなことを、寄り寄り協議をしておりますし、また道庁当局においても、この観点からいろいろ心配をしておるのであります。先般来水産庁当局にお伺いしましても、私どもと同様の見解のもとに、いろいろ研究もし、苦心もしておられることを承つておるのでありまするが、こうした統制撤廃の時期の問題こそ、漁獲に重大な影響を来すのでございますので、ただいまの御答弁でははなはだあいまいでございますので、もう少しはつきりした今後の見通しをつけ得られないものであるかどうか、こういう点について重ねて御意見を承りたいと思います。
  31. 田中覺

    ○田中説明員 時期の問題がきわめて重要であるということは私ども承知いたしておりますし、ことに北海道のにしん漁業につきましては、ちようど四月、五月という問題がきわめて重要な関係を持つているということを特に心配しております。従つてどもといたしましては、そういうような考慮もございまするし、また撤廃をいたしますためには多少準備的な措置も必要でございまするので、できるだけ早く撤廃の時期の決定をいたしたいということで、先般来司令部と折衝を続けておるのでありまして、今もなお私どもは四月一日を目標にしておることにはかわりはないのでありまするが、何と申しましても水産物の統制につきましては、特に司令部において関心が深いのでありまして、そのために先ほど御説明いたしましたような事由で、いまだに時期について確定を見ておらないというようなことに相なつておるのであります。なお司令部では、この統制撤廃の決定の発表についてもきわめて愼重でありまして、事前にこれを発表するということは、発表したときから統制そのものがあたかもなきにひとしいような状態に陷るということをしきりに憂うておるのであります。しかし水産庁といたしましては、統制を撤廃するためには、そのための具体的な準備措置がどうしても必要でありまして、それを発表せずして極秘裡にやるということは絶対にできないのであります。従つてその点についても、もしわれわれは四月一日からやるのであるならば、少くとも二月中くらいには最終決定の運びに持つて行きたいということを、重ねて司令部に要望をいたしております。はなはだ本席で具体的に何月何日からということを申し上げられないのを遺憾に思いまするが、実際の折衝経過は私が申し上げたようなことになつております。
  32. 冨永格五郎

    ○冨永委員 ただいま田中説明員からるる統制撤廃に関する説明がありましたが、われわれは非常にはつきりしておらない点について、遺憾の意を表明せざるを得ないのであります。もちろん各委員からも、まだいろいろ御意見の御発表もあり、質疑もあろうと思いまするけれども、本日は一応経済統制の撤廃の問題はこの程度にとどめられまして、簡單に水産貿易に関する説明をいただいて、一応議事を進められんことを要望いたします。
  33. 石原圓吉

    石原委員長 ただいまの冨永君の御発言のようにとりはかろうことに御異議ありませんか——それでは貿易に関する説明水産庁水野加工課長よりお願いいたします。
  34. 水野榮

    水野説明員 それでは水産物の輸出振興に関しまして簡單に御説明申し上げます。実は水産物の輸出振興につきましては、国会方面から至急に何らかの案を立てるようにということで、われわれは勉強しておるのでありますが、まだその要綱の形で皆さんにお示しするまでには至つておりませんので、ここに考え方だけを御説明いたしまして、皆さんから有益な御教示をいただいて、一層早くかつまた意義ある案にしていただきたい、かように考えるのであります。  輸出貿易は御承知通り昨年の十二月一日、また輸入貿易につきましては本年の一月一日から、民間に移管される措置が講ぜられて、今までのような司令部の管理下に置かれております輸出入の貿易に課せられましたいろいろな制約というものは、原則的に取除かれることになりまして、自由取引を行える姿に返つたのであります。また一方において国内の生産やまた取引も、多年の統制の状態から漸次自由経済に移つて来ておりまして、民間貿易も従いまして自分の計算でやつて行くということと同時に、また多年の経験を生かして行くということに、だんだんとなつて行くわけであります。しかしながら戰後統制になれておりました関係上、また貿易業者も生産業者も、この際一挙に自由貿易の状態に投げ出されるということに、何と言いますか、そういう面になれない点がありますので、われわれといたしましては、そういう点もあわせ考えて、この経済統制から自由貿易に行きますところの状態を、十分に考えて施策をして行かなければいけない、こういうふうに考えております。従いまして、生産の面におきましては、いま一層の企業の合理化、それからまた技術水準の高度化に向つて施策をしまするし、また輸出部面におきましては、業者間の無謀な競争をやめてもらうような方向に指導して行くというようなことを、根本の方針といたしまして行きたいと思つております。現在それではどういうふうなことを考えておるかと申しますと、われわれといたしましては、水産業貿易の振興対策といいましても、同じ貿易の面につきまして、現に通産省のやりまする輸出の部面があるのでありますが、その線に調子を合せつつ生産の部面におきまして輸出の振興になるようなことを、主として重点的にやつて行く必要がある、こう考えまして、その方法といたしましては、まず第一に輸出水産物を生産し、また加工しておるものを、十分に水産庁において把握する必要があるのであります。この把握するということは、要するに実態を十分につかんでおくということであります。そういう意味におきまして、われわれといたしましては一つの登録制と申しますか、届出制と申しますか、こういうことがはたして現在の法制のもとにおいてできるかどうかという疑問はありますが、何としてもこの実態をとらえる必要からいたしまして、少くとも輸出水産物の生産者なり、加工業者なりの状態を、われわれが知つておかなければいけないというので、通牒に基きますところの登録制ということを考えておるのであります。次にこういつた登録された人に対しましては、金融のあつせんとか、それから技術水準の高度化、また適正価格の維持、内外情勢の情報交換、その他いろんな貿易振興に関しますところの調査研究をするために、それぞれ品種別に任意の団体でもつくつていただきまして、そうして個々別々にわれわれが指導するということでなくて、そういう団体を通じて指導すると同時に、貿易業者との連絡もそういう団体でやつて行くということがいいのじやないか、こういうふうに考えております。大体生産の部門に対してはそういうことを考えておりますが、輸出の方につきましては、通産省と十分な連絡をとりまして、貿易業者が投売りをすることを十分に警戒をしなければいけませんので、これも現在の法制からいいますと、非常にむずかしいことでありますか、何か団体でもつくらせまして、バイヤーと対等な力で折衝ができるような、いわゆる値下げを競争的にして売りくずすということをしないようにすると同時に、いろいろと海外の諸情報を集めてもらつて、これを生産者の方へすみやかに流して行くというふうな措置をとつたらよかろう、こう考えております。またそのほか海外の商況というようなものをキャッチするために、專門的な通商官を水産の部面から出して行く。今通商官と申しますか、何か貿易の関係でアメリカ等へは数箇所人を派遣するようでありますが、そういうときに水産專門の人をその方に一つ加えていただくというふうなことも考えておるのであります。それからまたバイヤーその他のために、また生産者の啓蒙宣伝ということにもなりましようが、優秀な輸出品の展示所、あつせん所というようなものをつくつて、そうして貿易の利便に資するというようなことを考えておるわけであります。そのほかいろいろと考えなければいけないこともありますが、まだ十分われわれの方としても考えが練れておりませんので、大体以上をもつて説明にかえる次第であります。
  35. 石原圓吉

    石原委員長 物価庁生鮮食品課長岡崎君も出席でありますけれども、本日は時間の関係上次会に譲ります。  本日はこの程度にとどめ散会をいたしたいと思います。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時五十九分散会