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石川説明員 本日のこの
委員会に私が遅れましたのは、午前十時に
参議院の
水産常任委員会に呼ばれて、先ほどまで
参議院にお
つたわけであります。たまたまその中間にお呼び出しを受けたのでありまして、すぐに
委員長の
了解を求めたのでありますが、もうしばらく待
つてくれということでこちらに参れなか
つたのです。再三催促しました結果、もうよろしいからというので、向うの済み次第ただちにこちらに
参つたのであります。その点は一応御了承願いたいと思います。
御
指摘の
石油資材の問題に関する御
意見でありますが、主として十一月から、いわゆる
基本割当にかえた点が非常に悪いという御
意見に帰着するかと思います。まず第一の点は、
基本割当が従来の
リンクの
割当に比べて、非常に簡易な、容易な
方法であるという御
指摘があ
つたのでありますが、これは実は全然逆なのであります。
〔
鈴木委員長代理退席、
委員長着席〕
リンクの方の
割当制度は、
陸揚地に
出荷されました魚の
数量に応じて、ある定められた
リンク率によ
つて割当するので、これは
割当技術上から見るときわめて容易なのであります。それにもかかわらず、なぜこの非常に
手数のかかる
基本割当制度にかえたかと申しますと、御承知の
通り十月の十五日ですか、
水産物の
配給統制が緩和を見まして、従来
統制をとられてお
つた魚のほとんど大
部分が
統制からはずされて定められた
指定の
出荷機関に出さないでもよく
なつたわけであります。
リンクの
制度で行きますと、どこまでも産地における
出荷機関に出したものの
数量を抑えて、その
数量に応じて
一定の
リンク率から油を
割当するわけでありますので、この
リンク制度を継続するならば、
統制をはずしたものも、一応どこかの
出荷機関に出さなければならないという
矛盾に陥るのであります。これはそういうことをやらなければ、一体何がゆえに
水産物の
統制をはずしたのか、そういう大
部分のものをはずした理由がなくなりますので、その
水産物の
配給統制の改善に即応して、この
基本割当にかえざるを得なか
つたのであります。もちろんこの考え方としては、それでは
統制魚については
リンク制度をとり、非
統制魚については
基本割当をや
つたらいいじやないかという御
意見もあると思いますが、これは実は
末端において、その
事務を担当する
資材調整事務所の
事務の分量を倍加することであ
つて、現在の
資材調整事務所の陣容ではできないのであります。もちろんこの
基本割当の
制度にもいろいろ
欠陥がありますが、従来の
リンク制度の
割当についてもいろいろ
欠陥があるのであります。たとえばこれからある
漁業が始ま
つて、これが盛漁期に入る。ところが前の月の
漁獲が非常に悪か
つたために、翌月の出るための油が
前月の
リンクでもらえない。これを一体どうするか。これは実は根本的の対策は何もないのであります。または
かつお、
まぐろのごとく、二月くらい出るものもありますが、
前月までは
かつお漁業であ
つた。ところが今度来月からは
まぐろ漁業になる。それには約五十数日出なければならないが、
かつお漁のときには
幾らも漁がなか
つたので、油が
幾らももらえなか
つた。ところが現実には二月分の油がなければ、次の
まぐろ漁業に出られない。こういういろいろな
矛盾があるのでありますので、実は前々から、できれば根本的に
リンクの
割当をやめて、いわゆる
基本の
割当にかえたい、かように考えてお
つたのであります。たまたま
水産物の
配給統制が改善されまして、十月十五日から実施を見ることになり、先ほど申し述べたように、非
統制魚に対しては
リンクの
制度が実施できないから、それをいい
機会にひとつ
基本割当にかえて行こう、こういうような
構想で、
関係方面に折衝しましたところが、それはいいだろうということで
了解が得られたのであります。実はこの
制度にかえますためには、何しろ
石油の
統制が始ま
つて以来や
つております
リンク制度を、新しい
制度にかえますので、当然いろいろな
混乱が予想されますので、実は数箇月間の
猶予を
願つたのであります。私の考えとしては大体三月間ぐらいあれば、いろいろ
資料の
收集だとか、
末端の準備だとかできるのではないかと考えておりましたので、できれば二十五年の一月ぐらいからこの
制度に切りかえたらいいのではないかということで、約三月ほど
猶予を
願つたのでありますが、その
制度がいいと
なつたら、早速実施しろというようなことでやむを得ず急遽十一月から実施したのであります。そのために起きるいろいろな
混乱は、はなはだ残念でありますが、あとの
措置として現在いろいろ努力しておるわけであります。それで結局先刻御
指摘のように、従来漁のあ
つた漁船は、従来の
リンク率でもらう方が確かにいいと思います。しかしこの
基本割当という
言葉がしばしばこの
制度の
内容を誤解されておるのでありますが、この
基本割当とは必ずしも
漁船の
馬力数だとか
航海時間だとかだけを
基礎にしておるのではないのであ
つて、稼働する
漁船と稼働しない
漁船があるでしようが、その稼働する
漁船に油を出す。それから稼働する
漁船の
航海日数または
航海時間、そういうようなものを一応
基礎にいたしますが、なおその
漁船がとる
漁獲物が
統制魚が主であるか、非
統制魚が主であるか、または
輸出水産物を主としてとるか、こういうような
内容まで検討しまして、その
出荷の実績だとか、またはその
漁獲される
水産物が、今日のようないろいろな種類がありますので、そういう点をあわせ考えて
割当をしておるわけであります。
従つて従来の
リンク制度でや
つてお
つたほど明確に、魚をたくさんと
つておる者に油をよけいやるということにならないかもしれませんが、とります魚の
数量または
統制魚をとるか非
統制魚をとるかによ
つて、その
漁獲の
数量または
内容によ
つて、
相当割当の
数量がかわ
つて来るのであります。ただ問題は、
リンクの
制度でやりましようが、またはただいま実施しておりますいわゆる
基本割当でやりましようが、帰するところは全体の
石油の
わくの問題になると思います。この
わくが不十分である限りは
リンク制度でや
つても、いわゆる
基本割当にかえましても、結局はどこかにむりができるのでありまして、実は私
どものもつと大きなねらいは、この
基本制度に切りかえることによ
つて、根本的に足りない油の
数量を
はつきりつかんで、それでできればそういうような
資料を、
わくをふやす
一つの
資料にして行きたい、かようなねらいもあるのであります。單に従来の
リンク制度だけで行きますと、これは
リンク率は
一定に押えられておりますし、漁があればただ油を出すということだけであ
つて、
基本的に
日本の
漁業というものを根拠にして、これだけ油が足りないという
数字がどうしても出て来ないのであります。それを
基本に切りかえることによ
つて、
日本の
漁業別の
漁船数、
馬力数、
航海時間、あるいはもつとこまかく言えば稼働延
馬力数になりますが、そういうものを押えることによ
つて、もつと的確に足りない油の
数量が
はつきり出るのではないか。それをつかんだ上で、
わくをもう少しふやすという方向に持
つて行きたい、実はかように考えておるねらいがあるのであります。
なお
わくの増加につきましては、従来いろいろ努力しておりますが、遺憾ながら私
どもの微力でその目的を達しておりませんが、最近
北海道方面にさんまの漁場がしばらく定着して動かなか
つたのであります。そのために、もつと早く南下する
計画でおりましたのが、漁場が遠いために非常に油がいる。こういうようなことで十月、十一月にそれぞれ千五百キロの油をふやしてもらいました。また九月二十一日東方の
まぐろ漁場の拡張によ
つて当然漁場が遠方になりますので、それに対する
石油の増加を要請しまして、十一月、十二月それぞれ約二千キロばかりふやしてもらいましたく、なお今後の月も若干ふやしてもらうような
実情にな
つております。それで今後私は
石油の問題と
綿糸の問題が、私の課としては一番大きな問題にな
つて来ると考えておりますが、その
わくの増加について、もつぱらや
つて行きたいと思
つております。従来の大体のやり方は、各
地方の
資材調整事務所に
割当をすることが主であ
つて、また
割当の結末については
地方の
報告をとるだけで、大体これを完了したとしてお
つたのでありますが、どうもそれでは
末端の
事情がよくつかめませんので、これは最近ぼつぼつ始めておりますが、
末端の各府県の
陸揚地について拔きとりの
調査をや
つて、その土地の
漁業を拾い、その
漁業の中のある特定な人を拾
つて、一体油がその月には
幾らいるのか、それに対して正規の
割当は
幾らあ
つて、
幾ら現物化したか、足りない油は一体どういうふうにして入手したか、こういう問題を、
末端の実際の
事情を調べることによ
つて資料を集めて、現実に各
漁業者がどれだけ油が足りないかという問題を調べて行きたい、かように考えております。これは油だけでなくて、
綿糸やマニラ麻についてもや
つて行くつもりであります。そういうような
資料も、実際の
末端の
事情がこうな
つているのだからということで集めまして、そういうようなものも
基礎にして、油の
わくの増加について使
つて行きたいと考えております。なお油の
割当の問題だけでなくて、
綿糸もマニラ麻もそうでありますが、従来
言葉の上では簡單に、せつかく連合国軍の努力で輸入してもら
つた資材だから、これをもつと効率的に使
つて、
漁獲をたくさんあげるという抽象的な
言葉で表現してお
つたのでありますが、現実には一体効率的にこの
資材を使うことはどういうことかということになりますとこれはただその時期に
漁獲が多い
漁業に重点的に出すということになるかと思いますが、実はこのことは
言葉の上では簡單でありますが、実際の問題としては、
日本の水産業をどういうふうに持
つて行くかという全体的の
漁業の指導
方針に関するのであります。この問題が
はつきり解決して、今後
日本の各種の
漁業をどういう方向に持
つて行くかということ、並びにそれに関連して
漁船の行政をどういうふうに持
つて行くかという問題もあわせて考えて水産業全体の持
つて行き方をこういうふうにやるから、
石油はこれだけいる。
綿糸はこれだけいる。マニラ麻はこれだけいる。それでどれだけの
漁獲をあげて行くのだ。こういう総合的な
計画を立てるのでなければ、実はほんとうの
資材計画はできないのではないかと考えております。こういうことを言うのははなはだ妙なのでありますが、最近
漁業法とかいろいろの法律が整備されて参りましたので、それに伴
つて、
水産庁としては
日本の
沿岸漁業その他の
漁業の
調整をやるという方向に向
つておりますが、そういう問題を中心にして、
はつきり
日本の
漁業の指導
方針がきまるならば、
資材の問題も根本的に解決する時期がやがて来るんじやないかというふうに実は考えておるわけであります。いろいろ不徹底な点がありますが、御
質問に応じて一応私の考えておるところを申し
上げたわけであります。