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金森国会図書館長 図書館の従来の半年よりも前の
経過につきましては、すでにこの
委員会でも御
報告を申し上要したし、またたびたびいろいろな
機会に御
報告を申し上げておりますので、過去大箇月の
経過の大要を御説明申し上げたいと存じます。但し、事柄が非常にこまかい
数字にわたりますので、大体の
計数のこととは、おま
わしをしておきましたところの
国立国今
図書館経過報告資料についてごらんを願う方が都合がよいかと
考えます。
あらかた申し上げますと、組織と言いますか、
図書館の組立ての面につきましては、この間に
支部図書館が
一つふえたのであります。それは
支部学術会議図書館の設置でありまして、すでにこれに関します
規定は、
委員会で御承認を得まして、十一月三十日から施行しておる次第であります。人事につきましては、
職員の数は何らの変更はございません。ある
人々が退職をした、ある
人々が新たに任ぜられて、ある
人々が死亡したというような多少の変化はございますが、格別な問題の起
つていることはございません。
次に
働きの面について申し上げまするが、私
どもの
図書館はいろいろな
任務を持
つておりまして、大きくわけますと、普通の
図書館のような
任務、それと
違つた任務というふうにわけることができようと思います。普通の
図書館のような
任務はあとま
わしにいたしまして、それでない方の大きいところを申し上げますと、いわゆる
立法調査の点であります。この
図書館が生まれます根源の
一つは、
立法調査を必要とするという点でございまして当初から
立法調査の面につきまして力を強く用いるという気持で参りましたけれ
ども、何分にも
経験が乏しいのと、伝統がまだ短かいのと、
参考資料がゆたかでないこと等のために、非常にみごとな成績を上げるというまでには参
つておりませんが、大要申しますと、この半年の間に、およそ百九十一件の
調査をしております。
電話等によります簡単なものは、
もとよりそこには含まれておりません。その詳細は別紙の
計数の中に入
つております。またこの
調査資料を、短期間におよそ十八册ばかりつくりまして、必要な部面に配付しております。この点は、どういふ点にさらに発展をせしめなければならぬかということを常に顧慮いたしておりますけれ
ども、要するに将来の
日本の
働きに何らか十分なる役に立つことをしなければならぬしそれには打つべき手が多々あると
考えておりまして、目下それの
研究を進めております。
第一の問題は、今のように
図書館のあり場所が、
国会より離れているということは、あらゆる災いの
もとになるのでありまして、何とかしてこの
国会のへりにぴつたりくつついて、いつでも迅速に
連絡がとれる、こういうふうにならなければならぬと
考えております。
従つてはなはだ不十分ではありまするが、とりあえず
三宅坂に仮の
建築をつくりまして、おもなる
調査職員はそこに
集つて、できるだけ簡便に
国会と連繋がとれる
方法を進めまして、本年の初めから、その形がいくらか
整つたような姿であります。
なお次に
考えておりまするのは、そういう
調査を進めて行きまするためにも、また
一般の
人々の利益に供するためにも、どうしてもかような
調査に適する、いわば小さい
図書館がなくてはならないと
考えまして、それには
政治と
法律に関しまするおもなる
書物を集積して、
調査にもすぐに役立てる、またそういうことに不便を感じておる
人たちも、ここに来て
調査ができる、こんなことを
考えておりまして、順次
計画を進め、来るべき年度の
予算におきましてお認め願いましたその線に
沿つて現在
準備を進めており、本年の十月ごろから、ここにささやかながらも
法律図書館ともいうべき
一つの
部門が生れて来る
予定をいたしております。
それから次にやはり普通の
図書館と少し異なりました
働きは
行政、司法の各
部門に対する
サービス事務でありまするが、それは
支部図書館として
行政の各部にありまするものをうまく
連絡統合して活用をはかるということが本質にな
つております。現在、各
官庁及び
最高裁判所に
支部図書館をつく
つており、それぞれの
専門の
書物を備えておりますけれ
ども、しかし、これらのものがばらばらにな
つておりましては、ほとんど効果を生じませんので、せつかくたくさんのものが
連絡して
本部となり
支部とな
つておるのでありまするから、この相互の間に材料を交換し、知識を交換し、そのほかあらゆる
連絡をとるということが必要であろうと
考えておりまして、過去六箇月内に、その
考え方をも
つてだんだんと調節をや
つて参りまして、その
一つの現われといたしまして各
支部の持
つておりまする
書物の
目録を集めましてそれでも
つて全体に北適する――小さい
計画ではありまするが、
総合カタログをつくりかけておるのであります。この六箇月内に三万八千八百九十六枚の
カードをつくることができまして、累計をいたしますれば六万三千ばかりの
カードになるのであります。現在はまだ少くて、十分の活動をいたしませんけれ
ども、これが漸次蓄積せられますると、どういう
書物がどこの
支部図書館にあるということがわかりまして、その結果、各
支部図書館が
便宜を得るばかりでなく、
一般の
調査の
人々も便利が得られるようにな
つて行くであろう、こう
考えております。
こまかいことはそのくらいにいたしまして、次に各国から
書物がどんなふうに入
つて来るかという
事情を申し上げまするが御
承知のように、現在はなかなか
書物は入
つて来ません買うことはできる筋にはな
つておりまするけれ
ども、ヨーロッパに対しましては、金の支払いが
相当自由ではございません。
アメリカに対しましては、ほとんど金を支払う道がございませんので、できるだけ金を用いずして手に入れるというよりほかに便法はございません。幸いにして、この六箇月の間に、ことに
アメリカの方から
ケア物資として
相当量をもらいましたし、また
ロックフヱラー財団から、文学的なる書類と社全
科学に関する書類合せて一千
册余のものの寄贈を受けました。これらの
書物をも
つて、
図書館の新しい
外国文献の幕末としております。そうして、できるだけ多くの人にそれを利用してもらいたいという
考えをも
つて便宜をはか
つております。しかし。まだ
書物がたくさんないのでありまするから、
自然利用者の数も多くございませんので残念に思
つておりまして、もう少しこの
書物をふやす道はないかと
考え、私がニユーヨークに参りまして、
ロツクフヱラーの
財団のところに参りましたところが、
ロツクフヱラー財団では、近き将来におきまして、実際
研究、あるいは
研究よりももつと低い意味の
調査に役立つような
書物を
相当多数寄贈する
予定である、その書目は今現に調べておるということで、私のその
カードの一部を見せてもら
つて参りました。こんなふうにして、だんだん
書物を集め得られまするならば、
相当業績をあげるに近かろうと思
つておるのであります。
次に、もう
一つ大きい問題として
印刷カードの問題がございまして、すべての
図書館が
自分で
カードをつくることは非常に手間をとるのでありまして、なかなか経費もかかりまが、もしも一册の
書物について私の方でりつぱな正確な
印刷カードをつくりまして、
図書の分類もその中に明らかにな
つておるということであると、非常な便利が得られるという
考えから、順次企てておりましたが、この期におきましては、
相当これが順調に運びまして約七万八千枚余り、
書物にいたしまして一万二千余のものに対応するものができて参りました。こういう
カードは、われわれの
図書館で使うことのほかに、今
アメリカの希望によ
つて、そこにもこの
カードを交換しております。また
国内におき幸しても、漸次これが何らかの
方法で用いられて行くようにも
努力をしております。なお
マイクロ・フイルム、
マイクロ・
カードも、この期におきまして若干
仕事を果しております。
マイクロ・
カードは、実はまだ試みの
程度であり、われわれの手でも
マイクロ・
カードができるということの実験をした
程度にすぎませんけれ
ども、もしこれが将来発展する価値があるものとするならば、われわれの手で
相当実現できるだけの
準備を整えております。
次に
一般の
図書館の
仕事の面について申しますと、大体
図書館の
書物は漸次増加するという姿でありまして、この期におきまして、この六箇月内に集りました
書物も
相当多量にな
つておりますけれ
ども、そんなに
書物がたくさんわずかな間に発行せられるというわけでもございません。この期におきまして、われわれの
図書館が特に
労働科学研究所の
蔵書を四万
册余り受入れましてこれがこの期の大きな
書物を集めた数の中に入
つておるのであります。そのほかは、
数字は別册にありまするが、要するに二、三万研を越えないのであります。それから、なおできるだけ
国会関係にわれわれの
言物を利用していただくということの
計画を立てまして――よく世間では、どうもジャーナリズムが軽率でありまして、
国会議員の方が
図書館にちつとも来られない、こんなふうなことを、おもしろおかしく書き立てるという傾向がありますが、私
どもの立場から見れば心外千万であります。何れも
国会議員の
方々が、忙しいからだをも
つて、われわれの
中央図書館の
書物を見においでになる必要はないのであります。
分館の方に必要なる
書物は備えてありますし、またそれ以上の必要があれば、いつでも本館から
分館に
書物をまわすということにな
つております。それを知らずして、とかくの批評をいたしておりますが、この期に
分館の
図書がどんなふうに利用せられたかと申しますと、
相当利用せられておるのでありまして、そのわかつた
数字は、別別の中に、
閲覧者の数と、利用せられた
書物の数とがともに掲げてあるのであります。大体現在の進行は今申しましたように、順調に一歩々々と進んでおるというふうに申し上げることができようかと思います。
ところで、ひとつまた国際的な問題が起
つておりますのは、
ユネスコとわれわれの
図書館の
関係であります。
法律の表から申しまして、
ユネスコと私
どもの
図書館とが直接
関係があるということにはなりませんが、しかし
ユネスコは、
学術及び教育の見地から世界の平和を高めて行くというものでありまして、
図書館の
仕事は、これとほとんど密接しております。そこで、われわれの方から求むるに先だちまして、
ユネスコの
本部の方から申し入れがありまして、
ユネスコに対して、何らかの
努力をするという道順が発生したのであります。現在のところでは、
ユネスコとの文書の交換、そして
ユネスコから送付して来るものをわれわれの
図書館に陳列して
一般の方に供覧するということが
主眼点でありまするが、さらにいま
一つの問題が起りました。それは、
ユネスコの方で、
書物類、広く
言つて文献につきましていろいろな
調査をする企てが起
つております。
調査をすると申しますのは、
一つの点を言えば、
書物をいかに分類すべきか、こういうような問題であります。つまり、
書物の効用をはつきりせしめまするに必要なあらゆる問題を国際的に
研究しようということが起
つておりまして、現にある
程度まで手続が進行しているのでありまするが、それが
日本に話かけられて来て、
日本の
書物に
関係のある
人々の
意見をとりまとめて、その
ユネスコの
書物に関する
研究、ビブリオグラフイーに関しまする
研究に対しまして、
日本から
相当の
資料を供給することが必要とな
つて来たのであります。今いろいろな情報を集めましてその
基本の道をくふうしておりますけれ
ども、要するに、
日本の
図書館の、あるいは
書物関係者の
意見をとりまとめて何らかはつきした形にして
ユネスコに送るということになりましようが、それを
図書館のどういう
権能でやるかというと、ごく
一般的な
権能から来ておりますが、そういうことを要望せられており、来るべき年内には、ある
程度仕事をする必要が起
つて来ようかと思
つております。
大体の
経過は今申し上げました
通りでありまするが、ここにひとつ問題が起
つておりますのは、われわれの
図書館のほんとうの
建物の点であります。
図書館の
建物につきましては、従来も多少は申し上げており、また
建築の
委員会がありまして、その方で
相当の
研究をしておりまするが、従来のものの
考え方は、新しき
図書館の
建物はどうしても
国会の
建物とぴつたりとくつつがなければならぬ、これは言うまでもないことであります。そこで、これをくつつけまするために、現在の
議会の
建物を
中心として
考えてみますると、前と
うしろと右と左、この四つしか
考えることができません。ところが前の方は、これは
国会の美観あるいは
壮嚴さを保つために、よほど注意をしなければならない。また
国会の右の方には、ほどよき
敷地はございませんし、それぞれまた故障のありそうな
敷地であるのであります。またこの
国会の
うしろの方は、これも
敷地の幅が狹くて、ただちに地形がくずれるというようなことでありましてこれははなはだ見込みが乏しい、そうすれば、この
国会の左、つまり
もとの
ドイツ大使館を
中心といたしまして、ここに設計をするということが必要でありまして漸次その歩を進めて、
もとの
建物のこわれたのを含めて、
敷地をなるべくわれわれの手に移すことを
努力して、漸次その調子が進みまして、今それを
大蔵省に移管するという形にな
つております。ところが、ある
官庁が、この
ドイツ大使館の跡に庁舎をつくりたいということを
大蔵省に申し出まして、そこで
大蔵省では、もしも
図書館を
建築をするのにまだ余裕があるなら、その間そこに特殊の
官庁のバラツクをつくりたい、こういう申出がありました。一応のりくつは成立いたしましたけれ
ども、実際の
事情は、今後その
敷地を
図書館に向くようにだんだん整理して行かなければならぬところに、よそのバラックができますと、将来
図書館の
建設に非常な
障害が起るというようなことを
考えまして、
関係部局にその趣旨を明らかにしていわば反対の声を上げているのであります。現在のところは、しいてこれを使おうという空気がございません。各
官庁の間に調和を保ちつつ、この所にわれわれの
図書館が
建設されて行くようにと思
つておりますけれ
ども、しかしいろいろの
障害が起るのでありまして、私
ども図書館当局といたしましては、みずから微力と言うことはまことに情ないのでありますけれ
ども、結局微力でありまして、ひとつ両院の
図書館運営に
関係のある
方々によ
つて、その点は必要な場合、強力にわれわれを御支持願いたい。これは
報告に加えましてさような実情が起
つておることを申し上げたのであります。しかし、これはただいまのところは大したことはございません。そこで私
どもといたしましては、できるならば積極的にこれらの
土地に対して
図書館ができ上
つて来るような
順序をふんで行きたいのであります。その
準備として多少の
予算を
大蔵省に申し出たこともありまするけれ
ども、今までのところ聞き入れられておりません。ただ
昭和二十五年の
予算の中におきまして、これに
関係のある
土地の
買收費が少しばかり考慮せられている
程度であります。これは、私
どもの方も、今後この
図書館建築につきまして急速度に
実行計画を進めて行きたいと思
つておりまするのでしかるべく御了解及び御支持を願いたいと存じております。これで私の
報告を終ります。