○土橋
委員 私はただいま問題に
なつております一箇年間の六千三百七円
ベースの延長の
法律案につきまして、日本共産党を代表しまして反対の
意見を表明いたします。
この法案は、吉田
政府が内外の独占資本の利益のために、勤労階級を收奪する基本的な
賃金の
ベースなのであります。そもそもべース
賃金というものは、資本主義
経済におきます能率制の
賃金でありまして、
ベース賃金によ
つては常に勤労階級は救われないのであります。少くとも当時の
物価の状態、生計実態の調査等にかんがみまして、最低生活を保障する態勢を国家がとりませんことには、勤労階級は常に塗炭の苦しみをなめ、悪性
インフレのもとでは、さらに
物価と
賃金とのシーソー・ゲームによ
つて苦しみ、あるいは恐慌ないしはデフレーションのときにおける失業なり、あるいは
賃金の切り下げ、こういうような状況によりまして、常に資本主義国家におきましては、特に吉田
政府のもとにおきましては、
労働者階級は非常な苦しみをなめておるのは、公知の事実であります。従
つてベース賃金というものが、労働階級の生活を保障し得るところのものでないことは、きわめて明白でありますので、われわれはどこまでも最低
賃金の保障ということを、強く主張しておるのであります。従
つて六千三百七円
ベースの一箇年
計画は、こういう労働階級の基本的な要求と、日本を少くとも復興するためには、勤労階級の絶大なる協力を得なければならない。そういう段階から
考えまして、まことに背馳する吉田
政府の
政策である。このようにわれわれは
考えておるのであります。
次は、この問題は單に
公務員諸君の
給與が、一箇年間六千三百七円
ベースですえ置きに
なつたというような問題ではなくして、日本の全労働階級に対しまして、六千三百七円の
ベースにさや寄せをするところの、低
賃金政策の現われでありまして、この法案がもし通過しますならば、おそらく
民間の
労働者といわず、公共企業体の
労働者といわず、地方の
公務員諸君にまで、その影響するところはきわめて甚大であるのであります。従
つて低
賃金政策というものは、滔々としてこの法案が本
委員会を通過するや、全国にこれが及んで参りますことは、労働階級の不幸この上もないものであります。私は
簡單に過去の例を申し上げますならば、
昭和二十二年七月の当時におきましては、
民間の全国的な
工業平均賃金におきましては、千八百三十五円であ
つたのであります。当時
国家公務員諸君におきましては千八百円の
基準でございましたが、これを
比較いたして参りますと、
公務員の
給與は九八%まで上昇してお
つたのであります。ところがだんだん歳月を経まして、二十三年の一月に至りますと、全国の
工業平均は二千九百五十一円に
なつおりますにかかわらず、
公務員の方は二千九百二十円という状況でありまして、これが九九%、さらに同年の六月におきましては、一方においては四千三百九十五円という
給與の
平均賃金をと
つておりますにかかわらず、
公務員の方においては三千七百九十一円
ベース、これはパーセントで示しますならば八六%であります。ところが昨年の七月現在を見ますと、八千二百六十三円も一般の
民間労働者はと
つておりますにかかわらず、
国家公務員は六千三百七円
ベースというのでございますから、七六%に当
つておるのであります。これは労働省の金子統計調査部長が、
国鉄裁定の場合の
委員会におきまして、これを
説明しておる
関係かち見まして、
公務員の
給與が逐次逓減をし、逐次下げられておるということを証明しております。従いまして私
たちは本
委員会におきましても、
官房長官に対しまして常に申し上げておりますように、六千三百七円
ベースの
基準は、一昨年の七月であります。今日
物価指数を見ますならば、少くとも一三八%程度上
つておるのでございますが、それにもかかわらずなおかつ
官房長官は、昨年の三月ないし四月をも
つて六千三百七円
ベースが完全に支給されておるというような
説明によ
つて、また
物価が横ばいをしておるというような
説明によりまして、この
ベースを
引上げない根拠にせられておりますけれ
ども、これは明らかなる詭弁でありますので、われわれはこういうような
意味合いから、六千三百七円
ベースが強行せられることは、実際の面から見ましても、理論の面から見ましても、きわめて妥当を欠いておる。このように
考えるのであります。
さらに六千三百七円
ベースの改訂におきましては、全国官庁労働組合の諸君が要求しておりました理論生計費及び実態生計費に基きまして
考えておる
ベースは、一万七百二十円程度であ
つたのであります。そうしますと、六千三百七円
ベースとこの開きは、約半分であります。一般世上において
公務員の
給與が低いということは、公知の事実でありますのみならず、こういう計算によりましても、半分程度であることは証明されております。これは過日職階に関する
法律が本
委員会において討議をせられまして、われわれはこの職階法につきましても、絶対に反対の
意見を表明しておりましたが、吉田
政府のもとにおきまして、この職階に関する
法律と、低
賃金の標本でありますところのこの六千三百七円
ベースとが、両輪のわだちのように、日本の全勤労階級が、奴隷
賃金になることを
意味しておるのであります。従
つてこういう奴隷
賃金が日本の労働階級に強要せられます一方、皆さん方も御
承知のように当然一石七千円以上の買上げをしてやらなければならない米価におきましても、
政府は米価審議会の決定するこれを蹂躙しいたまして、四千二百五十円というような低米価で、しかも供出というような制度によりまして、これを收奪しておるのであります。こういう点から
考えますと、低米価と低
賃金はおそらく全世界のうちにおいても、私は日本が最もそのひどいところの
頂点でなかろうかと
考えておるのであります。そう
なつて参りますと、世界的な情勢から
考えまして、日本以外の資本の導入があらゆる形式で参りますならば、いよいよも
つてか
つての中国、か
つての朝鮮、あるいは台湾のような、植民地的な方向に日本の政治が参りますことは、きわめて明白であるのであります。従
つて六千三百七円
ベースの一箇年間すえ置きは、まさに植民地的な
賃金を吉田
政府によ
つて強行をし、これを実現をし、これを実践せしめて、内外の独占金融資本のために、日本が
経済的にもまた
労働者の協力を得なければならない、この重要なる
労働者諸君の労働の保護の
方面におきまして、その
政策が完全に浸透し得るという結果を招来するのであります。こういうことにつきましては、職階制とともに、われわれはこの法案には反対をしなければならぬと思うのであります。
なお
公務員諸君の生活の実態を調べてみますると、
政府はいろいろ
実質賃金の向上をはかると申しておりますけれ
ども、それは、そうであろうというだろう
政策でございまして、実質的には赤字の累積は、言語に絶するものがあるのであります。最近の不正と腐敗、特に税務官吏の不正、あるいは高級官僚の不正行為というものは、新聞紙上において諸君の見られる
通りでございます。こういう事実が一方にありながら、
政府の
関係諸君は美辞麗句をもちまして、これによ
つて公務員が救われるようなことを——自由党の諸君ですら申しておりますが、私
たちはこういう欺瞞的な
説明につきましては、むしろ心から憎しみを感ずる次第でございます。従
つて公務員諸君の赤字の累積は、おそらくどの家庭を見ましても、奥さんの苦痛、また子供の給食等の問題を
考えましても、これは言語に絶するものがあるのでございます。なおこれに基きまして、患者が非常に起
つておりまするが、現在
公務員諸君はこのために、逓信病院においても、鉄道病院においても、他の諸病院におきましても、あらゆる傷害の患者を引起しこおるのであります。これはか
つて岩手県であ
つたと記憶しておりまするが、農業者作物報告所の事務員が、安い給料であるにかかわらず、非常な努力をせられまして、ついに職務のために倒れたというようなことは、單に岩手県ばかりでなくして、全国的にいずこの県にも、いずこの市町村にも、起
つておる現状でございます。なおそういうことだけであ
つたら、それほど私達は問題を取上げませんが、これと同時に
人事院か政治活動の禁止ということによりまして、
公務員諸君のあらゆる権利を奪い、
公務員として当然政治活動をなし得る基本的な権利を持
つておりますにかかわらず、これを圧殺する。こういうことは明らかに吉田
政府が、内外独占資本のために日本を植民地化し、日本のあらゆる政治機構を、
法律の制定から、
国会の運用に至るまで売り渡すような内容を、明確に示しておるものではなかろうかと
考えるのでございます。特に最近の炭鉱
労働者における強制調停等の
政府の見解は、炭鉱
労働者は公益事業でございませんので、あくまでも
労働者の権利を認めるためには、
労働者の持
つておりまする罷業権を完全に行使せしめることでなければ、
労働者の基本的な権利は守れないのであります。それすら強制調停ということになりまするならば、今電産の労働組合があらゆる困難に耐えながら闘争されておりまするが、こういう闘争も水泡に帰せしめるような
政策を、必ずこの吉田
政府は行うでありましよう。同時に冒頭私は申し上げておりますが、六千三百七円
ベースにさや寄せし、この方向に
賃金を引下げるというような結果を招来するのであります。それのみならず労働はいよいよ強化いたしまして、最近はあらゆる会社等におきまして、たとえば郵政省管内における京都の簡易保險局の例を見ますると、超過勤務
手当は
政府は完全に支給をいたしませんで、そうして請負制度で、二時間働いても、女事務員の方はせいぜい四十円から五十円、相当腕のよろしい人がカードの
整理をいたしましても、その
整理が七十円程度であります。もし諸君がうそであると言うならば、京都の簡易保險局の支局に参りますれば、八時頃まで調査員はみな電気をつけて働いておるという現状であります。こういう点を
考えましても、
政府の超過勤務
手当支給に対する点は、事実と相違しておるということはきわめて明白な点であります。従
つてこの問題は單に
政府ばかりではございません。
人事院がこの七千八百七十七円の
勧告をいたしましたときは、十二月四日であると私は記憶いたしておりますが、もし
人事院が一昨年の七月に
勧告をし、さらに一箇年経過をして、
国家公務員法第二十八條の規定を忠実に実行するならば、昨年の七月当時当然
勧告すべき
基礎的な資料を調製をし、これに基いて少くとも九月、おそくなりましても十月の初旬には、
政府に
勧告すべきものであ
つたと思うのであります。ところか当時
政府は臨時補正
予算の編成と同時に、
昭和二十五年度の
予算編成を
考えまして、十五箇月
予算をあらゆる
方面の援助を得まして完全に
実施し、
国会へこれを上程して、補正
予算の審議が終了したときに
人事院がこの
勧告をする、こういうような態度である。これは明らかに
人事院も、
政府も、その裏面においては相ともに
公務員諸君の
給與を上げないという、基本的な態度を表明しておるものと私は思うのであります。なお当然昨年の十月当初から改訂すべきものでありましたのを、今日まで遷延しておりますので、そういう態度はこの
人事院の政治活動の制限、登録の制限、そういうものと関連をして、まことに不都合きわまるところの
政策であるのであります。でありますから、われわれは
人事院のこの
勧告についても、心からこれを迎い入れることはできないのであります。
こういうような吉田
政府の植民地的な低
賃金を多数をも
つて強要をし、奴隷的な
賃金をしやにむに押し通そうとするならば、いよいよ日本は軍事基地化的な方向へ参りまして、私
たちは再び戰争の危機にさらされるのでございます。御
承知のように群馬県のある火薬工場においては、電気を一キロワット時九十二銭で使
つております。ところが
民間の平和産業に対しては、一キロワット時五円以上の電気代を徴收しておるのであります。そういうようなまことに戰争的な方向へ参
つて来る基本を、ここでつくり上げるのでありますから、私
たちはこういう軍事基地化的な
賃金、植民地的な
賃金、日本の全勤労階級を奴隷的な立場に置く
賃金については、吉田
政府の低米価
政策とともに、私
たちは絶対反対の意を表明する次第であります。