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1949-12-20 第7回国会 衆議院 人事委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十二月二十日(火曜日)     午前十一時五十二分開議  出席委員    委員長 星島 二郎君    理事 小平 久雄君 理事 高橋 權六君    理事 藤枝 泉介君 理事 成田 知巳君    理事 中曽根康弘君 理事 土橋 一吉君    理事 逢澤  寛君 理事 平川 篤雄君       池田三之輔君    岡西 明貞君       丹羽 彪吉君    丸山 直友君       柳澤 義男君    松澤 兼人君       川上 貫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         内閣官房長官  増田甲子七君  出席政府委員         人  事  官 山下 興家君         (給與局長)         人事院事務官  瀧本 忠男君         (主計局長)         大蔵事務官   河野 一之君  委員外出席者         電気通信次官  鈴木 恭一君         建設事務官   小林與三次君         專  門  員 安倍 三郎君         專  門  員 中御門經民君 十二月二十日  委員廣川弘禪君及び山崎猛君辞任につき、その  補欠として丹羽彪吉君及び丸山直友君が議長の  指名で委員に選任された。 同日  理事赤松勇君及び木村俊夫君の補欠として成田  知巳君及び平川篤雄君が理事に当選した。     ――――――――――――― 十二月十九日  国家公務員に対する臨時年末手当支給に関す  る法律案内閣提出第四号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  国家公務員に対する臨時年末手当支給に関す  る法律案内閣提出第四号)  国家公務員法附則第九條による試験に関する件     ―――――――――――――
  2. 星島二郎

    ○星島委員長 これより人事委員会を開会いたします。  議事に入る前にお知らせしておくことがございます。去る十七日赤松勇君が委員を辞任せられ、成田知巳君が新たに委員となられました。また本二十日山崎猛君、廣川弘揮君委員を辞任せられ、丸山直友君及び丹羽彪吉君がそれぞれ新たに委員となられました。去る十六日委員を辞任せられた木村俊夫君及び去る十七日委員を辞任せられた赤松勇君はともに理事でありましたので、理事二名が欠員となつております。この際お諮りいたしますが、理事二名の補欠選挙を行うことといたしたいと思いますが、これは先例によりまして、選挙の手続を省略し、委員長において指名するに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 星島二郎

    ○星島委員長 御異議なしと認めます。それでは平川篤雄君及び成田知巳君を理事に指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 星島二郎

    ○星島委員長 去る十九日国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案内閣提出第四号)が本委員会に付託せられまじた。本法案の付託にあたりまして、議院運営委員会の意向は、でき得れば関係委員会連合審査会を開くようとのことでありましたが、御承知のように連合審査会は、他の委員会より要求があれば開くことができることになつておりますが、今までのところ他の委員会より別に要求もありませんし、本法律は可及的すみやかに国会を通過させる必要がある法律案でありまするから、この際お諮りいたしますが、ただいまより本案を議題とし、本委員会独自で審査を進めて行きたいと思いますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 星島二郎

    ○星島委員長 御異議なしと認めます。よつてさよう決定いたします。なお連合審査会を開くことを求めて来た委員会がありました際は、別途に考慮することといたします。  ただいまより国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案議題として、その審査を行います。まず政府当局より提案理由説明を聴取いたします。増田官房長官
  6. 増田甲子七

    増田国務大臣 ただいま議題となりました国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案提案理由並びにその要旨を御説明申し上げます。最近における公務員勤務状況に顧み、かつ年末を控えてのその経済事情をも考慮し、この際臨時措置として今年度限り年末手当支給することとし、本法律審を提出した次第であります。まずその内容を簡單に御説明申し上げます。  第一に、この手当支給を受ける者は、手当性質から見まして、国家公務員全般に及ぼすことは必ずしも適当でありませんので、特に上級の国家公務員を除く一般職、及び特別職国家公務員のうち常時勤務に服する者に限り、支給することといたしました。  次に手当の額は、各省各庁で捻出できる財源の範囲内でまかなえるよう定めたのでありますが、これを具体的に申し上げますと、頭割り七百円に各人の給與月額の三分の一相当額を加えた額を基本額とし、これに過去の勤務期間を考慮して段階を設けることといたしております。但七最高支給額は五千円にとどめることといたしました。  最後にこの法律の実施に必要な細目は、内閣総理大臣が定めることといたしました。  なお本法律案は、国家公務員のみを支給対象としておりますが、公社職員船舶運営会及び復興金融金庫等政府関係四機関の職員についても、予算上の措置により国家公務員と同様に、臨時年末手当支給する方針であります。特に日本国有鉄道職員につきましては、この措置により公共企業体仲裁委員会の裁定の一部履行を果すことと相なるものと考えております。その支給方法等も、国家公務員と同様の趣旨によるよう、当事者間において協議決定せられることを期待する次第であります。  以上が本法律案提出理由でありますが、国家公務員実情をおくみとりの上、何とぞすみやかに御審議の上、御賛成あらんことを希望いたします。
  7. 星島二郎

    ○星島委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。  これより質疑に、入ります。質疑は通告順によつてこれを許します。松澤兼人君。
  8. 松澤兼人

    松澤委員 それでは大蔵大臣ちよつとお伺いいたします。第一にお伺いいたしたいことは、人事院から給與改訂勧告があつたのでありますが、さしあたつて給與改訂を行わないというのが、総理大臣施政方針演説の中にあつたわけであります。さしあたうて行わないということは、どの程度期間でありますか。最近いろいろな情勢から、各官庁ある、いは公社等におきましても給與改訂要求相当強い。もはや給與改訂すべき時期であろうと、こう思つておるのでありますが、この点につきまして大蔵大臣のお考えを承りたい。
  9. 池田勇人

    池田国務大臣 公務員給與につきましては、お話通り人事院より引上げ勧告が出ておるのであります。しかし政府といたしましても、ただいまのところ給與ベース引上げ考えは持つておりません。ただいまのところというと、将来はどうかという問題でありますが、少くとも二十五年度の予算につきましては、引上げない予算を提案する考えでおるのであります。
  10. 松澤兼人

    松澤委員 さしあたり上げないということは、いわゆる十五箇月予算の限りにおいては上げないという考えでありますか。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 その通りでございます。
  12. 松澤兼人

    松澤委員 現在給與実情に即しておらないということは、もはや周知の事実であり、かつまた政府が今回、わゆる年末手当をお出しなつたということも、これは褒賞の意味ではなくして、生活費がそれだけ窮乏していると、こう了解しているのでありますが、この公務員生活実情というものが、現在のまま二十五年度も給與改訂しないで、はたしてやつて行けるかどうか、このへんの点について御所見を承りたい。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 今回の臨時年末手当は、多分賞與意味を含めておるのであります。来年度の予算編成にあたりましては現在の賃金ベースを堅持して行く考えでおるのであります。理由につきましてはいろいろございますが、昨年の十二月に六千三百七円ベースにいたしまして、今年の一、二月は過渡的にかえつて六千三百円より減つてつたのであります。大体軌道に乗りましたのが今年の四月くらいと考えております。しかして四月の消費者総合物価指数と申しまするか、CPIの状況を見ますと、四月を一〇〇にして九月は九九になつております。十月はもつと下つていると考えます。四月の一〇〇に対し九六・七くらいではないか、あるいはもつと下になつているかもわかりません。そうして十一月、十二月の状況から考えますと、消費者総合物価指数は、六千三百円ベースがほんとうにスタートした四月に比べますと、相当下つていると考えているのであります。かてて加えまして、名目賃金引上げをするよりも、実質賃金引上げの方が、われわれとして考えなければなりません。従いまして、先般の第六国会におきまして補正予算の際に申し上げましたように、極力減税をはかつているのであります。その際にも申し上げましたように、一、二、三月におきましては、米価の引上げがあり、あるいは価格調整費の撤廃によりまして、個々の物価は上つて参りますが、減税等によつてよほど実質賃金は――よほどではありません。ある程度実質賃金は上つていると確信いたしているのであります。今後の物価状況を見通し、また今度のシヤウプ勧告案よりももつと減税をし、あるいは主食の配給につきましても特段の手を盡しましてやつて行けば、私は賃金べ一  スを上げて経済界に悪影響を及ぼすよりも、以上のような措置をとつて実質賃金引上げに努めて行くべきだと考えているのであります。
  14. 松澤兼人

    松澤委員 政府の御見解はなかなか楽観的でありますけれども、しかしもし実質賃金が向上しているとするならば、なぜ公務員は実際において生活に苦しんでいるのか。なるほど外見的に見ると、実質賃金は向上し、充実しているように見えますが、しかし各家庭ともどこの家庭におきましても、漸次赤字が累積しまして、従つて公務員は歳末において二箇月程度の年末手当をもらいたいという要求をしているのでありまして、生活が楽であるならば、そういう要求はしないはずであります。赤字累増というものが漸次ここまで来て、何とかこの際政府に年末手当的なものを出してもらわなければならないということになつているのでありまして、政府もおそらくそういう点を考慮せられていると考えるのでありますが、この年末手当性格はどういう性格でありますか。先ほどは多分賞與的な意味が含まれているというふうにおつしやつたのでありますが、その点をお聞かせ願いたい。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま提案理由説明をいたしました通り公務員勤務状況並びに年末における経済事情考えて、賞與的の意味出しているのであります。従つて私は将来の賃金ベースとは関係ないものと考えております
  16. 松澤兼人

    松澤委員 年末において金が必要であるということは、これは日本習慣でもあります。しかし漸次給與が科学的、合理的になつて行つてベースが上つて行けば、年末の賞與を出さなくても、毎月々々の家計がバランスとれて行けばよい。ところが今回政府が年末賞與をお出しになるということは、そのバランスがとれてないから、赤字累増がどうにもしようがなくなつて政府としてもこの赤字を補填するという意味において、年越しをする場合において何かの金を出さなければならない、こう考えてお出しになつたのだと思うのであります。もしそうでなく、單に今までの日本習慣従つて、年末に金がいるから金をお出しになるということであれば、昨年の六千三百円ベース切りかえの場合にも出さなければならなかつたし、またベースをこのままでやつて行けば来年の盆、暮には賞與的なものをお出しにならなければならない。本年限りというのでありますが、この一回お出しなつたことが、将来日本の伝統あるいは慣習従つて、盆及び暮にまた公務員がそれぞれ手当要求されたならば、大蔵大臣はこれをお出しになるお考えでありますか。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 赤字補填意味出したのではございません。中には赤字の人もあるかもわかりません。しかし建前として、赤字補填出したのではないのであります。お話通り日本においては従来年末には、二割ないし三割の賞與出しておつたのであります。敗戦後、賞與制度がだんだん少くなつて、あるいは今の状態では賞與制度はなくなつておるのでありまするが、経過的に見ますと、御承知通り昭和二十一年までは年末に出しておりましたが、二十二年から出さぬということになりました関係上、出す手はなかつたのでありますが、御承知の二・八箇月の問題が一昨年の暮に起りまして、昨年の暮は三千七百円ペースが六千三百円になりまして、そうして職員手取り相当ふえて来たのであります。今年におきましては予算関係で、検討を加えるまではやはり規定通りに、出すべきではないと考えておつたのでありますが、今年は御承知通りに、大量の行政整理をいたしました関係と、その他を考慮いたしまして、予算範囲内において些少ではございますが、出すことにいたしたのであります。来年度においては、ただいま提案理由で申し上げましたように、出さない考えでおるのであります。
  18. 松澤兼人

    松澤委員 それで大体において、今回の年末手当性質というものがよくわかりました。結局政府としましては、赤字の累積のために、いわゆる年末を越すためにお出しになつたのではないと言われているのでありますが、そうしますと、公務員労働強化になつて、日ごろ非常に苦労であつたという意味において、褒賞的な意味においてお出しになつたのでありましようか。もし褒賞的な意味でお出しなつたとすれば、やはりこれは来年にも尾を引いて行くわけであります。その年末手当性格というものをはつきりと教えていただきまして、今後われわれがこの問題を考える場合に、何かの参考にしたいと考えておるのであります。年末手当性格をもう一度まとめてお話願いたいと思います。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいままで申し上げた通りでございまして、本年は大量の行政整理をいたしました。また物価も下つてはおりますが、予定通りにはまだ下つていない。公務員の今までの慣習等考え、また予算も節約し得る金額が見出されましたので、褒賞的な意味をもつて出しておるのであります。
  20. 松澤兼人

    松澤委員 それではほかの問題に移りますが、ベース改訂をやらないという理由は、どこにあるのでありましようか。予算関係でありましようか。あるいは六三ベース家計赤字を出さないでやつて行けるという点でありましようか。その点をひとつ……。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げました通りに、政府の施策によつて実質賃金引上げの見通しがつきましたから、給與ベースをこのままで堅持する。もし給與べースを人事院勧告のように引上げるといたしますならば、せつかく考えております。減税もできないし、また物価上昇という危険性もありますので、この際といたしましては賃金ベースはかえないという方針で行く考えでおります。
  22. 松澤兼人

    松澤委員 減税というお話でありますが、国税におきましてはあるいはそうなるかもわからぬと思いますが、国税地方税全体を見た場合には、やはり負担相当に重くなるのではないかと思うのでありますが、この点いかがですか。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいませつかく努力中でございますが、シヤウプ勧告案によりましても、中央、地方を通じましての来年度の租税収入は、今年度の収入額よりよほど減ることに相なるのであります。国税においては今年度は当初五千百四十億、それに自然増収二百十三億を加えますと、五千三百四十億円余になりますが、ただいま私の予定いたしております国税收入が、四千四百四十六億円でございますので、大体九百億円余り国税減税になるのであります。しかして地方税におきましては、今年度は千五百億足らずの収入であつたのを、シヤウプ勧告によりましても、税の身がわりとしてとつてつた寄付金のうち「三百億円を税でとりましても、千九百億円しか見込んでいないのであります。そうなると、国税で九百億円も減税になり、地方税では三百億円の寄付金が税として振りかわつて来て、なお四百億円の増税であるのでありますから、差引き五百億円程度減税になると私は考えておるのであります。これがためには国におきまして、極力経費を節約すると同時に、地方自治団体においても国と歩調を合せて、歳出を極力節約していただくことを前提とするのであります。かくいたしますれば国民税負担はかなり減つて来ると考えておるのであります。税はそういうふうに総体として減るが、国民所得についてはどうかという問題がすぐ起つて参ります。国民所得においては私は二十五年慶の国民所得は、今年度の国民所得よりはある程度ふえることを前提にいたして、そういうことになるのであります。実質としては相当減税になると考えております。
  24. 松澤兼人

    松澤委員 小さな問題でありますが、実際上今回の年末手当を実施する場合において、たとえば林野局関係などの労務者で、政令二百六十四号によつて常雇いではありますが、一箇月完全に就業しておらないという者がありまして、こういう者についてはたとえば退職金支給しないとかという規定があります。これは現実に現場々々においてそれぞれ話合いの結果、今回の年末賞與を與えていただくようにしていただけば、たとえ二十二日しか働かなくとも、または冬山の関係などで十五日しか働げない。あるいは十日しか働けないというような者も、年末手当を受けることができるのでありますが、政令をかたく読んで行きますと、一箇月働いておらないというようなことから、手当がもらえないということになるおそれがある。これらの点はできるだけ実際の支給は、各現場において適当な話合いをつけて、支給していただくということにしていただきたいと思いますが、これらの点についてはいかがでありますか。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 建前は常時勤務にすることと相なつておりますのでお話のような場合については支給できないのではないかと考えております。なお具体的の問題でございますので、事例をよく検討してからお答えすることにいたしたいと思います。
  26. 松澤兼人

    松澤委員 ちよつとおわかりにならないかもしれませんが、常時そこで働いておりまして、ただいろいろ山の気候の関係や、あるいは雪の関係などで、一定の勤務日数を押えているわけであります。そこでその勤務日数を完全に働けば、つまり一箇月働いたと同じ取扱いをするわけです。従つて現に働いている人たちは、毎日々々働いていると同じような勤務をしているのであります。たまたま政令二百六十四号というものをかたく解釈すると、そういう結果になるのであります。この点は常雇いで働いておるわけでありますから、常時勤務と同じ問題があると思います。こういう点につきましては、現場において適当に解決するように、ぜひ親心をもつてつていただきたい、こういうことをお願いするわけであります。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 具体的の小さい問題――大きい問題かもわかりませんが、例の進駐軍関係労務者、直接政府の方で使つているのでなしに、関係工事の方の労務者ではないかと思うのであります。賃金を調べますと、例のPW連中だと思いますが、これにつきましては、この法律案では支給しないことにいたしております。
  28. 松澤兼人

    松澤委員 最後に、今回の年末手当支給される場合における税金関係はいかになりましようか。ということは、せつかく三千円もらいましても、半分は税金だということになりますと、政府のあたたかい気持が、もらう、方には徹底しないわけであります。いろいろお願いはしておると思うのでありますが、これもひとつ考え願いたいと思うのであります。どういうふうになりますか。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 税金は最も大事なものであります。税金を徴收する建前で、この金額ができておるのであります。従いましてある人は最高の五千円をもらいましても、その人が高額の俸給所得者であれば、下の人よりも手取りが少いという場合も起つて来るのであります。新聞にちよちよい出ておりますように、課長局長級は、主任よりも手取りが少いということが起つて来るのであります。これはやむを得ないと私は考えております。
  30. 松澤兼人

    松澤委員 それでは私はまだ増田官房長官あるいは人事院に対する質問が残つておりますが、大蔵大臣に対する質問はこれで打切ります。
  31. 星島二郎

    ○星島委員長 午前中の会議はこの程度にとどめまして、午後一時三十分に再開して質疑を継続することにいたします。  これにて休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十四分開議
  32. 星島二郎

    ○星島委員長 それでは休憩前に引続き会議を開きます。  午前中国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案議題としておりましたが、政府の都合によりまして、しばらくこの問題は政府の方で出席するまで待つといたしまして、その間に国家公務員法附則第九條の試験に関する説明員説明を承ることにしておりましたが、説明員が午前中見えておりましたが、今ちよつと他に行かれておりますので、その方が見えるまで、かねて中曽根委員より山下人事官に対するお尋ねがありましたので、きよう幸い山下人事官がお見えになつておりますから、山下人事官より御報告なり、御意見を承りたいと思います。
  33. 山下興家

    山下(興)政府委員 せんだつて中曽根委員から、試験の問題はどんなものだということを、例示をしたらよかろうというお話がありまして、私もそういうものも出しまして、皆さんにいろいろ御検討を願いますと、私どもの非常にためにもなると思つたのであります。しかしこれには専門家があむますから、その専門家意見を聞いてみたのであります。そうしますと、そういうことをしてはならぬ。アメリカでもそういうふうになつているのだというようなことでげ飛ばされました。その理由はこういうことでございます。たとえば一般行政職と言いましても、一般行政職でできるような問題を、幾つかただ集めるのではない。一般行政職の中をまた分類してみますと、たとえば組織の問題、それから監督の問題、調整、それから予算人事、広報、庶務、そういつたようないろいろな種類から成り立つておるのであります。そうしてそれのうちで一つずつに軽重がある。問題の重い軽いがあるわけでございます。それでそれによつて問題を集めまして――重要性が多いものからたくさん問題を出すとかいうようなふうに集め合せて、それを問題に出しておるわけであります。それですから、そのうちのただ一つ出しまして、これが一般行政職の一例でありますと言うと、非常に間違つた感じをみんなに與えるおそれがある。それで少くも五十問ぐらいなければわからない。五十問ぐらい出してもまだ正確度は少いのでありまして、普通百問出しますと、それで全体として総合的にその人の価値を判断することができるのだそうでございます。それで百問というものを三時間とか三時間半でこなすために、ああいうような答えが五つぐらいあつて、それにしるしをつければいいという方法も、それから生れて来ておるのであります。それでそういう例示をするということは、かえつて間違つた観念を與えるおそれがあるということが一つと、もう一つは、かりにそれが正鵠を得たといたしましても、それを聞く人と聞かない人とがあると、受験者に甲乙がついて、公平を期することができないというのが、この理由でございます。それでわれわれの試験には、受験者に全部絶対に公平であるということが何よりも大切なのでありますから、それが公平を欠くというようなことは、これは最も注意すべきことであるのであります。それでそういうことを聞きましたから、はなはだ残念でありますけれども、中曽根さんの御要求にどうも鷹ずることができない。そういう次第で、あしからず御了承を願いたいと思います。
  34. 中曽根康弘

    中曽根委員 ただいま山下人事官から所見を承つたのでありますが、私は大いにこれを遺憾とするのであります。ただいま例示することが不適当であり、それによつて誤解や何かが生ずる。こういうことを第一点におあげになりましたけれども、しかしたとえば総務課長なら総務課長という職種に対しては、これこれの百問の試問が出るのだと言えば、総務課長に対する試問についてはこうなる、しからば気象関係についてはこうなるだろう、弘報についてはこうなるだろう、こういうような推定もできるのであつて、そういう心構えを持つて読めば、必ずしもそれが誤解になつたり、試験の結果に悪い影響を及ぼすということは起きないと思います。  第二番目に、聞いた人と聞かない人によつて、不公平を生ずるとおつしやいましたけれども、それは確かにそうであります。たとえば人事院の公告によつて試験を受ける人と受けない人、公告を見た人は受けるが、見ない人は受げない。こういう不公平すら拂拭できない不公平というものがある。聞いた人と聞かない人というものを持つて来れば、しからば人事院が公告して、たとえばこういうような試験をやるのだと、前もつて一般に知らしておくということが、一般に安心感を與えるゆえんであるし、のみならず人事委員会として、行政府を監督している地位にあるわれわれ国会の一委員会として、われわれが聞くということは、これは不公平とか何とかいうことを離れたわれわれの職務であり、責任である。その実際的な受験者の立場のみならず、もつと大きな国会としての職責という大きな立場から、これを当然話してむらわなければならたいと思います。どこの国の専門家か知りませんけれども、わが国においては国会最高の権威であり、国憲の最高機関である。この国会が筋の通つたことをお願いして、それが通らないということはあり得ないと思う。のみならず過般星島委員長にお供いたしまして、私はマツコイ氏に会つた。このときにマツコイ氏の仰せられるのには、国会の権威は非常に尊重する。そして人事院人事院規則制定その他によつて、独断に流れないようにするために、事前に情報を国会に対して連絡をする。それらの措置は当然やるべきであり、国会が自分の権威と自信を持つてそういう圧力というか、インフルエンスを人事院に及ぼすことは当然のことである。国会の実力の問題である。こういう明確な御答弁があつた。そういう点からしても、どこの專門家か知りませんけれども、先にわれわれに話した考え方と違うようなことはあり得ないと思う。以上の理由をもつて、私はただいま山下人事官の御答弁に対して、不満であり、私は私の要求を断じて捨てないということを申し上げまして、重ねてわれわれにこの前の要望を公表していただくことをお願い申し上げます。
  35. 山下興家

    山下(興)政府委員 中曽根さんからかねて御要求がありましたが、実はこの試験と申しましても、試験専門家を養成するのに非常に長くかかるのでありまして、これは非常な専門的技術なのであります。われわれのところで任用局、ことにその中の試験課というものが、アメリカの専門家について一生懸命に研究して、すでに二年になるのであります。二年になつてもまだようやくひとり歩きができるかというくらいな程度でありますが、アメリカから専門家が司令部の方に数名来ておるわけであります。その人が朝から晩までといつていいくらい、われわれの方の指導をしておるのであります。細大漏らさず実は指導を受けて来ておりまして、ある程度ひとり歩きができようかというくらいなことになつておるのであります。今官吏に対して標本を一つずつ出せばいいのではないかとおつしやいましたが、実は今は一般行政というものを全部に課すわけでありまして、一般行政は一科目だが、その一般行政という一科目の中でも、今申しましたように七つも八つもいろいろな分科があるのであつて、それでそこの予算の問題が出た場合と組織の問題を出した場合とは、全然形が違つて来るわけなのであります。それで全貌を示すような試験問題ということは、ちよつと不可能になつて来る。問題はああいつたかつこうだから、特別な問題だろうとお考えになるでありましようが、どんな問題でもああいうかつこうで出せるのであります。たとえば物理の問題でも、化学の問題でも、あるいは法律の問題でも、はげしくなりますと、英語の問題をこのごろみなああいうふうに出しまして、やはり五つの答えを書いておいて書くということであつて、問題それ自身には、今までわれわれが考えておるのと何ら違いがないのであります。この数が三つとか四つとか、あるいは数箇の問題を出すのでは、当る場合と当らない場合があつて不公平だから、それでこの際百違つたものを出せば、大体その人の性格がわかるだろうということで、数を多くするということが特徴なだけであります。そういうわけでありまして、これは全然専門に属する高度の技術であるのでございまして、その信用といいますか、何かをひとつお認め願えれば、非常にけつこうだと思います。
  36. 中曽根康弘

    中曽根委員 確かに試験の問題は非常に技術的な、また新しい複雑な問題があると思うのですが、そういうふうにむずかしい問題であればあるほど、国会はあずかり知らなければいけない。そういうむずかしい問題は国会の関するところではないから、われわれに白紙委任状をくれろ、こういうような山下人事官お話ですが、それは国会の責任をみずから放擲する行為であると私は思う。従つてただいまの山下人事官のお言葉に対して、私は了承することはできないのであります。そういうような議論を抽象的にしているよりも、直下面前に、こういうものですと言つて見せさえすれば、すぐ解消する問題なんです。ここでやたらに議論や問題をとりかわしたつて意味ないのです。だからいつそのことはつきりここで、こういうものだと見せたらどうですか。そうしたならば五分で済む問題です。私はそういう措置をあなたに強くお願いいたします。
  37. 山下興家

    山下(興)政府委員 私も実は常識的に考えるとその通りだと思いまして、この前中曽根さんから言われました時分に、いい考えだろうと思つてつたのでありますが、なるほど専門家に聞いてみますと、なかなかむずかしいことがありまして、ことにそれが公平を欠く、公平でないおそれがあると言われると、それが試験の生命であつて、公平でなかつたら試験というものは全然価値がないものであり、またことに人事院としましてもその価値を失うわけでありますから、どうか、示すことは簡單でありますけれども、公平が保てないとなると大問題でありますから、あしからず御了承を願いたいと思います。
  38. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は何も出す試験問題をカンニング的に示せというのではない。国会議員としての職責上、エキザンプルを示せというのだ。それで公平が欠けるというのならば、それをあなた方は公告の機関を通じて、天下に公告して知らしてもいい。ともかく天下人心がきようきようとして不安にかられているのは、その問題なんですよ。だからそのためにかなりの金がかかつてつても、その不安を解消するということの方が、はるかに有益なことだろうと思う。ただいま山下さんのお言葉をいろいろ聞いてみると、私は人事院というのは一体どこの国の役所かと思う。まさかほかの国の役所ではないと思うのです。国会に来て、ああ承知しました、しかるにしばらくたつてから、どうも都合が悪くなつてできません。こういうようなふらふらした態度をとつておるから、政府にばかにされて、七千八百円を要求しているのが、出るのか出ないのかわからないような態度をとられる。もつと人事院日本政府の機関として、毅然たる態度をとつて、われわれの所信にあなた方が共鳴されたら、職を賭してもがんばるという気魄を示していただきたい。向うのサーヴアントみたいな観念や、今までのやり方というものは、この際ぜひ私は粛正して、そして権威あるところを示していただきたいと思う。そうしなければわれわれはあなた方がいかにいい勧告案を出しても、ほんとうの勇気をもつて支持するだけの迫力が出て来ませんよ。われわれは好意をもつて一般公務員生活を思うから、人事院を支援しておるのです。しかしその根本の人事院がもう少し権威と迫力を持つてやらなければ、全然公務員の大黒柱というものはなくなるわけです。そういう点からしても、この試験の問題のエキザンプルを示すか示さないかということは、人事院の腕前の見せどころですから、大いにがんばつていただきたい。
  39. 山下興家

    山下(興)政府委員 これは私どもはどこに真理があるかということのみを追求しておるので、自分が言うことが誤りであるならば、何べんでも訂正する。しかしそれが誤りでないと信じたらば、だれが何と言つてもこれには従わない。たとえば七千八百七十七円と私どもは申しまして、その数字が誤りがあるのじやないかと言われるならば、それがどんな子供が言いましても、最大の注意をもつてこれに応ずるのであります。しかしその数字に誤りがなくて、ただ政治的にそれはだめだから減らせ、こう言われても、決してそれに応ずるものではないのであります。しかし今の試験の問題は、われわれの今までの試験考え方より、非常にアメリカの方は進歩しておりますから、それでその進歩しておるものを、われをむなしうしてこれを学ぶということは、私は真理を追求するゆえんだと思います。それによつていろいろなことを学ぶことができるのでありまして、決してそれは一つの国が一方の国に頭を下げているとか何とかいうような意味はありません。
  40. 中曽根康弘

    中曽根委員 これはあまり議論しても時間がもつたいないから、私はここで発言を打ち切りますが、実はわれわれはその進歩しておるのを教わりたい。山下さんの頭だけにとどめておかないで、われわれを人事院と同じレベルまでぜひ引上げていただかなければならないと思います。そういう意味でもう一回山下さんの毅然たるところを示めされまして、われわれの期待に沿うように、さらに努力を重ねられることをお願いいたします。
  41. 星島二郎

    ○星島委員長 柳澤義男君。
  42. 柳澤義男

    ○柳澤委員 ただいまの山下人事官の御説明に、専門家の論によればという言葉がしきりに出たのですが、その専門家というのは人事院専門家なんでしようか。それともどこかほかの、今言われたもつと進歩した国の専門家の御意見なんでしようか。そこを伺いたい。
  43. 山下興家

    山下(興)政府委員 私ども人事院では、試験というものは非常に重大現しておりまして、任用局を設けて、その中に二百人以上の専門家がおります。それで私どもは全然新しい試験の仕方を知らなかつた。ところがアメリカでは非常にこれが進歩しております。一生その試験というものに没頭しておる、まつたく専門にやつておる人がたくさんあるのであります。そういう人が幸い司令部に来ておりますから、われわれは毎日薫陶を受けて、もうすでにりつぱな専門家になつたのでございます。それで専門家という意味は、どちらの専門家も含めての意味であります。
  44. 柳澤義男

    ○柳澤委員 私お尋ねいたしたいのは、その専門家という意味は、この試験について委員制度をおとりになる意味委員に属するのではないのでしようか。つまり試験をする人を、任用局の職にある多数のそういう人というだけでなく、つまり試験をする人の責任を明らかにした、一つ試験委員制度をおとりになるのではないでしようか。そこをはつきりしたいと思います。
  45. 山下興家

    山下(興)政府委員 今までのところは、すべてこういう試験は、その学問の専門家を集めて、そしてそれを委員等にお頼みしたのでございます。しかし私どもの方で試験をいたします場合には、任用局というものがあつて、その任用局の中に企画課、試験課、審査課というあがいろいろ置かれておる。その課におる者が全部専門家なのでございます。そしてそれは問題をつくる専門家でございまして、ちよつと普通われわれが考えますと、問題をつくるのは、その道のエキスパートでなくては問題ができないだろう、またそれを審査するのも、専門家でなくてはならぬだろうと、われわれは普通考えるのであります。そうでなくて、問題をつくるという専門家なんでございます。それがまた技術的でございまして、それはその道のエキスパートでなくても問題ができるし、審査も簡單にできるというところが非常に進んでおるのであります。だから何の問題をつかまえてでも問題ができる。たとえば本を一つ見まして、その中から問題を選ぼうか、こう思つて、どういう人にどういう問題を出そうかというようなりことでも、その道の専門家でなくてもできるようになつておるのであります。人事院の中でもその連中が問題をつくりまして、その問題を完全に保管しておいて、ほかの局は一つもこれに手をつけないのでございます。それでどういう問題が出たのか、どこに保管してあるのか全然知らないので、これは完全にそこを遮断いたしまして、金庫のつ中に納めて、そして試験をしてしまつて、もう済んだら、普通はだれにでも見せたらいいじやないかという考えがあるだろうと思いますが、そうでなしに、全部一つ残らず取上げて、また金庫の中にしまい込むのであります。結局そして何十万という問題ができますと、その中からこの問題あの問題とよつて、相手に適するようなものをここに出して来る。一つ問題を出しまして、それでもうおしまいでなくて、その問題がどういう影響があつたかということまで研究するのであります。という意味は、ここに五つ答えがありまして、その中の第三番目がわれわれは正しいと思つていたところが、結果を見ますと、三番目の答えができない人が何人かある。また五番目にうんとたくさん答えが出て来た。こういうようなことになると、三番と五番とが正しいのではないだろうかということをもう一度検討するそうしてこれは両方とも正しいなと思つたら、両方答えたどつちでも正しい、こうするのであります。それでわれわれは第三がいいと思つてつても、第五に大部分が行つたら、これは五の方が正しいかも知れない。そうすると三をやめて五にする。そういう試験試験をしまして、それでこれはどういう連中に何人ぐらい試験をしたら、こういう効果があつたということをずつと書きしるしまして、貯蔵するのであります。だからその金庫はわれわれも寄りつくことができない。だれも寄りつくことができないようになつてつて、完全に秘密を保つているわけであります。
  46. 柳澤義男

    ○柳澤委員 ただいまのこまかいお話はよくわかりましたが、私のお尋ねしたいのは、今のお話ですと、任用局の局員全部が専門家となられて試験をするのだというようなお話でございました。しかしながら私のお尋ねしたいのは、いやしくもこういう大きな試験をするのには、試験をする者の責任というものが明らかにされないといけないのではないか。従つて試験委員という制度でも確立されてやるのか。ただ漫然任用局に属する参考人がいろいろ発案をして、つそれを任用局のどなたかが金庫の中に納められるというお話でありますが、それは人事官が責任を持つつてこれを遂行されるのか。あるいは任用局の局長かどなたか責任を持つて試験に当られる責任をとるのか。委員制度でないとすればなおさらのこと、この出題、採点、秘密保持というような問題についても、責任というものが明らかにされなければならぬと思います。一番恐れられる問題は、出題の方法、採点等についての、もとより厳密さということが一つ、もう一つはこの秘密保持、出題せられる前に、でき上つた問題が漏洩されるということがもしあつたとりすれば、これは受験者にとつては致命傷でございます。従いましてだれかりそういう試験をする場合の責任者、すなわち旧来で行けば高等試験委員のごとき委員というものが、全般の責任を負うわけであります。またいやしつくも責任を持つ人は、試験をする以上、その能力についても委員となり得べき人、今のお話ですと何かたくさんの専門家がおられるということですが、その人たちの能力自体もやはり問題になつて来ることであると思います。ことに第二次試験の場合におきましては、直感が特別に採点の結果に影響するのではないかといたしますと、そこに試験をする人というものがどだいきまらない。あるいは少くとも秘密を絶対保持して、最も適切な出題から採点までされるというためには、責任の所在が明確でなければならない。ところがおつしやられるように人事官さえも寄りつけないように、ただ一局を区切つて秘密を厳重にしておるということになりますと、何か委員制度でないようでもありますし、またお話のようにたくさんの専門家の人が委員であるかのようでありますし、しかしまたそのおつしやられる山下人事官さえも寄りつけないようになつておるということにおきましては、まことにこの責任の所在は不明確である。かりにそつうたくさんの人が、だれが出したかわからないようなぐあいの問題で、ただ雑然となつておる場合におきまりしてつは、おそらくこれは印刷に付されるものではなかろうかと思いまりす。というのは、数箇所で試験をする母上、同一の問題ではあるいは印刷に付されるのではなかろうかと思いますが、そういつた場合には間々漏洩のおそれがある。こういうことに対する責任はどなたがどのようにして負われるものであるか。この制度の根本をお伺いするものであります。
  47. 山下興家

    山下(興)政府委員 今柳澤さんからお話がございました秘密ということはり、私どもの命としておるものでございましても、もしも秘密が多少でも漏洩するならば、これは不公平である。不公平であるということはすなわち試験の生命を断つものでありますから、秘密ということは非常に厳密にやつております。その行き方といたしまして、問題を出す人も限定しておる。この種類、この種類というふうにみな限定しておりまして、その問題以外の問題は知らない。自分の問題だけしか知らない。但しこれはその学術の専門家でなくて、問題をつくるという專門家、これはまたふしぎなので、今までわれわれ考えられなかつたのでありますが、問題をつくるという技術がある。それでそういうふうにしますけれども、最後の仕上げはやはりちよつとあぶなげがあるおそれもありますから、その道の専門家を委嘱しまして、最後に目を通してもらう。それで間違いがないかどうかということだけは普通やつております。それでありますからこれは委員制度というものは使わない。委員制度というのは、最後ちよつと目を通してもらう人は、委員制度のかつこうはありますが、問題をつくる人自体は問題をつくる専門家なのであります。それで非常に高度の発達を遂げたものということだけは申し上げておきます。それから責任の所在でありますが、任用局長が責任の位置に立つております。もしもこれが漏洩すると、いうようなことがありますと、それは任用局長の責任であります。それから人事官は総体的に管理はいたしますぷ、私の申し上げましたわれわれも近づくことができないというのは、それを持つております金庫のそばには寄りつくことができません。またひとつ問題を貸してみてくれとか何とかいうことは、絶対に許されないのであります。それですから、直接の責任者は任用局長でございます。しかし今のようなわけて断りますから、試験課長は問題は知つております。しかし局の中で企画課長は知らないのです。それから審査課長も知らないのでございます。そういうふうに非常に小さな範囲に限定しております。印刷は特別な場所で印刷いたします。それはどこで印刷しておるかということはちよつと申し上げかねますが、印刷しておりまして、そこは八時間勤務で三交替で、それを見張つておる。それを全部見張つておりまして、周囲を全部きれいにしまして、紙きれが三つもないようにして、三交替でずつと警戒しておる。だからそれらの漏洩ということは絶対にないことを保証いたします。
  48. 柳澤義男

    ○柳澤委員 どうもただいまの説明では、非常に漏洩の危険性を感ずるつのであります。一例を申し上げますと、たとえばただいままで行われておつた高等試験の場合、私も行政、司法をやつたものですが、問題は、試験委員といえどもわからない。行政なら行政、憲法なら憲法、一科目を三人または二人の委員が任命されて、全責任を負うのですが、その二人か三人でさえも、どういう問題が出るかということは、おぞらく五分か十分前にならないとわからない制度になつております。これは秘密保持を厳格にするために考えられた制度であつて、非常に名案だと思うのであります。それは御承知通り出題は、試験が開始になつて、全部受験者が着席して、初めて別室に試験委員が集まつて、そこで試験の問題を練る。初めてでき上つた問題をいかなる紙にも書かずに、単に大きな紙にさらさらと書いて、それを巻きつけて上へ上げて、礼とともにばらつとおろす。それが五分か十分前ですから、何人もそれは漏らしようがない。試験委員会議制ですから、相手方が何と主張するかわからないから、問題がそこにはつきり生れて来ない。これくらいの厳密な試験をしておる。印刷してではない。十日も三日も前に試験問題を協議するということさえも許さない。そういう厳密な方法をとられておつて、初めてあの試験というものが国家試験として納得される。そして秘密も漏洩されないでおるのですが、ことに大学の試験のように一々かえるのであつても、印刷させるためにそれがどつかで漏れるということは、毎年起る問題であります。おそらくただいまお伺いした方法で行つたならば、いかに八時間制度でどなたが見張りましても、印刷はやはり植字工が字を拾つて植えなければならない。紙の上にその題というものは現われるのであります。しかもこの数たるや、相当受験者数に応じてたくさんのものであります。紙一枚外へ持つて行かれなくても、どういう問題であるかということは植字工にも印刷工にもわかるし、紙をまとめる人にも配給する人にもわかるでありましよう。でありますから、そういうふうにすしればおそらくこの秘密というものが、人事官のおつしやられますように、きわめて進歩しておる。絶対秘密だと仰せられても、ずいぶんあぶなかしい問題ではなかろうか。むしろ日本の高等試験制度の方がいかに進歩しておつて、いかにその秘密が完全に保たれておつたかということを、私は今思い及ぶのでございますけれども、そういう点から行きましても、ただ専門家がたくさんおるとか、先ほどおつしやられましたように局長が責任者である。あるいは試験課長だけが少くとも知つておる。あるいは最後に委嘱せられたところの專門家、すなわちあなたのお言葉で言われる委員というむのが、一ぺん目を通すという段に至りましては、これは問題に目を触れる人はずいぶんだくさんになるのじやなかろうか。受験される人が次官、局長というに至つては、きわめて数が少い。これは目を通す人の方が何ぼ多いかわからぬというような、受験者よりも多い人の目に触れて、これが先ほど言われました通り、いかに人事院がその秘密を保つことが生命とおつしやられましても、科学的な秘密保持の方法がとられておらないということに解釈してよろしいことになりましようか。  それからもう一点、そういう目を通す委員を委嘱するというには、何か委員に対する――たとえば過去の高等試験委員制度めごとく何か法規的な措置、かりに人事院規則にしても何にしても、そういつたような法規的な一つの根拠があつて、責任の所在を明らかにじ、局長なら局長が任命するとか、あるいはそういう人がどういうふうにしてこれを管理するという、厳密な法規的措置を講ぜられてあるのでありましようか。この点をもう一ぺんお伺いしたいのであります。
  49. 山下興家

    山下(興)政府委員 ただいまの柳澤さんのおつしやる秘密保持のことでありますが、私ただいまは一般的の話をちよつといたしましたのですが、一般にはたとえばせんだつて行いましたような五級職、大級職というような採用試験には、今の委員を委嘱しているのであります。ところが今度の附則九條の試験になりますと、それができない。だれを信頼してよろしいかということになると、実際ないのでございます。それで各官庁に行つて、普通だつたら上の人と相談をするのですが、今度は上も下も全部それに関係するわけでありますから、これもお願いすることができない。それで今度は実は専門家にも聞いておりません。但しそのかわり司令部の専門家に相談をいたしました。それでまず委員から漏れるという心配はなかろうと思います。たくさんな問題集をもちまして、今度は全国十四箇所にわかれて行くのであります。その場所に行くまで、持つて行つた人は、何があるか全然知らないのでございます。封がしてある。そうしてそこにみなが集まりまして、その目の前で封を切りまして、そうしてこれを配る、ようになつております。今度は試験をして、それが済むと、立つてこれを持つて来ることを許さないで、号令によつてその場所に全部の紙を置きまして、そうしてこちらからずつとまわつて全部を回収してしまつて一つでも回収漏れがないようにしてあります。それですから問題集とか何とかいつてつておるのは、これは相当インチキがあつて――それは覚えておればしかたがないのでありますが、百問のうち何問覚えますか知りませんが、覚えておつて書くかもしれません。しかしそれの第何問が正答であつた、正解であつたということは、だれも知らないのでございます。新聞などに、何とかお茶をこぼしてどうやらこうやらということがよくありますけれども、それはだれもみなこれが正解だろうと想像したのであつて、正しいものでは決してないのでございます。私どもはそれほど非常に精密に秘密の保持をやつております。そうしてまた柳津さんはちよつと見ればわかるじやないかとおつしやいますが、どこでやつておるかは実は申し上げられないのでありますが、それを見ても何ら興味を持たない人を相手にしておるのであります。それだけをひとつ御了承を願いたいと思います。
  50. 柳澤義男

    ○柳澤委員 同じことを繰返しても何でありますが、そういうふうな封を切るまでわからないというようなことは、これはあたりまえでありまして、あけてぶらさげてあつたら、およそ受験する人もないのです。今のお話程度であれば、これは普通の学校の学期試験程度の秘密保持であります。むしろ私なども試験をしている方ですが、もつと厳格にやつている。しかしながら私はそれを申し上げるのではない。旧来日本に行われたところの高等試験のごとく、非常に進歩した、きわめて秘密の維持できる方法をおとりにならないで、そうしてこういう何か一向試験制度としての確立がないような試験のやり方では、秘密は保たれていないであろう。これを心配するものでありまして、もはや印刷をどこでやるとか、あるいは封をしておくとかいう程度のことを、再び御答弁を願つてもしようがないのでありますが、ただかくのごとき重大な試験に、粗漏きわまりないお答えを今伺つた次第で、この点非常に不満に思います。しかも私の聞きたいのは、よく任用局長がそれに対して全部の責任を持つと同時に、その上に位する人事官がこれに一指も触れられないというような御説は、いやしくも人事官と任用局長の公務員としての法規上の立場、地位というものから考えますと、私は上司の立場におありになると思うのですが、一般公務員の立場における上司という場合において、それが特に一骨も触れることができない、指揮監督がまつたくできない。任用局長において全責任を持つものだという以上は、これはあたかも裁判所における判事の独立性のごとく、法規によつて完全な特別の地位を保持されなければならないのでありて、もしそれをしいて見ようとすれば、人事官はむしろ責任をとるべし、内容においても指導すべしというような、上司の地位にあるのではなかろうか。かくのことしき試験制度に対する、特に任用局長をもつて不羈独立の地位を與えるものは、いかなる法規的措置によるものか。この法律的根拠をきめておありとすれば、どういう法規的根拠に基いてそういう地位をお與えになつているかということを、はつきりさしていただきたいのであります。
  51. 山下興家

    山下(興)政府委員 どうも私の説明が足りなくて、私の言つたことが了解してもらえなかつたことを残念に思うのでありますが、私の申しました責任者と申すのは、直接の責任者という意味でありまして、それを監督するのは当然私どもがやるのであります。また実際に問題は見ます。見ることは見るのであります。しかしてわれわれは専門でないものですから、多少のことは言えますが、なかなかそこに立ち入つて、これをこうかえろというようなことは、私ども専門を尊重する意味において、よくよくの場合でないとやらないのです。しかし責任はむろん事務総長もありますし、人事官も全部責任を持つております。それですから事務総長も、今度の試験は受ける資格を持たない。そうしてまた試験課長、任用局長も今度の試験には受けることができないようになつております。
  52. 柳澤義男

    ○柳澤委員 ただいまのお話でありますと、法規的根拠がないという結論になるのですが、そうお聞きしてもよろしいのですか。一般上司の地位において見ることができるとおつしやるのですから、特別な試験委員に対する責任を明らかにした一つの法規的措置はないとおつしやられるのでございましようか。
  53. 山下興家

    山下(興)政府委員 それは別にこう見てはならぬとか、示してはならぬということはないのでありますけれども、当然任用局としての職責上、事務総局内の分課規程によつて、責任が明らかになつておるわけでございます。その以外に特別なものはありません。
  54. 柳澤義男

    ○柳澤委員 そういたしますと今次の試験制度は、根本において委員制度もなし、最初におつしやられたときには、私どもでも近づくことが許されないというほど、人事官自身がそういうことに厳密だとおつしやられましたけれども、今のお話の結論から行きますれば、何ら帰属した責任を法規的にきめてあるものでもなし、要するにこれは任用局の普通一般の仕事として、ただそういうような取扱いをするというように聞けますので、この重大な試験といたしましては、まことに秘密保持の点におきまして心細い。また試験の出題、採点等の公平を期するという上からも、責任の所在――出題者の作題は先ほど申ざれた通り珍しい制慶で、たくさんの人で問題をつくりましても、どの問題を出すかという出題の責任も、だれにも明らかになつておらない。総じて事務として局長が責任を負うというに至りましては、ずいぶんずさんな試験のように考えられますが、これ以上申し上げても同じお答えかと思いますので、私ははなはだ制度の上においてずさんきわまりないと申し上げられるこの試験を、何とか漏洩その他不公平といつたような重大な結果を来さないように、十分の御覚悟と責任を持つて、多くの期待する公平な結果を上げられますように御盡力を希望して、質問を終ります。
  55. 星島二郎

    ○星島委員長 なお試験制度その他に関しまして御質疑があろうと思いますので、これはこれで打切らないで、この程度にしておきまして、今日は朝よりお待ちくださつた説明員の方たちから、この機会に説明員として聴取を願いたいと思います。御出席の方の順序は、到着順というような意味で順次御説明を願いたいと思いますが、一説明員の発言は大体二十分以内でお願いしたい。なお議事の運営は委員長に御一任願つておきます。最初に建設省の文書課長小林與三次君にお願いいたしたいと思います。
  56. 小林與三次

    ○小林説明員 私建設省の文書課長でございますが、ただいまから申し上智ます意見は私個人の意見でございますから、役所とは全然関係ございません。その点あらかじめ御了承願いだいと思います。時間の関係で十分意を盡せぬかもしれませんが、ちようど最近、ただいまお配り願つております自治日報という新聞に、試験の問題についてある論文が出ているのを見まして、私としても非常に同感を禁じ得ないのでありまして、時間がありませんので、その紙面をよくごらんを願いたいと思つておるのでございます。  私の考えによりますと、附則九條の試験の問題につきましては、まずどういう点からこれを問題に取上げるかという点で、二つの見方があろうと思うのであります。第一点は、いわば法律のわく内でものを考えるかどうか。公務員法の運用の問題と、公務員法に対する立法論の問題になると思うのであります。申し上げるまでもなく今度の試験公務員法に基く試験でありますから、この試験として最近人事院が御発表になつております方法が、はたして公務員法の趣旨とか精神とかいうものと完全にマツチしておるかどうか。運用上もつと考慮すべき余地があるかないかという点であります。もう一つは、立法的に第九條そのもの、ないしそれを通じて公務員法そのものについて、なお再考慮すべき余地があるのじやないかどうかという点であります。もう一つ第二の見方は、今度の試験を軍に事務的、技術的と申しますか、ほんとうにそれぞれの官職にふさわしい知識、経験、能力を持つておる人間を、最も公平に民主的に選ぶ。そういう試験制度を、技術として申分ないかどうかという技術的な問題であります。もう一つは、そうでなしに、むしろ終戦以来引続いて来ておる現職の高級の公務員全般を一つスクリーンをして、ほんとうに民主的な公務員として、今後日本の行政を担当して行くにふさわしい適格を持つておるかどうか、それをひとつ根本的に審査する必要がないかという、いわば政治的な考慮であります。こうした点をそれぞれ分析して考える必要があろうと思うのでありまして、この試験についていろいろあります意見は、相当ごつもやになつておるのじやないかと考えるのであります。しかしいずれにしましても、もうすでに試験が目睫に迫つておりまして、大体受付がこの二十四日で終るわけでありまして、現在この段階においてはたしていかなる措置を今後講じ得るか、講ずべきかということになりますと、おのずから問題の解決はきわめて限局された範囲にとどまるだろうと思うのであります。  まず第一番に、その技術的な点からこのやり方について私見を申し上げますと、この試験は、人事院の発表によりますと、筆記試験及び人物考査をもつて行うことになつております。ところがこの人物考査とは一体何を言うのかというと、これは人事院が調査した結果の表示によることになつておりまして、それは試験の対象となるような上級の官職に適する人物であるかい左かを表示する、こういうことが人物考査の内容になつております。しかしながらこれによつてはたしていかなることを具体的に考えておられるのか。いかなる方法で人物考査を行い、しかもこれを筆記試験とどういうからみ合せで採点をしようとしておられるのか。そういう点は全然不明になつておるのであります。しかしながら今度の重大な試験問題につきまして、はたしてそれがどういう内容で、どういうからみ合いを持つておるかという問題は、当然最も客観的で、最も公開的であるべき試験性格上、もつとこれははつきりさるべき問題じやないかと私は考えておるのであります。その点はまずそれくらいにしまして、どう考えて見ましても、そういう人物考査はいたしますが、結局は官吏の任用の試験の成績順できまるということだけは、動かし得ない事実のように見受けられるのであります。どういうりつぱな試験かわかりませんが、結局試験の成績順できまるわけでありますが、そこに一つ問題がある。  第一番に、いかなる試験の内容かわかりませんが、それによつて二千何百ある、それご専門を異にし、それぞれ職務の内容や責任を異にする各官職にふさわしい適格性を持つておるかどうかということを、はたして一ぺんの機械的な試験の成績によつて決し得るかというところに、根本問題があろうと思うのであります。これはそもそも公務員法の三十三條の一項によりますと、公務員の任用というものは、その者の受験成績、勤務成績、またはその他の能力の実証に基いて任用を行う、こういうことを明示しているのであります。この任用の根本原則にはたして合致しておるかどうか、私はこれはきわめて疑問だと思うのであります。  それからその公務員法の四十五條を見ますと、試験の目的は、職務途行の能力を有するかどうかを判定するということになつております。今度の筆記試験によつて、はたしてそれが判定し得るかどうか。この考え方は、おそらくは高文万能論という問題がかつてありましたが、それ以上に試験万能論でありまして、その試験によつてすべての適格性を判定し得るという、いわばこれは非常な一つの独断がそこにあるのじやないだろうか、こういうことをひそかに考えているのであります。  第二の問題は、今度の筆記試験は、各官職を通じて行うことになつております。それでそれぞれその官職によりましては、次官、局長、次長、課長というふうに段階が、責任の態様、職務の内容に応じてわけてあります。そういうことを一切無視して、次官も課長も同一の試験でやる、こういうことになつているのであります。ところが一体、これははたしてそれぞれの官職に通ずる試験で、しかも次官の適格性、課長の適格性ということをそれぞれ判定し得るか。資格試験でなしに、これは任用試験というお触れ出しでありますから、どうしてでもそれぞれの官職を通じて試験が行われることは、これは解せないのであります。いわばこれは試験制慶と申しますか、あるいは試験制度の背後に予想されている職階制度というものと、根本的に矛盾するやり方だろうと思うのであります。現に第一次試験は、一般的な行政能力を調べるのだ、こういうことになつております。一般的な行政能力ならば、これはいわば資格試験の問題であつて、決してそれぞれ次官、局長にふさわしい任用試験の問題じやなかろう、こういうふうにむしろ断定し得るものじやないかと思うのであります。  第三番目に、官職の分類の仕方であります。これは六十の官職にわけてありますが、それがばらばらでありまして、どうもそこに統一性がない、一貫性がないように見受けられるのであります。たとえば労働と警察が一本になつている。警察の中には文書や人事や会計までもちやんと入つている。その他のものではそういうものが別々の官職になつている。そうかと思うと、行政管理方面の面と工学の面では、電力事業と電気がわかれ、鉱業事業と鉱山がわかれているかと思うと造船のように、これと似た行政が一本になつている。また農林省の農業経済というような別な職類を設け、主要な官吏職を除いているかと思うと、そうでないということろもあるというふうに、この分類の仕方がきわめて一貫性、統一性を欠いておるのであります。     〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕  さらに第二次試験というのがあるのでありますが、第二次試験のあるものもあるし、ないものである。ないものの選択が一体どうしてき三つたのか。これは合理的な理由が、われわれしろうとには全然わからないのであります。たとえば気象とか観測とかいうむのが入つておるかと想うと、蚕糸、郵政、経済、調査というようなものは、第二次試験がいうぬ。どうもこれはまつたくわからないのであります。第二次試験は各職類についての専門知識を調べるということになつているのでありますが、今申しましたものについては専門知識はいうぬといヶのか、いつて試験のしようがないというのか、検査する方法が具体的にないというのか、そこらが全然わからないのでありまして、試験制度としてはまことにふに落ちない点だろうと考えるのであります。  第四番目が筆記試験の中味の問題でありまして、これは先ほど委員の方からもいろいろお聞き取りのようでありましたが、これは試験の中味の問題でありますから、問題を見なければ何とも申し上げるわけには参りません。しかしながら大体公務員法の試験と今度の高級官吏の試験とは、性質が違いますから、試験の問題は全然同一であろうということはもちろん考えられぬ。まつたくその内容を異にしていることは、きわめて容易に予測できるのでありまして、その点では、今までの試験問題集を見て、受験者が大騒ぎをする必要は毫末もないと考えられるのであります。しかしながらいずれにしろ、同じ人が同じ頭で同じような考え方をして、問題を作成せられるのでありますから、これは人事院に何か部外のわれわれのような者がうかがい知ることができない特別な智恵才覚でもあれば、きわめてふさわしいりつぱな試験問題が、それぞれ六十の官職類を通じて――六十のうち第二次試験がいらぬのがありますから、少し減りましようが、そういうものを通じて合理的なものが出されるとは思いますが、その点について重大な疑いを何人といえども持たざるを得ないのであります。さらに問題は、この試験問題の秘密性ということが議論されておりまして、問題の内容も、傾向も、方法も、あらかじめ明らかにすることはできない。しかも試験が終つた後といえども、絶対秘密で、明らかにされないはずになつている。巷間が触れているいろいろな書類は、全然インチキ、だということになつているのであります。一体そもそもそういうふうな試験問題が試験問題として適当かどうか。こういう問題が出たということがわかつたが最後、未来永久に使い得ないような試験問題は、はたしてそれぞれの官職にふさわしい責任能力を調べる試験問題として妥当かどうかというところに、根本問題がむしろあるのじやないかと思うのであります。大体役人の仕事は、十年かかつたつで必ずしも会得できるわけのものではないのであります。一度わかつたとたんに、将来役に使えぬような試験問題で、ほんとうの役人としての能力を判定し得るかどうかというと、これはきわめて疑問と言わざるを得ないのであります。  第五番目は任用資格の問題であります。今度の試験人事院総裁の発表にあります通り、平等取扱いの原則に基いて、広く人材を国民の間に求めて、官界の空気を刷新するということになつておりまして、競争公開試験ということが、その大きな旗じるしになつているのであります。ところがこれは旗じるしだけでありまして、実際問題は御承知通り、任用資格というものがそれぞれの職につい厳重に縛つてありまして、なかなか一般民間の部外者は入り得ないように文句が立てられているのであります。これはそれぞれ職類はそういう専門的な知識技能を要するのでありまして、だれがだれでも入り得るというわけのものでないことは明瞭であります。どうもそこに看板に偽りがないか。公務員法によりますと、受験資格というものを四十四條において、職務の遂行に欠くことのできない最小限度の客観的かつ画一的な要件として制限できるということになつているのであります。今度の試験は、受験資格はだれにも解放している。広いのでありますが、逆に任用資格を縛つている。そこがどうも制度としても少し疑いを持たざるを得ないのであります。いずれにしろ、一体何がゆえにこういうことをお縛りになつたか。おそらくはこの試験の結果に自信を持ち得なかつた一つの現われじやないか。この試験の結果、どういう人がどういう結果が現われるかわからない。めちやくちやになるかもしれない。これは困る。だからある程度任用資格の上で縛つておかなければいかぬ。試験だけは競争公開にするのだ。こういうふうな一種の試験の結果に対する懸念がおのずからにここに現われておるのではないだろうか、こういうことが想像されるのであります。なお任用資格の中身をそれぞれ探つてみますと、これも非常に困る。たとえば新しい官庁なぞにおきましては、任用資格のある者がきわめて少いのであります。これで行きますと結局さらに各省内部で、それこそところてん式というか、うなぎ登りというか、何年かやつてその次課長になる、次長になる、局長になるという形で、上つて行かざるを得ない構成になつておるのでありまして、これは公務員というものは将来そういう形で専門化、技術化するのが適当だという、公務員法のイデオロギーに基くのかもしれませんが、全部の官職がはたしてそういうことになつてよいのか悪いのか、これは一つの大きな問題だろうと思うのであります。  大体以上申し上げましたように、この試験の技術的な面におきまして、きわめて疑問があるのでありますが、そのほかになお任用試験として大きな問題の一つは、例の任用権者の選択権の範囲の問題であります。任用権者はこの試験の結果現われて来ます。しかもその試験にはいろいろと欠陥が多い。その結果現われて来ます成績順によつて、一切の人事任命権というものは事実拘束されてしまうのであります。一体それでたとえば政策の立案とか、あるいは行政の根本方針に関する次官以下の局長等の者が決定されてはたしていいのか。それではたして任命権者は行政の適当な運営と、行政の責任が全うできるのか、こういう大問題があろうと思うのであります。もともとこの試験制度は、スポイル・システムに伴う弊害を避けて、メリツト・システムをとろうという根本の理念があるだろうと思うのでありますけれども、それにしてもこうした最高の高級官吏について、この画一的な形式的な方策でもつて、はたして行政運営の責任を全うできるかということを、根本的に考える必要があろうと思うのであります。もつともこれは試験のやり方の問題よりも、もつと根本的に試験制度、あるいは職階制度というものの範囲、わくの問題だろうと思います。一体試験制度はどこまで適用すべきか、そういう根本問題に触れて来て、いわば運用論というよりも立法論に多少関連して来る問題なのであります。  さて、大体以上大きな問題だけを取上げまして、はたして今度のやり方は公務員法のねらつておるほんとうに科学的な人事管理制度を確立して、公務員の民主的かつ能率的な運用を期するために考えられたいろいろな任用制度、職階制度試験制度というものの根本精神から考えてみると、どうもむしろ根本的に矛盾背馳しておる面があるのではないか、こういうふうに私は考えられるのであります。しからばそうなつて来ると、附則第九條そのものの存在が問題になるのであります。一体附則第九條というものは、立法当初からこういう結果を予測しておつたのかどうか、そういうことになつて来ると思うのであります。これは立法者に聞かなければ、実はわれわれ部外の者にはわからぬのでありますが、私自身の推測をもつてしますと、附則九條は決してこういうことは予測しておらぬ。初めから別の考え方がある。それはどういうことかと申しますと、おそらくは附則第九條においては、ごらんの通り試験昭和二十三年の七月一日から二年以内にやるという建前になつておるのでありまして、そこに二年間の猶予期間が設けてあります。この二年間の猶予期間はなぜ設けたかというと、これはその間に職階制度なり試験制度なりというものが、公務員制度の基本制度として確立する、そういう前提があるだろうと思います。そういう前提制度が確立して、それに二年かかる。その後に全部の官吏を再エグザミンをする、こういう建前で来ておるものと私は推測するのであります。そういうことになつて来ますと、今度の試験は職階制度も確立しておらぬ、合理的な試験制度、任用制度もはつきりしておらぬ、こういう段階におきましては、その確立まで当然これは延期さるべき筋が、ほんとうの公務員法の精神だろうと私は考えるのであります。こういう重大な試験を、科学的な合理的な根拠もなしに、ただ思いつきということは非常に語弊がありますが、附則九條の期待がこうなつておるからやるのだ。これは法を執行する建前としての人事院としては、当然の責任かもしれませんけれども、そこには一つの根本問題があるのであつて、恒久的な、基本的な制度の確立と並行するという前提にのみ立つて、これは認容できる。そうするとその前提を忘れて、單にこうした矛盾の多い試験を実施するということは、科学的な合理的な制度を確立するという人事院の根本方針と、根本的に矛盾があるのではないかというふうに思うのであります。  しからば今まで申し上げましたような考え方だけで、今度の試験を考慮すべきかというと、私はそこでこれに対して前に申しました通り、今度の試験には何らかの一つの政治的な意図ということは非常に語弊がありますが、人事院総裁の発表にあります通り、この試験によつて旧来の日本のビューロクラシーというものを打破する。そうしてほんとうによい意味のよき幹部職員を得ようとするという、そのことが思い出されるのでありまして、実は現在の日本の官僚機構は、御承知通り戦争前から引続きそのまま残つておるのでありまして、そうした官僚の機構というものを、ほんとうに民主的な官吏としての適格性を持つておるかどうかということを審査して、いわば国内の民主化態勢確立のために、残された最後のステツプをこの際とる必要があるのだ。いろいろ諸般の内外の情勢を考えまして、そうした態勢を完備する必要が是が非でもあるのだ。そういうふうなもつと大きな別の見地の考慮というものがあるのではないか、こういうことを考えられるのであります。これは私個人の推測でありますが、私はそうしたものが考えられる。そういう見地から行くと、これはむしろ今こそ断行する必要がある。これを遷延することは、いろいろな立場から考えて適当でない。この時期に一度全官僚――全官僚でありますから、次官、局長ももちろんこれは含んで、全官僚を再審査をする。そうして国内の民主化態勢の確立を完了し得る態勢に置く。こういうことがきわめて大きな意味を持つておるのではないかと思うのであります。そこで問題はそうした大きなこの試験を実施しなくてはならない――政治的な意味を持つておるこの試験を、先ほどいろいろ議論がありましたような不合理な、非科学的な、むしろ自己否定的な試験方法でやらなくてはならぬというところに、今度の試験の悲劇性というか、喜劇性というか、そういう面が存在するのではないかと私は思うのであります。それでこんなことまで言うとはなはだ悪いのでありますが、しかもさらに皮肉なことには、先ほどいろいろお話が出ておりましたようなきわめて厖大な機構、そうしてきわめてすぐれた専門的な民主的な知識経験を擁した人事院が、二年もかかつて愼重審議をもつてしてでも、なおかつ職階制度とか試験制度について、今度の試験のような矛盾の多い、欠陥の多い研究の成果――成果というと語弊がありますが、研究の経過を示さざるを得なかつたというところに、むしろ公務員制度としての根本的な大問題があろうと私は思うのであります。  それなら一体そういう議論ばかりしておりまして、今度の試験について何とむ具体的な措置があるかないか。ともかくも、正月十五日に迫つた試験問題について、何らの考えがあり得ないかというと、私はこれについて一つ意見を持つておるのであります。それはきわめて妥協的で、一時的で、糊塗的であります。しかしながら今申しましたような大きな政治的な意味を果すために、全官僚の試験というものは行わなくてはならぬ。しかも試験を行うテクニツクとして、いろいろな弊害が考えられるのでありますが、そのためにはやはり確立されておる現行公務員法の線に沿うて、その公務員法の許すあらゆるテクニツクを利用して、なるべく弊害もなく、矛盾もなく、この大きな政治上の要請にこたえる方法がないものか。全然相談ができないかという問題であります。私はこれについてはこう考える。今度の試験というむのは、あくまでも現職の高級官吏の民主的な適格性を審査して、官庁の民主化を実現する、ほんとうに特殊の目的のための、今回限りの措置とする。その際に競争公開試験を入れて、一般の競争者を入れることはごうもさしつかえないのであります。ともかくも今回限りの措置といたしまして、この試験の結果、任用が終りましたならば、任用候補者名簿というものはただちに将来に向つて執行させる。そういうことがまず第一番であります。そうしてさらにこの試験の内容は、公務員法の許すところに従つて最も実際的に、合理的に――この合理的というのは、人事院のお考えになる合理的と、われわれの考える合理的とは違いますが、最も合理的に運用する、こういうことであります。それを具体的に言いますと、第一番に筆記試験の成績というものと、それからいわゆる人物考査というものをフイフテイ・フイフテイに扱つて、そうしてそれの合計点で成績順位をきめる。それが第一番であります。この人物考査というのも、これは人事院がやられるのではなしに、ほんとうの任命権者が、各官職にふさわしい能力を持つておるかどうかという評定成績というものを基礎にして考えるのであります。この点は公務員法のさつき申しました三十三條の一項の精神にむしろ合致するゆえんであります。民間の人の成績につきましては、これは人事院によつて、責任を持つて調べていただくよりほかにしかたがありません。それから第二番目は任用権者に対する例の任用候補者の提示を五人にするのであります。これはやや趣旨が違つて来ると思いますが、現行の公務員法によりますると、五人の提示というものが原則になつておる。今度のような受験者の少い場合は、少い方が筋だろうと思いますが、そこのところは目をつぶつて五人置くことを貫いていただく、こういうことでおります。第三番目は試験の問題のことでありまして、これは試験関係以外の者が容喙する限りではありませんが、何とぞ人事院におかれましては、人事院だけの形式的な責任感ということでなしに、はたしてこの試験によつて、いかなる者が官吏の高級官職の地位を占めて、それによつていかなる行政が今後運営されるか。つまり日本の行政の中身が具体的にどうなるか。それについての実質的な全般的な責任を肝に銘じて考えていただいて、試験の問題というものを考えていただく。これが根本で、これは人事院を信頼する以外には、われわれとしては何とむはやでないのであります。  大体以上申し上げました三点、これは私は今日のこの段階においても、決して不可能ではない。政府人事院とのほんとうの明識と合理的判断と、それに加うるに国政の運営を批判監督される国会の見解というものが加わるならば、今日の段階においてはこれはきわめて容易である。容易ということは語弊があるかもしれませんが、少くとも可能であると信ずるのであります。しかも少くともこの程度の最小限度の配慮ということがただちに行われることが、ほんとうの官僚の人事の公正、適正な行政の運営等のために、さらに率直に言つては、むしろ国家機関の信用のためにもと言つていいのであります。さらに言えば、わが国における良識、自主的な批判精神というものが残つておるということを示すためにも、その程度のことぐらいは必ずやでき得るもの、またしていただきたいものと、われわれとしては希望してやまないのであります。  大体以上申しましたような点で、今度の試験に対して多少の措置を講じても、なおかつ公務員試験制度の根本にはいささかも触れないわ今申しましたのは、今度限りの措置として特別な、例外的な措置としてこれを片づける。むしろ問題は今後の恒久的な公務員制度というものをどうするかということにさかのぼらなければならない。私はこの点につきましてこう考えて、結論的に簡單に申し上げますと、現行公務員制度の大黒柱、日本の大黒柱は、申すまでもなく職階制度人事院制度であろうと私は考えるのであります。この二つはそれぞれ必要であるし、この考え方はいずれも正しいのであります。しかしながら正直に申しましてこの二つながらが、いわば科学的な人事管理というものの確立というその理念とい方か、名前というものにとらわれ過ぎて、いささか妥当の範囲を逸脱しておるのではないかということであります。第一番は職階制度の問題でありますが、職階制度というものはきわめてこれは必要であります。職階制度の原理というものは是認しなければならぬ。しかしながらそれには一つの限界があり、原理的の限界がある。さらにこの職階制度をつくつたり、動かしたりする人間の能力というものも限界がある。今日は不完全でも、将来りつばな制度ができるかもしれない。しかし今日の制度として考えるならば、そこに越すべからざる人間的限界もあれば、なお原理上の限界もあるのではないか。この原理を乗り越えて、どこまでも妥当とすべからざる範囲までこれを推し進めようというところに、一つの根本問題があろうと思うのであります。きわめて機械的、反覆的、数量的事務と、政府の政策の根本や、あるいは行政運営の根本に関するような高度の行政活動というものを一緒にして、同じかつこうに、画一的に、同じ鋳型にはめる。そういうことは科学的というよりも、非科学的ということの方が、むしろ当てはまる場合があるのではないか。つまりとどまるべき限界を忘れた場合には、場合によつては非科学的にさえもなり得る。こういうこともあろうと思うのであります。私はこの点については先ほどいろいろ御議論が出ておつたのでありますが、われわれ日本人のすぐれた自主的の叡智によつて、最も進歩的な、最も科学的な職階制度の確立することを、それは衷心から期待するのでありますけれども、しかしながら他の何人といえども企及せず、これに追随ができず、しかもみずからもほんとうの妥当な実際的の結果を期待し得ないようなものに対して、無用の混乱を招くということは、やはり避けるべきではないかというふうに思うのであります。特にこの点につきましては、この前の国会から引続き審議されております職階法案は、今のような考え方そのままを進めて行けば、今度の試験に現われたような欠陥をそのまま恒久化するという程度ならまだ恕してよいのでありますが、それよりもなおそらくはさらにその何倍かの弊害を露呈するような可能性が、きわめて大きいのではないかということを心中恐れるのでありまする  第二番目は人事院制度そのものでありますが、これも人事院というものの性格から見て、ある程度行政機能的な独立性を持つたり、あるいは準司法的機能を持つということは、これは当然その性質上是認すべきことであろうと思うのであります。ただその独立性が行き過ぎて主張されまして、不当に強い一方的の権能を持ち過ぎておるというところに、問題の根本があろうと思うのであります。今度の試験も結局いろいろの問題もありますが、この人事院の不当に強い性格が、やはり今度の試験をもたらした根本原因の一つになつておる。こういうことはきわめて明瞭であります。特に今審議されております職階法案についても露骨に、しかも現行の公務員法から見れば、公務員法の規定に違反ではないかと考えるほどまでに、その権能が現われておる。職階法の中身は当然に法律規定してしかるべし。しかも最小限度以前に国会の承認を得ることくらいは、公務員法の規定の精神であり、内容でもあるのではないかと思うのでありますが、そういうことが無規されておるというところに、現われておると周りのであります。大体公務員法の試験制度というもの、あるいは任用制度というものの根本は、ここまでさかのぼらなければ、私はほんとうの解決はできないと思うのであります。しかしながらこれは今後の制度の問題でありまして、今度の試験とは直接関係はないのであります。  私は今度の試験について、二つの意味においで非常に大きな関心を寄せておるのであります。その第一番は、今度の試験の持つ技術的な欠陥によつて避けることのできない少からぬ犠牲者が出る。これは事実であります。その少からぬ落伍者を犠牲にして、日本国の内部の民主化態勢と、うものが確立したということに、大きなステツプが進められるということには、大きな関心を寄せざるを得ないのであります。  第二番目には今度の試験によつて試験制度あるいは職階制度というものに対する、のつぴきのならない実験の資料というものが提供される。しかもこの実験の資料というものは、二度と再び繰返してはならず、おそらくは繰返されることはないであろうところの非常に大きな材料が、今日これから何箇月かの間に提供されまして、そして新しい合理的な職階制度の確立と、人事院制度のあり方について、根本的な批判と検討とが行われるに違いないということを、私は信じたいのであります。どうぞ議会におかれましても、おそらくこの二度と繰返されることのない、あまりにも貴重な、悪く言うとあまりにもむもやな実験が、これから大げさに行われるのでありますから、この実験の経過並びに結果を慎重にごらんになりまして、そして職階法案その他の審議は、そのあとでゆつくりと腰を落ちつけて、愼重にやつていただきたいということを衷心からお願い申し上げまして、かつてなおしやべりを終りたいと思います。
  57. 中曽根康弘

    中曽根委員 先ほど山下さんに申し上げましたことを私留保いたしまして、今小林さんが申されました中で、一つだけ承りたいと思います。それは人物考査のウエートの問題であります。この間から申し上げましたように、普通の試験と人物考査とのウエートをどうするか、今フイフテイ・フイフテイにやれという表現があつたのですが、そのウエートを一体どういうふうにとるかということが、一番大きな問題だと思う。第二点は、人物考査をどういうふうにやるか。この間のお話だと、北海道あたりに人を派遣して、詳細に身辺調査をやる。こういうお話でしたけれども、はたしてそういうことがやれるかどうか、直属長官の考課表みたいなものでも徴してやるのか、これが第二点。もう一つは、人物考査をやる場合に、民間から入つて来る方がありますが、そういう方は今までの官吏の職歴にあつた方と違うこともやつておられたし、直属長官といつても、官吏と違うタイプの人もおるから、調べにくいと思います。その官吏と民間から来られる人の均衡をどういうふうにしてとられるか。この三点を詳細にお話し願いたいと思います。
  58. 山下興家

    山下(興)政府委員 結局今のお話は、考課表に関係する問題であります。考課表は実は非常にむずかしいのでありまして、点をとるというようなことは、客観性を持たすことに非常に骨が折れる。それで普通でさえも困難なものでありますが、この際は特にむずかしいと思うわけは、普通は考課表を――これはフォームができますのであとででき上つたらごらんに入れたいと思いますが、それでやりましても、それをつける人はだれかというと、大体上役が下の人の評価をするわけでありまして、これも普通のときならばまことにけつこうなのでありますけれども、上と下とが競争の立場にあるという現状においては、よほど慎重に考えないと、これにあまりに大きなウエートを置くことは危険だと思います。それで今のところ考えております行き方は、この考課表が正しく行つておるかどうか、考課表をつくるのに変な作為がありはしなかつたかということを、第二段に調査する必要があると心得ております。その意味において人事院の調査局は将来相当な活動をしよう、しかしそれは一人々々についての問題でなくて、全体の考課表それ自身がどういうものを表わしているかという調査である。
  59. 中曽根康弘

    中曽根委員 今度の試験でどうするかという問題です。
  60. 山下興家

    山下(興)政府委員 今度の試験には、そういう点を加えるかどうかということは危険でありますから、結局はまず身体検査式に、これが適するか適しないかという大きなわけ方よりほかに使えないだろうと、今のところ想像しております。
  61. 中曽根康弘

    中曽根委員 これは上官に、身体検査式の考課表をそういうようにして出させるのですか。
  62. 山下興家

    山下(興)政府委員 今まだフォームをつくりつつありますが、それを上官にお願いしまして、大体今度の試験を受ける人ばかりについての部下の評価をしてもらう、そういう気持でございます。
  63. 中曽根康弘

    中曽根委員 その客観性をどういうふうにして確かめますか。皆部下の人はかわいいから……。
  64. 山下興家

    山下(興)政府委員 ある人は、部下の人をできるだけよくしたいという気持を持つております。しかし大体われわれは、そういうのは中間の人が一番大きく、一番いいところが少く、一番悪いのも少くて、われわれはそれをノルマル・カーブと称しておりますが、そういう人の分布であるはずなのであります。しかしそんなにたくさんの人を評価するわけでありませんから、そううまくは行かない。ある人は部下をよくする人もあり、ある人はおれの席をとる人間が部下にいるのだから、これを何とかして悪くしようという考えもありましよう。また悪く考えますと、この男は自分の敵として最も恐ろしいやつだから、それは最も悪いところに持つて行こうという作為があるかもしれませんが、それで非常に注意しないと間違うおそれがあります。それは今申し上げましたような第二の方法をもつて、皆あやまちがあるかないかを調査しますが、しかしそれによつてこしらえたものが、どういう客観性があるか、ほかの点数と合せて二で割るというほどの勇気は今のところないのであります。
  65. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうするとどの程度まで参考にするのでありますか。
  66. 山下興家

    山下(興)政府委員 大体今申し上げたのが最後と思われても困りますが、今のところはまず大体体格検査くらいの気持で……。
  67. 中曽根康弘

    中曽根委員 最後の民間との関係はどうでありますか。
  68. 山下興家

    山下(興)政府委員 民間どころでなく、官庁でここの局とここの局とははたして比較できるかということになると、できないのであります。ですからなおさら民間はできないのであります。しかし民間でもその頭であつた人の意向を、ある程度参考にしよう。しかしそれも正しいか正しくないかは、第二段にチエツクしてみないとあぶない、そう思つております。
  69. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう一つあります。この前山下さん及び淺井さんにお聞きしたときには、人物考査というものを考慮すると言われた。最初はあまり考慮されないうしかつたのでありますが、ここで大分強い発言があつて、考慮なさるというお話があつた。今お聞きいたしますと、ほとんど人物考査は身体検査程度ですから、特に障害がある場合にとれが用いられる。障害がない場合にはほとんど用いない程度のものだ。要するにオミツトする材料に使うもので、積極的のプラス面には使わないものだ、こういうように考えられる。しかし官吏の試験の真髄はどこにあるかというと、生きた人間をつかむので、死んだ文字や数字をつかむのではない。ことに上級官吏になると統合能力、ほかの課に対する折衝能力として、目に見えない要素があるだろうと思う。そういう面がつかまれないということは、試験制度の根底を破壊するのだろうと私は思う。これを何とかしてつかまないと、日本の官吏の質こいうものは非常に低下します。この問題をそう簡単にお考えになられたのでは、非常にいけないと思う。單に科学的だとか、合理的だということによつて、計算量ガチヤガチヤと出すようなやり方では、官吏制度というものは人事院が期待するようには絶対向上できない。これは試験の一番根本的な、真髄にあるような問題だ上思うのでありますが、そういうような心構えでやられるのだつたら、試験制度に対して私はあくまで反対しなければなりません。これに対してどういうような改善を加えられる御意思であるか伺いたい。
  70. 山下興家

    山下(興)政府委員 ただいま申しましたように、人物を調べるのに考課表というものは相当役に立つので、あたりまえであれば非常にいい。それを評価する人がみな非常にまじめにやれば、相当効果があります。けれども今申し上げましたように、必ずしも信頼できないという点が一つある。しかしそれは人事院としては落すぐらいな程度に使うかもしれませんが、しかしこれを任命権者に渡しました時分には、任命権者としてはたいてい十人であれば、土十八人ぐらいの人間が行くのでありますから、その中で三人に対して一人、三人に対して一人というように、上からずつと選ぶ場合に相当な役をするものだろう、そういうふうに考えております。
  71. 高橋權六

    ○高橋(權)委員 ちよつとお尋ねしますが、先ほど小林さんから詳しく承つたうちに、ただ人物考査についてはどの程度やるかわからぬというような話であつて、今人事官から聞くと体格検査程度、こうおつしやいます。しかしそういう将来国家のために役人を選定するのに、ただ体格検査程度でいいかどうか、その御答弁のいかんによつては、ちよつと私は考えているところを申し上げて、もう一ぺんお伺いいたしたいと思いますが、ちよつとお願いします。
  72. 山下興家

    山下(興)政府委員 先刻申し上げましたように、これはできるだけ重視したいのであります。しかし調査の結果、もしも信頼ができなということになりますれば、またよほど別の考えをしなくちやならぬ。いかに上役の人がまじめであつてくれるか、人格が高潔であつてくれるかということによつて、きまることだと思うのであります。
  73. 高橋權六

    ○高橋(權)委員 あのイングランドにおいては、フレノロジーということをいつて――日本人は実に人を軽視するとか、その職務を蔑視するという悪い癖があるが、イングランドにおいてはフレノロジーということを、科学的見地から非常に重視しておるのである。たとえて言うならば、山下人事官はお父さんに似ているとか、お母様に似ているとか、また小林さんは音楽がすきであるかきらいであるか、お父さんに似ているかということもただぢにわかります。いま山下人事官が、おれよりこれが上になつては困るとか、あれは自分の敵だからというような人は、ちやんと人相に現われている。あの人間はわいろをとる役人である、あの代議士は容貌がいいが実に度量の小さい人であるとか、ちやんとわかります。笑つてはいけません。そういつた面が科学的にどうしてわかるかというと、だれか死んだ人間の骸骨を持つて来て、電燈なら電燈をその骸骨の中にともすというと、音楽を熱心にやつた人間は、その音調性というところの骨が薄く見える。この人間は理財性に富んでおる、すなわちこの人間は金貸しばつかりやつて、金のことばかりやつていた人間は、理財性というところの骨が薄くなつていて、電燈の明りが薄くなつて来る。そういう点から考えて、私はメンタルテストというものは、ただ体格検査とか、またあれは非常に容貌がいいか悪いかということよりも――外交においては、ちよつと押せば折れるような小村護太郎が、りつぱな外交をやつたり、松岡洋右は眉毛から何からそうそうたる人間のように見えて、ばかげた外交をやつたというような実例があるのであります。総理初め短所長所があります。在野党といわず與党といわず、短所長所もあり、人の上に立つへき人であるかいなやというのも、見てちやんとわかつております。今後こういう最も大切な試験制度を設けるときには、フレノロジーの大家も入れて、この人間は試験官になしたらわいろをとつて動くか、機密を漏らすか、あるいはこの人間は試験官に使つたら、自分より以下の人間が上るのをきらう人間であるかということを、一ぺんフレノロジーの大家から試験していただいて、公平無私なる者をその方面に向けたらどうかという考えもあるのであります。これは科学的な話であります。高橋の言うことはいつも談笑裡に言つたり、軽視して笑う人もあるが、私ほどフレノロジーの点を研究している人はないだろうと思う。今まで日本国に兵制がしかれていた間は、体格検査をやつて花柳病をなくすることに役立つたが、今日の日本は文明国として平和国として立つ以上、そういうことがないために、今度は体格検査によつて、花柳病あるいは肺病でも持つている人間はオミツトして、資格のない者とすると同様に、私は科学的見地からでも、公平無私にして、この人は神仏を敬う人であるか、神仏を敬わない人であるか、あるいはこの人間は頭を下げることがきらいであるか、頭がよぐ下るかということもわかるのであります。そういう点について私はこの際せつかくりつぱなるところの試験制度を設けられるならば、一番大切なるところのメンタルテストにおいて、フレノロジーを重要なる一つの條件に加えていただくことができるかどうかということをお伺いしたいのであります。
  74. 山下興家

    山下(興)政府委員 今高橋さんからフレノロジーのお話がありましたが、これも実は客観性を持つことができれば非常に、いいお話で、これよりいいことはないのじやないかと思います。私どもは今までそれが非常に客観性があるかということについては、まだはつきりわからないのであります。今実は思い出したのでありますが、せんだつて高橋さんから性病の検査をするようにというお話がありまして、その方の専門家に聞いてみたのでございますが、黴毒の方は血液の検査をすれば確かにわかるのであつて、ただ血液の検査をするのに、道具やいろいろなものがありまして、予算がそこに伴うかどうか、時間がそれに伴うかどうかは非常に疑問でありますけれども、ただ淋病の方に行きましてはなかなかむずかしいそうでございまして、遠心分離器にかげて沈澱させて、それを顕微鏡で見たりしなくちやならぬそうです。なかなかたいへんな時間がかかつて、器物、人間も相当いるそうであります。たくさんの人間のときは実行不可能のようでありますから、なお研究いたします。
  75. 高橋權六

    ○高橋(權)委員 今おつしやる淋病の問題についてわからぬという医者は、どのお方か知らぬが、よほどやぶ医者らしい。これは夜、尿をしないで休んで、数時間床の中に入つてつて、一番最初に出て来る尿をとつたら、ただちに淋菌が現われる。しろうとでも入つているということがわかるはずです。私は自分の身内に医者もありますので、よく検査しているのを見てわかるのであります。器物は物資です。それは唯物論から言うことでありますが、ほんとうに日本を思う人間ならば、淋病、黴毒並びに肺結核のない者を使うことが必要だと思う。なぜならば健全なる体格に健全なる思想は宿るものであります。そうして能率を上げさせることも、健全なる体格の持主を使うことが必要であります。ましてこの性病でも検査するということになれば、みな愼むようになる。今までは慎まない。その点について私はそういうことのわからないといつた医者の名前は遠慮して聞きませんが、そう“うことができると私は自信を持つておるわけでありますから、今後そういう点と今申し上げるフレノロジーと両方面を、今度の試験の方面に用いられるように私は要望しておきます。
  76. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 それでは次に電気通信省事務次官の鈴木恭一君にお願いいたします。
  77. 鈴木恭一

    ○鈴木説明員 ただいま小林さんから詳細にわたつて御批判になりましたので、時間もありまするし、私は簡単に結論だけ申し上げまして、御参考に供したいと存じます。  このたび行政の民主化という線に沿いまして、公務員法の命ずるところによつて公務員試験が行われることに相なつたのでございまするが、率直に申しまして私非常に心配いたしておりまするのは、公務員暦が非常に不安、動揺いたしておる、」とでございす。この点につきましては御案内のように、今度の試験が突如出て参つたのでございまして、しかもほとんどそれに対しては明確な説明もしておりません。試験の公告されました中でも、ただ筆記試験を一回ないし二回するということが明らかにせられただけでありまして、従つて従来の公務員の採用試験と同じように、試験の問題に対しまして、いろいろの論議がここに起り、いろいろの憶測が起こつたのであります。その後人物考査も入れるというふうなことが追加せられたり、あるいはGHQのマツコイ氏の声明があつたりしまして、やや問題が具体的になつたようではあるのでありますが、しかしいまもつて試験がどういうふうな方法で行われるか、またその内容はどういうものであるかということが、全然明確にいたしておらないということであります。いやしくも大きな公務員試験官ようといたすのでありまして、秘密ということももちろんこれはある問題に対しましては必要でございまするが、その試験のあり方については、十分納得するだけのことがなければならないと私は思うのであります。これだけの大きな仕事をする場合に、その内容、方法、手段等をはつきりと明確に知らせて、しかる後に正々堂々とやるべきではないかと思うのであります。これが、いまもつて問題がはつきりいたしません。この点を特に私は人事院にお願いいたしたいのであります。ことに試験性格でございますが、この試験は最初もちろん公務員法のもとに働いておりまわれわれ公務員が、一応試験を受けるのははつきりいたしておるのでありまするが、この試験は先ほども申されました通り、資格試験であるというふうに解釈、説明されて参つたのであります。これは淺井総裁の著述、あるいは佐藤事務総長の著書の中にも、はつきり書いてあるのでありまして、これが今回公開競争試験というふうな形になつたのであります。この点につきましては、先ほど小林君がいろいろその理由についての話もございましたが、この問題は私は人事院がそういうふうな解釈をりどういうふうな理由でされたかは存じませんが、このお二人の方も公務員法を制定いたされた際における、政府側としての責任者の一人であります。そこで国会がどういうふうな意味で附則九條の試験ができたかということを御決定願いたい。これを私は国会に対して。願いいたすのであります。おそらくその際の説明におきましても、特別な試験としてり選考的なものであつたということを私も想像いたすのでありますが、それを承認されてあの法律ができたのではないかと思うのでありりまして、これは私はむしろ国会にお願いいたしたいのであります。しかも国会もいまもつてこの試験がどういう試験でなければならないかということのお示しがないのであります。この点を公務員の一人としてぜひともお願いいたしたいのであります。  その次は試験の内容、方法等の問題であります。このことに対しましてもただいま詳しく御説明されましたので、その通りでございます。この筆記試験によりまして、はたして高級官吏の選考というものが、適切に選考されるかどうかということでございます。高級公務員の地位というものは、私が申し上げつるまでもなく、広い視野を持つておらなければならないし、また洞察力あるいは判断力、実行力、さらに指導力、区統制力、もつと根本的に言えば円満な人格、高潔な人格、今日までのいろいろな仕事に対する経験といつたようなものが、私は必要と思うのでありますが、特にその人柄であるとか、統卒力であるとか、経験であるとか、広い視野を持つているというふうな点は、どうしても高級な公務員には必要であるのであります。それが筆記試験によりまして――またその筆記試験も私どもが想像いたしております筆記試験というものが、やはり従来のような画一的なものであろうことは想像されるのでありますが、そういうふうなものによつてこれが澤つ定できるかどうかということは、私は疑問を持たざるを得ないのであります。たとえば洞察力であるとか、あるいは判断力というような点につきましては選考できましても、人格であるとか、経験であるとか、銃卒力というふうなものが、結果として現われて来るか、私は断じてそういうことは困難であると思うのであります。そこで人物調査という問題になつて来るのでございます。この人物調査に対しては、十分ウエートーを持たせて考えていただきたい。ただいまフイフテイ・フイフテイというお話でありますが、私は率直に申しまして、高級官吏に対しましては経験と人物というものが八〇%でなければならぬ。あとの二〇%というものは、要するに今日まで来た高級公務員の経験によつて十分わかるのでありまして、五〇、五〇というまりも、八〇、二〇くらいのウエートをもつてこれを見なければならないと思います。現にアメリカ等におきましても、高級官吏におきでましては二〇、八〇というふうなことをはつきりいたしているように私は記憶いたしております。しかもその点をただいま身体検査程度に見たいと、いろいろ山下さんは考課表の問題等につきまして御心配のようでありますけれども、私はその手段方法等は十分お考えになつてもよろしいが、その点を明確に表示していただきたい。特にこの点につきまして、私は山下さんがおいでにならないのは残念でありますが、人物考査という点につきまして、根本的に考え方を改めていただきたいと思うのであります。考課表のつくり方が、競争があるからどう、上級の者はどうするというふうなことは、つまらない問題でありまして、それが悪ければ他の方法を用いてもいいのでありますが、人事官、試験官が最良と認める方法を用いまして、人物を考査される必要があろうかと思います。この点を特にお願いいたしたいのであります。  なお任命権者の問題等も、問題になつて参るのでありますが、要するにこの試験は多少お急ぎになつておるのではないか。まだほんとうに自信がないのにおやりになつておるのではないかということを、今までの人事院の御説明、あるいは公告等によりましても、察知されるのであります。ただいまの山下さんのお話、あるいはこの前の中曽根さんの御質問に対するお答え等によりましても、どうも私はこの試験に対して自信を持つておられないのではないかと思う。これほど重大な試験、過去二年間御研究になつたかしりませんが、いまもつてその結論は出て来ない。ところが六月までにしなければならぬので、早くやらなければならないということで、急遽とむまとめられたというふうに私は見られるのであります。こういうふうに不完全な自信のない問題は、すべからく国会等におかれても適宜な措置を講ぜられまして、十分公務員法に期待するだけの時間を與え、またその勧告をなされまして、せつかくのこの問題でありますので、悔を千載に残さないようにお願いいたしたいのであります。  なお私どもといたしましては、今日行政の民主化ということに対して、及ばずながら努力いたしております。また私ども仕事を担当いたしております者が、決してあだやおろそかで仕事をしておらないのであります。もちろん今日までいろいろ官僚主義の弊はあつたかもしれませんが、終戰後四年を絡ました今日におきまして、相当私どもは反省し、改善し、いわゆる天皇の官吏から国民の公僕として、一生懸命に働いておるのであります。決して私どもは人事院と対立して――何かさばきを受けるような立場におる私どもを振りかえつて、実に残念でたまらないのでありまして、私どもの意見をよく徴せられまして、いろいろの問題を提起していただきたいのであります。今日の試験に対して、私実は次官といたしましても、一回の御諮問にもあずかづておりません。あずかることによつて秘密が保たれないということであるかもしれませんが、私はこういう問題に秘密のあろうはずがないと考えます。そういうふうな意味において、国会におかれましても、この試験の中に深くメスを入れられまして、大きな問題に対するりつぱな仕上げをしていただきたいのであります。  なお私自分の仕事の面から申しますと、電気通信省とか郵政省は、事業官庁であります。事業官庁であるにかかわらず、公務員という名のもとに、今度の試験は一律の試験を受けるわけでございます。特に郵政のごときは、郵政事業という特殊な事業を営んでおりますにもかか、わらず、第一次の一般行政の試験しかいたしておりません。その理由は存じませんが、おそらく郵政に対する試験の問題が、相当困難であつたということも理由一つではないかと想像するのでありますが、なお私どもの電気通信の問題につきましても、一般行政の線というものを離れることができないのであります。企業官庁であるわれわれ公務員は、たといそれは公務員であつても、その仕事に適する選考方法というものは私はあり得ると思うのであります。従つて結論的に申し上げますと、電気通信事業というものをほんとうにごらんになつて、それに適応した試験というものが結論として出て来たのか。單に公務員という一つのわくに入れた結果、そういうふうなものが出て来たのか。私はその点を実は人事院にお聞きいたしたいのであります。御承知のように私どもの電気通信という仕事は、完全な状態に置かれました機械的設備と人的設備が密着いたしまして、初めてサービスができるのでございまして、一箇所に欠点、過誤がありますと、その用をなさぬのであります。これを極端なことを申しますと、北海道の状態も鹿児島の状態も、常に同一のレベルに置かれておらなければならないのでありまして、との機械と人との結びつき、しかもその状態というものがきわめて緊密に連絡されておらなければならない、最も有機的な仕事であります。これは他の仕事には類例がないのであります。そういう点から、それに従事する人間はどうなければならないかというふうなことに対しましては“私どもも及ばずながら、実は関係方面ともいろいろ打合せいたしまして、その事業に適するトレーニングをやつておるのであります。そうした仕事の上に、ぽかつと一般公務員法の試験によつて、十数年あるいは数十年にわたるりつぱな経験者の及落がきまるということは、單にその人の幸不幸の問題ではなくして、事業全体がはたして動いて行くであろうかということを、私は心配いたすのであります。そういうふうな点につきまして、ほとんど今度の試験に対しては考慮されておらない。と言うと語弊があるかもしれませんが、いろいろ考慮されておるかもしれませんが、ほんとうの仕事の真髄に触れた点から出発しでおらない。他の方面から来たものによつて、何とかこの際こういうふうな試験をして行つたらいいのかなという、最初私が申し上げましたように自信のない試験をここに行われるのではないか。そのために迷惑するのは公務員だけでないのでありまして、それがひいて私どもの仕事のサービスに影響し、国民のために非常な不利益になる。しかもこれが今後の電気通信事業の将来を下する大きな問題になつて来ることを、私は恐れるのであります。こういう場合においては、すべからく規定があるのでありますから、附則の第十三條等を使われまして、特別な選考試験ということも私は考えられると思うのであります。そのためにあの法律の附則もあるのであります。何を好んで九條だけで今度の試験をしなければならないというふうな結論は、私は出て来ないと思います。われわれとしても公務員として、今度の試験を受けるとか受けないとか、そういうふうな問題でなしに、いま少し根本的に堀り下げて研究されていただきたい問題が多多あるわけでありますから、結論といたしましては、まだ時間もありまするので、相当慎重な考慮を拂つて、あるいは試験の期日を延ばして六月までにするか、あるいは九條の一項によりまして、お互いにわれわれは臨時に採用されておるのでありますから、採用期間中に試験を行えればいいのであります。われわれは何も行政の民主化ということをとやかく申しておるのではありません。公正なりつばな試験をして、今後の日本の行政の事務担当官として、りつぱなものを仕上げたいという念願にほかならないのでございます。結論だけ申し上げましたが、私の意見を申し上げる次第でございます。     ―――――――――――――
  78. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 ただいま官房長官がお見えになりましたので、先刻の申合せ通り国家公務員法附則第九條による試験に関する調査はこの程度にとどめまして、後日に延期して、ただちに国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案議題として、質疑を継続することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 御異議ございませんので、それではただいまより国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案議題として、質疑を継続いたします。松澤兼人君。
  80. 松澤兼人

    松澤委員 官房長官にお伺やしたいのですが、第三條に「臨時年末手当支給に関し必要な細目は、内閣総理大臣が定める。」こうあるのでありますが、これはどういう関係――と言うとおかしいですが、実際上は官房長官がおやりになると思うのですが、ちよつとその間の御意見を承りたいのです。
  81. 増田甲子七

    増田国務大臣 この法律施行に必要な細目については、内閣総理大臣が定めるというのは、結局閣令で定めるというようなことになると思う次第であります。また私や大蔵省等は、当然この内閣総理大臣の定めに対しては関與といいますか、補佐者として關與する次第であります。かたがた一面におきましては、官房長官は給與実施本部長でもございますし、その範囲におきましれも、またその事務に携わる、こういうつもりでございます。
  82. 松澤兼人

    松澤委員 たしか前国会におきまして、新給與実施本部が人事院にかわつたような改正をしたと思うのであります。この法律はすでに公布されていると思うのでありますが、その関係はいかがでありますか。
  83. 増田甲子七

    増田国務大臣 今日まだ実は公布を見ていない次第でございます。
  84. 松澤兼人

    松澤委員 一つ法律が公布されるということに、そう長く時間がかかるのでありますか。
  85. 増田甲子七

    増田国務大臣 いずれ最も近い機会において公布いたしたい、こう思つております。
  86. 松澤兼人

    松澤委員 これは当然早く公布して、新給與実施本部というものを人事院に切りかえていなければならぬ。どういう手続でお遅れになつたかわかりませんけれども、結果から見ますと、明らかに官房長官が新給與実施本部長として、こういつた年末手当をお出しになるために、公布を遅らして切りかえを遅らしたという結果に見えるのでありますが、そういう点はないのでありますか。
  87. 増田甲子七

    増田国務大臣 そういうことはないのでございます。
  88. 松澤兼人

    松澤委員 それでは実際上遅れた理由はどういうところにあるのですか。
  89. 増田甲子七

    増田国務大臣 各種の準備をいたしておりまして、御承知通り五十数件の法律案が通過成立いたしておりまするが、まだ公布を見ない法律もある。それは結局公布のための諸般の準備がありますから、ただ事務的関係において遅れておるだけであります。最も近い機会において公布いたしたい、こう思つております。
  90. 松澤兼人

    松澤委員 最も近い機会というのは、この法案が通過すれば切りかえるということだろうと思うのでありますが、そうしてみるといよいよそこに政治的な策謀といいますか、政治的な意図があるように考えられる。これはないと御否定なさればそれまででありますが、重ねてお伺いしたいことは、国家公務員給與は、大体人事院において企画立案をして勧告をするということが原則であると思うのでありますが、その点は国家公務員法におきましても、あるいは新給與法におきましても、たとえば第二條に、「職員の給餌の額を研究して、その適当と認める改訂国会及び内閣に勧告すること、」というようなことや、そのほか給與の問題については人事院がやるべきことだと思うのでありますが、人事院勧告によつてこういつた年末手当をお出しになつたのかどうか。
  91. 増田甲子七

    増田国務大臣 人事院勧告に基いて出したわけじやございません。
  92. 松澤兼人

    松澤委員 それでは重ねてお伺いいたします。こういうふうになつて参りますと、給與の問題を取扱う主管官庁と申しますか、そういうものが二本建になつて人事院人事院で企画立案をして勧告することもできるし、また反対に人事院と何の関係もなく内閣それ自体――人事院も内閣でしようが、何と申しますか、政府それ自身がこういつた手当をお出しになるということもできる。こういう二本建の姿がはたして新給與法、あるいは国家公務員法に規定されておる精神であるとお考えになりますか。
  93. 増田甲子七

    増田国務大臣 先般法律改正を願いましたのは、むしろ人事院要求ではございませんで、私自身が、ああいうものは松澤さんも御指摘のように一元化した方がよろしい。官房長官自身が給與実施本部長の仕事から早く免がれたいというわけで、私がむしろ主唱して出した次第でございまして、そういうふにおつしやられることは、私はいささか不本意とするところでございます。しかしながらお説に全然同感でございまするから、私がああいう改正案を国会に提出したというふうにお考え願いたいのでございます。
  94. 松澤兼人

    松澤委員 その点はわかりました。しかし給與の問題が、一方では人事院ベース改訂勧告をやつておる。政府はそれを当分はやらないという方針で進んでおいでになる。ところが給與改訂勧告と何の関係もなく、また政府がこういつた法律をお出しになつて、年末手当をお出しになる。そのお出しになることそれ自体はけつこうなんですけれども、給與の体系がそれではくずれて来るのじやないかという点です。これについて……。
  95. 増田甲子七

    増田国務大臣 松澤さんにお答え申し上げます。御指摘の通り給與体系というものは、現在法律にございます新給與実施に関する法律、これによりますと、この法律並びに人事院規則に定めるもの以外は給與をしない、こういうことになつておるのでございます。しかしながら年末における公務員の経済生活を思いますとき、また日本の古来の習慣から申しましても、ぜひ若干のものを差上げたいと、総理以下非常に心配いたしまして、勧告には一つもございませんけれども、われわれが積極的に実は御承知のようにいささか努力をいたしまして、差上げることにいたした次第でございます。しかしながら現行法によりますと、給與はボーナス等は出し得ないことになつておりますから、ここ法律案を作成いたしまして、もとより人事院とも打合せはいたしておりますし、それからGHQのフーヴアー・デヴイシヨンといいますか、GSの関係とも打合せをいたしておりまして、その関係でOKが得られまして、今回に限つてボーナスを役人諸君に出してもよろしい、こういうことに相なつた次第であります。この点は役人諸君のふところあんばいのことも十分御同情はくださつておることと思いますので、この法律案出した次第でございますから、別に給餌体系を乱そうとも何とも考えておりません。原則的にはあなたのお説には賛成でございます。
  96. 松澤兼人

    松澤委員 それでは政府職員が現在当面している経済事情、こういうものはどこから来ているか。すなわちわれわれは六三ベース相当現在実情に印しないほど低くなつている。この赤字累増して参りまして、年末あるいは越年、正月を迎えるということのために手当が必要であるというよりは、むしろこれはで赤字のたまつて来たものを幾分でも解消するために、この金額が必要である。こう私どもは考えているのです。そこでこの政府職員経済事情の逼迫ということが、どういろ原因でここまで来たのか、それについてせつかくあたたかいお気持を持つていらつしやるのでありますから、御説明を願いたいと思います。
  97. 増田甲子七

    増田国務大臣 松澤さんの御質問に対する御回答を詳細に申し上げますと、これは非常に広汎多岐にわたる回答を申し上げなければならぬことでございます。従いましてごく簡単に申し上げたいと思います。  去年は実は年末のボーナスはございませんでした。しかしながら一面六千三百七円というようなことになりましたから、三千七百九十一円から見ますと、結局倍といいますか、その差額だげは行つたのでございます。ところが一月になりまして、今度はきゆうり拂いになりまして、あるいは年末調整の問題もありまして、人によつては十五円しか行かない。あべこべに二十円金をとられたというようなことも出て参つたのであります。しかしともかくも十二月には、実質的に見てある程度歳末に年を越すに足るだげのお金が参つた。そこで今年は六千三百七円、これも実質的に、また形式的に、ともに六千三百七円が設定されたのは、この四月であるということは、松澤さんも同感くださると思います……。(松澤委員「同感じやない」と呼ぶ)というのは、二百六十五億円という総額で縛られておりまして、五千三百三十円掛けるの百六十万なら百六十万、その四箇月分というのが二百六十五億円でありまして、少じも五千三百三十円以上には上つて来ない。但し三千七百九十一円に比べると、五千三百三十円という額は上つてはおります。しかしながら六千三百七円というベースが、名実ともに実施ざれたのは四月であります。そこで政府の経済安定施策が着々効を奏しつつあるのは、この四月からでございまして、四月のCPIを一〇〇といたしますと、十月は九九、十一月は九六というふうに、だんだん下つて来ております。つまり総合生活費の指数が下つて来ているときなのでありまして、私どもは給與ベースについては、価格の明示するところに従う必要がある。もとより人事院は去年の七月を押えておりますから、その七月を一〇〇とすると、この七月が一二九なり一三〇になる。ああいう数が出ていることは、私どもはちつとも否定はしません。しかじながらただ名実ともに六千三百七円が設定されたのはこの四月である。その四月を一〇〇と見て、今や九九から九六になる。われわれは一面実質賃金の増加については極力努力いたしております。来年からは勤労所得税も非常に減りますし、また米の配給等もふやそうと考えております。その他宿舎関係、あるいは厚生施設等も考えておりまして、低物価政策と相まつて実質賃金の増加に努めております。でございますから給與べースのことにつきましては、われわれはこの際変更する意思は、まだぎりぎり決定ではございませんが、大体においてないのでございますが、ただ日本古来の習慣から申して、年末にはたとい赤字はなくとも金がいる。またもちつき代等もいります。そういう関係も勘案いたしまして、ぜひ何とかして役人諸君のふところを幾“でも暖かにして差上げたい。こういう考えから、総理以下生懸命努力いしまして、また幸い連合軍司令官も非常な好意と援助等をわれわれの與えてくださいまして、要するに松澤さん御指摘の、給與体系にないところの臨時手当給與ができるという運びに相なつた次第でございます。
  98. 松澤兼人

    松澤委員 先ほどは経済事情と、それから日本古来の風習と申しますか、二本建のようなふうに言われておつたのでございますが、われわれはやはりこの年末賞與を出きなければならない。その原因というものは、ただ單に古来の風習というか、慣習従つて政府がお出しなつたとは考えないのであります。もしそうだとすれば、来年のお盆にまた政府はお出しになり、また来年の暮にはお出しにならなければならない。おそらく政府はそういうことは考えていうつしやらない。そうなれば、年末手当を出すということは、政府職員生活がここまで追い詰められて来た。この現状に基いて、むしろ政府は年末手当をお出しになつて、これまでの赤字を消して行くという方向に進んでいるのだろうと思うのであります。その赤字がどこから生れて来たかといえば、結局実質賃金が向上されたと言うけれども、しかしたいがいの人は二千円、三千円あるいは四千円といつたような借金を持つているか、さもなければ奥さんが働いてどうにかそれでつじつまを合せているという現状です。政府もこの経済事情ということをお考えになつて、年末手当をお出しになろうとお考えなつたものと考えるのです。その賞與をお出しになるということは、結局ベースが低いからであつて実質賃金は決して改善されていないと私は考えますが、いかがですか。
  99. 増田甲子七

    増田国務大臣 ベース政府といたしましては、改訂することは非常に困難でございます。これは予算が提案されたときに、予算によつて政府は明確なる意思表示をするわけでございます。べースを変更しないならしないということは、そのときをまつて実は御議論を伺い、こちらも御説明をいたすつもりでございますが、ただいまのところ著しく困難である。こういうことだけはこの機会において申し上げたいと思います。というのは、大蔵大臣に対するマツカーサー將軍の副官のブツシユ准將からのお手紙にも明示されておりますが、本年度に限つて、あの程度措置であるならば、本年の補正予算並びに明年の本予算、というのは、すでにOKが来ている本予算のことであります。この総合均衡性を害したものとは思われないということを明示してありますが、このことはすなわち、明年のすでにOKが参つている、しかも六千三百七円で編成いたしたところの本予算は、変更する意思がない。また変更しがたい客観情勢でございます。それは結局日本の財政的の自殺、経済的の自殺からわれわれを救おう、そしてほんとうの積極的の再建をはかろうというような配慮からも出ておることでございます。われわれは近く提出さるべき総合均衡予算が最もよろしい。これは公務員、労働者を含む八千万国民生活安定のためにも、経済的再建のためにも、最もよろしいという感じを自主的に持つておりますから、われわれの責任において近く提出する次第でございます。  一方臨時のボーナスをやはり来年もやらなければならぬだろうというお話でございますが、われわれは来年のことは今日申し上げにくい。とにかく本年限りの臨時措置であるということを明言いたしておきます。  それから来年におきましてわれわれは同一政策をとるかといいますと、われわれは先ほど言いました通り実質賃金の向上のための一般の政策をとりたいと思つております。
  100. 松澤兼人

    松澤委員 そうすると現在年末の手当をお出しになるという二つの理由――理由はたくさんあるでしようけれども、承つた理由一つ日本古来の慣習一つでもあるからという点は、非常にウエートが少くなつて、結局は経済事情ということにその重点が置かれるわけであります。それで私が先ほどお伺いいたしました現存手当をお出しにならなければならない、こういう事情は、つまり経済事情というものはペースが低いから来たものであつて実質賃金が向上されていれば、そういうことは少しもいらないわけであります。ところが実質賃金が改善されておらない、しかもペースは低いというところから、その赤字が漸次累増して来て、越年のために、むしろもちをつくということよりは、旧債の償還に充てなければならない、そういう事情のためにここで年末手当を出さなければならなくなつたの、だろうと私は想像するのでありますが、その点はいかがでございましようか。
  101. 増田甲子七

    増田国務大臣 お答え申し上げます。ベースが低いからという点は、あとで給與課長等が補足的の答弁を申し上げると思いますが、われわれは昭和二十年、組織当時から二十一年、二十二年、二十三年、二十四年と、だんだん名目賃金のみならず、実質賃金も向上しておるということをこの際明言いたしておきます。でございまするから、実質賃金が従来より低いから、この際差上げるのではありません。従来よりも高くなつております。但し皆さん御承知通り昭和五ないし九年を百といたしますと、六十数パーセントあるいは五十数パーセントというような数でございまして、われわれが月給七十五円もうつて洋服が二着できたときよりは、よほど実質賃金が低下しておるのであります。これをどうやつて行くかというと、政府は極力生産力の復興をはかり、経済の復興をはかりまして、国際貿易を大いに振興いたしまして、われわれの購買力ふやす。そのときはそのときの話でございまして、われわれは結局昭和五ないし九年の百に対して百にするということは、もちろんわれわれの目標なくてはならぬということを考えております。ただこの経済安定政策を実行する今日の段階におきましては、経一済再建をはかるためにもベースの変更はいたしにくい、こういうふうに考えております。
  102. 松澤兼人

    松澤委員 もう一つお伺いいたしたいことは、せつかく政府が年末手当をお出しになるということで、これは非常に政府職員にとつてうれしいことでありまするが、われわれはやはり根本的に言えば、給與改訂が本筋であつて、こういう賞與的な、あるいは越年資金的なものを政府がお出しになるということは、給與の体系をくずすということになると考えているのでありますが、とにもかくにもここで年末手当が出るということになりますと、今度は問題は、せつかく五千円もらつても、あと税金にとられる。     〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕  半分までは行かないかもわかりませんが、相当程度手取りが少くなるということになるのでありまして、この点はぜひとも政府が今回の年末手当については何か特例をお設けになりまして、そのあたたかい気持をさらにあたたかく政府職員を遇していただきたいと思うのでありますが、その点はいかがでございましようか。
  103. 増田甲子七

    増田国務大臣 松澤さんの御論は同感できない節もないわけではございませんが、ただいまの税法その他の点からかんがみまして、著しくそれは困難でございます。ことに役人だけそういうはからいをするというようなこともできかねます。民間産業労働賃金の所得者に対しても必ず影響があるわけでございまして、そういたしますと税制体系がくずれるという関係で、親心といたしましてはそういたしたい心持は、松澤君と同様やまやまあるのでございますが、いたしかねるという状況でございます。
  104. 成田知巳

    成田委員 今の税金の問題についてちよつと簡單にお尋ねしたいのですが、ただいま官房長官のお話では、いろいろ関係があるから、現在の税制上できないと言われましたのですが、分割拂いとか、特に年末調整の問題があると思いますが、御承知通り昨年年末調整が行われまして、六千三百七円に上つたにもかかわらず、増田さんは先ほど二十円、三十円の赤字ということを言われましたが、はなはだしいのになりますと二千円、三千円の赤字も出たわけであります。年末調整の関連で、分割拂いのごとき便宜措置はできるのではないかと思いますが、それについて、どうお考えになりますか。
  105. 増田甲子七

    増田国務大臣 年末調整のことにつきましては、院の決議もあつたと思いますし、できるだけ成田さんのおつしやるようなことを尊重いたしまして、研究はいたしたいと思つております。
  106. 成田知巳

    成田委員 次に賃金ベースと今回の年末調整との関係についてお尋ねしたいのでありますが、先ほど松澤議員の質問に対しまして官房長官は、人事院勧告は年末賞與の問題には触れてなかつた、年末賞與のことは考えてなかつた。しかし政府の親心で特に年末賞與政府として出したのだと言つて、いかにも善政をやられたようにお話になつたのでありますが、この善政というのは、賃金ベース改訂をお考えなつた上の年末賞與支給ならば、いかにも善政だと思うのでありますが、賃金ベースはやらない。悪く言えば賃金ベース改訂と、この年末賞與をすりかえるというような感じさえ受けるところのこの年末手当は、決して私は善政ではないと思うのであります。何と言つて賃金ベース改訂をやるべきだと私たちは考えておるのでありますが、この賃金ベース改訂をやらないという理由といたしまして、けさほど大蔵大臣も、官房長官と同じような意見を述べられまして、四月のCPSが一〇〇である。九月が九九、十月が九六に減つておる。ざらに来年度は税制改革その他の政府の諾施策によつて実質賃金は向上する。だから賃金ベース改訂はやる必要がない。こういうような答弁でありますが、私たちの見解から行きますと、これとは逆に、電力料金の値上りとか、あるいは主食の値上り、あるいは地代、家賃の値上りで、実質賃金は低下する。こういう見通しを持つておるのでありますが、一歩譲りまして、この実質賃金が向上するといたしましても、賃金ベース改訂の必要はないということはできないと思うのであります。なぜかと申しますと、賃金ベース改訂勧告の精神としまして、軍に生計費かけの問題ではなくして、民間給與とのバランスを失しておる。全国工業平均指数その他によりますと、約二千円近くの民間給與とのバランスを失しておるということが、勧告一つの大きな理由になつておるのでありまして、この点を無視して、軍に実質賃金が上るから賃金ベース改訂はやらないという政府の態度は、納得ができないのでありまして、この点に対する政府のお考えを伺いたいのであります。
  107. 増田甲子七

    増田国務大臣 成田さんの御質問にお答え申し上げます。給與ベースを変更しにくい事情は、けさほど大蔵大臣がお答えしたそうでございますし、先ほど松澤さんに対する私のお答えをもつて御了承を願いたいと思います。  それから一般産業労働賃金とはなるべくさや寄せをいたしたいということは、もとよりわれわれも成田さんと同感でございますが、ただいまの経済、財政の関係からいたしまして、さや寄ぜはできにくい状況でございます。それから一般産業労働賃金につきましては、成田さんもつとに御承知通り、現在はすべて産業労働者に拂つた賃金で統計はとつておりますが、会社によりましては九月から拂えないとか、六月から拂えないというのもあるのでありまして、抑えないゼロの数を持つて来ると、これはまた著しくかわつて来る。また破産してしまつておる中小商工業者も相当あるわけでありますから、そういうことも勘案いたしますと、拂つた賃金だけを平均いたしまして、そして役所は不拂いということはないのですから――終戦後少しはありましたが、とにかくないのですから、結局こちらの拂つたものを平均して、さやがあるからけしからぬとすぐ言われても、私は全然科学的である――相当科学的とは思いますが、全然科学的であるとは申しがたいのではないかと思つております。
  108. 成田知巳

    成田委員 民間の給與ベースとの関係で、民間は給料の遅配欠配がある、官庁はないと言われますが、多分委員会であつたと思いますが、増田官房長官は、超過勤務手当の不抗いをはつきり認められておつたと思います。それに対して社会党から告発した事実は、増田官房長官も御存じであると思いますが、その点の議論は別といたしまして、今話が出まして思い出したのですが、超過勤務手当の未拂分を年末に、当然の債務でありますから、一括して至急出される意思がおるかないか。お伺いします。
  109. 増田甲子七

    増田国務大臣 実は超勤のことにつきまして、ざつくばらんに申し上げますから、皆さんもざつくばらんに聞かれたいのであります。というのは、ボーナスを幾分出したい。ところが先ほど松澤さんの御指摘になりました通り、現在の給與体系ではないのであります。だから給與体系を一時的にでも変更いたすことになることは、松澤さんが御質問の中で御指摘になつ通りであります。これはなかなかむずかしいことである。そこで種々政府はくふういたしまして、どこか出す道はないかどうかというわけで、方々当りましたところ、まあ超勤というものを事実上拂つていない分も相当あるそうだ。こういうりくつがあるから、ここに根拠を置いて、そうして役人諸君に実質的にボーナスになるようにしたらよかろうということで、実はわれわれとしてはほつとしたという段階があるのであります。ところが総理以下政府の非常な努力によりまして、われわれの予想以上に――実は八百円から千円くらいしか出ないと思つた。これで出すから超勤という理由になると思うたのであります。ところがわれわれの予想に反しまして、また皆さんの予想にもある程度反したのではないかと思いますが、平均三千十八円というボーナスを支給し得ることになつた。こうなりますと、私どもは臨時給與制度を打立てる必要がある。そうして合法的にボーナスを差上げた方がよろしい。こう考えておる段階であります。それから超勤のことに関しましては、巷間事実勤務しておる者を、予算がないためにある程度しか抑えないということをよく聞きますが、ただ予算面、その他経理面といたしましては、社会党の諸君から訴えられるような不法な事実は一つもないそうであります。というのは、予算範囲内でまかなえる範囲の超勤の命令をしておるのであつて、そ、れ以上の超勤の命令はしていないそうでありますから、結局あとは奉仕的に勤務してもらつておる。こういうことなのだそうであります。これがまた事実でありますから、これはざつくばらんに、あまりあげ足をとらずにお聞き願いたい。そうして将来のお互いのくふう、協力によりまして、官吏の給與がよくなるように努力して参りたい。こういう次第であります。
  110. 成田知巳

    成田委員 ただいま官房長官のお話によりますと三千十八円、この参考資料を見ましても三千十八円となつておりますが、新聞紙上では二千九百二十円ということになつております。これは三千十八円の方が正しいと考えてよろしいのでありますか。
  111. 増田甲子七

    増田国務大臣 国鉄とそれから一般国家公務員、それから特別会計公務員、それから公団その他の特庁関係と四つありまして、公団その他は三千四百九十九円、平均いたしまして、頭割りいたしますと三千十八円もうつておる勘定になります。
  112. 成田知巳

    成田委員 次に地方公務員と教育公務員手当についてお尋ねいたしたいと思いますが、大体国家公務員に準用して支給されるというお話でありましたが、その財源をどこにお求めになるのか。新聞紙上その他を見ますと、地方配付税配付金と義務教育の国庫負担金でまかなわれると言われておるのでありますが、現在の地方財政というものは非常に困窮しております。地方配付税は約九十億、義務教育の国庫負担金は約六億だつたと思いますが、この程度で今回の年末手当が、地方自治体として支給できるかどうか。できないとすれば政府で何らかの財政的な措置をお考えになるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  113. 増田甲子七

    増田国務大臣 政府といたしまして半分責任を背負つておるのは、御承知地方職員であります。それから地方公務員につきましては、政府は責任がなく、自治団体の責任に属するわけであります。しかしながら政府といたしましては、国家の財政政策といいますか、あるいは紛與政策といたしましては、同様に平等に扱うのが、公平の法則に合致するゆえんであると考えております。そこで地方公共団体を監督する地方自治庁から人を派し、あるいは通牒を発しまして、地方職員の諸君には、国家公務員はこういうふうにしたから、しかるべく支拂つてほしい。そこでわれわれは国会同様に、府県会が臨時的に急速に招集されることを予想しております。そこで措置された場合は、政府の義務に属する半額というものは、政府は責任がございますから、おつて後日十分考慮いたしたい。また意思表示もいたすつもりであります。地方公務員につきましては責任はないわけでありますが、しかしながら貧弱県等は、政府に全然責任がないからと申しましても、ボーナスの半額負担ということは、月給の約半額でありますから、しにくいかもしれません。そういう場合は貧弱県等の財政については、将来これを育成する義務を持つておる地方自治庁において、適当なる考慮を加えたい。それが新聞等に出ました配付金とか、あるいは平衡資金とかいう問題になるのではないか。こう思つております。
  114. 土橋一吉

    ○土橋委員 私はまず溜過勤脇手当の点からお尋ねしたいと思いますが、先ほどもいろいろ御説明があつたようでありまするが、超過勤務手当は去る第六臨時国会におきまして、最終日に院議をもつて決定した事項でありますので、当然各官庁においては支給されておると思いますが、その支給状況について簡単に御説明願いたいと思います。
  115. 増田甲子七

    増田国務大臣 先ほど成田さんにお答えした通り政府におきましては、各省にそれぞれ予算を配付しております。その配付された予算範囲内において超勤を命ずる。その範囲内において超勤をしてもうつておる。こういうわけでありまして、法規的にあるいはりくつの上からは、超勤の不拂いという事実はないそうであります。
  116. 土橋一吉

    ○土橋委員 そうしますと今まで超過勤務手当は大体三〇%で、七〇%が遅配になつておりましたが、そういうものは逐次支拂中であるかどうかという点を私お聞きしておるのでありますが、あなたが仰せになることは、起過勤務手当配算に関する予算のわく内において現在支給されつつある。こういう御答弁のように承るのであります。私がお聞きしておりますのは、残余の七〇%の超過勤務手当未拙いについて、目下どういう状況で各官庁は現実に支拂いをしておるかという点を、簡單にお聞きしたいのであります。
  117. 増田甲子七

    増田国務大臣 土橋さんにお答え申し上げますが、現在七割は未拂いであり、三割拂つておるというようなことは、多少この前私が申した事実はございますが、語弊があるのでありまして、世の中から常識的に見て、実際上そろいつたような見地から、そういう事実を仄聞しておる。こういうことを申し上げたのでありまして、各省庁で超勤を命じながら、三〇%しか拂つていないという事実はないそうであります。但し実際超勤を上官が命じまして、不拂いの事実があるならば、これは予算の許す限り合法処置をとりたい。またとらせるように、諸官庁に対してそういう態度をもつて私は臨みたい、こう思つております。
  118. 土橋一吉

    ○土橋委員 私のお聞きしておる中心点とあなたの御答弁とは、大分相違があるので、私は院議をもつて決定した超過勤務手当の完全支拂いという命題について、政府は各官庁に対してどういう督促なり、どういう支拂い状況にあるかということをお尋ねしたのでありますが、官房長官も連日の御奮闘で、頭の方がややお疲れのように伺いますので、この点は私はこれ以上追究はいたしません。  そこで第二番目の問題は、人事院が去る十一月三日――翌四日の朝刊に、内閣総理大臣吉田氏と面会いたしまして、当時の人事院勧告をする内容について要談したということが、一齊に新聞に載つておるのであります。当時御承知のように外国から有名な方が来朝せられまして、日本の十五箇月予算について目下編成の途上にあつたのであります。当時の状況からかんがみまして、人事院勧告が出るということは、当然あなた方は御予定になつておつたわけであります。また国鉄労働組合の調停が、十月の十八日にはすでに調停案の八千五十八円というものを示したのであります。こういう関係においても、あるいはタバコ専売労働組合において紛争が発生し、一万三千円程度要求について団体交渉中であつたということも、あなた方は十分御承知であつたと思いますが、この点はいかがでありましようりか。
  119. 増田甲子七

    増田国務大臣 そういう事実は知つております。
  120. 土橋一吉

    ○土橋委員 そうしますと当時人事院の総裁は、吉田内閣総理大臣に対しましつて給與ベース引上げて、少くとも当時新聞で伝えられておりまするように、七千八百七十七円の給與勧告は、当然内閣総理大臣も御承知であつたと思うのでありますが、それにつきましては今あなたの仰せになつたように、六千三百七円ペースというものは今年の四月完全実施をしておつて、四月当初のCPS等を参照するならば一〇〇であつて、今日は九六とか九七である。こういうようなお話でありますが、ここに私はあなたの給與に関する基本的な態度についてまだおわかりになつていない、研究されていない点があると思うのであります。そういう御答弁によりますると少くとも私たちは人事院勧告につきましても、相当われわれは内容の資料の取り方、あるいは絵與ベースの算定の方式、現に金額等につきまては、いろいろ異論もあるのでありまするが、一応この勧告の内容を読み上げますと、こういうふうに書いておるのであります。この六千三百七円はその算出の根拠を昭和二十三年七月におけるマーケツト・バスケツトによる生計費及び民間給與実態調査に置き、官民給與の権衡をはかつたものである。しかるにその後における生計費は徐々に上昇を示し、官民の給與は次第に不権衡を生じて来た。そこで人事院昭和三十四年四月民間給與の実態調査を全国にわたつて行つた。四月であります。あなたの御答弁になつたときであります。この結果は昭和二十三年の七月に行つた第つ一回民間給與実態調査と比較するとき、各職種ともその給與額において相当の上昇を示していることがわかつた、こういうことを書いておるのであります。これは勧告に対する人事院給與算定に関する基本的な態度の一端を示したものであります。そういたしますると、あなたはここに書いてありますような人事院勧告給與ベースが当然上つて、しかも民間各労働者における平均賃金等においても格段の相違がある。いわんや生計費においては当然上つておるという、この論拠をお認めにならないかどうか、こういう点をお聞きいたしたいのであります。
  121. 増田甲子七

    増田国務大臣 私どもは不幸にして、人事院勧告の内容に盛られた所見とは、見解を異にする次第であります。というのは、人事院が七月を基礎資料にされたのかどうか知りませんけれども、要するに漸次物価、ことに実効価格というものは下りつつある。しかも四月からこの安定施策が効果を奏して参つております。四月までは人事院も認めておるように、物価は緩漫ではありますが、多少は上昇の一路をたどつておつたでしよう。ドツジのプリンンプルを実施して、効果を奏し出したつのが四月であります。四月から見ると、五、六、七というところはあまりかわつておりませんが、九月からだんだん下つておる。九、十、十一と、こういうふうに下つておる。いわば四月がトツプであつた。その四月のトツプのときに六千三百七円というものが初めて設定された。四月の前の月の三月は、まだ五千三百五十円だつた。これは土橋さんはことに公務員の経験もお持ちですから、十分お認めになつておると思います。要するに物価関係からいえばトツプであつた四月に、六千三百七円が名実ともに設定された。あとはだんだん下りつつあるこのときにおいて、この際下りつつあるから月給をふやせということは、理論としてはどうかと思います。結局四月がトツプであつて、四月は六千三百七円であるから、これを七千円にしろ、八千円にしろということは聞えません。ただいまわれまわれが安定施策を強行して、物価が下りつつあるときに、下りつつあるのだから、四月は苦しかつたけれども、今は多少楽になつたから、大いに上げろというような言葉がもしありとすれば、これは多少矛盾を含んでおる。こういうふうに私どもは考えております。しかしながらわれわれは先ほど成田さん、松澤さんにお答しました通り、できれば産業を復興し、生殖力を発展させ、あるついは海外貿易等も振興しまして、富の増強を加えまして「昭和五年ないし九年まではわれわれの生活水準は、もちろん上げることが許されておることでございまするから、昭和五年ないし九年の百に対して今六十数パーセントというような数字では、決して満足しないのでございまして、実質賃金をだんだん引上げて行きたいということで、政府は鋭意努力しておる次第意でございます。公務員全体が苦しいということは、あなたの御承知通りわれわれも相当つておるつりもりでございまするし、勉強もいたしております。ただ結論的に申しますと、人事院勧告があつたときに、この前は素材を七月にとつた。今度も機械的に一年たつた七月にとつて、そうして見ると三十上つておるから、とにかく七千八百七十七円に上げろと言われても困るのであります。もしそういうことをいたしますと、せつかくこれまで官民ともに苦しんでやつてつておりまする安定施策というものが、効果を奏しないのみならず、失効してしまう、あるいは失敗してしまう。結局苦しむのは、公務員、労働者を含めた八千万の国民である。とういう見地からわれわれはベースを上げがたい、こう申しておる次第でございます。
  122. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただいまの答弁は、吉田内閣の辞典から官房長官は答弁しておりまするが、このような答弁は給與自身の上昇について何も知らない諸君は一応もつともと考えるかと思います。しかしながら私は少くとも官房長官という地位にある者が、そのような一般給與についてあまり御承知ない方に言うようなことは、この委員会においては避けでいただきたいと思います。なぜかなれば、あなたが今仰せになつておることは、今年四月における物価指数を一〇〇として、今日は九六であるから、給與ベースを上げなくてもよろしい、こういう御意見のようであります。ところが人事院が昨年の十二月勧告した当時におきましては、七月の給與は成年男子一人について二千四十七円の基準であつたのであります。あなたの御承知のように当時、昨年の七月におきまして二千四十七円の基準につきまして、六千三百七円のベースを決定したのであります。そういたします。と、あなたのような御議論で参りますと、当然今日六千三百円、いな一人頭、この勧告によりましてもたしか三千六百六円を考えておるのであります。そういたしますると、あなたが仰せになつておる昨年の例から申し上げますと二千九百二十円ベースのときに、当然われわれは四千円程度の案をしたのであります。これは当時の芦田内閣においても了承しておつたのでありまするが、財政上の都合でできなかつたのであります。そうして二千九百二十円というものを、六月の予算編成の後までこれを強行したことは、あなたの御承知通りである。当時野党であつたからよく御承知だつたと思う。そこでやむなく九月ごろで勘、つたと思いまするが、三千七百九十一円ベースに上つたのであります。当時われわれはこれに対しまして五千二百円の支給要求し、かつ六條件というものを加えまして闘つた結果、七月二十二日にマ書翰が出たのであります。マ書翰が出た当時は、たしか三千七百九十一円ペースになつたかどうかという状態であつたのであります。当時の指数を見ますと、成年男子が二千四百円程度であつたのであります。そういたしますと、逐次人事院勧告が出まして、これが三千六百円に上つたのでありまするが、その当時の三千六百円に上つた基準というものは、当時はまだあとで鉄道料金なりその他諸物価の高騰を予算に入れていなかつたのであります。当時の物価において御承知のように運賃引上げ反対、物価値上り反対の線で、なおかつ五千二百円を要求しておつたのであります。ところが六千二百七円になりまするや、ただちに諸般の物が上つたのであります。これはみそ、しようゆに至るまで上つたのであります。そうすると当時の情勢から考えましても、当然人事院勧告しておりまするような基準から、ただいまの給與ベース引上げ勧告が出るのはむべなるかなでありまして、あなた自身の持つておる吉田内閣の辞書によつたところの説明では私は了解できないのでありまして、これはどこまでも昨年の七月、二千四百円を基準とするならば、今年の七月はどうかということは、一応理由もあるし、しかも理論が明徹であるのであります。あなたのは六千三百七百ベースが完全実施になつたのは四月であるという論拠しか出て来ないのであります。これは先ほどの討論によりましても明確にわかりましたが、そういう観点から、私はまず最初に御質問申し上げたように、十一月の四日に新聞記者と内閣総理大臣が面会された当時には、この十五箇月予算というものは編成中であつたのであります。同時にこれは国鉄の仲裁案の八千五百六円というものが出ておる。そういう状況において、政府はむりに給與ベース改訂という予算を編成しなかつた。その重大な責任とその種をまいたのが、ただいまの臨時手当支給という哀れな姿において現われております。それで私はこの臨時手当支給ということと人事院勧告、あるいはただいま十三号委員室において問題になつております国鉄の裁定というようなものと考え合せて、政府給與ベース改訂は行わないが、ともかくも年末臨時賞與というようなものによつてすりかえようとしておる。この給與ベース改訂の切実なる公務員諸君、公団、地方公務員諸君、そういうものの要求をすりかえようとしておるところの政府の意図というものは、私は明瞭でなかろうかと考えておるのであります。  そこでこれ以上あなたと議論いたしましても、吉田内閣の辞書によつて国民を律せんとするところの政府でございますので、私はこれ以上質問いたしませんが、さらにこまかく入つて参りますと、一体政府人事院のこのきわめて謙虚な、しかも成年男子一人、三千六百円で暮せるということは、全国どこへ参りましても考えられません。これほど人事院の資料というものは、一般労働者の実際生活とはよほど違つておるのであります。たとえば給與算定の基準にいたしましても、全国の民間の食糧を平均したところの千八百九十四カロリーというものを標準としまして成年の給與をきめておるのであります。こういう点につきましても、人事院の資料のとり方がいかに不親切で、しかも実情に即じないかということは明瞭であります。しかも謙譲の美徳を発揮して、吉田内閣と同じような意図のもとにつくられたと考えられるこの勧告ですら、政府が取上げないということは、私は先ほどの御説明ではきわめて不満足である。あなたの御説明によると、将来の施策として、将来は実質賃金の向上もはかるでございましよう。減税も行われるでございましよう。物価も横ばいでございますから、おそらく安定するでございましようというような、ございましようを基本として、このせつかくつくり上げようとする賃金ペース策定を押えよう。こういう労働者階級の声をむりに吉田内閣の辞書によつて制圧せんとする態度は、私は政治家としてとるべきでないと同時に、あなたの御答弁がきわめて、不十分であるという点を指摘したいのであります。  そこで結論的には、七千八百七十七円というものはきわめて少い。九千七百円でも少いが、これは謙虚であるけれども、まずまずさしあたつてこの程度はどうしても支給しなければならぬ現状にありますが、この勧告をあなたの方は受けるか受けないか。受けるとしたならばどういう予算措置を講じて、国会の審議にこれを持つて来るかという点について、御説明願いたいのであります。
  123. 増田甲子七

    増田国務大臣 大分長時間にわたる御意見は、つつしんで拝聴いたしました。但しわれわれは遺憾ながら、御意見と全然見解を異にしておる次第であります。お説のように、千六百円、千八百円、二千九百二十円、三千七百九十一円、五千三百三十円、六千三百七円というように、これはだんだん上つて来ております。こういうふうなことは、あるときにおいてはやむを得ないと思つております。どういうときかといいますと、緩慢なるインフレが継続しておるときであります。ところが四月以来今や安定施策は効果を現わしまして、おそらく終局的安定であろう、こういつております。そこでドツジさんあたりも、インフレというものは終局的にもうなくなつたのではない。まだインフレ高進の素因はあまたある。その一つの素因が給與ベース変更である。これは非常に憂えておられます。土橋さんのおつしやる九千七百円になつた場合の予算はどうでございましようか。おそらく一兆円になると思つております。そういうことで、名目賃金は倍になつたが、購買力が半減になれば同じです。せつかく西ドイツの幣制改革に成功されたドツジさんも、日本の改革については、給與ベースをいじれば失敗するかもしれないというて心配しておられた事実、このことは明瞭にしてもよいと思いますから明瞭にしておきますが、岡目八目でありまして、はたの人でなければわからないのかもしれません。私はあえて第一次吉田内閣をも含めて申しておりますが、幣原内閣、芦田、片山内閣、それから今度の内閣でありますが、それまでは緩慢なインフレ政策であつたのを、とにかくぬるま湯みたいなものは心地がいいが、これではいかぬから、寒い思いをしてでもいいから、岩の上に家を建てようというのが今の計画であります。その点からいえば、六千三百円でもこれはつらいでしようが、人事院勧告のように、去年七月をとつた。それから見ると今年の七月にまたとり直さなければならぬということでは、世の中の物価、実効価格は横ばいになつているが、素材のとり方が違うのだから、この際上げたらよかろうというような意見には、私は賛成しがたいのであります。緩慢なインフレが続いているときなら、素材のとり方が遅れても、時間のずれがあつても、あとから上げて行く。千六百円、千八百円、二千九百二十円、三千七百九十一円というように上つて来たのは、当時われわれは野党でしたが、これはやむを得ないと思つてつたのであります。当時の内閣が緩慢なインフレ政策をとつておりましたから、時間的なずれがありましても、とにかく追随しなければならぬ。ところが今日はそうではない。四月からは、今までのインフレの物価賃金の悪循環が始まる素因はあり年しても、今のととろの安定施策は成功しております。そういうときでございますから、苦しいかもしれませんが、公務員諸君はがまんをしていただきい。やがてわれわれは冬が去れば春が来る。そのときはたびたび申し上げております通り実質賃金に率いて昭和五――九年の一〇〇に対して、やはり一〇〇まで持つて行きたいのでありますから、それを持つて行かせるためにも、安定施策を成功させるために御協力を願いたいのであります。
  124. 土橋一吉

    ○土橋委員 私はこの委員会の席上において、吉田内閣の政党をとうとうとして述べられた官房長官の心中を察するものでありますが、私はそういうことを伺つているのじやない。当面あなた方の方で人事院勧告勧告として、国家公務員法の第二十入條であつたと存じますが、情勢適応の原則から、人事院がきわめて謙虚な、しかも食えないような賃金であるが、この勧告をしているのを、政府は応ずるのかどうかということを聞いたのでありますが、非常に前置きが長くてお聞き苦しかつたと思いますが、そこで今まで政府が折衝の過程においても、常に関係方面の名前をあげております。関係方面の名前をあげなければ、議員諸公なりわれわれを納得させることは困難だと考えて、常に関係方面とが、どの方面か知りませんが、そういう方面を盛んにあげておられるが、そういうことは国会の権威のためにも、また吉田内閣の権威のためにも、避くべきであると思います。これはあなた方は、われわれも同様でありますが、一般人民大衆から選ばれて、多数党の諸君が政権を担当されている日本の現状というものを考えれば当然でございますから、ぜひとも将来はそういうことのないように、あなた方の責任において問題を処理するのが妥当でございます。関係方面がどうおつしやつた、どなたがどうおつしやつたということは、あなた方と関係方面との内部の折衝でございますから、国会においてそういうことを論議する時代でもありませんので、そのことは私は避けていただきたいと思いますが、いかがでございましようか。
  125. 増田甲子七

    増田国務大臣 土橋さんの御意見、一応ごもつともでございます。但し私がドツジさんの名前をこの際あえて申し上げるのは、これは西ドイツの幣制改革でも成功された方でありまして、ことに九原則等は関係方面の提示された九原則です。しかもこれはどの政党も欠くべからざる政綱として掲げねばならぬ。共産党の諸君も合法政党でございますから、政党として存在している以上、欠くへからざる政綱として、プラツトフォームとして掲げなければならぬということを、去年のマツカーサー・レターにも明示してあります。これは土橋さんも御承知通りであります。そこでは九原則の具体的な、予算的な解釈はだれがするか一まず一応ドツジさんがするとわれわれは考える。このことは関係方面とも折衝じた事柄が引用されてもいい事項であるというように、われわれは許されている次第でございます。しこうして私はドヅジさんの名前は引用いたしましたが、しかも内容が、その処方箋が日本国民のためになるか。あにただに民自党政府とは言いません。日本国民はこれによつて起死回生の薬を得たのである。処方箋を得たのであると信じますから、われわれはまずよろしいと自主的に信じまして、自己の責任においてドツジプランというものを予算面において現わして、提案する次第であります。
  126. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただいまの御説は一応ごもつともなように見えまするが、私はそのようなことを聞こうとは思わなかつたのであります。私たちは関係方面でどのような御勧告なり御忠告がありましても、吉田政府の責任において政治が行われるめである。こういう前提をあなたに聞きたかつたのでありますが、その意が十分盡されないのは遺憾であります。そこで今当面の問題について、他の委員室におきましては国鉄の裁定書をめぐりまして、まだ論議中であろうと思いますが、私は国鉄の裁定書を、人事院勧告なり、あるいは調停案というものと一括的に眺めまして、政府はこの公務員諸君の給與に関しましては、少くとも六千円程度支給するのが最小限度で、私は正しいと思います。これについてあなたも十三号委員室においては、多分いろいろ各委員諸君の御説明を聞かれたと思いますが、六千円はこれは引くに引けない。たとえば行政整理を断行いたしまして、政府は少くとも、河野君もおられますが、この前の池田大臣の説明によりますと、年々二百三十億程度の行政費の節約ができるというようなことを、確かに臨時国会においても公然と言われたのでございます。そういたしますると、国家全体の大きな経理の内容において、二百三十億も節約ができ、同時にその結果現在公務員諸君は、これは地方公務員も教職員諸君に至るまで、非常な労働過重であろうと思うのであります。そのために新聞紙上におきまして、たとえば米の検査のために非常に過労で、遂に岩手県のある地方の諸君は死なれたとか、あるいは家庭悲劇が起つたというようなことは、労働組合の新聞を見る者には、毎日目にうつる事情でございます。そういうふうに労働過重がしいられ、しかも国民の中心的な官吏の健康も害されているというような、過重的な労働が強要されているという犠牲を考えてみますならば、今あなたが御説明くださつたような、従来の慣習賞與を出すというようなものではなくして、逐次累積をしておりますところの赤字の逓増、そういうものを勘案するならば、公務員の諸君の越年にあたりまして、また新年を迎えるにあたりましては、当然あの裁定書に書いておりますことが、国鉄の従業員といわず、一般公務員諸君に対する最小限度の手当の基準ではなかろうか。かように考えておりますが、それでもなおかつあなたは違うと言うのでありますか。それをお伺いいたします。
  127. 増田甲子七

    増田国務大臣 別に土橋さんと違つておりません。だんだん見解が一致しつつあるのでございます。ともかくもこの裁定、六千円ないし明年の三千円、合計九千円は、できるならばこれを受諾いたしたいというので、一生懸命努力いたしました。ところが一般の役所と違いまして――一般の役所はいささかの余裕がございますが、国鉄は一文もないのでございます。ないのみならず、八十五億の赤字を出すというわけで、いたし方なく皆さんの議決を得て、三十億を一般会計から借りて来る。貨物運賃を八割上げまして、それでどうなるかというと、ようやくゼロになる。明年三月三十一日においてプラス・マイナス・ゼロになる。こういうわけであつたので、予算上、資金上は、九千円出したいのでありますが、一円も出しにくい。出すことは不可能という状態になりましたが、それでは相済まぬしいたしますから、一生懸命客観情勢の打開等に努めまして、また経理関係についてもくふうをこうしまして、そうして十五億五百万円という金を捻出して、三千一円の範囲において裁定を受諾するという運びになつた次第であります。  それからその他のボーナスのことにつきましては、六千三百七円が低いから出すのであろうというお話でありますが、もとより昭和五年ないし九年に比べれば低いのであります。洋服を七十五円で二着買えたという時代とは違うのでありまして、低いのでありますから、どうせ年末は苦しいというわけで、総理以下非常に心配いたしまして、何とか多少でももちつき代を差上げたいというわけです。六千三百七円が昭和五年ないし九年に比べて低いことは、私は先ほど来成田さんや松澤さんにるる、はつきり言明している通りでございまして、将来はその線まで実質賃金を持つて行きたい。ともかくも苦しいから、この際何とかいたしたいという心持の現われが、三千十八円のボーナスに現われたというふうに御了承願いたいのであります。
  128. 土橋一吉

    ○土橋委員 それでは他の委員諸君も御迷惑と思いますから、もう二、三点で私は終りたいと思います。あなたの方では一般会計職員の單価が二千九百二十円になつております。また特別会計職員につきましては二千七百三十二円と相なつているのであります。その他公団関係におきましては三千四百九十九円、平均ただいまお話があるように三千十八円、こういうことになつております。そこでこの算定の基本的な基礎につきまして、一般会計の場合には二千九百二十円、特別会計の場合に二千七百三十二円と、差異が出ている。この差異の根拠はどういうようにおとりになつたか、お伺いしたい。
  129. 増田甲子七

    増田国務大臣 こまかいことは政府委員からお答えいたします。特別会計で低いのは、平均給が低いからでございます。公団関係が三千四百九十九円になつているのは、平均給が高いからでありまして、すべて一様のわくで、公平な扱いをいたしている次第であります。
  130. 土橋一吉

    ○土橋委員 そういたしますと、この法文になつて参りますが、この法文で第一條の第一項のしまいから二行目のところに「常時勤務に服する者に対しては、昭和二十四年度に限り、」こう書いてありますが、常時勤務に服するというのは、どういう内容をさしてあなたの方では考えておりますか。これについてはいろいろ問題があると思います。末端の農林関係とか、あるいは商工関係、特に農林関係等におきましては、あるいは現業の電気通信関係、こういう面におきましては、非常に問題があると思いますが、一応あなたのお考えを承つておきたいと思うのであります。どういう範囲を常時としているか、伺いたいと思います。
  131. 河野一之

    ○河野政府委員 常時勤務ということの範囲でありますが、この前当国会に提出せられまして法律になりました石炭手当一寒冷地手当と同じような方式で考える次第であります。常時勤務でない者といたしましては休職の者、停職の者、それから委員その他で、しよつちゆう役所に勤務している者でない。ときに応じて来られるというような者、それから單純な労務、日雇い労務と申しますか、そういうものが常時勤務ではないという解釈になつております。
  132. 土橋一吉

    ○土橋委員 そういたしますとあなたの御見解では、たとえば地方の木炭検査、あるいは米穀類の検査というような関係におります農林職員、そういうもので、たとえば政府考えでは、二箇月くらい農繁期に雇いたいというようなことになつておりますが、実際問題としてはその人が相当勤めているという場合には、これは常時と認めるかどうか。そういう者は実際問題としてはねるかどうか。こういう点をお聞きしたいと思うのであります。  第二点は、これは増田出官房長官にお聞きしたいと思いますが、第一項第五号の「連合国軍の需要に応じ、連合国軍のために労務に服する者」これは私は非常に問題だと思うのであります。それはデスク・ワークの場合には問題ないのでありますが、プリヴエイリング・ウエージによつて支給されている労働者、あるいはいわゆるPDと申しまして、各特別調達庁から委任を受げているというような範囲で労務している者、こういう者についてはどうなつているかという点が第二点でございます。  次は日雇い労働者諸君の窮状を考えまして、あなたも相当つておられると思いますが、現在の緊急失業対策処分によりましてまかなわれておりまする諸君が、全国ではおそらく数万に近いものがいると思うのであります。その諸君はこの議会にも毎日のように、三鷹、立川、あるいは川崎なり、各府県からお見えになつておりますが、この緊急失業対策によりまして、十三億五千万円程度の金が、この一月からずつと出るのでございます。今まで八億八百万円でございましたが、これは十二月で切れるのでございます。こういう諸君は、今日たとえば神奈川県におきましては婦人は百八十二円とか、男子が二百十円とかいう状態であります。東京あたりにおきましては大体二百三十二円を頂戴しておりますが、そういう諸君も切実な要求を持つております。これに対して一体応ずるのか応じないのか。今までこういう者にも何とかいう手当出しておりましたのでありますが、この賞與の恩典といいましようか、そういう恵みも、そういう国家の重要な仕事の一端に携わつております日雇い労働者諸君、しかも政府の支出によるところの失業対策処分によつて出ている諸君に対して、六千円程度要求が出ておりますが、われわれは当然これを支給すべきものである。かように考えておりますが、この諸君に対してどういうようなあなた方は親心といいましようか、越年にあたりまして、これらの諸君の考えている問題に対して応ずるかどうか。これが第三点。  第四点は地方公務員のうち、特に教職員の問題でございますが、先ほど成田君であつたと思いますが、質問があつたのであります。この地方職員諸君は、現在の地方財政が非常に窮迫しております関係上、政府は少くとも小学校教員に対しては担当の国庫負担令を出しておるのでございまして一従いまして地方公共団体で、特に農村において地方財政が非常に膨脹しておる関係上、また寄附を非常に募つております関係上、その市町村でまかない切れないというような場合には、あなたが先ほど御説明なすつたように、右に準じて支給されることを期待するというようなことだけでは、この問題は解決しないのであります。後半においてあなたは政府もある程度の補償をしなければならぬ。こういうことを仰せになつておりますが、実際にそういう諸君にも三千円程度支給ができるように新聞は報じておりますが、実際に出すのかどうかということが第四点であります。この点について簡單に御説明願いたい。
  133. 河野一之

    ○河野政府委員 米穀検査員、木炭検査員のごとき臨時雇いの者をどうするかというお話でありますが、これはかりに二箇月あるいは一箇月の切りかえでありましても、継続して雇われておるという事実がありますれば、これは常時勤務というように解釈しております。  それからPWの問題でありますが、これはこの法律にも第二條の二項に現われております。PWの者にもこれは適用されてやれる建前であります。それから緊急失業対策であります。PD、これは進駐軍労務のことと思いますが、これは特別職ということになつております。この第五号に書いてありまして、この分はやれるということに相なつております。
  134. 土橋一吉

    ○土橋委員 ちよつとあなたはPDにやれるとおつしやつたけれども、ほんとうにやれますか。あなたはデスク・ワーカーの場合と、プリヴエイリング・ウエージの場合は御承知と思いますが、PDの場合に間違いなくできますね。
  135. 河野一之

    ○河野政府委員 請負いの分は考えておりません。これは政府に雇われておる者ではございません。それから次は緊急失業対策でありますが、これは職業紹介所で毎日雇い入れになつているものでありまして、これは常時勤務というように私どもは考えておりません。それからもう一点、地方公務員の問題でありますが、地方公務員につきましては、先ほど官房長官が言われました通り、できるだけこの政府公務員に準じまして、支給されることを期待するものであります。
  136. 土橋一吉

    ○土橋委員 裏づけは。
  137. 河野一之

    ○河野政府委員 裏づけにつきましては、この一般政府公務員につきましては、予算範囲内において極力節約してやつておりますから、地方団体においてもそういう処置をとつていただく」とを期待しております。ただ教職員に対しては、従来の点もありますので、適当な機会に善処いたしたい考えております。
  138. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただいまの点、ちよつと私は二箇所だけお聞きしたいと思いますが、このPW、PDの関係におきましても、請負い制度関係でありましても、これは実際の仕事の内容と支拂いの関係においては、特別調達庁と大蔵大臣の協定によつて金が拂われておるのであります。そうしますとただ中間的な、何と申しましようか、そういう中に介在しておる諸君がおりますが、実際の職務性質は当然LRと同じように現場においても働いでおりますが、こういうものに対して、やはり政府の方で特別調達庁の方から、直雇いと同じように支拂われるのが至当ではながろうかと私は考えております。従つてもしあなたが考えておらぬというのならば、これは山口国務大臣なり、あるいは根道次長等と御相談になつて、早急に支給する手配をしていただかないと、非常に混乱を生ずるということを御忠告申し上げておきます。  第二番目の点は、あなたは日雇い労働者は毎日登録して雇つておるのだから、手当は出す必要はないという御見解のようですが、登録してそして常雇いと同じように、たとえば村山の貯水池におきましても、あるいはその他の道普請にいたしましても、もう職業安定所と登録済みでどんどん入つて来るようになつております。これはあなたにはこの前いろいろ交渉になつて、知識階級の失業者にも非常なごめんどうを願つたのでありますが、同じように政府はこげつかないと言つておるが、こげつきます。またこげつかざるを得ない政府の政策になつておるのであります。そういう諸君に対して、これもぜひ支給しなければならないと思いますが、これは官房長官の御配慮と御努力をお願いいたしたいと思いますが、いかがでございましようか。ただ出さぬということではいけない。現に毎日何箇月か継続して働いているのです。
  139. 増田甲子七

    増田国務大臣 土橋さんにお答え申し上げます。いわゆる緊急失業対策費によつて救済を受けている日雇い労働者に対しましては、これは公務員でもなし、定時定額所得者でもございません。いわゆる月給取りではございませんで、結局われわれは緊急失業対策費十三億五千万円なら五千万円を出しまして、できるだけ多くの顯在失業者を救済いたしたい。これをボーナス制度を設定するというようなことになりますと、これによつて救済いたしたい失業者も、救済し得ないということに相なりますし、あの事業の性質にかんがみましても、ボーナスを差上げる月給取りと同じように扱うことは至難でございます。
  140. 土橋一吉

    ○土橋委員 第二の点でございますが、第二條一項の末端におきまして、「その額は、五千円をこえることができない。」という制限を設けておりまするが、この制限はどういう意味であるか。なぜこの制限を設けたかということが第一点、第二項において「内閣総理大臣が定める。」と書いてありますが、この内閣総理大臣がきめる範囲について、あなたのおわかりになつている点を簡単に御説明願いたいのであります。
  141. 増田甲子七

    増田国務大臣 五千円といたしましたのは、一方において最低の人でも七百円は必ず固定的につくのですから、社会政策的な意味でございます。われわれは上に薄く、下に厚いという政策をとつた次第でございまして、この点は土橋君のおほめにあずかつてもいいじやないかと考えている次第でございます。  それから内閣総理大臣が定めるというのは、もつぱら手続に関する事項でございます。
  142. 河野一之

    ○河野政府委員 ただいまの給與月額の定め方でありまして、原則的には俸給、扶養手当勤務手当ということになるのでありますが、PW関係でありますならば、一般職賃金ということになりますので、そうすると、賃金が日額できめてあるものは、二十五日を月額とみなすという規則的な問題であります。
  143. 土橋一吉

    ○土橋委員 私がお聞きしたのは、こういう制限を設ける必要はないのではないかと考えているのであります。今度は社会保障政策というようなもので七百円としたのだから、ほめてもらつ  ていいと言われたのでありますが、私は決してほめないとは申しません。あなたの御努力にはわれわれの賛意を表するのでありますが、今日七百円という金額が、実際に越年にあたつて、どの程度の内容を含んで使えるかという問題である。従いまして私は七百円が三千円平均で出されるならばけつこうだと思いますが、七百円程度ではほめるわけに行きません。  次に五千円を越えてはならないということについて御答弁がございませんが、私は少くともこの場合において、一万五千円とか二万円というならば影響があるけれども、五千円を突破するような人は、そうたくさんはいないのであります。現にあなたのお示しになつ支給するものを見てもわかります。従つて五千円を超過してはならないという規定は当然除外すべきである。  それから第二項は手続だとか何とかおつしやつておりますが、この問題については、きようあなたはお急ぎのようですから、後日また増田官房長官にお伺いします。  要するに今までの質問で、政府の御回答は、吉田内閣の地場から割出し説明で、一般の官公吏諸君の生活の窮状を知らない。また民間の給與支給に関する基本的なものとしては、もちろん多少の異論がありましようが、普通常識から考えたものとはおよそ異なつた地場から、吉田内閣の間違つた方針から御答弁になつておりますので、こういう御議論はわれわれは賛成しかねるのであります。そこでなお後日いろいろ討論等もございますが、とにかく私はただいまの答弁では満足できないから、あらゆる発言を留保して終る次第でございます。
  144. 星島二郎

    ○星島委員長 他に質疑もないようでありますから、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。  それでは明日は午前十一時に開会し、ただちに討論に移ることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時四分散会