○
瀧本政府委員 ただいま
山下人事官から大略の御
説明がございましたが、実際その衝に
当りました
給與局長といたしまして、
本案をもう少し詳細に御
説明申し上げたいと存じております。新
給與水準といいますか、今回の
勧告を作成いたしまする
基礎は、ただいま
人事官から
お話がございましたように、直接には本年の四月に
人事院がみずから行いました
民間給與実態調査というものであります。この
民間給與実態調査と、それから二十四年の七月から二十五年の六月に至る間の
食糧需給計画に基きまする
国民一人
当りの
栄養攝取可能量、すなわち千八百九十四
カロリーという
数字、そうしてこの
数字によりましていわゆる
マーケツト・バスケツトというものをつく
つたのでありますが、それをつくるにつきましては、
厚生省の
栄養調査というものを参照いたしております。なお
地域によりまする
生計費の
差等というものが、昨年に比べまして大
都市と
地方小都市あるいは町村というようなところの
生計費の
差等というものが減少しつつあ
つたのでありまするが、われわれはその的確な
資料といたしまして、本年の五月に
総理庁の
統計局において行われました
特別消費者価格調査というものを最大の
資料といたした次第であります。従いましてわれわれが
計算の
基礎に用いましたのは、以上のような
資料が主たる
資料でございまして、たとえば毎月
勤労統計でありまするとか、あるいは
CPS、いわゆる
消費者価格調査、それから
指数としてつく
つてありますところのCP1、そういうようなものはこういう
資料を生かして使いまするための
補助手段であつたということを申し上げたいのであります。われわれは昨年
勧告をいたしましたあとにおきまして、絶えず
民間給與の動向、あるいは
生計費の
推移の
状況というようなものにつきましては、
研究を重ねてお
つたのであります。そういう際におきましては、
CPSでありますとか、あるいは毎月
勤労統計というものが、非常に有力な
資料と
なつた次第であります。しかしながらわれわれが
給與ベースを算定いたしまするには、そういうものだけではできないということを申し上げておきたいと思います。それで昨年の
勧告以後におきまして、当時の
状況を見ておりますると、
賃金は上
つて行く、
生計費も上
つて行くというような
状況で、これは近く
改訂しなければならぬということが当時——本年の一月ごろからすでにいろいろと予見されてお
つたのでありまするが、そのためにわれわれは本年の四月に、新
年度に入りますと早々、
民間給與実態調査というものを
行つたのであります。また、これは
総理庁でおやりにな
つたのでありまするけれども、われわれの方からいろいろお願いをいたしまして、
希望等を述べまして、これも新
年度に入ると早々できるように五月の時期を選びまして、
特別消費者価格調査というものをや
つたのであります。従いまして、時期的にもそういう
資料が整備された後において、われわれの
計算が可能になるということが言えるのであります。実際問題といたしましては、そういう
資料が完全に使用し得るようにな
つたのは九月末である。当時におきまして毎月
勤労統計または
CPSというものは、一番新しい
資料といたしまして、いわゆる七月分が使い得たのであります。従いまして、われわれは最新の
資料といたしまして、七月の
状況にすべての値を換算いたしまして、そうして今回の
給與ベースの
俸給表の
計算をやつた、そういう次第をまず最初に申し上げておきたいというように考えます。そしてこの前提といたしまして、われわれは
給與ベースというものをかえるという場合におきましては、單に一月あるいは二月くらいの毎月
勤労統計でありまするとか、あるいは
特別CPSというものだけの
動きを見ておりまして、いわば神経過敏にそういう
数字に拘泥いたしまして、かえるということはとてもできないので、やはり相当長期にわた
つて傾向というものを見まして、そうして今後の
傾向がどういうふうになるであろうということを予見いたしまして、これをつくらなければならないというふうに考えるのであります。
われわれが
本案を作成いたしましたときの
見通しとして、どういう
見通しを持
つておつたかということを簡単に申し上げますると、当時
個々の事実といたしましては、あるいは
企業整備の結果
失業者が出ておりまするとか、あるいは
失業者を出さないまでも
賃金の切下げをしておるというような
事情は、
個々のニュースとしては聞くのでありますけれども、われわれはそういうような
個々の事実に基いてやることはできないと思うのであります。どうしても
統計によらざるを得ない。毎月
勤労統計というのが、その
金額において、われわれはそれが日本の全工場の
賃金の
平均だというふうにはもちろん考えていないのでありまするけれども、その毎月の
賃金の額がどういふうに動いて行くかという、いわゆる
推移の
状況というものには相当の信用を置いているのであります。毎月
勤労統計というものを見ておりますが、それがどういうふうに変化して行くかということを見ておりますと、これは昨年の十二月に、いわゆる
経済三原則というようなものが行われ、いわゆる
ドツジ・ラインというものが行われたのでありますが、それを境といたしまして、この
傾向は非常に違
つているということは、すでに当時においても早くからわか
つてお
つたのであります。従いましていわゆる
ドツジ・ラインの行われました後において、
賃金の
傾向というものは一体どういう
傾向をたどるであろう。上
つて行くものであろうか、下
つて行くものであろうか、あるいは
持合いを保つものであろうか、これはたいへんむずかしい問題であります。こういう問題を推定いたしますのに、われわれは数学的な
方法を用いて想定いたすということもや
つたのであります。しかしながらまたそういう操作は数学的にただ現在の
数字を
基礎にいたしまして、将来の
数字を算出してみるということだけでは、これははなはだ片手落ちなのでありますから、いろいろの起
つて来る
経済現象というようなものを種々勘案いたしまして、そうして将来のことを予見するという必要が起
つて来るのであります。われわれがいろいろや
つてみますると、どうも貿易は不振でありそうだ、また
国内滞貨ができ、またそのために原料を買い入れる資金が不足するというような材料が出まして、そうして将来においては
賃金は下
つて行くのではないかというようなことが考えられたのであります。しかしながらいろいろ数学的な
研究そのほかのことをや
つてみますると、どうも下
つて行くとも一概には言えない。急激に
民間賃金が上昇して行くというふうにも考えられない。どうもここ当分は今の
経済の
事情が変化がない限りは、まずまず
持合いを保
つて行くのではないだろうか。あるいは
名目賃金で申しまするならば、少々増加はするかもわからぬが、まず大きな
見当といたしましては、
持合いを保
つて行くものであろうというふうに
見当をつけたのであります。
それから
各種物価指数等の
動きを観察したのでありまするが、たとえば
やみ物価指数というようなものは、漸次下
つて行くというような
傾向もいろいろと知
つておりました。しかしながらまたここに
補給金の
撤廃というような問題もございまして、現在の
傾向というものが今後持続されるというふうにも考えられない。従いましてわれわれが得ました結論といたしましては、いわゆる
消費財に響いて来るような
価格というものは、今後やはり
持合いないしは幾分上るかもわからないが、その
可能性は少い。まずまず保合であるというふうに大体
判断を下しているのであります。
それから
生計費につきましても、必ずしも下
つて行かない。
生計費の
指数といたしましてはいわゆる
CPSに基いてつくりました
CPIというものがあるのでありますが、これは従来
フイツシャー式という
方法によ
つて計算されてお
つたのであります。
フィツシヤー式というのはどういう
方法であるかと申しますれば、
指数というのはある
一つの
時点を
基礎にいたしまして、その
時点に対して現在がどういうふうに変化しているかということを見るのであります。ところで非常に
実質賃金の低下しておりますような場合におきましては、そういう非常に
実質賃金の低下いたしましたときを
基礎にと
つて、その
実質賃金が漸次向上しつつあるというような場合に、その非常に低い
水準をとりまして議論いたしますならば、
指数というものは漸次上
つて行くという
傾向になるのは当然のことであります。そこでいわゆる
基準時点だけでなしに、現在の
生活内容というものを加味いたしまして、現在の
生活内容、
基準時点の
生活内容をもとにいたしまして、それで現在の
金額を
判断すればどうな
つておるか。また現在の
生活内容、今度は逆にさかのぼりまして
基準時点ではどうな
つておるか、こういうようなことを両方から眺めまして、そうしてそれを二つかけ合せてさらに平方で開くというような
方法を、
フィツシヤー式というような名で呼ばれております。すなわち
実質賃金が次第に向上して行くと、非常に低い
実質賃金の場合から向上して参るという場合には、
フイツシヤー式というのが
指数としては非常に重宝なものであるというふうに考えられておりました。この
フイツシヤー式の
指数によりますると、現在まで、これは七月までしか
計算がしてございませんが、必ずしも
CPIというものが下
つておるとは言えないのであります。ところが
総理庁の
統計局におきましてはこの
フィツシヤー式の
指数は本年の七月で打切りまして、そのかわりに
ラスパイレス式という
指数を用いたのであります。この
指数を用いまして本年七月以降はその
指数によることはもちろんでありますが、昨年一月からずつと逆に
計算いたしまして、昨年の一月ないし十二月を
平均いたしまして、そういう
基礎のもとに昨年の一月からこつ
ちの動きをずつと見るということをいたしてお
つたのであります。御存じのように昨年は戦前に比べましてまだ
実質賃金は五割そこそこでございます。すなわち非常にこの
生活内容も低い
状況であります。そういうときをと
つてあるのでありますが、しかしいろいろな観点から二十三
年度の
生活というものが一応落ちついたと考えて、そろして今度はそういう
一つの
生活内容というものを
基礎に置きまして、そういう
生活をいたすとすれば、現在はどういうふうにお金がかか
つておるか。
実質賃金が五割というところでそういうことを考えるということを、現在や
つておるのであります。その
指数によりますると、いわゆる
ラスパイレスの
指数によりますると、本年五月以降におきましては、漸次
生計費は下
つておるという
状況が現われておるのであります。ところがただいま私が御
説明申し上げましたように、
指数の本質的な性格というものを見てみますると、
一見消費者価格指数というものが下
つてお
つても、これは現在の実情において、もう下
つておるからそれでいいというふうに
判断していいものかどうかという点につきましては、やはり問題が残るというふうに考えるのであります。いろいろ勘案してみまするのに、
生計費も今後
補給金の
撤廃というようなもののために、いろいろ
消費財に響いて参りまして、そうして少くも来年の一、二、三月ごろまでにおきましては、やはり幾分の上昇をして行くであろうというような
見当を持
つておりました。すなわち七月を
基準にいたしましてわれわれは
計算いたすのでありますけれども、将来の
見通しといたしまして
物価、
生計費、
賃金、こういうようなものはまずまず七月の
状況が、ここしばらくは
持合いになるという
一つの
見通しを持
つてお
つたのであります。かかる
見通しのもとにわれわれは
作業をやつた次第であります。
作業につきましてはただいま
人事官から概括的な
お話があ
つたのでありますが、なおその
計算の
基礎等につきまして、若干補足いたしますれば、本年は安本の
食糧需給計画によりますると、
国民一人
当りの
攝取カロリーというものは、一日について千八百九十四
カロリーということにな
つております。昨年の
計算に用いましたのは千八百五十
カロリーでございます。お配りいたしておりまするこの
資料の一ページ目のところをお開きくださいまして、お聞きとり願いたいというふうに考えます。昨年は千八百五十
カロリーであ
つたのに、本年千八百九十四
カロリーとするのはけしからぬじやないかという
お話がなきにしもあらずというように考えるのでありますけれども、千八百九十四
カロリーというものは、これは
経済安定本部におまして、二十四年の七月から二十五年の六月間においては、
国民一人
当りこれだけは
攝取ができるのである。
一般国民はこれだけとるのである。そういうような
事情がありますので、官吏だけが千八百五十
カロリーに押えられなければならぬという
事情はないのであります。従いましてわれわれは
国民として許されているところの
栄養攝取量というものを
基礎にいたして、
計算いたした次第であります。この
カロリーというものは、これは
食品別に
栄養量というものは違うわけでありますけれども、この
食品には可
食部分と
廃棄部分というものがあるのであります。これはいろいろなものによ
つてその率が違いますが、極端な例を申しますと、たとえば
はまぐり、しじみというようなものにおきましては、鶏はからを食うのでありますけれども、普通の場合はからを捨てる。それは
廃棄部分が非常に多いのであります。また
いも等におきましても皮をむく。従いましてそういう
状況をいろいろ
計算いたしまして、
ほんとうに
国民一人
当りが
攝取し得る
カロリーは、どれだけになるかということを換算いたしてみますと、千八百九十四
カロリーということになるのであります。これは
国民一人
あたりの
攝取可能の
カロリーでありますから、実は
国民にはおとなもおりますし、老人、子供というふうにおるのでありまして、おのおのその
攝取量が違う。これを成人の
單身男子に換算いたしてみますとどういうことになるかと申しますと、その次に書いてありますように二千二百八十五
カロリーということになるのであります。参考までに昨年の
数字を掲げてございますが、昨年はこれが千二百
カロリーである。すなわち本
年度におきましては
成年男子につきまして、八十五
カロリーだけ一日に
攝取カロリーがふえておる。こういうことになります。そこでわれわれはこの二千二百八十五
カロリーを
基礎にいたしまして
マーケット・
バスケットというものを作成いたしましたのであります。
マーケット・バスケツトという
言葉はあまり耳なれておりませんが、その
言葉が示しますように、いわゆる市場に持
つて参りますところの
買物かごというような意味でなかろうふと思います。日本語にまだ適訳されておりませんが、そう思うのであります。すなわちお米が
幾ら、麦が
幾ら、野菜が
幾らというように、それぞれ
食品別にある
一定電量を考えまして、かみ合された
一つのものである。これに現在行われておりますところの
実効価格というものをぶちかけて
計算いたしますならば、その
一つの
生活内容というものの
値段が、そのときどきの
値段によ
つて計算がされて来る。こういうものが
マーケット・バスケツトであるというふうにお考え願いたい。
ほんとうを言いますと食いものだけでなしに、
被服費、
住居費、
光熱費、
雑費というようなものを、皆そういうふうに計画的に
一つの
生活内容として考えるべきでありましようが、実は
マーケツト・バスケツトをつくるということは、非常にむずかしいのであります。われわれの現在の能力をも
つていたしますれば、せいぜい
食料品についてだけで、
従つて被服費、
住居費、
光熱費、
雑費等につきましては、これは便宜な
手段によ
つておるということにな
つております。そうしてわれわれが今
俸給表を考えなければならないというところは、これはいわゆる
勤務地手当のつかないところであります。その
勤務地手当のつかないところで
俸給表を考えなければならない。ところが先ほども申しましたように、
地域による
生計費の
差等というものは、昨年に比べれば漸次接近しつつある。これは毎月のいわゆる
CPSによりますと、
CPSというのは二十八
都市調査が行われておりますが、二十八
都市の
CPSから帰納的に考えてみますと、漸次接近しつつあるということがわか
つてお
つたのでありますけれども、本年の五月の
特別CPSをもちまして、決定的にそういう
判断をいたしたのであります。すなわちその結果によりますと、
地域手当のつかないところは、
東京から二割下である。すなわち
地域手当のつかない
地域を
基礎にいたしますれば、一番
地域手当の多いところも二割でよろしい、こういう結果にな
つたのであります。従いまして
値段を
計算いたしまする基盤というものは、昨年の
地域手当のつかない
丙地とは異な
つている。ここにまた
一つの問題があるわけであります。それで
マーケット・
バスケットというものを、
地域手当のつかない
地域ですべて考えて行くということをいたしますれば、理想的なのでありますけれども、これまた
資料が十分なかつたり、いろいろな
事情がございますので、われわれは一番
資料の豊富な
東京につきまして、この
マーケット・バスケツトを作成したのでありますが、その値が六十八円十一銭というふうにな
つております。このように
東京においてその値をつくりまして、
CPS等の各種の
資料を用いまして、これを
地域手当のつかない
地域に換算すればどうなるかということをや
つてみますと、先ほど
人事官から
お話がございましたように、結局においては三千六百六円というものが出るのでありますが、その前に
計算の便宜といたしまして、いろいろや
つております。
それはまず
東京についてマーケツト・
バスケットの一日の値を算出いたしまして、それを月額に換算し、さらに
CPSで言うところの小
都市にまず換算いたしました。そうして小
都市におきましての
被服費、
住居費、
光熱費、
雑費というようなものを、実際の
CPSの
数字から出す。その
CPSの
数字は、やはり世帯別に
調査しておるのでありますから、老人もおりますし、子供も女もおるわけでありまして、すべてが出て参るわけでありますが、それを
成年男子に換算してみるとどうなるかという
数字を出します。次にその両者を加えて、さらに
地域手当のつかない
地域に換算するというような
方法をと
つておるのであります。まず小
都市においてはどういうことに
なつたかと申しますと、
東京で
計算いたしました
CPSを月額に直して、これを
CPSで言うところの小
都市に換算いたしますと、千六百六十二円ということになり、
食糧費以外の小計が千五百四十二円ということになりますので、これを加えまして三千二百四円ということになります。これをさらにこの
地域手当のつかない
地域に換算いたしますと、三千百五円になります。この三千百五円は、そういう
地域において
生活いたしまするために、手取り
賃金として必要であるという
数字でございます。これは税金もございまするし、また共済組合、年金等の掛金もあるわけでございますから、そういうものを逆算いたしまして、いわゆる総
賃金と申しますか、
平均差引前の
賃金に直して
計算いたしますると、これが三千六百六円になり、去年は二千四百七十円であつたということになります。すなわち成年
單身男子の
扶養手当のつない
地域における
生活費が三千六百六円ということになります。これが去年は二千四百七十円でありました。繰返して申し上げますが、この二千四百七十円、三千六百六円というものは、同じ基盤でそのことが考えられているのではないのであります。
カロリーも増しておりますし、それを
判断いたしまする
地域も違
つておるのであります。従いまして、二千四百七十円にある率をかければ、三千六百六円になるというものではない。これは非常に大切なところなのでありまして、去年の
状況をもとにいたしまして
傾向を見て、それにある率をかけて今年の
計算をしたのではないのであります。去年は去年の
計算、今年は今年の
計算で、これは違うのでありまして、本年の七月の
状況に基いて
計算したものが三千六百六円でありますから、比較をすることは自由でありますが、その
計算過程におきまして、去年の
数字を
基礎にして、それにある率をかけて出したものではないということを、特に申し上げておきたいと考えております。以上のようにいたしまして、成年
單身男子の一箇月
あたりの
生計費が、三千六百六円というふうに出て参
つたのであります。
それから
民間給與調査というのは、どういうことをやつたかと申しますると、従来べースということを言います際にも絶えず毎月
勤労統計の
賃金額というものが
一つの目標にな
つて参
つたのであります。これが民間における
平均賃金と考えられてお
つたのであります。しかしながら官吏の年齢構成と申しますか、あるいは男女構成、あるいは非常に技術的な
作業、あるいはごく軽い給仕のような
作業というように、いろいろな仕事があるわけでありまするが、そういうものの内容は民間と非常に違
つておる。従いまして毎月
勤労統計の
資料として出て参つたものだけとりまして、これが官吏の
給與水準でなければならぬということは、はなはだずさんな言い方であります。また
民間給與にいたしまして竜、たとえば毎月
勤労統計というものは、比較的大工場について
調査がされておる。従いまして中小工場というようなところの
状況は、よく現われていないというようなことがありまして、必ずしも民間の
平均であるということはなかなか言いにくい。但しこれは
傾向を見るのには非常によろしいということは申せるのであります。そこでわれわれが官庁の
賃金水準が民間とどういう関係にあるかということを見ますためには、官庁の職務と同じような職務をや
つておる民間の人は、どういう
賃金をもら
つておるかということを見なければならないのであります。そこで
職務内容、責任の程度の同じようなものをと
つて比較いたしまして、初めて官庁の
給與は民間に比べて低いということが確認されるわけであります。昨年もこの
民間給與調査というものを
行つたのでありまするが、本年もまたこれと同様の
調査を
行つたのであります。その結果は先ほどからごらんいただいておる
説明資料の民間給餌
調査の結果というところをお開き願うとわかりますが、民間において官庁の職務と同じような職務を
調査いたしまして、官庁は級によ
つて職務内容というものがきま
つておりまするが、それに分類して、それの
平均額を求めてみますと、一番左の欄に書いてございまするように、一級が三千二百十四円、二級と申すのは守衛というような年を
とつた人が多いのでありますが、これが六千六百二十九円とな
つておりますが、これはわれわれの方としては使わなかつた。三級のところが六千百十五円とな
つておりまして、以下ずつと上りまして、十二級のところが一万八千八百六十七円、十四級が二万九千八百八十八円とな
つております。ただしこの十三級、十四級というところになりますると、数が非常に少いと同時に、その
賃金額に変動が非債に激しいのでありまして、
平均をと
つてみても意味がないので、われわれは便宜十二級まで用いました。あとは
数字的操作によ
つて十三級、十四級といふものをきめたのであります。この四月における民間の値をもとにして、
民間給與調査は全国にわた
つて行
つておりまするから、まずわれわれの
計算の便宜のために、
地域給のつかない
地域にこれを直して考えればその
金額はどのくらいになるか。この
民間給與の中には、家族手当も含まれておりますし、特殊勤務手当というものも含まれておりまするから、もし官庁と同じような
扶養手当が支給されるものとしたならば、どれだけ引いたらいいか。さらに特殊勤務手当を引いたらどれだけになるかというようにして、官庁の
俸給表に相当する級別の額というものを求めたのであります。この級別の額を求めますのに、そのままではなかなかでこぼこが多いので、さらに数学的な補正を行いまして、なめらかなものにいたしました。但しその額は四月の額であります。従いまして、われわれ議論を七月でしているのでありまするから、七月に換算しなければならない。このために毎月
勤労統計の
傾向を用いたのであります。すなわち毎月
勤労統計の工業
平均賃金の四月の額が、七月にはどれだけに増加しておつたかと言いますと、二・三%増加してお
つたので、一・〇二三というものをかけて七月の値を出したということにな
つておりまして、一番右の欄に書いてありますように、一級が三千五百九十三円、二級が四千百三円、十四級が二千百九十八円という
数字にな
つております。
われわれは新
俸給表を算定いたしますのに、この一番右の欄と、先ほど申しました三千六百六円というものを、二つの
基礎にいたしたのであります。三千六百六円という
数字は、ここでごらんいただきますればおわかりになりますように、一級と二級の間の
数字であります。すなわち三千六百六円をこの一級と二級の間の辺に当てはめますれば、これでよろしいということになるのでありますが、なお別の見地からいろいろ考察いたしてみました。すなわも
東京における各省・各庁の五級職以下の
調査をいたしたのであります。その結果はやはりお手元の
資料に書いてございますから、あとでごらん願いたいと思うのであります。三級というところでは扶養家族が
幾らか出ております。ところが二級、一級というところではほとんど扶養家族がない。その
平均年齢はどれくらいかと申しますと、数え年で十八・六才くらい、満年齢に直しますと満十八才ということになります。労働
基準法におきましても、満十八才というものは純成人として取扱われておるということもございますし、また現在二級一号の任用
基準というものは、新制の中学校を卒業いたしまして、一年ないし二年経過したところで格づけされるわけであります。その年齢は十八才くらいであります。かかる諸
事情を勘案いたしてみまするのに、三千六百六円という
数字ほ、二級の一号にきめるのが適当であろうという結論に到達いたしたのであります。
それから十四級の
平均でありますところの二万百九十八円というものは、七十号に格づけいたしまして、そうしてその間を
等比級数でつないだ。そのような
方法によりまして、われわれは一号ないし七十豪の
俸給表をつくりました。それから一般
俸給表を作成した、こういうことになるのであります。なぜ
等比級数でつなぐかという御質問があるかわかりませんが、これはいわゆる
職員といわれております人々の昇給というようなものを、いろいろ
統計的に観察しておりますと、上り方が、たとえば昇給の場合に百円ずつ昇給するというように確定するのは非常にまれなのでありまして、おおむね率でいたすのであります。そうして多数観察の結果は、やはりこの
指数函数というものが一番よく適合するということも、われわれ経験の結果知
つておりますので、これは
指数で結ばれた。これは昨年も同様でございます。そのようにいたしまして、本年の一号ないし七十号というものは結ばれたのであります。その一号ないし七十号がどういうふうにな
つておるかと申しますと、今ごらんいただいております表から三枚目のころに新
給與案と現行号俸との比率というのがございますから、ごらん願いたいと思います。新号俸におきましては、先ほど申しましたように二級一号というのが三号になるのであります。通しで申しますと三号になります。これが三千六百六円ということになります。ずつと次のページのまん中の欄の上から二つ目に七十号というのがございます。ここが二万百九十八円ということにな
つております。この間をここに掲げておりますような
数字で結んで行つた。その二号から一号の差額はどれだけである、三号から二号の差額はどれだけかと申しますと、横けいの欄に八十九円、九十二円というふうに書いてございます。これは上に行くほどその差額は
幾らかずつ増加いたすのであります。現行の号俸と新号俸とを比較いたしてみますれば、三段目に書いてございますように、一号におきましては四二・七%の増加にな
つておるのであります。それからずつとパーセントは減じまして、たとえば二十号俸のところでは三六%にな
つておる。四十号俸のところでは二九・四%漸次漸減いたしまして七十号俸のところでは二〇%、こういうふうに現在の号俵と新号俸との比率というものは、号俸が進むに従いまして逓減いたしておる。こういうことを
一つ申し上げておきたいと思います。なお現在の号俸の一級一号と七十号と比較いたして見ますならば、二千四百円から一万六千八百三十四円、この倍率は約七倍にな
つておりまするが、新号俸におきましては一号が三千四百二十五円、七十号が二万百九十八円で、約五・九倍というふうに幅が縮ま
つておるのであります。
以上のごとくいたしまして、一号ないし七十号を定めました。この一号ないし七十号をもとといたしまして、一般
俸給表というものを作成しておるのであります。現行の一般
俸給表といささか異な
つておりまして、どういうところが違
つておるかと申しますと、二級、三級、四給というところは従来は一号ないし七号しかなか
つたのでありますが、これを八、九、十と延でしたのであります。すなわちこの給は、現在の呼び方でいたしまするならば、官吏ではないのでありますけれども、こういうところに頭打ちが非常に多いというわけで、この点を少し延ばすことにいたしました。さらに従来六級と十級のところに、理由なくして号俸が一号飛んで、すなわちこの間の昇給というものは理由なくして、ほかのところに比べますと、大幅の昇給をするというところが二、三箇所あ
つたのでございますが、その点はもう現在は何ら理由がございませんので、その点を是正して、そして二級の大幅の昇給ということは、七十号俸のところにはないというふうに改正いたしたのであります。以上のごとくして一般
俸給表をつくりました。特別
俸給表は今回は従前
通りの形をそのまま用いたのであります。
なお今回は新たに検察官等を一緒に
勧告いたしたのであります。検察官等は、従来一般職でありながら別の
法律で定ま
つてお
つたのでありますが、なるべく今後は統一して参る方がよろしいという方針のもとに、これを同じ
勧告の中に入れまして、今後新
給與実施に関する
法律を改正いたしまする際には、特別
俸給表としてこれを差加えるということをいたしたいと考えておる次第であります。
資料がいろいろ附加されておりますが、要はただいま申し上げたようなことが書いてあるわけであります。なお本日二、三点
資料をお配りいたしましたが、これは今一般職の
公務員の
給與ベースを上げることによ
つて、
賃金、
物価に影響があるかどうかという点を検討したものが一点であります。これは六千三百円ベース
改訂のときにおきましても、すでに影響はなかつた。官吏の
給與ベースを上げることが、何ら
民間賃金を引上げることにならず、また一般
物価に影響しなかつたということは、
統計が明らかに示しておるのでありますけれども、今度はどういう
事情が起きるであろうかということをいろいろ考えました結果、こういう
資料をつく
つておるのでありますが、われわれの見るところによりますと、一般職に属する
国家公務員のみならず、地方
職員、それから国有鉄道、専売会社あるいは公団というようなものが、
国家公務員と同様に俸給是正がされるということがございましても、なおかつ
国民全体の購買力からいたしますならば、たかだか一・八四%——これは
資料に書いてございますが、その程度の購買力の増加にしかならない。こういう
研究をいたしておるのであります。従いまして今回の官公吏の
給與ベースの
改訂というものは、購買力にさしたる変動をもたらすものではない。現実に民間の大会社の
賃金水準を表明しておると見られる毎月
勤労統計等の
数字よりははるかに低いのでありますから、これまた民間の
賃金に影響することはございません。すなわちわれわれの現在の
見通しといたしましては、官公吏の
給與ベースを上げるということは、何ら
民間賃金なり
物価生計費には影響はないであろうというふうに考えておる次第でありまして、そういうような
資料をお手元に差上げました。なお先ほど
ラスパイレス、ライッシャーというようなめんどうなことを申されましたが、それがどういうふうにな
つておるかという一覧表みたいなものをお手元に差上げた次第でございます。なおこの図表は、
民間給與に比べまして官庁の
給與がいかに遅れておるかということを表わしたグラフを差上げた次第でございます。以上をもちまして新
給與水準に関します一応の
説明を終らしていただきます。