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1950-04-30 第7回国会 衆議院 考査特別委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月三十日(日曜日)     午後一時二十三分開議  出席委員    委員長 鍛冶 良作君    理事 菅家 喜六君 理事 小玉 治行君    理事 内藤  隆君 理事 吉武 惠市君    理事 石田 一松君 理事 小松 勇次君    理事 猪俣 浩三君 理事 梨木作次郎君       青木  正君    麻生太賀吉君       小川 平二君    木村 公平君       篠田 弘作君    島田 末信君       高橋 英吉君    中馬 辰猪君       塚原 俊郎君    坪内 八郎君       西村 直己君    前田  郁君       大森 玉木君    坂本 泰良君       横田甚太郎君     ————————————— 四月三十日  委員安部俊吾君、高木松吉君、岡延右ェ門君、  佐々木秀世君、田渕光一君及び橋本登美三郎君  辞任につき、その補欠として青木正君、中馬辰  猪君、高橋英吉君、麻生太賀吉君、前田郁君及  び坪内八郎君が議長の指名て委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本共産党在外胞引揚妨害問題中間報告書  に関する件     —————————————
  2. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 会議を開きます。  この際御報告申し上げます。長崎会議長及び長崎県知事より委員長あてに、ソ連地区抑留者引揚げに関するタス通信報道について電報かありましたので、これを朗読いたします。  ソ連地区日本人抑留者引揚完了タス通信報道は、未引揚者家族を悲痛と不安に陥れ、日夜憂慮する家族の心情は見るに忍びず、これら家族に希望と力を与えるため、何分の御高 配を煩わしたし。          長崎県議会議長          長崎県知事  これより日本共産党在外同胞引揚妨害問題につきまして、委員長においてすでにお手元に配付してある通り中間報告書原案を作成したのてありますが、これを議題といたします。  なおこれにつきましては、石田君及び梨木君より修正意見が提出されておりますのて、まず石田君の修正意見、次に梨木君の修正意見について趣旨説明を求め、原案修正意見を一括して討論に付し、採決に入りたいと存じます。  それではまず石田君より修正意見説明を求めます。石田一松君。
  3. 石田一松

    石田(一)委員 私は日本共産党在外胞引揚妨害問題中間報告に対しまして修正意見を申し述べ、修正の動議を提出するもりてあります。  まずこの報告書の一枚目の裏でありますが、三行目に「地区収容所に宛て、徳田書記長の名て、」とございますが、この「収容所に宛て、」という意味でございますが、この点につきましては、明らかにこれが赤十字社から発行された捕虜用往復はがきであるということは、証言によつて明らかになつておるのであります。しかも捕虜用のいわゆる往復はがきは、捕虜個人として祖国にある家族あるいは知己に通信するためのものでございまして、その返信収容所あてに出されるということは、とうてい常識的にも想像できないと考えるのております。しかも收容所にあてるか、收容所内日本人捕虜個人にあてるかという問題につきましては、相当これに重要な意味がありますので、この「收容所」を「收容者に宛てて」と修正をしたいと思います。  さて次に六行目てありますが「亀沢富男君の証言によつて明かとなつた。」この「明か」の上に「ほぼ」をつけて「ほぼ明かとなつた」と修正をいたしたいのであります。  二枚目の裏の十行目の一番末尾の「証人の一致した証言であります。」この「証人」の上に「ほとんどの証人の一致した証言であります。」と「ほとんど」を挿入したいと思います。  三枚目五行目でありますが、ここにも「証人は一致して」とありますが、これは「ほとんどの証人は一致して「期待している」」と修正したいと思います。  同じページの一番末尾の「喰ひ違ひを見せているのであります。」て切りまして「てありますから」以下次の裏のページの初めの二行の「ものといはなければなりません。」というところを削除したいと思います。  この点につきましては、よけいな説明も不必要かとも思いますが、少くとも菅君の証言は以後六箇所にわたわまして、最も重要なる証言一つとして用いられているにもかかわらず、このところにおいて菅君の信憑性に疑いを存するものであつたならば、以下の論旨が徹底しないことになると思うのであります。  同じく三枚目の十行目でございますが、この十行目に「七名等多数に上る者があるのでありますから、」を「多数に上る者がある点より判断して」と修正をいたします。  それからずつと飛びまして九枚目であります。「以上によつて日本共産党は、いわゆる徳田要請によつて直接に在ソ日本人引揚妨害したのであり、」というところに「引揚妨害した疑が濃厚であり」と修正いたします。  その次の行にかかりまして「することを期待し」上に「希望し」を入れます。「することを期待し希望している旨の意志表示をして、」それから四行目に入りまして「民主運動指導機関新聞等を通じ、いわゆる反動分子引揚妨害したことは」と修正するのであります。  以上簡単に修正点のみ申し上げまして、理由委員長の許可を得まして、理由の草稿を速記録にとどめていただきたいと思うのであります。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 ではそういうことにいたします。  次に梨木君より修正意見説明を求めます。
  5. 梨木作次郎

    梨木委員 それでは私の意見を申し上げます。次のように修正していたたきたいと思います。第二枚目の最初の三行目「一、昭和廿三年五月ウオロシロフ地区收容所に宛て、徳田書記長の名て、万国赤十字社発行往復はがき返信紙に「お元気にてソ同盟強化のため遇進され、りつぱな斗士として帰国され、反動に対して共に斗う日の来ることをお待ちいたしております」旨の片仮名の通信が寄せられたことは亀沢富男君の証言によつて明かとなつたところであります。」これを削除する。この削除理由説明いたします。これは徳田書記長が当委員会において明らかにしたように、ソ同盟地区に抑留されておる方々からはがきが来て、そのはがきに対する返事自分の秘書が自分名前で出したことは認める。しかしここに書かれてあるような、そういう返事を出したかとうかということは、このはがきそのものを、現物を見せてもらわなければ確認することはできないというように述べておるのであります。そしてまた同時に、自分のところでは自分の手紙の差出人の名前は、徳田球一と書く慣例になつておりまして、徳田書記長というような名前を使うことは、ならわしになつておらない、こういうふうに述べておるのであります。これらの事実に徴しまして、この点は事実に反しますから、これは削除すべきてあるというのであります。  その次、二枚目の表の終りから二行目「ヵラヵンダ地区收容所九分所において、政治部将校エルマーラェフ上級中尉の口からいわゆる徳田要請があつたことを露語て発表され、」これを削除する。こういうことは事実によつて証明されておらないからという理由であります。  その次は、同じページ終りから三行目で「こういう状況の下で徳田要請があつたと聞いたので、或いは帰国することは当分絶望ではないかと感じて、異常な衝撃をうけたというのが、証人の一致した証言であります。」これは異常な衝撃を受けなかつた証言している多数の証人もおるのでありますから、この点は事実に反するから削除すべきてあるというのであります。  その次は三枚目の初めから四行目「その席に居て親しくエルマーラエフ上級中尉及び菅通訳言葉をきいたという証人は一致して「期待している」とは言わす「要請している」と題訳したと証言しているのであります。」これは一致してこういうような証言をしておる事実はないのでありまして、反対証言をしておる人もありますから、事実に反しますから、これを削除すべきであるというのであります。  その次は三枚目の裏の初めから六行目「この席に居合わせて、徳田要請を聞いたというものは、」云々というところから、次のページ終りから三行目まで、これを読んでみます。正確を期するために……
  6. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 読まなくてよい。わかつてます。
  7. 梨木作次郎

    梨木委員 「当委員会証人としては」
  8. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 梨木君わかつてます。理由を述べていただきましよう。
  9. 梨木作次郎

    梨木委員 正確を期するために読みます。
  10. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 理由を述べていただきます。修正点はわかりましたから、理由を述べていただきましよう。
  11. 梨木作次郎

    梨木委員 これをはつきりしなければ……速記録にはつきりしますか。
  12. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 理由を簡単に述べていただきます。次のページ終りから三行目まて削る。
  13. 梨木作次郎

    梨木委員 その理由は、ここでこういう事実を認定するにあたつて取上げておる証人てすが、この証人というのは、ほとんど大部分が日の丸梯団員である。この日の丸梯団というのは、当委員会の調べによつて明らかなように、これは日本において軍国主義を復活しようとすることをその綱領としておるところの、きわめて反動的な団体てありまして、これは明らかに団体等規正令て解散さるべき性質のものであります。こういう政治的な意図を持つた団体所属しておる証人証言というものは、きわめて信憑性のないものであります。(「民在グループはとうだ」と呼ぶ者あり)これをとつてつて、こういうような事実を認定する証拠にしておるということは、きわめて不当であるから、これを削除すべきであるというのであります。  その次は五枚目の裏です。「菅証人によりますと、帰国の時期が適当でないと認める者の内申権限を、民主グループ時代専門部員、反ファシスト委員会時代中央委員会に、ソ連当局から与えられて居たのでありあす。この事実は亀沢、小泉、加藤等証人証言ても明らかにされたことですが、反動分子は帰すなというのが、民主運動指導者の方針てあつたこと前述の如くでありますから、帰国の人選の内申権限を与えられている専門部員又は中央委員は、当然反動分子帰国を未だ時期が適当でない者として内申したことは容易に察知されるのであります。」これは明らかに反対証言をしておる多数の証人があるのでありますから、この点は削除すべきであるというのであります。  その次は、次のページで六枚目の表の終りから四行目「反動分子帰国には、手心を加えたことは当然であると考えるのであります。これを反対にいいますれば、日本共産党前述のような要望をすることによつて間接反動分子と目された人々帰国妨害をしたものと断じられるのであります。」その次、これは七枚目ですが、八行目「事実、これらはすべて在ソ民主運動が、日本共産党に直結して行われたことを裏書するものであります。」これを削除する。こういうことはまことに一方的な多数党員の偏見に基く独断であると思うのでありますから、これは削除することを要求します。  その次は「次に日本共産党は、当初の否定にも拘らず、コミンフォルムの批判に屈して、その国際性を暴露したことは周知の事実でありますが、」(「その通り」と呼ぶ者あり)こういうことはよけいなことで、この調査事項とは何の関係もない。こういうことを書くことによつて、この考査委員会というものが、いかに一党一派に偏し、共産党の中傷のためにこういう調査をやつているかということが明らかになるのでありますが、こういうばかげたことはよした方がいい。これは削除を要求します。  それからその火のページの初めから二行目「従つてソ連当局の意向が、在ソ日本人に対し、その人間変革すなわち、ソヴィエト的人間の形成を目的として居る以上、日本共産党はその国際的性格から、当然これに協力しなければならず、また協力したと断じ得ると思うのであります。人間変革を遂げざる人間は、ソ連当局の希望しない人間であり、同時に日本共産党の要望しない人間であります。」これを削除します。これは独断的な認定でありますから、何ら証拠がかいことでありますから、これが削除を要求するのであります。  それから同じページ終りから二行目「ソ連当局日本共産党との仲介又は伝達機関と目されるものが、在ソ民主運動を指導した日本新聞及び民主グループ又は反フアツンスー委員会であります。よつてこれらの指導機関活動は、ソ連当局び日本共産党間接活動であることは、特に注目されなければならぬ事実であります。  五、日本共産党
  14. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 それはさつき言つておる。それからあとずつと削るというのでしよう。時間がかかるからそれだけ言つてくたさい。わかつておりますから
  15. 梨木作次郎

    梨木委員 これはやはり正確を期するために読みすしよう。
  16. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 いや、けつこうです。
  17. 梨木作次郎

    梨木委員 それは責任があるから
  18. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 これからあと全部削つて
  19. 梨木作次郎

    梨木委員 終りの「右考査特別委員会設置に関する決議に基き報告します。」を除いてすつと削るのであります。
  20. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 承知しました。  修正意見説明終りました。  それではこれより中間報告書原案石田君及び梨木君の修正意見を一括して討論に付します。篠田弘作君。
  21. 篠田弘作

    篠田委員 ただいまの修正意見に対しましては、石田君の修正意見は全面的に賛成いたします。梨木君の意見につきましては全部不賛成であります。今度の日本共産党在外同胞引揚妨害問題の中間報告原案に対しましては、ただいまの石田君の修正意見を加えて全面的に賛成であります。その趣旨は今日まだ三十万からの未引揚者が残つており、その家族は首を長くし、胸を痛めて待つておるときに、その日本人のほんとうの心持を知らないで自分たちの一政党政策、あるいはその便宜のためにこういうふうなことが鉄のカーテノのかなたにおいて行われておるということは、国民のひとしく憤激にたえないことであります。この修正案並びに原案というものはまだまだわれわれの考え方から言えば実に弱いものでありまして、もつと強いところの中間報告が出されてしかるべきであると考えておりまするけれども、事務局並びに委員長において、また理事会においてもこれは十分に検討された意見でありますから、私はこれに対しまして賛成の意を表する次第であります。(拍手
  22. 鍛冶良作

  23. 大森玉木

    大森委員 私はこの両修正案に対して共産党修正案反対し、さらに石田君の修正案賛成するものであります。さらにまた原案に対しましては、これまた賛成をいたすもりであります。その理由とするところは、要請問題に対しましてはいろいろ御議論があつたりてありますが、大体共産党からの御意見は、旧の丸梯団というものが一つ反動的なものであつて、これらの証言信憑力がないものだというのであります。しかしながら私どもから考えますならば、徳田君のために共産党員証言いたしたこと、これまた絶対に信ずることができません。何となれば、一つ誓約書を出しておる党員が証明したことでるから信憑力がない。そうすると日の丸梯団というものは、決してこの委員会所属のものでもなければ、また共産党の言うがごとく、自由党の所属のものでもありません。これらを比較いたしますと、こちらが信憑力があるかということに対しましては、私はこの日の丸梯団の方が信憑力がある、こういうふうに考えるのであります。ゆえに私は徳田要請というものが今の日の丸梯団証人によつて明らかになつたものであるということを申し上げ、そうしてこの原案賛成いたすものであります。(拍手
  24. 鍛冶良作

  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 討論はありません。
  26. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 それでは梨木作次郎君。
  27. 梨木作次郎

    梨木委員 この日本共産党在外胞引揚妨害問題中間報告書原案によりますと、いわゆる徳田要請問題並びに日本共産党引揚げ妨害の事実があつたことを肯定しておりますが、われわれが当委員会に臨みまして調査したところによりますと、まつたくこれと反する結果に到達しておるのであります。日本共産党ソ同盟政府に対し、日本人捕虜で共産主義化されないものは送還しないようにという要請をしたかとうかという問題については、要請したと言われる徳田球一氏と、要請の相手であるソ同盟政府、このいずれもがこういう事実がなかつたということを明らかにしておるのであります。わが徳田書記長は当委員会においてこれを明白に否定いたし、ソ同盟タス通信は、これはばかばかしい悪意あるつくり話である、こういうように公表しておるのであります。要請書について最も権威あり、かつ確実な証言をなし得るものは日本共産党書記長徳田球一氏と、ソ同盟政府よりほかないのであります。従つてこの証言と、公式発表によるいわゆる徳田要請なるものはまつたくばかげたでつち上けであるということが明白になつたと思うのであります。  菅季治君の証言によりますと次のようなことを言つておるのであります。  昭和二十四年九月十五日、カラカンダ收容所九分所において、政治将校ニルマーラエフ上級中尉か質問に対する答えとして語つたことが同人によつて次のように通訳されたのであります。すなわちいつ諸君が帰れるか、それは諸君自身にかかつている。諸君がここで良心的に労働し、真正の民主主義者になるとき、そのとき諸君は帰れるのである。日本共産党徳田書記長反動分子としてではなく、諸君がよく準備された民主主義者として帰国することを期待している。こういうのであります。いわゆる徳田要請は、この菅証人通訳した言葉がよりどころとなつていることはどの証人証言も大体一致しておるのであります。そこでこの通訳をそのまま認めるとしても、徳田書記長ソ同盟政府に対し要請したという事実の何らの証明にもならないことは言葉自体によつて明らかであります。  第三番目に、考査特別委員会事務局の作成したと言われるこの報告書原案は、いわゆる徳田要請の事実を肯定する資料として、山口、日高、渡部、橋本、山森、峯田、こういう証人らをあげておるのでありますが、これはいずれも日の丸梯団員てあります。日の丸梯団員みずからが多数の証人によつて明らかにしたように、旧将校、憲兵、特務機関なとの前席者中心とし、日本の権力を自己の手に握ることを綱領とし、日本軍国主義の復活を企図する反動的な団体でありました。これは当然団体等規正令第二條第一項第六号により解散しなければならないものであります。かかる証人証言を取り上げ、これを喚問して証言させ、これがいわゆる徳田要請をてつち上げようとすることは、明らかに日本共産党を誹謗し、中傷せんとするための多数党の陰謀であると断せざるを得ないのであります。報告書原案では、一九四七年二月二十三日の日本共産党第六回党大会引揚者復員者留守宅家族、遺家族生活擁護並びに帰還促進斗争に関する決議の一部に言いがかりをつけ、これをもつてわが党が引揚げ問題に無関心であつたと断定しているのであります。しかしこれは徳田書記長の表現によつても、主として日本共産党員に対する訴えとしてなされたものであつて引揚げ促進運動を激励するための当然の言葉であり、他の政党にはみずからの党員に対しこれだけの決議と激励をしたものさえなかつたのであります。徳田書記長証言したように、日本共産党は戦後最も早く海外在留日本人引揚げのため活動した政党であつたことは公知の事実であります。一九四八年二月二十日、日本劇場において引掛者留守家族大会が開かれたのであります。この大会日本共産党か率先提唱して各政党に呼びかけ実現したものであつたのであります。この大会の影響は非常に大きく、その後の引揚げが著しい進歩を示したことはこれまた周知の事実であります。なお同年四月二十九日、京橋公会堂において第二回引揚者入会、同年七月十五日立講堂において引揚者全国大会開催のため日本共産党中心になつて活動し、引揚げ促進に努力しておるのであります。なお同年九月、朝鮮、中国南方諸地域の引揚けが終り、これからソ同盟地区引揚けが開始されるにあたりまして、これら輸送に従事せる海員の大量首切りが計画され、これのためソ同盟地区からの引揚げ輸送能力減退によつて遅らされることを憂慮しまして、日本共産党はこの首切り反対斗争の生頭に立つて斗い、百切りを撤回させ、引揚げ輸送力の減少を食いとめたことも事実であります。これら一連の事実、日本共産党がどの政党よりも引揚げ問題に熱心であり、積極的であつたということを証明するものであります。一九四九年五月、日本共産党徳田書記長の名義で、ソ同盟共産党中央委員会に対し、ソ同盟地区抑留者全員帰還促進方を懇請したことは、これまた公知の事実であります。すでに公表され、内容が明確になつておるこの懇請書までも疑うがごとき、まことに悪意に満ちた陰謀であると言わざるを得ないのであります。  以上によつて、いわゆる徳田要請の事実並びに日本共産党存ソ日本人引揚げを妨書したということがまつたく事実無根であることは明白であると思うのであります。これをくつがえすため、日の丸梯団のごときファシスト分子の当てにならぬ片言隻句を寄せ集めて、要請をいかにも事実らしくてつち上げた報告書をつくつた。これを支持する者こそファシストの何よりの証拠であると思うのであります。かような人々が多数を占める考査委員会が、帝国主義者の召使として反ソ反共宣伝の道具になり下がつたことは当然てあろうと思うのであります。かくのごとき陰謀政府引揚げ対策失敗
  28. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 梨木君、今の言葉は隠かてない。
  29. 梨木作次郎

    梨木委員 国民の眼からおおい隠すためのものである、引揚げ問題を正しく解決することにはならないのであります。引揚げ問題の正しき解決とは何か。すなわちそれは第一に引揚者に対する生活の保障であります。一切の引揚者平和産業につかせ、日本民主的再建に参加させ、その生活を保障することであります。これはポツダム宣言により連合軍及び日本政府の負わされた義務であります。そうして引揚者がこれを要求するのはまつたく当然の権利であります。しかるに引揚者生活はどうなつておりますか。引揚者の八〇%は失業者であります。住宅もなく、九〇%は貧困者であります。これを要求すればただちに弾圧するがごときは、ポツダム宣言
  30. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 梨木君、討論範囲にとどめてもらいます。
  31. 梨木作次郎

    梨木委員 まつたく蹂躪されておると思います。であるから考査委員会はこれを取上げ調査すべきであるにかかわらず、これを怠つておるのであります。こういう引揚げ対策失敗しておるりて、これをおおい隠すために、捕虜生活に関するありとあらゆるデマを捏造して来ておる。三十七万のデマはこうした失敗をごまかすための何ものでもないと思います。すなわち未復員者給与法適用件数は四万三千にすぎないのであります。さらに政府は再三の要求にかかわらず、三十七万人の氏名、県別をいまだに発表しておらないのであります。そもそも引揚げ問題を引起した根本的原因は、あの侵略的な太平洋戦争にあつたことは明白であります。
  32. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 この問題の範囲にとどめて討論してもらいましよう。そういう問題を長くやられてはほなはた困りますから、この問題の本論にわたつてつてもらいましよう。
  33. 梨木作次郎

    梨木委員 ソ同盟ポツダム宣言を厳正に実施している。しかるにただ一般的に在外同胞と称して、その中へ戰犯を含めて、戦犯引揚げを煽動しておる一味の真の目的は、実は国内における戦犯的人物活動を擁護せんがための煙幕であつて国内戦犯分子虜罰を要求することに対する煙幕であります。
  34. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 本問題の討論とは認めません、梨木君、注意します。
  35. 梨木作次郎

    梨木委員 徳田要請なるものは船中では何ら問題になつていなかつたのであります。すなわち引揚者舞鶴に上陸してから初めて問題になつた事実でありまして、これこそ舞鶴引揚援護局当局と結びついてでつち上げた第一歩はここから始まつておるのであります。日本の現状を直視してごらんなさい。日本は現在植民地化され、軍事基地化が推し進められておる。
  36. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 梨木君、何度も言うが、そういうことは本論に入つていない。
  37. 梨木作次郎

    梨木委員 こうした政策の結果、日本平和産業は破壊され
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 梨木君、注意してもきかぬのですか、そんなものは本問題とは関係がない、もうやめたまえ——本問題の討論以外と認めますから、委員長の言うことをきかなければ発言を中止します。吉田内閣の攻撃なんかこんなところに関係かない。     〔梨木作次郎君なお発言す〕
  39. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 梨木君、発言を中止します。石田一松君。
  40. 石田一松

    石田(一)委員 私は本問題について、本委員会調査の過程においてたえず真実を発見しようということに努めた一人であります。この点に対しましてみすから修正案を出し、しかもこれに対して理由並びに賛成意見を述べるということは奇異の感がありますけれども、一応この際私の信ずるところを申し述べまして討論にかえたいと思います。私は菅通訳言葉を聞いたという証人は、一致して期待しておるとは言わず、要請しておると通訳したと証言しておる云々というこの中間報告書は、相原証人が希望しておると訳したと証言しておることを是認しておるのであります。すなわちこの相原証人証言を是認することによつて菅通訳言葉を聞いたという証人は、一致しておる云々ということは、全然一致していない証明になつて来るのであります。要請しておると通訳したと証言しておる証人たちは、ほとんどすべて第二次の日の丸梯団人々てありまして、しかも徳田要請があつたことを日本て問題にしようという署名運動に参加しておる人たちてありますので、この人々が一致した証言をするということは当然のことであります。(「修正理由じやない」と呼ぶ者あり)私の修正意見に対して全面的に賛成しておるのでありますから、私は結論をここに述べることにいたします。とにかく私は徳田要請があつたかなかつたかということは、特にこの際問題にする必要がないと思うのであります。徳田要請の有無にかかわらず、少くとも過去において二十余人からの証人にこの委員会証言を求めましたが、その証言言葉の中で、私たちは日本共産党が、共産党活動に好ましからぬ反動分子という者の帰還を直接あるいは間接に欲しなかつたと認めることが十分であるところの立証を得たのであります。その点に関しまして、私たちはその証拠となるべきところの有効な幾多の証言が、この原案においては無効になるような箇所かありましたので、私はそれらの点の修正を求めまして、しかも最後にこの中間報告を完全なるものとし、しかも過去において与党の諸君が多数をもつて横暴をきわめられたなどというがあるにもかかわらず、この最後の段階で、われわれの少数意見をお入れくださいましたことは、少くとも有終の美を飾つたものであると私は確信いたしておるのであります。こういう点におきまして、私は、私の提出いたしました修正意見賛成くださいましてこの報告書が作成されたことによつて、少くとも過去の汚名は一応埋まるものと深く信じて、賛成討論にするわけであります。
  41. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 討論は終局いたしました。  それてはただいまより採決に入ります。まず梨木君提出の修正意見について採決いたします。梨木君提出の修正意見賛成諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 起立少数。よつて修正意見は否決されました。  次に石田君提出の修正意見について採決いたします。これに賛成諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  43. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 起立多数。よつて石田君提出の修正意見に可決されました。  次にただいまの修正部分を除いた報告書原案について採決いたします。修正部分を除いた原案賛成諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  44. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 起立多数。よつて修正部分を除いた原案は可決されました。  なお字句の整理等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時十三分散会