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1950-04-01 第7回国会 衆議院 厚生委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月一日(土曜日)     午前十一時開議  出席委員    委員長 堀川恭平君    理事 青柳 一郎君 理事 橘  直治君    理事 金塚  孝君 理事 苅田アサノ君    理事 金子與重郎君       大和田義榮君    佐藤 親弘君       高橋  等君    田中  元君       丹羽 彪吉君    幡谷仙次郎君       丸山 直友君    亘  四郎君       福田 昌子君    伊藤 憲一君  出席公述人         全日本民生委員         連盟会長    原  泰一君         日本社会事業協         会理事長    青木 秀夫君         中央兒童福祉審         議会委員    牧野 修三君         財団法人浴風会         常務理事    下松 桂馬君         千葉県君津郡中         村助役     増田 正直君         至誠会第二病院         患者代表    井上 春雄君         日本医師会理事 竹内  一君         元明治学院教授 天達 忠雄君         民生委員    江津 萩枝君                 竹内  政君         健康会議社編集         長       朝倉 純義君  委員外出席者         議     員 床次 徳二君         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた事件  生活保護法全面的改正つにいて     —————————————
  2. 堀川恭平

    堀川委員長 これより厚生委員会生活保護法案に関する公聽会を開会いたします。  この際、公述人諸君に一言申し上げます。  本日は御多用中にかかわらず、当委員会公聴会に、公述人として進んで御出席下さいましたことにつきましては、委員一同を代表いたしまして、委員長より厚く御礼申し上げます。  すでに御承知の通り現行生活保護法が、昭和二十一年十月一日に施行されて今日に至るまでに、国の行う救済福祉の面において果しました役割は、まことに重大、かつ意義深いことであつたことは申すまでもないことでありますが、他面、当委員会におきましては、昨年来、緊急なる重要問題として取上げました未亡人母子福祉の問題、遺族援護の問題、その他国民福祉に関する諸問題を、いろいろ検討いたしました結果、生活保護法現行制度においては、各種の欠陷があることが指摘されまして、また内閣に設けられた社会保障制度審議会においても、現行生活保護法を緊急に改善、強化すべきであるとの勧告を発しましたので、政府におきましても、今回全面的改正と相なつたわけであろうと存ずるのであります。  お手元に差上げております法案をごらんになりますればおわかりの通りでありますが、今回の改正の案には、憲法第二十五條の規定に盛られた理念に基き、まずその目的を、生活に困窮の程度に応じ必要な保護を行い、その最低限度生活を保障し、その自立を助長することと明記し、あるいは不服の申立ての道を開き、あるいは本法実施の主体となるもの及び協力するものを明らかにいたしておるのであります。また教育扶助及び住宅扶助制度を創設し、あるいは医療機関について指定制度を設け、監査制度実施することと相なつております。  このように画期的な改正は、国民に非常に大きな影響を與えるものと考えまして、本法案につきましては、当委員会も特に愼重に審議いたしておるわけであります。加うるに、かかる重要法案につきましては、広く国民の輿論を反映せしめるとともに、多年にわたり、厚生福祉の業務に携さわつておられる各位の御意見を拝聴いたし、審査に万全を期すべきでふるとの委員会の意思によりまして、本日公聴会を開き、各位の御足労を願つた次第であります。  公述人におかれましては、本問題について、あらゆる角度から忌憚なき御意見を御発表くださるようお願いいた出します。ただ時間の都合公述の時間は一人三十分以内といたしますが、公述の後に、委員諸君より質疑があることと思いますから、これに対しましても忌憚なくお答え願いたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人発言しようとするときは、委員長の許可を得なければなりませんし、その発言につきましては、意見を聞こうとする問題の範囲を越えてまならないのであります。また委員は、公述人質疑をすることができますが、公述人委員質疑をすることはできません。以上御含みおき願いたいと存ずるのであります。  次に、公述人諸君が御発言の際は、便宜土劈頭職業または所属団体並びに御氏名を述べていただきたいと存じます。なお、発言の順位は、勝手ながら委員長にきめさせていただきます。それから、これは委員諸君に申し上げますが、公述人に対します御質疑は、あるいはその都度お聞きしたい委員がおられるかもしれませんが、時間の都合上、要務のため早く帰られる方、または御出席が遅れて、おいでにならない方を除いては、一応全部の公述をお聞き取りくださいました後に、質疑をすることにいたしたいと存じますから、さよう御了承願います。  それではまず原泰一君に発言願います。原泰一君は、次に急用がありますので、原泰一君に対しましては、ただちに委員諸君から御質疑願いたい、かように存じます。原泰一君。
  3. 原泰一

    原公述人 ただいま委員長からお言葉のありましたように、私は、この生活保護法第一線のことを取扱つております全国民生委員世話をいたしておりまする全日本民生委員連盟会長をいたしております原泰一でございます。従いましてただいまから私の申し上げますことは、全国民生委員たち考えております意見をまとめましたもののようにお聞き取りいただきましても、大した相違はない、こう考えておりますので、どうぞそのお含みでお聞き取りを願います。  私の、この生活保護法案に対しまする考えは、この法案に盛られておりますることは、ただいま委員長のお言葉にありましたような、全面的に考えられておりまする点は、民生委員といたしまして、かねがね願つてつたところでもありまするし、また社会保障審議会といたしましても、その線に沿うて勧告いたしておつたところでございまするから、この全体におきまする趣旨につきましては、賛成の意を表するものでございます。しかしただこの法の第二十二條にございます、民生委員のことを規定しておりまする箇條につきましては、民生委員といたしましては、かねぞれ願つていなかつた、思いがけないことでありますので、民生委員といたしましては、今まではこの法律の最先端のお手伝いをするものとして、このことに従事いたしておつたのでございますが、だんだん仕事も事務的に運んで来ておることでございますから、そういう意味におきまして、事務処理に当つてくれる、いわゆる有給吏員というものをぜひ置いてもらいたいということは、いつでも催しておりまする全国大会なり、あるいはまた各地の大会におきまする会員の要望でございますが、しかしこういうふうな協力機関になつて行くことになることにつきましては、これは予想していたかつたことでございまして、もしもこういうふうなことになりますと、その結果としましては、私ども考えておるところによりますれば、よくない結果を招来して来るのではなかろうかというふうに考えております。それで結論から申し上げますならば、民主委員は、元は補助機関でありましたが、今度は協力機関にされるということであります。協力機関になるとしても、これがわき役として頼まれる。ここにございますように、頼まれるときにお手伝いをすればよいというような程度ではなく、ほんとう有給吏員一緒になつて、要援護者を守つて行く。こういうかつこうになることを望んでおるのでありまして、この原案の通りでございましたならば、おそらく民生委員は浮いて来るのではないか。現にすでに浮いてしまつておる。これと似たような措置地方でとられておりまして、民生委員はこれを社発七十二号と称しておるのでありますが、そのような措置のとられておるところでは、民生委員が浮いて来ておる。そしてあとで申し上げるような、弊害も起つて来ておるというような実情でございますので、その援護ざれる人が、ほんとう援護の実をあげられて行くようにして参りますためには、協力機関となりましても、離れてやつて行くのではなしに、有給吏員一緒になつて協力してやつて行くということでなければならぬと考えておるのでございます。  それでそう申し上げますことは、最初に、どうして民生委員公的扶助のことに携わつて来たかということを、ごく簡単に申し上げた万がいいかと存ずるのであります。以前に民生委員方面委員という言葉使つてつたのでありますが、その方面委員時代には完全に自主的活動任意活動をする機関として、援護のことに携わつてつたのでございます。ところが昭和の初め、いわゆるデフレーシヨンの激しいときになりまして、任意活動だけでは、その大量の援護を要する人が出たのでありますからどうにもならない。これはどうしても公的扶助制度をつくつてもらわなければならぬというので、全国の当時の方面委員が大運動をいたしまして、救護法というものをつくつてもらつたのでございます。それが昭和七年の一月から実施をされたのでございますが、その実施をされるにあたり、方面委員というものを別に置くことは、かえつて弊害があるのではなかろうか。一人の援護家庭に対して、何人もの違つた人が入り込んで救護をやつて行くということは競合、壷複するおそれがある。これはどうしても一人の人に頼んでまかしたらよい。それには相当の経験を持つておる方面委員に頼んだらよいということでございまして方面委員が、その末端公的扶助任意活動もやつて行くというので活動をやつて来たのでございます。従いまして終戦後の昭和二十一年において、新しい憲法趣旨則つて生活保護法というものができたのでございますが、この生活保護法施行末端における第一線機関としましては、方面委員をこれに充てるのだということになりまして、方面委員では少し恩恵的なにおいがするからというので、名前を民生委員と改めて、生活保護法の新しい意味盛つた、その国の責任として行う制度第一線機関として、施行に当つて来たという実情であつたのでございます。それでは最近どうしてそれがこういう問題を起して来たかということでございますが、それは原則的には、公的扶助公的機関でという原則論に立脚して論じられて来たのが一つ。それから他の方面では、民生委員扱いにつきましては、どうも科学的でないという批評が出ましたり、あるいはまた人格的にいかがわしい人がある。あるいは濫救、漏救があるなどということを言われて参りまして、これはどうしても有給職員に置きかえて行く必要があるというようなことで、その論議をされて参つたのでございます。しかしこの人たちについて弁解をしておると時間がございませんから、ただ一言申し上げたいのでございます。科学的でないということにつきましては、科学とは何ぞやということになるのでございますが、私ども学問というものは必ずしも論理ばかりではない。実験基礎を置いたものにもやはり学問がある。民生委員が長い間生活の面において実験を重ねて来た。その実験基礎を置きましたものには、やはり科学的な基礎があるわけでございます。そうして濫救、漏救がある。あるいはまた人格的にいかがわしい者があるということにつきましては、十二万五千人からの人でございますから、全部が正しい人ということはできないのでございますけれども、概して私ども考えておるところでは適在者か当つておる。むろん一、二例外はあるのでありまして、少数の人によつて全部の者を批判して行くということはいかぬと考えておるのでございます。  そこで今この問題の焦点に移るのでございますが、有給吏員に置きかえるということでございますが、私はまず第一にそういう有給吏員が現在十二万五千人おります民生委員にかわつて仕事をして行くということは、日本の今日窮としております国の財政地方財政ではほとんど不可能に近いと考えます。第二にまた非難されておりますように、科学的であるとか、あるいは濫救、漏救がないように、人格的に適正な人を選んで行くとしたならば、有給吏員にはたしてそういうような人が選んでいただけるかどうか。ただ生活保護法の金をくれるだけならばともかく、その人を指導し、その発見も適切にして行くということになりますと、適任者は、ごく少数しかないと思います。日本社会事業学校が二つございますが、そこから出て来る者は年に百人か二百人、今後ふえるにしてもそうたくさんふえないという現状におきまして、どうしても間に合わせの人をそれに充てて行かなければならぬということになりますれば、民生委員の中からよい人を選んだのと、どつちがいいかということを考えて参りますと。やはり適任者は得られないことになるのではなかろうかと存じます。  第三は日本の地理的、社会的條件というものを考えますと、アメリカのように一人の人が自動車を持ち、それでかけまわつて五十人なり、百人なりの要保護者生活を見られるのと違い、一つの村の中に山あり、谷あり、それに通うのにはどうしてもテクらねばならぬということでは、その数はとても得られぬということになるのではなかろうかと思うのであります。  第四に私ども考えますのに、有給吏員ということになると、いわゆるお役人さんになる。長い先のことはとにかくといたしまして、現在においては官僚独善というほどの強い言葉は申さないといたしましても、とにかくお役へさんの扱い方で要保護者に接して行くことになると思います。その一つの例をあげて申しますれば、米屋さんが非常にサービスがよかつた。その人たちか一たび配給公団の準公吏になられますと、たちまちにして配給公団の店先に行列をさせるという状況でありますから、有給吏員になつた場合に一番困るのは、要援護者だと考えるのでございます。  第五には一人の有給吏員がいたします場合には、どうしてもボス勢力に左右されて、そうして援護をふやして行くということになるのではなかろうかと存じます。現在すでに民生委員協力体制がずつとはずされておるところにおきましては、要援護者の数がずつとふえておるというような実況が、現在すでに現われておるのでありまして、おそらく今日予算に盛られておる百五十億は、もしもこの体制から民生委員を、ほんとうにはずして求められたときだけにやるというようなかつこうをつけて参りましたならばもおそらく来年の決算期におきましては、生活保護の費用が、ぐつとふえて行くのではないかというふうに考えるのでございます。民化委員におきましてもむろんそういう点はありますけれども民生委員には民生委員協議会というようなものがございまして、その協議会協議をして定めるという建前になつておるのでございますから、そういう点は少いと思います。  それから第六には、人間はいずれも個人差を持つておりまして、非常に寛大な人、非常に厳格な人、いろいろ民生委員にもそういう点があるのでありますが、厳格な人にあいますと、なかなか援護を受けられません。簡單な人にあいますと、簡単に援護が受けられる。こういうかつこうになるのでありますが、民生委員の場合は、民生委員協議会にかけて、そこに出ておる人たち協議の上で決定するという建前になつておるのでございますから、こういう厚薄を生ずるということは、まずないということになつておるのでありますが、一人の有給吏員が扱うということになれば、その結果は、土地土地人々によりまして、非常に大きな相違が現われて来るのではないかということを心配いたすのでございます。  それから第七には、民生委員はその土地に長く住つてつたという人を選んでおつたのでありますが、有給吏員はお役人でありますから、他の土地に育つて任命された人が、そこへぼつと役人として来るということが多いわけでありましようから、土地の人にはなじみがない。そうして、その土地の住民の習慣などについても知識がないということであり、せつかくなれて来たときは、またほかに転勤というようなことになりますれば、私はその結果として実によくないものが出て来るのではないかと考えるのでございます。  第八に、問題の取上げられておるつの点として、有給吏員フルタイムで、それを職業としておる人だから、全部の時間をそれにささげる人だと貰われております。それから民生委員はボランチヤー・サービスで奉仕者であるから。片手間だということを言われておるのでございますが、しかし事実どうかということを考えてみなければならぬと思うのでございます。フルタイムと言いましても、朝九時から出て晩五時に終りますれば、それは八時間でございます。それ以上になれば、暗闘外手当というような問題も起きて来るのでございましよう。それではその時間外の場合は一体だれがやるのか。だれが世話するのか。援護を要するような医者の世話とか、出産の世話というようなことは、夜中にも起きますし、また朝早くも晩にも起る。そういつたようなことを一体だれが世話するのか。有給吏員がそこにいなければ、一体どうするのかというような問題が起きて来るのでありまして民生委員はその土地の人をもつて充てるというような建前になつておりますから、私は二十四時間勤務、夜中でも朝でも、いつでもたたき起されて、そうして相談相手になつて行くという建前にいたしておるのでごいますから、そういう点があると思うのでございます。  それから三面民生委員立場の方のことを二、三申し上げてみたいのでございますが、原則といたしまして、第一に民生委員は、中正穏健な人であつて、その土地において徳望のある人を建前にいたしております。しかもその地域内に居住しておつて、近隣の状況をよく知つておる人ということを建前にいたしておるのでございます。しかし今、中にはそういう人でない方も若干ありますが、それは最近ひんぴんとして行われました民生委員の切りかえ、かそうさせた結果でありましてかすにしばらくの時間をもつていたしますれば、やつぱりその土地の人で中正穏健、しかも徳望のある人としての仕事のしぶりができるのではないかと考えておるのでございます。  その次の点は、民生委員はいつて国家の政策の非常に忠実な協力者があつたということでございます。いつでも政府方針に従いまして、国の指示される方針に従いまして協力をして参つたのでありまして、敗戦後のあの混乱のときにおきましても、当時全国の十万前後の民生委員は、全力をあげてあの混乱のちまたから困つている人を助け、そして社会混乱をなからしめたということもありまするし、その後におきましても、いろいろな世態の推移に応じまして、社会潤滑油的な働きをいたして参つて来ておるのございまして、もしも社会一つのエンジンの中に潤滑油がなかつたならば、一体どうなるだろうか。これをよく用いなかつたならば、一体国家はどうなるだろうかということを考えまするときに、私は今日の社会情勢を見まして実に恐ろしいような気がいたすのでございます。  その次には、民生委員はいつも庶民の味方でありまして、その人々信頼を受けてみんなに安心感を與えながら仕華をして来た。もちろんその中には二、三若干の問題はあるといたしましても、そのモットーといたし信條といたしておりますことは、みんなの信頼を受けて、庶民信頼にこたえて行くようにという心がけをもつて仕事をして来ておるのでございます。なおつけ加えて申しまするが、その人たちは現在五百円の手当と申しますか、実費弁償をもらつておるのであります。私は厚生大臣がかわられますたびことにあいさつに行きますが、国の方は幾らかそういう人に出しておりますかという話があります。この間も林さんが厚生大臣になられたときに行きましたら、幾らか出しておりましようと言われるので、五百円もらつておりますと申し上げたところ、それは月にですかと貰うので、年にですよと言つたら、いやあと言つて頭をかいておりました。ですからそういう無報酬で社会奉仕をしておる。しかも熱心にいたしておるということを考えて参りますると、民生委員活動を弱体化して行くということは、決していいことではない。非常なマイナスになるのではないか。しかもこ叫人たちは、今日あるところでは、国家公的援護協力するということに相当熱意を失つているところかあるのでございますが、熱意失つた結果、一体どういうことになつているかという実情考えますると、私はほんとうに遺憾に存じておるのでございます。  なお一言経費の点に触れてみたいのでございますが、有給職員俸給も、民生委員に肩がわりするだけの職員を置こうとするならば、相当な俸給になると存ずるのでありますが、先ほどちよつと申し上げましたように、旅費とか時間外手当とかいうようなものを考えてみますれば、今日相当多額になつて行くのじやないかということをおそれるのでございます。それに、それは国費なり地方費のふえる面でございますか、失う面がある。それはどういうことかと申しますると、私はときどき民生委員の集まりのときに出まして、一体皆さんどれくらいポケットマネーを出しておられるかと聞きすると、ある人は月に千円、ある人は一万円も出しているという人があるのでございます。かりに年に平均三千円ずつ手弁当を持つていると考えますれば、十三万人近い人たちによつて、三、四億の金というものが、公的援護を実行して行く上において使われておるということでございまするので、そういう面を考えて行きますれば、財政的にも非常にマイナスになるということかあるわけでございます。どうぞそういう点をお考えいただきまして、第二十二條を、先ほど申し上げましたように協力する機関といたしましても、全面的に有給吏員が置かれるとしましても、協同してやつて行くという立場で、一人の要援護者をともに守つて行くという形にして、求められたというような簡單なことでなく、全面的に協力のできるようなことにしていただくことが、一番今日の実情においてよいのではなかろうか。こう考えておりますので、そういうような措置がお願いできれば、まことに仕合せに存じますのでございます。これは単に民生委員のためでなく、庶民のためであり、日本国民のためであり、社会のためであるというふう考えておりますので、その点もひとつ御考慮をお願い申し上げたいと存じますのでございます。
  4. 堀川恭平

    堀川委員長 前に申し上げましたように、原泰一君はちよつと御用がおありでありますので、この際同君に対する質疑をいたしたいと存じます。通告順によりまして、丸山直友君。
  5. 丸山直友

    丸山委員 原公述人に一点お伺いしたいと考えます。ただいまのお話の筋合には、ごもつともと存じまするし、従来の民生委員の御活躍に関しては、われわれも感謝の念をささげるにやぶさかではないのでございますが、このたびの法律改正におきまして、二十二條協力機関として民生委員が置かれておる。すなわち市町村長または社会福祉主事から求められたときに初めて協力するのであつて、求められないときにはこれに協力することができないというような御解釈によつて、ただいまのようなお話が出た筋合いではないかと、かよう考えるのであります。従いまして実質的に申しますと、この法律の第二十二條改正すればよろしいというふうにお考えなのでございましようかということと。もう一つ伺いたいことは、先ほど御言葉の中に、有給吏員がこれを取扱つておる場合には、ボスに左右せられる危險がある、こういうふうなお話があつたのであります。すなわち有給吏員以外の力が有給吏員を動かして決定することがあろうというふうにお考えであつたのでありますが、もししかりとするならば、民生委員が善良なるポスとなりまして、有給吏員を動かして、適正な動ぎ方をさせるというふうな御熱意と御協力の御心持を持たれることが、はたしてできないものかどうか。この点についてひとつお伺いいたしたいと思います。
  6. 原泰一

    原公述人 ただいまのお言葉にお答え申し上げますが、この二十二條を、私どもが求められたときというようなことが規定されないで、全面的に公的扶助のことを市町村長協力して行く、こういうことにしていただければよいのではなかろうと、こう考えておりますのであります。もともと願いどころは、つまり第一線の責任者であつたのか前の形でありますが、そういう形がかりになくなつて、そうして協力機関となるといたしましても、やはり協力機関として責任の一半をになつて行くものだ、こういうことにしていただくことの方が、一番よいのではないか、こう考えますのでございます。  それから第二点のことでございますか求められなくとも、全面的に協力して行くという熱意はどうか、こういうことでございますが、私は今後ある期間を経て参りますれば、そういうときもおのずから来るのではなかろうかと存じますが、少くとも今日の状況におきましては、ちよつとはずされて、それで手を上げておるというかつこうになるではないか。それから今お尋ねの一つの大きな点でございます、ボスに左右されるということは、現在すでに起つてお4ことでございますが、そういうような場合に、民生委員協議会がそうなる熱意を持つたらどうかというような意味でもおありのようでありますが、むろん今後は、庶民の味方といたしまして、事実上そういうことになつて行くということは考えられるのではなかろうか。けれども、当分民生委員は川はないうぞというような顔をされますと遠慮ないことを申しますと、この聞の会議あたりでもきれいに、返上してもらおうじやないかというような、極端な議論あたりも出ておるようわけでありますから、今日におきましては七そこのところをよほど上手にやつて行かなければいけないのか。こう考えております。
  7. 丸山直友

    丸山委員 なお、お伺いいたしますが、ただいまの御言葉で、将来は民生委員の団体が善良なるボスとなつて有給吏員を動かすような、非常に運用がうまく行くことの可能性はあるであろう、しかし現在では、ちよつとさしづめ困難であろうということなんでありますが、そういたしますと、この法律改正によりまして、民生委員の皆様方が、求められたとき初めてできるのであつて、求められないときは全然民生委員が除外されたという感情が多分に加わつていらつしやるのではなかろうか、こういうぐあに考えるのでありますが、感情をもう少しやわらげていただいて、今あなたが言われているような有給吏員に対して、一緒に、善良なるボスとして働きかける意思を示すことが可能であるか、不可能であるかということを、ひとつ伺いたい。
  8. 原泰一

    原公述人 実際の扱いとしましては、今お尋ねになりました点は、ところによつてはよく行くところもあろうかと存じますけれども、これは民生委員側の問題だけではなくして、国の問題であり、同時に地方の問題であり、また報道機関などの問題とも思うのでございます。たとえば社会七十三号ということを先ほど申し上げましたが、あれにつきましても、地方におきましては、長くやつて来た者についてああいう冷たい扱いはどうあろうかというようなことも言われておる向きがあるようなわけでございます。私どもから申せば、そんなことを気にしなくてもよいじやないかと、こう言いましても、やつて来た者としましては、そういう気持を起しましたことも、これはむりなことではないのじやないかと思います。それからまた、地方の行政なんかをやつておる人たちが、全部そういう気持ちになつて扱うかということも、非常に大きな問題があるのではないかということが考えられるのでございます。それから現に報道機関のごときば、民生委員に悪いところがあつたからはずされるのだというようなことを、大きく書き立てられておるようなこともあるのでありまして、その点がすべてがよほどうまく行くということでありませんと、今ただちに協力体制がよく行われて行くということにつきましては、非常な用意と努力を各方面でしていただく必要があるのではないか。私どもも、世話をしております本部の者としましては、そのためにできるだけの努力はいたしておりますが、私どもだけの力をもつてしてはできないという場面も、現に起つておるようなわけでございますから、その点を私は心配いたすのでございます。
  9. 堀川恭平

    堀川委員長 ちよつと急にお諮りいたしますが、委員外の床次徳二君より質疑を求められておるのでありますが、これを許すことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 堀川恭平

    堀川委員長 では、異議なしと認めましてこれを、これを許すことにいたします。床次君
  11. 床次徳二

    ○床次徳二君 この機会に、一般論でありますが、二点ばかりお尋ねいたしたいと思います。  第一は、今回生活保護法が全面的に改正せられまするが、他の面において問題になつておることがあるのであります。すなわち今回地方自治制度が非常に全般的に改正せられまして、新しい平衡交付金という制度が設けられて来るというわけになつておりまするか今日の状態におきましては、生活保護費の関係は平衡交付金から除かれおるのであります。これは、もしも平衡交付金の中に入つて、一般市町村の財政を通して生活保護実施せられるこなれば、あるいは十分なる生活保護か行えないのではないかという懸念から出たのではないかと思うでございますが、実際に生活保護の面に接触しておられる原さんのお立場から見まして、そういう経費の面の変更を與えた場合に、はたして保護が十分円滑に行かなくなるように御心配になつておられるかどうか。これについてお考えを聞かしていただきたいと思つておるものであります。現在の体制から見ますれば、やはりこういうものは平衡交付金の中に一旦入れて、そして経営して行くというのが今の趨勢ではないかと思いまするが、生活保護法一つの例外をなしているのであります。いつまでもこういうやり方をすることがいいかどうか。これは第三者の立場で、むろん原さんが実施状況から観察できるのではないかと思つてお尋ねいたしたいと思うのであります。  それから第二点は、実は人口問題という立場から見まして、これはほかの公述人の方にもお感じになる方には触れていただきたいと思いますが、将来日本におきまして計画家庭、適当な受胎調節ということは相当重大な問題になつておるのでございます。特に生活保護の対象になつておられます家庭におきましては、この問題は真劔に取上げられなければならない問題でありまするが、最低生活を確保するという場合におきまして、ある程度の受胎調節ということは考えられるのであります。これがいかなる扶助の中において行われるか。私はでき得るならば、医療扶助の中におきまして、当然実施されていいかのような気がいたすのでありますが、これにつきまして原さんはどういうふうに考えておられるか。なお婦人の公述人の方、お医者さんの方その他もおられますが、後刻これに対するお考えを述べていただけば非常にけつこうだと思います。私個人の考え方といたしましては、医療扶助を延長して、最低生活を確保するためには、確かに必要なうちに入るのだ、生活保護上から見れば必要事項だと思いますが、それに対して公述人のお考えを伺いたいと思います。
  12. 原泰一

    原公述人 ただいまお尋ねになりました最初の問題でございますが、民生委員の方で要望いたしておりますことは、これは国の賛任においてやるのだから、全部国費でやつてもらいたい、こういうことを要望しておるものでございます。だからその十分の一を県、十分の一を町村ということになつておる、ことに町村になつておりますために、今の平衡資金、あれでひもつきでやつてもらつておるとはいいながらもそれがどうもうまく行かないために、給付が十分に行つてないところも従来あつたのであります。今後はおそらくはそういうことはなくなると思いますが、民生委員立場からいつも願つておりますことは、全部国費でやつてもらいたいということを要望いたしておるのであります。  それから第二点の子供の多いことにつきましては、民生委員といたしましで、貧乏人の子だくさんでいつも心配いたしておるのでありまするが、現在は優生法の延長であります優生保護法で、最近には経済的に困つておる人も中絶ができるということで、民生委員がそのことに判を押して、妊娠中絶を申し出ているような場合があります。その場合に民生委員といたしましては、やはり御説のように医療扶助といいますか、特別なあれのない限りそういう方法を認めてもらいたいという希望は持つておるのであります。実際の扱いの面においてはどうなつておるのか存じませんけれども、みなの希望としては、そういうことを希望しておる次第であります。
  13. 床次徳二

    ○床次徳二君 重ねて恐縮でございますが、第二の問題につきまして人工妊娠中絶のお話がありましたが、人工妊娠中絶を生活保護を受ける人が行うことは非常な経費がかかるのでございます。また経費のみならず、生活上にもいろいろ圧迫が加わるのでありますが、むしろ予防措置を講じた方が働く方々にもよろしいし、また負担の点からいいましても必要ではないか。民生委員の方でありますれば、むしろ予防措置を講ずることについて、具体的に家庭の事情もおわかりだから、でき得ればやはり予防薬、器具を使うというような考え方がいいんじやないか。医療保護して、あるいは一つ生活保護の延長として、そういうことができることを望んでおられるのではないかと思うのですが、その点を重ねてお伺いいたします。
  14. 原泰一

    原公述人 今の点は、やはり民生委員としては、前からできれば中絶よりも調節ということを願つておりますことはもとよりでありますが、何せその中絶薬なり器具なりを買うことが問題になるのでございます。だからそれを医療の方で出せるということになりますれば、よほど違つて参ると思いますが、しかしまずこういう二面のことを考えてやらなければならないのではないかと思いますことは、何せああいう人たちは閨房のことが計画的にできないのではないか。子供が多かつたり、うちが狭かつたりするというようなことがあるのでございますから、いつもそういうことが問題にされますときに論に上るのでございます。そしてあるところでは、月に一回ずつ洗滌する——これはお医者さんの領域ですが、洗濯したらどうだろうか、そうすればいいけれどもとにかくそのとき、に薬を使うことは、実際にあの人たち生活としてはなかなか困難ではなかろうかということを言つておるのでございます。しかしいずれにいたしましても、それは教育の問題にかかると思います。そしてまたそれが使える場合には、今のお説の通りこれを医療扶助費で出してもらうということが、民生委員としては望むところだろうと考えております。
  15. 苅田アサノ

    ○苅田委員 お伺いいたします。先ほどのお言葉の中に、昨年の秋に厚生省から出した通達によつて、すでに部分的にしろ、民生委員協力が狭められているという話があつたのでありますが、そのことをもう一度御確認願いたい点と、もしもそういう場合に非常に悲惨な事実とか、あるいは不当な事柄が、そのために生じたようなことがすでに事実としてあつたということが、御記憶があればそれをお話願いたいと思います。
  16. 原泰一

    原公述人 その結果といたしましては、先ほど申しましたように、とにかく一人の人が処理するということが建前でございますから、その数がずつとふえて来ている。そういうところでは、その結果はそういう状況になつているのでございます。それからこれはこの間、夫が精神病者である、そして妻が生活保護法を受けておつた。ところがその妻が青酸カリを飲まして、夫を殺したということが新聞に出ておつた。あれは各社の報道を見ますとも民生委員が扶助を打切るぞ、こういうことを言つたからそうしたのだというので、私の方でも非常に憂慮いたしまして、すぐ人を派遣いたしまして、その実態を調査いたしたのでございます。私はまさか世故なれた民生委員なら、そんなへたな言い方はしないだろうと思つてつたのでございますが、実際はある若い吏員の方が行かれて、お前のところはもう来月からこれを打切るぞという話があつた。その全体の事柄はとにかくといたしまして、その一つの事柄につきましては、それは民生委員のせいではなくて、若い吏員の人が行つて不用意に言われた言葉か影響したのではなかろうか、こういう結論をもつて報告を聞いたようなわけでございます。
  17. 苅田アサノ

    ○苅田委員 御主張の点はよくわかりました。それからさらにこれはごく簡単でけつこうですが、民生委員連盟の会長さんとして、現在の扶助の基準が今度百六十円ばかり増加されまして、五千五百三十円になるということですが、これで貧困者、これは六大都市の五人世帯ですが、これをまかなうのに十分と行かなくとも、何とかこれでやつて行けるというふうにお考えになりますか。これは非常に足らないから、この点についてはもう少し補充をしていただきたい、こういうふうにお考えになるのですか。率直にその点だけでけつこうでありますから、お話願いたいと思います。
  18. 原泰一

    原公述人 今のお尋ねの点は、いつでもみんな寄りますと、扶助費を増額してもらいたいということは申しておりますところでございます。しかし実際の扱いにおきましては、とにかく民生委員といたしましては、そのもらう金の範囲内において、その生活の立つて行くように生活指導と申しますか、そういうことをやつているようなわけで、ございましてただそれに関連いたして、これは余分なことかと存じますが、いつも民生委員がそこで働ける人を働かして、幾らかでも收入を得させる。こういうようなくふうをしているのでございますが、そんな場合に、そんな収入があると、全体の方を差引かれるというようなことがいつも問題になりまして、そこで困難をしている事情が地方においてはあるようでございます。
  19. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私、民生委員の連盟の会長さんである原先生に、これは質問ではございませんが、希望を申し上げまして御配慮願いたいと思うのでございます。と申しますのは、先ほど床次議員から産兒制限、バース・コントロールに対する民生委員の態度というものに関しての御質問がございましたが、私どもも優生保護法に多少関係を持つている者の側からいたしまして、民生委員の方にぜひお願いを申し上げたいのであります。と申しますのは、日本の人口対策といつたことを考えてみますと、国家一つの政策として、日本の人吉政策は減少政策であるというようなことは、これは大きな問題があるわけでございまして、確定的な答えは、出すことはできないかもしれないのでございますが、しかし国民の各家庭におけるところの生活の内容、経済的な生活状況というようなものを照らし合せて考えてみました場合、ある程度の産児制限をしなければならないということは、これはだれしも御納得が行かれていると存じますが、そういつた点から考えまして、何といつて第一線民生委員の方々に、この人口対策の一つとしてのバース・コントロールに、もつと大きな関心を持つていただきたい。このことが一つ。  それから優生保護法を応用していただきます場合におきましてのお願いでございますが、もちろん今日の優生保護法におきましては、御承知くださいますように、私ども立案いたしました者にとりましては、非常に不満な点が多々あるのでございます。今後改正しなければならない点が多々あると考えておりますが、現行法におきまして民生委員の方にお願いいたしておきたい点は、たとえば第十三條の四項の強姦とか、あるいは抵抗し得ざる原因によりまして姦淫された場合の妊娠というようなものは、民生委員の証明によつて、人工流産の適用者として取上げられることになつておりますが、こういう場合、証明書を書いていただく場合に、民生委員の方が非常に御心配なさる。強姦と書いて、も上強姦でなかつたら責任が自分に来るのじやないか。姦淫されて妊娠した。従つてこれを優生保護法によるところの適用として、人工流産を合法的にやれる範囲に入るというような意味で、姦淫ということの証明書を書くと、また自分に責任がかかつて来はしないか。堕胎罪として問われることはないかというようなお気持を持たれまして、非常にこわごわとしておられる。そういう何と申しますか、社会的な不幸な原因によるところの妊娠の原因に対しての証明書を、気持よくお書き願えないことが多々あるということを、私ども地方に参りまして聞き及ぶのであります。さらにまた民生委員の方に書いていただく証明書に、経済的な理由というものがございますが、これもなかなか簡単に計いていただけない。その間に、人によりますると情実が入つて来るというようなことも聞きまして、経済的な理由というものも、なかなか私ども考えておりますようにはその運営がされていない。昂生委員の方が非常に御心配なさつておられるというように聞き及ぶのでございます。さらにまた優生保護法の医療扶助、ことに人工流産に対しましては、ボーダー・ラインよりちよつとしの方まで証明書を書いていただくことになつておりますが、そういつた方に対して書く場合におきましても、非常に御心配をしていただいたり、あるいは人によりますと、非常に情実関係が入つているというようなことを聞き及んでおりますし、訴えを聞くのでありますが、そういつたことが今後あまり起つて参りませんように、どうか会長さんの方におかれまして、全国民生委員の皆様方に、もつと証明書をお書きくださいます場合におきましては、決して責任が民生委員の方にかかつて参りませんということを、くれぐれも御伝達くださいまして、その証明書に対して極力大幅な御協力をお願いしたいと思います。それとまた、ボーダー・ラインの人はもちろん、そのちよつと上にありますような人に対しても、こういつた医療扶助の面におきまして、もつと積極的な、同情ある御配慮をお願いしたいと思います。そういうようなことをどうか民生委員の方々に本部の方から御伝達、御指導いただきたいものだということをお願い申し上げる次第であります。  もう一つ、これは私の想像的な、概念的な質問になるかもしれませんが、一つだけお尋ねいたしたい。今日の民生委員には、先ほど会長さんからお話がありましたように、給與の面におきましても、また人を得ていないというような面におきましても、多少まだ懸念をお持ちのような感じがいたすのでありますが、そういつた面からいたしましても、民生委員の方々を一番正しく御活用願うために、どういう條件が必要であるか。どういうふうにしていただいたら一番民生委員の方は喜んで、また正しい運営をしていただけるのであるかということに対する会長の御希望、御抱負を承りたいと思います。
  20. 原泰一

    原公述人 ただいまおつしやいました御意見につきましては、機会あるごとによく民生委員に徹底するようにいたしたいと思いますが、ただその点につきましては、やはり非常に心配しているということは事実でございます。強姦されたのか、合意の強姦なんというのはないと思いますけれども、とにかく事実がわからない。言われる通りであるのかどうかわからないために、ちよつと書くのを躊躇するというような場合もあるのじやないかということが懸念いたされるのでございますが、お話の御趣旨などに対しては、よくみんなものみ込んでやつてくれるように、機会あるごとに徹底いたしたいと思います。  それから今の、みんなが熱意を持つてつて行くようにということにつきましては、先ほど、いただきます実費弁償が五百円になるとか千円になるとかということを申し上ましたが、そういうことでなく、とにかくただ働きでほんとうによく働いてくれるということを認めていただく。行政当局も認めていただくが、国会もひとつ認めていただく。委員長などはときどき大会のときに来ていただくのでありますが、委員の方々も全国大会などがあるときは、皆さんができるだけお越しをいただいて、そうして御苦労だと、たつた一言かけていただくというようなこと、どうせ皆さんの選挙区がおありになるわけでありますから、選挙区の民生委員に対して、まことに御苦労だという声をかけていただくことが、あんなにみんなが認めてくださるかということで、金銭とか名誉とか、そういうことでなく、一種の感激をもつて仕事をしてくれるのじやないか、こういうふうに考えるのでございます。私どもも機会あるごとに講習会をできるだけまんべんなくやつて、そうして新しい方にはよく仕事の本質をのみ込んでいただき、また民生委員の性格を知つてもらうということに努力をいたしているようなわけでございます。今お尋ねのございますことは、ほんとうに御苦労だということを世間が認め、ことに国会なり政府などが声をかけていただくことが、一番いいじやないかというふうに考えております。
  21. 青柳一郎

    ○青柳委員 私は一点、原さんにお尋ねいたしたい点があるのであります。それは先ほど来、原さんの御発言並びに丸山委員の御発言にありました二十二條の「求められたときは」、この問題であります。この規定があるがために、民生委員の方々のお働きが消極的になる。われわれは民生委員の方々の御熱意にこたえるところがなければならないと、現在の段階においても固く思つております。ことに公的扶助機関の整備されるその過渡期において、この御熱意に期待するところが非常に大きいのであります。この問題はよくわかりました。この問題を除きまして、この規定を考えました際、従前と同じように市町村長生活保護実施機関であります。決定機関であります。しかして民政委員の方々は従前は補助機関であつた。これが協力機関になるのであります。協力機関と言いましても補助機関と同じく公的機関であります。それでこの補助機関協力機関とを比較して考えました際に、補助機関としうものは市町村長の下につくものであります。協力機関というものは下ではなく横であります。しかも同じく公的扶助機関であつて、しかも補助機関より上であるということになりますれば、従前與えられておつた民生委員の方々の地位は、この際向上したと理論的には考えられるのであります。しかも一方むずかしいいろいろな計算みたいな事務からのがれるという安易なことになる。これもまた一つの優遇であります。そういうふうに考えて参りますと、協力機関となつたために、もちろんただいまの字句の問題を除いて考えますれば、この法案改正によりまして、理論的に、またある程度実際的に、民生委員の方々の地位の向上というものが、この法文で認められると思うのであります。この点につきまして原さんの御意見を承らしていただきたいと思います。  それともう一つ、この際委員長に御相談でございますが、たくさんの参考人の方がおられるのでありまして、本日は法文の改正の問題でありますから、法文の改正をめぐつての問題に、委員発言をでき得るならば制限していただく方がよかろうと思います。その点を委員長に提言いたします。
  22. 原泰一

    原公述人 それでは今のお尋ねにお答え申し上げたいと思います。補助機関であつたのがも協力機関になつて、やや優遇された感があるのではないかということ、それで熱意を失わずに民生委員がやつて行けそうなものだ。行けそうだとはおつしやいませんが、いくらかその点を考えたちどうかというお考えのようでございます。民生委員は、そういうように地位が向上するとか、向上しないとかいうことを考えてはいないと思うのであります。それよりもどうすれば一番援護を要する者がよく援護されるかということを願つておると存じます。地位は向上したわ、お前たちはこれには関係ないわ、こうあつたのでは困る者は要援護者だというふうに考えておるわけでございますから、やはり協力機関ということは一応いいとしましても、市町村長及び有給吏員と全面的に協力して行くという体制でありますれば、おそらく今までよりも多少事務的なことは有給吏員がやる。発見なり、生活指導なり、あるいは補助の決定などは民生委員協議会が律して行くということでありますれば、これは青柳さんも御承知の通り社会保障審議会ではそういうことを勧告しておるのでありますが、そういう線に全面的に協力して行くということでありますれば、私はそれは庶民援護を完全に近く行うゆえんでもありますから、おそらく民生委員としましては納得行くことだと存じます。今のお言葉のように、少し協力機関として対等の立場になるのじやないか、対等の立場になつたら、まあまあそつちに行つておれというようなかつこう、頼んだときだけ来てくれということでは、おのずから現在起つて来ておることがもつとひどくなつて行くのじやないかということを懸念いたすのでありまして、私は結論的に先ほど申しましたように、協力機関でも二本建ではいけない。協力というものは、要援護者を中心として両方が力を合せてやつて行くということでありたい。こういうふうに考えております。
  23. 青柳一郎

    ○青柳委員 お心持はよくわかりました。民生委員のその仕事についての御熱意のある点もよくわかるのであり美す。要するにこの法案につきまして奈面的な協力を妨げておるものは何か。求められたということになつているが、生活保護をやる公的機関がたくさんあるか、それが緒になつてやればいいが、民生委員は求められたときだけ行く。こういう考えを起しておると思います。私の申し上げた点はこの求められたということがなければ、私は全面的に協力ができると思うのであります。そういう際に民生委員の方々は、一応事務からもある程度解放せられて、地位のことは言いませんが、地位的にも幾分向上した。そういうふうに考えられやすいということを申し上げたのであります。この点につきましては私は原さんのお考えと同じだと存じますのでそれ以上伺いません。よく了解いたしました。
  24. 堀川恭平

    堀川委員長 御質疑ございませんか。——原さんは法案二十二條をそういう方法で訂正してもらつた以外は御賛成になるのですか。
  25. 原泰一

    原公述人 ただいま委員長のお尋ねの通り、はつきりと全面的に協力して行くことができるように、なお今の求められたときということがなくなつて、行政措置として全面的に協力を求める。別個のものではないぞということになつて参りますれば、私はよく行くのではないかと考えております。
  26. 堀川恭平

    堀川委員長 では次は井上春雄君。
  27. 井上春雄

    ○井上公述人 ただいま御紹介にあずかりました至誠会病院患者代表の井上春雄であります。かねてより社会保障制度に重大なる関心を有します私ども患者といたしまして、今回の生活保護法全面的改正に対し若干の意見を申し上げたいと思います。  今回の改正社会保障制度への第一歩として、憲法に規定せる健康で文化的な最低生活を受くる権利として再袷討されたものと思いますので、ややもすると本法の運営上、慈恵的な偏向に階りやすく、また被保護者に劣等感を持たしめることがありますので、その点為政者は十分に心がけていただきたいと存じます。私は患者を代表し、目下療養所に入院しておる生活保護患者の切実な声をここに申し上げ、政府並びに各議員の方々の御理解と支持を求めたいと思います。  まず第一に申し上げたいことは、生活保護法の最低基準があまりに低過ぎるため、現在入院しておる患者が病苦に加えて、たえず保護の打切りや一部負担に悩まされておるということであります。現行法によりますれば、五人世帶での基準は約五千三百円、これ以上の収入があります場合、たとえば入院患者をかかえていますと、その余分の部分が一部負担となつて現われて来るのであります。一般の生活水準から見まして、病人をかかえている家庭は、どうしても不時の支出がかさんで来ます。熱のあるときは果物がほしい、また食欲のないときは消化のよい米や副食等が必要であるわけです。それでありますから、なかなかその一部負担をさえできない状態であるのであります。今私たちが給食されている二千四百カロリーは、病院で多人数の給食を行つて、純材料費が一日八十円ほどかかつております。これで行きますと、大体純材料費でもつで月一人二千四百円程度かかることになります。ですから五人で五千三百円くらいでは、とうてい健康で文化的な生活は望めないものであります。従つてこれは実質的最低生活ができるようにしていただきたいと思います。なお以上のことは世帯単位の原則とも結びつくのでありますが、長期入院になりますと、経済的負担にたえかねて、家庭とのつながりが次第に疎遠になりまして、病人の見舞にもほどんど来なくなる状態であります。従いましてたとえば一部負担になりました場合、家族はその支拂いさえも忌避してしまう場合も多いのであります。ある患者などは、十年間も入院しておりまして、妻子は生活に耐えられなくなりまして離縁を申出で、しまいには来なくなつて参りまして、親戚などにたよりを出しても返事も来ない。ほんとのひとりぼつちで療養をしなければならないことになつておるのであります。このような状態の患者が非常に多くいることを考えていただきたいと思います。それでもまだ生き長らえて療養している方はいい方なのでありまして、そのようなことを苦にしましてよけいに病を悪くし、熱を出し、喀血をする。遂には死亡する。このような実例は私たち病院におきましても相当あるのでありますから、全国では相当に多くあるものということが考えられます。また生活のゆたかな者でも家族が来なくなり、ふとん、寝巻、着物というものが破けて着るものもなくなる。それでたよりを出しても返事が来ないというようなことも多々あるのであります。医者が家族に付添いに来るようにという電報を打つても、家族はやつて来ない。死亡の電報が行きまして初めて家族がやつて来て、おざなりにこれを片づけて行く。以上のようなことは、私が実際に見て来たところなのであります。患者の前途はまつたく暗澹たるものであることは御想像がつくことと思います。先般結核予防法改正案が、予算の都合で無期延期の状態となりましたことは、私ども患者といたしまして、非常に残金なことであります。それで私どもは現在のところ、生活保護法にたよるのみであります。ほかにすべはないのであります。改正案中世帶單位の原則の阻害に、これによりがたいときは個人を単位として定めることができるとあります。この解釈について、長期疾病者などは、單に経済上の理由だけでなく、ただいま申し上げたような実際の状態を御推察くださいまして、長期疾病者の場合は、個人を單位として保護することができるとの特例を設けていただきたいことをお願いする次第であります。  次に補助機関社会福祉主事でありますが、これを設けますと、市町村長の権限がある程度福祉主事に移管されるものではないかと思われます。そうしますと、今までの慣例から考えて、法の運用を事務的に済まして、ややもすると官僚的偏向に流れ、要保護者に劣等感を生ぜしめることあります。そのようなことのあることを私たちはおそれるものであります。また社会福祉主事は——先ほど民生委員連盟の委員長の方も申されましたが、他の町村から福祉主事が指定されて来た場合、その町村の実情というものはよく知つておりません。それでそういうような実情が把握できないため、いたずらに法理論を展開して、保護者を抑圧することも起り得るわけであります。この点から最も親しまれている人たちを公選して、明朗な運営を望むものであります。それで民生委員を公選制にして行えば、一番よく市町村の実情もわきまえておるから、適任ではないかと私たちは考えるものであります。  次に保護施設の長でありますが、施設長は、当然要保護者の収容または処置に関して、憲法に沿い、差別的扱いとか、すべての行事に関して強制してはならぬことは当然であります。また必要な秩序維持のため規則を定めることも当然であります。しかしいまだ貧者を食いものにする施設長の多い現在、この施設長に保護の停止または廃止等の干渉を與えることは、非常に危険ではないかと私たちは考えるものであります。本法の中には、これらのことを防止するために、一応一方的な施設長の独断的行為は押えられておりますが、実情としては、医療保護で入院加療している者は、大体患者なりに相互の親睦その他助け合いの会を持つておりますので、そのような場合には、施設長に対し、改善等に関して希望を訴えることがあります。これか施設側において利害に関連する場合、勢い好ましからざる存在として、その者に対して進院命令を出すというようなことかないかということをおそれるものであります。何といいましても患者は弱い在在であります。また切実なる希望を持つ環境に置かれていることを知つていただきたいと思います。少くとも施設の長は、その施設を利用する者に対して、規定に従つて必要な指導をすることができるのみにして、施設長の保護に関する干渉は削除して、この任は民生委員の巡回指導等によつて、少くとも施設長として遺憾なきかいなかを調査の上、被保護者を善導していただきたいと思います。この点実例をあげますと、私の病院でも昨年給食のことでいろいろと病院に希望し、またいろいろと質問問をいたしました。その者がも前にいろいろ思者に対して、病院に売店がなかつたのでりん、ご、みかん、はかき、切手、こういうようなものを安く患者に興つて来てやつたりしておつたのであります。それでそんなに病院のことにうるさく言うし、また病院がおもしろくないならば、あなたは元気だから退院したらどうか、というような暴言を吐いているのであります。この場合、その者が健康保険で入院していたので、保護の打切りというあれはなかつたのでありますが、これがもし生活保護であつたならば、当然前に述べたような干渉をもちまして、今後打切られるというようなおそれかあるのであります。  次に診療券の交付でありますが、これは前に述べましたように、結核と長期疾病者は、家族に見放され、ほんとうにひとりぼつちになつてしまうため、診療券が毎月出すようになつておりますと、毎月いつこれが打切られるかわからないということで、非常に心労にたえないのであります。そのために長期疾病者等には、長期診療券を発行してくださるようお願するのであります。  次に国民健康保険の診療方針だと、非常に支拂いが不完全なのであります。そのために最低の医療すらできないことになりますから、これは平等に健康保険の診療方針によつてつていただきたいと思います。  次に不正に対する罪であります。これは当然でありますが、最低生活の実質的保障が行い得れば、こういうことは非常に少くなるのではないかと私は考えます。そうしてそれ以上特に悪質なもののみこの罰則を適応するようにしていただきたいと思います。  次に費用でありますが、各市町村の税金がかさむために、当然ある程度保護の制限ということが考えられます。今まででもある市町村では、なかなか言を左右にして保護してくれない。ところがある町へ転居して、そこから申請すると、すぐに保護にしていただけるというようなことは、先ほど申しましたように、税金等非常にかさむためになるのではないかと私たち考えるものであります。できますれば、これは金額国庫負担でまかなつていただきたいと思うものであります。  大体以上で私たち患者の実情お話しまして、私の意見にかえるものであります。
  28. 堀川恭平

    堀川委員長 それでは次は牧野修二君。
  29. 牧野修三

    ○牧野公述人 私の所属は同胞援護会になつておりますが、そのほかに日本遺族厚生会、母子福祉中央協議会、身体障害者中央協議会全国授産事業連盟、その他各種の団体に関係しておりますので、そういう諸般の立場から考えました点を申し述べさせていただきます。時間の御制限があるというお話ですから、具体的な実例は用意して参りましたが、それは省ままして、ただいま青柳先生のおつしやるように法令に関する部分に局限して申し述べたいと思います。  全般的に私この生活保護法に関して考えますことは、従来における例のごとく、一部改正とか修正という意味でなくて、旧法を全然廃止して、新法を制定するというところに、国会当局並びに政府当局の意思が、画期的な生活保護をなそうとする意図があるのだということを察知して、これには大いなる期待を持つております。幸いにしてよき法律ができましても、従来の実例から申しますと、それが運用において実にその通りになつておらない。絵に描いたぼたもちに等しいものになつている傾向がはつきり見られるのであります。そうした意味合いにおいて、今回の法律は、旧法が四十何條であつたのが、新法では倍になり、あるいは施行令、通牒などにおいて取上げられたものか、これが法律化されたという建前においては、私は一歩前進だと思います。しかしながらなお施行令などにまわさなければならない部分が相当残つております。法律に関しましては、幸いに国民の意思の代表であるこの議会において審議されます。施行令につきましては、いわゆる行政当局内に限られている。そういう意味合いにおいて、この施行令の運用においては、重要なポイントになるわけでありますから、ぜひその施行令の実施につきましては、何らかの審議機関を設置されることを希望するのであります。児童福祉法においても審議機関が設立されております。生活保護法はことに重要でありますから、それの審議機関の設置をこの法律中にはつきり明記していただきたいということを望む次第であります。なおこれにつきましては必要予算の関係がございます。これはまことに僭越な申し方ですが、ぜひとも例会御当局において、積極的にこれを画餅たらしめないように、予算の獲得を、全国の被保護者の心持を体して、この機会にお願い申し上げる次第であります。  そうしていずれにせよ、この法的扶助制度が完全に実施されますには、何と申しましても社会保障制度の完全実施がなければならない。今日の失業対策、失業保險制度から考えましても、いかに生活保護の上にそれらの重荷が過重に流れ込んで来ているかということを、私は強調して、一刻も早く社会保障制度実施によつて、今日の生活保護の法的扶助制度が、正常な、完全な運営になることを期待するものであります。  なお今回の法律案によりましてはも原理原則をはつきり明示したということは、これは従来末端において見られました、いわゆる吏僚もしくは医員の一方的な——いろいろな事情もございましようが、一方的な、独断的な、独善的な判断、あるいはそのために生ずる紛議に対して、これを解決するところのバロメーターを示したという点も、私は大いに期待するわけであります。従いましてその原理原則について申し上げますと、まず第一に憲法の三十五條に基きまして、従来旧法においては最低生活の維持ということだけが考えられておりましたのが、今度は自立を助長するということになつたことはも非常にいいことだと思います。ことに私ども接しております未亡人たちは、過般の未亡人大会においても、自分たちは保護を受けたくない、どうしても自立したいのだ、という旺盛な気魄であります。いかんせん、生活保護法がそれに準じておらない。場合によりますと、貧乏へくぎづけをするというような、逆な作用さえ起しているという点を非常に遺憾としたのでありますが、今回この目立助長ということをはつきり原理として取上げられました。ここにおいて彼女たちがその生活保護法のその実施において、必ず階段的な取扱いがなされるに違いないということを、私は大いに期待します点が、第一に原理に対する賛成であります。  次に、いわゆるその最低生活の内容を、旧法においては何ら規定しておりませんでしたが、このたびは憲法に基きまして健康にして文化的ということをはつきりきめて——従来の生活費、たとえば女世帶一人の生活で見ますと、その七〇%が食費であつて、三〇%は食費外であります、それがどのように文化的で、いわゆる保健衛生的であるかと言いますと、まつたく教養費はなし、あるいは理髪は男にありますが婦人にはない。入浴が月に二回。こういうふうな意味合いから考えまして、私はいわゆる生活保護法でなく、生物保護法というか生存保護法のきらいがある。ところが幸いにして、今般その健康にして文化的というようなことを明記しましたから、今度こそ初めて生活保護法になるのだという期待を持つわけであります。但しそれがやはりはつきり法律上に、その原理を示すものが明記されることを望みます。もちろんエンゲルのあの係数を、今日の日本社会情勢において、そのまま適用するということの困難さは認めますけれども、少くともとの法律内におきまして、この生活費における文化費、あるいは保健衛生の一つの対比率、パーセンテージというようなものの基準を示されたい。でき得ればその中に、別に対比率を定めなければならないというような意味合いのことを、もちろんこれは具体的な数字ではできませんから、いわゆる率、程度、あるいは基準というものをお示しくだされば、これが原理とともに非常にはつきりするのではないか。  その次に保護の補足性の問題ございます。これはもちろんわれわれといたしましては、資産あるいは能力、あるいは保険金の給付、あるいは扶養義務者、そういうふうな力を、能力を、これを一応本人の生活維持に使つて、その足らざるところを補足して行く。この原理は根本的に賛成でございますけれども、しかしここに大きな問題がございます。資産などにおきましては生産財、消費財の問題もございます。これは略しますが、結局一番大きな問題は勤労によるところの収入の差別の問題、これが二番の大問題となつているわけであります。ひとにその収入におきましても、まず第一に、話が少しこまかくなりますけれども、所得の証明書を出します。これが大会社あるいは官公庁などにおきましては、その正確なる証明書が出る。また不正確なことは出し得ない。しかし中小の個人企業におきましては、そこのところが何らかのとりはからいかできます。従つてそこにおいて、場合によりますと、そういうとりはからいのできるところに勤めている者には、手心が加え得られる余地がありますが、そうでない者には加えられない。それからまたもう一方かわりまして、いわゆるそういう勤務先でなく内職をする。あるいは最近はだんだん減つて来ましたが、行商をする。やみ商人をやるというふうな場合の收入の把握ということが、これは非常にむずかしい問題であります。それからなおもう一つは、最近の中小企業の逼迫によりまして、実際上において未亡人たちが働いておりましても、給料の遅配、欠配がございます。ところがそれが遅配している場合に、労働基準法の関係上、会社としては遅配の証明書を出しません。従いましてそれが遅配であつても、いずれ給與されるに違いない意味合いにおいて、これが保護を受ける場合に障害になるわけであります。従いまして、非常に正常なというと語弊がありますが、とにかく正常な職場に働いでいるものは、少くともそうでない職場に働いているものに比較いたしまして、非常に保護においてのでこぼこが現実に存在するということは、やはりこれは勤労意欲を上げさせるという意味において、何らかはつきりした処置をとられたい。その意味におきましてこれは非常にむずかしい問題でございます。しかもむずかしい問題であるがゆえに、やはり当局におかれ季しては、所得調査の何らかの方法を指示されることが、いわゆる末端に対しての親切ではないか。もう一つは勤労所得をいわゆる不労所得、他からもらうとか、そういう不労所得と同一視しないで、いわゆる勤労所得に対しては、その何パーセントかを控除するということを、法律もしくは施行令において明記されるならばも彼女たちはどれほど喜んで勤労意欲を増すかわからないと思うのであります。  それから扶養義務の関係がございます。これも一応民法に基きまして扶養義務者に扶養をさせるということ、これは当然でありますが、今日の経済状態、及び急変しました家族制度というものの関係から考えまして、これは実際上お調べになればわかりますが、扶養義務というものがほとんど実施されておらない。そういうところにおいてやはり空文にならないように、室文になるにはなへんにそれがあるかという点、しかも法律によると、扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助はこの法律による保護に優先するとあつて、そのために保護が遅滞し、もしくは不十分になるという傾向がありますから、この点も大いに論議していただきたい、この点に対して私は法をどういうふうにとりかえるかということの専門的な知識は持つておりません。  最後に生活の基準及び程度の点も、これは原則としてお示しくださいましたが、たとえば今般新たにつくられました住宅扶助あるいは教育扶助などにおきましても、あるいは従来の医療扶助、こういうふうな単独扶助のそれぞれ受ける基本が、最低の生活を維持し得ざるものという基本的な條件がございます、従つていかなるよき扶助制度がありましても、その扶助を受ける基本的な條件として生活し得ざるもの、すなわち生活の最低基準ということになります。従いましてこれが一つのキー・ポイントになるわけでありまして、そうした意味において生活基準のきめ方という問題、先ほど御質問がありましたが、現在は最低の生活、これは健康にして文化的な最低の生活を維持し得られるものであるかどうかというところに大きな疑念ではない、まつたく現実の事実がございます。従いましてぜひともこの測定の基準というものをはつきりしていただきたい、そういうふうに存ずるのであります。なお従来は米価とか、いわゆる公的に価格変動がありました場合には、それのあとを追つて、多少変更がございますが、むしろできますならば、せつかく政府当局において権威のあるCPSをつくられているのでありますから、そのCPSそのままとは申しません。CPSの七割とか、あるいは六割とかという程度を測定の基準にされて、そうしてCPSの上下に従いましてこれがるライディングして行くということにされたならば、いわゆるどろなわ式にならないで、ただちにそれが自然発動するということによつて生活保護の実際が行われる。あるいはもしそれが困難でありますならば、やはり測定委員会のごときものをおつくりになつて、そうして生活基準の測定委員会でどんどんそれによつて実際に、客観情勢に即する動きをされるということが、この生活保護法が結局ほんとう保護の名に価することになるのではないか。それからもう一つこの基準に関係いたします問題としては、ボーダー・ラインの問題を申し上げたいと思います。これはかりに五人家族で五千三百円といたしまして、たまたまここに五千円の收入のあるもの、それから五千二百円の収入ある場合においては、これは五千円の収入のある者は保護を受けます。五千二百円の者は保護を受けませんが、そうした場合において、今度は実際生活内容におきますと、いわゆる保護を受けておるものは税金は無税になる。あるいは地方の事情によりましては、水道料というようなものが無料になるけれども片方は納税をする。それから有料である。あるいはララのような物資をもらう。その他地方によりまして特配物資をもらう、そういうものの収支の関係を合計いたしまして、その生活内容の価価を判断いたしますと、結局においてはそのボーダー・ラインのものが、かえつてプロパーのものよりも低い生活をするという実情でございます。そうした意味におきましてもどうかそのボーター・ラインに対する取扱いというようなことを法の上におきめ願いたい。幸いにして生業扶助の欄におきましては、ただ一つそのボーター・ラインが規定してございます。最低の生活を維持し得ざる者、もしくはそのおそれある者と言つて、生業扶助におきましては、ボーター・ラインを示してありますが、他においてはボーダー・ラインを示してない。これはやはりそこにお示し願うことが、今の実質的なでこぼこを調整することとともに、最初の原理にございますプロパーの線からボーダー・ラインに上つて行く。やがてほんとう社会構成の一員として復帰する。その段階的な処置が原理に即することになるのではないか。  最後に必要即応の原則、これもこの原則を立てられたことは私として非常に喜びにたえないのであります。しかしながら戦後のあの無差別平等主義が変な行き方をいたしまして、その末端におきましては、実情に即して、必要即応の保護を與えるということが曲げられております。そうした意味が、たとえば遺族未亡人などにおいては、非常な要望となつております。従つて引揚者に対しましては、いわゆる家財の特別配給がある。あれは私は非常にごもつともなことだと思う。それと同じように母子世帶に対しては、やはり母子世帯に応じた必要即応の保護策をはつきり立てる。これは施行令の方になるのかもわかりませんが、その点を特に強調し、特にまた現行法におきましては、男の飲食費一人千二百四十五円に対しまして、女が九百六十五円、七七%でありますが、未亡人の場合には男と同じように外へ行つて働き、また家庭に帰つて、場合によつては亭主は遊んでいてもいいのですが、未亡人の場合にはまた洗躍などもあり、日曜でも遊ぶひまはない。従いまして労働力というような点から考えましても、そういうふうな必要即応の原則から行き要しても、原則は今度は逆になる。これは私の計算の間違いかもわかりませんが、私の存ずるところでそういう結果になる。こういう点もやはり、少くとも母子世帶の特殊性というものを必要即応の原理でもつてつてもらいたい。  次に保護実施の方法、あるいは被保護者の権利義務の明示、不服申立てというようなものは、いわゆる生活保護行政を民主化する。そうして地方における一般的あるいは封建的な取扱いが、今後是正されるであろうという点において、満腔の賛意を表しますが、その中において、たとえば保護の可否を決定するのに期間をきめたことは非常によろしいのです。但し私思いますのに、申請の却下の点ですが、私の見ました法案では、通知がなければ却下になつたと思えということは、あまりに一方的ではないか。やはりそれは却下されたということ及びその却下の理由などを文書をもつて明示すべきではないか。その後、ただいまいただきました法案にそういうふうになつておりますれば、これは別問題でございます。  それから保護金品の前渡しをすることになつておりますが、これは実際上東京都内におきましても、区においてはその月の十月にその月の分を渡しますが、地方の三多摩方面に行きますと、その月の分はその翌月の月末であります。従いまして何かの事情において東京都内から三多摩に移転したる場合には、そこに約二箇月間の空白状態を生じて、その間彼女は何によつてつて行くのだという問題がございますから、やはりこれは前渡したければならないというふうな方法に改めていただきたい。これはもちろん市町村の財政の関係もございますが、その点は結局先ほどの一割負担という問題もございます。今日はそういう状態はございませんでしようが、かつて地方町村に参りますと、一応生活保護費を十割支給して、一割を寄付名義でさせたというようなこともうわさに聞いておる。今日はそういうことはないと思います。そういう実情でございますから、これは予算措置の関係もありますが、少くとも前渡しすべきことというふうにお改めを願いたい  なお現住地と保護施設の問題でございますが、居住地から保護施設に移つた場合に、そこから一年間費用を送るのですが、現在日本における保護施設の分布状態をお考えになるときに、たとえば失明者の光明寮、ああいうふうな失明保護施設などにおきましても、数えるほどしかない。そういう場合には、やはりいなかから送つて来なければならぬ。そうした場合に、いなかの財政の関係、これがとだえて非常に運営に困つておられる。そうした意味におきましては、やはり保護施設の現状から考えてみまして、保護施設に入れた場合には、少くとも入れたそのときから国もしくはその都道府県、少くとも町村財政より上の相当融通のつく行政機関の方へ責任を渡すことが最もいいのじやないかということ、それから繰りかえ支弁の問題も同じような関係において申し上げられると思います。  それから最後に免税、差押えのことを明記されまして、けつこうでありますが、これは末端の問題でありますから、場合によると、法律がああなつておりますから、おの法律を嚴重に施行すればいいかわかりませんが、現在東京都内におきましても、区民税は生活保護者は免除されておるが、三多摩方面に行きますと、町民税を生活保護者がとられておるという事実がある。それからまた被保護になる前に行商、おでんやをやつておる。ところがそれが病気になつて死んでしまつて、税金は納められないというふうになりましても、実際に差押え処分が現在の被保護者に対して行われておる。こうした意味合いから行きましても、生活保護費を標準として課税してならないとございますが、少くとも標準としてというのでなく、生活保護費の一部もしくは全部を徴収してはならないというようにでもしていただくことができないかということを考えるのであります。  最後に、幸にしてここのように立てられました原理並びに原則によつて事項だけを申し上げますが、職業未亡人が自立更生の意気をもつて職業技能を修めるために、補導を受ける。場合によりましては今日の職業補導機関というものは、範囲が非常に狭い。従いまして職業学校にも入らなければならなことになります。またそれが自立更生の基本策であると思いますが、そういう職業学校などに入つておる場合における未亡人の生活保護費の問題、あるいは高等学校以上における子女の育成ということが唯一の希望で、あの窮乏と寂漠の中に闘つておる未亡人のために、それが親戚の援助とか育英会の給費とかいうことによつてつておる場合に、高校あるいは大学に行きましても、これの生活保護はかわりなくやつていただく。もちろん実情を調査いたしますが、そうしていただきたい。それから教育扶助の場合におきましても、たとえば今日は映画教室というものがあつて、映画教育をしたり、あるいは修学旅行などがございます。こうした場合に、やはり自分の家の子供だけ経費が足力ないためにやられないということは、精神的に、また物質的に非常に悲痛な涙のもとになるわけであります。そういう意味合いにおいて、修学旅行あるいは映画教育というものは必要な教育費とみなして、教育扶助の中に大幅に入れていただきたい。あるいは虚弱者の栄養の問題、それから簡易診療の問題、それから医療機関の指定を拒否する自由がありますが、これは地方によつて医療機関の少いところで、本人が望みたい医療を受けたい場合には、今度は逆に医療機関自体に指定拒否の自由は與えられるが、その結果としてつまり被保護者が受診の不自由をそこに来すわけであります。この点においても問題があるのではないかと思います。  それから生業扶助の問題であります。これは時間が参りましたから簡單にいたしますが、最近授産事業に関する厚生省のいろいろなお考えがあるようであります。しかしこの技術の助長という意味におきましても、幸いにしてアメリカなどと違つて日本では保護を受けながらも、保護を受けることに満足しないで働きたいという、本質的な気持を持つておる。それを生がすにはやはり家庭内職の問題、それから授産の問題は非常に重要である。その点においてやはりこれに伴う問題でございますが、公私ともに授産事業の振興策を大いに厚生委員会において御考慮をくだされたいと思います。ことに先般の国会の御決議によつて母子福祉対策要綱、家庭内職センターというものがうたわれておりますが、それが末端において家庭内職センターが、いわゆる今度の授産事業として取上げられ、あるいはこれに対する育成補助の道があるかないかということは、母子福祉対策要綱が対案になるかならないかという大きなわかれ道だと考えます。  スピードで申し上げてまことに失礼でありますが、最後に申し上げたいのは、従来称せられました法外援護の問題であります。進駐軍当局においては保護国家の責任においてなすのだから、その国家の責任においてなす以外の法外援護というものは、あり得べからざるものじやないかというお考えがあつたように漏れ聞いておりますが、幸いにしてこういうふうに保護法が出ます場合には、しかも一方において従来法外援護は民間団体がやつておりましたが、これが憲法八十九條の関係で補助が打切られたので、民間の法外援護はもう活発な活動ができなくなりました。である以上は、従来の応急的な法外援護と称せられた援護は、政府において当然なくしていただきたい。これは法文の解釈によつてはなし得るとも考えられますが、現実においてはやはりなし得られません。そうした意味においてボーダー・ラインの問題をここに取上げていただくこととも臨時、応急的な援護という意味合いのことをここに規定してくださるならば、これによつて初めて全国の困窮者は、安心して社会福祉の恩恵を受けられるであろうと思います。以上で私の公述を終ります。
  30. 堀川恭平

    堀川委員長 次は江津萩枝君。
  31. 江津萩枝

    ○江津公述人 私は東京都杉並区井荻民生委員協議会に所属しております江津萩枝であります。私も皆さんのようにこの法文に対しては逐條的にいろいろと意見を申し述べたい気もいたしますけれども、時間の点でそれはできないと思いますので、ちよつと思いついた点を二、三申し上げたいと存じます。この中で最も私ども民生委員として申し述べたい点は、第四章保護機関及び実施という項が中心になるように思われます。この項については先ほど全民連の会長さんがいろいろとおつしやつてくださつたのですけれども、私は実際に横軸線の民生委員として、まる二年間保護者生活の中で仕事をして参りましたものとして、いろいろな実例を申し上げて、この法律に対して私の意見がなぜ出て来たかを御説明申し上げたいと思います。  公的保護事務取扱要綱というものを、たしか一月の末か二月の初めだつたかいただきました。これで大体ここの第四童の二十一條、並びに二十二條に規定されております実施方法が指示されたわけでございます。ここにも書かれてございますが、四月一日から実施するというふうに言われまして、その以前、通牒に基いて今までの生活保護法と非常に切り離されたようなかつこうで、実際には保護が行われた期間があつたわけでございます。ではその期間にどういうことが起つたかということをいろいろな具体的な例を申し上げて結論としてみたいと思います。二十一條に規定されております社会福仙主事を置いて、それを他の事務吏員たちによつて補佐させて行くというかつこうで行われる保護というものは、非常にむりなんではないか。それから民生委員というものが、今までの補助機関としての能力をなくして、軍に協力機関——先ほどこちらの青柳委員が、それはむしろ好遇されたのではないかとおつしやられましたけれども、実際には決して好適ではないのでありまして、これでは民主委員というものはほんとう活動できないという結論になります。そういう点で私はこれに反対意見を持つておるわけなんです。では実例をいろいろと申し上げたいと思います。三月十四日が私ども協議会のあつた日で、その後一月一日かの次官通牒で実施される前まで、去年の十二月までは月二回ずつ民生委員協議会というものを持ちまして、保護実施期間が十五日間を限度として実施されたということは、今までもそうだつたので、民生委員協議会というものはに月二回ずつ持つていたわけです。その民生委員協議会でいろいろ保護のケースの認定をいたしますが、ほとんど決定に近い協議をしていたのでございます。それがやられなくなりまして、補助的な能力を失つてから月に一回になつた。その一回が三月十四日に持たれたのです。要するに民生委員の手が省かれて来た一月から三月十四日までの期間に、私どもとして非常に悲しむべき実情が起つているのです。これは私どもの所属している協議会並びにその事務所が怠慢であつたとか、非常に悪かつたということでは絶対にないと思います。その例をあげればわかりますけれど、三月十四日の協議会のときの民生委員たち発言の中に、今度の次官通牒実施後、非常に保護の決定が遅れて、そのために病人が死んでしまうではないかという発言が三件に及んでおります。それは一つの例ですけれど、これに対して事務所長の言明としては、今町のそういう切りかえに際して有給吏員というものは数も少い。それでその協議会を例にいたしますが、四十五人の民主委員が晝夜兼行で働いていましたことに対して、ただ一人半しか事務員が増員にならない。そういう結果、調査にもまわれないし、事務の処理もできなかつたというような説明がされております。これは病人でございますが、そのほかにも二月十四日から三月十四日のちようど一箇月間に、生活保護の決定がわずか五件しか処理されていない。これについては先ほど全民連の会長から、こういう法律実施した結果、保護件数が非常にふえているというふうにおつしやつたのですけれども、これはこういう時勢たからむしろ当然なことではないか。こういう方法がとられたかゆえにふえて来たという考えではなく、これは時勢せいです。多くの民生委員がやつていたことを、少数の吏員が処理しなければならぬ例として、こういうようなたつた五件しか決定されてないということも起るのです。また十二日に申請しておいたはずのものが、まだ決定されていないで、その間に病人に入院し非常に生活が困難になつてつておる。こういうようなことを多くの民生委員が言つているのでございます。そういうことからも考えられるのは、二十一條に規定されている有給吏員でもつて処理をして、民生委員は軍に協力機関として事後報告程度のことしかされない。こういう法律によつては、実際の面ではこのようになつて行くのではないかと考えられるのです。そのほかにも病人をかかえた人、か民生事務所の窓口で聞かれたり何かしても、窓口に対する経験の少い保護者人たちは、十分自分の意思を表示することができない。その足で区役所へ行かされ区役所ではいろいろと責められ——責められるというと吏員の方に悪いのですけれど、そういう結果になつただめに、保護の申請をする勇気がどうしてもなくなつてしまつて、自分の子供の病気がどんどん悪くなつて行くのにそれを放つておく。しかしこれが開放性の結核患者であつた場合は、私どもつておくことはできませんので、方方奔走した結果、病院へ入れるようになつたのですけれど、そういうことでも現在はほんとうに人手が足りないし、事務員の質的な問題にもなると思うのです。また窓口では医療係と生活係とわかれているという、ああいう官僚機構の中では、ほんとうにケースに対する処置が適切になされないということが言われているのです。それで第三十一條に社会福祉主事を置くということが規定されていますが、そういう制度は、ほんとうにケース・ワーカーとしての機能を全うすることはできないのではないかということを、一月から三月に実施された実際の中で、強く感ずるわけなのです。  それならば民生委員がよければ理想的に行くかというと、先ほど民生委員の連合会長さんがおつしやいましたように、いろいろと弊害がありまして、理想的に行つていたわけではありませんけれども民生委員を單に名誉職としている人は別として、ほんとう生活困窮者と苦労を共にしている民生委員は、この二十二條に規定されているような、何かお飾りになつていることにはたえられないのではないかと思います。先ほど会長さんもいろいろとおつしやいましたが、杉並の天沼のある女の民生委員の方も、いろいろ込み入つた事情がそこにあつたようでありますが、保護者の方になぐられて、民生委員の名誉に関することだからというので起訴なすつた事件がありますけれども民生委員というものは、そういうように身体を張つて生活困窮者の相談相手になり、熱意に燃えてこそやれるのであつて、またそれだけ発言権利なり、権利なりがあつてこそ、なぐられてまでも自分の任務を果して行こうという熱意がわいて来るのだと思います。民生委員ボス的な権力に支配されたりしたという実例はたくさんありますが、それは今までのような民生委員のあり方、その民生委員を選んだ推薦委員会のあり方というものにも大きな問題があると思います。民生委員の労苦は言うまでもないと思いますが、たとえば結核患者をどこかへ收容しようということについても、有給吏員の処置は、先ほどもどなたかおつしやいましたように、非常にお役所式で、日曜祭日は休み、朝や晩は動かず、病院の制限、費用の制限などをして、保護の申請をしても貧困者の立場考えるということがなかなかできないのであります。そういう場合に民生委員が四方八方に活動して、保健所の社会部へ行つて依頼いたしましたり、また保健所の労から、衛生的な立場から区役所の非常に恐硬な窓口の方を説きふせてもらつたり、足を棒にしていろいろ工作しなければ、ほんとうの適切な処置というものは、現在のところとられておりませんので、そういう活動をするための民主委員というのはどうしても必要なんですが、その民生委員は、今まで推薦委員会で推薦された。その推薦委員会のあり方も問題ですし、今までに民生委員にはいろいろな問題が起つておりましたけれども民生委員ほんとうのあり方というのは、今私が申し上げましたような有給吏員ではできないような、ほんとう生活困窮者と寝食をともにして苦しむのでなければならないと思うのです。民生委員ほんとう生活困窮者の相談相手として正しく活動できるためには、民生委員の推薦というようなことでなくして、民主的な民生委員を公選にしていただきたい、そうして公選された民生委員は、体を張つて生活困窮者たちを悪條件の中から立ち上らせるためのいろいろな生活補導や何かを、ほんとうに確信をもつてつて行けるような待遇を與えていたたきたいということを、ここで強調したいと思います。現在この法律と同じような方法で実施されております実際面では、ここで規定されておりますように、十四日以内に保護の決定をしなければならないということは、現在実施されておりません。ほとんど全部と言つては言いすぎるかもしれませんけれども保護の申請が非常に遅れておりまして、第二十四條の四項には、「保護の申請をしてから三十日以内に第一項の通知がないときは、申請者は、市町村長が申請を却下したものとみなすことができる。」となつておりますのを読んで、ほんとうに変な気がしましたけれども、今のところ三十日ぐらいたつて何とも言つて来ないという実例はたくさんあります。だからあとの不服の申立のところにも規定されておりますけれども、最初から不服の申請をしてしまつた方がいいくらい、この申請は現在のところ非常に遅れております。それではその聞けつこう食つていたではないかということをよく委員たちがおつしやいますけれども、それはほんとうにふとどきじやないかと思います。  そういうふうに有給更員の質の問題、経済的な問題、官僚機構の中に置かれているというこの三つの理由から、この有給吏員と言いますか、社会福祉主事とその補助員というような制度ではとうていケース・ワーカーとしての十分な活動は望めない。民生委員をもつと質的に向上させるために、民生委員を公選として待遇をよくするということによつてこそ、最初の基本方針として規定されておりました美しい法文が生かされるのではないかと考えます、実際面のことをいろいろここでお話するつもりで、いろいろなものを持つて来たのですが、非常に話がなれませんために、前後の連絡が悪くなりましてお聞き苦しかつたと思います。が、その点は御質問のときにいろいろ聞いていただいた方が、私としても御説明がしやすいと思いますから、これで終りたいと思います。
  32. 堀川恭平

    堀川委員長 午前中はこの程度でやめまして、休憩いたします。     午後一時十三分休憩      ————◇—————     午後二時二十一分開議
  33. 堀川恭平

    堀川委員長 それでは午前中に引続きまして、厚生委員会公聴会を再開いたします。  引続き公述を聽取することにいたします。なお申し上げておきますが、公述人の方々は午前中申し上げましたように、まだ七人ありますので、一人の持時間を大体二十分程度としていただきたいと考えます。下松桂馬君。
  34. 下松桂馬

    ○下松公述人 私は財団法人浴風会、浴風園の園長でありまして、下松桂馬と申します。全国養老所協会の理事長東京都社会事業協会の副会長などをいたしておりますので、保護施設の立場からこの法案に対する意見を申し述べたいと思います。  保護施設、特に養老の施設とか、あるいは厚生施設のごときは、現在はなはだしく不足いたしております。府県立の養老施設のみではとうてい実施はできないのでありまして、どうしても私団体を現在利用いたしております。相当な役割を演じておりますが、国が委託する場合の事務費の補助のごときは、現在三千七百円ベースによつて補助を受けておるのでありますが、監督はいよいよ厳重なつて、しかもそれに伴う経済的裏づけがありませんから、萎縮するばかりになつて、国や都道府県が、ただちに公営または国営でもつてその施設をかりに充実するといたしましても、数年を要します。そこで現在あります施設を——人的並びに施設を代用して、十分有効にお使いになることが非常に必要であると考えるのであります。この意味から、條文について個々に申し上げてみたいと考えます。  第三十一條三項に保護金品の前渡しか規定せられておりますが、現在まで保護施設に対しましては、市町村の支拂いは非常に遅れがちであります。東京都内二十三区は割合によろしい。ただし通例は二箇月、おそきは六箇月ないし一年余を経過する実情でございます。これで前渡しという問題がありますが、施設にもこれは適用されると思います。また遅れた場合の町村に対する監督は、どうしてせられるのであろうか。この点法案が空文に終らないように願いたいと思うのであります。  これに関連しまして、第七十二條で、保護施設所在地の市町村がも一時立てかえ支弁をすることになつておりますが、これは実際に可能でありましようか。この点がはなはだ疑問であります。現在でさえも三多摩のごとき、のみならず神奈川県その他非常に遅れがちでありますが、小さい市町村に施設がありました場合に、立てかえ拂いが実際にやれるかどうか。この点を私は非常に疑問に思つております。それで、もし不可能であるならば、できれば都道府県で一括して責任を持たれるという道を、ぜひ開いてもらいたいのであります。一年居住しておつたからというので保護施設に入れますと、その町村は、ずつと死ぬまで、何年かかろうが、やはりその町村が義務を負担して行かなければならぬということになります。もつとも東京は、各地に疎開しておつて、爺さん婆さん、あるいは孤独な老人が地方におつたけれども、売り食いをしてもとうてい耐えられないというので、東京に帰つて来て保護を受ける。こういうことになりますが、もともと町村としては、ちよつと来ておつた人をそんなにいつまでも保護することはまつぴらだという立場になる。そこでなかなか保護費を送つて参りません。先ほども議論が出ましたが、町村によりまして財政立場は非常に違いまして、生活扶助の間はともかく、病気になつたら、もうそれは金は抑えぬ。小さい町村になりますとそういうことを現実に申しているのであります。わずか二割の市町村負担でありますが、これは国費の負担にしたら、まんべんなく、不公平なく、要保護者保護し得ると考えます。これはこの法規に直接関係はありませんが、希望意見として、ぜひそういうことをお願いしたいと考えております。  第三に、第四十一條に「都道府県及び市町村の外、保護施設は、民法第三十四條の規定により設立した法人(以下「公益法人」という。)で、なければ設置することができない。」とあります。民法第三十四條の規定によつて設立した法人ばかりでなく、過渡的でも、宗教法人、宗教教団を認めてもらいたいのであります。社会事業の発達は、あろ意味で宗教家の奮起によるものが非常に多いの参でありまして、これをただちに公益法人に切りかえるためには、ちよつと日時がいるのであります。そこで本法第四十七條第三項で、すでに禁止條項もあり、憲法第二十條でもこれは規定せられているのでありますから、信仰を強制しないということと、社会事業を経営する場合の予算、経理を明確に記帳すること等によつて、これを過渡的でも認めてもらいたい。もしこれができぬとすれば、附則五項に三箇月とありますが、これはあまりに短かきに過ぎる。これではどうすることもできない。そこで今までやりておりたのを全然やめさせてしまうという結論になるのでありますが、国並びに府県の施設が現在十分であるならげ別として、府県がやるとすると、敷地から争いが起る。そこに建てられては困るとか、あるいはいろいろなことで、容易に決しない実例を私らは多数知つておりますから、やはり現在保護施設として使われております施設に対しては、十分活用する意味でその点をお願いしたいのであります。第四十一條3の一に「設置しようとする者の経済的基礎が確実であること。」とありますが、現に保護施設として認可を受けている私人の事業を、公益法人と改むべき場合の資本金は、動産、不動産などの評価額を認めて、できるだけ低額で、すみやかに法人となり得るように、法の運営において取扱われたいのであります。今日までやつて来たその事実を認めて、なるべく公共性を持たせる意味で、法人にかえなければならぬが、あまりそれがために困難を感ぜしめることは、いかがと考えます。  第四に、第四十八條のに、「保護施設の長は、その施設を利用する被保護者について、保護の変更、停止又は廃止を必要とする事由が生じたと認めるときは、すみやかにも市町村長に、これを届け出なければならない。」こういう項があります。それから第六十三條一の3に「市町村長は、被保護者が前二日頃の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。」とあります。これでは、施設の長からの届出に対する市町村の処置が明瞭に規定せられていませんから、第六十二條の4として新たに左の通りの追加をしてもらいたいのであります。第六十二條の4、「市町村長は、第四十八條の4の届出があつたときは、正当の理由と認むるときは、すみやかにこれを処理しなければならない。」この言葉がよいか悪いかどうも通事でないかもしれませんが、気分はそういう気分であります。ところがちよつとここで例を申しますと、御承知のごとく養老事業のごとく、施設に収容を頼まれておりますものはも委任を受けたら拒むことはできぬ。入れられたら拒むことはできない。そこで前科八犯もおれば十犯もいるし、また実にりつぱな人格者も、非常にまじめに今日まで社会に貢献して来た人々が、悪いことをせぬでりつぱな生活をしておつたために、老後苦しんでおられる。そういう人も収容いたします。ところか昨日も進駐軍が参つて、処分に困る人はないかということでありますのでちよつと申し上げたのですが、七十三才になりますが、婦人に対して盛んに結婚を申し込んで、はなはだしきは今度寮母と精神的結婚をやろうという申出をするとかいうようなことで、同僚の婦人方は非常に不安にかられている。これは精神的に非常に背から性癖者ではあつたそうですが、精神的な異常がいろいろな点でそういうふうに認められますのは、これを他に、精神病院あたりにでもどうだろうかと思つても、なかなかそれがぐあいよく参りません。そこでそういう場合がたまに生ずるのであります。それはその人のために、静かに暮らしておつた人人が非常に不安を持つ。そういう場合には何とかそういう人の処理をする必要が、保護施設としてはあるのであります。そこでこの市町村長の決定した保護の変更、停止または廃止をした場合に、被保護者がその決定に対して、保護施設を動かぬというような場合に、保護施設の長は立ちのかせるすべを持たない。現在の法規では保護施設の長は何ものも持たない。在園者は不平を訴えることができるが、何らの権限を持たないのであります。からに現行法律に訴えてみても、事柄が事実上人道問題にからんで来ますので、引渡しまたは立ちのきの強制執行は不可能となるのであります。これを救済する方法としては、かかる特殊な、極端な性癖を有する人々を特別に、これこそ官公営において特別に引受けるような、匡護的性格を有するような特別な保護施設が必要じやないか、そうしてもらいたい。こう考えるのであります。  第五は、八十四條罰則中、「報告を怠り」とありますけれども社会事業家は、その立場上罰金刑を受けないようにしなければならぬ。今度の基本法草案では、罰金刑を受けたものは資格を取消すとか、これは草案だから何でしようが、よほど厳格な案ができているようでありますが、その行為の作為、不作為に限るために「故意に報告を怠り」と訂正せられたいのであります。また「若しくは忌避し」とありますが、この七字を削除していただきたい。これは「拒み、妨げ、」の中に十分含まれておるものではないか、こういうことを考えます。また第八十四條の2の「行為者を罰する外、その法人又は人に対し同項の刑を科する。」とありますが、かくては今の保護施設としては各地の有力者有識者をある場合代表者として、理事者といたしておりますが、保護施設の代表者としての現在の状態では、これが二重の罰則を受けるということになるので、本質的に代表しておる者がこれを受けるならよろしゆうございますが、そういう点において2はこれを削除してもらいたい。こういうような希望を持つているのであります。要綱中にお願いしたいと思う点を以上申し上げた次第であります。
  35. 堀川恭平

    堀川委員長 次は朝倉純義君。
  36. 朝倉純義

    ○朝倉公述人 私は月刊療養雑誌「健康会議」というものを発行している編集の責任者である朝倉であります。一年間、年余にわたつておもに結核患者を中心としまして、いろいろな生活の相談その他のことを研究し、また指導して来たようなものであります。それでもうせん昭和三十三年ですか、生活保護法改善期成同盟というものを産別全国医療労働組合、労農救援会、患者同盟、引揚者、こういつたような団体が集まりまして、あの当時から生活保護法は改善しなければならないという気持を持つて今までやつて来たのであります。先ほどから患者さんの代表の方の公述もございましたが、生活保護法の改善についての全国的な署名をリユツクに一ぱい詰めて来た。これが今のところも一番困つておる者が切実に生活保護法に、たよつておるということをわれわれは思います。だから私たちは、やはり一番困つておる人たちの問題を取上げて、その中に法がいかに生かされておるかという運営の面と、それから法律の面を検討して行かなければならないじやないかと思います。  それに先だちまして、そういつた声を代表いたしまして、私一、二枚地方から来ておる手紙の一部を読み上げてみたいと思います。私が今読むものは茨城から来ております。この人はお父さんとお母さんと、これは年寄りですが、それに二十六歳の奥さんです。それと本人で四名さんです。この奥さんが会社に就職して、三十五百円をいただいておるのでございますが、これに対して非常に生活の扶助が受けにくいというような立場にありまして、るるいろいろ書いてあります。その中で現在住んでおる木造瓦ぶき平屋十五坪の家がありますが、これがあるために非常にさしつかえを来しておる。それから生活調査書は今まで幾度も提出しましたが、地方事務所から調査があるたびごとに適用してもらえない。だから抽象的な、売るものがあるからこれを売つて生活しろということでなくて、具体的に最低生活の基準と照し合せてやつてもらいたい。それから君の方はラジオがあるが、このラジオは必要がないから売つたらどうだ。それから新聞はほかのものをよそから借りて読んだらどうか。たき木は山へ行つてつて来なさい。老父母は食えなくなれば養老院に入れたらいいだろう。電燈料が高くて拂えないなら、それはやめて、ランプを使えば、役場から安い石油を配給してやるから、それでやりなさいといつたようなことがるる述べられてあります。そし最後に、私たちは一方的に国家の思惑に浴している身分で、その不満を訴える機会もないままに思わず恥かしい実情を申しましたが、これが今後資料にでもなり、少しでも保護者生活が改善されれば幸甚であります、失礼をお許しください。ごうるる述べて来ております。  それからもう一例は、印刷業を元しておつた人ですが、これは静岡の人です、奥さんが病気になられて、御本人は結核です。それで三人の子供をかかえておるのです。ここの民生委員さんは、君の家は三人家族で、五千三百円が最低生活基準だが、親戚があるから、親戚は一日百円ずつ仕送りをすることに法律でなつておるから、そうすると、三十円を引いた分だけを保護するんだというようなことを訴えて来ております。そうしてそのうしろの方に、二箇年の間に家族中全部結核に感染、発病、死亡しました。戸主妻の発病入院のために有無収入の二箇年の療養生活を続けておるにもかかわらず、扶助料は千五百円です。こういつたようなことが書き並べてあります。  それからもう一つに、不服申請ですが、これは厚生省の方々も、もし受けられなければ、不服申請の道があるから、これでやつたらいいではないかと常に主張されます。じや不服申請はどんな例があるかと申しますと、これは山口県の例でございますが、お母さんとお兄さんと兄嫁と、それから本人と弟、妹、兄貴の娘二人の八人なんです。そうして総収入が七千六十円というくらいに査定されます。そうしてその最低生活費は六千四百七十五円とはつきりきめて、民生委員と村長がこれに捺印しております。そうしますと、この収入から両方とも確認された支出を差引きまして、五百八十五円の余剰が出て来るわけです。それだから、この人は入院したくても五百八十五円しか余裕がないわけです。ところが、それについての村役場の裁定決定を読みます。医療扶助費決定の件、さきに申請された×中〇雄殿、医療扶助に関し九月二十九日民生委員協議会において左記の通り決定したから通知します。記、一、医療費の二割村費負担、但し入院治療の場合に限る。二といたしまして、自己負担八割——これは厚生省に問い合せても、その決定の仕方は二割などというような漠然としたものでなくて、金額をはつきり明示するものでおる。それから初診券を使つてはつきりその入院が適当であるかどうかを決定すべきだというような意見も述べられております。不服申請の道は昨年の七月から九月にかけて、これは課長さんからお開きしましたですが、不服申請が百四十三件でございまして、五十六件が不服申請が通つているのでございます。こういつたぐあいに、言いたいことも言えない。つまり恩恵的な保護法でありますから、言いたいことも言えない多く患者さん、それから生活に困つている人たちが悩んでいるわけであります。だから不服申請の道があるからそれでやればいいということは、私たちには賛成しがたい。いわんや民生委員が単なる協力機関になりますと、さらいそのお役人の方の線だけで参りますから、心を開いて相談し、またあたたかい手を差延べて、この食えないような生活基準額でどう生活をやりくりして行くかというような指導もなさらなければ、これはもうとても困つたものになると思います。  具体的な例はそれだけとしまして、もう一つ財政からする責任を同癖する行き方が非常にあります。これは奈良であつた例ですが、結核患者で生活保護法の医療扶助を受けようとしましたら、結核の長期療養を要するものはこれに適用しないのだというような実例があります。これはやはり村の財政がこれを保護するに耐えられないような立場にやられているからです。新しい保護におきましても、その地域にある療養所、収容所、それに対してはその地域の村当局が繰りかえ支弁するような條文があります。これは先ほどどなたさんかが指摘されたように、これは村財政上なかなかやれない。もしやるとすれば、運転資金としての何らかの形で金を支給しておかなければ、なかなか円滑に行かないのではないかと思われます。  さつき不服申請の例をあげました際忘れたのですが、今度の條文におきましても、不服申請しましてどれくらいで解決するかと思つて、私計算しましたら、長くて三百四十日、約一年かかるのです。この間にこの人たちはどうしたらいいのか、これが問題だと思います。計算したらはつきり三百四十日間まで引延ばしができるようになつております。それから不服申請の受理ですが、市町村長と県とそれから厚生省に行きますが、決定通知が行かなかつた場合には却下されたものとみなすというのがついております。これは村と県の場合はよろしいですが、厚生省に行つて決定通知がなかつたら却下されたものとみなすと言つたら、どこに行つたらよいのか。これは裁判に訴えろということになるかもしれません。そういつた條文もあるのですからそうなるのかもしれませんが、これはやはりお役人立場からでなくても困つた人たちには親切に必ず決定をしてやるのだという法が貫かれなければならないと私は思います。不服申請の件につきましてはこれだけいたします。  次に私相当たくさんのお手紙をもらつていまして、どうしても結核のことについて話してくれということで、きようも小石川の試験所で座談会を開いて来たような次第ですが、最近自宅療養者の生活、それから入院している人たち生活を見てみると、非常にみじめなものです。たとえば自宅で療養している人たちは、東京都の調査では、あの労働者の家計調査の半分、あの水準以下という者がもう七〇%もいるという調査がなされております。これは結核予防会で調査したのですが、それから私が訪問した例はも去年の七月だつたのですが、今でもやはりそういう状態が続いておると思います。杉並で配給米か七日分ありましたら、これをみな売り拂つて、そしてこうりやんを買つてそれで生活するといつたような、みじめな家庭療養をしている人たちがあります。それからまた最近よく言われておりまするストレプトマイシンというものがありますが、これを打ちたくても、とても金が出せなくて困つておるから、何とか生活保護法でもストレプトマイシンを打てるようにしてくれないか。今では粟粒結核とか脳膜炎に限られておるが、倒れない、死なない前に何とかしてくれるようにしてくれないかという要望がありました。これは課長さんにお願いしましたら、いやこれは生活保護法の補足性というか、社会保險でやつてそれでできないものを生活保護法でやるのだから、生活保護にしわ寄せさせられると困つたもので、結核は早く結核予防法案をつくつてやるべきだというような言葉をいただいたようにも思います。  あまりこまかいことを長く言つておりますと時間がかかりますので、生活保護法の予算上のことについて一言申し上げますと、やはり私たちは適用の保護の種類の拡充を望んでいたわけです。これは今度この中に教育扶助というものができた。これはわれわれの年来の希望だつたわけです。これはどうにか叶えられて喜んでおるような次第です。  それから予算の拡充と査定基準の引上げですが、大体予算が足りないというよりも、予算はやはり割当てられているもので七君たちか困つておるなら幾らでも予算は出してやるぞと口ではおつしやられるけれども、やはりわくははめられて、末端までそれかやられているという状態です。特に査定基準の問題ですが、もう法律はどんなにりつぱでありましても、査定基準が低すぎると、これにひつかかつてみなけられてしまう、はねられてしまう。この査定基準はどうかと言いますと、先ほどいろいろ御説明があつたように、五人世帶で五千三百円。ところが産別の理論生計費はどうかと言うと、五人世帶で二万三千円です。それからCPSの全国の統計では一万六千三百七円、生活保護法では五千五百三十円、こういつたことから考えますと、産別の理論生計費の四分のに足りない。全国のCPSの二分の一にも足りない。こういつたところから、この点君たちはどれが一番よい査定基準と思うかと言えば、私はやはりどうしても理論生計費の半分、CPSの七〇%、今の生活保護法の二倍、五人世帶で約一万一千円なければ、健康にして文化的な生活はできないと思います。もし今のような査定基準に健康にして文化的という言葉をつけたら、それは昔の文化コンロ、文化住宅、いろいろなものに文化の名前をくつつけたのとちつともかわりはないと思います。  それから査定基準のカロリーの面ですが、これは煮干なんかいろいろこまかく計算してあるのですが、このカロリーは蛋白とか、脂肪とか、ビタミンとかいうものを全然抜きにしたカロリーです。それはいもばかり食わしたら金額は少くてもカロリーはうんと行きますよ。二千四百カロリーでも。だから、蛋白とか脂肪とかいうものは、ちようど薬屋の小さな天秤にかけて調薬するような形でやつております。それからだいこの葉つぱというものも、一応はかりにかけられるというようなことで構成されております。これはきのういただきました政府でつくられた資料にも、ちやんと出ておりまして、たとえば一週間の調査のところで、六日目の六十五円八十四銭で千九百九十カロリーとなるのであります。それから百三十五円八十一銭で千五百七十五カロリー、つまり六十五円よりも百三十五円使つた方がカロリーが下つている。これは質の問題なんです。だから動物的な生存をするというのならば、金額はこれでいいと思います。しかし残念ながらやはり健康にして文化的な生活をわれわれは望んでいるのですから、その点をやはり検討していただきたいと思います。この問題は、法律でどんなきれいなことを言つても、やはり予算と査定基準の問題だと思います。そういつた意味から、先ほども公述せられたと思いますが、審議会ですね。これを必ずやつて、今一番重要なことが事務的に決定されている、配られているということでなくて、これは特別審議会にかけて、つまり今社会保障制度審議会がございますが、必ずこれに諮問する。そして一般の生活水準と物価の変動にかんがみこれを決定する。これはぜひやつてもらいたい。そういつた意味でこの條文の改正を私は希望します。厚生大臣の決定によつて、基準云々のことは必ず諮問をするというふうに、こういつたことを社会局長さんにお話しましたら、あまり動きがとれないと困るのだということをお話になりましたが、やはり審議会をつくつて動きがとれるよう、われわれの生活を保障するようにしてもらいたい。これはぜひやつてもらいたい。  その次ですが、先ほど平衡交付金の質問が委員の方から出たと思いますが、私は生活保護法に平衡交付金は絶対反対です。なぜかと言いますと、平衡交付金で透ると地方で取りつこをして、弱い者は常に取られてしまう。だから生活保護法の費用はなくなるということは目に見えて明らかです。だから生活保護法による費用のあれは絶対反対です。  それから市町村負担の割合ですが、先ほど言いましたように振りかえ支弁の問題もありましたが、これは全額国庫負担にしてもらいたい。もう地方自治精神などというようなことにかぶれて、この運営を阻害するようなことでは行けないと思う。全額国庫負担にしていただきたい。これは今度の改正法では改正されております。一年以上居住した者に対しては村役場も負抗しますが、そうでない人には都道府県が二割を負担して村が負担しない。こういうような面を、もう一歩ですからこれを進めて全額国庫負担にしてもらいたいと思います。  それから生活保護法の補足性と社会保障のことですが、この問題は、すでに労働組合や市民の問題になつておりまして、やはり社会保障制度を確立するようでなければいけないということは、これはもうどなたでも御承引願えると思います。やはり失業をなくし、賃金の遅拂いやら欠配がないようにしていただいて、これでもつて一般国民生活が安定しなければ、いくら慈善的な——あえて慈義的だと言いますが、生活保護法で吸い上げようとしても、これはむりです。またそういつたようなものがあることによつて、ややもすると社会政策を大きく収上げて行くのに、かえつて水をぶつかけるような現象が出て来る。そういつた意味において生活保護法は、われわれはやはり社会保障制度の線を進めて行かなけれなならないと思つております。青柳先生なんかに特にお願いして御協力を願いたいと思います。  それから民生委員の公選制と有給制の問題ですが、先ほどから民生委員の問題がありましたが、私は民生委員は公選にして有給制にすべきだということを主張します。三千人の社会福祉主事を新らしく置きまして、一億一千万か幾らかの費用が出るそうですが、やはり地域のあの人たちほんとうに手をつないで世話して行ける民生委員を、今の制度を生かして、これを公から選出していただいて、もし悪い者がありましたらリコールしちやう。そういつたようなぐあいに、民生委員の公選制と有給制の確立、こういつたことかと思います。  以上大体私は申し上げましたが、私たちが今までやつた改善期成同盟の念願していたことと今度の法案と、どういつたところに、その改善されたところと、まだ未解決のところがあるかということを一言加えたいと思います。保護費の全額国庫負担というのは、われわれ従来からとなえておりましたが、いまだにそれが入つていないのは非常に遭憾であります。それから査定基準の引上げの問題、これも先ほど説明した通りであります。それからさらにあの当時、生活保護法をもつと積極的にやつてもらいたいというような意見を出しまして、たとえば結核患者や傷痍者などの厚生施設に、この生酒保護法をうんと生かしてもらいたい。幸い厚生施設というものがございますから、この法文を死なせないで生かしてもらいたいと思うのであります。それから従来より男女差の問題をとなえて来ましたが、当局の御了解によりまして、最近男女差が非常に改善されております。それから民生事業の局主化、組織の強化といろいろございますが、これは運営のこまかい問題でありますので、省くことにいたします。  なお、民法の養扶義務を機械的に適用しないということ、これは民法の改正や最近の趨勢からしまして、やはり今までの封建的な家族制度というものではなくて、実情に即した、むしろ個人の生活準位を中心にしてこの扶養義務の方を適用してもらいたい。いろいろございますが、最後に、特に医療の面で申し上げたいことは、国民健康保険診療報酬を点数によつてやるということです。今の国民健康保険はがたがたで、崩壊状態にありますので、地方によりましては五割負担などということは、とてもできません状況なんです。それで診療の報酬においていろいろな制限を加えて来ております。この病気は期間が幾らだとかいう制限を加えて来ておりますが、従来のように、健康保險診療点数によつてつて行くというふうに改めてもらわなければ、たいへんなことになると思います。それを改めるのにちよつとも遠慮なさらなくてもいいのではないか、私はこう思つておるのであります。  以上るるとして説明申し上げましたが、結論としましては、やはり生活保護法をずつと調べてみますと、立入り検査とか、監視だとか、施設から個人に対する統制が非常に厳しいのです。こういつたことをやつてあまり締め過ぎますとも保護法自体かつぶれてしまうのではないかと思います。だからもつと簡單に、一般大衆がよくわかるように、専門家でなければとてもできないから社会福祉主事を使うのだということではなくて、もつと簡単に民主的にやつてもらいたい。民主的という言葉は非常に漠然としておりますが、やはりみんなの声の上に立つてつてもらいたいということと、名目だけの社会保障制度の姿でなくて、どうしても社会保障制度を確立するのだということをはつきりしてもらいたい。それから憲法は、第一條から第何條かにわたつて非常に美しい言葉で書かれておりますが、査定基準のところでがちやんとやられておりますので、やはり羊頭狗肉の部類と私は解します。これはもつと点睛を加えてもらいたいと希望します。  それから公聴会が急に開かれたので、今事いろいろ研究もし声も集めていたのですけれども、れを十分準備することができませんでしたから公聽会においても十分の余裕を與えて検討させて、一般大衆の声をやはりそこを通じて出すようにしてもらわないと、法のつくり方が抜打ち的で、がむしやらに通してしまうというような感じを受けないでもありません。われわれせつかく呼ばれてつまらない意見でも聞かれるのですから、やはりそういうふうに進めていただきたい、こういう希望を持つております。特に厚生委員会で、生活保護法に対してもつと積極的に民衆の声を聞いて、りつぱなものにしてもらいたい。こまかしでもないものにしていただきたいということをお願いしまして、終ります。いずれまたあとで質問に答えたいと思います。
  37. 堀川恭平

    堀川委員長 次は増田正直君。
  38. 増田正直

    ○増田公述人 私千葉県片いなかの農村役場の助役をいたしております。公述人の顔ぶれを見ますと、大体が都会の方でありまして、いなか者の存在は私一人らしいようであります。従つて私か申し上げようといたしますことは、地方の叫び声であり、野の声であるという気持でお聞き取りを願いたいと思います。実は私出て参りますにあたつて、十分保護法案を検討するいとまもありませんし、また資料等もないので、ただ思いつきのことを二、三考えて参つたわけですが、けさほど保護法案を頂戴いたしますと、私の希望しておる点ですでに盛り込まれておるものもあります。それから前に公述なすつた方が、私の考えていることをすでにお述べになつているので、私はごく簡単に申し上げまして、自分の責任を果したいと思います。  第一の問題は、生活保護の根本精神が、従来は救貧的な思想があつたのですが、これを脱皮しまして、一定の不幸な生活に陷つた者は、当然の権利として生活保護法の適用を受けることができる。こう改正された点は、双手をあげて賛成するところであります。ともすると従来の保護法は、古い社会事業的な観念から、救貧を中心にしていたうらみがないでもありませんでしたが、今度は防貧的の立場に立つて、新しい更生事業的な理念のもとにこれが実行されることは、非常に喜ばしいことであります。そういう意味から、第一に考えましたことは、第十七條の生業扶助の問題であります。実はこの案を拝見するまでは、やはり従来の生活保護法考えておつたために、これを転落して困つてから救うのでなく、生活落伍者になる以前において防食的な施設を行つて行くという、広い意味の生業扶助としてやる必要があるのではないか、この点を力説し実はお願いしたい、こう考えて参つたのでありますが、けさ法案を拜見いたしますと、「生業扶助は、困窮のため最低限度生活を維持することのできない者又はそのおそれのある者に対して」云々もこの「そのおそれのある者に対し」という項を加えていただいたので、私の申し上げようとしたことは解消したわけであります。しかし実際の問題としまして、「左に掲げる事項の範囲内において行われる。」その第一は生業に必要な資金、器具または資料を給與する。これは従来もあつたわけです。第二に生業に必要な技能の修得、この点でありますが、どうもこの点がともすると不幸に陷つて生活落伍をしてから生業に必要な技能を授ける、もしくは就職のあつせんをする、ともすればこういうことに陷りやすいのであります。これは地方民主委員たちの取扱いが十分に法律を研究しないためでもあるのでありますが、この点は私はいずれ施行令、施行細則等ができると思いますが、その際には救助の必要の起る一歩手前、すなわちそのおそれのあるものに対して、早くこういう施設を施すということを実際に行い得るように、施行令、施行細則等でお考えを願いたいと思うのです。本法といたしましては、この一項がある以上は、十分に活用ができると考えておりまして、第一に考えて来たことは、これでおのずから解消したわけです。  それから第二点は、当然の権利として生満保護法の適用を受けるということ、で、被救護者が権利の主張ができる。こういうふうなことに力点を置いてあるようです。これは非常にけつこうなことで、人格尊重の意味からも、また広い意味からけつこうなことでありますが、ともすると救護を受けるというような人のうちには、往々にして権利のみを主張して、自分が更生の意気と申しますか、更生すべき方途をなおざりにしておつて民主委員等が注意をし、そうして話相手になつても、救助を受けることによつて、安閑としておつて、更正をしようという観念が薄いような場合が地方にはあるわけです。こういうものに対して、何とか義務観念を十分に持たせることを條文に入れていただく必要があるのではないか。これは実は私研究が足りなくて考えて参つたのですが、これまた草案を拝見いたしまして第六十條に、「被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければならない。」という條文があるので、実際にこれを適用いたします場合には、今申し上げたようなことがなかなか実行されない。特に扶助を受けるような立場の人において、ほんとうに不幸のためのみで転落をした人は別として、どうも実際の生活の上で、思想的にただ権利のみを主張し、義務を怠るという人もあるかのように考えられるわけであります。もとの保護法によるともかような條文があつたようであります。第二條かに、「左の各号の一に該当する者には、この法律による保護は、これをなさない。」というようなことで、「能力があるにもかかはちず、勤労の意思のない者、勤労を怠る者その他生計の維持に努めない者」は生活保護をしないという規則があるのであります。実際の取扱いから申しますと、こういうふうな法令になつた方が扱いに非常にいいと思いまするが、しかしこれを御訂正になつたときには、権利義務というようなものは強制的にやるべきものではないというところから、多分御出発になつておるのだろうと思つて、この法令はこうあつてしかるべきだとは考えますが、実際の面から言うと、以前のように反省をさせる法令があつた方が、取扱いの上にはいいということを考えたのであります。これは法としてさようなことを書くということは適当でないことは十分察しておりまするが、地方等で取扱いの場合に、そういうことが考えられるということだけ申し上げておきたいと思います。  それから第二として考えて参りましたことは、再三問題になつて、前公述人の方々からも御意見が出、特に原君から十分に御意見は御発表になつたので、この点はごく簡單に違つた面だけ申し上げたいと思います。原さんがけさおつしやつたように、民生委員協力者として行くということに対しては、いささか疑問を持つてつたのであります。準公務員たる性格を脱皮し、そして社会奉仕者としての本来の姿に立返る、この点は非常にけつこうなことではありますが、原さんその他の方のおつしやられたように、どうも民生委員立場が、職務執行の上に、もう少し協力者であるというようなことが濃厚であつてほしい。こういうことを考えたわけですが、これはもう前の方々が申し上げたことでありますから略しまして、その次の社会福祉主事の問題に移ります。この問題に対しては、第二十一條かに「都道府県及び厚生大臣の指定する市町村は、この法律施行について、都道府県知事又は市町村長の事務の執行を補助させるため、社会福祉主事を置かなければならない。」となつております。従つて厚生大臣の指定した町村には、当然こういうものを置かれるわけですが、伺うところによると、大都市もしくはそれに準じた町村にのみ第一段としては置かれる。そうしますと私自分の村のことを申しますが、小さな町村としては当然これは当分の間はない。設置されるまでの間は従来通り扱いで行くべきである。つまり民生委員生活保護協力者として、従来辿りに一切の仕事を扱つて行くのであるか。また今度の法案趣旨によつて社会福祉主事仕事は町村吏員、特に厚生事業をあずかる役場の吏員が、これを担当して行くか。その点が実は私ども明瞭になつていないわけです。御承知の通り町村の財政は非常に現在窮迫して、町村吏員というようなものはも極度に人員の整理をし、少数の人で事務を扱つております。幸いに従来厚生事業の地元吏員に、民生委員の方が協力して、実際の調査救護についてもともにやつていたので、この民主委員がそれに基いて実行の方法さえすればよかつたというのがも今度は町村の厚生事業の担任者が、一切の調査からすべてやるということに対して、地方財政の上から町村吏員を増員しなければならぬという立場になると思います。これが町村の現在の財政の上では、非常に困難である。それからごく小さい町村で、救助をする人がわずかな町村、そういうごくわずかの場合には、町村吏員かやつても大したことはないのでありますが、指定を受けない町村ということになると、町村が人をふやす、それに対して国庫の方で幸いに多少の人件費等の補助がかりにあるとしても、専任はとうてい置くことはできない。ほかの仕事を兼ねてやるということになると、どうしても当面の問題に追われて、補助を受けて、しかも村の事務が二の次になりやすい傾向があるのではないか。こういう点についてひとつ十分の御考慮を煩わしたい。こういう希望を持つておるわけであります。  まだ二、三点考えておることもあつたのですが、私根本的にお願いしたいと思つてつたことは、ほとんど趣旨に盛り込まれてあり、先刻の公述の方からも申されてあるので、この二点だけをつけ加えて申し上げて、私の公述を終りたいと思います。
  39. 堀川恭平

    堀川委員長 次は天達忠雄君。
  40. 天達忠雄

    天達公述人 天達でございます。すでに生活保護なり、民生あるいは厚生の仕事を実際におやりになつていらつしやる方から、いろいろ詳しいお話がございましたので、私から特にくどくどと申し上げる必要はないかと思うのです、かちよつと角度をかえまして要点だけを申し上げます。  今回のこの法案を拝見いたしますと、わが国の社会事業あるいは厚生事業としては、画期的な改正だと思います。それは従来権利としては、保護を要請することができながつたのでありますが、ここで最初にございますように、憲法に規定する云々と、堂々とうたつてある。これは非常に画期的な改正だろうと存じます。しかし先ほどから多くの方が御指摘になりましたように、その内容、実質がこれに伴つているかどうかという点になりますと、これはあまり感心しないわけです。こまかな生活扶助あるいは保護の内容を拝見いたしますと、従来の点よりやや改正された点もございますけれども保護の基準と申しますか、そういうものは大体従来と同じ水準にとどまつておるように見られます。このことは、私一番感じまする重要な問題でございます。それから保護の水準ということと関連してそこから必然的に出て参、りますのは、保護の水準を引上げますと、そこから費用あるいは予算、そういう問題が出て参りますし、同時にいろんな、特に地方財政におきましては影響が多々あるかと思いますが、ここでは保護の内容、保護の水準についてだけ申し上げたいと思います。  先日朝日新聞でございましたかに記事が出ておりましたが、それによりますと、イギリスでは標準の栄養量が三千カロリー、西ドイツでは二千四百カロリーということが出ておりました。もう一つは、社会保障制度審議会の副会長さんでしたか、末高さんのアメリカからの報告が、数側日本経済新聞に載つておりましたが、その二回目か三回目かの記事には、アメリカにおける公的扶助の問題がごく簡単に紹介してございました。アメリカにおける公的扶助とは直接関係ございませんが、それが載つておりましたときの書出しのところで、アメリカにおける非常に文化的な両度に発達した食料品工業の状態などか述べてございまして、標準の国民の栄養量が大体四千カロリーだ、そしてこれはアメリカにおける都市の人たちが大体食べているものだということが述べてございました。それから公的扶助については、こまかな数字などはございませんでしたが、アメリカなどでは自家用の自動車を持つておる人でも扶助を受けることができる。この一事をもつてしても、その水準を想像することかできるだろうというふうにお書きになつていらつしやいました。もちろん日本のいろんな條件と、アメリカだのイギリスだのの社会経済的な條件とは非常に違います。従つて労働者の場合でも、アメリカのC10やAFLあたりの最低賃金要求などはも去年あたり御承知のように一時間七十五セント、そうしますと、一箇月に約百二十ドルになる。これが最低賃金であります。これを円に換算すれば幾らになるかということは申し上げるまでもないことですが、大体最低賃金要求なり、現実に実施されておるものは、日本などからすれば話にならないほど高いものでございます。濠州でも、ニユージーランドでも、あるいはインドでも、フランスでも、イギリスの場合でも、生活水準その他いろんな條件が違いますから、金額だけでは比較になりませんが、最低賃金として問題になつているのは、大体現在四万円前後でございます。もちろんそうだからといつて、そういうものをすぐ日本に当てはめて考えることはできないわけですが、それでは昨年あたりから、あるいは今回の改正案でも考えられておりますこの扶助の基準が、日本実情から申しましても、これではたしていいかどうかということ、このことはアメリカやイギリスや濠州、そういうところと日本と比較にならない、最低出漁水準についてそのままあてはまらないと私は考えるわけです。最低生活なるものは、もしその水準をわれば、健康を維持できない、あるいは子供を満足に育てることができないという水準であるわけです。従つてこの最低生活水準というものは、日本の状態がこうだから、お前らはこれでしんぼうしろということは、そう軽々には言えない問題じやないかと思います。たとえば標準世帶における飲食物費の中で、三十三歳の女の人の基準熱量は千五百九十七カロリー、大体千六百カロリーということが基準になつております。ところが厚生省の有本さんの計算ですと、九歳の男の子が千六百二十五カロリー、そのくらいの女の、十は千五再何カロリーだつたと思います。この三十三歳の、おそらくこの世帶の構成では未亡人の主婦、世帶主になるわけだろうと思います。がその人が千六百カロリーで、はたして健康を維持して、子供のめんどうを見て働いて行けるかどうかということは、重大な問題だと思います。たとえばこの三十三歳の女の人の場合——これな戦争が始まりまして間もなく、厚生省研究所で国民の栄養必要量を算定されたものがありましたが、それによりますと、女中のいない主婦の場合には、中等労働として考えなければならないということが言われております。それによりますと、大体千九百カロリーは必要だ。それから昨年の六月、国民食糧及び栄養審議会で、いろいろな事情をにらみ合しての改訂案が発表されましたが、それによりますと、大体二千百カロリー、これは軽労働の場合でありますが、もし重労働であれば——婦人の重労働というのはあまり考えられておりませんが、三千八百カロリー。こういうように考えられておるわけです。かりに中等労働あるいはそれよりもう少しはげしい労働だと考えますと、やはり少くとも二千三、四百カロリーか五、六百カロリーはいるのじやないかと考えられます。それは、たとえばイギリスのラウントリーの有名な研究によりましても、貧乏人は普通の人の場合よりもよけいにエネルギーを必要とするのだ、それは生活條件が非常に悪いからだと言つております。このことは、私どもが常識で考えましても、非常に便利な住居あるいは生活のいろいろな文化的な設備を十分に利用できない人ほど、からだをうんと動かし、精神も非常に苦労してやるわけです。従つて当然女中がいるような家庭の主婦を対象に考えられたような栄養であつても、千九百あるいは二千カロリーと考えられているわけですが、それよりもさらに四、五百カロリーはよけいにあげなければならないのじやないか。これは全体としましても、たとえばこの生活保護のの参考資料にございます、従来から使われております五人家族という世帶構成、六十三歳のおじいさん、三十三歳の女の世帶主、八歳の男の子、五歳の女の子、一歳の男の子、こういう五人世帯が考えられておりますが、この場合に、従来一人当り平均千五百五十カロリーでございました。そういう水準では、健康で文化的などころではなくて、それをはるかに割る生活しか飲食物費については考えられないじやないか。それはたとえばこういう点に見られます。先ほど申し上げました生活保護法の基準の熱量の場合と、それから昨年の六月国民食糧及び栄養審議会で案が出ましたものと、同じ家族構成にあてはめて、一人当りのの大体八十五、六パーセントにしか当らないわけです。つまり約十四、五パーセントほど、この華華量は少いわけです。それよりももつとたくさん必要だと思うのですが、そのぎりぎりよりももつと少い、私はこういうことを社会法関係あるいは生活法関係で申し上げたことはございませんが、それと似たようなことをほかの関係でよく申し上げますと、君、そんなことを言つても、日本社会、経済状態から言つて、そんなに高度な保護はできない。あるいは高度な経済的な待遇は許されないということをよく言われますけれども、その栄養の場合だけをとつて見ましても、厚生省で一年四回おやりになつております栄養調査を見ましても、大体必要量はとつているように見受けられます。それは昨年のは、私は計算してみるひまがなかつたので、すが、一昨年の場合でも——これは調査した世帶の総平均ですから、生活保護法の家族構成の場合には、働きざかりの男の人は入つていないことになつておりますが、この場合にはそういう人が入つておりますから、そのまま比較にはなりませんが、都市で一人一日平均千九百十六カロリー。それから農村が二千百何カロリーというふうにとつております。それからもう一つ例をあげますと、私、以前、なくなりました安藤政吉さんのおやりになつておりました生活問題研究所にしばらくごやつかいになつたことがありましたが、そのころ厚生省の御委託で、要保護者の家計調査をやつたことがございます。それによりますと、ある地方では、一人一日二千九十二カロリーをとつております。従つてこの日本の経済條件からいつて、そういうことはできないということは必ずしも当てはまらないし、同時にまた最低の線というものをもし割れば、もう生きて働いて、あるいは子供を育てて行くことはできないわけですから、その線だけは割れないし、その線だけはどうしても、どんなことがあつても守つて行こうとだれでもするわけです。従つてそれだけは何とかして、辛うじて確保しておるのが実情だと思います。このことはたとえばこの数年来、東京都でもあるいは大阪でも、要保護者の家計調査をおやりになつておりますが、これを拝見いたしましても、詳しくは申し上げませんが、大ざつぱに言いますと、こういう結果が出ております。それは大体生活保護法の扶助の基準では、飲食物費が八二・七%、こういうふうに出ておるわけですが、要保護者というより、現実に保護を受けておる人たち生活の実態を見ますとも八二・七%が飲食物費ではなくて、六〇%ないし七〇%の飲食物費です。従つてこれは当然基準を上まわつて栄養をとつておるわけです。私は栄養学者じやありませんから、栄養の話はもうやめにしますが、そこで保護を受けている人たち生活の実態と、それから保護の基準、それから現実の勤労者、サラリーマンも、工場にいる労働者も、あるいは人夫のような労働者も含めまして、勤労者の家計の実態と、こういうものを比較してみますと、大体こういう傾向があります。これはみんな東京の話ですが、勤労者の実際の家計費、実支出を一〇〇%といたしますと、要保護者の場合は九体三十七、八パーセントにしか当りません。ところが生活保護法の基準額はこのように勤労者の実際の家計費一〇〇%に対して三〇・一%にしか当りません。四〇%ぐらいの場合もありますが、大体要保護者の実際の家計費の方が家計調査、これは東京都の民生局でおやりになつたものですが、実際の家計費の方が基準額よりも相当高いわけです。そうしてさらにこの中味をもう少し割つてみますと、それはどういうふうなことになるかといいますと、去年東京都では九、十、十一月とおやりになつたのですが、去年の十月の場合、これは速報しかまだ拝見いたしておりませんが、その場合を見ますと、実支出の合計。実際にいろいろな名目でかかつた費用の合計、これを一〇〇%といたしますと、保護費はその五六%に当つております。あとは一番大きいものは勤労収入、これはいろいろな形の内職その他も入るわけですが、仕立物をしたり、あるいは留守審に行つたり、あるいはやみ屋的なそういうものも入るわけですが、三八%余りこれが大きいわけです。そうしてそのほかもらいものなど、現物收入などもございますけれども、それでもまだ足りないわけです。保護費と勤労收入と、それからもらいもの、現物収入その他で足りないで、借金あるいはこういうどん底の生活をしていて、なお財産売却というものがあるわけです。財産売却と言いますと、非常に大きく聞えますが、継ぎはぎだらけの着物を人に譲つたというふうなものしかないわけですが、そういうものがなお入るわけです。こういう生活者であつてなおたけのこ生活に入る。ただその場合でも、昨年と一昨年の場合と比較しますと、非常な差違があるわけです。それは今申し上げました財産売却、いろいろなものを売つて一時をしのいで行くということが一昨年の方が相当、相当というと少し言い過ぎますが、去年よりは著しかつたのですが、ところが昨年あたりになりますと、この財産売却というのは、非常に言葉はいいのですが、配給の米、砂糖そういうものの売却ですね。そういうものが日立つて来ておるわけですね。配給の米を売るというようなこと、これは軍に東京都の区の部分だけでなく、郡部においてすらそういう実例が上つております。それをなおこまかく申し上げますとあれしますのでやめますが、そういうふうに要保護者保護を受けておる人たちの実際の生活というものは、現実に先ほども申し上げましたように、最低の、何とか生きて行くという線はも自然科学的にもう前から、いわばその人間が與えられた運命としてあるものですから、それを何とかして維持して行かなければならぬということと、それから現実に政府でおきめになつた保護の基準というものが、かなり離れておりますために、非常にむりな生活がそこに出て来ておるわけです。  今勤労収入と申しましたが、これは非常に不安なもので、どこかに勤めておるというふうなものはほとんどないと言つていい。そういう状態で、さらにほかの方にも触れますと、先ほど申しましたように、保護の基準は飲食物費の割合が八二・七%もその他の諸費用が一七・三%になるわけですが、この飲食物費というのは、もう食べられるようになつたものでなく、それをさらに煮たり焼いたり、つまり材料を調理して口にスるようにしなければならぬ。厳密な飲食物費はさらにもつとかかるわけです。従つて、ではこれらの人たちが三度々々食べておるかと言いますと、決して食べていないわけです。一回抜くとか、ひどいときには三川抜くとか、そうでなければ米を売つていもを買つて食うとか、あるいはこうりやんその他の、人があんまり食わぬようなものを、単価では安くて腹のふくれるものを食うとかいうこと、さらに腹のふくれることを第一にいたしますから、副食その他の費用は大幅に減つておるわけです。比率を申し上げませんが、減つております。従つてここからやはり栄養不良、栄養失調も出て来るわけです。知らない間に健康が急速に虫ばまれて行くということが言えるわけです。従つて飲食物以外のその他の費用一七・三%から、さらに飲食物材料費を、何とかして食べられるようにする費用をとつて、その他でもつて文化的な人間らしい生活をする。今度の場合は教育費の補助が別に加えられておりますが、その中で最初申し上げましたように私はこの法文を拝見しまして、期待をし、非常にりつばな法律ができると思つたわけですが、どういうところまで保護するかという点を見ますと、非常に失望したわけでございます。それはたとえば新聞なども前の通りになつておりまして、ちり紙というようなものも別に加ええられていないようでございますし、五人世帶でもつて新聞を一種類とつて、ちり紙のかわりにするというふうな点、これは私の誤解かもしれませんが、何か実施方面ではあまり保障されてないようた印象を受けるわけでございます。従つてこの点をどの程度まで保護するということ、これは今まで皆さんがおつしやいましたが、なるべく厚生省当局だけで御責任を引受けられないで、なるべくみんなが納得の行くような方法で、しかもこの苦しい中でも「健康で文化的な生活」と法文にうたわれておりますことを保障されるような方法をとつていただきたいと思います。
  41. 堀川恭平

    堀川委員長 次は竹内一君。
  42. 竹内一

    竹内(一)参考人 私はただいま御紹介いただきました竹内でございます。横浜の医科大学病院に勤めておりまして、日本医師会の理事をしている建前で今日伺つた次第でございます。  生活保護法案にございます医療扶助に関しまして、医者の立場から医療という点だけで申し上一げたいと存じます。この生活保護の問題におきましては、医療扶助は一番大きな問題でございまして、その事柄の上からも、また費用のしからも非常に大きな部分を占めておるのでございます。従いましてこれに対するいろいろの條項がたくさん規定されておりますが、これは主として社会性を帶びている建前からいつて社会保険の医療に準じているものと考えられますが、そういうふうに考えますと、これは十分検討して行かなければならぬ面があるのではないかと思います。御承知の通り、健康保險は実施されてから二十数年の年月を経ております。ことに戦後におきましてはたびたびこれが改正されまして、今われわれがやつておりますところの医療としては、一応完璧なものと考えられるわけでございます。しかしこの医療扶助の面に規定されてある條項を拜見いたしますと、やはり非常に矛盾、食い違いがあつたり、あるいは少し不備な点、そういうものが見られますので、医療担当の立場からこれを十分生かして運営する上には、これでは不備なので、意見を申し上げて、御訂正あるいは修正をしていただきたいと存ずる次第でございます。  第一に四十九條、これにつきましては、医療扶助に際しまして、これを担当する場合に、医療機関を指定することになつております。このことにつきましては、その機関を指定するか、あるいは医師を指定するかに相当問題があるのでありまして、健康保険を例にとつて申し上げますと、保険者の指定するものといいまして、保険医たる鷹師を指定するほかに、医療機関を指定するという二つの方法が採用されております。しかしながら今日までの実情に徴しましても機関を指定する場合には医療責任の所在が不明確になりまして、医療報酬請求の上の不便不都合も生じまして、医師という保險医を指定する方法よりも、いろいろの欠陷が現われて来るのであります。保険局ではこの弊を是正しようといたしまして、保険者の指定するものすなわち医療、機関そのものを指定する方法に修正を加えるため、二十五年度からは保險医として指定するように進んでいる実情であります。従いまして日本の医療の現段階においては、今日審議に上つております生活保護法につきましても、医療扶助の各條にこのような時代の推移に適合した方法がとらるべきものと考える次第であります。このことは医療の最終責任が、医師個人に存在するという建前の具体化でありまして、医療扶助について、健康保險と同様の取扱いがなされる点、特に第五十條の規定においては「厚生大臣の定めるところにより、懇切丁寧に被保護者の医療を担当しなければならない。」とありますし、第二項には「指定医療機関は、被保護者の医療について、都道府県知事の行う指導に従わなければならない。」とありますように、機関に対してでなく、医師に直結した條文があるわけでありまして、結局医療の責任を医師に帰することにかわりはないのであります。また医療の方針は健康保険の例によることになるにかかわらず、機関を指定することは、前に申し上げたような弊害もありますから、これは指定されるものの主体を医師個人に置くように修正する必要があると考える次第であります。従いまして、以上申し上げました理由から、第三十四條、第四十九條、第五十條及び第五十一條を整理いたしますと、第三十四條第三項を  「2 前項に規定する現物給付のうち、医療の給付は、医療保護施設を利用させ、又は医療保護施設若しくは第四十九條の規定による指定医又は指定薬剤師にこれを委託して行うものとする」  というふうに修正いたしまして、さらに医師及び薬剤師の指定につきましては  第四十九條 厚生大臣は、国の開設した病院又は診療所の医師又は歯科医師について、本人及び主務大臣の同意を得で医療を担当させるものを  2 都道府県知事は、前項以外の医師、歯科医師又は薬剤師について、本人及び開設者の同意を得て医療を担当させるものを指定する。  指宏医及び指定薬剤師につきましては、  「第五十條前條の規定により指定を受けた医師、歯科医師又は薬剤師(以下指定医または指定薬剤師という)は、厚生大臣の定めるところにより都道府県知事の行う指導を受け、懇切丁寧に被保護者の医療を担当しなければならない。  2 厚生大臣は、前項の定めをなさんとするときは、中央社会保険医療協議会意見を聞かなければならない。  3 都道府県知事は、第一項に規定する指導について、必要があると認めるときは、地方社会保医療協議会意見を聞かなければならない。」  指定医の辞退及び取消しにつきましては、  「第五十一條 指定医又は指定薬剤師は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができる。  2 指定医又は指定薬剤師が前條第一項の責務を怠つたときは、厚生大臣の指定したものについては厚生大臣が、都道府県知事の指定したものについては都道府県知事がその指定を取消すことができる。」  に修正いたしますと、社会保險の他の法律と級がそろつて行くわけでございます。  第三に、第五十二條でありますが、第五十條において「厚生大臣の定むるところにより」とあり、診療方針は費用のほとんどが国費によつてまかなわれるのでありますから、厚生大臣が定めるべきでありまして、特に健康保險法におきましても、厚生大臣が定めております実情から、本條に特に規定する必要はないと考えます。また国民保險の診療方針は個々ばらばらでありますから、それをここに適用することは混乱を招く以外に益するところはないのであります。次に診療報酬につきましても、これは全国的観点からして健康保險の例によることが、一応妥当と考える次第であります。従つて診療報酬につきまして、  「第五十二條指定医又は指定薬剤師に支拂う医療扶助に要する賞用の額の算定については、健康保險の例によるものとする。」  といたしまして、第二項は削除されたいと存じます。  第三に、医療費の審査に関する第五十三條及び第五十四條の規定は、社会制度社会医療における最も紛議の生じ易い問題でありまして、このことが円満に推進されるか否かは、医療扶助の死命を制するものであります。従いまして医療費審査または診療録等の検査については、十分な規定が必要と考えるのでありまして、この点に関し健康保險において多年の実績から改正され、今日行われております項を入れることが最も妥当と考える次第であります。すなわち医療費の審査に関しましては、  「第五十三條 市町村長は、指定医又は指定薬剤師の診療又は薬剤の支給が、第孔十條第一項の規定に反し、又は不当と認められるとき、その他必要があろと認められるときは都道府県知事に対して、筋五十四條の規定による診療録その他の帳簿書類の検査又は診療報酬請求書の審査の請求をすることができる。  2 都道府県知事は、前項の規定による審査請求による審査をなすときは、生活保護診療報酬審査委員会意見を聽かなければならない。  3 都道府県知事は、第一項の規定による請求による検査又は審査をなした場合に於て、診療内容又は診療報酬請求の不正文は不当の事実を発見したときは、当該指定医又は指定薬剤師に対して、指導上必要な指示をしなければならない。  4 都道府県知事は、政令の定むるところによる第二項に規定する検査又は審査をなす為に要する費用を、検資又は審査を請求した市町村長より徴収することができる。  第五十三條の二 生活保護診療報酬審査委員会委員は、医師及び歯科医師を代表する者、市町村を代表する者及び学識経験者の中より各七人以下の同数を、都道府県知事が委嘱する。  2 前項の規定による委嘱は、医師及び歯科医師を代表する者、市町村を代表する者については、夫々所属団体の推薦によらなければならない。」と修正し、また報告の徴収及び立入り検査につきましては  「第五十四條 生活保護診療報酬審査委員会は、診療報酬の審査のため必要があると認められるときは、都道府県知事の承認を得て、当該指定医又は指定薬剤師に対して、出頭及び説明を求め、報告させ又は診療録その他帳簿書類の提出を求めることができる。  2 都府県知事は、前項の規定により出頭した者に対して、政令の定めるところにより旅費、日当及び宿泊料を支給しなければならない。  第五十四條の二 都道府県知事は、診療内容及び診療報酬を審査するために必要があると認められるときは、命令の定むるところにより当該官吏吏員をして診療録その他の帳簿書類を検査せしめることができる。  2 前項の規定によつて検査を行う当該官吏吏員は、命令の定めるところによりその身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。  第五十四條の三 都道府県の職員若しくは生活保護診療報酬審査委員会委員又はこれらの職に在つた者は、診療報酬審査に関して知得した医師、歯科医師若しくは薬剤師の業務上の秘密又は個人の秘密を漏洩することはできない。」  と修正することが必要となると考える次第であります。  さらに第八十四條には、第五十四條の規定に違反した場合の罰則を考慮いたしまして、  「第八十四條第四十四條第一項、第五十四條若しくは第七十四條第一項第一号の報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は第二十八條第一項、第四十四條第一項又は第五十四條の三の規定による当該吏員の立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、第五十四條の三の規定に違反した者は、五万円以下の罰金に処する。」  と修正されたいわけであります。  第四に、これは簡単なことでありますが、第十五條第一項第二号は「薬剤又は治療材料」とありますが、これは前後各号の表現から見まして「薬剤又は治療材料の支給」と修正し、行為の総体として表現するのが妥当と考えます。  以上これを要約いたしますと、生活保護法の中で最も重要点と考えられますところの医療扶助に関する事項につきましては、今後ますますその社会性が重視され、医療を受ける側は申すまでもありませんが、さらに医療を担当する者の社会的自覚と責任を明らかにすることは、この生活保護法の根幹と考える次第でありまして、ここにあえて修正意見を申し上げる次第であります。  最後に、非常に妙な声を出しまして、お聞き苦しかつたと存じまするが、皆様のお手元に、私の申し上げました意見と、生活保護法案の医療関係條項を抜萃いたしまして、さらに修正をされたい條項を原案の上に張つたものを差上げてありますから、何とぞ医療扶助を受ける者の立場から、十分な御配慮をお願い申す次第でございます。
  43. 堀川恭平

    堀川委員長 次は竹内政君。
  44. 竹内政

    竹内(政)参考人 私は現在三鷹町に住んでおりまして、生活保護を受けておりますが、今の生活保護料では、とても七人の家族ではやつて行かれないのでございます。ですから、ぜひ生活の保障をしていただけるようにお願いいたしたいと思います。  現在一箇月、額にして六千百四十八円いただいております。家族としては、母が一人おりまして、ほか六人の家族で、七人になりますが、母の分としては、生活保護からはいただいておりませんので、ぜひ母の分も生活保護から出していただきたいと思つております。  第二に、生活状況簡單お話したいと思います。食事にいたしましても、一日の食事は、朝はすいとんをいただいたり、お晝は麦のおかゆを食べたり、夜は御飯にみそ汁ぐらいの状況でありますが、主食としまして、一箇月四千円かかります。あとの二千百四十八円は調味料、それから住居と電気の拂いにいたしております。住居の方は、今失業をしておりますので、三百円拂わなれけば、立退きを命ぜられると思つて、むりをしてまで住居の方だけは拂つております。そのほか燃料としての炭やまきに五百円かかります。また二人学校に行つておりますので、教育費が二百二十円かかつております。調味料は一月五百円でございますけれども、今月いただけば、来月はいたたかないようにしても私のところではほかの費用にまわしております。そのほか野菜とか、お魚類は、一月に一回五十円見当のものを七人でいただいております。実際私たちの生活は、ほんとうにみじめで、まして育つ盛りの子供ばかりをかかえておりますので、この生活では、まつたく栄養失調と申しますか、そういうような状態になる次第でございます。  その次に衣料としましては、私たちは一回戦災にあいまして、着のみ着のままでおりますところに、現在の生活に入りまして、下着類も何一つ買えない始末で、子供の下着にしても、継いだ上にまた切れたりしておりまして、まつたく近所の方から見たら、まるでこじきのようなかつこうをしております。それでも私はがまんして子供に済せておりまして、子供たちは別に何とも申しません。今一番小さいのが医者にかかつておりますけれども民生委員保護では、注射も一回だし、往診も一回だというような状態なものですから、赤十字病院の方へかかつておりますけれども、その拂いも、どうにかこうにかやつておりまして、食物を節約したりして、医者の方を拂つたりしております。  そういうわけでありまして、私も何か内職をしたいと思いますけれども、小さい子供をかかえておりましては、とうてい内職もできないと思つております。そのほか主人がああいうところに入つておりまして、差入れだの何かの費用もありますけれども、それの方は主人にあきらめてもらつて、月に一回か二回という程度にしておりまして、なるべくなら、生活できるだけの保障を今後お願いしたいと思います。  簡單でございますが、以上申し上げます。
  45. 堀川恭平

    堀川委員長 次は、寄木秀夫君。
  46. 青木秀夫

    ○青木公述人 私は青木でございます。新しい生活保護法案について、その趣旨の実現に関しまして、他の法例並びに予算措置、また運営の実施面について、若干の意見を申し上げたいと思うのでございます。  いろいろお話がありましたように、この草案におきましては、生活権保障実現の理想が掲げられておりますがもそのためには、何と申しましても予算を確保するということが、まず第一だと思うのでございます。それにつきまして、その第一になりますのは、何と申しましても今までお話にありました保護の基準の問題だと思うのでございます。これが厚生大臣が定めるということになりておるのでございまして、厚生省当局におかれましては、非常に御苦心をなすつて、ただいままで第十次改定というふうに、苦労をされておるのでございます。その苦労にもかかわらず、なおかつ保護を受けている人たちが必ずしも満足をしていないということを考えなければならぬと思うのでございまして、基準設定に関する何らかの機構というものを考える必要があると思うのでございます。これはあとでも申し上げたいと思うのでございますが、百億ないし百五十億の国費を使うのに、その基準になるものを設定することについての役所の機構というものが、現益では非常に貧弱であると思うのでございます。社会保護課の一隅において、わずかの人がいくら一生懸命勉強しても、他の方面け材料をかき集めて来て、これを継ぎ合せるというような機構では、とうてい合理的な満足すべき案をつくることはできないと思うのでございまして、この機構を整備するために、相当の経費を計上すべきことが必要と思うのでございます。これは役所の機構をふやせとか何とかいうような問題とは違うのでありまして、百五十億の金を使う必要経費として、当然是認さるべきことであろうと思うのでございます。従来経済界の変動が非常に激しくて、インフレにつぐにインフレをもつてしていたのであります。その間の当局の苦心は大いに多とするのでありますが、今後これをさらに合理的に、理論的にも実際的にも調査研究をして行く構機を、しつかりと打立てていただくようにお考えを願う必要があろうと思うのでございます。と同時に、これを各方面の人人に納得していただく。社会各層の支持を得られるという考慮を拂う必要があると思うのでございまして、これについてはあるいは審議会の制度、あるいは委員会制度というものを考える必要があろうかと思うのでございます。この第八條の條文の中に、もしでき得るならば、そういう機構について一項お加えいただくならば、非常によくなるのではないかと思うのでございます。  それから第二点といたしましては、国及び地方公共団体の予算の確保については、この法案中には明文がないのであります。これはいわゆる国の義務及び地方公共団体の義務費に属するものであろうと思うのでありまして、この経費を必ず確保しなければならないと思うのでございます。あるいはこれは国の責任であるというふうにも解されまするが、他の一面において、保護第一線に当るものは市町村長であるというふうになつておるのでありまして、市町村長は国の機関としての働きをしておると思うのであります。この国の機関としての活動に対して、市町村が経費を支弁している、こういう建前になつておるのでございます。そういう場合に、保護の決定が迅速に行われ、かつ遅滞なくその費用が拂われるということが必要なのでありますが、これには国及び都道府県の予算が、十分確保されるということが必要であると同時に、特に重要なことは、市町村の予算計上ということを十分にさせておかなければ、市町村長はこれを支出することかできないと思うのでございます。これが法の建前において、市町村という自治体と市町村長という身分が、国の機関として働くというときのギヤツプになると思うのでありまして、この関係について、この法案においては、はつきりとしていないのでございます。あるいはこれは地方自治等の明文によつて解決される問題であろうとも存ずるのであります。地方自治法の第七十七條の義務に属する経費という中に入る費用かもしれませんが、せつかくこの法案を、新しい憲法の現想にのつとつてつくるというときであります。あるいは道義的規定と類されるものも相当織り込んであるのでございまして、こういう事項を——市町村あるいは都道府県は、十分な予算を計上する責任を持つものであるという一項をお加えおき願うことが必要ではないかと思うのでございます。ことに従来市町村は一割の負担をしておるわけでありますが、その一割の負担すらも非常に困難を感じておる。あるいは分與税がその財源であるというようなことになつてつたのでありますが、これがあいまいなものになつてしまつているというようなわけでございますので、これを十分この法において確保するようにしていただかなければ、法の円滑なる実施という点において、欠けることになるのではないかと思うのでございます。  もう一つ、市町村においてこれを実施することについて困難を訴えておるものに、いわゆる事務費の負担というものが、非常に問題になつておると思うのであります。市町村の事務費についで、国において相当めんどうをみてやる必要があるのではないか。あるいは全額あるいは半額というようなものを考えてやる必要があると思うのでございます。これは市町村長以下の吏員が、国の機関としてこの仕事を扱うという意味においても、当然そう考えるべきであろうというふうに考えられるのでございます。これはまた後ほど触れたいと思うのでありますが、今回この法案で事務機構を整理するということになつておるのでございますが、その事務機構を整理するについても、こういう考慮を拂わなければ室文に帰すると思うのであります。すなわち責任を持つ事に当れる補助機関を置くという措置を、十分国で考える必要があると思います。  それから保護の実際について、従来問題になつておりました点は、国からの予算が非常に遅れるという点が問題になつておるのでございます。これは予算の成立あるいは令達というものの技術的な問題であろうかと思いますが、市町村においては非常に迷惑を感ずる。ことに年度がわりというようなときなりましては、非常に迷惑をして、いわゆる立てかえ拂いをしておかなければならぬというわけでありますが、これが今日の地方自治体においては、非常に困難を感ずるのでありまして、これについては、あるいは国、府県というようなところにおいて、相当の措置考えなければなもないと思うのでございます。あるいは繰越しの使用とか、あるいは繰上げの充用というようなのは従来は認められておつたことと思うのでございます。新しい財政法その他では、こういうことはできないようでありますが、継続的に保護をしなければならぬ義務費的なものについては、そういう制度をもう一ぺん考え直してみる必要があるのではないかと思うのでございます。  その次に申し上げたいのは、補助機関の充実と素質の向上という点を申し上げたいと思うのでございます。民生委員の問題が出ておるのでございますが、この民生委員活動と市町村の社会福祉主事との関係をどういうふうに調整するかということは、すこぶるむずかしい問題であろうと思いますが、公的責任を持つ市町村長補助機関として社会福祉主事を置くということは、理論上まことに筋の通つた措置であろうと思うのであります。しかしながらこれにはその局に当る人の素質と、その数とが問題になると思うのでございまして、これは先ほどもちよつと申し上げました百五十億の金を運営する事務機構の問題に関連することでございますので、この際十分この機構を整備するようにしていただかなければならないと思うのでございます。市町村の行政費については、補助費も負担費もないというような状況でありますが、これは当然国において考えて、第一線に優秀なケース・ワーカーを配置するようにする必要があろうかと思うのでございます。  また専任の吏員の養成訓練ということが、この法案には書いてないのでございます。他の法案、たとえば児童福祉法とか、あるいは身体障害者福祉法といつたようなものには、こういう仕事を取扱う人の養成訓練の規定が、わずかではありますが、書いてあるのでございますが。これらの法律よりもさらに大きな予算を運営する人たちの養成訓練ということについて、法文にこれが盛られていないということは、やや平仄を失するような感じがするのであります。あるいはこれは近く制定を予想される社会事業の基本法において触れられるつもりであるかもしれぬと思うのでありまして、もしそういう方面でお考えがいただけるならば、それに讓られてもけつこうとは思いますが、この専任職員の養成訓練ということは、非常に大事な問題でございますので、この点をお考えおき願うことが必要ではないかと思うのでございます。  それから保護費を支拂いの迅速化という点でございます。これは三十一條にありまする前拂いの制度が、この法文に明らかにされたことは、非常にけつこうなことでございます。これについて意見を申し上げたいと思います。單に前拂いの制度生活扶助のみでなく、教育扶助というようなものについても考える必要があるのではないかと思うのでございます。従来の教育扶助は、生活扶助の中に入つてつたから当然考えられたのでありますが、教育扶助もこれは学期の初め等に相当多額な金がいりますので、前拙いをする必要があるのではないか。あるいは他の扶助についてもこれを考える必要があろうかと思うのでございます。それからこの前拙い制度実施を確保する措置考える必要があるのではないかと思うのであります。法律にこれを明文化されたのでありますが、これは被保護者の権利になつておるのか、あるいは軍に市町村長の行政上、執行上の訓令的な規定にとどまるものか、この法文の書き方ではすこぶるあいまいであると私は考えるのであります。これは被保護者の方からは権利と解釈するであろうと思うのであります。また市町村長も必ずこれを前拂いをするように努めなければならないと思うでありますが、それを履行する義務というものがどの程度のものになつておるのか。一月以内という、非常に逃げたような言葉も書いてありますし、たいへん問題になる規定ではないかと思うのであります。立法の趣旨はよくわかるのでありますがこれを確保するには、この法文の書き方と。さらにもう一つは予算上の措置であろうかと思います。これは市町村長がもし予算がないとき、あるは不足なときはどういうふうにしてこれを履行するのか。一時借入金というようなことまでして、この義務を履行しなければならないのか。またその権限というものは一時借入金、あるいは予算外の借入れをするようなことが、地方自治法によつて認められておるのかどうか。あるいは認められていないとするならば、この法律においてはつきりとその権限を認めておかなければ、すこぶる危險な規定ではないかと思うのであります。一方においては履行自体による責任を市町村長は負わなければなりませんし、あるいは他の一方において、予算がない場合に、もしこの支出をしたとすれば、予算外支出をしたということでその責任を追究されるというようなことになつては、非常に問題になりますので、この点はもう少し研究を要する問題であろうかと思うのであります、か自治法におきましては、年度内に返還をする借入金は認めておるのでありますが、問題は先ほどもちよつと申し上げましたように、年度がわりのときに起きるのであります。そういうようなときに、年度を越えてやる三月四月というようなときに問題になるのであります。そういうようなときに町村長の責任を果せることのできるような権限を付與し、その責任を解除するような規定を考える必要があるのではないかというふうに考えるのでございます。  それから府県市町村への補助金が、非常にこれまでは遅れておるのでございますが、その立てかえの支拂いをしなければならない、これが問題でございます。しかしながらさらに問題になりますのは、保護施設の委託費の支拂いが非常に遅れておるのでございます。先ほども下松さんからお話があつたのでありますが、これらのものは施設の一時借入金ということによつて急場をしのいでおる。それが何箇月かのあとにならなければもらえません。その間の借入金は、銀行その他の金融機関から高い利息を拂つて借りて来なければならない。しかもそれは十分なる保護費かもらえないということにしておりますので、この点については遅れた場合には、あるいは利息などは拂わなければならないのではないかということが当然考えられるのでございます。これは法文の上に明らかにするか、あるいは実施のときに御考慮を願わなければならないと思うのでございます。  それから繰りかえ支弁の規定が七十二條でございますか、はつきりと掲られておるのは非常にけつこうであります。これについて問題を私は三つの御指摘申し上げたいと思うのでございます。一つはここにある「その区域内に所在する保護施設又は指定医療機関」というふうに限られておりますが、これについてさらにこの範囲を拡張する必要がありはしないかということが、その第一点でございます。たとえばこれは身体障害福祉法に書いてある失明者の更生施設とか、あるいは更生指導施設というようなものもこれに含まれるのかどうかということは疑問でございますが、いわゆる保護施設あるいは児童福祉施設というようなものが、みな別個の取扱いを受ける。しかも法律が違うということになりますと、これはそういうものが含まれないように考えられるのでございますが、現にそういうところに多数の生活保護を受けられる方が入られるのでございますので、そういう方面へこれを範囲を拡張していただくということが第一点。それから第二点はこの地元市町村に対しましては、財政上特別の措置をお考えをいただく必要があるだろうというふうに考えられるのでございます。大きな市——東京都は都でやることになつておるから、けつこうとは存じますが、他の市あるいは町村というようなところになりますると、この繰りかえ支弁をするための事務並びに保護費というものが、相当多額になると思うのでございます。あるいは結核療養所、あるいは身体障害者の施設、あるいは子供の施設というようなものにおいて、生活保護のめんどう受けられる施設がたくさんある所、しかもそれらは必ずしも財政上ゆたかでない町村があるのでございます。その場合その事務費なり、あるいは繰りかえをする経費というものは、どういうようにして支弁するのか、あるいは借入金をもつてでも支弁しなければならないのか。あるいはその義務があるのかどうか。この点は一時繰りかえしなければならないというふうに書いてあるのでございますが、これは義務となるならば、あるいは半衡交付金等において特別の措置が講ぜられるのかどうか。あるいは直接国においてそこに相当の補助金等をお考えになるのかどうか存じませんが、財政上特別の措置をとる必要があろうと思うのでございます。ただいま申し上げました身体障害者の施設等を見ましても、たとえば塩原町とか、相模原町というような所は、必ずしも財政上ゆたかな所ではございません。また結核施設の相当たくさん集まつておる清瀬村というよう所にも、問題があるのではないかと思うのでございます。そういう点の御考慮をお願いしたいと思うのでございます。  それから四番目に、保護施設について二、三の意見を申し上げたいと思うのでございます。第一点は保護施設の経営主体についてでございます。これは保護施設はだんだん公営のものが増加しておるのでございますが、私はさらに公営のものを増加するように、国においてお考えを願わなければならない。これは施設の数も収容能力も現在は非常に足らないのでございます。たとえば養老施設についてここに下松さんがお見えでございますが、現在約八千人ばかりの方が養老院に入つておられるのであります。しかしながら全国的にこれを見ますると、約三万人の老人は養老院においておせわをしなければならないというような状況になつておるのでございます。また家族制度の変遷等を考えまするならば、今後ますますこの要保護老人というものがふえるというふうに考えられるのでございます。そういうような場合において、この養老施設というようなものは、軍に民間にのみまかせておくということはどうかというふうに考えられるのでございます。またいわゆる宿泊提供の施設というようなものも、これはもう民間ではどうにもいたし方がないのでございます。民間には新しいものをつくる能力はないのでございまして、これは公の力にまたなければならないのであります。ところがこの法案におきましては第四十條に、「都道府県は七保護施設を設置することができる。」こういうふうに書いております。また「市町村は、保護施設を設置しようとするときは、都道府県知事の認可を受けなければならない。」これはいささか微温的な規定ではないかというふうに考えられるのでございます。国及び地方公共団体の法的責任を果すという意気込みを、この法案にもう少し盛つていただきたい。照に費用を負担する、金を出すということだけではなく、自分で施設を持つてその責任を果すという意気込みを、この新しい法案に対して考えていただくこどが必要ではないかと思うのでございます。それは別に新しい事柄でも何でもございません。児童福祉法の三十五條におきましては、「国及び都道府県は、命令の定めるところにより、児童福祉施設を設置しなければならない。」というふうに規定をいたしておりまた身体障害者福祉法の参第二十七條においても同様の規定を置いておるのでございます。こういうことを考えまするならば、この規定をさらに積極化して、国、都道府県、市町村の意気込みをここに示すようにしていただきたいと思うのでございます。ことに養老院というものは、人間の生命あるいは老衰ということはたれしも免れないものでございまして、人口百万になれば、その中何人かは、必ずおせわしなければならない者が出て来るのは当然でございますので、これのごときは必ずや都道府県に一箇所は、都道府県の責任として設置せしめるような義務を負わす。また宿泊所の提供の事業というものも、国庫補助をもつて、都道府県あるいは市町村に必ず設置せしめることができるような措置をとつていただきたいと思うのでございます、ことに先ほど下松ざんからお話がありましたように、民間の施設においてどうにも手に負えないというようなものの措置を、最後にどこでめんどうをみるかということを考えて参りますと、これは公権的施設においてめんどうをみていただくという道を開いておかなければならないのでございます。現在の生活保護施設は大体四割程度までは民間にその責任を移しておられるようでございますが、そうでなくて、さらに国、地方公共団体の法的責任をみずからの施設においても果すのだということが必要ではないかと思うのでございます。  それから民間の施設につきましては、問題が相当たくさんあるのでございますが、そのおもなものを二つ、三つあげたいと思います。それは委託費の問題でございます。これは先ほどもお話があつたと思うのでございますが、現在の私設経営の実情から見ますと、これはかなり不足をいたしております養老施設というものは、ごく大局的に見ますと、必要な経費に比べて三割程度は不足しておる。昨年は四割くらいは不足しているというようなことであつたのであります。厚生当局のお骨折りによつて、非常に措置費が上げられて参つたのでありますが、なお三割は不足しておるというのが実情のようでございまして、これらは共同募金とか、あるいはララ援助、あるいは他の特殊寄付でまかなうというような状況でございます。また特殊婦人の施設、あるいは浮浪者の收容施設というようなものは、四割ないし五割も不足しておるというようなことを訴えておるのでございます。これらのものは共同募金の配分をするときの調査でわかつた事柄でございますが、さらに精細に調査をしてみる必要があろうかと思うのでございます。ことに問題になりますのは、そこに働いておられる職員の方々の俸給その他の事務費というものに対しては、公の施設と比べものにならないほどひどいというのが実情でございまして、これについてはあとでまた私設の職員の身分の保障という点で申し上げたいと思つてつたのでありますが、こういうことを考えますならば、この委託費を決定することについても、軍に一方から施設は委託があつた場合にこれを拒んではならないということも、その費用が国または都道府県または市町村から行つた経費でこれをまかなわなければならないという観念をごつちやにしてはならないと思うのでございます。引受ける義務があるからには、その義務を果すだけの経費は十分支出するということが必要であろうかと思うのでございまして、その委託費決定について、私設側と相談をされるとか、御意見を聴取されるという機構をお持ちになることが必要ではないかと思うのでございます。現在の民間施設の賃金ベースが非常に低いという点も、私設側の意見を十分御信用になつて、この委託費の中に十分盛れるような機構をお考えを願いたいと思うのでございまして、これらももし法文に必要とするならば、お書き加えを願うことができれば非常にけつこうだと思うのでございます。それから私設側で委託支拂いが非常におそくて困つておるということは、前にお話がありましたので省略をいたします。  その次は職員の問題でございますが、現在の保護施設は、公共施設の代行をしておるというのがその実情でございます。しかしながらその職員の待遇は非常に薄い。それでございますので、その共済制度とか養老年金の制度をつくつていただきたいという要望が非常に強いのでありますが、ことにさ上迫つた問題は、私設に職を奉じておられる方々の身分の保障ということが問題になつて来るのでございます。これは被保護者の権利を擁護される点からは、非常にけつこうなこととは思うのでございますが、たとえば養老施設に入つておられる方では、あるいはその性格が異常な方もおられる、あるいは虚偽の風説をまき散らすとか投書をするとかいうことで、それをもし一般の方がそのまま信用される、あるいは一部報道されるということになりますと、多年こういうことに献身されて来た人も、非常な疑いを受けるとか、その地位を去らなければならないようなことになるというような困難に遭遇されることがあるのでございます。こういうような点について民間施設の職員の身分について、何らかの措置を講ずる必要があるのではないかと思うのでございます。ことにこの七十四條第二項の第三号に「は厚生大臣及び都道府県知事は、この保護施設の職員が、この法律若しくはこれに塞ぐ命令又はこれらに基いてする処分に離反したときは、当該職員を解職すべき旨を指示することができる。」という條文が掲げられておるのでございます。これは公の施設としはてあるいけ当然の規定であるかもしれませんが、現在の施設運営の経費も十分でない。またその賃金俸給という点についても十分な保障がないというようなときに、相当考慮を要する問題ではないかと思うのでございます。しかしながら私はこの規定をどうするということではないのでございまして、この規定がほんとう意味を持つように、その裏づけをしていただくことが必要でおろう。すなわち委託を受けた職員は公務員に準ずるものである。その身分等の保障について考えられる必要がある。すなわち委託費のうちの職員俸給なり、あるいは事務費なりを十分保障されまして、いわゆる疾病なり老後なり、あるいは死んだ後の遺族のことなどについての制度について、お考えを願うことが必要ではないかと思うのでございます。  それから最後に被保護者の権利の擁護について、若干の所見を申し上げたいと思います。それは第二十七條にありまする「市町村長は、被保護者に対して、生活の維持向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることかできる。」一節二項の別項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。」さらに第三項において「第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。」こういうのでございまするが、この規定と第六十一條の規定とを対比してみるときに、はたしてこの表現がいいのかだうかということを若干疑うのであります。それは第六十二條はその第三項におきまして、「市町村長は、被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。」こういうことになつておりまして、それをまた、「指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない」という表現がいいのかどうか。私はこの立案の趣旨は、決してむりな指導とか指示はしてはならないという意味のことではないかと思うのでございます。私の意見といたしましては、この第三項の趣旨を第二十七條の第三項の中に入れで、「前項の指導又は指示は被保護者の自由を尊重し必要の最少限度にとどめ、かつ愼重適切にこれを行わなければならぬ。」こういうふうにお書きになればその趣旨が十分徹底するのでけないか。第三項のように、何となく指示をしたことが悪い措置であるかのように印象つける規定よりは、愼重適切にやるというふうにして、その愼重適切にやる方法といたしまして、この指示をする場合にはあるいは民生委員会議の意見を徴するというようなやり方をする。あるいは福祉主事に十分な復命をさせて学識経験者の意見を徴してやるというようなことによつて弊害のない指示ができるし、適切な指示もできるのではないかというふうに考えるのでございます。  それから第三十條に、これは収容をする、あるいは収容を委託するというのでありますが、その第三項に、「被保護者の意に反して、収容を強制し得るものと解釈してはならない。」そうしてそれをどうしても強制する場合には、家庭裁判所の許可を得るというような御趣旨のようでございまするが、これももつともな規定ではございますが、強制収容の方法がないというのでは、たとえばほかの施設はしばらく別といたしまして、ここの救護施設あるいは更生施設というようなことについては、若干問題があるのではないかと思うのでございます。これは浮浪者の施設というようなものについて、若干の強制力に類したものが必要ではないか。しかしながらそれが保護施設が留置場にかわつてはならない、こういう趣旨のごとだろうと思われますので、もう少し考えなければならぬとは思うのでございまするが、もし一方警察等の設備が十分になるならばけつこうでございますが、そうでなくて、救護施設、更生施設というものを生かすために、その場合にこの規定がこのままうまく運用できるのかどうかというような点を心配いたしているのでございます。  大体気のついた若干の点を申し上げて御参考に供したいと思う次第であります。
  47. 堀川恭平

    堀川委員長 以前で公述人公述は終了いたしました、公述人の方々に対する質疑を行いたいと存じます。丸山直友君。
  48. 丸山直友

    丸山委員 多数の公述人の方々から、われわれの聞かんと欲すをところをかなり詳細に承りまして、はなはだ裨益するところも多く、この法案を審議する、において便宜を得たことをまずお礼を申し上げておきますが、承りました中に、なお十分に私了解のできない点もございますので、御発言の順序でお尋ねしたいと思います。  まず二番目にお話くださいました井上さんにお伺いしたいのでございますが、井上さんの最初におつしやいました中に、この法律改正は被保護者に劣等感を持たせるというお言葉があつたように存ずるのでございますが、この生活保護法が旧法とかわつて、今度の新しい法律のどの條項が、被保護者の劣等感を持たせるということに当てはまりますか。それをまず一つ伺います。
  49. 井上春雄

    ○井上公述人 大体社会福祉主事ども置きましてこれを運用しますと、法の運用の事務的処理といたしまして、官僚的方向に流れるおそれがあるのであります。それで被保護者はたいへんな劣等感を感ずるのでございます。
  50. 丸山直友

    丸山委員 官僚と言いますか、吏員が行うことによつて劣等感を感ずる。そうしますと、民生委員が行うというような今までの方法であると、劣等感はお感じにならないという意味でございましようか。
  51. 井上春雄

    ○井上公述人 何と申しますか、割合親しまれておりまして、それによりまして、そういう劣等感が割合に少く感ずるのでございます。
  52. 丸山直友

    丸山委員 さよういたしますと、あなたの御意見としては、この法律社会福祉主事というような條項を廃止して、あるいは事務吏員をもつて取扱うことを廃止して、旧法のごとく民生委員がこれを取扱うというふうに改正させたいという御希望ですか。
  53. 井上春雄

    ○井上公述人 民生委員を公選制にして、一番よく市町村の実情を知つている方にやつていただきたいというのであります。
  54. 丸山直友

    丸山委員 次に、生活保護の場合、最低基準が低過ぎるというようなことをいろいろ詳しくお述べになつたのでありますが、これは法的に申しますと、この法律でどの部分をいかように改正せよという御意見でございますか。その点がはつきりいたしませんので、ちよつと伺います。
  55. 井上春雄

    ○井上公述人 最低基準費をもう少し上げていただきたいということであります。
  56. 丸山直友

    丸山委員 最低基準費はこの法律の中には別に規定してございませんので、いかなる部分をどういうふうに改正する御希望かということを伺いたいのであります。
  57. 井上春雄

    ○井上公述人 大体最初に申し上げましたように、世帶苗位の原則などを、結核等長期疾病者の場合、個人單位にやつていただきたい。特別にそういう解釈を入れていただきたい。それから最初の「目的」で、ほんとうに実質的最低生活ができるということをつけ加えていただきたい。
  58. 丸山直友

    丸山委員 どうもまだ私、はつきり御意思がのみ込めないのでありますか、その次に、保護施設の長に保護の停止等の権限を與えておくことは危險である、こういうお話があつたわけであります。これは法律で見ますと、私何條に当るかちよつと見当りませんが、保護施設の長には保護の停止権限を與えてないと思いますが、そういう條項がありましたでしようか。
  59. 井上春雄

    ○井上公述人 第六十三條にあります。
  60. 丸山直友

    丸山委員 四十八條の四項「保護施設の長は、その施設を利用する被保護者について、保護の変更、停止又は廃止を必要とする事由が生じたと認めるときは、すみやかに、市町村長に、これを届け出なければならない。」となつておりますので、別に保護施設の長がただちに保護の停止等を命令する権限はないように私は考えておりますが、今の公述人はそれはあるというふうにお考えでありますか。
  61. 井上春雄

    ○井上公述人 それは私がもし権限と申しましたらこれは私の間遠いで、そういう干渉を與えるということは非常に危険である。
  62. 丸山直友

    丸山委員 わかりました。それから引続きまして、国民保険の医療も診療に従うということは、それでは最低医療の確保ができないというふうにお話があつたわけであります。これは私この間から実は社会局長にもたびたび質問したことなのでございますが、国民保險の医療は、実は最低の医療ではないはずだと思つておりますが、現在はそうしますと、国民保険の医療に準ずるような医療になつた場合には、現在あなた方が受けておいでになる医療よりは低下するとお考えになるか。つまり言いかえますと、現在は、一般に受けている国民保険の医療よりも、もつと上等の医療を受けつつあるのであるか、これが改正によつて低下する。こういうふうな意味でございますか。
  63. 井上春雄

    ○井上公述人 その通りであります。
  64. 丸山直友

    丸山委員 ありがとうございました。けつこうであります。  次に牧野さんに順序としてお伺いしたいと思いますが、いろいろ承りましたが、かなり省略なざいましたので、よくのみ込めない点もあつたのでありますが、ちよつと気のつきましたことで、診療方針と完全診療という場合だと思つておりますが、何か医療機関指定制度について懸念を持たれるようなお言葉があつたと思いますが、どういう御懸念がありますか。もう一度承りたいと思います。
  65. 牧野修三

    ○牧野公述人 最初時間の関係上省略した点を申し上げます。これは都内のある施設に起きた実際の問題でございます。従いましてあるいはそれは本省なり、あるいは本法の制定の趣旨においては、そういう趣旨でない、まことによい趣旨であつても、それが末端に行くと行われないというふうな結果によつて生ずる問題かもわかりませんが、事実どの程度に立法の趣旨が運用されているかということを、私現に昨日都内の二、三の区役所で聞きましたときに、ある一つの問題につきましても、実に驚き入つたことは、見解が違うのです。そういうような問題がございます。私がある施設において聞きましたところは、結局末端の取扱いの不十分なためであつて、法自体の問題でないということが言い得るかもわかりませんが、それはある浮浪者収容施設でございましたが、そこで診療を受けた。そうしてある一人の受けましたときは注射をしてくれた。幸いにそのために非常に早くなおつた。その次には同一の病状で、医者がそういうような診断をしたわけです。しかしながら前に診療に使つた注射を使つてくれなかつた。そのために非常に快癒するのか全快するのが遅れた。それでなぜそれを使つてくれないかと言つたところが、その指定された医者が施設の長に申しますには、たといこれが診療のために必要である、適当な処置であると考えても、やはり一々許可をあとで受けなければならない。いわゆる審査を受ける。そのために、きめられた診療方針のもとにおいてやつたあとで、それを拒否される場合がある。従いまして、これは今日の医療制度の問題になりますが、いわゆる開業医においてはやはり経済的灘絆もございますから、その意味においてそれが行い得ないという点が実際にあります。従いましてこの診療の方針というものにつきましては、先ほどからの公述人の方からも申し上げましたように、国民保険でなく、健康保險によつてつていただきたいということ、それもなるべくよりよき弾力性を持つていただきたいという意味を申し上げたのであります。  それから医療機関の指定の問題でございますが、私は少くとも今日の憲法の上から行きまして、いわゆる個人の人権の自由というものはもちろん認めております。従いまして、この資本主義の制度下におきましては、営業の自由もございます。しかしながら結局個人の自由も社会福祉、公共の福祉のためにはそれが結集されなければならないという意味合いにおきまして、医療機関の指定を拒否するというのには、やはり拒否する何らかの理由がそこに序在するに違いない。私の考えからもつてすれば、たとえば医療扶助の支拂いが非常に滞る。従いまして、今日の開業医制度においては困るという問題がございます。その他手続が煩瑣である。おそらくそういうような意味合いから指定を拒否するのではないか。私はそういう場合に、一方においては支拂いの遅滞とか、煩瑣なる手続を改良いたしまして、他方におきましては、公共の福祉のために医療機関の指定を拒否する自由を與える必要は私はないと思う。もし拒否する自由を與えた場合には、結局ところによりましては医療機関というものがない。いわゆる無医村さえも存在する今日、被保護者は結局医療を受ける不自由さが必ず生ずるに違いない。そういうような意味合いで申し上げた次第であります。
  66. 堀川恭平

    堀川委員長 ちよつとお諮りしますが、江津萩枝さんと竹内政さんは家に子供を置いておられますから、御質疑がありましたら、それからひとつまずやつていただきたいと考えます。
  67. 丸山直友

    丸山委員 そういたしますと、医療機関の指定は、あらゆる医療機関全部を指定して、これを拒否することを許されないような法律にした方がよろしいというお考えでありますか。
  68. 牧野修三

    ○牧野公述人 さようでございます。
  69. 丸山直友

    丸山委員 それでは江津さんにひとつお伺いいたします。先ほどのお話の中で、保護の決定が遅れて、病人の三名が死亡した実例があつたというお話がありましたが、これは人命に関する問題で、公の席で御発言になつたことですからぜひお伺いしたいと考えております。これはどういう理由で、どういう保護の決定がどの部分において遅れて、人命が三者失われたかということをもう少し具体的に承りたいと思います。
  70. 江津萩枝

    ○江津公述人 これは私もたいへん重大なことだと存じましたから、特に例として申し上げたわけでありますけれども、これは先ほど申し上げましたように、三月十四日のことで、一番最近の協議会に発表されたことでございます。それは私の持つておるケースにあつたことではございませんけれども、その一つ一つをそれでは具体的に申し上げますか。
  71. 丸山直友

    丸山委員 あまり長ければ簡單でもよろしいのですが、名前が何というもので、どのくらいの期間手続が遅れたためにこうなつたということぐらいの、簡単に要点だけをお願いします。
  72. 江津萩枝

    ○江津公述人 名前ははつきりいたしませんけれども、町の名を申し上げまして、お調べ願えばわかると思います。天沼方面に起きた問題でございますけれども、要するに病人で医療保護を受けなければならないから、その医療の申請をするについて調査してもらいたいという、そこまでは運びましても、その調査が吏員の不足なためや、いろいろな事務上のことなんだと思いますけれども、調査がいつまでたつても来ないのでございます。
  73. 丸山直友

    丸山委員 調査に来ないのですか。
  74. 江津萩枝

    ○江津公述人 区役所の出張所の吏員の方が調査をなさることになつておりますね。正式な申請が出ます前に調査することになつております。調査を受け、その決定を受けた上でなければ、病人はお医者様に……
  75. 丸山直友

    丸山委員 調査に来たのですか。
  76. 江津萩枝

    ○江津公述人 調査に来なかつたわけであります。来なかつたから、結局医療保護の決定が見られなかつた。そのためにお医者様にもかからずに死んだということでございます。
  77. 丸山直友

    丸山委員 その期間はわかりますか。申請してから死ぬまでの期間は……
  78. 江津萩枝

    ○江津公述人 それは私の扱つたケースではありませんから、はつきりは存じませんが、三月十四日の協議会に発表されまして、そのときにその担当していた民生委員さんの発言といたしまして……
  79. 丸山直友

    丸山委員 わからないならわからないと、端的におつしやつてください。
  80. 江津萩枝

    ○江津公述人 詳しくその期間のようなことはわからないのでございます。ただそういう事実があつたということを申し上げたのであります。
  81. 丸山直友

    丸山委員 担当民生委員はだれですか。
  82. 江津萩枝

    ○江津公述人 担当民生委員は天沼の竹田さんとおつしやいます。それからもう一つは……
  83. 丸山直友

    丸山委員 もう一点伺いますが、竹田さんという方は申請なさるために手続をなさつた
  84. 江津萩枝

    ○江津公述人 それがいろいろ……
  85. 丸山直友

    丸山委員 つまり協力機関としての機能を、この民生委員さんの竹田さんは新しい法律のような形でなさつたわけですが、吏員が足りないために、その吏員が調査に来なかつた。そのために——幾日かわからぬが、とにかく死亡するまで調査に来なかつた
  86. 江津萩枝

    ○江津公述人 ほかの二つも大体同じようなことでありますけれども、その中の一つは地域が違いまして、西荻方面でございます。そこは担当民生委員もおりませんで、所長が代行しておる地域でございます。それは直接その本人の医療の申請があつたのではございませんで、生活保護の申請まで行かないで、保護がしたいという申出があつたのであります。
  87. 丸山直友

    丸山委員 本人の申出……
  88. 江津萩枝

    ○江津公述人 ええ。ところが、その申出が保護に該当するケースかどうかというようなことをいろいろと調査して、その上で実地調査に行くわけですけれども、まだ該当するケースかどうかの判定が事務所の方でつけていないうちに、事務所が非常に忙がしかつたために失念していた——生活保護をするものか、しないものかの処置をするのを失念していた。
  89. 丸山直友

    丸山委員 その間に……
  90. 江津萩枝

    ○江津公述人 ですから、まだ保護を決定するとかいうようなところまで全然至らないうちに、保護を申請した人が死んでしまつたということであります。これはその家のおばあさんが死んだわけです。ですから、これは必ずしも保護に該当するケースかどうかはまだ私どもは存じませんけれども、とにかくそういうふうな申出があつたのが、まだはつきりときまらないうちに死んでいるのであります。そういうふうに発表されたのであります。
  91. 丸山直友

    丸山委員 もう一つは……
  92. 江津萩枝

    ○江津公述人 もう一つは、やはり天沼地域でありますけれども、天沼地域は一丁目、二丁目、三丁目とわかれておりまして、それがまた二人くらいの民生委員が扱つておりますので、先ほど竹田さんと申しましたけれども、その地域は厳密に、区別いたしますと、もう一つ坂井さんの方の地域にもかかつているというようなお話で、このお二人が非常に盡力なさつた結果、そういうことになつたのであります。もう一つのケースはやはりその地域であります。ですから、お聞きくださればわかります。
  93. 丸山直友

    丸山委員 ここでお伺いしたがつたのであります。
  94. 江津萩枝

    ○江津公述人 私も自分のケースでありますと、ごく詳しくわかりますが、自分のケースじやございませんで、今度の協議会はほかのケースについてそう詳しくお伺いする機会がないのであります。去年の暮までは全部の保護のケースについて全民生委員が責任があつたのですが……
  95. 丸山直友

    丸山委員 いらぬことは時間がかかるから言わないでいただきたい。次にちよつと伺いたいのでありますが、二月十四日から三月十四日までに五件だけしか許可にならなかつたが、そんな少いはずはないというあなたのお話でありましたが、実際申請した件数が何件で、そのうち許可になつたのは何件か、はつきりしていただきたいと思います。
  96. 江津萩枝

    ○江津公述人 申請件数はその点はつきり聞いておりませんけれども、それまでの申請件数の状態は、先ほど申し上げましたように、大体月に二回の協議会で、十五、六件くらいが出ているのであります。それが今度切りかえられて、次官通牒によつてやり方がかわりまして、月に一回の協議会で、しかも事後報告を受けるというので……
  97. 丸山直友

    丸山委員 なるべく簡単に要点だけお願いいたします。
  98. 江津萩枝

    ○江津公述人 それから協議会で初めての報告を受けましたのが……決定数が五件しかなかつたというのは、非常に……
  99. 丸山直友

    丸山委員 いらないことはおつしやらないでください。申請件数が何件、そのうち五件だけ許可になつたということが、わからぬとかわかるとかいうことだけでけつこうなんであります。あまり長くなりますと、他に質問者もありますから……。そうすると、その中に却下されたものは、自然却下という形でわからなくなつたわけでありますか。
  100. 江津萩枝

    ○江津公述人 却下でございますか。これは五件決定さたというのですよ。ですから、何件申請していて、まだ決定を見ないのが……
  101. 丸山直友

    丸山委員 その件数はおわかりにならないということですか。
  102. 江津萩枝

    ○江津公述人 はい、わかりません。
  103. 丸山直友

    丸山委員 その次に、竹内さん。
  104. 堀川恭平

    堀川委員長 ちよつと待つてください。江律さんに御質問がありましたらこの際簡單に……
  105. 苅田アサノ

    ○苅田委員 これは生活保護法委員会での審査の途中で私がお聞きしたことなのですが、実際は保護をかけなくちやならない人であるけれども、市町村の——主として市町村だと思うのですが、予算の関係上、民生委員がお考えになりましても、この人にはかけなくちやならないと思う保護を、打ち切らなければならなかつたというような例が従来にあつたかどうか。それとも民生委員の方で適当として推薦なさつたものは、これは当然にかけられなくちやならないけれども、予算上こういう者はやめようというようなことを市の方で言われなかつたか。その点について御答弁願いたいと思います。
  106. 江津萩枝

    ○江津公述人 民生委員がこれは保護されなければならないと思つて申請するのでございますけれども、それが申請手続をとられずに済んだという事実はございます。でもその場合、これは予算がないから、というような御説明はございません。何かいろいろとほかの理由で……。その事例をあげろとおつしやれば、私ここに持つておりますけれども……
  107. 苅田アサノ

    ○苅田委員 ごく適切な事例があればひとつ示していただきたい。
  108. 江津萩枝

    ○江津公述人 これはやはり私の担当地域じやございませんけれども、非常に家族の多い朝鮮の方で、子供もたくさんいて、御主人が失職して奥さんは赤ちやんをかかえていて、とにかく担当民生委員の方が、これ以上ひどいケースはない、これがもし保護にかからないならば生活保護法の存在を実は疑わなければならないというふうに御説明があつたケースが、いろいろと朝鮮の方の家庭的な問題から却下になつたことでございます。これは非常な複雑な事情があつたにはあつたのですけれども実情としては、ほんとう保護をしなければならない実情にあつたのです。その保護申請者の保護を受ける資格についていろいろと理由がつけられまして、却下になりました。
  109. 苅田アサノ

    ○苅田委員 もう一つお聞きしたいのですけれども、大体現行生活保護の基準によりましても、あるいは今度改正される点に参りましても、住居の扶助が五人世帯でもつて一月七十二円、これで六疊間を借りられる、こういう基準になつておるのですけれども、私どもは、今の住居で七十二円でもつて六疊間が借りられるというようなことは考えられないのですが、あなたが扱つておられる保護を受けておる方が、七十二円程度の家賃で住んでおいでになる方があるかどうか、ちよつとお聞ぎしたいのですか。
  110. 江津萩枝

    ○江津公述人 私の持つております保護者は、私は非常に閑静な地域に住んでおりますから、非常に少うございまして、適切な例を自分で持つているのは一、二件——。親戚に同居しているとかそういう件数が非常に多うございまして、自分で家賃を拂つて保護を受けているというケースは二件くらいしか、ございません。その二件はやはり今委員の方がおつしやいましたように、そんな安いものではないのでございます。ですから書類の上ではそういうふうに規定されておりますけれども、結局ほかのものの費用から削つて出しているということになつているのです。
  111. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私の質問はこれで終ります。
  112. 亘四郎

    ○亘委員 今お聞きしようと思つたのですが、あなたの扱つている世帶数は非常に少いとおつしやいましたが、大体世帶数はどのくらい一人でお扱いになつているかということを一つ。それから先ほど公選にしていただきたいという御意見のようでございましたが、今の推薦委員会というのが問題だというお言葉があつたように記憶しておりますが、その問題だという意味はどういうことですか。ちよつとお聞きしたい。
  113. 江津萩枝

    ○江津公述人 私の持つておりますケースは生活扶助は現在五件と、それから単独医療が二件、それだけでございます。
  114. 亘四郎

    ○亘委員 私の言うのは、あなたが民生委員として幾世帶くらいの範囲を受持つておられますかということです。
  115. 江津萩枝

    ○江津公述人 地域でございますか。地域は私二箇町村持つております。住吉町と八成町。それからその世帶数ですが、三百世帶でございます。田園地帶でも畑の方が多いわけです。  それからその次の御質問の推薦委員会が問題だということ、これは推薦委員会というものが、結局民生委員を推薦するのでございますね。その推薦された民生委員は、いろいろと世上で論ぜられておりますような民生委員が、事実推薦はされているわけなんですが、それで私がさつき心で思いながら問題だと言つたところの例といたしましては、民生委員というものは、どうして推薦されるのか、私どもでわからないような推薦のされ方が実際はされておるのでございます。またやはり天沼の例を見ますと、これは天沼に実際にあつたのでございますけれども、一人民生委員がおりまして、その隣の地域にもおりまして、その隣の地域が欠員になりました。この欠員になつている隣の地域に、民生委員が当然推薦されるべきなんですのにすでに民生委員のおる地域から、また民生委員が推薦されて、そこの地域が二人推薦されまして、結局この地域を三人のうちのどつちかが持つのでございますけれども、それは話合いの上でするのですけれども、それなら民生委員がすでに一人いるのに、新たにむりしてそこにもう一人同じ地域にどうして推薦したのか。こういうことをずいぶん私は疑問にしているのです。それは原さんが先ほどおつしやいましたけれども、非常にボス的な取引をされたんではないかという疑いを持つているわけです。そういうふうにして推薦されました民生委員というものは公選の場合の民生委員と非常に違いまして、不純なものがあるのじやないか。それで私そういうことを問題だと言つたわけなんです。
  116. 堀川恭平

    堀川委員長 それでは江津さん御苦労さんでした。あと竹内政さんが、やはり子供を抱いておられますので、竹内さんに御質疑がありましたらどうぞ……
  117. 丸山直友

    丸山委員 多数の公述人の中でほんとうの被保護者保護を受けておられる方はあなた様だけのように思われる。
  118. 竹内政

    竹内(政)公述人 さようでございます。
  119. 丸山直友

    丸山委員 で、あなたの言葉は非常に私一生懸命に聞いておつたわけです。支給額少いとか、いろいろ伺つてつた、これはほかの方たちもおつしやつておられる。それでそのうちのお言葉の中で、ほかのどういう医者でございますか、どういう医者にかかると一週間に一回しか往診してくれないから、あなたは赤十字病院に金を拂つてかかつておる。こうおつしやるのですね。
  120. 竹内政

    竹内(政)公述人 それは私と同じ立場の方が……
  121. 丸山直友

    丸山委員 あなたではないのですか。
  122. 竹内政

    竹内(政)公述人 はあ。子供さんが肺災をわずらつておりまして、民生委員にかかつていると一週間に一回しか往診もできないし、注射もできないということを言つておりましたのです。民生委員にかかつておりますと往診も一週間に一回で、注射も一回しかやれないということをおつしやつたというのです。
  123. 丸山直友

    丸山委員 それは医者が言つたんですか。
  124. 竹内政

    竹内(政)公述人 はあ。
  125. 丸山直友

    丸山委員 民生委員にかかるというのは、民生委員の紹介によつて医療保護を受けているもの……
  126. 竹内政

    竹内(政)公述人 はあ。
  127. 丸山直友

    丸山委員 診療は一月にですか、一週間ですか。
  128. 竹内政

    竹内(政)公述人 一週間です。
  129. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 民生委員から保護申請を受けて手続をして……。それはうわさなんでしよう。
  130. 竹内政

    竹内(政)公述人 生活保護を受けている者は、医者にかかつても一週間に一回往診で、注射も一回しかしてもらえないということを——現在のお医者の奥さんが民生委員の役員をしていらつしやるのですが、そのお医者さんがそうおつしやるというのです。
  131. 堀川恭平

    堀川委員長 ということを聞いたのですね。
  132. 竹内政

    竹内(政)公述人 そういうことを聞いたのです。私がかかつているのは外科で、赤十字病院にかかつているのですけれども……
  133. 丸山直友

    丸山委員 そうすると話が二つなんですか。
  134. 竹内政

    竹内(政)公述人 そうです。二通りになつております。
  135. 丸山直友

    丸山委員 生活保護でかかると一週間に一回ぐらいしか往診をしてくれないということを聞いたから、そんな医療では困るから、あなたは赤十字病院へ、生活保護でなく、金を拂つてかかつているというのですか。
  136. 竹内政

    竹内(政)公述人 今は赤ん坊が外科にかかつているのです。
  137. 丸山直友

    丸山委員 一週間に一回ぐらいしか往診しないということを話したのは、医者が言つたわけですね。
  138. 竹内政

    竹内(政)公述人 そうです。民生委員の役員をしているお医者が……
  139. 堀川恭平

    堀川委員長 直接あなたに言つたのではなくて、そういうことを聞いたのでしよう。
  140. 竹内政

    竹内(政)公述人 そうです。ですから民生委員にかかつていると、往診も一週間に一回ぐらいしか来ないのかと思いまして、お話に出したのです。
  141. 丸山直友

    丸山委員 そういう話を聞いて、そんなことでは困るからというので、あなたはほかの医者にお金を拂つてかかつておるというわけですね。
  142. 竹内政

    竹内(政)公述人 そうです、むりしてまでも……
  143. 苅田アサノ

    ○苅田委員 さつきのお話の中で、同居しておるお母さんは生活保護を適用できないということをおつしやつたのですが、お母さんは何か自分だけで生活をするものを持つているのですか。
  144. 竹内政

    竹内(政)公述人 全然持つておりませんです。今まで母は板橋の方におりまして、今度の事件で私がしよつちゆう出歩きますので、私の方に呼び寄せたのですけれども、役場の方へ言いましたら、母の分はもらえないということを言つたのです。ですから現在は六人分だけしかいただいていないのです。
  145. 苅田アサノ

    ○苅田委員 お母さんはお幾つになられる方で、あなたとの御関係はどういう御関係てすか。
  146. 竹内政

    竹内(政)公述人 私の実の母で七十一歳です。
  147. 苅田アサノ

    ○苅田委員 そうするとつまり竹内さんのお母さんでなしに、あなたのお母さんだからというので、現在一緒に住んでおられても、その扶助が出していただけない、こういうわけですね。
  148. 竹内政

    竹内(政)公述人 そうなんでございます。
  149. 苅田アサノ

    ○苅田委員 それからもう一つお聞きしたいのですけれども、今赤十字にかかつているとおつしやいましたね。あれはあなたがかかつているのですか、赤ん坊ですか。
  150. 竹内政

    竹内(政)公述人 赤ん坊がやけどから黴菌が入りまして、腕の方に来て脇の下へ膿がたまつてしまつたのです。それで切開しましてかかつております。
  151. 青柳一郎

    ○青柳委員 ただいまのお話ですが、そのお母さんは板橋では生活保護を受けておられたのですか、どうですか。
  152. 竹内政

    竹内(政)公述人 生活保護は受けておりません。兄のところにおりまして、こちらの私の方に呼び寄せたのです。
  153. 青柳一郎

    ○青柳委員 そうすると、そのお母さんはあちらにおられればそう困られないのですか。
  154. 竹内政

    竹内(政)公述人 いいえ、私の兄も生活に困つておりますから、私の方へは母の分としては全然仕送りはないのです。
  155. 青柳一郎

    ○青柳委員 あなた、あるいはあなたのお子さんが赤十字にかかつておられるそのお金は、保護をもらつておらないのですか。
  156. 竹内政

    竹内(政)公述人 月にいただいているそのお金のうちから、配給物をとらないで医者の方にまわしたりしております。
  157. 青柳一郎

    ○青柳委員 そういたしますと、お子さんがお医者にかかつているからお金がかかるということで、民生委員に頼まれたことはないですか。
  158. 竹内政

    竹内(政)公述人 頼みません。
  159. 青柳一郎

    ○青柳委員 それは頼んでごらんなさい。
  160. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 先ほど私の聞き違いかもしれませんが、あなたが生活保護費をたしか六千幾らだかいただいて、そのうち主食に四千円ほどかかつて……
  161. 竹内政

    竹内(政)公述人 あと二千百円は、官舎におりますから、家賃を拂わないと立ちのきを命ぜられると思いまして、むりしても家賃の方は先に拂つております。
  162. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 野菜とお魚で五十円というふうに聞いたのですが。
  163. 竹内政

    竹内(政)公述人 お魚か肉を五十円買つて、肉ならみそ汁に入れて、月に一回いただくようにしております。
  164. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 五十円というのは月の話を言つておるわけですね。
  165. 竹内政

    竹内(政)公述人 そうでございます。
  166. 堀川恭平

    堀川委員長 よろしゆうございますか——それでは竹内さんと江津さんはお帰りください——では丸山委員
  167. 丸山直友

    丸山委員 次に下松さんにただ一点だけお伺いしたいと思いますが、公益法人以外の——暫定的でも宗教法人のようなものがこれに参画するように希望するということをおつしやつたわけですが、現在そういうような施設のもの、あるいは宗教法人が、この法律によつて禁止せられる、あるいは三箇月間の待期の後には禁止せられるというようになつておりますが、大体その概数が、おわかりになつておりますか。全国的に禁止せられるであろうと思う概数ですね。
  168. 下松桂馬

    ○下松公述人 概数ははつきりわかりませんが、相当ありましよう。それから教団というのは救世軍があります。
  169. 丸山直友

    丸山委員 公的な機関を拡充いたしまする必要といたしましても、大体どのくらいに拡充する必要があるかということを勘案しなくちやならぬわけでございますから、当然禁止せられるものの数がわかりませんと、これに対するわれわれの考えがはつきりきまらないわけです。従つてその数を明確にしたいと考えてお伺かしたわけですが、現在おわかりになりませんければ、明日でも明後日でも、御調査の方法がございましたら調査して、御報告願いたいと思います。
  170. 下松桂馬

    ○下松公述人 御報告いたします。
  171. 丸山直友

    丸山委員 次に朝倉さんにお伺いいたしたいと思います。いろいろお話がございましたが、省略いたしまして、五番目に、民生委員を公選有給制にした方がよいという御意見があつたわけであります。そうしますと、それは協力機関補助機関という箇條全部を改正いたしまして、ここにそれを入れようという御意見ですか。
  172. 朝倉純義

    ○朝倉公述人 さようでございます。それから社会福祉主事もやはり削つて、今市町村長の選挙を公選でやりますが、民生委員はああいつた形で選挙してもらいたい。今の推薦様式はあまりよろしくないと、先ほど江津さんがおつしやいましたが、それと同様の意見であります。
  173. 丸山直友

    丸山委員 次に増田さんにお伺いしたいと考えます。あなたは他の公述人と違つて、直接市町村に職を奉じておられるので、私は非常に期待して承つたわけでございます。あなたさまは、民生委員協力機関とするということに対しては、やはり疑問を持つておいでになると思うのであります。しかし村の御当局といたしまして、当該吏員はあなたさまが統帥しお使いになつているものでありますが、現在あなた方のお使いになつている吏員では、とても民生委員の働きをさせるだけの自信がないとお考えになりますか、いかがでありますか。
  174. 増田正直

    ○増田公述人 協力者であるということに疑問を持つと申し上げていたとすれば、私の言い違いなんで、援助者としての立場に立つということならよろしい。従来のように協力者として町村役場の仕事をともにやつて行くということならばその方がよろしい。こういう意味なんです。
  175. 丸山直友

    丸山委員 そうしますと、民生委員はこの法律案では協力機関にかわつたわけでございますが、この改正の方がよろしいという御意見なのでございますか。
  176. 増田正直

    ○増田公述人 私は本案をこの席で拜見しただけで、そこに誤解があるかもしれませんが、従来の法律で、扶助の責任者は道府県知事であり、協力者市町村長であり、民生委員は援助者である。かように考えていたので、さよう申し上げたわけであります。
  177. 丸山直友

    丸山委員 端的に申し上げますと、この改正がよいとおつしやるのですか、悪いとおつしやるのですか。
  178. 増田正直

    ○増田公述人 従来通りがよいというのです。
  179. 丸山直友

    丸山委員 もう一つお伺いいたします。これは竹内公述人からも話があつたことでございますが、医者の診療内容を審査いたしますのは、改正法案では県知事がやることになつている。ところが竹内公述人意見は、後ろであなたもお聞きになつてつたと思いますが、市町村長第一線の事務を取扱つているから、市町村長の申請によつて県知事がやる方がよい、こういう意見であつたのです。市町村当局としては、市町村長が県知事に申請をして、知事がやる。こういう順序になつた方がよいとお考えになりますか、あるいはそんなことはしない方がよいとお考えになりますか。
  180. 増田正直

    ○増田公述人 この席上で法案を読んだだけですから、詳細なことはわかりませんが、今のお話に基いて考えますれば、やはり町村長が決定をして行く方がよろしい、こう考えております。
  181. 丸山直友

    丸山委員 市町村長が決定するのでございません。具体的に申しますれば、医者から市町村あてに請求書が出て参りますね、そうしますと、その内容に対して、これが不適当な診療内容だとか、あるいは不適当な診療報酬請求だというような場合には、県知事が吏員を使つてこれの審査をするというのが今度の法律案であつて市町村長がこれをどうするということはちつともうたつてないわけです。なお竹内公述人からは、市町村長の申出でしたかによつて県知事が命令して、そうして審査機構をつくつて、そこで審査することがよろしいという発言があつたわけであります。その点について、市町村長が県知事に申請するという順序をとつた方がよいか悪いかということです。
  182. 増田正直

    ○増田公述人 法文をよく読んでおりませんから、お答えすることがどうもちぐはぐになるようですが、ただいまのお説は、医療給付を決定するのは町村長という意味ですか。診療費を決定することか、いずれのことですか。その点はつきりしないものですから、どうも申し上げることがちぐはぐになつて
  183. 丸山直友

    丸山委員 どうもよく御了解にならぬようです。質問を説明する方が少しむずかしくなりますから、質問ばこれでやめます。  次に竹内一さんにお伺いしたいと考えます。それは医療機関の指定の問題でございます。医師吃指定するということと、医療機関を指定するということとの間には、相当差違があるということはもちろんでございます。あなたさまの御意見によりますと、担当するものを医師あるいは歯科医師、薬剤師、こう直接に指定した方がよろしいという御意見は、わかつたのでございます。ただその御説明の中に、これは健康保險と一致させた方がよろしいから、健康保険では、古くは機関を指定しておつたけれども、その後改正せられて、担当するものの方を指定するようにかわつて来たというお話が、先ほどあつたのであります。しかるに先般厚生委員会において、社会局長に私が質問したときには、それと逆の説明があつたわけであります。健康保険は古い法律であるから、診療を担当するものを指定したのであつて、現在の趨勢は機関を指定するように移り行くという、逆の説明があつたわけであります。あなた様の御意見とそこに狂いが生じております。あなた様の御意見のごとく、健康保険においては、二十五年度から機関を指定するよりも、担当するものを指定する方がよろしいと、こういう線に立つたということに誤まりがないかどうか。どういう御意見をお持ちでありましようか。
  184. 竹内一

    竹内(一)公述人 二十五年度から、今丸山委員のおつしやつたように、かわることに聞いております。担当する側の立場から、当然かくあるべきであると存じますが、その点をはつきり申し上げておきます。
  185. 丸山直友

    丸山委員 担当するものを指定いたしました場合には、医療の責任の所在ははつきりすると考えます。しかし経理に関しましては、医療を担当するものが経理を担当しておらない場合があるのであります。たとえば公立の病院のごとき、あるいは会社の病院のごときは、経理は医療を担当するものとは異なるものが判当しておるというのが事実であります。その場合に、医療を担当するもののみを指定し、機関を担当するものを指定しないところに不都合が生じたり、危険が生じないかということを伺います。
  186. 竹内一

    竹内(一)公述人 あくまで医療の責任は、担当する側の医師にあるわけでございます。しかし今御質問の通り、経済面を受持つておるところの開設者の問題につきまして、これは医師が指定される場合に経済面ということを考えますと、開設者の同意というものも従属的に必要になつて来るわけであります。ですからあくまで責任は指定医にあります。しかし経済面と開設者が違う場合に、経済面の問題が起つて参りますので、同意を得るということが必要になつて来ると存じます。その程度でございます。
  187. 丸山直友

    丸山委員 次に五十四條で、診療録その他帳簿、書類の提出を求めることができるというようなこと、かありますが、この医師の帳簿、書類、診療録というものには、機密を保つ義務があるのでございます。しかるに県の吏員である者は必ずしも医師に限るという規定もございませんので、この診療によつて得たところの秘密が、その部分から漏洩する危険があるのであります。医師は、医療のために知り得たところの秘密を漏洩するときには、重大なる罰則を負わされておるのであります。しかるにこの帳簿を検査するところの吏員に、その祕密を漏洩したる場合においての罰則規定がこの法律にないのであります。これに対してはどういうふうなお考えがありますか。  さらに先ほど担当するものとおつしやいました中には、薬剤師も含んでおると思いますが、薬剤師の帳簿、書類というものは、いかなる範囲まで及ぶものであるか。たとえば医師から提供された処方箋だけを書類というのであるか。あるいはその他買入帳等、詳しいものまでその他とお考えになるのでありますか。その点を伺います。
  188. 竹内一

    竹内(一)公述人 第一の御質問に対しては、当然医療上知つた患者の秘密というものは、医者は漏洩してはならない。医者以外の検査員においても、そういうことを知つた場合に、治療上の祕密というものは医者に準じて漏らすことができないという義務を負うべきだと思います。先ほど申し上げた中にも、罰則にこれを加えるようにということを申し上げておるのであります。  第二の問題でございますが、指定薬剤師が書類の提出あるいは検査を求められたときの、いかなるものかその書類か、処方箋というお話がございましたが、そのほかに薬品使用台帳とか、あるいは麻薬の台帳というものが、当然その検査される書類の中に入つて参ります。
  189. 丸山直友

    丸山委員 概略これで質問を終りたいと思いますが、ただ青木さんに、この法案を審議する上で非常にたくさんの示唆やヒントを與えていただいたことをお礼申し上げます。
  190. 苅田アサノ

    ○苅田委員 牧野さんにお伺いいたします。先ほどの御意見の中には、当然教育費の中には教育映画とか、修学族行の費用も含まるべきだという御説があつたのでございますが、なおPTAの会費についてはどうという御意見でございますか。その点お伺いしたいと思います。
  191. 牧野修三

    ○牧野公述人 PTAの会費なども、当然その学校において一般的に納入すべきものでありますから、要するに基本概念といだしましては、他の児童と同様に一般的にその教育を受け、あるいはそれに伴うPTAの会費、そういうふうなもの、その他いろいろございましよう。そういうふうな一般的にどうしても他と同一にしなければならない。それこそこういうところに平等を使えばいいのであつて、そうしてそれらはすべて教育扶助費に入れるべきであると思います。
  192. 苅田アサノ

    ○苅田委員 御存じでしようけれども、今回制定された教育扶助には、PTA会費が入つてないわけで、この点につきましては、厚生省当局の方では、PTAは寄附なんだから生活保護を受けておるものが学校に寄附するには及ばない。こういうことを言つておりますが、私は実情から見ればこういうことはとうてい行われないと思います。さらに母子保護の施設をお持ちになつ三そういう家庭の方をお預りになつておる立場の方として、さらにこの点についてぜひこういうものは必要だということをおつしやるのでありますか。
  193. 牧野修三

    ○牧野公述人 おつしやる通りでございまして、実際私の方におります未亡人たちも、とにかく自分の最小の生活費のためもありますが、結局何かを削らなければならぬ。この間も配給のお砂糖を断つてそういうような金をもつてやはり何といつても未亡人たちは基本的の心情としても子供をすこやかに育てる。もう一つは、彼女たちとしては自分の夫がないからどうしても子供たちには苦労はさせまいということは、未亡人の切々たる心情なのです。そういう点におきまして、自分の家で食わせるものはよその家よりもまずいものを食わせるということはがまんしますが、少くとも小学校児童などには、差別的な気持を持たせてはならない。小供たちにはPTA会費を納めているか納めていないかわからぬけれども、親の心情として当然であります。そういう意味において教育扶助を受けなければ自分が苦労しても出す。もちろんそのためには健康にして文化的な生活費を減らして、必要量を減らすというの、か厳然たる事実なのです。
  194. 苅田アサノ

    ○苅田委員 もう一つ伺いたいのは生業扶助の点なのですが今度の改正では、保護を受けておる人が自分で立つことができるような自由の精神をうたつておる項目があるわけですがこれ。についての実際の施策は何かといえば、大体生業扶助の点しかないという御答弁なのです。この生業扶助が現在は大体三千円に区切られておる。特別に申請した場合に五千円というので、私はこれでは実際の生業扶助としては役に立たない。かように考えるのですが、厚生当局の方のお考えでは、これは従前からこの規定があつたのだけれども、これを利用するものが少いからこの両については重要視しないで、今度の改正でも二十一年度の規定の通り、それからの物価の値上りを考えないで、以前の通りすえ置いたという御返答なんです。これは私の考えではやはり扶助額が少いということが、これを利用しようということの妨げになつておるのじやないかと考えられます。あるいは実際願つてつてもなかなかおりないということで借りられないのじやないかと思うのですが、その実情についておわかりになつておるところをお話願いたいと思います。
  195. 牧野修三

    ○牧野公述人 まつたく私もお説の通りだと思います。利用者が少いということは、ただ少いという表面的な現象の裏に、何がひそむかということを洞察しなければならない。ところがある区役所でのお話では、二千円が実際の予算関係で一千円になつておる。それを今度かりに三千円、特別が五千円になつても、今日の状態において、たとえばまことに軽い、地下たびを買うとか、パスを買うという程度の問題であればそれで助かりましようが、実際上独立した生業を営もうとするときには、実に問題にならない額であることは明らかであります。そして実際上の状況を民生事務所でお調べになればわかりますが、従来一千円なり、二千円なりの生業資金を、もらつてつた者か、実際生業に使わないで、結局のところは一時生活上の臨時費の足しにしている。たとえば従来庶民金庫において貸しました三千円のあれでさえも、当初は封鎖で渡した。そうなるとこの三千円の庶民金庫のものさえも、一時生活費に使われたということは公然たる事実なんです。幸いにしてそれは国民金融金庫によりまして拡大されましたが、未亡人世帶が、そういう資金を借りて独立する旺盛なる意欲があるかないかということが問題なのであります。そういう場合には、これは国民金融金庫に対する申請状況をお調べになれば、結局金額を多く貸してくれるというときに、これによつて生業が成り立ち得るのだという見込みがあるときは、利用熱というものは相当あると思うのです。今日の国民金融金庫においても、まだそこのところはかなり制約されております。もし幸いにしてこの金額がふやされるならば、おそらく利用者は相当あると思う。それによつて結局は自立して生活扶助を辞退する者がふえる。国家経済の上から言つても、非常に積極的な、それは単なる消費経済ではなく、国家再建の社会経済的なつながりを持つというところに、やはり生活保護法の行き方があるのじやないかと考えております。
  196. 苅田アサノ

    ○苅田委員 次に朝倉さんにお聞きしたいのですが先ほど丸山委員が井上さんにお聞きになつたのでございますが、生活保護で医療を受けておる者が、今度の改正に対して国民健康保険に準じないで、健康保険の医療でやつてもらいたい、そういう要望があつたというのです。それはどういう内容のことを言うのか。ひとつお伺いしたいと思います。
  197. 朝倉純義

    ○朝倉公述人 国民健康保険は、がたがたの状態にあるのです。そして診療の制限を現にやつておるのです。この病気についてはやれないとか、この病気についての期間は制限するとかして、非常に市町村が困つております。そして国民健康保は家族は半分負担という状況になるわけです。だから健康保険の方は三十億くらいの赤字は出しても、まがりなりにもりつぱにやつて行ける。診療報酬点数がはつきりしております。だから国民健康保険のがたがたなものを使うより、健康保険の基準のはつきりしたものによつてつた方がいいということです。
  198. 苅田アサノ

    ○苅田委員 次にやはり朝倉さんにお伺いしたいのですが、先ほど私が民生委員の江津さんにお聞きした点と重複するわけですが、当然保護を受けなければならない人で、保護をかけてもらえないということ、そういうのは、あなたの方で先ほどお話になつた全国的な例があると思うのですが、そういう例は案外私は多いのじやないかと思います。その点について簡單でけつこうですからお話していただきたいと思います。
  199. 朝倉純義

    ○朝倉公述人 先ほども申し上げましたように、厚生省の社会局の小山課長さんがやはりおつしやられたのですが、去年の七月から九月までの間に百四十件の不服申請があつて、五十三件は通過した。これと同じようなことが私の机の上にはたくさん集まるのです。一月に四十通くらい自筆で回答を送るのです。不服申請の実例もさつき言いましたが、ああいつた場合に不服申請をやるけなんです。そのときに受けられない人が多くて悩んでおる。これを何とかして打開するということにわれわれは苦悶しておるのです。その点は厚生委員の皆様方の御協力や、政府当局でもつとつつ込んだやり方をしていただきたいと考えるわけです。
  200. 苅田アサノ

    ○苅田委員 次に下松さんにお伺いしたいのですが、下松さんは浴風園という養老院を経営しておるということですが、聞き及びますと、浴風園というのは日本でも代表的な非常に高度な養老院だということです。その施設の費用などは、委託経世費でもつてつておいでになるかどうか、お伺いしたいと思います。
  201. 下松桂馬

    ○下松公述人 経費の費用は大部分がほとんど委託費用でやつておりまして共同募金の配分金、小額の慈善的な寄付金、これでまかなつておるのであります。
  202. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私がそれをお聞きいたしましたのはせんだつて板橋の養育院と申しますか養老施設を委員会から見学しましたときに、あそこでやつております施設がたいへんひどいわけで、経営者の方はやはり施設委託費等の増額をしていただかなければ、とうてい満足な経営はできないということを、非常に私どもは歎願されたわけなんです。それで見て来た実情から申しますれば、年とつた方が安静に覆したい要請であろうと思うのでありますが、その中に浮浪者あるいははなはだしきは精神病患者と一緒に雑居しておいでになるというようなところがあります。それでほんとうに公の施設では、ただ委託費だけでやれば、そういう状態になるのはやむを得ないのではないかと思いましたので、あなたのりつぱな所と聞いている経営が、そういう委託費くらいなものだけでやつて行けるかどうかということをお聞きしたわけなんです。
  203. 下松桂馬

    ○下松公述人 形の上では、建物などは非常にりつぱでありますけれども、経営をやつて行きますのに、赤字といつても、銀行も貸してくれるわけではありません。自然被服、食べもの、そういう点において非常に遺憾な点が多いのであります。ところが新生園——これは東京都の養育院で相当大きいんですが——ここで私ちよつと代弁しますが、東京都の養育院は多少浮浪者なども、やはり自然送り込まなければならぬような状態になりまして、非常にある意味混乱しておると思います。しかし将来養老員はいろいろ選別しまして、老後の安静の場所であるという立場で進んで行かなければならぬと思うのであります。
  204. 苅田アサノ

    ○苅田委員 そうしますと、世間で言う最も高級な養老院でさえも、ただいま下松さんがおつしやるように、やはり現在の施設費、委託費では食費その他の点で非常に遺憾な点がある、こういうお話でございますね。
  205. 下松桂馬

    ○下松公述人 非常に足らないというわけです。
  206. 苅田アサノ

    ○苅田委員 わかりました。こちらから願つて、年とつてから入れていただこうというような所ではないわけですね。  それから次に天達さんにお聞きしたいのですが、現在の生活扶助の基準では非常に不十分だという点は、どの公述人からも述べられたわけでありますが、わけても天達さんから数字等を引きまして、十分な御説明を得てわかつたわけであります。そういたしますと、憲法二十五條に基いて、今度の改正法案にうたつてあるように、国の厚生施設が文化的な、健康な生活の基準として定められるということになれば、これは当然今日の公述人お話を聞けば、厚生省でもこういう非常に不十分な基準をお引上げになるだろうと考えます。そういたしますと、予算の点においてやはりこれは大幅な引上げが当然私は必要になつて来る、かように思うわけでございます。この点につきまして、これは先ほど寄木さんからも御要求があつたと思うのでありますけれども、法文に明確に、この予算の点を国、都道府県あるいは市町村が責任を負わなければならないという條文がないということは、不十分だと思うのです。これは最初の法案改正のときには、費用の点は冒頭に持つてつて、国、都道府県あるいは市町村は、この法案実施に必要な十分な費用を出さなければいけないという意味のことが書いてあつたのが、とられたわけでありますけれども、これに対して、なぜこれをとつたかと言うと、厚生省方面の御答弁では、それは当然法文にうたつてあるものはとらなければならないんだから、屋上屋のきらいがあるから、それは書かないと言うのでありますけれども、私は従来一番の欠点は、そういう予算的な措置が十分行われていなかつた。そのために当然保護されなければならない人も保護されないことがあつた考えるので、その点はやはり法文に明示するなり何なりすることが、今度改正になるならぜひ必要だと考えるのであります。そういうことについて御意見があれば伺いたいと思います。
  207. 天達忠雄

    天達公述人 十分なお答えになるかどうかわかりませんが、基準の点は金額だとか、あるいは従来ありましたようなこまかいそういう規定を一々法文に盛ることは、おそらく厚生省でお考えにはなつておるのだろうと思いますが、煩雑なわけです。あるいはそれがよいかどうか、あるいは煩雑でもやるかどうかということはわかりかねますが、少くとも労働基準法では、最低賃金はいかにして決定すべきかということ、その決定機関はいかにあるべきかということは規定しておるわけです。それだからこういう箇條はぜひ法案に入れていただきたいと思うのです。それから予算の点も、これは私は全部お答えするわけに行かぬのですが、ただいまわが国で戰後失業保險法ができてからの保護を受けておる人の内容、原因別の厚生省の御発表を見ますと、失業保険ができたことによつて生活保護法は肩の荷が軽くなつておるのじやないかと思うのです。それからアメリカのものなどを見ましても、今下松さんがおつしやいました養老院の例で言えば、養老保険でもつて費用は当然自分が受けたもので、せわにだけなるのが養老院です。それですから生活保護決だけ言つても、ここにしわ寄せされておるのだからしようがないのだということをよく聞くのです。そうだからといつて生活保護法はひどいものであつてよいということにはならないので、特に生活保護法の予算の点では、いろいろほかの要素もあわせて考えられなければならないのであります。
  208. 苅田アサノ

    ○苅田委員 もう一つそれに関連して基準の点でお伺いしたいのですが、先ほどこれは民生委員の方に私お聞きしたのですが、現在の基準では、住宅費が五人世帯でもつて一箇月七十二円となつておるので、これは厚生当局の方でも、それよりも上の場合には基準外の支出を認めるというふうなことをおつしやつたのですけれども、私は今回特に家賃なんかの十五倍値上りが行われるのを前にいたしまして、そういつた基準外の支出でなくて、基準としてもう少し正しい基準を出していただかなければ、これはまつたくおとぎ話みたいな基準だと思うのですけれども、その点いかがでしようか。
  209. 天達忠雄

    天達公述人 お説の通りだと思います。ただその場合にも、厚生省御当局だけで御心配になると、その点が今苅田さんがおつしやいましたように、合理的に行きにくい点があるのじやないかと私は想像するのですが、そのためにも、労働基準法で最低賃金の設定方法をちやんと規定しておるように、生活保護法でも規正して、各方面が集められておやりになれば、不十分ながらもみなの納得するものができるのじやないか。
  210. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私どももそういう財政的な支出の点、またはそれにかわつて生活扶助の基準の点が一番問題だと思つてつたのでありますけれども、きようおいでになりましたそれぞれの権威のある公述人のお方が、いずれも基準の点については、現行法のように施行細則でもつて保護課等でごく少へ数でもつてきめることが不合理であつて、発表する形はいろいろありましたけれども、いずれもこれのためにもつと科学的な合理的な基準がきめられるような機関を持つことが必要だというふうにお話になりました点を、私は非常に共鳴するわけでございます。私の質問はこれで終ります。
  211. 堀川恭平

    堀川委員長 ほかにだれか御質疑ありませんか——なければこれで本日の公聽会を終ることにいたします。  終るに当りまして、公述人の皆様にはほんとうにお忙しいところを長時間にわたりまして、きわめて熱心にいろいろな面から御意見を発表していただきまして、ありがとうございました。われわれといたしましても、ほんとうに皆さんの御意見を参酌いたしまして、法案を審議することができることを幸いに存じます。はなはだ簡単でありますが、これをもちまして御挨拶といたします。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後六時二十三分散会