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1950-04-10 第7回国会 衆議院 厚生委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十日(月曜日)     午後一時五十分開議  出席委員    委員長代理 理事 青柳 一郎君    理事 中川 俊思君 理事 岡  良一君    理事 金塚  孝君 理事 苅田アサノ君    理事 金子與重郎君       田中  元君    幡谷仙次郎君       丸山 直友君    亘  四郎君       渡部 義通君  出席政府委員         厚生事務官   久下 勝次君         (医務局次長)  委員外出席者         厚生事務官         (医務局医務課         長)      河野 鎭雄君         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君 四月八日  委員田中元辞任につき、その補欠として森下  孝君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員森下孝辞任につき、その補欠として田中  元君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  医療法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四八号)(予)     —————————————
  2. 青柳一郎

    青柳委員長代理 これより会議を開きます。  まず、医療法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通告がございますので、これを許します。丸山委員
  3. 丸山直友

    丸山委員 医療法の一部を改正する法律案、つまり医療法人を認めるということなのでございますが、これは提案理由の御説明にもございましたように、私的医療機関協力態勢を整えるということが非常に必要であるということと、それからただいまのような状況では、新しく医師診療所をつくるというような場合、相当の技術を持つておられる方が、入院をとつて完全な治療を行えるようなものをやりたいというような場合には、当然二十以上のベツドを持たなければならぬということになります。従つてその資材、資金等の面においては、非常な困難がありまするので、そういうことがこの法によつて救われるということは、たいへんけつこうだとは思いまするが、しかし現在の私的の医療機関は、非常に弱小なものがたくさん存しております。この人たちが集まりまして、これをつくるということになりますると、相当な困難、また感情の融和上において、むずかしいことが起ると考えるのであります。その場合に、医師以外の企業目的とした者が、この医療法人によるところのものをつくつて、そうしてそういう困つた医者を雇つてやる。一種の営利事業として経営するというような危険があるというふうに考えられるのでございますが、そういう場合に、これを防止せられるという御意思であるか。あるいはそういうことも助長せられようという御意思かどうか。また防止せられるとすれば、どういう方法でそれを防止するかということについての御見解を承りたい。
  4. 久下勝次

    久下政府委員 医療法人そのものが、申すまでもなく自然人ではございません。りくつだけ申せば、医師以外のものになるわけでございます。私どもといたしましては、この法律規定の正面からは運用上多少の疑念はあると思うのでございますけれども医療法人認可をいたしますにあたりましては、ただいま御質疑の点は、医療法七條で、病院開設許可をいたします場合に、営利目的とするものは許可しないことがあるという表現をいたしまして、実際の扱いといたしましては、営利目的とすることが明白であります場合には、病院開設許可をしないという扱いをいたしておるのでございます。医療法人というものが、もともと病院開設及び経営目的とするものでありますために、この病院開設許可が得られないようなものに法人認可をするということは、およそ意味のないことであろうと思いまするので、法人認可を決定いたします場合の條件として、本法案第四十五條に、法人認可の決定をいたします場合の審査の條件が書いてございますが、この規定運用といたしまして、医療法七條の精神を生かすようにいたしまして、結果におきまして、ただいま御質問の御趣旨に沿うようにいたすべきものと考えておる次第であります。
  5. 丸山直友

    丸山委員 次に、現在存在しておりまするいろいろな、たとえば農業協同組合でございますとか、そのほかの個人でないもので、現在経営しておるところの診療機関は相当あると考えております。こういうようなものは、漸次この法律の中の医療法人の方に吸収して行くというふうなお考えでございましようか。そういうものはまつたく別個になるというお考えでこの法律をお出しになつたのか。お伺いいたしたい。
  6. 久下勝次

    久下政府委員 ただいま御引例の、農業協同組合などの経営する病院につきましては、ただいまのところ、これを本法案によりまする医療法人に改組させるということは、それ自身相当むりがありはしないかと考えます。それらは、それぞれ根拠法規もちまして、正当にその業務、すなわち病院開設運営をいたしておるわけでございます。それにつきましては、相当検討の余地があろうかと存じます。ただお言葉にありました、営利法人で現在病院運営しておりますものは、若干ございます。これにつきましては、実は本法案審議をいたします際にも、私どもとしても問題といたしたのでありますけれども、すでに正規の手続を経まして、正当に法人格を取得し、病院経営をいたしておりますものにつきまして、法律をもつてただちにこれを改組させるということは、むりではないかという意見が強くありましたので、法律の表面には出ておりませんが、実際の行政の運用といたしましては、私どもといたしましては、営利法人として現在病院経営をやつておりまするものにつきましては、逐次この法律に基く医療法人に改組するように指導をして行きたいと考えておる次第であります。
  7. 丸山直友

    丸山委員 次に、この医療法人をつくりまする場合に、先ほど申し上げましたような、経営の困難なる、弱小なる開業医等が、数名集まりまして、これに移り行くというようなことは考えられるのでございますが、その場合に、おのおのが持つておる施設その他を人に出資いたします形になりまするか、あるいは寄付の形になりまするか、そういうような場合の課税に関しては、何らかの御考慮があるかどうか。つまり出資あるいは寄付ということに関しては、課税がどういうふうに行われるのでありますか。
  8. 久下勝次

    久下政府委員 その点につきましては、新しい相続税法案も国会にすでに提案になつておりまするようであります。あるいはもう可決になつておるかもしれません。この法案につきまして、私どもとしては、税務当局の方と明確に打合せをしてみたのであります。新しい法律によりますると、出資の場合にはもちろん、寄付の場合におきましても、課税は行われないというような言明を受けておりまする次第であります。
  9. 丸山直友

    丸山委員 この医療法人は、もちろん定款が必要になると考えておるのでございますが、この定款内容については、何か特別に、医師との間の関連に関することを御予想になつておりますか、どうですか。また定款認可は、厚生省でありますか。あるいは民法によりますか。どうなりますか。
  10. 久下勝次

    久下政府委員 定款または寄付行為という言葉を使つておりまするが、この規定内容につきましては、本法案の第四十四條にございまして、その第六号に役員に関する規定、次に第七号に、社団たる医療法人にあつては、社員たる資格の得喪に関する規定というようなものが規定してございまして、これによりまして、その実質の構成を明白にするようにいたしたいと思つておるのでございます。なお医療法人理事につきましては、本法案の第四十七條に、「理事数人を有する場合には、その開設する病院又は診療所管理者理事に加えなければならない。」こういう規定を置いてございます。医療法人理事は、民法規定を準用いたしまして、一人または数人を置かなければならないということになつております。その数人あります場合には、必ずその開設する病院または診療所管理者である医師を加えなければならない、こういうふうになつておりまして、従つて二人以上の役員のあります場合には、必ずその開設しておりまする病院管理者である医師、まれな場合には歯科医師でございまするが、これが役員になることにしておるのでございます。
  11. 丸山直友

    丸山委員 この定款認可は、厚生省でなさるわけですか。
  12. 久下勝次

    久下政府委員 失礼いたしました。定款認可は、都道府県知事がいたすことになつております。これは法案の第四十四條にございまして、「医療法人は、都道府県知事認可を受けなければ、これを設立することができない。」そのあとに、「設立しようとする者は、定款又は寄付行為をもつて、」云々と規定してございます。この定款または寄付行為をつけまして、都道府県知事認可を申請するということになるわけであります。
  13. 丸山直友

    丸山委員 都道府県知事認可をいたすのについては、厚生省として何らかの基準を示される御意思でございますか。
  14. 久下勝次

    久下政府委員 都道府県知事認可につきましては、この法案の第四十五條に、基準規定がございます。すなわち、資産が四十一條の要件に該当しておるかどうか。その定款または寄付行為内容が法令の規定に違反してないかどうか。この二つを審査することにいたしておりまするが、なお四十五條第二項にありますように、あらかじめ医療機関整備審議会という、医療法に基きまする審議会が各都道府県に設けられまして、これの意見を聞くことにいたしておる次第であります。なお、これが運用につきましては、先ほど最初の御質問お答えを申し上げたような気持も含めまして、適当な方法で指示をいたすつもりでございまするし、また手続的なことにつきましては、政令または省令をもちまして、必要な規定を設けたいと思つております。
  15. 丸山直友

    丸山委員 次に、第三十九條の、常時三人以上勤務する診療所開設しようとする場合だけ、この法律適用になると考えておりますが、御提案理由にもございました、私的医療機関協力態勢を整えるということから申しますると、事実上三人以上集めるということが、かなり困難があるのではないかと思います。これを二人以上にかえるというようなことをお考えなつたことはないか。また三人以上の場合においては、現在あるものがもしこれに転換して行くとすれば、大体どのくらいの数がこれに該当するというお見通しがついておりますか。
  16. 久下勝次

    久下政府委員 診療所につきまして、常時三人以上医師または歯科医師が勤務するということにいたしましたのは、診療所としても、一人か二人きり医師または歯科医師のおらない小さいものまでも法人にするということは、いかがであろうかという考え方のもとに、三という数字にきめたわけでございます。実は、当時この審議の途中におきましては、むしろ二人という考慮よりも、五人以上というのが相当長く主張されておつたのであります。この種のものにつきましては、できるだけ多くの場合こういう制度に移りかわつて、この利用ができるようにというような考え方から、むしろ逆に五人という主張が強かつたのを、三人に下げたというような程度でございまして、三人と二人とを、別に具体的に比較検討して、どうこうというところまで嚴密な考え方ではございません。ごく大ざつぱなことではございまするけれども、大体そういうような考え方でございます。しいてよりどころを申し上げますれば、御承知通り医療法によりまして、医師三人以上常時勤務する診療所につきましては薬剤師を置かなければならないという規定がございまして、その辺の規定関連等からも、三という数字で押えるのが適当ではないかというような結論になつたわけであります。
  17. 丸山直友

    丸山委員 なお、今の点でございますが、先ほど私が申し上げましたように、個人ではとうてい経営ができそうもないというような場合に、この法律を利用しようというような考え方になると思いますが、その場合に、私的医療機関を助長して協力態勢を整えさせるというような意味から申しますると、事実上は三人以上勤務しておるようなものは、もうすでに病院形態を整えておるものが多いのであつて、それよりも、かえつて少数のものの方が、この法によつて救われるということを私どもは期待するわけであります。その場合には、現在すでに三人以上医師がおるものは病院としての資格を備えておる。とても経営ができないというような状況のものがこの法によつて救われたいということから言うと、むしろ二人に下げることの方が適切ではないかと私は考えておるのでございますが、そうはお考えにならないでございましようか。何か支障がございますか。
  18. 久下勝次

    久下政府委員 先ほどもちよつと申し上げましたように、自然人病院または診療所経営する場合と、法人による特殊な制度を利用してやる場合とにおきましては、その間診療所運営形態または実態にも、若干の差があつてよろしいのではないかというのが、三人というような制限を置きました根本的な考え方でございまして、言葉をかえて申しますれば、少くとも一人の医者自分診療所開設して、自分だけが働いておるというようなものにつきましては、しいてこの法人制度を利用するようなことを考えなくてもいいのではないかというのが、この法人制度考えました趣旨でございます。私どもといたしましては、二人で絶対に困るという理由はないとは思いまするけれども、大体以上申し上げたような理由から、三人くらいに押えるのがます常識ではなかろうかという考えでやつておる次第であります。  なお、先ほどの御質問お答え申し上げませんで失礼をいたしましたが、現在医師が常時三人以上勤務しておりまする診療所が何箇所あるかという調査につきましては、資料がございませんので、お答えいたしかねます。
  19. 丸山直友

    丸山委員 後ほど一応それを出していただきたいと思います。
  20. 青柳一郎

    青柳委員長代理 他に御質問ございませんか。
  21. 苅田アサノ

    苅田委員 今度来年度から実施される医療法に対して、やはり大半の医者は、そういう規模を持たないし、それから、そういうふうなものを自分の独力で整えるということは不可能なわけで、それで、自発的に今お医者さんたちが寄り合つて、そういつた総合的な経営をやろうという動きは、全国的に見られるわけなんですけれども、そういう場合に、必ず医療法人規定によつた形運営しなければならないということになるのでしようか。それともこれは任意に、何も医療法人という名前をあげなくても、そうした人たちが自発的な形でもつて経営をやつて行くのに、さしつかえはないわけなんですか。
  22. 久下勝次

    久下政府委員 御質疑通り、別にこの法人にしなければならないということは考えておりません。個人が数人集まりましても、組合をつくつて自由にやつて行こうというのでありますれば、それでもけつこうです。また民法による公益法人になりたいというとであれば、それでもけつこうだと思います。その辺のところは、自由にやつていただきましてけつこうであります。
  23. 苅田アサノ

    苅田委員 そういう自由な形で、組合的な経営をやるという場合と、医療法人に属する場合と、課税等について何か差異があるということになりますか、どうでしようか。
  24. 久下勝次

    久下政府委員 課税の問題につきましては、主として平素の所得税の問題が問題になり得ると思います。所得税だけを例にあげて申し上げますれば、法人制度によつて病院運営をやります場合には、申すまでもなく法人税法適用がございまして、一律に、その収益の額のいかんにかかわらず、百分の三十五でございますかの税率が課せられることになります。個人でございますと、これは所得税法によりまして、逓増される税率が課せられるわけでございます。収益が高くなればなるだけ、それだけ法人である場合よりも実際の税金が高くなるということはあると思つております。  この辺で、たいへん失礼でございますが、先ほど丸山委員の御質問になりましたことに関連してお答えを申し上げたいと思うのでございますが、そういうようなことを考え合せますときには、かえつて一人、二人の一般的に収益少い診療所につきまして、この法人制度を認めるということが、その点からあまり意味がないことになりはしないか。こういう点については、個人の場合でありますると、百分の三十五以下の税率の場合が、収益の額に応じてあるわけであります。その辺がこの法人になりますると、必ず百分の三十五という税率をかけられますから、そういう結果になると思います。
  25. 苅田アサノ

    苅田委員 そういう医療法人という看板をかけた企業形態にならなければ、ここに規定してあるような、届出であるとか、あるいはいろいろな義務というようなものは生じないわけなんですか。それはやはりこれに準ずるということになるわけなんでしようか。
  26. 久下勝次

    久下政府委員 医療法人になられませんのでありますれば、もちろんこの医療法の一部改正の第四章、医療法人という章に関する手続は、何も入り用ありません。そのほか、医療法の中には、病院及び診療所開設等についていろいろ届出とかを要求いたしております。これは法人であるといなとにかかわらず、一律に行われます。そういうふうに御了解いただきたい。
  27. 青柳一郎

    青柳委員長代理 他に御発言ありませんか。
  28. 渡部義通

    渡部委員 この医療法の一部改正という問題が、医療機関の、ことに病院の急速な普及整備という見地からなされておるようでありますが、私たちが多くの医者人たちに会つてみますと、今日本の医療機構というものが、非常に荒廃しておりますが、それより前に、まず社会保険破綻とか、あるいは重税とかによつて開業医がほとんど立つて行けない状態になつている。ここにこの医療機関が荒廃している最も大きな原因があるんじやないか。このことと関連なしに、医療機構の、あるいは病院の急速な普及整備というものは考えられないのじやないか。何となれば、開業医がほとんど破綻状態にあるということから、それを病院化して行く力の蓄積を、ほとんど失わさせるような状態になつているからです。今申し上げた社会保險破綻や、重税による開業医たちの非常に困難な状態、このことを解決することなしに、この病院の急速な普及整備ということは困難じやないか。この点はどういう見通しですか。
  29. 久下勝次

    久下政府委員 お話通りでございまして、私どもといたしましては、この改正法案によりまして、これのみをもつて医療機関整備普及ができるものとは考えておらないのであります。ただ医療機関整備普及の一助となり得るであろうという期待を持つておるにすぎないのであります。根本的には、確かに社会保險制度の問題、あるいは課税問題等医療問題に関連をする各般の問題を解決してかからなければならないと思つている次第であります。ことに医療法におきましては、御承知通り公的医療機関開設に対して、国庫補助を與え得る規定もございますが、先般御審議をいただきました予算にも現われております通り、私ども希望にかかわりませず、財政上の理由から、この方も十分に実現を見ていないというふうなことであります。これらの問題が未解決のままに、この法案改正なつたからといつて、ただちに医療機関が整備できるというふうには考えておらないのでありますが、少くとも医療機関整備に関する一つの隘路を打開するということにはなり得ると考えておりますとともに、お話のありましたような点、その他医療機関整備の障害となつておりまするような各般の事態につきましては、私どもとしては、今後全力を盡しまして、その改正に努めたいと思つている次第であります。
  30. 渡部義通

    渡部委員 今の御答弁は、民間の医療の最も大きい部分を負担しているように考えられるところの開業医が、ほとんど破綻状態なつたまま、それとは別個に、今度この改正法による病院等の急速な普及整備がなされると言われましたが、私たちしろうとだけでなくて、社会的なものの見方からいたしますと、むしろ開業医破綻状態にある。少くとも開業医がほとんど困難な状態にあるということが前提となつて、この新しい法人施設というものが設けられなければならないことになつているのじやないか。こういうふうに見られると思うのですが、どうですか。
  31. 久下勝次

    久下政府委員 そういうような言い方をいたしますとその通りでございまして、実はこの制度そのものといたしましては、その全部の改革にはなつておらぬと思いますけれども、ただ法人になるということだけで、多くの場合、今日の医業に関する重い税負担が相当軽減されるということは、結果的にあり得ると思つております。さつきもちよつと申し上げましたように、所得税の点からのみ申し上げましても、個人のやつておりまする病院が、この法律に基きます法人にかわるということだけで、相当多くの場合、税負担軽減になると考えておる次第であります。そういう意味合いから、この法人制度は、今日の医療問題の全部ではございませんけれども、先ほど申し上げた通り、その一部を解決する有力な手段ではないか。かように手前みそでございますが、考えておる次第であります。
  32. 渡部義通

    渡部委員 そうしますと、今日のような社会保障破綻とか、重税とかというような状態のもとでは、この個人的な開業医が、ほとんどこの任務を果すことが困難になつて来ているという状態については、認識されておるわけですか。
  33. 久下勝次

    久下政府委員 困難にというお言葉が、どの程度意味でございまするか、解釈の仕方も問題だと思いますが、私どもといたしましては、今日の医業経営というものは、個人経営でやつて参ります場合には、相当な税負担が課せられておりまして、医業経営がきわめて困難になつておることを認めておるものでございます。できるだけこうした方面におきましても、医業に関する税負担軽減をはかりまして、より適正な医療が、一般の国民普及をするようにすべきものである。かように考えておる次第であります。
  34. 渡部義通

    渡部委員 税負担だけではなしに、私たちの知つている医者たちのことに診療所経営しているような医者たちの話によりますと、健康保険なんかの、保險料の支拂い遅延の問題が、それを一番行き詰まらせる原因になつているということを、かなり訴えておるわけなんです。だから健康保險料が納まらないというような問題も、これは一つは産業の破壊しているというようなことから来ている問題とかかわりがあるわけで、現在のような、何と言いますか、大きく言つて、政治的な諸政策が行われておりますと、開業医さえも立つて行けないような状態にまで追い詰められてしまつておる。その結果開業医は、自分資金蓄積によつて国民の需要に応じ得るような形の施設を建設して行くことができない状態にあるということを訴えておるわけなんです。もちろん医者の方でも積極的にその施設を改良し、また地方においてさえも、一定の患者の収容ができ得るような施設をここに持ちたいという希望は持つておりながら、今申し上げたような事情からそれができない。こういう事実の上に立つて、今度の法人というものがつくられるのだとすれば、またいろいろ考え方が違つて来なければならないように私たち思うわけなんです。その点をはつきり、どういうふうに認識されておるのかということをお聞きしたいと思つたわけなんです。つまりもう一度簡單に申しますと、社会保險問題等々が重税の問題も同様でありますが、現在の政治的な諸政策と非常に深い連関を持つておる。従つてそういう諸政策破綻が、開業医さえもぼとんど行き詰まらせておるような状態で、開業医自身積極性を持つて施設の改善なり拡充なり、また国民の所要な状況に応じ得るような行為をすることさえも、いろいろな形で制約されておるという点、そういう点と考え合せないと、今度の改革考えられないじやないか、改正考えられないじやないかと思つておるわけなんです。その点はどうですか。
  35. 久下勝次

    久下政府委員 この制度につきましては、提案理由説明にもございまするし、またその後におきまして御説明を申し上げておりますように、現在、今御指摘になりましたような医療問題に関連をする各般の問題を、この制度によつて解決をしようというような、実は大理想でもないのでございまして、私どもか直接この法案考えました気持は、まず第一には医療法によりまして、病院につきましてもいろいろな制限が加わつて参りますし、しかも一方におきましては、今日の社会、経済の状態から申しますると、この制限を打開し、さらに進んで病院普及をはかるということが非常に困難であるというところから、それらの点を解決いたそうというのが、この制度考えました理由でございます。ただ御指摘のような問題につきまして、今日の諸制度に欠陥がありますことは、私どもも認めておるのでございます。これはその制度そのものの欠陥もございましようとともに、また同時に、今日のような経済情勢下におきましては、ある程度各方面におきまして忍ばなければならない限度もあるのではないだろうか。この辺のところを考え合せた上で、お答えを申し上げなければならないだろうと思うのであります。これは端的に開業医について申し上げますれば、先ほども私申し上げましたように、今日の開業医が、諸制度の欠陷なり、あるいは税金等のために、事実困つておりますることは認めておるのでございまするが、これはまたある程度までは今申し上げた通り、今日わが国の置かれております全般の状況のために、やむを得ない限度もあるのではないか、こう思う次第でございます。ただ何分にも人間の生命を預かる医業のことでありまするので、そういう意味合いにおきまして、私どもの立場から申しますれば、そうした諸般の状況にもかかわりませず、できるだけいい医療できるように、いろいろな方面から手を盡すべきであるというような気持を持つて、われわれ考えておるつもりであります。その気持がこの制度として、御審議をいただいております趣旨でございます。
  36. 渡部義通

    渡部委員 單に国民的な医療制度の改善、つまり現在日本が持つておるところの医療制度をフルに働かせるだけではなく、それを拡充整備して行くという見地から申しますと、私たち考えでは、社会保障の問題とか、重税の問題なんかが起り得るような條件を除去する。それを除去することが、同時に国民の健康さえも増進させるということになるわけなんです。そのことが根本だとは思いますが、そのことを一応おきましても、たとえば法人をつくるといつたところで、先ほど丸山委員からもそれに触れられましたように、非常に困難な事情が事実上あると思う。というのは、農村なんかに行きまずと、各農村、各部落に医者がないというどころではなしに、一村とかあるいは二箇村くらいで、一人の医者がてんてこ舞いしなければならないような状態に置かれておる。そういうところへ数人の医者が集まつて一つ病院をつくるというようなことも、事実上非常に困難じやないか。私たち農村に出かけてみて、実情から考えてそういうことが思われるわけなんですが、その点は、どういうお考えですか。
  37. 久下勝次

    久下政府委員 いわゆる無医村の解消のためには、おそらくこの制度はそう多くの役割を果すものとは考えておらないのであります。これはあくまでも個人経営でやつておりまする病院、あるいは個人経営でやろうという病院よりも、この制度を利用する方がぐあいがいいであろうというようなことを考えられる人々に利用していただきたいという制度であります。無医村の解消を解決するためには、私どもといたしまして、ただいま構想をしておりますところでは、いわゆる公的医療機関によつて、御指摘の問題を解決すべきであるというふうに思つておるのであります。これを具体的に申しますると、医者がいないというのは、これは今日の経済機構のもとから申しますれば、当然医師がそこへ個人の危險負担で参りましては、立つて行けないことだと考えます。そういうところに対しましても、しかしながら医療機関がなくていいというわけはございませんので、私どもはそういうところにつきましては、公の主体府県でありますとか、市町村でございますとか、そういうような公の主体が責任を持つて医師のない地域に病院なり診療所なりを普及するような考えを持つておるのであります。その気持がまた医療法の公的医療機関に対する補助をするというような対策となつて現われる次第であります。
  38. 渡部義通

    渡部委員 もつと具体的に申しますと、医者がないわけではないが、しかし一里四方ないし二里四方から、患者が一人の医者に集中的に治療を求めて来るというような状態が、農村におけるかなり普遍的な状態だと思うんです。そのような場合に、治療を求めて来る患者たちを、たとえば手術をする場合には、少くともすぐリヤカーにつけて引返すというわけには行かぬ。たとえば二、三日なり五、六日なりをそこで治療する必要があるという場合がしばしば起り得るわけなんです。しかもその医者個人的な経営をしている医者であつて、まあ自分のうちの座敷を利用して、その人たちを置くということが、農村にとつては非常に普通な状態でありまして、そういう場合に十何時間しか置けないとか、二十床を備えておかなければならぬということになりますと、医者の方も困るし、治療してもらうところの患者の方もまつたく困つてしまうというようなことが、普遍的な農村の事情であり、また避けがたい実情であると思うんです。こういう場合に一体どうなるのかということですが、その点はどうですか。
  39. 久下勝次

    久下政府委員 御質疑の点は、医療法の第十三條に規定してあります診療所における患者収容時間の制限に関してのお尋ねだと思います。私どもといたしましても、もちろんこの医療法の十三條が、現在のわが国の医療機関整備の実情のもとにおいて、全面的に適当な制度とは考えておらないのでございまして、毎度申し上げておりますように、この医療法十三條の規定を、完全に支障なく運用をいたしますためには、その反面におきまして、りつぱな設備を持ちました病院普及をはかる必要があると考えておる次第であります。そのために十三條の規定につきましては、適用の猶予期間もあるわけでございます。私どもとしては、医療法をやつていただきました後——その前からでございますが、引続き病院の整備につきまして努力をいたしておるつもりでありますが、財政の都合のために、今日までまだ十分なことができておりませんことをはなはだ遺憾に思うのであります。この点はしかしながら十三條の規定の円滑なる施行をいたしますために、当然その裏づけとして、御指摘のような地域に対しましては、病院普及、整備をはかるという措置をとるべく、今後とも努力を続けたいと思つておるのであります。
  40. 渡部義通

    渡部委員 病院普及、整備を農村にまで普遍的に行われるということは、もちろん農村にとつて非常に望ましいことではあると思うのですが、そういうことがいつごろできるのか。実際問題としまして、現に農村にある医者は、御存じのように医院であると同時に、座敷を利用しての病院でもあるという形であり、これが農村での今日におけるまあ必然的な形態であり、同時にまた農村の需要に応ずる一番妥当な形態である。こういう状態解決する場合に、この法案適用されてしまうと、農村の医者も、また農村の患者も、非常に困る状態になるのじやないか。医院の場合にはそうするとそれはかまわないわけですか。
  41. 久下勝次

    久下政府委員 いつごろ病院普及ができるかということにつきましては、私ども医療問題を担当いたしておる者といたしましては、一日も早く私どもの一応持つておりまする計画の実現を期したいと考えて、今後とも、先ほど申し上げた通り努力をいたすつもりであります。ただあとの方のお話の中にございました農村の実情では、今日のような医療機関状態でよろしいのであるかという点につきましては、私ども若干意見を異にするのでございまして、農村におきましても、私どもとしてはできるだけ今日の新しい医学の恩惠に浴するように、そのためには設備不完全な診療所で、收容、治療をやるということを一日も早く解消して、正規の設備の整つた病院におきまして、完全な医療のできるようにしたいと念願しておる次第であります。そういう意味におきまして、今後とも十分な努力を続けて参りたいと思います。
  42. 渡部義通

    渡部委員 農村の地域にまで、一日も早く近代的な設備を持つた病院らしいものができるということの望ましさについては、これは私たちだけではなくて、全農村の切望にたえないところであるわけなんでありますが、しかし事実上そういうものがいつできるかわからない。ただ最善の努力を盡すという單に希望的なことだけでは、農村の医者の中に現に起きている問題、農村の診療所あるいは現に医院に起きている問題について、農村事情が避けがたくそれを要求しておる問題を解決することはできないのじやないかと思う。そういう場合にこの法律適用されると、農村の医者も、農民も困つてしまうのじやないかということ、もう一つはたとえばその場合に三人医者が集まつて法人をつくるということになりますと、実際問題として、おそらくは数里の離れた所にある医者たちが寄り集まつて法人組織による施設をつくらなければならぬ。そういうことになりますと、そこまで通つて行く農村の患者たちが、一体どういうふうな状態におかれるということを考えておられるか。またどういうようにそれを解決されるのかという点、こういう点をひとつ御説明願いたい。
  43. 久下勝次

    久下政府委員 私は今まで、ただいまの御質問の点は、すでに決定をしておりまする医療法第十三條の規定の問題としてお答えを申し上げておつたのであります。ただいまの御質問を伺いますると、今御審議をいただいております医療法一部改正法案についてのお話関連をさせてのお話のようでありました。この点は先ほど苅田委員の御質問お答えを申し上げました通り医療法人になるかならぬかというようなことは、全然これは一般の人たちの自由であります。病院をやろう、あるいは診療所をやろうというお医者さんの自由意思でございまして、農村の地帶におきましても、この法人組織によつて病院なり診療所運営して行く方が都合がいいと思われる方々に利用していただく制度であります。直接それを強制するとかなんとかいうことはございませんので、ただいま具体的に御引例になつたような問題とは、この改正法案は直接の関連がないように理解をいたすわけであります。
  44. 渡部義通

    渡部委員 これはまた非常におかしなことになると思うのです。もしそのように、この改正によつて成立するところの、新しく附加された法人制度というようなものが、やつてもいい、やらぬでもいいというようなものであつたとするならば、現にそれをやり得る人たち、あるいはやることを有利と感ずる人たちにとつては、すでにこのような形での施設が行われようとしておる。法人という名前をとるかとらぬかということは別として、それが行われようとしておる。またそれがなされ得ない所では、これができると非常に困るということで、医者たち大学教授の人で医者をやりたい、開業しようというような人たちの問にさえ、私たちはそういう話を聞いておる。この両面を考えてみますと、こんな法律はできてもできなくても同じだというようなことになりはしませんか。
  45. 久下勝次

    久下政府委員 私どもは、この制度を利用していただければ便利ではあるけれども、この制度のあることが弊害があるというふうには、実は考えておらないのであります。先ほどもちよつと申し上げましたように、税の関係におきましても、あるいはまた資金の集積というような面におきましても、この制度を利用する方が、利益こそあれ、この制度を利用することによつて不利益をこうむるとか、あるいはこの制度を利用しない人に不利益があるというようなことはあり得ないと考えておる次第であります。
  46. 渡部義通

    渡部委員 私、病気のことはよくわかりませんが、診療所には同一の患者を四十八時間以上置く、つまり二日間を越えて置いてはならないというような規定がどうして必要なんですか。このことは、私が仙台へ行きましたときに、仙台の東北大学の教授で、同時に小さい診療所経営しておる人が問題にしておりましたのですが、どういう理由からこういうふうな制限を設けられたのですか。
  47. 久下勝次

    久下政府委員 医療法第十三條の規定を設けました根本的な考え方は、従来のわが国の制度から申しますると、收容ベツド十以上を持つておりますものを病院と称し、九未満の收容施設、あるいは收容施設のない医療機関診療所というような区分をいたしておつたのでございまして、病院診療所とには、その間においてそれ以上の差異は何もなかつたのでございます。しいて申しますれば、病院では必ず薬剤師を置かなければならぬ。診療所の場合には医師が三人以上常時勤務する場合、薬剤師を置かなければいけないというような規定がある程度でありまして、本質的な区分を設けておらなかつたのが従来の制度であつたのであります。一昨年御審議をいただきました新しい医療法で十三條のような規定を設けました趣旨は、この従来の制度を二つの面から改めたのであります。その一つは今日の医学の進歩の状態から考えまして、患者を收容して、いわゆる適正な医療をしますためには、相当な医療器械、その他の設備を必要とするものでございます。そういうような設備を整えたものでなければ病院でないというようにいたしますためには、これを経営的の面から考えましても、ベツドの十ということではむりがありはしないか。ベツド二十を整えて、そうしてこれを経営して、一ぱいの患者があるような所において、初めてそうした設備が整えられるのではなかろうか。こういうことを考えまして、病院の規格として、ベツドの数が十でありましたものを、二十に上げましたわけでございます。同時にまた診療所について十三條の制限を設けましたのは、それを裏から見ましたわけでございまして、診療所につきましては、新しい医療法は何ら病院のような構造、設備の制限を設けておらないのであります。そういうような法律上の制限のない所におきましては、必然的に今日の医学の進歩の状態から申しますれば、いわゆる適正医療、完全な医療はできないものである。それをできるものとして患者を牧容するところにむりがある。そこで診療所におきましては、患者の收容にある種の制限を加えなければならないだろうという考え方が、四十八時間制限というようなこととなつて現われておるのであります。従いまして、あくまでも適正な医療を、適当な設備の整つておる所で施すようにしたい。反面設備のない所で、適正な医療を行うことができ得ないものに対しては、制限する気持を明白にいたしますために、この規定が設けられておるのであります。
  48. 渡部義通

    渡部委員 そうすると四十八時間以上を越える場合には、どういうふうな処罰があるわけですか。
  49. 久下勝次

    久下政府委員 医療法第十三條の規定に違反いたしましたものは、医療法第四十四條第一項の規定によりまして、五千円以下の罰金に処せられることに相なつております。もちろんこれは申すまでもなく、四十八時間制限の原則につきましては、十三條に但書がつけて、除外例があります。それらの規定にもかかわらず、違反したということになるときは、もちろん当然でございます。
  50. 丸山直友

    丸山委員 ただいまの四十八時間問題の御答弁の中に、ベツド数が二十以下の診療所施設医療に不適当なものであつて、それでは完全なる医療は行い得ないというお話を、ただいまお伺いしたように思いますが、これは間違いなくそうお考えなのでございましようか。
  51. 久下勝次

    久下政府委員 言葉じりをとらえて恐縮でありますが、不適当ということを申し上げたつもりはございません。今日の医学から申しまして、いわゆる完全なと申しますか、適正な医療を行いますためには、いろいろな医療器械、その他の設備を必要とする。そういうものがないところにおきましては、そうした治療ができないということを、建前として申し上げたにすぎないのであります。医療機関として不適当であるというようなことは考えておりません。
  52. 丸山直友

    丸山委員 ちよつと、さつきの言葉はそういうように聞こえたのでありますが、しかし、私ども現在了解しておりますところでは、ベツド数から申しましても、総計二十以下のベツド数の方が相当多いと考えております。数はただいま覚えておりませんが、日本の医療に関しましては、それの果しておる役目は相当あると考えるのであります。それに対して取締りが全然ないような先ほどお話でありましたが、私はあると思います。病院の規格としての取締りはないかもしれませんが、当然患者を收容することに関する取締りというものは、規格があると考えております。かつそういうベツド数の少いものは、猶予期間がございまして、すでに現在收容することを認められておるわけであります。これがいかぬというようなお考えであるということになりますると、日本の将来の医療というもの、それから医療の実態と申しまするものが、公的医療機関あるいはその他の二十以上のベツドの数をもつて完全に果される日はいつの日かわからない。そういう場合に、猶予期間を延長するというお考えにならぬと、医療機関の実態というものが、現在よりきわめて憂うべき状態に陷ると考えますが、いかがですか。
  53. 久下勝次

    久下政府委員 患者を收容いたしますための制限のあることは当然でありまして、たとえば医療法の第二十一條に、第一号から第十五号まで規定がございまして、病院に関しては、「左の各号に掲げる人員及び設備を有し、且つ、記録を備えて置かなければならない。」となつておりますが、こういうような制限が診療所に対してはないということを申し上げておるのでございます。お話のように、私ども自身といたしましても、病院の整備ということが大事業であることは十分承知いたしておるのであります。大事業ではございまするけれども、しかしながら、かような制度を御決定をいただきました以上、私どもの立場から申しますれば、当然この制度の円滑な運営のために、医療法全体として期待をしております精神を実際の面に現わすように努力をする以外にはないと思います。先ほど来同じことを申し上げて恐縮でありまするけれども、私どもの現在の立場といたしましては、忠実にこの医療法の精神を生かすように、あらゆる面に努力を重ねる以外にはないと思つております。
  54. 丸山直友

    丸山委員 その点につきましては、この前の議会の東局長の答弁と全然違つておると思います。東局長に、私がその当時四十八時間問題について質問をいたしました場合に、こういうことを申し上げておつたのであります。四十八時間以上置けないということのために、また四十八時間以上置ける施設が不足なために、患者を手術をするというような場合に、入院をさせることができないから、今の医者はやむを得ず患者の自宅において手術して、その場所に寝かしておくというようなことが行われておる、こういうようなことは、たとえいかにその施設があなた方の御理想には合わないといえども、それはとにかく病院内におけるところの收容施設なのであります。また医者もそのそばについておるのでありますから、患者の自宅において行われるよりも、必ずよく医療が行われましよう、そういうような不備なところで危險を冒すおそれがあるから、四十八時間問題について何か御考慮が煩わせないかという質問をしたことがあるのであります。そのときに東局長は、実際医療施設が法によつておらぬでも、実際に即した取締りをする方針であるという御答弁であつたのであります。ただいまの、医療法の建前をどこまでも通すという御答弁とは、若干違つておると私は考えるのでありますが、いかがでありましようか。
  55. 久下勝次

    久下政府委員 医務局長のお答えを申し上げたことと、私が申し上げていることとは、違つておらないと思つておるのであります。ただいま御引例になりましたような場合に、医務局長がそういうふうにお答えいたしましたかどうか、これは調査をしてみなければわかりませんが、御引例は、問題を裏から取上げられているようでございまして、それだからといつて医療法の十三條の運用については適当に手心を加えるのだというようなことを医務局長は申し上げたのではないと私は信ずるものであります。私どもといたしましても、もちろん、十三條の制限がありますために、いわゆる往診手術というようなことが多くなることを少しも望んでおらない。そういうようになりますことは、決してまた医療法十三條の精神でもないのでございまして、再々申し上げておりまするように、そういうむしろ逆の面、病院整備普及をはかるということについて努力をいたしたいという意味で、医療法の精神を忠実に実行するように考えたいというふうに私は申し上げたのでございます。
  56. 丸山直友

    丸山委員 ただいまの御答弁によりますと、もう来年その期間が迫つておりまするが、来年までに医療機関を整備して、国民医療に支障のないことをやれるだけの自信を持つて、そういうことをおつしやつておられるのか。伺います。
  57. 久下勝次

    久下政府委員 来年の十月二十六日でありますかをもつて期限の参ります地域は、逆に申しますると、医療機関整備普及が十分である地域ということになるわけでございます。具体的にこの辺の地域をどうするかということについては、正式に私どもとしてまだ方針を決定しておるわけではございませんけれども、大体の考え方といたしましては、第十三條を全面的に施行してさしつかえがないというような、すなわち言葉をかえて申しまするならば、病院普及は十分であるというような地域は、わが国におきましては、きわめて限られた地域ではなかろうかと思つております。その他の、病院普及が十分でないという地域につきましては、この附則の規定通り、五年間の猶予期間ということになりますが、まだ今後約三年間の期間があると思いまするので、もちろんその間に、はたしてできるかどうか自信があるかとおつしやられますと、かりに今後三年ありましても、非常に困難だと思つております。困難だからと申しましても、私どもは一応與えられました任務に向つて、今日の段階においては努力をするということを申し上げる以外に、お答えのしようがないわけであります。
  58. 苅田アサノ

    苅田委員 私、関連してお伺いいたしたいのですけれども、ただいま御説明になつておるようなりつぱな病院が、日本の必要とする各農村に普及するということは、私ども非常に望んでおるわけなんですけれども、実は、それはやはり突如としてできるものではなくて、それにはやはり実現する方法、過程というものがあるわけなんで、大体私どもが今ちよつと考えましても、それには国家の方でうんと予算をとつて、国の力でもつて適当な所に、必要な所に全部そういうりつぱな総合病院をつくるか、そうでなければ、今現にあるところの診療所なり、個人開業医なりを、たとえばそういうふうに発展できるように、税金の点を非常に緩和するなり、あるいは諸施設に対する必要な補助金を出すというようなことをして、そういうふうに向けるか。今日そうした実際の準備活動がされない限り、いくら望んでみても、それは不可能だと思います。そういう準備活動について、あなたの方がほんとうに三年先なり四年先なりにするのなら、もうやはりやつていなくてはだめなわけなんですが、そういうことがどういうふうに行われているか。それをしないで、ただ待つていたのでは、これは全然できない。何年たつてもできないということはわかつているわけなんで、そういう点について、どういうふうな準備的な活動をやつているか。国の予算については、ことしはとれないけれども、来年はこれだけとる、それでなければ、現在の開業医に対しては、税金なり、そのほかの補助なりに対して、どういうような考慮をして、それをそういう病院にまで育て上げるというような、その状態についてお聞きしたいと思うのです。
  59. 久下勝次

    久下政府委員 医療機関の整備につきましては、まつたくお話通りでございまして、むしろ私どもといたしましては、従来私どもの努力が十分でなかつたことを申訳なく考えておる次第であります。ただ最近の実情から申しますると、国庫補助制度が、予算の上から申しましても、きわめて少額でありまして、この点につきましては、お話通りどもとしては、この医療機関の整備をいたしますためには、国庫補助によつてやる以外には、十分な効果を上げ得ないと考えております。従いまして、今日すでに実は計画を立てまして、一般病院におきまして、現在病床数が十五万九千八百床になつておりまするが、目標の病床数を二十三万五千九百床に増床したい。すなわち、今日に比較いたしまして、七万六千百床ぐらいは増床したいというような計画を持つております。そのほか伝染病院、結核療養所、精神病院、癩療養所等、各種医療施設につきましても、一応全面的な計画は立てておるわけでございます。これは医療法に基きます。医療機関整備審議会の議決も経ておりまするので、お話通り国庫補助の実現につきまして、十分な努力をいたしたいと思うのであります。  なお、この際つけ加えて申し上げたいと思いますことは、私どもは、いわゆる公的医療機関の精神というものを、ここ数年来各方面に呼びかけておるのであります。そのためのみとは存じませんけれども、最近の実情におきましては、各都道府県、市町村などで、続々と病院建設の計画が出て参りまして、国庫補助が十分ございませんけれども、それぞれ各府県市などにおきましては、自力をもつて起債で病院の建設をしたいというような話が続々と出て参りまして、私どもの方としては、自治庁に対しまして、あつせんの労をとりつつある次第であります。これは、少くとも三、四年前までは見られなかつた状況でありまして、私どもは、各都道府県等が、そうした面に対しまして非常な具体的な努力を拂われるようになりましたことを喜んでおる次第であります。この上、先ほど申し上げました計画によるような医療機関整備の補助金がとれますれば、おそらく相当急速に整備が行われるのではないかというふうに考えておりまして、この点は、国会の皆様方におかれましても、御鞭撻、御協力をいただきたいと思つておるような次第でございます。
  60. 苅田アサノ

    苅田委員 どれだけの病院がいるという計画は、もちろんけつこうなわけなんですけれども、これはやはり、ほんとうに実施しようとすれば、何年計画かで、それが全国的に、各農村にできるような計画を立てて、もうすでに予算についての努力というふうなことも当然されてなければならないはずなんですけれども、そういうことについては、ただその計画だけで、それをどういうふうに実現するかということは、ただいまお話なつたように、ただ府県の自発的なものを奬励するという点で、実際にそういう立案をされている本省としては、予算に組んで、どういうふうに実現するということは、今日までされていないと思うのであります。そういう点について、あなたの方で、最もはつきりした見通しがあるなら、来年度にはこれだけのものを組んで、来年度にはこれだけのべツドができるというようなものがあれば、さらにおつしやつていただきたいと思うのです。
  61. 久下勝次

    久下政府委員 先ほど申し上げました数字は、これは金額にいたしますると、相当な額に上りまするので、私どもとしては、これを五箇年計画くらいにわけて予算の要求をいたすほかはないと思つておる次第であります。今日のところ、御承知通り医療法に基きます補助はございませんけれども社会保險の、特に国民健康保險の直営診療所の補助といたしましては、昨年もことしも、二億五千万円程度のものが計上されております。これによりまして、いわゆる公的な医療機関が増しつつあることも事実であります。その程度で満足するわけではありませんが、今申し上げたような計画で進みたいと思つておる次第であります。
  62. 苅田アサノ

    苅田委員 そうしますと、あなたの方でも、大体規定してあるような猶予期間の中で、この全部を実現するということは、もうすでに考えておられないわけで、これは期間が来れば自然に延長するというお考えのように、ただいまのお言葉の中にも出ているようですが、そういう程度のものなんですね。
  63. 久下勝次

    久下政府委員 余裕が三年きりないのに、計画が五箇年であるからというので、そういうふうにおとりになつたかと思うのですけれども、実は、一般病院の病床拡充の計画は、ひとり法十三條の規定解決ということだけを考えておるのではないつもりであります。もう少し構想を大きく持ちまして、整備計画を立てておるわけであります。その辺のところに期間的なずれがあると思います。私どもとしては、この法十三條の、今後三年間の猶予期間のうちに整備をいたすべきものにつきましては、この三年間で大体行き得るという考えを持つておるのであります。と申しますのは、具体的に数字で申し上げますると、今日の状態で、いわゆる診療所が持つておりまする收容ベツドの数は六万ベツドでありまするが、私どもの調査いたしましたところによりますると、現実にこれが利用されておりまするのは、約三分の一の二万ベツドであります。従いまして、きゆうくつに考えますれば、二万ベツドを、適当に病院をもつてかえれば、さしあたりは支障がないという計算も出るわけであります。もちろんこれは机上の計画にすぎないのでありまして、具体的な地域の状況に応じましては、地理的な関係その他から、その程度では足りなくて、相当の余裕を持つた増床をいたさなければならないと思います。先ほど七万六千ベツドを五年間でやるというふうに申し上げましたが、このほかに、またその他の特殊病院もあるわけでありまするから、それらを五箇年計画でやるということが、私どもの計画通り実現をいたすといたしますれば、この計画完成を待たず、三年の期間で医療法十三條の問題を解決する方にまず重点を置いて実行するようにいたしますれば、大なる支障なく実施できるのではないかという考えを持つておるのであります。
  64. 青柳一郎

    青柳委員長代理 他に通告者もありますから、関連の範囲でしていただきます。
  65. 苅田アサノ

    苅田委員 構想は少し大きな構想を持つてけつこうなわけですけれども、問題は、三年たつてもそういつた構想の点が十分に生かされない。あなたのおつしやつたように、ベツドは、机の上では二万床余つている、三万床余つていると言つてみても、ベツドだけあれば、ちやんと村でほんとうに診療できる設備が全部整うわけでもなければ、そういうことを、あなたも机上というふうに言つておいでになるのだから、そういうふうになつて来れば、もうそういうものが三年間あれば十分にできて、後に医療法についての改正がそのままの形で行われるという、そういう準備ができているようにも思わないわけなんですけれども、そうした場合には、これはやはり、事は人命にかかわる問題で、そうかといつて、さつき言つたように、手術したての人間を自宅に持つて帰すわけにも行かないのだから、そういう点については、あなたの方でまた実情に即したような法案改正考えておられるわけなんでしようか。それとも、そうでなくて、いやが応でも、その三年間にはそういうことを何か行われるという立場で、具体的な準備がされておるかどうかという点ですね。その点だけ開かしていただきたい。
  66. 久下勝次

    久下政府委員 ただいまの点は、先ほど丸山委員のお尋ねに対しましてお答え申し上げた通りでございまして、私どもの立場におきまして、もしもできなければという、仮定を置いた結論を申し上げますることは、お許しをいただきたいと思います。私どもといたしましては、とにかくこの法律を與えられまして、これを実施する任務を負つておるわけでございます。私どもといたしましては、忠実にこの医療法の、與えられました方針を実行するために、万全の努力をするということを申し上げる程度で、お許しをいただきたいと思います。
  67. 青柳一郎

    青柳委員長代理 それでは次に、田中委員
  68. 田中元

    田中(元)委員 久下次長に承りますが、医療の定義と申しますか、医療法人医療の定義、医療ということの本質をちよつと御答弁願いたいと思います。
  69. 久下勝次

    久下政府委員 医療という言葉の定義についてのお尋ねでございますが、これは実は、医療法制定のときにも、この定義を法律の中に書くべきであるということで、実は百方苦心をしてみたのでございまするけれども、どの定義を書いてみましても、正確にその内容を表現をすることが困難であるということで、これは実は、一般的に常識的な、医学常識をもつて判断をする以外にあるまいという結論になりまして、その定義は掲げてないような実情でありまして、今ここで私が、私の考えを申し上げましても、そこにはいろいろと間違いの起る心配もございますので、この程度でひとつお許しをいただきたいと思います。
  70. 田中元

    田中(元)委員 憲法二十五條かによりまして、当然われわれは、文化的にして健康である一つの権利を持つている。そういたしますと、病気に対しては、国民は当然治療してもらう権利を有しておるのだと、こういうふうに私ども考えておりますが、この点は、厚生省もさように考えておられますか。
  71. 久下勝次

    久下政府委員 治療してもらう権利ということが、申せますかどうかわかりませんけれども、申し上げるまでもなく、医師法、歯科医師法の中におきまして、医師歯科医師は、正当の事由がなく診察、治療の求めを拒むことができない、こういう規定がありますることは、疾病、傷痍というものが人間の生活の上においてきわめて重大な問題であるというために設けられた規定だと考えます。それを裏返して、国民の権利であるということが申せるかどうか存じませんけれども、少くとも私どもは、その規定のみでも、医療を受ける要求ができるということは、言えると思うのであります。ただ御引例になりました憲法の規定から申しますれば、確かに権利を有するというふうに書いてありまするし、またその意味におきましては、生活保護法等におきまして、自力をもつて医療費の支弁のできない者につきましては、公の力でこれを助けておる。そういう意味合いから申しますれば、自分医療費の支拂いができない者であつても、そうした制度によりまして、医療を受けることができるということになります。これなどは、あるいは権利であると申してよろしいかと思います。
  72. 田中元

    田中(元)委員 そういたしますと、医業並びに歯科医業は、單なる医業ではない。つまり、国民全般の健康を担当しておりますところの、国民生活に不可分な業種であることは当然だと考えますが、この点はいかがですか。
  73. 久下勝次

    久下政府委員 お話通りだと考えます。
  74. 田中元

    田中(元)委員 今日までの課税の問題に関しまして、医業、歯科医業に対する課税方法は、今日適当だと思つておりますか、思つておりませんか。
  75. 久下勝次

    久下政府委員 課税方法というお言葉でございますが、私、課税技術のことは詳しく存じませんですが、少くとも、結果として現われておりまする面におきましては、これを全面的に不当だと申すことはできないと思います。ただ少しむりな点がありはしないか。今日の医業に対する課税の実情は、医業の今日の実情から申しますると、相当むりがある。これを具体的に申しますれば、たとえば今日のような状況でございますると、日進月歩の医学に対応いたしまして、いろいろな設備を充実したり、あるいは医療機関の衛生的な状態を維持するというようなことをいたしますために、非常に困難な点がございます。そういう点、今日の税金をこのようにとられておるのでは、そういうことが実際に行われない実情にあるというような意味におきまして、今日の課税の実情は不適当な状態であるというふうに考えます。
  76. 田中元

    田中(元)委員 厚生省当局は、今度地方税の附加価値税等において、医業に対して農業、林業は、これは免税になつているのです。非課税として課税の対象になつておりませんが、医業を対象にしないという問題について御協議になつたことがありますか。
  77. 久下勝次

    久下政府委員 地方税法特に附加価値税につきまして、地方自治庁から正式に厚生省意見を求められました際には、私どもとしては、まず第一に医業に対する附加価値税を免除してもらいたい。できなくても相当額の減税になるような処置をしてもらいたいという意見を正式に出しておきました。税率の点では若干他のものよりも低くなつておるようでありますが、私どもが第一義的に希望いたしました意見は、結果として取入れられなかつたわけであります。
  78. 田中元

    田中(元)委員 たとえば固定資産税におきましても、病院としてベツドを持つておるとか、あるいは医療器械等は当然必要欠くべからざるものでございまして、そういうことからも、この医療法改正の中には、これを課税対象から除くということが抜けておりますので、この医療法人規定の中に、これを一つつけて行つたらどうかというふうに考えるのですが、この点いかがですか。
  79. 久下勝次

    久下政府委員 医療法人について、この法案の中に税金の減額、あるいは免除の規定を設けるかどうかということについてのお尋ねと思いますので、一般的な問題としてお答えをさしていただきたいと思います。この点は実は基本的には若干私ども疑義を持つものでございます。と申しまするのは、医療法人になりましても、個人経営の場合と別段その経営上の問題については、特別な差異を考えておらない次第でございます。従つて医療法人なるがゆえに、特に一般的な減税、免税の規定を設けるということは、そうした精神からいかがであろうかと考えておる次第でございます。減税、免税の問題は、私が先ほど申しました通り、いわゆる私企業としての私企業という言葉は悪いかもしれませんが、私企業としての医業全般の問題として考えて参りたい。こういうふうに思つておる次第であります。
  80. 田中元

    田中(元)委員 まず医療法人をつくります二つの大きな目的は、医療機関普及と同時に、税金問題だというふうに、先ほどから政府委員は述べておるようでありますが、そうすると税金問題は大した問題ではなくて、要は医療法に伴うところの医療機関の整備ということが、この法律医療法人の主体として考えてよろしいのですか。
  81. 久下勝次

    久下政府委員 医療法人制度を設けます根本の理由は、一つ医療機関を整備するために、資金の集積をしなければならない。その方法として、この制度はぐあいがよくないかというのが一つであります。同時にまた医療機関の永続性と申しますか、個人経営病院でありますると、経営者がなくなりましたあと、これを相続いたす者がありますと、相続税を相当とられることになるのであります。これを法人化しておきますれば、そういう問題がなく、医療機関が、長く病院としての機能を果し得ることになつて国民医療の上に利益であろうというようなことが考えられたのであります。税金の問題も、もちろん考えないわけではございません。先ほど他の方の御質問お答え申し上げました通り医業に関する税負担軽減をはかることを主眼として、この制度をつくつたということではないのです。ただ結果として、今日の税法の建前から申しますると、一般的に、多くの場合に、この法人格を取得した方が、税負担が軽くなるだろうというふうに考えておる次第でございます。
  82. 田中元

    田中(元)委員 そういたしますと、現段階においては、率直に申しますと、この医療法人に結びついて、お医者様方が法人をつくる場合、まず税金の問題が中心じやないかと考えております。自分の実力でやり得る場合とか、あるいは三人かたまつてやるとかいつた場合に、お医者さんの社会には、いろいろ問題があると思うが、要するに医療法人ができる魅力というものは、率直に言つて私は税金の問題が、主体じやないかと思う。しかし私は医療法人をつくつて税率を下げて行くだけということには反対でございます。少くとも医療全般にわたつて厚生省があらゆる部門にぶつかつて医療の適正をはかるために、税金の問題を解決して行かなければならないとはと思うが、医療法人ができれば、税金が下つて来るという考え方は、私はやめていただかなければならぬことと考えております。同時にこの附加価値税の問題につきましても、固定資産税の問題につきましても、医療全般にわたつて、この際厚生省当局、各所管庁、並びに国会等においても、徹頭徹尾闘わなければならないと考えておる次第でありますが、少くとも医療法人を基本的な本則的な問題として、ただいま言つたような医療制度の整備という問題が中心であるならば、私はもう少しこれは具体的な方法があるのではないかと考えております。たとえば先ほど来御質問があつたようでありますが、十三條の、四十八時間の問題だけでなく、少くとも医療の本質は、これはわかりきつておるのでありますが、患者が主体であります。その意味において、最もよい医療機関をつくるために、この医療法人というものも、私はもう少し考え方があるのではないかと考えております。私は質問をこれで打切りますが、医療法人の性格が、もう少し何か近代的と申しますと語弊がありますが、少しく何か法人という言葉にとらわれまして、あたかも税金の問題だけに触れて来るのではないかというような考え方は、一掃していただきたいと思います。どこどこまでも法人ができることを助長するのか、あるいはただ法人ができるという法律をつくつておくだけかという点についても、私は厚生省がはつきりした何か意思表示があつてしかるべきじやないかと思う。法人をつくることがほんとうなのか、法人をつくることが医療機関の整備になるのか、向上する方法なのか、あるいは法人にする法律をつくつて、大いに何かのときの便宜のために法律をつくつておくのかという点を、私はもう少しはつきりしておく必要があるのではないかと思つております。この法案は、何か届出があれば、これを法人として行くという組織上のものなのか、あるいはこれをつくれば医療設備の向上をして行けるものなのかという点について、はつきりした御答弁を願いたい。かように考えております。
  83. 久下勝次

    久下政府委員 この医療法人制度を設けまする趣旨は、今お話にございましたように、まず第一には、今日の実情から考えまして、この法人制度をつくることによつて医療機関の整備がはかられるであろうということを考えておるのであります。同時にまたいわゆる医業あるいは歯科医業が、この法律を制定することによりまして、明らかに営利的な事業でないことが明白になると思うのであります。これは何人といえども医療機関経営する者につきましては、この法人制度を利用することができるということにしてありますとともに、また反面におきまして、本法案の第五十四條によりまして、医療法人の非営利性を明白にしておるつもりであります。そういうことが、この法人制度をつくります方針として相当はつきりした点であると考えております。
  84. 田中元

    田中(元)委員 医療法人をつくる者は営利でなくて、一般の医業をやつておる者は営利でやつておるのだというように解釈されますが、そうでなく、医療全体が営利ではないと考えてよいのではないですか。
  85. 久下勝次

    久下政府委員 結論としてはお話通りであります。ただ今日の医療法規定から申しますと、法律の表現の仕方が、営利目的とする者には前項の許可を與えないことがある。こういう表現の仕方をしております。逆に、りくつを申しますれば、それは許可をすることもあるぞというような意味にとれるように表現してあるのであります。私どもとしては、再三申し上げておりまする通りに、実際の病院診療所開設許可いたします場合には、営利目的とする者には、医業の本質から申しまして、許可を與うべきでないというような運用上の方針をとつておるのであります。この医療法人は、その考え方をさらに剰余金の配当を禁止するという制度によりまして、明白にしたもの、裏づけたものというふうに考えております。従つて医業一般が営利事業でないということをはつきりする一つの方針が明白になつたものと考えております。
  86. 青柳一郎

    青柳委員長代理 他に御発言ありませんか。御発言がなければ、本日はこの程度にとどめます。次会は公報をもつてお知らせいたすことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十分散会