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安田政府委員 シヤウプ勧告で社会保障税云々と言
つておりますのは、実は税をつくるということよりも、問題は現実各種の保險がばらばらの
機関で徴収されており、しかも
適用の範囲が違い、かつ料率等につきましても個々別々であるというところをなるべく一本にして、税務署でまとめてとりたい。それには総所得に対して所得税をかけますから、そうい
つたふうに総所得に対しましてまとめて源泉課税をしたらどうか。それで徴収官庁も
大蔵省でや
つたらどうか。それからもう
一つは課税の標準でございますが、
大蔵省でや
つておりますところの所得税というものは、御
承知のように総所得主義でございます、それから私
どもの
健康保險でありますとか、年金保險と申しますものは、標準報酬というものをつく
つておりまして、たとえば五千六百円でありますと、五千五百円の線で何級とか、あるいは六千三百円であれば、六千円の方へ近づけまして何級とか、十九階段にしておる。そういうものを一本にしたらどうかということであります。これはしごくもつとのな
意見なのでありまして、もし
大蔵省でそういうふうに簡單に源泉徴収のときに全部料率を加えましたものがかけ得るならば、非常に便利にな
つて来る。そうい
つた手続き上の点がシヤウプ勧告のねらいなのであります。ところが実際の状況を見ますと、現在の社会保險は各種各様でございまして、その沿革から見ましても内容から見ましても、非常な相違があるわけでありまして、本質に手をつけないで、簡單に徴収だけを一緒にやるということは非常にむずかしく、かえ
つて混乱を起しはしないかという問題がある。手取り早い話をいたしますと、たとえばある一人の事業種が
健康保險につきましても、年金保險につきましても、あるいは失業保險につきましても、すべてのものを所得税と一緒にとるとり方を是認するといたしますと、それは源泉徴収で申告主義になります。申告して源泉でと
つてそれを税務署へ納める。税務署の方には、最後に一年分の総計をまた書いて送るというようなかつこうになるのであります。ところが私
どもで現在や
つておりますのは、その場合に、そういうふうに徴収いたしました保險料というものと
給付というものが、これはリンクしておるのでありますが、その
給付と申しますのは、たとえば傷病手当金をやるとか、あるいは養老手当金をやるとか、あるいは下付年金をやるとかいう場合に、その人が幾ら納めておるかということが基準にな
つておる。フラツトでも
つて多額にポツと出すのでなくて、幾らこの人が納めておるかということが基準になるのであります。従いまして幾ら納めておるかというを確認しない限りは、
支拂いができない。そういたしますと、今の場合には結局
大蔵省に幾ら納めたがということを月別に、各人別に帳簿をとりまして、その帳簿を保險官署でありますところの私
どもの方に送
つていなだく。それによ
つてわれわれの方で一々毎月直してい
つて、いざ
支拂いよいうことが起きた場合に、支
拂つて行くというやり方をしなければならない。これはたいへんな手数なのです。そういうことを
考えますと、ただちにやることについては非常に問題がある。こういうことなのであります。なおまたシヤウプ勧告では、いろいろな税を一本にしろということでありますけれ
ども、労災保險は御
承知のように料率がばらばらにな
つている。
健康保險につきましても、
健康保險組合というものがございまして、これは各事業体ごとに組合をつく
つておりまして、それに対する料率がまた違うのであります。そういうようなめんどうなものはしようがありませんから、
大蔵省の案でも一応のけてしま
つたわけであります。全部一緒にできないから、それで労災保險をのける、共済組合の保險をのける、それから健庸保險組合をのける、こういうわけであります。そういたしますと、
大蔵省でとるにつきましても、現在の案でありますと、六種の違
つた税率にな
つて来るわけであります。つまり
健康保險に入
つているのでも、
健康保險組合は
健康保險料でと
つて行きます。ところが
政府官署の方ではこれは税でと
つて行く。そうすると、今問題になりますのは、年金保險と
健康保險と失業保険でありますけれ
ども、失業保險と年金だけしか入
つていない者もある。三つ入
つておる者もある。それからまた今度は同じ
政府官署の
健康保險の中でも、市町村の職員のように、
健康保險だけ入
つているけれ
ども、年金も失業保險も入
つていない者もある。またその中に任意継続と申しまして、自分はやめたけれ
ども、しばらく入
つておりたいというのがございます。それから年金のごとく自分はもうやめたけれ
ども、十年もや
つたのだからあと十年間は、自分で保險料を拂いますから、入れてくれというのもある。非常にばらばらにな
つて来る。そういうばらばらのこまかいものをみな保險料の対象に残しておいて、大きいものだけを三つ四つにわけて保險料をと
つて行くことは、大して意味がないのではないか、そういうようなこと。それからまた保險料の徴収を総収入主義にいたしまして、標準報酬にいたしませんと、
給付のときに非常にめんどうなことがある。たとえば年金あたりは二十年間帳簿をつく
つておるのであります。その帳簿というものは、標準報酬でありますと、そう出入りがないのであります。それに手を入れることは非常に少い。ところが現在の総収入主義で行きますと、居残りがあれば非常にたくさん出す。休みがあれば少くなるというようなことで、必ず毎月一人一人の総収入が違うのはあたりまえで、そういうものを全部チエツクして直して行かなければならぬ。それを今度は二十年た
つたときに、過去のものを全部計算して出さなければならない。こういう問題があるわけであります。従いまして、やはりやるならば、そういう点をもつと簡単にして、この程度のものは、徴収の方は各別々にとるけれ
ども━━別々と申しますのは、いろいろの料率でと
つても、拂う級の方は定額でやるとか、そういうような簡單な方法を
考えるというような
根本に手を入れないと、取扱いがかえ
つて複雑になりはしないだろうか。そういう点が今
大蔵省といろいろ話合
つている要点でございます。