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1950-04-08 第7回国会 衆議院 建設委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月八日(土曜日)     午前十一時十三分開議  出席委員    委員長 淺利 三朗君    理事 内海 安吉君 理事 田中 角榮君    理事 内藤  隆君 理事 松井 豊吉君    理事 前田榮之助君 理事 砂間 一良君    理事 笹森 順造君       池見 茂隆君    大西  弘君       瀬戸山三男君    高田 弥市君       西村 英一君    八百板 正君       小松 勇次君    増田 連也君  出席政府委員         建設事務官         (住宅局長)  伊東 五郎君  委員外出席者         建設事務官         (住宅局住宅企         画課長)    前田 光嘉君         衆議院参事         (法制局第二部         長)      福原 忠男君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ――――――――――――― 四月七日  委員宮原幸三郎君、上林與市郎君及び中崎敏君  辞任につき、その補欠として宮幡靖君、佐々木  更三君及び前田榮之助君が議長の指名で委員に  選任された。 同月八日  理事上林與市郎君の補欠として前田榮之助君が  理事に当選した。     ――――――――――――― 四月六日  建築士法案の一部修正に関する請願三池信君  紹介)(第二一六二号)  老朽不良住宅修理に関する請願砂間一良君紹  介)(第二一六九号)  小林町、須木村間県道中軍谷峠にトンネル開設  の請願小山長規君外五名紹介)(第二一七五  号)  国道東海道改良に関する請願江崎真澄君紹  介)(第二一八九号)  木曽川改修事業促進に関する請願江崎真澄君  紹介)(第二一九〇号)  新荒川右岸堤防補強工事促進に関する請願(天  野公義紹介)(第二一九一号)  江東区内改良下水道本管敷設工事促進に関する  請願天野公義紹介)(第二一九二号)  利根川の治山治水対策確立に関する請願(小平  久雄君外九名紹介)(第二一九四号)  住宅金融に関する請願小川原政信紹介)(  第二二〇四号)  同(足立篤郎紹介)(第二二三七号)  同(有田喜一紹介)(第二二三八号)  同(佐々木盛雄紹介)(第二二三九号)  同(苫米地英俊紹介)(第二二四〇号)  河辺村地内加茂川並び吉井川左岸改修工事促  進の請願大村清一紹介)(第二二一六号)  県道大茅長浜線改修工事促進に関する請願(高  橋英吉紹介)(第二二一八号)  住宅金融公庫法案に関する請願吉武惠市君紹  介)(第二二二〇号)  安芸郡下の水害復旧に関する請願長野長廣君  紹介)(第二二三二号)  仁淀川下流堤防築設の請願長野長廣君紹  介)(第二二三四号)  柳瀬用治水工事促進請願長野長廣紹介)  (第二二六二号)  仁淀川中流及び柳瀬川を直轄河川に編入の請願  (長野長廣紹介)(第二二六三号)  佐川町から檮原村を経て宇和島に至る県道開設  の請願長野長廣紹介)(第二二六四号)  松葉川、檮原村間県道改修請願長野長廣  君紹介)(第二二六五号)  木曽川改修事業促進に関する請願木村公平君  外五名紹介)(第二二七〇号)  山口県営木屋川利水事業に関する請願田中堯  平君外一名紹介)(第二二七六号)  狩野川放水路開さく計画反対に関する請願(遠  藤三郎君外一名紹介)(第二三〇〇号)  市之瀬川に砂防工事施行請願八木一郎君紹  介)(第二三〇六号)  の審査を本委員会に付託された。 同月七日  災害復旧費全額国庫負担陳情書  (第七三七号)  を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  住宅金融公庫法案内閣提出第一五二号)  建築士法案田中角榮君外六名提出衆法第一  五号)  旧軍港市転換法案に対する申入れに関する件     ―――――――――――――
  2. 淺利三朗

    淺利委員長 これより会議を開きます。  建築士法案を議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。砂間一良君。
  3. 砂間一良

    砂間委員 提案者に御質問いたしますが、第一條建築物の質の向上に寄與させることを目的とするということがありますが、この質の向上という点に関連して質問いたしますが、従来の建築等においては、設計者工事を実際に施工する人と同一人がやる。たとえば大林組だとか鹿島組とか、ああいう大土建業者がありまして、自分のところで設計もすれば施工もする。そのために工事をごまかしたか、不正をやりまして、設計の面ではりつぱなものをつくつておいても、実際の施工について手を抜いたり、材料の不正をやつたりして設計通り工事ができないというふうな点がしばしばあつたと思うのです。従いまして、設計に対してあくまで責任を持たせるためには、設計施工とを分離するということも必要かと考えるのでありますが、その点がこの法律案によりますと、あまり明確になつておらないように思うのであります。ことに第二十一條におきましては、建築士設計及び工事監理を行うほか建築工事の契約に関する事務だとか、工事指導監督等、相当施工の面までやつて行けるようなふうになつているように思われます。そういう点を建築物の質の向上という点から考えまして、提案者の方はどういうふうにお考えになつておるかということをお尋ねいたします。
  4. 田中角榮

    田中(角)委員 砂間君に御答弁申し上げます。  御承知通り建築物の質を向上するためには、設計及び監理その他施工の面に大別せられるわけであります。施工の面に対しましては、当委員会通りましたところの建設業法がありますので、施工面法律において適正が保持せられておるわけであります。しかし現在までには設計及び工事監理に対しては法律がなかつたので、これを適正に調整をするということができなかつたわけであります。その面におきましてこの建設業法に対応いたしまして建設の点で大きな面を占めるところの設計及び監理適正合理化をはかるために、設計並びに工事監理を行う人たちに対してこの法律規定したわけであります。しかもただいま砂間君が申されたように、設計施工も同時に行う業者との区別ということがありましたが、これはある工事に同じ業者設計も行い、工事監理も行い、しかも施工を行うという場合、施工の面については建設業法の命ずるところによつて調整されるのでありますし、なおその上に設計並びに工事監理に対しては本法によつて調整をせられるということになりまして、これが設計業者施工業者をわけるかわけないかということは、注文主自由意思にまかすべきであつて、実際面に対してはこの法律目的を達成することができる。かように考えております。
  5. 砂間一良

    砂間委員 官庁などで設計いたしまして、そうしてそれを民間事業者に請負わして施工するという場合には、ある程度建築士責任を持つて工事監理するということによつてできると思うのでありますが、民間業者団体などが自分設計もし、引受けて建築施工するというような場合には、この不正の防止という点については防げない。そういうような点で、私は設計施工とをはつきりわけた方が、責任の所在が明確になつていいのじやないかと思いますけれども、これは意見になりますので、この点あとに保留いたしておきます。  次に第四條の一級建築士、二級建築士免許についてでございますが、この免許基準というものは、何を基準にしてされるか。一級建築士建設大臣、二級建築士都道府県知事ということになつておりますが、基準が明確になつておりませんと、いろいろ弊害が起りやすいのじやないか。顔や情実によつて免許を與えたり、あるいは賄賂、請託等によつてえこひいきなことをやるという点が出て来やすいのじやないかと思うのです。あとの方に試験規定もありますけれども、一応この法律によつてこういうはつきりした資格を與える以上は、その基準法律の明文の中に、ある程度はつきりしておいた方がいいんじやないかと思うのですが、その基準の点についてはどうお考えになつておられますか。
  6. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします。この法律規定するところの建築士は、御承知通り一級、二級建築士にわけております。もちろんこの一級、二級建築士になるためには、一定試験を行うことになつております。試験基準法文にも書いてございますが、一級受験資格、二級の受験資格にわけております。なお一級、二級にわけるためには学歴ともう一つ実務経験年数によつて一級、二級の受験資格に明確なる線を引いたわけであります。但し本法施行になりますと、第一回の者に対しましては、現にこの種業務行つておる人の救済ということも考えなければならないのでありまして、この種法案の通例としております経過規定を設けまして、一級、二級の建築士には第一回だけは経過規定によつて試験を行わずして資格を與えるということになつておるわけであります。  なお砂間委員が申された通り、そのときに情実その他によつて資格を與えるというようなことがないかというお問いであるようでありますが、その場合、一級建築士はももろん学歴実務経験等に対しては、試験を行うと同様な大体の規定を盛つておるわけであります。なおこの中で砂間君の疑問とせられておる点は、選考によるもの、建設大臣の認定によつて資格を與えられるものについての御質問であると思うのでありまするが、これは私も前に提案理由説明いたしましたときに申し上げました通り実務経験十五年以上というのは、ただ單に大工さんを十五年やつておるとかいうものではなく、現在東京都、大阪條例によつて行われておりますところの建築代理士試験通つて、かつ建築に対して十五年以上の実務経験を有する者というかうに考えておるわけであります。だからこの法律施行におきまして、資格を付與するについての不正というごとき疑義は生じないと思つております。
  7. 砂間一良

    砂間委員 この附則経過規定がありますので、最初にこの建築士免許を受ける者については、相当救済規定がなされると思うのですが、将来この法律がずつと実施されて行つた場合においては、受験資格が相当限定されておりますので、やはり学歴偏重ということになるおそれがありはしないかと思うのでありますが、その点はどうですか。
  8. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします。第一回の経過規定によりまして現在やつている人々は救済できるのでありますが、第二回目から学歴偏重になりはしないかという御疑念であるようでありますが、この法律目的建築の質の向上をはかり技術的高水準をねらつているということを考えますときに、実際資格を付與してよろしいという人たちに対しても、相当高度な技術的水準を求められることは当然であると思うのであります。しかしこの法律施行するにあたつて、現在やつている人人の中で、実際力を持ちながら資格を付與せられないということは大きな問題でありますが、これから第二回目以後の試験において資格を付與せられるという場合は、いわゆる学歴経験年数というものが並立して條件になつているのでありまして、この経験年数を経た者は、学歴が全然なくとも、当然一級、二級の建築士を受けられるのでありますし、特に年齢の若い人等に対しましては、二級建築士試験を受けて、ある一定の年限を経ると一級建築士受験資格が自動的に與えられるのでありますからその御疑念もないのではないかというふうに考えております。
  9. 砂間一良

    砂間委員 この法律ができて、建築士がみな届け出て、建設大臣都道府県知事のところに名簿が置かれることになるわけです。そうして建築事務所を持たなければ仕事ができないようになるということになりますと、勢い大きな建築事務所を持つている人に仕事が独占され、集中されて行つて、中小の建築士が非常に圧倒されて行くという心配があると思うのですが、そういうことはどうですか。
  10. 田中角榮

    田中(角)委員 これは免許ではなく届出でありますから、その事業をやつて行く上において力のある人のところに仕事が集まつて行くということも考えられるのですが、これは全然個人の営業の問題であつて、この法律によつてそういうことになるということはないと思います。もちろん一級、二級建築士がありますから、一級建築士のところに仕事が寄つて行く、二級建築士は大体において仕事一級建築士よりも少くなるのじやないかということは考えられるのですが、いわゆる一級建築士でなければ行えないという建築物の量というものは特殊のものであるだけに、非常に少いのである。しかも二級建築士の行うものは非常に多いのである。なお、二級建築士よりも、現在の三十坪制限住宅というようなものであれば、この数の方がずつと多いということであるから、事業一級二級の建築士にわけたから一級の方へ片寄るのではないかということも考えられないと思うのですが……
  11. 淺利三朗

    淺利委員長 ほかに御質問ありませんか。
  12. 西村英一

    西村(英)委員 二、三御質問をいたします。第一番に建築士免許でありますが、一級二級にわけておりますと、一級建設大臣がやる、二級は都道府県知事がやる、こういうことになつておりますが、これを国家試験でやるのでありますから、一級も二級も建設大臣がやるというふうにしてはどうか、こう思うのであります。おのおのその場合に利害得失はあるでありましようが、二級建築士を各府県知事がやるということは、いい点があるかもしれませんが、やはりこの法案の第一條目的を達成せしむるために相当に嚴格な試験をする、しかも平等な試験を課する、こういうふうにした方がいいんじやないかと思われるのですが、この点について、提案者の御説明を願います。
  13. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えを申し上げます。ただいまの御質問非常にごもつともだと思つております。しかし現在御提案をいたしております法律案は、一級建築士建設大臣、二級建築士都道府県知事試験を行うということになつておりますが、條文をごらんになるとおわかりになるように、いわゆる一級建築士と二級建築士との内容を考えてみますときに、一級建築士は大体において建設大臣所管で都市に建てられる建物及び非常に高度の技術水準を要するものというようなことが考えられ、二級建築士は各地方別によつて、その地方特殊性を相当加味したものが対象になるわけであります。その意味において單一となつて国家試験建設大臣が行う方がよろしいということも十分考えられるのでありますが、この法文によりますと、建設大臣中央建築士審議会の立案によるところの試験基準を、各庁県の二級建築士試験に対しましても指示をいたしまして、ただこの試験法律的に各地方地方長官が行うということでありまして、この法律による試験制度そのものも、あなたが今御主張になりました建設大臣單一国家試験を行う方がいいのではないかということと、実質的には何らかわらないと考えております。ただこういうふうにわけるのは、特に建設大臣が各地方別の特殊な事情を全部集めて、これを加味して行うよりも、二級建築士に対しましては、地方別の特殊の事情もありますので、大体の基準中央建築士審議会の線に沿つて、統一的な線を建設大臣都道府県指示をして、なおその上に各府県で特殊な事情を加えるべきものは各地方で加える。そういうことをするためには、二級建築士試験都道府県知事が行う方が適当ではないか、こういうような意味で二つにわけたのであります。
  14. 西村英一

    西村(英)委員 今の御説明ですと、都道府県知事がその試験手続をやるようになつておるのですが、一定基準を示してやると申しましても、都道府県知事試験の合格その他をきめるのでありますから、各府県によつて二級建築士の実力に相当なレベルの相違ができるのではないか。もし相違ができるといたしますと、甲の県の二級建築士は、乙の県の二級建築士になれるかなれないかというような、極端な場合も出て来ると思うのですが、その辺が手続上の問題等であれば、たとい建設大臣がやりましても、各地区にわけて試験をやればいいのであつて、特にこの第一條目的を達成せしめるために、建設大臣が統一的にやつた方がいいのではないかと思われるのですが、これは意見相違になるかもしれませんが、この辺重ねて御説明をお願いします。
  15. 田中角榮

    田中(角)委員 西村君の御意見非常にごもつともなのでありますが、私たちもこの問題に対して非常に研究いたしたのであります。しかしただいま仰せられたように、各府県別都道府県知事が行う場合、勝手に行うのではありません。大体のものは建設大臣がその基準を定める。すなわち中央建築士審議会の議によつて建設大臣が行うわけであります。なお地方には地方建築士審議会がありまして、この審議会中央との密接なる連絡も常にあるわけであります。これは法文の中には規定せられておりませんが、この法案を初めて起案いたしました当時は、登録した業者から登録料を徴収して、建設省並びに各府県がいろいろな統制事務を行おうと考えておつたのでありますが、いろいろな経過を経て、御提出いたしました法律案によりますと、建築士が自由な意思によつて民主的にそういういろいろなものを行うこととなつておりますので、結果的に言えば、建設省並びに府県がやるというような普通の法律違つて中央建築士審議会並びに地方建築士審議会というものが中核となつて建築士会というがごときものができると思うのであります。そういうことを考えますと、それが主軸になつて実質的な試験起案を行う。ただ建設大臣がそれを地方長官に透るというのでありますから、大きな差は出ないと思うのであります。但し嚴密に申しますと、今仰せのように多少の差異はできると思いますが、しかしこれを一つの線によつて国家試験行つた場合、各地方別に特殊の事情を各府県別に出せるかというと、これは出せない面が出て来るわけであります。各府県別地方建築士審議会起案によりまして行う場合は、その地域でもつて事業を行う場合非常に優位である。こういうことを考えますと、いずれにしろ一長一短があるのでありますが、その両面のプラス、マイナスを考えるときには、地方特殊性考えるし、特に中央集権的なものにしたくないということを考えまして、原案の通りにいたしたわけであります。
  16. 淺利三朗

    淺利委員長 なお皆様に申し上げておきます。参考意見を聽取される場合を考慮いたしまして、建設省伊東住宅局長鵜原法制局第二部長が出席されておりますから、もし当局に向つての御質問がありましたら、あわせてこれを許します。
  17. 西村英一

    西村(英)委員 ただいまの問題はそれくらいにいたしておきまして、次に附則にあります過渡的処置の問題ですが、これはただいまも提案者から話がありましたが、現在の過渡的な救済ということのために、この附則にあるものを見ましても、相当寛大にやるのではないかと思われるのでありますが、現在の救済を主眼におきますと、せつかく一級、二級ときめた建築士が、地方においてああ、あんな者が、ああいう人でも一級になれるのか、こういうふうになつてせつかくりつぱな資格に対して、悪い印象を與えることもあるのではないかと思うのですが、この辺についてどういうお考えをいたしておりますか。  またもう一つの問題はこの規定中、資格のところに、何年間実務に従事するということがいろいろうたつてあるのですが、この法律実務経験を有する者というのは、設計工事監理等を言うのであるかどうか。この二点を承りたいと思います。
  18. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします。まず第一点に対してのお答えでありますが、西村君が言われる通り、第一回の経過規定が、救済だけを目的といたしておるということであれば、これは本法律目的を非常に阻害する場合が起きるのは当然であります。その意味で、それを十分勘案いたしまして、来年度に行う試験に際しての受験資格よりも、現在経過規定によつて第一回の免許を與える資格に対しては、一段と嚴重さを加えておるわけであります。なお現在事業行つておる方々の中で、学歴を有しない方々、すなわち実務経験者ということを規定しておるのでありますが、これに対しましては、大体十五年以上の実務経験を有する者というのは、全然学歴のない、俗に言うところの中等学校令による学校及びそれに準ずる学校も出てはおらないけれども、実務経験が十五年以上あるということを規定しておるのであります。これはただ建築に関してと言いますと、大工さんもいいな人も全部言われますが、私たち考えておりますのは、この種いわゆるこの法律規定するところのものを対象にして来ておるわけであります。これはすなわち設計監理、もつと具体的に申し上げますと、私たち考えておるものには試験があります。これは現在東京都及び大阪府で行つておる、いわゆる庁県條例によつて行つております建築代理士試験通つて、現に設計並びに工事監理業務を営む者、しかも十五年以上の経験を有する者、これを規定いたしますと、いろいろな問題が起るので規定はいたしませんでしたが、そういうものを対象にしておるわけであります。特にこれが免許を與える場合に対しましては、この代理士会その他の議を経て承認をせられた者が、当然免許を與える試験資格対象にならなければならない。そういうふうに規定しておるわけであります。なおその前にもう一條あるのでありますが、これは大体中等学校令及び専門学校令によるものに準ずる課程を修めた者というのは、今までこの種法律に対してはこの規定がなかつたのでありまして、非常に実情にそぐわなかつたわけであります。前に当委員会でもいろいろ問題になりました測量士の問題もそうでありますが、大学令による学校、旧專門学校令による学校、旧中等学校令による学校ということも考えられますが、特に土木建築に関しましては專門学校令によらない者、それから中等学校令によらない者で、実際はそれ以上に第一線に大きな地歩を占めておられる人が非常に多いのであります。たとえば專門学校令によるものにならうものといたしましては、早稻田日大攻玉社中央というような高等工学校の類があります。なお中等学校令によらないものの中では、築地の元工手学校攻玉社工学校早稲田工学校、蔵前の工学校中央工学校、早稻田日大工学校、こういうものがあるわけであります。ところが今までの法律では、ほとんどこれが試験を受けなければ、この種の学校というものは対象になつておらなかつたのでありますが、この法律ではそれを拾い上げまして、正規の学校を受けた者よりも多少実務経験年数をふやして、これも選考対象にしようとしたわけでありますから、高度の技術を求めるという面にも反せず、かつ救済規定に堕して、今後この法律案目的を阻害するということのないように十分注意をいたしたわけであります。
  19. 西村英一

    西村(英)委員 大体わかりました。端的にお尋ねいたしますと、経過規定にありますのは、今申しました、建築に関して十五年以上の実務経験を有する者——それで必ずしも学歴があるからということで云々すべきではなしに、真に力のある人を登用するのがあたりまえの話ですが、実務経験を有するということは、今申しましたように設計工事監理をすることがその実務であると思う。たとえば建築行政をやつておるという人は、設計もしなければ工事監理もしないという場合が多い。この建築行政をやつておる方は実務家とみたすかどうか。たとえば警視庁に実務の方がいるとします。それは建策行政のみをやつておるということで、設計とかあるいは工事監理というものをやつておらないのでありますから、この実務経験というのは、建築士の任務は設計工事監理であるから、それを言うのかどうか、これを尋ねておるのであります。
  20. 田中角榮

    田中(角)委員 官庁等におきまして建築行政に携わつた者経験年数を算定いたすことになつております。但し土木建築の業を行つてつたということだけで対象にはしない。もつとはつきり申し上げますと、大工さんでもどなたでも、四十四、五以上の人は一級建築士になれるかと申しますと、そうではありませんで、これは常識的に考えましても、第一回の試験行つても当然入り得る、しかも現在もそれ以上の仕事を、法律によらなくても別の規定その他において行つておるという人を対象にしておるわけであります。
  21. 西村英一

    西村(英)委員 これは住宅局長さんにお尋ねいたしますが、この過渡的な処置によりまして、一級建築士並びに二級建築士として選考される人、これはもちろん特別の場合は考査をすることになつておりまして、その資格を獲得する人があらかじめ幾人あるであろうかということは規定できぬかもしれませんけれども、もし全国で一級建築士及び二級建築士選考される場合には、幾人ぐらいになるだろうか、御参考までに承りたいと思います。
  22. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 正確な数がなかなか推定しにくいのでございます。と申しますのは学歴とか実務経験、そういうことは法律によつて規定されておりますけれども、その実務経験などにつきましては、具体的にこの法案の趣旨に合うように規定して参らなければなりませんので、それによりまして適格かどうかということが、かなり大幅に動いて来るのでありまして、従つて的確な数はなかなか推定しにくいのであります。大体現在ございます建築学界、それから建築の代理士とかいうものの中から、およその見当で考えますと一級建築士が全国で約一万前後、二級の者が三万前後くらいじやないかというように大体の推定を下しております。
  23. 西村英一

    西村(英)委員 提案者にもう一つお尋ねいたします。第一條に「工事監理」という言葉が使つてあるのですが、この「工事監理」というのは、工事の監督という以外に何か特殊な意味があるのでございましようか、その点をお伺いしたい。
  24. 田中角榮

    田中(角)委員 工事の監督ということはもちろん含まれておるのでありますが、そのほかに、いわゆる施工者と注文主との間の事務、すなはち建築に関する事務というもののあつせん等も含まれております。
  25. 西村英一

    西村(英)委員 よろしゆうございます。
  26. 淺利三朗

    淺利委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  27. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 二、三質問をいたしたいと思います。本法の第一條にあります通り建築士資格試験その他によつて明定して、日本の建築物の質の向上をはかることはきわめて適切である。そこで本法には本日も説明がありました通り一級、二級の建築士をつくるというわけでありますが、そこで一級建築士、二級の建築士を区別する、何と言いますか実績と言いますか、一級建築士にはどういう仕事をさせる、二級の建築士はどういうものをやるのだということが必ず予定されなければならないと思うのですが、これはあるいは建築基準法とかいうものが、今問題になつておりますので、そういう方面で出て来るかもしれませんけれども、少くともここで一、二級の建築士法律をつくるときに、どういう仕事をそれぞれ建築士にさせるかということを大体明らかにしておかなければならないと思います。提案者でも建設省当局でも、意見がありましたらどちらでもよろしいのですが、どういう仕事を区別してさせるかということを明らかにしていただきたい。
  28. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします。一級建築士と二級建築士とわけた目的というものは、いわゆる建築物に対する技術的な重要の度合いによつてわけたわけであります。そのためには、この一級建築士、二級建築士でなければできない設計または工事管理というものに対しては、本法にこれを規定することが適当であつたのでありますが、御承知通り建設省当局から建築基準法の提出が予定せられておるので、でき得れば建築基準法と表裏一体とした法律として提案をする予定でありましたので、この種のこまかい規定建築基準法に讓るつもりでおります。なお建築基準法が技術的に提案をされないような場合には、必然的に別の法律案をもつて規定せられなければならないわけであります。なお一級建築士、二級建築士にわける実際のものを申し上げますと、一級建築士でなければならない場合は、すなわち鉄筋コンクリート造、または鉄骨造等、木造以外の建築物で階数二以上または一棟の延面積が二百平方メートルを越えるものの建築でありまして、増築または一部の改築で、その部分が一階で、かつ延面積が百平方メートル以下のものを除いた建築物対象としております。次には木造の建築物で、階数が三階以上のもの、または一棟の延面積が五百平方メートルを越えるものの建築物対象といたしております。しかしその場合、増築または一部の改築でその部分の延面積が二百五十メートル以下のものは、この対象から除いておるのであります。これは大体の基準でありまして、なお細目ばこの法律案をつくりますときに十分研究を要する問題であると思つております。二級建築士の場合は、鉄筋コンクリート造、あるいは鉄骨造でありまして、木造以外の建築物建築ということを対象にいたしております。なお一般につくつておりまする木造の住宅その他と、一級建築士でなければ行い得ないものの問の建築物を二級建築士対象としておるわけであります。
  29. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 私がこれを問題にしたのは、この法律一級、二級の建築士のそれぞれの資格要件をきめる法律でありますので、どういうものをやらせるかということがはつきりしなければ、その資格でいいかどうかということは問題にならない、審議ができないと思うのであります。そこで大体の説明がありましたのですが、建設省当局としては、まずそういうふうな構想の法律案提出する意向であるかどうかということを明答してもらいたいと思います。
  30. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 建設省としましては、この問題だけでなく、一般に建築物に関する現在の法律が非常に古いものでありまして、また現在戰災都市の復興、その他に適用いたしまして、いろいろの不便もありますので、かりに建築基準法といつておりますが、そういう法案を現在用意しております。今会期に間に合いますかどうですか、今すぐに御確答を申し上げることはできないのでありますが、本国会に提案できない場合におきましても、次の国会なり、一番早い機会に提案いたしたいと思つております。その際にこの建築士法案との関係は明らかにしたいと思つております。
  31. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 先ほど提案者の御説明によると、普通のいわゆる一般住宅、木造建築、そういうものは別にこの一級、二級の建築士でなくてもできるということになるということですが、そうですか。
  32. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします、一級建築士でなければできないものを申し上げますと、いわゆるこの法律案目的が高度の技術的な要素を必要とするということを目的といたしておりますので、用途別に申し上げますと、学校、病院、診療所、劇場、映画館、公会堂、観覽場、集会所、百貨店、マーケツト、公衆浴場、ホール、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、または自動車車庫というように、特殊の建築物であつて、かつ強度的にも、建築物の構造といたしましても、特殊な技術を求められるものを一級建築士でやる、こういうように考えております。なおただいま申し上げました用途に供するものであつても、規模が非常に小さいというようなものを二級建築士でもつてやる。なお、そのほかに技術的に一級建築士及び二級建築士でなければできないということを規定する必要のないもの、すなわち一般の住宅その他は、現在通り法案によらずしてできるわけであります。
  33. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 もう一つ確かめておきますが、ただいま御説明を受けましたような種類のものを、この資格要件のあるいわゆる建築士設計工事管理というものをやらせるためにこういうふうにしたと、こういうわけでありますが、建設当局としてはさような考えで、今建築基準法を立案しておられるか、どうかを確かめておきたい。
  34. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 この建築士の制度、それから特定の建築物設計、管理については、建築士でなければいけない。こういう三條の規定でありますが、これとの関連性はありますが、しかし不可分のものではないと考えております。すなわち建築士の制度は、ある資格要件を備えた技術的能力を持つた者に対する、この法律に基く公認の制度でありまして、それ自体によつて建築技術者の一般の信用程度を確認する。こういう意味合いがあるのでありますから、この三條によつて別に法律が設けられなければ、別に法律で定めるまでは、この建築士法は全然意味がないかというと、そういうのではなくて、一応資格要件をきめまして、免許制度をとる、こういうことによつて一つ意味があると思います。さらにこの三條により別に法律に定めまして、これこれの建築物一級建築士、これこれの建築物は二級建築士でなければ設計または工事監理ができない、こういう制限をいたしますことによつて、さらに法案の趣旨が徹底する、こういうことであろうと考えております。
  35. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 次に第四條の一級、二級の建築士資格免許でありますが、第三項に、「外国の建築士免許を受けた者で、建設大臣又は都道府県知事が、それぞれ一級建築士又は二級建築士と同等以上の資格を有すると認めるものは、前二項の試験を受けないで、一級建築士又は二級建築士免許を受けることができる。」となつておりますが、どういうわけでそういうことをされたか、もしくはそれをどういうふうに認定してそういうことをされるかということを、立案者の気持を承りたい。
  36. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします。この種国家試験を行う法律案によりますと、外国の学校というものを認定するのは非常にむずかしいので、この法律によりましても、受験資格に対しましては、建設大臣が特に認定した者という條項で、それは外国で土木建築学校を修めた者も対象にできることになつております。ただいま申されました第三項によりまして、建設大臣または都道府県知事が認定をするという場合には、同等以上の人を認定するのでありまして、現在アメリカその他諸外国におきましては、建築士の制度を設けております。現在のわが国の状況を考えますときに、わが国の建築に関する技術水準を直税して、大体において外国においてこの資格を持つておる者は日本でも認めてもいいのではないか、こういう考えで認定をいたすことにいたしたのであります。
  37. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 次に第十四條は、一級建築士受験資格、第十五條は二級建築士の受験賓格でありますが、これについては正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後」云々とありますが、建築に関する課程を修めた者は建築士、これは当然でありましようが、土木に関する課程だけを修めた者が建築士となる点、土木学科の方はいろいろあると思いますけれども、その点はどういうことで土木專門家に建築士を與えるかという理由をひとつはつきりいたしたいのであります。
  38. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします。現在の大学令による学校及び專門学校令による学校において、土木の課程を修める人は、基礎学科といたしまして、建築の高等力学その他も一般学科として修めておることは御承知通りであります。しかし專門的な技術面になりますと、課程を終えるまでには土木の課程を修める方がパーセンテージにおいて非常に多くなるというわけであります。なお建築の学科を修めた者も、基本学科として土木工学をやつておることも御承知通りであります。しかも現実的な面を見ましたときには、土木工学を卒業せられた人で土木工学の面に進まずして、建築專門の技術面に働いておられる人が非常に多いのであります。これは官、民を問わず、非常に多いことは御承知通りであります。なおこの土木工学を專攻せられた者は、建築の正規の課程を経た者よりも建築に対しては多少うとくないかということも当然考えられるのでありますが、本法規定するものは、建築の正規の課程を修めた者はそのまま、土木工学を修めた者は特に建築に関して実務経験四年もしくは二年の経験を有する者ということを規定したのでありまして、これが結果においてはほとんど大差がない。しかも受験資格として正規の試験を受けるのでありますから、こういうふうに規定をしたことは、建築ということに限定をせず、門戸を広く開いて、能ある人の登用の道を開いたという意味規定したわけであります。
  39. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 ただいまの御説明はわかりましたが、第一條建築物の質の向上ということがありますので、建築物はもちろん外郭を建てるばかりでなく、各種の方面から、衞生と申しますか、電気の照明と申しますか、そういうふないろいろなものが全体的、有機的に向上されて建築物の質の向上ということが特に日本においては必要であると思うのであります。そこで日本建築学会の意見としても、建築、土木のほかに衛生工学、機械工学、電気工学を修めた者も建築士にしていただきたい。資格要件はそういうようにしたらどうかという意見もあるのですが、立案者としては、建築または土木に関する課程を経た者がさような点に知識があると、かように考えて立案されたものであるかどうか。もしくはそういうむのは建築物の質の向上には必要でない、こういうふうに考えて立案されたものであるかどうかをお尋ねしたい。
  40. 田中角榮

    田中(角)委員 お答え申し上げます。瀬戸山君の言われる通り、なぜ土木、建築の学科の修了者のみを対象にして、同じ建築部門であるところの電気工学並びに機械工学々修められた人を対象にしないかというお話であります。私たちも当然本法案を立案する過程におきまして、このようなことをまじめに考えて深く研究いたしたのであります。しかし建築物の質の向上をはかるという本法の趣旨を直視するときに、私たちは初めには建築の正規の課程を終えた者のみを考えておつたのでありまするが、だんだん掘り下げて考えてみるときに、実際面の調査をし、統計をとつた場合、現在の日本の状態においては、土木、建築というものはほとんど渾然一体となつておるという実情もありますし、特に先ほど申し上げましたように、土木と建築の基礎知識というものはほとんど同一でありますので、土木を含むことはさして本法律案目的を阻害することにはならないというふうに考えたのであります。そのために建築及び土木ということにいたしたのでありまするが、その他附帶設備に関する機械、電気等を土木と同一に考えるかというと、これには多少の異論があると思うのであります。建設工学的な面におきまして、電気、機械、衛生、工学等の学科まで土木建築と同日に論ずることが現在の段階においてはできるかというと、これははなはだ疑問がある、こういうふうに考えておるわけであります。当委員会においていろいろ御審議になつておられまするところの水道法に関する問題に対しても、土木工学者が水道工学をあわせ行うことは、さしてむずかしいものではないけれども、衛生工学者がはたして土木工学全般に対しての考えを持ち得るかというと、同日に論ずることはできないということも一つ考えられておるわけであります。なおこの衛生並びに電気、機械等に対しましては、本法規定しなくとも、これが本法目的とするところのいわゆる建築物の質の向上をはかるために必要なる法的措置は、別に機械、電気、衛生等に対しては、法律條例、規則等によつて定められておりますので、それを建築士そのものに対しての受験資格を付與するという條件に加えることは妥当でないという結論に達して除いたわけであります。
  41. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 建築物設計をし、工事監理をする最高の責任者であります第一級、第二級の建築士でありますから、私は建築の專門家じやありませんけれども、そういうところまで設計工事の監督をするのではないかと思いますが、そういう知識がいらないと考えておられるのか、これで十分だと考えておられるのかお尋ねしたい。
  42. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします。十分であると考えておるわけではありませんが、しかし本法目的とする本のは、質の向上がまず第一段のステツプでありまして、現在ただちに電気、機械、衛生工学等を土木建築と同等に考えて、これを同日に論じ、かつ資格を與える條件にしていいかというと、私はそこにははなはだ疑問があると思うのであります。なおこの土木建築に関するものの基礎学科といたしましては、当然附帶設備であるところの機械、電気等の基礎学科は修めておるのでありますし、しかも資格試験を行う場合の受験資格として、一部の附帶設備、それも重要であることはもちろんでありまするが、それを考えるために、ただちにその人たちまで資格付與の対象にするということは、結果において逆な結果をもたらすのではないか、こういうふうに認定いたしておるわけであります。
  43. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 やはり同じ第十四條、第十五條に関係した規定でありまするが、第十四條は第一号から第三号まで、いわゆる受験資格の要件を定めております。第四号に「建設大臣が前各号と同等以上の知識及び技能を有するものと認める者」、第十五條も、二級建築士の條項を一号、二号で定め、三号に「都道府県知事が前各号と同等以上の知識及び技能を有すると認める者」、かように立案されておりますが、それはどういうものを考え、どういうふうにして認めるのか、その点をはつきりさしてもらいたいと思います。
  44. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします。第十四條及び第十五條に規定する認定の條項でありますが、これは先ほど瀬戸山君から御質問になられましたものに関連しておるのでありまするが、日本以外の地、すなわち外国におけるこの種学校の卒業者ということを対象にしておるわけであります。しかしこれはいろいろむずかしい問題がございますので、実際はこういう條文にいたしまして、特に建設大臣が認定をするということにいたしたわけであります。
  45. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 次に第八條について尋ねたいのですが、第八條は「禁こ以上の刑に処せられた者、「建築物建築に関し罪を犯し罰金の刑に処せられた者」、そういうものは「一級建築士又は二級建築士免許を與えないことがある。」これはきわめて含みのある規定で、運用の問題であります。第十條の建設免許の取消し、その他これに関連した規定があるのでありますが、これは非常に問題でありましで、禁錮以上というと、何と言いますか、いわゆる刑法の政治犯とか、行政犯とかいう普通の犯罪よりも、多少かわつた犯罪に関して禁錮以上の刑が課せられておるのであります。第八條第二号「建築物建築に関し罪を犯し罰金の刑に処せられた者」、現在実際の場面にあたりましては、そういう人もたくさんあると思います。そうすると巖重に免許を與えないということになると、相当な問題であろうと思います。そこで與えないことがあるという含みのある規定にはなつておりますが、與えないことができるのでありますから、事は法律運用でありますけれども、これについてはどういうふうな考え方で立案されてあるか、こういう場合を私知つておる方もあるのでありますが、これをすべてこの際免許を與えない、資格がないんだということになると、非常に困る場合があると思いますが、これは立案者並びに建設当局の見解を確かめておきたい。
  46. 田中角榮

    田中(角)委員 お答えいたします。立案者といたしまして、第八條の問題に対しては、非常な大きな関心を持つておるのでありますが、別の法律を見ますと、こういう條項が日本の法律にはほとんど載つております。しかし私はこの第一号、第二号に対しては、私自身も相当疑義を持つてつたのでありますが、第二号の「建築物建築に関し罪を犯し罰金の刑に処せられた者」というのは、最後にあります罰則の條項をずつとごらんになるとわかるのでありますが、普通の罰則に対する考えではなく、「建築物建築に関し罪を犯し罰金の刑に処せられた者」というのは、もうどうにもならない。これは罰金をとらなければしようがないというように認定せられるまでに、聽問をしたり、いろいろな手続をして、やむを得ないというのだけが罰せられることに本法の罰則はなつておりますので、第二号の「建築物建築に関し罪を犯し罰金の刑に処せられた者」という條項に対しては、私は大体これでいいのではないかという考えでおります。しかし第一号の「禁こ以上の刑に処せられた者」に対しては、いろいろ疑義があるのでありますが、いろいろな法律に大体こういうことが書いてありますので、立案者といたしましても、ただ單にそういうふうに考えたのであります。しかし私が提案理由説明いたしますときに、第八條に関しては、一級建築士または二級建築士免許を與えない者には次のごときものがあると申しましたが、これは速記録をあとからみまして、もしそうであれば取消そうと思つております。これはそうではなく、この條文通り免許を與えないことがあると御解釈願いたいと思います。立案者の考えはそうであります。なおこれに対しまして、建設大臣または地方長官免許の取消しを行うことになつてはおりますが、都道府県審議会並びに中央審議会が聽聞を行つたり、懇切丁寧なる調査を行つた上で、その結果著しく不適当と思う者には許可を與えないというふうに立案者は考えておるのであります。
  47. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 ただいまの点につきましては、この法律施行になりますと、この運用については、特に一級建築士免許を與えない、あるいは免許の取消し等につきまして建設大臣責任でやることになるわけでありますが、なお地方審議会意見を聞いて、大臣に答申するわけであります。本法案の根本的な趣旨から申しまして、一般の国民が設計監理を安心してゆだねられるかどうかという点にかかるのでございまして、第一号については、人格的に信用ができるかどうかということになりましようし、第二号については、この建築法令を遵守するという点につきまして、適当かどうかという点にかかつておると思うのでございまして、禁錮以上の刑に処せられた場合でも、これは判断の余地があると思います。また建築に関する違反をやつて、罰金をとられたという場合についても、いろいろな場合がございましようし、本法案の趣旨にのつとつて施行して参り、また二級建築士都道府県知事に対する指導につきましても、同様の考えをもつて施行に当りたいと考えます。
  48. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 ただいま懇切な御答弁がありましたので、実は安心いたしました。私が特にこれを問題にするのは、今日までいわゆる建築制限令できわめてきゆうくつになつておりまして、特に地方ではさようなきゆうくつな法律を適用しなくてもよろしいというくらいにまで、きわめて峻嚴に行われておつた関係上、いわゆる建築物建築に関して罪を犯して、罰金を受けた人が相当あると私は思います。実例もたくさんありますが、そういうものを一々取上げてやるということになりますと、固まります。もちろんこれは審議会の議を経ていろいろやると思いますけれども、適切な指導と言いますか、この運用については十分な関心をもつて指導されんことを私は切望しておるわけであります。もちろん私どもは、国の法律を破るということはけしからぬことだと思いますけれども、今日までさような事態がたびたびありました。過去におけるさような建築物建築に関する犯罪の極端なものは別でありますけれども、單に罰金に付するということは、不必要であるという場合がたびたび起つておりますので、その点は十分考慮されんことを切望しておくわけであります。  最後にもう一つでありますが、三十二條のいわゆる試験委員でありますが、この試験委員を、これはもう一つ審議会委員とも関連して来るわけでありますが、大体建築士に委嘱するということが原則になつておるのであります。もちろん建築に関することでありますから、建築士でよいわけではありますけれども、試験でありますから、むしろ建築士を原則とする建前はあまり好ましくない。もちろん建築士の方も必要でありますけれども、やはり大学の教授であるとか、その他いわゆる学識経験のある方響がそれぞれ試験委員に加わるべきであると考えておるのであります。しかしこの法律の建前からすると、原則はさようになつておる。やむを得ないときに学識経験者を加えるのだ、こういうような立法は今日までなかつたのでありますが、これについてどういうお考えでさようなふうになつておるか、また実際の運用については、建設当局はどういう考えでおられるか、承つておきたいと思います。
  49. 田中角榮

    田中(角)委員 ただいまの御質問お答えいたします。この一級及び二級建築士試験委員に関しましては、私たちも、まず第一番目には、関係官庁の職員を三分の一、建築士三分の一、学識経験者を三分の一というくらいの考えを持つてつたのでありますが、アメリカその他の建築士法などの例等も研究いたしました結果、なお有力な御意見としても、当然この試験委員官庁職員にゆだねるべきものではない、建築士が行うべきものであるというふうな御意見があつたのであります。私たち自身も、この問題に関しては、深く研究いたしたのでありますが、一つにはこの法律案によつて資格を付與されるわけでありまして、官庁職員の中にも、当然建築行政経験者並びに建築に関する技術者は、一級及び二級建築士になるわけであります。なお民間人たちも、もちろん一級、二級の建築士になれますし、いわゆるこの種の試験を行うに適切であると認められる学者も、大体この方面の工学者であるので、当然建築士資格は付與せられるわけであります。だから建築士という根本原則を立てておいて、実際の運用面においては、建築士であるけれども、官庁の職員の中で建築士資格を持つておる者が幾らあるというふうに、運用面で考えたらよいのではないかと私たち考えております。特に條文におきまして、官庁職員何分の一学者経験者何分の一と規定せられると、実際の運用にあたつては、その線が非常に嚴守せられるのでありまして、できるならば、原則としては建築士でなければならないということにしておいて、実際面の運用において適正をはかつた方がよいのではないかというふうに考たがために、本條文通り規定いたしたわけでございます。
  50. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 この運用につきましては、申すまでもなく提案者の御意図に従つて、また国会の審議の過程におきましてのいろいろの御意見などを参酌して滝用して行かなければならぬと思つておりますが、建築士建築士試験委員になるということにつきましては、建築士試験をする人は、試験を受ける人よりも同等以上の建築に関しての学識を持ち、また経験も持つていなければならぬということは当然なことでありまして、原則として第二項に建築士の中からメイジヤーを委嘱するということは当然のことではないかとわれわれも考えておるのであります。しかし実際の場合におきましては、これと同等以上の学識経験あるにかかわらず、一級建築士に何かの関係でなつておらぬという場合におきまして——たとえば学校建築に関する教授が建築士になつておらぬというような場合におきましては、これは建築士ではありませんが、それと同等以上の学識経験ある者と見て、この人にお願いする、こういうこともあり得ると思いますし、またそれで一向さしつかえないものと考えております。
  51. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 以上で終ります。
  52. 淺利三朗

    淺利委員長 ほかに御質疑はありませんか——お諮りいたします。これにて質疑を終了するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 淺利三朗

    淺利委員長 御異議なしと認めます。よつて質疑は終了いたしました。  なお本日は本会議がありますけれども、住宅金融公庫法案等も会期切迫の折、審議を急いでおりますから、午後継続して開会いたしたいと思います。午後一時半から再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  54. 淺利三朗

    淺利委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  建築士法案につきましてこれより討論に入ります。通告によりまして順次これを許します。砂間一良
  55. 砂間一良

    砂間委員 私は日本共産党を代表いたしまして、本法案に反対するものであります。本法案によりますと、設計施工との分離ということが明確になつておりません。特に第十九條との関連において見ますと、他人が設計したものをほかの建築士施工する場合において、それは自分責任をもつて施工することができるというふうな規定がありますが、これは実際の場面におきますと、大きな業者工事なんかを請負つた場合において、たとえば官庁やそのほかで設計した工事でありましても、それを自己の責任において変更し施工することができるということにもなるわけであります。これまでも大きな請負業者等の工事につきましては、しばしば材料をごまかすとか、不正工事というふうなことがあるのでありますから、こういう点を防止するためには、設計施工とをはつきり分離する。そうしてそのおのおのの責任を明らかにするということが必要であると思うのでありますが、その点が本法案によりますと、明確になつておらないのであります。これが反対の第一点であります。  次に第二点といたしましては、やはり学歴偏重の傾向があります。建築士資格のある者でなければ重要な建築はできないということになつておるのでありますが、この建築士資格を得るためには、一級建築士の場合においては、少くとも旧專門学校以上の学歴を有し、また実地の経験を存ずる者でなければならない。二級建築士から一級建築士になるというふうな資格條件も一応與えられてはおりますけれども、その二級建築士資格を律るためにも、一定学歴を有する者でない以上は、非常に困難だというふうなことになつております。建築士資格がなければ重要な建築はできない。しかもその資格をとるためには、そういうふうな学歴がなければならないということになりますと、今日相当実力を持つておる人でありましても、なかなか資格はとれないということになるわけであります。質のいい建築をするためには、学歴も必要でありますけれども、やはり実力ある者がいい家を建てればいいのでありますが、この実力ある人たちを拔擢することがきわめて困難な状態に置かれるようになつております。しかもこの建築士資格を得た者、特に一級建築士資格を得た者が、非常に幅がきくわけでありますが、こういう一級建築士を大きな資本の力を背景にしてたくさんかかえ込んでおるところの業者、特に大きな業者というもの、大体独占的に工事を請負つて行くという大企業を栄えさして行つて、中小の業者を没落させるという傾向を特に顯著にする結果になると思うのであります。こういう点におきまして、この法案は、やはり大建築業者に都合のいいように仕組まれておるのでありまして、たとい資格がある者であつても、中小の業者は非常に仕事が少くなるということになると思うのであります。  それから、その次には、有資格者を登録いたしまして——これは中央建設本省や、あるいは都道府県に登録することになつておるのでありますが、今日の客観情勢からしますならば、こうやつて資格者を登録して、名簿をつくつておくということは、事があつた場合に、これらの技術者をある種の工兵将校として動員できるような態勢がつくられるわけでありまして、今日の諸般の情勢から見ますと、平和的意図があるにもかかわらず、一種の戰時準備態勢に利用される危險性があるのであります。これは立案者の主観的意図のいかんにかかわらず、客観的にそういう危險性があるということを指摘したいと思うのであります。  第四点は、中央地方審議会や、あるいは試験委員の任命等におきましても、非常に天くだり的でありまして、民主的になつていない。附則に、これまでの業者に対して無試験資格を與える過渡的な措置が規定されておりますが、これなども実際の場合におきましては、相当情実や、あるいは不正等が行われる危險性を持つておると思うのであります。  以上申し述べましたような四つの理由からいたしまして、私は本法案に反対するものであります。
  56. 淺利三朗

  57. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 私は各党の御了解を得まむて、共産党を除く他の全党を代表いたしまして、ただいま議題になつております建築士法案に賛成の趣旨を簡單に表明いたしたいと思います。  本法は御承知通りに、少くとも遅れておると言われております。日本の建築物の質の向上をはかるために、建築設計工事監理等に直接関係いたしますいわゆる建築士について、特別の資格を要請し、それによつて一條目的を達成しようという根本の趣旨であります。これはわが国の平和と申しますか、文化国家として立ち上る上に、きわめて重要な、しかも有用な法律であると思います。さきの公認会計士法、また過般の小委員会を通過いたし、衆議院を通過いたし、法律となつております測量士法、すべて日本の文化国家としてのあらゆる態勢を整えて行く構成の一環でありまして、私どもは法律の内容については多くを申しませんが、日本の態勢を整えて行く以上は、やはりかような各般の部面を整備して行かなければならない段階にありますので、この際この法案について衷心より賛成をいたすわけであります。  ただいま反対論の中に、かような法律を制定することは、建築士の登録をすることになつて、それが戰争準備態勢に応用されるというような御議論もありましたけれども、それは御議論として承つておきますが、さようなことを一々考慮いたすことになりますれば、すべての日本の制度そのものを、極秘のうちに行わなければならないことになるのであります。そういうことは現在文明国家においては、私どもはとうてい考えられないと思つておるのであります。ただ先ほどの質疑応答の中にもありました通りに、本法の運用においては、適切なる運用をしなければならない。これは今後この法律を運用する場合に、大いに注意をしなければならないと、先ほど私はその点を第八條について論議いたしたのでありますが、建設省当局としても、この法律の運用については、あやまちなからんことを期するという言明もありましたので、私はそれによつて了解してよろしいものである。かように考えておるわけであります。  なおこの資格を定めることについては、この類似の法律にしばしば論議されたことでありますけれども、本法案においては、経過規定において適切なる措置をすることになつておるので、これは本法を制定するについていささかも杞憂を残さない、かように考えておる次第であります。  簡單でありますけれども、賛成の討論にかえたいと思います。
  58. 淺利三朗

    淺利委員長 これにて討論の通告の方々の発言を終りました。お諮りいたします。これにて討論を終局いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 淺利三朗

    淺利委員長 御異議なしと認めます。よつて討論は終局いたしました。採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  60. 淺利三朗

    淺利委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  お諮りいたします。本案に関する報告書の作成並びに提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 淺利三朗

    淺利委員長 御異議なければ、さように決します。     —————————————
  62. 淺利三朗

    淺利委員長 次に過般大蔵委員会と合同審議になりました旧軍港市転換法案につきまして、当委員会としての態度を決したいと思いますが、いかがいたしませうか。
  63. 田中角榮

    田中(角)委員 ただいま議題になりました旧軍港市転換法に対しましては、本委員会としては原案を至当と認め賛成せられておるのでありますから、特に大蔵委員会に対して、この件に対しての申込みは行わないことに御決定願いたいと思います。
  64. 砂間一良

    砂間委員 ただいま田中委員より、本委員会としては旧軍港市転換法に賛成であるということを申されましたが、共産党は反対でありますから、態度を明確にしておきます。反対の理由はいろいろありますけれども、これは大蔵委員会へ出ている共産党の委員の方からも述べられると思いますので、ここでは省略いたしますが、態度は反対でありますから、それだけ簡單に申しておきます。
  65. 淺利三朗

    淺利委員長 それではただいまの田中君の動議に対して御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 淺利三朗

    淺利委員長 御異議なければさように決します。  なおこのことは委員長から大蔵委員長の方に打合せをいたしておきます。     —————————————
  67. 淺利三朗

    淺利委員長 次に住宅金融公庫法案を議題といたし、前会に引続き質疑を継続いたします。砂間君。
  68. 砂間一良

    砂間委員 この前の委員会におきまして、私若干質問したのでありますが、なお二、三の点が残つておりますので、この際続けて御質問申し上げたいと思います。この間の住宅局長のお話によりますと、この住宅金融公庫法は、低收入の勤労大衆を対象としたものではない。ある程度金を持つでいる、いわば中以上くらいの階級の人たちの住宅建設の便宜をはかることが目的なんだ。何らかの形で家さえ建てて行けば、住宅難を緩和する足しになるからというふうなお話でありまして、非常に困つておるところの低賃金收入の勤労者に対しては、もつぱら国庫補助によるところの賃貸し住宅をもつてつて行くというふうな御説明がありました。しかしその国庫補助の賃貸し住宅におきましても、家賃その他において勤労者にはなかなか利用できにくい面があることを、私は一応申しておいたのでありますが、しかし家賃の点は別といたしまして、一方で国庫補助の賃貸し住宅ということを、勤労者の住宅難緩和のためにやつておるということでありますれば、その趣旨をくみまして、この公庫の貸付を受くべき者の対象の中にも、やはりそういう県なり市なり、地方公共団体を含めるのが適当だと思います。ところが第十七條の貸付業務の項を見ますと、ここにみずから居住するために住宅を必要とする者とか、あるいは住宅組合だとか、あるいは賃貸しする事業を行う会社、その他の法人というようなことはあげられてありますが、地方公共団体は除外されておるのであります。この点が私どもはどうしても合点が参りません。なぜここに地方公共団体を除外したのか。一応その理由の御説明を願いたいと思います。
  69. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 お答えいたします。貸付の対象としまして地方公共団体を認めておりません。その理由を説明せよというお話でございますが、地方公共団体が、この金融公庫の貸付の対象として、絶対にこの法案目的から見ていかぬという趣旨ではないのでございますが、政府の住宅政策として、国庫補助の公営の賃貸し住宅と、この資金の貸付による援助と、こういうものをあわせ考えてみますと、必ずしも地方公共団体を対象として、その援助を受ける必要はないじやないか。自分で資金を借りまして家を建てよう、あるいは組合をつくつてやろう、こういうような者もあります。また第三にありますように、会社、法人で賃貸し住宅を経営しようというものも相当ございます。一方、予算のわく内におきまして、この二十五年度においてつくる家もそうたくさんないわけでありますから、まず最も希望の多い個人に対する貸付というものを主体といたしまして、そうしてこれに対するある程度の賃貸し住宅も、全体の資金の三割くらいでありますが、それをも加味して計画したわけであります。地方公共団体は、別に住宅政策につきまして、国庫補助を受けましてこれを供給するという一つの任務を持つているわけであります。これは道路とか河川とかいうように、公共事業としてやつているわけでありますから、この事業との混淆を避けるという意味もございますし、またこの面を担当するということになりますと、それによりまして地方でいろいろ予算的な問題も起きましようし、また起債の問題も起きましようが、起債などにつきましては、全体の地方公共団体の起債の限度というものも大体国においできめていますので、その起債のわくの関係から申しましても、こういう事務をまた負担させることも適当でない、これらのいろいろな理由から言いまして、この法案におきましては、とりあえず地方公共団体を考えずにやつたわけであります。なおこの実績に徴しまして、さらにこの法案をだんだんと整備して行くということは、当局としても研究をしながら運用をいたしたいというように考えております。
  70. 砂間一良

    砂間委員 たびたび申すようでありますが、今一番住宅がなくて困つておるのは低額所得者であるところの勤労階級なんです。この人たちが一番困つている。ところがこの法案によりますと、大体頭金をつくるのに少くとも五、六万円かかる。その頭金をつくる力がないのです。また償還して行く場合におきましても、少くとも月千五百円から二千円の償還をやつて行く力のある人でなければ、これを利用することができないのですが、今一箇月に千五百円も二千円も佛つて行くような余裕はないのです。ですからそういう階級の人たちに住宅を供給するためには、どうしても賃貸し住宅でなければならぬ。ところがこの賃貸しの場合におきましては、昔のように大家が家を建てて貸すということは、今の経済情勢ではできない。従つてどうしても県なり市なり公共団体が建てて貸してやるというふうにしなければならないと思うのですが、十七條の第一項第三号によりますと、会社や法人にはこうやつて貸し付けてやる道を開いておきながら、県や市に対してば何で貸してやらないのか、この貸付金の回收という点から言いましても、この公共団体に貸してやつた方が、はるかに確実に回收できると思うのです。また建築のインチキを防ぐ、ごまかしのないように固い工事をやつて行くのも、業者よりも公共団体の方がはるかに信頼が置けると私は思う。住宅を供給することを業としている会社なんというのは、大体利潤本位のインチキ会社が多いと思うのです。そういうところに貸してやるくらいだつたら、なぜ公共団体に貸してやらないか、いろいろ御説明もありましたけれども、たとえば起債のわくが少いとか、きまつておるからとか、あるいは八万戸くらいの戸数であつて、戸数もわずかであるからというような御説明でありましたけれども、起債のわくといつても絶対的ではないと思う。最近新聞を見ますと池田大蔵大臣が関係筋といろいろ折衝しております。預金部資金や見返り資金の方から、起債のわくをもつとふやしてもらいたいという交渉をやつておられるようでありますが、地方起債のわくだつて一銭一厘動かせないというような、鉄のたがみたいなわくじやないのです。わくが少いのだつた地方起債をどんどんふやして行けばいいのです。また建築する戸数にしましても、今年八万戸くらいだ、少い戸数であればあるほど一番困つておる人に供給できるように、そうしてまた貸し付けてやつた資金の回收が、確実にできるような、そういう公共団体に貸してやるのが、私は一番いい方法だと思う。それを公共団体を除いて、何か利潤本位で貸付をやるところの業者や会社、法人に貸してやるという理由がどうしても私はわからない。たいへん同じことを重ねてしつこく聞くようでありますが、もう一ぺん納得の行くように御説明願いたい。これは單に私一個人の疑問ではなくして、おそらく全国の県や市の、また住宅に困つでいる勤労階級の強い、要望であると思うから、国民に明らかにするという意味からいたしまして、もう一ぺん納得の行くような御説明を願いたいと思う。
  71. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 ただいまのお話につきましては、われわれ住宅関係を担当しておる者といたしましては、かなり同感のできるふしもあるのでございますが、しかしまだ多少見解を異にしておる点もございます。たとえば地方公共団体にこの金を貸せば安い家がでぎるじやないかということでございますが、これは地方としましては相当の負担になりますから、地方財政ということも考えなければなりません。必ずしも公共団体を通せば安い家がたくさんできるというものではないのでございまして、これには国庫補助が必要と思いますが、国庫補助は別に公共事業考えております。これは公共事業の住宅の予算のおくが非常に少いということに基因すると思いますが、これにつきましてはなお将来とも国庫補助のわくを拡げる、予算をふやすということについては努力をいたしたいと思います。  それから第一項第三号の民間の会社や法人などに貸すということは、何か金もうけ仕事でインチキみたようなものになるというようなお話でございますが、これについては別に三十五條にも規定してあります通り、家賃のきめ方、業者の選定の方法などは嚴重に制限することになりまして、そういうことは一切起さないつもりでございます。またその会社や法人の利益の処分などにつきましても、特に制限をいたしております。そういうことでこれが会社や法人のもうけ仕事に使われるということはない見込でございます。
  72. 砂間一良

    砂間委員 まだ質問したいことがございますが、ほかに質問したい方があるようですから……。
  73. 淺利三朗

    淺利委員長 それでは前回発言の申込みのありました方で、まだ残つております方もありますから……。笹森順造
  74. 笹森順造

    ○笹森委員 住宅金融公庫法は戰後住宅難で苦んでおりました者の切実な要望にこたえようとするものでありますから、本法案に対しまする国民的関心が熱烈であるということは言うまでもないと思います。従いましてこの際本法案につきまして概括的なお尋ねをいたしまして、その御答弁の方向によりましては多少微細にわたつて実際的な面についてお尋ねをすることもあろうと思いますので、あらかじめその点御了承を願います。  第一に本法通過の後にこれが適用せられて着工予定となつております約八万戸の住宅建設に要しますところの資材に対する調査並びにこれについて実際に施行した方策がありますならば、責任者において資材の面においての見通しをここで御説明願いたいのであります。もとより本法案は金融面に関することでありまして、資材の面ではないとおつしやるかもしれませんけれども、実際に金融公庫が出しまする金の裏づけになつておりまする資材をはつきりしておかないならば、建設省としてのせつかく考えられますことが目的を達しないと思いますので、その点の御調査並びに実際にとられました方策について御説明をまずお願いしたいと思います。
  75. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 建築用の資材につきましては、御承知のようにセメント、鉄鋼などの生産が非常に上つておりまして、むしろ有効需要をもう少しあげくしなければ、生産に支障を起すというような、逆な現象になつて来ております。従つてただいま資材の需給の調整をいたしておりますものは板ガラス——これもこの四月から統制をやめましたし、鉄鍋も近く廃止することになつております。その他セメント、木材等はすでに廃止をいたしておりますが、資材につきましては、充分供給の見通しを持つております。
  76. 笹森順造

    ○笹森委員 国内産の資材に対しましても、木材、セメント、板ガラスそれらのものにつきましては、過去数年におきましては、特別調達関係、あるいはまたいわゆる飢餓輸出等において相当困難を感じておつた実情にあつたのでありますが、ただいま当局の御説明によりますと、この面においては十分に心配がないということを承つて、それが事実でありまするならばまことにけつこうだと思います。従来私どもはこの資材の面において、絶対量の不足を感じて参つたのでありますが、ただいまのお話で、それが確信があるという見通しであるならばたいへんけつこうだと思います。なおまたこれを生産面を支持するためにでも、需要面をもう少し活発にせしめたいというほどの態度でありまするならば、願わくば一昨日も御発表になりましたような、建築原価に対し木造が、一坪一万七千円、あるいはコンクリート・ブロツクか二万二千円、鉄筋コンクリートが三万二千円というようなものを、もつと下まわるようなぐあいに、資材の提供をするようなくふうができないものだろうか。物価の点においても、あるいはデイスインフレであるか、あるいは安定であるかは存じませんが、そういう方向へと来ておりますときに、ももう少し政府はいろいろな資材の面についてくふうをしまするならば、これがもつと良質なものが低廉に生産されて供給せられる、そういう方面の政策をしてもらうことが適当ではなかろうか。かりに今の十割のものが六割までの値段に下げられるとしたならば、十坪のものが、同じもので十六坪できるということになりましよう。さらに同じ坪数であるならば、さらに良質の不燃的な建物にかえることもできると思われまするが、この辺に対しまする政府のそうしたお見通しがあるならば、一歩進めてもつと強化して行くべき政策についての御用意なり、あるいはまた今後のそれに対するお考えなりがあるならば承りたいと思います。
  77. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 建築用の資材をもう少し安く調達できるようなくふうはないかという御趣旨のように伺いましたが、建築用の資材の中で、鉄鋼などについては補給金がございましたが、これが打切られますと、むしろ鉄鋼の値段などは上る方だろうと思います。そういう点におきまして、お話と逆なことになつておりますが、価格についてそういう政府の操作というものはやめて、自由経済的な面でもつて自然の調整にまかして行こう、こういうことでございます。原則としましては、生産の方の側から来るところの価格は、そういう事情でございますが、何とかこれを調達の関係において安くするくふうはないのか、こういうことになると思いますが、私どもは国庫補助の公務員住宅について、資材を国が一括して買い取つて、これを現物で配給する。こういうことによつて資材費を節約できるという見通しで、実は二十三年度におきまして相当の予算を組みまして、住宅用の資材を建設省が一括買いつけて、地方庁にこれを配給しておつたわけでございます。この成績を見ますと、当時としてはある程度の成績を上げたのでございますが、今日の時代から申しますと、こういうことによつて調達費を引下げるという面はあまりないように考えます。あと残るところは建築費を下げるためには、むしろ大量建設とか、何かそういう面でコストを下げる道が考えられるわけでございますが、これはこの金融公庫による方式が、大体において個人々々が自分の住む家を建てるその資金を供給するということになりますので、そういうことを原則とするというわけにも参りませんので、これは実際の運用におきまして、ある程度集団的に割安に家を民間業者なり、あるいは公共団体などがまとめる何戸かを一団地に建てる、そういう新築家屋に対する融資という道が開けておりますから、その面で行きましたならば、一団地に二十戸、三十戸まとめて建てるということになりますと、あるいは五分か一割か、そういう生産費のコストの引下げが考え得ると思います。実際の運用につきましては、できるだけ建築費をそういう方法によつて引下げて、一般国民に対してサービスをするようなことを考えて行きたいと思つております。
  78. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまは、大体建築資材の国内産に関するものについてのお答えであつたと思いますが、なおぜひ建築に必要なもので、国外産のもので輸入しなければならないものも若干あろうかと思われます。たとえば防水のルーフイング等に使われますアスフアルトのようなものでありますとか、あるいはまたただいまちよつとお触れになつたようでありますが、鉄筋等においても同様であります。あるいはまた過去において考えまするならば、米松のようなものであるとか、南洋のチーク材のようなものであるとかいうようなものもありまして、相当絶対量を安く、しかもよいものを入れておつた過去の経験にかんがみまして、私のお尋ねしたいのは、つまり政府としてのそういう資材の操作を全体的に見てやる御用意があつたのか、なかつたのか、この点がぜひ必要なことではなかろうかと思つて、この点に対しまする操作があつたかどうか、また今後これらのものを安くよいものを入れるとしたならば、今までの、たとえば価格差補給金や対して今とつておりまする政府の態度が適切であるかどうかという批判の対象ともなると思いますので、実は国内産ばかりでなく、国外産のものも輸入して、この建築に必要なものに対する政府の今までとおりになりましたこと及び御見解について、もう一応この生産コストを安くするという観点からお答えを願いたいと思います。
  79. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 この資材につきましては、いろいろ関連性がございますから、この金融公庫によつて建てる家だけでは考えられないものでございまするが、また直接にこの資金の賃付によつて建つ家につきましては、大体におきまして木造とか、簡易耐火とかの小住宅、それからもう一つは鉄筋コンクリートのアパートが考えられているわけでございますが、これに必要な資材につきましては、セメーント、鉄鋼、木材その他ルーフィング材料などは多少別な事情もございますが、大体におきまして、国内産のもので十分間に合うわけでございまして、外国に依存するというものではないと思います。用材その他の木材なんかにつきまして、全般的に考えますと、国内産では足りないと申しますか。現在は足りておりますが、相当過伐になつておるという関係から申しますと、外国から木材を入れる必要もあるはずでございます。しかしこれは相当輸送費その他を加えました内地渡しの価格の点におきまして、かなりわれわれの方としましては使い切れない値段になるのでございます。それにはまた外国材でなければならぬ部面もございますから、そういう面に木材の輸入を考えまして、こういう小住宅などの用材につきましては直接国内産のもので行く、大体こういう方針で進めております。この関係は建設省直接でございませんけれども、安本や農林省を通じてそういうふうに話し合つておりまして、木材全体の不足の分をカバーするためには、別な面で輸入する。直接住宅用材などは内地産のものでまかなう、こういう方針をしばらくはとらざるを得ないと思つております。昔は米材などは相当安くて、一般庶民住宅などに非常にたくさん使われたのでございますが、今日はかなり事情違つておりまして、ちよつと採算の上から外材を使い切れないような状態でございます。
  80. 笹森順造

    ○笹森委員 資材の面でもう一つだけお尋ねしておきたいのでありますが、最近建築用材として過去においてほとんど見捨てられておりましたような材質のものが、活用せられて来て、大分注意しなければならぬ面があるかと思うのであります。つまり針葉樹でなくて濶葉樹のものであつて、相当にフロアなどに使われるものがあるようであります。たとえて申しますならば、東北一帶に産出せられますぶな材のごときはこれが最近非常に床板といたしましては、従来まきとして捨てられておつたものが、有効に使われるというような面があるように思われるのであります。この木材の需給に関する国内的なものをおもに使うという面について、それらの御研究がどの点まで進んでおられるか。実際また今まで捨てられておつたものが、有効に活用せられるという面についての政府の御調査があれば一応承つておきたいと思うのであります。
  81. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 ぶな材、濶葉樹などは建築方面にかなり使用ができる面がございまして、これにつきましては住宅担当のわれわれといたしましても、いろいろの御相談も受けますし、そういう需要を拡張しで行くという面にいろいろ協力をいたしておりまするが、たとえば家具だとかあるいは今お話のフロアリングだとか、それから合板などにもことに利用されておりまして、合板もかなり住宅に使つております。特に進駐軍関係の住宅などに相当使つておるようでございます。ただこれのう少し詳しい專門的なことになりますと、われわれの方は專門でありませんので、そういう点についてはいろいろ農林省の方の知恵を借りて、利用者としていろいろ意見を述べている程度でございます。きようは資料もありませんし、十分なる御説明ができない次第でございます。御了承をお願いいたします。
  82. 笹森順造

    ○笹森委員 次に本法案の第十七條第  一項第二号に掲げております住宅組合に関することについて二、三お尋ねしたいと思います。住宅組合法による住宅組合の設立許可の現状はどうなつているのでありましようか。ある地方においてはこの設立許可は非常に消極的である、あるいはまた中止しているというような状況にあるやにも聞くのでありますが、そういうことがあるかないか、またこの政府の公庫の運営上、このところに掲げております第二号の住宅組合というものは、将来奨励して行くお考えであるかどうか、その態度についてお尋ねしたいと思います。
  83. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 ここに十七條にあります住宅組合は、大正十年にできました住宅組合法に基くものでございます。これは設立当初数年の間相当活発に運用せられたものでありまして、資金は預金部から出まして、これを府県に貸し付け、府県が転貸をいたしております。それから組合の設立認可は府県知事でございます。この預金部から流れて参ります資金に応じまして、府県知事が適当と思われるものを十分審査の上、認可を與えて実行して来たわけでございます。ところがこの預金部資金が十分出なくなり、組合には融通ができないことになりまして、事実上資金の融通による組合というものは、相当長い間ほとんどもう実際上眠つております。わずかに旧住宅営団の処分に関連いたしまして、これを入つている人に買つていただく、こういう関係から最近におきましてわずかにこの組合法を溝用しているようなわけであります。今回この金融公庫の資金が流れますにつきまして、この組合法を  一部利用しようという考えでございますが、これは当初においてやりました  資金と組合認可権と同時に府県知事が握つてつた場合と多少趣を異にするわけでありまして、金の方は金融公庫から出る、組合の認可権は知事が持つている、こういう関係でございます。資金の融通という関係なしにつくる組合については、これは知事の独断でやつてよろしいのでありますが、この資金を当てにした組合の設立につきましては、まず資金の貸付ができるか  どうかということが先決條件でございまして、これにつきましては金融公庫の貸付は全般につきまして申されることでありますが、なるべく公正に公平に、広く貸付の決定をしなければならなぬという根本精神にのつとりまして、組合の設立につきましても組合員個々の資格をまず審査して決定をするという必要があるわけでございます。もし、これを逆にいたしますと、組合を設立すれば個々に優先的な扱いができる、特権ができる、こういうことになりまして、この公庫法の運用の根本精神を逸脱することになりますので、これはどうしても資金の貸付をまずきめる、貸付をきめるには構成する組合員の資格をまず審査をいたしまして、それで貸付ができるということになつてから組合をつくり、組合の認可をとる、こういう段取になろうかと存じます。結果としましては、組合というものを別に特別の優遇をする考えもございませんし、特にここに二号に組合ということがうたわれているのは、何か非常に特権があるかのごとくしばしば誤解されるのでございますか、運用につきましては当然のことでありますが、個人と同等に扱つて行きたいというふうに考えております。ただここに善きましたのは、貸付の対象はあくまでも組合員でなく組合に貸し付けることになりますので、法律と形としはこういうふうに第二号に特に組合と出て来るわけでございまして、実質的の審査なり貸付の決定なりは個人とまつたく同様に考えて行きたいと、こういうふうに考えております。
  84. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまの御説明によつて第一項の第二号にある組合というのが法人として貸付の対象になるのであるが、実際は個々の借りる人の資格なりあるいはまた必要性なりがどこまでも本質的なものになる、こういうことでありますならば、第一号との間に、恩恵を受けますと申しましようか、これを利用する人に対する得失においては別に相違がない、こう承つてよろしゆうございますか。
  85. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 よろしゆうございます。
  86. 笹森順造

    ○笹森委員 そうでありますならば、むしろこの場合にわざわざ組合をつくつて、大正十年の住宅組合法における組合が、この組合員になることによつて、むしろ負担ばかり多くあつてそうして今度の公庫による金の利用に関しての特別の特権がないとすれば、個人としてむしろ第一号によつた方が便利なように、実際これを利用する者は考えるような傾向になりはせぬか。こういうことを考えますが、その考え方についてはどうお考えになりますか。それと申しますのは、この組合を奨励するかしないかということを問うたときに、特にこの組合を奨励する考えはないのだ。こういうことを申しますならば、なぜ第一号と第二号との間にこうした特別のものを設けたかという根本について疑いを持つわけであります。つまり私どもが受けました印象は、第二号に組合というものを置いたことによつて、何か特別な特権がある。たとえば一括してこれを申請する場合に便宜があるとか、あるいはまた組合全体が連帯責任として彼此相助け合うとか、何かの便宜があつてこそ、組合を設立して一口五千円なり幾らなりを拂うという意義があるけれども、それが全然ないとすれば、意義がなくなる。それならばなぜそういうものをこの貸付の対象として二号へはつきり出したかという疑いが出て参るのでありまして、その辺のことを私どものわかるように御説明願いたいと思うのであります。
  87. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 この問題につきましては、われわれといたしましても、いろいろな面から非常に研究いたしたのでございますが、お説の通り個人とあまり差はないのでございます。借りる方の側といたしましてはあまり差はございません。貸す方の側としては組合を対象としておりますから、初めの審査などは個人々々で審査いたしましても、貸付の対象としては十人なり二十人なりとまとまつたものでありますから、その点において多少事務が省けるという便宜があろうかと思います。一般の市民が組合をつくつてやるということにつきましては、借りる方の側としては大した利点はなかろうと存じます。ただしかしこういうふうな組合で行きたいという希望がありました場合に、これを全然対象にしないという必要もなかろうと考えます。  もう一つ、これの意義と申しますのは職域におきましてある会社の従業員がこの組合法によつて住宅組合をつくる。そうしてその組合に対してはその会社が、個人々々では負担できない相当の頭金を、退職金の引当てか何かで貸してやろう。補助してやろう。あるいは債務については保証面に立つて保証人になつてやろう。資金の回収については会社が一括して月給からでも差引くとかいろいろありましようが、こういう方法で拂つてやろう。そういう職域を單位とする組合については借りる方としても、貸す方の側としても、いろいろ特典がございますので、こういう場合については個人々々の信用薄弱な場合でも、会社なり企業体なりがかわつて責任を負う。こういつたようなことから言つても、何と申しますか、ある程度の優遇の道を開いてもいいじやないか、こういうことも考えております。そういう面からの運用も考えられますので、この運用についてはそういう面も十分研究してやつて行きたいと考えております。従つてこの二号を全然削除してもいいじやないかというふうには考えておりません。
  88. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまの御説明によりまして、組合というものも何かある意味の特長があるということでありますならば、最初に第一号によつて個人で貸付のきまつたものが、その貸付が確定した後において、数名集まつて組合をつくるというような希望がもしもあつた場合に、それを新らしい組合としてお取扱いなさる道があるかないか、その点もお尋ねしておきたいと思います。
  89. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 それはけつこうでございます。貸付がきまつた人が集まつて組合をつくるということは、公庫の側としては、非常に便利なことでございますし、これは非常にけつこうなことだと思います。またすでにできておる組合についても、あらためて個人個人について信用程度を調査いたした結果、みんながよければそのまま組合を対象として貸付ける。あるいはそのうちに一人、二人ぐあいの悪い人があれば、それを除きましてほかの人について組合を結成し直すわけですが、しかしその場合には組合を対象として貸付けるというようなことも考えられるわけですから、その組合は本来連帯責任を負うというところに一つの大きな特長があるわけでございますが、この組合法を実際施行した結果から見ると、連帯責任というようないい面もありますが、一面悪い方の面も相当強いのでございます。連帯責任とするがために、一人が抑えないということになりますと、ほかのものもこれに同調するような、全体が不拂になるような危険もございまして、單に連帯責任を負うということだけではほんとうの信用を置けるかどうかということに非常に大きな疑問を持つておるわけでございますが、今お尋ねの点についてはわれわれも同じに考えております。
  90. 笹森順造

    ○笹森委員 さらに第十七條に書いてあります貸付の資金の配分についてお尋ねしたいと思います。  先だつてこの委員会でできるだけ公平にこの資金の分配が行われるように規則を定めて、申込みを受けて後に調整するような御答弁があつたやに拝承いたしましたが、さらにお尋ねを申し上げたいことは、この規定の中に第三号のものに対しては全体の百分の三十を使う、そうするとそのわくが大体きまつておるように考えられますので、つまり百五十億とすれば四十五億ということになるのでありましようが、そうすると残りが第一号と第二号で百五億こういうことになろうかと思うのです。そこで第一号と第二号の間にもあらかじめ何かわくの予定のようなものがあるのか、あるいはまたそこには機動性があるのか。これを伺いたい。なぜならばこの組合によつて申し込むのが有利であるか、あるいはまた個人で申し込むのが有利であるかということについての実際の利害関係を持つておる者が、非常にこの点について神経を働かしておるような状況でありますので、あらかじめわくがきまつておるものであるかないか、これをどういう方法で公表するのであるか、その点のお尋ねをしたいと思います。
  91. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 第三号につきましては、わくを別に設けまして、これは百分の三十以内において会社、法人の希望によりまして、そのわく内で決定したいと思います。あとの一号と二号と別わくにしてはどうかという点につきましては、なるべく個人々々に公平にという見地から言いまして、大体今のところわくをわけずに、一体としまして、單に地域的なわくによつて決定して行きたいと思つております。地域的の一つのわくにおきまして、個人と組合の両方の申込みがある場合には、組合についても、この組合個々について審査をいたしまして、かりに申込みがわくを超過する場合には、同じ機会が與えられるように同じ公開抽籤の方法によつて決定する、そうして資格を與えられたものについて、組合を結成すべきものはする、こういうふうに考えております。職域の組合について一つのわくをつくるかどうかという点は、なお研究してみたいと思いますが、この場合におきましても、技術的になかなかむずかしいのでありまして、ある会社にどれだけのわくを與えるということになりますと、その会社について優遇したというような結果になりまして、特別な扱いをするというような結果になつてはいけないと思いますし、何かわくのきめ方も公平な行き方ができるものならそういたしたいと思いますが、ただいまのところでは、とりあえずこの一号、二号は一括して取扱うように一応やつてみたいと考えております。
  92. 笹森順造

    ○笹森委員 第十七條の第一項の第二号についてもう一つお尋ねしておきたいと思います。それは今度提出されます法案と、それからすでに出ております法律との間に多少の食い違いがありはしないかという点であります。あるいはないのかもしれないので、お尋ねしたいと思います。すなわち住宅組合法の規定の中には、直接組合に対しては金が行くことになつておらぬで、府県、市町村から金が行くことになつております。そうして住宅組合にこの国の金融公庫の金が行くということを、この新しい法律できめましても、前の住宅組合法においては、その組合が国から来る金を受けるという受入れの條項がないようでありますが、これはどう処置なさるつもりでありますか、お尋ねいたします。
  93. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 その点なおよく調べてみたいと思いますが、住宅組合法におきましては、この資金を公庫から出すということは規定しておらないと思います。実際問題として、預金部の金を府県から転貸をして今までやつてつたのでありますが、公庫からの資金の受入れにつきましては、別に法律上はさしつかえないものと考えております。
  94. 笹森順造

    ○笹森委員 この住宅組合法、大正十年四月十一日の、法律第六十六号の第十二條には、「北海値地方費、府県又八市町村ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ住宅組合ニ対シ住宅資金ヲ貸付スルコトヲ得」とありますけれども、今回は国が貸付をすることを得ということはないのであります。ただ十五條に、「国、北海道地方費、府県、郡又ハ市町村ノ所有ニ属スル土地ハ随意契約ニ依リ住宅組合ニ之ヲ売抑又ハ貸付スルコトヲ得」と土地に関してはありますが、資金を住宅組合法による組合が国から受けるという受入れ條項がないから、実はお尋ねしたのであります。その点についてはつきりしたお答えを願いたいと思います。
  95. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 第十二條の規定は、別に国家からの資金の供給を妨げるものではないというふうに解釈しておりますが、なおよく研究してみたいと思います。ただいまのところ、その規定はこの公庫の運用については妨げはないものと考えております。
  96. 笹森順造

    ○笹森委員 その御解釈であるならば、また実際に行われるならばさしつかえないのですが、ただ法律的に疑義が起つたからお尋ねしたのです。この上ともなおもつと御説明くださることがあれば伺いたいと思いますが、きようはその点はそれでよろしうございます。  次に住宅組合は組合員の申込みを組合がまとめて代行できるかという前の質問に対しまして、はつきりとした御答弁がなかつたから、もう一回それをお聞きしておきたいと思います。つまり連帯責任のことにちよつと入つたのですけれども、やはり個々がやるのか、組合がまとめて公庫に申請するのか、その点をもう一度、先ほどお答えがなかつたからお尋ねしたいと思います。
  97. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 申込みは組合でありましても、組合員たる個人でも、どちらでもさしつかえないと思います。ただ審査はいずれにいたしましても、個人々々について審査をして決定することになると思います。
  98. 笹森順造

    ○笹森委員 その次は第十八條に関することでありますが、この前に天野委員からもお尋ねがありまして、ある部分のお答えは了承したのでありますけれども、もう少し伺つておきたいと思います。それはこの資金が公平に希望しておる人に渡りますためには、單なる金融機関、銀行、無毒等に材料を集めさせるだけではいけない。また審査に関しましては、局長のお話ではあるいは協議会のようなものをつくつてみたらどうかというような御構想もあつたようでありますが、この協議会のようなものをつくるといたしますならば、その構成はどうなるのか、これに対して天野委員の希望としては、地方の県等の当局にもその機会を持たしめてやらしたらよかろうというようなお話もあつたのについて、はつきりとした御答弁を私自身は伺わなかつたように思うのでありますが、なお一夢進めて、やはり需要者の代表のような者も、ここに出しまして、そうしてこの協議会というようなものをつくる。單に金を貸すという方面の人ばかりではなくして、住宅を必要とする方面の人もその中に入れなければ、ほんとうの公平は期せられないのではないか。つまり資格において資金の回収の面のみに重点を置かずに、必要性がどこにあるかという点がやはりこの法案のおもなる趣旨の一つであります関係上、そうした審査の協議会のようなものでもつくる場合には、資金を借りております方面の人も構成分子の中に入れることをお考えにならなかつたかどうか、その点をもう一度お尋ねしておきたいと思います。
  99. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 公庫の諮問機関としまして、大体都道府県ごとに協議会を設置する予定でございます。この協議会のメンバーにつきましては、まだ確定的なものでございませんが、大体におきまして、公庫の支局なり本部なりの担当職員一人それから都道府県の職員一人、もしくは二人、それから関係市町村の職員一人、それから関係受託金融機関の職員、銀行などの職員を代表する者一人、それからあと一般の需要者側を代表いたします民間人を二人、大体六、七名程度のもので構成いたしたいと思います。場合によりましては、これは都道府県でございますが、その分科会のようなものを当該地に設けまして、なるべく末端の方へ目がとどくように貸付につきまして、借りられる方の側でいろいろ不服などがある場合に、そういう声を聞く。そうしてこれを公庫の運営に反映さすというふうになるべく末端の方まで浸透するような機構にして、民間の人も入れて行きたい。これによつて都道府県の職員などは、その都道府県の、あるいは市町村の方は民間の利益代表という面もありますし、単なる金融事務に陷らないように、また地域間のバランスもとれると思いますので、比較的そういうメンバーを多くしようと考えておるわけでございます。
  100. 笹森順造

    ○笹森委員 この申込みが、予定しております融通額以内でありますならば、申し込んだ者が全部その率に従つて融資を受けるでありまじようけれども、もしも申し込みをする者が非常に多いという場合には、一体申込みの金高を滅して行くのか、あるいはまた申込みの金額全体を貸すことを抽籤のような形でやつて行くのか、その方針はどちらでありますかお尋ねしたいと思います。
  101. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 住宅資金を借りようと考えておられる方には、直接重要な関係がある問題でございますが、この間天野委員からも御注意がありましてただいままた同じような御趣旨のことがございましたが、われわれも大体あまり金融機関的にならないように、銀行的と申しますか、金融の面から強く行かないようにということは十分計画におきまして配慮いたしております。また運用におきましてもそういう趣旨で参りたいと思つております。  貸付の実際の方法をごくかいつまんで申し上げますと、貸付の対象になるし申込みの資格をまずきめる必要があると思いますが、この條件といたしましては、現在住宅に困つておるという事実がなければいかぬと思いますが、これにつきましては、いろいろな具体的な例をあげまして、これは広く住宅に困つているという見地からきめたいと思いますが、あまりこれも厳重な意味でなく、広く困つておる人ということでやりたいと思つております。それから独身者でなく、世帯を持つておるということが一つ條件、それからもう一つ條件は、償還能力があるということが必要でありますが、この点につきまして、ただいま御懸念の点が考えられるわけでございますが、個人の資産内容——資産がどうであるか、銀行預金があるかどうかというような点につきましては、銀行に委託する場合におきましても、調べてもらはないつもりでございます。当初の頭金の三万円、五万円という金が出し得る。着ておる着物をはいででも調達がきるというならば、それでもけつこうでありますから、資産の内容については調査をしないという方針でございます。ただ月々の千五百円なり二千円なりの償還ができることが必要でありますので、ある程度の收入がある、定収があるということについては調査しなければいかぬと思います。全然定収がないというような場合には、これは失格せざるを得ないと思いますが、大体その程度のことを調べまして、そうしていろいろ申込みの記載事項がありますが、大体そういう観点からいろいろな事項を書いていただきまして、その事実に間違いがなければ、一応の審査が通つたものといたしまして、これが貸付のわくを超過いたします場合には、平等に公開抽籤の方法によつて一応の候補者を決定をする。そうしてこの場合に、なお次に審査がございますから、そのために多少の補欠をきめておきたい。かりに百件分の資金があるという場合に、二百件の申込みがあるという場合には、百件を決定いたしませず、そめほかに二十件とか三十件の補欠をきめておく、そうして百件の抽籤に当つたものについて審査をして参りまして、ただいまの収入がどうか、定収があるかどうか、住宅の困窮事情がうそじやないかどうかというような点につきまして調査をいたしまして、その通りであれば、順次貸付の実際の申込みを受付ける。そうしてその審査の結果不適格なものができましたならば、補欠からだんだん繰上げて行く、大体こういつたようなことで、年に二回か三回か締切つて抽籤をする、こんなことに考えております。
  102. 笹森順造

    ○笹森委員 御丁寧な御説明で、その点はよく了承いたしましたが、公開抽籤はどういう方法でやるか、具体的な方法をおきめになつておるならば、非常に興味を持つておるようでありますからお示しを願いたいと思います。
  103. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 公開抽籤につきましては、現在国庫補助の庶民住宅について行つておりますが、だれでもそこへ立会うことができる。貸付の申込みをした者は、だれでも立会うことができる。それから公庫が実施するわけでありますが、そのほかに、たとえば今の協議会の構成員というようなものが立会うとかいうことで、ガラス張りの中でやるようにいたしたいと思います。どういう範囲で抽籤をきめて行くかと申しますと、これは全国一本にやるわけに参りませんので、都道府県別にと申しますか、さらにおろして市の單位にいたしますか、何か適当な範囲をきめまして実行いたしたいと思つております。
  104. 笹森順造

    ○笹森委員 次に第二十一條第五項の抵当権の発動について少しばかりお尋ねしたいと思います。これは既律の償還分に対してはどういうぐあいに処置せられるか。この償還した分は没収になるのであるか、あるいはまた拂いもどしされるのか、もし拂いもどしするとすれば、全額拂いもどしか、あるいは何割か、この点を伺いたいと思います。
  105. 前田榮之助

    前田説明員 抵当権をつけましても、既往の、さきに償還になつております分はもちろんとる必要がありませんから、換価処分をいたしまして、相当超過したものならば当然その額は本人に返します。
  106. 笹森順造

    ○笹森委員 次に第二十一條の第四項の第九号に契約違反のことが規定されておりますが、一号から八号まであることのほかに、契約違反ということはどういうことを意味するのであるか、そのことをひとつお示しを願いたいと思います。どうもはつきりわかりません。何が一体契約違反になるのか。それならばこのほかに契約違反は何があるのか、お示しを願いたい。
  107. 前田榮之助

    前田説明員 契約の内容は現在研究いたしておりますが、この一から八にあります以外に、たとえば火災保険をするとか、あるいは住宅担保権に対するそれぞれ維持補修を完全にするとか、あるいは大改造をするときには承認を受けるなり、その他の事項があげられると思います。そういうふうな事項に対して違反のあつた場合に契約違反になる、こういうことであります。
  108. 笹森順造

    ○笹森委員 そのことは、契約する場合にははつきり入れてきめておきますか。
  109. 前田榮之助

    前田説明員 はあ、入れておきます。
  110. 笹森順造

    ○笹森委員 そのことがあればいいですが、次にもう一、二ですぐ終ります。  これはあるいは大蔵当局に質問したらいいかもしれませんが、この金融によりまして、今の契約違反に対しまする処置の方法も、これに出ておるようでありますが、元来安全なる立場から言うならば、全額拂込みをするまでは国家の所有としておいて、所有権の移転はしないということの方が安全ではなかろうか、国家という立場から言えばそうではないかというようなことも考えられるのですが、この点はどうお考えになりますか。
  111. 前田榮之助

    前田説明員 この公庫の根本の考えは、個人に住宅を與える、その場合に債権を確保するために抵当権をつける、こういう趣旨でございまして、それと実際上の実績を聞いてみましても、売渡し抵当の形をとらなくても、こういう形においてもほとんど同じような効果を得ておりますので、特に全額償還が済むまで国に所有権を置く必要はないと考えます。同時にまた、あらかじめ本人の所有にしておきますことの方が住宅を維持し、管理する点におきまして、自分のものであるという感じが相当強く出まして、むしろ建物の保管の面から見て、こちらの方が非常に有益でございますので、初めから本人の所有にいたしまして、抵当権で債権を確保して行くという方法をとつたのであります。
  112. 笹森順造

    ○笹森委員 実はこの間もこれに関係した質問があつたのを、あまりこまかいというので質問者が遠慮したようでありますが、私は実は逆のことを申しておつたのであります。つまり借ります人ができるだけ負担を少くするためには、租税等についても免ずるということに行つてもらいたいものだ。つまり所有権を移転せずに、それを全部拂込みするまでは国家のものとして税金をとらない。免税にする一つの方法として実はお尋ねしたようなわけでありまして、法的に国家のものであるから——使用するという面についての金を拂うのはあたりまえでしようけれども、いろいろ公租公課等が大きくなるということを防ぎ、救つてもらうという話の面です。今のあなたの話ではこうする方が救われるようですが、私の方は逆に利用者のためになる意味でお尋ねしたのですが、その点はお考えなつたかどうか、御意見を承りたいと思います。
  113. 前田榮之助

    前田説明員 公租公課の点は、固定資産税が相当巨額になりますので、完済でやることはどうかということでありますが、またこれを償還ができるまで国に保留しておいて、その間は公租公課を国で負担して行く、あるいは免除するという方向についてはという御指摘は、非常に有益な御意見と思いますが、実はそこまでする必要はないと考えまして、一応こういうことの方がいいだろう、これ以上そこまで考えて国が債務を完済するまで所有権を持つということは、実は考えなかつたのでございます。さらに研究を続けまして、そういうことがもし可能であるならばけつこうだと思います。
  114. 笹森順造

    ○笹森委員 次に第二十二條にありまする「災害その他特殊の事由により」ということであります。この特殊事情ということは、相当利用者について将来を考えて心配される点でありますが、つまりいろいろと経済界の変動等によりまして、勤労者等が給料の政策上による賃下げ等があり、あるいはまたパニックその他の思わざることによつての失業その他のことがある場合に、非常に深刻にこのことが考えさせられるわけであります。そこでこの特殊事情というものは、無論予想してどういう場合とどういう場合とは中されませんでしようけれども、先ほど来局長が懇々と説明になりましたように、利用者の便益ということを主にして考えまする意味におきまして、この特殊事情は、一体どの点まで特殊事情として考えられるか。ただいま申し上げましたように、せつかく考えておりましたこの収入がなくなつた、あるいはまた賃下げ等が政策の上で出て来た、あるいは将来万一平価切下げ等が行われたというような場合に処して、やはり一応立案者においては特殊事情というようなことを勘案されたと思うのでありますが、これらの懸念に対して心を配られた点についての御説明をこの際承りたいと思います。
  115. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 第二十二條の災害その他特殊の事情という点でございますが、これにつきましては、平価切下げとかいうような、国民全般に関する問題につきましては、こういう簡單な規定によりまして——全体の公庫の運営につきまして非常に大きな影響のあるようなことは、この條項では考えておりません。かりに将来、全般的に経済事情の変化というような事態が起きましたならば、これは当然に法律をもつて規定せらるべきものと考えております。ここに言うております特殊事情は、あくまでも個人々々の場合で、災害とか、風水害とか、そういつたような場合に準ずるものでありまして、仰せの通りこれを具体的には、ただいまのところ考えてはおりません。これはなるべく運営するものとしましては、制限的に考えて行きたいというふうに考えております。
  116. 笹森順造

    ○笹森委員 次に第二十八條第三項の、委託業務を行う金融機関に預ける資金についての利子は、これをとるのであるかとらないのであるか、この点を、こまかいことですが、一応お尋ねしておきます。
  117. 前田榮之助

    前田説明員 公庫はその資金を委託機関に必要最小限度の金を預託いたしますが、その場合ばもちろん預託の金利をちようだいしたいと思つております。
  118. 笹森順造

    ○笹森委員 最後にもう一点だけお尋ねいたします。第三十四條に関してでありますが、この貸付金の使途の規正として、貸付目的以外に使用せしめないことはむろん当然だと思います。そのために工事施行者に対して直接に資金を交付するということはありまするが、この点について実はお尋ねしたいのであります。と申しますのは従来建築物の注文者が前渡金を渡しておりながら、遂にその工事ができ上らないというような例をたびたび見ているのであります。そこでこのことは事業施行する建設業者のためには非常に都合がいいのでありますが、この両者の面についてのことは一体これで満足なのかどうなのか、つまり施行する人に直接公庫から金を渡すことになると、この注文者の真の意思が伝わらないということに一応なりはしないか。そこでお尋ねしたいのは、そういうような場合には一体どれだけ工事が進捗したときに、どれだけの金を渡すという規定があるのか。また実際それを渡すときには、その金をかりた責任者に十分な理解をさしてやれる方途があるかどちか、それを聞きたい。金融公庫の法律は非常にいい法律でありますけれども、結局するところこれが單に建設業者を利することに終つて、ほんとうの利便が利用者にないということがいささかでもありますれば、この点については十分警戒を要するのではないか、こういう点から、重ねてこの一点をお尋ねしたいと思うのであります。
  119. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 この三十四條につきましては、これは一つの例示でございまして、施行者にひもつも融資をする。その他そういうような方法で資金の交付については適切な方法をとるほかに、流用せられますことを避ける何かの方法をやるという一つの例示でございます。こういう方法をアメリカでもとつているということを聞いておりますが、これも信用の程度でございまして、実際建てるためにこの資金を使うのは施行者でございます。材料を買つたり、労務賃を拂つたりしてやるのは工事施行者でございますから、金が直接そこへ行くことが一番早くて、資金が効果的に使われるということが原則的には言われるのでありますが、この施行者によりましては、かえつてこのために貸付を受けた人の利益が阻害されるということもございます。この両方の面があつて、一概に言えませんので、必ずこうするというふうにはなつておらぬのでございます。なおよく研究してみたいと思います。また実際の運営についても、あまりこれをきゆうくつに考えませんで、適切な運営をして行きたいと思います。  なおこの施行者に金を支拂う方法でございますが、貸付を決定してから、この建主が頭金大体四分の一以上のものを負担するわけでございます。まずこれで材料を買うなり何なりして、ある程度の工事を進めてもらう。そうしてある程度工事の進捗を見届けた上で、たとえば木造で言いますと、建前が完了した場合に、現場を検査して、なるほど家が建つたというところで、この貸付の第一回を出したいと思います。大体その場合に四割程度のものを交付することにしたいと思います。この金を延着の方に渡すか、施行者の方に渡すか、こういうことになるわけでありますが、この点は先ほど申した通りであります。それから中間において、木造の場合には屋根葺き材料が域つて、荒壁が大体できた、こういう中間におきまして一回、これも現場を見届けました上で、大体三割程度のものを貸し付ける、それから竣工しましたときに、これで実際全部でき上つた、あしたから生活ができる、こういうところで残額を支拂う、こんなようなことにいたしたいと思つております。
  120. 淺利三朗

    淺利委員長 八百板正君。
  121. 八百板正

    ○八百板委員 まずこの公庫が設立せられるに至りました経過を明らかにしていただくという意味合いにおいて、簡單な数字をもつてお答えを願いたいと思いますが、戰後における日本の住宅の不足の状況並びにそれが年を追つてどのように緩和されて来たか、その建設の緩和のテンポ等について簡単にお答えをいただきまして、あわせてこの公庫の実施によりまして、将来この計画の実行によりましてどれだけ住宅の緩和が実現せられるかというふうな点について、その見通しを伺いたいと思うのであります。
  122. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 住宅の不足数と申しますのは、毎度この委員会でも申し上げておりますが、なかなかつかまえにくい数字でございます。たれも屋根の下に住んでおりますから、一応不足数はないとも申せますし、また人の家に同居しておるというだけが不足数でありますなれば、これは大体全国二百万戸程度でございます。これは一昨年の住宅調査で明らかになつております。しかし同居しておる人が必ずしも住宅を必要としておるというわけでもございません。これが平時においても同居というものはあるパーセンテージあるわけでありますから、そういう関係もございます。またりつぱな家に住んでおりましても、非常に職場と離れておりまして、何時間も通勤のためにかかるとか、いろいろな関係がありまして、住宅不足数ということを的確に、科学的につかまえますことは、なかなか困難でございます。さればと申しまして、全然数字なしにはいろいろな政策は立てられませんので、一応建設省としてはいろいろな推定をいたしております。空襲で何戸滅失したか、防空対策として強制疎開、家のとりこわしをやつておりますが、そういうような戸数とか、そういうことによつてつた数とか、引揚者などで新たに人口がふえた、これに対する住宅の必要数とか、戰時中に家の形はありましても、事実もう使えない程度に腐朽して来ておるといつたようなものを推定いたしまして、終戰直後において四百二十万戸、これらの原因を見ましてこれだけ住宅の不足があつたというふうに一応押えております。その後家がだんだん建つております。この数字も非常に的確なものではございませんが、届出によります統計をとつておりまずが。これが現在までに二百四十万戸建つております。一方火災とか風水害などで家が滅失しておりますが、これが三十五万戸ございます。それから自然の腐朽、これは家の形はあるのでございますが、当然もう住むにたえないといつたようなものの推定が五十万余りございます。それから海外引揚げのほかに、人口の自然増加が終戰後特に多いのでございますが、これを一世帶五人なら五人というような推定をいたしまして、これに関するものが八十万戸ほど必要である。これらを差引勘定いたしますと、現在大体三百五十万戸ほどの不足がある。この仮定がいろいろと議論のある問題が非常にあるのでありますけれども、一応建設省としましてはなお三百五十万戸程度の不足があるというふうに考えております。それをさらにいろいろな資料によつて、この中でも特にあまり長くはうつちやつておけない、ほんとうの意味の住宅困窮者というものを、たとえば住宅調査によりまして一人当り畳数が一畳半にも満たない相当過密居住になつておるものとか、職場からの相当の遠距離通勤とか、家族が別居生活をしておるとか、そういつたようなこの三百五十万戸の中でもかなり深刻に困つているものを推定いたしますと、大体百万世帯くらいになるのであります。その中には自己資金で建設できるという方も相当含まれておりますので、国が資金的に何か援助をして行かなければいけないだろうというものが、七、八十万程度はあるのじやないかというふうに推定をしております。この七十万戸ほどを、計画的に、そう長い期間でなく資金を補給いたしまして建設する必要があるのでございまして、これを大体五年程度と考えて、国庫補助の庶民住宅と、それから資金の融通とによりまして建設して行きたい。これは予算などが年度計画で、長期の計画にはなつておりませんから、ほんとうの意味の計画にはなりませんけれども、一応建設省のこれから毎年の予算を要求する場合のめどとして大体その程度のものを考えておるわけでございます。今年度は庶民住宅が二万七千戸程度、それから金融公庫によりまして、八万戸余りありまして、合せて大体十一万戸程度を供給する。これではちよつと五年計回ではこの調子で行きますと実行できないわけでございますが、なるべく五年計画でできるように将来は予算の獲得などに努めたい。あるいは別な面から資金を供給するように考えて行きたい。こういうふうに考えております。
  123. 八百板正

    ○八百板委員 この公庫が設立せられるに至りました住宅不足の状況を伺つて参りますと、結果といたしまして相当数の住宅困窮者があるのであるが、まずそのうち特に最も困窮していると見られる人を縮めて行つて、これに対する対策を立てたのである、こういうような御意向のように伺えるのでありますが、そういう角度からしてこの住宅政策がとられるといたしますれば、その方向は庶民住宅政策としてこの性格を一層強く持つことが当然の方向であろうと思うのであります。そう、うふうに考えてみますと、この住宅金融公庫の全体の法律の立て方は必ずしもそういう趣旨に沿つておらないように考えられるのでありますが、なぜもつと、たとえば小規模の住宅を考えて、最も困る人から先に、たとい融資するにいたしましても、そういう計画を立つて行くとか、あるいはまた金融の方式をとらないで政府の処置によつて家を建てて、これを貸し付ける、そういうような方法を特に避けられた理由はどういう点にあるのか、まずこの点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  124. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 金融公庫の法案に盛られております庶民性と申しますか、その庶民性の問題になりますが、その問題につきましてはなるべくただいまお尋ねのような趣旨で立案をいたしたつもりでございまして、たとえば三十坪を越える家には全然貸付をしないとか、標準単価というものはあまりぜいたくなものではないのでございますが、普通の庶民住宅、それより少しいいくらいの程度のものでございますが、それより坪当りの單価が二割を越えるものには貸付をしない。標準価格よりも三割も四割も高いものは一応大衆的なものでないと見て貸付をしないとかいうような、法案そのものにもそういう趣旨が盛られております。また実際の運用につきましても、なるべく小住宅低収入階層の方が有利になりますように金融をいたして行きたいと考えております。それから金融公庫め方は、それにいたしましても全体として非常に困つている低收入階層のものをあまり目標にしていないというような御懸念でございますが、これにつきましてはほかの委員からの御尋ねに対しましてもお答えしたのでございますが、これだけが政府の住宅対策とは考えておりませんので、住宅対策としては公営の貸家、国庫補助をする低家賃の貸家というものと、自己の住宅に対する資金の融通、こういうものを合せて一つの住宅対策と考えているわけでございます。そういう両建で行くという点についてはお認め願えるのじやないかと思いますが、今年度の予算におきましては、公共事業費はこの公庫の資金と比べましてやや少いのでございます。資金の貸付という面に重点を置かれているようでございますが、結果としてそうなつているようでありますが、将来におきましてはなるべくそういう点は是正して行くように、すなわち公営の貸家もなるべくふやして行くようにというふうに努力したいと思つております。ただ念のために申し上げておきますが、この貸家の経営ということは、個人企業としては現在では全然成立ちません。また公営の貸家にいたしましても、現在の計画は非常に少いのでありますが、それでも現在までに全国ですでに二十五万戸ほどの公営の国庫補助の貸家ができております。そして東京都その他の大都市などはかなり大きな家主さんになつております。このたくさんの貸家の経営ということには、いろいろこまかいことがございます。少し雨漏りがするとか、ふすまがいたんだとか、いろいろこまかい、つまり差配の仕事をいたしますが、これがなかなか公共企業体としてもすでに現在かなりの重荷になつておるわけでありまして、現在公営の貸家が非常に少いのでありますが、さればと申しまして、これをむやみにふやすということは、予算的に公共企業体としてもなかなか大きな重荷でございますので、できないと思います。結局するところ戦前における状態のように、民間の貸家企業ということがだんだん成立つようになつて行かないと、ほんとうに貸家の対策というものはできないわけでございますが、現在の経済事情から見ましてそれは望めませんので、とりあえず公営をやつておりますが、経営という面から申しましても比較的個人の住宅、これに対する資金的な援助という方法にかなり負担が多くかかつておるような結果になつておるわけであります。
  125. 八百板正

    ○八百板委員 簡単にお尋ねして簡單にお答えをいただきまして、能率を上げて行きたいと思うのでありますが、お話によりますと、小さいものの点にもめんどうを見るような考慮も拂われておるし、運用の面を通してもそういうようにやつて行きたいというお答えでありますが、そういたしますと、第十九條に掲げられました住宅の規格というものは、まず大きい方の制限をいたしておりますが、小規模なものについての制限はここに加えられておらないのであります。この点につきましては小規模なる住宅についても、その建設について融資の対象とするという考え方であるかどうか。この点も伺つておきたいと思います。
  126. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 簡單にお答えをいたしますが、小さい方の限度につきましては、法律には規定しておりませんが、実際の運用についてはこの法律の精神、健康で文化的な生活を営むに足るものという精神から考えまして、運用につきましては九坪程度を最小限に大体考えたいと思つております。
  127. 八百板正

    ○八百板委員 九坪程度を限界にいたしたい。なお健康にして文化的なる生活を営むに足る住宅という意味合いにおいて、さようにいたしたいという御趣旨のようでありますが、私どもはこの公庫の実際の運用を行つて行きます場合に、この公庫の基本的な性格というものを十分にこの際明瞭にしておかなければならぬと思うのであります。すでに同僚の議員がたびたびこの問題に触れられておるのでありますが、重ねて私はこの点について明らかにする意味合いにおいてお答えをいただきたいと思うのであります。ただいまの御趣旨によりますと、こり法律はすなわち憲法二十五條に規定せられましたところの、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という、この基本的な憲法によつて保障されましたところのわれわれの生活の権利、そういう考え方に基いて、この金融の方式によつてこの政策が取上げられたと私は考えたのでありますが、そういうふうに考えてよろしゆうございますかどうか。この点はつきりお答えをいただきたいのであります。
  128. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 ただいまの御指摘の通り考えております。ただ憲法で保障しております健康で文化的な生活という問題にも、そのときどきの一般の経済と申しますか、民度によりまして決定さるべきものと思いますので、ただいまのところではそういろいろな点につきまして條件をつけることはむづかしいと思います。九坪の家で一世帶が住むということは、必ずしも健康で文化的とは言えないのでありますが、ただいまのところその程度でやむを得ないこういうふうに考えておる次第であります。
  129. 八百板正

    ○八百板委員 一応百五十億という予算が組まれておるのでありますが、これは来年度以降は大体どういうふうな考え方でやるということで立てられておりますか。すなわち来年度以降は回収ざれた分だけでやつて行くというお考えであるか、それともまた新たに資金の別途の道を講ずるというようなことをお考えになつておられるか、この点もちよつと伺つておきたいと思います。
  130. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 回收が、木造の建物でありますと十五箇年で償還いたしますから、十五分の一が返つて来るわけでありまして、これはむろん新しい貸付にまわすのであります。ただ来年度以降におきましてもその程度のことでは、われわれ住宅政策を担当しておる者といたしましては満足できないのでありまして、先ほど大体事務当局としての計画を申し上げましたが、あの線によつて新しい増資も考えたいと思つております。
  131. 八百板正

    ○八百板委員 次に住宅融資の対象につきまして少しくお尋ねをいたしたいと思うのであります。さきに住宅組合の点についていろいろお話があつたのでありますが、御承知のごとく住宅組合法は産業組合法を母体として生れたものでありますが、この産業組合法はすでになくなつて、今日古い住宅組合法だけが残つておるという形になつておるのであります。この住宅組合の実績を見ますと、必ずしも芳ばしい成績は収めていないようでありますが、しかし一応これを取上げまして、融資の対象として考えておられるということにつきましては、もちろん私ども賛意を表するものであります、しかしまた同時に今日産業組合法がなくなつて、そのあとに協同組合という形において、協同組合がもうでき上つておるのでありますが、そういう趣旨に基きまして、ここに生活協同組合というものができ上つておるのであります。従つて生活協同組合は産業組合法に基いて、さきには佳宅の建設をやつた実績等もあつたのでありますが、この点につきまして、生活協同組合を対象として融資の対象に採用せられるのが。あるいは住宅組合の取扱いに準じてこれを取上げて行くというふうなお考えがあるかどうか、こういうような点につきましてお尋ねいたしたいと思うのであります。申し上げるまでもなく、協同組合法は国民の自発的な生活協同組織の発達をはかり、国民生活の安定と生活文化の向上を期することを目的として設立せられたのでありまして、この生活の安定はすなわち住居の安定にかかつておるという考え方のもとに、協同組合は住宅事業の経営を相当大きく坂上げられると考えておるのでありまして、この際住宅総合に対する融資対象の取扱いと同じような意味合いにおいて、この生活協同組合も対象にしていただきたいと考えるのであります。そういうふうな点につきまして御見解を承りたいと存じます。
  132. 前田榮之助

    前田説明員 お答えいたします。住宅組合法は、御指摘のように、その実体的な規定の相当部分を産業組合法の規定に譲つております。しかしながら住宅組合と申しますのは、住宅を自分で欲しい人のみが集まりまして構成いたします組合でありまして、その点生活協同組合とは多少の違いがございます。生活協同組合も、今お話のように住宅事業は当然できるかと思いますが、その組合員の中には住宅を必要としない者も入つておりますのでこの公庫の対象といたしましたのは一号、二号とも、ほんとうに自分で住宅が欲しい者に直接貸すとう精神を元にしております。もし生活協同組合が住宅事業をおやりくださいますならば、非常にけつこうでございますが、その場合にはこの三号に該当するものとしておやりできるかと思います。但しこの場合には、先ほどお話のございましたように、貸付の條件につきまして、家賃のきめ方あるいは賃借人のきめ方につきまして、一定基準がございますので、その基準に適合すれば、それは協同組合であろうと、あるいはほかの団体であろうとも、法人格を有しておるならばよろしいと考えております。
  133. 八百板正

    ○八百板委員 この住宅金融公庫の問題点は、何と申しましても、融資の対象として取上げたところの相手が、ほんとうにこの法律の趣旨に従つたところの住宅の困窮者であり、そうしてその保護を受けるべき人であるかどうかというふうな点にかかつて行くだろうと思うのであります。そういう意味合いにおきましては、この住宅の融資の実際の事務を市中金融機関にまかせるというやり方をとつたということは、その趣旨を相当そぐ結果になることを私どもは心配いたすのでありますが、この点につきましては、先ほどいわゆる適格條件とも言うべき数箇條について詳細なお話があつたのでありまして、その運用を通じまして万全を期せられるであろうと私は期待してやまないのでありますが、もしそういうふうな方針に従つて金融機関に対して一つの方向を與えられるといたしましても、これは決して金融機関を拘束する力にはならないだろうと思うのであります。従来、御承知のように、今日金融機関は、政府のいかなる声明、あるいは大蔵大臣のたびたびの財政金融の方針等の明示にもかかわらず、そういう方向とは反して、経済採算を中心としたところの金融方式が行われておつてそれがために今日の財政金融の事態を招いておるということは、すでに一般の常識となつておる事柄であります。従つてこの金融機関をして、金融機関の責任において貸付業務を行わせるということになりますならば、どうしてもそこに拘束力あるところの指示をやらなければならないと思うのでありますが、そういうふうな点につきまして、すなわち先ほどお示しになつた融資の対象の適格條件とも言うべきようなものが、もし銀行の個人的判断によつてゆがめられ、あるいは実行せられないというような場合におきましては、そういう金融機関に対してこれを拘束する力があるかどうか、あるいはこれを実行しなかつた場合にば、そういう金融機関に対して取扱いを停止するというような考えも用意せられておるかどうか、こういうような点もこの際伺つておきたいと存ずるのであります。
  134. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 先ほど申し上げましたように、金融機関については一応の調査を委託することになつておりますが、これはあくまでも一つ基準を示しまして、それによつておるかどうかということを調査するにとどめます。決定権は全然持たせません。これは法律に明らかにしてあります。  それからこれを監督する方法でございますが、主務大臣が監督する規定もございますし、また金融機関の役職員につきまして、この契約條項等に違反した場合には、これを処分する規定も置いてございます。また実際の運用におきましては、その委託の契約を取消すということも、必要のある場合には考えたいと思つております。
  135. 八百板正

    ○八百板委員 第二十一條の四項に、一から九まで項目がありますが、一は、貸付を受けた者が六箇月以上割賦金の償還をしなかつたとき、二は、租税その他公課を滞納したと寺、この場合は貸付金の一時償還を請求することができるという規定のように考えられるのでありますが、あとの方の使用目的をかえてよその方に使つた場合であるとか、あるいは住宅をその人が使わないで、人に譲渡した場合であるとか、こういうふうな場合においてはその処罰が適用せられるのは当然でありますが、困つた人に貸すことを趣旨とするところのこの金融方式が、六箇月の滞納であるとか、あるいは租税公課の滞納とか、軍にこれだけの理由をもつて一時に請求するということは、結局において、最も困る人をさらに因らせるような窮地に追い込むことになるだろうと思うのでありますが、こういうふうな点は、こういう方法以外にこれを救済する方法がなかつたのかどうか、この点も伺つておきたいのであります。
  136. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 これは一号から九号まで、程度の差がいろいろございます。第一号とか第二号あたりで、失業をしたとかなんどかいう、実際にやむを得ない事情の場合もございましようし、いろいろ程度の差があると思いますので、これは具体的の場合に決定したいと思います。それで法案におきましても、一時償還を請求することができるという権限だけを書いておりまして、必ず償還を請求するとはなつておらぬのでございます。これは実際の運用において適当にいたしたいと思います。ただ償還の確保と、一面貴重な財政資金を使うのでございますから、これをあまりゆるめますと、公庫が非常に財政的な不始末をするという懸念もございますので、あまりルーズには考えたくございませんが、場合によりまして、非常な気の毒な場合には、一時償還といいましても、あと少しは割賦で拂つてもらうというような道もとり得るものと考えておりますので、実際の実情に応じて適切な方法を講じて行きたいと思つております。
  137. 八百板正

    ○八百板委員 そうしますと、たとえば第一の場合などにつきましては、本人の怠惰により自己の責任に期すべき事由によつて滞納した場合は、当然にその責めを、こういう形において受けることになるだろうと思うのでありますが、たとえば病気であるとか、あるいは失業であるとか、そういうふうな直接自分責任に期することがむりであると考えられるような事情のもとに起つたところの償還金の滞納というようなものにつきましては、実情に応じて相当の考慮が運用の上に拂われるべきだ、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  138. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 これは実際の運営になりますが、公庫の貸付を始めます当初の心組みとしましては、この資金を借りる人は、六箇月以上滞納したというような場合には、一時償還の請求を受ける可能性が非常に多いというようなつもりで、なるべくこの運用につきましては、一応固く考えて行きたいと思います。その程度でも、とかくこういう点はゆるみがちでございますので、その辺はひとつ政府は良識のある運営をいたしたいと思つておりますので、その点は御信用願いたいと思います。
  139. 八百板正

    ○八百板委員 次にこの住宅金融公庫が運用せられますならば、当然に公開抽籖等によりて行われますならば、この抽籖に当るということは、ある意味において文字通りくじに当つたという形になるのでありまして、そのためにその当つたところの権利が、相当実際の金融を受ける人の負担の金額を越えて値打が出て来るというようなことも考えられるのであります。従つてここに当然プレミアムがついて転売せられるといつたようなことも想像するにかたくないのであります。そういうふうな事態が起るということを考えまして、そういうことにつきまして、どういうふうな処置をこの中に考えておられるか、これも伺つておきたいと思うのであります。
  140. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 その点につきましては、いろいろと研究いたしました。刑罰をもつて臨むということも一応考えてみたのでありますが、それは穏やかでない。まだそういう方法をとりませんでも、一時償還の請求ということによつて解決できるのではないかと思います。第二十一條の第四項の三号、四号、五号、六号こういつたような條項、これにつきましては、特にお話のような、権利として譲り渡すというようなことは、ごく悪質の場合でございますので、そういうものにつきましては厳重に監督し、一時償還をもつてそういうことを防ぐようにいたしたいと思います。
  141. 八百板正

    ○八百板委員 このプレミアムという場合は、これはやみでありますから、ちよつと見た目ではわからないような形で行われるであろうと思うのであります。実際上はその名義人の標札を掲げておいて、現実にはその家を間借りするとか、同居するという形において、いわゆるプレミアムを拂つて取得した、いわゆるやみ取得者が実質上の居住をするということも考えられるのでありますから、そういうような点につきましても、一段の考慮をいただきたいと考えるのであります。  なおこの運用をいたして行きまするためには、單に大臣の任命にかかるところの職員によつて運用せられるばかりでなく、民間の民主的な形における住宅困窮者なり、この方面に明るい人なりを加えて、これを運用の上に参考にし、この法律の精神を十分に生かした運営をやつて行くことが適当だろうと思うのであります。そういう意味合いにおいて、ここに融資住宅に対する審議会のようなものを設置してはどうかというようなことを考えるのでありますが、こういうような点につきましては、立案にあたつて考慮を拂われたかどうか承つておきたいと思います。
  142. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 この全般的な方針その他につきましては、かなり根本的な問題は法律規定されておりますけれども、審議会を特別にこれに付設することは必要なかろうと思つておりますが、ただこの問題は末端の貸付の決定とかいうようなことについて、情実その他不当なことがあるということは十分に監視しなければならぬと思います。これがために、先ほどもちよつと申し上げましたが、都道府県などに民間の需要者側の入つた協議会を設置いたしまして、これの運用によりまして、ただいまの御懸念のないようにいたしたいと思つております。
  143. 八百板正

    ○八百板委員 結局においてこれは銀行を通じて貸付けられるのでありまするが、融資の最終の決定権は公庫の持つところとなるだろうと思うのであります。この点につきまして、銀行の貸付事務と、公庫の決定権の問に二元的なものが出て参りまして、若干問題があるのではないかと思うのでありまするが、とにかくこの運用をいたしまする上には、とかく煩瑣に流れがちな手続等を通じまして、どうしてもたびたび足を運んだり、いろいろ頼み込んだりして、そういうような縁故的な関係を通じて融資が行われるという傾向が、どうしても考えられるのであります。これはいかに公平を期しましても、やはり選考による部分が相当にあるのでありますから、そういうことにならざるを得ないだろうと思うのでふります。そういうことになると、当然あるいは公庫に対して、あるいは金融機関に対して、特に顔のきく人が、いわゆるブローカー的存在となつて、この公庫の運営の上に大きな役割りを果たすことも想像せられるわけであります。これを防ぎまするためには、どうしても公庫そのものが親切な指導と手続の簡素化を実行いたしまして、一般に周知徹底させてだれでも簡単に自分意思手続を通じて表示できるような十分な指導が必要だろうと思うのであります。そういうふうな点について、どういう用意とお考えを持つておられるか、この点もこの機会にお尋ねいたしておきたいと思うのであります。
  144. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 一面におきまして、貸付の決定ということは、申込者において非常に重大な利害関係がありますから、これは慎重を期さなければならぬ点もありますが、二面お話のように事務を簡捷化しなければならぬ点もあるわけであります。この資格要件の調査につきましては、なるべく基準を定めまして、本人から申告させて書面の上で審査をして行き、そして疑わしいような、先ほどありましたやみのような疑いがありました場合には、立証材料を要求するとか、現地へ行つて調べてみるとかいうことが必要でありますが、なるべく簡單な方式で銀行の調査によつて、あまり立ち入つた調査はしない。資産内容等は調べないというようなことで、なるべく立ち入つた調査をせずに、簡単にしたいと思つております。ただしかし、工事費をごまかしてやるというような点については、これは警戒しなければならぬ点でありますので、仕様書とか見積書とかいうものについては、地方公共団体の技術の職員に委託をしまして、そういう点はある程度の綿密な調査を必要とするかと思つております。しかしこれがために貸付の事務が遅れるようなことのないように、十分注意してやつて行きたいと思つております。
  145. 八百板正

    ○八百板委員 大体私のお尋ねしたい点はこれで終るのでありますが、百五十億の金は、大体いつから始めて、何月までに貸付を終るというふうな見当はついておられますかどうか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  146. 伊東五郎

    伊東(五)政府委員 貸付の開始につきましては、この法案を立案すると並行して、大体この線に沿つて具体的な事務を進めておりますので、法案が成立いたしましたら、間もなく具体的な方法を決定して、周知方をはかりたいと思つております。大体五月中には第一回の決定をいたしたいと思つております。そうして、その後において建築工事があつて、その建築工事の進捗状況に応じて金を拂い出して行くわけでありますので、貸付の決定は年度一ぱいかかつたのでは、百五十億の金が来年度に繰越されることになりますので、大体大部分は一・四半期、二・四半期において決定し、三・四半期に多少決定するという程度にいたしまして、もう四・四半期は新規の貸付はこの年度の分はやらない。これは来年度の分をこの四・四半期には考えたいというくらいに考えておりまして、百五十億の資金を全額この年度内に拂い出し得るように、いろいろと四半期別の計画を進めております。
  147. 八百板正

    ○八百板委員 どうもありがとうございました。
  148. 淺利三朗

    淺利委員長 それでは月曜日も継続して審議いたしますから、本日は本案に対する質疑はこの程度にとどめます。  次にこの際理事補欠選任についてお諮りいたします。昨七日、委員雷原華三郎君、上林奥市郎君、中崎敏君が本委員を辞任せられ、その補欠として宮幡靖君、佐々木更三君及び前田榮之助君が、同日本委員に選任せられたのであります。上林君は理事でありまして、理事が一名欠員となりましたので、この際補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 淺利三朗

    淺利委員長 御異議なしと認めます。それでは理事前田榮之助君を指名いたします。  それでは明後月曜日にあらためて開くことにいたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時四十七分散会