○砂間
委員 本
法案が本
委員会に
提案されたのは昨日の午後でありまして、
委員会における十分なる
審議の機会も與えられずに、急速にこうや
つて採決に付されるということにつきまして、私はきわめて大きな不満を持
つておるのであります。この
首都建設法案は、その
内容におきまして、あるいはこの
委員会の権限等におきまして、非常に重大な問題を含んでおりますので、私は昨日の
委員会におきましても、これはある場合には
地方行政委員会との連合審査を開く必要もあるのではないか、あるいは公聽会を開いて、
東京都民の輿論を聞く必要もあるのではないか、というふうな
希望も申し上げまして、十分愼重なる態度をも
つて望まれんことを
希望したのでありますが、そういうことがま
つたく無視されまして、こういう短時間の間に
審議を終了しなければならぬということにつきましては、きわめて遺憾の意を表する次第であります。
次に本
法案についてでありますが、結論を先に申し上げますと、私は第一にこの
法案に反対であります。
平和国家にふさわしい
首都を
建設するという、そのこと自体につきましては、別に異論はないのでありますけれども、しかし今日の敗戰
日本の現状におきまして、労働者は低賃金、あるいは失業に悩んでおり、また中小企業は非常な困難に直面しておりまして、他面では重税の重圧に苦しんでおる。こうい
つた国民の窮乏、それから困難な
状態を見ますときに、この現状におきまして、厖大な
予算的措置を伴うところのこういう
法案が、今日突如として
提案され、それが制定されなければならないという、その理由が納得できないのであります。少くとも私どもは、まだそういう時期ではないというふうに
考えております。それはりつぱな
首都を
建設するということもけつこうでありますけれども、
首都の外観だけいくらりつぱにかざりましても、その中に住んでいる都民の生活が窮迫しておる、あるいは
日本全国の大衆の生活が、今日のような現状におきましては、それは決して
日本のために名誉なことでもなければ、りつぱなこととも言えないと思うのであります。そういうような点からいたしまして、まずその時期でないということを第一に申し上げたい。
その次には、この
法案によりますと、
首都建設計画を立てるということがあるのでありますが、この
建設計画というものが、まことに広範にわたりまして、そうして
政治、
経済、文化の各面にわた
つて非常に大きな範囲にわた
つておりまして、厖大な
計画を含んでおるのであります。昨日来の御説明を聞いておりましても、運輸、交通、供給、官衙市街地
計画等が含まれておりまして、その中には国際空港の
建設であるとか、あるいは港湾
施設の増強であるとか、また特殊地区を設定いたしまして、観光地区とか医療保健地区とか、あるいは文教地区などを設定するとか、あるいは運輸交通の方面におきましては、地下鉄や高速鉄道を
建設するとか、あるいはそれを延長するとか、また電気、ガス、上下水道
事業等いろいろな
計画が含まれておるのでありますが、こういう
計画の実施ということは、
関係各方面に重大な関連と影響を持
つておるというふうに
考えます。ところがこれらの
計画を立ててこれを推進して行くところの
首都建設委員会の構成を見ますと、九名の
委員から成るということにな
つております。
建設大臣とか衆参両院の議員とか、
東京都知事とか、都議会の代表者、あるいは学識経験者等でありまして、いずれも官僚やボスの集りばかりであります。これまで
東京都の戦災復興が遅れておるというふうなことも、昨年来言われておりましたが、この遅れておる最大の原因はどこにあるか、單にこの
東京都にいろいろな利害
関係が輻輳しておるというばかりではなくて、この
都市計画をはばんで来た最大の原因は、利権にからむ
地方ボスの暗躍と、中央集権化した官僚の無能、それからなかんずく
地方財政の貧困というふうなことが大きな原因にな
つておると思います。
〔
委員長退席、内海
委員長代理着席〕
今度の
首都建設委員会は、さらにこのそういう中央集権的な官僚的な構成に輪をかけたような構成でありまして、この
委員会は
東京都議会にも責任を持たない、
国会に対しても責任を持たない、内閣直属の
機関ということにな
つております。こういうふうな
委員会に一般勤労大衆の要求や
希望なんかは、ほとんど反映することはできないということは明らかだと思います。
提案者は
委員会制度が民主的だというふうな御説明をしておられますけれども、たとえば国家公安
委員会を見ましても、あるいは
地方労働
委員会を見ましても、その他証券取引
委員会、あるいは日銀の政策
委員会、その他各種の
委員会や
審議会どれ
一つと
つてみましても、みな内外独占資本の独裁的な資本の投下であ
つて、勤労大衆を弾圧し、搾取するということばかりを使命とし、また現に実行しておるのであります。
首都建設委員会もま
つたくそれと同様な構成であ
つて、また同じように運用されるであろうということは、火を見るより明らかだと思うのであります。しかもこの
委員会にゆだねられておるところの権限は実に強大でありまして、
委員会は、初めに申し上げましたような
計画を、單に立案するばかりでなくて、これを国や
関係地方公共団体あるいは
関係事業者に
勧告し、その
援助、
協力を求め、また
事業の
執行につきましては、
建設省だとか、運輸省だとか、その他いろいろの
行政官庁が、独自の立場から
執行することもできる、こういう仕組みにな
つております。
従つて地方自治なんかはこの
委員会制度によ
つて完全に封殺され、破壊されてしまうということは明らかであると思うのであります。この
委員会の権限というものは、実にオール・マイテイでありまして、
委員会にそういう大きな権限を持たした
立法、しかも具体的な
計画の
内容については、ただ
委員会の頭
一つにゆだねて行くというこういう
立法のやり方は、ちようど戰時中における国家総動員法にも似たような白紙委任状的な
立法でありまして、こういう
法案を
提案されるということは、民主
政治の
原則に反すると思うのであります。
委員会の構成と運営がそういうふうにな
つておるのでありますが、上に民主的な
政府がありまして、そうしてこの
委員会が真に民主的に行われて行くならば、私のこれまで申し上げたようなこともあるいは杞憂に属するかもしれませんが、しかし現在までや
つて来た歴代内閣、殊に自由党の吉田内閣のいろいろな諸施策を見ますと、決して民主的な方向に行
つていない。しばしば言われておりますように、非常に買弁的な、
日本を軍事的植民地化するような危険を含んでおるような政策が行われておるようであります。そうして勤労大衆はその下積み、犠牲にされて来ておるという傾向が強いのであります。こういう内閣、こういう
政府のもとに、こういう厖大な権限を持
つた委員会が運営されるということについては、私どもは多くの危惧の念を持たざるを得ない。たとえば国際空港の
建設にいたしましても、これが真に平和な空港として
建設されるならばいいのでありますけれども、しかし利用のしようによりましては、これを軍用飛行機の基地として利用することもできるわけであります。あるいは伊豆七島を観光地とする
計画のむとに進められおるいろいろな港湾
施設が、場合によ
つては軍事的な
意味に利用される危険もあるのであります。都民の犠牲において広められた道路や
都市計画が、軍用道路に
なつたりあるいは
東京都を外国の植民地
都市にするかもしれないというふうに、悪用される危険性も多分にあるのであります。かような
意味におきまして、私は
地方自治を破壊し、都民の利益を裏切り、都民を弾圧、搾取し、
東京都を軍事的植民地化するおそれのある本
法案には絶対反対するものであります。