○増田国務大臣
国土総合開発法案の提案理由及びその
内容の概略を御
説明いたします。
御
承知の
通り、
わが国はその半ばに近い国土と厖大な資源を失うことと
なつたのでありますが、この狭隘な国土と乏しい資源によ
つて、現在八千万を越え、かつ年々百数十万ずつも増加する人口を擁し、その生活の維持向上をはかることは、
わが国にと
つて最も重要かつ困難な課題とな
つているのであります。このような見地から、戦後の荒廃した国土の保全をはかり、また国土及び資源の積極的合理的かつ効率的な開発利用を期することは、これによ
つて人口収容力の増大、産業発展の基盤の育成及び地方振興をはかることとあわせて、現下きわめて緊要なる要請であります。しかしながらそのためには、広汎な角度から詳細に検討を加えた総合的ないわゆる国土総合
開発計画を樹立することが、特にこの種の事業のため、欠くべからざる必要事と
考えられるのであります。
もとより従来におきましても、
経済安定本部や建設省あるいはその他の各省において、それぞれの見地から国土
計画の立案に努力して参つたのでありますが、何分にも問題があらゆる部門にわたり、
内容が複雑多岐でありますために、国土
計画の名に値する真に総合的な立案は、遺憾ながらいまだできていない実情にあります。
政府はさきに閣議決定により、内閣に総合国土開発審議会を設置し、ここで総合
開発計画について
種々調査審議を願
つて参つたのでありますが、この審議会の答申に基き、内閣において検討の結果、ここに
国土総合開発法案を提出する運びと
なつた次第であります。
以下
法案の概要につき御
説明いたします。
まずこの
法律の目的とするところは、第一條に掲げておりますように、国土の自然的條件を考慮して、
経済、社会、文化等に関する施策の総合的見地から、国土を総合的に利用し、開発し、及び保全し、並びに産業立地の適正化をはかり、あわせて社会福祉の向上に資することにあるのでありますが、その目的に沿うべき国土総合
開発計画は、申すまでもなく、天然資源の利用、災害の防除、産業の適正な立地等のほか、
経済、文化、厚生、観光等の各部門にわたる、きわめて広汎多岐な
内容を持つものであります。従いまして、これらを総合して、適正かつ効率的な
計画の立案ということになりますと、現在の各省各部門にまたがる立案の調整につき、特に愼重な配慮と長期の見通しとを必要とする次第でありまして、本
法案におきまして、特にそのために必要な審議
機関として、総理府に国土総合開発審議会を設くることといたしましたのも、当審議会をしてその任に当らしめんとするためであります。審議会の
組織もまた、そのための識見者を中心として長期の任務に適するごとく配慮いたしたつもりであります。なお本審議会の
事務の
運営は、
経済安定本部をして当らしめる
考えであります。
次に本
法案においては、立案を予定しております
開発計画として、国が全国の区域について作成する全国総合
開発計画、都府県がその区域について作成する都府県総合
開発計画、都府県が
二つ以上の都府県の区域についてその協議によ
つて作成する地方総合
開発計画、及び都府県が内閣
総理大臣の指定する区域について作成する特定地域総合
開発計画の四つを掲げております。本来本
法案においては、国土総合
開発計画はなるべくそれぞれの地域において、地方公共団体を中心とする自主的、積極的な
開発計画の立案に期待し、これを中央における審議会において、総合調整することを骨子としておるのでありますが、その趣旨に基いて都府県総合
開発計画、地方総合
開発計画及び特定地域総合
開発計画の三つの
計画につき、その立案者たる都府県がそれぞれ都府県総合開発審議会、また地方総合開発審議会の
調査審議を縫え立案し、これを中央に持ち込む諸般の手続につき詳細
規定いたしております。もとよりこれらは、原則として都府県の自主的な提案にまつべきものとして、これを強制するものではありませんが、ただ、特定地域総合
開発計画については、やや趣を異にしております。すなわち従来においても
政府は、特別の建設もしくは整備を要する地域を特定地域として、その
開発計画の整備と推進に努めて参つたのでありますが、この
法案においても内閣
総理大臣は
関係都府県の同意に基き、さらに国土総合開発審議会の議を経て、右のごとき特定地域を指定して、その
開発計画の推進をはかるとともに、他面これに対し国の負担金、補助金等に関する特例を設け得ることといたしております。
最後に、さきに御審議をお願いしました北海道開発法との
関係でありますが、この
法案では北海道開発庁によ
つて作成される
計画と、本
法案による国土総合
開発計画との調整は、内閣
総理大臣が北海道開発庁
長官及び国土総合開発審議会の
意見を聞いて行うこととし、その運用に遺憾なきを期したい所存であります。
以上提案の理由と
法案の骨子を御
説明申し上げたのでございますが、この
法案の
重要性を御明察の上、すみやかなる御審議と御賛成をお願いする次第であります。