○
賀屋政府委員 それでは近く国会に提出いたしまして、御審議を煩わす予定にいたしております
外資に関する
法律案、
外資委員会設置法案、この二つにつきまして概要を御説明申し上げたいと思います。
日本経済の自立とその健全な発展をはかりまして、かつ
国際收支の均衡を維持いたしますために、
民間外資の
導入がきわめて重要であるということは、いまさら申し上げるまでもないことでございます。朝野をあげてその
導入が期待せられておるところであります。
外資の
導入につきましては、御承知のように、昨年一月
スキャップ・インが出まして、
外国人の
事業活動及び報酬に関しましても指令が参りまして、これに基きまして
政府におきまして、
ポツダム政令として政令五十一
号外国人の
財産取得に関する政令というものを三月十五日に公布施行いたしたのであります。この政令に基きまして安本に
外資委員会という一つの
委員会組織の
行政機関が設置せられまして、この機関によりまして
外国人の
事業活動と
財産取得、この両者につきまして、
スキャップ・インで要求せられておりますところの行政を行うことになつたのであります。
外資の
導入の案件は従いまして
事業活動、あるいは
財産取得のいずれかの方面で、大部分が
外資委員会を通じて処理せられることになつたわけでございます。しかしながら御承知のように現実にこれまでに
外資が
導入せられました実績はどうであるかと申しますと、結論的に申し上げまして、非常にはかばかしくない状況なのでございます。これにはいろいろの原因がございまして、根本的には
国際情勢の不安と、
日本政府の手ではどうにもならないような原因もあると考えられるわけでございますが、その他
技術的に、法制的に
外資の
導入をはばんでおるというような問題につきましては、昨年来種々これまで打開に努めて参りました。例のいわゆる独禁法の改正その他
連合国人のいろいろな
財産権の回復に関する
諸政令の制定というような
法的措置によりまして、
技術的に
外資導入の阻害とな
つておりましたような原因の排除に努めて参つたわけでございます。と同時に、いわゆるドツジ・ラインの施行によりまして、
わが国の経済も漸次安定の段階に入
つて参りました。従来いろいろ加えられておりました
経済統制も、逐次撤廃いたして参
つておる状況は御承知の通りでございます。これによりましてだんだん
外資が
導入せられます基盤が、育成せられつつあると申し上げることができるのであります。にもかかわらず、現実の状況か
先ほど申し上げましたように、はかばかしく進んでおらないということには、まだそれ相当の理由が存するわけであります。そのうち考えられますこととして指摘し得るものは、一つは
海外送金の問題と、もう一つは、
外国人に対する課税の問題であろうかと思います。昨年の暮、前の
陸軍次官の
ドレーパーが参りましたり、シーツが参りまして、いろいろ
政府の
要路者と会見いたしまして、話し合いましたところでも、この
海外投資が行われましても、これに基きまして生じます果実について、それを本国ヘドルの形で回收するという保証がないということが、非常に大きな
外資の
導入の障害にな
つておるということが言われておるのであります。それからもう一つは、資本を投下いたしましても、その投下された資本が、将来
日本の
政府が沒收とかあるいは
国有化をするというような処置に出やしないかということを非常に危惧いたしておるのであります。こういつた点の保証が得られて、それからもう一つは
收益性を確保するという
意味合いで、従来非常に高かつた
法人税、
所得税等について、これを軽減する措置がとられれば、
外資導入に非常に好都合であるということが指摘されておるのであります。これらの声を聞きまして、いずれもこの両者について適切な
法的措置を至急講ずることにいたしまして、そうしてできるだけ
外資の入りやすいような基盤をつくる
必要性が最近痛感せられて参りまして、年が改まりましてから
関係方面との折衝も開始いたしまして、
具体案の作成に着手いたしたのであります。そうしてでき上りましたのが、この
外資に関する
法律案とこの
法律に基きます権限を施行いたしますための
外資委員会の
設置法なのでございます。大体以上のようないきさつによ
つて、この法案が作成せられたのであります。
次にこの両法案につきまして、その内容を條文の順序を追いまして御説明申し上げたいと思います。
まず
外資に関する
法律でありますが、目次にありますように、七章二十九箇條からな
つております。第一章は総則で、全体に通じますような問題を規定いたしておるのであります。第一條は、いずれの
法律にもございますように、
法律の目的を掲げておるのであります。この第一條の目的、第二條にあります
外国資本の投下の原則、この二つが大体
日本の
外資に対する
考え方と申しますか、方針、これをこの二條で明らかにいたしておるのであります。第一條では結局究極の目的は、
わが国に対する
外国資本の投下の健全な基礎をつくることにあるのでありますが、そのためにはまず第一には、
外資と申しましても、いかなる
外資でも無制限に認める趣旨ではなく、一定の基準に
従つてこれを認めて行くというのが第一でありまして、すなわち
日本経済の自立と健全な発展、それから
国際收支の改善に寄與するような
外資を認めて行く、つまり
政府が何でもかんでもやたらに
外資の
導入をいたしまして、これに
伴つて将来の
外貨負担を負うというような野放図な態勢では、かえ
つて外資が入りにくいのではないかという考えから、一定の基準に従つたものを認めるというのが第一であります。
第二には、
外国資本の投下に
伴つて生ずる
送金を確保する。
先ほど申し上げましたように、
外国投資家が非常に不安を持
つております果実の
送金について、その保証を與えるというのが第二であります。
それから第三には、
先ほども申し上げましたように、
政府が将来
外国投資を
国有化するなり、沒收いたしましたような場合に、これが回收についての措置を規定する。そうして
外国資本を保護するという点でありまして、この三つの措置を
法律で明確にいたしますことによりまして、究極の目的としては
外資の入りやすいような健全な基盤をつくろう、これが第一條に述べました趣旨であります。しかしながら第二條にありますように、結局究極の目的は、できるだけ健全な
外資を
導入するということにあるのでありますので、これについての制限は、さしあたりは
外貨事情その他を考慮しまして、いろいろ設けられることになろうかとも思いますが、究極の目的はなるべく自由に入るようにするというのが適当であろうという
考え方から、今日の段階では
先ほど申し上げましたような、
一定基準に
従つた外資を入れる。究極の目的は自由に認めるのである。
従つてこの
法律で、いろいろ届出だとか
認可を要しておりますが、こういつた制度もだんだんその
必要性が減少いたして参ります都度緩和、廃止して行こう。こういう趣旨を明示いたしたのであります。
第三條は定義でありまして、この
法律の適用を受けます
人的範囲といたしまして、
外国投資家という言葉を用いておりますが、その
外国投資家の範囲は、どういう範囲であるかということをまず第一に規定し、以下この
法律に出て参ります
技術的な用語についてのことを一括して、この第三條に掲げたのであります。
第四條は対外の貸借及び收支に関する勘定でございますが、これは
大蔵大臣が常に
わが国の対外的な
貸借收支に関する状況かどうな
つておるかということを明白にいたしますために、これらについての勘定を作成しておきまして、その点か常に明らかにな
つておるような措置を講じておかなけれどならないということにいたしたのであります。そうしてこれを定期的に内閣へ報告いたすのであります。それで
大蔵大臣はこういつた勘定をつくりますために、必要な資料を関係の
行政機関、その他必要な方面から聽取することができるという規定であります。これはただ
技術的な規定で、この勘定をつくること自体は、別段何らの政策を含んでおるわけではないのであります。これが基礎とな
つて次の條文その他が出て参るわけであります。
第五條に参りまして、
負債超過または支拂い困難のおそれある場合の措置といたしまして、今申し述べました対外の貸借及び收支に関する勘定を絶えず
大蔵大臣が用意いたしておりまして、それをにらんでおりまして、万一
対外負債か資産を著しく超過し、
債務超過に陷りそうなおそれかあります場合には、新たに
外資を
導入いたしまして、それに基いて対外的に負債を生ずるような措置を、ある程度チェックする必要が起
つて来るのであります。そのためにそういつた状況が起つた場合には、
大蔵大臣がここで
危險信号を出す。それはつまり内閣へそのことを報告いたしまして、その報告を受けて内閣が新しい
外資導入についての方針を決定する。そうして新しい方針が決定されましたならば、
外資委員会、その他
外資導入に関係ある
行政処分を行います諸官庁は、その新しい内閣の方針に基いて
行政処分を行う、こういう段取りにいたしたのであります。ただその場合におきましても、すでに
外国投資家か
海外送金等について保証を得ておりますような場合には、その
既得権を侵害しないように注意しなければなければならないことはもちろんでありますが、その旨を最後の項で明示いたしておるのであります。
次に第六條は、
外国為替予算に関する措置といたしまして、御承知のように外貨を要しますものは、すべて
閣僚審議会が作成いたします
外貨予算に組まれる必要があるわけであります。この
法律を施行いたしまして、
外資導入を
外資委員会が
認可いたしました場合には、これに伴います
送金関係の裏づけが、この
外貨予算によ
つてなされるのでありまして、この
法律の規定に基いていろいろな
外資導入の案件を認めました場合には、これによ
つて海外へ将来果実の
送金が必要とな
つて来る場合には、その額を必ず
為替予算に計上しなければならないということにいたしたのであります。
それから次の第七條は、
わが国におきまして
海外投資家の援助を希望する
技術の種類の公表に関する規定でありまして、これは
先ほども申し上げましたように、昨年
外資委員会が設置せられましてから、今日までさして大きな
外資導入の案件はないと申し上げましたが、その中でも多少とも経済的に意義のある
外資といたしましては、いわゆる
技術の形で入
つて参ります
外資が数件あつたのでありまして、
機械工業だとか、
造船業等につきまして、こういつた案件が現実に起
つておるのであります。また昨年
ドレーパーが参りましたときに、
安本長官が面会いたしました際のお話におきましても、
ドレーパーの
考え方では、さしあたり
日本に対する
投資として期待し得るものは、
技術の
導入という形による
外資ではないかということが言われておるのであります。事実戰争によりまして、非常に
機械設備、その他
技術方面が立ち遅れておることは申し上げるまでもないのでありまして、まずこれが改善に着手するということが、
日本の経済を立ち直らせる第一の手段であると考えられるのでありまして、この点につきましては、はたして
日本の産業がどういつた
技術を要望しておるかということを、あらかじめ
海外投資家に知らせておく必要かあるのではないか。
海外投資家は、それがわか
つておれば、現実に
日本に
技術を持
つて来るというときに、非常に便利であろうということから、あらかじめ公告といつたような意味で——もちろん公表された
技術に
限つて導入を認めるという意味でありませんが、たとえばこういうような
技術を
日本側に欲しておるということを、
海外投資家に知らせるという
意味合いにおきまして、この條文が置かれたわけでございます。
それから第八條は、
認可、許可、勧告の基準でありまして、第一條のところで申し上げましたように、今日の段階におきましては、一定の基準に
従つた外資を求めて行く。それではその基準とはどういうものか。これが第八條に掲げられておるのでありまして、第一項で、積極的な基準を示したのであります。まず第一に直接間接に
国際收支の改善に寄與するもの、これが一つ、その次は直接間接に
重要産業、
公益事業の発達に寄與するものである。第三には、
重要産業、
公益事業に関して、従来すでに
日本側と
技術援助等について提携かできておりまして、それを更新いたしましたり、継続いたしますために必要なもの、こういつた範疇に属するものを
認可して行く。この一、二、三というのは、必ずしもこういつた順序でやるという順位を示したものではないのでありまして、個々の範疇のいずれかに属するものをまず認めて行く。同じような性質のものでありました場合には、その間の
優先順位はどこに置かれるかと申しますと、その中でも、
国際收支の改善に有効に寄與するものをまず優先させる。将来の問題といたしまして、
外国の
政府によるいろいろな援助が打切られるというようなことになりますれば、
わが国といたしましては、できるだけ
民間貿易を伸張いたしまして、外貨の獲得に努力いたさなければならないのでありますが、と同時に民間の
外資をできるだけ
導入いたしまして、外貨を潤沢にするという必要か生じて参りますので、この
優先順位といたしましても、
国際收支の改善という点を、まず第一に考えて行くわけでございます。
第二項はむしろ消極的な基準でありまして、こういつた各号に該当いたします
外資の
導入の案件は、
認可をしてはならないということにいたしたのでありまして、これは当然の事柄であります。
契約の條項が公正でない、あるいは産業に不当な圧迫かあるというような場合、あるいは
日本の生産に惡影響かある場合、それから四番目は、
外資が
導入される場合に、円をも
つて投資されます場合には、その円が国内で合法的に
事業活動を
行つて、適当に取得したものでなければならないというのでありまして、たとえば
リーダーズ・ダイジェストがこちらで書籍を出版いたしまして、相当の円貨を持
つておりますが、これは正当に認められた
事業活動を本邦において
行つて獲得した円であります。そういつた円でなければならないのでありまして、それ以外の、たとえばやみ取引といつたような、不正当な原因によ
つて、獲得した円による
投資は、これは認めない。
認可してはならないということにいたしたのであります。こういつた積極、消極の両方の基準は、あとで述べますが、他の省が
外資関係の処分をいたします場合に、
外資委員会に勧告を求めて参りますか、その際これを認むべきかいなやの勧告をいたします場合にも、これをそのまま準用するということにいたしたのであります。
次は
送金條項の表示でありますが、これは後ほど申します
外資に伴う
海外送金の確保ということと関連して参るわけであります。
投資家が
わが国に対して
投資して参ります場合には、当然多くの場合はその果実を将来本国へ持ち帰ることを予定しているわけでありますが、場合によりましては、今ただちに持ち帰る必要がない。さしあたりはこちらで、たとえば
貸付金であれば利子、
株式投資であれば
配当金、そういつたものを円で国内で
受取つて、そのまま
日本に置いておこうという例もあり得るわけであります。その両方があるわけでありますが、
投資家があとに出て参ります規定によりまして、必ず自分の国へその果実を持ち帰ることを保証を得ようという場合においては、あらかじめそのことをはつきりさせておかなければならない。そのために
技術援助の
契約であるとか、
社債貸付の契約をいたしますときには、
契約の條項にあらかじめその旨をうた
つておく必要かある、こういうことにいたしたのであります。それから
契約がない場合には、たとえば株式の
配当金というような場合には、これは株の取得の
認可申請書の中に、その
配当命を海外へこれだけは将来必ず送りだいとかいう希望かありますならば、その旨を明示しておかなければならない。こういうことにいたしたのでありまして、これはあとに出て参りますが、こういつた
契約を
外資委員会が承認いたしましたならば、果実の
送金はあとで一々
為替管理の手続をとらなくとも、必ず送れるということにいたしているのであります。
以上が総則的な規定でありますが、第二章は、
外資の
導入についていろいろな形態で入
つて参ります場合、どういう手続が必要かということを規定したのでありまして、およそ三つのタイプにわけて規定いたしているのであります。
まず第一は
技術援助契約であります。これは
先ほど申し上げましたように、
技術の形による
外資導入が、今日の段階では非常に入りやすくもあり、また
必要性も大きいと思われるのであります。具体的に申し上げますれば、たとえばある優秀な機械に関して、
外国の商社が
特許権を持
つている。
日本の会社がその特許の
実施契約をいたしまして、その
実施権を獲得する。これに対して毎年
最低額、それからその
実施権を使用しまして、つく
つてでき
上つた製品を売つた。それに対して何パーセントかの歩合でも
つて特許料を支拂う。こういつた
契約が、現実にも数件
外資委員会において取扱われましたし、将来も出て参る
可能性が非常に大きいのであります。こういつた
技術契約は、まず一年以上の期間にわた
つて日本の会社と関係か生じますもののみにつきまして、
外交委員会規則の定めるところによ
つて、
認可を受けなければならないということにいたしたのであります。
なおこの点は、今まではどういう形で行われておつたかと申しますと、政令五十一
号——に冒頭に申し上げました
外国人の
財産取得に関する政令でありますが、その政令の中に、
外資委員会の
認可を要する
財産権として、株式、土地、建物、工場、
事業場、
賃借権、
地上権、
永小作権、それから
特許権といつたものをあげておりますが、最後に
生産量、
販売量、その他
取扱量の全部もしくは一部を引取る、もしくは販売する権利、または
生産高、
販売高その他の
收入高の
一定割合を受領する権利、これを一つの
財産権として、こういつた権利を
外国人が取得いたします場合に、
外資委員会の
認可を要するということにな
つているのであります。この
販売高の
一定割合を受領するというのは、つまり
特許料として、
特許権の
実施権を獲得して、これによ
つて生産した製品を売つた代金を、歩合によ
つて外国投資家に拂
つて行く。これがつまり
財産権になるわけであります。でありますから、従来は
特許実施契約という形でなくて、
特許料を支拂う、受領を受けるということが、
外国人が見れば、一つの
財産権を取得することになるという形で、
外資委員会の
認可を受けておつたわけであります。
次げ
株式持分の取得でありますが、ただ單に
技術を提供するというたけではなくして、
日本の企業に現実に参加して行くという直接
投資の場合であります。この場合には、原則として株を取得いたしますことにつきまして
外資委員会の
認可が必要である、ただ第二項に該当する場合は届出でよいということにな
つております。それはどういう場合かと申し上げますと、すでに
外国人が適法に株を持
つておりまして、これに対して増資が行われまして、新株が割当てられるというときには、これはもう適法に持
つておるのでありますから、
増資新株割当新株は、当然株主の権利として取得するものでありますので、いまさら
認可にかけて、これをどうのこうのというわけに参りませんので、これは
届出たけでよろしい。それからすでに、ある
外国人が株を持
つておりまして、それが他の
外国人に移る、
外国人相互間において讓渡が行われるという場合には、別段その際新しく
日本の企業を支配するという観点から審査をする必要もございませんので、この場合は届出でよろしい、こういうことにいたしたのであります。ただその場合も、株を買いますのは、国内で円を買うわけでありますが、その円をどうして得たかということが問題でありまして、
先ほど申し上げた
リーダーズ・ダイジェストのような形でこちらで合法的にかせいだ円であるか、それからその株を買いますために、
投資をいたしますために、特に
外国から
送金して参る、たとえばアメリカの
投資家であればドルを
送金して参りまして、それを三百六十円のレートで合法的に交換して得たところの円でも
つて投資するか、そのいずれかでも
つて区別をいたしております。これはお話が大分前後いたしますが、後ほど
送金の保証のところでも出て参りますが、
配当金の保証か行われますのは、今申し上げました二つのうちであとの場合、すなわち株を取得いたしますために海外から
送金いたして参りました場合に限るのであります。以上申述べました一号、二号に該当するもの以外は、
外資委員会の
認可が必要であるということにいたしたのであります。ただ一号、二号に該当いたしますものでも、
外資の
導入という観点から、
外資委員会が見ます場合には
認可は必要でないわけでありますが、証券の移転という
意味合いから、
為替管理法上何らかの制限を加えなければならないというような場合には、必ずしも届出だけで持てるものではなくして、
為替管理法上必要な制限が加えられる場合もあり得るということをこの第三項で述べておるのであります。
第四項は
連合国財産であつた株が、
戰争中敵産として処分せられておりまして、それが昨年出ました政令によ
つて返還される場合、そういつた場合には当然一々
認可する必要もございませんので、この
外資委員会の
認可を受けなければならないという條文は、適用しないということにいたしたのであります。これは当然の規定でございます。
次の十二條は
先ほども申し上げましたが、株の取得の場合には第八條に述べました一般的な基準のほかに、特別な基準が適用されるのでありまして、
外国投資家が
日本の法人の株を持てるのは、まず第一には株を取得いたしますことによ
つて、その株を発行しております会社が、実質的に資産の増加をもたらす場合でなければならないのであります。新しい会社ができることによりまして、その株を
外国人が引受けます場合には、その資産がそこに生れ出るわけであ
つて、当然よいわけであります。そのほか増資をいたしまして、その増資新株を
外国投資家が引受けるという場合は、それによ
つて会社の資産が増加するのでありまして、この二つの場合はまず基準に合致するわけであります。そうでなくして資産の増加をもたらさない場合、すでに発行せられております既存の株を取得いたします場合には、
先ほど述べましたように、その株に
投資いたします円貨が、どういうものであるかということによ
つて違うのでありまして、既存の株を買います場合には、必ずその株に
投資するために、
外国から外貨を持
つて参りまして、それを合法的に交換した円で買う場合でなければならない。またそれが同時に
投資計画の一部でなければならない。ただ漠然と
日本の国内でかせいだ円でもつと既存の株を買いあさるというようなことはできないことにな
つております。たとえば
技術援助をいたしますかわりに、その会社の支配権を、たとえば今まで三〇%であつたが過半数とりたい、そのために二一%は増資でなくてすでに発行されております株を買う必要かある。そういう場合には
技術援助という点で非常に有意義な
投資でありますれば、その
投資計画の一部として既存の株を買うわけでありますから、またその株を買いますための通貨か、もしも
送金によ
つて得た円貨であります場合には、この基準に合致するものとして、
外資委員会は認めてもさしつかえない。こういうことにいたしたのであります。多少ごたごたいたしますが、
株式投資はその企業に対して
外国人が直接支配権を握る例でありますので、ほかの場合に比べますれば、ややこまかい基準を設けておるわけであります。
それから第三番目に
投資形態といたじましては、株の取得によ
つて経営に参加するというような場合と違いまして、ただ債権者としての立場に立つ、金を貸すという例であります。その場合には社債の形をとる場合と、ただ
貸付金の場合とあるわけでありますが、この二つの場合につきましてはどういう手続がいるか、これは官庁内部の権限の分配もありまして、多少ほかの場合と違つた規定の仕方にな
つておりますが、しかしながら
海外投資家に対しては窓口は
外資委員会であるということをはつきりいたしまして、従来
外資委員会はこれらの社債、
貸付金については、全然権限を有しておらなかつたのでありますが、一応これについても
外資委員会は
認可をする。
外国投資家は
外資委員会へ
認可申請書を持
つて来ればよい、こういう形にいたしたのであります。ただすべての
貸付金について、あるいはすべての社債についてそうであるのではないのでありまして、この社債の取得なり、
貸付金の
契約が、
外資委員会が
認可をいたします他の事項と関連を持
つておる、それと同時に一つの大きな
投資計画の一部分として行われる、こういう場合に限るのでありまして、單純に
外資導入と言えないような、銀行のバランスのための銀行その他の貸付というようなものは、これは
外資導入とあまり関係のないものとしまして、
為替管理法上大蔵省の承認を受けることになろうかと思います。
外資導入と目される社債、貸付につきましては、窓口は
外資委員会であ
つて、
大蔵大臣はこれについて許可権は
為替管理法上持
つておりますが、それは内部関係の事柄として規定されておるのであります。従いまして第二項にありますように、
外国投資家が
外資委員会に
認可を申請すれば、
為替管理法上の
大蔵大臣への許可の申請はあらためてする必要はないのでありまして、
外資委員会に対する
認可の申請が、そのまま
大蔵大臣に対する許可申請とみなされる。それで
外資委員会が
認可をいたしますには、まず
大蔵大臣の許可を受けなければならないということにな
つておるのであります。
それから十四條では以上述べました規定によりまして、
外資委員会が
認可をいたします場合には、いろいろな條件をつけることができることにいたしたのであります。たとえば
契約の條項として幾ら外貨を本国へ送りたいというようなことがあります場合に、それが高きに過ぎるということであれば、これこれまでときめて行く。あるいはその時期について、こちらで希望する事項でありますれば、この時期はこれこれこういうふうにしろというような條件をつけることができるようにいたしたのであります。第二項はむしろ各省大臣が積極的にこういつた條件をつけてほしいということを、
外資委員会に言
つて参りました場合には、
外資委員会はその條件をつけなければならないということで、
送金に関して権限を持
つております各省大臣のイニシアチーブによ
つて條件をつけることもあることをはつきりいたしたのであります。
次に
外国資本の投下に伴う
送金でありまして、これはつまりいわゆる
海外送金の保障に相当する規定でございます。前にもちよつと触れました第九條で
外資を
導入いたします場合に、将来これに
伴つて生じて参りますたとえば
特許料の
送金でありますとか、社債、貸付でありますれば利子または元本の償還金、それから株でありますればその
配当金、こういつたものを本国へ
送金したいという場合には、第九條の規定によ
つて契約書なり
外資委員会に対する
認可申請書の中に、あらかじめその條項をうた
つておかなければならないということにいたしたのであります。そういつた條項のうた
つてある
契約自体を
外資委員会が
認可いたしました場合には、その條項通りに送ります限りは、その
海外送金はもはや
為替管理法の規制を受けない、
為替管理法二十七條では
海外送金は一応全部とめておる形でありまして、政令で認めた場合以外には
海外送金はできないということにな
つておりますが、その例外といたしまして、二十七條で認められたものとみなしておるわけであります。法制
技術上文句は多少おかしいのでありますが、つまりここに書きました趣旨は、入
つて参ります場合に一度
政府が審査いたしまして、これは
日本の経済に役立つ
外資の
導入であるということであれは、その
契約の條項にうた
つてあります
海外送金につきましては、その都度将来あらためて
為替管理法の規定に基いて
認可申請をする必要はない。従来この規定がない場合は、今まで
外資委員会ではどういうふうな取扱いをして参りましたかと申し上げますと、たとえば
技術援助契約では
先ほど申しましたように、
財産権として
一定割合を取得する権利を
認可するのでありますが、
外資委員会はこういう権利け
認可する。ただし條件をつけまして、これに
伴つて海外送金をする場合には、その都度その当時の
為替管理法に従わなければならないという條件をつけて、
認可して行くのであります。従いまして、
契約をいたしました当事者は、はたして将来受取りました
特許料を海外へ送れるのかどうかという点については、非常に不安があるわけであります。その送る必要が起りました場合に、
為替管理法の規定で
認可申請をして、そのときの
外貨事情によ
つて許されるかどうかが左右される、そういう仕組みにな
つておつたのでありますが、その点を改めまして、最初に入
つて参りましたときに一度いいということになりましたものは、その先に参りましても、條項通りの
海外送金は自由に送れる。ただ第十四條で條件をつける場合がありますから、その條件でたとえば高過ぎるので幾らかこれを低くしろというような條件をつけます場合には、その條件に従つた
送金に限
つて、自動的に
送金ができるようになるということは申し上げるまでもないところであります。これがこの
法律の一つの大きなねらいでありまして、第二項にありますことは、ただその場合におきましても、
先ほど申し上げましたように、国内でかせいだ円で
投資します場合、たとえば
外国商社が
日本のある会社に貸付をします場合に、
リーダーズ・ダイジェストのように、こちらで行われます
事業活動に基いて獲得しました円を
投資するという場合には、
海外送金は保証されないのであります。現実にドルを持
つて来て、それを円にかえて
投資した場合に限るということにいたしたのでありまして、
日本がかせいだ円をどんどん
投資して、その果実の
送金を海外へいつでも送れるということでは、今日の
外貨事情にかんがみますれば、非常に先が危ぶまれますので、今日の段階ではドルなりその他外貨を持
つて来て
投資しました場合にのみ、
海外送金を保障するということにいたしたのであります。
十六條は、今まで述べましたことは、
外国投資家が
日本の企業に何らかの形で関係を持つ場合でありますが、そうでなくて
外国投資家が
日本に支社を設けますような形で、
日本の会社とは関係を持たずに
事業活動をするという場合、たびたび例にあげますが、
リーダーズ・ダイジェストのような場合はその例であります。あるいは石油の場合でもそういつた例があるのであります。
日本の会社の株を持
つて配当の形で利潤を獲得するというのではなくして、自分たちだけで
日本へ出て参りまして、
事業活動を
行つて利潤を持ち帰る、こういつた場合と形式上二つにわけて考えられるのであります。そのあとの場合におきましては、この利潤の
送金は
法律上は貿易外の
送金として、
大蔵大臣が権限を持
つている事項でありまして、その利潤を現実に
送金します場合には、
大蔵大臣に
為替管理法に基いた許可申請を出さなければならないのであります。ただその場合には、前に述べました株式に
投資してその
配当金の形でも
つて利潤を持ち帰る場合と、均衡のとれた措置を確保する必要があるという見地から、
大蔵大臣が
為替管理法で許可をいたします場合には、必ず
外資委員会へ付議いたしまして、そうしてこの両者の取扱いがまちまちにならないように、
外資委員会でよく審査をいたしまして勧告をする。そうして
大蔵大臣はその勧告に
従つて処理をするということにいたしたのであります。
次は第四章
外国資本の保護であります。これがまた本法の大きなねらいの一つでありまして、冒頭に申し上げましたように
外資が入
つて参りましても、将来いつかこれか
国有化されたり沒收されたりして回收ができなくなるおそれがありはしないかということは、
投資家が非常に不安を持
つているところであります。この不安を除こうというのがこの十七條の趣旨であります。憲法第二十九條によりまして、私有財産を公共の用に供する場合は、正当な補償が必ず行われることにな
つているのであります。しかしながら
海外投資家がこちらで持
つております財産を沒收せられて、それに対して円で補償が行われましても、
海外投資家は決して満足しないわけであります。せつかく
投資しましたものが円にな
つてしまつたのでは、画に描いたもちで、結局本国へ回收できなくなるという心配がありますので、この憲法の根拠に基きましておそらく
法律が出て收用あるいは沒收が行われるのでありましようが、その
法律に基いて補償金が支拂われたときには、その補償金相当額まで必ず外貨の裏づけをしてやる。必ずそれ相当額の外貨を予算に計上しまして、その計上された限りの金額は、
為替管理法の制限の適用を受けずに自由に
外国へ送れる。但しその期間は無制限に延ばしておくわけにも行かないので、一応一年間ということにいたしました。一年間は、沒收されました財産の身がわりであるところの円は、必ずドルに転換し得るという規定を置いたわけであります。ただ
外国投資家が、自分が財産を持
つて直接支配しております場合と、そうでなくて
外国投資家が株の形で
日本のある企業に参加している。その財産はその株を発行している会社の財産である。その財産が沒收されたというような場合には、
外国投資家は直接に持
つているのは株でありまして、第一項の規定の適用を受けないのであります。そういつた場合に、もしこういう事情が起りますれば、その株の内容が空なものになるわけであります。その場合もやはり適当にこれを外貨にかえる措置を講ずる必要が起
つて参るわけであります。
従つて同様な取扱いをいたします旨を明らかにして、第三項を設けたのであります。これは別に
法律で定めるということで、そのとき、新たにこういう事態が起りました場合に、
法律をつくるということを今から約束しているわけであります。
大体実質的な規定は以上申し上げたところで盡きるのでありますが、第五章は
投資と
事業活動を調整するという
意味合いで、たとえば船の関係でありますれば運輸省、その他、銀行等であれば大蔵省といつたように、
外資が入
つて参ります場合、あるいは
投資家が国内でいろいろな
事業活動を行います場合のその業種によ
つてそれぞれ行政上の権限を持
つております官庁は、非常にたくさんわかれておるわけでありますから、それがおのおのばらばらな措置をとりましては、取扱い上よろしくない。
日本の経済にできるだけ貢献させるという上から、一つの一貫した考えでも
つて処理して行く必要があると考えるのでありまして、そのために
外国投資家の
投資、
事業活動に関する案件は、一応すべて
外資委員会が目を通す機会が與えられるようにしたのが、この章の規定を置きました趣旨であります。重要な案件はもとより閣議できめるわけでありますが、この閣議できめる場合におきましても、各省はみずから閣議に提出するということのないように、あらかじめ
外資委員会の議にかけて、
外資委員会は閣議に対してその意見はこうであるということを述べるようにしているのであります。それから各省が
認可とか承認等の
行政処分を行います場合も、軽微のものを除きましては、あらかじめ
外資委員会に出し、その勧告に
従つて、勧告を尊重して各省は
行政処分を行う。こういうことにいたしたのであります。
第六章は雑則でありまして、ここでは主として
外資委員会が行いました
行政処分に対して不服ある場合、これを救済する措置を規定したのであります。不服の申立てをした場合、聽聞を行う。そうしてこれの決定を文書にいたしまして、関係人に送付するということにいたしたのであります。そのこまかい手続は政令できめられるのであります。
それからその次は
外資委員会の
認可を受けました事項につきまして、それを実行いたしました場合に報告をするという規定であります。
それから次は公正取引
委員会というのかございまして、いわゆる独禁法、事業者団体法の施行の責任に当
つているわけでありますが、
外資委員会にかか
つて参ります案件は、両者の
法律に関係のある事項が多いのでありますから、
外資委員会が決定いたしましても、公正取引
委員会が判断いたしますところを決して制限する趣旨ではない。公正取引
委員会は独自の立場から両方の
法律の施行をして参るという旨を明らかにいたしたのであります。
第七章は罰則でございまして、別段御説明する必要はなかろうかと思います。
附則におきましては、
先ほど申しました
外国人の
財産取得に関する政令を改正いたしまして、今までは株の取得もこの政令で行うことにな
つておつたのを
法律に移しました関係上、両者の調整をはか
つておる点と、多少経過的な問題がありますので、経過規定を置いたのであります。
外資に関する
法律は大体以上御説明いたしました。
次に
外資委員会設置法でございますが、
外資委員会は最初に申しましたように、やはりこれはただいまのところは根拠は政令五十一号という
ポツダム政令でございまして、いわば過渡的なものにな
つておるわけであります。この恒久的な今度できます
外資に関する
法律の諸権限を行いますためには、やは恒久的な機関といたしまして、独立の
設置法をつくつた方がいいという
考え方から、一つの單行法にまとめたわけであります。実質的には大した差はございませんが、権限が多少ふえましたことと、たとえばこの
外資に関する根本方針について重要政策について内閣総理大臣及び関係
行政機関に意見を述べるというようなことも今度はでぎるようにいたしたのであります。一番大きなかわりはこの組織でありまして、第五條にございます。従来どういう組織であつたかと申しますと、政令五十一号にありますところでは、
委員長は今度の案と同じように、安定本部総務長官とな
つておりますが、
委員は従来は経済安定本部の長官、それから外務省の事務次官、大蔵省の事務次官、農林省の事務次官、通産省の事務次官、それから運輸省の事務次官、公正取引
委員会の
委員、以上七人の
委員と
委員長とによ
つて組織せられておつたのであります。しかしながら従来のような、次官が職務上当然に
委員になるという制度は、次官は非常に多忙でありまして、一々
外資関係の仕事に必ずしも身を入れるわけにも行かないというような場合も考えられるのであります。
外資の問題につきまして、より適当な代表者、官吏があの省の中にあれば、各省を代表するものといたしまして、その人を任命した方がよかろうという
考え方から、ここに大蔵省を代表する者、通産省を代表する者というような形にいたしたのであります。そういうように次官が当然
委員になるのではなくて、適当な代表者を選び得ることにかえた点が一点、それから従来の官庁代表者の人数を減らしまして、大蔵、通産、それから外為
委員会の代表者、最も密接な関係のある官庁の代表者に限定した点、それから次には、民間の意見を取入れて
委員会の運営をや
つて参りますために、学識経験者を三人以内とすることにいたしたのであります。この三つが従来と異なつた大きな点であります。あとは大体従来と同じでありまして、別段取立てて御説明する事柄もないのでございます。
外資委員会設置法の御説明は大体以上で終りたいと思います。