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野田参考人 今日
参考人としてお呼びにあずかりましたので、私の私見を申し上げたいと思います。御存じの通り私は
法律家ではありませんので、
法律の方はしどろもどろで、よくわかりません。従いまして、この
法律自体のいろいろな
法律的面からのことは、それぞれ專門の方がおありだろうと思いますので、そちらの御
意見に譲りまして、大体現在及び将来の
日本経済の立て直し、言いかえれば
産業の
振興という面から見て、この
法律がどういう
影響を及ぼしておるかという点、それから、それには
産業の
競争を公正にさぜなければならぬ、その公正を維持することが必要だと存じますので、その面からもこの
法律を見て行かなければならぬではないか、そういう
ような観点から見た、私の気づいた点を申し上げて御
参考にしたい、さ
ように存ずるわけであります。
この
法律を見ますと、これは最初からそうだ
つたのですが、非常に詳しく実体的の取締りの
項目が並べてある。
事業者団体としてはこうくいうことはしてはいかぬという、いわゆる
禁止行為と、それから、これだけのことはしてもいいという
許容活動が、相対して並べてあるのであります。その
両方つまりよい面と、悪い面と両方通覧いたしますと、そこにいろいろの問題が考えられるのであります。結論から申しますと、この
団体法は
独禁法と
相当重複して
しまつておる
條項がたくさんある。それでむしろ
独禁法があれば、この
法律は大体からい
つて、なくてすむ
法律ではないか。ことに
独譲の
建前と、この
法律の
建前とはむしろ対象にしているわくが違いますので、
事業者団体という特殊の面において
独禁法の
精神をも
つて行こうというのには、こういう
法律がある
程度必要かとも思いますが、しかし大体からいえば、
独禁法があればこういう
法律がなくてよいのではないかというふうに考えるのでおります。しからばここに上げてある
ような、こういう個々のいろいろの
団体の
行為についてはどうするかというと、私はこれは結果
主義で
公正取引委員会が判断してとめるべきものはとめ、
認むべきものは認めて行けばよいと思う。こういう具体的な
禁止行為及び
許容行為というのを体系的に羅列して行くという方法は、先ほど申しました
産業の
振興という面と、公正な
競争を助長してやるという面に悪い
影響が来るおそれが
相当にある。さ
ように考えるのであります。これはこういうふうに抽象的に、しかも
相当詳しく
行為の内容を書いてありますと、それが全面的に
禁止され、あるいは全面的に許容されることになり、いずれも害がある場合がある。ですからこれらの
活動の結果が、ほんとうに
私的独占の
禁止に反する
ような結果に
なつた場合には、その
行為をその場面でとめればよい。一概に全部
禁止してしまうという
ようなことは、よくないのではないかと思う。たとえば例を上げてみますと、第四條がその
許容活動の方であります。
許容活動で、その四号に
商品の
品質の
改善、規格の改良、それから能率の向上という
ようなものに寄與する
行為は許されておる。ところがつまらぬことが書いてあるために、たとえばこういう
ような
行為は
政府機関、
工業標準調査会その他
一般に認められた有力な
商品標準化の
機関又は
研究機関に
自由意思により協力することのみによ
つて、行うこと。」と、こういう
限定がしてある。そうしますと、
事業者団体というものは、自発的にこういうことをやる余地はあまり残されておらぬ。こういう
団体機関に協力することのみによ
つて行い得るというふうに
限定されておる。これは
弊害を除くためにこう言
つてあるのだろうと思いますけれども、しかしこう
限定されなくて
弊害の起らない場合がいくらでも考えられる。今後
日本の
商品の
品質改善ということは
日本の急務であります。こういうつまらぬ細部にわた
つたことを
條件づけておるということは、
企業者の自主的の
活動を不要に
制限しているのではないかという
ような気がするのであります。それは許されておる
行為の
項目の中にも、そういう点があるということを指摘したいのであります
〔
委員長退席、森(曉)
委員長代理着席〕
次に
禁止行為の方について見ますとこれは
五條でありますが、
五條の一号から四号あたりまでは、
独占禁止法があれば当然のことであ
つてもほとんど重複したことが書いてある。それをただやや敷衍して詳しく書いたにすぎない。これらのことを行えば当然
独占禁止法で縛られるにきま
つておる。それから九号と十六号のごときは不当な
制限ではないかと思います。もちろんこれはこういう
活動で
弊害の起るということは事実です。しかしこういうことをしたからとい
つて、必ず
独占禁止法の
精神に違反した
ような結果が出るとは限らぬのであります。ただそれを、そういうおそれがあるとい
つて、全面的に
禁止してしまう。ここに非常な矛盾があるのではないか。か
ように思うのであります。たとえば
自然科学に関する
研究を実施するための
施設を所有し、又は経営すること。」を禁ぜられておる。但し
公正取引委員会の
認可を受ければよいということにな
つておるのでおります。これのごときも
研究機関を持
つていたからというので、決してそれが
独占禁止法で
禁止されておる
ような結果が生ずるとは限らぬのであ
つて、ことに
中小企業あたりはこれが自由に認められなければ、むしろ大
企業との対等の
競争、つまり
競争の公正ということは保障されないことになる。この今あげました九号から一十六号にわたるものは、その
意味が
共通に含まれておる。
中小企業がただでさえ
資本的な不
平等性を持
つて活動しておるという上に、今度団結してやろうという場合にも、こういう
ような
制限が加わ
つておるということは非常に不当な
制限ではないかと思うのであります。もちろんこの
事業者団体法は
商工協同組合というかつこうで、やはり
適用されないということにはな
つておりますが、しかしそれは
独占禁止法の二十四條の各号に掲げる
要件を備えなければならぬという、これもまたきわめてつまらぬ
限定がついておる。その二十四條の各号に必要な
要件とは何かというと、第一には小規模の
事業者又は
消費者の
相互扶助を
目的とすること」ということが書いてある。他の三つの
條項については、今触れる必要はありませんが、第一の小規模の
事業者で、かつ
相互扶助を
目的とするということでなければならぬということになりますと、そこに非常な制約が出て来て、何を
相互扶助と認めるのか、認めないのか、どこからが大規模であるのか、小規模であるのかということについて、非常な不安定な
制限が加えられて来るということが考えられる。それからまた
特許権を所有し、若しくは支配し、又は
特許発明の実施の許諾若しくは
共同利用のために斡旋その他の便宜を供すること。」も禁ぜられておる。これは
公正取引委員会の
認可を受けたらよろしいという
條項がないのです。ところが
自然科学設備を持
つておれば、そうしてそれを
公正取引委員会を
認可すれば、その
研究施設が
特許権を獲得するということが当然ある。この場合どうなるかということ問題になりますし、それから
中小企業の
競争力を助長して行くという
意味からいえば、
中小企業は各自が
研究機関や
技術者を一々自分で抱えておるということはできない。どうしても
共同してそういう
機関を持
つたり、
研究したり、
品質の
改善をやらなければならぬ。そうするとそこに
特許権というものが起
つて来る。これは当然のことであります。するとその
特許権を
共同で使うという
ようなことがあ
つてしかるべきである。そういうことは自由にさせておいていい。むしろ自由に助長しておいたらいい。その行使した結果を見ていて、その結果が
独占禁止法に
禁止しておる
ような結果に
なつた場合、そのときに
公正取引委員会がそれはいかぬとい
つて止めさえすればいい。一旦自由にさせておいて、結果を見て結果
主義で判断すべき
建前にしなければならぬ問題だと考えるのです。そういう
意味で、
事業者団体法というものは
日本の現行の
経済事情また現在の立遅れた
工業を一日も早く
振興して、活発に
自立態勢に整えて行
つてやらなければならぬというときには、非常なさしさわりが生じ得るし、また現に生じておるのではないかと思うのであります。要するに私の申し上げます点は、
中小企業に公正な
競争條件を整えてやるというためには、こういうすべての
禁止的な
條件をつけるということはなくしてしまうことが必要です。むしろこれを許さないと言
つていることは、不
公正競争を法的に保障しておることになる。逆に言えばそういうことになる。
はつきりとこれから
除外されているのは、
協同組合法六條の
適用除外であります。これは小
企業として
一般企業は百人、
サービス業のごとき特別のものが二十人より以下のものでなければ、
はつきりと
除外されておらぬ。それではあまりに單位が小さ過ぎて、
日本の
工業の中核をなしておる、いわゆる
中小工業の中堅どころの
企業は、この保護からはずされてしまう。
除外の中に入
つて来ないという点が問題だろうと思うのであります。
それからこの
法律は
事業者団体という
定義を非常に広くと
つておる。それで私は思わぬところに問題が起
つて来るという気がいたします。たとえば
学校法人というのが出て来る、私も
法律のことはよく存じませんけれども、
学校法人は民法上のかつこうからいえば、
財団法人であります。そうすると、「二以上の
事業者が
理事又は
管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している
財団法人」ということになると、おそらくいろいろな
学校法人に二以上のいわゆる
事業者が入
つておるのは珍しくないと思います。するとそういうものも
事業者団体法は
適用されるのかどうかということ疑問にな
つて来るのです。そういう点は一体どういうふうに解釈されているのか私はよく存じませんが、そんな問題もあるのではなかろうかという点があります。大体この
法律について私が申し上げたいと
思つた点は以上の
ような点に盡きるのであります。