○殖田國務大臣 先ほどの朝鮮人連盟の解散の問題について
日本の裁判所に裁判権がない
というのは、団体等規正令がポツダム政令である、ポツダム政令については
日本に裁判権がない
というのは、総司令部の指示に基いてさような解釈をしているのであります。それから朝鮮人の地位でありますが、朝鮮人はなるほど終戰前に多数来ておりまして、終戰と同時に一時うんと朝鮮に帰
つて、それからまた参りました。今は、ずつと
日本におつた人もおりますが、一時朝鮮に帰
つてまた来た
という人がかなり多いのであります。そして世上ではいろいろの説をなしておりまして、約百万人の朝鮮人がいる、多い場合にはあるいは百二十万もいる
というのでありますが、登録をしている者は六十万人足らず、以前に登録している者は六十四万ばかりであ
つたのでありますが、今度登録が之をいたしましたところが、かえ
つてそれが数万減
つているような状態であります。私は朝鮮人が心配いたしますのは、登録をしておらぬから、そこで不法
入国と見られてむりに帰されるのではないか、こういうことを心配しておると思うのであります。登録を実はみんなにしてもらいたか
つたのでありまして、今まで登録をしておらなかつた者は、今度登録したことによ
つて判め登録をしなかつた事実がばれる、それがこわい
というようなことは心配なか
つたのでありますが、多少取越苦労でそういうことを心配して登録しなか
つたのではないかと思うのであります。これは私ども、もつとあの登録の
趣旨を徹底せしめておけばよかつたと思うのであります。ずいぶん
趣旨の徹底はいたしたつもりでおりますけれども、そういうような結果が生じた
ということは遺憾であ
つたのであります。
お話のごとく朝鮮人は
日本の国籍を持
つてお
つたのであります。ただいまでも朝鮮人と申します者は、実は非常にあいまいなる地位を持
つておる。これはいつか
並木さんに申し上げたと思うのでありますが、いわゆる連合国人、ビクトリアス・アライド・ネーシヨンではないのであります。ところが朝鮮人は一時自分たちは連合国人と同じ者である
という態度をと
つておつた時代もある。それがかなり朝鮮人問題をやかましくした
一つの原因であつたと思うのであります。しかしされば
といつて日本と離れて独立国である朝鮮の
国民である以上は、必ずしも純粋な
日本人ではない。三重国籍を持つような形にもなる。ところがそれは南方の大韓民国を支持する者は喜んで大韓国の国籍を持つのでありますけれども、南方の人であ
つても必ずしもそれを支持しない。いや北鮮
政府を支持するのだ——でありますから、一体どつちの朝鮮人としていずれの国籍を持つかすらも不明である。しかし
日本から独立したのであるから
日本人ではない、こういうようなことも考えておるのであります。はなはだあいまい模糊たる状態にあることは
お話の通りであります。そこでその問題を早く解決をしたいのでありますが、やはりこれは講和問題の一環をなすものでありまして、その
講和條約が
締結されるまでは、これをデフニツトにきめることはできないのであります。そこで今ははなはだ不徹底な状態に置かれておるのであります。これは朝鮮にとりましても、
日本にとりましても、決して幸いなことではないのでありますが、どうもやむを得ざる次第でありまして、しばらくこれは隠忍するほかないのであります。そこで国籍法と申しますものをこの議会に提案しております。朝鮮人の国籍の問題が解決のできるときに、国籍法をほんとうにきめたいと思
つたのでありますけれども、
講和会議がいつになるかわかりませんので、その他国籍法上いろいろな問題がありますから、朝鮮人の問題をデフイニツトにきめることはあとまわしにして、その問題に触れずに国籍法を一応きめたい
というので、実は提案をいたしておるような次第であります。
講和会議がなるべく早く開かれまして、そうして朝鮮人の問題もそのときに一挙に解決のできる日の、一日も早からんことを私どもは念願をいたしております。
従つて私どもの現在においてとります態度、措置がはなはだ不明確であることは、はなはだ残念でありますが、やむを得ざることと御承知を願いたいと思います。