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聽濤委員 私は
日本共産党を代表しまして、これには全面的に反対いたします。
政府の
説明によりますと、これは
日本が国際社会に復帰する第一歩だというふうに言
つております。しかしながら本
法案につきまして、基本的な問題がどこにあるかといえば、無條件降伏以後の
日本が、ほんとに自主権を回復するために、絶対必要な正しい講和に向
つてわれわれが歩い書くか、それともその反対の方向に歩んで行くかという今重要な分岐点に立
つておる。この
法案は、そういう意味で
日本の今後の歩みを決定する試金石であると
考えるわけであります。すでにブラツセル條約に参加の問題等も起きておりますけれども、これは外交代表部というものを設けるわけでありまして、この
関係は、端的に
日本の今後の歩みが決せられておるという点で重要である。言いかえますならば、これを第一歩として合後の
政策が末広がりに発展して行くでありましようがをの結果は、
日本の将来に重大な影響を及ぼすのではないかと
考えるわけであります。そこで第一に、このたびの
法案が出る次第となりました経緯を見ますと、
アメリカ政府から
招請があり、それに基いて総司令官から
覚書が発せられて、この
法案が提出せられる仕儀に
なつております。これをわれわれがどう自主的に
処理して行くかということが第一の問題であろうと思います。ところがすでにこの
法案が
国会に提出される前に、
在外事務所を
設置するということ、並びにその人選までも終えておる次第でありましてこれは
政府が
国会にも諮ることなく、か
つてにこの
提案をうのみにする
態度をすでに明瞭に示して、おるのでありまして、こういう
態度は、本問題の背後にある
日本の
自主性の問題と関連して
考える場合に、非常に軍要な事柄であろうと思われます。
さらにもつと根本的な問題は、ここに現われておる
法案は、
日本が講和條約を結ぶ前に、
外国との
関係を何らかの形にせよ、復活して行くという内容を持
つておるわけであります。しからば
日本がほんとうに正しくこういうものを
設置する地位にあるか、あるいはそういう権限があるか。国際
関係というものは、
国際法あるいは連合諸国、これらとの正規の
関係を考慮せずして、われわれがか
つてにやり得る問題では決してございません。またそういうことをやりますれば、それだけを見ますと、何らかの利益をもたらすかのごとく見えますけれども、それによ
つて日本と連合国との
関係を阻害し、
惡化させて行くということが問題に
なつて来るのであります。
わが国の国際的な現在の地位は、対日
政策に関する連合国の基本文書その他を見ましても、大体
日本は占置
政策に協力するという制限のもとではありますけれども、国内統治につきましては、
日本に自主的な権限があることははつきりしております。しかしながら、対外的な外交権というものがないことはこれまた明瞭であります。ここに
日本の主権を回復するためにこそ講和が要望されておるが、その講和とは何か。言いかえれば、全連合国との講和でなければならぬわけであります。この方向に進むかいなかが、われわれに与えられておる重要な課題であります。ところがこのたびの在外代表部というものの内容を見てみますと、這般の消息が具体的に明瞭に現われておるのであります。言いかえますと、
政府の主張するごとく、なるほど言葉はそう使
つておりませんけれども、
国際社会復帰という言葉の裏にある意味は、
日本がこういう方法によ
つて、外交自主権を回復して行くその第一歩であるという印象を与えておりますけれども、しかしながら内容を見ますと、この
覚書に明記されてありますように、
日本政府在外代表は外交官でも外交官に準ずるものでもない。また直接
日本政府を代表することもできない。その他いろいろな
規定が明瞭に書かれておる
通りでありまして、ここに明らかなことは、
日本政府の代表ということにとにかく
なつておりますけれども、権限は何もない。およそ何らかの代表になるということは、背後に権限、この場合には何らかの形で外交権というものが代表されなければならない。しかし代表する実質は何もない。しかも実際の実情を見ますと、
日本の外交権はほかのものが持
つておる。そうしてその事実には何らの変更も加えられないで、
日本政府の代表という名前で海外に
事務所を設ける。これは言いかえれば、他の人の持
つておる権限のもとに、
日本政府がただ
事務的な
処理を行う
機関を設けるにすぎないのでありまして、これが今度の代表部のほんとうの性質ではないかと思うのであります。そういたしますと、名前は代表部であ
つても、実質はそうでない。こういうものが一体
日本にいかなる利益をもたらすか。しかもこれにつきましては、一国を除きました他の
日本に
関係する連合諸国は、大体においてこぞ
つて反対しておることが明瞭であります。大体イギリス本国の
態度にいたしましても、二月十日のロイター電報によると「十日ロンドンの権威筋が伝えるところによれば、英国
政府は
米国が
設置を許可したような
日本在外事務所を自国内に
設置させる
意向は持
つていないといわれる」と報道せられております。また同十二日マニラ発のUP電報によれば「フイリピンのネリ外相代理は十三日、フイリピンは
米国数市に
設置されるような
日本の
在外事務所をフイリピンに設けることにははつきり反対する」と語
つています。また最近二月二十七日マニラ発のUP電によると、スペンダー・オーストラリア外相も「特に
日本側において双務的保障のない一方的な基礎に立つ事実上の講和は、満足すべきものとみなすわけには行かない」。さらにワシントン二月十二日発のUP電によれば「濠州、ニユージーランド、フイリピンは、現在のところ
日本の
在外事務所設置を許可した
米国の措置を認めていない。またソ連も中国も
日本に
在外事務所の
設置を許可する意図は持
つていないものと見られる。」こういうふうに
新聞電報を総合しましても、連合諸国が反対しておることは明らかであります。こう
なつて来ますれば、結局結果において現われることは、今日連合諸国全体の信頼を獲得するのではなくして、逆に不信を挑発する
態度にわれわれが出つつあるわけでありまして、このことは明らかに
日本の講和の機会を失わせる、
日本の唯一の正しい講和である全面講和を反対している、こういうものとしてこの
法案に対しては、全面的に反対する者であります。