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1950-04-03 第7回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月三日(月曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 岡崎 勝男君    理事 佐々木盛雄君 理事 竹尾  弌君    理事 並木 芳雄君 理事 聽濤 克巳君       伊藤 郷一君    大村 清一君       佐々木秀世君    坂田 英一君       塩田賀四郎君    仲内 憲治君       中山 マサ君    橋本 龍伍君       益谷 秀次君    増田甲子七君       山本 猛夫君    福田 昌子君       浦口 鉄男君  出席政府委員         総理府技官         (特別調達庁次         長)      堀井 啓治君         検     事         (検務局長)  高橋 一郎君         外務政務次官  川村 松助君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         外務事務官         (調査局長)  與謝野 秀君         外務事務官         (管理局長)  倭島 英二君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商企業局調         達賠償部特別資         材課長)    飯村 英一君         專  門  員 佐藤 敏人君 三月二十五日  委員岡西明貞君、小玉治行君、高木吉之助君、  田嶋好文君、田中元君及び永田節辞任につき、  その補欠として小坂善太郎君、伊藤郷一君、橋  本龍伍君、仲内憲治君、山本猛夫君及び栗山長  次郎君が議長指名委員に選任された。 四月一日  委員福田昌子辞任につき、その補欠とじて岡  良一君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員岡良一辞任につき、その補欠として福田  昌子君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十七日  在外資産補償に関する請願今澄勇紹介)  (第一八七六号)  同(村瀬宣親紹介)(第一八七七号)  同(坂口主税紹介)(第一八七八号)  同(吉田安紹介)(第一八七九号)  同(園田直紹介)(第一八八〇号)  同(佐々木更三君紹介)(第一九三号)  同(安部俊吾紹介)(第一九一四号)  同(佐藤榮作紹介)(第一九一五号)  同(吉武惠市君紹介)(第一九一六号)  同(角田幸吉紹介)(第一九一七号)  同(青柳一郎紹介)(第一九一八号)  同(永井英修紹介)(第一九一九号)  同(吉田安紹介)(第一九二〇号)  同(中村又一紹介)(第一九二一号)  同(園田直紹介)(第一九二二号)  同(北川定務紹介)(第一九二三号)  同(三池信紹介)(第一九二四号)  同(保利茂紹介)(第一九二五号)  同外一件(坂田道太紹介)(第一九二六号)  同外一件(原田雪松紹介)(第一九二七号)  同外一件(福永一臣紹介)(第一九二八号)  同(受田新吉紹介)(第一九五一号)  同(佐竹新市紹介)(第一九七五号)  同(受田新吉紹介)(第二〇〇八号)  同(坂田道太紹介)(第二〇〇九号)  同(永井英修紹介)(第二〇一〇号)  同(保利茂紹介)(第二〇一一号)  同(三池信紹介)(第二〇一二号)  同(北川定務紹介)(第二〇二一号)  同(中村又一紹介)(第二〇一四号)  同(園田直紹介)(第二〇一五号)  在外公館借入金返還促進に関する請願金光義  邦君外六名紹介)(第一九七四号) 四月一日  在外資産補償に関する請願前田正男君外三  名紹介)(第二〇三一号)  同(受田新吉紹介)(第二〇三二号)  同(小平忠紹介)(第二〇七七号)  同(中村又一紹介)(第二〇七八号)  同外一件(保利茂紹介)(第二〇七九号)  同外一件(永井英修紹介)(第二〇八〇号)  同外一件(三池信紹介)(第二〇八一号)  同外一件(北川定務紹介)(第二〇八二号)  同(受田新吉紹介)(第二一〇三号)  同(川西清紹介)(第二一〇四号)  同(原健三郎紹介)(第二一〇五号)  同(岡田五郎紹介)(第二一〇六号)  同(永井英修紹介)(第二一〇七号)  同(保利茂紹介)(第二一〇八号)  同(北川定務紹介)(第二一〇九号)  同(三池信紹介)(第二一一〇号)  同外一件(中村又一紹介)(第二一一一号)  同(宇野秀次郎紹介)(第二一五一号)  同(伊藤郷一君紹介)(第一五二号)  同(苫米地英俊紹介)(第二一五三号)  同(宇田恒紹介)(第二一五四号)  同(中村又一紹介)(第二一五五号)  同(永井英修紹介)(第二一五六号)  同(保利茂紹介)(第二一五七号)  同(三池信紹介)(第二一五八号)  同(北川定務紹介)(第二一五九号) の審査を本委員会に付託された。 三月二十九日  在外公館借上金返還並びにその換算率に関する  陳情書  (第六六一号)  在外公館借上金返還に関する陳情書  (第六八五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件   請願  一 講和問題に関する請願門司亮紹介)(    第七一号)  二 同(田代文久君外一名紹介)(第二五六    号)  三 全面講和促進に関する請願加藤充君外一    名紹介)(第六二九号)  四 同(野坂參三君外一名紹介)(第七四九    号)  五 同(松谷天光光君外二名紹介)(第九七五    号)  六 同(聽濤克巳君外一名紹介)(第一五六三    号)   陳情書  一 講和條締結促進陳情書    (第五〇八号)  二 未帰還同胞引揚促進に関する陳情書外一件    (第五    九〇号)  三 同外一件    (第六二七号)     ―――――――――――――
  2. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまより会議を開きます。  まず請願審査をいたします。日程第一、講和問題に関する請願門司亮紹介文書表番号第七一号より日程第六、全面講和促進に関する請願聽濤克巳君ほか一名紹介文書表番号第一五六三号までを一括議題といたします。  日程第一、第二は同趣旨でありますから、一括して紹介議員にかわり、專門員より朗読いたさせます。     〔專門員朗読〕     請願人    東京都目黒区上目黒七丁目一、    一八一番地  入江 慶次       紹介議員 門司 亮     請願趣旨   近来新聞紙その他におきまして、日本講和会議が近いこと、単独講和可能性があること、及び講和後におきまして軍事協定を結び、日本軍事基地を設け、外国武装兵力を駐屯させようとする動きのあることが報ぜられ、政府当局の一部にも、非公式に単独講和並びに講和後に外国軍隊の駐屯を期待する、ごとき意見の発表があつたことが報ぜられております。講和の日の一日も早からんことは、私ども働く者のひとしく願うところでありますが、ポツダム宣言厳正実施を願う私ども国民は、ポツダム宣言の方式による全面的講和を願うものであります。しかしてその後におきまして、日本軍事基地を設け、外国兵力を駐屯しめる等の計画があるとしますれば、まことに憂うべきことでありまして、私どもはそのような企てに対しましては、全国民文字通り命をかけて反対すべきものであると信じております。私どもはかかる報道かまつたく根もなき室想であることを願望しておりますが、この際国会の名におきまして、全面的講和決議と、日本軍事基地化するいかなる協定にも反対するという決議をいたされ、平和を守る決意を全国民の前に、また全世界の前に披瀝いたすことが、まことに時宜にかなうものと思いますので、貴国会でお取上げ願いたく訪願いたします   衆議院議長 幣原喜重郎殿
  3. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に日程第三ないし第六の請願はこれまた同一趣旨のものでありますので、一括して紹介議員説明を求めます。聽濤克巳君。
  4. 聽濤克巳

    聽濤委員 今專門員から説明のありました趣旨と大体同じ趣旨のものでありますが、ここに出ておりますのは、大阪市北区堂島浜町、全逓信労働組合大阪地区本部木村一三君ほか二百四十五名の請願のものと、それからこれには二百四十五名の住所氏名を書いて署名捺印したものが添付されておるのでありますが、そのほかにもう一つは富山市桜橋通り一番地、日本軍気産業労働組合北陸地方本部執行委員長今井嘉助君からの請願となつております。大体同趣旨でありますが、その請願趣旨單独講和によれば、一部の国との交戰状態は解けず、永世中立は不可能となり、また日本経済を自立させることができず、すべての国との平等互恵の貿易を行うことも不可能となり、単独講和戦争への道であり、国民を食えなくさせる道であり、植民地化軍事基地化べの道である。全国民は一日も早く戦争状態の消滅を望み、平和と自由と独立とを求めているから、政党政派を超越して全面講和を締結されたいというのであります。趣旨はもはやこれ以上説明申し上げることも、ございませんが。特に本委員会要望いた、しておきたいことは、外務委員会におきまして、本委員会は特に講和問題を主として論ずるというので、本国会におきまして三十数名の多数の委員をもつて構成されることになりましたので、今日大委員会なつたわけでありますが、これは当然日本国民の問題になつております講和問題について、外務委員会で十分検討し、国民世論先頭に立つて行くという大きな役目を持つておりますので、この講和に対する要望各党派関係なく、全員が国民立場に立つて愼重に御討議されて、採択されていただきたいと思うのであります。全面講和につきましては、おそらく與党の諸君の間にも真劍なお考えがあることと思いますが、結局趣旨は、單独講和というものは事実決して講和内容をなさない。講和というものは結局全面講和以外にないというのが国民の大きな要望であろうと思う。一日も早く講和を達成させるために、われわれ外務委員がほんとうに党派を超越して、国民先頭に立たんことを要望する次第であります。ぜひ皆さんの御努力によつて御採択あらんことを切望する次第であります。
  5. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これについて政府側より御意見があれば伺います。
  6. 川村松助

    川村政府委員 ただいま聽濤委員からの請願趣旨につきましては、再三当委員会その他において答弁いたしておりますように、趣旨については同感であります。講和問題については、総理が国会におきましても再三強調しております通りわが国は一日も早く、でき得るだけ多くの国と講和を締結し、国際社会に復帰することを念願いたしております。ただ、全面講和が最も希望するところでありますけれども全面講和がよいとか悪いとか、あるいはやりたいとかどうとかということは、要するに客観情勢がきめることでありますので、現在の日本地位としては、いかんともこれをなし得ない状態にあることは御承知通りと存じます。基地の問題につきましては、占領下日本におきまして占領軍軍事上の必要から施設することは、日本としては拒み得ない條約上の義務があるのでありまして占領軍軍事上の何らかの必要によつて基地を設けることは、これが飛行基地であろうと、占領目的のため必要であるとなりますれば、わが国立場においては、これを拒み得ないという状態であることを御了承願いたいと思います。請願の御趣旨に対しましてはもちろん同感であります。
  7. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これにつきまして政府委員、もしくは紹介議員に対して御質疑はふりませんか。
  8. 並木芳雄

    並木委員 政府にお伺いいたします。ただいま次官の御説明ありましたように、結局全面講和というものは客観情勢によつてきまるものであつて日本としてはどうにもならないという、お言葉がありました。客観情勢、この要素はいろいろ複雑であろうと思いますが、その客観情勢について私はお伺いしたいと思うのです。特に最近国際連合中共が加盟する問題、これが大きく取上げられております。それからまた対日講和問題に対してアメリカの動向を左右するであろうといわれておつたヴォリーズ陸軍次官の六月末日をもつての辞職の報道、それからバタワーズ国務省次官補の対日問題に專任するといつたようた報道に関連して、いわゆる客観情勢というものがどういうふうに動いて来ているか。ざつくばらんに申し上げて結局対日講和というものはどういうふうになつて来たか。依然早く結ばれる見込みであるかどうか。そういうようなことをわれわれが知りたいために、その客観情勢について詳細に、かつ懇切に御説明願いたいと思います。
  9. 與謝野秀

    與謝野政府委員 並木委員にお答えいたします。最近になりましてまた対日講和機運が動いているような新聞報道その他がありますことは御承知通りであります。しかしながら特にある国の、責任ある当局から、講和條約がこれこれの手続で進んでいるというようなことがあつたわけではないのでありまして今日のところわれわれとしては、新聞に漏れ乗るいろいろな報道から想像いたす以外には方法がないのであります。最近のいろいろの動きの中から、なるほどこういう動きがあるかと思われますことは、たとえば先ほど並木委員のお引きになりました、先般ヴォリーズ陸軍次官がやめるということになりましたときに、アメリカ当局の中で、多少講和條約に関する意見の相違があつたというようなことが、かねて伝えられていたのでありますが、またそれが裏づけされたようなことであるのであります。しかしヴォリズ次官講和條約の問題でやめられたとはとうてい信じられないのであります。またアメリカ当局もそれを否定しているのでぢります。そういう動きもある。ところで御承知通り、五月の八日からロンドンで開かれます英米仏三国の外相会議で原子力の管理問題、対独問題、その他の四項目の議題の中に、対日講和の問題が取上げられておりますので、五月八日以後の会議において、ともかく対日講和の問題が、この三国の当局者の間で意見が交換されるということは事実だろうと思うのであります。またさきごろコロンボの会議の決定によりまして、イギリスの中にも対日講和問題を研究する委員会が設けられ、これが四月に発足するということも伝えられております。また先般フィリツピンを訪問しました濠州のスペイン、タイ外相も、対日講和問題の内容についても語り、またそのインタービユーで、年内に講和條約をつくりたい、こういうことを語られた。こういう報道もあるのでありまして、少しずつ昨年の秋から始まりました講和條促進動きというものが動いているということは、確かだろうと思うのであります。ただこれについてアメリカ当局なりイギリス当局なりが、いわゆる全面講和、たとえばソ連とか中共とかが講和参加するのがむずかしければ、これを抜いてまで講和條約を促進しようという決意をしたような情報一つもないのでありましてそういうことも考えて研究しているというのが今日の状況ではないか、こう見られるのであります。また従来御承知のように手続上の食い違いや、意見の違いがありまして、この手続上の意見の調整を、たとえば條約案の内容について、英米仏三国の当局意見一致した場合に、いかなる手続でさらにソ連その他へ呼びかけるかということについても、われわれはまだ確かな報道を持つておらないわけであります。  なお先ほど中共政府国際連合関係について御質問がありましたので、ついでにこの問題について申し上げます。国際連合におきます中国地位は、いわゆる拒否権を持つておる安全保障理事会の五つの常任理華国一つでありますから、非常に重要な問題になつているのであります。昨年中共政府ができますと、すぐ中共政府国際連合に、十一月の半ばに国民政府中国代表する資格がない、こういう通告を行つたのであります。またその後自分の国の代表として、安全保障理事会代表及び経済社会理事会代表の任命をすでに行つたのであります。また御承知のように、ソ連初め東欧ブロックの諸国その他が中共承認いたしまして、安全保障理事会のメンバーの中でも相当その数がふえて参つたのでありますが、ことしの一月、ソ連代表か国ら民政府代表国連に出席する資格がないと。この排除を要求したのであります。そのときはソ連ユーゴインドがこれを支持し、アメリカ、フランス、チェコ、キューバ、エジプト、エクアドルの六国が反対し、イギリスノールウェーが棄権した。つまり六対三でソ連の提案が敗れまして、爾来ソ連国民政府代表が出ている間は、国連協力しないと言つて欠席しているのであります。これに対して国連事務局としては。何とかソ連協力を得たいとして。いろいろ手を盡しているのであります。現在のところ理事国十一箇国のうちイギリスインドユーゴノールウェーソ連、この五箇国が中共承認しているのでありまして、あと二つの国が中共参加に同意すれば、また国連ソ連協力が得られる。こういう事態になつていると思うのであります。またアメリカとしては、今日まだ中共承認しておりませんし、国民政府代表排除ということに賛成はしておらないのでありますが、この問題はいわゆる手続問題という解釈をとつているようでありますから、もしこの委員会で多数決できまるという場合には、アメリカは特に承認をしていなくても、拒否権まで発動して、中共参加を拒否するということはないというふうに伝えられているようであります。
  10. 並木芳雄

    並木委員 中共国連に加盟することが取扱われ、かつこれが認められた場合には、結局今中共承認しておらない国、たとえばアメリカのような国の中共承認というものも促進されるように存じますけれども、その点に対してはどうお考えになりますか。
  11. 與謝野秀

    與謝野政府委員 アメリカ中共承認しておりませんのには、いろいろな理由があるだろうと思うのでありますが、特にことしの一月以来、アメリカ中共との関係が非常に悪化して参り、そのために承認機運が阻害されたように思うのでありまして、国連に、かりに中共参加が認められるという場合に、今お説のように、アメリカの輿論、その他に相当影響があるだろうと思います。
  12. 並木芳雄

    並木委員 手続の問題であるにしろ、何にしろ国連というものに加盟を許した以上、これを承認しないということは、国連の精神からおかしいのではないかというふうに感ずるのですが、その点いかがですか。
  13. 與謝野秀

    與謝野政府委員 この間国連事務総長のリー氏が、私の性質を帶びた覚書各国政府に送りまして、一国の国連参加の問題はその国の外交的承認とは切り離して考うべきだ。その国の代表参加させるかどうかは、その政府がその国を現実に支配し、国連憲章の定める義務を遂行する能力を持つているかどうかによつて、きめるべきだとこういう一つ妥協案のようなものを出して、つまり国連代表を出したら承認すべきものだとか、また承認されたものだけが出るべきだ。そういうかたい議論でなく、折衷案を出しているようであります。御参考までに申し上げます。
  14. 並木芳雄

    並木委員 それに対して、外務当局としてはどういうふうに考えられるか、その所見をお伺いしたいと思います。
  15. 與謝野秀

    與謝野政府委員 外国政府が重大な外交問題を取扱うのに、かくあるべきだということを私どもが述べるのは、差控えたいと思います。
  16. 並木芳雄

    並木委員 さつき政務次官は、客観情勢できまるもので、日本としてはいかんともしがたいと言われた。そのことは結局全面講和になろうとも、單独講和になろうとも、どうにもならないので、全面講和が望ましいことはわかりきつているけれども單独講和になつてもしかたがないのだ。もちろん日本政府としては、これを承認して調印をするという意味に解釈せられますけれども、そう解釈すべきをのかどうか、その点をお伺いします。
  17. 與謝野秀

    與謝野政府委員 その通りであります。日本がいかに全面講和を希望しましても、客観情勢で、單独講和、いわゆる多数講和なつた場合でも、これに応ずる腹を持つております。
  18. 並木芳雄

    並木委員 本請願には軍事基地という文字が使つてあるようでございますけれども、この際、私たちははつきり軍事基地ということについて認識をしておきませんと、誤解を招くおそれがあると思うのですが、私たち憲法戦争を放棄した、軍備も放棄したことは、幾度も繰返し言われている通りであります。これはポツダム宣言に基き、われわれが世界に公約したところのものでございまして、もちろん戰勝国側である国から、これを当然われわれに守るべき義務として押しつけて来るのは当然であろうと思うのです。最近言われます軍事基地という言葉が、もし日本軍備は持たない、戦争はできないけれども、何らかの形において日本に他国の軍事基地を設けるといつたように解釈せられるのであるならば、これはやはり戦争に巻き込まれ、われわれ中立を放棄しなければならない運命に陥るおそれがあると思うのであります。そこで私は占領治下において、軍事上必要である場合には、非公式であろうと、これは拒み得ないのだという政府当局のただいまの御発言は、わかるような気もするのであります。但しそれはあくまでも日本を占領する目的のための範囲にとどめるべきものであつて日本を除外した外国外国の悲しむべき運命。つまり戰争というものが起るために、その足場として占領治下において日本軍事基地を設けるというようなことになりますと、これは相当重要な問題ではないかと思うのです。そのけじめをどこでつけるか、つまり、日本占領目的というものは、その名前のもとにどういうふうにされても、われわれとしては何ともしようのないものであるかどうか。そこにはおのずから限界が出て来るのではないか。その限界を越した場合には、われわれは崇高なるポツダム宣言を守り、憲法を制定して、これを遵守して行くということを世界に示すためにも、政府としてはやはり発言をさせてもらつていい。また発言していいというところが出て来るのではないかと思うのですが、現在言われておる軍事基地意味さつき川村次官が言われた軍事基地意味というものは、その限界を越えておるのかどうか、越えてはならないものであると思うけれども、どうであるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  19. 川村松助

    川村政府委員 ただいまの御質問があつた前に私が請願趣旨には同感であると申し上げましたが、請願趣旨とするところの全面講和要望と、軍事基地排除の二点につきましては、政府考えておるところは、先ほど述べた通りでありますが、請願趣旨は承つておくということに訂正さしておいていただきます。
  20. 並木芳雄

    並木委員 私がお伺いすることと少しぼけて、触れておらないようでありますけれども、私がお伺いしたいのは、要するに占領下においては、どうしてもどうにもならないのだという分野が広い。そういうことはわかるような気もするのです。またわれわれ敗戦国民としては、それはわきまえなければならないと思います。ただ全面にしろ、單独にしろ、講和條約が結ばれたあかつきには、とにもかくにも日本は独立する、自主性をとりもどすのであります。そのときに、今言われておるところの軍事基地というものが、先ほど私が申しましたような限度を越しておる場合には、当然問題になるであろうと思います。それからまた、そのときには軍事基地そのものをも日本に置くということが、憲法違反になるのじやないか、われわれはどうしてもそ考えざるを得ないのです。従つて将来單独講和をやつた後でも、最近のアメリカ方面情報では、日本との間に進駐軍を続いて駐屯せしめることはできそうだ、ある種の協定によつて、できそうだというふうな報道が伝えられておりますけれども、それは私はあくまでも日本の国内の治安の維持、これを限界に限定せられるべきものではないかというふうに思うのであります。もとより私はしろうとですから、謙虚な気持で政府の御意見を聞いておるのです。もしそれが何らかの形において戦争の場合に使われる基地であるとするならばもこれは明らかに憲法違反になるじやないかと思うのです。従いまして私がお伺いしたいのは、講和條約が結ばれました後にも進駐軍が日本に続いて駐屯し、また軍事基地と称せられるようなものが設定された場合には、それは日本国内の治安の維持をするためで、その限度にとどまるべきものと解釈すべきであると思うけれども、その点はどうであるか。またある国の治安を維持するために外国の力を借りるということは、過去において戰敗因のどこかにあつたろうと思うのです。もしあつたとしたならば、その例についてもお伺いしたいと思います。
  21. 島津久大

    ○島津政府委員 並木委員の先ほどの御質問は、現在の占領下において占領軍のすることがもいわゆる占領目的の範囲を出ていはしないかというような御質問と承つたのでありますが、そういうことでしようか。と申しますのは、占領軍が、かりに占領軍の施設に協力するようにと日本に指示する場合。それが占領目的を越しておる場合は日本として発言できるのではないかという、御趣旨ではないかと思いますが……。
  22. 並木芳雄

    並木委員 そういう場合はあり得ないであろうかどうであろうかというわけです。もしあり得るのだとしたならば、川村次官が言われたように、占領治下においては絶対にわれわれとしては発言することもなければ、どうにもならないのだというふうにはならないと思うのです。それをお聞きにしたいわけです。少なくとも私たちポツダム宣言を守り、日本憲法をかたく守つて意向という精神に撤しておるものにとつて、疑問が出るような場合があつたならば、そのときは政府としても虚心担懷に、関係方面に対して申入れをすることができるのではないか、こういう点にあるのであります。いかがでしようか。
  23. 島津久大

    ○島津政府委員 そういう御趣旨でございますならば、たびたび政府側から後答弁を申し上げておりますように、占領軍最高司令官から申し出て、あるいは指令のある場合には、これに従わなければならない。日本政府立場はかわらないのでありまして、その内容がどうであるかということを解釈する立場に、日本政府はないのでございます。なおまた将来のことにつきましては、これまたたびたび申し上げ、政府立場を明確にいたしております通り、仮定の問題としてお答えできないと思います。
  24. 並木芳雄

    並木委員 さつきの段階の点でございますが、講和が結ばれた後における外国軍の駐屯、あるいは施設を維持するといつたことは、国内治安の限度にとどまるべきであると思うが、どうですか。その点と、そういう例が前にあつたかどうか、そういうことは新しい憲法の精神に照らして、どういうふうに解釈せらるべきものであるか、これは現実の問題になつて来ておるようでございますから、ぜひ御所見をお伺いしたいと思います。
  25. 島津久大

    ○島津政府委員 この点もまた、講和条約のないようがどういうふうになろうかということもいろいろ想像はいたすのでございますが、具体化して来ておる段階にはないのでありまして、いかなる形態で占領が行われるか、あるいは基地が設定されるかということは、まつたわれわれとして予測がつかないのでございます。また前例につきましては、ただいま確たるところを承知しておりませんが、講和条約の実施を監視する意味の保証占領というような例はございます。
  26. 並木芳雄

    並木委員 もう一つ、本件に関連してお伺いしておきます。それは最近のソ連の方針でありますが、最近ソ連は対日講和その他の政策において、相当のかわり方を示しておるように思われるべきであるとか、あるいはこれは事実かどうかは知りませんけれども、千島を返還するから中共貿易を再開しろといつたような報道、とにかくいろいろの報道を総合してみますと、ソ連としての外交方針が相当のカーブを示してきておるように思われるのであります。こういうものに対してわれわれ日本国民としては、見方は各人各様でしようけれども、むずかいと思うのです。そのむずかしい原因はどこから来るかというと、共産主義と反対の立場に立つて、これは民主主義と相いれないものであるというふうな印象を私たちに與えるためだと思うのであります。ここでむずかしい問題が起こるのですけれども日本としては憲法において、思想の自由、政治結社の自由、その他あらゆる基本的自由を認めて、思想的にはいかなる主義をとろうとも、これは合法的であり、自由であるというようになつております。しか然るにかかわらず、一方において共産主義があたかも自由と相いれないものである。さらにいいかえれば、民主主義対共産主義だ。こういうふうにわれわれに印象づけるものがあるわけなのです。そうすると私たちが民主主義を断行するということを、ポツダム宣言憲法で誓つたのでありますから、民主主義に反するものは共産主義であるというならば、これは共産主義というものを扱つておる日本としては重大問題だろうと思うのです。ここで私は主義としての民主主義と共産主義を対立させるその方法というものに対して、日本政府はどういう見方をしておるか、これが本当に対立していないものであるとすれば、ポツダム宣言日本憲法というものを考え直して行くべきじやないか。しかし、私としては、どうしてこういう御質問をするかというと、日本はもつと広い、共産主義であろうとなんであろうと、とにかく思想の自由、政治結社の自由を認めておるのであるから、したがつて民主主義対共産主義という分類をすることは妥当でないのではないか。少なくとも今の状態妥当ではないと思う。そこでお伺いたしたいことは、これは政府としては民主主義対共産主義というものを今のような意味で解釈しているかどうか。相いれないものとして解釈されているのかどうか。相当重要問題で、その点がはつきりしませんと、今度事ごとに国民は戸惑いをするおそれがあるのでありますが、どういうふうにお考えになりますか。御所見を明らかにしていただきたいと思います。
  27. 與謝野秀

    與謝野政府委員 並木委員にお答えいたします。最近のソ連の外交方針がかわつて来たように見られる。これもいろいろ言い方があるであろうと思われるのでありますが、私どもは別段顕著な変化があつたというふうには解釈しておらないのであります。たとえば対日講和促進するという問題につきましても、すでに昨年の五月、六月パリ—の外相会議でヴィシソスキー外相が取上げて、これを提案したこともあるのであります。また最近は中ソ條約の中に対日講和ということを大いにうたつている。また今年の初めでしたかワシントンでソ連代表が、アメリカ中共承認したならば、対日講和促進されるということを漏らしたという報道どもありました。これはつまり従来の方針をかえて、急に態度がかわつたということはないものと私は考えておるのであります。先般アチソン長官が対ソ問題についてバークレーで演説した中にも、対日講和の問題はアメリカソ連との間の大きな懸案の一つになつていることをあげているのであります。同時に先ほど御意見のありましたような民主主義と共産主義が共存できるかという問題についても、これは主義上の問題については私どもがお答えする限りではないと思うのでありますが、現実の問題として、ソ連当局アメリカ当局も、両方の歩み寄りによつては共存の可能性があるということを、最近最高首脳者は述べておるのであります。ただその間にアチソン長官によれば解決されない、長引くというような困難な問題があるのでありますが、同時に二つの社会が共存できるということを、両国の首脳部が言つたということも、忘れてはならないと思うのであります。日本におきましてはもちろん御説のように、共産主義を奉ずる政党も合法政党であり、思想の自由も認められておるのでありまして、それ以上私どもはつけ加えて申し上げる必要はないと思います。
  28. 竹尾弌

    ○竹尾委員 議事進行について……。今の外務当局に対する質疑はよくわかりましたが、ちよつと合今の議題になつておりますこの請願をどうするかということに対して、問題が少しそれているように思いますので、問題をこの請願の問題にひとつもとしてもらいたいと思います。われわれも意見がありますから、その点委員長は議事のさばきを順調にやつてもらいたいと思います。
  29. 聽濤克巳

    聽濤委員 川村政務次官に聞きたいのですが、先ほど私の請願趣旨説明のあとで、全面講和はもちろん望ましいのだが、結局客観情勢によつてきまつて来るんだという、前から吉田首相初め言われていることが繰返されているわけなんですが、この際念のためにもう一度お聞きしたいと思うのであります。客観情勢と申しますのは、これは言うまでもなく、国際情勢のことをさして言われることは明らかであります。つまりそれは川村政務次官も繰返し言われているように、全面講和は望ましい。そうして日本として、それをいくらそうあつてほしいと考えてみたところで、これは連合諸国の間の関係によつてきまつて来るので、われわれの手でどうすることもできないんだ、こういう趣旨であろうと思います。日本をめぐりまして英米あるいはソ同盟、中国というふうな問題が、対日講和についても、いろいろ新聞その他においても議論になつておる。ところで外務当局は国際的な関係によつて全面になるか、單独になるかということはきまるんだ、しかし今の方向は大体全面講和は困難を来しておるというふうにお考えになつていることは明らかですが、この中で私がお聞きしたいのは、国際的條件と抽象的に申されますが、今日だれでも感じていることは、英米対中国、ソ同盟という関係ができているので、一体どういう国々が実際に日本全面講和を希望していないのか。こういう点が具体的にはつきりしているならば、川村政務次官の御意見を聞きたいと思うのです。
  30. 川村松助

    川村政府委員 原則的には連合国のすべてが全面講和を希望しておると思います。ただその内容において全部一致した意見にまとまつていないのではないかというように考えております。
  31. 竹尾弌

    ○竹尾委員 議事進行について……。済さん申し上げるのですが、問題は請願をどうするかということなんで、政府当局に尋ねてもしようがない。ここで問題を引きもとして與党意見も聞いてもらわなければならぬ。そういうぐあいにしてもらいたい。
  32. 並木芳雄

    並木委員 竹尾委員さつきの議事進行はちよつとおかしい。請願手続き上の取扱と内容の検討と二つある。今手続き上の検討をやるために内容の検討をしているのです。従つてその内容について特に聞きたいことがあつたら、與党の方でも発言したらいいと思う。それが終わつてから、どう扱うかという手続きになるのじやないかと思う。
  33. 竹尾弌

    ○竹尾委員 このくらいが大体盡きたと思う。
  34. 聽濤克巳

    聽濤委員 川村政務次官はあまりはつきりしたことは言いませんけれども、連合諸国の間でも各国との全面講和を望んでいることでは同じだ。ただその内容について一致がなかなかできないそうだという御説でしたが、その程度ですと、政府日本国民に対して、われわれも全面講和に望んでいるんだけれども、国際的條件が不可能に近いんだ。だから單独講和もやむ得ないんだ。そういう断定的な発言をされるのにはまことに根拠薄弱だと思うのですが、私はそういうことが言われないために、政府が言つている国際的條件とは具体的にどういうことなのか、いかなる国々が日本国民要望する全面講和に反対しているのか、それを具体的にもつと聞きたいわけなのです。政府もそれだけ言いきつているんですから、はつきり御発言願いたいと思う。
  35. 川村松助

    川村政府委員 連合国のそれぞれの事情につきましては、ただいま政府として批判したくないと思います。
  36. 聽濤克巳

    聽濤委員 そういうことでは話のつじつまがまつたく合わない。吉田内閣は日本国民に対しては、全面講和というものは私たちも望んでいるのだと言う、望んでいるのだと言う、望んでいるなら望んでいるようにやればいいのだけれども、それをやらないでいる。この根拠として、国際的條件によつてできないのだという。これは民間においてもどこにおいても、ある特定の国々が日本全面講和を妨害しているからだと言わんばかりの宣伝も行われているし、印象もまき散らされている。また政府はそういう根拠に立つて全面講和は望ましいけれどもできないからしかたがないと、これを唯一のたよりにして今の政策をとつておる。だからここではつきりと言うべき義務がある。しかしこれ以上聞きましても、とても言うまいから私は差控えておきます。  もう一つお伺いしたいのは、政府全面講和は自分たちも望ましいと思つておるというならば、国民の間から出て来ておるこういう請願を—これを採択するかいなかは外務委員会できめることですが、先ほどわざわざ二度目に立つて、この請願について趣旨は賛成だということをお取消しになつた、そうしてこれは聞きおくという意味に訂正したわけでありますが、これは一体何なんのことだ。まことに話の合わないこともはなはだしい。ここで吉田内閣に対して大きな疑惑が持たれておる。吉田内閣は明らかに單独講和の実際政策を取つておるのみならず、腹の底において全面講和はやりたくないのだ。單独講和をやろうとしているのだという印象を国民ははつきり持ちつつあるのです。これは当然のことなのです。しかしもしも川村政務次官が、私たち全面講和は賛成だ、望ましいと思うならば、こういう問題についてなぜあなた方ははつきりした態度をとらないのか、何がために先ほどの前言を取消しされて聞きおくという程度に訂正されたのか、お伺いたしたい。
  37. 川村松助

    川村政府委員 さきに答弁しました際にもきわめて簡單明瞭に、何人も全面講和を希望するところであるけれども客観情勢がいかんともしがたいと、いうことを申し上げてありましたし、請願趣旨国民全部が望んでいるところでありますが、実際問題としましてはなしがたいということもはつきりさきに申し上げているわけであります。政府といたしましては承つておくということに答弁しておく方が正しいと考えたわけです。
  38. 聽濤克巳

    聽濤委員 川村次官は同じことを言つているのですが、私はそのために二つにわけてお聞きしたのです。あなたがそういうふうに言われるから、それでは国際的な條件とはいかなるものをさして言うのかということをお聞きしたら、これもお答えができない。ではそれならばそんは一応さしおくから、川政府全面講和が望ましいと言つているなら、どういうことをするのか。ここで請願の問題が出て来ている。こんなちつ浮簡警ついてわざわざ何のために趣旨に賛成であるということの前言を取消したか、ということを私は聞いているのですが、政府は一体全面講和趣旨において自分たちも望ましいと考えておるということを国民に対し、あるいは全世界の連合諸国に対して、どういうふうにお示しになるつもりでありますか。これをちよつとあらためて聞きたい。何もしないでいて全面講和が望ましいと言つてみても話にならぬ。吉田内閣は先ほど私が言つたように世界的にも、日本国民の間にも、これは腹の底から全面講和に反対してぶちこわそうとしているのだという印象がある。あなたがもし全面講和が望ましいというなら、世界その他日本国民に対して、どういうふうに—できる、できぬかは、確かにあなたのおつしやるように、連合国関係によつても左右される問題ですからともかくとして、われわれはそういう状態にあればあるほど、日本国民の意思として全面講和をやつてもらいたいという大きな国民要望を出して行きたいと考えておる。これは政府側がなすべき任務であることは明らかです。吉田内閣がもし同じ精神を持つておるならば、われわれとやり方蓬うでしようが、どういう方法で全面講和の意思を持つているということを表明なさるつもりなのか、お聞きしたい。
  39. 川村松助

    川村政府委員 全面講和を希望することは、総理も委員会において再三申し上述べた通りでありますが、半面再三答弁いたしておられますように、客観情勢がなかなか容易でない。従つてこれ以上の答弁はなしがたいと思います。
  40. 仲内憲治

    ○仲内委員 先ほど来紹介議員聽濤委員質問あるいは並木委員質問、また川村政府委員その他の答弁を伺つておるのでありますが、この請願趣旨でありまする全面講和單独講和か、ことに全面講和が望ましいという点は、この委員会におきましてもすでに当初以来繰返されておるのでありまして、結論はすでにはつきりしておると思うのであります。きよう取上げられました請願の形式と申しますか、請願者の顔ぶれと申しますか、その点につきまして先日の理事会でも話題に土つたのでありますが、委員長に伺いたいのは、この請願は主としてもう活版刷りで、しかも特定政党の指導のもとに署名運動が展開されてまとまつたものが出されているというように考えられるのでありますが、聽濤委員は、先ほどこの問題は政党政派を超越しての運動でなければならないと言つておらレタのであります。どうもわれわれの印象では、この請願形式その他から考えましてむしろこの重要な問題について、特定政党の力があまりに片寄つている形がうかがわれるのでありますが、そういう印象をこの請願書の形式その他を通じまして抱いておられるであろうかどうか、この点を伺いたいと思います。
  41. 岡崎勝男

    岡崎委員長 請願書はいろいろありまして、取調べましたところによりますと、自由党の議員の紹介された請願は一通もございません。主として共産党の議員の紹介のものでありまして、さらに労農党の議員及び社会党の議員の紹介されたものがあるわけであります。
  42. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は川村政務次官に重大問題でありますから、一点念のために伺つておきたいと思います。それからもう一つ私は議事進行に関して所見を申し述べて、委員長の善処を要望したいと思います。  先ほど川村政務次官は答弁の中で、聽濤委員請願趣旨には賛成でありますという旨のことを答えられ、続いてこれを聞きおくということに訂正をされたのでありますけれども、その後のまた答弁中に趣旨には賛成だというようなきわめてあいまいな言葉を言つておられるのでありますから、たいへんな問題でありますから、私は念のためにもう一度訂正を願いたいと思います。請願趣旨というものは、申すまでもなく全面講和でなければならぬということと、軍事基地を設定することには反対する。従つてこの際国会の名において全面講和決議と、日本軍事基地化するいかなる協定にも反対するという決議をしてくれということを請願いたしているわけであります。この趣旨は、そういうことを国会が取上げて決議をするところにあるわけであります。従つてあなたの説明から申しますと、当然こういうことを国会決議する趣旨には反対だという結論に行かなければならぬと私は考える。この点がきわめてあいまいでありますから、念のためにもう一度きいておきたいというのが一点と、もう一点この際委員長に申し上げておきたいのでありますが、この全面講和並びに軍事基地の問題は、当委員会におきまして、もう第五、第六、第七国会を反復して、再三再四取上げ、もう論議し盡された問題でありまして、あとに残つておりますものは、全面講和を主張し、軍事基地に反対されるところの人々と、われわれとの間の根本的な思想的対立が残されているだけなのであります。従つて政府当局考え方は明らかであります。もとより全面講和の何人も望ましいことは当然であります。しかしながら理論上あるいは現実上、全面講和のごときことは絶対不可能と言つてよいほどに困難な問題なのであります。共産党の諸君たちがどれほど全面講和を主張いたしましても、ソ連がマルクス主義やレーニン主義、スターリン主義を信奉しております限り、これをも加えた全面講和ということはあり得るはずがない。もしあり得るといたしましたならば、そのときはソ連アメリカの主張の前に全面的に頭を下げた場合か、逆にアメリカソ連の前に頭を下げて無條件降伏をした場合にのみ、初めて全面講和可能性が生れてくるのであります。また軍事基地の問題につきましても、先ほどの川村政務次官の答弁のごとく、これはもちぱら占領軍に関する問題でありまして、われわれはこれに対して反対すべき何らの権限を持つていないのであります。問題はきわめて明白でありまして、最近の例のコミンフォルムの主張に従いまして、民族運動、平和運動というものを非常に猛烈に展開することによつて、ここに反米運動を起し、そうして占領行政をめちやくちやにしようという野望以外にないのであります。従つて根本的、思想的な対立の問題をこの場で取上げで、ことさらに片言隻句にあげ足をとるようなことをしても、一向意味のないことでありますから、この請願書をどういうふうに取扱われるかという点について、すみやかに委員長において善処されんことを望みます。
  43. 川村松助

    川村政府委員 政府立場といたしましては、先ほど御説明申し上げた通りでありますが、請願の賛否については委員会において御決定願いたいと思います。
  44. 聽濤克巳

    聽濤委員 先ほど與党議員あたりからいろいろ申されましたが、まず第一にこの請願書は共産党のさしがねでやらしておるのではないかと言われておるのでありますが、どこがやつたといたしましても、そういうことは見識ある外務委員会で言うべき筋合いのものではない。ところが事実はどうかと申しまければ、たとえば日本民主婦人協議会の請願は、野坂參三君並びに社会党戸叶里子女史の紹介。その次が全逓の労働組合中央本部青年部長の請願で、松谷天光光君、柄澤登志子君、苅田アサノ君紹介。それから全逓の大阪地区本部の請願書は、共産党の加藤充君と社会党の大矢省三君の名前で出ている。この全面講和の問題については、與党である自由党を除いて、おそらく全野党が全面講和を主張しておることは明らかである。民主党も主張している。社会党も主張しておられる。共産党も主張している。これはみな同じことである。なぜこうなつて来るか、これは日本国民の大きな要望だからである。当然なことだ。自由党が何だかんだと日本国民要望にけちをつけようとしている魂胆は一体どこにあるか、吉田内閣の政策を援護するためにやつているにすぎない。それならは諸君はここではつきり言えばよいと思う。全面講和促進に関する請願を採択することには、自分たちは反対だと正面切つてなぜ言わないか。ここで今採択されて、吉田内閣の政策に対して、反対の決議が行われるということについて諸君は当惑している。君たちの腹はそこにある。これははつきり言えばよい、おれたち全面講和は非常に反対だ。国際的條件からいつても、国内における自分たちの利益からいつても、全面講和はおれたちは反対だ、あくまで單独講和を主張するともなぜ男らしく言わない。何とかかんとか、特定の政党とかいうことはばかな話で、筋の立たないもはなはだしい。こういうことでは、私は委員長に申しますが、一体全面講和に反対なのか、賛成なのかも與党の諸君にはつきりと発言してもらいたい。
  45. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほどの川村政務次官のお話によりますと、対日講和はもまつたく客観情勢に支配されるものであつても品分たちにはどうにもならない問題であるというお話でございましたが、そういたしますと、こういうよりな請願は、政府がお考えになりました場合において、全然無意味で、あるというふうに私たちには解釈されるのでありますが、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  46. 川村松助

    川村政府委員 無意味でないと思います。
  47. 福田昌子

    福田(昌)委員 どういう意味で無意味でないのでございましよう。
  48. 川村松助

    川村政府委員 御質問趣旨がわかりませんので、もう一回お願いいたします。
  49. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほど次官が、対日講和会議はすべて客観情勢によつて影響されるものであつて日本としてはこうにもならないものであるということを言明されました。従つて、どうにもならないものであるならば、こういう請願国民がすることは、まつたく無意味であるということになるわけでざいますが、そのように解釈してよりしゆうございますか。
  50. 川村松助

    川村政府委員 そういうことではないと思います。
  51. 福田昌子

    福田(昌)委員 それでは、どういうことでございますか。
  52. 島津久大

    ○島津政府委員 政務次官意味のあるという理由を補足して申し上げますと、国会に対しまして、国民の声が反映するのが請願であろうと思うのであります。その取扱いは、政府の取扱う範囲ではないのでございますが、その取扱いによつて国民の声が外部に反映することに意味があろうと考えております。
  53. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういう解釈にいたしますると、先ほどの対日講和会議はまつたく客観情勢によつて影響されるものである、日本の国内でどうにもないならということと相反することとなりまして、矛盾を感じますが、この点はいかがですか。
  54. 川村松助

    川村政府委員 政府といたしましては、請願を承りまして、その決定については議会の方が決定するのでありまりから、決して無意味ではないと思う、う答えたわけでございます。
  55. 福田昌子

    福田(昌)委員 無意味ではないという余裕のある御答弁でございますか、もし意思においてもそういう余裕をお持ちであるならば、先ほどの客観情勢のみによつて決定されるものであるという言葉は、間違いではないかと思います。
  56. 川村松助

    川村政府委員 御意見として承つておきます。
  57. 福田昌子

    福田(昌)委員 あまりこういう御質問を申し上げますと、皆様に御迷惑かと思いますから、避けさせていただきますが、川村政務次官は、政府としても全面講和を希望するところであるということを仰せになりましたが、いつでしたか、吉田総理大臣がこの席上においでになりましての御答弁によりますと、客観情勢からして全面講和はおよそ不可能に近い、今日そういう情勢にある日本立場を知りなから、全面講和を望むということは不都合だ、言葉は違いますがそういう意味のことをおつしやつたと思うのでございます。そういう観点からしますと、政府当局はも分離講和を望んでいるということに解釈いたしますガ、そのように解釈してよろしゆうございますか。
  58. 川村松助

    川村政府委員 全面講和は、再三申し上げますように私どもの望むところでありますけれども、先ほどの請願が、全面講和でなくちやならぬ、全面講和以外はいけない、こういうことになつしおりますので、それでは客観情勢上容易ではない、こう考えたのでありまり。
  59. 竹尾弌

    ○竹尾委員 時間も大分たつておりまして、私は議事進行に名をかりて一言申し上げます。川村次官の、全面講和趣旨には賛成である、こういうことは、そもそも間違いなんで、全面講和内容をもう少し検討しなくてはならぬと思います。聽濤君の唱道される全面講和なんかは、おそらく今盛んにモスクワを、中心にやつておられる世界平和擁護者連盟というのがありますが、あの線の流れをくむ全面講和運動じやないかと思うのです。そうなると、ただ單に、国民要望するのは全面講和である、これがそもそも間違いなんで、もう少し全面講和内容を検討しければいかぬ。そのためには、この請願をちつぽけな請願だというようことをおつしやられたが、そんなもではない。これは大問題だ。大問題ありますから、もう少し時間に余裕をとつていただいて私も大いに意見があるのです。あるけれども、ここでしやべると長くなりますから、今日はもう採択などはとてもできませんので、もう少し愼重に論議を盡されて、講和内容をもう少し検討しなければならぬ。全面講和もいろいろあります。いろいろの條件もあります。そういうところをもつと掘り下げて大いに聽濤君とも論議を剛わしてそうして愼重審議の末採択されるか、されないかということをきめていただきたい。こういうふうに私は主張するものであります。
  60. 聽濤克巳

    聽濤委員 今竹尾委員から非常にもつともらしい御意見が出たわけですが、もしも與党の諸君が、ほんとうにこの外務委員会講和の問題を真剣に討論して—特に全面講和というものについては望ましいと言われておるのであるが、ただ困るのはあれは共産党の主張だから困る。こういうことであるならば、それはそれとして、全面講和というものはどういうものか、その内容についてもほんとうに真剣に討論して行くように、この議事を今後運営して行くということをほんとうにやるならば、私は今の趣旨に賛成いたします。それでちつともさしつかえございません。しかしながらこれをもつて、そういう趣旨でこれを流そうというお考えならばもつてのほかである。これをほんとうにおやりになるなら、今後外務委員会講和問題に集中してやるならば私は賛成いたします。これはほかの委員諸君全員の御意見を聞いていただきたい。
  61. 岡崎勝男

    岡崎委員長 この程度で本日の請願に対する審査を終りたいと存じますが、御異議ございませんか。
  62. 聽濤克巳

    聽濤委員 私が今言つたことに対して、委員長委員の皆さんに諮つていただきたいと思います。なぜかならいろいろなことが出たのですが、しかしここで突如打切りとしう形になつてしまうのでは私は反対します。そうでなしに、私の言いましたのは、ほんとうにこの外務委員会で、講和の問題を集中的に今後論議して行くというその中で、これをどうするかということをきめて行くならば、私は賛成すると言つておるのですから、そう簡單に打切らないで皆さんの意見を聞いていただきたい。
  63. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これは理事会においてさらに取上げます。
  64. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほど私が御質問申し上げたのに、まだ答弁をいただいておりません。
  65. 岡崎勝男

    岡崎委員長 もう大体答弁は済んでおると思いますから、ことつ御了承を願います。いずれこの問題は理事会でさらに取上げます。
  66. 聽濤克巳

    聽濤委員 今私は問題を提出しておるのですから、皆さんに諮つていただきたい。つまり今後この外務委員会講和問題をほんとうに集中的に論議して行くということをきめてよいかどうか、皆さんの意見を聞いていただきたい。
  67. 岡崎勝男

    岡崎委員長 この程度で本日の請願審査は終りたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議なければさよう決定いたします。     —————————————
  69. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に陳情書審査に入ります。  陳情書日程第一、講和條締結促進陳情書議題といたします。便宜上專門員より朗読いたさせます。     〔專門員朗読〕   われらは終戦後四年有半、ポつダム宣言受諾を契機として過去においてたどつた誤れる進路を痛烈に批判反省し、連合軍指導のもとに、幾多敗戦の苦難に耐えつつ民主的平和国家再建のために精進して来た。   この耐乏精進の誠意はようやく連合軍、特に米英両国の認むるところとなり、両国においてはすでに講和條約締結の準備を進められている模様であるが、これまつたくわが国民の誠意に対する好意ある理解の結果であり、われらは独立を回復し、列国に伍して再び国際場裡に立つ日の近きにあることを想到し、喜びにたえないとともに、さらに国民としては一段と精進を重ね、いやしくも国際社会の一員としてはずかしからざる実証を示し、列国の好意と期待に報いなければならない。   よつて政府はよく国際情勢の推移に善処し、一日も早く講和條約の締結を見るよう努力せられたく、ここに本会は全国町村議会議長の総意を代表し、役員会の決議をもつてこれを強く要望する。
  70. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これは本委員会において了承するに御異議ございませんか。
  71. 聽濤克巳

    聽濤委員 了承するというのはどういう意味ですか。
  72. 岡崎勝男

    岡崎委員長 陳情は了承するか、否決するかであります。
  73. 聽濤克巳

    聽濤委員 それならばちよつとお伺いしますけれども、先ほどの問題と結局同じ問題になつて来るのです。それをこつちの方は簡單に了承して、先に出た請願の方はそのままにしておくというのは、まつたく片手落ちではありませんか。
  74. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これは問題が全然違います。内容が違います。
  75. 聽濤克巳

    聽濤委員 内容か違うと言つても、事講和に関して、なるほどそこには全面とか、單独とか書いてありませんけれども講和というものが、全面講和單独講和というふうに今全国で問題が提起せられておる。その講和内容一つとして全面講和の問題がここに出て来ておる。まずこのことを論議しなくてはきめられないと言つておるのに、片一方の問題についてどうきめるのですか。われわれはこの問題を十分に検討するという先ほどの竹尾君の趣旨において、この請願は一応本日は論議は打切りにしたわけです。それと結局同じ講和の問題です。それを一方の方はそのまま採択して、一方の方は不採択のままであとに残すというのは、まつたく片手落ちではありませんか。
  76. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それは聽濤君の御意見でありまして、私どもはそうは考えておりません。
  77. 聽濤克巳

    聽濤委員 そうは考えていないのだというが、そこが私には不可解だから委員長に聞いておるのです。(「決定したじやないか」呼ぶ者あり)決定したとは何だ。まだ発言しておるじやないか。(「了承したじやないか」と呼ぶ者あり)了承といつても、問題をはつきりさせないでどう了承するか。
  78. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それではもう一ぺん申し上げます。内容が違つております。
  79. 聽濤克巳

    聽濤委員 内容が違つておるというけれども講和に関する問題だから、一方で全面講和の問題について論議が十分でないと言つておるやさきに、一方ではこの講和全般に関する陳情をもそのままの形で、取上げるというのは、どういう趣旨ですか。
  80. 岡崎勝男

    岡崎委員長 請願と陳情とは性質が違いまして、請願の方は国会の意思を決定するのであります。従つて十分に討議をしなければいかんともしがたいものであります。陳情の方は国会においてこれを聞きおくのでありましてその趣旨では講和会議を早く行いたいということはいずれも同意見と認められます。
  81. 聽濤克巳

    聽濤委員 私はこの陳情に対して了承することに反対しておるのではありません。了承することには私は賛成なんです。賛成なんですけれどもさつき講和請願については審議をあとに残しておいて、片一方の方だけをすぐそういう形でただちに取上げて行くというのでは、趣旨が一貫しないのではないかということで言つておるのです。
  82. 岡崎勝男

    岡崎委員長 先ほど聽濤委員の御発言もありました通り請願の方はさらに論議を盡すということになつております。この意味において理事会においてさらに検討いたさなければなりませんが、趣旨はそういうことになつております。
  83. 聽濤克巳

    聽濤委員 それでは私はこれだけのことを申し上げまして賛成しておきましよう。
  84. 岡崎勝男

    岡崎委員長 しからば御異議がないものと認めましてさよう決定いたします。     —————————————
  85. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に日程第二及び第三、未帰還同胞引揚促進に関する陳情書、これは以前にも同趣旨陳情書審査いたしましたから、審査を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議なければさようとりはからいます。     —————————————
  87. 岡崎勝男

    岡崎委員長 続いて国際情勢等に関する件を議題といたします。質疑を許します。佐々木盛雄君。
  88. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は外務当局並びに法務当局に対して、千島にある残留同胞にして、ソ連軍の密令を受けて北海道、内地へ潜入して必要なる調査を終えたる後、再びソ連占領下の千島へ帰つて行く者があることを、北海道新聞その他において報道しておるのでありますが、この問題に関連して承りたいのであります。  大体の大ざつぱな内容を申し上げなければならぬと考えますが、この記事の中を拾い読みいたしますと、「南千島に抑留されていた同胞たちソ連の密命を帯び、深夜あるいは濃霧にまぎれてソ連占領地に最も近いノサツプ岬付近から上陸し、命を終えてまたひそかに同地点から姿を消していた事実が判明、千島の残留同胞は現在一応全部引揚げたことになつており、スパイの役目を命ぜられた人も大半引揚げてはいるが、調査の結果まだ残つていると思われる人々がいる点、ゴヨマイ水道でマ・ライン越境の理由で拿捕された漁船の乗務員たち情報提供を交換條件に帰還させている事実などから、その連絡をはかるスパイ活動は長期にわたり継続されたことが予想されるが、密命を終えて引揚げた人々の話を総合すると、ソ連側の命令で密入国させられたものの数は相当あつたらしく、記者が数日で調査した範囲だけでも根室町高橋昭一さん、同浅図與三さん、別海村片野潔さんを初め、浅沼某、宮下某、鈴木某、田中某など数名に及び、中には女もまじつており、これらの人人はソ連軍の甘言と、本人や家族の生命に対する威嚇におどらされ、道内地図、新聞、雑誌などの収集から、警備状態など種々諜報の調査を使命とされていたもので、中には密命を帯びて帰つた後、いずこともなく連れ去られて、家族たちの前に再び姿を現わさなかつたものもあるといわれている。以下は密命を強要され千島に帰り、一般引揚者として真岡から函館へ送還された高橋昭一さん、浅図與三さん等の語る密入国の真相である。」というのがありましてその当時そういう密命を帯びて北海道内でいわゆるスパイ行為なるものをやつたという高橋昭一さん、浅図與三さん、その他この船を運転したという高岩さん、またその他の村長などの証言が新聞に載つておるわけなのであります。これにつきまして、まず法務当局に承りたいのでありますけれども、法務当局はこういう事実についてよく知つておられるのかどうか、もし知つておられるならば、その真相を明らかにしてほしい。さらにまたもし御存じないならば、すみやかに真相を調査の上善処されんことを望みます。  それからさらにもう一つは、法理論上の問題でありますが、現在占領下に置かれておつて、しかも新憲法によりまして一切の軍備を放棄いたしました日本におきまして、いわゆるスパイ行為というようなものがあり得るのかどうか。従来のいわゆるスパイ行為なるものは、おそらくは軍機保護法であるとか、あるいは国防保安法であるとか、その他のことによつて軍の祕密、国の秘密というものがあつたのでありますけれども、こういう一連の法律がなくなりました今日におきまして、俗にいうスパイ行為などというものは、法律上あり得るのかどうか。もしあるとするならば、どういうような法律によつて取締りの対象とされるのかということも承りたいと思います。さらにまた私はこの新聞に伝えておりまする行為が事実であるといたしますならば、私はこれは今申しました軍機保護法であるとか、国防保安法というようなものがない今日でありましても、刑法によりまして、やはり第二編第三章の外患に関する罪というのがありますが、第八十一條から第八十八條までの間を読みますと、「外国二通謀シテ日本国二対シ武カヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ死刑二処ス」とか、あるいは侵冠援助の規定であるとか、あるいは未遂の規定であるとか、ないしは予備陰謀の規定などがあるわけでありますが、私はこういうことを援用いたしますならば、今日ソ連は武力革命ということを明らかにしております以上、当然こういうものも援用的解釈を受けて、これを適用することができるのではなかろうかとも考えるわけでありますが、一体法務府はこれらに対して、どういうふうにお考えになつておるか、また現実どのようにし、またなさろうとしておるか、ということについて承りたいと存じます。
  89. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 ただいまの御質問の法律の方の問題でございますが、現在いわゆるスパイの取締りといつたような法律がございません。前段にお尋ねの千島と北海道との間に、日本人でひそかに出入しておつたというようなことは耳にしておりますが、検察庁として今日までその種の事件の送致を実は受けておりませんので、詳しいことはよくわかりません。従いましてそれがはたしてソ連の密命を帶びて、スパイ活動をやつておるのかどうかということにつきましては、お答えができかねるところであります。今のようなものは、入国あるいは出国は、それぞれこれを制限するメモランダムが出ておりますので、それに違反するものとして、昭和二十一年の勅令三一一号、連合国占領軍占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する件という勅令が出ておりますが、それによりまして当然処罰されるわけであります。従つてそのような事実がありとすれば、調査して善処いたしたいと思います。  それから刑法の外患罪でございますが、なおこれは研究してみようと思いますけれども、大体において外国をしてわが国に対して武力を行使するに至らしめたという場合であるとか、あるいは「武カノ行使アリタルトキ」云々というような規定全体から見ましても、武力の行使そのものに相当接着した場合でないと、これはむずかしいのではないか。従つて現在問題にされておるような程度の、いわゆるスパイ活動というものについて、ただちに刑法の外患罪の適用があるかどうかということは、かなり疑問があるというふうに考えます。
  90. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 法務当局の御意向はわかりましたが、次になおついででありますから、法務当局に申し上げておぎますがこれらの高橋とか、浅図とか、それらの人々でこういういわゆるスパイ的な活動をやつて、その後許されて内地べ引揚げて来た人々が、どういう活動をしたかということにつきましては、ここに詳しく内容が書いてありますし、またそれに対する証言をしておる人もありますので、参考までにこれを置いておきますから、適当な機会に御調査の結果を明らかにしていただきたいと存じます。  次に外務当局に承りたいと思いますが、外務当局では、それではこういつたことをまず知つておられたかどうかという点を、外務当局から承つておきたいということと、さらにまた一体千島同胞の引揚げは、すでに完了したことに表面上なつておると、われわれは心得ておるわけでありますが、こういうふうなのを見ましても、まだかなり残つておるのではなかろうかと思われる節もあるわけであります。これらにつきましては、同胞引揚げを担当しておられます管理局長の御見解を承つておきたいと存じます。さらにまた抑留者はかような行為を強制さるべきものではないと私は考えるのでありますが、これは国際法上必要な法規によつて、当然このことを関係当局に抗議し得る根拠は、十分あり得ると私は考えるわけでありますが、これに関して條約局長等からも御見解を承つておきたいと存じます。
  91. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今御質問の点の前の二つについてお答え申し上げます。先ほどから御紹介になりましたような、いわゆる人が出入りしておるといううわさは聞いておりますが、確かな実例その他はまだ承知しておりません。  なお千島の引揚げはどうかということでありますが、これは先日も統計を差上げたので御存じかと思いますが、千島、樺太には、われわれの従来承知しておりますところでは、まだなお残つておるという数字になつております。これはもちろん最初千島、樺太におつたと推定せられるものから、実際に千島、樺太から引揚げの手続を了して帰つて来られた人を差引いて、まだ相当残つておる。その数字は七万九千四百二十六名ということになつておりますが、これは要するに正規の引揚げの手続で帰つて来られた人を、最初のわれわれが千島、樺太におられると推定した数字から引いて、こうなるわけであります。はたして現在これだけの多数の人が残つておられるのやら、あるいはどこか他の地区に移動しておられるのか、その点われわれはわかりません。
  92. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 第三点の御質問の点でありますが、軍人軍属以外のいわゆる捕虜でない一般邦人の抑留というような現象は、今度の戰争中また戰争後顯著になりました事例でありますので、国際法とか條約には、抑留国がそういつた抑留されている一般在留民に対してどういうことができるかどういうことができないかというようなことのはつきりいたしていないところが多いように了解いたしております。昨年できました戰時中軍人の保護に関する條約という非常に大きな條約ができましたが、その條約が今度の戰争の経験を生かして、従来不明でありました待遇の準則を詳細に規定いたしております。その條約が発効いたしますれば、今御指摘になりましたような点もはつきり御答弁できるような時代も来るかと思いますが、今のところはつきり御答弁いたしかねる状態であります。以上御返事申し上げます。
  93. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 條約当局の御意向はわかりましたが、われわれがざつど政治的に解釈いたしましても、ポツダム宣言において規定しておるところから見ましても、すべて前線の兵隊は武装解除をされた後は、すぐに内地に帰して、平和的な仕事に従事をさしてやるという規定から見ましても、少くともその根本的な精神には私は反する行為であると考えます。従いまして、外務当局を通じて適当にこれらのことに関しまして、関係方面へも折衝、陳情等をされんことをお願いいたしまして、私の質問を終つておきます。
  94. 並木芳雄

    並木委員 たまたま法務府の高橋局長が見えておりますので、それに関連してちよつと簡單に質問申し上げます。  それは三月二十六日の国際新聞に「鬼気迫る御嶽発電工事、国際問題に発展必至」という見出しで、中国人の俘虜十名を虐殺したというような報道がございます。その終りの方へ持つてつて日本政府に調査権限はない、法務府当局談としてこう書いてあります。つまり日本人戰犯については一応審理が打切られた形にあり、戰犯容疑について日本政府はこれを取調べる権限は付與されていないが、この問題は、国際的に大きく発展するだろう。この点について俘虜虐待とか、戰犯の問題は打切られたから、全然日本政府に取調べの権限がなくなつておるかどうか。つまりポつダム宣言によつてたちは戰犯容疑の者は取調べる義務が当然生じておつたと思う。その義務講和條約を待たずし、当然解消して、義務がないと同時に権限もなくなつたと解していいかどうか。従つてこういう問題が起つたとしても、日本政府としては全然これに関與する権利もなければ、義務もない、こういう解釈が成立つかどうか、その点をはつきりお伺いいたします。
  95. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 ただいまの並木委員のお尋ねの御嶽山の問題は、私ども初めて伺いましたことで、事実の内容は存じません。ただいまお尋ねの法律問題でございますが、俘虜でありますと、俘虜収容所というものは終戰前は軍の管理のもとにあつたはずでありまして、従つて当時は軍法会議で処理された事案であると考えます。終戰後軍が解体しましてからは、そのような実例はまだございませんが、私どもはやはり一般の国内刑法によつて処理できるものというふうに考えておるわけであります。ただ御嶽山の問題がどうであるか存じませんが、俘虜と一口に申しましても、実は華人労務者である場合が考えられるのじやないかというふうに考えるのであります。華人労務者に対する口日本人の虐待といつたような問題は、これは当然日本の刑法によりまして、日本裁判所で処理できる問題でございまして、少くもそういうことについて日本側に権限がないというような問題ではないというふうに考えております。ただいまの法務府の意見として新聞に出たということも、われわれ全然関知しておりませんので、おそらく権威のあるものではないというふうに考えております。同じような事件で、たとえば秋田の花岡鉱山の問題等が、ございましたが、日本側で当然処理できる事案でありましても、占領軍当局においてこれを取上げて、みずから裁判するということはあり得ることでありまして、昭和二十一年二月十九日の刑事裁判権に関するメモランダムによりまして、そのような場合があるということがはつきり定められておるわけであります。秋田の場合におきましては、占領軍当局で処理いたした問題であります。以上お答え申し上げます。
  96. 聽濤克巳

    聽濤委員 木曽川の御嶽山の俘虜虐待に関する問題は、最近新聞で発表されておりますが、続いて日本にあります華僑総会からも、長野の木曽谷における中国人捕虜虐殺事件調査書というものを印刷にして発表しております。この事件は、あの戰争中及び終戰のどさくさの当時、全国各地でわれわれは忌まわしい事実を数限りなく聞いておるのであります。これはおそらく單なるうわさではなくて、いろいろそういう事実があつたろうということは十分に想像されることでありますが、悲しいかなその言う事柄の内容が、今までに十分に明らかにされていない。いろいろ軍事裁判も行われて参りましたが、中国関係、さらに朝鮮人関係、こういうものに対する不法な虐殺その他の事件は、どうもやみからやみに葬られておる傾きがありまして、これでは日本がほんとうに公正な態度を世界に表明して、そしてあのポつダム宣言の規定に従つて、戰争中ならびに終戰直後のああいう不法な行為に対して、われわれが世界に対してほんとうに責任を負つて明らかにして、そして今後の日本の民主化を促進するというポつダム宣言の趣旨に沿わないわけであります。それがいまごろぼつぼつと明るみに出始めて来ておる。一体政府はこういう事件についてどういう態度をとつておるのか、私は非常に疑問に思うのです。この長野県の木曽谷の問題にしましても、華僑総会の調査報告書を見ますと、事柄は非常に重大であります。大体中国人の捕虜が、一九四四年から同年の八月にかけて、集団的に日発開発工事の工事場に移入されて、これが鹿島組であるとか、飛島組であるとか、間組であるとか、そういうところに移されまして、その数が大体一千五百名くらいある。ところが捕虜の死亡につきましては、関係の村役場保存の死亡届書を見ましても、立つた合計四十三名、その他一部送還された者もあるでしようが、非常に多くのものが事実上行方不明の状態になつておる。しかもその現場におきまする農民は、いろいろな事件を見聞きしております。この中には実に残虐きわまる事柄が明るみに出つつある。非常に無残な方法でもつて虐殺されて、死体はコンクリートの中に埋め込んだとか、炎天の中でひどい目にあわせたとか、実にいろいろなことが、ここでは一々言つておられませんが、いろいろな事実を実際に地方の農民は見聞きしております。こういう事実が明らかで、しかもその証拠になるような書類は一切どれも焼き捨てられておるようであります。これにつきましては、この華僑総会の調査の前に、日本電気産業労働組合の長野県支部木曽川分会が、すでに調査要望書というものを出して、印刷にしていろいろな方面に配付しております。それには関係の調査資料までつけ加えてある。これは工事が電気産業の、日発の工事でありまして、その当時の責任者である日本発送電株式会社御嶽水力発電所建設所長の石川榮次郎なる者も、現に電気産業のあるところのやはり責任者で現存しておるそうであります。このなかには俘虜の死亡者の名前もわかつておりますし、その他いろいろな事実が現われて来ておりますが、こういう事柄について政府はいつたい今までどうして何もわからなかつたのか。これは飛島組とかいろいろな組がありますし、電気事業の工事が行われた地方においては、実際にだれでも知つていることなんです。これに対して今まで政府は何の調査もしなかつたのか。知つていて事実を発表しなかつたのか。今後どういう態度をとられるつもりか。具体的にお伺いしたいと思います。にしておりますのは、今日本政府並びに日本国民に対し注意を喚起すべきことは、当時の犠牲者たちの遺骨がいまだにそのまま地下に埋没されて、一部は地上に散乱したまま放置されて、さらにまた当時死体を投げ込み、その後終戰直後鹿島組その他の手により、掘り返された殺害死体遺棄の現場が、当時のままに打捨てられていることである。われわれは本事件を通じて日本政府の無責任と非人道に唖然たらざるを得ない。まことにその通りであります。そこで在日華僑は、この実情を日本国民一般に訴えるとともに、正義と人道の名において日本政府がすみやかに花岡事件の犠牲者たちの遺骨に対して、適正なかつ妥当なる処置をとるべきことを要求する。こういうものが政府に対して出ておりますが、これに対してどういうような御処置をおとりになつているか、お伺いしたいと思います。
  97. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 先ほども申し上げましたように、ただいまの具体的事実は初めて伺つたのでありまして、調査をして善処したいと考えます。決して知つていてうやむやにしておつたといつたようなことは絶対にございません。
  98. 聽濤克巳

    聽濤委員 それではほんとうに責任を持つて調査いたしますか。はつきりお伺いしておく。
  99. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 調査いたします。
  100. 聽濤克巳

    聽濤委員 続いて私もう一つ関連して申し上げたいのですが、同じく留日華僑総会から国会に対しまして、また政府に対しまして、こういう要求書が出ております。たとえば先ほど話にちよつと出ました秋田県の花岡鉱山の問題ですが、これは本年二月十日付で政府に対して要求書を出しております。それによりますと、絡戰の直前すなわち一九四五年七月一日、日本秋田県花岡鉱山に起つた中国人捕虜九百余名に.加えられた大殺戮事件は、その規模においてまた性格においても稀有のものであり、全捕虜中四百十六名に逹する死亡者を出している、と指摘されてい.る。しかもこの華僑総会が非常に問題にしておりますのは、今日本政府並びに日本国民に対し注意を喚起すべきことは、当時の犠牲者たちの遺骨がいまだにそのまま地下に埋沒されて、一部は地上に散乱したまま放置され、さらにまた当時死体を投げ込み、その後絡戰直後鹿島組その他の手により、掘り返された殺害死体遺棄の現場が、当時のままに打捨てられていることである。われわれは本事件を通じて日本政府の無責任と非人道に唖然たらざるを得ない。まことにその通りであります。そこで在日華僑は、この実情を日本国民一般に訴えるとともに、正義と人道の名において、日本政府がすみやかに花岡事件の犠牲者たちの遺骨に対して、適正なかつ妥当なる処置をとるべきことを要求する。こういうものが政府に対して出ておりますが、これに対してどういうような御処置をおとりになつているか、お伺いしたいと思います。
  101. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 花岡鉱山の問題につきましては、法務府でこういう事情を聞きましてから、さつそく秋田地方検察庁から人を派し三現場に行つて調べたのであります。なおその事件のいろいろな経過も調べたのでありますが、先ほども申し上げたように、この問題は終戰当時、占領軍当局において軍事裁判において処理したということがわかつたのであります。それから現場の模様でありますけれども、これは現在非常に雪の深い、ところであつてお話のような事実があるのかないのか地ただいまではちよつと調査がで費ない、こういうことであります。
  102. 聽濤克巳

    聽濤委員 それは今後なお調査を継続なさるつもりですか。それとも打切られたのですか。
  103. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 現場の模様につきましては、調査したいと考えております。
  104. 聽濤克巳

    聽濤委員 今までに調査した内容、それから今後調査を進められて行つた上での内容を、委員会に発表してもらえますか。
  105. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 発表してさしつかえないと考えております。
  106. 聽濤克巳

    聽濤委員 これは事柄は非常に重大でありまして、外務委員会でも今講和の問題が論議され、いろいろ国際的な関係がようやくわれわれにとつて重大になつておるときに、当委員会においても、愼重にこの問題を扱われることを希望しておきますが、もう一つ問題があるのです。やはり留日華僑総会から三月十六日付をもつて日本政府に対して要求書が出ておりますが、これは旧日本軍人など一部の日本人が中国に密航して、中国の国内戰争に参加した事件が出ておりますが、これにつきましては、法務総裁殖田俊吉氏がすでに議会におきまして、こういうものが帰つて参ればもただちにこれは厳重な処分をするつもりであるというふうに確約されております。ところがこの華僑総会において指摘されておるのは、私もかつて一度ここで取上げたことがあるのでありますが、「本年二月十三日付朝日新聞の報ずるところによれば、密航者の一人である吉川源三は現に日本に帰還しているといわれる。しかるに嚴重処分を確約した日本政府がこれを逮捕処罰していないのは、真に奇怪千万といわなければならない。われわれ在日華僑はここに日本政府に対し、今日まで逮捕処罰を行つていない理由を明確に回答すること、すみやかにこれら軍国主義分子を逮捕処罰することを要求する。」という要求書が出ておりますが、これについての御処置はどうなつておるか。
  107. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 ただいまの吉川源三の問題につきましては、法務府内におきましては、今の段階では特別審査局が調査を受持つておりまして、結果がはつきりいたしますれば、われわれ検察庁の方に送致されることもあろうと思うのでありますが、まだそういう段階になつておりません。これは先日法務総裁も国会で、どの委員会でございましたか、御答弁になりましたのですが、まだ結論が出ておりません。
  108. 聽濤克巳

    聽濤委員 このことにつきましては、すでに私も聞きましたが、問題はもう一つ進んでおりまして、留日華僑総会からこういうふうな要求書が出ておりますがこの要求書はどういうふうに御処置なさるおつもりであるか、承りたい。
  109. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 要求書を実は存じませんので、ちよつとお答えいたしかねます。
  110. 聽濤克巳

    聽濤委員 私は本日は、これ以上は質疑をやりませんが、木曾川虐殺事件、また秋田県の花岡鉱山の虐殺事件、さらに日本旧軍人の台湾密航事件、こういう問題につきましては、これは非常に国際的に重大な問題でありますから、私は本日はこれ以上はいたしません。保留いたしますが、事柄は非常に重要でありますから、外務委員会においても愼重にこれは検討し、審議すべきものであることを主張して、私の質疑はこれにて終ります。
  111. 並木芳雄

    並木委員 外務当局にちよつとお伺いいたしますが、一般戰犯審理に関する打切りをしたということについて、関係方面から何か文書による通告があつたのでしようか。つまり一般戰犯の審理というものは打切つた。従つて日本政府の方としては、これを取調ぺる権限が付與せられていないということが言われておりますが、これに対して何らかの正式の逋告があつたかどうか、ポッダム宣言の俘虜虐待、その他に対するものをどういうふうに扱うか。一時停止されておるのか。あの原則はずつと生きているのか。そういつた点です。
  112. 島津久大

    ○島津政府委員 戰犯裁判の打切りというような指令は何もまだ来ておりません。それから正確は資料を見ませんとわかりませんが、たしか極東委員会あたりでこれ以上戰犯の裁判はしないというようなことを一応きめまして、関係国に勧告した事実があります。ですから国によつてはまだ継続しているところもあるし、すでにやめておるところもあります。
  113. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、具体的な事実が現われて来たときには、日本政府としても、当然やはり取調べを進めて、関係方面に報告する義務は残つておるのじやないかと思いますが、いかがでしようか。その点に関して……
  114. 島津久大

    ○島津政府委員 これは総司令官の方から指示がなければ、戰犯関係には日本政府は動かない。また動けないことになつておるわけであります。日本関係でに事実上もう終了しています。
  115. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、高橋局長にお伺いいたしますが、取調べを進めると言われましたけれども、それは戰犯容疑としての取調べでなく、日本の刑法に基く取調べを進めるということですか。
  116. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 その通りであります。
  117. 竹尾弌

    ○竹尾委員 時間がありませんから簡單に二つだけお尋ね申し上げます。私は前々回の外務委員会で事すこぶる重大だと思いまして、お尋ね申し上げたのでありますが、例の東南アジア、特にタイの情勢についてに、三点お伺いいたします。  私の質問した直後に、俄然東南アジアの情勢の急迫が伝えられまして、バンコック駐在のソ連大使館の強化、アメリカ当局の東南アジアの防共の問題が非常にむずかしい。こういうようなことも伝えられておりますし、去る二十九樋、アメリカ議会で東南アジアの援助計画を計画中である。かくのごとく今や東南アジアの情勢はいろいろな意味合いで急迫を告げておると思います。その後もアメリカの援助計画の内容とか、あるいはその他外務当局としていろいろ御所見があろうと思いますが、その点について、特に明確にお答え願いたいと思います。
  118. 與謝野秀

    與謝野政府委員 竹尾委員にお答え申し上げます。前回の委員会で東南アジアの情勢の緊迫せるごとについて御意見を伺いまして、われわれも同じ意見を持つてつたのでありますが、その後にその状態は何らかわつておらないばかりか、非常に各地域におきまして、急を告げていることは事実であります。 ただ御指摘になりましたような、たとえばタイの惰勢が非常に緊迫しているようなことについて、ときどき個々の情報が、たとえば今日あたりは国民政府軍の兵が——敗残兵でありましようが、これが一万人ほどタイの中に入つたというような報道があります、がこれがすぐただちにどの程度の重要性を与えているかというようなことにつきましては、まだはつきりしたことがわからないのであります。われわれの見ますところでは、タイもさることながら、たとえばそのほかの地域、インドネシアというようなところでも情勢が安定しておりません。またいろいろな動乱が起りかけておるというような状態だと思います。先ほどアメリカの援助計画というお話がありましたが、援助計画は、バンコツクの会議からジエサツプ大使が帰りました後に、具体的にいろいろ進展するであろうと思われるのでありまして、今日のところ、具体的なことはまだわかつておらないのでありますが、今年の年頭にトルーマン大統領は、いわゆるポイントフォア——第四点計画という後進国の援助計画を発表いたしました。これによる援助資金は、今日予定されているのは大体四千五百万ドル、しかもこれを国連を通じて使用するということましようが、これが一万人ほどタイの中に入つたというような報道がありますが、これがすぐただちにどの程度の重要性を与えているかというようなことにつきましては、まだはつきりしたことがわからないのであります。われわれの見ますところでは、タイもさることながら、たとえばそのほかの地域、インドネシアというようなところでも情勢が安定しておりません。またいろいろな動乱が起りかけておるというような状態だと思います。先ほどアメリカの援助計画というお話がありましたが、援助計画はバンコツクの会議からジエサツプ大使が帰りました後に、具体的にいろいろ進展するであろうと思われるのでありまして、今日のところ、具体的なことはまだわかつておらないのでありますが、今年の年頭にトルーマン大統領は、いわゆるポイント・フォア——第四点計画という後進国の援助計画を発表いたしました。これによる援助資金は、今日予定されているのは大体四千五百万ドル、しかもこれを国連を通じて使用するということに、なつておるのでありますがこれはまだ議会を通つておりません。それからジエサツプ大使が帰りました後。三月の初めに、アメリカは、ゲリフインという人を団長とする国務省の特別調査団を東南アジアに派遣して、目下各国の実情を調査しておるのであります。いかなる援助が適切であるかということを、各国にわたつて調査しているわけであります。なおこのアメリカの援助計画と並行いたしまして、東南アジアの諸国の間にもそれぞれいわゆる太平洋同盟というような構想でもつて協力する態勢をつくろうという機運があるのは御承知通りでありますが、これは昨年夏もキリノ・フィリピン大統領が提唱いたしました西太平洋における政治、経済及び文化的の同盟というものに対しまして、最近オーストラリャのスペンダー外相が、若干の軍事的性質を帯びさせた太平洋條約というものを提唱しておりまして、この両者が、どういう形で妥協できるかというふうにながめられておつたのでありますが、三月の下旬にスペクター外相は、キリノ大統領を訪問いたしまして、両者の間で意見が大分接近したと推測されるのであります。三月の二十七日でありましたか、マニラの議会で、スペンダー外相は、キリノ大統領の構想を非常に賞讃して、これをアメリカ政府に伝達するということを言つているのであります。しかしながらこの東南アジアの諸国を組合した一つの同盟という構想につきまして、たとえばインドのネール首相はも共産、民主両陣営のいかなる紛争にも中立的な態度をとつて行くのだと言つて、いわゆる反共的な同盟というものには反対の意向を表明している。またインド支那におきましてももインド支那は先般ソ連から承認されたのでありまして、ソ連に使節を送るというようなことになつておりますが、この太平洋同盟については、非常に消極的な態度をとつておる。従いましてフィリピンの当局としてはもこの太平洋問題を論議するための会議招請の手続を進めておるようでありますが、またタイその他、この会議代表を送ることをきめている国もありもまたインドなどは、人は送つても同盟には入らないという態度のようでありますが七この太平洋同盟という構想も、前途に相当むずかしい点があるのじやなかろうか、こういうふうに見られておるのであります。また先ほどタイの話がございましたが、ジエサツプ大使が二月の下旬にタイにおりましたときに、タイ国人に呼びかけるラジオの演説をいたしまして、反共主義、またトルーマン大統領のいわゆる後進国開発計画を説明し、アメリカは、外国勢力が他を支配することを排除するということについて、タイ国人に呼びかけたわけであります。具体的に、アメリカがお金を持つて援助するとかどうとか、タイ国人がすぐ飛びつくようなものがなかつたので、案外タイ国人は、この演説で非常に失望したというようなことも報道されておりました。アメリカの援助が今後進められるとしましても、なかなか時間を要することでもありますし、その間に、東南アジアの情勢が、御指摘になりましたように相当むずかしくなつて来るという可能性も、非常に多い、こう考えております。
  119. 竹尾弌

    ○竹尾委員 大体わかりました。そこで第二問題は、調査局長からもお答えのあつた点でありますけれども、問題の太平洋同盟であります。この点につきましては、この委員一会の席上でも問題になりましたし、吉田兼攝外相は、原則としてはこれに賛意を表する。ただ具体的の内容がわからぬから、はつきり答弁できないというようなお答えをしたと思いますが、今やこの問題は、調査局長のお答えのごとく、東南アジアの政治の日程に現在上されておる。そこで対日講和もできないときに、こういうことをお伺いするのは、仮定の問題として一蹴されるかもしれませんが、そうした同盟があるいはできるかもしれぬという場合にこれも仮定の問題でしようが、外務当局としてこの太平洋同盟に対する日本の関連においての見通しはどうであるか、ちよつとその点をお伺いしたい。
  120. 與謝野秀

    與謝野政府委員 御説の通り仮定の問題でありまして、非常にお答えしにくいのでありますが幸い今日まで伝えられます外電等を、総合いたしますと太平洋同盟という構想には、日本は入れないということが、有力のように伝えられて来ておるのであります。従いまして日本は、ことに軍事同盟というようなものができました場合に、それに入らないで済むのじやないかと思われますのが、今のところの見通しであります。
  121. 浦口鉄男

    ○浦口委員 簡単に二、三質疑を申し上げます。  第一に倭島管理局長にお尋ねいた止します。実はこの委員会におきましても、各委員からたびたび御質問が出ておるのでありますが、海外残留同胞の数字につきまして、外務当局はいろいろな資料によつて、近くこの委員会に発表すべき時期があるであろう、こういうふうに答弁をされておりますが、まだその発表の時期に至つていないか、まずそれをお尋ねいたします。
  122. 倭島英二

    ○倭島政府委員 いつか、日にちは覚えておりませんが、先般在外邦人引揚統計表というものを差上げたわけでございますが、その後政府といたしまして、特に議会の方へ提出する、あるいは御説明する資料ができておりません。
  123. 浦口鉄男

    ○浦口委員 すでに御承知と思うのでありますが、実は衆参両院議員が全部参加いたしております同胞救援議員連盟が主体になりまして、非常に広汎な強力団体によつて、今月から来月にかけて、海外残留同胞救出国民運動というものを展開されるわけであります。それで四月七日には——まだこれは確定的ではありませんが、衆議院の本会議場をできれば使わしてもらつて、同胞救援議員連盟の総会をやるというようなことも、今問題になつておるこの際、しかもこの同胞救援議員連盟の相当責任ある立場の人から、現在の海外残留同胞数の三十七万という数字に対して七これが非常に疑義があるこういうことも聞いておるのであります。そわ名前はちよつと私申し上げませんが、私、直接聞いたので、この際申し上げておきたいのでありますが、ソ連邦には戦犯として一万ないし二万、それから満州、中共地区に十二万、死亡したであろうと推定されるものが十万。なおこのほかに、死亡者の六万というのが、すでに発表済みで、これを合計いたしますと、二十三万、三十七万との間に十三万ないし十四万という食い違いがあるということは、当然考えられるということが言われておるのでありますが、私はこれは非常に重大なことだと思つております。それで先ほど申し上げましたような。こういう海外残留同胞救出国民運動が展開されるこの際、外務当局は何らかの形で正確な数字を御発表になることが、最も大事ではないかと私は考えます。われわれも国民の一人といたしまして、あの終戦の当時の混乱に際して発表された数字が、全面的に正確なものであるかどうかということについては、当然考えられることでありますので、われわれは政府がでたらめを発表しているとか、あるいはインチキであるというふうなことは考えないのでありますが、それだけになおさら国民を納得させる上に、この際発表していただくことがたいへん大事ではないかと考えるのであります。その辺についての外務当局の見解をお尋ねいたします。
  124. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今ある方の推計と申しますか、想像の数字かと思いますお話がございましたが、いろいろな関係の語でいろいろな情報があり、なおそういう根拠に基いているく数字がはじかれておるということは承知しております。しかしながら政府といたしましては、従来公表いたしました数字については、われわれが従来持つておる根拠を改めるだけの條件もなければ、事実もないということでございまして、依然として従来政府が最も信頼できると思われる根拠に基く数字、先ほどもお話がございましたが、大体未帰還の数字といたしましては、約三十七万四千というのが政府の公表しておる数字でございますが、それを訂正するだけの理由なり情報なり事実がございませんので、政府としてはいろいろ努力をいたします。国内においてもできるだけの調査も進めておりますし、その他あらゆる所にお願いをしておるのでありますが、残念ながら今日までのところ、まだこれを訂正するだけの根拠がございません。従つておそらく引揚げ促進の大会ガあるまでには、政府として特に発表し得る数字が出て来ないのではないかと思います。  なおついででございますが、ただいま入手しました報道によりますと、今月の十五日と二十日とにナホトカに船をよこせという配船の要求が来ておるそうであります。これは私ただいま報道を受けただけでありますから、資料を見なければはつきりわかりませんが、間違いないと思います。十五日も二十日も一つの船に大体二千名乗る予定でありますから、合計四千名、今月も四千名引揚げがあるという明るい報道を今受けたわけであります。(拍手)これをつけ加えて申し上げておきます。
  125. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それでは外務当局もこの数字に対しては、絶対狂わないものであるという御確信はない、幾分そこに狂いがあるであろうということで、的確な材料によつてこれを訂正すべく努力をしておられる、こういうことに解釈してよろしゆうございますか。
  126. 倭島英二

    ○倭島政府委員 従来政府が発表いたしました数字の問題はしばしば御説明申し上げておりますが、今御質問がございましたのでもう一回ごく簡單に繰返して申し上げますと、もともとの引揚対象基本数というものを政府は持つております。これは政府が持つております相当確実な資料に基いて出ておる数字でございますが、この数字といえども、終戰当時のどさくさまぎれのことでございますし、現地のことでございますから、たとえば百や二百やあるいは千くらいな單位でも、多少現地ではどうなつておるかという問題がございまして、従つて政府が発表しておりますこの基禾数なるものは推定ということにしております。その基本数が推定でございますから、少しでも当時の事情をきわめて、はつきりしたいという努力をしておるということで、ございまして、そういうふうに御了解願いたいと存じます。なお従来われわれ同胞が海外に行つておりました各地、並びに日本軍が行つておりました各地の関係で引揚げが行われたわけでございますが、従来完了いたしました地域においては、政府が持つておりました数字は、今から見ましても、たいへん確実に近いものであるということが証明せられております。従つてほかの地域においても、そう大きな狂いはないと考えております。
  127. 浦口鉄男

    ○浦口委員 先ほど私は名前を申し上げませんでしたが、同胞救援議員連盟の相当重要な責任の立場にある方の十三万ないし十四万の狂いがあるという言に対しては、私は先ほど申し上げたような運動が今展開されるやさきにあたつて、非常に重要な影響を及ぼすと思いますので、この点についてこのまま置いてもいいかどうか、外務当局のそれに対する見解をお開きしたい。
  128. 倭島英二

    ○倭島政府委員 できるならばこの機会でもあるいは別の機会でもけつこうでございますが、お名前でもわかりますれば。私政府の従来の建前なり、あるいは発表の内容なり、そういうことについてお話をしてみて、さらに御意見があれば参考として承りたいと思います。なお、おそらく政府が持つており、また発表しております数字以外に発表せられることはどうかと思いますし、そういうことにはならぬだろうと思い事が、われわれ政府といたしましては、政府が従来発表しております数字は、先ほど申し上げましたように訂正する、あるいはこれを変更する意向を現在持つておりません。
  129. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それではこれは申し上げるまでもなく、たいへん国民関心の的でありますし、引揚げも最終段階に近いことでありますので、これは別の機会に申し上げて弁証していただきたい、こう希望いたすわけであります。  第二に、実は三月三十一日の毎日新聞による「中共軍に従い流れ歩く満州の邦人、」こういう題目で雷州半島に三万六千人の邦人が中共軍に参加をいたしておる。その中の女性から郷里べ送る切々の手紙を新聞で拝見して涙を禁じ得ないものでありますが、こういう問題に対しては外務当局はどの程度情報を持つていられるか、またこの情報によつて、どういうふうな手段を講じていられるか、そのことをちよつとお尋ねいたしたい。
  130. 倭島英二

    ○倭島政府委員 先般差上げました在外邦人引揚統計表というのによりますと、中国のところはゼロになつており、満州のところに約六万となつております。中国関係のゼロというのは、従来の引揚げ対象から帰つて来られて、さしあたりなお現在引揚げ対象になる人がないと想定されるのでゼロになつておるわけであります。なお今お話の点でございますが、満州には六万というのが応のわれわれの未引揚げの推定であります。これにつ、いては現地から帰つて来られた方々のお話が先ほどもちよつと、ございましたが、六万より多い推定がございます。なお六万より少い推定もございます。それからこの六票、われわれは当初満州におられた事案根拠にして持つおるのでありますが、これが相当な部分満州以外の方へ出ておられる。それは中国の他の部分もありましようし、またその他のところもあるかと思います。しかしながらその点については、政府情報を持つておりません。なおお話の新聞に出ました件については、新聞報道以外まだ確実な報道を持つておりません。但し最近大分手紙が参るようになりまして、満州その他、中国の各地に行つておられる同胞の動静、だんだん明らかになりつつあります。留守宅の方から、いろいろわれわれがお願いしておるのに対して報道を送つていただく場合が大分ふえて参りましたので、それを今いろいろ調査し研究しておりまして、これに対して直接にどういう手を打つというところまでは、まだ進んでおりません。
  131. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それでは可能なる範囲において適切な方法を講ぜられんことを切望いたしまして、この質問は打切ります、  それからいま一点、これは千島の問題でありますが、実はさつき委員会において、私は千島列島の定義について御質問申し上げて、それがまだ決定的な御回答を得ておりません。また非常に政府の答弁にも食い違いがあるのでありますが、それは今一応別といたしまして、最近北海道議会におきまし、ても、千島列島は歯舞諸島、色丹島はもちろん、南千島、あるいは北千島といわれる部分も、全部これは当然日本に帰属すべきものであるという見解に立つて、道議会の決議をもつて一大運動を展開する、こういうふうな情報が入つておりますが、その根拠はも外務省の前條約局長の萩原氏の意見によつて、それが確定的になつたから、自信を持つてやる、こういうことを報ぜられておるのでありますが、その点について外務省はどういうふうにお考えになつているか。それは南千島、北千島の見解をお尋ねするよりも、萩原氏の意見によつて千島全体に対する一つの見解か出た。こういう北海道議会の報道を私は非常に重大に考えておりますので、それに対する外務当局の御意見をお聞きすることが、一番解決の早道である、こういうふうに考えるので、お尋ねをするわけであります。
  132. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 最近北海道の議会で採択されました決議は、私も拝見いたしたことがございます。その決議は、おつしやる通り、千島列島が全部北部も、中部も、南部も含めて当然日本に帰属すべきものと考えるという趣旨をうたつてございます。その論拠といたしましては、主として連合国が今度の戰争によつと領土の拡張を要求するものでないということが、カイロ宣言で明らかにされておるということと、千島と日本との従来の歴史的の事実、この二つに基いてであります。そういうふうに私は了解しております。北海道議会でそういうふうな決議をされるについて、その理論を前任者でございます萩原君の御意見によられたということは、実は浦口さんのお話で初めて伺うことでございます。事実どうなつておるか、私は全然存じません。しかし私の前任者がそういうふうなことをいたそうとは、私はゆめにも想像できないということだけは、特につけ加えさせていただきたいと思います。
  133. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それではこの千島の定義につきましては、私もさきの委員会で申し上げましたように、安政條約及び明治八年の樺太、千島交換條約、並びにカイロ宣言によつても、当然帰属すべきものであるという考えを持つております。もちろんそれを決定いたしますのは、講和條約において連合軍が決定するところでありますので、今われわれが云々すべきことではないということは考えておりますが、それにからんでいつも問題になりますヤルタ協定については、実は私昨年の十二月二十一日の外務委員会会議録を見ましたところが、これに対して岡崎委員長がこういう解釈をされているので、これを外務当局にいま一度確認していただきたいと思うのであります。それは「日本の領土は本州、四国、九州、北海道及び連合国のきめる諸島嶼に限る、こういうことになつておるのでありまして日本の領土をいかにきめるかということは、ポツダム宣言で連合国が本州、四国、九州、北海道以外はきめるのであります。きめて日本から取上げたものをどういうふうに分配するかという、その分配方法の一つがヤルタできまつているのであつて、それは連合国間の問題で、日本関係することでないのだ、こういう答弁だろうと私は考えております。」こういう岡崎委員長の答弁があります。これに対して外務当局意見の発表が全然なしに散会をいたしておりますので、私の解釈によるならば、日本の領土は本州、四国、九州、北海道、及び連合国が講和條約のときにきめる諸島嶼に限る。その決定されたものを連合国がどう分配するかということをきめたのがヤルタ協定である。そうなれば、今われわれがこの四つの島に付属する諸島嶼が日本に帰属すべきものであるかどうかということを論議するについて、ヤルタ協定をわれわれは一応云々する必要がない。また積極的に言えば、これにとらわれることはいらないのではないか、こういうふうに考えるのであるのであります。ヤルタ協定を無視するとか、あるいはその効力があるとか、ないとかいうことでなしに、ヤルタ定協というもの別にして、われわれはこれこれの島は当然四つの島に帰属すべきであるということを主張していいのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、外務当局はそれに対してどういうふうにお考えになりますか。
  134. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいま御引用になりました、十二月二十一日でございますか、岡崎委員長政府委員の答弁を一括して発言されましたところと、われわれの考えはまつたく同一でございます。それからただいまヤルタ協定を無視してもいいというようなお話がございましたけれども、これは連合国間の問題でございまして、日本側でこれに対してとやかく言うことはできない立場にあることは、前々から申し上げておる通りであります。
  135. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 一言将来の記録のために訂正させていただきたいと思います。先刻浦口委員が御説明なされましたときに、西村條約局長は千島列島が日本に帰属することを主張し得るという意見であるということをはつきりおつしやいましたが、私は私の答弁中そういう意見を述べたことは一回もありませんし、今日も全然そういう意見を述べておらないということをここにはつきりさせておきたいと思います。
  136. 浦口鉄男

    ○浦口委員 今西村條約局長の私に対するお言葉は、私はそう申し上げたつもりはないのでありますが、これはいずれ速記録を調べてもしそういうことでありましてそれに対して條約局長がお立場上お困りであるならば、あとの機会に訂正させていただきます。  それから今の鳥津政務局長のお話は、前半はわかりましたが、私は、であるから、ヤルタ協定を無視するということでなしに、そういう解釈で行くならば、ヤルタ協定というものをわれわれは論議することがいらないのではないか。たとえば共産党の方などからは、千島の問題については、ヤルタ協定によつてはつきりきまつておる、それをいかにもわが国に帰属するのだという、主張は、何かヤルタ協定を無視するようで、それには強い異論があるということを私は申し上げたのでありまして、今のような解釈になると、われわれがヤルタ協定を無視するとか、あるいは効力をどうこういうふうなことを申し上げるのではなしに、これに関係なくわれわれは日本の領土の帰属について論議できるのではないか。少くとも千島の問題については論議してさしつかえないのではないかという意見を申し上げたわけでありますので、その点、島津政務局長は誤解のないように願います。
  137. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先ほどの浦口委員発言に関連して、この際念のために明らかにしておきたいと思います。不幸にして当事者である川村政務次官がおられませんのを遺憾に思いますけれども、今年の二月ごろであつたかと思いますが、私が外務委員会におきまして千島列島に、対する所有権の問題について質問をいたしたことがございます。そのときに私の考えといたしましては、なるほど委員長の指摘されることく、ヤルタ協定というものは、日本の領土の分配をきめたものではありますけれども、私はこのヤルタ協定というものに何らの関係なくカイロ協定や、ポツダム宣言において、連合国が決して今度の戰争を通じて領土の拡張欲を持つているものではないということを明らかにしている点、並びに従来からの日本と十島との関係等から見まして、連合国が指摘しておりますごとく、決して日本が貧欲や侵略によつてかつぽらつたものではないという立場から、私は千島に対する領土権は主張し得るものと考える。従つてまた小笠原やあるいは沖縄方面に対しても領土権の主張を続けたいとわれわれは考えるという趣旨質問をいたしたのに対して、川村政務次官は明らかに佐々木委員の見解に同感でありますということを言われております。これは速記録をごらんになればおわかりになる。そういたしますと、ただいま西村條約局長の御答弁と政務次官の答弁との間には、まつたく雲泥審壌の開きがあるわけでありますけれども、念のために重要な問題でありますから、もう一度明らかにしていただきたいと思います。
  138. 浦口鉄男

    ○浦口委員 今佐々木委員からお話がありましたが、実は私が引例いたしましたのは、十二月二十一日なのです。佐々木委員の今おつしやつたように、「従つて南樺太、千島等については、日本の領土権をも主張し得るとわれわれは考えるのでありますが、これに対してもどういうようにお考えであるか。」と質問したのに対して、川村政務次官が「ヤルタ協定につきましての解釈は、佐々木委員同感であります。」それから中略して「解釈につきましては、佐々木委員と全然同一意見を持つております。」千島の帰属についてもそういう答弁をされておる。そのあとで西村條約局長が、この答弁を別な言葉でたいへんやわらかく否定しておる。速記録があるので申し上げますが、「事務的にあらゆる場合を想定しまして、調査研究をいたしておりますということを御返事申し上げます。なお先刻川村政務次官からヤルタ協定について御答弁がありましたが、ただ一言ヤルタ協定は純粋に連合国間の問題でございまして、日本としてはまつたく意見を申し述べるような立場にないということをつけ加えさしていただきます。」これによつて非常にぼやかされておるので承ります。私ははつきりこれは食い違つておる、佐々木委員と同じ意見でありますが私はこれ以上追究するつもりはないのであります。今速記録がありましたのでちよつと申し上げます。
  139. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 私どもは政務次官の御答弁を拝聴いたしましたあとすぐ、わが方において領土権を主張する権利ありというような表現は、きわめて強過ぎる、実態に合わないということをおそれましたので、政務局長がすぐその次の答弁の機会に一言政務次官の御答弁の補足をいたすことをいたしたわけであります。また島津政務局長が御答弁なさつたあとか、またその前でございましたか、忘れましたが、私もその意味で政務次官の御答弁を補足させていただきました。その結果幾分当日の委員会の空気といいましようか、委員会におきまする政務次官、われわれ二人の答弁から受ける印象が、きわめて漠といたしておりましたので、岡崎委員長が総締め括りの意味におきまして、政府委員の答弁の趣旨は、大体こという趣旨であろうかというので、先刻浦口委員が読み上げられましたような明快な総括を下されたわけであります。ぞの委員長の御総括に、われわれは全然同感であるということを、先刻島津政務局長が御答弁なさいました。これで千島問題に関します私ども立場を、皆様に御了解いただきたいと思います。
  140. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 重ねてもう一度聞いておきますが、私が先ほど申し上げたのは、ヤルタ協定が有効なりや、無効なりやとか、あるいはヤルタ協定がはたして日本を拘束する力ありやいなや、従つてわれわれは千島に対して領土権を主張し得るとかもし得ないとかいう結論を引出そろというのではなくして、ヤルタ協定とは無関係立場において、われわれは千島に対し領土権を主張し得るとお考えであるか、そうでないとお考えであるか。明らかにされたいのであります。
  141. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 私ども立場は、日本の領土問題は、いわゆる四大国と連合国が決定する諸島嶼に限定されるという事実の前に立つておるのでありまして、わが方側からかくかくの地域について領土権ありと主張し得る立場にないと考んでおります。
  142. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういうお言葉があると、私どももまたお尋ねしたくなるのでありますがも実は昨年の委員会でも申し上げましたように、すでに北海道の千島に最も近い根室町においては、北海道付属島嶼復帰懇請委員会というものが結成されまして、昭和二十年の十二月一日以後、約五回にわたつて、マツカーサー元帥に対して、直接こういう復帰の陳情書を出しているわけであります。しかも今度は道議会が正式に取上げて、より大きな運動にしようということになりますれば、やはりこれに対して外務当局は、はつきりした法的な根拠を明示すべきだと思うのであります。予算委員会においても、ある委員質問に対して吉田総理は、そういう領土問題に対して、国民が主張し、あるいは発言することは自由であるが、政府は積極的にこれを指導する気持はないとおつしやつております。もちろんこれも指導という言葉意味によるわけでありまして、戰夢中のように政府がこうしろというのが指導だとは考えておりません。しかし少くとも国民かこういう運動を起こしたことは、将来の平和会議において、諸外国に対して非常に大きな影響を及ぼすものである。この運動が正しい運動であれば将来の日本にプラスすることになるが、もし誤まつた運動であれば、非常に大きな禍根を残すものであるということを考えますので、この際われわれはこれを主張するとか、あるいはそれをよこせとかいうことでなしに、あくまで歴史的事実、あるいは條約その他に明記された範囲内において、外務省がこれに対する正しい見解を與えておくことが、私は非常に必要でないか、こう考えますので、たびたびこの問題を申し上げたわけでありまして、その点について外務当局の忌憚のない見解をもう一度お聞きしておきたいと思います。
  143. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 私どもが繰返し繰返し申し上げておりますことは二つあるのであります。  第一点は、特定の地域について日本側に領土権を主張する権利があるというような立場は、政府としてとれない。そういう立場をとつておりませんということが一つであります。  第二点は、特定の地域について歴史的その他の事情からして、どうか将来も日本の領土としておいてほしいという国民の気持が、連合国によつて了解されるようにするということは、しかし第一の点と矛盾するものでは、ございません、この第二の点でございます。  各委員からたびたび領土問題について御質問がありますが、第一点と第二点とが混淆されますので、私どもはそれを極力避ける意味において、はつきりと両者をわけて御答弁申し上げております。
  144. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それでは第二点の観点に立つて、でき得るだけ正しい指導をされ、またその目的に向つて外務当局が力を盡されんことを希望いたします。
  145. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ちよつと委員会の問題にもなりますから、簡單に私の見解を申し上げておきますと、今條約局長の言われたような、純粋な意味で地方の人が自分の近いところの土地に対して、歴史的あるいは地理的事情を述べてこれが依然として自分の国の領土として残つてもらいたいということを述べられることは、これを特に阻止するということはその必要もない。しかしながら一方において、連合国が定めるべきものであるということを決定したポツダム宣言を受諾した日本の国として、政府としてあるいは国会その他の公の立場にある者が、輿論の圧力をもつて連合国の決定を左右しようというところまで行つたら、これは正しく、ないのではないか、こういうふうに私は考えております。従いまして、委員会の決定とか、決議とかいうような種類のものになることは、すでにもうこれは正当な方向に向いていないのではないか、つまり連合国の決定に対して、国民の輿論という名前で圧力を加えるようになつては行き過ぎではないか、こう考えることは、ちようど戰争犯罪人の減刑を求める場合に、その家族が、自分の父なり、兄なりを減刑してくれというのは、情においてさしつかえないけれども、同じ国民であるけれども、公の立場にある人が、そういう願いを出すということは、正しくないのではないかというのと、事情は同じことじやないかと私は考えております。
  146. 浦口鉄男

    ○浦口委員 委員長の言うことも納得行かないのでありますが、委員会決議で圧力を加えるということでなしに、私は外務当局がいわゆる事務的、技術的な面において、その意見委員会に明確にするということは、決してさしつかえないと思うのでありますが、まあしかしこの点はいろいろ見解の相違もありますし、また今後私も研究することにいたしまして、きようは時間がないのでこれで打切ります。
  147. 並木芳雄

    並木委員 私は今聞いていて委員長の言うことも、政府の言うこともよくわかるのです。それでこれはやはりその局に立つておられる方ともそういう声を出されておる方々と直接接近してみた方がよいのではないかと思います。先ほど家族が父兄の減刑を陳情するという、よい例を引かれましたけれども、その陳情が許されるものならばよいけれどももそういう陳情すら許されないということも、場合によつてはあり得るのですから、絶対だめなものならば、はつきり私たちが行つて、絶対だめだからというふうに言うのが、正しい国民のあり方であろうと思う。また政府が非常に愼重を期して、この問題は将来の問題でもあるし、むずかしいと言つているけれども国民の意思として、ある程度動くことはさしつかえないのだというようなことが許されるならば、またそれはそれで行き方があると思う。とにかく外務委員会としては一応この問題を相当重視して委員を派遣するようなおとりはからいをしていだだいたらよいのじやないかと思いますが、いかがでしよう。
  148. 岡崎勝男

    岡崎委員長 委員諸君の御同意がありますれば、そのように実現することを努力いたします。
  149. 聽濤克巳

    聽濤委員 このヤルタ協定の問題は、しばしばこの委員会でも問題が出ておりますので、事柄は相当重大であることは言うまでもありませんが、私は近い機会に外務委員会でヤルタ協定の問題についてももひとつ徹底的に論議してみたいと思う。これは皆さん方も非常に関心を持つておられるのだから、一ぺんやつてみたらよいと思う。ただ私は一言申し上げておきたいのは、ヤルタ協定そのものを、われわれが正しい態度をもつてよく調べてみる必要があると思う。第一の点はヤルタ協定にははつきりと南樺太、千島の返還並びに引渡しはも対日戰争が済んだらこれが行われるということははつきりしておる。もうすでにそれは実行されておる。そしてそれに対して連合国の間では何ら問題が起つていない。しかも日本の降伏文書の中に、はつきりと連合国はすでに協定されたもの並びに将来協定されるものを枢軸としてやつて行くということが明示されている。これはポツダム宣言を受諾したわが国において、この問題はほんとうに重大な問題になつて来るわけなんで、私はこういう観点から正しくこの外務委員会で討議を行つて、今あいまいにされているような点を、できるだけひとつ徹底的に論議することを私は主張いたします。そうでないと、事柄は非常に重大な国際的な問題になりますから、私はこの点を主張いたします。
  150. 並木芳雄

    並木委員 私も聽濤君の説と同感なんです。同感ですからその歴史的とか、地質学的、人文的な現地の調査は必要だと思うのです。そういうものの上に立つて、大いに討論するのはよいのじやないかと思う。ぜひひとつ先ほどの発言通りおとりはからい願いたいと思う。
  151. 岡崎勝男

    岡崎委員長 さようとりはからいます。但し委員諸君の御同意を條件といたします。ついてはさらに時間がもうありませんが……
  152. 並木芳雄

    並木委員 堀井特調次長がおいでになつておりますから事務的のことでお伺いしますが、今度は連合国軍人等住宅公社法案が通過されまして、あれで二千戸ばかり住宅ができるようです。これは新しい要員のためですか、それとも従来日本人から提供されておつた土地とか家屋、こういうものはこれができますと順次返還されて来るものでございましようか、まずお伺いいたします。
  153. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 二千戸の住宅の建設につきましては、私どもの聞いておりますとところは、米軍内における住宅の不足のためでありまして現在接収されております建物が、同時にある数解除になるかどうかということにつきましては、別個の問題ではないか、多少あるかもしれませんが、ただそういう程度の情報しか私どもは持ちません。
  154. 並木芳雄

    並木委員 今提供されておる家屋の戸数はどのくらいあるでしようか、それから土地も相当あると思あると思うのですけれども、そういうものの件数をこの際お伺いしたいと思います。
  155. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 現在接收されております住宅の戸数は二千三百十二戸であります。なお一戸当りの平均坪数は百六十一坪ということになつております。なお土地につきましては接收件数が八千七十件、坪数にいたしまして千五百六十七万坪、大体そういうことになつております。
  156. 並木芳雄

    並木委員 そういうものに対する家賃とか土地の収用代金あるいは借上賃、こういうものは一定の標準はきまつておるのですけれども、なかなか周知されておらないようなんです。それでたとえば農家で何町歩かの土地が接収されるとき、特調の役人、連絡官が昔の代官のように農民なんかに接して来るので、ただおどおどしてしまつて、昔の日本軍の命令だとかああいうもののたぐいのように思つてしまつて、私たちの残念に思うのは、そうい、うことを通じてかえつて反米的な気持が起りやすいのです。これは特調としては嚴に注意してもらわないと困る。それから今の家賃なんかでも、家賃を取りに来いという通知が、すでに提供されている家に来る。ところが本人は二里も三里も遠くへ移転しておる。こういう事例がたくさんある。特調の職員が筋金を入れかえなければならぬと思うが、そうい方粛清に対して次長はがんばつておるかどうか。今言つた標準というものをなるべく周知させて、特調の役人はそういう提供した人に対するサービスを提供する意味で、迅速に好意的にとりはからわなければならぬと思いますが、どうなつておりますか。
  157. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 家賃あるいは地代等の算定につきましては、地代家賃統制令に基きまして算定いたしております。なおこれが算定にあたりましては、不動産の評価委員会というのがございまして、民間の有識者が半分以上参加して、委員長は民間代表者から互選されることになつておりますので、評価委員会に長官より諮問せられまして、その評価に基きまして所有者の方と契約申し上げるということ相なつております。  なお先ほど御指摘になりましたそれらの賃賃借料の敏速なる支拂いにつきましては、今回機構を改正いたしまして、従来私どもの機構が契約とかすべて横割になつておりましたが、不動産の関係だけは縦にまとめまして、一貫出して敏速に処理し得るようにしまして、御迷惑をできるだけ少くしたいという考えでおります。
  158. 並木芳雄

    並木委員 沖縄貿易につきましてちよつと、お確かめしておきたいと思うのですが、この前通産省の高井事務官でしたか、私が質問しましたら、沖繩の建設工事に対する労力及び資力を送ることは一種の貿易であつて、相手国はアメリカであるというふうに答弁されたと記憶しております。これは沖繩の性格から考えましてアメリカに帰属しているともはつきりしていないのじやないか、アメリカの管理下にあるのではないかと思うのです。日本はやはり管理下にあつて、貿易をやるときに、日本とたとえばエジプトとの貿易協定、日タイ貿易協定では、日本が当然はつきり出て来ておるのであります。沖繩の場合も結果は同じではないかと思うのです。沖縄建設工事の貿易の相手方、契約の相手方はアメリカなんですか、どうか、沖繩それ自体ではないのかというふうに感ずるのですが、どうですか。御質問申し上げます。
  159. 飯村英一

    ○飯村説明員 今の御質問に対して御答弁いたしますが、この前高井説明員が参りまして御説明申し上げましたが多少間違つておるところがございますから訂正いたします。沖縄建設工事に対しまする契約というものは、アメリカの軍が日本の商社と直接に契約をいたしまして、商品を買つて沖繩に持つて参るのであります。そしてその支拂いはアメリカのドルを商業勘定に拂い込みまして、そして円にこれを交換いたします。そしてその交換した、要するにドルの裏づけのある円で支拂いをするのでありまして、われわれといたしましては、これは一種の内国貿易であると考えておるのでございます。それでこの前の高井説明員の申しました沖縄との貿易協定云々という点は、その建設工事に関しましては別に貿易協定というものによつて行われているのじやありません。
  160. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、貿易がだんだん民間に自由になつて来ている最近の傾向に対しては、非常に違う行き方をとつた貿易の形であろうと思うのです。管理貿易というか、どういうふうにこ性格をわれわれ理解してしかるべきであるか、お伺いしたいのです。と申しますのは、この前同僚小川委員から沖縄建設工事については、それが軍事基地の性格を持つておるものであるならば、物資を送り、労力を送るということは援助することになるから、憲法違反の疑いが出て来る、こういう質問をしたのであります。それに対して西村條約局長は、建設工事という文字を使つてありますからその疑いは出て来ない、こういう御答弁でした。文字は建設工事でありましようけれども、今行く物資というものは、相当許された範囲を越えるような、いわゆる軍需物資に指定されるようおなそれのあるものも行つているのではないかと思うのです。そういう点に対する当局の見解はどうなつておるか。それに関連して、私はこの沖縄貿易の性格をはつきりしておいていただきたいのです。
  161. 飯村英一

    ○飯村説明員 ただいまお尋ねの、沖繩へ建設工事という言葉内容で、持つてつているものが軍需物資だというお話でございますが、特に戰争に直接関係のある軍需物資という意味ではなしに、大体現在今までに契約されたものを見ますと、建設に要する資材だけでございます。それからもう一つ沖縄の貿易に関しまして、沖縄の現地人の使用する、言いかえれば現在占領しております。ミリタリーガハーメントの方で買い付けまして、これは琉球トレイド・グループというのでやつております。それで現在建設工事の方は、この前高井説明員からも申し上げましたごとく、第八軍の調達部においてこれを民間から買つて、それを調達しておるやり方であります。
  162. 並木芳雄

    並木委員 なおその点については私の方もお確めすることにして、この際外務当局にお願いしたいのですが、お隣の中国における飢饉は相当大きな被害を生じておる模様であります。私たちはもしあの報道が事実であるとするならば、これはほんとうにお気の毒なことだと考えるのでありますが、中国における飢饉の状態、そして政府としてもこれに対しては、もちろんわれわれは援助を受けているような貧乏国ですから、物質的な御援助を申し上げることはできなくても、同情する意思の表示ぐらい当然だろうと思うのですが、そういう点についてお伺いします。
  163. 與謝野秀

    與謝野政府委員 並木委員にお答えしますが、中国の飢饉の状況につきましては、各方面から非常にアラーミング情報つているので、われわれとしても非常に研究しておるのでありますが、たとえば中共政府の政務部の発表しましなところでは、現在全国でただちに救済を要する災民は七百万に達すると政府も発表しておるようであります。また香港その他各地がら伝えられる報告は、さらに数字がこれより上まわつておりまして、餓死者が七百万から九百万くらい出るようになるのではないかというようなアラーミングの報道もあるのであります。中共政府はこれの対策として、民衆の相互援助、申公務員の食糧の節約、治水、道路工事の起工による窮民救済、そういう方針をとつているのでありますが、特に直面しております軋轢を切り抜けるだけの対策は、あまりにこの基金の規模が大きいために立たないようでありまして、現在タイへ通商使節が行つて、食糧買付を交渉しておるという状況でありますが、タイの方で、やはり麦押い方法その他でドルが必要というようなことになると、なかなかこの点もむずかしい。またインド支那から米を買い付けるということも考えているように伝えられておるのであります。この飢饉に対しまして、アメリカの中の輿論を見ますと、たとえば四、五日前のニューヨーク・タイムスはアメリカ中共当局とうまく行つていない——行つても、飢饉に悩む中国の民衆の声に耳をふさいでならない。中共は援助物資の配分をアメリカの手にまかせるべきだという要請を書いておりますし、アメリカの中でもアメリカの余剰の食糧をまとめて、至急中国に逸れということを述べておる記事などもぼつぼつ出ているようであります。ただアメリカの輿論はそうでありますが、現在のアメリカ中国関係、またアメリカソ連関係ということから見ますと、アメリカがただちに食糧を送つて中国の難民を救済するということも可能性が非常に少いように思われるの護り事。われわれは隣国のことでもあり、特に中国の民衆が戦争で長い間苦しんで、その直後においてまたこういう天災のために苦しんでおるという事実については、非常に同情を禁じ得ないのでありますが、日本とて何らこれに対して積極的に何事かをなすとか、意思を表明するという立場にはないのではないか、こう考えるのであります。なお国民政府の方は、この問題を非常に利用して、蒋介石氏は三月二十七日に在外の華僑その他に難民の救済を要請して、援助物資の輸送については、国民政府も大いに便宜をはかるという一つの政治攻勢の手段に使つておるという報道もあるようであります。簡単でありますが……
  164. 竹尾弌

    ○竹尾委員 沖縄の基地の問題ですが、この間の通産省の説明員のお話のときに、これは非常に問題が重大であるから、われわれにもわからぬところがずいぶんある、そこでこれを文書にして、ひとつわれわれに配付をしてくれというお願いをいたしたのでありますが、どうぞ委員長を通じて正式にいただきたいと思うのであります。さようおとりはからい願います。
  165. 岡崎勝男

    岡崎委員長 要求いたします。
  166. 並木芳雄

    並木委員 もう一つ、表面主義主張が違う国の国民であろうとも、やはりこういつた惨禍に見舞われた方々に対では、うのは、世界共通であろうと思うのです。ですから政府としても何らかの方法をとるように努力していただきたいと思います。それから先般答弁を保留して調査をしていただくことになつておりました百四十五名ですが、百五十名の渡米の詳細についてお聞きいたします。
  167. 島津久大

    ○島津政府委員 お答えいたします。百四十五名アメリカ政府の招待で、二・三箇月以内に渡米することになつたという、渉外局の発表が三月十四日にあつたわけであります。その後いろいろ取調べをておつたのでございますが、どういう人々が何人くらい行くかという詳細の計画はまだわかつておりません。ただ三月三十一日に司令部の方から明らかにして参つたところによりますと、約六十名の人名があがつておるのであります新聞に出ておりました眞野、矢内原の諸氏を含んで約六十名の名前がわかつて来ております。おそらくこの百四十五名の計画のうち、六名の名前が確定したとい解釈をいたしております。この計画は御承知のように、ガリオアの費用の中から出ておるのであります。司令部の中に特別の委員会ができまして、日本側の政府各機関と緊密な連絡をとりまして、人選その他を討議して決定をしておるようであります。簡単でありますが、わかりましたところでは、大体以上の通りであります。
  168. 並木芳雄

    並木委員 その委員会が結局人選をきめるのでしようけれども日本側として主として政府委員がその委員会の中に入つて人選にあずかつておるのですか。これはだれをピックアップするという一番中心であろうと思いますがも人選は結局どういう人々の手によつてきめられるのですか。
  169. 島津久大

    ○島津政府委員 委員会は司令部の内部の委員会でありまして、日本側からはたれも委員は行つておらないのであります。大体司令部の方の関係のセクションの方から、関係の省に大体何者くらいの名前を推薦してくれというような話がありまして、それに対して政府側の方から候補者をあげる、それを人事委員会にかけて最後的に決定する、大体そういうことになつております。
  170. 並木芳雄

    並木委員 政府の方であげる候補者は、その候補者を選定する基準とか、標準とかはどういうふうにきまりますか、どこかの局長とか、大臣くらいの一存で、あれはよさそうだからあれにしようというわけできまるのですか、推薦に至るまでの径路は……
  171. 島津久大

    ○島津政府委員 これは一律な基準ほみいようであります。その都度司令部の方から示唆して参ります種類の人に、最も適当な人を責任をもつて推薦するという形になつております。
  172. 並木芳雄

    並木委員 その選に入りたい人は、やはり積極的にどこかへ申し込んでおいた方がよいわけですね。黙つておつたらなかなか行きたくても何回待つても来ない、ずうずうしいやつはがちやがちや騒いでおると、これが選に入りやすいということがあるので、一般にそういう希望者というのは、どういうところへ申し込んで行くということになるのですか、その点を……
  173. 島津久大

    ○島津政府委員 別に行きたいといつて運動しておる方もないように承知しておりますが、大体関係のある官庁に御連絡になる方がよろしいと思います。
  174. 岡崎勝男

    岡崎委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時五十九分散会