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聽濤委員 私は
日本共産党を
代表して反対いたします。
事柄は小さいように見えますけれ
ども、
質疑のときにも再三申し述べましたように、
ポツダム宣言下の
日本の対外
関係を設定して行くという問題は、将来の
講和の問題と切離しては
考えられないのでありまして、今日吉田内閣がと
つておる一連の
政策は、明らかにいわゆる條約なき
講和、なしくずし
講和、そして実質は
講和の
可能性を破壊しつつある
政策の一つであると私は
考えます。第一これが不審にたえませんのは、吉田総理は先月の十四日か何かの衆議院の
予算委員会で、この問題について
質問しましたときに、これは追
つて調査して返答すると
答弁せられた。こうい
つた外務大臣である主管大臣も
答弁できなか
つたような
案件が、今日突如
外務委員会に出て来ておる。何かその間非常にあいまい模糊としたものを感ぜざるを得ない。さらに
国会の
承認につきましては、当然これは
事前の審議を仰ぐべきであ
つたと思います。これは先ほど冒頭に述べましたように、
日本の今後の国際諸
関係の問題を十分に考慮し、
講和の観点から十分に論議されて、これに
参加するかいなかを決定すべきであ
つた。それにもかかわらず、その点かやられてないことは、吉田総理の
答弁の態度とあわせ
考えまして、何か故意に問題を避けているようにしか思えないのであります。
さらに
わが国の
外交自主権の問題につきましては、これは明らかに
ポツダム宣言下において
講和以前に
外交自主権が回復するということはあり得ない。これがなしくずしに、表面自主権があるかのごとき形で行われつつあるところに実際問題があるのであります。たとえばこの点は、この
関税表刊行に関する
議定書に
参加する——いかにもこれで
日本が
関税の自主権でも持ちつつあるかのごとき印象を與えますけれ
ども、しかし先ほどの論争でも明らかなように、
関税の自主権はもののみごとにありません。全然ない。この事実がごまかされて、何か
関税自主権か回復の方向に進みつつあるかのごとき表現の形式をと
つておりますが、本質は
わが国の
関税自主権は完全に踏みにじられつつある。そうしてこのことが端的に現われておるのが、たとえば食糧やその他戰略物資と思われるようなものの無期限免税の問題であり、あるいは
貿易に関しましても、中国やソ同盟との平和的な
貿易の
機会を、いまだにわれわれは獲得していないという問題である。
日本におきましては日英、日独
協定というものがどんどんできつつある。しかしこれには
日本の
代表は
参加しておらない。しかもこれは当面の重要な障害にぶつつか
つてしま
つておる。しかも一方におきましては公団の滞貨六百億という莫大な滞貨ができておるが、この原因は明らかに当てもない輸入を大量に
わが国がしたからである。クレーム、キヤンセルの問題は裁判にかけても実際には損害賠償はとれないようである。しかも最近現われている問題は、産業復興公団におきまして、これらの輸入滞貨のうちの重要資材というものは、これは現下の情勢において戦略物資と思われるようなものですが、そういうものの備蓄を始めておる
傾向さえある。
わが国の
貿易自主権というものは完全にございません。そういう中で一体こういうものに
参加して何の利益があるかということが、第一の問題であるばかりでなく、実際の問題としては、こういうやり方で
関税自主権や
貿易の自主権というものは全部ごまかされつつある。そして
国民をごまかしつつある。こういう中で一体
わが国はどうなるのであるか。これは
関税の問題、
貿易の問題において、明らかに一国への従属をどんどん強化しつつあるものだと思います。これが何で
わが国の幸福になるか。わが民族の幸福になるか。こういう明らかな事実に対して、私は絶対にこの
案件を
承認することはできません。
最後にもう一度繰返しますけれ
ども、
わが国民が全部要望しておるところのほんとうの
講和、この
講和の
機会というものは、こういうやり方を積み重ねて行きましたならば、明らかに永久に破壊されてしまう。その方向にどんどん発展させつつあるというところに一番重大な問題がある。私はこういう観点から簡單ではありますけれ
ども、わが民族の利益とは絶対に相いれないものがあるとして反対いたします。