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1950-03-08 第7回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月八日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 岡崎 勝男君    理事 菊池 義郎君 理事 近藤 鶴代君    理事 竹尾  弌君 理事 仲内 憲治君    理事 並木 芳雄君 理事 聽濤 克巳君       伊藤 郷一君    大村 清一君       栗山長次郎君    中山 マサ君       橋本 龍伍君    増田甲子七君       西村 榮一君    山本 利壽君       野坂 參三君    小林  進君       浦口 鉄男君  出席政府委員         外務政務次官  川村 松助君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         外務事務官         (調査局長)  與謝野 秀君         外務事務官         (管理局長)  倭島 英二君         通商産業事務官         (通商局長)  黄田多喜夫君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君 三月二日  委員武藤運十郎辞任につき、その補欠として  田万廣文君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員田廣文辞任につき、その補欠として武  藤運十郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月八日  海外移住組合法の廃止に関する法律案内閣提  出第一二号)(参議院送付)  国が有償で讓渡した物件が略奪品として没収さ  れた場合の措置に関する法律案内閣提出第六  一号)(参議院送付) 同月一日  在外資産補償に関する請願前田榮之助君紹  介)(第一一二七号)  同外五件(佐藤榮作紹介)(第一一五二号)  同(佐竹新市紹介)(第一一七八号)  同(中村純一紹介)(第一一七九号)  同(青柳一郎紹介)(第一一八〇号)  同(渕通義紹介)(第一一八一号)  同(佐藤榮作紹介)(第一二一二号)  同外一件(岡田五郎紹介)(第一二一三号)  同(三木武夫紹介)(第一二三五号)  同(平川篤雄紹介)(第一二三六号)  同(井上良二紹介)(第一二三七号)  同(瀬戸山三男紹介)(第一二三八号) の審査を本委員会に付託された。 同月六日  在外公館上金返還並びにその換算率に関する  陳情書  (第五三七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件  請願  一 在外資産補償準備機関設置請願佐藤榮    作君外五名紹介)(第三三三号)  二 在外資産補償に関する請願水谷長三郎    君外一名紹介)(第三三四号)  三 同(足立篤郎紹介)(第七五一号)  四 同外二件(受田新吉紹介)(第九八七    号)  五 同(青柳一郎紹介)(第九八八号)  六 同(高橋英吉紹介)(第一〇一二号)  七 同(米窪滿亮紹介)(第一〇一三号)  八 同(佐藤榮作紹介)(第一〇一四号)  九 同外一件(岡田五郎紹介)(第一〇一五    号) 一〇 同(松永佛骨紹介)(第一〇一六号) 一一 同(井上良二紹介)(第一〇五七号) 一二 同(中曽根康弘紹介)(第一〇五八号) 一三 同(佐竹新市紹介)(第一〇五九号) 一四 同外一件(村瀬宣親紹介(第一〇六〇    号) 一五 同(越智茂紹介)(第一〇九二号) 一六 同(岡田五郎紹介)(第一〇九三号) 一七 同(松永佛骨紹介)(第一〇九四号) 一八 同(淺香忠雄紹介)(第一〇九五号) 一九 同(松澤兼人紹介)(第一〇九六号) 二〇 同(山崎岩男紹介)(第一〇九七号) 二一 同(前田榮之助君紹介)(第一一二七号) 二二 同(佐藤榮作紹介)(第一一五二号) 二三 同(佐竹新市紹介)(第一一七八号) 二四 同(中村純一紹介)(第一一七九号) 二五 同(青柳一郎紹介)(第一一八〇号) 二六 同(渕通義紹介)(第一一八一号) 二七 同(佐藤榮作紹介)(第一二一二号) 二八 同外一件(岡田五郎紹介)(第一二一三    号) 二九 同(三木武夫紹介)(第一二三五号) 三〇 同(平川篤雄紹介)(第一二三六号) 三一 同(井上良二紹介)(第一二三七号) 三二 同(瀬戸山三男紹介)(第一二三八号) 三三 外蒙ウランバトール残留邦人帰還促進に    関する請願松谷天光光紹介)(第三八    六号) 三四 在外胞引揚促進請願佐々木盛雄君外    二名紹介)(第三九四号) 三五 同(小平久雄君外一名紹介)(第八九四    号) 三六 在外胞引揚促進並びに留守家族援護に    関する請願中山マサ紹介)(第一〇〇    八号)  陳情書  一 未帰還胞引揚促進に関する陳情書    (第一三四    号)  二 同外八件    (第三七二号)  三 同外一件    (第四二一号)  四 同(第四四    八号)  五 同外二件    (第五〇一号)  六 海外在留同胞帰還促進等に関する陳情書    (第二三二号)  七 中共地区残留胞引揚促進陳情書    (第三六四号)  八 外地戰犯服役者内地服役許可に関する陳    情書    (第四二四号)  九 在外財産補償に関する陳情書    (第四三九号) 一〇 同    (第四六九号) 一一 同外一件    (第四九七号)     ―――――――――――――
  2. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまより会議を開きます。  まず請願審査をいたします。  日程第一、在外資産補償準備機関設置請願佐藤榮作君外五名紹介文書表第三三三号より日程第三二、在外資産補償に関する請願瀬戸山三男紹介文書表第一二三八号までは、ともに在外資産補償に関する請願でありますので、これを一括して議題といたします。紹介議員説明を求めます。便宜上專門員より朗読いたさせます。    請願書   昭和二十四年十一月二十一日    請願人      山口山口東惣太夫三百六十の二     社団法人山口更生会長 岡崎 茂樹    紹介者      衆議院議員 佐藤 榮作            吉武 惠市            周東 英雄            坂本  實            青柳 一郎            高橋 定一    衆議院議長幣原喜重郎殿    在外資産補償準備機関設置請願  一、要旨 国民人口の約一割を占める海外引揚者在外資産補償に関する諸調査準備を進めるため、準備対策委員会のごとき国家機関を早急に設置せられるようここに請願いたします。  二、趣意 在外資産引揚邦人敗戰までのわが国の領土または友交国等において、正当の権利に基いて取得蓄積した私有財産であつて国際法的にも国内法的にもまた現代法秩序條理からしても、その所有権は尊重せらるべきであることは自明の公理であります。しかもその所有者一朝の出かせぎではなく、多くは永住の意志を持ち、全生活の根拠を外地に置いていたもので、これが敗戰により、これらの財産を強制的に接收または沒收せられ、国内に移住せしめられたものであります。これらの人々は戰争による特別なる被災害者として、失つた財産を何らかの形で補償せられるのが妥当であると信ずるのであります。  平和日本の再建は、その初めにおいて、戰争による犠牲の、国民全般の公平なる負担の原則を前提として、初めて堅実な歩みを進めることができると思います。国内人口の約一割を占める引揚者に関する在外資産の問題について、民意を代表する為政当局が、かくも等閑視し、放置していることは、戰後の政治における一大欠陷というべく、この問題を誠意をもつて解決しない限り、今後の国政にも大いなる禍根を残し、子々孫々に現代当局者の失政を指摘される結果となることを銘記しなければなりません。  今や国際間においても対日講和條締結の機運が熟しつつあり、戰時戰後の山積した問題が、これを契機として解決清算せられ、新生日本の巨歩を踏み出すべき時節が到来しているにかかわらず、この国政上の重大問題である在外資産が、為政当路者誠意を明らかに疑う程度に放置敬遠せられていることは、まことに遺憾しごくというほかはありません。国会並びに政府はこの際、眼を国政の現在将来の大局に注ぎ、戰争による諸般懸案解決積極的施策を断行し、在外資産補償準備対策委員会のごとき国家機関を早急に設置せられるよう、ここに山口県下の引揚者、ひいては全国引揚者の切なる熱望を披瀝し、とくと請願する次第であります。    在外資産補償に関する請願    請願人      兵庫県加東郡河合村下複井            佐藤 六郎             外五十名    紹介議員            岡田 五郎   敗戰により邦人外地財産はことごとく喪失するの結果を見るに至つた。ことに外地居住者はその永住の地を失うとともに父子二代、三代に築き上げた一切の財産一朝にして失うこととなり、まる裸の姿にて本土に移転を命ぜられたのである。ポツダム宣言には基本的人権を尊重すると宣明されたが、事実はこれと反して、在外同胞財産権侵害され、すでに四年半余を経過するに至つた。憲法第二十九條第三項により、これらの在外財産は明らかに公共のために喪失せしめられたのであつて国家は当然にこれが補償義務を有することは、ベルサイユ條約またはイタリア平和條約において明らかなところである。かく憲法に明定した財産権侵害原則は、数百万人に対して四年有余適用されていない現実にあることは、財産権侵害の事実を立証するものであり、憲法違反を犯しているものである。従つて今日においてはこれら在外財産補償は、国内問題として解決すべきものであることはまつたく明らかである。一九四八年米国のウワー・クレイムズ・アクトはこの措置国家がなすべきことを明らかに暗示するものである。以上の理由より在外財産は当然に政府において補償すべきものであるので、政府及び国会は緊急に左記の措置をとるべきであると信じ、ここに憲法第十六條により請願いたします。  一、在外財産のうち、喪失せしめられたる部分に対しては、国家補償する義務のあることを宣明すること。  二、政府はすみやかに在外資産補償のための調査並びにこれが審査のための強力なる機関を設置すること。  三、在外財産補償のために引揚者団体全国連合会及びその下部機構たる各都道府県連合会をして、予備審査をなさしむること。    右予備審査のための経費は予算に計上すること。  四、財産権保障原則を内外に宣明し、将来に備え、もつて民生を安定せしむるの適当なる措置を講ずること、このため基本的人権は尊重せられるべきである旨の決議を国会にてまた政府はこれに関しての声明を発すること。  五、米国のウワー・クレイムズ・アクト・オブ一九四八は基本的人権を蹂躙し、財産権侵害するものにつき、これが撤廃または改正せらるるよう請願すること  右全国引揚者の名において請願いたします。
  3. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これについて、政府側より意見を承ります。
  4. 倭島英二

    ○倭島政府委員 在外財産補償等に関する請願の御趣旨の諸点につきましては、政府といたしましても、すでに種々研究を進めておる次第でございますが、在外財産に関する補償の問題その他の処理の問題は、結局賠償問題とも関連して考慮せられることとなると思いますし、事実上平和條約の締結のときまでに、具体的に解決することは困難であると思います。しかしながら政府といたしましても、適当な機会をとらえまして、関係方々利益が十分保護せられますように、今後とも努力する所存でございます。
  5. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御質疑はございませんか。
  6. 並木芳雄

    並木委員 どのくらいの在外財産があるか見当はつきませんか、あるいは調査はしていますか。
  7. 倭島英二

    ○倭島政府委員 大体調査は一応できておりますが、諸般関係で、現在まだ発表の段階なつておらない状況でございます。
  8. 並木芳雄

    並木委員 在外公館の借上げの申告の期限が、三月十九日で切れるのですが、それに対して関係者の方から、どうも三月十九日まででは間に合いそうもないから、もう少し延ばしてくれないかという声も聞いておるのですが、政府の方でそういう声を聞いておるかどうか。また少し延期して、関係者のために便利なようにする方がいいのじやないかとも考えていますが、そういう点いかがですか。
  9. 倭島英二

    ○倭島政府委員 在外公館の借上金の件につきましては、多少日にちが短かいかと思われる節もございますので、実はその確認請求書の受付は、各府県の市町村にお願いしておるわけでございますが、先般も各府県の係官の方にお集まり願いまして、各県の状況を聞きますと、大体間に合いそうだ。それからもしも特殊の事情、その他がありますれば、三月十九日付の日にちで出してもらうようにすれば、そのあと多少のところは受付けて、こちらへ送つて来るように話がしてありますので、大体それまでの三月十九日の日付で、あと数日間、やむを得ない事情で遅れる関係は提出できるようになると思いますので、大体それで間に合うのではないかと思つております。
  10. 並木芳雄

    並木委員 その点ラジオか何かを利用して、公告されたことがありますか。
  11. 倭島英二

    ○倭島政府委員 ラジオでは各地方版に入れてもらつて、相当やつております。それから最近またさらにビラを二十六、七万枚くらい刷りまして、特にあともう一箇月そこらという追込みの時期でもありますし、地方版で新聞にも出ておりますし、ビラもまいておりますし、それから各県が相当熱心でございまして、地方ラジオ等を相当利用しておる状況でございます。
  12. 並木芳雄

    並木委員 請願の中にありました国家がこれを補償するという点については、どうですか。やはりなかなか講和條約まで、それがセツトルできないとなると、お気の毒でありますから、国家がとりあえずそれを立てかえるという言葉は適当かどうかわかりませんが、日本がこれを補償してやるというようなことに対する見解準備、その点いかがでしよう。
  13. 倭島英二

    ○倭島政府委員 先ほどもちよつと申し上げた次第でございますが、いろいろ研究はしております。在外資産を持つておられる方々利益関係で何かできないかということで、いろいろ研究はしておりますが、先ほど申し上げましたような状況でありまして、在外財産の全体の額の問題、処分の問題、それらが懸案なつておりまして、事実上は賠償問題と関連して考えられるだろうという見当にありますので、現在までのところ、こういう方法国内措置がとれるというところまで、具体的には進んでおらないわけであります。
  14. 並木芳雄

    並木委員 一方においてこの間委員会で審議しましたように、政府が拂い下げた物資掠奪品として沒收されたものに対しては、政府がこれに対して受取つた金だけをもとしてやるというような法案が提出されている。大きな見地から精神的に公平を得ておると思われるかどうか、私はちよつと感じたのですが、ああいう法案が出されるならば、こういう問題も、もし必要ならば関係方面に懇請すれば、必ずある程度許可になるのではないかというふうに感ずるのですが、その間のバランスはどういうふうに考えられますか、お伺いします。
  15. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今在外財産の問題を研究しているということを申し上げましたのは、ただ單にわれわれ関係の者だけではなしに、関係方面に対しても研究をお願いし、御相談をしているわけでありますが、この問題については、先ほどから申し上げているような状況でございまして、まだ具体的に申し上げられるような状況なつていないのであります。
  16. 並木芳雄

    並木委員 比較程度ですが、一方において掠奪物資に対する所見はいかがですか。一方に偏していませんか。
  17. 倭島英二

    ○倭島政府委員 その比較の問題はまだここでよく研究しておりませんので、所見を申し上げかねるわけでありますが、在外資産と目されておりましたいわゆるその一部の在外公館上金というようなものも、事情その他によりまして、あれは唯一のと申してよいが、相当例外的に認めてもらつて処置を進めているわけでありますが、事情その他いろいろ研究をし、説明をし、相談をしている状況でありまして、今後あるいはこの問題についても、何らかの解決の道を発見し得るかもしれませんが、現在のところ、まだ具体的に申し上げる段階に達しておらぬということで、ひとつ御了承願いたいと思います。
  18. 中山マサ

    中山委員 シヤウプ勧告案の中には、天災地変あるいは大なる損害を受けた場合には、その損害が解消するまでは、減税方法をとることができるというような條項があるのでございますが、引揚者たち、ことに海外に長い年月おられた人で、全財産を失つてつて来た人たちには、このシヤウプ勧告案に基いて、何とか減税方法はお考えになつていらつしやいませんでしようか、ある会計士が最低十七万円なければ、裸一貫で帰つて来た者が立ち上れないという計算を、私のところに出して来ているのでございますが、せめて十七万円に税金が減らされて行く方法をお考えいただいていないものでございましようか。このシヤウプ勧告案のこの点についての御研究はできておるのでございましようか、お尋ねいたしたいと思います。
  19. 倭島英二

    ○倭島政府委員 引揚げて来られた方々に対する減税とか、免税等の問題の御希望のある点等はこれまで承知しておりますし、また直接責任大蔵当局の方にもその見解は伝わつていると思いますが、現在までのところ、その関係につきまして、具体的な措置を決定せられたようなことをまだ承つておりません。
  20. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それではただいまの日程第一より日程第三二までの各請願質疑を終了することにいたします。     —————————————
  21. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に日程第三三、外蒙ウランバトール在留邦人帰還促進に関する請願松谷天光光紹介文書表第三八六号より日程第三六、在外邦引揚促進並びに留守家族援護に関する請願中山マサ紹介文書表第一〇〇八号までを一括して議題といたします。紹介議員説明を求めます。中山マサ君。
  22. 中山マサ

    中山委員 茨城県庁内茨城会議長島津三郎氏外八名の請願書でございますが、これは今まで出ましたいろいろの請願書とほとんど同じような径路をたどつておりますので、ここに読み上げますことを省略いたしますが、ポツダム宣言を受諾して、それをできるだけ遵守して来た国民として、何とか連合国におきましても、この線に沿うて早く帰してもらいたいということがここにるる主張してあるのでございます。どうかこの外務委員会におきましても、この請願書にございます趣旨をおくみとりくださいまして、海外におる同胞が一日も早く帰つて来ることができますように、御援助が願いたいのでございます。また最後にその留守家族援護について、格別の御高配を仰ぎたいということが書いてございますが、ただいまのところ留守家族、特に私がこの間ある会合が聞かされましたのは、年をとつた母親がその妻及びその子供には援護方法があるけれども、その親に対しては何らの処置がないということをかきくどいておりましたのでございます。民主主義時代になりまして、その妻、その子供ということが重点になつているようでございますが、何とかして親にも御援助の手を伸べていただきたいと思いますが、この点に関してどういうふうな御処置がおありになりますか、承りたいと思います。
  23. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これにつきまして、政府側意見を伺います。
  24. 川村松助

    川村政府委員 未帰還者引揚げ促進につきましては、ただいまお話の通り従来再三の請願を承つている次第でございます。その御趣旨に対しましては、政府といたしましても全然同感でありまして、従来もずいぶん努力いたしておりますが、今後とも一層早くお一人でも多く帰られるように努力いたしたいと存じております。なお留守家族に対しましては、援護庁において相当努力いたしておりますが、さらにただいまお話のようなことを考慮いたしまして、この先一層の御同情申し上げる処置を具体的に取上げたい、こう考えております。
  25. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御質疑はありませんか、御質疑がなければただちに採決いたします。  ただいまの日程第三三より日程第三六までの各請願は、内閣に送付すべきものとして、これを採択するに御異議ありませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議なしと認め、さように決します。なお委員会報告書については、委員長に御一任を願います。     —————————————
  27. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次は陳情書審査に入ります。陳情書日程第一より第七まではともに在外胞引揚げ促進に関する陳情でありまして、ただいま審査いたしました請願とも同趣旨でございますので、これは審査を省略いたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議がないようでありますから、さよう決定いたします。     —————————————
  29. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に陳情書日程第八、外地戰犯服役者内地服役許可に関する陳情書文書表番号第四二四号を議題といたします。これは便宜上專門員より朗読いたさせます。     〔專門員朗読〕   香川県議会留守家族五百四十三名の連名による別紙陳情書を受理し、愼重審査の結果これを採択したから、願意御高察の上よろしくおとりはからい願いたい。   太平洋戰争が終末を告げましてより早くも満四箇年を経過しました。この間戰勝各国の御理解のもとに、幾百万の同胞内地引揚げられ、中国戰犯者も本年二月内地服役許可され羨望の的となつています。   ソ連地域抑留者も今年内に輸送を終るように仄聞していますが、私ども肉親は他の軍人軍属方々と同様に召されたのでありますが、国際法違反として、五年、十年、二十年、終身刑或は死刑等の重罪を受け、赤道直下で畫は重労働に服し、何ら宗教的修養機会もなく、肉親に対する通信連絡も意のごとくならず、心身ともに消耗し、疲労の回復を得ようとしても、食餌も十分になく、夜は鉄窓のうちにコンクリートの寢台に身を横たえ、熟睡もできず、遠く故国に思いをはせて、さびしくまぶたを曇らせていることと思われます。   この重刑も必ずや自己の意思に基いたものとは思われません、戰闘行為により、あるいは軍命令により、あるいは部下の責任を負いたる者が大部分であると信じます。私どもは国の犠牲として今日まで耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んでいましたが、一般人よりは戰犯者家族として白眼視され、現在のこんとんたる世相下、精神的にも物質的にもその苦痛は、筆舌に表わすことができないようになりました。   内地帰還者の話を承りますと、戰犯者は一日も早く内地服役を熱望しているとの状況を聞き、もし内地服役が許されるならば、通信も自由となり、月一度の面会も許されるやも知れず、かようになりますと、老い先短かい老父母とも生前に手を握り合う機会もありますので、留守家族苦脳も幾分薄らぎ得るものと念願しております。   また私どもの間には昔からその罪を憎んでその人を憎まずということわざがありますが、関係戰犯者はいずれもすでに相当長期にわたつて服罪しておるので、特に犯行の動機等についても再考を煩わし、この際減刑の恩典に浴し得られますならば、ただに本人ばかりでなく、関係留守家族喜びはいかばかりかと存ずるのであります、またこの喜びこそ世界平和への真に力強い第一歩を踏み出す基となるであろうことを確信するのであります。   何とぞ香川会議員各位の深き御理解と御同情をもつて政府機関を通じ、関係各国代表者に対し、内地服役の実現に、減刑に、とうとい御盡力をお添えくださいますならば、私ども留守家族の感謝この上もない次第でございます。   右留守家族一同連署をもつて陳情いたします。
  30. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これについて政府側に御意見がありますれば、伺います。
  31. 川村松助

    川村政府委員 本件に関しましては、従来から政府といたしましても、可能な限りの処置をとつてつております。外地戰犯者及びその家族の御希望は十二分に伝えてありますから、当該関係国の好意あるおとりはからいを期待いたしているような次第であります。
  32. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御質疑はありませんか。——これについては本委員会において了承することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  34. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に陳情日程第九より第一一までの在外財産補償に関する陳情でありますが、これは先ほど審査いたしました請願と同趣旨でございますので、審査を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議がなければさよう決定いたします。     —————————————
  36. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは次に国際情勢等に関する件を議題といたします。質疑は通告順をもつてとりはからいます。菊池義郎君。
  37. 菊池義郎

    ○菊池委員 台湾の民族独立自決運動が今日盛んに行われておりまして、これは英米に呼びかけているばかりでなく、日本にもこの運動の首脳者が入り込んで参りまして、働きかけているようなわけなのであります。彼らは中共にも反対であり、国民政府にも反対である。それで蒋介石が台湾に入らない前には、人民投票によつてこの台湾の領土権の帰属を決定したいという主張を持つておつた。けれども蒋介石が台湾を押えてしまつたのでこれができなくて、今日では国連の信託統治にしてもらいたいというので、有力なる国家に働きかけているのであります。日本政府といたしましてこういう運動に容喙することはできないのでありますが、もしこの運動に対して協力ができないといたしますならば、日本の民間人のこれに対する協力に対しまして、政府はどういう態度をとられるか、これを黙認するか、助長するか、あるいはとめるか、この三者のうちのどれであるか、お答え願いたいと思います。
  38. 川村松助

    川村政府委員 御質問のような情報は全然聞いておりません。またそれが事実といたしましても、日本といたしましては、これに対しまして關與する限りでないと考えております。
  39. 菊池義郎

    ○菊池委員 蒋介石の台湾入りと同時に、台湾におりました日系の人の二世、三世が、二十万人ないし三十万人日本に送りつけられておるということを聞いておりますが、こういう事実がありますかどうか伺いたい。
  40. 川村松助

    川村政府委員 ただいま御発言のようなことも、何ら情報が入つておりませんので、何とも御返事申し上げかねるわけであります。
  41. 菊池義郎

    ○菊池委員 二十万、三十万という数字はたいへんな数字でありますが、たといその半分にしても、十分の一にしても入つて来た以上は、政府としてはわからなければならぬと思うのでありますが、これは独立運動をやつておる連中の口からわれわれはじかに聞いたことなのであります。これについてどうかよく御調査を願いたいと思います。  それからイタリアは戰後において移民のためにはなばなしい活躍をいたしております。政府みずから積極的に乘り出して各国に呼びかけて、三十万、四十万と南米方面その他に出す計画を立てており、これまでも十数万出しておるのであります。日本はまだどこの国にも呼びかけていないようでありますが、この移民のことについて、お伺いを立てるということは、決してこれはポツダム宣言に違反することでもなし、何の協定に違反することでもないのでありまして、要するに向うがとるかとらないかを打診するのでありますから、何らこれは外交上支障を生ずるようなことでもないと思うのであります。いつかも申し上げましたように、インドネシア共和国のスカルノのごときは、日本人が国籍を脱して来れば、二千万受ける用意があると言つておるくらいでありまして、日本の方から水を向ければ、必ず向うはこれにこたえて来ると思うのでありますが、どうも政府の怠慢のようであります。これまでに大量移民についての手を打たれたことがありますかどうか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  42. 川村松助

    川村政府委員 国民感情といたしましては、ごもつともだと存じますけれども、すでにたびたび申し上げましたように、移民の問題は国際的にも非常に微妙な問題があります。また相手の国があることでありますので、講和條約前に御質問のようなことを実際問題として実現することは、なかなか困難な状態にあります。ただこの問題につきましては、政府におきましても、いろいろの方面から研究をいたしておりまして、一日も早く御要望なさるような大量の移民を実現いたしたい、こう考えております。
  43. 菊池義郎

    ○菊池委員 これは決して外国の反感をそそるようなことでもありませんし、もう軍備がとられてまる腰になつておる今日でありますから、こういうことでもつて日本の侵略主義云々といつたような、昔の印象を世界に與えるようなことも絶対にないと思うのであります。講和会議が始まらない前においても、こういうことこそ十二分にわれわれは手を盡して努力をせんければならぬことであると思うのでありますが、御意見はいかがでありますか。
  44. 川村松助

    川村政府委員 移民の問題につきましては、人口問題との関連におきまして、非常に重要な問題であります。しかし現在の客観情勢におきましては、講和條約の締結前に、多数の人々が集団的に海外に移住するということはなかなか実際困難であります。最近におきまして、海外の渡航はあるいは技術者、あるいは学術、文化等の目的のためには制限が緩和されまして、その渡航者は多少実はふえております。政府といたしましても、移民の問題は非常に重要視いたしておりますので、今後ともいろいろの点からその実現を急いでおるような次第であります。  第一に、まずわが国の国際信用を高めなければならない。わが国がほんとうに平和の民主国家であるということを認識してもらうことが、先決問題であると考えておるのであります。  第二には、今後の移民はでき得る限り優秀な人が海外に出まして、そうして日本の文化、経済等でその国に十二分に寄與するような実績、実力がなければならないというような観点も考えておる次第であります。わが国の移民の必要性を各国に認めてもらうという理由からも、そうしたことに努力いたしております。  要するに現在の状況におきましては、委員が御希望なさるようにはただちに実現しがたい情勢にありますので、でき得る限り努力いたしまして、逐次御期待に沿うような線に進めたい、こう考えております。
  45. 菊池義郎

    ○菊池委員 今日より日本人をどこに向けるべきか、日本人の移住地域としてどの辺が一番適当であるかということについても、十分に研究調査していただきたいと思うのであります。そのときになつてはだめでありますから、今日より準備調査研究が必要であろうと思うのであります。  それからこれは小さな話でありますが、昨年の暮あたり総理のところへタイのピブンから技術者をたくさん送つてくれという注文が来たということを聞きましたが、それはどういうのでございましようか。もし聞いておられるのであつたら伺いたい。
  46. 倭島英二

    ○倭島政府委員 技術者の関係ではすでに各国から要求が参つております。今ここへ資料を持つて参りませんでしたが、タイの関係も二、三あつたと思います。しかしながら今お話のような大量ということではございません。家内工業的なものの技術者をよこしてくれということであつたろうと思います。数は私の今覚えておるのでは二、三人であつたと思います。むしろ最近大量によこしてもらいたいということで注文がありますのは、インド及びパキスタンでございます。これには近く相当向うの積極的な要求がありますから、出れるようになるのではないかと思つております。
  47. 菊池義郎

    ○菊池委員 いつもよく言うのですが、インドネシアの大統領スカルノやハツタらは日本の移民を非常に歓迎しておる。ここへ呼びかけてみられてはいかがかと思うのであります。それに対する御意見を伺います。
  48. 川村松助

    川村政府委員 研究してみます。
  49. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 菊池委員はどうもこの委員会でしばしば台湾問題についてはなはだ不穏当なる言明をなされるのですが、まことに重大なことだと思うのです。先ほどの質問の中で見のがしのならないことをまた言つておるが、あれは政府も同意見でありますか。
  50. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私どもは台湾の帰属は、将来の平和会議日本に関する限りにおいて確定されるものだと了解しております。御承知の通り、台湾は現在日本の行政管理の外に置かれておることは事実でございます。
  51. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 今度の平和條約についてはすでにいろいろな事実が現われておりまして、平和條約前にも帰属が決定しておるという事実はヨーロツパの場合にもある。それから南樺太や千島の場合にも行われておるし、カイロ宣言に基いて、中国の台湾に対する領土権というものを特にはつきり主張しておりまして、これはもう現実にそういうことになつておるのです。カイロ宣言を尊重しなければならない立場にある日本が、講和條約までは云々という建前をとることが、菊池委員のような発言を促すことになるのでありますから、もう少しはつきりとした態度をとる必要があるのではないか。われわれがほんとうに正しい講和を望むならば、カイロ宣言をあくまで尊重して行くというはつきりした態度が鮮明されなければならぬ。もう少しはつきりした御回答をお願いしたい。
  52. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 先刻私が答弁いたしました事柄と同時に、政府といたしましては、将来における日本の領土がポツダム宣言及び降伏文書によりまして、四つの島とその周囲の、連合国において決定すべき諸小島に限られるということは完全に了承いたしておるわけであります。そういうふうな関係にありますが、そういう関係日本に対して、法律的には平和條約において確立されるものと思いまして、こういうような立場をとつておるという趣旨でございます。
  53. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 外務省のそういうふうな態度は、問題が起つていない際ならばそれで通るかもしれません。しかしながら、それに関連して菊池委員のような発言が行われている際には、それは非常にあいまいな態度だと私は思います。そういう態度で行くならば、非常に重大な問題になつて来ると思うのですが、この点についての質問は留保します。  もう一つお聞きしたいのは、台湾人の間に台湾の民族自決運動が起ろうと起るまいと、これはわれわれの関與するところではございません。しかしポツダム宣言を受諾して無條件降伏した日本国民が、台湾における民族自決運動、つまり中国の主権からも脱すというような運動に協力する、こういうことが一体ポツダム宣言下における日本国民としてなし得ることであるかどうか、これをひとつはつきりお伺いしたい。
  54. 菊池義郎

    ○菊池委員 聽濤君のように、今日の中共に台湾を與える、それは法理的に不可能である。われわれがいくらカイロ宣言、ポツダム宣言を忠実に履行して台湾を返還しようとしても、今日カイロ宣言を発した片方のアメリカが国民政府を支持しておりますので、共同宣言の前には、たとい英国が中共国家を認めて台湾を中共に與えよと主張いたしましても、その主張はとうてい通らないし、また法理的に考えてこれはできないことだ。通らないことだ。それで台湾の帰属が今日宙に迷つていると考えているのであります。この台湾の帰趨は、講和條約によつて初めてきまるわけでありますから、それを言つているのであります。カイロ宣言によつては、台湾は今日どこへもやることはできない、私は法理上かように解釈をいたしておるのであります。
  55. 島津久大

    島津政府委員 ただいま問題になりました台湾の独立運動でございますが、そういうような運動は、連合国内部の問題でございまして、日本政府が関與すべき性質の問題ではないと考えます。また個人がそれに関係いたしますことも、対外関係に影響を及ぼすようなものであれば、穏当ではないと考えます。
  56. 並木芳雄

    並木委員 日本国際会議に参加を許されることになりましたが、近く開かれるものと予定されておる会議にはどういうものがありますか。また本年末ぐらいまでにおもな会議はどういうようなものが開かれて、それに許可をされる見込みであるか、それをお尋ねいたします。
  57. 島津久大

    島津政府委員 国際会議はたくさんございますので、どの会議に参加できるかという見当をつけるのは、ただいまのところ非常にむずかしいのであります。大体ただいま予想しておりますのは国際電気通信連合関係会議国際労働機関の総会、それから国際食糧農業機関会議、そういうものに参加することになりはしないかと考えております。
  58. 並木芳雄

    並木委員 こういうものに参加する費用はどういうふうになつておりますか。それからまた近くシヤトルにも代表部ができるということですが、その点に対する情報と、こういう方面に派遣する人に要する費用はどういう勘定から出て来るか。普通の予算からは出ておらないと思うのですけれども、どうなつておりますか、その点をお伺いします。
  59. 島津久大

    島津政府委員 本年中の国際会議参加のための経費としましては、本年の外貨予算一月から三月分としまして、一万六千ドル計上されております。四月以降の分については目下経済安定本部を中心にしまして検討中でございます。なお在外事務所関係の経費、これも予備費の中から出すことになつております。
  60. 並木芳雄

    並木委員 與謝野調査局長に少しお尋ねしたいと思います。それは英国の選挙において労働党が勝利を占めたことに関連して、私たちがぜひ知つておきたい点であります。局長ラジオの「時の動き」または新聞等において、かなり参考になる意見を発表された点を私たちは読んでおるので、私の質問もそれを追究するとかなんとかの問題ではなくて、さらにもう少し掘り下げて詳しくお伺いしたいということから出発しております。  そこでまず第一にお伺いしたいのは、局長がこういうふうなことを言われておる、その点についてであります。五年前ポツダム宣言を発したときには、英国は平和のチヤンピオンとして、米ソの間を取持つて行こうという考えであつた。ところが今日ではそれを許さないという点であります。これは私お伺いしたいのは、どういうわけで許さないようになつて来たか。そういう点に対する與謝野さんのお考えをお聞きします。
  61. 與謝野秀

    與謝野政府委員 ただいまの御質問は私の座談会の記事の中に、ミス・プリントがありますために、そういう誤解をお起しになつたのかと思いますが、大西洋同盟と言うべきところが太平洋同盟とあつたので、何のことかわからなくなつた。ポツダム会議がありまして、終戰となりましたころ、つまり労働党内閣が新たにできましたころのヨーロツパの情勢というものは、今日のような冷たい戰争というふうな対立の状況ではなかつた。それが過去四年間の国際情勢の変化によつて、遂にイギリスも北大西洋同盟の一員として加わるようになつて来た。そういう意味で五年前とは大分立場が違つて来ておるという事実の問題を、そういうふうに申し上げたのであります。
  62. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、その次にありました太平洋同盟をつくることに全力をつぎ込んでおるわけである。というのは太平洋同盟ではなくて、大西洋同盟の誤りであるということがわかりました。しかしそれだからといつて戰争必至とは考えられない。一方において太平洋同盟ということが起つておるが、これはヨーロツパにおける大西洋條約のような、武力によつて防ぐところまでは行かないというふうに意見を発表せられておるのですが、この点から太平洋同盟というものをあげられておられますか。どんなふうな構想を描きつつ局長はこの太平洋同盟ということをあげられたか。その点について詳しくお聞きしたいと思います。
  63. 與謝野秀

    與謝野政府委員 実は昨年の七月十日にフイリピンのキリノ氏と蒋介石氏との会談以来、反共的の性質を有する太平洋同盟をつくるという動きがありましたことは御承知の通りであります。しかしながらその後の動きはどちらかというと、北大西洋同盟に似たような、同じ種類のような太平洋同盟というものは、関係国もあまり好まないということで、その後公には何ら叫ばれずに今日まで及んでおるのでありまして、イギリスといたしましても、東南アジアにおける共産主義の防渇ということには異議がないようでありますが、これを同盟の形まで発展せしめて行くということについては、まだ関係国である濠州であるとか、インドなどはこういうものをつくつて参加するということは表明しておらない点からも、太平洋同盟というものは、常に新聞などでうわさになつておる程度のもの、こう考えておるのであります。また今年の一月のコロンボ会議で、参加国は経済的援助をアメリカに要請するということに意見が一致したようでありますが、同時に今度はアメリカ側から見ますならば、アメリカとしてもアジアの諸地域の間に、自発的に経済的協力というような態勢ができたならば、これに経済的の援助を與えて行こうということを、二月二十三日のアチソン長官の上院下院合同委員会における演説でも言つておるようであります。つまり世間で言うような太平洋同盟というものはできないけれども、経済的に協力するような機構ができたならば、これに対してアメリカも援助は與えるだろう。しかしこれは武力同盟である北大西洋同盟というものとは性質がまつたく異なつたものである。こういう観測を述べたわけであります。
  64. 並木芳雄

    並木委員 そうしますと大体の見通しとしては、武力同盟とか防衛同盟というところまでは行かないであろう、というふうに承知してよろしゆうございますか。
  65. 與謝野秀

    與謝野政府委員 私はそう考えております。
  66. 並木芳雄

    並木委員 次にこういうようなことについてです。従つてアメリカ今後の極東政策は、後進国復興とかアジア・マーシヤル・プラン的な政策で、国々の反共政策を助けて行く方針をとると思う。この点ですが、アジア・マーシヤル・プラン的であると局長があげられた。それについては何か内容について調査された点があるのか。あるいはまた今後の構想などについて所見を有せられるのかどうか。ありましたならば参考までにお伺いしたいと思います。
  67. 與謝野秀

    與謝野政府委員 アジア・マーシヤル・プラン的と申しましたのは、つまり経済復興なり経済の振興にアメリカの援助を受けるという意味で、アジア・マーシヤル・プラン的という言葉を使い、また世間もよくこの言葉を使うのでありますが、たまたまそういう言葉を使うことが誤解を起すということを、アチソン長官は二十三日の演説で言つておられるわけであります。つまりアメリカはマーシヤル・プラン同様の経済援助を東南アジア地域に與える意向はない。もし極東諸国がアジア協力機構というべきものを自発的に組織すれば、これを支持する。こういうことを議会で最近述べておるのでありますが、それより前にすでに今年の一月ナシヨナル・プレス・クラブでアチソン長官が極東政策について演説をされました。この中からもそういうことがうかがえるのでありまして、ヨーロツパに対する経済復興援助というような大仕掛の援助は、アジアに対しては與えられないということが大体はつきりしておると考えているのであります。またトルーマン大統領も、予算教書その他でアジアの後進国復興計画ということを言つているのでありますが、これもヨーロツパに対する経済援助と大分方式のかわつたものとなつて来るし、またその額などもそれほど大きくない。むしろ将来の民間投資を助長するという機運にあるように、私どもはいろいろな点を検討して考えておるのであります。
  68. 並木芳雄

    並木委員 それでは次に国防省と国務省で意見の相違があつて、占領を続けていた方がやりよいというので延びたのではないかと思う講和條約のことですが、この点やりよいということがありますので、私たちとしてはどういうわけで延びた方がやりよいのかという点について、局長のお考えをお聞きしたいと思います。
  69. 與謝野秀

    與謝野政府委員 昨年の九月、アメリカとイギリスの首脳部が会談して、対日講和問題というものが急に取上げられまして以来、講和問題は非常に新聞をにぎわしたのでありますが、各国の当局がこういう経過になつておるということを公表したことはないのであります。そこで私どもの判断の資料としては、アメリカの雑誌、新聞等に、おそらくこれは国務省筋から出ておるのではないかというようなニユースがありますときに、これをいろいろ検討しておつたのでありますが、たまたま二、三週間前のニユース・ウイーク誌に、アメリカの参謀総長一行が日本から帰つた後に、アメリカにおいて講和條約の問題について、国務省側と国防省側と意見の不一致があつたような記事が出ております。ごらんになつたと思いますが、その記事の中にもこういう国際情勢に応じては、講和條約を急につくることよりも、つまり全面講和というものがただちにできる場合ならいざ知らず、單独講和といつていろいろなむりをするよりも、しばらくこのままでいる方が、万事に好都合だというようなことを考えているのではないかと、うかがわせる記事が載つておつたので、そういうことがあるのではないかということを申したわけであります。
  70. 並木芳雄

    並木委員 その根拠として、何か一、二の例というものは考えられませんか。そういう抽象的なやりいいという意味でなく、局長がやりいいという表現をされる以上、たとえばこういうことでやりいいのだという点で御説明が願えればけつこうだと思うのですが、いかがでしようか。
  71. 與謝野秀

    與謝野政府委員 これは私の個人の考えで、どういう事態が起るか仮定の問題なのでありますが、かりに單独の講和條約ができた場合には、やはり戰争状態は終止し、占領管理の状態というものが終止する。つまり占領管理の状態にあつた方が、いろいろな点でやりやすいということも場合によつてあるだろう、そういうことを漠然と申したわけであります。
  72. 並木芳雄

    並木委員 それから中ソ條約によつて、全面講和という問題は事実上もうなくなつてしまつたと思われるという点でありますが、これはなぜでしようか。ソ連の方は最近早期講和ということを盛んに言われておるようでありますけれども調査局長として調査された見地に立つて、全面講和という問題は一切事実上なくなつてしまつたのですかどうですか。そういう点に対する見解を披瀝していただきたいと思います。
  73. 與謝野秀

    與謝野政府委員 新聞の座談会の記事でありますから、前後の発言その他はいろいろ削除されております。そういう取上げられている点だけをつかれますが、私としてはただ個人の考えをそこで述べただけでございます。  実は中ソ條約というものを一見しますならば、この中ソ條約ができたから全面講和というものが非常にむずかしいという印象を持つのではなくて、むずかしい客観情勢を文字の上で表わしたものが、こういうものではないかという印象を私は持つたのであります。第一に、他の連合国とともに條約締結のために推進するという約束を、効力三十年間の條文の中にうたわなくてはならぬということ自体が、全面講和というものは、なかなかむずかしい情勢だということを端的に表わしていると考えるのであります。また同時に、條約第一條におきましては、中ソ両国は国際的活動に協力するということをかたく約束しているのでありますが、この国際的活動というものと対日講和條約というものとの関連を考えます場合に、おそらく他の連合国が考えております講和條約の内容というものと、中ソ両国が考えている講和條約の内容というものに、相当の食い違いがあるのではないかという印象も持つたのであります。また旅順、大連及び長春鉄道返還ということにつきましても、対日講和條約ができたあかつき、ないしは一九五二年末までにできない可能性というものをすでに考えているということも、印象としてはそういう印象を受けるのでありまして、これは何も当事国が條約を締結した意図はどこにあるということを申し上げるのではなく、私どもがああいう文章を見ましたときに、講和條約というものは遠のいたという印象をみんなが持つのではないかということを私が述べたのであります。
  74. 並木芳雄

    並木委員 調査局長に最後にお伺いしますが、そうすると中ソ條約その他のいろいろの観点に立つてごらんになるときに、アメリカの中共承認という点は、中ソ條約ができる前と今日との問、それからまた英国における選挙の以前と選挙が終つての今日との間に、いくらか変化を来しておると思われますか。たとえば好転しているか、あるいはその望みが薄くなつているか、今まで通りの持合いであるかというような点に対するお考えを伺いたいと思います。
  75. 與謝野秀

    與謝野政府委員 私は中ソ條約の結果、アメリカの中共承認が遅れたとか早まつたということはないと考えております。実は今年の一月のトルーマン大統領の演説、また昨年来アメリカの新聞雑誌が伝えておりました中共承認の空気というものからうかがいまして、あるいはアメリカも中共承認ということを考慮しているのではないかという印象を持つておつたのでありますが、たまたま北京における総領事官接收問題その他から非常にアメリカの感情が惡化して、その状態が続いているのであつて、中ソ條約というものでこれがどうかわつたという印象は持つておりません。
  76. 並木芳雄

    並木委員 通産省の方がお見えでありますから一点お伺いしたいのですが、進駐軍の方から放出されました物資についてでございます。昨日でしたか、相当大量のキヤンデーとか、せつけんとか、あるいは電気冷蔵庫とか、進駐軍の方々が使つた物をいろいろ放出されて、その金額も二百六十万ドル、九億円という巨額に上つておるのを拜見したわけです。私たちはもちろん物資がないときに、無料または安く拂い下げていただくものならば、こういうものに対して当然感謝もしなければならないと思うのですが、現存そういうものの拂下げの価格とか、拂い下げてそれをさばく方法とかはどういうふうになつておりますか。どういう勘定でやつているか。またそういう拂下げのものがあつたときに、九億だと相当なものですから、たとえば国内の市場を圧迫するというようなことがある場合には、御好意はありがたいけれども、お断りするというようなことがあるのかどうか。そういうことについて、私たちよく存じませんので、この機会にそれを明らかにしていただきたいと思います。
  77. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 最近新聞に出ました八軍の放出物資の件に関する御質問でございますが、金額はただいまおつしやいました通り二百六十万ドルであります。その内容は化粧品、電気冷蔵庫、キヤンデー、その他カン詰類などほとんどあらゆる物資にわたつております。円で買わないかという話がありましたので、日本側の商社に初め見させたのでありますが、全部はほしくないという話でありましたので、八軍の方で通産省の了解を得て自分で買手を見つけたのですが、その買手がたくさんありましたので、ビツドいたしたわけであります。その結果全部を引受けるという條件のもとに商社がビツドに参加いたしまして、結局外人商社のロジヤース・ウイリアムスというのがこれを落しまして、それに十九万一千ドルの物品税を賦課しまして、つまり二百六十万ドルと十九万一千ドルの物品税を賦課して、今の外人商社に落したわけであります。それは円で支拂うということになつておりますので、今の額に三百六十をかけましたもので取引が行われるということになります。  それからそういう大量の物が出ることによつて日本の業者を圧迫することなきやいなやというお尋ねでございますが、これは物品があらゆる方面にわたつておりますし、また需要も相当旺盛であるということは、ビツドに参加した者、それから現に落札いたしました外人商社に対しまして、その下請をやらしてくれという者が非常に多いということによつても考えられるのであります。従いまして、そういう放出物資によりまして、日本の業界が大なる圧迫をこうむるということはないものと存じております。
  78. 並木芳雄

    並木委員 通産省が募集したときには、あまりその買手がなかつたので、八軍の方で直接やられたら買手があつたというふうに聞いたのですが、さようでございますか。
  79. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 初め申出がありましたときに、実はそういうものを取扱うということに対しては、百貨店がいいのではあるまいかということで、百貨店協会の方をして、物資の一部分の検分をさしたのでありますが、そのときには、全部はとても引受けきれまいという話であつたので、全部の引受は困るということで、やめになつたのでありますが、その後八軍の方でやつた場合には全部の引受人が相当出た、こういうことであります。
  80. 並木芳雄

    並木委員 そうすると通産省の方としては、つまり日本政府としては、これに対して金の出入れということは全然ノー・タツチになつているわけですか。
  81. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 八軍は直接業者に対し取引はできないということになつております関係上、放出物資は一応通産省が買いまして、それをあらためてその引受人に売るという形式をとるのでありますけれども、通り抜け勘定を通産省の特別会計がやるということだけに終りまして、実際上の取引は、バンク・オブ・アメリカにアカウントを設けまして、それで一々記帳いたしまして、そこで全部済んだときに、通産省の方の貿易特別会計を通り抜けるという形式をとつておるのであります。
  82. 並木芳雄

    並木委員 品物を検討されたと思いますが、大体アメリカで売られている価格、あるいは原価を円に今のレートで換算して考えますときに、円で売れる価格というものは、妥当な線ですか、それとも安いですか、あるいは非常に高いか、概してどういうふうな状態になつておりますか。
  83. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 私そういう物品を実は一ぺんも見ておりませんので、第一回目のときにおきましては全部業者をして検分いたさせましたが、ビツドのときには、直接関係ございませんので、品物を見ておりませんから、ただいまの御質問に対して、直接的なるお答えをいたしかねるのでありますけれども、聞いておりますところでは、品物はきわめて上等であり、日本の同種のものに比べては、少し格安くらいのものになるのじやないかというふうなことでございます。
  84. 並木芳雄

    並木委員 まだ私ほかの方に質問がありますけれども、来ておりませんから、これで私の質問は一応打切ります。
  85. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私大体四つの点で外務当局にお尋ね申し上げたいと思います。  第一は今日の新聞紙を見ますと、中ソが対日講和を提案するであろうということが、大新聞にみな出ております。そこで現在單独講和の問題が問題になつておるようでございますが、この新聞の報道が、事実になつて現われた場合に、中ソが日本に講和を持ちかけて来た場合、これを日本は受諾しなければならないのでございましようか、その点についてお尋ね申し上げます。
  86. 島津久大

    島津政府委員 中ソ條約によりましても、中ソ両国は他の連合国と一緒に対日講和をやるという趣旨が書いてあるのであります。中ソ條約の條文上からも、ただいまのお説のような單独の講和は実際上あり得ないのではないかと考えております。
  87. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それによると何だかそういうことがあり得るかのごとき印象を與えておるようでございますが、もし万一そういうことがありましたら、どういうことになりましようか。
  88. 島津久大

    島津政府委員 これは仮定の問題でありまして、お答えいたしかねるのであります。しかしいずれにしましても、講和の問題が現実の問題になつて参ります場合には、連合国最高司令官を通じないで、日本政府に交渉があるということは、考えられないと思います。
  89. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それではそのくらいにいたしておきます。  次にこれは前の外務委員会で菊池委員が外相にお尋ねしたことがあると思います。ところが時の外相の御答弁はかなり抽象的であつたので、もう一度これをお尋ねしたいのでありますけれども、現在日本の軍事基地化ということが、大体進捗しておると考えられますが、アメリカが日本に軍事基地を今求めつつあるというような状況に照して、これも仮定の問題であるかもしれませんけれども、ソ連側はそういうことがないといつておるようでありますが、もしソ連側から日本に対して、軍事基地を要求して来た場合にはどうなりましようか。これは外相の答弁が抽象的でありましたので、重ねて外務当局の御所見を伺いたいと思います。
  90. 島津久大

    島津政府委員 軍事基地問題はたびたび御質問もございましたし、総理からもお答えをしておるのでございまして、それ以上に事務当局の方からつけ加えることはないと考えるのでございます。  念のために繰返して申し上げますが、この軍事基地問題に関しまする政府の立場と申しますか、見解の第一点は軍事基地の問題につきましては、まだどの筋からも交渉を受けていないということでありまして、もし交渉があつたならば、そのときに考えるべき問題であつて、仮定の問題に御答弁する限りではないと思います。  第二点は連合国最高司令官は、占領のため必要と認める各般の施設をなすことができるわけであります。日本政府は最高司令官の命令がございましたときには、忠実にこれを実行しなければならない筋合いのものであります。要約しまして以上の二点がこの問題に関しまするお答えと考えます。  なおソ連から要求があつた場合はどうだという御質問でございますが、まつたく初耳でございまして、また御想像に基く御質問かと考えるのでございます。この際答弁は差控えさしていただきたいと思います。
  91. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それでは第三問に移りますが、現在これもあるいは仮定かもしれませんが、この間の外務委員会並木委員の質問に対する御答弁で大体わかつたのでありますが、実は私の選挙区にほとんど毎日のようにこの点はどうかといつて質問して来る人がたくさんありますので、もう一度ひとつ確答をお願いいたします。それは現在沖繩に軍事基地の建設が進行中である。そのために日本の労働者がある條件のもとに雇用されるために渡航しておる。これについてはそういうことはないというようなお答えのようですが、現実に私のところに来る人たちがあるので、私どもも行きたい、渡航して大いに働きたいということを言つて来ているのですけれども、そういうことが事実あるかないか、ひとつ確答していただきたい。
  92. 島津久大

    島津政府委員 御質問のような趣旨の記事が新聞に報道されましたことは、もちろん承知はいたしておりますけれども、具体的には政府としては何ら承知をいたしておりません。
  93. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それでは実際そういうことはできないというぐあいに解釈してよろしゆうございますか。
  94. 島津久大

    島津政府委員 具体的な問題になつていないという意味でお答えをしたのでございまして、将来どういうようなことになりますか、この点もわからないのであります。
  95. 竹尾弌

    ○竹尾委員 その人たちの話によると、現実に渡航しておるというのです。ところが今のお答えではそういうことはない、こういうお話ですが、しつこいようですが、そういう場合に実際にこういうことはできないと返答してやつてよろしゆうございましようか。現実の問題で私は外務省に行つてよく調べて来るからということで言つたのですが、実際そういうことはない、こういうふうにとつていいのでございましようか。
  96. 島津久大

    島津政府委員 今そういう話がないというようにお答えになつたらいかがかと思います。
  97. 竹尾弌

    ○竹尾委員 今現実にないということなんですね。
  98. 島津久大

    島津政府委員 その通りであります。
  99. 竹尾弌

    ○竹尾委員 最後にもう一問ですが、これは通産省あるいは安本の関係の方にお尋ねいたしますが、ここにおられる仲内委員が一度お尋ねしたと思いますけれども、それは中共の貿易に関することで、まだそのときは中華人民共和国が、成立していない前のことでしたが、現在中共政権が成立して、現実に活発な動きを見せておるときに、中共としましてはソビエト連邦以外の諸国とどうしても貿易をしなくちやならない、むしろ貿易を望んでおるのは中共政権であるというぐあいに解釈されると思いますが、そのときにおそらく中共から日本に対して何らかの條件、何らかの形によつて貿易関係締結をして来ないとは限らぬと思います。そういうときに対して通商関係の当局はどういうお考えを持つておられましようか。
  100. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 ただいまのところ中共地区との通商関係というものはまことに少いのでありまして、申込みはたくさんございましても、それが実際に実現するということが、非常に困難な状態になつておるのであります。こういう状況におきまして、近い将来において貿易協定の締結方を言つて来るということは、現実の問題といたしましては、私はほとんどむずかしいのではないかと考えるのでございますが、もしこういう申込みがございました場合にこれをどうするかということは、これは通産省限りの問題ではございませんで、外務省の方とも非常な関係がございますので、もしそういう場合がございますならば、関係の各省ともよく連絡してきめなければならない問題だろうと考えるのであります。ただいまそれに対してどうするかということは、この場ではお答えできがたい問題であります。
  101. 竹尾弌

    ○竹尾委員 申込みはたくさんある。こういうお言葉でしたが、どういう形でどう申込まれたのですか。
  102. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 たとえば北支にある大豆とか、あるいは満洲にある大豆とか、こういうものを日本に持つて来て、日本の物を持つて行きたいというふうな商社の申込みを申したのであります。たとえば例を大豆にとりますと、去年の十一月中旬までに向うから約十五万トンに達する大豆を持つて来ようというオフアーと申しますか、商人の申し出はございましたけれども、それに対して実現いたしましたのは、たつた五千百トンというふうな状況でございまして、そういうことを申し上げたのであります。
  103. 竹尾弌

    ○竹尾委員 商社と申しますとどこの商社でございますか、オフアーがあつたという商社は……。
  104. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 大部分は香港を通ずる商売でありまして、香港にあります商社が大部分、そのほかにはアメリカ国籍のアメリカ人の商社もございます。そういうわけでありますが、大部分は香港を根拠とするところの外商であります。
  105. 竹尾弌

    ○竹尾委員 大体よろしゆうございます。
  106. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 先ほど並木委員から国際会議参加のことで簡單な質問がありましたが、私もこの点はもう少し詳しく質問してみたいと思います。  今度は今までとは少し様子がかわつて来たのではないかと私たちはしろうととして考えておりますが、今後あの中間指令によりましていろいろな会議に出て行く、協定に参加して行くという場合に、国際法上どういうふうな身分、資格で日本の代表が入つて行くのかということをまずお聞きしたい。
  107. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 正式の代表として会議に参加し、正式に国際協定に加入するわけであります。何ら特殊の地位に立ちません。
  108. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 私もう少し詳しく聞きたいのですが、大体今まではGHQの嘱託といいますか、あるいはオブザーバーというような形で出ておつて、私たちの了解するところでは、投票に参加するとか、調印をみずから行うというようなことはできなかつたのですが、今度はもちろんそういう点が違つて来るだろうと思いますが、どういうふうに違うか、そういう点を具体的にひとつお伺いしたいと思います。
  109. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それには聽濤委員の御理解を容易にしますために、この問題についての当初からの経緯を御説明申し上げますれば、従前と今回の中間指令が出た以後における日本国際会議、または国際協定への加入というものの様式との差違がおわかりになるかと思いますので、少し時間をちようだいしまして、御説明いたします。
  110. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 簡單に……。
  111. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御理解をいただくためには事実を明らかにする必要があると思うのです。終戰後わが国は外交機能を停止いたされました結果、自主的に国際会議とか国際協定に参加することができなくなつたのは御承知の通りであります。ところが四八年の一月にジユネーブで開かれました国際周波数会議に、総司令部の方におかれまして、総司令部の人をオブザーバーとして出席させ、それに逓信省の技官の長谷さんを技術顧問として同行させられたのであります。ところがこの事件につきまして、四八年の三月にパニユーシキン大使が極東委員会に対しまして、総司令官のとられた措置は極東委員会を無視するものである、こういう趣旨のことを主張されまして、これに反対する決議をするように提案されたのであります。このソ連代表の決議案は採決の結果、賛成がソ連一国だけでありまして、反対が米、英、蘭その他の国は棄権というとで成立いたしませんでした。それで同年の五月二十七日の極東委員会になりまして、米国代表から日本人を特定の国際会議に参加させるため海外渡航を許可しようという趣旨の提案がなされたのであります。そして六月九日の会議におきまして、極東委員会は適当な招請を受け、占領に有利と認められる政府会議には、総司令部係官がオブザーバーとして出席し、かつ総司令部が必要と認め、招請国が承認すれば、技術顧問として日本人を同伴することを承認する、こういう政策決定を行つたのであります。この決定にはソ連の代表は棄権いたしまして、他の十箇国の賛成を得て成立いたしております。この極東委員会の政策決定によりまして、爾後わが国は会議に、総司令部の係官がオブザーバーとして出られ、日本人はそれに付属する技術顧問という資格で会議に参加する、こういうふうになつたのでございます。  その後十二、三に近い会議にそういうふうな形式で、日本はずつと参加いたしております。ところが昨年の四月二十一日になりまして、アメリカ政府はさらに極東委員会に対しまして、日本が総司令部の管理のもとに、日本政府の代表者を国際会議に派遣し、また他国が日本国際協定を締結する用意のあるときは、これを締結し、またはこれを加入することを許可するようにという趣旨の提案をなしたのであります。そして五月七日にまたこの提案の趣旨、その理由について声明書を発表いたしております。このアメリカ政府の提案に対しまして、極東委員会は積極的な政策決定を行いませんでした。そこで八月になりまして、アメリカ政府は八月十八日にさらに声明書を発表いたしまして、さきに米国が提案いたしました勧告の趣旨を繰返しまして、極東委員会が積極的に決定を行うようにということを要請いたしたのであります。今その声明書を見ますと、アメリカ政府におきましては、次の諸点を強調いたしております。  第一の点は、日本が他国の権利を尊重するようになることは、連合国日本占領の基本目的の一つであるが、この目的の達成のためには、日本国際関係に復帰させることが必要であるということが第一点であります。  第二点は、この事実に基いて、アメリカは極東委員会に対して、最高司令官が日本国際関係への参加を、自己の判断で許可する権限を有することを承認する積極的措置をとるように提案したということを強調してございます。  第三に、記録によれば、従来極東委員会は、最高司令官がその権限を有することを否認したことはないということであります。  以上の諸点を声明書で強調いたしております。ところが、このアメリカ政府の八月十八日の声明が出ましたあとにおきましても、極東委員会日本代表の国際会議並びに日本政府国際協定参加につきまして、積極的な政策決定というものをなさなかつたのであります。  そういうふうにして、今回のアメリカ政府の中間指令となつた次第でございます。二月二十六日の総司令部の発表によりますと、中間指令の要旨は次の四点でございます。  第一点は、最高司令官は、日本が招請を受けた技術的性質の国際会議及び国際協定で、占領に役立つと最高司令官において考えるものに参加することを、最高司令官の認定と管理のもとに許可すべきである。  第二点は、日本代表に宣伝または破壞的行動をさせてはならない。  第三に、最高司令官は日本政府に対し、この政策の規定に従い、日本政府が負う責務を完全に果すように指令すべきである。  第四点は、この規定に従つてとられた措置は、最高司令官から極東委員会に通告しなければならない。以上であります。  アメリカ政府がとりました今回の措置は、極東委員会でアメリカ政府が有する中間指令発出の権限によつたものと了解しております。極東委員会に対する付託條項を見ますと、この付託條項は、四五年の十二月のモスクワ会議で米、英、ソ、中国四箇国間に協定して成立したものでありますが、その協定の中で、日本が降伏條項に基く義務を完遂するについて準拠すべき政策とか、原則とか、規準を作成することは、極東委員会の任務とされております。アメリカ政府は、日本国際関係への復帰を許可すること、及び許可の権限を最高司令官が有することを確認することは、この付託條項にあります極東委員会の政策決定事項であると考えまして、一九四九年の四月に極東委員会に提案したものであろうかと私ども考えております。  しかし極東委員会で何ら積極的な決定が行われませんでしたので、アメリカ政府はこの極東委員会の付託條項の中で、合衆国政府委員会によつて、すでに作成された政策によつて網羅されていない緊急事項が発生するときには、常に委員会が行動をとるに至るまでの間、最高司令官に対して中間指令を発することができるという規定がありますので、この規定に基きまして、かねて極東委員会で決定するように提議していました内容を、この中間指令という形式で実現させたものではなかろうか、こういうふうに考えております。また新聞報道によりますと、この中間指令は委員会の規定に従つて米国政府から委員会に提出されたということでございます。  以上の説明でおわかりくださいましたように、従前は国際会議に対しましては、いわゆる日本は正式の参加ではなくて、司令部から出られる人がオブザーバー——オブザーバーも正式代表ではございませんから、もちろん発言の権利、投票の権利を持ちません。会議の議事規則によることではありますが、ある会議におきまして発言は認められますけれども、投票権というものは持つことはございません。そのオブザーバーには司令部の人がなり、その司令部の人の技術顧問という資格で日本人は同行いたしております。この中間指令によりまして、今後開催される国際会議につきまして、国際会議の事務局なり、または国際会議を招集する政府から、日本政府に対しまして招請状が参りました場合には、最高司令官におきまして、この中間指令に準拠いたしまして、日本の参加を許容した方がよろしいという認定をされて、日本政府に参加を許可される場合には、今後は日本の代表というものは完全に、いわゆる正当な代表者として会議に参加し得ることになつたと了解いたしております。
  112. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 非常に御親切な答弁があつたのですが、今後もひとつなるべく親切にお答え願いたいと思います。そういたしますと、とにもかくにもその限りにおいて、日本の外交権というものが、ある範囲において回復されておる、されつつあるというふうに了解してよいわけですね。
  113. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういうふうに考えております。
  114. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 実はこの点が非常に重要だと思うのです。これがいわゆるアメリカの新聞でも、こういう措置について、これを條約なき講和という形で言われておる。またわれわれが一番問題にしておりますのも、いわゆる事実上の講和、條約なき講和の状態をわれわれ非常に心配しておるわけでありますが、まずこれにつきまして、この前も大体国際法上の見解についてあなたにお聞きしたときに、とにかく国際法上の先例がないことだ、新しい事態なので、いわば法律的な解釈については、何とも、言えないというような御趣旨の答弁があつたし、結局は招請があればこれを受けるのだというふうに言われておりました。結局ポツダム宣言のもとでは、こういうふうな條約なき外交権の事実上の回復の行き方というようなものは、実際は日本としてはできないはずじやないかと私は考えるのですが、国際法上の成規の手続もなくして、こういうふうに講和前の外交権の回復の方向に向つて行く、こういうことになりますと、ポツダム宣言というものは、ある一国だけに関係したものではなくして、ソ同盟から、中国から、イギリスから、こういうふうな諸国とも重要な関係がある。この中では日本国民のこれらの諸国に対する絶対的な義務の問題も含んでおります。こういう点から考えますと、こういう條約なき講和の方向に日本が進んで行くということになりますと、これらの他の諸関係の国々に対して、実際国際信義にもとるような行為になりやしないかと思うのでありますが、どうですか。
  115. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点につきましては、私は聽濤委員とは全然違つた意見を持つております。よく降伏文書をごらんになりますと御理解ができると思うのでありますが、降伏文書の末項に——日本は降伏文書によりましてポツダム宣言を受諾し、これを忠実に履行することを誓約いたしておりますが、その降伏文書の末項に、天皇及び日本政府のいわゆる統治権というものが、この降伏文書を実施するために必要とせられる最高司令官の制限のもとに立つということがうたつてございます。この最後の條項に基きまして、日本は最高司令官のもとに占領管理を受けておりますが、この占領管理の目的というものは降伏文書の末項に、ポツダム宣言を遂行するために必要とする限度においてというように明確に示されております。また、今御紹介申し上げました中間指令によりましても、最高司令官が日本に対しまして、国際会議または国際協定に参加することを許すその認定の基準といたしまして、占領のために有利であると判断したときにということがちやんとうたつてございます。降伏文書の末項の文言と、この中間指令の文言を相照応いたしますと、日本国際会議に正式に復帰し、または国際協定に正式に参加し得るような事態をもたらすということが、いわゆるポツダム宣言の目的を実現するに必要であるという大前提のもとに立つて、とられている措置だと了解いたしたのでありまして、こういつた日本政府がある制限された分野において、国際会議または国際協定に復帰して行く、この事態の発展をもつてポツダム宣言の精神に反し、または條約なき平和ということそれ自身がポツダム宣言に反する、こういう考え方とは相一致しないのでありまして、そういう御意見については私としては賛同いたしかねます。
  116. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 大体あなたの言う趣旨はわかります。私はここで法理論をやるつもりはないのですが、しかしながら極東委員会において決定を見ましたところで、日本がここで占領行政に協力する範囲内で、国内統治の問題に対して自主権を持つてやるということははつきりしておりますけれども、これは今までの国際法上の通念からいつても、また極東委員会の決定自体の内容を見ましても、連合諸国との外交権の問題などは條約なくして起り得るものではない。今の占領下における日本の立場というものは、決して正式な外交権などがあるはずがない。それをあなたはいろいろ言つておられますけれども、私はそういう意見は外務省として軽々に言うべき事柄ではないと私は考えておりますが、そういう議論はとにかくとして、事実こういう方向に対しましては、あなたも御存じのように、ソ同盟はもちろんのこと、イギリス自体も反対しているじやありませんか。イギリスはなぜ、どういう理由で反対しているか、あなたは御承知ですか。
  117. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 今回の中間措置に対しまして、英国諸国が反対しているということは私承知いたしておりません。
  118. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 これがこういう形にならない前からイギリスの方では——結局あなたがそういうことを知らぬというのは言いのがれにすぎないので、実際平和條約なくしてこういう方向に発展することに対しては、イギリスは反対だということは、諸新聞に何度か報道されているところであります。あなたがそれを知らないというのは、まことにおかしい話であります。事実こういうふうになつて来ますと、明らかに現実に、ソ同盟、中国との関係はもちろんのこと、イギリス並びにイギリス連邦諸国との間に、いろいろでこぼこはありましようが、障害が起つて来ることは明らかです。また起りつつあるのです。こういうことになりますと、将来の通商交渉にしてもいろいろ困難を加えるでしよう。あるいは日本国民が要望しております講和の問題にしても、だんだんこれは全面講和の方向というものがイギリスとさえもうまく行かない、こういう状態が出て来はしませんか。これが実は現実の大きな問題なんです。それについての意見を聞きたいと思う。大体イギリスまでもだんだんそでにするような行き方になりはしないか。
  119. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本に関する限りこういつた行き方は、先刻説明いたしました経緯でよく御了解がついたと思いますが、米国政府としては、極東委員会及び極東委員会にうたつてある條項に基きまして、順当なる手続に従つてこの政策を推進して行かれるように了解いたします。ただそういつたアメリカ政府の政策の推進につきまして、連合国の一部、ことに聽濤委員の指摘されたソ連邦の代表が反対的態度をとられたということも、これまた私先刻説明申し上げた通りであります。ただそういつた問題は、要するに連合国間における見解の相違でありまして、その問題それ自身につきまして、私としてかれこれ意見を申すべき立場にはないと思います。日本といたしましては、私はこう考えるのであります。日本はなるほど敗戦の結果ポツダム宣言の降伏文書によりまして、連合国の占領管理のもとに置かれ、国の外交権はむろん完全に失つております。しかしこの日本の国に加えられた制限というものが排除され、または緩和されます場合には、その限度におきまして、日本の国の姿が本然のあるべき姿に返るということは当然のことでございまして、これを法律的根拠なしなどといつて非難し得べき事柄ではなくて、そうあるのが日本国の本然の姿であります。本然のあるべき姿に返ることそれ自身については、決して日本国内部において論議を生ずべき筋合いのものではないとわれわれ考えるのであります。聽濤委員の指摘された問題は、主として連合国間における見解の相違であると思うのでありまして、私どもといたしましては、意見を述べることを愼みたいと思います。
  120. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 まあそういうへりくつは何とでもあとからつきますから、これは問題になりません。結局私が問題にしておるのは、今のこの行き方は、明らかに連合国の中の一部なんて言つておるけれども、ソ同盟はもちろん、中国はもちろん、イギリスさえもこうだということが現実の問題として起つて来ておるのだ。こうなつて来れば、この條約なき講和の方向は、明らかに全面講和というものを否定しつつある。これが非常に重大であります。だから、今の外務省の考え方で行きますと、説明はあとからどんどんつきますが、そういう説明をしようとする態度自体が、全面講和というものを考えていないという何よりの証拠だと思うのです。しかしこれは議論になりますからやめますが、もう一つお聞きしたいのは、先ほど参加の範囲について島津局長が二、三の例をあげましたが、このほかに、たとえば私たちの考えでは、何にでも経済的な方向と政治的方向があるものですが、この経済的な方向としまして、今後国際通貨基金とか、国際貿易機構、これらへの参加の問題は考えられませんか、お聞きしたいと思う。
  121. 島津久大

    島津政府委員 ただいまのところはちよつと考えられないと思いますけれども、将来参加できるようになるかもしれません。先ほど申しましたのは、大体実現するだろうという見当で申し上げたのであります。情勢によりまして、また招請が来れば、もつとたくさんの会議へ出られることになるはずであります。
  122. 岡崎勝男

    岡崎委員長 聽濤君、ちよつとお断りいたしますが、本日は委員会の数が非常に多くて、この部屋は午後一時から別の委員会が使うことになつております。また浦口委員及び山本委員がお質問を待つておられますし、聽濤委員の時間は大分今までお使われになつたようですが、なるたけ早くお願いしたいと思います。
  123. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 なるべく簡單にしますけれども、なまずのような答弁で時間を大分使つてしまつたのであります。  そうしますと、これは非常に重要な問題を含んでいると思う。先ほど島津局長があげられたような、ああいうものしか今大体予想されていないというと、実際全面講和を犠牲にしてまでこんなものに入つてつて、一体何の利益になるのかという考えが起きて来るわけです。実際外務省ではこれらの国際通貨基金、貿易機構の問題なんかについて、実はどういうようなお考えを持つておるのか。私たちはこういうようなものへの参加が必ず実現すると思う。なぜかといえば、国際会議に参加といいますけれども、これはアメリカの力の強いところの関係にわれわれが入つて行くことになるにきまつておる。ここでは国際通貨基金とか、貿易機構というものは、経済的な方面の会議として非常に重要なものです。これには参加が予想されるのですが、しかしこれについては、すでに世界的にこれらの機関というものが、やはりドルの支配の機関であるという定評がある。現にこれに対してポンドの方の反発さえも起つている。こういう状態の中にわれわれが入つて行くことは一体何の利益があるのか。こういう問題が起つて来ると思うのですが、どうでしようか。
  124. 島津久大

    島津政府委員 聽濤委員のただいまの御意見の点は、御質問の趣旨が私にはわからないのであります。お答えを差控えたいと思います。
  125. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 なるべくはしよりますから、それではその点は抜きにいたしますが、私は先ほど経済的な面と政治的な面ということを申しましたが、やはり経済的な面から政治的な面に発展して行く。ここで私は実際太平洋同盟の参加とか、軍事協定の締結というような方向が明らかに暗示されているような気がするわけであります。むしろこの点は今度の国際会議参加の手続によりまして、こういう政治的な協定への参加の手続の、いわば地ならしができた感じが非常にするわけであります。ここで私太平洋同盟のことをちよつとお聞きしたいと思うのですが、この間吉田外務大臣が、この委員会で福田委員の質問に答えて、太平洋同盟の問題について抽象的には賛成であるということも現に言われている。一方では一時立消えみたいになつておりました太平洋同盟問題が、かなりまた具体化しつつあるように新聞には出ておつたのであります。今春バギオで太平洋諸国の反共産主義会議が開かれるというようなことまでも伝えられておるのですが、こういう太平洋同盟にもやはり招請があれば入つて行くというお考えでありましようか。
  126. 島津久大

    島津政府委員 前回あるいは前々回の委員会で、大臣からお答え申し上げました以上のことはお答えできません。
  127. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 どうも実際外務委員会でそういう状態で、首相は出て来ないわ、あなた方は首相が言つたこと以外は答えられない。それは政策についてはそうですけれども、問題の内容については、そんなことを言つておれば、外務省は吉田外務大臣一人おればよいということになります。決してそういうものじやないわけです。やはりこの問題について政府の政策の範囲内で、あなた方の所見というものがはつきりあるわけです。こういうものをなぜはつきり言つてもらえないのか。先ほど私が簡単な質問をすると、長々と講義をやるくせに、こういう問題になるとちつともはつきりしたことを答えない。そういう態度はまことに不思議きわまるじやないか。まあしかしそれでもいい。しかし大体言えないというのは、明らかに太平洋同盟の問題が起つてないから言えないのじやないと思う。実際現実の問題化しつつある。ところがこれは明らかに反共軍事同盟的な色彩を持ちつつある。だからあなた方は言うのをはばかつておるのに違いないのだけれども、しかし外務省としては所見があるとすれば堂々と発表すべきじやないか。こういうことについて私非常に不満の意を持つておるのでありますが、いかがですか。
  128. 島津久大

    島津政府委員 たいへん御不満のようでありますが、御説明のできることはできる限り御説明いたしますし、御説明するのは適当でないというときには、遺憾ながら御説明ができないのであります。外務大臣がはつきり申しましたことを、それ以外に敷衍する必要がないと思いましたので、私はお答えしなかつたのであります。この点は常識で御判断を願いたいと思います。
  129. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 それではこういうふうに逆にお伺いしますが、太平洋同盟というような方向に発展する可能性がありやいなや。あるいはそれに日本が参加する可能性ありやいなやということをどう考えておられるか。
  130. 島津久大

    島津政府委員 大分将来の問題と考えますので、ただいまお答えできません。
  131. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 将来の問題なんて言つておりますが、外務省の任務というものは、私がここで説教するまでもないと思うんだけれども国際政治の問題をほんとうに研究し、その中における大きな潮流を見、そうしてその中で日本をどういう方向に持つて行くかということを、やはり決定しなければならぬ。今、あなた、われわれからこういうふうに熱心に太平洋同盟の問題で——これは今度の国会での質問だけではありませんよ、前々から出ている。国民が非常にこの問題について賛成する者もあるでしようし、反対して非常に心配して聞く者もありましよう、こういうものが出ておるのに、将来の遠い問題だなどと言つてすましておられては、外務省の任務は果せません。第一この間、吉田総理が何と言つた。戦争の問題だつて、長い外交官の生活の中から出て来ている勘によつてわかるのだ。あなた方、勘があるのですか、ないのですか。こういう問題をただ遠い将来の問題などとすましてお考えになつているような勘なら、吉田総理のもとでは勤まらない。実際そう言うのは言いのがれにすぎない。私は時間があれば、実は貿易についても聞きたいと思つておつたのですが、先ほど委員長からの御勧告もありましたので、本日は残念ながら、貿易の問題は差控えたいと思う。しかし私が聞かんとするところは、太平洋同盟などというものは、なるほど具体化してはおりませんけれども日本の動きの中において、明らかにこの方向がとられつつある。それが貿易政策等に現われている。貿易政策は明らかに中国やソ同盟との平和的な貿易の問題は抜きにして、このごろ何をやつておるか。韓国だとか、フイリピンだとか、台湾との正式の貿易協定が拡大強化されようとしている。しかも韓国や台湾という国は、どういう国か。今まつたく戦争の中で最後のこういう段階に来ておる。フイリピンは太平洋同盟の発祥地である。こういうところの貿易が行われ——また東南アジアの問題にしてもそうです。最近における各国の動きや、そういうものから見まして、この大勢の中に日本が、どんどんどんどん発展しつつある。こういう中で実際に太平洋同盟的な、この日本の歩みというものが、非常に明瞭に出つつある。あなた方がそういうことを知らぬ存ぜぬでは、決して済まされない。私は本日は時間がございませんから、貿易の問題についてはこれで控えたいと思いますが、大体委員長にお願いしたいのは、外務委員会は非常に重要なんです。重要なんですが、これは他の委員からも指摘されましたように、個々の重要な論議について、外務大臣が来ませんと、何も答えないというような状況であるので、私はこの前、細菌戰犯の問題についても聞きましたが、今度のこういう問題につきましても、やはり外務大臣の見解、態度などをほんとうにお聞きしないと、話が進まないので、ぜひこの次の機会には、外務大臣の出席を求めたい。委員長としても、十分考慮されんことを希望いたしまして、私の本日の質問は、またあらためて吉田外務大臣にお聞きしたい、こう思うわけです。委員長のこれに対する御見解をお聞きしたい。
  132. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御意見はよく承つておきます。浦口鉄男君。
  133. 浦口鉄男

    ○浦口委員 たいへん時間が迫つておるという委員長お話ですので、簡單に明瞭に御質問いたしたいと思います。  千島諸島の帰属問題について、二、三御質問申し上げたいと思います。もちろん島嶼の帰属につきましては、講和條約に際しまして、連合軍が決定するところではございますが、しかし一応われわれ国民といたしましては、その島の法的にあるべき姿をはつきりとつかんでおくことが、たいへん必要だと考えるわけであります。実は去る二月一日の外務委員会におきまして、島津政務局長は、ヤルタ協定の「千島」という呼称については不明確で、確定する方法がない、こういう発言をされておりますが、しかしそのあとで、しかし南千島と北千島の違いは実在する、こういうふうに御答弁になつております。そういうことから申しましても、ヤルタ協定の問題はあとで申し上げることにいたしまして、まず千島列島という呼称は、一体どういう島々を千島と言うのかということを、一応お聞きしたいと思うのであります。実は私、千島と最も近い根室に参りまして、いろいろと土地の事情を聞きましたときに、南千島と言われている、エトロフ、クナシリ、シコタン島、ハボマイ諸島等から引揚げて来た人の約一万六千人くらい、こういう人々は、すでに三代あるいは五代も前からこの島に住みついておりまして、この島々がポツダム宣言あるいはカイロ宣言、もちろんヤルタ協定を一応認めるとしましても、われわれはなぜ引揚げさせられたかということについて、非常に大きな疑問を持つております。そういう点についても、この際これをはつきりしておくことがたいへん必要であろうと考えるわけであります。一般に千島列島と申されておりますが、その中のハボマイ諸島とシコタン島、クナシリ島、エトロフ島等の島々は、非常に早くから北海道本島に属しておりまして、根室の国と、こう呼ばれております。そしてエトロフ島以北のカムチヤツカ半島に至る十八の島々が、いわゆる千島の国と、こういうふうに呼ばれておるのであります。それでそのエトロフ島以南の、すなわちエトロフ島から南部の島々は、徳川幕府の初めから、日本人が住んでおりまして、三百有余年の長きにわたつて、父祖代々相次いで漁業に従事していたというのが、島の歴史上の明らかな事実であります。そのことは一八五四年、安政元年に、帝政ロシヤと締結をいたしました神奈川條約、一名下田條約とも言われておりますが、これによつても明らかにされておるのであります。すなわちその第二條に、「今より後日本国とロシヤ国との境は、エトロフ島とウルツプ島との間にあるべし、エトロフ島全島は日本に属し、ウルツプ島全島とそれより北方クリル諸島はロシヤに属し、樺太島に至りては日本国とロシヤ国との間において境界を設けず、これまでのしきたり通りたるべし。」こういう一條があるのであります。これはわれわれの解釈によりますと、今まで不明確であつたロシヤと日本の境をはつきりしたと解釈できると思うのであります。しかもその後いろいろ樺太の所有問題についてトラブルがありましたので、一八七五年の五月、明治八年にわが国の全権榎本武揚がロシヤにおもむき、千島・樺太交換條約というものを締結した、こういうことも当然御承知と思うのでありますが、その第二條には、「クリル全島すなわちウルツプ島よりシユムシユ島に至る十八の島々は日本領土に属し、カムチヤツカ地方、ロパトカ岬とシユムシユ島との間なる海峡をもつて両国の境界とす。」こういう一條があるのであります。この二つの條約から照しまして、明らかにわれわれは、ここに千島列島という名で呼ばれる部分は、少くともエトロフ島とウルツプ島との間の千島水道と言われる以北が、いわゆる千島列島と呼ばれるものである。その以南は先ほど申し上げましたように、いわゆる北海道本島に属する根室の国の一部である。こういうふうに考えてしかるべきであると思うのでありますが、その点についてまず見解をお聞きしたいと思います。
  134. 島津久大

    島津政府委員 ヤルタ協定の千島の意味でございますが、いわゆる南千島、北千島を含めたものを言つておると考えるのです。ただ北海道と近接しておりますハボマイ、シコタンは島に含んでいないと考えます。
  135. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういたしますと、一八七五年、明治八年の千島、樺太交換條約と非常に矛盾して来るのでありますが、先ほど申し上げましたように、この第二條では、クリル全島、すなわちウルツプ島よりシユムシユ島に至る十八の島々、こういうふうに北千島というものに対してはつきり第二條で定義されておるのでありますが、その点はいかがですか。
  136. 島津久大

    島津政府委員 北千島の定義がそのようになつておるものと考えます。千島の定義につきましては、いろいろな経緯、歴史もあるわけでございますが、ただいま問題になつておりますヤルタ協定でいわゆる千島というものを先ほど私解釈したのでありますが……。それで御了承を願います。
  137. 浦口鉄男

    ○浦口委員 私の承知するところでは、北千島、南千島というのはいわゆる下田條約と千島・樺太交換條約、この二つの條約によつてこういう俗称が出たと考えておりますので、公文書の上では南千島、北千島の差はないというふうに承知いたしておりますが、何かそういう公文書の上で明示されたものがあるならば、お知らせ願いたい。
  138. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは一九四六年の一月二十九日付の総司令官の日本政府にあてたメモランダムでありますが、例の外郭地域を日本の行政上から分離するあの地域を明示された覚書であります。その第三項の中に「千島列島・ハボマイ諸島及びシコタン島」とございます。いわゆる南千島と北千島とを合せて千島列島という観念で表示してあります。
  139. 浦口鉄男

    ○浦口委員 その條項も私は実は調べたのでありますが、島津條約局長のおつしやるように、ザ・クリル(千島)アイランズと、こうなつております。そうなりますと、先ほど申し上げました千島・樺太交換條約の第二條にはクリル全島、こういうことになつておりまして、それはいわゆる下田條約による千島水道以北であるということは、はつきりするのであります。従つてその千島水道以南のエトロフ、クナシリ——シコタン、ハボマイはもちろんでありますが、これはは当然含まれない。こういう解釈が明らかになるのでありますが、その点いま一応御答弁願います。
  140. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の趣旨がよくわかりませんので、もう一度お繰言返し願いたいと思います。私は政務局長とまつたく同意見ではございますが、……。
  141. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そうしますと、もう一度話が元へ返るようになるのでありますが、実は下田條約では、今より後日本国とロシヤ国との境は、エトロフ島とウルツプ島との間にあるべしという一條があるわけです。これによつて條約上初めて日本とロシアの境がきまつたわけです。ですからエトロフ島以南、すなわちエトロフ、クナシリ以南の島は当然もう日本国としてはつきりきまつていた後において、千島・樺太交換條約によつて、クリル全島すなわちウルツプ島よりシユムシユ島——ウルツプ島というのはエトロフとの境でありますが、下田條約によつてすでに日本と決定されたその以北、いわゆるウルツプ島以北がクリル全島、こういう呼称で呼ばれているのであります。そうでなければこの條約の文章が成立たないのであります。
  142. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その條約の條文を持ちませんので、確とした自信はございませんが、今繰返された文句によれば、例の明治八年の交換條約で言う意味は、いわゆる日露間の国境以外の部分である千島のすべての島という意味でございましよう。ですから千島列島なるものが、その国境以北だけがいわゆる千島列島であつて、それ以南の南千島というものが千島列島でないという反対解釈は生れないかと思います。
  143. 浦口鉄男

    ○浦口委員 私はどうもそれがよくわからないのであります。もう一度詳しく申し上げたいのですが、時間がありませんので、外務省の方で御研究願いたいと思います。この次にまた見解を発表していただきたいと思います。  それでは引続いてそういうことからいたしますと、実はその前にポツダム宣言及びその根拠たるカイロ宣言については、すなわち第一次世界戰争以後において日本が奪取し、または占領した一切の島嶼を剥奪すること、日本国はまた暴力及び貧欲により、日本国が略取しだる他の一切の地域より駆逐せらるべし。この條項は千島——一応それを南千島、北千島とわけてお話してもよろしいのですが、その両方ともこれには該当しない、そういうふうに考えるのでありますが、その点いかがでありますか。
  144. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 もちろんそう考えます。従つてヤルタ協定の文句も特にハンド・オーヴアー——引渡すという字を使つております。南樺太は返還すべしという用字が使つてあるにかかわらず、千島列島につきましてはハンド・オーヴアー——引渡すという違つた用語が使つてあります。その辺を考慮した上での條文かと私どもは了解しております。
  145. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そうなりますと、南と北の問題は別といたしまして、クナシリ、エトロフ、ハボマイ諸島、シコタン島から強制的に引揚げなければならなかつた、その間の理由はどういう理由によるか、その点お伺いします。
  146. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 今度の戰争後におきまして、連合国日本及びドイツに対します政策の一つといたしましては、日本人及びドイツ人は将来における国境の内部に全部移住させるという政策がとられたようであります。従いましてドイツについても同じでございますが、日本につきましては、日本軍の占領地域ないしは日本の行政下の管轄の外に置かれました領域に在住しておりました邦人も、全部いわゆる強制引揚げということになつたわけでございまして、その一環として、千島における在留民も、本国へ帰らざるを得ないことになつたのでございます。
  147. 浦口鉄男

    ○浦口委員 われわれはこの千島列島、ハボマイ諸島、シコタン島におる住民は、連合軍の保障占領下に生業を営み得る立場にある、こういうふうに一応考えるのでありますが、その点いかがでございますか。
  148. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 言い分云々は別といたしましても、おつしやるようなことを熱望いたしておるわけでございます。ことにハボマイ、シコタンについては、強くそれを熱望せざるを得ないわけでありますが、事実上それはまだ許されていない事態にあると御了解を願いたいと思います。
  149. 浦口鉄男

    ○浦口委員 当然たいへん困難だという事情もよくわかるのでありますが、熱望しておるということで了承することにいたします。実はこの問題につきましては、千島と関係の最も密接な北海道の根室町におきまして、北海道付属島嶼復帰懇請委員会というものができておりまして、先ほど申し上げた、この諸島から強制帰還をさせられた一万数千の人と、土地の人が非常な熱情をもつて運動を続けておるのであります。すなわち昭和二十年十二月一日、二十一年八月六日、二十二年一月十五日、二十三年九月十五日、二十五年一月、この五回にわたつてマツカーサー元帥に対して陳情書を提出して、この運動を展開しておるのであります。その真意は、先ほど申し上げましたように、付属島嶼の帰属はもちろん平和條締結の際に、連合軍によつてきめられるものである。しかしその間われわれが少くとも連合軍の保障占領下にあつて生業を続け得るのではないか。せめてその点は、われわれとしては主張しても間違いではないのではないかというふうな、やむにやまれぬ気持で、この運動を続けておると承知しておるのでありますが、外務省はこの運動に対して、連合軍がどういうふうな処置をとつたか、あるいは態度を示しているか、あるいは外務省としてこの陳情に対してどういうふうに考えているか、また何かこれに対して処置をしたか、その点お聞きしたいと思います。——たいへん答弁がむずかしいように察しますので、こういうふうにお聞きします。それはいろいろ文献や歴史によつて国民が主張し、陳情することは自由である。しかしそれ以上、政府としては正式にこれに対してどうこうすることはできない、こういうお考えでありますか、どうですか。
  150. 島津久大

    島津政府委員 たいへん御同情のある御質問でございます。政府としてできることはいたしておるのでございます。ただ領土の問題は、非常に機微な関係がございまして、また決定する立場にも、もちろんないわけであります。陳情その他が国民の間から出ますことについては、政府としても何とも申し上げられないのであります。非常に機微な関係もございまして、答弁を差控えさしていただきたいと思います。
  151. 浦口鉄男

    ○浦口委員 希望を申し上げておきます。こういう運動がどんどん熾烈になつて来るということは、現地の事情で非常にしみじみと感じられますので、それにつけても少くとも南千島、北千島の問題については、外務省当局も、そういう輿論を支持する、しないは別といたしましても、もし誤つた根拠に基いてそういう運動が盛んになるということであるならば、われわれとしても、その熱情は買うとしても、国際の問題、ひいては日本の将来に及ぼす問題が非常に大きいと思いますので、もう一段御研究を願いたい。こう希望いたしまして、私の質問を打切ります。
  152. 岡崎勝男

    岡崎委員長 山本君、時間がありませんが、簡單ならば続いてお願いいたします。
  153. 山本利壽

    ○山本(利)委員 やむを得ず簡單にいたします。  引揚げ促進であるとか、引揚者援護とかいうことについては、いろいろ請願もあり、陳情もあり、当局もその方向に向つて動いておられるようでありますが、昨日渉外局より戰犯者に対する仮出所の恩典が発表されたのであります。この問題について考えますのに、仮出所でありますから、その出所條件に違反したときには、その出所は取消される。あるいは仮出所規則の違反者は、服役中の善行による恩典も失う。それから仮出所者が再入所後においては、仮出所及び善行による特典を失うというような條件がついておるわけでありますが、この仮出所ということは、非常な恩典でありまして、国民全部が喜んでおるところであります。しかしこの人たちが、出てからまたこの規則にそむいて、再び入所しなければならぬというようなことが起りますと、本人たちはもちろんのこと、国民全体といたしましても、日本人というものに対する信用が国際的に失われると考えるのであります。そこでこの仮出所者に助言と援助を與えたり、それからまた必要な報告を仮出所審査委員会に提出するために、日本の警察及び刑務所の係官が、仮出所者の監督員として勤務するということが書いてあるように思いますけれども、今までのしきたりとしまして、警察官とかあるいは刑務所の人によつて監督せられたり、援助せられるということは、どうも日本人から言うと非常に肩身の狹いことであり、いつまでも何となく犯罪者であるかのような感じを受けるのでありますから、この点につきましては、ぜひ警察官とか刑務所の係官とかいうもの以外に、日本国としてこれは私設でもけつこうでありますが、仮出所を受けた者に対する保護並びに援助をするような機関を設けるべきではないかと私は考えるのであります。今まで申しました理由のほかに、戰犯者が許される——かりに仮出所でありましても、出て来るということによつて、現在戰犯者自身も戰後今日までの情勢にうといものでありますから、自分たちのしたことは大したことではなかつた、間違つて戰犯者なつたのだという気持が起つたり、あるいは世間の人人も、あの人たちはたした罪ではなかつた。また場合によつて日本が再軍備というか、もう一度軍国に帰るその先がけとして、そういう人が出て来たのではないかといつたような——これは多数ではありますまいが、ごく少数でもそういつたような感じを本人及び国民が起すということは、これは国際的に非常な問題でありまして、われわれが軍備を放棄して、絶対的な平和手段による民族の独立ということを、憲法によつても叫び——真にそのことがわれわれ民族の生きる方法でありますから、今言つたような誤解が国民の間に起るということは、私は非常に残念なことであると考えております。その思想的な指導と、もう一つは、戰犯者が出て参りましたならば、一たびは受刑者であつたということと、それからちようど最近のこの経済的な不況にあいまして、更生の道が非常に困難であろうと私は考えるのであります。だからこの間違いを起させないために、出て来た人をあたたかく保護し、ほんとうに民主主義文化国家国民として更生しつつある人となつてもらうという意味で、先ほど来申し述べました特別な機関を設ける必要があると私は考えるのであります。ただ今回発表されましたことについて、そのままうのみにしないで、警察や刑務所の係員の手を離れて、国民的な運動として、あたたかく、しかも間違いない方向に導いてもらいたいと考えるのでありますが、この点に対する当局の御意見を承りたいと思います。
  154. 島津久大

    島津政府委員 御意見の点に関しましては、関係者とも十分連絡をとりまして、研究することにいたしたいと考えております。
  155. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ではその研究の結果は、この次の委員会で御報告願うといたしまして、もう一つ、かねて私が当委員会においても発言した問題でありますが、終身刑以下の人に対しては非常な恩典があつて国民は非常に喜んでおるけれども、死刑囚に対する恩典は今まで聞くことを得ない。もしその死刑囚に対する刑の執行を停止するというようなことが行われるならば、さらに国民は非常に感激するのでありますが、この問題について多少ともニユースがありますか。あるいは当局において、それらの人に向つて恩典を拡張されるように要求せられたことがありますか。その点をお伺いいたします。
  156. 島津久大

    島津政府委員 ただいま御質問の点につきましては、前会でございましたかお答え申し上げました通りで、その後別に新しいことは聞いておりません。
  157. 山本利壽

    ○山本(利)委員 いつまでたつても同じような御答弁をいただくということは、日本の外交政策に積極性がないことである、と私はかように考えるものであります。この方向に向つてぜひ積極的な手を打つていただきたいと思うのであります。死刑囚はいくら惡くても死刑になるだけでありまして、もし減刑されたらこれは非常にありがたいことでありますから、うつかりこちらから口を出して、より惡くなつてはいけないという御遠慮なしに、最惡の場合がすでに死刑ときまつておるのでありますから、できるだけこの運動の要望にこたえて、この方面においても減刑の恩典にあずかりたいという希望を、積極的に申し述べていただきたいと私は考えるのであります。  それから先般この減刑の問題について、政府または議会において、感謝的な決議をしたらどうかという意見を私は申し上げたのでありますが、その後各方面から、こちらからのお礼の言葉にかりて、あまりにも強制がましいことをしては、かえつて不利になるのではないかというような懸念もありましたので、それを了としたのでありますが、幸い今回仮出所というようなことができましたので、私はよいことをしてもらつたときには、どんどんお礼を言うていいと思います。少くとも総理大臣の名において、これに対する感謝の声明を発表せられるなり、あるいは議会において国民を代表してやるべきだということであるならば、われわれは喜んでやるのであります。お礼を言うことさえも恐る恐る引込んでおるというような態度は、私は決して国民の要望にこたえるものではないと考えます。この点に対する御見解を承ります。
  158. 島津久大

    島津政府委員 御意見つておきまして、具体的な処置につきましては、研究をさしていただきたいと考えます。もともとこの戰犯の問題は、非常に機微な関係があるのでございまして、刑のことにつきまして交渉をするとかなんとかいうようなことは、なし得ない立場にあることだけは御了承いただきたいと思います。
  159. 山本利壽

    ○山本(利)委員 時間がありませんから、きようは私の質問はこれで終ります。
  160. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時十九分散会