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西村(熊)
政府委員 御
理解をいただくためには事実を明らかにする必要があると思うのです。終戰後わが国は外交機能を停止いたされました結果、自主的に
国際会議とか
国際協定に参加することができなく
なつたのは御承知の通りであります。ところが四八年の一月にジユネーブで開かれました
国際周波数
会議に、総司令部の方におかれまして、総司令部の人をオブザーバーとして出席させ、それに逓信省の技官の長谷さんを技術顧問として同行させられたのであります。ところがこの事件につきまして、四八年の三月にパニユーシキン大使が極東
委員会に対しまして、総司令官のとられた
措置は極東
委員会を無視するものである、こういう
趣旨のことを主張されまして、これに反対する決議をするように提案されたのであります。このソ連代表の決議案は採決の結果、賛成がソ連一国だけでありまして、反対が米、英、蘭その他の国は棄権というとで成立いたしませんでした。それで同年の五月二十七日の極東
委員会になりまして、
米国代表から
日本人を特定の
国際会議に参加させるため
海外渡航を
許可しようという
趣旨の提案がなされたのであります。そして六月九日の
会議におきまして、極東
委員会は適当な招請を受け、占領に有利と認められる
政府間
会議には、総司令部係官がオブザーバーとして出席し、かつ総司令部が必要と認め、招請国が承認すれば、技術顧問として
日本人を同伴することを承認する、こういう政策決定を行つたのであります。この決定にはソ連の代表は棄権いたしまして、他の十箇国の賛成を得て成立いたしております。この極東
委員会の政策決定によりまして、爾後わが国は
会議に、総司令部の係官がオブザーバーとして出られ、
日本人はそれに付属する技術顧問という資格で
会議に参加する、こういうふうに
なつたのでございます。
その後十二、三に近い
会議にそういうふうな形式で、
日本はずつと参加いたしております。ところが昨年の四月二十一日になりまして、アメリカ
政府はさらに極東
委員会に対しまして、
日本が総司令部の管理のもとに、
日本政府の代表者を
国際会議に派遣し、また他国が
日本と
国際協定を
締結する用意のあるときは、これを
締結し、またはこれを加入することを
許可するようにという
趣旨の提案をなしたのであります。そして五月七日にまたこの提案の
趣旨、その理由について声明書を発表いたしております。このアメリカ
政府の提案に対しまして、極東
委員会は積極的な政策決定を行いませんでした。そこで八月になりまして、アメリカ
政府は八月十八日にさらに声明書を発表いたしまして、さきに
米国が提案いたしました勧告の
趣旨を繰返しまして、極東
委員会が積極的に決定を行うようにということを要請いたしたのであります。今その声明書を見ますと、アメリカ
政府におきましては、次の諸点を強調いたしております。
第一の点は、
日本が他国の権利を尊重するようになることは、
連合国の
日本占領の基本目的の一つであるが、この目的の達成のためには、
日本を
国際関係に復帰させることが必要であるということが第一点であります。
第二点は、この事実に基いて、アメリカは極東
委員会に対して、最高司令官が
日本の
国際関係への参加を、自己の判断で
許可する権限を有することを承認する積極的
措置をとるように提案したということを強調してございます。
第三に、記録によれば、従来極東
委員会は、最高司令官がその権限を有することを否認したことはないということであります。
以上の諸点を声明書で強調いたしております。ところが、このアメリカ
政府の八月十八日の声明が出ましたあとにおきましても、極東
委員会は
日本代表の
国際会議並びに
日本政府の
国際協定参加につきまして、積極的な政策決定というものをなさなかつたのであります。
そういうふうにして、今回のアメリカ
政府の中間指令と
なつた次第でございます。二月二十六日の総司令部の発表によりますと、中間指令の要旨は次の四点でございます。
第一点は、最高司令官は、
日本が招請を受けた技術的性質の
国際会議及び
国際協定で、占領に役立つと最高司令官において考えるものに参加することを、最高司令官の認定と管理のもとに
許可すべきである。
第二点は、
日本代表に宣伝または破壞的行動をさせてはならない。
第三に、最高司令官は
日本政府に対し、この政策の規定に従い、
日本政府が負う責務を完全に果すように指令すべきである。
第四点は、この規定に
従つてとられた
措置は、最高司令官から極東
委員会に通告しなければならない。以上であります。
アメリカ
政府がとりました今回の
措置は、極東
委員会でアメリカ
政府が有する中間指令発出の権限によつたものと了解しております。極東
委員会に対する付託
條項を見ますと、この付託
條項は、四五年の十二月のモスクワ
会議で米、英、ソ、中国四箇国間に協定して成立したものでありますが、その協定の中で、
日本が降伏
條項に基く
義務を完遂するについて準拠すべき政策とか、
原則とか、規準を作成することは、極東
委員会の任務とされております。アメリカ
政府は、
日本の
国際関係への復帰を
許可すること、及び
許可の権限を最高司令官が有することを確認することは、この付託
條項にあります極東
委員会の政策決定事項であると考えまして、一九四九年の四月に極東
委員会に提案したものであろうかと私
ども考えております。
しかし極東
委員会で何ら積極的な決定が行われませんでしたので、アメリカ
政府はこの極東
委員会の付託
條項の中で、合衆国
政府は
委員会によ
つて、すでに作成された政策によ
つて網羅されていない緊急事項が発生するときには、常に
委員会が行動をとるに至るまでの間、最高司令官に対して中間指令を発することができるという規定がありますので、この規定に基きまして、かねて極東
委員会で決定するように提議していました内容を、この中間指令という形式で実現させたものではなかろうか、こういうふうに考えております。また新聞報道によりますと、この中間指令は
委員会の規定に
従つて、
米国政府から
委員会に提出されたということでございます。
以上の
説明でおわかりくださいましたように、従前は
国際会議に対しましては、いわゆる
日本は正式の参加ではなくて、司令部から出られる人がオブザーバー——オブザーバーも正式代表ではございませんから、もちろん発言の権利、投票の権利を持ちません。
会議の議事規則によることではありますが、ある
会議におきまして発言は認められますけれ
ども、投票権というものは持つことはございません。そのオブザーバーには司令部の人がなり、その司令部の人の技術顧問という資格で
日本人は同行いたしております。この中間指令によりまして、今後開催される
国際会議につきまして、
国際会議の事務局なり、または
国際会議を招集する
政府から、
日本政府に対しまして招請状が参りました場合には、最高司令官におきまして、この中間指令に準拠いたしまして、
日本の参加を許容した方がよろしいという認定をされて、
日本政府に参加を
許可される場合には、今後は
日本の代表というものは完全に、いわゆる正当な代表者として
会議に参加し得ることに
なつたと了解いたしております。