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1950-03-01 第7回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月一日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 岡崎 勝男君    理事 菊池 義郎君 理事 近藤 鶴代君    理事 佐々木盛雄君 理事 竹尾  弌君    理事 仲内 憲治君 理事 福田 昌子君    理事 並木 芳雄君 理事 聽濤 克巳君       伊藤 郷一君    大村 清一君       栗山長次郎君    塩田賀四郎君       中山 マサ君    橋本 龍伍君       益谷 秀次君    増田甲子七君       小川 半次君    浦口 鉄男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         賠償庁次長   石黒 四郎君         外務政務次官  川村 松助君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         外務事務官         (調査局長)  與謝野 秀君         外務事務官         (管理局長)  倭島 英二君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 二月二十三日  国が有償で讓渡した物件略奪品として沒收さ  れた場合の措置に関する法律案内閣提出第六  一号)(予)  全面講和促進に関する請願松谷天光光君外二  名紹介)(第九七五号)  在外資産補償に関する請願外二件(受田新吉  君紹介)(第九八七号)  同(青柳一郎紹介)(第九八八号)  同(高橋英吉紹介)(第一〇一二号)  同(米窪滿亮紹介)(第一〇一三号)  同(佐藤榮作紹介)(第一〇一四号)  同外一件(岡田五郎紹介)(第一〇一五号)  同(松永佛骨紹介)(第一〇一六号)  同(井上良二紹介)(第一〇五七号)  同(中曽根康弘紹介)(第一〇五八号)  同(佐竹新市紹介)(第一〇五九号)  同外一件(村瀬宣親紹介)(第一〇六〇号)  同(越智茂紹介)(第一〇九二号)  同(岡田五郎紹介)(第一〇九三号)  同(松永佛骨紹介)(第一〇九四号)  同(淺香忠雄紹介)(第一〇九五号)  同(松澤兼人紹介)(第一〇九六号)  同(山崎岩男紹介)(第一〇九七号)  在外胞引揚促進並びに留守家族の援護に関す  る請願中山マサ紹介)(第一〇〇八号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十七日  在外財産補償に関する陳情書  (第  四六九号)  同外一件  (第四九七号)  未帰還同胞引揚促進に関する陳情書外二件  (第五〇一号)  講和條締結促進陳情書  (第五〇八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  海外移住組合法廃止に関する法律案内閣提  出第一二号)(予)  国が有償で讓渡した物件略奪品として沒收さ  れた場合の措置に関する法律案内閣提出第六  一号)(予)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 ただいまちよつと委員長が事故がありますので、私が委員長の職務を行いますから、さよう御了承をお願い申し上げます。  ただいまより会議を開きます。国が有償で讓渡した物件略奪品として沒收された場合の措置に関する法律案内閣提出第六十一号を議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。山口国務大臣。     —————————————     —————————————
  3. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 ただいま議題になりました国が譲渡した物件略奪品として沒收された場合の措置に関する法律案について、その提案理由説明いたします。  本案を提出するにあたり、政府が考慮いたしました点は、次の通りであります。  国がかつて有償民間へ讓渡した物件が、後日政府によつて略奪品として沒收された場合におきましては、政府は同一物件を売つてこれを取上げたこととなり、売つた際の收納代金だけを余分に收得したと考えられる次第であります。そこで善意の被沒收者に対しましては、收納代金に相当する額を拂いもどすのが妥当であろうと思われます。本法案の対象となつています拂下げられたものは、あるいは緊急放出物件として、あるいは特殊物件として、または需給計画による配給物件として国より拂下げを受けたものでありまして、なかんずく錫、鉛等非鉄金属類が多いのであります。次はミシン、次いで自動車工作機械化学薬品羊毛等がございます。今般政府はこの收納代金に相当する額を交付することといたしたく、ここに本法案国会へ提出する運びとなつた次第でございます。  従いましてすみやかに御審議の上、可決されますようお願いする次第であります。
  4. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 質疑通告があります。通告順にこれを許します。並木芳雄君。
  5. 並木芳雄

    並木委員 質問いたします。その金額はどのくらいを予定されておりますか、品目別にお知らせを願います。
  6. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 現在までに掠奪財産として返還された物件種類は、種々雑多なものがありますが、その中で最も目立つたものだけを御説明申し上げます。金塊が約五億円、銀塊が約十五億円、工場及び機械機具約一万トンであります。タイプライター、ミシンが三千六百三十台、非鉄金属が八千九百トン、自動車が四百五台、図書が十七万八千七百九十九冊、船舶二十二隻、その他綿糸、綿布、羊毛等工業製品及び原料及び宝石、時計、美術品等奢侈品に至るまで千差万別であります。金額につきましては、金、銀は時価約二十億円で掠奪品の大部分を占めております。その他工場機械機具等は約五、六億円、非鉄金属約一億五千万円等がおもなるものであります。船舶図書美術品等はちよつと評価が困難でありますが、これらを除いて約三十億見当ということに相なつておる次第であります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 国家として不当利得は返すべきだ、こういう原則はどういうところから出ておるのですか。
  8. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 不当利得は返すべきだという原則だということでありますが、不当利得国家にしろ、個人にしろこれを返還するのがあたりまえである。こういう原則であるというように非常にむずかしく言われるとめんどうになるのでありますが、今日までこの正当な行為が諸般の状況からはばまれておつたのを、正道にもどしたというのが提案理由であります。
  9. 並木芳雄

    並木委員 それならば一歩を進めて、補償をすべきだと書いて、損害に対して補償をすべきだという処置はとられないものかどうか、その点をお伺いいたします。
  10. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 補償をすべきだという意味は、今日までの損害に対する補償でありますか、あるいは物それ自体の補償という御意思でありますか。
  11. 並木芳雄

    並木委員 今日までのものです。それを持つてつたならば、当然それから出て来る利用価値もありましようし、あるいは貨幣価値の下つたという場合もありましようし、とにかくそれを利用するために拂下げを受けた人が、逆に取上げられたために利用価値失つた、そういうものに対する補償であります。
  12. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 一般敗戰に基く国家賠償として考えられるものとしては、在外財産沒收使用に伴うところの補償連合国財産返還に伴う補償連合軍の駐屯に伴う損失の補償、その他各般の問題がありますが、その範囲もきわめて広汎であります。その間の調整もとらねばなりませんし、しかもまたその一部には講和條約において規定されるのが、前例となつておるようなものもあるようであります。たとえばイタリア平和條約を見ますと、賠償目的充当のため撤去された財産に対する補償賠償引当て等のために処分される在外財産に対する補償戰勝国軍隊占領に伴う補償等については明確に規定されております。
  13. 並木芳雄

    並木委員 内地のものに限つたという理由はどこにありましようか。外地においてもこういうことが起つていると思いますけれども、その点をお伺いいたします。
  14. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 内地の場合、こうした国内補償関係平和條約でどんなふうに規定されるか、もちろん将来は予測されない。掠奪財産関係補償が将来規定されるかどうかということはまだ未定でありますが、イタリアの條約等の例からいうと、掠奪財産関係補償については、将来の條約は規定しないという可能性が大であるという将来の見通しを持つているような次第でありまして、現在におきましては、政府としてはこの程度法案を御審議願いまして、大体根本方針を決定して、一般的に総合的に補償計画を樹立することができ、漸次これを進めて参りたい、かように考えておる次第であります。
  15. 並木芳雄

    並木委員 今の御説明で、一般的な補償計画が立てられるということを聞いて、意を強うしたわけであります。この問題は、たまたま政府から拂い下げたものは掠奪品なつて、その対価だけは返つて来るというと、われわれの感覚から申しますと、何かその人たちだけが優先的な待遇を受ける、こういう感じがするのです。ですからたとい政府から拂い下げたものでなくても、たまたま、掠奪品として取上げられるものを持つていた者に対しては、国家がやつた戰争であるという見地から、今長官が言われたように、一般的な補償という問題を取上げて計画を進めらるべきだと考えるのですが、特にその点は、在外から引揚げて来られた人々に対する処置として私は重要だと思います。つきましては今度の問題について、予算にはまだ金額がわからないのでおそらく計上されておらないと思いますが、もしこれが通過した場合には、追加予算を出す予定でございますかどうか、予算的措置についてお伺いします。
  16. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 追加予算と申しますよりも、昭和二十四年度の予算に約六百万円、二十五年度に千四百余万円とりあえず計上してあるような次第であります。
  17. 並木芳雄

    並木委員 特に賠償庁がこれを管理するという根拠はどこにあるのですか。その理由は、一般賠償物件とは性質を異にするようなものだけが、特殊物件という見地から品物はその範疇に入りますけれども、今度のような、ただ政府国民との間の不当利得拂いもどしという見地ですと、賠償庁がこれを管理するというその根拠、それから賠償庁だけでこれをやると、やはり一方的弊害も起ると思われますので、それをやる上において、たとえば審査委員会とかあるいはほかの官庁も関係するとか、そういつたものをつくつて、いやしくも審査調査に対して不公平の起らないようにする処置が必要ではないかと思われるのですが、そういう点についてお尋ねいたします。
  18. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 賠償庁の中に特殊財産部があるのでありまして、この点に関しましては並木委員から審査委員会等設置というようお話もございましたが、本件に関しましては何ら審査とかいうようなことを要しない事項であろうと思います。従いまして、賠償庁がこれを担当することがきわめて常識的であり、かつ制度上からいつても当然であると考えておるような次第であります。
  19. 並木芳雄

    並木委員 一応これで打切ります。
  20. 聽濤克巳

    聽濤委員 これは大体戰争中などのどさくさの間に行われた事柄であろうと思うのですが、拂い下げた相手方というのは、品物性質からいつてもいろいろ想像されるわけでありまして、主として軍需会社とかそういうものに拂い下げられたのではないかと思うのですが、相手方はどういうものでありましよう
  21. 石黒四郎

    石黒政府委員 今御質問のありました通り拂下げ相手方は千差万別でございます。戰争中拂下げ軍需会社等も多くございました。ところがたとえば、ミシンのごときものになりますと、各個人家庭に拂い下げられておる場合もございます。一概には申されません。各方面にわたつております。
  22. 聽濤克巳

    聽濤委員 たとえば今事例をあげられました個人などの家庭にそういうものが拂い下げられたというのは、どういう手順で行われたのでしようか。
  23. 石黒四郎

    石黒政府委員 これは先ほど大臣から御説明がございましたように、特殊物件としてあるいは緊急放出物件として、あるいは配給計画によるものもございました。そういうものとして拂い下げられたものでございます。
  24. 聽濤克巳

    聽濤委員 そういう場合もあるように今御説明がありましたが、大体自動車工作機具金塊銀塊、その他いろいろな機械類資材類が非常に多いので、結局割合からいうと、大きな軍需会社とか、そういうものに主として拂い下げられたのではないかと十分想像されるわけであります。そういたしますと、実際に今度また補償するというのですけれども、そういうところでは、あるいは転売も行われたでしようし、あるいは生産に利用してすでにもう利得を得ておるというような場合が、大部分を占めておるのではないかと思うのですが、どうでしよう
  25. 石黒四郎

    石黒政府委員 必ずしもさように申せないのでございます。ミシンのごときは、先ほど申し上げましたように三千何百台ございます。そのうち約八割くらいが国家からの拂下げ品、二割は各個人が取得したものと思われるのでありますが、これは大部分が零細な経済を営んでおります各家庭あるいはその延長のようなところから沒収されたのであります。それらにも今回の法律によりまして、かつて没収しました代金返還いたすわけでございます。
  26. 聽濤克巳

    聽濤委員 たとえば先ほどの話で金塊など大部分を占めておるという話がありましたが、金塊とか銀塊などは一体どういうふうに処置されたものでしようか。
  27. 石黒四郎

    石黒政府委員 金塊銀塊等個人から没収したものではございません。政府の手元にありましたものが、略奪品と判明いたしましたので、政府の手から返還いたしました。政府以外の民間には関係ございません。
  28. 聽濤克巳

    聽濤委員 実はこの問題はもともと略奪物件でありますから、これは俗な言葉でいえば、暗やみでもつて行われたよう事柄なんです。この暗やみで行われたようなことが、今度法案の形で公然と正式にこれを補償するよう法案が出て来ておるのですが、問題が問題で、われわれはほとんど何らの知識を與えられていない。ここで略奪物件の全体の数量とか種類とか金額とか、こういうものが拂い下げられた実際のいろいろな手続や措置、こういうことが全体としてはつきりこの委員会で明らかにされませんと、これはとても審議のしようがない問題である。そこで私はいろいろ疑問を持つておるのです。とてもこのままでは審議できないような気がしますので、政府の方に要求したいと思うのですが、これらの数量種類金額、あるいはその拂下げの実情、こういうものについてはつきりとした調査が行われておるはずでありますから、調査資料を提出していただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  29. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 すみやかに御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  30. 聽濤克巳

    聽濤委員 ぜひそういうふうにしてもらいたいと思います。そうでないとこの委員会審議のしようがないと思います。この中に書いてある趣旨は非常に簡單なことのようですが、事実そのものが非常に重要になつて来るので、それについていろいろ検討してみてこれを判断する必要があります。私たちが特におそれるのは、そういうやみ取引が行われたということに不正その他の事柄が必ずやつきまとつておるのじやないか。そういうことになりますと事柄は重大でありますから、政府の方も十分責任をもつて調査した資料を提出していただきたい、私の質問はこれで打切ります。
  31. 石黒四郎

    石黒政府委員 ただいま御質問中に略奪財産というのは、略奪であるから、ほとんどやみの行為であろうというお話がございました。その点解釈おありじやないかと存じますので、説明させていただきたいと存じます。この略奪財産という名前連合国側がつけた名前でありますが、日本側としては戦争中に適法に売買入手したものも、戰争に負けてみますと、連合国側の申します通り、それは占領下において強制力のもとにおいて入手されたものであるという判定を下されるわけであります。しかし当時の取引としては違法な取引でも何でもない、国内的には適法なものであつたわけでございます。戰争に負けました結果略奪品としてその取引は無効とされ、従つて返還をしなければならぬ、こういうことに相なる筋合いでございますので一言申し上げておきます。
  32. 竹尾弌

    竹尾委員 ただいまの質問に関連することでございますが、政府としてはそうした略奪品の明細な調査の結果を御報告する。こういうお話でございましたが、たまたま今金塊銀塊のことが問題になりましたので、もしできますれば金塊銀塊の点についてもう少し内容を御回答願えれば幸いだと存じます。
  33. 石黒四郎

    石黒政府委員 これはいずれも戰争中に陸軍及び海軍の力で占領地域から日本に持つて参りましたものでございます。持つて参りましたときの形体は、金銀塊もございましたし、あるいはその地に流通いたします金貨、銀貨もごさいましたわけであります。日本に持つて参りましてから後これを溶かしまして、塊にしてある。いずれも政府が所有しておつたのであります。その持つて来ました所はジヤワが一番多かつたのであります。その他正確には記憶いたしませんが、確かに向うから持つて参りまして、終戰時日本銀行の金庫に東京または大阪において收納してあつたものでございます。
  34. 竹尾弌

    竹尾委員 その数量は大体どのくらいありますか。
  35. 石黒四郎

    石黒政府委員 金が約一トン六キロばかりであります。銀塊は二百四十七トンばかりございます。
  36. 仲内憲治

    仲内委員 私の伺いたいのは、第六條の賠償庁長官審査確認の問題であります。この点につきましては、先ほど並木委員の御質問に対して、審査委員会ようなものを設ける意思はないような御答弁があつたのでありますが、この問題は、どちらかといえば、戰時における特別の事情のもとに政府の誤謬もしくは過失から起つた問題であるというように見られるのでありますからして、これらの点から考えまして、この略奪物件措置についての審査につきましては、民間人をも加えた審査委員会というようなものを設けて確認することが公正であり、民主的であるというように考えるのでありますが、政府の御所見を伺つておきたいのであります。
  37. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 第六條につきましての御意見、ごもつともな点がございますが、当時收納したときの数量代金も明確でありまして、それが申請がございましたときに書面上に不備な点がなければ、これをただちに処置をとるというように、問題はきわめて簡單でありまして、收納したときの事情等も今では相当明らかになつておるような次第であります。またもしこれに不服があつた場合におきましては、第九條に裁判所に出訴することもできるよう規定なつておりますから、政府としてはこの程度十分事務ははかどるものだと考えております。しかし国会において、今後この法案審査の過程におきまして、どうしても委員会等設置が必要であるとお認めになつた場合においては、またさように御処置願つてもさしつかえありません。なおこれらの点に関しまして、政府としては十分御説明をいたしてもよろしいと存じておるような次第であります。
  38. 岡崎勝男

    岡崎委員長 よろしゆうございすか。それでは本法律案に関する質疑はこの程度といたしておきます。但し本法律案はただいまのところ予備審査でありますので、念のためその点を申し上げておきます。     —————————————
  39. 岡崎勝男

    岡崎委員長 続いて海外移住組合法廃止に関する法律案議題といたします。まず政府側より提案理由説明を求めます。     —————————————
  40. 川村松助

    川村政府委員 海外移住組合法廃止に関する法律案につきまして、その理由を申し上げます。  今般現情勢にかんがみまして、海外移住組合法廃止に関する法律を制定し、海外移住組合法廃止することにいたしました。海外移住組合法は、日本人の海外移住を助成することを目的といたしまして、昭和二年に制定されたものであります。これによりまして各府県ごとに一つの割で移住組合が設立され、組合員に対して移住に必要な資金、土地、物件等を貸付または譲渡をする等の事業をやつて参つたのであります。しかるに現在全国の海外移住組合は、そのほとんどすべてがまつたくその本来の活動を停止いたしておりまして、いわばその積極的な存在価値がまつたくなくなつておるのであります。他面従来の組合はややもすれば国策会社的な組織であると見られる面もあり、この際海外移住組合法廃止いたしまして、将来わが国民海外移住が許されるような場合には、新しい構想のもとに発足するのが最も望ましいと思われますので、以上の提案理由大要のもとにこの法律案を提出する次第であります。  なおその説明につきましては管理局長から詳細御説明を申し上げたいと思います。どうぞよろしく御審議を願います。
  41. 倭島英二

    ○倭島政府委員 海外移住組合法廃止に関します法律案のごく大要の建前を御説明申し上げたいと存じます。  ごく簡單法律でございますが、第一條は本法律の骨子でございまして、これで海外移住組合連合会並びに各県にございました海外移住組合準拠法でごさいました海外移住組合法廃止されるわけでございます。  第二條は、実は従来の法律欠陷を多少矯正するという趣旨が含まれております。海外移住組合法清算とか罰則等その他の規定産業組合法から準用しておつたのでございますが、産業組合法昭和二十三年十月、消費生活協同組合法が施行されましたと同時に廃止せられました。その際に同じく産業組合法を準用しておりました他の法律関係、たとえば住宅組合法だとか農林中央金庫法等につきましては、産業組合法廃止せられましても、その後準拠法として残るようなふうの規定が設けられておつたのでございますが、海外移住組合法関係につきましては、当時漏れておりましたので、この漏れておりました欠陷を矯正する趣旨が第二條であります。従つてその当時の脱落しておりましたところを附加するという趣旨が第二條でございます。  第三條は解散に関する規定でございます。海外移住組合連合会及び移住組合は、海外移住組合法廃止の際、すなわち昭和二十五年五月一日に解散して清算法人となるという規定でございます。先ほどもちよつと申しましたが、海外移住組合法を完全な形に返すという関係で、第二條の施行せられる時期と、それから第一條、第三條の施行せられる時期について明確にしましたのが、附則の規定でございます。
  42. 岡崎勝男

    岡崎委員 質疑があればこれを許します。
  43. 聽濤克巳

    聽濤委員 一点だけ聞いておきたいと思います。海外移住組合が機能を停止しておるというのは事実の通りであろうと思います。従つてこれに対して組合法廃止するというのも、当然なことのように思うのですが、政府の方でも、将来やはり海外移住組合といつたようなものを復活する趣旨を持つておられると思うのですが、今移民問題とかなんとかいうことがいろいろ問題にされている際に、政府の方では、新しい構想としてどういうものをすでに持つておられるのですか、念のために承つておきたいと思います。
  44. 川村松助

    川村政府委員 現在はまだ具体的に持つておりません。今後の情勢によりまして即応したいと思つております。
  45. 並木芳雄

    並木委員 私も一点だけお伺いしておきますがこれは過去において非常に効果のあつた制度ですかどうか。どのくらいの人間がこれを利用することができたか、どのくらいの金額が利用されたか。今後の方針を検討する上において参考までにお尋ねいたします。
  46. 倭島英二

    ○倭島政府委員 この移住組合ができましたのは、先ほども御説明申し上げましたが、昭和二年の法律によるものでございまして。当初は主としてブラジル関係で、自作農設定という事業を行つて来たのでございますが、その後さらにパラグワイについても自作農を——これは小規模でございますが、事業をやつたわけでございます。もつともその後、組合という関係事業を進めて行くよりもさらに会社組織にした方がよろしいという考えから、昭和十二年に日南産業という会社が設立されて、国内関係は大部分その方へ讓つておりますし、それから現地ブラジル関係は、すでに昭和四年からブラジル拓殖組合というのが現地事業をやつてつたわけであります。  なおこの移住組合関係で、内地の方から、主としてブラジル、それから少部分パラグワイの関係移住の便宜をとりはからいましたのは、約一万六千名程度でございます。
  47. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員 この際、この法律を出された意味を伺いたいと思います。海外移住ができなくなつてから年が久しく、終戰後は特にこういう状態になつたわけですが、これは單にいらぬ法律を置いていたのをこの際思い出してやめられるというだけですが。それとも何らか発展的な意味があつて、終戦以来海外移住については目途が立たなかつたけれども、移住が再開されそうであるからそのためには従来の移住法はない方がいいというような意味があるのでありますが。もしそういう関係で先に対する見通しが何にもないならば、移住が再開されてあるいは役に立つかもしれぬという気持があるなら、これは置いておいてもいいんじやないかという感じがいたします。特にこの際出された趣旨を伺います。
  48. 倭島英二

    ○倭島政府委員 お答え申します。現在の組合の状況は先ほど申し上げた通りでほとんど活動停止の状況にございますが、この組合法のかつこうが、要するに国策的に移民の問題を取扱うという傾向にありましたので、新しい憲法下の建前、あるいは新しい国際情勢へ、日本が新しい建前で海外に発展して行くということからいつても、この組合法に基いた組合の活動にまつという点は、適当ではないではないかと考えましたが一つであります。なおこの古いと申しますか、従来の建前を変更しておいた方が、今後の発展上もいいのではないかということについても、関係方面の御意見もございますし、政府として、現在機能停止の状況にあり、実際各県においても、ほとんど組合はございましたけれども、全然忘れられ、ただ家族の安否を尋ねるのに使われておる程度の活動しかないということでありましたので、それならばこの際、廃止をして、新しい建前で、また移民の問題を考えるということがいいのではないかということから、廃止法案を提出するに至つたわけであります。
  49. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員 従来の海外移住組合法は、いわゆる国策移民の建前でできたので、あまり新時代には思わしくないといつたことはよくわかり、私も同感であります。そうすればこういうふうに理解してよろしゆうございますか。今まではそういつたふうな思わしくないものとわかり切つたものを残しておいたが、今後海外移民についてもだんだん考え得る状態になつたので、従来のそういつたような建前のものは、積極的にやめた方がよろしいという、積極的な方法が裏にあるんだというふうに考えてよろしいのですか。
  50. 倭島英二

    ○倭島政府委員 そういう含みを持つておることは、今の御意見の通りであります。
  51. 小川半次

    ○小川(半)委員 一点だけお尋ねしておきたいと思います。現在組合には若干の財産がいずれ保有されておると思うのですが、現在どれだけの財産があるかという点。それからこの法律廃止になれば、従つて組合が解散となります。組合が解散となれば清算しなければなりません。その清算の方法はどういうことになるか、あるいは清算後の財産というものはいずれの方面に帰属することになるか、この点を明らかにしてほしいと思います。
  52. 倭島英二

    ○倭島政府委員 現在この組合関係で残つておりますのは、主としてブラジル自作農へ融資した関係が残つておるわけでございますが、その大体の額は約百三十四万円程度でございます。これは現在占領下の現状におきましては、在外財産の処分の関係が直接行えない状況にいまだございますので、海外との債権債務の処理を実行し得る時期になりまして清算が行われると思います。それから清算の方法につきましては、先ほど第二條関係で申し上げたわけでありますが、従来の産業組合法規定を準用せられることになるわけであります。
  53. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは本日の質疑はこの程度といたしまして、この法律案も現在のところでは予備審査でありますから、さよう御承知願います。     —————————————
  54. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次いで国際情勢等に関する件を議題といたします。
  55. 竹尾弌

    竹尾委員 議事進行についてちよつと……。きよう質問通告者は数名あるそうでございますが、時間がすでに十一時十五分になつておりますし、特に川村政務次官は十二時から政務次官会議のために、十二時までしかおられない、こういうことでございますので、質問の時間はあまり制限するとしかられるかもしれませんけれども、大体二十分程度にひとつ御制限願いたいと思います。
  56. 岡崎勝男

    岡崎委員長 竹尾君の今の御発言につきましては、私もこの質疑通告を見まして、やはり二十分程度にしなければ非常に時間がかかり過ぎるように思いますので、各自その程度になさるように特にお願いしておきます。質疑通告順によつてこれを許します。
  57. 聽濤克巳

    聽濤委員 本日のところはなるべくそういう御趣旨によつてやりますけれども、この前、大体一週間に一ぺんで、外務委員会の仕事も非常に重要ですから、この水曜日の定例委員会では午前、午後を費してやるという話も出ておるのですから、その原則は貫いてもらいたいと思います。いつもこういうことをやられたのでは話が進みませんから、その点は念のために申し上げます。
  58. 岡崎勝男

    岡崎委員長 その点はさらに理事会を開きまして、御協議いたすことにしております。菊池義郎君。
  59. 菊池義郎

    ○菊池委員 川村次官と西村局長にお伺いしたいと思います。この中ソ同盟條約は、日本にとりまして重大な関係を有するものでありますから、国会においては大いにこれを検討論議いたしまして、最善の方策を立て、これに善処せんければならぬと思うのであります。この中ソ同盟條約につきまして一つわからぬことがございますが、対日講和ができたならば、族順、大連及び満州の権益を返すということがあります。この対日講和ができたなちばというコンデイショナルな條件というものは、一体何を意味するものでありましようか。これについてお伺いいたしたいと思うのであります。つまり返す意思があるならば、対日講和ができようが、できなかろうが、返さなければならぬわけでありますが、特にそういう條件をつけたというのは一体何を意味しているのでありましようか、お伺いいたしたい。またこれに答えられないはずはないと思うのであります。
  60. 川村松助

    川村政府委員 ただいまのことは、事調査に関する問題でありますから、調査局長からお答えいたしたいと思います。
  61. 與謝野秀

    與謝野政府委員 お答えいたします。政府といたしまして、第三国間の條約の解釈なり、また締結当事者の意思について何も申し上げる筋ではないと思います。ただこの問題に関連しましてまたいろいろ討議等が行われる参考となります考え方というものについて、御参考までに申し上げたいと思うのであります。  旅順、大連及び長春鉄道というものにつきましては、一九四五年に中国国民政府とソビエト・ロシヤの間に協定がありまして、これわいろいろこまかい協定があるのでありますが、大体原則として三十年間という期限をもつてソ連がこれらを握つていることになつたわけであります。それが今回毛沢東がモスクリに参りましての交渉の結果、新しい條約ができ上つたのでありまして、何ゆえに対日講和という時期と結びつけたかということは、いろいろな考え方があろうかと思うのでありますが、最もすなおな考えとしては、ソ連邦側において、対日講和ができるという国際情勢なつたならばこれを返してもいい、しかしそれまではこれを握つている必要があるということで、対日講和ということが一つの期限となつて出て来たものではないかと推測されるのであります。また返す意思がなくて、対日講和がどうせできつこないから、こういう期限をつけたのだという考え方もあろうかと思うのでありますが、それに対しては、長春鉄道と旅順に対しては、一九五二年という期限が、おそらく中国側の希望に基いたものと推測されるのでありますが、ついております。大連については一九五二年という期限はついておらないのであります。
  62. 菊池義郎

    ○菊池委員 それからこの同盟條約の中に、日本よりの侵略に対し云々という文句があるのでありますが、これはわれわれはなはだ意外に思うのであります。軍備がすでに撤廃せられ、憲法において戦争を放棄しておりますところの日本を目ざして、いかにも侵略国家のごとく扱つておるのでありますが、いやしくもポツダム宣言を発したる連合国の一つでありますところのソ連及び中国が、かくのごとき言葉を用いて條約をつくるということは、日本といたしましてはこれを黙視することはできぬと思います。これに対しましてもし日本政府が沈黙を守るならば、それはすなわち日本は将来において再軍備をいたして、そうしてまた侵略国家として立ち上る意思があるのではないかというような暗黙の承認とも見られないことはないので、世界に対しまして重大な影響を與えるものだろうと思います。これは断じて沈黙を守つてはならない。こういう條文に現われました條約に対しましては、日本政府といたしましては、すべからく何らかの形においてその意思を表示せんければならない、日本の所信を表明せんければならぬと思うのでありますが、政府はこれに対してどういう態度をとられるのでありますか。これに対して沈黙を守るがごときは、断じて日本政府ではない。これはソ連の政府であり、中国の政府であると思います。
  63. 與謝野秀

    與謝野政府委員 政府としては何ら申し上げることがないのでありますが、私は沈黙を守るべきである、こう今日としては考えてなお、なぜ侵略という言葉がこの條約に出て参るかということについても、いろいろの考え方があろうかと思うのでありますが、第一に、この中ソ同盟條約というものは、東ヨーロッパ諸国とソ連邦が結んでおります友好同盟條約に範をとつたのでありまして、條文その他も大体同一なのであります。これらの條約においては、日本というかわりに、ドイツ及びドイツと結ぶ侵略国ということが対象になつておるのでありまして、その点において特にかわつたものが出て来たわけではないのであります。また考えようによりましては、侵略という言葉についても、いろいろ検討をする必要があるのでありまして、われわれ日本が武装を放棄し、戦争を放棄したのだから、日本から侵略を受ける脅威はないということは、両当事国とも知つておるに相違ないのでありますが、こういう言葉が使われておるのは、おそらく侵略という言葉にまた別の意味があるのではないかとも考えられるのであります。つまり共産主義の根本理念からいいますれば、資本主義国家が存する限りにおきましては、世界の平和と安全は確保できないというわけでありますから、日本の侵略ということは、つまり日本が共産勢力下に置かれて、その際に初めて侵略の脅威がなくなるということになるとするならば、幾らわれわれは侵略しないと声明しても、これは平行線のような議論になつてしまうということも考えられるのであります。
  64. 菊池義郎

    ○菊池委員 武力以外に日本から侵略ということはないわけでありますから、これに対して沈黙を守ることはできぬと思うのでありますが、そういうことであれば、どうにもしようがない。少くともわれわれがとつてかわつて政府を握らなければならぬ。  それから台湾との貿易について新聞に発表されておりますが、これは司令部から何か政府に通知でもありましたのですか、お伺いいたします。
  65. 川村松助

    川村政府委員 この問題につきましては、通産省から出席しましてお答えすることになつておつたのでありますが、まだ出席しておりませんから、もう少し御猶予を願います。
  66. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから、台湾の民族独立運動が今日台頭しておるのでありますが、中ソ同盟條約ができ上りましてから、アメリカあたりにも、アチソンの声明に非常に反対して、台湾を放棄してはならぬという声が向うの識者の間に起つておる。それらの情勢について、外務省へ何か入つたものがありましたならば、お知らせ願いたいと思います。
  67. 與謝野秀

    與謝野政府委員 御質問ようなニユースは、新聞等によく伝えられるのでありますが、アメリカの責任ある当局の言明なりその他で、何らわれわれは入手したようなものはございません。
  68. 菊池義郎

    ○菊池委員 英国の労働党の勝利は、対日講和——全面講和でなくても、あるいは単独講和でも、対日講和に対しまして影響があるのではなかろうかと思うのでありますが、政府の見解はいかがでありますか。
  69. 與謝野秀

    與謝野政府委員 英国の労働党が今回の総選挙で勝ちましたことは、従来の内閣がそのまま存続し、同一の外交方針をとつて行くということになるのでありますが、選挙の結果、與党と野党の差が非常に接近いたしましたために、今後の外交政策推進上いろいろ難点があるということは伝えられておるのであります。労働党の対日講和の政策というものは、先般のコロンボ会議で検討されたのでありますが、今回の選挙の結果、これが講和問題に特に影響があるという点は一つもないと考えております。
  70. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから、日本の漁区の問題でありますが、海国日本におきまして、水産くらい大事な産業はないと私は考えておる。日本の四面が制限せられまして、南の方は硫黄島に、それから北の方も制限せられ、支那海の方も制限せられておるのでありますが、日本の陳情のしようによりましては、何とか向うの方はもつと漁場を拡張してくれるだろうと思うのであります。南方のマツカーサー・ラインをもつと延長してもらうように、われわれはこれまで幾たびかお願いしておるのでありますが、政府といたしましては、これまで陳情をしておるかどうか、どういう陳情をしておられるか、伺いたい。北の方ももつと何とか拡張してもらいたい。共産党の諸君には耳が痛い話かしらぬのでありますが、北の方にも南の方にも、もつと拡大していただきたいと思う。どうも水産食糧が足りなくて困る。この点についての政府のこれまでの努力の結果を御報告願いたいと思います。
  71. 川村松助

    川村政府委員 漁業の問題につきましては、主管が違いますので、どうかと思いますけれども、外務省の関連した点だけを御報告申し上げたいと思います。  漁区の拡張の経過につきましては、昭和二十年九月二十七日及び十月十三日付の覚書によりまして設定された漁区が第一次の漁区であります。これによつて、北海道沖合い、三陸沖合い、九州西方海面を漁場とする、しかもこれが特定期間における漁船の操作が許されたのであります。翌二十一年の六月二十一日に、総司令部は、当時の逼迫しました食糧事情を考慮して、従来の漁区を約二倍拡張してくれたのであります。これが第二次の指定漁区でありまして、これによつて東部及び南部に漁区が相当拡張され、南西部にも若干の拡張を見たのは御承知の通りであります。その後三年余り変更を見なかつたのでありますが、昭和二十四年の九月十九日に、北緯二十四度線から四十度の線、東経百八十度線から百六十五度の線、これに囲まれました約八十六万四千平方マイルが漁区に認められるようになつたのであります。この第三次の指定が現在に及んで参りまして、さらに拡張することに努力しております。
  72. 菊池義郎

    ○菊池委員 終りました。
  73. 岡崎勝男

  74. 並木芳雄

    並木委員 山口国務大臣に特に御質問申し上げたいと思います。それは、賠償関係のことと、特調関係のことと、二つでございますが、賠償関係につきましては、最近私たちが声を聞くところによりますと、製鉄が補給金の関係で非常にきゆうくつである。特に造船業方面から要望の声が強いのでありますけれども、ぜひひとつ賠償工場に指定されておるところの製鉄工場というものをフルに動かして、そうして国内で製鉄業を振興していただきたい、こういう声が多いのであります。製鋼と製鉄と二つありますが、製鋼の方はともかくとして、製鉄部門の方を賠償庁として力を入れて、通産省と協力して、大いにこの機会にやつてもらいたいという声が強うございますので、現在賠償工場と指定されておるところの方面において、製鉄関係、そういうものの利用方法、活用方法はどうなつておるかどうか。これに関連して、もし賠償問題の現段階における特質及び今後の見通し等について、御所見があるならばお伺いしたいと思います。  第二番の特調関係のことにつきましては、この前この委員会でも本会議でも問題になりました進駐軍の解除物件の処分については、あの薬がきいて、大分宣伝もしておるようでありますけれども、今日までの結果、どういうふうな処分の成績を上げておるか、そういう点についてお伺いします。  それから先般進駐軍用の住宅として二千戸の発注があつたというふうに聞いておりますけれども、これはいわゆる普通の終戰処理費の中からまかなわれるものであるかどうか。臨時に急に出て来た注文であるのかどうか。向うの軍事費で直接まかなうものであるかどうか。また向うの新聞などには四千戸ということが報ぜられておりましたけれども、この二千戸は、その四千戸のうちの一部分であつて、将来はさらに増加して行くものと思われるかどうか。その建設方針というものは、軍の方で直営でやるものか、あるいは請負制度、指名入札、あるいは普通の一般入札によつてやるのか。その辺の状態が私どもにはよくわかりませんのでお伺いしたいと思います。特に終戰処理費と、向うから直接拂われる軍事費との使用の区別というものに対しては、私たちはわかつておりませんので、それも長官おわかりでございましたならば、この機会にお知らせを願いたいと思います。  建築のことが出ましたからこの機会にお伺いするのですが、テイト・ホテルといつたような、要するに進駐軍に向けられておりました国有財産、そういつたものが最近拂い下げられるということでしたが、こういうものはどのくらいあつて、そのおもなるものはどうであるか。また非常な金額に上ると思うのですけれども、こういうものの拂下げ方針目的、そういつたものをこの機会に具体的にお知らせ願いたいと思います。  最後に特調関係のことで、最近官紀が紊乱しておるということを聞いております。これも外から見る私たちにはなかなかよくわからない、むずかしいことでありますが、先般吉田総理もこのことについては触れたと聞いております。総理の触れるくらいでありますから相当の重要問題であろうと思いますが、その最高責任者である長官は、これに対してどういう処置をとつているか、一体その官紀粛正を必要とする内容はどんなものがあるか、明らかにしていただきたいと思います。
  75. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 まず鉄鋼関係でありますが、鉄鋼関係の賠償指定工場の生産の状況は、現在のところ極東委員会の中間案に基いて行われておるのでありまして、これによりますと現在の残存能力は、銑鉄二百万米トン、それから鋼塊が三百五十万トン、圧延二百七十七万五千トンとなつておりますが、実際においては総司令部からは賠償指定工場として二十一工場が指定されております。  これらの工場を操業するためには司令部の一々の許可が必要でありまして、現在操業工場十八、休止工場三となつております。ことにわれわれが年来待望しておりました広畑が、来る三月二十八日から火入式が行われて操業されることになつております。この点についてわれわれの方としては明るい見通しを立てているような次第であります。これらの操業工場の生産状況は、昨年四月のわが国全体の生産量を基準といたしますと、来る四月以後は、賠償工場といたしましては銑鉄が六四%、鋼塊が五三%、圧延が三七%こういうふうになつているのであります。  続いて賠償の一般状況でありますが、昨年の五月、いわゆるマツコイ声明によりましてまず第一に、昭和二十二年末から米国の一方的指令により実施されて参りました前渡し撤去は、現在着手中のものを除いては中止しております。第二にさらに進んで日本経済をすみやかに自立させるために今後一切の賠償撤去をやめて、日本の平和産業を無制限に発展させることが提案されたのであります。現在のところ具体的に実施されておりますのは、主として次の三つであります。賠償撤去につきましては、指令された解体梱包作業を完了し、軍量約九万六千トンを四月に引渡しをやるのであります。残余約一万トンの引渡しを待つているのでありますが、受取国の配給が進めば本年三月中には引渡しを完了する見込みであります。第二に賠償指定工場施設の手入れ基準が大幅に切り下げられました結果、政府予算としては約十億円の節約になることに相なつております。  次に特調関係についてお尋ねでございましたが、特調関係について新聞紙上に伝えらるる二千戸の問題、これは連合軍最高司令官から政府に対しまして、進駐軍住宅二千戸を建設する命令が参つております。この資金は約五十三億円でありまして、その資金の出所は見返り資金からこれを充当することに相なつております。大体資金計画といたしましては十箇年間に元利が返済されることになつております。これは見返り資金の性質上さようであります。その家賃は一戸平均一箇月未ドルにいたしまして約七十三ドルと仮定されております。しかしてこれが建設につきましては、新たに本国会に進駐軍住宅公社法案という案を用意しております。いずれ御審議を願うことに相なると思いますが、一応この五十三億円をこの公社の財団に繰入れまして、そうして公社自体がこの二千戸の建築及び経営をすることになつております。この建築に対しましては、特別調達庁がもちろん関與するのであります。またその人員の面及び、この処理等につきましては、特別調達庁の職員が進駐軍住宅公社の社員を兼務するという建前になつておりますから、別に人員を増加する必要はないのではないかと思います。従つて先方よりの命令としては、三月三十一日までに設計あるいは公社の設立及びその財政的措置、それから一切の契約、これは公社が入札をもつて請負人に請負わす、こういうことに相なるだろうと思うのでありますが、そういう諸般の準備を終えて四月一日から正式に公社が成立し、契約が正式に締結され、また建設が開始される、こういうことに相なつておるような次第であります。  それから解除物件の売拂い状況でありまするが、並木委員の申された通り、相当この売拂いに対しましては困難な面がございますが、前国会において私から御説明申し上げた通り、これが保管料、倉庫費だけでも約一箇月に六千万円からを拂つておるのであります。さような観点から、政府としては可能な範囲においてすみやかにこれを売拂うよう措置いたしておるような次第であります。中にはデパート等に委託して売るような方法も講じております。なお一般方針としては、公入札をもつて売拂つております。その数字等については、最近の集計を後ほどお手元まで御報告いたしたいと思います。  なお特調関係において各地にいろいろおもしろくない問題が起きているということも承知いたしております。横浜において七名でありましたか、この解除物件の売拂い等に関しまして、司直の手によつて捜査されておる問題もありまして、真に遺憾にたえない次第であります。さきに大阪においても多少問題がありました。なお京都においては支局長が当局より尋問を受けておるという問題も起きておりますが、これは選挙関係の問題でありまして、直接特調の所管事項とは関係がないようであります。これを要するに私も総理大臣から直接、この予算面においても一箇年千二百億円からを費消するところの調達庁といたしましては、かかるスキャンダル等を拂拭するように嚴に申されておりますので、十分下僚に対して戒告を加えておるような次第であります。今後かかる事態の起きないように十分相戒めて参りたいと考えておるような次第でございます。
  76. 岡崎勝男

  77. 竹尾弌

    竹尾委員 私のお尋ねは大体四つございますけれども、今の山口国務大臣の御答弁について一、二お尋ねしたいのであります。  今山口国務大臣は進駐軍関係の建築に関して、見返資金特別会計から予算をとるこういうお話でありましたが、御承知のように見返資金特別会計は日本の経済復興、特に災害の復興にこれを充てる。こういう趣旨ように承つておりますので、この資金から支出するとなると、見返資金特別会計の趣旨に反しはしないかどうかということを第一にお尋ねいたしたいのであります。その点御答弁を願うと同時に、この特別会計から出されるということは、進駐軍の指示か命令か何かそういうことがあつたのかどうか、その点についてお尋ねいたしたいと思います。
  78. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 この際並木委員からテイト・ホテルの売却その他についての御質問がありましたが、答弁が漏れておりましたからお答えいたします。実はこの問題は、経営は以前は通産省の方でいたしておりました。この売拂い等に関しましては、大蔵省、特にテイト・ホテルの場合においては東京財務部の所管になつておるかと存じますので、この国有財産の売拂い等に関しましては、特調及び賠償庁としては、直接関係がないので御答弁を遠慮したような次第でありますから、さよう御承知を願います。  ただいまの竹尾委員のお尋ねでありますが、もちろん見返り資金からこれを使用する命令がございました。命令ではありますが、その命令のよつて来るところは、見返り資金の性質から申しましても、いわゆる現在の資金計画面におきましては、先ほど申した通り、一戸前一箇月七十三ドルといたしましても、約十箇年間において、元利が完全に返済され、しかもその建設した財産は公社の所有となります。従つて日本政府財産の一部に編入されるのでありまして、この見返り資金の運用面におきましても、各種の方面に放出されておるのでありますが、むしろ私はこの公社を組織して、この公社に五十三億を振りかえて、これが経営面において十箇年間において元利がきれいに返済されるということから考えますと、政府がすでに放出しております見返り資金の使用面におきましても、何ら見返り資金の性質及び先方の指示に基くところの資金計画というような面についてはいささかの矛盾はなく、むしろわれわれとしてはこの五十三億円の見返り資金内からの流用ということは、経営としても成立つのではないかと考えておるような次第でございます。
  79. 竹尾弌

    竹尾委員 最近の新聞紙の報道によりすまと、日本があらゆる国際会議に出席できるように、その権限をマツカーサー司令官に與えるというような記事が出ております。そこでお尋ね申し上げるのですけれども、私は国際連合のごとき会議も広い意味ではいわゆる国際会議だと思うのです。ところが国際連合に加盟するということは、外務省当局あたりの御意見だと非常にむずかしい、こういうことが言われておりますが、マッカーサー司令官にこの権限を與えるということは、何かの形でこうした国際連合の会議にも出席できるようにとりはからうという意味にとつてよろしいかどうか、その点について当局の御意見をまずお伺いいたします。
  80. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 先月二十六日の総司令部の発表をごらんになりますと、はつきりございます通り、今度の中間指令で明らかにされておることは、日本が招請を受けました技術的性質の国際会議または国際協定に対しまして、総司令官の方で占領に役立つと判断されたときには、日本政府に正式参加を許してよろしい、こういう趣旨のものでございます。自然竹尾委員のお考えになつておりますように、国際連合といつたようなああいう大きな政治的な意味を持つ国際会議ないしは国際協定というものは考えておられない、こう了解してよかろうと思います。
  81. 竹尾弌

    竹尾委員 そのことは大体わかつておりますが、こういうことをきつかけに、非常にむずかしいと言われる国際連合に何か出席できるような口火が、ここに生れるのではないかというふうに考えられない節もないではないのでお尋ねしたのですが、その点重ねてひとつ伺いたい。
  82. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 国際連合主催のもとに開催される国際会議または国際連合主催のもとに締結される国際協定につきまして、この指令に該当するような場合がありましたらば、参加を許されることはあり得る、こういうふうに考えております。
  83. 竹尾弌

    竹尾委員 それでは何かの機会に国際連合に出席できるこう解釈していいですね。
  84. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 そうは考えておりません。
  85. 竹尾弌

    竹尾委員 それではその点はそのくらいにいたしておきまして、次にお尋ねいたしますが、これも新聞紙に出ておりますけれども、ソビエト領にいわゆる特別残留者と申しましようか、いまだに帰還できない同胞がおられる、その氏名が発表になりまして、これは受刑者も含んでおる、こういうような報道でございますが、新聞紙に一部発表になりましたそれらの人々を含めまして、現在シベリアにおられるいわゆる特別残留者というものは、ことごとくと申しましようか、大体ソ連側から見て戰犯と目されておるものであるかどうか、この中には明らかに戰犯の方もありましようが、その中でたとえば外務省の、これはソビエト関係の有能な人と許されておりまするかつての大使館参事官をされた宮川船夫君の名前も出ておりましたし、これも外務省関係だと思いますけれども、外村史郎というぺンネームで、親ソ主義者であつて、いろいろ評論を書いておられた馬場哲也君のごときも含まれておるように書いておりますが、こういうものも戰犯扱いにされておるのかどうか。それからこれは新聞紙上をにぎわしておりましたけれども、例の往年の越境事件の岡田嘉子、杉本良吉の消息も新聞紙上に報道された通りであるかどうか。それから政府はこれらの人たちに対して、特に外務省関係などはそうでありましようが、特にしかるべき節を通じて、これらの人々の帰国方について考慮されておるかどうか、そういう点をひとつ……。
  86. 倭島英二

    ○倭島政府委員 二、三日前の新聞に出ておりました関係かと存じますが、あの新聞に特別未帰還者という言葉が使つてございます。これはどういう意味か、私も新聞の報道でありますので、よく存じませんが、ただ考え得ることは特別未帰還者給與法という法律がございます。その法律関係から何か思いついたか、そういう関係で使つた言葉ではないかと思います。その法律によりますれば、これは軍人関係の未帰還者の方と比較いたしまして、一般邦人の未帰還者の給與の関係を定めておる特別未還者給與法というのがございますが、一般未帰還者ということだろうと思います。新聞の報道を見ますとそうではないかと思います。今の新聞に出ておる関係はそういうふうに見えるが、これは一般未帰還者のことではないかと思います。  それから戰犯関係と思われる方々の帰還の問題について、政府はどうしておるかという御質問ように思いますが、政府はまだソ連関係から、これらの方々が戰犯関係であるというよう通告を受けておりません。従つて現在ソ連地区に残留と申しましようか、まだ未帰還のまま残つておられる方々の帰還につきましては、伝えられるあるいは想像せられる戰犯とかなんとかいう関係は考慮に入れないで、とにかく未引揚げの方々の帰還を何とか一日も早くお帰りになれるように努力をしておるという状況であります。
  87. 竹尾弌

    竹尾委員 これも新聞紙上で伝えられておることですけれども、日本に対してできるなら單独講和をするというような声が叫ばれておるようであります。講和は御承知のように、つまり供えられたすえぜんを食うようなつておるので、出されたすえぜんを食わなければなりませんが、おさしみがよいか、うま煮がよいか、こういうことについて多少えり好みの希望を述べることは、これはさしつかえないというふうにとられておると思うのであります。そこで單独講和を提起された場合に、これを一々受けなければならないでしよう。そうなると、それから次に多数講和になり、あるいは全面講和になるということも考え得られないことはありませんが、日本に対して個々別々に單独講和を持ちかけられたような場合に、これに対して政府の心構えと申しますか、そういう点について、それはもちろん受けなければならぬけれども、次にこういうものが出されたときにどうするのだというような点について、ひとつ講和を提起された場合の政府の心構えについての御所見を伺いたい。
  88. 島津久大

    ○島津政府委員 講和の形式の問題につきましては、前回の委員会におきまして、外務大臣からお答えを申し上げておるところで御了解いただきたいと考えます。最近新聞で單独講和云々の記事が出ておりますけれども、これはただヘンスレー記者の報道だけのように考えておりますので、客観情勢が講和に対して非常に具体的になつて来たとは、まだわれわれは考えておらないのであります。前回の答弁におきまして、大臣からは全面講和とか單独講和とか、そういう形式を言うのが大体おかしい話だ。全面講和がいいのはもう明白な、わかりきつたことである。しかしある一つの国が進んで日本との関係を平和状態に返そうという話があつたら、これを断る理由はないという趣旨でお答え申し上げたように思うのであります。われわれもそのように心得ております。
  89. 竹尾弌

    竹尾委員 もう一つ中国の貿易に関してお尋ねがあるのですが、関係の方がお見えにならぬということですから、もう少しあとにたいしまして、お見えになりましたら質問さしていただくということの條件を付して一応とどめます。
  90. 岡崎勝男

    岡崎委員長 聽濤克巳君。
  91. 聽濤克巳

    聽濤委員 私は細菌戰犯問題をお聞きしたい。主として法務総裝にお尋ねしますが、外務当局の方にも関連するものがあつて、その方は外務当局からお答え願いたいと思います。  大体細菌戰犯問題というのは、この間のソ同盟におけるハバロフスク軍事法廷の裁判によつて明るみに出て参りました。その内容はきわめて重大な問題を含んでおります。大体その発表されました起訴状によると、国際法で禁止されておる細菌戰術というものを日本の軍部が、特に関東軍が大々的に研究して、多種多様の大量の細菌を培養して、しかもその中で中国人、ソ同盟人、その中にはアメリカ軍の捕虜も入つているということであります。それが生体実験といいますか、生きたままの人間を実験に供して数千人の者が死亡しておる。しかもその細菌兵器の一部が中国で実際に使用されておるということが言われておる。しかも越えて二月一日にはあらためてこの裁判に漏れておるところの天皇を初め、当時の関東軍の軍医中将石井四郎、北野マサゾウ軍医中将あるいは若松獸医少将等を国際軍事法廷を開いて裁判すべきであるということを、アメリカ、イギリス、中華人民共和国に覚書を発送してこれを提案しておる。事柄の内容は非常に重要であります。これについて、政府はこの問題の経緯及び内容について、いかなる情報を持つておるか、お聞きしたいと思う。
  92. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 今の聽濤さんのお尋ねの細菌戰術の話でありますが、その経緯とか内容とかについては、私は詳しく存じません。私の存じておりまして申し上げたいことは、法律的の問題でございますが、日本人である戰争犯罪人に対する裁判は、ポツダム宣言受諾に伴い、連合国によつて行われることになつておるのであります。でありますから、最近伝えられております細菌戰術に関する日本戰争犯罪人の問題につきましては、政府としてはこれに関與すべきものではない、こう考えております。
  93. 聽濤克巳

    聽濤委員 私が聞いておりますのは、こういう重大な問題が、日本に実際に提起されておるということが。ほんとうは政治的に重要な問題なんだ。なぜかといえば、連合国がやるものであるけれども、しかしながらポツダム宣言の受諾の第一の義務というものは、明らかに軍事力の引渡しであり、また日本戰犯の処罰、これに日本側がほんとうに誠心誠意協力するということが、一番重要な義務であろうと思うのです。そういう点で、これほど重要な事実が提起されておるに対して、日本政府がただ知らぬ、存ぜぬなどで済まされるはずはない。私はお聞きしたいのですが、戰争中にも事実この細菌戰術の問題は巷間にも相当うわさが伝わつております。われわれでも聞いておることがある。しかもその後この問題が出まして、昔満州にいた、あるいは中国にいた兵隊その他の中に、実際に生きた証人は相当いるはずでございます。一体政府の方は戰争中にこういう事実があつたということも知らぬとおつしやられるのかどうか承りたい。
  94. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 政府はそういう事実を聞いてはおりますけれども、これを調査する権能も持たず、またこれを調査する必要もないのであります。ことに天皇を戰犯として処分すべしというがごとき問題は、日本政府としては絶対に反対であります。かような提言をすることは、ある外国のやり口と軌を同じくするものでありまして、かような行動は日本国の利益でないと考えておるのであります。また日本人としてかような提言をすることは、日本国民意思を代表するものとも私は考えないのであります。かよう質問をされること自体がはなはだおもしろからざるやり方でありまして、私はある外国が裏で糸を引いておつて、そして日本に対して反感を與えるためにやられておるのではないかと考えておるのであります。
  95. 聽濤克巳

    聽濤委員 大分変な、筋違いな方角から私に攻撃を加えて来ておるようですが、私の聞きたいことは、話を聞いておるというならば、その事実を明らかにしてもらいたい、いかがですか。
  96. 島津久大

    ○島津政府委員 細菌戰術に関しまして、どういうことが行われたたか、情報はないかという御質問でございましたが、外務省ではシベリアにおいて細菌戰術に関する裁判が行われておるということは承知しておりますが、事実に関する情報は何も持つておりません。
  97. 聽濤克巳

    聽濤委員 法務総裁に聞きますが、私が戰争中にこういう事実があつたことを知らぬかと聞きましたところが、そういうことは聞いておるということをはつきり言われたのです。その内容をここでお聞きしてもなかなか言うまいが、それではその知つておるということは、細菌戰術のこういう研究が行われ、何かやられたということ、とにもかくにもそういう事実があつたということを、あなたはお認めになつているのですね。
  98. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 そうではありません。そういううわさを聞いておるということでありまして、その事実の存在を確認しているわけではございません。
  99. 聽濤克巳

    聽濤委員 そういたしますと、うわさをあなたはすでに聞いておる。しかもソ同盟においてハバロフスク裁判が行われ、国際的に覚書までも発送されて、問題が非常に重大な内容を持つておることが明らかにされた今日、政府はそういうことを耳にしておきながら事実の調査をやつていないのですか。
  100. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 一々うわさについて調査はいたしておりません。
  101. 聽濤克巳

    聽濤委員 これはかつてはかりにうわさであつた程度のものであつたとしても、国際的にこういう重大な問題が起つて、国際的な紛争まで起ろうとしている中で、一体日本はポツダム宣言によつて戰犯の処罰については、実際にわれわれが協力する必要がある。これを隠匿したり、事実を隠蔽したり、こういうことをもしやるならば、重大な国際的な責任の問題になるのです。われわれはこうい状態の中で、ポツダム宣言を受諾した第一の態度から申しましても、日本政府はこれを明らかにしなければならぬと思う。ところでお聞きしますが、このソ同盟からのこういう発表があつてから、天皇に次いでの最大の戰犯として向うが指定しておるところの元軍医中将石井四郎、この男は新宿区牛込若松町七七という所で若松荘という旅館を経営しておるそうでありますが、最近行方不明になつているという事実があるのです。これはお調べになりましたか。
  102. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 調べてはおりません。
  103. 聽濤克巳

    聽濤委員 そういうことについて政府調査する必要がないという意味でございますか。
  104. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 特に戰犯の問題について、調査をする必要はないと考えております。要求があればいたします。
  105. 聽濤克巳

    聽濤委員 そういたしますと、問題をはつきりさせていただきたいと思うのです。私の聞きたいことは、連合国側の態度その他のいろいろな問題は別といたしまして、日本はあの大戰争におきまして、ドイツ、イタリアと並んで、侵略国として連合国からの痛烈な攻撃を受けて、われわれ無條件降伏をしたわけです。この無條件降伏の意味は、われわれが日本の軍部が犯した、日本の帝国主義者がやつた大きな侵略的戰争の犯罪というものをわれわれが認めたことにほかならない。この立場に立たない限り、今後の講和の問題も、われわれがほんとうに日本を平和的に再建するという問題も、絶対に解決できない問題である。世界の不信を依然としてわれわれは招いて行く。こういう大きな建前に立つてこそ、今後ほんとうに国際的な問題にわれわれは対処して行くことができるわけです。ところがこの問題について、私はあえてあなたにお聞きしたいのですが、一体政府の態度は、ソ同盟がやつたハバロフスク裁判、あの中で暴露された事実を否定なさろうとするのか、あるいは事実はあつたのだけれども、われわれはそんなものについては何の責任も感ずる必要がない、こういうふうにお考えになつておるのか、その点をはつきりお聞きしたいと思います。
  106. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 さような事実があつたといたしましても、ただいま申し上げました通り、それは連合国で処置されるのでありまして、日本国みずからが自分の戰争犯罪について判断することも処置することもできないのであります。
  107. 聽濤克巳

    聽濤委員 あなたはそういうことをすべて連合国まかせであると言つておるのですが、しかし連合国の重要な一国であるソ同盟でこういう軍事裁判が行われ、ここに明らかな事実が発表されておる。なるほどアメリカから日本に対してこの問題についてはまだ要求はして来ておりません。しかしながら連合国の一国がすでにそれを発表しておる。しかも中国においてもソ同盟の裁判を全面的に支持するという態度がすでに明らかにされておる。こういう重要な動きがある中で、日本がここでどういう態度をとるかということが、今私が申し上げました日本のポツダム宣言受諾に関する根本的な問題に関連して来るわけです。もしわれわれがすでにソ同盟で指摘しておるような事実があつたということを承知しておりながら、これをひた隠しに隠す。たとえば今申し上げました石井四郎中将が行方不明になつておることについても、これは疑えば実に疑われる節がたくさんある。口の悪い者から言わせますならば、だれかがかくまつてしまつたのではないかと思われる節さえある。しかもソ同盟が指摘しておるもう一人の戰犯笠原幸雄という中将は、藤沢市の辻堂町で化粧品店を営んでちやんと存在しておる。われわれはこういう事実をほんとうに調査して明らかにしておく必要がある。こうやつてこそ連合諸国に対していたずらな紛争を起させない、しかも日本がポツダム宣言受諾に伴う第一の義務である戰犯の処罰に協力して行くことになる。事実日本の中で、すでに部落会長のような末端の人人まで追放の処分を受けて責任を負わされておる今日、しかも人道上許すことのできない細菌戰術のような重大な問題について、もし政府がこういうあいまいな態度をとるとすれば、明らかにこの重大な戰犯を隠蔽して、そうして世界の目をごまかし、しかも日本の昔の帝国主義者どもの犯罪をできるだけ隠蔽して、この力をむしろ温存しようというたくらみにしかすぎないとわれわれは断定せざるを得ない。そういう責任を日本政府は負わなければならぬと思います。これは実に政治的な問題でありますから、あなたの法理解釈論だけではなくして、道徳的、政治的責任の立場から、はつきりと日本政府の態度を表明してもらいたいと思う。
  108. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 何も事実を隠蔽するとか、しないとかいう問題はないのでありまして、ただいまお話のごとく、戰犯の問題は連合国で処置されるのでありまして、たとい連合国の内部のソ連あるいは中国等がどういう提言をされたかは存じません。それは世上しきりに伝えられておりますけれども、それらを一々取上げて、降伏しておる日本がそれにとやかく介入する権限もなければ義務もないのでありまして、それは連合国の命令あり、要求があつて、初めてわれわれは行動いたすべきである。連合国の要求もないのに、先走つていろいろ協力のような形を示す何の必要もない。むだなことであるのみならず、それは日本としてとるべからざる態度であります。日本といたしましては、連合国の正当の命令、要求に従つて、忠実にこれを実行すればよろしいのであります。たとえば今お話のごとく、石井何がし、いや何がしがどこに隠れておるか、どこに行つたか、それは一般日本国民に対します警察なり政府なりの処置はありましようけれども、連合国から何にも指示がないのに、これを戰犯として考え、これを犯罪人として追究するというようなことは、なし得ざるところであり、またすべからざることであります。
  109. 聽濤克巳

    聽濤委員 どうもあなたは同じことを繰返して言われるのですが、大体そういう態度こそ、日本政府が終戰後とつて来た一貫した態度であると思われる。軍需物資なんかにつきましても、これは当然ポツダム宣言受諾に伴つて、はつきりとその所在を明らかにして連合国側に引渡すべきであるにかかわらず、これを隠匿したり、あるいはまた連合側から要求があつた戰犯の追放の問題にしても、実際に履歴を偽つたり、そうして追放を免れようとしたり、こういうことは一貫した傾向としてはつきり現われておる。日本の犯した過去の重大な犯罪に対して、われわれが無條件降伏をしてこれを承認しておる立場から、一体何をなすことが日本政府の正しい行動であるか。これはなるほど日本政府自身で国際的な戰犯としてさばくことができないかもしれぬ。しかしながらこの事実を明らかにして、そうしてこういう事実については、日本政府は世界の連合国諸国に対して申訳がないということを、われわれは世界に訴えるだけの義務があると思う。あなたはそういうことを全然やる必要はないと言われるのですか。
  110. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 それは連合国がお考えくださることでありまして、連合国の決定に従いまして命令なり指示なりあれば、それを忠実に実行いたしております。決してそれに反抗したり隠蔽したりいたしておりません。たとえばただいまお話の追放の処置のごとき、連合国のその指示に従いまして、連合国の命令する通りに忠実に実行いたしております。忠実に実行せざる者が国民の中にありますれば、それを犯罪として処罰すらしておるのであります。連合国の考え方にそむいておるというようなことは毛頭ございません。それは忠実に実行しております。それが私は降伏しておる日本のほんとうの立場であると思います。しかしながら、まだ連合国御自身において決定せざる、單なる一部の国の提言と申しますか、あるいは報道というようなものを、ただちに連合国の命令そのもの、指示そのものと誤解をして、そして日本政府が行動するということは間違いであります。差出がましいことでありますから、私は控えなければならぬことと思うのであります。
  111. 聽濤克巳

    聽濤委員 大体あなたの態度もわかりましたから、これ以上押し問答してもしかたがありませんが、特に事柄が中ソ両国に関係して来ると、政府はますますそういう態度をとつております。最近における傾向とあわせ考えると、結局中ソ両国に対する責任を感じないのみか、逆に中ソ両国に対して排外視的な傾向を助長させる傾向にさえあります。しかしこの点はさておきまして、最後に、藤沢市に居住している笠原幸雄中将、この本人は起訴状によつて各国に送つた覚書の中にはつきり指摘されておる人物でありますから、この外務委員会に証人として喚問して、この事実について調査をすべきであると思います。委員長はこの点いかにお考えになりますか。
  112. 岡崎勝男

    岡崎委員長 私は今法務総裁の言われたように、單なる報道に基いてさようなことをいたしますと、もし全然かようなことがないという結論が出ました場合には、この報道を日本が反駁することになりますし、また反対の場合には連合国の決定のないときに、先走つて日本が行動をとることになりますので、かかる問題を取上げることは、この委員会としては、不適当だと考えております。
  113. 聽濤克巳

    聽濤委員 私はこれ以上もう聞きませんが、この問題は非常に重要でありまして、法務総裁だけの意見ではとても満足できませんので、次の機会に吉田総理の出席を求めて、ほんとうに政府の意見をはつきり伺いたいと思いますから、この点を留保しておきます。
  114. 岡崎勝男

    岡崎委員長 小川半次君。
  115. 小川半次

    ○小川(半)委員 法務総裁がせつかく御出席の機会ですから、私は一点だけお伺いしたいと思います。過般法務府より全国の市町村に対して、第三国人、特に朝鮮人の再登録を命じたのでありますが、この趣旨についてお尋ねしたいと思います。
  116. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 それは單に朝鮮人ばかりではございません。外国人の日本に居住します者は、登録制度なつておりまして、外国人登録の政令があるのであります。その政令を施行しておるのでありますが、その後登録の手続なりあるいは登録の様式等が不完全でありましたと見えまして、いろいろ紛淆を生じて、たとえばにせの登録表が出て参りましたり、登録を確認することができないような書類が出て参りましたり、のみならず密入国者がずいぶんたくさんあるといううわさもありますし、また事実でもあります。そこで外国人登録をもう一ぺんやり直しまして、そして新しく整理をしよう、こういう考えでありまして、別段そのほかの意味はなかつたのであります。そういたしまして、一月末を登録の期限として登録を実行いたしましたが、事実は二月の七日まで登録を寛大に見まして、期限を延ばしたような形でやつたのであります。ところが思うように成績を上げ得ません。たとえば、ある外国人のごときは、ある村でも、この村でもまたその次の村でも登録をしている、それで米の配給を三箇所でとつているというようなのがずいぶんありました。つまり幽霊人口もあつたのであります。そういうことで、案外そういうことがばれると思つたと見えまして、登録を思うようにしないのであります。登録をしたからといつて何も罰があるわけではないのでありまして、これからの日本国内における居住をローフルにして、そしてあらゆる面において調和のとれた生活をさせたいと思つたのでありますけれども、少し期待に反しました。これは初めてでもありませんが、外国人のことでありますから、ふなれなこともありますし、手続等のわからないところもあつたかもしれませんから、また実は延ばしまして、三月二十日までに登録を了した者は完全な登録と認めるということにいたしまして、ただいまさようにやつております。むろん朝鮮人だけではありません。それから、朝鮮人の中には、朝鮮人という名前が気に食わない、俺たちは朝鮮人ではない、大韓国民である、そこでそういう朝鮮人という名前で登録するのは困る、大韓国民という名前ならば登録をするというような人も出て参りました。それもごもつともな要求でありますので、今度の登録では、朝鮮人と書いてもよろしいし、大韓国民と書いてもよろしい、こういうふうにいたしまして、ごく寛大にして、そして三月二十日までには全部の登録を終りたい、こう考えております。
  117. 小川半次

    ○小川(半)委員 お答えのように、大体すでに登録の時期が終つたのですが、現在、特に朝鮮人などは三分の一しか登録しておらないという情報を私たちはとつておるのでありますが、特に全国の市町村におきましては、朝鮮人に対する好ましからぬ感情を持つているのです。それは私から申し上げるまでもなく、今日の集団強盗とかあるいは食管法違反、あるいは不正入国、そういう数々の犯罪は、大体朝鮮人が非常に多い。こういうふうな悪感情から、全国の市町村役場においてあまり好感を持つておらない。そこでその登録によつて、おそらく今後犯罪の面においても、いろいろな取締りの面においても、好結果をもたらすのではないかというので、せつかく好意を持つて、あるいは熱意を持つてこの登録方について努力しているにもかかわらず、朝鮮人側の方からほとんど集団的にこれを阻止している。中には正式に登録すれば、場合によつては、あるいはその登録によつて自分の犯罪が発覚したり、いろいろな事態が起つて、自分たちは本国に帰還を命ぜられるのではないかという不安な感じを持つておる朝鮮人も相当数おるということであり、かつまた日本側の市町村役場においても、登録をしない朝鮮人は本国に帰すのだというような気持を持つておるということでありますが、そういう含みというものはおそらくないと思いますが、法務総裁から、そういう含みなどは全然ないということを——なければないということを、この機会に明らかにしていただきたいと思うのであります。
  118. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 不法に密入国をしたというような者は、あるいは送還をしなければならないこともございます。それは従来もやつてつたのであります。しかしながら今度の登録は、何も登録しない者はただちに犯罪とし、あるいはそれを送還するという一般的の考えを持つておるのではないのであります。事情によりまして、一々具体的に考えまして処置をいたしたいと考えております。しかしながらせつかく登録をするのでありますから、その登録をがえんじない者、いかに説得してもがえんじないというのは、何らかそこにまた別な考えを持つておる者と推定しなければならぬような場合も出て来ると思うのであります。そこでよく理解せしめまして、そしてなるべく穏やかに成規の手続を了せしめたいというのが延ばしましたゆえんであります。従つてこれをなるべく徹底せしめますようにはかつておるようなことであります。一番問題になりましたのは、朝鮮人という名前が困るということが、一つの集団的な登録忌避の原因でありましたから、それは除いたつもりであります。
  119. 小川半次

    ○小川(半)委員 密入国して来た者に対しては本国に帰還させることができる、これは当然だと思うのですが、忌憚のない国民感情を申しますと、現在わが国においては人口過剩である。その上に朝鮮人の数も非常に多い。しかもまじめの人は別といたしまして、かなりの数の朝鮮人は非常に犯罪を多く犯しておる。何とかしてこれらの人々を本国に返す方法はないものかどうかというような気持を持つておるのが相当の国民感情ではないかと思うのです。もちろん日本国憲法においては、外国人といえども差別待遇はしてはならないということは明らかになつてはおりますが、しかし国民感情というものは、さらにまた憲法とともに、あるいは生活そのものが、憲法の上に位する場合もできて来るのでありまして、私はやはり国民感情というものをある程度尊重といいますか、徹底的に押えるということは、非常にむずかしいのではないかと思うのでありまして、そこで密入国して来る者を返す。それ以外に何かこれ以上の犯罪を犯した者、あるいは今回の場合は登録をがえんじない者とか、何か本国に帰国を命ずるような方法がないものであるか。あるいはそんなことは政府は考えておらないか。この点お伺いしたいのであります。
  120. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 お話通りでありまして、日本の憲法の精神から申しまして、外国人を差別待遇するということはいけないことであります。また朝鮮人の国籍につきまして、まだ確定的な身分がきまつておらないのが大多数であります。その意味からいいますれば、日本国民中の一少数民族ということにもなります。それらのことはまだはつきりと最後的にはきまつておりません。朝鮮人がこの食糧事情の悪いときにたくさん密入国をして来る、これを送り返したらよかろうという議論もずいぶん聞くのでありますが、さて密入国者であるかどうかもはつきりわかりません。従つて登録をしておらぬからといつて、すぐ密入国と認めて、これを送還するというわけにも参りません。ずいぶん古くから日本に居住しておりまして、そうして登録していない者もたくさんおるのであります。しかし密入国は困りますので、これは海上保官庁その他におきまして、十分取締りをいたしておるのであります。不法に入国した者を見つければ、これは送還をいたしております。従来は連合軍の方で処置をしていただいておつたのでありますが、このごろではこれは日本政府の仕事となつております。それからまた一定の犯罪を犯しまして、有罪と確定して服役をいたしまして、それから本国に返すということはできるのでありますが、これも場合によつてはいたすつもりであります。何分にもうわさに伝えるごとくんば非常に多数でありまして、そんなに簡單には送還などはできないのであります。また朝鮮人が長く日本におりまして、日本の生活にもなじんでおりまして、もしほんとうの日本国民としてごく調和のとれた生活をするならば、決して本国に返すなどの必要はないのでありまして、日本におつてもらつてけつこうなのであります。ただ終戰後いろいろな経済上、社会上の事情から、朝鮮人が住みにくくなつたという点が多々あると思うのであります。それが自然犯罪の面に現われておるのではないか、朝鮮人だから何も犯罪をよけいするというわけではないのであります。いろいろその生活が若しくなつて来たというようなことから、犯罪が増加するというようなこともあつたのであろう。従つてわれわれといたしましては、なるべく平和に居住する朝鮮人には十分に職を與え、生活を楽にできるようにしてやりたいと思うのであります。先般朝鮮人連盟を解散いたしまして、その財産沒收いたしました。従来の規定によりますれば、これは貿易特別会計の資金に繰入れることになつておつたのであります。朝鮮人連盟の財産は、多くは多数の朝鮮人が貯金をした財産でありまして、これを貿易資金に繰入れるということは穏やかでないと考えまして、今度は法律をかえてもらいまして、そうしてその朝鮮人連盟の財産を主といたしまして、まだそれだけではありませんが、解散団体の財産を貿易資金に繰入れませずに、特別な会計をつくりまして、そして別途にこれを経理する、その中から一つの財団をつくりまして、せんだつて朝鮮人連盟の解散によりまして接收しました財産は、その財団に入れまして、その財団は朝鮮人の福祉のために使つて行きたいという計画を立てまして、その特別会計の法律案ももう国会に多分提案しておると思います。それをどうぞ御可決を願いますれば、その次にはその財団ができるわけですから、それで大した効果はございませんけれども、政府の朝鮮人に対する態度が明らかになり、また朝鮮人の福祉の上にいささか貢献するであろうと考えております。
  121. 小川半次

    ○小川(半)委員 わが国は憲法に明らかにされているのでありますから、ただいたずらに人口が多いから朝鮮人に本国に帰つてもらうとか、あるいは犯罪を犯したから本国に返すというような、そういう気持であつてはならぬのであります。そこで朝鮮人に対しては、あるいは何らかの機会に政府の方から、わが国はいたずらに朝鮮人を本国に返すというようなことはしないのである、これは憲法に明らかである、従つて朝鮮人自体も日本国内において平和に生活するように協力しなければならぬというよう趣旨を、今後何らかの機会に朝鮮人連盟なり、あるいはそれぞれの立場からこれを明らかにする方がよいのではないか、これは私の一つの希望として申し上げる次第であります。
  122. 並木芳雄

    並木委員 関連質問をたつた一言お伺いします。さつき聽濤さんから、末端の部落長のような者でさえも追放になつたのだという言葉がありました通り、これは日本共産党の方でさえも気の毒だという気持が含まれていると私は聞いたのでありますが、確かに部落長あるいは末端の町村などにおける方方の追放にあつておる人々、それから特に感ずるのですが、若い見習士官であつたがために、たまたま追放にあつて、そうして勉強して再び更生の道をたどろうとしておつても、なかなかその機会に恵まれない。しかも新しい息吹きに触れて、民主主義に生きようとしておる人がずいぶんあるのです。これは本人が必ず民主的に生きて行こうということが立証されれば、決して私どもとしては関係方面へ追放解除を申請しても悪くないと思うのです。そういう点について吉田総理も努力をされておるように伺つておりますが、法務総裁として担当の責任者として努力を拂われておると思いますけれども、どうなつておるでございましようか。最近の状態としては戰争犯罪人ですら釈放されるということもありますし、講和が近づいて来れば、ますますそういう気分も醸成されていいと思うのです。講和会議が開かれても、必ずしも追放問題というものは緩和されないという声も聞いておりますけれども、講和会議が開かれたら、やはりこの問題もいくらか緩和されるようにわれわれとしては希望してもいいじやないかと思うのですが、そういう点について訴願委員会の状態、今後の見通しについてお伺いしたいと思います。
  123. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 追放の問題は御承知のように、連合軍の命令によりましてこれを実行いたしておるのでございます。たとえば町村長その他ごく末端の人たちが、多数公職から追放されております。これは町村長であるがゆえではなくて、多くは翼賛会の支部長とか、あるいは翼賛壯年団長とか、あるいはまた在郷軍人会長であつたとかいう人々がずいぶん多いのであります。それらが非常に多数を占めております。それからまた今のお話通り、若い軍人がたくさんこれにひつかかつておるようなわけであります。まあ特に軍人の方は処分が重いのでありまして、そう簡單には参りません。しかしながら戰争の末期には各種の種類の軍人ができておりまして、将校の身分を持つておりましても、その身分が正規の将校とは違つておる軍人がたくさんあります。それらをことごとく一律に軍人として取扱つておる趣旨ではないのでありますから、よくそれらを鑑別をいたしまして、できるだけはずれるものははずすように、司令部の方にお願いするつもりであります。  それから今の末端の人たちが、あの当時の、あの勢いでありますから、好んで支部長になり、あるいは壯年団長になつたのではなく、ほとんど命令的にされたという人が多いのであります。またごく短期間になつておつたという方もかなり多いのであります。一律にそれが追放されておりますけれども、訴願委員会におきましては、それらの点を十分考慮いたしまして、審査をいたしておると考えております。いずれにいたしましても、これはやはり連合軍のお考えをよく尊重して決定すべきことでありますので、吉田総理は最も熱心に最高司令官ともお話をいたしておるように聞いております。昨年訴願委員会を新たにつくりまして、特免の審査をいたしておりますけれども、まだ一件も最終的の決定を見たものはないのであります。訴願委員会は毎日熱心に審査を続けております。いずれ審査が終りましたならば、最後的な決定を見ることであろうと考えるのであります。並木さんの今仰せの通り、総理大臣はこの点につきましては、最も熱心に陳情をし、またお願いもしておることと考えております。
  124. 並木芳雄

    並木委員 審査は大体いつごろ終る予定でありましようか。今のは書面審査だけでありますが、各個面接のよう審査を許されるように、関係方面へ懇請されたらどうかと考えておるのでありますが、その点はどうでしようか。
  125. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 約三万千件ですか二千件だかの特免申請が出て参りました。ただいまのところ、もうかれこれ一万五千、もつと以上の審査を了しておるわけです。これは各個面接は一向さしつかえないのでありまして、訴願委員会は各個面接をしたいのでありますが、何分にも数が多いので、各個面接をいたしておれば、それはなるほど事情もよくわかるのでありまして、審査としては完全になるのでありますけれども、そういたしますと審査が遅れまして、他の多数の人が迷惑をするということになりますので、なるべく書面の上でわかるだけはわからして行く、こういうつもりと思います。大体同じような状態の人が多いのでありまして、書面の上でも事情は相当によくわかります。決して書面だけの審査であつたから、審査に手落ちがあつたということはまずなかろうと考えております。
  126. 岡崎勝男

    岡崎委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時四十七分散会