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1950-02-15 第7回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十五日(水曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 岡崎 勝男君    理事 菊池 義郎君 理事 近藤 鶴代君    理事 佐々木盛雄君 理事 竹尾  弌君    理事 仲内 憲治君 理事 福田 昌子君    理事 並木 芳雄君 理事 聽濤 克巳君       伊藤 郷一君    大村 清一君       中山 マサ君    橋本 龍伍君       小川 半次君    野坂 參三君       山本 利壽君    小林  進君       浦口 鉄男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君         農 林 大 臣 森 幸太郎君  出席政府委員         外務政務次官         (政務局長)  川村 松助君         外務事務官         (條約局長)  島津 久大君         外務事務官         (管理局長)  西村 熊雄君         外務事務官   倭島 英二君         海上保安庁次長 稻垣 次郎君         経済安定本部副         長官      山本 米治君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 二月九日  全面講和促進に関する請願加藤充君外一名紹  介)(第六二九号) 同月十三日  国際連合の全加入国との関係調整に関する請願  (野坂參三君外五名紹介)(第七三八号)  全面講和促進に関する請願野坂參三君外一名  紹介)(第七四九号)  在外資産補償に関する請願足立篤郎君紹  介)(第七五一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまより会議を開きます。  まず国際情勢に関する質疑に入ります。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 質問の前に、この前の理事会できまつたことを、委員長から一応報告しておいていただきたいと思います。と申しますのは、委員全員になかなか徹底しきれませんし、よるべきところはやはりこの議事録ですから、一応ああいうとりきめをしたということを議事録にとどめておいて、ほかの委員の方にも見ていただくし、あとからまた参考にもなると思いますから、その点御報告願います。
  4. 岡崎勝男

    岡崎委員長 もうじき委員が多数お集まりになると思いますから、少しあとで御説明しようかと思います。
  5. 並木芳雄

    並木委員 私はけさ発表になりました中ソ同盟に関して質問をしてみたいと思います。まず西村條局長にお尋ねいたします。二、三日前吉田総理大臣大西洋憲章を引用されて、侵略的意図が全然ないのだから、領土の問題というものは考慮される余地があるというふうなことを、どの委員会でしたか、あるいは本会議つたかで答弁されたと思つております。私はその点についてもう少し具体的に大西洋憲章のみならず、ほかの宣言あるいは協定といつたものにもそれが盛られておるのではないかと思いますので、その点をお伺いしたいと思います。またそれに関連してポツダム宣言の第八に「カイロ宣言條項は履行せらるべく、また日本国主権本州・北海道・九州および四国並吾等の決定する諸小島に局限せらるべし。」という條項がございますが、この邦訳の「また」というのは原文を見ますと「アンド」という字になつておるわけであります。原文を私が読んだ感想では、このアンドというのはまたという意味に飜訳するよりも、むしろその結果としてというふうにとれるのです。もしその結果としてというふうにとれますれば、われわれは領土の問題についてはカイロ宣言によつてのみ拘束されるので、カイロ宣言の結果これこれになるのだ。だから、ほかにどういう協定があるか知らないけれども、日本の立場としては、カイロ宣言だけが目下のところ領土に関する拘束を受ける協定じやないかという感じを受けるのでありますが、この点についてどうお考えになりますか、お聞きしたいと思います。
  6. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 特に私に御指名がありましたけれども、その問題については政務局長から御答弁を申し上げることにいたします。
  7. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問アンドという意味でございますが、通常アンドは物事が並んだものをつなぎ合せるというような意味使つておるのでありますが、ときには並木委員がおつしやいますように、前のものの結果としてということで、あとのものを引出して来る際にも使つておるようであります。しかしながら問題になりました「また」と一応訳しておりますこの点は、事物を並列したような意味ではないようであります。またその結果としてというほどはつきりしたものでもなくて、やはりまたと申しますか、あるいはしこうしてとか、そしてという程度意味解釈をいたします。
  8. 並木芳雄

    並木委員 條約とか協定の文章というものは非常にむずかしいものだと私は思いますが、その点は西村條局長にお尋ねするのですが、どうですか。こういうような重要な規定において、ここへ並列的にただ二つのものを並べるということは、條約または協定慣例になつていますでしようか。やはり特にここへカイロ宣言は履行せらるべしというのならば、並列するのならば、それで切つていいと思うのです。切つて、第八の次の第九として、日本国主権本州これこれというべきが、私はその條約の本質及び形式に沿うものではないかと思うのですが、特にこう並べて書いたところは、やはりカイロ宣言というものは領土を決定する基礎になるのだというふうに解釈できるのでございますが、その点お伺いいたします。
  9. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私はただいま政務局長から御説明の通り、このアンドはむろん並列的の意味に幾分とれる。従つてその結果という意味もあるように感じまして、日本語で言えばしかりしこうして、そしてというふうに読んだらよかろうと思うのであります。むろん並木委員もおつしやいましたように、日本領土の問題はカイロ宣言で、最初に三国間の連合国側最高意思は表示されております。その後四十五年の二月に至つて三国の巨頭指導者間の間にヤルタ協定ができまして、そうしてポツダム宣言は同四十五年の七月になつてできております。従つて私ども察するに、四十五年の七月にポツダム宣言が三巨頭の間につくられた場合に、三巨頭の頭の中にはヤルタ協定というものがあつたであろうというふうに解釈いたします。そういうふうな事情を考えてみれば、アンドはしかり、しこうしてというふうな意味解釈される、こういうふうに思つております。
  10. 並木芳雄

    並木委員 ですから、従つてこのヤルタ協定が頭にありながら、このポツダム宣言というものができたのですから、反対解釈として、ヤルタ協定はわれわれを拘束するものではない、あるいは関係がないというふうに解釈していいじやないかとも思われるのですが、いかがでしようか。
  11. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ヤルタ協定だけをとりましては、並木委員と同じように考えております。
  12. 並木芳雄

    並木委員 沖縄の地位についてちよつとお伺いしたいのです。現在沖縄日本との間の交易——貿易といつてはおかしいですが、交易というものはどういうふうに行われているか。それからまた最近海上交通も開かれたようでありますが、そういうものはどういう管理のもとに行われているか。それは日本人が沖縄渡航する、あるいは交易を開きたい、そういう希望者なりがあつた場合に、どういうような手続によつて沖縄へ行くことができるか。それから金銭の決済といつたようなものはどういうふうに行われておりますか、お伺いいたします。
  13. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今御質問がございました沖縄との交易あるいは渡航の問題について、現在承知しているところを御説明申し上げます。  沖縄との貿易は、まだ民間貿易というものは許されていない状況でございまして、いわゆる管理貿易とも称するものであります。貿易はすべて琉球軍政部代行機関である琉球貿易庁を通じまして、東京にある琉球貿易団事務所というのがございますが、そこで決済をせられている状況でございます。新聞でも二、三日前にごらんになつたと思いますが、今月の十一日に琉球貿易庁の総裁一行五名が、約一箇月にわたつて日用雑貨それから自転車その他のものを、約八億円買いつけに来ているということであります。この貿易状況につきまして、政府としてまだはつきり承知しておりませんが、沖縄現地新聞の報道によりますと、一九四六年二月から四九年十一月までに、沖縄から日本へ輸出した物資燐鉱石、貝がら、ゆり根等で、その金額は約四十二万五千円、それから日本から沖縄へ輸出しました必要生活物資というものは、昭和二十三年中だけしかその統計はわかりませんけれども、約四億三千八百万円程度に達しているような状況にあります。今申し上げましたこの数字は現地沖縄の方で発表せられて、新聞に載つてつたものであります。  それから沖縄渡航につきましては、昨年の三月十五日以降は、現在各地にございます地方民事部渡航申請をしまして許可を得て、自分の費用渡航できるという状況になつております。現在までにそういう許可を得て行つたものは、昨年の三月から約百名程度でございます。それから去年の暮れから近親者を訪問するというような、特に同情すべき理由がある場合には、総司令部申請をしまして、往復旅行許可されるようになつております。もちろん自費でございます。大体御質問の点はそういうようなことで御了承願います。
  14. 並木芳雄

    並木委員 円の貨幣価値関係はどうなつておりますか。やはり一円対一円ですか。
  15. 倭島英二

    ○倭島政府委員 その点は実際どういうベーシスで決済されておりますか。向うには特別の向う通貨が流通しておるようでございますが、今日本琉球貿易団事務所で、実際上どういう手続でどういう通貨決済されておるか、よく調べまして御返答申し上げたいと思います。
  16. 並木芳雄

    並木委員 できましたら、きようのうちにちよつと連絡をとつて聞いていただきたいのです。  それから最近問題になつております日本から労務者を送るというようなことは、今まで話があつたのですか。また今後そういう話が起り得るのでありますか。つまり現地労務者を使うということが発表になつておるようですが、日本からも労務者を送つて、それを雇い入れる。もちろんそういう場合の費用というものは、すべて沖縄施設費用というものは米軍軍事費から出ておると思いますが、その点もあわせて伺います。
  17. 倭島英二

    ○倭島政府委員 向う工事が行われておることも聞いておりますが、それに必要な労務者を選るような問題については、まだわれわれは承知しておりません。それから工事費用についても承知しておりません。おそらく米軍関係で出ておるのではないかと思います。
  18. 並木芳雄

    並木委員 これはもちろん巷間のデマであろうと思うのですけれども、よく沖縄基地施設費用終戦処理費から金が出るんじやないか。前に朝鮮の場合にそういうことが言われて、もちろんデマと思いますが、われわれも知らないがためにびつくりした。今度の場合でも沖縄施設費用などに対して、日本の金が使われるということは絶対にないと思いますが、この点はいかがでしよろか。
  19. 倭島英二

    ○倭島政府委員 私の承知しておりますところでは、日本予算関係ないと思います。
  20. 並木芳雄

    並木委員 基地の問題と憲法関係になりますが、ちよつと御質問します。最近基地設定するということでとりざたされておるようでございますが、きのうも吉田総理大臣答弁されたように、占領下にあつて基地設定または増強というものは、連合軍が自由におやりになれるというふうに答弁を聞いたのです。これはやはり無制限に自由なものでございましようか。それとも何らかのこれには限度といつたようなものがあるんじやないかとも思うのです。つまり占領下においては、占領目的遂行のためといつて基地設定とか増強というものは無制限にできるものであるかどうか。それともある限度というものがそこにあるものであるかということについて、まずお伺いしたいと思います。
  21. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は総理も御答弁中に述べておられます通り、すべて占領軍認定によるところであると考えております。
  22. 並木芳雄

    並木委員 そうするとその認定に対しては、もちろんわれわれとしては何も申出をすることができないという意味になるのでしようか。あるいは要望、そういつた限度においては発言の余地があるものであるかどうか。その点をお伺いしたい。
  23. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 総理答弁にもございます通り連合国認定によるという意味は、日本側としてその点について制限その他があるという考えに立つていないという意味でございます。
  24. 並木芳雄

    並木委員 講和ができて日本が独立したときに、基地日本設定するということになりますと、これは連合軍占領目的遂行ということにならないで、ある特定の国の軍備のために、日本が協力するということになるんじやないかと考えられるのです。そうすると日本の中立の維持という見地からいうと、これを曲げることになるわけで、万一戦争が起つた場合には、日本交戦国とみなされるおそれがあるんじやないかと思います。そういたしますと戦争を放棄した日本憲法に違反して来るんじやないかというふうに思われるのですが、その点いかがでしようか。もしその場合に軍事基地の提供ということが、あるいは條約によつてきめられた場合に起つたとしたならば、その條約は憲法には優先するということになるのだろうと私は考えておるのですが、憲法に優先しましてもポツダム宣言には違反することになるんじやないかという問題も起るのであります。その点に対して御所見をお伺いします。
  25. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問になりましたいろいろな点につきましては、先日も、また今日までたびたび総理も明確にお答えになつております通り、問題は結局平和條約後、講和後である。今日のところは将来の仮定の問題であるから、一切答弁はいたしかねるということを御了承願いたいと思います。
  26. 並木芳雄

    並木委員 講和條約ができてからその基地設定されるとなると、そういういろいろの問題も起り得るから、むしろ講和條約というものを結ばずにおいて、そのままの状態を続かせようというような考え政府において出て来ておるのではないか。その点は最近言われております戦争状態の終結ということと関連して考えますと、私たちとしても疑問として出て来るのでありますが、その点いかがでございましようか。
  27. 島津久大

    島津政府委員 ただいま並木委員の御意見のようなことは政府としては考えておりません。
  28. 並木芳雄

    並木委員 戦争状態終了宣言ということは、結局戦争状態はなくなつたけれども、占領は継続するということになるのですかどうですか、その点お伺いいたします。それとも戦争状態終了宣言というものは、講和條約、特にいわゆる単独講和と同じであるかどうか、また同じ場合があり得るかどうか、こういう質問なんです。
  29. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 いつぞや一応御答弁を申し上げました通り戦争状態終了する宣言なり通告をする場合には、大体今までの慣例によると、ふだんならば平和條約の成立によりまして、戦争状態終了させられると同時に、戦勝国戦敗国に対し課する條件も確定される、そういう二つのことが同時に発生する。この通知を出した場合には、まず戦争状態終了させて、あと平和條約の締結を後日に留保する、こういう形のものになると考えたならばよろしかろうと申し上げました通り、この措置がとられる場合には、戦争というものはなくなるわけでございます。  それから第二の御質問平和條約の形態との関係は、私は両者の間に何ら関係はないと見ておるわけでございます。いわゆる平和條約というものを将来に留保いたしましたならば、その平和條約はどういう形のものになるか。全面になるか、多数になるか、たつた一国との関係になるかということは全部留保されておりますので、直接その間に関連があると考える必要はなかろうかと考えております。
  30. 並木芳雄

    並木委員 そうしますと、戦争状態終了宣言というもののもとにおいては、占領中の状態と同じように、基地設定とか増強というものに対しては考えられるのでしようか。つまり講和條約が結ばれた場合にはやつかいな問題が起るかもしれませんけれども、戦争状態終了宣言のもとにおいては、そういう問題は起らないという意味になりますか、どうですか。
  31. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点につきましても前会御答弁申し上げました通り戦争状態終了のときから講和條約ができるまでの間に、しからばいかなる事項について、またいかなる限度平和状態が回復されるかということは、そのときになれば結局のところ戦勝国側意思決定によるもの、こういう結論を下したがよかろうということを申し上げました。それによつて御了解願いたいと思います。
  32. 並木芳雄

    並木委員 山本安本長官がお見えになりましたから、私二、三点お伺いしたいと思います。先日来たびたび御足労を煩わしたのですが、私の質問時間の関係むだ足を運ばして、どうも申訳ございません。私このごろ考えますのに、日本海外から受ける信用という点について危惧の念を抱かざるを得ないのです。その一つとして、首相は大きな声でタバコ民営、これに関係する外資導入ということを叫んだのでありますけれども、いつの間にか煙のように立消えておるということなのでございます。それでタバコ民営外資導入というものは最近どんなふうになつておるものでございましようか。それからまた最近タバコの質がちつともよくなつておらない。むしろ悪いのじやないか。銀紙なんか使つて銀紙の紙だけ質を落しているのではないかというようなことから、これは専売にしておくと質がよくならないのだ。だから民営にしなければいけないのだ。民営論というものをつまり理由づけるために、政府はかえつて質を落しているのではないかという声すら出て来ておる。そういう声が出るにもかかわらず、一方においてはタバコ民営というものは立消えになつているように思われる。外資導入もむずかしいというふうに聞いておるのでございますが、そういつたことをいやしくも一国の首相が言つておいて、いいかげんにうやむやに過すということは、やはり外国からの信用というものを落して行くのじやないか、こういう見地から特にどうなつておるか。今後の見通についてお伺いしたいと思います。
  33. 山本米治

    山本政府委員 タバコ民営問題につきましては、先般委員会等が設置されたことは承知しておりますが、私直接関係はございませんのでそのことを承知しておりません。しかしタバコ民営ということは、外資導入問題と相接には関係がないと思うのであります。民営になれば外資を迎え得るというような含みはあるのかもしれませんが、少くとも外資委員会にはこの問題はまだ申請されておりません。そこで私といたしましては、この際これに関連して御質問になりました一般状況を、お答えしたいと思うのでございますが、外資導入問題は芦田内閣当時から非常にやかましく叫ばれておる問題でございます。そうしてわれわれ一日も早くと待望しておるのでございますが、世界経済情勢は何分にもおもしろくないのでございまして、このような情勢のもとにおいて今アメリカ民間外資が続々と入るというようなことは、残念ながら期待できないのでございます。この問題に関する難点等につきましては、すでに新聞雑誌等において少しうるさいくらい伝えられておりますので、ここでは繰返しませんが、いろいろな点、今まで日本統制経済をやつていたという点、あるいは独占禁止法関係、いろいろな問題がありますが、最近特に重要な問題として取上げられておるものは、外資導入されて活動するためには日本が非常に税金が高いということ、もう一つ投資外資に対する利子及び利潤送金の保障があるかどうかという問題でありまして、新聞等でも御承知通り、一月十九日でありましたか司令部から連絡がありまして、この問題をひとつ共同で研究しよう、一箇月以内に結論を出そう。——かりに一箇月としますと、二月十九日になりますからもうすぐでありますが、そういうふうに話が持込まれまして、目下毎日のごとく研究中であります。税金の問題は一応大蔵省等研究中でありまして、問題となるのは三点でありますが、外資導入された会社外資の部分に対し、法人税を特別に考慮するかどうかという点、あるいは外資に関連して日本へ参りました外人に対する所得税をどうするかという点、もう一つの点は富裕税の問題でありますけれども、これらの問題については私直接関連しておりませんので深入りいたしませんが、もう一つの問題は、民間外資日本に入つた場合、これに対する利子利潤送金をどういうふうに保証するかという点であります。御承知のごとくこの一月一日から外資予算が組まれることになつたのでありますが、現存実際上外資に対しまして、期日の来る自由になるよのに対しましては、ちやんと外貨予算に計上しております。しかし投資家といたしましては、今目先の利子利潤もしくはロイアルテイをドルで受取ることができましても、日本外貨状態によりましてはいつこれが停止になるか、あるいは少くなるかという懸念があるわけでありまして、こういうものの投資国に対する送金を半永久的に保証する制度をとらないと、なかなか外資は安心して入つて来ないわけであります。  そこでこの問題をどういうふうに取扱うかということを目下研究中でありまして、あるいは基準等を設け、業種による基準あるいは投資外資のすえ置き期間等によつて送金保証限度を違えよう。元本を長くすえ置いてくれる投資に対しましては、ドルにコンヴアートして送金を認める限度を比較的高くしよう。あるいは日本に望ましい産業に投資してくれる場合には、そういう保証限度を高くしよう、こういうようなことが問題になつております。これらの措置は目下日本側でとつている措置で、その他の従来の障害も漸次解けては参りまして、いわばこの利子利潤送金の問題、あるいは日本において外資投資された会社等が国有化された場合、それの補償をどうするかというような問題と、税金の問題であります。日本としてはこれらの措置ができれば、外資受入れ態勢が完備とまでは行きませんが、相当整備して来た段階と言えるのであります。  ところが受入れ態勢をいかに整備しましても、まだ十分には整備されておりませんが、かりにこれが完備されましても、投資する国は外国であります。しかるに現在の国際政治経済情勢を見ますと、御承知のごとく非常に不安定であります。資本は本質上臆病なものでありまして、こういうときにはなかなか外国に出ない。アメリカ側としましても、御承知のごとく昨年ポイント・フオアーが示されて以来、従来の政府国民税金によつて対外援助をするヨーロツパに対するマーシヤル計画、その他占領地援助というようなものはなるべくやめて行きたい、なるべく早い機会に国民の負担による海外援助を少くして行きたいということで、これにかわるものとして、民間外資を出すように、アメリカでも非常に苦慮しているのであります。先ほど申しましたような点についても、先般ドレーパ一氏が参られましたとき承知したのでありますが、アメリカ側としても、アメリカから外国投資した場合に、その利子利潤等送金に関する保証をする制度考えておりました。前回の国会にもすでに提案されたのでありますが、審議未了となり、今回の国会にさらに提案される予定だそうであります。そのポイントを申し上げますれば、アメリカ輸出入銀行アメリカ民間対外投資に対する利子利潤等本国送金保証するという制度であります。しかしこれは外国側においても、すなわち具体的に申しますれば、日本の側においてもそういう保証制度がある場合に、初めてアメリカ側輸出入銀行による保証制度を適用する、こういうことであります。  しかしアメリカ側がこういうふうに努力しておりますが、全体の情勢から申しますと、今民間外資対外活動には非常に不利な情勢でありまして、私は大観して、残念ながらアメリカ政府援助をどんどん減らして行くが、民間外資によりてこれがカバーされるというふうにはなつて行かないと観察しているのであります。世界をあげてのドル不足という問題は、終戦後の継続している問題であり、特に最近やかましい問題であります。これに対しましては、アメリカが今や世界の指導権を握つているのであるから、もう少し外国から物を買うということが一点、アメリカの民間資本を外国へ出すという点が一点、この二点をアメリカが実行してくれなければ、世界のドル不足というものは解消しない。アメリカドル不足が解消しなければ、アメリカの目標とする国際自由貿易等の理想もなかなか実現できない。世界はドル不足のために、結局アメリカへ輸出できる範囲においてしか、アメリカの物を買わないようになるだろう。ひいてはアメリカとしてもその不利益をこうむるわけでありまして、ここはアメリカはよほどその世界指導権を自覚して、大乗一番大いに外国から物をもつと買うようにする。それには関税を下げることが第一番であります。アメリカの関税は非常に高いのであります。ヨーロツパも相当復興して参りまして、物はたくさんできるようになりましたが、アメリカがなかなか買わない。従つてドルがなかなか受取れない。ひとつアメリカが関税を引下げて、もつと物を買つてくれるように、そして先ほど申したように、非常にむずかしいことではあるが、アメリカの資本をもつと対外的に出すように、アメリカが英断的な措置をとつてくれる、こういうことがなければ、世界のドル不足は解消せず、ひいてはアメリカの理想にもかかわらず、国際自由貿易はなかなか実現しない。むしろ世界はブロツク的に分裂して行くというはめになるのではないかと、私は考えているのであります。  ちよつと長過ぎましたが、日本外資導入に関して最近の具体的な問題としましては、石油、造船、機械、化学工業等において若干ありますが、これまた本格的な外資導入とみなされるものは、残念ながらほとんどないのでありまして、わずかに技術の導入とかそういうような問題である。しかし日本としてもどこまでも外資導入しなければならぬので、日本側としての受入れ態勢を可能な範囲内において整備するという意味で、目下司令部と交渉研究中であります。
  34. 並木芳雄

    並木委員 養蚕業、蚕糸業などについての問題は、外資導入について起りませんか。これは外国貿易に非常に重要性があるのですが、最近日本の蚕糸業も非常に苦しい。そういうところへ外国の資本を当然持つて来るべきだという話も出て来るのではないかと思いますが、その点どうなつておりますか。それに関連して化学繊維——ビニールの問題ですが、政府としてはビニールを奨励している。これに対してもやはり外資導入を促進すべきだというふうにわれわれ聞いておりますが、化学繊維があまり発達して参りますと、一方において絹織物というようなものを圧迫するような危険が出るのではないかと思います。そういう点の調節問題とあわせて御答弁願いたいと思います。
  35. 山本米治

    山本政府委員 外資問題は、まず当事者同士打合せをしまして、それから相当具体的な仮契約ができましてから、外資委員会申請が出て、問題になるというような状況になつておりますが、ただいまお尋ねの蚕糸に関しましては、まだ具体的なものを聞いておりません。しかしすでに当事者同士、民間人同士の話合いはあちらこちらあるのかもしれませんが、そのことは承知しておりません。  ただいまの第二の化学繊維でございますが、これも今日までのところ具体的なものはございません。化学工業としては若干入つておりますが、これも技術指導というようなものにとどまつておりまして、これぞという目ぼしい外資は来ておりません。
  36. 並木芳雄

    並木委員 安本として絹織物と化学繊維との調整という問題が当然起つているだろうと思いますが、そういう点はどうですか。
  37. 山本米治

    山本政府委員 絹織物につきましては、当然ナイロンとの関係で非常に悲観視されておつたのであります。御承知のごとく日本の輸出特に対米輸出におきましては、往年は絹が主であつたのでありますが、これがナイロンとの関係で将来見込みがないということになれば、日本にとつて非常に打撃なのであります。先般参りましたシーツ氏と話合いましたときに、日本人は頭の使い方が足りない。絹はだめだと言えばもうそうかと思つてすつかり悲観してしまつておるが、非常にこれは遺憾なことである。もう少し頭を働かせば幾らでも余地はあるのだ。たとえば自分は京都その他各地へ行つて日本のネクタイを見ているが、みな結び目が大きい。この結び目の大きいネクタイはもう外国でははやつてもいないし買わない。しかるに日本のネクタイはどれも結び目が大きい。こういうことをなぜもう少し頭を使つて研究しないか。そういうふうにすれば日本の絹でつくつたネクタイは幾らでも出るのだ。もう一つの話は絹でつくつたマンダリン・コートというのだそうですが、七分くらいの部屋の中で着るもの、そういうものをつくつたなら幾らでも売れるだろう。そういうことに頭を使わなければいけないと言つてつたのでありますが、そういうことはともかくとしまして、絹は従来日本の主要生産品であります。これが外国に売れないということになりますと、農村との関係におきましても非常に困つた問題でありますが、私はやはり日本の産業人がもつと頭を使つて、この絹の維持、さらに進んでは進出について考えるべきだと思うのであります。一方日本は繊維工業の繊維が非常にない。繊維の生産のない国であることは申すまでもないのであります。従つてビニールのごとき人造繊維というものに方向を向けて行かなければならず、またこの方に非常に期待が持たれておるのであります。私はこの人造繊維というものが今後発達いたしましても、絹と必ずしも対立関係になるものではない、こういうふうに考えております。
  38. 並木芳雄

    並木委員 法務総裁がお見えになりましたから一、二お尋ねいたしたいと思います。  実は講和問題が非常に論ぜられておるのでありますが、翻つて国内の治安ということを考えますときに、私たちはやはり講和の問題と関連して心配せざるを得ないわけでございます。最近内外の情勢を見ますときに、表面は穏やかに見えるようでありますけれども、日本の国内の治安というものがはたして維持しきれるやいなや。表面穏やかだと申しますと語弊があつたかもしれませんが、どろ棒だとか追いはぎだとか火つけ、そういうものがすでに多数に上つてつて、これだけでもわれわれは心胆を寒からしめているわけですけれども、それ以上にもつと深いところに根ざした大規模になるおそれのある、つまり治安撹乱といつたようなものに対して、相当危惧の念を抱いている向きもあるのであります。この際法務総裁から将来日本の治安は大丈夫であるかどうか。そしてまた万一暴動とかあるいは内乱こいう言葉を使つては穏やかでないと思いますが、要するに大がかりな反乱が起つた場合に十分これを取静めて行く準備があるのかどうかということを、お伺いしてみたいと思うのであります。連合軍がおられる間は、もちろん占領目的のために進駐軍のお力でもつて、そういうものを鎮圧していただくことができると思いますけれども、将来進駐軍が引上げられた場合には当然われわれがみずから処理して行かなければならない問題であると思いますので、政府のその点に対する所見をお伺いしたいと思います。
  39. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 お尋ねでありますが、連合軍の進駐しております間はもちろん何らの懸念はないのであります。連合軍がもし引きさがつたあとでどうなるか。これはただいまのところ十二万五千の警察力に依頼するほかないのであります。十二万五千の警察は御承知のように国警が三万、他の九万五千が地警でありますが、これは目下その装備を十分にいたしております。ピストルを持つております。国内におきまして武器を携帯しておるオーソリテイはこの警察以外にはないのであります。従つて何らか治安を撹乱する事態が起りましても、それは武器を持たないはずであつて従つてこの十二万五千の警察には抵抗ができないと思うのであります。日本憲法におきまして武力を維持することができないのでありますから、これが最大限度の実力であります。そこで今の御心配のような事態が起つたときどうするか。これもどうもいたし方ありません。私はこの八千万の国民の叡知と忠誠にまつほかないと思う。国民自身の力によつてさような不安を除去し、これに抵抗し、これをサプレスするというほかに私は道はないと思う。それが非常に不安ではないかとおつしやられても、これは新憲法下いたし方ないことであります。敗戦日本の当然の運命であろうと思います。そこで国民の一層の奮起、一層の反省を望んでやまないのであります。
  40. 並木芳雄

    並木委員 警察力の充実ということは非常に微妙な問題でありましようけれども、われわれがほんとうに平和を愛好し、国内の治安に任じて世界の中和に貢献しようという気持さえ十分発揮し認められるならば、あえてその目的のために警察をもつと充実させてくれ、増強させてくれという要望というものは、これは悪いのじやないと思うのでございますが、そういう点につきましては、今のおつしやられた数字とか装備というものは限界点では必ずしもない。なおこれ以上増強申請する余地があるものと考えられるのでありますが、法務総裁はどうお考えになつておられますか。
  41. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 ただいまの警察力は戦前の警察力に比しまして劣つてはいないのであります。従つて事態が何らかの急激なる変化を示しまして、この警察力をもつてしてはとうてい応ぜられないという実証が出て参りますならば、またそれを実現する方法もあろうかと思いますけれども、ただいまのところさようなことを全然考えておりません。この警察力において最大の能率を発揮せしめて、そうしてこの警察力でできるだけのことをいたしたいと実は考えているのであります。
  42. 並木芳雄

    並木委員 十一日の土曜日の、民主自由党からの共産活動に対する質問に対する法務総裁の御答弁に関して、ちよつとお聞きしてみたいと思います。  実はあの質問の前半は、私は確かに質問だと思つて聞いておつたのですが、後半に至つて断定的なところが出て来たのではないか。つまり日本における共産活動というものがすでに非合法の範囲に入つている。だからこれを取締つたらどうだ。また共産党の議員は良心があるならば、議席から引きさがるべきだというような発言があつたので、これはむしろ私は質問の範囲を越えているようにも聞きました。ことにそういう点に対して断定するというならば、これは相当の問題だと思つて聞いたのであります。いやしくも一国の多数をとつているところの政党から出た代表質問で、しかもそういう断定的な点が出た以上、どうしても私としては御質問しなければならないわけでありますけれども、はたして民主自由党が認識されるように、一体この共産活動というものがその段階に来ているのかどうか。法務総裁はしばしばこの点については、私は公平な答弁をしているように承つております。たとえば思想は自由だから、思想の限度内においてはこれを取締る対象とはならない。実際にそういう現象、あるいは活動というものが出て来た場合でなければいかぬ。あるいは実行に着手するような現象が出て来た場合でなければ、取締りの対象にならぬというふうに、冷静な答弁をされていると思われるのですが、ただいま申しましたように、いやしくも一国の多数をとつている大政党から、そういう代表質問でなく、むしろ断定的な意見が開陳された以上、その與党の上に立たれる法務総裁として、これに対するお考えをお聞きしておきたいと思うのです。実際においてそういうことがあるのかどうか。またそういつた形勢が認められるのかどうか。もしそういうものは全然ないといたしますならば、そういう断定をしたことは事実に即さないところの断定を下したという意味で、あるいは法に触れるのではないかというようなことも考えているのでございますけれども、そういつた点について御所見をお伺いいたします。
  43. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 思想の問題につきましてはいろいろな問題があるのでありますが、御承知のようにただいまの憲章法におきましては、思想、言論は十分にその自由を確保されているのであります。従つて思想だけといたしましてはずいぶん極端な言説も出て来るかもしれませんが、これはどうもその段階においてはやむを得ないのであります。従つてこれを取締る何らの法規も権力もないのであります。もし国会内の議論等におきまして問題がおありになるならば、これは国会御自身で適当に処置さるべきことであると考えております。政府がこれに対して何ら關與する権限は持たないのであります。ただいま、もしその言説が虚偽であつて、そうして不都合であるならば、法に触れないかというお話でありますが、ただいまの刑法では論告罪あるいは名誉毀損というようなものが、それに似たものかと思います。しかも名誉毀損は、これは名誉が実際に毀損されたかどうかということによつて、またその被害者が親告するというような條件もございますから、ただいまのお話は誣告の問題であろうと思います。誣告と申しますのも非常に狭いのでありまして、これは虚偽であることを知つて、そうしてその人を陥れるために官憲に申告したというような條件がなければ、誣告罪は成立しないのであります。つまり言論は自由であるという建前の方が大きな基盤にあるのでありまして、言論を越えまして実際の行動に移らない限りは、これを法によつて取締るということはなかなかできないのでありまして、またしてはならないことであると考えております。  しからば今日の共産党の活動が、せんだつて佐々木君の主張されたように極端な段階にあるかどうかというお話でありますが、私どもは思想上においてはかなり極端な段階にあるであろうと思いますけれども、法に照しましてこれを措置するという段階には達していると考えておりません。もし達しておりまするならばただちに措置しなければなりませんので、措置しないのは怠慢でありますけれども、さような段階に達していると考えておりません。この間も申し上げましたように野坂理論の批判ということは、私はあれは共産主義の理論としては批判の方が正しいのであろうと思います。そしてそれに野坂君が屈服したのであります。そうして今までの理論は悪かつたから今度は新らしい理論を承認するでありましようけれども、さればと申してそれをただちに実行に移すという主張はまだされておらない。またさような形跡も見えない。私どもはただ実際の活動が法に触れたときに初めて行動を起す。それまでは静かに見ているというほかはないと思うのであります。もつとも団体等規正令の第二條に七つの具体的な場合をあげております。その七つの具体的の場合の中には、多少実際活動のもう少し前、決意であるとかあるいは計画であるとかというようなものでも取締り得る場合があるのでありますが、これもごく狭い範囲であります。従つて一般的にさような考えを持つているのでありますから、たといどのような極端な考えでありましようとも、それだけを対象にいたしまして措置をすることはできないのであります。これが今日の新憲法の精神でありまして、これがほんとうのデモクラシーであろうと思つているのであります。
  44. 並木芳雄

    並木委員 共産主義活動のことばかり言われているが、それと並んでむしろ外国なんかが心配しているのは、いわゆる極右と申しますか、フアツシヨの蠢動だろうと思うのです。地下組織が日本にあるなんということをときどき言われたりするのでありますが、その方面の状態はどうなつておりますでしようか。やはり相当心配すべき段階に来ているのではないかというふうに、疑問を持つている向きが多うございますので、この機会にそちらの方面の状態についてお伺いしておきます。
  45. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 その点につきまして私どもは十分の注意をいたしております。日本に右翼というものが昔からたくさんあるのでありますが、これは理論的根拠も、またその組織も、実はそれほど恐るべきものではないのであります。どつちかと申しますと無頼漢の寄合いみたいなものが多いのであります。しかしながらときにはかなり極端なる行動をとりますし、ことにまた最近では旧軍人等がそれらに巻き込まれるきらいもかなりある。あたかもみずから愛国者であるかのように考えておる人も多数あると思うのであります。しかしながらこれは日本のほんとうの再建にははなはだじやまになるものであります。外国人が心配するのもむりからぬことでありまして、十分注意をいたしております。またそれほどの大規模のものでありませんでも、昔から御承知のように、日本には博徒あるいは市井の無頼の徒が、一種の団結をいたしまして国内を横行し、いろいろの事象を起すという実例は昔からあるのであります。それがまだ決してその跡を絶つておりません。これらもこの際徹底的に一掃いたしまして、日本を新しい基礎の上に再建しなければならぬのでありまして、共産党だけをこのごろやかましく申しますけれども、私どもは実は共産党だけではございません。さようないわゆる右翼につきましても常に注意を怠つておりません。そして確証を得次第どんどん解散をさせ、その他の措置を講じておるのであります。ごく最近には例の義勇軍募兵というようなうわさがたびたびありますので、十分注意いたしております。多少のものは出て参ります。しかしたいした基礎のある強固な組織を持つたものはまだ見当りません。どつちかと申しますればごく上すべりのした、ほんの思いつきの団体というようなものが多いように思います。しかし決してさように安心しておれないのでありますから、できるだけの手を尽してただいまも調査をいたしております。何分にも昔のように警察を使つて思想的な調査をするということは、絶対に禁止されておるのでございまして、またさようなことはいたしません。従つてこういう方面の調査も非常に急速に、そして全面的に行われるということがはなはだ困難な状態であります。調査もごくデモクラテイツクにやるのでありますから、従つて効果がただちに出て参らぬきらいはあるのであります。その辺の人員なり設備なりを十分整備いたしまして、御承知のごとく二十四年度の予算におきましても、二十五年度の予算におきましても、それらの点につきまして十分の——十分でもありませんが、相当の財政的措置をも講じておりますので、その措置が実現されますれば、一層それらの点につきまして、私どもは行き届いた調査ができ、従つてそれに対する措置も整つて参ることと考えております。
  46. 並木芳雄

    並木委員 大分時間をいただきましたから、私最後にもう一つお伺いいたします。これは外務次官、またはその他の政府の外務当局の方にお伺いしますが、実は新華社の放送によつて、中ソ同盟あるいは中ソ協定というようなものが締結されたやに聞いております。その中に條約締結の目的として、両国間の友好合作を強め、日本帝国主義の再起、及び日本と結びつく何らかの形の新たな侵略を、共同防止することにあるというような文字が含まれておるのであります。今朝ラジオでもちよつと私そういうふうに聞いたのですが、こういうようなことがあるとすれば、日本人としてわれわれ由々しいことだと思うのです。ことに日本帝国主義の再起とか、日本と結びつく何らかのようなことを、いやしくもわれわれを管理しておる連合軍の中の国がお考えになつておるとするならば、これは実際日本人としては泣いても泣き切れないのじやないかと思うのです。もつともつと崇高な新憲法に即して、ほんとうに平和を追求してやまないわれわれなんですから、こういうことが言われ、このために出て来た侵略に対しては共同防止するというようなことが言われたならば、われわれは当然これに対しては黙つていられないわけなんです。あくまでも私たちは帝国主義だとか、あるいは再び戦争を巻き起すというようなことを言われるだけでもいやなので、その点に対しては当然外務当局としても御所見があるはずだと思うのです。それで私は緊急質問としてお伺いしますが、外務次官その他の方々の御所見をお伺いします。
  47. 川村松助

    ○川村政府委員 ただいまの並木委員の御質問に対しましては、まだ的確な資料が入つておりませんので、調査の上正しい基礎に基いてお答えいたしたいと思います。
  48. 倭島英二

    ○倭島政府委員 先ほど御質問のございました沖縄との貿易についての補足説明を申し上げます。現在沖縄とわが国との間の貿易関係では、貿易協定と金融協定とございます。それで現在実施されておる貿易協定は、昨年の七月一日から今年の六月末までの期間に一応なつておるのでありますが、そのわくもわが国が買いつけるわくは七十五万ドルないし百万ドル、それからわが国から輸出するわくは九百万ドルということになつております。しかもこの決済関係は金融とりきめ、金融協定に書いてあるのでありますが、それは支払いを米ドル・キヤツシユ・べースということになつております。なお沖縄通貨は円の当時の軍票でありまして、ドルとの交換比例は一ドル対五十円になつております。従つて日本との関係ドルとの関係で、向うが五十円、日本が三百六十円というレートになると思います。
  49. 並木芳雄

    並木委員 まだたくさんありますけれども、時間をたくさんいただきましたから、今日はこれで私の質問を打切ります。
  50. 岡崎勝男

    岡崎委員長 仲内憲治君、御質問ありますか。よろしゆうございますか。それでは聽濤君。
  51. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 倭島局長に引揚げの問題をちよつと聞きたいと思うのです。大体引揚げの問題が、非常に日本の国内でも大きな政治問題化しておりますし、特に国際的な問題にまで発展しておりますから、いろいろ疑問をただしたい。私たちも例の三十七万という数字については、的確なことをかねて知りたいと思つて政府にいろいろ要望しておるわけです。最初にお聞きしたいのは、今まで政府では、大体簡単に申しまして三十七万というソ連からの未引揚者が残つておるということを、発表しておるわけであります。ところがこの間、去る六日の予算委員会におきまして、吉田首相がこういうふうな答弁をしております。これは倭島局長も御存じだろうと思いますが、簡単に申しますとあの数字は想像にすぎない、不完全な調査だという意味のことを言つている。これは前後の関係もいろいろ申し上げる必要もあるかと思いますが、十分御存じのところだろうと思う。そこのところは前後からいたしまして、非常にはつきりと出ておるわけであります。これは全部読むわけに行きませんが、たとえば総司令部等からの報告を受けるが、日本政府としては直接取調べをする機関もなければ、また帰つて来た引揚者の報告を受けるなり、取調べするというような間接の調べをして、それによつて数字を訂正してみたりしておるような状況で、その点ははなはだ不完全な調査のみ持つておるので、いわゆる正確な数字というものがつかまえられたとき、あるいは終戦の直後において多分これだけの人がつかまえられて、ソ連へ送り込まれておるだろうという想像上の基礎数字だけ持つておる。その後帰還者等の報告あるいは総司令部等の報告によつて、今日は多分このくらいの人が未帰還者として残つておるであろう。これも想像にすぎない不完全な調査だけであるが云々というふうに言つておる。この趣旨は一貫して述べられているわけであります。そこで私お聞きしたいのは、要するに想像というやつは、多く想像しようと思えば幾らでも多く想像できます。少く想像しようと思えば幾らでも少く想像できるわけであります。結局要するにこれはでたらめだということに簡単にはなつてしまう。そういうでたらめな数字を基礎にして、なお三十七万ソ連に未帰還者がいるということを政府は確信しておるのでありますが、一体その確信の根拠はどういうものか。なぜそういうものが確信されておるのか。まず最初にお伺いしたいと思います。
  52. 倭島英二

    ○倭島政府委員 お答え申し上げます。先日の総理の御説明は、虚心坦懐にお聞きになればその通りおわかりになると思うのでありますが、今の御質問もありましたから少し御説明を申し上げます。  まずその前に今お手元へ配付いたしました在外邦人引揚統計表というのが行つておるわけでありますが、それは今年の二月一日現在の数字でございます。それをごらんいただきましても、そのシベリアの関係のところに七十万というのがあがつておりますし、それから合計の未引揚げのところに三十七万四千四百二十九名という数字が出ております。この表に書いてございますが、その表の最初の数字のところで、引揚対象基本数というのがあつて、括弧して推定と書いてあります。その次に引揚数累計表というのがありまして、これは帰つて来られた方々を一々数えた統計でありまして、推定ではございません。それから未引揚数、括弧推定と書いてあります。この数字は推定であります。総理のこの前の説明で想像ということを言われましたのは、政府がこの数字を発表するにつきましては、基礎はさつき聽濤さんの言われたような単なるふらふらした基礎では毛頭ございません。これははつきりした基礎に基いたものでございます。しかしながらそこに書いてありますように、現地の当時の状況から申しましても、これは常識をもつて考えればおわかりいただけると思いますが、たとえば三十人とか五十人とか、あるいは多くても百人というような人の動きは推定によるほかありません。しかしながらこれはこの数が全部いいかげんな数字であるということでは毛頭ございません。たとえばソ連地区の関係の数字もほかの地区の関係の数字も同様でございまして、私はこれまでしばしば共産党のいろいろな方々の御質問に対しても御説明をしておるのでありますが、ほかの地区の関係の数字は大体において正確なことがもう明確になつております。従つてソ連関係の数字もほかの明確なのと同じように、明確であるとわれわれは信じております。従つて先ほどお尋ねでございましたが、想像に基いた何かふらふらした不確定な、よくわからぬ数字をもつて三十七万四千残つておると言うのかということでございましたが、そうではございません。政府のこの引揚対象基本数、これはこまかいところは推定でありますが、大綱において推定ではございません。
  53. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 そうしますと、ソ同盟では御承知のように経験の次の年あたりから、ソ同盟に入つておるところの捕虜は五十九万四千だということを最初から発表しておる。そういうふうなソ同盟側のはつきりした発表があるのに、政府の方でこまかいところは推定もあるが、しかし大体の数字は確かなものであると主張しておるのですが、一体その点は実際にどういうふうにしてお確かめになる方法があつたのですか。相手国が五十九万四千と当時から発表しておるにかかわらず、政府では非常に大きな数字、たとえば政府発表によると、最初のころのソ同盟における捕虜の死亡率は大体一〇%くらいであるということを言つて、たしかその数字も二十七万幾らだというふうに発表しておると思うのですが、そういうことを言いますと、これを逆算いたしますと、これは実に莫大な数字になつて来るのですが、そういうふうなことが事実行われていて、実際政府の主張するような数字を大体間違いがないと確定しておるのは、どういう方法によつておられるのか、それをお聞きしたいと思います。
  54. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今申されましたソ連の発表なるものは、これは責任のない新聞通信等の伝えたものでありまして、従来政府が何回となく総司令部を通じてソ連に要求しておるにかかわらず、一回もソ連側からの報告がない。なおこの日本側の数字は従来司令部の御発表にもありましたし、早くから知られておる数字でありまして、この数字に対して一回もソ連側から、これに対して間違いであるとかどうであるとかいうことを言われたことがないことは、御承知通りであります。なおわが政府といたしましては、先ほども申上げましたが、この数字の統計表をつくるにあたりましては、はつきりした従来政府が持つております最も信頼できる根拠に基いたものでありまして、それによつてこの統計表ができておるわけであります。従つてたとえばシベリアへ入つた数字がここに七十万と書いてありますが、これについては基礎のある数字であります。今度はこれをどうして確めたか、確める方法をいかにしてとつているかという点については、実際ソ連の協力を得なければ、これをはつきり確める方法がない。なぜかと言うと、われわれの勘定ではそれだけ連れて行かれておることになりますが、実際連れて行つた方が過去四、五年間にわたつて言わないのでありまするから、われわれはどこまでもこれだけおつたということを言つておるわけであります。
  55. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 ソ同盟の方で何とも言つていないといつて、あなたはタス通信の発表その他のものが無責任な発表だなどと、外務省の一員としてそういう非常識なことは言えるはずがない。タス通信というものは非常な権威を持つた通信であり、国家と一体となつてつておるところの通信社です。しかも一番重要な事実は、ソ同盟においては終始一貫して五十四万七千ですか、そういう数字を発表しておる。これは何よりも一番大きな回答である。しかもこの中で、内訳までちやんと発表しておる。そういうことを無視して、一方的にそんなことを言つておられるのだけれども、これは外務省の当局としてはまことに言い過ぎた言い分であると思う。しかし私は方面をかえてお伺いしますが、従来日本政府は、主として倭島局長が言つておられるのですが、大体この数字は総司令部の数字である。こういうふうに委員会やその他において発言しておられると思うのです。ところがあなたも御存じのように、シーボルト議長は最近はつきりと、これは日本側の数字であるということを言つておるのです。一体あなたが今まで言つておられる総司令部の数字と言うのと、シーボルト議長の声明とは大いに食い違つておるのですが、なぜこういうことが起つているのか。あなたはそれでもやはりこれは総司令部の数字であると、依然として言われるおつもりでありますかどうか、お聞きしたいと思います。
  56. 倭島英二

    ○倭島政府委員 その数字の問題は、もう過去数箇月繰返し説明しておりますから、議事録その他をごらん願いたいと思います。今のお話の点は、私は従来からこう説明しております。日本政府が持つておりました数字は、いろいろ司令部に報告しており、その報告が相当重要な基礎の一つになつて司令部発表が行われたものであると思います。従つて従来は司令部発表ということで発表せられたわけであります。きようお配りしたのには、司令部発表ということはどこにも書いておりません。ということは、これは司令部が従来発表し、現在も持つておる数字と、日本政府が過去四、五年間にわたつてチエツク・アツプして、最も信頼のある正しい数字と思う数字で、きようお手元に差上げましたのには司令部の数字と書いてありません。しかし現在司令部の数字と日本側の数字は一致しております。
  57. 中山マサ

    ○中山委員 関連して——私は第百二回対日理事会に出席いたしましたが、そのときこの数の問題が出ました。英連邦のホジソン大使が申されましたのは、今この七十万という基礎数をソ連側からとやかく言われる理由はさらにない。なぜならば対日理事会の始まつた当初において、この数字を決定するときに、ソ連代表がそこに出席しておつて、この問題に対しては何らの反駁を加えなかつた。ソ連側もこれを承認した数字であるがゆえに、今日第百二回の対日理事会において、ソ連側がこの問題をとやかく言うところの力はないのだということをはつきりと、私は通訳なしで、自分で英語がわかります関係上、これを相接に聞いたのでございますから、これは間違いがないということを申しまして、ここにソ連側承認の七十万であるということを私は断言いたします。うそだとお思いになるなら、対日理事会の記録をごらんになりましたならば、はつきりするだろうと思います。私はこれに関連して、海外同胞の引揚委員長として発表させていただきます。
  58. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 倭島局長の話を聞きますと、——私もう一ぺんお尋ねしますが、実際あなたの今までの発言の仕方がかわつておるのです。私はこの表現上のことを問題にするわけではありませんが、非常に疑いが持たれるわけです。たとえば昨年の五月の参議院の引揚委員会では、あなたははつきりと引揚関係の資料は日本政府の提出したものである、こういうことを言つておられる。ところがその後になつては全然そういうことは言わないで、総司令部のものであるというふうに発言の内容かかわつて来ておる。それからたとえば昨年の十一月二十九日ですか、衆議院の外務委員会であつたと思うのですが、従来日本政府が根拠としておる数字は、従来も申し上げておると思いますが、司令部発表の数字でありますというように、明言しておられる。ところが一方では同じ日に、日本政府関係数字は、あることはあると思いますが、というような、あいまいなことを言つておられる。このことを一々追究するわけではありませんが、先ほどの御説明によると少しあいまいな点があるのです。つまり総司令部の数字と言つておるが、これは日本政府がいろいろ資料を出して、それを基礎にして総司令部の数字ができた。とういうように言われるわけであります。その点をはつきりお伺いいたしたい。
  59. 倭島英二

    ○倭島政府委員 私の従来説明しました前後の関係をよくごらん願いたいと思います。ただ一字一句を何されますと、そういうあたかも一貫しない説明をしておるようにおとりになるかもしれませんが、先ほども申しましたように、終戦直後日本政府が持つておりました資料を司令部に提出しまして、司令部でもその後いろいろ日本政府よりはまた情報を持つておられることも多いし、いろいろ検討せられたことだろうと思います。従つて従来この委員会あるいは引揚関係委員会にも、きようお配りしたような統計表を配つておりましたが、その統計表に関する限りは、従来司令部発表の数字であります。従つてその統計表から数字を引用して御説明をしましたときには、司令部発表の数字ということを言つておるわけであります。それからその後過去四、五年にわたりまして、いろいろチエツク・アップされて、きようお届けをしました数字は、司令部の方も日本政府の方も、これは最も現在信頼し得る数字である。このほかには反対の説明あるいは反対の証拠のあるものは一つもないわけであります。そう信じておるわけであります。
  60. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 私の聞きたいのは総司令部発表しておる数字を引用したときには総司令部の数字である。こういうことを聞いているのではない。あなたのさつきの説明によつても大体想像されることは、総司令部の数字そのものが日本側政府の数字であるかどうかということです。この点はシーボルト議長の方ははつきりとその点を明言しておると思う。つまりあなた方の出した数字が総司令部の数字として実際発表されておるのかどうか。この点をお伺いしたいわけです。中身はあなた方のおつくりになつた資料じやないかということです。
  61. 倭島英二

    ○倭島政府委員 それはシーボルト議長がそれを言及されたところをよくお読みになれば、日本政府が出した数字もありましようし、総司令部でさらにそれを研究され訂正されて発表された数字があるかと思います。全部一括してここでお答えするわけには参りません。
  62. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 あなたがそんなことを言うなら私はここで読みましよう。たとえばこれは昭和二十五年の一月五日付東京新聞にちやんと出ておりますが、シ議長の声明として、一月四日の対日理事会における声明の中で、たとえばこういうことを言つている。「一九四九年五月二十日タス通信を通じて発表されたソ連政府声明は」ここにもはつきり書いてありますよ。「当時総計九万五千名の日本人捕虜がソ連領内に残存していると述べている。この数字は日本政府の統計によるこれ以外のソ連地区残留日本人三十七万六千九百二十九名を計算に入れていない」ここにはつきり書いてある。「この数字の食い違いは事務処理上の誤りあるいは過大評価とするには余りにも大きすぎる」云々と言つて、そしてそのすぐあとのところに「在外残留日本人数に関する日本政府統計が信頼し得るものであつたことを証明している、」こういう裏づけまでちやんとしておる。あなたの言うような、ときと場合によつてどうのこうのというようなあいまいな問題ではないはずである。その点を私ははつきり聞いておるのです。
  63. 倭島英二

    ○倭島政府委員 日本政府の出した数字に対して司令部でいろいろ検討せられ、発表せられたことは、先ほど申し上げた通りでありますが、その後、先ほどから申し上げておりますように、現在司令部においても、日本政府が持つておる数字、さきほどお手元に配つたものとそのまま一致しております。従つてその表現の方法は日本政府ということを言われても、司令部の方と言われても、同じ数字を今持つておるわけです。
  64. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 あなたは何か非常にあいまいなことを言つている。私が聞いているのは総司令部の数字だとあなたが今まで言つていたにかかわらず、シーボルト議長がはつきり日本側の数字だと言つておる。しかも私が今質問してみると、問わず語らずのうちにわれわれの出した資料が、総司令部の数字になつていると言わぬばかりのことをちやんと言わざるを得ないではないか。そう言つている。だから私がはつきりだめを押して聞いているのは、総司令部の数字だとあなたは言つているけれども、これは日本側の数字そのものじやないか。こうなつているんじやないか。日本側の資料をもつて司令部の数字ができているんじやないか。こういうことをはつきり聞いている。なぜあなたははつきり回答ができないのですか。
  65. 倭島英二

    ○倭島政府委員 はつきり返答しているつもりですが、おそらく御質問の点の基礎と言いますか、お知りになりたい点は、当初の基礎数字は何かということが頭におありになるのだろうと思いますが、その当初報告した基礎数字については、その後の資料もありますし、調査もありますし、その当初の基礎数字のままではありません。従つて当初日本政府が出したそのままがこの数字なのかと言われれば、そうではありません。それは司令部でも検討せられ、日本政府でも検討し、その後たとえばシーボルト議長も報告の中で使用しておられる数字、あるいはさらにその中からその後帰つて来られた人たちの数字を引けば、お手元にお配りしたような数字になるわけであります。どつちの数字も今一致しておるということを申し上げたわけです。
  66. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 どつちの数字も一致しているという言い方がそもそもおかしい。つまり明らかなことは、総司令部の数字だと言つているのは実は日本側の数字なんだ。だから一致するも一致しないもない。同じものなんだ。それをあなたは別なものとして扱つて日本側の数字も総司令部の数字も大体一致しておりますとさつき言つた。そういう言い方がどうも怪しいと思うのです。実際のところ……。これ以上この点ばかり追究してもしようがないから言いませんが、一体私たちの考えているところによると、どうも外務省ではもう一つ、数字を持つているらしい。どうです。もう一つ数字があるのか。これは部内用に使つている数字と、発表用に使つている数字とどうも二つあるらしい。なぜかと言うと、あなたは総司令部の数字云々と言つていると同じように、やはり日本政府関係数字はあることはあると思いますが云々、これは発表の時期には至つていない。こういうようなことを言つている。だから私たちが実際に感じられることは、外務省では総司令部の方の発表の数字の基礎になつているようなああいう数字は総司令部に出し、一方ではもうひとつ別個の数字をあなた方は持つておる。どうですか、この点は……。
  67. 倭島英二

    ○倭島政府委員 誤解であります。御存じだと思いますが、これは外務省だけではなしに復員局でもそうでありますが、ソ連の方から何ぼ尋ねても正式な報告をしてくれないものでありますから、われわれとしては国内でわかるだけのことをわからせたいということで、留守宅家族の協力を得まして、留守宅家族からの報告を集積した数字は持つております。しかしながら、それはこれとはまた別の数字であることは当然でありまして、おそらくあなたの聞き間違いじやないかと思います。
  68. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 もう一度お聞きしますが、そうすると十一月二十九日の衆議院の外務委員会か何かで、あなたは一番最初には先ほど読みましたように、従来日本政府が根拠としている数字は、従来も申し上げておると思いますが、司令部発表の数字でありますと言つている。ところがそのあとになつて、同じ日に、日本政府関係数字はあることはあると思いますが、結局今は発表の時期でないという意味のことを言つておる。ここで先ほどの私の質問から言いましても、第一に総司令部の数字でありますと、あなたははつきり言つている。ところがその同じときに、日本側数字もあることはあると思いますが、今は発表できない。こういうことを言つている。これは二重の数字になつていることは明らかじやないか。この点についてあなたはもう少しはつきり言明していただきたい。なぜかと言えば、先ほど私が総司令部の数字そのものは、あなた方がおつくりになつた数字じやないかと聞いておるけれども、はつきりしたお答えをしない。そしてあなたの言つているのは、総司令部の数字と、われわれ日本側政府の数字とは大体一致しておりますと言つた。これはあなたは客観的事実が非常にはつきりしておるから、総司令部の調べたものも、日本側の調べたものも、こまかなところは多少違うかもしれぬが、大体において一致しておると言う。いかにもあなた方のつくつた数字が、非常に正確なものであるかのごとく印象づけるように言つている。このことから言つても、あなた方は、総司令部の数字、日本側の数字、こういう二つのものがあることははつきりしている。だから未発表の、外部に発表しないところの別の数字をあなた方は持つておるに違いない。大体こつちもわかつておる。あなた方が持つておるということを知つているのです。これは非常に重大な問題です。ここではつきり答弁していただきたい。
  69. 倭島英二

    ○倭島政府委員 先ほどから繰返し御説明しておるのでおわかりかと思つたのでありますが、とにかく大体一致しておるということは言いませんので、司令部の数字と日本政府の数字は一致しておる。同じ数字ですから日本政府の数字だということを言われてもけつこうです。一九五〇年二月一日付という表を差上げましたからそれをごらん願います。なお私はここで数箇月間共産党から出られた委員の方と、引揚委員会あるいは外務委員会その他でいろいろな問答をして参りましたが、ときどき委員がかわるために、その引揚げ問題のポイントはどこにあるかということがいつもぼけるのであります。その点について私からこの際、引揚げ問題については従来国民もみな心配しておりますし、この数字の問題につきましても、ただ單にこの発表のどこかのしつぽをつかまえて、いろいろ議論が行われて参りましたから、私はここでひとつ根本論でありますが、引揚げ問題の最も国民も心配せられ、政府としてもこの数字の問題なんかで、どういう点が一番困難であり心配しておるかという問題について、所見を申し述べたいと思います。
  70. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 あまりかつてなことをしやべらず、こつちの方に返答をしてください。質問がぼけている。余計なおせつかいじやないか。外務委員でわれわれが取上げているのだ。あなたはそれに答えればいいのだ。ただあなたは答えればいいのだ。大体あなたはいろいろなふうに言いのがれはしていますよ。確かに言いのがれはしていますけれども、いろいろな点でその都度々々言い方がぐるぐるかわつて来ている。非常に怪しいものであるという印象をはつきり持たせる。大体あなた方がそういうふうに言われるならば、たとえば留守宅家族調べなんかやつておられるのですから、この在ソ残留者の住所、氏名なんかを調べて、そして外務省の中でちやんとカードを作つておるはずです。そのカードをひとつ公表してもらいたいと思う。この外務委員会で公表してもらいたいと思う。カードを持つて来て見せてもらいたいと思う。その点どうですか。
  71. 倭島英二

    ○倭島政府委員 適当な機会に公表されるものであろうと思います。
  72. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 適当な機会とは何です。今こそ最も重大な時期じやないですか。これについて非常に大きな問題が国際的にも国内的にも起つておる。だから外務委員会で実際にここでちやんと政府はこのカードをわれわれの前に見せるべきだ。何か祕密主義で外務省の中にだけ置いておつたつて何の役にも立ちません。調べたものを見せてもらいたい。見せるということをなぜ言えないのです。適当なときとは何です。今こそ見せるべき時期じやないか。どうですか。
  73. 倭島英二

    ○倭島政府委員 まだ調査中でありまして、その調査が完了すれば発表せられると思います。
  74. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 調査中だということになると、三十七万といつてこの数字を発表しておいて、確かな数字の基礎になるところのこういうものの調査はまだ調査中だ。これは非常におかしいじやないか。このこと自体が、外務省が推定だけではなしに、ちやんとした確実な調査をやつておるということを言つておいて、そういうものはまだ調査中というのは何の言いぐさか。それではもう一つ、われわれ外務委員会で外務省の引揚げの調査室なんかへ行つて、そのかぎをあけて——あまり膨大なので持つて来るのができなければ、現場に行つて調べても、実際にそれを見せますか。
  75. 倭島英二

    ○倭島政府委員 おのずから政府の持つておる情報なり資料なりを議会の方で要求せられる場合の成規の手続があると思いますから、それにおよりになれば、ごらんになれるものはごらんになれます。そうでないものはごらんになれない。そう思います。
  76. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 要するに見せたくないのじやないか。見せられないじやないか。はつきりわかつてる。もう一つ聞きたいのは、それじや第一ろくな調べで市町村単位から組み立てて、府県別の調査がちやんとできてるはずだ。それをひとつ委員会に公表してもらいたい。それをやつてもらえますか。
  77. 倭島英二

    ○倭島政府委員 先ほどから申し上げておるように、現在ではできません。適当な機会があれば、そういう御希望に応ずるときも来るだろうと思います。
  78. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 現在できないというのはどういう理由ですか。再三私が言つてるように今最もみな聞きたがつてる。それがなぜ今できないのか。どういう理由があるのか。
  79. 倭島英二

    ○倭島政府委員 現在まだ調査中であるからであります。
  80. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 怪しげなものだな。何を言つてるのか。ところがいろいろな調査ができてることをこつちは知つてる。それをあなた方は公表しないじやないか。できない。二重数字になつてるから……。部内用と部外用と二重数字になつてる。そこにできない理由がある。こういうことで国際的紛糾や国内の政治問題の種をまき散らしてるのが外務省の引揚問題だ。倭島局長だ。これはあとで伺いますが、たとえば常識で考えつてわかるんです。あなた方はどんなふうに数字をでつち上げたか知らぬが、大体日本では市を除いては町村の数は一万五百町村。一万五百で三十七万ということになると、一村平均三十五人のソ連からの未帰還者があるというばかげた数字が出る。そんな三十五人も一つの村におるか。実際言つたら一人もいない。いたつてせいぜい一人か二人。そんなものだ。ちつぽけな村に三十五人もあるというような、三十七万もソ連から引揚げて来てないというような、そんなばかげたことは世間に通用しません。また県について考えてごらんなさい。日本は一都二府四十三県、計四十六県。これを県別にすると、大体一県について八千人強のソ連からの未引揚者があるということになる。こんなことも実情と全然合つていない。しかも青森県その他におきまして、各県の世話課や何かで調べてちやんとわかつてる。わかつてるけれども、これを発表しない。というのは指令があなた方の方から出ておる。それでいろいろな方法でこちらで調べてみると、たとえば青森県あたりで八十六人ぐらいしかない。ところがなんとこれの計算によると一県平均八千人ということになる。こういうばかげた数字でやつてるからわれわれは常に問題にするのであつて、あなた方がそういうことを言い張るならば、実際にあなた方が調べたカードをちやんとここに公表してもらいたい。住所、氏名をちやんと書いたカードがあるのだから、公表してもらいたい。もう一つ府県別の表をちやんとわれわれにはつきり示してもらいたい。これができないと言うからには、あなた方はインチキをやつてると言われたつていたし方がないのだ。それを適当な時期でないからと、そんなことで言いのがれをしようと考えているのがそもそもおかしい。どうですか。大体相当非難攻撃をしたが、一部に何かありますか。
  81. 倭島英二

    ○倭島政府委員 非難攻撃と言われるが、みんな的はずれで非難攻撃とも受取れませんが、とにかく日本政府の従来発表し、あるいは司令部の方でも発表しておられる数字は、根拠のある数字であるということを御承知願います。なお、発表しておりますものについて、もつともこれがうそかほんとうかはつきりしかねるのは、ソ連からの正式な報告がない。これがありさえすれば、日本側の持つている資料を洗いざらい出しまして、いろいろ検討することはできるだろうと思いますが、残念ながら過去四、五年間にわたつて何らソ連から、何回お願いしても一回も正式な報告はないという点が困難な点でありまして、幸い日本共産党の人たちもソ連の状況なんかに通じておられるわけでもございましようし、最近の模様でもいろいろ連絡があるように思いますから、従つて積極的にひとつこの問題について御協力願いたいと考えます。
  82. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 君そんなことを言つているけれども、さつき僕が言つたでしよう。シーボルト議長の声明の中にあるのだよ。五月二十日タス通信を通じて発表されたソ連政府声明は、となつている。これをさつき僕が冒頭に言つたように、タス通信というものは非常に権威がある、ソ連政府の声明だということを外務省は知つておるはずだ。今ごろになつてそんなことを言つてもだめだよ。それからあなたがまあそういうふうに言い張るなら、はなはだ迷惑なことになるかもしれませんが、今後に質問を留保して、またさらにいろいろお聞きしたいと思います。きようはこれでやめておきます。  ついでに外務省の局長、政務次官にお聞きしておきたいと思うのですが、この間新聞発表によりますと、アメリカ四箇所に日本海外代表部をつくるということが発表になりました。これは総司令部発表になつているのですが、大体そういう準備も、できて人選まできまつて行くということになつておりますが、一体日本では原則的にいつて講和もまだできておらない状態で、大体講和條約ができてから外交関係というものが復活するわけでありますが、今度こういうふうな代表部をつくるということは、どういうふうな法的な根拠に基いてやられるのか。それをお伺いしたい。
  83. 川村松助

    ○川村政府委員 御指名でありますけれども、條約上の問題でありますから條約局長から御答弁します。
  84. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の在外事務所は、御承知のようにごとしの二月の初めにアメリカ政府の招請に応じまして、設定されることになつているのであります。アメリカ政府におきましては特定の事項、言いかえれば貿易促進と在米邦人の戸籍事務処理のため特定の人数、大体オフイシヤルが三名、クラーク四名以下ということになつておりますが、それによつてつております在外機関を、先刻お話しになりましたような特定の場所に設置するようにということを提議して参つたのでございまして、わが方で欣然これに応じられたものでございます。これは何も外交の再開というようなことを意味するものではございません。この機関は外交機関でないことはもちろんでございますし、また領事機関でもございません。先日総理が御質問に対しまして言われておりますが、事務的な村役場的なという言葉をお使いになつておりますが、そういうふうなものでございます。しかもその処理する事務につきましては、厳格にアメリカ側許可された事項に限られておるのであります。アメリカ政府がかような許可を與え得るかどうか。日本政府に対してこういうような在外機関を設置することを招請することができるかという点、いわゆる聽濤委員が言われました法的根拠の点でございますが、これは申すまでもなくアメリカ側の問題でございまして、私どもの方でとやかく意見を発表すべきことではないと考えているのであります。アメリカ政府が今回の措置をとると同時に、皆さん御承知通り、他の諸国に対しましても——この諸国の中には単に極東委員会の構成国だけでなく、それ以外の諸国に対しましても同様の措置をとることを希望するという意思を公表されておりますことは、こういうような措置をとることができないというような理由はないからであろうと、私どもは考えている次第でございます。以上お答え申し上げます。
  85. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 それはいろいろありますが、私たち非常にはつきりいたしませんのは、これはこの間新聞に出ているところでは、ただ総司令部がこういうようにしたいという発表が行われただけなんですが、一体その後覚書か何かを政府の方はもう受取つたわけですか。
  86. 島津久大

    島津政府委員 新聞発表になりましたと同様の趣旨の覚書を受取つておりまして、これに対して昨日回答を発しております。
  87. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 そうしますと、今の西村條局長の説明によると、アメリカ側の責任においてこれをやられているという意味になるように思いますが、それでいいのでございますか。
  88. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その辺はアメリカ政府日本政府に対する招請を最高司令官が取継がれて、同時に日本政府に対してそれを伝達することを許可されたという関係にあると考えます。
  89. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 どうもそういうふうなことになつて来ると非常にややこしくて困るのでありますが、実際にはそれはやはり一つ協定になると思うのです。一体どういう形の協定になるのですか。これはどうも私たちにははつきりしない。
  90. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 協定という性質のものではないと存じます。
  91. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 実際私はこのやり方が、たとえば日本憲法国会法なんかの法的基礎に伴つて、国内措置をどうするかという重要な問題があるはずだと思うのですけれども、しかしあなた方の説明を聞くともうそんなところは吹き飛んでしまつてつて、結局あなたの言われることは、われわれが当然外交的な関係における協定、こういうふうな内容のものであるにもかかわらず、その法的な点は何ら国際的にも国内的にも明らかにされないで、こういうふうなことが事実上どんどん行われて行く、こういうところに実際は問題があると思うのです。ちよつとその辺よく相談ばかりしないで、西村條局長、もう少しこつちを向いていてくれよ、話が合わぬ。
  92. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 政務局長と御相談申し上げておるのは、この案件が政務局の主管事項であるからでございます。国内法的根拠は、最高司令官から日本政府に與えられました覚書を基礎にしまして、ポツダム政令を出すことによつて措置されることになつて、目下手続進行中であります。
  93. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 私はあまりくどくど言いませんけれども、実際今講和の問題が起りまして、私たちが非常にこの問題について、日本の全体の国民が非常に真剣に取組んでおるわけです。外務委員会はもちろんその先頭に立つておるわけですが、そういう中でわれわれがやはり一番問題にしておりますのは、どうも例の阿波丸協定などというものができまして以来、国際法的にも何ら根拠が明らかにならない。大体国際法的にいつても前例のないやり方、他国にもそういう例がない。しかも日本連合国の共同の管理下にある。こういう中で特定の一国と国際法的にもはつきりしない協定がどんどん結ばれておる。しかも国内においての手続も何らとられない。国内法的にも非常に問題かあることを平気でどんどんやつておる。これが阿波丸協定以来どんどん進んでおるわけです。この間も本会議においてわれわれの方の議員が、吉田首相に新しい問題をお聞きしたのですが、たとえば関税協定みたいなものにも参加して、もうすでに協定に調印をして帰つて来ておる。これは外務省だつてつておると思うのです。そのほか国際小麦協定に入るとか、いろいろなことが行われておる。ところがもしあなたの言うように、これは日本における占領軍の最高司令官が覚書さえ出せば、そうするともうすべてそういうふうにものが運んで行けるものなのだというふうになれば、今この委員会において、非常に重要な問題になつて、みなが関心を持つております軍事協定つてこの方向でやれるわけです。しかもこの軍事協定、あるいは日本軍事基地に関しての新聞の報道というものは、アメリカ政府側の断固たる非常に確定的な報道が盛んに行われております。これは外務当局がよもや知らぬはずはない。しかもここ一両日の新聞講和はできそうもないという空気だ。ここで終了宣言などというものが考えられているということが、アメリカの通信社で非常にはつきり現われておる。しかもこの問題に関して非常に関心のあるのは軍事協定云々の問題だ。今こういうふうな前例をあなた方はどんどん、国際法的にも国内法的にも根拠を明らかにしないで、こんなものをどんどんやつて行くということになると、これは明らかに今の外務省は、講和の問題についてある特定の一国と事実上の基礎的な既定事実をどんどんつくつて行く。そうして講和なんていうものは吹き飛ばしてしまつて、一定の国との関係だけを結んで行こうという、こういう方向に事実上動かしておると思わざるを得ない。ここに重要な問題があるのです。  いろいろお聞きしたいのだけれども、聞いてみると国際法的にも国内法的にもきわめてあいまいなもの、ただ個々の最高司令官の覚書が出れば、こういうふうなものは何でもできるというのがあなた方の唯一の解釈である。しかしながらそれはポツダム宣言やその他に照してみても、また日本の国内法の立場から行きましても実際に適法なものであるかどうか。実際外務当局は確固たる意見を持つていなければならぬ。しかしながら事実はそれに反しておる。こういうふうなことについてひとつ総合的な見解をあなた方にお聞きしたい。これは重大な問題ですから……。
  94. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御承知通り日本は降伏後降伏文書によりまして、連合国占領管理のもとにあります。そうして降伏文書の最後の末項によつて明らかなように、日本の国の主権連合国最高司令官の権威のもとに立つておるわけであります。こういうふうな事態が五年近くも継続するということは、国際法上とにかく今までなかつた新例でございますから、自然この長年にわたります日本の、いわゆる対内的にもまた対外関係の面におきましても、従来の国際法ないしは平常の事態におきます国内法の観念だけでは律し切れない、きわめてむずかしい事態が起るということは、聽濤委員もよくおわかりのことだと思います。こういうふうな非常に困難な事態に立つてはおりますが、私どもとしてはでき得る範囲内におきまして国際法の建前も立ち、また日本の国内法制の建前も立ち得るような手続によつて、万事を処理するように非常に苦心をいたしております。従つてただいま御質問中にちよつと言及なさいました関税表刊行国際事務局に関します條約修正のための議定書につきましても、近く国会に対して承認の手続をとることになつておりまして、その準備を進めておる段階にございます。従つて政府限りにおきまして憲法その他の規定にかかわらず、一方的にやるというような考えは毛頭ないのでございまして、でき得る範囲内において通常の国際法、通常の事態における国内法の準則に従つて処理したいと努力しておるということも、よくわかつていただきたいと思うのであります。
  95. 竹尾弌

    ○竹尾委員 微に入り細にわたつていろいろ御質問がありましたが、きようはこの委員室は二時までしか借りられないそうでありまして、あとたくさん質問者がございますので、なるべく簡単にひとつお願いいたしたいと思います。
  96. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 あと一、二点でやめます。  そうすると関税協定の方はそういうふうにやると言つておる。これは実際には問題があるのだけれども、このほか海外代表部を設置するということ、これはどうなんですか。議会の手続をとりますか。
  97. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 これは先刻申し上げましたような協定事項でもございませんし、また国内法の系列から言いますと、いわゆる憲法に基く法系統の上に立ちますポツ勅による法系統の部分に属するものでありますから、議会に対しての関係はございません。ただ議会面におきましては、こういう機関を設置するについて、所要の経費の面において、予算面において国会の議決を要する関係になる事項であります。
  98. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 そうしますと、もう一つ聞きますが、こういうやり方で軍事協定でも結べるわけですね。
  99. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 軍事協定の問題につきましては、毎回同じことを申し上げますけれども、将来の仮定の問題でございますから、私見を申し上げることを差控えます。
  100. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 これは日を改めて、もつと具体的に聞きたいと思いますが、最後に一つお聞きしたいのは、これはほんとうは法務総裁に聞きたかつたのですが、さつき帰つてしまつたので何ですが、最近の台湾募兵問題などで、この間朝日新聞に出た吉川元中佐がはつきり帰つて来ているのですが、この動きの背後には、日本人義勇軍の編成とかあるいは密輸事件とか地下組織とか、いろいろな問題が非常に日本で行われているような情報、風説があるわけです。これによつて吉田総理の言われる国際的な信用も、非常に落しつつある状態で、国によつて日本のこういう傾向を軍国主義的な復活と見ておるし、非常に重大視しておるわけですが、講和を控えて、外務当局はこういうものの調査や何かをやつておられるかどうか、それを聞きたいと思います。
  101. 島津久大

    島津政府委員 本件につきましては、先ほど法務総裁から御答弁した通りでありまして、外務省は主管をいたしておりません。また外務省にはそのような関係の情報は入つておりません。
  102. 仲内憲治

    ○仲内委員 海上保安庁の当局にお聞きしたいと思います。問題は最近起つております例のマツカーサー・ラインと申しますか、日本の漁船の拿捕事件であります。これに関連しまして、委員長あてに来ておる電報でありまするが、下関の水産労働者大会という発信で、次に朗読いたしますような電報が参つております。「われらは東支那海方面の漁船拿捕事件に関し、再度懇談を開催し、左の点をあくまで要望す。貴下の絶大なる御配慮を請う。帰還船員の報告によるに、漁獲物、漁具等を持ち去られている。経済的、精神的理由による一切の損失補償——政府は安全なる操業をいかに保障するや、具体策を明示せられたい。」こういう趣旨の電報が来ておるのであります。この面に関しましては、すでに水産委員会ないしは本会議等にも取上げられておる問題であります。この委員会といたしましては、海上保安庁ないしはその他の政府側で、この拿捕せられた船舶の返還あるいはそれに対する国内的な措置というような点について、どのような措置をとられておりますか。その経過をお伺いしたいと思います。
  103. 稻垣次郎

    ○稻垣政府委員 最近マツカーサー・ラインの内側において、相当数の拿捕事件が起りましたことについては、すでに問題になつておるところでありますが、海上保安庁といたしましては、いわゆる日本の沿岸水域の取締りということになつております。しからば沿岸水域とはいかんという問題になりますが、これはGHQからの命令によりまして、基地から半径五十マイルのところを描いた以内であるということにお達しを受けております。すなわちわれわれの方の巡視船は、大体その範囲内で巡視をいたしまして、海難その他の事故がありました場合には、事前に許可を得あるいは事後に承諾を得て、その外に出るというような建前をとつておる次第であります。なおマ・ラインの厳守につきましては、水産庁の方において監督されておるわけでありまして、ただいま水産庁の監督船四隻が、あの附近でマ・ラインの厳守ということについて監督をやつておる、こういうことでございます。  なお私の方といたしましては、現在巡視船が五十九はいおりまして、これが日本沿岸水域の取締りをやつておるわけであります。きわめて手薄であるというようなことでございますが、こうした密航、密輸とか、あるいは拿捕船というような問題には、その方にできるだけ努力を集中いたしまして、取締りなり警備なりをやつておるわけであります。なお海上保安庁の巡視船は、現在におきましては無線通信を利用いたしまして、拿捕のような事件が起きました場合には、できるだけ早く各方面と連絡をとりまして、そうして事後の処置をとるというような建前以上に出れないような状態でございます。
  104. 仲内憲治

    ○仲内委員 この問題については、主として水産庁がやつておられると思いますが、水産庁からはだれも来ておりませんが、外務省の方でマ司令部を通じて、拿捕船返還あるいはマツカーサー・ラインの区域を違反しないような、特別の手配をするというような点についての折衝等が行われておりますかどうか。この点を伺います。
  105. 島津久大

    島津政府委員 この交渉につきましては、司令部を通じまして韓国政府当局と累次折衝があつたのでございます。その詳細につきましては、後の機会に御説明申し上げたいと存じますが、話合いは非常に円満に進みまして、近く満足な解決に達する段階になつております。
  106. 岡崎勝男

    岡崎委員長 菊池義郎君。
  107. 菊池義郎

    ○菊池委員 海上保安庁にお伺いしたいと思います。日本の漁船を脅かしておる海賊船というのはどんなものですか。大規模なものですか。
  108. 稻垣次郎

    ○稻垣政府委員 海賊船であるかどうかということはよくわかりません。海上におきまして拿捕、ことに済州島の南で拿捕されましたのは今年になりまして九艘でございます。この九艘はいずれも韓国側からマ・ラインの侵犯という嫌疑のもとに、ひつぱられた状況でございます。そのうちの四艘は乗組員と一緒に帰つて参りました。あとの五艘の乗組員もすでに帰つております。この件は私どもといたしましては、外務省なりGHQにすぐ報告いたしまして善処を要望しておるのであります。外務当局におかれましても非常に努力されまして、今回の事件については非常に早く処理できたような状況でございます。
  109. 菊池義郎

    ○菊池委員 密貿易、密入国の状態はどうでございますか。数字的にお示し願いたい。
  110. 稻垣次郎

    ○稻垣政府委員 二十四年の一月から十二月までの数字をあげてみます。不法入出国の検挙人員数は九百五十三名になつております。密貿易の方は四百七十一名という数になつております。
  111. 菊池義郎

    ○菊池委員 台湾とか朝鮮とかの別を……。
  112. 稻垣次郎

    ○稻垣政府委員 不法入出国者国籍別調べでは、合計九百五十三名のうち、不法入国八百二名中、韓国人七百二十九、台湾人三十、日本人二十二、その他外国人二十一となつております。出国の方は百五十一名でございまして、韓国八百十五、日本人二十四、その他外国人十二となつております。
  113. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから密貿易に武器を備えておるということですが、それに対して海上保安庁はどういう対策を講じておられますか。
  114. 稻垣次郎

    ○稻垣政府委員 密貿易のすべてがいろんな武器を持つておるというようなことはまだないと思います。ある一部の船は確かに持つてつたような事実もあるようであります。本庁におきましては、巡視船は何ら武器を持つていないような状態でございましたが、保安庁法十九條によつて、海上保安官はその職務を行うため武器を携帯できるようになつており、昨年十一月十七日に至つて初めて十四年式拳銃二千挺の貸與を国家から得たわけであります。この二千挺のピストルをたよりに警備についておるわけであります。
  115. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうすると向うの方では拳銃だけですか。機関銃とか、そういうものは持つておりませんか。
  116. 稻垣次郎

    ○稻垣政府委員 最近わかつておる範囲では捕鯨砲を使つておるような状態であります。
  117. 菊池義郎

    ○菊池委員 幾つですか。
  118. 稻垣次郎

    ○稻垣政府委員 一艘だけです。捕鯨砲もくぎとかくず鉄なんかを入れて撃つのじやなかろうか、威嚇のように感ぜられます。
  119. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから西村局長にお伺いしたいと思います。カイロ宣言、台湾の問題で、この前委員長からたしなめられましたが、どうもわからないことがある。日本の知識階級もおそらくこれに対しては、多くの疑問を持つておるだろうと思うのでありますが、われわれがカイロ宣言ないしはポツダム宣言を忠実に履行しようといたしましても、すなわち台湾や澎湖島の返還に関しまして履行しようとしても、履行することができないじやないかと思われるような疑問があるのであります。それはわれわれが台湾や澎湖島を返還しようとしても、これを受取る権利のある国がないのじやないか。かような疑問が起るのであります。これは中国に返すということをカイロ宣言で言われておりますけれども、革命の手段によつて生れましたるところの国家に対する列国の権利義務は中断されることになつておる。これが国際法の通念であります。ソ連邦に対するところの列国の権利義務が中断されたのもその一例であります。すなわちロシヤ帝国に対するところの列国の権利義務というものは、ソ連邦に対しては中断され取消された。今日中国を承認しもおるのは英国初め多くの国がございますが、カイロ宣言は三国の共同宣言であります。三国のうちの一国である英国が中共国家を承認をしまして、しかして前の国家に対するところの権利義務あるいは宣言の効果が、中共に対して発生し得るかというと、この共同宣言の前には一国の承認というものは効果がないじやないか、対抗できないじやないか、私はかように考える。と同時に今日アメリカがまだ国民政府を支持し、これを承認しておるのでありますが、国民政府日本の台湾をとろうといたしましても、その宣言国の一方でありまするところの英国が中共を承認しております以上は、これまた共同宣言に対抗することができないのでありますからして、国民政府としても台湾、澎湖島をとることはできない。中共としても台湾、澎湖島をとることはできない。かように解釈せざるを得ないじやないかと思うのであります。われわれはどこまでもポツダム宣言に従い、カイロ宣言を忠実に履行したいが、この台湾、澎湖島を受取る権利を持つておるところの国がない以上は、どうにもしようがないが、これに対して外務省当局はどういう考えを持つておられるでありましようか。お伺いしたいのであります。
  120. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 カイロ宣言に関連します菊池委員の御質問の点、問題は主としてカイロ宣言の当事者でありますアメリカ、イギリス、中国三国間の問題にもなります。従つてわれわれとしては御質問の点に対して、こうであろう、ああでおろうというふうな解釈を下さない方がいいと存じます。それとは別にいたしまして、ただ菊池委員に申し上げたいことは、いわゆる一国の政府憲法手続によらないで、革命的手段によつて変更しました場合に、初めて政府の承認という問題が起るわけでございましよう。その場合に、それまで正統政府によつて締結されました国際條約というものは、結局その国の締結しておる條約であつて、條約それ自身に対しては、直接いわゆる国内革命的方法による政府の更新というものは影響ないというのが、国際法上の通念でございます。従つてカイロ宣言を例にとつてはいけませんが、そういうものもいわゆる中国に関する中国と言つてはいけませんが、いわゆる特定国と申しましようか、特定のABCという三国が協約した一つの国際協定があると仮定いたしましよう。そのうちのB国に革命的手段によつて政府の変更があり、そうして正統政府がどちらにあるかという問題が、現に戦争中で発展しつつある過程におきまして、問題の協定それ自身の効力はちつとも影響を受けないわけであります。依然としてB国に対して有効としてそのまま残つておる。ただその條約上の権利なり義務なりを、自分がやるのだという政府二つある。それで関係国のうちで、それじやお前が正統な権利、義務を主張し、また履行して行く立場にあると言う国が、その間にわかれているという事態でございますから、過渡的なある期間におきましては、きわめて実際上に困難な事態が生じるということはやむを得ませんが、長い目で見ますと、そういう事態はそう永続するものではございますまい。ある時期において必ずやB国において、いずれかの国が正統代表であるという時代が来るものでありましようから、その時期になりますれば、問題の協定ということは支障なく履行できると思います。台湾の問題につきましては、先日トルーマン大統領が出されました非常に重要な声明がございますが、それをごらんになればやはりそれと同じような、今申し上げましたような国際法上の通念を基礎にして書いてあるということが、よくおわかりになると思います。
  121. 菊池義郎

    ○菊池委員 ソ連の革命のときに、列国のソ連に対する権利、義務の中断されたのはどういうのですか。
  122. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 あの時は御承知通り国際法の通念から言うなれば、そういう帝政ロシヤの締結した国際條約上の権利、義務は一切承継しないという政策を、労農政府は声明いたしたわけでありますが、それはむろん国際法上の観念から言つて容認できなかつたわけであります。従つて列国が労農政府のその政策を承認しなかつたということが、長い間結局ソ連が列国による承認を得られなかつた大きな原因であります。そのときは革命によつてできた新しい政府によつて、国際法の原則を無視して、承継しないという言葉を言つたわけであります。
  123. 菊池義郎

    ○菊池委員 それからカイロ宣言は共同宣言でありまするが、ただいま申し上げましたように英国は今日の中共を承認しておる。米国はこれを承認しないで国民政府を承認しておる。それで日本が台湾、澎湖島を返そうとしても、結局その間に見解の相違があつて受取り手がない、権利者がない、こういうようになります。これに対してどういう見解を持つておられますか。実にもつたいない話である。
  124. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 非常に具体的な例をとられると何ですが、しかし問題はそういう具体的なことを包含して来ますと、きわめて技術的には解決しやすい問題であるということを申せば足りると思うのであります。具体的に申し上げますと、台湾、澎湖島から離れて申せばいいわけです。結局平和的解決の場合に、領土の譲渡なりそういうことがありましよう。それを規定するときにどれどれの地域をどれどれに與えるとか、返すとか、譲渡するというような、形式で定めることもありますし、かりに今申し上げましたような実例をとりますと、イタリアに対する問題におきまして、アフリカにおけるイタリアの三植民地の問題があつたわけです。この三植民地をイタリアから切り離すということについては、全部の意見が一致いたしたわけです。ところがどの国に結局それをゆだねるかという問題について、どうしても議がまとまらなかつたわけであります。そのときのイタリア平和條約を見ればおわかりになる通り、イタリアは北アフリカにおける三植民地における主権を放棄するという規定が設けられまして、それと同時にその以後における北アフリカ植民地問題の解決の手続が入つております。また実例を申しますが、日本に関する限りは、日本のある特定地域に関する主権を放棄することはきわめて容易にできる事柄でありますから、菊池さんの御心配はそう御心配にならなくても、技術的にはきわめて簡単に解決できますでしよう。こう考えております。
  125. 菊池義郎

    ○菊池委員 領土の移管は講和條約によつてきまりはいたしまするが、講和條約に至らない途上において、中共がもし台湾を攻略するという場合においては、これはどうなりましようか。
  126. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 まつたく仮定の問題でございますし、格別私より特に御答弁する筋合いの問題でもないと存じます。
  127. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 どうもこの前の委員会ときようとは少し趣が違つて、もつと非常に露骨な形でカイロ宣言の問題について菊池さんは発言している。私はそういうやり方については反対で、この前は與党からそれが認められて、委員長がよく懇談されて取消しまでやられておるのです。精神においてやはり同じ態度でこの問題をきよう取扱おうとしておる。これを論議するとか、これをやろうというのは、なるほどかつてかもしれませんけれども、それをどう扱うかは委員長におまかせしますけれども、私も同様の意味で、そういうことをある角度からこの委員会において問題にすることは、国際的にも重要な問題でありますから、愼んでもらいたいということだけ、一言私は申しておきます。
  128. 菊池義郎

    ○菊池委員 この前は台湾について折衝したらどうかということを言つたのです。それで私は取消すと言つたのです。今回はカイロ宣言を忠実に履行するためにはどうしたらいいか、どこへ差上げればいいか、これを言つておる。しごく穏健な話でありますから……。
  129. 岡崎勝男

    岡崎委員長 もうそれで……。竹尾君。
  130. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私の質問は主として食糧輸入に関しまして、農林大臣の御答弁をお願いしたいと思つておりましたが、農林大臣は予算委員会に出席されておるので、すぐ見えるそうですが、それに関連してこの間の理事会の申合せもございますから、できるだけ短かく簡單にお尋ね申し上げます。お尋ねの條項が前後しますけれども、山本安本長官がお忙しいところお見えになつておりますから、山本さんに先にお尋ね申し上げます。  それは貿易に関する見返り資金の問題でございます。見返り資金は御承知のように、将来これをどう処置するか、あるいは今後とも見返り資金の特別会計が行われるかどうかという点については、国民は非常に知りたがつておるところでございますので、これはもらつてしまうのか、あるいは最後にはアメリカに返すのか、その点について副長官の御所見をお聞きしたいと思います。
  131. 山本米治

    山本政府委員 アメリカの対日援助資金には、御承知通りガリオア、イロア、すなわち占領地救済費と占領地復興費がありますが、これはアメリカ陸軍省の予算でありまして、アメリカ国民からとつた税金でまかなわれておるものであります。そしてこの資金によりましてアメリカその他から物資を買いまして、日本へ持つて来ておるわけであります。この日本へ持つて参りますものはおもに食糧でありますが、これを国民に配給して国民から代価を徴收しておるのであります。またその他の資材、原料等につきましては会社その他に売りまして、これまた政府が円の資金を得るわけであります。この対日見返援助資金は二十四年度約千五百億でありましたけれども、二十五年度におきましても千五百八十一億円、こういうことになつております。そしてこれが第一番に公債償還に使われ、その他政府企業、民間企業の長期資金にまわされておることは御承知通りであります。さてただいま御質問の、これは一体くれたものかどうなのかということなのでありますが、このような援助資金を出しておりますのは、アメリカが対日政策としてとつておることでありまして、国民税金からまかなつておるわけでありますが、アメリカはこれを日本に贈與するといつたことはないように思います。従つてこの金は将来勘定書を突きつけられることが、あり得べき性質のものだと思うのであります。この点につきまして私個人あるいは国民の一般の常識ともなつておりますが、やはり援助資金の援助という言葉はあいまいでありますけれども、まあ将来の情勢にもよりましようが、勘定書を持つて来て、これを返せといわれるようなことはないと期待しております。しかし法律上の解釈といたしましては、先方が贈與したということをはつきり言つていない限り、やはり勘定書を要求されることがあり得べきものと考えております。
  132. 竹尾弌

    ○竹尾委員 もう一つこれは外務当局と安本関係だと思いますけれども、現在の貿易は御承知のようにバーター制をとつておりますが、われわれの望むところは輸出を増して貿易の振興をはかる、こういうことになるわけでございますけれども、それについて将来貿易関係は当分バーター制を維持しなければならないかどうかということが一つ、それから輸出振興に関連いたしまして外貨の蓄積をしなければならぬ。その点についてできるだけ多くの外貨を将来蓄積する方法はどうすればよろしいか。それからそういう点に関連いたしまして、われわれが今貿易の振興上一番苦しんでおるのは船舶の不足でございます。そこで講和会議の際にあたりまして、日本の船舶をどの程度に維持したらいいのか。この点について安本副長官の方から御意見をお伺いいたします。
  133. 山本米治

    山本政府委員 今日の国際情勢は御承知のごとく政治的に緊張しておりますので、ひいて経済的にも分裂の傾向になつております。従つて貿易はあるいはブレトン・ウツズ協定であるとか、あるいは国際貿易憲章等によりまして、国際自由貿易の復活を意図しておりますが、世界の実情はそのように今日のところなつておりません。従つて日本といたしましても外貨資金、金等が少いのでありますから、貿易はやはり原則として輸出入超過のできないような、いわゆるバーター方式を用いざるを得ないのであります。これは希望するところとは違うのですが、今日これ以外に貿易ができないような情勢になつておるのでありまして、この情勢が今後どうかわるかということは、先ほどもちよつと申しました通りアメリカ世界経済の自由化、自由貿易の復活にどの程度力を入れるか、そうしてはたして国際経済の自由化が実現できるか、どうかということにかかつておるのでありますが、私の見るところによりますれば、近い将来ただちにそういうふうな状態が来るとは思われないのであります。従つて今後バーター式な貿易というものは、相当長期間続くのではないかと考えております。  第二点のいかにして外貨を蓄積するかというお話でありますが、今日日本は先ほど御質問アメリカの対日援助を受けて、やつと国を維持しておるような状態でありますので、外貨の蓄積などということは思いも及ばない。対外收支は非常に赤字になつておる。その赤字をアメリカ援助によつて埋めておるような状態でありますので、外貨を蓄積するということは非常に望ましいことでありますが、今日はとうてい考えられない。いかにして赤字を減らすかということが今日の問題であります。  第三の今後国際收支をよくするためには、日本の船舶を外航に就航させてもらつて日本の輸出価格を安くし、また貿易外の收入を得たいということは、非常に国民一般の熱望しておるところであります。政府としてもこの点について非常に努力しておるのでありますけれども、なにしろ今日占領下状態でありまして、日本船の外航就航はきわめて限定せられた場合、きわめてわずかしか行われていないのであります。今後どの程度日本の船舶保有が認められるかということでありますが、これはまだはつきりしたことはわかつておりません。今日遠洋に出られるような船はごくわずかでありますが、これをさらに充実すべく、二十四年度におきましては三十万トンの外航就航のできる船の造船を計画、着手しておりますし、これからは先ほどのお尋ねの見返り資金が相当出ております。また来二十五年度におきましても三十万トンの造船計画がありまして、これに対しては見返り資金が相当供給される手はずになつております。
  134. 竹尾弌

    ○竹尾委員 次に農林大臣がお見えになりましたから、農林大臣に食糧輸入の点につきましてお尋ね申します。ここは農林委員会ではありませんから、農業のことはあまりお尋ねいたしませんが、前提としてちよつと日本の農業の国民生活、国民経済の中に占める地位ということが問題になると思うのであります。御承知のように現在は独占資本の形成過程にあるかどうか。そういう言葉を使つていいかどうか知りませんが、とにかく工業を振興させるために今貸本の蓄積が強行されておる。そのために農業はいろいろの形で犠牲をこうむつておることは御承知通りであります。ところで食糧が従来通り——今はおそらく二〇%くらいは外国の食糧に依存しておると思う。しかも農業が振興される場合には、農業の日本国民経済に占める地位が高まつたときには、食糧の輸入は従つて減じるのですが、現在はそういうわけに行かない。そこで現在食糧が輸入せられておりますけれども、現在の食糧輸入の状態は将来現状のような状態で続いて行くのかどうか、食糧輸入の比重を将来も現在の比重通りつて行かれるつもりかどうかということが、第一点であります。  それから第二点は二十五年度に三百七十五万トンでございましたか、それだけの食糧輸入をする。そこでその内訳は小麦と——これは農林大臣よく御承知のように小麦が百九十万トンですか、それから米が九十万トン、ところで米の方は生産地の原価が高いので、これを日本の生産者価格に比較すると一七三%ぐらいになつておる。小麦の方は小麦協定前でも一三五%、ちよつと米より安い、こういう立場にありますので、おそらく米を小麦にかえるというようなことはあるいはできないかもしれませんけれども、その輸入の種別の比率は将来どうなつて行くのか、まずこの二点をお尋ねいたします。
  135. 森幸太郎

    ○森国務大臣 こまかい数字を持つて来なかつたから、十分なお答えができるかどうかわかりませんが、日本の食糧事情でありますが、これが今日御承知通り、輸入物資のうちの相当の比重を占めておるのであります。今後この比重が相かわらず続くかどうかという問題でありますが、農業政策のうちで最も問題となるのは、増加する人口をどうして日本が養つて行くかということであります。自給度を高めるということは申し上げるまでもないのでありますが、今日日本の食糧生産の上においては、あらゆる角度から決してずぼらをいたしておるのではなくして、最良を盡しておるわけであります。しかしながらまだまだこの農業政策の上において、増産に対して施すべき方法は幾多あるのであります。それは今いろいろと計画の上に実現しておるのでありますが、これは具体的にこまかく農林委員会でないから申し上げる必要もないと存じますが、あらゆる施策を行いましても自給度には限度があるのであります。ところが人口には相当調節の法を考えておりますけれども、やはり年々百四、五十万ずつふえて行きます。これはどうも米を食う人間ですからどうしようもないのでありまして、この増加する人口をどうして養つて行くかということが、日本の将来にかかつておる大きい問題であります。今日は御承知通り占領援助費によりまして、食糧が、ある部分はただちに日本が金を外国に拂わなくてもいい立場において輸入されておるのでありますが、この二十五年の米国の会計年度が改まると同時に、あるいはこのガリオア物資としての食糧輸入が減るのではないかという一つの心配があるのであります。しかもそうしますと三百四十万トンの輸入を予定いたしておりましても、その大部分はバーター制によつて輸入をしなければならない。そうして日本の輸出力があるかということを考えてみますると、二十五米穀年度の食糧事情におきましても、はなはだ不安定なのである。当てにならないようなものを当てにして、食糧政策を立てておるというような議論が成り立つのであります。しかし幸いに輸出の方も漸次進行して参りましたし、また世界の食糧事情は、御承知通り相当その生産量かふえて参つて来ております。ことにバーター制ではありますけれども、南方諸国の米が相当日本に対して輸入の道も行われて来ておりますので、前途決して悲観はいたしません。悲観はいたしませんけれども、こういう状態をいつまでも続けることができるかということであります。従つて日本の食糧問題と人口問題を考える上においては、日本の自給度を極力高めて行く。あらゆる直接、間接、消極、積極の面から生産を高めると同時に、日本の増加する労力を十二分に利用いたしまして輸出の面に向つて行く、こういうことによつて食糧を確保することが、将来考えて行く道ではないかと思うのであります。ところで問題が起つて来ることは、今日は管理貿易でありますので、日本の自主的なことは許されません。しかし将来において心配するのは、外国の食糧と日本の食糧との価格の問題であります。現在日本で農村恐慌という言葉がよくとなえられますけれども、農産物をいくら生産しても足らないときに、農村恐慌は起つて来ない。生産が非常な過剰になりまして、どうしても食糧の始末に困る。それだから生産費を償わなければ食糧は売れないというような場合に処しますと、これは価格の面において管理をして行かなければならぬのでありますが、今日は統制の道にありますので、生産者と消費者の立場から一応の価格をもちまして、その生産の行われることを維持して参つておるのでありますが、今後においてもしも安い食糧が日本に輸入されるということになりまして、日本の農産物がその価格において引合わないということになれば、ここに日本は独自の立場として輸入食糧、あるいは国内の食糧に対して大きな力において管理をして、いわゆる最低価格を保証して日本の農業を保護して行く、こういう道におのずから出て来なければならぬ、かように考えておるのであります。今日の食糧は政府の輸入でありますけれども、それはほんとうの政府の自主的な立場で輸入が行われないというところに、一つの割切れぬ問題が起つておるのでありますが、今後におきましては日本の輸出力によりまして、この増加する人口を包容し得るような食糧政策を立てて行くということが、おのずからそこに必要に迫られて来る、かように考えておるわけであります。
  136. 竹尾弌

    ○竹尾委員 時間がありませんから急ぎますが、農村恐慌や今大臣の言われました高度の食糧の自給化、こういう問題については私も実は意見があるのですけれども、これはこの委員会の問題ではないから申し上げません。そこでもう二問ひとつ大臣にお尋ねいたします。  米は今主として南方から参るでしようが、これを南朝鮮及び台湾——台湾がどこの帰属になるか、これはまた別なのですが、そういう方面に切りかえることをお考えにならないかどうか。これは運賃その他で非常に安くなると思うので、将来そういうことができるかどうか。切りかえるという、これも想像でございますが、そういう点について伺いたいと思います。  もう一つ、これは肥料の輸入でございます。御承知のように窒素は少し余りそうになつてちよつと困つているようですが、この窒素のようなものを、硫安をできればもつと自由に朝鮮あるいは台湾の方へ輸出して行くというようなことが、将来われわれにとつて非常なプラスになると思う。これをお考えになつておるかどうか。カリとか燐酸の方は私は非常に悲観の状態にあると思いますけれども、一朝有事の際に、カリと燐酸の輸入を確保する見通しがあるかどうか。これだけ伺つておきます。
  137. 森幸太郎

    ○森国務大臣 日本人の食習慣と申しますか、やはり粉食とパン食にならされたと申しながらも、米というあこがれが強いのであります。また距離の点から申しましても、お話のような近いところから食糧を輸入することは有利でありますので、でき得べくば台湾、朝鮮、少くとも南方諸国というふうな地方から食糧を輸入することが、合理的であると考えるのであります。今は御承知通りドル、ポンドの関係がいろいろありまして、輸入が思うように参りませんが、先般朝鮮から相当の資糧を輸入して参りました。台湾の方も、今ああいう政治的環境にありまするので、はつきり今台湾から食糧の輸入をいたすという道は開いてないのでありますが、将来日本の食糧輸入は、朝鮮、台湾もしくは南方諸国というところに重点を置いて、アメリカからはできるだけ工業原料の輸入ということを考えて行くことが、食糧輸入の政策の上から言うても得策であろう。こういうことを根本方針として考えておるわけであります。朝鮮の米の輸入も今回第一回が行われまして、将来においてもこれは継続されて行くのではないか。行く必要があると考えております。  そこで肥料の問題でありますが、今硝安が少々輸入されております。硝安は日本におきましては、御承知通り利用面が非常に狭いので、できるだけ硝安の輸入なんかも食いとめたいという方針をもつて、今回貿易の面においても考慮を拂つて行くつもりであります。日本の硫安は、生産過剰というところまでは行つておりませんが、将来これは相当の生産量がふえて行こうと思います。ことに農業もおちついて参りますと、化学肥料よりもいわゆる手間肥ということに、生産者が注意を払つて来るのではないかと思います。ことに硫安は酸性土壌を起しましてかえつて害を及ぼしておる。ことに昨年のいもちの発生のごときは、化学肥料のかような原因も考えられのでありますから、これは指導の上においてもよほど注意をせねばなりませんが、そういうふうに考えて行きますと、肥料の価格がずんずん上つて行くという関係から化学肥料が過剰になつて行く。これはすでに南方方面においても肥料輸入を要求いたしておるのであります。しかしながらまだ配給いたしておる肥料が過剰になつておるという事実を把握させない以上、表向きこれを外国に向つて輸出するということはなし得ないことでありますので、配合肥料等につきまして、これを南方諸国の方へ輸出するということも目下考えておるわけであります。ことに朝鮮のごときは肥料がはなはだ不足いたしておりまして、アメリカ硝安を輸入しておつたのでありますが、日本から硝安と硫安とを交換的に朝鮮に輸出した実例もあるのであります。これは将来肥料を、生産の状況によつて外国に輸出するということも、もちろん肥料工業の上から考えて行かなければならぬと思います。しかしながら日本の農業といたしましては、肥料が不足々々という観念に今日まで導かれておつた。それがその不足しておつた肥料を外国へ輸出しておるというようなことが、また悪く考えられるようなことがありましては、非常に生産意欲を落すことになりますので、まず第一に日本の肥料の需要を満たし、また日本の肥料の根本的な方針を定めまして、有畜農業によつて化学肥料がずんずん減つて行くという状態なつたときには、もちろん海外にも輸出せなければならぬと考えております。
  138. 竹尾弌

    ○竹尾委員 最後に、私はもうこれで質問を打切りますが、今の食糧問題に関連した人口過剰の問題、これを解決するのには結局移民の問題が、最後に問題になつて来ると思います。そこで倭島管理局長さんにお尋ねいたしたいのですが、現在農村に潜在失業者がどのくらいあるかということは、ちよつとはつきりした統計はありませんけれども、約二百万くらいあるんじやないかと私ども思うのです。そういう点から考えても、将来平和的な移民の政策を確立する必要が目睫の間に迫つて来ておる。そこで私どもも今それに関する法案の審議をやるというような状態になつておりますけれども、大きく日本の平和的な移民政策の——ちよつと大きいかもしれませんが、構想についてひとつ御所見があれば承りたい。それに付随いたしまして、ただ軍に将来は労働力の輸出、ある意味において人口の輸出という方面でなく、私どもは文化的な移民というようなことも考えたくちやならぬかと思うのです。一例をあげますと、現在台湾に種を非常に輸出しておるように聞いております。この種に関連いたしまして、種をまく技術者の移住を必要として来る。それに関連してまた住宅をこしらえるとか、あるいは文化施設をつくるとか、あるいは衛生施設をやるとか、そういうようなことで、純粋の意味におきまするわれわれのそれらと比較して、高い文化を輸出しながら平和的に移民をするということも、可能になつて来ると私は考えますので、そういう点につきまして、ひとつ局長にお尋ね申し上げたいと思います。私はこれで全質問を終ります。
  139. 倭島英二

    ○倭島政府委員 御質問の移民の問題でございますが、もちろんわが国の人口問題の解決の一つとして、最近移民問題が相当各方面で研究せられ、問題になつておるわけでございますが、他方御承知通り、この移民問題につきましても、講和条約との関係、つまり日本戦争状態がいまだ全過程が終つておらぬ現在におきまして、この移民問題につきましてもすでにある国におきましては、まだ従来の日本の古い建前とか思想とかというものがかわつていないのではないか、あるいは移民の素質等につきましても、従来の建前が考えられておるのではないかというような想像から、国によつてはいろいろまだ懸念と申しますか、日本に対する信用をまだ持つていないと思われるような発表が、新聞その他にときどき現われて参ります。従つて政府といたしましては、移民問題につきましては人口問題との関連等もあり、その重要性あるいは必要等を認め、また研究も進めておるのでありますが、この際どういうように将来の移民の問題について考えておるかということにつきましては、ここで所見を申し述べるのはまだその時期ではございませんし、遠慮申し上げたいと思います。ただ移民の問題はそういうような空気でございますが、すでに占領下におきましても渡航が相当許されておりまして、直接の移民ではございませんが、技術者の渡航という関係で相当われわれの同胞の有為な人が、外で御活躍になる道が開かれておるという点が一つ。それから二、三日前にもアルゼンチンへの移民というようなことがちよつと新聞に出ておりましたが、あれはいわゆる従来の移民ではなくて、現地におられる方方が呼び寄せておられる呼び寄せ家族の形で、向うへ行つておられるわけであります。こういう意味海外へ出られる方は、すでに現在においても二百人近く南米その他へ行つておられます。それから米国の関係では、これも移民ということはちよつと言葉が当りませんが、日本人で永住の目的で米国に現在までに入国できたもの、これは主としていわゆる婦人の方が多いのでありますが、これも七、八百名すでに向うへ行つておられるというかつこうで、現在占領下においてもある程度外へ出て行く関係が開かれておる状況であります。
  140. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は本日時間も迫つて参りましたので、特にただいま私が非常に驚きの中において受取りました中ソ同盟條約締結をめぐる日本政府の見解について、一、二点だけ五分間くらい簡単に御質問いたしたいと思います。ただいま新聞の報道によりまして、中ソ同盟條約の内容というものの全貌が明らかにされたわけでありますが、これによりますとこの條約は明らかに日本の帝国主義の復活ということを想定し、並びにそれと結びついた他国というものを想定して、中ソ両国間に共同防衛の軍事的とりきめを行つたものであります。われわれは新憲法によりまして一切の軍備を放棄いたしまして、身に寸鉄を帯びざるところの非武装の国家として、かおり高い文化国家として国際社会の仲間入りをいたしたいと考えております際に、中ソ両国におきまして、当然日本が侵略国として帝国主義的な再起をするであろうということを予想されまして、かような同盟が結ばれておることは、国民を代表するそして外務委員の一人として、国会を通じて私はきわめて遺憾の意を表明したいと思います。さらにこの協定の第三條によりますと「双方は相手国を対象とするいかなる同盟も締結せず、またいかなる集団、行動にも参加しない」ということを明記しております。ここで相手国と申しますのはもとより日本と結びつく国であります。これを私たちが推測いたしまするに、この條約は当然日本のみならず反共産主義の国家群、端的に申しまするならば米英等によつて代表される近代民主主義国家というものを対象といたしまして、これと共産主義国家との対決を迫つたものであると私は考えるのであります。従つて現下の息詰まるような国際環境の中にありまして、かような事態が発生をいたしましたことは、世界平和に貢献しないのみか、冷い戰争にさらに大きな拍車をかけるものである。従つて国際平和を祈念する者にとりましては、まことに遺憾なことと考えられるわけであります。日本政府におかれましては今度の中ソ同盟條約締結の情報に接して、いかなる御見解を持つておられるか。私の考えまするような見解に同意されますかどうか。遺憾であるとお考えであるかどうか。この点を明らかにしていただきたいと考えます。私は今度の中ソ同盟條約の出現によりまして、国際政局の上に大きな画期的、歴史的な段階を画したものと考える。従つて国際環境の中に浮んでおります日本の国際的政治的立場におきまして、ここに新しい局面に際会いたしたものとして、政府のとるべき態度にも、あるいは大きな変化が必然的にもたらされたのではなかろうかと考えるのであります。いずれにいたしましても、きわめて重大な段階が生まれて参つたわけであります。以上私が申しましたことに対する政府の見解を承りたいと思います。  さらにもう一つ、同盟條約の付属協定として規定されております中に、第一條におきまして、中ソ両国はソ連政府が共同管理しておる長春鉄道の一切の権利、及びその付属全資産を無償で中国に返還することに同意すると明記してあります。ところが長春鉄道並びにそれの持つております付属資産というものは、当然賠償物件の対象となるべきものではなかろうかと私は考えるのであります。従つてこれは講和会議をまつて決定さるべきものでなかろうかと考えるわけでありますが、これに対する見解はどうか。また返還は対日講和締結後即時実行すると書いてあります。もとより対日講和條約によりまして、これがソ連の領有に帰せられますときには問題はないでありましようけれども、この但書の中に書いてありますように、但し一九五二年以降とはならない。つまり長春鉄道の権利並びに付属資産の中国への返還は、対日講和の締結の後に行うわけであるけれども、一九五二年より遅れはしないと書いてあるわけであります。もし不幸にして現在の対日講和というものが、一九五二年までに実現を見ない場合におきましても、このような付属協定がはたしてできるものであろうかどうか。これらの点につきまして條約上の立場から当該局長の御説明を承りたいと考えます。
  141. 小川半次

    ○小川(半)委員 この問題はきわめて重大であります。ただいま佐々木君の御意見を拝聴しておりますと、佐々木君は大体悲観的な立場からこの問題を論じております。しかし私は先ほどちよつとその條約文を見たのですが、この條約文の中には日本講和を促進したいという意味が多分に盛られております。深く研究すれば確かに中ソが日本との講和を早く行いたいということをも意味しております。私はこの立場から掘下げてこの問題は考えなければならぬものであつて、佐々木君の説は非常に悲観的に、しかもこういう意見が日本国会から広まつて行くということになれば、私は国際間において日本が非常に不利な立場に追い込まれるような感がするのであります。しかも中ソがこの問題を早々に発表したその根底というものは、これは私の單なる主観と見ればそれまでのことでありますが、最近の日本政府において発表されるいろいろな総理大臣の言辞の中にも、その他政府筋のいろいろな意見を見ましても、軍事基地を米国に與えるような印象を世界に與えておる。しかもかつて自衞権を云々しなかつた日本政府が、最近盛んに自衞権を言葉に出すようになつた。こういうことが私は中ソ條約というものを早めたのではないかとも思うのです。そこで外務大臣がおりませんけれども、こういう印象を與えておらないか。外務当局は世界の情勢から判断してこういうこともあり得るという憂いを持つておられるかどうか、明らかにしてほしいと思います。
  142. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私の申し述べましたことは私が責任を持つて申し上げておることでありますから、私の申しましたことをとやかく揣摩臆測して敷衍して説明されますと、私の趣旨に反する結果になります。従つて政府委員におかれましては、私の発言はただいまの発言によつていささかも影響を受けておりませんから、そのつもりで御答弁を願いたいと思います。
  143. 島津久大

    島津政府委員 中ソ同盟條約問題につきまして、先ほども政務次官から正確な情報がないという理由で、答弁を留保いたしたのでございまして、ただいまUP電その他を実は私ども読んだばかりでございます。その内容についてもまだ十分理解する段階にないのでございます。のみならず占領下日本といたしましては、外交機能が停止されておるのは御承知通りでありまして、この種の重要な問題に対しまして、政府委員から即座に見解を発表するということは、この際差控えたいと考えます。
  144. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 佐々木委員が提起されました在満鉄道の問題でございます。その問題につきましては、日本の在外財産が将来平和條約においていかなる取扱いを受けるかということについてまつたくわからない今日、何とも御答弁いたしかねる問題でございます。
  145. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 きわめて簡單に一言だけ申し上げます。イタリアの平和條約の場合などを見ましても、当然在外資産の問題は講和條約によつてきめられておるように考えるわけなのであります。従つて私は政治的な面にわたつてこの答弁がむずかしいというならば、條約上、法理論上の立場から言つて、一般的にどうあるべきかということについて承りたいと思います。
  146. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私は政治的な意味でなく、法理的に今お答えできない、こう言つているわけであります。
  147. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 イタリアの場合は私の言うのと同じですか。
  148. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 イタリアの場合がそのまま日本に適用されるということは予想し得ない今日でございますから、何とも申し上げかねるのであります。
  149. 並木芳雄

    並木委員 私は先ほどこの問題で緊急質問したのでございますけれども、的確なる情報がないということで御答弁を得られなかつた。ただいま島津局長答弁は非常に愼重を期して、私は正確な情報が入つておらないから責任ある答弁ができないというように聞いておつたのでありますが、西村條局長が立つて答弁されたその根拠、資料というものは何に基いてやつたか。局長は正確な適当な資料がないから答弁ができないと言つている。條約局長の方は、何か正確な適正な資料があつて答弁されているのかどうか、そういう点を私は聞きたい。
  150. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私が申し上げましたのは、日本在外資産が将来の平和條約においてどういうふうな取扱いを受けるかについて、まつたく見通しが立たないから、佐々木委員が提起された質問に対しては、お答えいたしかねるということを御答弁申し上げました。私のところに何ら資料がないからということを告白いたしたわけでございます。
  151. 野坂參三

    野坂委員 議事進行について……。この問題は私は非常に重大な問題だと思いますので、政府の方でも正確な材料がないといわれておるし、またこの問題は私は局長の問題でなくて、総理大臣兼外務大臣から責任のある解釈とか、あるいは御答弁が願いたいと思います。先ほど佐々木委員及び小川委員の御意見がありましたが、私は御両君の発言の中に非常に重大な問題があると思う。これは私は立場がもちろん違いますけれども、小川議員の発言は、われわれ議員としてもやはり相当反省しなければならぬものを含んでいると思う。この意味において、この次の委員会には、——できれば私は今週中に開いていただきたいと思いますが、総理大臣に出席していただいて、この問題をまず第一に取上げていただくということをお願いしたいと思います。
  152. 岡崎勝男

    岡崎委員長 総理大臣が出て来るかどうかは別問題といたしまして、この問題はただいまのところ、今政府委員のお話のように、十分研究のいとまがないものでありますから、しばらく研究の時間を與えなければ、かりに何か言い得るにしても時間的に困難だろうと思いますから、一時保留願いたいと考えております。
  153. 中山マサ

    ○中山委員 私は先週舞鶴に参りまして引揚者をお迎えしたのであります。その中におられました大阪府三島郡の方で小川繁三という方がございますが、着くが間もなくこの人に頼まれて、聞いたことを今日ここで申し上げまして、これに対する政府のあるいは管理局長の御意見を聞きたいと思います。二十五年九月十五日に、ウズベツタスタン、タシケント及びアングレン地区よりカラカンダ九十九地区、第九分所に移動せしめられたる日本人捕虜並びに抑留者約八百名に対し、カラカンダ到着二日後の午前、午後の二回にわけ、その区の全員を收容所クラブに集合せしめ、ソ軍政治将校上級中尉より下記の演説を受けた。内容、日本共産党は民主運動不参加の反動分子及び前職者は、日本に帰してくれるなとの依頼ありたるにつき、全員よき民主主義者となつて日本に帰られるまでは帰さないという演説を聞いた。今日自分たちは辛うじてこうして帰つて来たけれども、このことがいつまででも続けられたならば、引揚げを非常に遅延せしめるが、一体日本政府はこういう事実を知つているかということと、もしそれが事実であればどういうふうな処置をとつていただけるか、このの二点を私はお尋ねいたします。
  154. 倭島英二

    ○倭島政府委員 この前ある新聞に、大体今お読みになつた種類の報道が出ておつたことは承知しておりますが、それ以上のことをまだ知りませんので、それについてさらに何らか的確な情報が得たいと思つて、今研究中であります。その研究の結果によらなければ、将来それに対してどういう方法をとるかということを、現在まだ申し上げかねる状況であります。
  155. 中山マサ

    ○中山委員 それに関して、私はぜひ御研究の上で、何とか御善処願いたいということを要望しておきます。
  156. 野坂參三

    野坂委員 今の問題は、共産党という名前をあげられましたので、関連がありますから、一言これはインフオーメーシヨンとして申し上げます。そのことは私も新聞で見ましたが、徳田球一君に聞いてみても、全然事実無根のことで、何人かが反共、反ソの宣伝のために捏造したものにすぎないだろう、こういう回答だつたので、これはただ参考のために申し上げておきます。政府の方でもどうか十分研究なさつていただきたい。ただ一言申し上げたいことは、今徳田君云々ということがかりに事実であつても、御承知通り最近いわゆる反動分子といわれる者がたくさん帰つて来ている。戰犯自身も帰つて来ている。このこと自体が、いわゆる徳田云々ということがうそであるということが、具体的に証明されていると思います。これは御参考までに申し上げておきます。
  157. 中山マサ

    ○中山委員 私のはただ聞いただけで、ただ本人から聞いた通りを言つたのでございます。ぜひにということでございましたから、私は引揚げの委員長として、ここにお願いするだけの責任があると思いまして申し上げたのであります。事実の有無は全然私としては存じないことで、ただ引揚者の依頼で、自分の立場としてこれだけのことをぜひお願いしておかなければならないという考えのもとに、申し上げたわけでございます。
  158. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは、本日は日程に別に海外移住組合法の廃止に関する法律案がありますが、時間も迫りましたし、この方は予備審査でありますので、この次の機会に讓ることにいたしまして、本日はこれで散会いたします。     午後一時五十分散会