○安部委員 ただいまの御
質問に関連いたしまして、
政府委員の御所見を伺いたいと思うのであります。私どもはまことに
引揚げ問題に関しましては、
関心を持
つているか、とうも留守宅の
方々に満足な経過を
報告することができないことは、はなはだ遺憾に思
つているのてあります。大体ゼネパのコンヴエンシヨンにおいて、議定書に各文明国が参加しているのであります。またその他に戰時
国際法というものがありまして、先ほど
政府委員からの御
説明がありましたごとく、
捕虜に関しては、文明国としての
取扱いというものは、過去の戰争における習慣から申しましても、これはきわめて良心的に、人道的に取扱わなければならぬのであります。一例を申し上げますならば、
捕虜は危險な戰争の前線に、いわゆる砲弾の届く距離内には置いてはいけない。また
捕虜はそのとらわれた国の軍事産業に貢献するような労働に服役せしめることはできない。たとえば軍の使用する道路の建設とか、修築に使用してはいけない。あるいは飛行機の設備に関する労働等に服役せしめてはいけない。また食糧にしても、それは自分の国の兵隊と同様なもの、しかも士官なら士官と同権な
待遇をせんければならね。またその
捕虜に関する衛生設備も、十分これを
関心を拂
つて、そうして万国赤十字社の
代表者が見ても満足な
程度にまで、その設備をしておかなければならぬ。
病人などは衛戊病院のようなところに收容して、適当な衣食を與え、その健康を保持して行かなければならぬ。かようなことてありまして、收容所につきましても、一定の大きさの施設に、收容守る人数を限
つて衛生上書かないように、適当な收容所をつくらなければならぬ。また寒い時においては、寒くないように、衣服等も相当のものを與えなければならぬ。これは戰時
国際法に
規定するところてありまして、当然行わるべきはずであります。日露戦争におきましても、敵将に帶劍を許した乃木大将の崇高な行為は、各国でこれを認め、またそういうふうにやることか文明国の態度でなければならぬと思うのであります。しかるにわれわれが新聞紙上等で承知いたしますところによれは、この点がソビエトては少しも守られておらない、
死亡者が非常に多い、
病人に対しても
手当をしておらない。またノルマというような、一定の労働の基準がありまして、それに達しようとする意思はあ
つても、健康状態あるいは年齢等によ
つて、それだけの成績をあけることのできない場合には、栄養の失調するような、きわめて少い食糧しか與えられない。また最近帰還して考査委員会で宣誓の上なされた証人の証言によれば、死んだものはどんどん軒の下に重ねてあ
つたそうて、それか寒い時に凍
つて、触れつとポリポリ手も足も折れてお
つた。埋葬する場合にも、その姓名、あるいはとこの部隊に属し、また
日本の何県の何村の出身であるというような記録も何もなく、墓標
一つない、ただ番号
一つだけて葬む
つてしま
つた。また労働の成績を百パーセント以上に上げなければならぬというような運動が行われ、あるい
はつるし上げとかいろいろなことがあ
つたのであります。とにかく戰時
国際法における道義的な、文化国として当然なさるべき、
捕虜に対する收容所の設備、あるいは
待遇等に関して、まことに遺憾な点か多いように思うのでありまして、先ほどどなたか知りませんが、委員以外の
質問かありましたが、われわれ
日本人として留守宅の
人たちが、朝な夕な海外に長く抑留されていつ帰
つて来るか、あるいは安否もわからす陰ぜんをすえて神に祈
つておるごとに対して、何とか便宜を與えたいというわれわれの情操とかけ離れた
質問でありまして、私ははなはだ遺憾に思うのてあります。何か
日本の
捕虜は帰
つて来ないのが当然であるというような、また英国あるいはアメリカ濠州の南方地域の
日本軍の
捕虜はきわめて迅速に、きわめて人道的に帰還を許されたにかかわらず、それに対して何か不満があるような、何か欠点を探すような口ぶりでも
つて、ソビエトのやり方を弁護するようた御
質問でありましたが、これはわれわれははなはだ遺憾である。現在われわれは占領された国の
国民でありまして、何らの
外交的
機関もなければ、発言権もないのでありまして、
政府委員の申されましたごとく、われわれはただ総
司令部や対
日理事会の当局に懇願いたしまして、われわれの希望を達するより方法はないのでありますが、しかし少くともこの問題に関しましては、世界の輿論に訴えても、何人もこれに対して共鳴しない者はないだろうと思うのであります。そういう点から、私は
政府委員においては、はたして今日までのソビエトあるいはあの地区から帰
つて来た人の状態、もしくは今日まで五箇年間という長い間かか
つて、いまだに全部の人か帰
つて来ない、全部帰
つて来たという
タス通信の報道はありましたけれども、これは的確な筋からの
報告と、非常にかけ離れた
数字であるようにわれわれ了解しておるのであります。この点に関しまして、
政府委員の御所見、並びに先ほど
委員外の方が
質問されたようなことに関しましてもどうであるか、私の
質問した点に関しましても御意見なり、あるいは
情報が入
つておりますならば、その辺を伺いたいと思うのであります。