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1950-04-28 第7回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月二十八日(金曜日)     午前十一時三十一分開議  出席委員    委員長 中山 マサ君    理事 青柳 一郎君 理事 安部 俊吾君    理事 玉置 信一君 理事 冨永格五郎君    理事 坂口 主税君 理事 天野  久君    理事 受田 新吉君 理事 竹村奈良一君       他見 茂隆君    小川 平二君       小西 英雄君    岡  良一君       吉川 久衛君    高倉 定助君  出席国務大臣         国 務 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         外務事務官         (管理局長)  倭島 英二君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局長)    田邊 繁雄君  委員外出席者         議     員 田中 堯平君         外務事務官         (管理局引揚渡         航課長)    武野 義治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  閉会中審査に関する件  海外同胞引揚問題に関する件     ―――――――――――――
  2. 中山マサ

    中山委員長 これより会議を開きます。  援護局長より今次引揚げ状況につき御報告を求めます。
  3. 田邊繁雄

    田邊(繁)政府委員 私四月十七日に舞鶴に入港いたしました明優丸引揚者お迎えに行つて参りましたので、ただいま委員長からの御要次によりまして、その概況をお話申し上げたいと思います。  帰還者総数は千六百名でございました。二千名が普通でございますが、今回は千六百名でございます。その内訳は――これはまた正確な調査ではございませんが、船内の臨時調査によりますと、一般邦人が三百七十一名、元陸海軍軍人軍属千二百二十九名という割合になつてあります。  今度の引揚げの特色は、第一は元将官及び将官待遇者というのが四十二名ございます。すなわち将官が三十三名て将官待遇を受けておつた者が九名という数字になつております。この方々お話によりますと、ナホトカになお三十七名が残つておる、これは次の般で帰還するというお話でありますが、この方々は第二般の信濃丸てお帰りになつたのでございます。将官はハバロフスクの四十五特別收容所というところて、外部とは全然隔絶した状態で五年間生活を続けられたということであります。向うでの待遇も特別の待遇を受けておられたようであります。船に乗るまで向う将官としての肩章もつけておられたというお話でございます。  第二は、今度の帰還者の大部分は、前職関係者と申しますか、いわゆる前職にあつた関係残つてつた方、つまり元憲兵てあるとか、元警察官、元特務機関勤務者、満洲の協和会関係者という方が大部分であります。しかしこのことは全部調べられたかと申しますと、取調べを受けなかつた方もおるようであります。もちろん今度の引揚けの中にも、いわゆる左右の対立もございましたか、お互いにきわめて穏健でございまして、別段問題は起さなかつたのでございます。引揚げ業務ないし復員業務も順調に進んで参つておるのでございます。昨年のような騒ぎは全然なかつたのであります。  それから一番大きなニュースは、信濃丸をもつて引揚げは終りであるという情報引揚者がもたらしたのてありますが、これは将官の方がそういうことを聞いたということも言つておられました。これは御存じの通り、その事実となつて二十二日のタス通信発表となつて現われたわけであります。  それから、これは情報でありますが、最近ソ連におきますいわゆる囚人ソ連国内刑法によつて処刑された囚人でありますが、この方々待遇がよくなつたということてございます。既決、未決を通じまして非常によくなつておるということを伺つております。まだこれは情報程度を出なかつたのてありますが、多数の刑の減免者がある。そして帰つて来る、こういう話がございました。これは信濃丸で帰つて来た人を調べてみないとわかりませんが、そういううわさがありましたのて、どのくらい帰つて来るかということを、われわれの方で期待をしておつたわけで、これはなかなか帰れないという話であつたのてありますが、そういううわさがあつたのであります。私、信濃丸お迎えすればよかつたのてありますが、いろいろ東京に用事がございましたのて、お迎えをして早々に帰つて参りましたので、大体の状況だけをつかんで参りました。  引揚援護の面から申しますれば、十分な態勢をもちまして食事その他従前にも増して手厚い援護をいたしたわけであります。いずれも満足されてお帰りになつた、かように承知しております。
  4. 竹村奈良一

    竹村委員 引揚げ帰つた者の中に、偽名者かある。たとえば毎日新聞の夕刊によると、最近引揚げられた者の中に、偽名君が三百名おるというようなことを発表しておる人かあるのでございますが、私の向うで聞いた話では、数名はあるかもしれぬが、三百名はない、こういうふうに聞いて参つたのであります。ところが向うにおきまして毎日新聞の夕刑を見ておりますと、三百人も偽名者がある。今度第二船て帰つて来た明優丸の方にはとれだけあるかわからぬ、こういう発表をされた記事を見たのてありますが、偽名者はどのくらいあつたかわかりません。
  5. 田邊繁雄

    田邊(繁)政府委員 明優丸では、その点については調査もいたしませんし、報告も受けませんでした。信濃丸につきましては、現地からの――これも情報でございますが、報告によりますと、これは氏名訂正件数というのですから、おそらくお話の点にあるいは合うのじやないかと思いますか、これが五件というふうに報告されております。おそらくこれがお話偽名の件ではないかと思いますが、そういうふうになつております
  6. 竹村奈良一

    竹村委員 そういたしますと、私の聞いた数名は正確であつて、三百名という偽名者かあるだろうというような談話発表されたことは、うそだと考えて大体間違いありませんね。
  7. 田邊繁雄

    田邊(繁)政府委員 その三百名というのは、私は承知しておりません。
  8. 竹村奈良一

    竹村委員 そうすると、委員長にこういうことを聞くのはとうかと思いますが――おそらく委員長はお知りにならぬと思いますか、実は向う毎日新聞を宿屋で見まして、私坂口さんと調査に行きまして、聞いたところては、今おつしやつたように、大体数名だということを聞いた。ところか参議院の岡元引揚委員長とあなたの名前で、偽名者三百名ということが出ておつたのです。これは委員長はおそらくお知りにならぬと思いますが、そういうことが新聞に出るということ自体、とにかく向うにまだ戰犯残つておることは、タス通信てもはつきりしているのてすから、これに対してとういう影響を與えるかということを心配するわけです。
  9. 中山マサ

    中山委員長 三百名ということは、私は言つておりません。ただ当時偽名して帰つて来ているという評判がございました。たとえば大峰という人が偽名して帰つて来ているということを聞きましたので、呼び出して聞いてみましたら、偽名していない、本名で帰つて来ているということでございました。私は三百名偽名であつたということを言うたわけではありませんから、私の立場はつきりしておきたいと思います。  あと、報告に関する御質問はございませんか。――それでは他の質問に入りたいと思います。
  10. 受田新吉

    受田委員 援護局長は、この間から引揚げの現場においでになつて、いろいろ陣頭指揮をされたのでありますが、舞鶴援護局が、今後引揚けの進行とともに、漸次縮小されるのではないかというような不安を抱いている向きが多分にあるのであります。まずこの引揚援護局の将来について、伺つておきたいと思います。
  11. 田邊繁雄

    田邊(繁)政府委員 引揚げの進捗に伴いまして、引揚げ援護に従事している職員の数が減つて来るということは、やむを得ないことであると思つております。従いまして、函館援護局か今年一ぱいに閉鎖になり、佐世保援護局が本年の五月一日をもつて閉鎖されることになつておるのであります。これは関係方面からの指令によつてそういう措置をいたしたのであります。従いまして舞鶴援護局は今後の引揚けに対処いたします唯一受入港として残つておるわけてございます。今年の定員法では、舞鶴援護局職員現存態勢を極力維持するという方針てございます。また現在の職員程度がございませんと、少くとも援護業務は実施できない、非常に手不足でございますので、できないということでございます。かりに二千名なら二千名帰つて参りますと、二千名の人を援護するためには、いろいろの仕事がございます。たとえば炊事の仕事、これに対しましても相当手がかかるのであります。現在より減員するということは、少くとも援護の面からいたしますと、不可能であるという状況であります。かてて加えて、今まで佐世保援護局て行つておりました、いわゆる成規送還と申しますが、韓国その他へ内地から引揚げて行かれる人の業務も今後は舞鶴て行うということになります。その結果舞鶴では従来よりも一層業務がふえる関係になるのであります。この面から考えまして、われわれとしては舞鶴援護局職員はできるだけ現状を確保したいと思つております。もつとも御本人の希望によりまして、適当な職が見つかつた、あるいは適当な職を希望されるという方に対しましては、本省といたしましても、また舞鶴援護局といたしましても、できるだけ関係方面と連絡をとつて就職をお世話申し上げるという方針ではございますが、しかし頭から何人を落して行くということは極力避けたいと存じております。
  12. 受田新吉

    受田委員 それからこの間のタス通信発表で、ソ連地区には、ソ連当局声明によれば、もう二千四百名しかいないことになるのてありますか、この点ですでにソ連側から配船要求かあるということは、ソ連発表数字から言うならば考えられなくなつた。そうしますと、日本政府としては、このタス通信発表のいかんにかかわらず、いつ引揚げ配船要求かあるかもしれないという立場から、船の方は引続いてこれを用意されておるのか、またその船については今後どの船とどの船をその方へ振り向けるという計画を立てておられるか、それから、たとえばナホトカが閉鎖されて他の港て引揚げるということかあつても、依然として舞鶴をそのまま援護局としてその帰還船の出迎えをするようにするのかというような諸点について、政府の意見を伺いたいと思います。
  13. 田邊繁雄

    田邊(繁)政府委員 船につきましては、まだ現在までの準備態勢を変更するという話は聞いておりません。これはあるいは今後そういう話か出るかもしれませんか、現在のところ船舶運営会の方からそういう話を聞いておりません。なお舞鶴援護局は今後唯一引揚港として存置されるわけでありますのて、今後帰つて来る引揚船による引揚者は、舞鶴で受入れるということになるのてあります。もつとも引揚船によらないて、貨物船その他において少数の方か帰つて来る場合がございます。これは貨物船か入港される検疫所で受入れる。検疫所は厚生省の施設でございますのて、引揚援護庁職員を兼務いたさせまして、所定の物資その他も貯蓄いたしておきまして、そこて受入れをするということにいたしております。しかし大きな受入港としては舞鶴だけでございます。
  14. 受田新吉

    受田委員 これは復員局関係になりますか援護局長より答弁願えれば、この際早く片づいていいことなんですか、今度のタス通信発表による数字などから考えて、ソ連地区に残留しておる同胞人たちの上には、非常に大きな不安かあおいかぶさつているのであります。そこて未復員者給與法、特別未帰還者給與法対象になつている、現に予算化されている人員の精密な実数をただちに明らかにして、国民にも納得させなければならぬのてありますが、これをひとつお伺いしておきたいと思います。それから、引揚げ促進援護局の所管ではないのでありますが、定着援護等立場から、いつでもそれか受入れられるという態勢を立てなければなりません。もしタス通信発表による数字かかりに信ずべき数字として結論か出た場合に、非常に多数の死亡者が出ているととになると思うのです。そこで非常に多数の遺骨を迎えるという事態か起らないとはわれわれ保証し得ないのであります。そういう多数の死亡者か一時に発表されるという際における援護対策は用意されておるかどうか。戰死者遺族保護対策、これらを迎えるための旅費とか、埋葬費葬祭費とかいうものに対しての心組みの点についても、すでにわれわれはある程度――現に渉外局発表においても三十万余ありますけれども、はつきり説明のつかない二十一万という数字などに、これは非常に不安な数字でありますが、われわれ国民として万一の場合における対策を立ててやらないと、留守家族の者が、もし死んで帰つた場合には国家は冷たいしうちしかくれないのだというようなことでは困りますから、その点についての政府対策についてお伺いしたいと思います。
  15. 田邊繁雄

    田邊(繁)政府委員 特別未帰還者給與法と未復員者給與法におきましては葬祭料遺骨埋葬費の予算を組んでございます。従いましてこの上法律に該当する人でありますならば、法律所定の費用は差上げられるわけでございます。ただ問題は、こういつた方々に何か弔慰金といつたような、遺族補償といつたような精神から援護の手が伸びないか、こういう問題があるのでありますが、この問題は実は戰死者遺族に対する指令というものがございまして、ミリタリー・サービスに対する手当に対しましては、非常に嚴重な指令も出ている関係もありまして、なかなかめんどうなやつかいな問題であります。この点につきましては、国会においても非常に関心を持たれまして、いろいろと御努力はくださつているようでありますが、まだ解決の方途はつかない状況てございます。引揚援護庁といたしましても、この点につきましては相当深い関心を持つておりますので、今後ともできるだけの努力をいたしたい、かように考えております。
  16. 受田新吉

    受田委員 未復員者給與法、特別未帰還者給與法該当者の数はとれくらいあるのてすか
  17. 田邊繁雄

    田邊(繁)政府委員 未復員者給與法と特別未帰還者給與法の、いわゆる留守宅手当をもらつておられる件数は、二月末現在で四万三千余となつております。人数にいたしますと、これは正確に調べておりませんか。
  18. 受田新吉

    受田委員 留守家族はそれでけつこうです。特別未帰還名の方はどうですか
  19. 田邊繁雄

    田邊(繁)政府委員 内訳を申しますと、特別未帰還者の方は一千二百件、未復員者の方か四万一千八百九十件と相なつております。
  20. 受田新吉

    受田委員 これは外務省の引揚渡航課長おいでになるので、援護局長に対する質問とあわせてお伺いしたいのでありますが、今局長は未復員者給與法対象となり、特別未帰還者給與法対象になつている約四万三千という、ここにはつきりした数字を出しておられるのですか、これは現に留守家族給與をもらつている数字でありまして、未復員者給與法というのは、軍人軍属関係にあつた者でありまするから、これはよほどはつきりした根拠がないと給與対象にならないと思うのてあります。それから特別未帰還者給與法も、中共地区その他におけるはつきりした確証の上つていない者には支給していない。そうすると、さしあたり四万三千というものは非常にはつきりした、もはや通信かあるとか、または帰つた者談話によつて確証せられたとか、いろいろな点においての確実な数字だと思うのですか、この数字と、現に中共地区残つておると思われる五、六万の同胞、それからソ連地区残つている今度ソ連政府が言うたいわゆるタス通信発表の二千幾らというようなものを合せると、大体この二つだけでそれが満たされておるような形になつております。ところが一般邦人でこちらへ帰つた人たちは、大体三分の一ぐらいしか届出をしていないように、昨年の実績を見てもわかるのであります。ここで問題は、ソ連におる者の数は、タス通信発表によつてこれだけしかいないのだと言われたことが否定されるようないろいろな事実が、各地に帰つた人談話やら手紙等によつで確証せられるとか、あるいはもう一つは、タス通信発表そのもの一つの大きな矛盾が起つておるというようなところから、私たちはこの引揚げ数字の問題で今非常に迷つておるわけなんてす。この点、第一、タス通信の一九四九年分五月に発表された数字か、戰犯を含めて十万四千九百五十四名、それだけ残つておる。そのうちから昨年の五月以来帰つた人たちが今年の四月のこの間の第四船引揚げまでで一般邦人が九千百五十八、それから将兵が九万五百一、これだけになつておるのであります。それを合計してみましても大体四千ばかりの誤差が出るのです。この点今度わずかに二千四百くらいしか戰犯者その他病人残つていないとすれば、タス通信発表そのものに、ここに二千人という誤差か生じておるわけです。それから去る二十二日のダス通信発表では終戰後総帰還者数か五十一万四百九人となつており、そのうちて同通信による一九四九年五月まての帰還者数か四十一万八千百六十六となつて差額の九万二千二百四十三人というものかその後送還されるということになつて来るのであります。それて昨年の発表で四十一万幾らで、差額の九万二千二百四十三人というものが去年以来送還されたことになるわけであります。そうすると一九四九年の五月現在の残つた数字の十万四千九百五十四と、それから帰つて来たタス通信の去年の発表と今年の発表誤差の九万二千二百四十三というものとの間に一万ばかりの差が生じておる。そのうちでもちろん残留者か二千四百六十七人、九人の病人を含んでおるというようなことかあつても、その間に非常な差が起つておるのであります。こういう点についてタス通信発表が信すべき発表たとしても、われわれはこの間におけるこの誤差がどうして生じたかという一つの大きな疑問かあるのであります。こういう問題について外交立場から数字の食い違いについて、これをただすような道が開かれておるのではないか。それから捕虜になつている人たち数字が、この間のでは二千幾らはつきり出た。同時にその氏名はどういう人であるかということか発表さるべきか、国際的な立場から言つても大事なことだと思うのですが、これか発表されていない。こういう問題については、外交立場から、ソ連のいろいろな国内法規もあるでしようが、ソ連側はそういうことについて数字における正確さというもの、たとえば今の誤差は死亡した数字であるとか何とか、そこへきちつとしたソ連側説明か付せられなければならないと思うのでありますが、こういうことは外交上許されておることであるかどうか、それが一つです。  その次に続いてお尋ねしたいことかあるのてすか、まずそこだけを説明員立場から。
  21. 武野義治

    武野説明員 受田委員の御疑念はわれわれ個人的に考えますと、まつたくその通りてございます。しかしながらすでに官房長官談話でも発表されましたように、また川村政務次官か一昨日でございますか池見議員に対してお答えいたしましたように、このタス通信発表は、政府といたしましてはきわめて非公式なもの――正式なものとは考えられない。日本政府としては、従来とも、また今後ともそうでありますが、総司令部を通じて在ソ、あるいはソ連が押えました日本人抑留者あるいは戰犯、いわゆる戰犯以外死亡者、こういつた氏名、数等につきまして、ソ連政府の正式な回答を期待しているものであります。すなわちどういう形が正式なものであるかということは、これは総司令部の御見解に従うわけでありまして、私ともここで論すべきではございませんが、対日理事会のメンバーとしてソ連代表を送つておるのでありまして、またあの対日理事会発表では、米国政府オーストラリア政府も、連合国として繰返しこうした引揚けの実際の問題についてノートを出しているのでありまして、これに対して対日理事会て私とも傍聽いたしました際に、米国政府なりオーストラリア政府ノート受取つたという事例さえもないということを、対日理事会連合国代表は申されておつたのであります。現存日本外交権が認められておらない立場にありまして、正式のソ連政府回答は、あくまでもわれわれの期待するところでありまして、総司令部を通じて今後も懇請を続ける覚悟であります。また官房長官談にもございましたように、直接的には二点、たとえば受田委員の申されたような点を含めまして、懇請ソ連政府にあてて行つた次第でありまして、この正式な回答を待つことが、われわれといたしましてはこの際できる最善でございますのて、タス通信につきまして、この数字矛盾は、確かに御指摘のように私とも個人的には考えておりますが、ここてタス通信を問題として、その数字上の御疑問に対してお答えする立場にはございません。
  22. 受田新吉

    受田委員 今の占領下における外交という問題は、われわれは当然被占領地域国民でありますから、非常に困難な問題でありますが、捕虜取扱いというものは、ソ連はちようど――日本もそうだつたのですが、例のジユネーブで結ばれた捕虜取扱いに関する條約、一九二九年でしたか、あれにどちらも参加していないというのてありますから、参加していないものは、その條約に従がわなくてもいいのだという立場から、ソ連氏名なと発表しないのではないかと思うのてすが、そういう点についても、ソ連戰犯者死亡者氏名発表せざる根拠はどこにあると政府は見ておられますか
  23. 武野義治

    武野説明員 どういうわけで発表しないのかという点につきまして、私がそんたくすることはできません。一九二九年の條約に、ソ連政府として参加していない、しかしながら一九四九年の條約には、ソ連は調印しておるということを聞いております。捕虜に関しては、條約上一九〇七年の條約からも出て参りますが、具体的にどういう規定ソ連が守らなければならないかという点につきましては、かなりここで疑問の生ずるところもございますが、捕虜に関する取扱いは人道的でなければならない。捕虜は実際の戰鬪行為が終了したならば、ただちにこれを送還しなければならない。捕虜受取つた国は、これを適当な機関を通じて絶えず本国に連絡しなければならない、こういう事柄は国際法上の基本的規定と私は考えております。従いまして、この基本的規定というものは、国際法上の基本的な捕虜に関する取扱いの原則を、ソ連政府としても無視することはできないと思います。
  24. 受田新吉

    受田委員 私は昨日徳田共産党書記長証人喚問について、ちよつとあそこて傍聴しておつたのでありますか徳田書記長は、タス通信はこれはソ連政府の正式の声明である。これを信じないのは誤りである。私ソ連大使館へ二十五日にお伺いしたときも、ロザノフ顧問が、やはりそういうことを言つておられる。そうするとソ連国内事情から、ソ連という国は政府の正式な発表を、自分の国のある特定の通信社に委譲するような国内法規かあるのてはないか。これは国際法上、それか正式のものと認められることは、非常に不合理でありますが、何かソ連にはそういう国内事情かあるのではないかということを、ちよつと徳田書記長の言から感ずる点もあるのです。それとあわせて帰化人――日本国籍を持つてつた者向う捕虜となつている間に、向うへ帰化した人か相当あることが想像できる。ところが向うへ帰化した人たちは、今度の数字にはもちろん載つておらないと思う。その場合に日本国籍を抜かないままで向うへ帰化するということは、これは二軍国籍になる。ところがソ連国内法国籍を取得する場合にはどういう規定があるか、この点についてはまだ研究不足でありますが、こういうものがこの数字の中へ入つておらぬということになると、これもソ連政府としては、日本国民ソ連に帰化した者か何人おるかということを発表してもらわなければならない。そういうところに非常にソ連発表は不親切で、私自身から考えても、二千幾らというはつきりした数字までここへ出ておるわけだから、この人の姓名はこういうものである、この訴因はこういうものであるということを、もう二千ばかりになつたのだから発表してもいい。この間ロザノフ氏にも、ここへ何か通知が来ておらぬかと問うてみたところが、それはわからぬ。こういう点について、ソ連政府のそうした者に対する非常にずるい、おおまかなと申しますか、漠としたやり方に対して、それがいよいよこういうところに不安を與えるのであります。私自身としても、三十何万というものが全部生きておるということは考えておりません。この人たちか、非常に多数の犠牲者ができておるうちに、その一部には終戦直後帰つた者もあるでしようし、南方その他へまぎれて行つた人もあると思います。しかしながら、タス通信のこの数字しかないということも、想像できないことてす。そういうところから、国民の疑惑を一掃するために、ソ連政府の態度が戰犯氏名死亡者氏名というものをすみやかに発表され、そしてたれが帰化したということも発表されてよいのだというようなところから、あくまでもソ連政府そのものにぶつかつて行くように、総司令部のみでなくして、ソ連代表部へ行くというような外交上の措置はしておられませんか。あくまでも占領下にあるものとして、総司令部を通じてソ連に当るというような手しか打つていないのですか。ここで少し非常手段をとられてはどうですか
  25. 武野義治

    武野説明員 個人的には、まさに同感の節々がございますが、終戰後はつきり指令がありまして、日本政府はそうした外国の代表部に直接連絡することは許されておりません。何としても非常手段ということは、きわめて合法的でないわけでございます。これは不可能であると申すほかございません。それからタス通信の問題について、留守家族方々が非常に理解に苦しみ、不親切でないか、これはまさに国民の大部分かそう信じておるのであります。その通り何とか正確な内容、親切な正式な回答を期待しているわけてありまして、政府としてもあらゆる努力を盡すことと信じております。二重国籍の問題が出まして、帰化人の問題もいろいろ言われておりますか、仰せの通り国籍の問題になりますと、その本国の意思というものが、同時に考えられなければならないわけてありまして、一方的に国民が、一つの本国国籍を放棄するとかいうことはできないわけであります。また現在はソ連との間はテクニカル・ウオーの状態といわれておりまして、まだそうした正常の外交関係にないわけであります。たとえばそうした自分の占領軍の権限内にある他の国民に対して、その国籍をとるということは、これは従来の国際法では、講和條約を待たなければできない問題であります。従つてこうしたすべての問題について、ソ連政府の正式な回答が望ましいわけであります。
  26. 田中堯平

    ○田中堯平君 外務関係政府委員の方にお伺いしたいのですが、ソ連政府が俘虜の死亡者やら現存する俘虜の氏名発表することは、国際法の基本法則であり、ソ連政府もとうていその義務から免れないという趣旨の答弁をなさつたのであります。そこでその点について私質問しますが、それはもう少し掘り下げて、こういうふうな国際的な基本方則というものかあるでしようか、あるいは他の関連があるのか。ソ連のことを少し掘り下げて御説明を願いたい
  27. 武野義治

    武野説明員 私もここで、宙て申し上げるので、法規上担当者が説明に当ることか適当と思いますが、一九〇七年の陸戦法規に関する修約から言つても、その後のいろいろ捕虜に対する取扱いという慣例かございます。各種の国際戰闘においていろいろ慣例がございまして、慣習法としても、捕虜というものは、敵の攻撃力を破砕するために、一時前に占領軍か敵の権力から別個のところへ拘置するわけでありまして、実際戦闘の必要がなくなつた場合には、本国に帰すべき性質のものである。いわゆる普通の捕虜というものは戦時捕虜であつて、決して一般の囚人ではないのであります。従つてソ連においてこれを軍事捕虜という言葉を使つている以上は、やはり国際慣習の上においても、そうした意味における軍事捕虜ということを言われておるに違いありません。従つて軍事捕虜に対する取扱いは、今申し上代ました敵の攻撃力にならないことを考えることが第一。第二は受入れたならはこれを人道的に扱わなければならない。捕虜捕虜としての権利及び義務というものがおのずからあるわけでありまして、その限度においては基本的なものかあるわけであります。これは国際慣習法として各種の場合において例示することかできると思いますか、私ここで宙て申し上げますので、間違いがあるといけませんから、この程度にさせていただきます。
  28. 田中堯平

    ○田中堯平君 私の理解するところでは、従来の国際法上の慣習、今御説明の慣習というのは、これは戦争か終つて後の場合であつて、今日日本ソ連との関係は、先ほどおつしやつた通り、まだ戰争状態にあるわけであります。こういうふうなバトルは終つたが、まだ戰争状態か継続しておるというような国際法上の慣例は、過去において類例かまれじやないか、ほとんどないのじやないかと思いますが、そういうときの捕虜の動静についての報告義務というものは、これはおそらく過去においては、そういう慣例がないのじやないかと思うのであります。そこで私は法律問題をここで言うのが目的てはなくして、もつと実質論をお聞きしたいのてすが、御承知のように、日本連合国か占領はしているが、しかし、実質的にはアメリカが日本を占領しているという形になつているわけてあります。そうしてたとえば捕虜の問題にしても、昨年は三十七万まだ残存しているというようなことか言われているが、ソ連側の方では、まつたくそれとは問題にならぬほとの食い違つた数字発表している。そしてソ連側発表は全然信頼に値しないというような宣伝が、日本において官民ともに行われているような状態である。いわばソ連は占領国の一国てありながら、占領政策にはほとんど参加をしておらぬし、占領国の資格をもつていろいろと自分としては権威のある発表をしても、一向にこれはデマとして受けつけられない。そういうふうにまつたく戰争状態か実質上にまだ継続されているような状態であります。そうしてみると、これは何人いる、氏名は何々である、だれそれが死んだというふうな克明な発明は、しないのがむしろ国際法上当然のことじやないかと思うのであります。その点についての御見解と、それからあわせてお答え願いたいのは、終戰直後に南方から、すなわち英米その他の占領区域から、引揚げて来た最初の引揚者、このときに、それでは英米側の方では、だれそれは戰犯関係で抑留されている、だれそれは病歿した、だれそれはまだどこに残つているというような詳細な御報告を、日本政府に対してしたかどうかということも、あわせてお答え願いたいのであります。
  29. 武野義治

    武野説明員 ただいま申されました、ソ連日本との間が実際戰争状態にあると言われておりますが、ですから私の申すことと、結論においては御一緒になるのではありませんてしようか。私の申しましたのは、実際の戰闘行為か終止したならば、捕虜を帰すことか――それはもちろん捕虜交換條約というものがありますか、一般的に言つて、戰争状態という、現存においてアブノーマルな状態か続いている際に、その捕虜を拘束し得る権利ありというふうな御見解のようでございましたけれども……(田中寛平君「違います。そうじやない」と呼ぶ)私の申しますのは、実際戦闘行為が終了したならば、捕虜はその必要がない、捕虜として拘置する必要がないのであります。捕虜というものは、そうした純然たる軍事的意味のものてありまして、実際無血條件降伏を日本か行いましたその直後から、そうした元日本軍の将兵その他の者を、捕虜としておく根本的な法的條件というものは、欠如しているというように私は考えております。これは私の見解としてお受取り願います。もし正式な政府の御見解でありましたら、ひとつ私ともの局長、あるいは大臣にお願いいたします。  それから名前の通報てございますが、これは戰鬪継続中においても、名前を通報することは当然でありまして、現実にございました。英米側の問題について、詳細な報告かないかと言われましたか、これは私ちよつと覚えているのでは、フイリピンからてございました。
  30. 田中堯平

    ○田中堯平君 政府委員は誤解されているようでありますから、ちよつとこの点もう一ぺん申し上げておきたいと思います。戰闘行為が終つて、すみやかに捕虜を帰す義務があるということは、私も同意見であります。私が御質問申し上げているのは、そういうことではなしに、捕虜の動静、すなわち死亡したとか、どこそこに幾らいるとか、帰化の状態とか、そういうふうな動静についこの報告義務を問題にしているのであります。そういうことは、戰争状態が継続している今日、国際法上基本的にやはりそういう義務があるとおつしやるから、それはおかしいということを私は申し上げているのてあります。バトルか終つたならば、早急に捕虜を帰すということは、国際法上何人も疑義をさしはさむものではない。ただ四年半もたつてまた帰つていないということは、いろいろ複雑な問題がたくさんあつてソ連政府の一方的な意思によつて帰らぬものであるかどうかということは、ここで言つてみても始まらぬから、この点は別問題といたします。問題は、バトルか終つたらすぐ帰すということについては、異論はないのであります。ただ動静の報告義務かあるかどうかという一点を疑問にしといるわけであります。その点について政府委員の御見解では、もはやバトルが終つているから、当然これは国際法上の原則に従つて、動静を報告する義務があるという御見解のようでありますれば、これは議論してもしかたかないから、これて私の質問を打切ります。
  31. 武野義治

    武野説明員 ポツダム宣言かございますので、それが根幹であるわけでございます。また現存司令部に懇話し、総司令部においても繰返し要示しているように、そうした死亡者の通報、その他動靜については、正式に要求されておりまして、それか義務であるかどうかという法規的な掘り下げた問題については、私申し上げる立場でございません。これは司令部の方としては、現にたびたび要求しているのであります。
  32. 安部俊吾

    ○安部委員 ただいまの御質問に関連いたしまして、政府委員の御所見を伺いたいと思うのであります。私どもはまことに引揚げ問題に関しましては、関心を持つているか、とうも留守宅の方々に満足な経過を報告することができないことは、はなはだ遺憾に思つているのてあります。大体ゼネパのコンヴエンシヨンにおいて、議定書に各文明国が参加しているのであります。またその他に戰時国際法というものがありまして、先ほど政府委員からの御説明がありましたごとく、捕虜に関しては、文明国としての取扱いというものは、過去の戰争における習慣から申しましても、これはきわめて良心的に、人道的に取扱わなければならぬのであります。一例を申し上げますならば、捕虜は危險な戰争の前線に、いわゆる砲弾の届く距離内には置いてはいけない。また捕虜はそのとらわれた国の軍事産業に貢献するような労働に服役せしめることはできない。たとえば軍の使用する道路の建設とか、修築に使用してはいけない。あるいは飛行機の設備に関する労働等に服役せしめてはいけない。また食糧にしても、それは自分の国の兵隊と同様なもの、しかも士官なら士官と同権な待遇をせんければならね。またその捕虜に関する衛生設備も、十分これを関心を拂つて、そうして万国赤十字社の代表者が見ても満足な程度にまで、その設備をしておかなければならぬ。病人などは衛戊病院のようなところに收容して、適当な衣食を與え、その健康を保持して行かなければならぬ。かようなことてありまして、收容所につきましても、一定の大きさの施設に、收容守る人数を限つて衛生上書かないように、適当な收容所をつくらなければならぬ。また寒い時においては、寒くないように、衣服等も相当のものを與えなければならぬ。これは戰時国際法規定するところてありまして、当然行わるべきはずであります。日露戦争におきましても、敵将に帶劍を許した乃木大将の崇高な行為は、各国でこれを認め、またそういうふうにやることか文明国の態度でなければならぬと思うのであります。しかるにわれわれが新聞紙上等で承知いたしますところによれは、この点がソビエトては少しも守られておらない、死亡者が非常に多い、病人に対しても手当をしておらない。またノルマというような、一定の労働の基準がありまして、それに達しようとする意思はあつても、健康状態あるいは年齢等によつて、それだけの成績をあけることのできない場合には、栄養の失調するような、きわめて少い食糧しか與えられない。また最近帰還して考査委員会で宣誓の上なされた証人の証言によれば、死んだものはどんどん軒の下に重ねてあつたそうて、それか寒い時に凍つて、触れつとポリポリ手も足も折れておつた。埋葬する場合にも、その姓名、あるいはとこの部隊に属し、また日本の何県の何村の出身であるというような記録も何もなく、墓標一つない、ただ番号一つだけて葬むつてしまつた。また労働の成績を百パーセント以上に上げなければならぬというような運動が行われ、あるいはつるし上げとかいろいろなことがあつたのであります。とにかく戰時国際法における道義的な、文化国として当然なさるべき、捕虜に対する收容所の設備、あるいは待遇等に関して、まことに遺憾な点か多いように思うのでありまして、先ほどどなたか知りませんが、委員以外の質問かありましたが、われわれ日本人として留守宅の人たちが、朝な夕な海外に長く抑留されていつ帰つて来るか、あるいは安否もわからす陰ぜんをすえて神に祈つておるごとに対して、何とか便宜を與えたいというわれわれの情操とかけ離れた質問でありまして、私ははなはだ遺憾に思うのてあります。何か日本捕虜は帰つて来ないのが当然であるというような、また英国あるいはアメリカ濠州の南方地域の日本軍の捕虜はきわめて迅速に、きわめて人道的に帰還を許されたにかかわらず、それに対して何か不満があるような、何か欠点を探すような口ぶりでもつて、ソビエトのやり方を弁護するようた御質問でありましたが、これはわれわれははなはだ遺憾である。現在われわれは占領された国の国民でありまして、何らの外交機関もなければ、発言権もないのでありまして、政府委員の申されましたごとく、われわれはただ総司令部や対日理事会の当局に懇願いたしまして、われわれの希望を達するより方法はないのでありますが、しかし少くともこの問題に関しましては、世界の輿論に訴えても、何人もこれに対して共鳴しない者はないだろうと思うのであります。そういう点から、私は政府委員においては、はたして今日までのソビエトあるいはあの地区から帰つて来た人の状態、もしくは今日まで五箇年間という長い間かかつて、いまだに全部の人か帰つて来ない、全部帰つて来たというタス通信の報道はありましたけれども、これは的確な筋からの報告と、非常にかけ離れた数字であるようにわれわれ了解しておるのであります。この点に関しまして、政府委員の御所見、並びに先ほど委員外の方が質問されたようなことに関しましてもどうであるか、私の質問した点に関しましても御意見なり、あるいは情報が入つておりますならば、その辺を伺いたいと思うのであります。
  33. 倭島英二

    ○倭島政府委員 捕虜取扱いにつきましては、今御意見がありましたように、すでに国際間に一つの慣例がございますし、なおこれは武野課長から御説明申し上げたと思いますが、昨年捕虜取扱いに関して條約が結はれており、これに対してソ連もこれに調印をしておるという関係にありますので、わが国の現在まだソ連地区に抑留せられておる人たちに対しても、捕虜の條約の精神に従つて取扱われるものと期待しますし、政府といたしましては、今後も国際慣例並びに條約の精神によつて取扱われるように、従来もいたしておりますが、今後もそういう方向で引続いて強く要請をするつもりでございます。
  34. 安部俊吾

    ○安部委員 ただいまの政府委員の五答弁に満足するものであります。私どもはシベリア地区において死亡した人数がどれだけあるか、また死亡した者の姓名、出身地等を的確に知ることができたならば、はなはだけつこうだと思うのてあります。またタス通信とわれわれの得た情報において、在ソ人数か非常にかけ離れておりますから、その点に関しましても、十分今後とも関係方面と御折衝の上、十分なる成果をあげられんことを希望いたしまして、私の質問を打切ります。
  35. 中山マサ

    中山委員長 官房長官が御出席になりましたので、官房長官に対して御質問を願います。
  36. 受田新吉

    受田委員 増田さんが来られた機会に、政府の最高首脳者としこの御所見をお伺いしたいのであります。  この引揚特別委員会は、超党派的にわれわれの同胞の帰還促進をはかる委員会でありますか、ゆだんをしておると、この委員会がある特定の人々だけがやつて、われわれ政府も国会も、そういう人にまかせればよいのだと印象づけられる向きかあるやに心配をしておるのであります。特に政府においても、私たちかこうして真劍に特別委員会までつくつて帰還の促進をはかつておるときに、理大臣兼外務大臣である吉田さんが、この委員会に一回も出席しておられないのでてあります。この点についても、委員長を通じてしばしば出席を要請して政府の御所信を伺いたいと、われわれも微力を盡して来たのでありますし、国会と政府が手を取合つてこの重大な人道問題の解決に当りたいと、一生懸命にやつておるのでありますが、吉田さんの出席が一回もない。この点官房長官として、総理の身辺がまことに御多忙であることはよく承知しておりますが、この引揚特別委員会のなしつつあるところのこの重大なる人道問題の解決のために、政府もよくこれに協力してくれるように、政府の最高責任者である吉田さんにも、この点を特に認識していただくようにお願いしたいと思うのであります。  それで、次に官房長官は、一昨日この引揚げの問題に関して、特にタス通信発表を機会に、政府の所見を述べられたのでありまして、これは私も政府の当事者としこ当然の道をとっていただいたことを喜ぶものであります。その発表に対する政府の所見の中に、タス通信はこれは一切信ずべきものてなくして、渉外局発表数字政府の信ずるところであるというふうに言われておるのであります。そうしてこの問題に関して、ソ連側の意向がとうあるかということについては、昨日の考査特別委員会て徳田証人か述べたところによると、ソ連は国の慣例として、特定の通信社にその政府声明の権限を委譲しておるのだと言うておるが、これはソ連の国情であるから、これを信ずるのが当然てある、それを信じないのは、ソ連の国情を知らないものであるという徳田書記長の証言かあつた。こういうことについて、国際上の慣例を尊重して、その国内の特別な事情などは抜きにして、慣例に従うのが当然であると思うのでありますが、ソ連はそれをやらぬで、特定の通信社発表させるというような道をとつておることが、これが正式の声明であるということの裏づけになるかどうか。これは今後当分の間、私が観察するところでは、タス通信声明をくつがえす可能性は薄いと思うのであります。薄いということになると、このままでずつと当分の間続くということになりますと、国民の不安はいよいよ深まつて来ることになるのであります。ここでわれわれがいかに努力をしても、この問題は久しく解決せぬという不安にかられておるのであります。この点につきまして、タス通信というものを国際法上いかなる見方をされておるのか。徳田書記長が大みえを切つてソ連発表を信ぜよと言われたし、それから政府声明であると言われたし、この間もロザノフソ連大使館の政治顧問に会つてお話を聞いたときにも、やはりこれはソ連政府の正式な声明であるということを言われた。このソ連政府の正式な声明だということに対する日本政府の所見はいかがてあるか、これをまずお伺いしたい
  37. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 受田さんにお答え申し上げます。総理は非常に御多忙であつて、この委員会に出席要求があつても、御出席できなかつんという御所見でございますか、不肖私、この委員会における――外務委員会は別でございますが、この委員会からたびたび出席要求を総理にされたということはあまり実は存じませんで、その点については連絡はかつていたしたことはございません。しかしこれから後もし機会があり、差繰りができたならば、もとより出席いたすべきである、こう考えております。その方向に向つて努力をいたします。但し、引揚け問題について誠意と熱情を傾倒して従来懸命に努力されておるのは、すなわち吉田総理であるということは、この際確信をもつて申し上げる次第であります。  それから次に、ソ連という国情は、タス通信を通じて公式発表をしておるのであるということを、昨日私は出席いたしませんてしたが、徳田君か言われた、またソ連大使館の方も言われたということをもつて、私に御質問でございまするが、私どもはソ連政府か正式にタス通信発表ソ連政府発表とするという公式の意思表示を、連合軍なり、その他の国際機関を通じて受けたことはないのでありまして、われわれは依然として一つ通信社発表であるというふうに考えておりまして、公式発表とは考えておりません。
  38. 受田新吉

    受田委員 次に残留者の数などについてここでお答えをいただくと、たいへん仕合せなのであります。昨年以来いつも近く日本政府調査した限りにおける数を発表するということを、しばしは倭島さんたちも言うておられたのでありますが、今日日本政府調査による発表数字がまだ出されていないのであります。タス通信発表と、それから日本政府ができるだけ調査した数字発表、そういうようなものの比較などをすることによつて、さらにこの引揚げ促進根拠を突くこともできると思いまするし、非常に好都合だと思います。ただいま援慶局長から、未復員者結與法、特別未帰還者結與法の対象となつておる人たちか四万三千おるということですか、これは日本政府における未帰還者の正式な発表の一部分であります。ところかそのほかにおける帰還者の言を総合してみた面や、通信によるものとか、そのほか諸般の調査によるところの数字というものが、おおよそ大まかでけつこうですが、どのくらいあるか。それによつてわれわれはタス通信の誤りを訂正することができるし、ソ連政府に対して、さらにわれわれが考えておるのは――われわれは帰化人など入れておらぬが、そうすると帰化しておる人がどのくらいあるか、ソ連にどれくらい帰化しておるのか、そういう数字発表要求もできるし、それから死亡者発表要求等も可能であると思うのでありまするが、この点日本政府調査した限りにおける概数の発表をしていただきたいと思うのであります
  39. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 従来政府が責任をもつて調査しておるその概数は、いつも申し上げておりまする通り、三十七万有余であります。これについては従来通りの数をいつも言つておりまするが、まだ確定的の数字は申し上げかねます。そのうちソ連地区におられるか、中華民国におられるか、樺太におられるかということは、現に調査進行中でございまして、はつきりお答え申し上げかねる次第でございます。なお死亡者は、御承知の通り国際條約に照して、われわれに逐一通知がされるべきでありますかソ連あるいは中華民国等から、死亡者の通知が従来なされていないということは、受田さんの御承知の通りてありまして、いわんや帰化した人がどのくらいあるかということは、なおさらわかつていない状況てあります。これらの点について、われわれはわかるべき権利かあると考えておりますか、わかつていないことを非常に遺憾に存じている次第であります。
  40. 受田新吉

    受田委員 私は共産党の立場人たちに考えていただきたい点が、一つあるのです。それは数字発表死亡者氏名発表等に対して、共産党の人たちも協力して、ソ連政府死亡者氏名発表せよ、戰犯の理由とか氏名等を発表せよというようなところに、大いに協力してもらいたいと思います。一方では非常に反共の線でぐつと共産党を押しつける、共産党はそれに反抗するというようなわけで、昨日の徳田証人の要請問題のときなとも、われわれは、これがわれわれ同胞引揚げ促進の大事な人道問題の論議かと思われるような、まことに悲しい場面を見せられて、私は涙なきを得なかつたのであります。こういうような重大な問題については、あらゆる政党が力を合せて、共産党は共産党の立場から、自由党も社会党もおのおの立場から引揚げ促進に協力をして行くという線が必要だと思う。数字の論争をやつてつても、いつまでたつても解決しない問題だし、引揚援護局かいつまで待機して配船を用意しておつたとしても、ソ連はもう完了したと言うのである。これから一年も二年も続いたときには、家族の不安はより一層深まつて行く。未復員の御家族たちの、どうしていいか、岩壁に立つたまことにみすぼらしい姿、こういう現状にあるのだから、早く解決しないと、一年ても二年でもこういう状態が続くと思うのでありまして、外交上の折衝によつてソ連政府に対して直接の折衝を何とか懇請するか、もしくは国連に陳情をして、政府として国際的な人道の立場から、この問題の解決に当るとかいうようなあらゆる手を打つて、この不安が長く継続しないような対策政府はお持ちではありませんか、この点をお聞きしておきます。
  41. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 受田さんのおつしやる点は、きわめて同感の節が多いのであります。いわゆる残留同胞引揚げ促進の問題は、党派を越えて熱情と誠意を傾倒してこれが完遂を期すべきものであると考えております。そこで各党各派に対する御批評のことは、私は承つておきまして、この際政府の見解を申し上げることは避けますが、タス通信の非公式に発表されたあの数字と、われわれの責任をもつて調査しつつある数字とは、非常な開きがあるのでありまして、全然不可解である、あの通信発表は全然不可解てあるということは、はつきり申し上げ得る次第であります。それから引揚げ促進なり、あるいは死亡者氏名の通知なり、あるいは残留同胞状況の通知がわれわれになさるべきことは、御読の通りでありまして、この点については直接日本政府ソ連大使館、あるいは国連と交渉してはどうか、またはその道を開くようにという御質問でありますが、受田さんの御承知の通り、ただいまのところ、日本はいわゆる被占領国でありまして、われわれの交渉の対象は占領軍当局であります。この当局に対しましては、従来一生懸命皆様もなさつておりますし、また政府といたしましても、もとより責任がございますか努力を傾倒いたしております。先般タス通信の非公式発表があつたときも、不肖私は政府代表といたしまして関係方面を歴訪いたしましてさらに懇請を続けましたし、また国際條約上当然なさるべき死亡者氏名の通知等も、どしどししてもらうようにということを強く懇請いたしました。受田さんの御承知の通り、連合軍当局は、司令部を初め、この問題についてはきわめて執心でございまして、従来あらゆる方面について、われわれに対して非常な理解と同情と協力をいたしてくだすつております。今日まで引揚げがこの程度できたというのも、連合軍司令部の御協力の結果である、こう考えております。われわれは何と申しまても、われわれの調査にかかる多数の在留同胞の一人々々の命すら、何ものにもかえがたい貴重なものであると私は考えております。いわんや在留同胞の生命なり身体なり、あるいは人間の生活に関することでありますから、これから後も懸命な努力を傾倒いたしまして、関係方面と協力一致いたしまして、この問題の完全なる解決をはかりたい、こう考えている次第でございます。
  42. 竹村奈良一

    竹村委員 大臣にお伺いしておきますか、先ほど聞いておりますと、大体現在の政府の御調査されました数字は三十七万である。しかしこれは現在の範囲内における推定てありまして、確定的なものてはない、大体そういうふうにおつしやつたのでありますが、そこで私はひとつ実に疑問に思つている点を政府は一体どういうふうに考えておられるかということをお聞きしたいのです。たとえば未復員者家族の調査というものを、各府県を通じて政府はなさつているのであるか、この結果、われわれはたびたび政府の方に要求しているのであります。この委員会におきましても、私たびたび申し上げたのでありますか、まず現存調査された未帰還者数というものを、いわゆる大字別、町村別、あるいは郡別、県別に下から積み上げたこの御調査数字発表願いたい。これをひとつお願いしたいのであります。これの発表がないと、われわれ非常にあいまい模糊とした感じを受けるのでありますけれども、これを発表される御意思があるか、あるいは発表されるのであつたら、いつ発表されますかちよつとお聞かせを願いたい。
  43. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 先ほど受田さんにお答えいたしました通り政府においては鋭意研究調査中てありまして、現在のところは三十七万という数が出ている、これまた先ほどお答えした通りであります。そこで各県、各町村にそれぞれ区分してもらいたいという御質問てございますか、不日それはお答えできると思つております。現存調査中でございますが、必ず近い将来においてお答えいたしたいと考えております。
  44. 竹村奈良一

    竹村委員 それではまず最近のうちに発表されるといたしまして、そこでもう一つ総括的に私いただきました資料に基いて不審の点が一つあるのてございますが、これは一体どういうふうになつてこういうことになるのか。もちろんこれはあまりこまかくなるので、こまかい点は申し上げませんけれども、たとえば一九四九年の三月に発表されたものと、最近一九五〇年二月の、政府からいただきましたこの表から見ましても、いわゆる引揚げの数というものは非常に違つている、政府調査においてすら違つている。もつと具体的に申し上げますと、たとえば前のときには大連地区からの引揚げはゼロになつてつた。ところがそれから二千何ぼ帰つて来た。そういたしますと今度は大連地区の引揚げ基本数というものがふえているというようなことになつているのてございます。もちろんこれも推定に基く数字だということを先ほども仰せられておりますので、詳しくは聞きませんけれども、こういう点を私非常に疑問に思うのでございます。引揚げ対象基本数というものが、いつになつてもやはり一定のものであるか、引揚者数は別でありますけれども、この点はどういうことになるのでありますか
  45. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 数字の詳しい点は、政府委員をして御答弁いたさせます。
  46. 倭島英二

    ○倭島政府委員 その引揚げ対象基本数というものについては、もう数回私から御説明申し上げている通りてありまして、御存じの通りの推定数であるということと、それから今推定数であるので、さらに政府は懸命の努力を続けてその正確を期したいというのが、現存調査を続けているところであります。なお大連の例をお引きになりましたが、大連の関係も、ゼロとなつているのは、それは基本数から従来帰つて来られた数を引いてゼロになつているのでありますが、われわれがあるいはもういないのだと思つて、あるいは引揚げの直接対象にならぬかと思つてつた所からこれだけ帰つて来られたことは、われわれのさらに大きな喜びであります。従つてつて来られたことは、われわれがたいへんうれしく思つておるところでありますか、示すような基本数というものは、相当内輪であるというように御了解願います。
  47. 竹村奈良一

    竹村委員 数の問題につきましては、別に事務的に質問することといたしまして、もう一つ大臣にお伺いいたしたいのは、たとえば中共地区におきましても、相当数の人が残つておるということは、これは先般来大臣に会いましたときにも、最近のうちに一万引揚げるとか、二万引揚げるとかいうような放送か伝わつたということを聞いておるのであります。また最近国内におきましては、中共地区からの送還問題につきまして、われわれは深い関心を持つておるのであります。そうしてまた、いろいろな要望書というようなものも出て、毛沢東主席あたりに出すということになつておりますが、まず引揚げを促進し、早くするという建前から考えましても、戰争中におきます中国人の捕虜取扱い等につきまして、われわれは向うに通過する義務を持つ、向うにも通知する義務を負わすかわりに、われわれまた通知する義務を持つと思うのであります。そこでひとつお聞きいたしたいのは、最近新聞紙上におきましても、たとえば木曽谷における捕虜虐殺事件等々が報ぜられておるのでございますか、これに対しまして、政府におきましてはとういう調査をされ、その結果は一体どういうふうになつておるか、お伺いいたします。
  48. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 竹村君が、俘虜なりあるいはそれぞれの敵国に在留する者に対する情報は、それぞれの国において、詳細に他の相手国に報告すべき義務ありということを明瞭に認められました点は、私も欣快と存ずる点であります。もとより日本におきましても、俘虜あるいは在外人の状況は、外国に通報する義務かあるのでありまして、御指摘の木曽谷の件につきましても、目下法務府関係において調査中であります。不日これもそれぞれの国に対して報告できると確信いたしております。
  49. 竹村奈良一

    竹村委員 私あまり国際法には明るくありませんので、はつきりした結論をつけるという意味ではないが、わが国が向うからの通報を要求される場合においては、こちらもまたそれの要求に応ずるような態度をもつて向うに通報するのがほんとうだと考えて申し上げたのであります。こういうような捕虜の問題等、今調査されておるということでございますが、次にもう一つ聞きたいと思いますことは、先ほどの話によりますと、フイリピからは死亡者あるいは戰犯その他の氏名等の報告があつたということを承つたのてありますが、それ以外の国からも、そういう報告を受取つておられましようかとうか、その点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  50. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 あなたはあまり国際條約に詳しくないとのことでございますが、しかし常識上、俘虜情報交換局というものかありまして、戰時国際公法上、必ず情報はそれぞれ交換し合わなくてはならないことになつております。こまかいことは存じませんか、ソ連とか中華民国以外の在留同胞関係はすべて来ておるというのが、政府当局の私に対して今ここで連絡しておりますから、このことを明確に御答弁いたしておきます。
  51. 竹村奈良一

    竹村委員 もう一つ聞いておきたいのでありますか、終戰直前、六月あるいは七月ころに、いろいろな形において関東軍か南方に転進しておるというようなことも、その当時参謀本部におつた人々の談等を総合して想像できるのであります。現在推定されておるこの三十七万という中にも、私はそういうものか含まれておると思うのでございますけれども、これに対しまして、政府はどういう見解を持つておられるか、この際承つておきたいのであります。
  52. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 南方に転進した者は、それぞれ私が申しました通り、英、米、仏、蘭等から報告が来ております。そういう関係とにらみ合せまして、ソ通ないし中華民国地域の残留者は約三十七万であるということを、政府は従来申し上げておるのでありますが、この際このことを重ねて申し上げる次第であります。
  53. 竹村奈良一

    竹村委員 たとえば島根県に駐屯しておつた部隊――名前は忘れましたが、先般新聞にも報道されてこれは事実だというふうに言われておるのでございますか、出港いたしまして、朝鮮あるいは満洲の方へ行く船か、途中において転覆して着かなかつた、そういう部隊が数多くあるということを報せられておるのでありますが、こういうものは当然北方に行つたものだ、あるいはソ連中共地区行つたものだというふうに考えておられるのかとうか、こういう点も調査されて、この数字が確実だと言われるのかどうか、お伺いしたい。
  54. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 従来政府委員か確信をもつてあなたにお答えしておるそうてありますから、その答えがすなわち私の答えと御承知願いたい。
  55. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 政府、特に吉田総理大臣兼外務大臣が、終戰後の内閣を主宰されておるために、この引揚げ問題に対しては、特に熱心に情熱を傾け、誠意を込めて関係当局に促進方の要請をせられておることに対しまして、国民ひとしく敬意を表し、認識をいたしておるところであります。しかも最近タス通信発表せられるや、ただちに政府代表いたしまして、官房長官かその筋に要請せられ九ということも、新聞紙上で拝見し、本日直接このことをお聞きして、まことに私とも意を強うしておるのでございます。そこでいろいろの問題は、今まですでに委員会で言い盡されておつたのでありますが、新たな問題一つだけを、この機会にお伺いしておきたいと思います。それは言うまでもなく、国際公法上、特にこのぜネバのコノヴエンシヨンにおいて、捕虜を利敵行為に使つてはならない、あるいはその他いろいろなことをとりきめられておるのでございますが、先般新聞の報道するところによりますと、中共地区におります在留邦人約三万五千名か、台湾攻撃の後方部隊約十万を集結する中に、中共軍の中に加わつておる、これか近く戰鬪行為に出るであろうという意味の報道があつたわけてあります。かくのごときことはこの利敵行為をせしめるという方面において、きわめて大きな利敵行為でありまして、しかも生命の危險を伴う利敵行為であります。かくのごとき戰闘行為に参加させるということにつきましては、特に私は被占領国といたしまして、国際公法上、これに対して抗議すべき権利かあると思うのでありますが、こうしたことに対しまして、官房長官におかれましては、先般関係筋に引揚げを要請された際に、この問題についても何か言及されて要請されたかどうかということが一点。  次に、先ほど受田委員からも、るるお話になりましたが、このタス通信情報等から見まして、今後引揚げを促進する上におきましては、相当困難が伴い、また年次を要するのではないかという疑問を持つておるのでありますが、この機会に竿頭一歩を進めまして、このソ連地区あるいは中国地区に対して、国際的な、たとえば中立国をして調査団を派遣していただくということまで進めて行くべきではないかと思うのでありますか、こうした要請について、政府はいかにお考えになつておるか、この二点をお伺いしておきたいと思います。
  56. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 玉置さんの御質問のうち、第一点の国際條約に照してみて、俘虜が利的行為に使用されるということは、よろしくないことであるということについて、私は全然同感であります。御指摘の中国におりました日本人俘虜が、台湾攻撃に利用されるということについては、政府も若干の情報は得ておりまするが、まだ的確な資料、証拠等は持つておりません。しかしながら、いずれこういつた情報は多少得てありまするし、かかることは国際法に照してあり得へからざることでありますから、ぜひ連合国等にこちらからもお願いをいたしまして――もつとも、御承知の通り中共は認められた場合と認められない場合と、国によつて違いますけれども、しかしながら一つの交戰団体であることはきわめて明瞭でありますし、交戰団体としてもかかることはなすべきことではないと考えますから、しかるべき措置を至急とりたいと考えておるのであります。  それから第二、引揚げの促進についての御熱意については、非常に感激いたしましたが、これについて何か中立国等て調査団というものを構成し、これを派遣したらいいではないかという点は、われわれはいつも連合軍当局に要請し、懇請を重ねており、また連合軍当局にあらゆる手を盡してもらつておるわけであります。御承知の通り、極東委員会においても議題になりましたし、またアメリカ政府としても、ロシヤ政府に強い要請をされておりますし、対日理事会等において、しばしば問題になつておることは、御承知の通りでございます。御示唆の点も参考にいたしまして、連合軍当局に、もとより万全を盡してもらつておりますが、こういう考え方も、国会議員の中の引揚げ促進問題について、きわめて執心に御努力くださつている方もあるということを、お伝えいたしたいと考えておるわけであります。
  57. 安部俊吾

    ○安部委員 時間もありませんので、ただ一点だけ、官房長官にお尋ねしておきたいと思います。  それは最近帰還者の中から、考査委員会において証人を喚問したのでありますが、いずれも吉田内閣が熱心に、あらゆる手を盡して関係方面懇請をいたし、引揚げ促進努力をしておるにもかかわらず、これらの帰つて来た人が言うには、ソビエトにおいては、なるたけ迅速に日本に帰還せしめるという措置をとつておるが、日本の方で船をよこしてくれない、あるいは日本の方では食糧に困つておるから、そういうような同胞がたくさん来てもらつては困る、また失業者も相当あるのだから、そういうものが帰つて来てもらつては失業者が迷惑するというようなことを、いろいろの方面から聞いたのであります。特にまた「日本新聞」という邦字新聞か、ハバロフスクにおいて発行されておるようてありますが、その第二面と第四面には「アカハタ」を転載された記事が掲載されます。その「日本新聞」なるものは、教科書のごとく非常な権威を持ち、力を持つております。ソビエトに抑留された邦人は、他に読む本も雑誌もないという関係から、その「日本新聞」を読んでおるのでありますが、その「アカハタ」から転載された記事によつて、どうも日本に帰つても困るというような悲観的な考えを持つておる人も多いようであります。そういうことでありますから、これはすでにもう抑留されておる邦人に対しても、自由に日本から、あるいはロシヤから郵便をもつて手紙あるいははがきを送ることができるということでありますが、帰還者の証言によりますれば、そういうことがどうも実行されておらないのてございます。来るはがきというようなものは、單にウランオストソクとか、こういうような方面に集結されておる。そういうようなものがそこに集められて、何か検閲をされて各所に送られるわけであります。それもおもに個人に対する通信にあらずして、何か共産党から送られた手紙か各所に張られて、実際に自分らの親近から受取つたものがないというのであります。その点に関しましても、何か自由に手紙の往復ができるように、また現に帰還することができず、戰争犯罪人でもない者からも、手紙を受取れば、その数もある程度はつきりするのではないかというふうに思うのでありますから、その点に関しまして、政府においてはとういうような手を打つてくださるかということをお尋ね申し上げます。
  58. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 まずロシヤにおいて行われておると言われておる点について、安部さんが御指摘になりましたことは、政府としてもこの際はつきり申し上げたいと思います。  御承知のように引揚げ船等も十分用意されておりますし、また引揚げ船が来ないから帰りたくても帰さないということは、これはデマであることは、日本国内においては、みんなもう常識化しております。だれだつて船か余り過ぎておるということはわかつていらつしやるはずであります。それから、ことに引揚げ船用としてむなしく待機しておる船は、たくさんある次第であります。また引揚援護局等も、それぞれの港においては厖大な收容設備をもつて控えておる次第であります。食糧はもとより、衣料その他の関係においても用意をして待つておる。しかるに引揚船がないから帰さぬというデマを相当引揚者から聞いたということを、私自身にも訴えておりますか、これはデマ中の悪質のデマであるということを、この際明瞭に申し上げておきます。ことに日本には食糧かないというようなことは、もつてのほかでありまして、ただいま三十七万人も帰つて来ましても、すでに七百万人の同胞を引受けてちやんと余裕がある。しかも農村は食糧の過剰生産で、あるいは農村恐慌になりはせぬかという声がある。またアメリカから救援食糧をあまりもらい過ぎると、食糧の値段が下つて困るというようなことは、これは食糧が少いから値段か下るのではありませんで、食糧かあるから値段か下るのでありまして、われわれとしては、農村対策上ます第一に考慮すべきことは、農村主要食糧の最低価格の維持ということを、どうしても農村政策の中核として考えなければならぬ段階であります。つまり食糧か足りないということではありません。七百万人の同胞をすでに引受けて、なおかつ農村恐慌と言つておるのでございますから、いわんや三十七万くらい引受けても、食糧は十分でありまし、それぞれの家庭においては、首を長くして日夜発狂せんばかりの心配をして、兄、弟、あるいは子供、あるいは父を待つている次第であります。  なおハバロフスクの「日本新聞」というのは、私は詳細には存じませんが、アカハタを転載するひまがあれば、朝日新聞や毎日新聞や、その他の新聞を転載してもらつたら、日本の国情は明確になるであろう。一方的な言論ばかり転載するから、誤解を引起しやすいと考えております。またラジオ等につきましても、ロシヤのラジオはオール・ウェーヴならすぐ聞えますし、また時間が遅くなりますと、普通のラジオでも聞えますので、ロシヤの放送は宣伝放送でありますが、私ともも聞いております。今後向う引揚げ同胞日本のラジオを聞いていいということになれば、農村恐慌その他の問題も、どんどん放送しておりますから、食糧の過剰生産、ことにアメリカから食糧か来過ぎた場合とうするかということで、向うて言われていることとあべこべな心配をしているということは、きわめて明瞭になるはずであります。検閲等かあつて通信が制約されているということは、まことに残念でありまして、この点については、しばしば連合軍当局に指摘いたしまして、通信を自由になし得るように運んでほしいということも言つておりまするが、これから後も、この点については、あくまで懸命に努力を傾倒するつもりでございます。     ―――――――――――――
  59. 中山マサ

    中山委員 次に、閉会中の委員会の運営について、お諮りいたします。引揚げ問題か最終段階に達した現在におきまして、閉会中も委員会を開催いたしまして、御協議いたしたいと存じますので、議長に継続審査をお願いいたしたいと思います。それは在外同胞引揚げ促進に関する件、引揚者定着援護に関する件でございます。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 中山マサ

    中山委員長 それではさよう決定いたします。  次に、継続審査右二件に基きまして、実地調査を必要とする場合におきましては、委員派遣の手続を委員長に一任していただきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 中山マサ

    中山委員長 それではさよう決定いたします。
  62. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 先般本委員会において、満場一致決定しておりまする引揚げ促進に関する決議案の問題でありますが、いまだ国会に提出になつておりませんので、今回舞鶴引揚げられた明優丸信濃丸引揚げ邦人のお話等もさんしやくいたしまして、その内容をさらに検討し、本国会末期において提出されるように、委員長におとりはからい方を、特にお願いいたします。
  63. 中山マサ

    中山委員長 承知いたしました。  それでは本日はこれで散会いたします。     午後一時二十二分散会