○長浜
参考人 本日は当
委員会に市長が御招集にな
つたのでありますが、市長はやむを得ない所用のために
出席いたしかねまして、私がかわ
つて参りましたことを御了承をお願いいたしたいのであります。この
港湾法の問題につきまして、私はこれから六項目の
修正意見を申し上げたいと思うのであります。但しこの点につきましては、單に
神戸市のみの
意見ではないのでありまして、
東京、
横浜、名古屋、
大阪、
神戸の五大
港湾はもちろん、この六項目の中の大部分の問題につきましては、全国
利用者
協議会においても同様な御
意見のあることを御了承願いたいのであります。
先ほど
横浜の方からいろいろ総論的のお話もあ
つたのでありまするが、時間の
関係もありますから、私は逐條にその要点だけをば申し上げたいと思うのであります。まず第
一條でございます。この第
一條につきましては、この
法律の全体の
目的が定められておるところの、最も大切な
條文であると思うのであります。しこうしてこの
條文を拝見いたしますると、
港湾管理者というものが、單に
港湾の
施設に関するところの
業務のみを担当するのでありまして、かんじんな
港湾自身の
運営に関する
業務に携われないような印象を與えるのであります。しかるにこの
法案の
最後にありまするところの理由書を見ますと、この理由といたしましては、
港湾の
開発発展をはかるため、
地方公共団体の自由な
意思による
港湾管理者の
設立その他
港湾の
管理運営の方式を確立する必要がある、これがこの
法律案を提出する理由である。実にりつぱな理由書にな
つておるのであります。この理由書と第
一條のこの
法律の
目的との間においては、大きな齟齬があると思うのでありまするから、
管理に引続いて、
管理運営の二字をお加え願いたいと思うのであります。
次は第四條と、これに関連いたしまするところの第三十三條の問題であります。この四條及び三十三條の
管理主体の決定に参画いたしまするところの
関係地方公共団体の範囲の問題でありまするが、
法案を拝見いたしますると、この範囲といたしまして、第一は「現に
当該港湾において
港湾の
施設を
管理する
地方公共団体」、第二は、「従来
当該港湾において
港湾の
施設の
設置若しくは
維持管理の
費用を
負担した
地方公共団体」、第三といたします点は、われわれが修要していただきたいと思います点であるところの、「
予定港湾区域を
地先水面とする
地域を
区域とする
地方公共団体」、以上三つの條件を備えておりまするところの
地方公共団体が、
管理主体の決定に参画するということにな
つておるのであります。この
関係地方公共団体の範囲というものは、真にその
港湾の
利害関係を持
つておりまするところの
地方公共団体に限定すべきものであろうと思うのでありまして、第三の点、すなわち單に
予定港湾区域を
地先水面とする
地域を
区域とする
地方公共団体ということになりますると、これは第一にも当らない、第二にも当らない。つまり何らの
管理もなし、
施設もない、單にその地先が
港湾区域内にあるという
関係から、前二者と同等の
立場において、
港湾管理主体決定に参画するということになるのでありまして、これはこの
港湾管理主体を決定いたしますところの
協議に、いたずらに紛争を生ずるところの公算がすこぶる大きいのであります。一例を
神戸港にと
つてみますると、
神戸港の
港域を見ますと、これは
港域法によりまして、西部は明らかに
神戸市内でありまするが、東部の方は、芦屋市の芦屋市内にありまするところの芦屋川の左岸の突端から二百二十七度三十分に引いた線、及び陸岸によ
つて囲まれた海面であるのであります。
予定港湾区域をばこの
港域法において定められておりまするところの
区域をも
つていたしますると、
地先水面を
区域とするところの
地方公共団体は、
兵庫県、
神戸市のほかに、さらに本庄村並びに芦屋市という三つの
関係地方公共団体があるのであります。しかも現在
神戸港の
港湾施設というものは、
神戸市の
区域内にあるだけでありまして、しかもこの
港湾施設の
費用というものは、現に
神戸市が
管理しておりまするところの内国
貿易地帶は、市が三分の二、残りの三分の一は国が
負担し、そのほかに
市單独の
費用を
相当多額に投じてつくり上げたものであります。さらに外国
貿易地帶におきましては、
神戸市が三分の一、残りの二分の一は国が
負担して完成したものであります。ところがこの
法案によりますると、
管理主体の決定をするのに、先ほど申し上げました小さいところの市とか村に対しまして、一々
意見を求めて、これに
協議しなければならないのであります。従
つてその間に無用な紛争を起しまして、
港湾管理者をきめること自体が、きわめて困難になる憂いがあるのであります。先ほど
兵庫県の方が申されました、
兵庫県を除外するというような考えは、われわれは毛頭持
つていないことをば御了承願いたいのであります。先般
政府側の説明をこの
議会におきまして、非公式に承
つたのでありまするが、單に
港湾区域が
関係するところの
公共団体をば
関係地方公共団体の中に入れたことは、これらの市町村の地先権というものを尊重しなければならないからだというところの御説明があ
つたのでありますが、ごもつ
ともであります。地先権を尊重するという言葉に対しましては、私
どもはごもつ
ともと思うのであります。しかしながらこの点につきましては、たとえば公有水面埋立法の第三條におきまして、公有水面の埋立ての免許は、
知事が期間を指定して、
地元の市町村会の
意見を徴することが
規定せられておるのでありまして、
地元市町村会の
同意がない限りにおいては埋立ての免許というものは困難な事情にあるのであります。従来からも他の
法律において十分にそういう点は尊重されているのであります。またたとい
法律の
規定がなくても、他の
方法によりまして、地先権を尊重することは十分その
目的を達成し得ると思うのであります。現にわれわれは第四條の
修正意見の一つといたしまして、
予定港湾区域を、
関係地方公共団体の
地先水面を越えて
規定しようとするときは、あらかじめ
地先水面を
区域とする
地方公共団体の
同意を求めなければならないということを、私
どもはこの
修正意見の中に入れておるような次第なのであります。従
つて管理主体をきめるために、最も無用な紛争を生ずるおそれがあるところのこの
規定は、削除してももいたいのであります。そのほか
管理主体を現実に
設定するために必要でありまするところの第四條、その他の
修正意見につきましては、
横浜市から先ほど申し上げましたから、私はこれを省略いたしたいと思うのであります。
次に第十二條と、並びにこれに関連いたしまするところの三十三條の問題であります。これは
管理主体の行うところの
業務の問題でありまするが、現在国の出先機関が港において行
つておりまするところの
港湾行政の中には、特に国において取扱うことを必要としなくて、むしろそれは
地方公共団体にゆ、たねた方が理想的であるというところもはなはだ多いのであります。かかるものはこの際
港湾管理主体に移管すべきものと思うのであります。
港湾法においてこの
港湾の
管理主体をきめるということは、つまりそれを平たく申し上げれば、港の主人公をきめるということなのであります。ところがこの
港湾法の
通りにいたしますると、この
法案によ
つてきめられた港の主人公というものは、主として
施設の
建設、
管理のみの仕事をするのでありまして、
港湾運営の面の仕事ということにつきましては、すこぶるこれを制限しておるのであります。
港湾の
運営の面に関しまするところの
業務をば、現在の地方
海運局に置いて、そのまま残すといたしますれば、
せつかく管理主体をつく
つて、この
管理主体をして一元的に
港湾行政を取扱わしめ、これによりまして従来
港湾行政組織の非常に複雑でありました点を簡素化するという、
民間方面の非常な熱望は、とうてい望むことができないと思うのでございます。この点につきまして、昨年の七月二十九日付の
連合軍最高司令官、総司令部の覚書の二のC項におきまして、
港湾管理主体が
港湾運営の調整と監督をするために設けられるべきものであるということを指摘してあるのであります。またこの覚書に対しまして、昨年の八月三十一日の閣議決定に基きますところの、九月一日付の
日本政府から総司令部に出した書簡の中にも、その三項に、
港湾管理主体の任務の中におきまして、
港湾区域内の
ポート・オペレーシヨン及びターミナル・オペレーシヨンを監督調整することということが明示されてあるのであります。これがこの
港湾法をつくりまするところの基本
ともなるべきものなのであります。これに対しまして、一九四九年十二月十六日付の
連合軍最高司令官、総司令部のこの覚書の中におきましても、特に
港湾の
管理及び
運営に関しては、地方自治の機能を最大限に発揮せられるように
規定せらるべきものであると、こう立法上の注意が喚起されておるのであります。それにもかかわりませず、この
法案におきましては、以上の
趣旨が完全に盛られていないのであります。従いまして私
どもは、この
法案の第十二條にありますところの
業務内容の中に、さらに一、
港務局の管轄する
港湾区域内における
船舶入出港届の受理、錨地及び
船席の指定をすること、一、
港務局が管轄する
港湾区域及び臨港地区丙における貨物の積みおろし、保管、荷さばき及び
運送の
改善調整に関すること、以上この二点をばぜひ
とも挿入していただきまして、
港湾管理主体をして名実
ともに港の主人公として、
港湾の
施設と
ともに
運営の面の
業務をもなし、
港湾行政の一元化をはかるようにお願いしたいのであります。
次は第十七條の
委員の欠格條件でありまするが、この
法案によりますると、
国会の
議員または
地方公共団体の
議会の
議員及び
港務局の工事の請負を業とする者は、
港務局の
委員になることはできないことにな
つておるのでありまするが、教育
委員会法の第七條におきましては、
委員のうち一名は必ず地方
議会の
議員の中から選挙しなければならないということにな
つておるのであります。私
どもはここまでは言
つておるのではありませんけれ
ども、この
趣旨にのつとりまして、
港湾法におきましても、
港務局を組織する
地方公共団体の長が必要があると
認めるときは、
当該地方公共団体の
議会の推薦する
議員一名だけは任命することができるようにしたいのであります。
議員のうちから一名の
委員をも
認めないということは、この
法案に盛られておりまするところの、
港務局と
地方公共団体の間にいろいろのつながりがあるのでありまするが、それらのつながりをば円滑に処理するということに対して、大きな阻害を来すものと思うのであります。次にこの工事の請負を業とする者をば欠格條件としておるのでありまするが、
港湾と
利害関係を持つ者のつながりをここに遮断するということにつきましては、私
どもは賛成であります。もしもその
意味におきまして、工事
関係者をば入れないというのでありまするならば、
港湾工事よりもより以上
港湾に
利害関係を持
つておりまするところの倉庫業、沿岸荷役
業者あるいは
海運業者、これらはさらにその
委員から排除しなければならないと思うのでありまするが、一方は入れることができ、一方はこれをばのけるということにつきましては、この
法案に対しまするところの
利害関係を持つ者のつながりを断ち切るという
趣旨と、一貫しないと思うのであります。さらに
港務局が
港湾管理主体と
なつた場合の
委員に限りまして、
法案の第十七條の欠格條件があるのでありまするが——大事なところだからもう一ぺん申し上げますが、
港務局が
港湾管理主体と
なつた場合、つまり
ポート・
オーソリテイーと
なつた場合に限
つて、この
法案第十七條の欠格條件があるのでありまするが、もしこの
港湾管理主体に、第三十三條の
規定によりまして
関係地方公共団体の一つが
なつた場合、または自治法の第二百八十三條第一項によりまして、いわゆる一部事務組合を
設立した場合におきましては、やはりその
委員なり組会
議員というものに対しましては、何らの欠格條件がないのであります。この
法案においては、その点はさらに考慮されていないのでありまして、まことに、この三つの方式にありまするところの
管理主体に対しまして、一つにつきましてはこういう欠格條件があるけれ
ども、三つにおいてはそれが何らないというような実情にもな
つておるのであります。従いまして私
どもは十六條に次の一項を加えまして、それに関連いたしまして十七條をば次のように改正を願いたいのであります。つまり十六條の三項といたしまして、「第一項の
規定による
委員の内、
港務局を組織する
地方公共団体の長は必、要があると
認めるときは、
当該地方公共団体の
議会の推せんする
議員一名を任命することができる」こととするのであります。そういたしまして、教育
委員会法の第十條に示してあります
通り、十七條といたしまして、「
国会の
議員又は
地方公共団体の
議員(第十六條第三項の場合を除く)は、
委員を兼ねることができない」というように御
修正を願
つて、しかもその土建
業者だけをば欠格條件に入れない。入れるなら全部入れる。入れなけれれば全部入れないということに御
修正を願いた、のであります。
次は第五十
一條の問題でございます。これに関連して前も
つて申し上げますが、この
法案全体をながめまして、もしも
関係公共団体が、この第二章によりまして
ポート・
オーソリテイーを
設立するという場合、第三十三條によりまして、
地方公共団体の一つが
管理主体になるという場合、この
二つがありまして、この
関係公共団体の一つは、その前者をば指導し、他の一つは後者を指導するという場合におきまして、その話合いがつかなか
つた場合においては、どれによ
つてこれをとりまとめるかということが、この
法案には明らかにしてないのであります。第四條の
規定は
ポート・
オーソリテイーをつくるということが一応
関係公共団体の間に話合いがついて、そうしてつくるごとについてのその
内容その他につきましては、三項以下の
手続をとる。それに対して
協議が整わないという場合がいろいろあり、また
協議しなければならない事柄が載
つておるのであります。三十三條は
関係地方公共団体の一つが
管理主体になるということの
意見は一致しておる。そのいろいろな諸
手続、
内容等についてはどうするかということが書いてある。その根本の一つの
公共団体が
ポート・
オーソリテイーになり、一つの
公共団体が
管理主体になるということに
なつたときには、それはどれによ
つてそれをとりまとめるか。それがまとまらなければ、一歩も
管理主体なんというものは進行しないのであります。それだけを申し上げて第五十
一條に参りたいのでありますが、五十
一條は運輸大臣が重要
港湾に対して
港湾管理主体を
設立すべきことを、
地方公共団体に勧告することができる
條文なのであります。
関係地方公共団体は一九四九年の十二月十六日付の
連合軍最高司令官総司令部の覚書の二によりまして、重要
港湾につきましては、
港湾管理主体を定めなければならないのでありますし、なおさらにこの覚書四によりますれば、目下接收中の
港湾施設は、
港湾管理主体が
設立されるときに初めて解放されることにな
つておるのであります。その
手続をするにあたりましては、
関係地方公共団体の間に
意見が一致しなくて、
協議が整わないような場合におきましては、運輸大臣はもはやこの
管理生体をつくれという、こういう勧告ではなくして、第二條に示す三つの方式の
港湾管理主体の中のいずれか一つの
方法と示して、そうしてこの
港湾管理主体をつくれということが、勧告せられる公算がすごぶる大きいのであります。かかる勧告をするということは、
地方公共団体の自由
意思を尊重するというところの、同様十二月十六日の覚書の
趣旨に反することになろうと思うのでありますから、この第五十
一條の削除をばお願いしたいのであります。
次は
最後でありますが、五十八條第三項の問題であります。五十八條の三項は、これは
地方自治法の第二百十三條の二項の適用を排除する
規定なのであります。この
地方自治法の
條文では、普通
地方公共団体が條例できめるところの特に重要な財産または営造物を処分するにあたりましで、
当該地方公共団体の選挙人の投票において、過半数の
同意がなければならないことにな
つておるのでありますが、この
法案によりますると、この選挙人に與えられたところの権利をば剥奪しようというのであります。言いかえますと、普通
公共団体には、條例できめるところの特に重要財産または営造物の中に、この
港湾施設というものをば含めてはいかぬ含めてもこれによ
つて権利を失うというようなことにもなろうかと思うのでありまして、このことは地方団体に対しまするところの非常に干渉になるのではないかと思うのであります。従
つてこの
法案の五十八條の三項は、ぜひ
とも削除していただきたいと思うのであります。しかもこの
法案の第五條を見ますと、
港務局は公法上の法人ということにな
つておるのであります。この公法上の法人ということが、即
公共団体ということになりますると、
公共団体につきましては、この選挙することは適用されないことにな
つておるのでありますからして、従いまして、それもいたしませんからごの
條文は無用なものであると思いますからして、いたずらに
地元をば刺激するこのような
條文は、これは削除して
いただきたい。こう思うのであります。以上で終ります。