○林(百)
委員 私は本
法案について、次の諸点から行
つて反対したいと思うのであります。
第一には、本
法案の
趣旨でありますが、国際間における水路に関する情報の交換のために、モナコ国際人路局加盟の予定とありますけれ
ども、これがその筋の
許可とあります。その筋の
許可がどういう形でなされるかということが、
まつたく不明であります。これはもちろん極東
委員会の方針によりましても、また一九四五年十二月二十六日のモスクワ三国外相協定によりましても、
日本の国が
講和会議締結前にこうした国際
会議に参画することは、遺憾ながらできないはずであります。それをある特定国の要請だけで、
日本の国かそれに応じて行くということは、
日本の国とその特定国との間の、事実上の単独講和を積み立てて行くということに、客観的にはなると思います。そのことはかえ
つて日本の国の全面講和の道を妨げる結果になる。こういう
意味からして、第一には本
法案の
目的であるモナコの国際水路局加盟予定というようなことを前提としての本
法案については、反対したいと思うのであります。
それから第二点としましては、水路の測量あるいは海象の観測、あるいは水路図誌等、これらを将来お互いに交換し合うというのでありますが、
日本の国が現在置かれておるいろいろな情勢を判断し、ことに最近やかましくいわれておる
日本の国の軍事基地化の方向を考えてみますと、これが必ずしも
日本の国の平和的な海運業の発展ということだけでなくして、むしろこれを
日本の国の軍事基地化のために利用されるということも、必ずしも危惧ではないいというように思われるのであります。そういう
意味でわれわれは、この
日本の国の海域に関する水路の測量、あるいは海象の観測、水路図誌の作成、これらの国際的な交換というようなことも、
日本の国が全面的な講和を遂げまして、あらゆる国と友好的な
関係を結んだ後においてならばわかりますが、まだ
日本の国が占領下に置かれ、ことに最近
日本の国の軍事的な
性格、あるいは軍事基地化というようなことがいわれておる際に、こういう
日本の国の海域に関するいろいろな資料を交換し合うということは、
日本の国の将来の平和のためにならないというように考えて、この点からも反対するのであります。
それから第三としましては、この水路の測量実施のための障害物除去の権限を、海上保安庁がたしか持
つておると思うのでありますが、この障害物除去の権限を海上保安庁が持
つてお
つて、これを測定の障害物だとい
つて、たとえ定置漁業のいろいろな施設等を除去しろというようなことを一方的に与えられることになりますと、定置漁業に対して大きな影響を与えます。しかもこれに対する賠償の方法としては、
政府が一方的に賠償額を指定する。その賠償額に不服なものは裁判を起せといいますが、裁判を起して長日月を要し、ほとんど裁判が確定したころには、その補償が無
意味になるようなことになると思いますから、いわゆる水路の測量実施のための障害物除去の権限を
政府が握り、しかも除去することによ
つての補償を
政府が一方的に認定し、それに対する異議の申立ては民事訴訟によるというような方法では、十分国民の権限を保障することにならないことに定置漁業等については、重大な影響を与えると思います。この点からもわれわれは、この補償十分でないという点で賛成できがたいのであります。
また第四点としましては、この水路の測量実施の障害除去の点で、中小の港湾の修築というようなことも、非常に大きな制肘を受けて来るのであります。水路測量実施だからとい
つて中小港湾の修築等がいろいろの制肘を受けるということになりますと、これも
日本の国の平和産業の発展のために、大きな圧力になるというようにわれわれれは考えます。
この四つの点、第一は
講和会議締結前に国際的な
会議に参画するということが、事実上の単独講和を積み立てることになるということ。第二としては、
日本の海域に関する水路測量、海象の観測、水路図誌の作成等が、
日本の国の現在置かれておる国際的な環境からいうならば、かえ
つて日本の軍事基地化の資料を提供することになる。これもやはり全面的な講和を締結した後に、安心してなすべきである。第三としては、水路測量実施のための障害物除去の権限を
政府が握り、その補償については
政府が一方的に権限を持つということが、定置漁業法等に重大な影響を及ぼすということ。第四点としては、同じく右の水路測量実施のための障害物除去の権限を
政府が握ることによ
つて、将来
日本の国の中小港湾の修築等に大きな制肘を加えること、
日本の国の平和産業を圧迫することになる。この四つの点からい
つて、
日本共産党としましては、
水路業務法案に賛成できがたい、反対する次第であります。