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1949-11-29 第6回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十九日(火曜 日)    午前十時五十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十四年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出・衆議院送  付) ○昭和二十四年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣提出・衆議院送  付) ○昭和二十四年度政府関係機関予算補  正(特第一号)(内閣提出・衆議院  送付)   —————————————
  2. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) これより委員会を開会いたします。  総理大臣に対する質問を岡田委員にお願いいたします。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 総理大臣にお伺いいたします。終戰後すでに四年半近くになつておりまして、未だに講和会議が成立しておりません。いわゆる国際法上から見まして、戰争状態の終結にはなつておらないわけであります。併しながら、実際上この四年半の間におきましてですね、漸次占領下にありますけれども、いろいろ国際会議に出席し、或いは外国との貿易関係通商関係を確立することができるようになつて参りました。事実上の講和平和というようなものが回復されつつあるというのが現状であるのであります。ザ・パーフェクト・ピースの下における外交あり方というものがやはりなければならんと思うのであります。占領下にあるというので全然外交はないというようなことはないのでありまして、事実上のこういうふうになつて参りましたならば、その下においても外交というものがければならん。それに対しまして、首相はどういうふうにお考えになつておられるか、又その場合におけるところの外交あり方ということについてお伺いいたします。
  4. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) お答えいたします。これはいわゆる形式上の外交は御承知の通りできないわけでありますが、併し私は常に申しておるのでありますが、日々講和会議と心得て、そうして日本が国としても、国民としても民主主義に徹底しており、又経済も安定しており、その政界も安定しており、日本のすべての国情が安定しておると列国日本を見て、そうして国際団体一員としていいと見たならば、過分の待遇を與えることは勿論できないわけでありますが、その待遇を與えることが世界の平和を増進するゆえんである、又世界の繁栄を増進するゆえんであるから、一日も早く国際団体一員としてこれを迎えるようにという確信を與えることが即ち外交である。こう私は信じて、又日本として誠実に條約を守り、国際の責務を守り、国際団体として立派な資格を備えておるというこの確信列国に與えるということが、それが外交であると、こう考えてそういうつもりで以て外交の衝に当つておる。そうして事実上講和ができ上つたと同じような状態に段々導いて行く。例えば通商協定にしましても、その他の国際問題にしましても、日本が招待されてオブザーバーでもなんでも参加し得る機会には参加して、そうして機会あるごとに日本国情を説明するというふうにしたいと考えて、国際会議などの招聘がある場合には喜んで応じさせております。こういう気持であるということを御承知を願います。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 ザ・パーフェクト・ピースの下において、その国際経済関係が段々密接になつて行くのでございますが、その国際経済関係を更に密接ならしめて行くために、首相はどういうふうな方法をこちら側から積極的にお採りになろうとするつもりであるか。その点につきましてお伺いいたします。
  6. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは只今こういうふうな手段を採つているとか……。御承知通り外交停止状態にありますから、又仮になくても、こういう手段を採つておる。ああいう手段を採つているということを言いますことは、政府立場としてはできないのでありますが、殊に占領下において、或いは隠密の間に工作をしておるということは、国全体の利益の上から避くべきものと考えて、隠密の間には何もいたしておりません。併しする場合があれば、無論総司令部の了解を得ていたすつもりでおります。この点ははつきり私は総司令部の人に申しておるのであります。決して我々はダブル・ゲームはいたさないと言つておるのであります。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本ドイツと同じような立場におかれておる西独におきましてはすでにパリーにおける三国外相会議の結果、西独において、いろいろ賠償問題や、或いは商船隊の問題、通商官海外派遣問題等が、日本におけるよりも早く有利に展開されておるように私共は聞いておるので。あります。例えば過日新聞紙上に伝えられておるのでありますが、パリー外相会議の決定の実施について、西ドイツ政府と、英、米、仏三国の高等弁務官の間において、共同のコンミユニケを発表しておるのですが、これによりますと、工場解体を予定されておりましたところの人造石油であるとか、合成ゴムであるとか、鉄鋼関係の十八工場解体を即時停止する。或いは又外の大きな工場、その中には非常に大きな工場等も含まれている。かように旧来軍需工場として全然撤去すべきものとされておつたものさえ撤去中止になつているような状況でございます。日本の場合におきましても賠償撤去は中止されたというふうに言われておるのでありますけれども、どうもそれが未だ確定的なものになつておらんように私共は思つておるのであります。この賠償工場撤去は今日はつきりと中止されておるのであるかどうか。その点についてお伺いしたいと思います。
  8. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私も対独関係については新聞承知する以上に何らの情報を持つておりません。又情報を得る方法もないのでありますが、私の感じから申しますと日本の方が楽じやないか。と申しますのは賠償問題についてはイギリス、フランスアメリカなどの間に決して利害が一致しておらないように見えます。例えば英米等は寛大に行こうという気持は明らかに見えますけれども、同時にフランスというと、フランスは尚ドイツに対して危惧の念を持つてつて、そうして工場撤去の問題については、これは過日のパリー会議においてもこの問題が大きくなつてフランスが一方いろいろ故障を唱えられた結果それが決定しておらないように聞いております。これが外の国のことでありますから我々の関係するところではありませんけれども、日本の場合としては主として軍需工場、軍事に関係した工場が一応撤去目的物になつたのでありますが、これも段々緩和されて解除されつつあるように承知いたしております。解除されつつあるような現状であると思います。併し又利害関係を持つている国があつて、その国の同意を得る必要がありますから全部が同じ時期に解除するというところまでは至つていませんが、併し気持は、漸次解除され、指定されたものも大分解除されておりますというので、ドイツ状態はどうであるか、これは憶測だけに過ぎませんから、日本の場合においては私が初め想像したよりも余程寛大な措置が採られつつあると思います。ドイツ情報は知りませんからドイツと比較はできませんが、併し一部分考えて見ると、あれも寛大にして撤去は外してやりたいという気持はあり、それに対して或る国が異議を挟むというために未だ撤去はできないという実情であろうと思います。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 やはり同じような問題でございますが、この三国外相会議の結果ドイツにおきましては、商船隊を持つことを許されまして、遠洋航海用商船体も今度許されることになり、而も質物最高トン数は三千二百万トン、漁船が六百五十万トン、それから沿岸航海用船舶が二千七百万トンまで許されることになつております。又建造商船の数は全然制限を受けん。それから更に西ドイツ政府は三国高等弁務官の承認を受けて一九五六年十二月三十一日までに速力と大きさの点で今までの制限を超えるところの船舶建造ができる。こういうようなことになつておるのであります。この点におきまして日本から見ますというと、早く商船隊拡充について確定的な位地が與えられたように思うのであります。日本としましても、今日の状況からいたしまして一日も早く自国の商船隊拡充をしなければならんのでありまして、アメリカ方面におきましてもすでに日本商船隊を許すというような考えの方々もあるように聞いておるのであります。この点につきまして日本側といたしましては、一日も早く商船像を持つように政府の御努力を願いたいと思うのでありますが、これにつきまして総司令部側、或いはアメリカその他と政府はお話合いになつてそういう方向に進まれておられるか、その点をお伺いしたいと思うのであります。
  10. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 総司令部との話合いのことは相手方の都合もありましようから、ここで私が一人で申すことはできませんが、話合いはともかくとして、事実曾てこのトンネージについても、速力についても相当制限があつたが、この制限は廃止されました。それから又現に新造船に対して見返資金をこれに流用するというようなことも話ができておりますから、気持としてはこれは主としてアメリカ側米国政府のことを申すのでありますが、日本に新らしい船を持たせる。持たしてやりたいという気持はあるのであります。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に通商官海外派遣の問題でございますが、いろいろ伝えられておるのがまだなかなか実現できないようでありますが、これは日本の今後の貿易の拡張と関連いたしまして非常に重大なことであろうと思うのです。これは近くそれが実現できるのかどうか。その点につきまして首相の方に得られましたところの情報をお知らせ頂きたいと思います。
  12. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは近く派遣ができると思います。そう多数ではありませんが、近く二、三のところに取敢えず派遣するということに政府としては準備中であります。それは公然派遣してよろしいという通知は得ておりませんが、派遣されそうな見込でありますから、政府としては準備をいたしております。
  13. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 今回の補正予算公共事業費費用が二百六億円計上されてあります。来年度は一千億円でございますか計上されるように伺つておるのでございますが、その公共事業費の使い方につきまして、ちよつと総理大臣の御所見を伺いたいのであります。公共事業は御承知のように災害復旧とか、緊急止むを得ないものを先になさいまして、また国土の開発、資源の開発についてのことをなさいますのでございますが、一方国民のために保健衛生だとか、教育だとか、それから社会福祉など国民生活の要求を充足するところの工事もなさると思いますので、この際に総理大臣に、日本中にございます官公立病院でございますが、殊に只今荒れておりますので、抜本的に公共事業費を使つて改善なさる御意思はございませんかということをお伺いいたしたいと思います。と申しますのは、官公立病院と申しますと日本中に数百ございます。一時になかなか手が着けられないのでありますけれども、保健衛生、それから教育の面を担当いたしております現在の日本官公立大学病院でございますが、公共事業の面から見まして誠に大切であると思うのでありますが、あの大学病院の中へ一歩足を踏み入れますと、御承知のようにもう病気という災害にかかつて……一時避難したような病室状況でございます。その上に大学病院におきましては医療法によりますところの看護婦の数も置いてございません。定員法か何かも事務職員と同じように看護婦の数も切られております。そういうような悪い設備の上に人が足りないということで看護力患者に行き渡らないのであります。ですから、入院いたしますときはトラックに一杯荷物を積んで病院に持つて行く。持つて行ける人はよろしいのでございますが、持つて行けない人も何とか工面して蒲団を持つて行かなければならない。その上に看護力が足りないので病人看護をして呉れないの、家の人が附いて行かなければならない。殊に大学病院のごときは衛生の点にも研究しなければならないにも拘わらず、食餌を給食しておるところは極く僅かでありまして、食餌を出しておりますところのその食餌も、病人の口に合わないで、家の者が食べて又病人には特別に炊いてやらなければならないというような状況にございます。その費用も非常に大きいものでございます。病人一人一人の個人が持つておる費用は非常に大きなものでございますので、この際公共事業としての大学の大修理を一遍して頂いて患者食調理室を作り、煖房裝置も復旧させ、水道も水が出つ放しというところもございますので、そうしたところの費用を出して頂きたいと思います。又病室の壁も塗り替えて明るくして頂きまして、せめて病人なつたときだけでも、こうした気持のよいベツドの上に寢かせて頂くということはこれは贅沢でないと思いますので、そうしたベツド修理、寢具の調製その他を一切お国で賄つて頂きまして、大学病院に入りますと、文化生活がこれから教えられる、本当の療養生活はこれから、というふうに、設備を抜本的に行なつて頂くことができないかということを思いまして、このように国民病気をして苦しい思いをいたしました上、税金と言つてもよい、目に見えない費用を出さなければなりませんので、一つこの点総理大臣の御所見がお伺いしたいのであります。
  14. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) お尋ねの問題は私共も病院に行く度ごとに甚だ穢い。清潔の点について甚だ遺憾な点が病院にはある。それから研究の材料であるモルモットも買うだけの費用も出ておらない。それからベツドの数も足らない。いろいろ病院についても私も聞いております。又見聞もいたしておるのでありますが、今日までは御承知通り政府の財政として手が廻りかねましたが、今後は多少の余裕ができて、この方面費用を増すことができるだろうと考えております。又厚生省においてもその点については折角研究もいたしており、又多少設備も不十分でありますが、補正予算その他で組んでおるように私は承知いたしておりますが、詳細のことは厚生省の係官から御説明申上げます。
  15. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 只今大変総理から御答弁を頂きまして有難うございますが、厚生省方面大変厚生方面を担当しております省といたしまして勿論責任を持つておられるのでありますが私の只今申上げんといたしておりますところは、医育機関でございます大学病院のことでございます。教育をしなければならないということで、お医者さんの研究上にも非常に事欠くと思いますのでこの頃伺つて見ますと、大学病院で本当に学用患者というものは殆んどないといつてもよいくらいだそうであります。全部普通の患者が入つております。普通の患者も勿論社会保險を受けております患者が入つておるそうでありますが、いろいろ非常に不便を来しておりますので、先ず公共事業費の中の文教その他の施設費の中に幾らかございましたら、そうした方面から先にお流しして頂きたいということをお願いする次第であります。  それからもう一つお伺い申上げたいと存じますことは、この前の国会のときに、この予算委員会総理大臣にお伺いし、御答弁を頂いたのでありますが、実はこれは看護婦の問題でございます。先に第二回国会保健婦助産婦看護婦法が通りまして、そうして甲種看護婦になるには六・三・三を済みましてそうして三年間教育を受けることになつております。この六・三・三を済みましてそうして三年間教育を受けます学校に三人以上の看護婦の專任の教師が要ります。基礎医学には日本には随分立派なお医者さん方がおられまして、基礎医学の方には事欠かないのでありますが、臨床看護を教えます看護婦教員に非常に事を欠いておる。御承知のようにアメリカのロツクフェラーのお金を貰いまして五人とか十人とかアメリカへ勉強に参りますのでございますけれども、五人やら十人の先生を拵えましてもとてもとても事足りなくて、日本看護事業法律裏付をするということはとてもむずかしいことでございます。学校教育法にもございまして、大学の中にも別科を拵えられるようになつておりますのでございますので、この前の予算委員会国立学校設置法の中に医学部とか経済学部とかいうような学部と並んで看護学部とかいうものを作つて大学教育をして頂くということにお願いいたしましたのでございますが、そういたしましたら、この前のときは、既設建物を使つてやるつもりだという厚生省の御答弁を得たのでありますけれども、その現状を見ておりますと、既設建物と申しますと、澁谷にございます赤十字病院看護婦養成機関使つて先生養成をしております。今度赤十字病院で貸すことができないと申しますと、国立第一病院に移転しております。こういうように教員養成ということが非常に遅らされておるということは実に歎かわしいと存じます。普通の師範学校、今の学芸大学でございます。ああしたものと同じような資格のある学校をどこかに早く拵えて頂くか、それができませんければ大学学部の中に、大学日本は大変揃つておるのでございます、ちよつと設備をして頂いたらできますので、東京大学の中にでも教員養成所設備せられますようにお願いしたいのでございますが、この点につきまして総理大臣の御所見を伺いたいと思います。
  16. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 看護婦養成の問題につきましては尚当局で十分取調べるようにいたします。私も十分お答えするだけの資料がありませんが、尚お気付によつて問題の研究をいたしたいと思います。
  17. 小川友三

    小川友三君 対日講和條約に関する問題で総理大臣にお伺いを申上げます。吉田総理大臣日本の近代の総理大臣では大宰相の方に入る優秀な大臣であつて、而も外務大臣を兼ねていらつしやるのであります。たまたまこのときに講和條約が結ばれようとしておるのでありますから世界の目は吉田総理大臣の顔に集まつておるということは間違いなく言い得るのでありましてこの際総理大臣は御多忙でありますけれども米英諸国に條約が結ばれる前にお渡りになりまして何も話をしなくとも、吉田総理大臣の素晴らしい人格は非常な大きな結果をもたらす、こう本議員は固く信じておりますので、総理大臣は万難を排して頂いて、幸い副総理の林さんもおりますし、暫くお明けになりましてもそう差支なく国内問題はやつて行ける。又総理の幕僚には相当優秀な大臣が大小の差はありましてもいらつしやるのですから、どうか大宰相として米英に渡りましてやつて頂きたい、かように思いますが、それに対する総理大臣の、是非やりたいという御意見が出ると思いますが、御所見を先ずお伺い申上げます。
  18. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは私としてお役に立てばどこにでも参りますけれども、又相手国気持もあるので、今連合軍司令部として頻りに各方面講和が促進するように非常な盡力をしておられます。私が面の当り見聞いたしておることですが、更に私が出てその助けができるか、或いは又妨げになるか、これは私自身も確信がありませんが、併し参るとしても、相手国英米が招いて呉れないことには行くわけに行かず、只今のところは何もそういう考えはございません。それで国内が整頓して治安災害も安定し、その治安状態を認めて貰つて日本国は優に国際団体一員たらしむるに足る、或いは足らしめる方がいいというような確信を持たせるようにいたしたいと思つて、その方面に主として努力いたしておるつもりであります。
  19. 小川友三

    小川友三君 それから今日の新聞を見ましても、日本講和條約の結ばれる性格が、日本反共基地とするような性格が織込まれた條約案が進みつつあるように報道されておりますが、我が民自党の吉田内閣は、(笑声)容共でなくて反共性格でございますから、この点につきまして吉田総理大臣反共基地的性格を盛り込まれた條約が出ましても席を立つようなことは万一あるまいと思いますが、こうした性格のものであつても喜んで講和を結ぶべきであると本議員は信じますが、総理大臣の御所見をお伺い申上げます。
  20. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 講和條約については、私の始終申すことでありますが、何らの具体的の話、提議なり提案なりというものを日本政府に関する限りはまだ受取つておらないのであります。従つてその内容についてここに私見と雖も申述べるということはよろしくないと思いますから、講和條約の内容に対する問題については答弁を暫く延ばさせて頂きたいと思います。
  21. 小川友三

    小川友三君 吉田総理大臣内外新聞記者団の皆さんと今後活溌に会つて大いに話をするというような機会を是非、今までもそうやつていらつしやるように見ておりますが、内外新聞記者団総理大臣とたびたび会つて、そうして講和條約を結ばれる前に或いは日本の内政においてもいろいろ話をしたい、かように空気が動いております。そこで今後活溌に内外記者団会つて頂いて、そうしてどしどし所見を述べられまして八千二百万の同胞が仕合せになるような方向に最も早く持つてつて頂きたい。かように思いますが、又アメリカからも国会議員団が二回来られましたが、総理大臣が会つたようなニユースを聞いておりません。ですから向うの議員が来た場合でも、総理大臣は御多忙でもたとえ三分間でも会つて大いに普通の話だけでも結構ですから談話を交すというような機会作つて頂き、又米英人が参つた場合は、総理大臣がみずから進んで会おうじやないかということで大いに総理大臣である外務大臣の資産を最も活溌に発揮して貰いまして、そうして日本というものを諸外国に理解して貰うという機会毎日外国新聞にもラジオにも日本新聞にもどんどんと報道して貰う機会作つて明朗日本、丁度総理大臣の顏のように明朗な(笑声日本作つて貰いたい。こう思いますが、総理大臣に頼るより外ないのですから、現在の日本としてはどうしても吉田総理にがつちりやつて貰わなければなかなか仕合せになりません。それで総理大臣にかくお願いする次第でありますが、総理大臣のこの点につきましての御所見をお伺い申上げます。
  22. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 内外新聞記者には努めて会うことにしておりますが、最近外国から来る新聞関係の人は可なり多いのであるから、中には日本に対して余りいい感じを持つていない人もあるということも事実であります。そこで私の言葉がいろいろな、いい半面も生ずるでありましようけれども、悪い半面もあるということも考えなきやならないので、現にこの間参議院において私の申したいわゆる失言なるものが、私から言えば失言でないと思います。当り前の話を述べたのを、それを直ちに悪く海外電報をするというような向きもありますから、活溌に議論を討かわすということが、よいこともあれば、悪いこともあるので、私としては、成るべく信頼するに足るような人、或いは相当紹介状を持つておる人とか、そういうような外国新聞記者には努めて会つております。又愉快に話をしておりますが、責任の地位に立つておりますというと、只今申したように、申したことを曲解して電報を打つというような人等もないとも限りませんから、会つてはおりますが、多少用心をして会つております。この気持はどうぞ御了解願いたいと思います。
  23. 田村文吉

    田村文吉君 私は国の今後の産業政策の根幹の問題につきまして、一、二の問題を御提起申上げて、総理の御見解を承わりたいのであります。  連合国の援助により、又政府当局の御盡力でインフレも或る程度横這い状態に相成つておりますようなわけで、過日の御演説の中にも、今後は日本の復興についての構想を立つべきであるというように承つてつたのでありますが、そこで私は今後日本の再建には、次の三つの問題が日本の国策として考えらるべきではないか、こう考えておりますが、尤もいろいろの産業について、各種議論が行われておるのでありまして、又それぞれ重要なことには違いないのでありますけれども、余りに在来の計画経済のように政府各種のものに、そう補助をしたり計画を立て過ぎたり、厄介をやき過ぎたりするということは、却つて自然と伸びるものを阻止することになるのでありますので、私の申上げたいのは、国の法律として、国の政治として、或る程度まで触れなければならない大きな問題を三つ申上げて見たいと考えておるのであります。  第一番目は、食糧の自給自足の問題であります。この問題はどなたも食糧の増産について御異議のある方はないのでありまするけれども、ただ食糧を完全に、平年作において自給自足できる方針を立てるか、或いは精々余計穫れる程度で行くか、この問題が問題となると考えるのでありまするが、御承知のように、申すまでもなく、日本はいわゆる瑞穗の国で、風土の上から申しまして、食糧の増産、食糧の確保には大変恵まれた国でありまして、明治の末期までは、特別の凶作でもない限りは、日本食糧の自給ができておつた考えております。明治初年に、我我が二千万とか三千万とかいつた人口が、当時六千万にもなつておりましたが、食糧の自給ができておつたのであります。その後御承知のように、いろいろの事情で外国から食糧を取り、又外国食糧を、外地の食糧を取つてやらなければ外地も成立たない、というようなことから、自然と外地の食糧に頼るような状況になつてつたのでありますが、今日アメリカから好意的に受けております援助が、大部分は食糧になつておるのでありまするが、こういうものは、一日も早く援助を頂かなくとも、成立つようにするということが、即ち米国民の負担を軽くすることになり、又マツカーサー元帥の好意に報いることになりますので、これができないことであれば、これは止むを得ないのでありますけれども、過日も総理が本会議でお話しのありましたように、米国の農業の戰時中の非常なる発達等もお話があつたのでありますので、私は日本で、ここで本当に方針を立てて、先ず自給できる、平年作には自給できるというところまでやるのだという御決心をおつけになれば決して不可能のことではないのではないか、こう考えますので、この点先般農林大臣にも伺いましたが、どうもはつきりいたしませんので、精々食糧を自給するように向いたいという程度の御話でありまして、日本が、ここ二、三年のうちに必ず食糧を自給するというはつきりした目どが立つておりませんということは、今後の政府の政策を行う上から言つても、法律考える上から行きましても、非常に重要なことでありまするので、先ず第一に食糧の自給自足の方針を立てるか立てないかということになつていて、総理の御見解をお伺いしたいと思つております。
  24. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 戰後の状態から、その数年前において日本食糧が不足であつて、そのたためにいろいろな圧迫を感じたために、政府といたしましても、亦私が外務大臣就任の最も主なる問題は、国民食糧をどうするかという問題で、審さに艱難をなめたと申しても私は自分の気持から申すというと、非常な圧迫といいますか、危險を感じて、国民食糧が足りなくなつたという状態が生じましたそのときにおいては、一体国がどうなるだろうか、非常な危險を体験いたしたのであります。でありますから、どうか日本食糧だけは自給したい、自給の計画を立てたい、そうして国民食糧が確保せられた後においては、自然各種の問題が、社会事情も緩和して来るのでありましようし、食糧の自給ができればできるまで方針をとつてつて、そうして農業政策として一つの確定的なものを樹立いたしたいと考えて今政府、関係省を通じて頻りに農業政策確立、その半面には自給自足の目的のために或る計画を樹立したいという考え研究を進めさせるつもりでもあり、又進めております。
  25. 木下源吾

    ○木下源吾君 議事進行について緊急質問をしたい。
  26. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 発言中でありますから……
  27. 田村文吉

    田村文吉君 第二番目に私は重要なる産業政策として考えておりまするのは、林業資源の開発であります。在来この造林に関する問題は、治山、治水の問題としてだけ取扱われて参つてつたのでありますが、日本の林業資源は莫大な資源を持つておりまして、これも気候、風土の上からいつて、樹木の成長が大変よく行つておる。こういうわけであるのでありまして、現在三千万町歩あると申します林野のうち、仮に千五百万町歩に造林が完全に行われるといたしますと、一年に三億石の木材が得られるわけでありまするので、今日日本で使用しておりまする二億石を使いまして十分の有余ができて来るというわけであるのであります。殊に昨今工業資源としてこれを使用いたしますることに相成りまして、道が大変開けて参つておりまするので、今後の日本の大きな富として活用されるべきであると考えられるのでありまするが、然るに現在戰争中に伐りました後等で、百五、六十万町歩というものは無立木地帶に相成つておる。これは私共は戰争で国は破れたが、この上又国破れて山河ありというその山河までも形を変えて我々の子孫に引渡すということでは、減に忍びないことであるのでありまするので、この造林に対して如何なる対策が、一日も早く対策を立つようになりまして、この荒れた山野を治山、治水のためにも亦国内資源のためにもお考えになるべきではないかと考えるのでありますが、御見解を承わりたいと思います。
  28. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私といたしましては誠に御同感であります。治山、治水の方面からも亦国としての産業の上から申しましても林業の忽がせにできないことは御同感であります。ただ現在の状態においてお話もありましたが、山は荒れ、又林業から生ずる或いは農林省の林業経営につきましても相当まだ甚だ欠点が多いのじやないか、現に赤字が生ずるというような状態でこれをどうかしなければならんということは、政府一つの問題として、総合的に考えたいと考えて、治山、治水或いは電力の問題等を一括して総合的にこの問題を研究いたしたい。林業問題も考えたいと思つて進んでおるわけであります。
  29. 田村文吉

    田村文吉君 第三に私は、一番問題になつておりますのは電力の開発に関する問題でありまするが、これは未だにこの経営形態がお決まりになつておりませんので、この点が今後の電力開発に非常に心配になるのであります。年々恐らく一割ずつ増加して参りますので、七年のうちには電力は六百万キロの需要が起ることになります。そういうような状態でありまするのに、終戰後止むを得なかつたとは申しながら、今日まで方針が立たない、再編成の問題も解決が付かないというようなことで誠に遺憾に存じておるのでありまするが、余りこのことを私が総理に申上げると総理はお気に入らんか知れませんが、官営とか民営とかというと、官営は精々やめて民営にすると、こういうような御希望でありますけれども、電力事業のようなものはどう分割して見ても結局独占企業でありますので、こういう性質のものこそは国の資本で一つやるというようなことが避け得られないのではないかと私は考えておるのであります。そういう意味におきまして、この問題は今のように民営であつて官が非常にやかましく監督をしておるとこういうことになりますと、誰が一体責任を負うのか、責任の帰趨が明らかでない。これを野放図に民営に委せるということになりますと、これは又国民として電力のような大きな問題に関しては無関心であり得ない。どうしても或る程度の監督をする、こういうことになりますので、経営は民間人を起用してやつてもよいが、資本だけは国が持つというようにする。今日二百億あれば今日の発送電会社の株式は全部国家が買收できるのでありますから、その点についていま一度よく御考察あるべきではないかと考えておるのでありますが、御所見をお伺いしたいと思います。これで私の質問は終ります。
  30. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 電力の問題について官営可なりや、民営可なりやという問題も一つの問題として考えられますが、第一に日本発送電会社の経営をどうするか、これは近日政府の方針も決まるだろうと思います。それから又電力開発その他についてもこれが政府の事業としてやるがよいか悪いか、まあ電力委員会ですか……ができて頻りに研究いたしております。いずれそういう委員会の答申等を待つて政府も十分研究いたすつもりであります。
  31. 木下源吾

    ○木下源吾君 只今総理は先般の講和問題に関する本会議のいわゆる失言を失言とは認めておらないこういうお話でありますが、すでに本会議においては、増田官房長官を通じてこれは取消されておるのでありますが、この官房長官の取消をお認めになつておるかどうか、この点を一つお伺いしたい。
  32. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは明らかに取消しております。従つて取消した問題についでは、私はここには説明なり、弁明なりはいたしません。
  33. 木下源吾

    ○木下源吾君 併しあの問題が形式の上では取消しておるが、真意としては失言ではないと今総理が言われておるので、この機会においてあの発言中の取消した部分に対してその真意をもつと各国が了解が行くように一つお話しになることが適当だと考えます。総理はどう考えますか。
  34. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私は取消した問題については更に言葉を加えない方が国家のためと考えますから、幾らおつしやつても私は説明いたしません。
  35. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は三つの問題についてお尋ねしたい。  その一つは、申すまでもなく少くとも今後一ケ年以内ぐらいに日本講和の問題が議論の段階から現実の段階に入るようになりつつあるということを聞いており、この国会でも非常に熱心に講和の問題が討議されておるのであります。この講和問題については申すまでもなく安全保障の問題、講和ができた後の日本の安全をどうして保つか、こういう問題。もう一つは、講和ができた後の日本経済の問題があると思います。この安全保障については多くの人達が論議されましたから一応私は除きまして、講和へ臨む日本経済体制の問題、これについて総理大臣はどういうふうにお考えになつておりますか、それをお伺いしたい。
  36. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) ちよつと言葉が抽象的で、私には御質問の意味が分りませんが、どういうのでありますか。
  37. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは具体的に申上げます。只今国会外国為替及び外国貿易管理法案というのが目下審議中でありますが、これはいわゆるローガン構想に基いて今後日本貿易を活溌にして行く、それについては大体為替の割当というものを中心にしまして、あとは貿易を非常に自由にして行くこういう構想である、而もこの法案は大体国際通貨協定ですね。ブレントン・ウツズ協定、国際通貨基金或いは国際復興開発金庫或いは貿易憲章、こういうものに将来加入するということを予想して、前提として作られておる法案です。そうしますとこれは今後の講和後における日本経済体制をどういうふうに持つて行くかという問題と非常に重要な関連があるのです。そういう点につきまして講和の問題が段々に具体化するには安全保障の問題ばかりでなく、為替相場の問題……ブレトン・ウツズ協定を廃止すれば、為替相場の問題、あすこに加入すれば、日本は今後上下一割しか理事国の承認を得なければ為替相場を変更することができない。非常に窮屈になる。或いは関税の問題もあろうと思います。或いは又日本の通貨制度の問題、例えばドルにリンクするとか、或いはドル為替本位制度にするとかそういう通貨制度の問題も起つて来るのでありまして、講和への準備日本経済機構なり、経済体制、そういうものをどういうふうに持つて行くかということは非常に重要な問題である。そうしてそういう或る一定の方向が定まつて、今後そういう方向に努力するとすれば、日本政府経済政策が又日本経済というものがそういう方向に動いて行くわけであります。そういう意味でお伺いするわけであります。
  38. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 非常に高遠なお話であつて私においてここでこうであると申し難いのでありますが、とにかく貿易は自由にする。貿易を自由にするためには為替の問題が生じて来る。従つてお尋ねしたような現在法案を提出しておるので、これは差当りで将来はということはどうしても講和條約ができて、どういう態勢で経済問題なりその他が決るかという将来の問題でありますから、今日は私はここでお答えできないのであります。
  39. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 将来の問題でございますが、将来に或る一定の政策の目標を置いて現在漸次それに準備しつつある。例えば今度の外国為替及び外国貿易法案によりますと、輸入は非常に自由になつて来るわけです。輸出も自由になります。現在よりは非常に貿易が自由になつて、そうしますとこれが日本経済全体にこれまでと違つた非常に大きな影響を及ぼすわけでありますたとえば今後物がどんどん自由に輸入されますと、それは農村などアメリカの小麦が安く入つて来る。或いはこれは小麦協定に参加して行くとそういうわけで食糧海外から非常に安く入つて来ると日本の農村の方をどうするか、という大きな問題になつて来る。また今度のいわゆる日英貿易協定に基いてスターリング地域からいろいろなものが安く入つて来る。これを若し日本の政策として自由にどんどん入れるようになりますと、日本の国内産業でイギリスの製品と競争できないものがある。こういうものもどんどん自由に輸入を認めるとなると、日本産業において潰れるものが出て来る。そこで大体政府の方針はローガン方式に従つて今後どんどん自由経済方向に政策の重点を持つて行くとこれは総理もたびたび言われておる。そうして統制をどんどん撤廃して行くとそこに私は問題がある。根本的にお聞きしたいことは今政府はどんどん自由経済方向に政策の重点を置いて行つてそれが今後講和へ臨むところの日本経済態勢として今推進さして行くところであると思うのであります。これは私は手放しにそれで不用意にこういう單なる自由経済政策かいいんだというような單純な考えで統制をどんどん外して行つたり、そういう形が今後講和へ臨む日本の正しい経済の政策或いは経済の態勢であつたとしたならば、非常に大きな間違いで、日本経済は再建せられるどころかむしろ混乱する、破壊する。こう考えるので、総政の言われる自由経済理策というものについて今後どういうふうにお考えになり、どういうふうに運用して行くか、その点をお伺いしたいわけであります。
  40. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 今日日本としては学説とか、自由経済とか何とかという学説は別として、とにかく産業を興さなければならん。産業を興すためには貿易を奨励しなければならんというので、貿易を増進するということがそれが自由経済に持つて行くかどうかは別として日本としては貿易の伸張を図らなければならんときでありますから、貿易は成るべく自由にして、そうして発展の……できるだけ発展さしたい。但し、であるから何もかも自由というものには依然行かないわけであります。何となれば日本が買えるだけのものしか買えないのでありますから、また売れるものだけしか売れないのでありますから、野放しにしてどんどん出したい。ところが出したいということは相手方のある話で日本が買う方が沢山あつても、日本はポンド資金、ドル資金によつて制限されるのでありますから、若し自由にした結果日本産業が萎靡する、或いは農民が困る。そういう状態が来ればそのときに考うべきものであつて、多分こうなるからといつて仮定を土台として将来の政策を決めることはできないと思います。でありますから、私は今現在のところは日本貿易を進展させたい、そのために為替問題も貿易問題……法律を作らなければならんというので提出をいたしておるわけであります。
  41. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 お話は分りましたが、私達は生活して行く場合に貿易を殖やすということはこれは、今後の日本経済自立にどうしても必要だと思うのであります。併し政策の重点は日本国民がみんな考えておることは、我々は今後どういう生活水準になつて行くのであろうか、どういう生活水準、それで又段々失業者がなくなつて、どういう雇傭水準、エンプロイメントをどういうふうに調節して行くか、こういうことが政策の中心である。それに従つて貿易なり生産なり、そういうものを決めて行くべきであつて貿易が我我の生活や雇傭を決めるのでは逆になると思う。そこで今後どんどん自由貿易になつて行くと、そういう場合にこれを自由貿易に持つて行きますと、日本のプランニング——計画がないと国際がバランスは、貿易は振興したが、貿易とか国際バランスに日本国民の生活水準が見離されてしまう。生産も萎靡してしまう。我々が一番危惧することは、吉田内閣になつてから日本国民生活の水準をどこに持つて行くか、或いはエンプロイメントをどういうふうに完全にするか、そういう目標は全然なくなつて来たように思うのであります。自由経済によつてそれぞれの作用によつてアダム・スミスの見えざる手によつて、自然に経済を調節して行くということ、こういうのでは非常に物足りない。我々は吉田内閣になつてから非常に前途が不安心で目標がない。一体今後総理日本国民生活水準をどういうところに持つて行こうとされるお考えでおるのか。これは放任されて自然に決まるようなところにしか決まらないというようなお考えなのか。経済政策のその努力目標をどこに置かれるか、これをお伺いしたい。
  42. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私がここで以て学術論を討わすようで甚だ時間がないので甚だ困るのでありますが、水準をどこへ持つて行くかというなら成るべく高いところに置きたいと思います。こうお答えするより外ないのであります。
  43. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは別な問題をお伺いします。シャウプの税制改革の問題、シャウプ博士がシャウプ勧告案の大綱を発表されたとき、多分御殿場においでになつて増田長官を通じて、これは朗報中の最大朗報であるとこういうことを総理は言われたと思うのであります。現在ではやはりシャウプ税制改革案は現在においても朗報中の最大朗報であるという若しお考えならば、このシャウプ勧告案を誠実に実行される御意思があるかどうか、この点を御伺いいたします。
  44. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私は朗報と申したのは最大朗報だという意味ではなかつたのであります。趣意においで私は妥当だと思う。これによつて減税ができたり、或いは日本の租税が少くなるかどうかは存じませんが、従来無理があつたと思います。戰争の遂行のために拂われたのですが、苛斂誅求というか私は苛斂誅求と言つたのでありますが、随分無理があつて国民が困つてつたことは事実であります。これに対して一応の基礎を與えた。尚この上にシャウプの勧告案の改良を加える余地は尚あるでありましようが、一応これで以て税を確立して、その課税方法についても改めて行きたい。これは最大とは申しませんが、一つの朗報だと言つてもいいだろうと思います。
  45. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 お答え、並びにその御意思は分りましたが、実際税制改革案を実行したのは本年度の今の補正予算、これは今審議しております。それがどうも私はシャウプ税制改革案の趣旨を十分に理解していない。むしろそれと逆である、こう思うのであります。というのは、シャウプ税制勧告の非常に重要な点は税の合理化です。税を公平にかけるということでありますが、今度出された予算案を見ますと、決して公平でないのです。例えば勤労所得税の方は、これはむしろ増税になる。そうして勤労所得税以外の業種所得の申告納税の方は、これはむしろ自然減收として税をとらない。而も物品税を非常に軽減したといいますけれども、内容を段々見ますと、自家用自動車の物品税十割を三割に減らしておる。或いは貴金属、真珠、そういう贅沢品の物品税を非常に下げておる。ところが例えば子供の学用品とか、或いは一般大衆が使うトランクとか、或いはそういう日常生活品については据置いて置く。こういうような税制改革はちつとも私は公平でないと思うのです。むしろシャウプ税制改革案に反しておる。而も政府は前に公約されておる。実質的に減税されるということを公約されておるが、ところが実質的にちつとも減税になつていない。(「その通り」と呼ぶ者あり)この点もう少し首相はまじめにお考え頂きたいのです。
  46. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私もまじめに研究して実質において減税になると思います。少くとも例えば免税点を引上げるとかというようなことについても相当つておる筈だと思います。詳細なことは一つ大蔵大臣議論を願いたいと思います。
  47. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 実は給與ペースの問題ですが、たびたび今他の委員から御質問があつたのですが、簡單に一つお伺いしたいのです。それは給與ベースの改訂は、この補正予算によつて改訂すると、非常に国会提出に困難を生じ、予算編成に混乱を生ずるからしなかつたが、二十五年度の予算の場合においては、相当考慮されておるのでございますか、その点一つお伺いして置きたいと思います。
  48. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これはしばしば私も参議院その他で考えを述べましたが、給與ベースは御承知の通り昨年の暮においても相当議論があつて研究もし、遂に幾らか、六千三百円ですかに落ち着いたのでありますが、この給與を動かすということになるというと、物価その他に非常な影響を及ぼすから、成るべく給與ベースは動かしたくないと思います。併しながら減税その他で実質においては相当の手当が増すようにいたしたいと思いますけれども、一旦給與ベースを動かすというと、いろいろな方面に影響を生じますから変えたくない。こういう考えで進んでおります。
  49. 岩間正男

    ○岩間正男君 只今の木村委員の質問に対する首相答弁に関連して。一点質したいのであります。  昨日の首相答弁では、講和問題に対して全面的講和が望ましいということが言われておるのでありますが、併しそれに対して果してそのような全面的講和を推進するような方向に政策が進んでおるかどうか、こういう点、例えば貿易政策を見ますというと、木村委員から指摘がありましたように、為替レートが御承知のような形であり、更に国際小麦協定において、今後の輸入というものが、こちらだけの一方的なものになる。それから昨日私の質問しました日英協定、日英貿易協定のごときに至つては、輸入の義務が非常に謳われておるが、輸出に対する保証というものがないとこういうような形で以て、非常にこれは片貿易というような形で、今後或る特定国との貿易というものが進められるという形になつておる。国内態勢について見ても、これを裏付けするような労働政策が採られておる。そうして一方において資本の擁護ということが非常に強化されておる。結局このような政策の遂行の仕方は、單独講和を推し進めて行く、なし崩しにこの講和をやつて行くというような、吉田内閣の政策の現われであるということがはつきりしておるというふうに我々は考える。全面講和が望ましいということは口先だけの話であつて、それを本当に裏付けるところの政策が着々これに伴つて行かなければ私は何ら首相言つておるその努力が実現されておるというふうには考えられないのでありますが、首相は果して全面講和が望ましいと言つておるその声明に対する実践を今の政策の中でやつておられるかどうか。尚只今答弁によりますと、講和が決まつてから経済政策を更に考えるということでありますが、決してそういうものではなくて、経済政策が講和性格というものを決定するのだということを我々は言いたいのでありまして、こういう点からいいますと、現在の着々と準備されておる政策そのものがはつきりと講和性格を決定すると考えるのでありますが、この点について総理大臣はどういうようにこの点を説明されるか。
  50. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 政策についての御批評は自由であります。我々のやつておる政策が單独講和の方に向いつつある。全面平和を欲していないのだということを裏付けておるか裏付けておらないかは、御批評は御自由であります。併しながら政府として、私として全面講和ができたらば結構だと思うのであります。又それに対して裏付がないとか何とかお話がありますが、今日は我々は裏付をするような自由をまだ持つておらないのであります。(「ノー、ノー」と呼ぶ者あり)日本の独立が回復されて、日本経済が自由になつてこそいろいろな政策も考えられるのでありますが、今日は抽象的に世界日本を以て全面講和をしたり、或いは国際団体一員にすることがよい、世界平和のためであり、貿易のためであり、繁栄のためである、こう考えさせることが第一に努むべきものだと私は考えておるのであります。又日英通商協定にしても、或いは日本の輸入だけがよくあつて、輸出には不利だというようなお話がありますが、これはおかしな話であつて、輸出入は互いに今日は殆んどバーター・システムであります。日本からして売りたいことは売りたくあつても、相手方が買うだけの資金を持つておらない限りは、バーター・システムのような線でありますからして、輸出入は平均をとらなければ、輸出もできなければ輸入もできないということになる筈であると思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
  51. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 一時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩    —————・—————    午後二時二十二分開会
  52. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) これより委員会を再開いたします。薪炭需給調節特別会計につきまして、予算につきまして農林大臣から御報告があります。
  53. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 薪炭特別会計の経理につきまして一応御報告申上げたいと存ずる次第であります。  御承知下さる通り特別会計は昭和十五年の後期に始まりまして今日まで継続して参つたのでありますが、その間戰時状態でもあり、或いは風水害等の関係もあるのでありまするが、何分この間の経理が非常に薪炭が欠乏いたしまして、どうでもこうでも早くこれを入れなければならないというような立場から、その生産方面につきましても、非常手段を講じます等いろいろの施策をその当時に継続いたしておつたわけでありまするが、而もこの経理がこの間に一回の棚卸しもやつておらないのであります。勿論会計検査院も年年検査はせられたのでありまするが、それは帳簿上の検査であつたんだろうと思いますが、そういう関係もありまして、而も内閣は十一この間に変つておるのであります。私、就任いたしまして、この特別会計が非常に赤字になつておるということを承知いたしまして、是非ともこれは速かに整理をせなければならない。もとより事務当局といたしましてもその整理の進捗を図つてつたことは勿論でありまするが、司令部等の関係からも至急に農林大臣責任によつて早く整理をすべしという指示もありますので、折角特別会計の経理を急いでいたのであります。この内容を観察すればする程複雑になつておりますので、このまま事業を継続いたしておりますと、ますすま損失を深めるということを考えましたので、当時七月の三十一日を以て一応特別会計を閉鎖いたしまして、その機能を停止し、そうして、專ら清算に従事をいたして参つたのであります。この間の今日まで農林省といたしまして調査をいたしました損失というものが、昭和二十三年末までに累計いたしました損失が、二十三億八千余万円あるのであります。これはこの清算の上におきましては赤字と考えられるのでありますが、尚この特別会計は、申上げましたように決算の整理を進行中でありますので、はつきりとこれが赤字であるということは理論上申上げられないのでありまするが、尚この他に一般の生産者に対して支拂をしなければならない、いわゆる政府の義務を負わされておりますものが約二十三億一千八百万円ばかりあるのであります。又卸売業者等に対して政府が債権として持つておりましたものが二十九億六千余万円あるのであります。そういう関係でありますので、ここに赤字としてこの特別会計を整理いたしますと、これらの債権債務というものの支拂義務或いは取立ての権利というものが非常に薄らぎますので、取敢えずこの赤字と考えらるべき二十三億八千余万円、そうして支拂いしなければならないところの二十三億一千八百余万円というものは一応一般会計から繰入れいたしまして、この経理を急いで出しまして、そうして清算を急ぎましてこの結末を早く完了いたしたい、かように考えまして一般会計から五十四億七千万円の繰入れを要求いたしておるようなわけでございます。勿論今日まで十ケ年の間でありますので、その間についていろいろこの赤字に対して不正問題があるというようなことも噂され、又想像され、又検察方面においても調査を進めておるような状態でありますので、これがはつきりいたしますればその責任を正すことは勿論でありますが、政府といたしましてはこの七月末を以て会計を打切りまして、この製炭業者に対して非常な迷惑を掛けておるのであります。それで一日も早くこの二十三億一千万円というものを支拂わなければならぬのでありますが、これが債権が都合よく返つて参りますればこの債務も履行できるのでありますが、なかなか長い間でありまして、この政府の債権を持つております卸業者にしましても、それが又下の小売業者に債権として移動されておるというような複雑な状態でありますので、急速にこれを回收いたしたく努力はいたしておるのでありますが、相当の時日を要すると存ずるのであります。併しながらいつまでもこういう経理を遷延することは許されませんので、速かにこの債権債務を整理いたしまして、そうしてこの今まで累積しておりまする赤字が果して本当の赤字として処分すべきものかということもおのずからそこに決定されるわけでありますし、又今一応五十四億七千万円をお借りいたしまして、そうしてこの間から收入いたしましたものは又これに返納するという手続をとることは当然でありまするが、一日も早くこの経理をいたしたいとかように考えておる次第であります。尚七月末を以て薪炭特別会計を打切りいたしましたために製炭者に対して、突如としての処置でありましたがために非常な迷惑を掛けておることは非常にお気の毒な状態になつておりますので、併しその当時政府が地方長官に指令いたしました製炭の予定量から政府の買いました残り、どれだけ品物があつたかというようなこともなかなか調査が困難でありまするが、併し政府により買い得られない薪炭の生産をいたしておつて、そうして政府が途中で、この買入れを中止したということの損害に対しましては、政府としても責任感じておるわけでありますから、十分愼重に考慮いたしまして適当な処置をとりたいと、かように考えておるわけであります。尚この年々の損失等につきましては事務当局はより詳しくお話を申上げさすことにいたしますが、大体薪特別会計の今日の状況は以上お話を申上げた次第であります。
  54. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 次は齋藤国家地方警察本部長官よりこの件に関し御報告があります。
  55. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 薪炭の取締につきましては、国民の生活必需品の大きな部分を占めておりますので、警察としても以前から意を用いておつたのであります。過去における薪炭に関係いたしまする犯罪件数は相当多数の件数を算しておるのでありますが、この薪炭特別会計自身に関係いたしまする不正が過去においてどれ程ありましたか只今過去の検挙の実績を集計中でありますので、只今ここで全部を申上げることができないのは甚だ残念でありますが、ただ昨年の四月から今日までの短期間の間を急いで実績を調べましたところ、この政府木炭の横領でありますとか、或いは空供出でありますとか、そういつた事柄に関係いたしまする犯罪は相当数でございます。この金額は約二千万円程度考えておるのであります。最近この特別会計の欠損の様子が我々にも分るような状態に相成りましたので、その数字を見ますと、まだ警察の方で今まで検挙しないこれらの今申しましたような空供出でありますとか、或いは横領でありますとか、空輸送でありますとか、検査員と結託して不正とかいうものが尚相当未検挙のままにあるのではないかという気が相当いたしますので、農林省と連絡をいたしまして、地方におきましては木炭事務所と警察が連絡をいたしまして過去の不正の点は一つ力を入れて調査をするように只今力を注いでおるような次第でございます。今までの大体の様子と今日の我々の考え方を一応御報告申上げました次第であります。御質疑がありましたらばお答えいたします。
  56. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 次は会計検査院第二局長小林義雄君。
  57. 小林義雄

    ○説明員(小林義雄君) 薪炭需給調節特別会計につきまして、今まで会計検査院で調査した結果を御報告申上げます。  今お手許へ印刷したメモみたいなものを差上げますが、それによりまして大体申上げたいと存じます。二十三年度末におきまする薪炭需給調節特別会計の損失は、農林省林野庁で作成した貸借対照表によりますと、前年度からの損失が一億四千百万円、本年度分損失が八億一千九百万円、合せて九億六千一百万円となつております。それに対しまして二十三年度末に薪炭の帳簿上の現在高が四十九億六百一万円となつておりますが、その中には現物不足が十四億三千九百万円ございますので、それを引きますと正当な現在高は三十四億六千六百万円となります。その内訳を申しますと、現物不足するものの原価が十億二千七百万円であります。それに対する需給調節特別会計令第十七條による評価益が二億八千万円、小計十三億七百万円、一そのうち右の外誤つて高く評価したというのが一億三千二百万円でございまして、合せて十四億三千九百万円ということになります。それからその外に二十四年度の過年度支出になつておりますものがありましてそれは二十三年度の債務として支出すべきもので、支出未済繰越として計算書に計上していなかつたものにつきまして林野庁の証明書類によりまして調査いたして見ますと、五億五千六百万円ありました。これは二十三年度の損失に加算すべきものである。以上の一、二、三を寄せましてこれが第四項にありますように二十九億五千七百億円、これだけが二十三年度末の純損失でございます。ただこういう損失が出たのがどういう原因であるかということでありまするが、二十九億五千七百万円は総利益から総損失を差引いたいわば純損失でありまするので、この会計がこういう赤字を出したという原因を探ることは相当困難なわけでありまするが、今その主なものだけを探求して見ますと、(一)にありまするような理由で、予定外の経費を支出したもの、それから大きく(二)としてありまする予定收益に対する收入減によるもの、それから(三)にありまする薪炭の予定減耗率を超えた亡失による損失、それから(四)といたしまして二十二年度債務として支出すべきものであつて支出未済繰越として計上していなかつたものを二十三年度で過年度支出した分、それから(五)としてこれはダブるわけでありまするが、十四億三千九百万円というものが同時に損失の原因でもあると、こういつたようなものを考えまして三十六億八千万円というようなものがこれは損失を起した原因の主なものと考えております。今の現物不足の点につきましてでございますが、五項のところにございますように、本会計におきまする物品は昭和二十二年の五月新院法ができまするまでは委討検査ということで取扱つて参りました。又会計検査院の予算及び当時の定員を以ていたしましては全国に散在する薪炭を棚卸しすることは事実できませんでしたので、本会計の在庫品について農林当局の証明書を真実として処理して来た次第であります。従いまして、この現物不足のものは、形式上二十三年度に生じたことになつております。ただ現物が二十二年度以前に生産地の木炭事務所から発送されたことになつておりまするのに、それに対する消費地木炭事務所からの領收書が現在までに到着していないものがございます。これは木炭事務所におきましては着地の事務所からの領收書が到着しませんと、発地木炭事務所ではその帳簿の現在高から落さないのでありまして、中にはよく調べて見れば、実際その炭は、もうとつくに配給されているというものがあるかも知れませんが、とにかく帳簿上には現物不足となつておるものでございます。そういうふうなものが、この二十年度、二十一年度、二十二年度に跨つてあるのでありまして、それを現在の価格で評価いたして見ますと、四億一千三百十四万三千円ということになります。でありまするから現物不足のうち、先程申しました十三億七百万円から四億一千三百万余円を差引ますと、二十三年度の亡失による二十三年度の損失額は八億九千四百万円ということに相成ります。  もう一つ、この薪炭需給特別会計令第七條によりまして、在庫品の評価益の問題でございますが、年度末の正当な在庫品と、先程申上げました正当な現在高は三十四億六千六百万円だと申しましたが、それに対しまする評価益が十億六百万円ということになつております。この年度末在庫品は滯貨などのために品質が不良となつているものが少くないということは、二十四年三月大消費地における会計実地検査の際に認めたことでありまして、又現に林野庁の二十四年度処分計画によつて見ましても、公定売渡価格に対し二割乃至三割程度の値引を以てその全量を処分しようとしておられまするので、この在庫品につきまして、二十三年度末において十億六百万円というような評価益を出すということは少し無理な数字であつたと認められるわけでございます。これは将来売つて見ませんければ正確なことは分らないのでありまするが、少くとも年度末において、こういう評価益を出したことは無理ではないかと、かように考えておる次第でございます。あらましでございましたが……
  58. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 次は中央経済調査庁次長奥村重正君。
  59. 奥村重正

    政府委員(奥村重正君) 経済調査庁といたしましては、昨年の末行政監査の一部といたしまして、薪炭需給特別会計の監査を実施いたしたのであります。その一応の結論を五月に取纏めまして関係機関に送付いたしたのであります。薪炭会計の取扱に対しまして一つの参考資料を提供したいと思つておりますが、そのときの状況只今会計検査院から御説明になりましたが、大同小異と思いますので省略さして頂きたいと思います。大体二十三年度の末におきまして、約三十六億円の赤字ということに相成つております。大体以上の通りでありまして、又お尋ねがございましたら申上げます。
  60. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 右四氏の御報告に対しましては、小委員会の申合せによりまして、藤野委員より一般質問をされ、その後詳細につきましては小委員会において質問されることになつておりますから、委員各位の御承諾をお願いいたします。
  61. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 只今の大体の報告によつて了承したのでありますが、更に二、三質問を申上げて見たいと思うのであります。薪炭需給特別会計へ今回繰入れられた五十四億七千万円の算出の基礎がどこにあるのであるかということ。次には昭和二十四年度予算補正の説明によつて見まするというと、本繰入による同特別会計の赤字は殆んどその全額を消すことができるのみであるのであります。そういたしますというと、五十四億七千万円を繰入れられるのは赤字を消されるところの目的であると考えられるのでありますが、そういうふうなのであるかどうか、これをお伺いしたいのであります。
  62. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。先程御報告申上げました通り、赤字として二十三億何千万円、又二十三年度において九億万円という計算上における不足額を生じているのでありまして、これは一応赤字として考えられるのでありますが、先程も御報告申上げました通り、今、内容の整理に着手いたしましてこれを進行いたしているのでありまするから、二十三億万円と仮にいたしまして、それが果して真の赤字であるか、或いはこれが長い間の棚卸しもせずして参りましたものでありまするから、決算の時代に行かなければはつきりとこれだけが赤字ということは決定できないのであります。従つて赤字の性質は勿論持つているのでありまするが、整理決算の過程におきまして、これだけの金がはつきり赤字であるということは断じ得られない性質とかように考えておりまして、五十四億七千万円を一時繰入れまして、そうしてこれを整理いたしますが、併し先程も申しました通り、今後の取立てということによりまして、これらの金が入金することによつて、これはお返しできる、こういう性質でありまするから赤字と認められまするけれども、まだ決算までは至つておりませんので、真の赤字として繰入れたということにも言い得ないのではないかとかような考え方を持つているわけであります。
  63. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 只今の説明によりますというと、今回の繰入は赤字を補填する目的ではないというようなことであれば、これは次にいろいろ質問もいたしたいと思うのでありますが、又二十四年度予算補正の説明によつて見まするというと、未拂金の支拂及び薪炭証券の償還のためと総合予算均衡の目的から五十四億七千万円を一般会計から薪炭需給調節特別会計へ繰入れようとするものであると、こういうふうに説明にあるのであります。衆議院の予算委員会の薪炭特別会計の小委員会の池田委員長が本月の十六日に植原予算委員長に宛てた報告書によつて見まするというと、本年の十二月末と明年の三月末とに薪炭証券が五十四億七千万円償還するものがあると、こう書いてあるのであります。そういたして見まするというと、五十四億七千万円の薪炭証券を支拂つたならば残りはないじやないかということになつて来るのであります。この点について御説明をお願いします。
  64. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 現在清算に関係いたして支拂を請求いたしておりますのが、十六億程あるのでありますが、尚これを調査いたしますれば二十億ぐらい程度に至るのではないかと思うのであります。五十四億七千万円という金がたまたま同じような数字に出ましたので、これは一時この五十四億七千万円というものの赤字を消すというふうに解釈されるのでありまするが、この赤字を消すという意味でなしに現在今清算中にありまして、そうしてこれらの債権債務を整理するということを目途といたしまして、現在経理上必要な金として五十四億七千万を借入れる。こういう措置にいたしたのであります。
  65. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 只今の説明によつて薪炭証券を償還するのみじやない、未拂金があるからこれは支拂うのだ。こういうふうな明確なる答弁を得まして了承したのでありますが、私は今大臣がお話しなさつたように生産者、集荷業者及び運送業者等に対する薪炭代金、手数料、運賃及び買入れ、並びに代金支拂い遅延等のために生じた金利、保管料、手直料、減耗等に対する損害は速かに支拂うべきものであると考えるのでありますが、若しこの予算が通過をいたしましたならば、農林大臣はいつ支拂われる予定であるか。支拂われるところの予定時期を承わりたいと思うのであります。
  66. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。生産者に対しましては只今藤野委員のお述べになりましたこの予算案を御議決下さいますならば、速かに政府の債務を果したい、かように考えているわけであります。
  67. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 どうか速かにお支拂いをお願いしたいと思うのであります。  次に政府は農民に薪炭を生産させ、その生産した薪炭は政府以外には売ることはできない、こういうふうにして置きながら突如として八月以降は薪炭の買入れを停止せられたのであります。この点については農林大臣は善処するというようなことをお話しておられるのでありますが、私は当然政府がこういうふうなものに対しては拂うべきものであると信ずるのでありますから八月一日現在において生産者及び集荷業者が手持ちしているところの薪炭については、これが処分について今農林大臣がおつしやつたように、政府において善処せられると同時に、これから生じたところの金利、保管料、手直料、及び減耗等に対する損失相当額は夫拂金と同時に政府が支拂わなくてはいけないと思うのであります。又農林大臣も支拂うとおつしやつたのでありますが、これも本予算が通過したならば直ちに支拂われるところの意思であるかどうか、これをお伺いしたいのであります。
  68. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。当初御報告の中に申上げました通り、七月三十一日に打切りまして、それがために生産者に非常な迷惑を掛けましたことは政府も認めておることでありますので、これに対して十分愼重な態度を以て研究して善処いたしたいと思つております。何分にもその数を把握するということがなかなか容易なものでないと考えますので、この予算の執行と相伴つてこれに対する処置をするということを今お答えできませんが、政府といたしまして、中途において特別会計を打切つた。それがために今まで規定いたしておつたものを政府が買い得なかつたがための損失ということも十分了承されますので、愼重にその調査をいたしまして、善処いたしたい、かように考えるわけであります。
  69. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次にいろいろ世間の風評を見まするというと、未收代金の取立てが緩慢であるという評判であるが、この未收代金の取立てに対して政府は如何去る対策を採つておられるのであるか、承わりたいのであります。
  70. 三浦辰雄

    政府委員(三浦辰雄君) お答え申します。現在未收になつておりまする二十三億余の回收につきましては、七月以来その個々の相手方につきまして、毎月の返済計画作つてお互いにそれを守る、そうして若しできん場合においては、関係重役の連帶保証でそれを守る、こういうふうにして、個々の相手相手につきましてその確認をいたしまして、それに基いて現在その回收に努めておるような状況でございます。
  71. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 農林大臣の明快なる答弁によつて、私などは安心したのでありますが、この予算案が通過したならば、速かに私が要望いたしたところの金額を御交拂いになるように要望するのであります。又未收金の徴收については、徹頭徹尾あらゆる方法を講じて速かに回收せられんことを要望いたします。
  72. 岩間正男

    ○岩間正男君 只今の藤野委員の発言は小委員会の代表質問とみなし難いと思う。この点は小委員の諸君も同感だと思うのでありますが、個人的な資格で発言されたものであると確認せられんことを発言いたします。
  73. 田村文吉

    田村文吉君 地方財政の問題につきましてはお尋ねをいたしたいのであります。それは先般大蔵大臣にお尋ねいたしましたシャウプ勧告によりまして、明年の一月一日から入場税は十割にする、それから不動産取得税はこれを廃止するというような勧告を国民の全部が実行されるものとして期待をいたしておるのでありまするが、今国会もすでに一日しか余しておりませんので、その法案御提出も未だないようであります。これはどうなさる御予定でありまするか、第一にお伺いいたしたいのであります。
  74. 小野哲

    政府委員(小野哲君) お答えを申上げます。只今田村さんから御質問がございました不動産取得税の廃止並びに入場税の軽減に関しましては、仰せのごとくシャウプ勧告書によりまして明年度よりこれが実行を勧告されておるのでございます。政府といたしましては諸般の経済取引の実情等を考え合せまして、又各方面の御要望にも副いたいと存じまして、地方税法の一部を改正する法律案をこの臨時国会に提案いたすべく所要の手続を履んで参つておるのでございます。然るところ関係方面におきまして有力な意見も起つてつておりますので、更に折衝を継続いたしまして、これが実現を図りたい、かように存じておるのでございます。ただ只今田村さんが御指摘になりましたように、今期国会も会期が極めて切迫して参りましたので、今日の段階におきましては、この臨時国会に提案をいたしますことは遺憾ながら困難であろうと存ずるのでございますが、更に折衝努力を継続いたしまして、事情の許す限り通常国会の早期において提案いたしたく存じておるような次第でございます。
  75. 田村文吉

    田村文吉君 それと関連いたします問題でありまするが、今のシャウプ勧告によりますと、不動産取得税の廃止並びに入場税の軽減は、他の地方税法の改正と相俟つようにも相成つておるのでありまするので、その他の不動産税の改正、或いは附加価値税の創設等の問題がすべて実施に移されなければ、入場税や今の不動産取得税は軽減或いは廃止ができないとお考えになつておるのでありますか。その点をはつきりして頂きたいと思います。
  76. 小野哲

    政府委員(小野哲君) お答えいたします。只今田村さんの御質問にございました、或いは附加価値税の創設であるとか、或いは新たなる意味での不動産税の設定等がなければ、不動産取得税の廃止或いは入場税の軽減を行わないのかというような御質問であつたように存じまするが、政府といたしましては、実情等を十分に勘案いたしまして、附加価値税、或いは不動産税の創設があるまでもなく、不動産取得税の廃止、或いは入場税の軽減を早目に実行いたしたいという考えを持つておりますがために、相成るべくはこの臨時国会法律案の提案をいたしたいというので準備を進めて参つたような次第でございます。
  77. 田村文吉

    田村文吉君 その点は了承いたしましたが、入場税のごときは今のような経済状態でありますると非常な不景気で、或いは自然に税政は減るのではないか、反対に入場税の十五割を十割に下げてもその減つた程度ぐらいまでのものはむしろ増徴できるのじやないか、こういうような考え方もあるので、国民はすでに余りにシャウプ勧告を信じておりまして、一月からは必ず入場税は十割になる、不動産税はやめられるというふうに大部分期待いたししておるのでありまするので、この点につきまして只今の御言明を実行にはつきりと移して頂くことを希望いたして置きます。  次にシャウプ勧告案によりまして今後も改正さるべき地方税のうちの不動産税でありますが、この不動産税に対しては新たに評価されたものに対して一分七厘五毛は明年度は先ず徹底的に徴收するということが勧告されてあるのでありまするが、御承知のように不動産税は在来の土地家屋に対するだけのものと異りまして、今まで考えておらなかつた機械設備等が入ることになりまするというと、工場でも沢山持つた小さな町は殆んど工場だけが市税を負担するというようなことに相成りまして、殊に一分七厘三毛という数字でありますると、非常に大きな財源に相成ることであります。これらは幸いに企業が復活して隆々盛えておりまするときでありますればよろしうございますが、利益も何もないのに国税の三分を支拂つた上に尚一分七厘五毛を支拂わなければならんというようなことになりますることは、企業を危殆に陷れる虞れが多分にあるかと考えられるのであります。又先般大蔵大臣は再評価はこれを強制するかしないか決まつておらん、成るべくしたくない意向でおられるという答弁であつたのでありますが、若しそれが行われませんということになりまするというと、明年度臨時に決められる二百倍の五倍、つまり土地家屋に対しては一千倍というものの一分七厘五毛ということになるのでありますが、機械その他の設備についてはその評価する方法が立たないだろうと考えておるのでありまするが、尚不動産税の場合におきまして、利益を生む虞れがないのであるから、美術品、骨董品等については課税しないということでありますが、今度のシャウプ勧告にそういうことも書いてありまするが、私共は不動産税であるということは一種の財産税であるように考えられるのでありまして、さようの場合に利益を生むことのないものであるからというので、美術品、骨董品等は課税の対象にならなくて、生産設備のあるものだけに課税するということは、今日の国民感覚の上から言つて、何かしら割切れないような感じもいたすのであります。以上のようなわけで、不動産税に対しては多分の疑問を持たざるを得ないのでありますが、政府当局はどういうふうにシャウプ勧告を実施に移されようというお考えでありまするか、一応承つて置きたいのであります。
  78. 小野哲

    政府委員(小野哲君) 只今不動産税の問題につきましての御質問でございまするが、仰せのごとく国民経済が目下安定の途上にありますような際でございますので、シャウプの勧告に基きまして地方税制の諸般の改正をいたします場合におきましても、無用な混乱を生ずることは極力避けなければならないと存じます。只今御指摘になりましたごとくに、来年度から実施されようとする不動産税或いは固定資産税と申してよいかと存じまするが。この税の取扱方につきましては、いろいろと論議の余地もあろうかと存ずるのであります。御指摘のごとく明年度一・七五を普遍的にこれを課税して行こうというふうな場合におきましての影響等につきましては十分に考慮を廻らさなければならない問題点があるだろうと存ずるのでございます。特に資産再評価の問題もいよいよ具体的に日程に上つて来るような状態でございますので、これらの点も利用いたさなければならないことは申すまでもございませんが、土地家屋については、差当つて法定の賃貸価格を利用するというふうな方法等も考えられておりますので、これらの不動産の正当な評価という問題につきまして、この点につきましては十分な配慮をいたさなければならないと存ずるのでございます。この点につきましては正しく御指摘の通りと存じます。政府といたしましてはシャウプ勧告書が発表されまして以来、地方税制の画期的な改革に対処いたしますために、目下各方面から意見を徴しまして、これが運営につきましてはできるだけ工夫を凝らしまして、先程申しましたように不測の混乱を生ずることを極力防止して参りたいという考えの下に、目下検討を加えているような次第でございます。
  79. 木下源吾

    ○木下源吾君 この通りで、とても小委員を入れてもこれで余りひどいから一つ皆出るまで待たれたらよろしいと思います。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  80. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 速記を止めて。    〔速記中止〕
  81. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 速記を始めて下さい。
  82. 田村文吉

    田村文吉君 もう一つ附加価値税の問題についても一つお伺いいたしたいのでありまするが、附加価値税は新らしくシャウプ博士の構想によつてできて来ておるのでありまするが、その考えの方の中には、いわゆる工賃或いは労務費というようなものは当然経費の中から差引いた計算になるわけでありまするが、この労務費が一種のやはり昔の取引税のように商品全般にかけられる経費の中に入ると見ていいわけなんでありまするが、そういうようなことに相成りまするというと労務者を多く使つておりまする荷役業者、交通業者等におきましては、この費用を莫大に負担しなければならず、割合いに労務者を使うこと少くしてそうして大きな商売をし、大きな経営をやつているようなものは経費の負担が少くなる。こういうように相成るかと考えられるのでありますので、この附加価値税につきましては非常に世論囂々たるものがあると考えているのであります。要は不動産税、或いは固定資産税、或いは付加価値税にいたしましても、これが外国のようにそれぞれの資産が正当に働いております場合ならばよろしいのでありまするが、今日のインフレ下にありまして、まだ財界が安定いたしておりませんときに多数の中小会社、中小企業はその利益を出すことに困難しておりますような状況下に、財産税的の、又営業税的の、又取引高税的のものを今日おかけにならなければならんということは、非常に矛盾した実情に相成るかと考えるのでありまするが、この点につきましてシャウプ博士の勧告は政府としては全面的に取入れてその方針でおやりになるおつもりでありますか。然らずして国情によく合うようにして、或る程度までこれを是正して国情に合うようになさるお心持でありますか、お伺いいたしたいのであります。
  83. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) シャウプ博士とこの問題につきまして大分議論した関係上、私から便宜上お答え申上げます。中央地方を通じましての根本的改正といたしまして、私はシャウプ博士の勧告は適当な考え方だと考えております。従いまして土地、家屋のみならず固定設備も入れたいわゆる不動産税的の、直接税的の物税を置くことは適当であろうと考えます。その場合に土地と家屋と固定資産だけに私は限るべきだと存じますが、これは又実情を見まして、普通の営業用資産を入れるかどうかという問題については検討いたしたいと思います。私の今までの考えでは土地、家屋、固定設備、こういうふうに考えております。従いましてフィックスという言葉を使つておりますが、家具什器のごときものはこれには入らないと考えているのであります。  次に附加価値税でございますが、この点につきましては可なり議論をいたしました。ちよつと速記を止めて下さい。
  84. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 速記を止めて。    〔速記中止〕
  85. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 速記を始めて。
  86. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 私はこの問題は世界でまだ施行した例のない税制でございますので、我が国の実情に副い、而もその他の税との関連を考えて検討して行かなければならない重大な問題だと思います。どうもこの頃の税に関しまするあれは、シャウプ博士の考え方にそつくり持つてつて自分で計算をしておる。そうして自分で苦労をしておる。こういう例が多いのであります。法案を国会で御審議願つておるのですから余り実業界の人が取越苦労をなさらないように私は願いたいと思うのであります。税率なんかの問題にいたしましても、土地、家屋の評価をどうするかという問題、固定資産の評価をどうするかによつておのずから〇・七五%とか一%とか決まるのであります。問題は今年地租家屋を合せまして百四十四、五億だと思います。これは天体固定資産を入れてそれが五百二、三十億にしようというのでありますから、課税標準が殖えて来れば税率は少くなる。皆さんの計算によりますと今までの地租家屋税の何百倍ということで、非常に御心配になつておるようでありますが、総体の税收入というものは抑えられております。それ以上は地方財政がふくらんでも困るのであります。その点は一つ政府の方としても案を練つて提案し、又皆さん方に十分御議論を願つて行きたいと思うのであります。私の見通しといたしまして附加価値税も御承知の通り四百数十億の前の事業税の代りのものとして採るのであります。そう負担が重くなつておるということはないと思います。又負担が非常に重くならないように地方財政においても緊縮して頂く。国民の負担の適正を期するようにやつて行きたいと考えております。
  87. 田村文吉

    田村文吉君 只今大蔵大臣から御答弁を頂いて有難く思いましたが、ちよつと伺いたいのですが、シャウプ勧告に日本の固定資産の再評価によつて殖える額が一兆二千億という数字が出ておつたのでありますが、專門家の計算によりまして少くともその倍ぐらいになるのじやないかというようなことを計算いたしておりまして、従つて固定資産の再評価を若し調整される場合における税率は高いじやないかという一つの根拠としてそういう思惑が話されておりますが、大体シャウプ博士の数字は大蔵当局は正当な数字と御解釈に相成つておりますかどうか、第一に伺いたい。  第二に只今お話のありました地方財政の枠から抑えて行くから大丈夫だというお話でありますが、都市によりましては固定資産を増加しまして、その他によつてシャウプ博士はこういうところまで行つているのでありますから、大体のその枠まで取つてもいいじやないかということで、不当の仕事が殖やされるようなことを実は懸念されるわけでありますが、その点について心配がないという点がはつきりいたしますれば私も大いに安堵して可なりだと考えておるのでありますが、どういう方法によつて地方財政の膨脹というものを抑えられ得るのでありましようか。その点についてはつきりした御所見があれば伺つて置きたいと思います。
  88. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) お答え申上げますが、シャウプ博士の資産再評価に当りましての増加額は一兆億円と計算されておるようであります。従いまして六%として六百億、次年度は三百億、二年度、三年度が百五十億ずつになる、こういうことになつております。併し私の見るところでは一兆億やそこらではございません。七月一日現在の固定資産に卸物価指数を乗じましたものにつきましては一兆や二兆ではないと思います。個々の会社をとりましても、発送電なんかになりますと、発送電と配電会社合わせて三千四五百億円になります。日鉄なんかでも三四百億円になる。こうやつて見ますと、一兆や二兆では問題にならぬと私は考えておるのであります。従いまして一応シャウプの物価指数によつてやりますが、ここにお話申上げましたように、強制しないと申上げました。強制はいたしません。最高限は決めまして、あれにあります陳腐化の程度につきましても、具体的な基準を委員会を設けて余りに評価増をするというようなことを抑える、こういうつもりで行きたいと思つているのであります。  次に地方税の問題でシャウプ博士にこうなつているからこれだけ税を取るというようなことは、これは地方の議会で十分論議を願うより外ないと思います。政府といたしましても或る程度制限とか、或いは協議を受けるというふうな制度を置かなければならぬのでありまするが、とにかく大体の税率なんかというものは、調査が進みますにつれて指示できると思うのであります。何と申しましても、やはり地方自治を強化するという線に沿つて行きます場合に、余りに国が干渉することも良し悪しで地方の県会なり市町村会におきまして、今後は十分今までに数倍増して負担の問題をいろいろ頭において議論して決めて行かなければならぬ。政府といたしましては、一応シャウプの税率に拘わらず地方の財政状態から一応の指示をいたしたいと思います。
  89. 田村文吉

    田村文吉君 資産の再評価を強制したくないということが先般大臣答弁にありましたが、この意味は、若し或る企業者が自分の資産の再評価を欲しないという場合には、自由に再評価に応じないで置くという御趣旨ですか。
  90. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 私は強制はしないけれど、やることについては皆さん今回やらなければ後はできませんぞ、こういうことで行けば……、そうして又各業態におきまして倍数も違つて来ると思いますが、おのずからそこで平均が取れるのではないかと考えております。
  91. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 先ず第一に大蔵大臣は財政演説で補正予算編成に当つては、来年度に亘る我が国の経済情勢の見通しを立て、これに基いて来年度予算と一貫した構想の下に作成した。こういうふうに言われておりますが、来年度に亘る我が国の経済情勢の見通し、これについて先ずお伺いいたしたいのです。どういうふうに見通されましたか。
  92. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 今年当初の予算は相当緊縮したものでございました。インフレを收束するためには、ああいう措置が私は一番いいという考えの下にやつたのであります。従いまして本会議での御質問のように、デフレか安定恐慌じやないかというふうな議論もあつたのでありますが、私はそう見ておりません。急激に止めたために、或る程度の摩擦はありましようけれども、これからどんどんよくなつて行く、正常な安定状態に向つて行く、こう考えております。来年度の経済界は今年よりも余程よくなつて来ると思う。又予算の編成におきましても、よくするように予算を編成いたしておるわけです。
  93. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 よくなつて行くというお話ですが、具体的にどういうわけでよくなつて行くか。来年度予算については我々極く概略しかその数字については見ませんが、来年の予算においても相当デフレ的な要因があると思うのです。例えば旧債の償還五百億もありますし、円が一ドル三百六十円、これが相当まだ問題であろうと思う。日本に対してデフレ的な影響を與える。それから価格調整費のいわゆる補助金の撤廃、更に資産再評価、こういうエレメントを入れますと、輸出貿易を盛んならしめるためには、相当広汎な合理化その他によつてコストを下げなければならない。そういう問題と絡んで、私は決して来年度の経済を楽観できませんし、むしろ更にデフレが深刻化するのではないかと思うのです、今のような予算編成であればです。更に又今度はいわゆるローガン構想によつて相当貿易について日本経済は変化して来ると思う。その来年まで見通されたということは、これはまあ非常な御努力だと思うのですが、我々としては今大蔵大臣が言われたような抽象的なことで楽観はできないのですが、もう少し何故来年度はもつと安定化して行くか、そういう点について具体的に御意見を承わりたいと思います。
  94. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 来年度の予算ができますると、はつきりすると思いますが、今年は財政の緊縮が相当強くなりまして、債務償還なんかにいたしましても、年度別で見ますと、私は正確に申しますと、六百二三十億の債務償還ではないかと思います。来年度におきましては、大体債務償還は表面は五百億を出しておりますが、復金のいわゆる元本回收等がありまして、債務償還と見るべきものは大体三百三四十億円くらいとしまして、今年よりは余程債務償還を減らす考えであります。而して予算の枠にいたしましても、大体六千六百億程度でございまして、補正予算を入れました今年の予算よりは余程少くなりまして、国民の負担も少くなるわけであります。而して又歳出の内容におきましても、公共事業費千億円程度入れるとかいろいろな復興的な考えを折込んでおるのであります。又見返資金の問題も、今年ば御承知の通りに直接投資に余り行かなかつた。間接的な投資に向けておりますが、来年度におきましては、相当の直接投資も期待し得るのであります。大体私は今年よりは余程上向きの復興の状態が現われて来ると考えております。貿易の問題も、私はローガン構想等は貿易振興策であつて、今までの貿易よりよくなると考えております。
  95. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 貿易振興策、ローガン構想について貿易振興策だからよくなると言われましたが、これに基いて今外国為替及び外国貿易管理法が提案されておるのですが、あの委員会でいろいろ質疑して見ますと、これからの日本経済は非常な重大な変化が来るのじやないかと思います。というのは輸入の方を相当自由にして行く、そうなると国際物価によつて非常に今度は影響を受けるわけでしで、大体今後の政府経済政策も、これは通産大臣もしばしば言われているように価格のファンクションによつて経済の調整を図つて行く、こういうお話なんです。そうしますと、国際物価によつて日本経済が非常に左右されて行く。そういう影響を受けて行くと、如何に日本側でいろいろな施策をやろうとしても、それが十分に行かない。殊に今後自由に外国のものがどんどん入つて来るとなると、物によつては、殊に農村なんか農産物価が安くなつて来て、相当悪い影響を受けますし、工業方面でも、産業方面でも、安い物が入つて来れば、相当又現在と違つた整理その他も出て来るのじやないかと思うのです。そういうわけで、貿易振興策と言つて、簡単に私はその影響を考えることはできないのじやないかと思いますが……
  96. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 木村委員は悪い面ばかりを御覧になつておるようでありまして、輸入が自由になつたからといつて、何も不必要なものを入れるのじやない。閣僚審議会におきまして、三ケ月ごとに計画を立てまして、そうして品目につきましての措置をして行くわけであります。米などがどんどん入つて来るといいましても、只今のところ来年度の計画は、主食は三百四十万トン、豆類を入れまして三百七十五万トンでありまして、この計画をいたしております。それ以上に入つて来るようなことはございません。そうして三百四十万トンの主食のうちでも、九十万トンは米であるのであります。従つてこれはスターリング・エーリアの方からの輸入も予定いたしておるのであります。今までのような占領軍の純然たる管理貿易よりも、我々の創意が十分入りまして、今度のローガン構想によるこの措置は明るいものであると言わなければならんと思うのであります。私はいい材料であると、又お考え願えば分るのでありますが、この三月、四月頃の日本の明るさと今の明るさをお考え下さいましても、国際的にも国内的にも余程よくなつておると思います。ただ問題は、インフレの收束を急激にやつたために、これから起るべき施策に対してどういうふうな措置をとるかということが問題なのです。その措置におきまして、ローガン構想なり、或いは今後の財政政策を御覧下さつたならば、私は木村さんは十分お分りだと考えておる次第でございますが、とにかく明るくなつて来つつあるということが言えると思うのであります。
  97. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これは議論になりますから止めますが、次に税の問題についてお伺いしたいと思います。  今度の二百億の減税、これは大蔵大臣は税法上の税減と言われておる。ところで御承知のように、税法上で減税しても、実際上にそれが減税になるかどうかは、これは又問題だと思う。実質的に減税になるかどうか。私は今度の二百億の減税は、ちつともこれは実質的な減税にならない、特に勤労所得税については実質的な減税にならないと思う。自然増收というものを相当見込んでおられますが、私は勤労所得税について自然増收というのはおかしいと思う。主計局長から、物価のCPIの上り方よりは賃金の上り方の方が少い。CPIの上り方が大きいから、やはり実質的な自然増收になるというお話だつたのですが、実際その実質賃金を見ても、そんなに上つてはいないのです。下るか或いは低迷状態ですね。実質賃金はちつとも上つておらないと思う。それにも拘わらず非常な自然増收を見込むというには自然増收ではなくて、増税だと思う。殊に申告納税の方について今度は当然減收を見込んでおる。これは何故自然減收を見込んだかという質問に対しては、実績によつたと言うが、併し実績によつたという場合に、これは申告者が申告を少くして、これを怠つた。そうしてどうしてもこれを納めない。そういう実績に基いてこれを実績として、そうして後税を取らないことになると、これは非常な問題になる。若しか勤労所得税においてそういうことが起つたら納税しない。そういうことで今度実績として、余り納税されないから、その実績に基いて勤労所得税を今度は減らして行くと、こういうふうになつたらこれは非常な問題になると思う。私は実績を基にした源泉課税の方ですね、あれの方の減税、自然減收というものは、これはおかしいと思うのです。この勤労所得税と源泉課税の方の自然増、自然減については非常に不自然なところがあると思うのです。この点大蔵大臣はどうお考えになつておりますか。
  98. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 勤労所得に対しまする源泉徴收の所得税の増加は予算を組みますときに、昨年の十一月のベースで組んでおつたのであります。その後名目賃金は上つて参りました。今の税法を適用いたしますると、ずつと殖えて来ておるわけであります。税法上増税とか、減税とかいう問題は、十万円なら十万円の所得の人が、なんぼになつておるか、これによつて議論しなくては増税とか、減税と言うことはできんと思う。国民所得の変化があつて、増減があつて、それを増税とか、減税とか言うべき問題ではないと私は考えておるのであります。財政学上は私はそういうふうに取扱つておると思います。それから申告納税の方の減收を見込んだのは実績によつた。その実績は所得の実績によつたのであつて、申告の実績によつたのではないのであります。よろしうございますか。申告の実績によつてつたわけではない。だから農業所得者については当初は四百九十七億円見こんでおりました。農業者に対しましては、その後災害とか、或いはいろいろな調査をして見ますると、これぐらい減があるということは所得の増減の実績によつてあれしたのであります。申告が多いとか、少くないとかいう問題ではない。法人の方はどうかと申しますと、法人の営業の実績を見まして、飽くまでこれは所得実績であるのであります。勤労所得の方は非常に増收になる、或いは個人営業の方が非常な減收になるということは、産業構成が変つて来たり、或いは所得の状況が変つて来るからであります。例えば法人か殖えておる。個人が多くなる。個人を法人にすることも考えられる。こういうようないろいろな場面があるのでありまして、私は今の所得の自然減、自然増は適当なものと考えております。
  99. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣の御答弁は私はごまかしだと思うのです。今例えば勤労所得者で一定金額の者がその金額が多くなつて税が多くなれば税が多くなる。これは当り前だと、こうおつしやるのですけれども、実際の税負担というものは負担率によると思うのです。例えば現在の月收五千円の人がこれは夫婦者で子供二人、税は九十一円です。その負担率は一分八厘二毛です。ところが今度の改正案によつて收入が、一万円になつたときに物価が騰貴して一万円になつたとする、その場合改正税法では税は八百円だ。この八百円の税金の負担率は八分であります。そういたしますれば税の負担率は上つて行くのです。これは増税であります。というのは物価が騰貴したに拘わらず、税制を変えないから負担率が重くなる。これは当然の増税でありまして、若しか物価騰貴に比例してそうして税制を変えれば負担率は同じことになるのであります。そういう意味でこれは増税である。物価が騰貴するにつれて賃金べースが上つて行く。それにつれて税が上つて行く。その物価騰貴をアジャストしなかつたならば増税になるのは当然である。そういう意味でこれは増税です。だから自然増收だとおつしやるけれども、単に自然増收ではなくして、今の税法を物価騰貴に合せて当然変えるべきを変えないで自然増收を見込んだのは、これは明らかに増税である。ところで今度は業種所得が、今所得の増加に基いてそうしてそれが予定よりも業種所得の方が少いから自然減收になつたとおつしやいますが、今の業種所得の計算方法が一番問題だと思う。一体どういうような方法によつて業種所得をお調べになるのか、それが私は問題だと思う。業種所得の査定方法ですね。あれに非常な問題があると思う。そういう欠陷がある。例えばこれは一つ々々のケースを寄せ集めて作り上げた業種所得の調査だと思う。これは決して私は公正なものじやないと思う。従つて公正でない調査に基いて、そうして特に業種所得が少いからこれは自然減收にした。こう言うのは私は正しくないと思う。その二点について大蔵大臣の御説明では納得できない。
  100. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 私は増税ということと増收ということとは区別して考えております。国民所得の増減によりまして、増收、減收があるということは、私の考えでは増税ではないのであります。法律的に個々の人の負担につきまして現行税法をどう動かすかという場合においては、増税とか減税という言葉を私は使つておるのであります。これは言葉の問題でありますから、木村さんとは意見の違いだろうと思います。これは外の例をとつて見ましても例えば酒を沢山作つた。そして收入が上がる。で、このときには私としてはこれは増税ではなくて、増收だと考えます。こういう場合があります。酒を百万石作つて例えば千億円の税收がある。そのときに一石当りの税率を少くした。結果において百万石の酒が、米を引当てて百五十万石作つた。この一石当りの税率を引下げたことを私は減税したと言うのであります。あなたは、米が沢山あるのだから酒が多くなつて税收が上つたから、それは増税だ。こう言われるのでありますが、私はそうは考えていない。今までも政府は議会でそういうふうに答弁いたしております。増收と増税と、減收と減税という問題ははつきり区別すべき問題だと考えております。  第二番の申告納税につきまして公正なものでないということがありますが、これはなかなか困難であります。今大蔵省でやつておりますのは、物価がどういうふうに動くだろう、こういうこと。従来、こういう物価のときにはこれくらい上つた、こういう情勢のときにはこうなる、階級別がどう動くか、こういうところから推算をいたしておるのであります。勿論自然の増收見込がありますから、自然の増減のあるのは当然であります。私は今のやり方が公平とか不公平の問題ではなしに、なかなか困難で、できるだけ実態に副うような、見方としては今のやり方が適当ではないかと考えております。
  101. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今の酒の造石のことは勤労所得税の場合には適当しないと思う。大蔵大臣は財政演説におきまして補正予算の主根とするところは、シャウプ勧告の措置に則つた国民負担の軽減の一部を本年度内において軽減する。国民負担を軽減するのが本当の減税だと思うのであります。ところが、今のお話の税法上の減税では、国民負担の一部の軽減にならないのであります。どちらの減税であるか、この点お伺いしたいのであります。
  102. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 具体的の例をとつて見ますと、所得の動かない人につきましてお考え下さいましたらお分りになると、こう思います。
  103. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは更に伺いますが、今度物品税につきまして、細かい資料を要求しておりますが、今まで提出された資料によりましても、この物品税の軽減を以て勤労者の税負担が軽減するということは絶対に言えないと思うのであります。それで物品税の負担軽減を以て例えば補給金制限による価格騰貴を吸收するとか、運賃の値上げによる負担を軽減するとか、いろいろ言われておりますが、物品税の内容を見ますと自家用自動車とか、或いは貴金属とか、或いはゴルフの道具とか或いは真珠とか、そういうふうな贅沢品の軽減が非常に多いのであります。そうして、本当に国民の生活に影響するものについては、一部減税はありますけれども、その他については据置きが多いのであります。従つて單なる物品税の軽減額だけを見て、これが国民負担の軽減になるということは言えないのであつて、それは非常に、物品税軽減によつて恩恵を蒙る人が非常に違うと思うのです。これは私はちつとも軽減にならない。そういうふうに思うのですが、この点どういうふうにお考えでございますか。
  104. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 自家用自動車とか、ゴルフの道具だけおとりになるようでございますが、紙を安くしたり、そうしていろいろな缶詰、食料品、筆とかいろいろな、国民生活の実態に副うものは相当安くなつておるのであります。例えば物品税のうち、メリヤスは全部廃しました。又ポマードとかいろいろ我々の身近なものにつきましては減税をいたしております。従つて、ゴルフ道具とか、これで勤労大衆の減税になるか、こういう議論では行かないのであります。全体を御覧下さいまして、而も真珠や自家用自動車やこういうものを、減税の金額等をお考えなつたならば、私は勤労大衆にも相当減税になると言えると思うのであります。
  105. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 今、まだ要求してある資料が全部出て来ませんけれども、その他に非常に沢山あるのです。それで、こういう際に何故そういうものについて特に、税率も亦軽減率も、自家用自動車なんか十割から三割下げておる。何故そういうものについて、或いは又賛沢品に類するようなものについて、こういう際に特に減税をしなければならないのか。そういうところで減收になる分を、更にもつと国民生活に必要な方面において更に大きく、私は金額は小さくても、そういう考えで減税して行くべきものと思うのであります。そういう贅沢品に類するものを非常に大幅に減税しておる。これは私は適当ではないと思うのであります。
  106. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 余りに今までの税率の差等が強かつた。こういう考えの下にならすという意味で行きますと、十割とか八割というものが相当つて来るということは止むを得ないのであります。税額の割り振りの問題等から私は今のところが適当と考えております。
  107. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 どうも大蔵大臣の説明によつては今度の減税が国民負担の軽減というふうにはどうしても感じられないのです。税法上の形式的の減税であつて内容は本当の国民負担の軽減になつていない。私はどうしても納得できないのが非常に遺憾なんです。それで御説明は引例は盡く私は正しい引例ではないと思うのです。勤労所得税の場合の増收、自然増收という問題と、それから造石税の問題、酒の増收という問題とは違うのです。勤労所得税の場合に物価騰貴による税率改訂をやらなければならないのです。ドイツなんかでは、インフレ期においてちやんと指数によつて税を徴收して行くのです。負担率が問題になるのです。先程負担率を問題にして置きながら、今度はそれを問題にしない、これは私は非常に公正でない。本当の減税ではない。国民の負担の軽減ではない。そういうふうに思わざるを得ないのであります。これは幾ら議論をしても議論になつてしまうようですから私は次にお伺いしたいのですが、最近の日本産業新聞を見ますと、銀行の收益が非常に殖えているのです。本会議の質問に対して大蔵大臣は銀行はそう儲かつていないのだ、そういうようなお話がありましたが、日本産業新聞を見ますと銀行の利益は私は不当に、恐らく不当に多いと思うのです。これに対して大蔵大臣は低金利を以てそんなに儲かるならばもつと引下げて産業方面の負担を軽くさせるという、そういう意味で低金利政策を探るように大蔵大臣も言われております。これは適当だと思うのですが、併し銀行の利益は私はあれでは一般産業に比較して余り不当に高過ぎるので、これに対して大蔵大臣は低金利措置を講ずるならば急速に私は措置を講じて、一般産業との振合いを調整すべきであると思うのです。この点について大蔵大臣の御意見を伺いたいのです。
  108. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 日本経済新聞に本年の九月の決算期における各銀行の收益は増大したということは見ておるのであります。併し銀行という特別業種に対しまして、貸倒預金をどう見るか等いろいろな問題があるのであります。従いまして、私は先般もお話し申上げましたように、できるだけ早い機会にできるだけ高率な利子、貸付金利を引下げたい、こういう方針は堅持いたしております。銀行の経理状況から経理方法をどういうふうにやるかという問題がありますので、そういういろいろな点を考慮いたしまして、研究を続けておるのであります。
  109. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 次に復金の問題についてお伺いしたいのですが、復金は貸出しの機能を停止するようになりましたが、今後復金の非常に沢山の債権の回收に関する回收計画というようなものはお立ちになつておるのでしようか、復金の貸付金の回収計画です。
  110. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 貸付けのときの條件がありますので、その條件によりまして回收して行きたいと思います。併しこれが経済界に及ぼす影響等はやはり愼重に考えなければなりません。従いまして回收條件がいついつまでになつておるからといつて無理やりに取ることがいいか悪いかという問題は、今後の問題として考えて行きたいと思います。
  111. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この間新聞で見たのですが、衆議院で小峯委員に対しまして大蔵大臣は今後復金はもう機能停止しておるのですから解散をさせる。こういうような意向があるように新聞で見たのですが、復金を解散させる、そういう御意思はあるのですか。
  112. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 復金は、多分私の記憶では、来年の一月で停止することにいたしております。従いまして、あとの処置をどういたしますか、積極的の貸付の業務はいたさない、ただ残るのは保証した場合の問題と、あとは清算事務で続けて行きたいと、かように考えております。
  113. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、来年で大体復金債は、清算事務に入る、そういうお話ですね。その場合、我々今まで一番心配しておつたのは、一千億円以上に上るこの貸付をやつていた復金債の貸付はどういうふうに回收されるかということは、国民として重大な関心を持つておると思う。従つて政府は、これに対するいわゆる回收計画、これをもお立てになつておる筈だと思う。なければならない筈です。而もその貸出を産業別により早く回收してよいもの、或いは遅く回收してよいもの、そういう回收計画がある筈だと思うのです。ありましたらそれは今後復金の問題については、貸出の実際面をどういうふうになさるかということは、国民として一番重大な関心がありますので、その点について、回收計画というものがおありになつたら、提出して頂きたい。  更に又復金の貸付を行うとき、これは財界にも非常衣影響を及ぼして来ると思う。一説には復金に現金でこれを償還しないで、社債を発行したり、或いは増資という形で株式を発行したりして、そういうものを復金の債務償還に充てて、それで復金が、それを持つていて、金融の状況を見て、これを現金に代えて行く。こういうふうにしたならば、金融方面にも非常な衝撃を與えないで、復金貸出の回收が財界にそんなに衝撃を與えないでできるのではないか、そういう意見があるのですが、それについては大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  114. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 先程申上げましたように、個々の会社に貸しておるのでありまするから、貸付の内容によりまして、適宜適当に回收いたしたいと考えております。而して復金の貸付金の回收があつた場合に、それを財源といたしまして、事業会社の、社債とか株式を引受けるということは考えておりません。
  115. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう意味じやないのです。その復金の貸付の回收が非常に困難になるのは、又可能であつても、無理にそこで現金を以て回收すると、相当金融方面にも、非常に衝撃を與えるから、その会社に社債を発行させて、その社債を復金が引受けるという形で、現金でなく、社債という形で復金がこれを持つ、或いは又増資という形で、株式を復金が返済金として持つ、そうして適当に金融の情勢を見て、これを売出すとかいうふうにして、現金に代えて行く。こういう方法言つておるわけなんです。
  116. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 清算に入るのでありまするから、新たに株式とか社債を引受ける、債務の弁済として社債を引受けるということはいたさないつもりであります。
  117. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この復金の貸出の回收につきましては、今からいろいろ準備されておると思いますが、どうしても償還できないもの、或いは完全に償還できるもの、或いはやや償還できるもの、そういうふうに、大体私はこの回收の計画については、大体の見通しがあると思うのです。又そういう回收の計画というものを大体立てなければならない筈と思うのでありますが、只今計画についての、ただ具体的な個々の会社によつてこれを回收して行くのだ、そういうようなお話ですが、それだけでは私は、国民が納得して行かないと思うのです。復金の貸出については、非常な重大なる関心が抱かれておるので、政府としては、この回收については、その方針、それから計画というものは、国民の前に明らかにすべきだと思う。そういう御用意があるかどうか伺いたい。
  118. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 研究はいたしております。従いまして、来年度の予算におきましては、復金の回收並びに貸付金、利子の收入等を計算しまして、組入れております次第であります。
  119. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私はそういうことでなく、回收計画ですね、そういうものを聞いておるわけです。それは又財界に及ぼす影響も非常に大きいのですから、そういう方針というものをどういうふうにお立てになつておるかということなんです。
  120. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 木村さん余程計画がお好きのようでありますが、実際問題として数百、数千に達しておるものを今どれだけ取れるかというのは、これは一つの机上のプラン、と言うのは言い過ぎかも知れませんが、なかなかむずかしいのであります。その会社が本年はこれだけ拂える、来年はこれだけ拂える、再来年はどうか、というふうにここで一応やつて見ましても相当つて来ると思うのであります。経済界の変動、或いは会社の收益状況、会社の資金ぶり等によりましても変つて来ざるを得ない。本年なんかを見ましても、補正予算で五十億余を繰入れております。こういうようなものは今まで公団で貸しておつた金が、今度は公団の融資を預金部にやるということになれば、五十億ぽんと入つて来るというようなことになつて来るのであります。金融界の情勢と貸付の面で金融界の情勢によりまして、條件がこうだから催促して取つてしまうということはいいか悪いかという問題等もありますので、いろいろの検討は今続けておりますけれども、何と申しますか本年度、来年度、再来年度はなかなか立ちにくいのであります。予算の関係がありますので、来年度の回收見込又收入金等は計算いたしております。
  121. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 今大蔵大臣は僕が計画がお好きだというような皮肉を言われましたが、実は償還計画がなくて復金がどういうふうにしてお金を貸したかということが問題です。というのは、償還計画というものが立たないで、そういうものがなくて復金がお金を貸されたのでしようか。そこが非常に問題だと思う。我々噂に聞いたところですが、ドツジ公使が来朝されて、復金から非常に沢山金を借りておる関西の財界人に会われたとぎに、ドツジ公使は、あなたは復金から金を借りたけれども、償還計画をお持ちであるが、お持ちであれば見せて頂きたいと言われたとき、そのときにその実業人はただ笑つてごまかしたということです。そういうような償還計画というものがなくて、そうして復金から徒らに金融したということになれば、私は非常に問題だと思う。ですから償還計画というものがある筈なんです。それに基いて何年度にはどのくらい償還、或いは償還ができないものはどのくらい、これはうやむやにできないと思う。いろいろな問題、又疑惑が起つて来ますので、この点については明らかにすべきだと思うのです。償還計画がなくて金を貸したということは私はいいことじやないと思う。この点大蔵大臣どうお考えになりますか。
  122. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 通常ならば償還計画があるのが普通でありますので、私は貸付の條件にそういうことがなつておると思うのであります。併し貸付の條件、貸付の場合の償還計画があるからといつてそれを集計してどれだけ入るということはこれは又決めにくいことであるのであります。従いまして償還期限の来たもの並びに償還の約束のあるものにつきましては、一応推算いたしまして、これは会社の営業状態等を勘案して、来年度において繰入れる見込が考えられるのであります。
  123. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 最後に一つお伺いいたしたいのですが、政府はこれまで一般の産業金融については、銀行の貸出ばかりでなく、証券金融について、これを活溌にやらしめるために、証券民主化運動、こういうものにも大分力を入れ、又しよつちゆうラジオとかその他で宣伝しておるわけですが、ところが最近株式が非常に暴落しておるわけです。これに対して政府の、そういう宣伝指導等によつて、株式を買つた人が、私は相当損失を蒙つておると思うのですが、この株式が更に又低落するようになれば、私は非常に問題が起つて来ると思うのです。單に大衆ばかりでなく証券業者にも又金融方面にも重大なこれは影響が及んで来るのではないかと思う。従つて政府は最近の株式暴落、こういうものに対して又今後のそういう証券というものに対してどういう対策をお持ちであるか、又どういうお考えであるか、お伺いしたいのであります。
  124. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 最近株もたれのために可なり株が低落いたしておることは、お話の通りであります。私は証券民主化の点から申しまして、又長期設備資金調達の問題から考えまして、適当な措置をとらなければならんと考えております。で、先ずやはりこういう場合には金融の問題があるのでありますが、融資準則が先般まで丙でございまして、証券金融につきましては三億円しか融資していなかつた。八月にこれを改めまして大きくすると同時に、株式証券会社に対しまする金融を相当つけて参りまして、十月末で三十億ばかり、三十数億円であつたと思うのでありますが、こういう融資準則の改正とか、金融の途を証券会社等につけることが第一点であると思います。次に従来有価証券など調整協議会で相当閉鎖機関等の持つておりました株を相当出しております。第一四半期に大体二十億乃至二十二、三億程出しておりますが、これも株もたれの関係で今後は出し方を緩めて行つてはどうかという考えも持つておるのであります。又最近非常に増資を……、いつかお話申上げましたように、上半期におきましては四百二十七億というような増資、これは日本初まつて以来のことであります。これが非常に株もたれであります。而も今後は企業再建整備法の許可認可條件といたしまして直ちに増資とか何とかいうもので今までやつておるわけであります。併し今のような状態ではとても企業再建整備の認可が出ましても直ぐ増資ということではこれ又株もたれを助長するというようなことで、企業再建整備の許可の條件として直ちに増資手続をとるということを半年とか一年とか延ばしてやるということも考えられなければならんことだと思つております。いろいろな事情があるのでありますが、できるだけ今の金融もつけ、そうして又株もたれのしないような方法を探つてつて上げるということよりも正常化を計りたいと考えておる次第であります。生命保險会社を利用するとかいろいろな問題もありますが、こういうものを急激に措置することも又如何かと考ますので、徐々に証券金融の円満、株式の安定を計るような方策を探つて行きたいと思います。
  125. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 もう一つお伺いいたしたいのですが、実は徴税費の問題ですが、今度の補正予算に国税局における徴税費約六億円が計上されてあるのです。この六億円の内訳を見ますと、そのうち約五億円が内国税の過誤納金の拂戻が増加するために充てられる分が五億円になつておりまして、残りの九千大百八十二万九千円ですか、その程度が税務事務の刷新改善及び固定資産の再評価、基準倍率の調査、こういう費用に充てられておるのであります。一見すると六億も国税局において計上しておりますから、何か徴税費が非常に殖えたように思つてつたのですが、中味を見まして、その殖えた額は殖え高は非常に少いと思う。それで果してしよつちゆう大蔵大臣の言われます税制止、或いは税務行政上の能率が上るかどうか。私は特にこの点につきましは、又更に徴税関の、税務官吏の人員の問題、それから待遇の問題、そういう問題があると私は思うのですが、これでは私はまだ少な過ぎる。これで能率が上げられるかどうか、その自信があるかどうか、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  126. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 徴税の問題は最もむずかしい行政の一つであるのでございまして、できるだけ徴税費の増加を考えておるのでありまするが、何分にも今回は補正予算でございまして、当面必要な経費だけに止めまして、来る国会に出しまする税制改正のときに増加というようなことを考えたいと思うのであります。従いまして六億円の分は今お話のように過誤納金が五億円、一億円足らずしか出ておりません。これは資産再評価とか、或いは青色申告制度の創設に必要な経費、人員は殖やしておりませんが、来年度からは私はある程度人員を殖やして行く。人員を殖やすことも一度に殖やしますと却つて一時的にスランプができましで余り好ましい結果を来しませんから、徐々に有能な人を……、今平均年齢二十四、五歳という状態でありますが、相当の常識もあり、素養も持つた三十以上の人ぐらいを徐々に外れて行きたい。そうして新たな人を入れるにいたしましても今のような採用の方針では行かないつもりでおるのであります。併しこの補正予算におきまして来年一月一日から織物消費税、或いは殊に取引高税を外しますことによりまして六、七千人の人が浮くわけです。一月から直ぐ浮くとは言われませんけれども、二月三月においては織物消費税、取引高税に当てられておる七千人の分が所得税その他に取り得るのでございます。従いまして今回の予算は補正予算であるという関係と、そう税制改正の根本的なものを出していない。取引高税等の、あれやこれやで今回は人員の増加を遠慮した次第であります。
  127. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 待遇については……
  128. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 待遇につきましては、御承知の通りに税務職員につきましては特別の俸給を出しておるのであります。今の状態から申しまして税務官吏に特にもつと沢山をやるということは如何かと思います。それよりもやはり質のよい人を沢山にする方が先ず先ではないかと、こう思います。
  129. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これは非常に具体的な問題ですが、実は私学関係から聽かれたのですが、現在私学の戦災その他によつて破壊されたり燒けたりしたその私学に法人なんかが寄附する場合、それは復旧などのはこれは法人の所得から引いて、これは課税の対象にならないようになつておりますが、併しこの私学の新設とか、それから増設、こういう場合には含めておらない。ところがキリスト教大学、その他キリスト教関係の学校においては、その新設とか増築に対してやはり法人が寄附した場合、これを課税から除くようになつておる。私学方面でもそれと同じような措置を考慮されたいということを要望されておるのですが、この点について大蔵大臣どういうお考えですか。
  130. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 今までの法人の税金につきましては、お話の通りに戰災復旧の私学だけ認めておりましたが、丁度キリスト教大学の問題が起りましたが、特にこの分だけGHQとの関係がありまして、この問題は今後の問題といたしましては教育法人につきましては免許の方針で只今検討を加えております。ただ特に弊害のあるような場合には認めない。普通の場合におきましては免税する。その限度はまだ検討しておる次第でございます。
  131. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 増設と新設の場合は……
  132. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 教育法人に対する寄附として全般的に考えております。
  133. 岡田宗司

    岡田宗司君 大蔵大臣にお伺いしたいのでございますが、一昨日私がここにおきまして大蔵大臣に市中銀行の貸出率の問題についてお尋ねいたしました。できるだけ速かにできるだけ多く下げたい、こう御返事があつたのであります。そこで私は重ねて例えばどれくらいに、そうして年内にやるかどうかということをお聞きいたしましたところ、大蔵大臣はそれは大蔵大臣としてそういうことは言えん、こうおつしやられたので、私は引下つたのであります。ところが同じ日に衆議院の大蔵委員会におきまして愛知銀行局長ははつきりと年内に一厘下げたいというふうに言われたことが、どの新聞にも出ておるのであります。これはおかしな話でありまして、すでに大蔵大臣と銀行局長との間にそういうお話合があつて、銀行局長が言われたものだとするならば、大蔵大臣はどうも参議院の予算委員会を軽視することになりますし、私共としては甚だ腑に落ちないことであります。又愛知銀行局長が勝手に言つたとするならば、これは重大なる問題であろうと思います。大蔵大臣はどうしてその問題について参議院の予算委員会において銀行局長が答えられた程度のことがお答えになれなかつたか、その点一つお伺いいたしたいと思います。
  134. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 私はいつ幾ら下げるという問題につきまして確信がない。銀行局長とも打合せはいたしておりません。従つて自分の希望としてはこの前申上げた通りでございます。銀行局長が衆議院で本年内に二厘下げたいということは銀行局長が下げるということではないのであります。自分の勘で言つたと思うのであります。これはもう私が打合わせしてこういうことにしたいと言つても、金利の審議会に掛けましてそうして向うで決めることであるのであります。大蔵大臣が下げろと言つたりして金利審議会に諮問いたしまして、そうして手続をとつてからのことでありまして、愛知銀行局長がどう言つたかということは正確な言葉は知りません。この程度しかお答えできないと思います。
  135. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は大蔵大臣一つ御質問いたしたいと思います。資料がお願いしてありますから揃いましたら明日でも明後日にでもお伺いしたいと思いますから、委員長にお願い申上げて置きます。  先ず最初に勤労所得に関してでありますが、御承知のように去年の暮に公務員の諸君が非常に驚きましたことは、当時賃金べースの変更計算がございました。それに年末調整金が重なりまして、中には十二月の給料は金五銭也というような人もあつたことは大蔵大臣承知の通りだと思うのであります。本年もやはりもうあと一ケ月ばかりを控えまして年末調整金の問題は公務員或いは民間の勤労者を問わず非常に大きな問題になると思うのでございます。この問題について去年の経験からいたしまして、大蔵大臣は勤労者の立場をどういう工合にお考えになり、これをどういう工合に措置しようとしておられるのか、これを伺いたいと思うのであります。本年度におきましても、賃金べースの変更は各組合から非常に熾烈な勢いで要求されておりますが、公務員の賃金べースは、変更しない、人事院の勧告が出そうになつておりましても、これがどういうわけですか、下剤でもかけんとなかなか出ません。それからその他民間の給與におきましても、三原則を楯に取られてなかなか上つていない。そうして一方におきましては、源泉徴收によるところの税金だけはどんどん徴收せられまして、特に賃金の遅配が非常に起きております。毎月の勤労者の生活が極めて不安定な状況にありますときに、年末に一時にこういうような徴收が行われるとしますならば、全く朗らかに迎えなければならぬ正月を極めて悲惨な形で迎えなければならぬのでありまして、政府としては去年の経験からしても十分にお考えがあろうかと思いますので、そのお考えを伺いたいと思います。
  136. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 年末調整の問題は具体的に申しますと、昨年におきましてはべースの変更が途中にあり、而して又別に臨時に出ます賞與とか調整金が相当ございます。こういう賞與とか調整金につきましては、従来は十五%とか十八%の税率で取つてつたのであります。併し所得税は年税であります関係上、年末におきます賞與、手当いろいろなものを合わして行きますと、十三%十八%取つてつたのが所得の上に乗つかかつて参りまして、上積み計算によつて三十なり四十なりの税率が出ることになり、こういうことで年末調整をした関係上一月に殆んど俸給がなかつたという非常に異例な場合が起きたのであります。従いまして昭和二十四年度におきましては、もう俸給以外の手当等を出すときに、それを加味して源泉徴收をいたしておりますので、昨年のようなああいう異例なことは私はないと考えております。併しいずれにいたしましても、高級の官吏につきましては、超過勤務手当のときに、やはり源泉徴收で引いております関係上年末調整をしたならば、課長、局長級は年末調整は相当或る程度やらなければならぬということになります。一般職員につきましては、昨年のようなひどいことはないと考えております。
  137. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は大蔵大臣の方へ勤労所得の納税者の数と年末調整該当者の数、更に勤労所得税の総額と年末調整の金額との比較表、去年並びに今年の予想の資料をお願いしてあるのでございますが、これから拝見いたすわけでございますけれども、これによつて全貌は明らかになると思いますが、今おつしやつたような工合に簡單に而も軽度のものであるとは、私は理解していないのでありまして、私が調べました或る民間会社にいたしましても、相当多数のパーセンテージの労働者諸君が最高は一万円以上から最低は二千円位の幅によりまして年末調整を受けなければならんということになつております。そうして而も今おつしやつた高給の官吏がこれに該当するとおつしやられましたが、実際は扶養家族の非常に多い人、或いは超過勤務をいたすような人、或いはその他の特別な勤務手当を受けるような下級の組合員に対しましても相当高額の年末調整が行われますることは先ず間違いないのでありまして、この点は大蔵大臣といたしましてもう少し実情を御調査を願いたいと思うのでございます。で、今の場合にこれが非常に軽度であるからして、措置を講じなくともよろしいということになると問題はこれ以上進展しないわけでありますが、私はそういう工合に考えておりませんので、その辺のところをもう一度民間企業の問題も含めまして、お答えを願いたいと思います。
  138. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 資料の要求があつたそうでございますが、こういう問題はなかなか資料を作りにくいと思います。役人の分だけなら各省に申しましてできると思いますが、全国に跨りますものを急に調整いたしますということはなかなか困難な問題もあると思います。ただはつきり私が申上げられますことは、昨年のようなことは殆んどございません。何か今年は今の超過勤務手当にいたしましても、これ位だ、二ケ月分でこの位だということをとつております。そういう建前になつておりますから、下級官吏の会計のこと、その他の方法が大蔵省で指示いたしました通りをやるということであれば、今年は年末調整は殆んどないのではないか。たとえあつたつて極めて微量のもの、或いは返すというような場合も出て来るのではないかというふうに聞いておりますか、まあそうあるのが本当でございまするから、そういうことは今年はないと考えてやつておる次第でございます。決して心配になるようなことはございません。
  139. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は民間の或る組合でこれを非常に只今問題にして、計算を一生懸命やつておりまして、この年末の調整をどういう工合に資本家側と話合いをして、何とか企業主の方で救つて貰えないかという運動を起しておる実例を知つておるのであります。そこで今大蔵大臣がおつしやるように問題にする必要のない程度のものでありますならば、非常に喜ばしいことでありますが、そういうようなことでなくして、本年度にいろいろな給與もある、それを民間において今おつしやつたような工合の源泉課税の取り方が行われていないのかいるのか、それを私存じませんけれども、とにかく年末に相当な調整があるという、こういうような場合に労働者が非常に困る場合が起きましたときには、政府としてはそういう企業者に対しまして年末調整用の、一応企業者が立替拂いをするというような意味における融資というようなものをやる御意思があるのかどうか、そういうような事態が起きましたときにそういうお考えがあるか、或いはその他これに準ずるような便法をお考えになつておるかどうか、これをお伺いしたい。
  140. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 只今私御答弁いたしましたのは、主として官庁のことを申上げておるのであります。従いまして民間の業者が毎月徴收すべきものを徴收を怠つたり、或いは徴收を控え目にするということによつて取らない年末調整のことについては、これは私申上げていないわけであります。大蔵省で指示しております通りのことをやつて置けば、官と民間とを問わず年末調整は大した問題でないと考えております。ただ徴收すべきものをそのやり方をしないので、徴收不足のある場合におきましては、年末調整はございましよう。これはそういうふうな場合において大蔵省が年末調整のために必要な金だというので、銀行に融資をしようというふうなことは現に私は考えておりません。そういう術がないのであります。
  141. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、今の途中で支拂つたような金額に対しまして、高率の税を以て源泉徴收をしろというような工合に、公務員に対しおやりになつておるやり方は、民間企業に対しては、地方の税務官吏は公務員と同じような形でやるように、企業者を指導するようになつてつたのでございますか、その点をお伺いいたします。
  142. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 多分主税局長の通知か何かで、そういう通牒がいたしておるのでございます。
  143. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 まあ、今の大蔵大臣の御説明は甚だ労働者の該当者にとつては不満足であろうと思います。特に普通の所得税でありますならば、納税者の意思によりまして延滞利息だけを覚悟いたしますならば、現在の税法の枠内におきまして自分の意思によつて分割拂いもできるわけであります。併し源泉課税の場合におきましては、その額は全部引かれておるのでありまして全く赤兒の手を捻るようなものでございます。従いまして今年の暮に賃金のベース変更は行わない。賞與金は出さない。こういうような民間企業におきましても、経営者団体の強い申合せが現在行われつつある場合でありまして、この場合に、若干でも年越の給與が欲しいというときに、そういうものか全然出されないで、そうして逆に年末調整が相当額出るというようになりますと、全く勤労者の生活を窮迫にさせるものであると言わなければなりませんので、この点は明日或いは明後日実際の資料を頂き、又只今つております或る組合の実例なんかも、もう少し結論して十分伺いまして、大蔵大臣の御所信をもう一度私はお尋ねしたいと思います。  それから第二の問題は賃金べースの公平化と申しますか、これについてでございますが、過日大蔵大臣は本会議におきまして、銀行の預金利子と貸出利子との間に相当大きな幅のあるのは、銀行の経費が非常に嵩んでおることである。そうして経費の嵩んでおるということは、銀行の従業員の給料が非常に高いことであるということをおつしやつたのであります。これは私共が前々から指摘したところでありましで、現在の勤労者の賃金ベースの中で銀行が一番高い。そうして中小企業になりますならば、この頃は到底労働の再生産能力を維持し得ないような、一方的な戰争前のような低賃金が行われておるということを主張しておるのでありますが、そのことを大体御証明になつたわけであります。そこでこういうような非常にアンバランスの状態にありますところの賃金というものは、何とかして合理化をしなければならないわけです。私は銀行の従業員の賃金が高過ぎるとは申しません。あれでもまだ或いは労働の再生産力を維持するには足らないかも知れません。一般企業の労働者の賃金が安過ぎるということを裏書きしておるのであろうと思います。そこでお伺いを申上げたいことは、先ず第一点は、この問題と直接関係がございませんが、銀行の従業員諸君は賃金のストップ令でありますところの、あの経済三原則の適用を受けておりますものでありますか、おらないものでありますか。この点をお伺いいたします。
  144. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 先程の年末調整の問題でございますが、民間の個個の会社について年末調整が年額どのくらいあつてどうだということは、到底今議会に出すわけに行きませんから御了承を願いたいと思います。私の申上げましたのは、所得税の簡易税額というのが所得税法の中に出ております。これによつて徴收をしろと法律的に決まつております。その通りをやると決まりますれば殆んど問題はないと思うのであります。  次に銀行の職員の俸給でございまするが、ただ高いとか安いとか申しましても比較の問題でございまして、或いは銀行職員は、先般も提訴したように平均九千円とか、或いは一万八千円とか要求しておつたようでありまするが、これは銀行より高い産業もございます。又低い産業相当沢山あるという状態であるのであります。  御承知の通りに、昔の経理統制令をやめましたから、俸給について法律的にどうこうするという制度は、今のところございません。
  145. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 あの民間企業に行われておりまするような、いわゆる賃金ストップの経済三原則の適用を銀行従業員は受けるかどうか、こういうことなのです。
  146. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 経済三原則というのは、原則として発表されたものである、考え方の問題です。で、適用を受けるかどうか、法律上にその適用を受けるという問題はございません。経済的の問題はございます。
  147. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私のお聞きしましたのは、法律的な意味でなくして、経済三原則が法律的な効果を発揮しないものであることは、私も万々よく承知いたしております。そういうことでなくて、政府が民間企業に対しては、経済三原則を一応理由にいたしまして、新賃金の引上げにはがんとして応じないような指導をしておられるのでありますが、銀行従業員に対してもこれと同じ態度、いわゆる経済三原則と民間労働者との立場をそのまま銀行従業員にもお取りになつておるかということを伺つておるのです。
  148. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 経済三原則の適用の問題でございます。今言つたような経済的の原則でございまして、法規的にどうこういうことはございません。これは銀行に対して銀行の性質の公共性に鑑みまして、経理の適正を図らなければなりません。大蔵大臣として銀行の経理の適正を期するための指導として経営的な経費は全体の経費の何パーセントあつていいかというふうな問題につきまして検討いたして行きたい。従いまして多分通牒を出したと思いまするが、経理の内容を報告しろというふうな通牒を出しております。
  149. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いわゆる銀行の給與の高さについては、中央労働委員会の中山博士も今年の五月の国会のときであつたと思いますが、最高水準を行つているということは、ここの証人にお立ちになりまして、私の質問に対してはつきりお答えを願つておりますので、今大蔵大臣が若干言葉を濁したようなことをおつしやいましたけれども、もう公知の事実であるということをお考え願いたいということが一つであります。それからこの場合に、只今賃金の引上げの問題について引上げどころではなくて、引下げ、遅配、欠配が盛んに起りつつあるわけでありますが、この影響は民間企業の合理化に対しまして、個々の企業家の意思によるところの合理化というよりは、現政府が採られておりますところの、日本経済の運営、政策が大きく作用をいたしまして、そうして企業主が好むと好まざるとに拘わらず、とにかく人員の整理を行わなければならん、賃金の引下げも行わなければならん、遅配、欠配も又事業運営のためには止むを得ない、こういうような極めて厳しい、苛酷な條件下にあるわけでありますが、今言われましたように、企業の合理化を日本経済再建のために広く行わなければならんということになりますならば、やはり銀行に対しましても、相当思い切つた企業の合理化をやらなければならんと思うのでございます。そういう点に対しては、どうお考えになつておりますか。
  150. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 吉田内閣の財政経済政策は、日本国民全体のためにこれが必要であると考えることをやつておるのであります。従いまして個個の財政経済政策の実行に当りましては、或る程度の御迷惑はかかることはあろうと思うのでありまするが、再建のために御我慢願いたいと思うのであります。  銀行の経理につきましては大蔵大臣としては、他の企業とは別に特に関係があります。経理の合理化につきましては、先の国会においても財政演説で申述べております。その後も何ら変つたことはないのであります。できるだけ銀行の経営の合理化を図りまして、そうして経費の節約をし、金利を下げて行こう、こういう方針で行つております。
  151. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 非常にどうも分りにくい。高尚な表現をされるので、私も困るのですが、銀行の合理化の具体的な構想と申しますか、大蔵大臣が今お考えになつておる点を私はもう少しお聽きしたいと思うのであります。私は現在非常に経済界がデフレに入りまして、非常な深刻な状況になつておりますが、丁度私共子供の時代でありました、昭和の初めにおける不景気の状態と比較しますと、非常に特異な現象が一つあると思うのであります。それは当時におきましては、日本経済界が本当に困窮をいたしまして、銀行が取付けに遭つて倒産するものが相当続出したことは御承知の通りであります。そうしてそのために又民間の企業も随分参つたのでありますが、現在のところでは銀行方面は極めて余裕綽々たるように私共は見受けております。一つもそういうような憂き目に遭われる銀行のないことを私ははつきり申上げ得るわけであります。地方の信用組合に至るまでそうでございます。そうして一方民間企業は全く、最近は大企業に至るまで四苦八苦でありまして、中小企業の惨状のごときはここで述べる遑もない程であります。二次、三次産業に至りますならば、どしどし倒壊しつつある状態でありますが、こういうような変態的な経済の恐慌のような形が出ておりますことは、私共としては了承し得ないのであります。国民全体に日本再建のために苦しみを分ち合うといたしますならば、もう少し思い切つたいろいろな施策が講ぜられなければならんと思いますが、この点に対する大蔵大臣の御所信を伺いたい。
  152. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 民間におきましても配当を引下げずにどんどん御資しておる会社もありますし、種々雑多であると思うのであります。銀行はその事業の公共性に鑑みまして、先程申しましたようにできるだけ経営の合理化を図つて行く。そうして何と申しましても金融が産業の心棒というべきものでありますから、合理化、健全化を図つておるのであります。具体的に御質問があれば答えますが、銀行の合理化をどういうふうに図るか、こういうのでは、経費をできるだけ節約し、預金をどんどん集めて、そうして産業資金を十分に出すということ以外にお答えのしようがないと思います。
  153. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういうことは御専門家である大蔵大臣が一番よく御承知だろうと思いますが、具体的にいろいろなことを申上げろということならば、これ又別の方法を採らなければなりませんか、それでは一番最初に一つ御構想を伺いますことは、最近企業主が金詰りになつておりますので、とにかく銀行に融資を頼みますためには、正規の貸出利子を支拂います外に、相当いろいろな経費を産業資本家は負担しておるわけであります。そういうようなものを負担しないで、ただ普通の商取引のみによりまして、そうして公定の貸出金利のみによつて融資が行われるということになりますならば、これこそ正に私は写本経済界の最も本質を衝く合理化であろうと思いますが、その点のお考えは如何でございますか。
  154. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) よく分りました。噂に上つております浮貸し、その他の惡いやり方が相当程度行われておるということを聞き及んでおりますので、法律方面については監督を十分にいたして、そうして非違があつたならばこれを告発して、貸付金利の適正化を図つておるのであります。尚金を借出すときに非常に外の経費が要るということでありますが、これは銀行も一つの商売であります。或る程度の饗応なんかあるかも分りませんが、これが度を越えますと、勿論監督しなければなりません。我々としては銀行が、繰返して申上げますように、その公共的性質に鑑みましてそういうことのないように、而も又銀行制度が変つて参りまして、普通銀行は長期資金は余り出さない。而も貸した金は二ケ月で更新すると、こういうふうなことをやつておりますので、貸出を申込む人と銀行との間が非常に交渉がたびたび起るというふうなことも一つの弊害の因ではないかと思うのでありますが、商業銀行であるからといつて、必ず二ケ月ごとに変えなければならんということもないので、我々はそういうふうな商業銀行としての制度につきましても、只今検討を加えておるのであります。
  155. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は本当にお聴きしたいのは、そういう人情的ないろいろなやり繰りで、この銀行のいわゆる融資を受ける側との間の取引が正常になり、そうしてこれが本当に好ましい形になるとは考えません。若しそういうようなことでありますならば、終戰直後にあつたようなああいう闇行為の大混乱なんというものは、人情で解決し得る問題ならば、私は起きないと思います。従つて私がお聴きしたいことは、そういうような現実をお認めになつたわけでありますから、そうするならば融資統制法だとか、或いは信用統制法だとか、その他いろいろな法的措置をとりまして、そうして銀行業というものをいま一歩明朗化するというお考えがないかどうか、それを伺いたかつたのであります。
  156. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 銀行の職員その他につきまして非違がありますならば、大蔵大臣は監督の立場におりますので、十分監督いたします。お話のように信用統制法とかいろいろな統制をやつたらどうかというお話でございますが、私は考え方は逆でございます。今の融資準則なんかでもできれば外したい、これが本然の金融の姿であると考えます。今直ぐ外すというと問題になりますが、徐々に外す方向に進んでおります。
  157. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 暫く休憩をいたします。    午後四時五十二分休憩    —————・—————    午後五時四十一分開会
  158. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) これより委員会を開会いたします。農林大臣に対する質問を……
  159. 高橋啓

    ○高橋啓君 農林大臣にお尋ねいたします。農林大臣は非常にこの単作地帶に対する対策について御熱心に考えておられることは過般のラジオ放送においても承つておるのでありますが、その非常なその熱意が今度の予算には予算措置をとつておられない。ただおつしやるだけでは全く絵に書いたぼた餅でありまして、どうしてもこれは何んとかその熱意を予算措置にまで持つてつて頂きたい。今年だけの単作地帯の対策に対する費目を取つて見ますと、例えば苗代の温床設備をするための補助とか、或いはれんげ草を採取するいろいろな設備の補助とか四千七百九十万円というような極めて僅少なここに予算を設けておるのでありますが、私は今の食糧増産のためには開拓もよし、土地改良によつて現在耕やしておる田から増産するという方法もよいのでありますが、この十一県ばかり、主として今日単作地帶として見られておるのでありますが、ここに大きな反別がありまして、過般の農林大臣の放送のように一毛作を二毛作にすると土地が倍になつたと同じだ、而も耕やされた土地が倍になつたことになるということを言つておられました。私は非常にその点について農林大臣が眼を着けられたということに対して非常にまあ私共は農林大臣の卓見に対して敬意を表したのでありますが、とにかくこの増産のことの外に単作地帶の経営方式を昔のままでやつておられますが、何か国際的な食糧事情の変化によつて三百五十万トン来年度は輸入する。その他自由に取引がされて、そうして国民の欲するような主食かどんどん輸入されるということになれば、従つて農業の危機ということも考えられるのであります。そういうような二つの目的で私は単作地帶に対する対策がなければならん。それには幾多の課題を解決しなければならないのであります。大体一毛作、裏作にするためには気候的な関係も考えなければならない、そのためには今年度少いながらも、例えば温たかい苗代、温たかい床を作くるための設備といつたことに補助をするということも一つであります。それからこれには非常に技術的な研究が必要であります。又これに対する一次作二次作をやるためにその間に非常に労力を或る一定期間に何とかここに集中しなければならない、そのためには畜産等によるといつたようなこともやらなければならんのでありますが、それについては供出のことを考えなければ駄目なんです。第一次作のものは必ず減收で、二次作で増收ということになりますから、一次作と二次作に今までのような一般的な供出と同じようにしてはこれは危險でありますから、一次作を二次作に、いわゆる二毛作に持つて行くということはできないのであります。それに租税の関係も重要な関係を持つと思うのであります。そういうような一連の課題を解決いたしまして、そうしてこれを早く切替えないと私は寒冷地十一県というものは救われないとこう考えるのでございますが、これに対して思い切つて二十五年度にこれが対策のために予算措置をとつて頂きたい。こう思うのでございますが、農林大臣にこのことについての見通しを一つ伺いたいと思います。
  160. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。單作地帶対策ということが永年研究されており、又農業政策の一つの最も強い輿論として今日なつておるのであります。單作地帶に対しましては寒冷地帶と、又土地の環境が悪いために、どうしても單作にならざるを得ないという二つの面があるのであります。寒冷地帶に対しましては、殊に北海道方面が主と今まで考えられておつたのでありますが、温床苗代その他特殊の種苗の栽培というようなことが取敢えず技術面から具体化されておるのでありますが、これとても單作地帶、寒冷地帯を救済する根本的な問題ではないのでありまして、今後こういう方面に対しましては、品種の改良、或いは栽培技術の研究等まだ残された而が相当あるのであります。又普通の單作地帶におきましては土地改良によりまして、土質を根本的に変えて行くという、お話のような一毛作を二毛作にして行くといういわゆる土地の質を改良して行くということも考えられるのであります。政府といたしましては土地改良法を御審議願つたのでありまするか、この土地改良法によりまして、耕地整理を昔やりましたああいう式にやりましで土地改良をやつて行き、又従来等も温床苗代等については僅かばかりでありますが、助成をいたしておつたのでありますが、更に適当なる品種の選定、寒冷地に対する農林一号という品種を発見いたしまして非常に寒冷地帶、單作地帶には適合した品種として今日尚それを栽培いたしておるのでありますが、更にもつともつとこの品種の人工種苗と申しますか、新らしい品種を作り出すという研究も持続いたしておるのであります。そういう面からもこれを考えて行きたいと思うのであります。ただ予算の面におきまして二十五年度に思い切つてというお説でありまするが、相当こういう方面にも努力をいたして参つたのでありますが、まだ予算の御審議に入らんわけでありますが、御満足を得られる程の予算を獲得でき得なかつたのであります。併し将来日本食糧海外食糧と対立して考えて行かなければならんことを思いますと、この單作地帶等も、勿論一般の耕地もそうでありまするが、その生産量を高めて行くというあらゆる角度から総合的に考えて行かなければならんと思います。殊にこの肥料なども効率的な肥料を施す声或いは有畜農業にしまして、堆肥、厩肥の使用によつて地方を高めて行く。いろいろまだ指導すべき面もあると存じます。で、こういう面から考えまして、有畜農業の奨励或いは土地改良ということにできるだけの施策をやつて行きたいと存じております。而もこの土地改良につきましては、従来個人的な土地改良には十分なる助成をなすことができ得なかつたのであります。従つて農村は今金融が非常に逼迫いたしておりまして、而も市中銀行は短期信用でなければ貸さない、殊に農村は担保の力がなくなつているのでありまするから、どうしても低利な長期の資金を要すると考えているのであります。それで今見返資金等によりまして、でき得べくんば長期の特別会計によつて資金を獲得して、これを農村に融通して、政府の力によつて、自立について助成をするというようなことも、今研究を進めているのであります。尚これは一般的でありますけれども治山治水等のこの理想に基きまして渓谷にダムを作り、そうして用水の便宜を図るということも併せて考えて行かなければならんと思つて、その施策は進めているわけでありますが、何分ただ單に單作地帶の対策と申しましても、いろいろ総合的に考えて行かなければならんと考えております。單作地帶に対する私の現在考えておりまする対策について概略お答えいたしたわけであります。
  161. 高橋啓

    ○高橋啓君 切替えるために差当り必要なことは、供出の問題です。そこで一次作で減つたのを二次作で補つて増産するというんですが、その残つた分を、この畜産の餌に供出を残す、免除をするというようなことがあれば、先ず思い切つて二毛作に入るものがある、こう考えられる。というのは、どうしても寒冷地は一毛作と二毛作の切替えのときに、非常な労力が要りますから、どうしてもこれは畜力によらなければならん。ところがその餌というものが直ぐ引つかかつて来る。全部取上げられては二毛作に切替えることはなかなかむずかしい。一番の難点はここだと思います。供出に手加減をするということについてお考えは如何ですか。
  162. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 有畜農業の今一番の難点といたしますことは飼料の問題であります。東北地方には幸い国有牧野もあるのでありまするから、できるだけ国有牧野の開放もいたしたいと存じます。又全国の有畜農家に対しまして、飼料圃を相当と申しますか、食糧事情の関係がありまするから、三反、五反と許すということはできませんけれども、相当の飼料圃を認めて行くということも考えて実行いたしたいと思います。有畜農業を奨励いたしまするについては、先ず第一に飼料の供給ということを考えなければなりませんが、併しこれを供出の面から、有畜農業であるから、飼料のために供出量を特に別に減らすということは、これは考え得られない。今幾らかやつておりますけれども、それよりもむしろ私は今日盛んになつておりまする甘藷、馬鈴薯、これらが家畜の飼料として相当役立つていると思うのであります。甘藷、馬鈴薯の供出等も、従来から見れば緩和いたしまして、これを自由にできる分量を殖やしまして、これらが家畜の飼料として利用されるということが望ましいのでありまして、又農家も自分の作りました甘藷、馬鈴薯が、品質の悪いものはこれを家畜の飼料にするということも考えられるのでありまするから、そういう面から有畜農業の維持発達を考えて行きたいと思つております。
  163. 高橋啓

    ○高橋啓君 この問題は私としては、もう迫つた問題である。これは日本食糧事情を解決するには、最も根本的な問題であると思うのでありますから、できるだけ早くこれが実施できるような予算措置をとつて一つ熱意を傾倒して頂きたいと思います。  次に林野庁が特別会計になつたのでありまするが、日本に残された何というのか、施業案によつて保たれた一つの林業資源でありますが、これが特別会計になつてつたために、売つた金で仕事をして行かなければならんというので、段々これが意識的に自分の作つた施業案も壊して、金を得なければ仕事ができんというような傾向になるのじやないかという心配です。もう一つはこの関係から奥地開発その他いろいろ基本的な事業をするために金がない。そこで折角八分通り或いは九分通りやつた仕事も放棄して、直ぐに金になるような林分だけに食付くということは、丁度戰争中に平地林を伐つて奥地だけ残してしまつたという状況と大分似て来ていると思うのであります。そこでこれをそのような直ちに收入にならないような基本的な開発をするために必要な金を一般会計から出して貰うというような方法でないと、私は今の国有林の施業案というものが完全に実施できないと思うのであります。そつちこつちに立派な林道ができていてあと五、六%も作れば林分にも達する、或いは五、六町も行けば達するというところが、そつちこつちで投げてある。それはどうしたことかというと、特別会計のためにそのような方向に金を持つて行くことができないのだ、直ぐ收入になるような林分だけに食付かざるを得ないのだという実情を私共見ているのであります。そういうことについて、今後の林野庁の運営について農林大臣はどう考えているか。これは非常に大きな問題だと思いますから、御答弁を願いたいと思います。
  164. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 国有林の特別会計の運営のことは、高橋君よく御承知でありますが、みずから起債を許さない状態でありまして、自給自足の態勢を採らざるを得ないのであります。従つて今お話のような自分の独立会計で賄つている関係上、奥地の開発もおのずからでき得ない、やはり便利な里山近くからこれを処理して行くというようなことは、戰争当時の荒廃の状態によく似ているというお話、誠にさように経理上そういうことが自然行われる現象であるのであります。併しここに一般会計からこの特別会計の所要分を補つて行くということは、国有林の特別会計制定の趣旨にも反するわけでありますので、林道等の改修につきましては、勿論独立会計によらなくともこれは施行し得られるのでありまして、できるだけ国有林としての收入を上げ、施業案の計画通りの実施に努力をいたしたい、かように考えているわけであります。
  165. 高橋啓

    ○高橋啓君 今の独立会計で行きますと、どうしても間に合せ的になりまして、そういう状況が近く来るのではないかという懸念を持つておりますから、又この問題については別に御検討願いたいと思うのであります。尚今度運賃が八割値上げになりますが、北海道その他の国有林の原木が却つて高く拂下げられているということであります。結局いつまでも続かないから、逆算すれば原木に運賃の圧力が加わつて行くのであります。今のままの状況では恐らく大阪辺に来た場合に利鞘がなくなつてしまう、こういうことがはつきり計算されているのであります。今後独立会計においてこの運賃による影響について農林大臣はどう考えておられますか。それをお答え願いたいと思います。
  166. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 今回の運賃改正によりまして、木材の運賃が非常に上騰する率が多く考えられておりますので、これは政府自体の收入から見ましても、みずから支拂つてみずから收入するという立場、殊に国有林の林材の供給面から申しまして相当の地位があるのであります。この問題につきましては政府の一応決定いたしました方針でありまするが、その実施の面においてこの値上げに対して相当考慮を拂うように考えて行きたいという気持で今運輸当局とも協議いたしておるのでありまするが、尚内容の発表はまだはつきりいたしておりませんが、できるだけ木材等の値上げをしないように、今回の上昇率が少いように努力いたしたいとかように考えております。
  167. 高橋啓

    ○高橋啓君 大分楽観されておるようであります。毎私は非常にこれは林野庁の特別会計を脅やかすものである、こう考えております。今国有林は、もう百も御承知のことでありますが、全部需要地から非常な遠い距離にあるのであります。而も量は非常に多い、重量もあるというので、あらゆる関係において木材が一番今度の運賃値上げによつて価格に影響をもつのであります。どうしても逆算で行くことになりますから私は根本的に林野庁の予算というものを組替えなければ今度は大変なことになりはしないか。今この運賃改訂の問題について議会に出ておるのでありますから、農林大臣は若し所管内の林野独立会計を完全に保つて行くということを考えておられるならば、これは頑張つて問題を早く具体的にしなければこれはそのまま行くととんでもないことになりはしないか。今薪炭会計においても随分問題になつておりまして、又更にそのようなはつきりと見通しが付く問題をそのままにして予算に対する影響を全然考えないで措置を怠つたということになつたらこれは大変なことになりはしないか。従つてそれを埋め合せするためにどんどん山を伐つて行くということになると、一層これは重大だと考えます。その点について農林大臣が楽観しておるということについては、私は非常に不満でありまして、何としても今のうちから、事がそういうふうになつて来ないうちに未然に措置することか必要であると思います。御意見を聞きたいと思います。
  168. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 楽観しておるというわけではありませんが、特別会計の運用におきまして、今回の運賃値上げの影響等も十分考慮いたしまして善処いたしたいと思つております。
  169. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私は災害によつて失われたる農地の回復という点について、農林大臣がどういう程度に熱意を以て予算なり法律の土において御考慮になつておるかということをお伺いいたしたいのです。それは農業災害復旧費のこの度の補正予算と本予算との関係を見ますというと、この本予算におきましては二十四年度の既定予算においては、荒地の復旧には補助金を全額打ち切つてしまつておる。ところが今度のこの補正予算においては復旧補助の事業を五千五百町歩に対して五億円というものを計上いたしております。前に何故補助の打切りをして、そうして今度補助金を計上するというさような工合にせられておるのでありますか。何かそこに纏まつた方針があるかどうかということをお伺いいたしたい。それは既定予算の際にも災害残量として農地面積が三万二千四百町歩ということが書いてある。これに対しては何にも顧慮していない。それは融資に委ねるというような説明がある。併し農地を災害ですつかり壊されたものを融資をして、実際そういう回復ができておるものであるかどうか。補正予算においてかくのごとく改められた理由如何ということを一応承わりたい。
  170. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 今回の補正予算に誠に僅かばかりでありますけれども五億万円を見積つたのであります。従来の災害復旧費が二十一年、二十二年、二十三年と継続して要求しておりましたのが、二十四年の公共事業費によつて打切られたのであります。併しこの問題、過去の問題についてはまだ公共事業費内容がはつきりまだ決まつたわけではありませんが、この例題におきましても幾らかの助成をいたしたい。かように今公共事業費内容において研究を進めておるわけであります。今回の計上は、五千五百町歩を予定いたしまして僅か五億万円でありますが、計上いたしたような次第であります。
  171. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私の伺いますのは荒地の回復に対しては補助をすべきものであるという点から出発しておられるかどうかということを伺つておる。前は補助をしていない。今度は補助をした。何かそこに方針があるのではないかと私は思う。これは定見を持つて荒地の回復ということの方策を立てて頂かなければ困るじやないかという意味からお尋ねいたしておる。それは日本の耕地面積が年々減少しておるということを我々は考えておる。それで非常に憂えておるわけです。昭和十六年の八月一日の現在では五百八十六万町歩あるのが、二十一年の八月一日には四百九十八万町歩に減つておる。それか漸く二十二年度におきまして三十一年の八月一日においては五百一万町歩まで、少し盛り返しておりますけれども、農家戸数が非常に増加しておる。で、一戸当りの耕地面積というものは確かに八反歩少し余になつておる。これを見ますというと、一戸当りの平均耕作面積というものは年々減少して行つておる。そういうわけでありますから、農家は非常にその土地の関係においては零細農家に段々転落して行つておるという状態であります。その結果寸分の耕地が災害にかかつたときに自力で回復するという力は、私は殆んどないと思います。非常に費用がかかるのであります。そういう場合に前の既定予算のような工合に融資に委せるというようなことを初め考えられたのであるが、それは誤りであつたとお考えになつておるかどうか、どうしてもこれは補助をしなければいけないものであるというふうに考えられておるのでありますかどうか。その意味は元来耕地というものは或る意味におきましてはまあ河川の洪水とかそれの氾濫とかいうようなことによつて生じておる。で、これを非常に広い意味で申しますというと、国の設備、公の設備が不完全であるがために耕地が荒廃に帰するというようなことは言い得ると思う。国策としてそういうところに至らないから農耕地を失つてしまつた。そういう場合に、ただ補助もしないでうつちやつて置いて災難に遭つたのだから、諦めろというような態度をとつたならば、自己の怠慢に対する反省がないということを私は考える。今日はその国の行為に対してたとえ過失というものはなくても、例えば刑事補償法というものがあつて賠償することになつておる。公の設備について足らざるところがあるがために災害が起つたということを考えなければならない。そうすればそれに対して何らか償いを考えなければならないと私は思う。それはいろいろと方策が考えられると思います。例えば新らしく堤防を作る。堤防を作つた場合にはそれによつて掩護地域というものがあるわけです。堤防なかりせばその辺はすべて危險地域になるわけでありますから、その地域全体のものがお互いに助け合つて非常な災害を蒙つたものに対してはお互いにそれを、耕地の替地を與えるというようなことも考える必要もありましようが、耕作地が耕作地として価値がないということでありますれば、そこに何らかの補償の考えを私は作らなければいかんと思います。例えば堤防の築き替えをするということになりますと、或る耕地はこの河川敷地ということになる、形の上において、そうすると河川敷地として賠償すればいいと思います。それから抵当の敷地があつたならばそれを又公のものにしで賠償していいと思う。そのようなことを考えるというと、それは国で黙つておくべき性質のものではないと思います。一方において段々農地が減つて行くという状況を見なければならん。殊にこの耕作放棄の状態昭和二十三年におきましては、災害による耕作放棄が六〇%以上になつておる、そういう状態であります。それから一方において、この開墾を非常に獎励しておるわけでありますが、それが昭和二十年から二十三年末に至るまでの間において、入植に対しで離脱者の率が十九%三というような非常に高率になつておる。一方において開墾は獎励するけれども、非常に大なる数において離脱して行くという亡とは開墾の方面において無理があるというようなことも考えるければならん。一方におきましては、どうも耕地は減少する。そうして公共事業費というものはこれは失業対策費ということでなつておる。失業しないということを考えなければいかん。で農業者というものは自己の所有地に対して非常に愛着心を持つておる。何とか努力をして回復したいというその熱意のあるところをよく考えて、これに国家としては補助じやないのです、私の考えで言えば、これは賠償です。国が或る程度賠償をして上げて、そうしてその熱意のある農耕に挺身させることが国の義務であると私は考える。その見地から見ますというと、補助率がないような予算を二十四年度の本予算にお組みになつたということは、私はそういう農耕地に対する親切心が国家として足りないのじやないかというふうに考えます。そういう意味におきまして、何らかこの耕地の回復については根本方策をお立てになる必要があるのじやないかというように私は考えるのです。そこで農林大臣が非常にお困りになられる立場が私はあると思います。それは国家全体の国土保安に対する根本的な方策がまだ樹立していないのです。それから立ててそれの適用としてここに堤防を造つた場合、これは万全であるこの堤防はまだ壊われることがない万策の適用として起つて来なければならん。そうなりますれば、でき上つた工事はこれは余程の場合でなければ再び災害にかからないとか、これはまだ怪しいものであるということの判断が明瞭に農林大臣としてはお付きになるわけです。ところが今日まだその根本的の政策が立つていないのです。で農林大臣としては挙げて今度は植林をしなければならん。植林が又或る方策からできておるんじやない。ただ木を植えて置けば水を上流で保存することができるから、洪水に対して幾らか貢献するであろうというようなただ所を考えないで、その植林をするというようなやり方を今日私はやつておるのじやないかと思います。非常に確信を持つてするならば或る所の方面に対しては植林はしないということを又断行していいわけです。そんなような根本方策が立つていないのに、下流の工事を総別的に何とかして救わなければならんという農林大臣の国家の根本的の方策がないために、非常に困惑の状態において災害対策に臨んでおられるということについては私は深く御同情申上げるわけでありますけれども、その下の方の耕地について何らかの恒久施設をする。例えばここに特別会計を立てで一定の金額は必ず耕地の回復のために出すということになると、どの耕地が復旧に値いするものであるか、どの耕地が耕地としては思い切るものであるかというようなことの判断を農林大臣かしなければならんということになる。そうなれば遡つてこの河川改修の工事が適当なりや否やということも農林大臣考えなければいかん。従つて造林の方面についても遡つて考えなければならん。こういうことになるわけでありますから、農林大臣みずから引受けられて、国策が決まらない場合においては自己の責任の面において、確固たる信念の下に或る方策を立てて逆に国が全体の政策を立てるような工合に助長して頂かなければ私は困ると思うんです。これは農林大臣が一番困られる御位地においでになると思うのです。そういう意味において先ず耕地の復旧について何らかの方策を立てる。立てる場合は有効にこれを実行しなければならんという立場から、どうしても国の根本万策を立てねはならんということの熱列なる要望が農林大臣から出て来なければならんと私は思う。そういうような面についての何かお考えがあるかどうかということをお伺いしたい。
  172. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 耕地の災害対策といたしましては勿論治山、治水ということが必ず言われまして、この治山に対しましては、御承知の五ケ年計画を以ちまして林業の政策を遂行することになつておるのであります。併し河川というものが農林省との関係かないのでありまして、今政府といたしましては、総合的に建設省、農林省等の連絡があるこの国土計画を立てまして、国土保安の途を立てて行きたい、かような研究を進めておるわけであります。  一方におきましては、この災害地に対しての復旧でありますが、本年度の予算におきましては、当初この災害対策費といたしましても考慮をいたしたのでありますが、予算の編成の途中で、これが実現はでき得なかつたのであります。併し今後におきましてはこの災害費は国家が全額負担すべしというような考え方も一面あるのでありまして今月まで二十一年、二十二年、二十三年と年々災害を繰返して参りましたのも相当の事業分量になつておるのであります。で、これらを棄てて置いて、二十四年度の補正予算に五億万円を盛つたのは変ではないか。あとをそのままにして置いて変ではないという御質問でありましたが、災害復旧の促進を図る必要から過年度の災害の約七割を二十五年度に見まして、残る二割は一十六年度において施行するという方針で進んで行きたいとかように考えておるのであります。従いまして、二十五年度の、今ここで内容はまだはつきり纏まりませんから、少し異動するかも分りませんから申上げられませんが、災害復旧といたしましては、過年度分として相当の金額を計上いたしまして、そうして二十五年度分、いわゆるこれは予備費と申しますか、昨年はこういう公共事業費は融通性がなかつたがために、数回に亘る災害に遭いまして非常に臨時措置に迷惑をいたしましたのでありますから、そういう考えから二十五年度予算におきましては、そういうまあこれは予定すべきものではありませんけれども、日本の国柄としては幾分のこれは余力を考えなければならん問題でありますので、幾らかの予備的な経費を見積つて行きたい、こういう考えで今予算の編成を急いでおるようなわけであります。従つて二十四年度の補正予算に合計大した金額ではないではないか、こういうお話でありますが、過去の分は今申しましたような意味において、二十五年度予算に計上して行きたい、かように考えておるわけであります。こういうことはこれは経費の事務的の問題でありますが、今松村さんの御質問は根本的なことについてのお話でありましたが、できて来たこの災害に対してベストを盡して金を送り出すと共にそういう災害の起らないように建設方面とこの国土の総合的研究を進めまして、そうして両々相俟つてそういう災害のできないようにいたして行きたい、かように考えております。
  173. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私のお尋ねいたしまする要点は、その耕地の回復に対して融資に委ねるということが一応これは説明の中に書いてある。融資に委ねるべきものであるか。国として賠償的な意味において必ず何程か出さなければならんものでありますか。のみならず、この同じような危險状態にあるもの、或いは公共施設によつて掩護の利益を得ているものを纏めて、互いに助け合うような思想をも混えるような方に助長する考えがないかということを伺いたい。融資に委ねるというお考えが一旦あつたのでありますから、そういうお考えが間違つてはいやしないかということを伺つている。いつでも耕地の回復に対しては国家として何らかの賠償的の態度を取らなければいかんというお考えでいるならば、年度が過ぎても後に又それを計上されるわけだ。そのことを伺つておるのです。
  174. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 結論から申しますれば、災害があつた場合、それは結局国家が河川のやり方が悪かつた、治山の仕事が手遅れしておつたからこういう損害を耕地に及ぼした。結局それは国家の責任において賠償すべきものであるというまあ議論も一応御尤もであります。今後亡の災害費を全額国家において負担すべきだというシャウプの御意見もあるわけでありまして、今お話のようなことも自然そういうふうな見地から考えられるわけであります。併し耕地というものを、災害がありまして、それを全然国家が責任を持つてこれを復旧すべきものであるとかいうことは、これは耕地の地区と区域等において考えなければならんと思うのであります。僅かばかりの耕地が災害に遭いましても、これはやはり河川の監督が悪かつたから国家がこれを修繕しなければならんというようなことも、一応は理窟付けられますけれども、国費の関係でそういうこともできませんし、又農業の農産物の価格の面におきましてもそういうふうなことを勘案してこれは将来考えて行かなければならんものではないかかように思います。
  175. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 何らかそういう方向に基いて或いは特別会計を考えるとか、或いは災害耕地の整理法というようなものを作るとか、その災害機会にしてそうして堤防でも作つた場合に、その際に先程申上げましたごとく、掩護される地域のものを一団として考えて、それに対してお互いに共助するような工合な法律でも拵えて、そうして災害機会にして耕地整理をする。そして若し国有地があればその中に入れて一緒にやるというようなことまでも考えることが非常に親切ではないかと私は思う。何らかそういう方向について考えて見ようというお考えはないかどうかということを伺いたい。
  176. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 耕地整理法が廃止されまして、今度土地改良法というものが皆さんの御審議によつてでき上つたわけでありますが、これは国家の河川道路の工事等も考えまして、今お話のような場合におきましては土地改良区を設けまして、その土地改良区によつて土地の実情に合うような整理というようなこともなすということもでき得べきではないか。かように考えるのであります。
  177. 玉置吉之丞

    ○玉置吉之丞君 私は農林大臣に対してお伺いいたしたいことは、過般の本議場におきまして我々の同僚田村議員から、食糧の増産に関して御質問があつたのであります。そのときの大臣答弁によりますと、戰争前は外地を混えて凡そ八千万石の米を確保していた。尚その外に差等において二千万石内外食糧を確保しておつたから、それで完全に我が国の食糧需給態勢が立つてつた。然るに終戰と同時に朝鮮を失い、台湾を失いました結果が、どうしても年間、現在の二合七勺の配給を基本としても大体年間二百二三十万トンの米、麦を入れなければならん。それに対しては只今ガリオア・フアンドとがイロア・フアンドとか、アメリカの援助によつてその食糧代金を支拂うことができているが、これを逐次我が国の経済を建直してその食糧代金を拂う対策の一つとして、農業の方面においても農村の工業化を行つて、そうしてそれによつて外貨を獲得したい。こういう構想があるのであるということで、これなければ食糧の増産を図ろうと思つても予定の通りの計画が進められんというような意味の御答弁がありましたが、それにつきまして私はこの御意見は至極尤もで私も同感であります。然らば果して農村の工業化を行うということにつきまして、今少しく大臣の具体的方策の二、三を伺つて見たいと思うのであります。御承知のごとく戰前は我が国は幾多の輸出貿易の中に外貨を稼いでおりましたが、なかんずく生糸であります。それがアメリカに輸出されて、多くのドルを稼いでいたことはこれ又御承知の通りの事実であります。然るに戰争中にナイロンというものが発明されてこの発達の結果、今日アメリカ戰争前のように生糸が出ない。又一面におきまして戰時戰後を通じて食糧増産のために、桑の木を切り抜いて藷を植えるとかいうようなことによつて生糸の出来高も減つておりますが、先ず農村を工業化して、而して農村にでき得るあらゆる品物を出して、この食糧代金を拂う一つの資源に持つて行きたいと、こういうお話はよく分るのでありますが、先ず第一点として伺いたいのは、今後の養蚕業に対する農林大臣のお考えをこの際伺つて置きたいと思います。
  178. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。戰前輸出の大宗と言われました生糸が戰争中にナイロン、ガロンという代用繊維ができまして、非常に輸出を阻害されているのであります。併しこの生糸のアメリカにおきまする今右の消費のパーセントは、繊維類のは一%かそこらしか今日ないと記憶いたしております。何分消費分量の多いアメリカでありますから、この一%が〇・五%上りましても非常にこの率は多いのであります。今アメリカにおきましても生糸とスフ、人絹との交織というものが非常に利用されておるようにもなつているのであります。何分今この貿易状況日本から商務官でも参りまして、向うの実情を見、又宣任をするような機会が與えられるといいのでありますけれども、今日の貿易は全く向うからこちらに参りました商人の、いわゆるバイヤーの一方的考え方によつてアメリカに出しているというような情勢であります。これが商取引の、而も一方的な考え方で出されておりまするから、将来の生糸の需要に対して必ずしも現在の状況を以て考えることはできないと、かように考えるのであります。殊にこの絹糸の生産費が日本におきまして特殊な環境から比較的安く生産され、又その質もいいというので、今ではイギリス、フランス等へ相当の輸出がありまして、アメリカもひとり自分だけが独占するような立場におられないというふうに、世界各国から絹糸の需要が起つて来ておるのであります。従つて私は決して絹糸の前途には心配することはないと考えるのであります。ただこの日本の蚕糸の生産状況でありますが、これが戰争中、戰争後五ケ年計画を立てまして蚕糸業の復興を図つたのであります。ところが機械設備のいわゆる製糸設備は予定通り進捗いたしまして機械設備はできました。ところが食糧事情のために桑園をぶつこわして減産いたしておりましたために、繭が非常に生産が落ちて参りました。製糸機能の六%もないというような状態であつたのであります。幸い政府が蚕糸類の統制をいたしておりまして何とか製糸業者も養蚕業者も不満足ながらも一貫した絹糸の生産が行われておつたのでありますが、今回これを統制を外しました結果は、非常に原料不足のために繭が暴騰いたしまして、御承知の通り思い掛けない暴騰をいたしまして、製糸業者はその企業採算を割らなければならないというような高値で原料を買うような情勢になりまして、一つ何とか措置をしなければならないような事態まで進んだのでありますが、今後これは平常に落ち著きまして春繭は恐らく製糸家が打算をいたしましてそう余り高くは買わないと考えるのでありますが、これはかような投機的な状態で蚕糸業者と製糸業者とが駈引をやつておるというようなことではいけない。どうしてもこれは地方的ではありますが、農村の副業として蚕糸業は重大な性質を持つておるのでありますから、養蚕家と製糸家と本当に結び付いた立場において生産をしておるのでありまするから、この蚕糸の生産に努力する。もう一つは一貫して織物へ行くくらいな気持でこれは考えて行かなければならんのではないかと思うのでおります、それで製糸業者は自分の繰糸能力に合わして、又自分の発見したいい品種を養蚕家に教え、又養蚕家も自分の作つた繭が又この製糸業者に加工されて糸になつたのだ。この糸は自分の作つた繭から糸になつたものだというようなこの共存共栄と申しますか、こういう気持で養蚕業者と製糸業者と結び付いて行きますならば、私は養蚕業の前途は決して悲観すべきものではない。かように考えておるわけであります。農村の副業として或いは農村の工業として考えますときに、今御質問の蚕糸業を一つ取上げたわけでありますが、この考え方で行きますならば、誠に私は農家の副業として養蚕が重要な位地を占めて行くのではないかと、かように考えているのであります。
  179. 玉置吉之丞

    ○玉置吉之丞君 只今の農林大臣のお話の通り私も蚕糸業なり生糸の将来については悲観をしておるものではありません。それであなたのお考えになつておる農村の工業化ということはこれは非常に大きな問題であります。農村が今日は窮乏に喘いでいるのではないかと言いますけれども、まだ今は昔に比べては比較的私は豊かな面があるのではないかというように思われるのでありますが、世界食糧の増産の状況から考えまして、日本の農村というものも、我々が講和会議も許され、そうして列国の間に一人前に発言権も持ち、又貿易も近くローガン構想によつて自由貿易に行くというような面等から考えましても、我々の力で食糧を自由に買上げられるときが来ましたら食糧がどんどん入つて来る。その結果農村経済というものの安定が欠けて来やしないか。又極端な言葉で申しますならば、農村恐慌にまで行くかも知れないというような心配を持つているものであります。そこで今お話の生糸を糸のままでアメリカに出すということは、これは容易に期待することができないと思う。現在の状況におきましては、そこであなたのお考えになつておる農村工業化を行うには絶好の私は機会であると思う。それは最近に織物消費税を撤廃する。それによつて農村が従来のようなふうに自分で以て……私何と譬えたらよいか、例えば外国にあるホームスパンのようなふうの比較的手荒いようなものでありますが、そういう糸でいろいろな洋服にまがつたような織物ができる。又編物もできる。又アメリカの人の嗜好に適するようなネクタイもできる。こう思う。それをあなたが農村の工業化を図ろうというような考え方があるとすれば、こういう面における対策として通産省の所管の下にある工業技術庁なり、何なりがいろいろな技術の指導をしておるのでありますから、こういう機関を利用して或る地方の一所にそういうものを模範的にやつて、それを広く農村に普及するというような考えをしなければならないと思うのであります。又政府が今取つておる税金の中にこの農村工業というものを非常に阻害しでおる面がある。例えば戰前において、私数量を記憶しませんが、相当の量が出たものにマツトというものがある。何と申しますか、疊表見たいなものでありますが、これを染色した、捺染したのであります。アメリカの中流以下の家庭に非常に迎えられて多く出ておる。今尚それに対しての購買力があるのであります。併しながら戰争等によつて火災のために我々は疊を大部分燒かれた。このために国内の需要のために海外輸出に出るというところまでは今までは至つておらないようであります。その疊表の輸出に向くような趣向をしておる。即ちこれを色染めしておる、捺染しておるというようなものに対しては、今日物品税がかかつております。ただ平の茣蓙にはかからない。これをかけるために、アメリカに仕向けるそういういろいろな趣向をした藁を作ろうと思いましても、その税のために非常に支障を受ける。こういうものは税額にすると非常に僅かなものです。あなたの考えておる農村工業化をやる一つの一端としてそういう税が輸出のマツトを作るために支障があるというならば、これを外して行くということを実際問題として考えなければならないと思います。又例えば日本の農村にできるもので一番輸出に簡單にできるものは、これは竹であります。これは非常に重宝がられて出る。これも今日は止つておる。ところがこの竹から作る釣竿であるとか、或いはステツキであるとかいうようなものにこれ又相当な課税が、物品税がかかつておる。そのためにこういうものを内地で売つて、そうしてそれが東京なら東京の銀座の裏に並べられて、今来ておるアメリカさんが之れを見て一つ使つて見よう。ところがこういうものを出す前に非常に重い税がかかつておる。それが何程もない額の收入である。あなたのお考えになつておる農村工業化を振興するということは農村の将来に備えて私は詳密によいことであると同時にこれによつて外貨を獲得するということになれば一石二鳥の狙いである。非常にその点は結構でありますが、ただ漫然と農村工業を起すというような單純な考え方ではいかんと思う。又例えば漆のようなものを以て輸出に適当なものを作ろうと思つても、国内に漆がない。そうすると気長い話かも知れませんが、今からでも適地に漆の樹を植える。或いは疊表に必要な、今の輸出のマツトに必要な植物を適当な所に植える。或いはあなたの県、滋賀県の湖水の附近、そういう所に適地の所があると私は思うのであります。そういうことを模範的にやつて輸出をやるというような具体的な考え方をして、具体的にそれを実現して行くということに私は進んで頂きたいと思うのですが、あなたの農業工業化ということに全面的に共鳴いたすためにもう少しそれに対して予算的の措置、即ちこれを指導しこれを開発しこれらに持つて行くもう少し気の利いた予算的措置を来年度の予算に盛り入れて、そうしてこの実現にあなたの抱負と経倫を現わすことを私は非常に希望いたしておるのでありますが、その点につきましてあなたの御所信を伺いたいのであります。
  180. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) いろいろ農村工業に対しまして御懇切なる御意見を承つたのでありますが、農村工業承その地方に特徴のある資材があり、或いはその労力と資材とその生産物の処理というこのことを勘案して指導して行かなければならんと思うのであります。第一農村工業と申しましても何千種類も今日はあるのでありまして、それを地方的に、こういうふうなものがいいということを撰択いたしまして、そうして農村の労力を利用して行きたい、かように考えておるのであります。ただそういう漫然と農村工業を叫んでいるのではなくして、そういう事業を興さんとする場合におけるところの資金を、或いはこれらの技術の指導等について予算の面に計画をいたしましてその途を拓いて行きたい、かように考えておるわけであります。
  181. 玉置吉之丞

    ○玉置吉之丞君 私はこの農林大臣考え方につきまして別に異論を挾むものではありませんが、ただあなたはそれを実現する上において非常に多岐多様なものであつて種類が多いということは私もその点は了承いたしますから、何か例えばあなたの県からこういうものができる、それを輸出の面に向けるためにこういう工業化をしたいという口だけではなくして少くとも実践躬行に移してそうしてここに呼びかける農村の方に呼びかけるというような、模範的なその適地適業なり適産物を利用してやるというためには私は相当の金が要ると思うのでありますが、この金を非常に有効に使われたならばあなたの言われておる農村の経済を建直し、又輸入された食糧の代金を拂うために又非常に大きな働きをするのでありますから、どうか私はあなたの考えていることは非常にいいのだからもつと積極的にこれを現わすということに努力せられることを希望して私の質問を打切ります。
  182. 田村文吉

    田村文吉君 農林大臣に伺いますが、先般私は本会議でお尋ねいたしました食糧配給増加に関する問題につきまして少しく私としてははつきりした御答弁を頂けなかつたのは遺憾に存じましたのでこの機会にお尋ねいたしたいのでありますが、御答弁は問題も簡單でありますから簡單で結構であります。それは私共は終戰後アメリカから二百万トンの食糧を入れて頂けば大体乏しいながら今日もやつて行けるとこういうふうに承つてつておりましたのですが、今年追加で約六千万トンばかりが殖えて参りました。それから来年は三百四十万トン、その外に大豆が二百万トン入る。こういうふうに相成つたということは国民とすればこれは今まで二百万トンで大体いいという筈であつたし、去年も相当の作であり今年も相当の作である。そうするとなぜそういうふうに余計入れて頂かなければならないようになつたのか。なつたということは闇を止めて、闇の生酒を止めて食糧の増配ができるのじやないかということを考えるのは当然過ぎる程当然なことなのであります。そこでこの間の御答弁の中に二合七勺は芋類を除いてすることが可能で奉るというようなお話を承つたのでありますが、それならば芋類を加えて三合の配給をするということも可能であるのではないかと私は考えるのであります。そこで大臣にお伺いいたしたいのは、どうなさつて下さるおつもりでおいでになるか。国民は実は首を長くして承わりたい、こういう気持だろうと思うのです。その点を一つ御紹介を頂きたいのであります。
  183. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 食糧基準量の増加でありますが、これは私は二合七勺とか三合とかいう問題でなしに、本当のカロリーと栄養を取つて貰いたいというのが念願であります。併し今贅沢を言える時期ではないのでありますから、今芋類を外して二合七勺ということはできないかとお尋ね下さると、私はできないことはないと思うのであります。併しアメリカから食糧貰つておりながら芋類という大事な食糧をどうでもいいのだ、食糧から外してしまつていいのだということは、少し日本アメリカ食糧の輸入に甘えると申しますか、安んじ過ぎるような気持がしやしないか。而もアメリカの輸入というものが必ずしも恒久的なものとも私は即断でき得ないと思うのであります。併しできれば今年一年でも三合の配給をしたいという気持を持つておりますが、さてこの輸入食糧の前途というものを考えますと、果してこの三合が永続して行けるかということも考えますと、十分愼重に考えなければならん。私の立場として三合配給をいたそう、芋類を外して二合七勺で行けるというように今お答えすることは控えさして頂きたい、かように考えるわけであります。
  184. 田村文吉

    田村文吉君 今日輸入食糧を頂いておる手前、アメリカ国民に対しても日本が三合に配給をするというようなことは遠慮したい、遠慮しなければならんというような立場の点も御推察のできないではありませんけれども、国民は今まで二百万トンで済んだものがその倍数近いものが入るならば当然米が余るのじやないか、食糧が余るのじやないか。アメリカとしては、日本で闇の生活をしておる今日、未だに汽車の中へ米を持ち込んだりいろいろなことで引つ捕まつて実にみじめな状態を曝しているのでありますから、こういうことはせめて一つ、三合で決して十分じやない、十分じやないが三合の配給をするということによりまして、余程闇の生活がなくなつて来て明るくなる。これはアメリカ国民日本を援助して下さる意味からいつて、それによつて闇のあれがなくなつたということなつて非常にあちらさんの御好意もよく届く、こういうことになるわけでありますから、この点は御当局がよくGHQにお話しになれば十分に御了解のできることではないか、こういうことは常識として皆考える。その常識と考えておることがなぜできないのか、こういうことについて国民としては非常に不満を感ぜざるを得ないわけであります。あなたの数字の上から言つてできるのだということが言えるのだが今連合国から援助を受けておる手前今直ぐどうということを言えぬのならそれでもよろしいのですが、その数字でできるのかできないのか。私はできる筈だ、国民もできる筈だ、こう考えているわけであります。この間お話しになつた価値の高いカロリーの高いものを取る。それも結構なことでそれは将来の問題として日本国民として大いに考えなければならん問題ですが、私の知りたいことはその点が重点なのです。その点を農林大臣から御説明を頂きたい。
  185. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 食糧の基準量というものは限度がありまして、多多ますます弁ずるというわけではありませんが、今田村委員のお話のごとくにせめていろいろな総合的に三合分だけ配給するということができる見通しがあるということだけでも国民は朗らかな気持を持つという御説でありましたが、その通りであります。私といたしましてはこの栄養のこととかカロリーということを考えて、食糧の基準量を殖やして行きたいという気持は持つておるのであります。併しどうも先般今回の補正を二百四十五万石に増加いたしました当時、これだけ増加したためにアメリカ国民は二千ドルの負担が殖えておるというようなことも、これは正確な計算ではありませんけれども向うでは言つておるようです。アメリカ日本人に食わしてやつているのだ。マツカーサー元帥も曾て我々衆議院が輸入食糧感謝の決議をいたしましたときのあの言葉にも、マツカーサーが司令官をしている間、私は日本国民の食糧だけは責任を以てやるから安心しろ。こういうマツカーサーの言葉がありましたことを記憶いたしますが、そのときも日本人は食糧に餓えて死ぬようなことはさせないのだ、こういう意味もあつたように記憶するのですがアメリカ日本国民の食生活に対しては責任を以てやつてつて呉れる今日であります。食糧事情が大分よくなつたわけでありますが、その事情の下に、アメリカとしまして世界食糧事情がよくなつた、日本食糧生産も増強したから、もう二合七勺よりも三合ぐらいまでやらしてもよかろうという気持を推察することはできますならば、私は必ずやこれは実現し得られるものと考えておるものでありますが、無論当てにできないという輸入食糧の数字でありますけれどもあれが当てになるものとしますれば勿論三合の配給は必ずできることと私は考えておるわけでありますが、これをここで来年から三合にするということは私はこの際言い得ないと思います。
  186. 田村文吉

    田村文吉君 余り御追求申上げるのもどうかと思いますが、これは非常に国民が関心を持つておりますことと、今度御承知のように若干の税が減税された。汽車賃は上るし、いろいろなものが上るということで勤労階級のために非常に困るというようなお説もたびたびこの本会議であつたわけでありますので、さような際にこそ、是非三合にして頂くならばこの際一つ配給して貰う。めいめいが明日の日から食糧に対しては闇は要らん、こういうことになりましたならば、如何に世の中が朗らかになるとだろうと考えて、これが即ち米国民が我々に寄せて呉れた厚意が実を結ぶ時期ではないか。こういう点から考えまして、農林大臣はG・H・Qに対してよくその意思を御伝達下されて、何とかこの問題を早急に御解決願えるように考える次第でありますが、再来年はどうかという御心配がありましたが、国民は復興して参りますればどんどん輸出もする。御援助がより以上できなければ金を出しても日本国民は買つて行くという方法も段々開けて参つておるのでありますから、再来年のことなんぞ御心配なさる必要は何もないと考えております。それに対して御盡力なさるおつもりでございますか。
  187. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 誠に御意見の通りであります。私先程申上げました通り、できれは三合以上勾配給いたしたいという考えを持つておるのでありますからその実現には関係方面との連絡もあるわけでありますが、努力をいたすつもりであります。
  188. 田村文吉

    田村文吉君 もう一つ、簡單な問題でありまするが、この間やはりお尋ねいたしました食糧自給自足に関する問題で、大臣のお答えではできるだけしたいけれども、輸入食糧も順調に貰えることでもあるから、精々増産には努力するが自給自足についてははつきりとしたことはおつしやらなかつた。私はこの点が今後日本の国策を決定する上において非常に重大な点であると考えたから今日午前総理大臣にお伺いした。それに対しては自給自足をやりたい気持でいるということを御返事になりましたので、私はその点を大いに意を強うしたのでありますが、さて今日千二百億からの輸入食糧貰つておるものが、幸いこれは入らないでも日本で賄うということになりますと、日本の将来というものはもつと有用なものをどんどん輸入ができまして、生活水準も昭和五年—九年に復活することもでき得ましようし、産業も発達いたしましようし、これが本当に復興日本を建てる基本をなすわけでありますので、どうしてもここで自給自足という方針を一つお建てになつて、その方針で進むということを御決定にならないといかんので、ただできれば一つしたいのだが、精々やろう、増産をしよう、こういうような心構えと技術をいろいろ検討した上から、又過去のいろいろの経験から食糧の自給自足というのは必ずできると思います。できるのだから国民よ立ち上れ、皆んな、一緒に食糧の自給自足をやろうじやないか、そういつた御決心と、精々やろうじやないかというのとは、雲泥の相異があるのであります。今の芋を主食の中に入れて配給することも、これは国民としての食糧を自給自足する上から当然我慢しなければならないということを覚悟するわけであります。でありますので、その点を私は農林大臣がまだ奥歯に物が挾まつたような言い方をこの間からなさつておりますが、はつきりと自給自足なさる御方針で行くのかどうか。若し自給自足をなさる方針ならば、これを二年でやるとか三年でやるとか、それは余り日が経たなくても完成できると思います。でありますから二年なり三年なりの間に北海道の土地の開拓もやるがいいし、又内地における先にお話のあつた一毛作を二毛作に直すような土地改良もやるとかいろいろその方面に対する方途はありませう。それには十分にその点についての予算を来年度から獲得なさいましてそうして二年なり三年の間にはその目標の下に国民よ一緒にやろう、こういうふうにお立ちになるべきじやないか。今のように何だか中途半端な精精食糧増産をするが或る程度足りないから、食糧外国から持つて来る、外国から貰うことも大して面倒じやない、こういうふうになりますというと、農村も本当に意気のかけ方が違う、国民の決心も違う、こういうことになりますので、この点は重大な問題だと思いますので、果して食糧の自給自足を目してお立ちになつているのか、又目されるとするならば、二三年ということでこれを完成する御見込になつているのかどうか、その点を一つ伺いたいと思います。
  189. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。自給自足ということにつきましては、私は常に叫んでおるのであります。併しそれは見通しがあるかという問題でありますが、ここに厄介な問題は大巾の増加でございます。それでありますので、自給度を高めて行くということを申上げておるのでありますが、今自主的な食糧の輸入状態でないことは御承知下さることと存じます。が、アメリカから若し日本に対して援助資金が投じられるならば、食糧よりもむしろ工業原料として入れて貰いたい。日本は南方諸国なり朝鮮方面の近いところの食糧を輸入したい。これが私の考え方でありますが、そういう自由も許されない今日であります。併しこれはいつまでも続くものではないと存じますが、日本といたしましては、自給自足は自分の国で作つたもので自分の国が食べて行くのだ、こういう考え方で行きます場合に、この人口の増加をどうするかという問題が起きて来るのであります。この増加します人口は、工業力の振興によつて外国貿易をしてそれによつて食糧を確保する、これも間接的ではありますが、自給自足の途である。十五貫の繭をアメリカに絹糸として送つて、十五石の小麦として入つて来る、これも日本の労力で稼いだ食糧の自給自足だとかように考えております。それでありますから、私はできるだけ早く日本の力によつて食糧の自給自足の途を開きたい、こういう気持を持つのであります。今日のあらゆる工業を総動員してその能力を発揮して増産に努めたい、かように考えておるわけであります。
  190. 田村文吉

    田村文吉君 私の期待と少し外れていて遺憾に存ずるのでありますが、自給自足は必ずしも食糧だけでやるものでない。他の物でも自給自足をやるのだというようなことでありましたが、その唯一無二の根拠は人口が殖えるじやないかという答弁でありました。これは少し議論になりますが、我々は明治時代においては食糧は完全に国内で自給自足をしておつた。無論凶作のような場合には、我々は外国より外米を入れて貰つた経験もありまするが、昔人口が三千万であつた場合においても国内では自給しておりましたし、明治の末期において六千万の人口になりました際にも農業の発達につれて自給自足ができたのでありますから、私は将来九千万になろうが、九千五百万になろうが、一億になろうが、今日の進歩した科学技術を応用するところに世界で恵まれた農業国日本がなぜ自給自足ができないかということを疑わざるを得ないのであります。必ず自給自足はできるのだ、ただ能わざるにあらずなさざるなりと私は考えます。この点が農林大臣は、それは農民も人口が殖えるから自給自足ができないということを初めから決めて駄目だということは甚だ遺憾なことでありますが、私は日本の農林大臣としたらば、是非とも食糧は自給自足するのだ、それに対する各般の方法をお立てになつてお進みになるべきものでないかと私は考えたのでありますが、尚農林大臣の御意見を再確認する意味で私は自給自足はできるのだ、できるんだがそうするのかしないのかという御方針をはつきりともう一度承わりたいと思います。
  191. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 自給自足はできるできないという問題よりも、私は日本の耕土を上げて増産に努力する。自給自足ができるから一生懸命にもう一つやろう。どうせ外国から入るのだからそんなに努力しないでもいいと、こういう気持でなしに、いずれにありましてもこの耕土の利用率を高め食糧増産するということに努力いたしたいと考えております。殊に日本といたしましては御承知の通り災害の多い国でありまして、正直に聞きますと今年あたりでも千二百万石も減收だと各県知事が言うて来るような、こういう災害、天災の多い日本といたしましては、この自給自足をすることについては相当の備荒貯蓄と申しますか、準備考えなければいけないのでありまして、私は排他的な鎖国的な自給目足ということは考えてはならない、できるだけあらゆる自給自足ができようができまいがとにかく私達は十二分に利用して行く、そうして今貰つているわけでありますけれども、足らんければ工業力の振興によつて外国から貰うということで行くのでなければならんとかように考えておるのであります。
  192. 寺尾博

    ○寺尾博君 私は農林大臣にお伺いいたしたい。これからの農業の将来については我々は非常に心配しているのであります。農民は骨身を削つて食糧を生産している。戰々競々としてその供出に備えている。将来の農業は農業経営の点においても技術の改善の点においてもまた生活の点においても改善すべき点は非常に多いことはどなたも御承知の通りでありますが、朝暗いから夜暗くなるまで骨身を削つて働いている。この労働をやつている農民には新らしい進歩をみずから開拓するだけの身体の余裕も時間の余裕も頭の余裕もない。而して今後のいろいろの経済事情の変動によつて農村が非常な不況に隠ることはひとり農民の不幸であるだけでなしに、国家的に重大な関係のあることは言うを待たずして明らかなことである。それにはどうしても今後の農業と農村政策を強固にするところの強力なる政策を立てて行かなければならない。この点に関しまして農林大臣その他関係当局にお尋ねしたいことは沢山あるのでありますが、今晩はそのうちちよつと一つだけお伺いしたいと思う。これは農林大臣をお困らせするようなむずかしい問題じやない。私の言うことがお分りになれば直ぐ若干の予算的措置を講じさえすれば恐らく遠からざる将来において数年のうちに少くとも四百万石ぐらいの米の増産ができる。或いはそれにもう少し肥料を足して呉れれば六百万石、或いはそれ以上耕地を殖やすことなくして、而今までよりも労働をむしろ緩和して増産ができるのみならず、品種改良の効果も上ります。品種改良それ自体じやなくて、いろいろな点において農業経営の改善をしておる的確な事柄が一つある。それは先程高橋委員が單作地帯の対策として苗代の改良とか何か僅かばかりのことを加えるに過ぎないというようなことを言われましたが、その苗代の問題であります。これについて最近非常に有力なる技術が発生しておる。これは保温折衷苗代というものであります。段々これについて私は調べ又全国各地で点々と試験しておるところの状況を調べて見ると、非常に合理的であり、科学的であり、而苗代というのは始めて十日ばかりというものは徹夜で以て苗代の看護をするわけです。夜水を深くかける、そうして苗を保護する。その水が引くといけないから、つまり水が浅くなれば苗が寒さに遭つて風邪を引いちやう。それを保議するために徹夜で以てつまり弱い赤ん坊を看病するようなものである。で、そういうことをしないで而も非常に丈夫な苗ができる。そうしてこの期間も早く田植ができ、或いは普通のときよりも早く種を蒔ける。それに伴つて收穫が早くなる。どうしてそれが行われるかどうかというと、苗代に油紙をかける。事柄は非常に簡單なんですけれども、これは考えてみると非常に学理的な点がある。実際に東北地方やその他北陸、或いは長野県或いは島根県でやつてあるのを、私はこの夏それらの地方を視察して非常に重大な技術になつておることを発見した。これは田植が早くなるが故に労力の分配がよくなる。一度に田植しなくて済む。それから刈取が早くなるからして今まで裁培のできなかつた遅い品種の裁培ができ、それだけ増收になる。又苗が非常に丈夫で謝るがために、肥料を余分に使つてこれを有効に利用する。そのために長野県のごときに従来精々七俵ぐらいしか穫れなかつたところが十俵穫りが普通になつておるところが少なからずある。そういう極端な増收を考えなくても、普通の地帯で一反歩当り一俵即ち四斗の増産は平均で容易である。で而もこれは農民が何らの訓練要しない。この方法がパンフレツトになつておりますが、これをその通りやりさえすればいい。素人で立派にできる。そしてこれを適用し得る面積は、今まで作られておる品種等から調べて見ると、全国に百十四万町歩くらいある。でそうなると、これによつて四百万石、或いはそれ以上の増産が、これが実現されさえすれば忽ちできる。でいろいろごちやごちやしたことを考えるよりも、先ず第一にこういう実現性のあることを農林大臣は実行して頂きたい。先程田村委員に対する御答弁で、非常な熱情を持つて食糧の増産を、自給はとにかく増産を大いにやるという考えでおるならば、よくこの技術の真価を認識ざれることが必要である。実は今年七月の十八日でしたか、新潟県でもつて全国保温折衷苗代の大会を開きまして、全国会議を開きまして、その結果として決議案によつて農林大臣に請願をしておる。でこの油紙が一反歩に要する苗代を十坪と考えまして、一坪当り六、七十円かかるのですから、一町歩に対する油紙代が六千円くらいかかるのであるが、その費用を助成することを歎願しておる。これは農民は一方では金詰りで、それがみずからできない。それから一般の農民はこれがまだどれだけの価値があるか分らん。従つて政府はその実際を農民に広く示すために、この紙の助成をして、そうして実物教育でもつてこれを拡める。で、かようなことを二年続けてやれば、もう一遍これをやつた者は止められない。自力でこの真価を知つて普及するようになる、恐らく……。二年くらい続けて二億か三億の油紙代の助成を出せば、やがて遠からず四、五百万石以上の増産が期待し得るのみならず、農業経営が労力の関係からずつと楽になる。苗代というて非常に卑近な、簡單な、つまらん、小さな問題のようであるが、この技術が包含するのは存外大きいのであるから、農林大臣はこれに対して十分なる理解をお持ちになつておるか。そうしてこの油紙の助成に対して、これは今日大臣が強力にこれを助成するという御声明があれば、この指導その他の方面の技術者が活動ができる。幾らこれを指導しようと思つても、この油紙が手に入らないとなると、来年度のこれができない。今この機会に来年度早早、四月頃から始まるところの田植に対して、政府がこれに対するところの声明を十分にしてこれを強力に進めて頂きたい、こういうことをお願いしたいと思うのでありますが、これに関する農林大臣の御所見をお伺いいたします。
  193. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 寺尾さんから專門的立場から承つたのでありますが、この保温折衷苗代はすでに北海道等においては行われておりまして、政府もこれに助成をいたしておる。北海道庁もこれに向つて相当の経費を投じておりましたが、昨年はこの油紙が途中で破れたとかなんとかで問題が起つて、北海道会でも問題が起つておるわけでありますが、政府におきましても、明年度においてこの保温折衷苗代の助成をいたしたいというので予算の計画を立てておるわけでありますが、私はこの隠れたる栽培法と申しますか全国に非常にいろいろの栽培法があります。苗代問題でも京都地方の黒沢式と申しますか、その原理がただ理窟でなしに自分らの長い経験によつて考え出したという、科学的な説明は分らないが、何となくいいという、そうした篤農家と申しますか、事実があります。茨城においてでありますが、秋陸苗代を拵らえまして種籾を蒔いて置いて、そうして寒風に曝された抵抗力の強い苗を作るという一つ方法考えておりますが、いろいろな方案があります。私はこの隠れたる篤農家の長い間の体験せられましたのを取上げて行き、そうしてこれに科学的説明を加え、これを普及員の手によつて普及いたしたいとかように考えておるのであります。農事試験場が政府に施設いたされましてから、相当の年数が経つのでありまするが、農事試験場に相当今日まで耕種の上においていろいろ品種の上において貢献されておりますが、こういう増産の面につきましては、余りに象矛の塔と申しますか、なかなか実用向きの発見か少いのであります。少いこともありませんかも知れませんが、とにかく民間にこういう経営ができますと、それを批判する場合において、どうも何とか狹量な立場で批判するような趣きを私は考えておりますので、地方にあるあらゆるこういう篤農家の体験による耕種方法を取上げてそうして以てこの普及に進みたい。中にはいい加減なものもありましようか、中には、殊に理窟抜きにして敬服されるものもあり、又これを科学的に説明して、がつちりと理論付けられるやり方もあろうと思いますので、そういうようなものを一日も早く衣へ出して普及いたしたい、かように考えておるわけであります。この保温帆衷苗代もすでに昨年来北海道、東北方面においてこれを利用いたしております。又来年度の予算においても、どうかしてこの実現に寄與いたしたいと労力いたしておるようなわけであります。
  194. 寺尾博

    ○寺尾博君 大臣は技術者ではないのですからして、お分りにならない点があるのは無理もないことで、決してかれこれ言うわけではありませんか、保温折衷苗代は北海道においてはやつておらないのでありまして、それは従来の温床苗代というものであります。それから又いろいろ篤農家等の発明したものがあるから、それをやらしたい、こういうお考えでありまするが、そういうものは非常な面倒が要つて、労力がかかつて素人ではできない。なかなか経験を要する。私はそういう従来の篤農技術は、今日の労力というものを要する場合においては、むしろ排斥する。今度のこの保温折衷苗代はそういう篤農家式のものではない。政府がただ油紙の助成をやれば、この増産が確実に実現する。従来のそういう技術とは違うのであります。そこで保温折衷苗代の本当の価値と意義とその効用というものを、尚それ以上に御認識になりまして、これには非常にこの一つだけを強力にやつて頂くことによつて確実な増産ができる。これだけは私は保証いたします。荷只今の御答弁では満足いたしかねますので、尚御再考を願つてこれに対する強力なる手を来年度予算において、お打ちになる、他のいろいろなことをやられると申しますが、いろいろなことはこれは却つてただ農民を余計に労させることになり、又非常に技巧を要する、しくじりが多い。こういうことでなしに、科学的の本質を持つておるこれは特別なものであるが故に、特に私はこの問題を取上げて農林大臣に御意見を伺おうとしたのであります。尚それについてのお考えをお伺いしたいと思います。
  195. 森幸太郎

    國務大臣(森幸太郎君) 今予算編成の途中でありますから、農林省といたしましては是非そういう方面の予算計上をいたしたいと今努力をいたしておるわけであります。
  196. 岩間正男

    ○岩間正男君 今日はもう時間も大分遅くなりましたので、この辺で散会の動議を提出いたします。    〔「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) 岩間委員の動議の通り散会いたしまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) それでは散会 をいたします。    午後七時二十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     黒川 武雄君    理事            内村 清次君            高橋  啓君            高橋龍太郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            堀越 儀郎君            岩間 正男君            木村禧八郎君            岩男 仁藏君    委員            岩崎正三郎君            岡田 宗司君            木下 源吾君            栗山 良夫君            岡田喜久治君            城  義臣君            深水 六郎君            田口政五郎君            中川 幸平君            西川 昌夫君            西川甚五郎君            平岡 市三君            岩木 哲夫君            小杉 繁安君            仲子  隆君            深川タマヱ君            藤森 眞治君            油井賢太郎君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            伊達源一郎君            玉置吉之丞君            藤野 繁雄君            帆足  計君            松村眞一郎君            池田 恒雄君            小川 友三君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    農 林 大 臣 森 幸太郎君   国 務 大 臣 山口喜久一郎君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    地方自治政務次    官       小野  哲君    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    厚生政務次官  矢野 酉雄君    林野庁長官   三浦 辰雄君    電気通信政務次    官      尾形六郎兵衞君    物価政務次官  坂田 英一君    中央経済調査庁    次長      奥村 重正君   説明員    会計検査院    (検査第二局    長)      小林 義雄君