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1949-11-28 第6回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十八日(月曜 日)   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員の選任の件 ○昭和二十四年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和二十四年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和二十四年度政府関係機関予算補  正(特第一号)(内閣提出衆議院  送付)   —————————————    午前十一時十三分開会
  2. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) これより委員会を開会いたします。  昨日御承認を頂きました薪炭需給調節特別会計予算に関する小委員の指名を、失礼ながら私からさせて頂きます。  緑風会藤野委員社会党木下委員民主党高橋委員無所属懇談会池田委員新政クラブ岩男委員共産党岩間委員民主自由党中川委員、以上の方々に小委員をお願いいたします。  ちよつと速記を止めて……。    〔速記中止
  3. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 速記を始めて……。大変お待たせいたしました。それでは総理大臣に対する質問堀越委員からお願いいたします。
  4. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 私は次の三点について、総理の御所見を伺いたいと思うのでございます。一つは、講和会議後の国内治安の問題であります。総理はたびたび委員会なり、本会議において、仮定に基く問題に対しては御答弁をなさらない旨の御声明があるようでありますが、治安の問題は仮定じやなしに、講和條約を締結すれば当然起つて来る問題であり、而も国内においては最もこの点について不安を感じておることじやないかと思うのであります。これは言わなくても御承知と思いまするが、従前から連合軍が駐剳をしておるために、そのお蔭によつて極右極左運動が相当鎭圧されておるということは事実であります。それに伴つて非常に犯罪が多くなり、治安というものがすでに不安を感じておるのであります。これは仮定じやなく事実の問題でありまして、講和会議成立して、駐屯軍引揚げた後の国内治安というものをどう処理して行かれるか、国民全体に不安を與えないようにするには、政府はどういう方針をとつて行かれるか、これをお伺いしたいと思うのであります。  二番目には、政府道義心の問題であります。これは今度の補正予算において、農林省の問題でありますが、政府特別機関として薪炭赤字のために補充納という費用を計算しておるのでありますが、この問題に対しては、この予算委員会においても特別委員会が設けられて、徹底的に究明される筈でありますから、いろいろの資料を持ち合せておりますが、この点については申しませんが、いずれにしましても、この問題については幾多の刑事問題さへも起るということであり、すでに国警の発表されるところによりますると、手を付けておられるいろいろな問題が各地に起つておる。国民が非常は疑惑の目を向けておるのであります。勿論この問題は長年の間に起つた問題で、吉田内閣のひとりの責任ではなく、むしろ跡始末であるという考えを持つておられるかも分らないのでありますが、国民からいたしますると、政府がやつたことは国民跡始末をさせる。政府のやることに対しては非常に不信を抱くのであります。むしろ私達の考えとすれば、この問題を徹底的に究明して、事実を明瞭にして、国民に納得させた上で、その尻拭いをさせた方がいいのではないか。うやむやのうちに事情もはつきり国民に分らせないで、ただ赤字を拭うというようなことでは、今後の政府のやられることに対するすべての信頼というものが国民から失われるのではないか。これは直接は農林大臣の問題であると思うのでありますが、併し政府全般の問題として、総理はこの点についてどう考えておられるかということ。  第三番目には、科学技術振興に対して政府は今後どういうような考えを持つて行かれるか。現に通産省から最近出しました技術白書というものによつても、日本科学技術は非常に遅れており、企業合理化といつて根本はこれであるというように強調しておられます。今後の貿易振興といい、貿易の進展によつて日本の復興が成り立つことは明瞭でありますが、これに対する根本科学技術というものに対する政府考え方は非常に冷淡でありはしないか。現に今度の予算措置を見ましても、大日本学術会議費はどうしても十六億からの予算がなければ十分な研究ができないと言つておるにも拘わらず、政府としては僅かに四億五千万円しか認めておられない。先程申した刑事問題にも、すでに申したように、非常に不信な問題に対して五十四億という金を計上されておるのにも拘わらず、大切なこういう問題に対して非常な削り方をしている。根本において非常に考え方が違うのではないか。日本の将来に対してこういう点にもつと熱心な考えをお持ち頂かなければならないのではないかという点を非常に憂慮いたしまするので、私はこの三点について総理の御意見を伺いたいと思うのであります。
  5. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 第一の講和條成立後の治安問題についてお話がありましたが、講和條約が成立したと同時に、米国軍引揚げるということはあり得るし、ないこともあり得るのであります。というのは、これはしばしば議場においても説明いたしましたが、講和條実施監督のために、その後で以て連合国その他の兵隊が駐屯したことは、この前の第一次世界戰争後においてもあつたことであつて、今度の場合におきましても、講和條約がどういう形でできるか知りませんが、場合によりますと、その條約実施のために或る兵隊が残る。或いは尚講和條成立後に、日本治安が乱れるということは 結局講和條約の実現にならんということになりますから、連合国或いはアメリカ軍講和條成立後と雖も、駐屯したところが、これは從来の慣例から言つて見ても、以て異例とすることはできないのであります。従つて相変らず日本治安には相当の考慮を拂つて呉れるであろうと思います。又日本警察の機能については、現在では決して満足すべきものとは思つておりません。これは装備の点についても、又は組織の上においても、これは十分もつと整備しなければならんと考えておりますから、これは財政の余裕と共に整備をする考えであり、又これは当然であると思います。(「それでよし」と呼ぶ者あり)  それから又薪炭問題については、これは五十何億かの赤字が出ておる。それをうやむやのうちに整理するということは、断じて政府としてはいたさない筈であります。又五十何億の赤字が單に赤字なつたか、或いは又未納代金というようなものがあるか、いずれにしても事実を明らかにするつもりであります。  又科学振興については予算が少いというお話でありますが、併しこれは政府財政状態とも考え合せての話なのでありまして、そのために科学振興を怠つておるという考えはございません。科学振興のごときは、單に政府だけの力では及ばないことであります。民間においても協力するということでありませんと、例えば外資が導入されて、或る企業が興つて来る、又外国技術を応用するなり、或いは導入することによつて日本の遅れた技術を進歩発達せしむるということも考えられるでありましよう。單に予算面だけでなくして、民間においても協力して振興をいたさなければ、戦争前後からして大分日本技術が遅れておりますから、これは政府としても十分考えております。例えば石炭の問題でありますが、石炭の増産の問題にしましても、日本技術が遅れておる。或いは日本技術だけですれば、現に海底に埋つておる鉱脈に手を付けるとしたところが、アメリカ技術と比べて見まして、余程劣る。例えば高島炭坑のごときは、水面の中にやはり鉱脈が入つていて、これに手を付けるには日本技術だけでは三年か、四年かかる。併し外国の技師の話によるというと、六ケ月でいいというような話などもあつて、現にこの問題は一度考慮したこともあるというようなわけで、現在外国技術の導入、或いは日本技術の発達、科学の進歩を政府としては軽々に考えているわけではないのであります。問題が具体化するに從つて外国技術日本に入つて来ることは、政府としてもますます歓迎いたしたいと思つております。
  6. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 只今御答弁頂きました第一点の治安の問題、警察装備は決して十分でない。将来予算と睨み合せて装備、その他の点において改善を加えて行く、だから治安の問題はそう心配はいらないとおつしやいましたことと、講和條成立後直ぐに駐屯軍引揚げるものでない。一部は残るだろうし、その一部は條約が実施されるかどうかという、その監視の意味があるけれども、治安が乱れれば條約が実施できないのだから、そういう意味にも駐屯軍が残るのだから、決して講和條約後も国内治安は心配要らないという御答弁のように伺いますが、そういうふうに了解してよろしゆうございますか。  それから二番目の薪炭赤字の問題でありまするが、決してうやむやのうちには処理しないと声明されたのでありまするが、すでにこの予算衆議院は通過しているのでありまするから、そうすると、衆議院で通過する前に、すでに事明瞭にされたのであるかどうか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  7. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは予算委員会において農林大臣或いは大蔵大臣その他からして、この赤字補填については十分説明をいたして、衆議院においても納得したことと私は了解しております。
  8. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 その点について押して総理にお願いをして置きたいのでありますが、すでに予算が通過していることであり、本院としてもあと三日間で審議をして通過するように努力しなければならないわけでありますが、この問題は明瞭にして、国民が納得の行くようにされんことを切に希望いたします。質問を打切ります。
  9. 木下源吾

    木下源吾君 この機会総理大臣に一つお尋ねしたいと思うのですが、すでに御承知通り講和問題と関連いたしまして、国民は異常な関心を持つているので、我が国安全保障講和條約に関連してでございます。世界情勢は冷たい戰争と言われる状態が非常に新らしい段階に発展しているように思われる。例えばフランス、ポーランドの問題、東洋における中共とアメリカ外交官の問題、こういう問題が新たに登場して来ている場合において我が日本が今講和の問題が又著しく舞台に上つて来ているのであります。そこで総理は先ずこの講和に対しまして、全面講和單独講和かということについて、先ず御所見を伺いたい、かように考えるのであります。従つて次に又質問を継続いたします。
  10. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) この問題はしばしばこれは参議院においても申したと思いますが、單独講和がいいか、全面講和がいいかと言えば、無論全面講和がいいのであります。併し日本において單独講和を望むとか、或いは全面講和を望むとかという選択余地があると申すよりは、これは想像でありますが、結局ワシントンにおいて、極東委員会講和問題が提出せられて、連合国とし如何なる態度をとるかという先ず問題から始まつて行つて、その結果全面講和になれば、日本として誠に仕合せなことであり、又世界の平和がこれによつて確保せられると申すか、或いは増進せられるわけでありますから、誰も全面講和がいけないという者はないだろうと思う。ただ国際の関係から言つて見て、極東委員会において全面講和というところまで持つて行けないという場合は想像し得るのでありますが、現在どつちがいいかという問題はない筈だと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
  11. 木下源吾

    木下源吾君 私は併しながら日本の場合といたしましては、この講和問題に関連しまして、問題となるのは賠償の問題とか、領土の問題とかというものがありますが、尚、非常に重要な問題は安全保障の問題だと考えるのであります。そこで若し單独講和をしなければならんという場合において、我が国安全保障が確保できると考えられておらるるかどうか、この点についてお伺いいたします。
  12. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは條約の内容になる話であつて日本の安全が保障されないような條約は多分できないと思います。又連合国においても希望しないであろうと思います。もともと平和のために講和條約というものを結ぼうとしておるのでありますから、相当安全については連合国においても考えるであろうと思います。そこで私が條約の案文を見ないうちに、今日こうだ、ああだということは差控えたいと思います。
  13. 木下源吾

    木下源吾君 ただこの際に考えなければならんことは、我が国世界唯一の非武装国家であり、そうして憲法において戰争も放棄しておるのでございます。この安全が保障されるということは、私は單なる單独の一部の講和では不可能ではないか、かように考えられるので、総理は今條約の内容においてこれが決定され、安全保障が得られるであろうというお話のようでありますが、尚安全保障につきましても、いろいろの形がとられ得る場合があると考えます。例えば太平洋條約であるとか、或いは又一国の保障を得るというようなことも考えられるのでありますが、私は非武装国家である日本安全保障を確保するためには、飾くまでも全面講和でなければならない。こう確信しておるものでありますが、併しその自由が今なかなか得られない、そういう選択の自由が我が国予算においてなかなかそれはむずかしいとするならば、我が国において今日差当りこの講和問題に対しては、国内において全面講和への可能を達成させるあらゆる政策が行われなければならない、かように考えます。そこで私は総理は今行われておる政府政策が、全面講和への方向を具体的に進めるための政策をとつておらるるかどうか。こういうことについて私は御所見を承わりたいと思うのであります。私の見るところでは、この本年度の予算並びに補正予算を通じて、或いは又その他の政策を見まして、必ずしも全面講和への努力が続けられておるとは考えられない、甚だ遺憾ながら考えられないのであります。例えばこの予算面に現われておるものは、あらゆる面から……私は抽象的に申し上げますが、金融独占資本擁護に非常に偏重しておる。こういうように考えるのであります。他方においては勤労者労働者に対するところの権利或いは経済的の待遇、そういうものは誠に私は稀薄であると思う。具体的に言うならば、国家公務員に対する政治活動の禁止、或いは給與のストツプ、又他面においては物価の高騰が大衆に及ぼすところの重圧、こういう点を考えて見まして、私はどうもこの国内政策全面講和への指向する具体的な進み方ではないのではないか。かかる政策の遂行はおのずから部分的、單独講和への方向に滑り込むのではないか。かように危惧されておるのであります。考えるのであります。私はかるが故に、我が国に與えられておる至上の使命であるポツダム宣言を忠実にこれを履行する。この一部にありますところの我が国の古い封建的な諸勢力を駆逐し、そうして非民主主義的な一切の障害になるものをなくする、こういう方向に対しても又政府は本当に力を入れておるようにどうも考えられないのであります。これは私一人の見解であつて呉れれば幸いでありますが、この政策世界の目がそういうように見られたとするならば、私は講和への基礎的條件というものに対して、日本が忠実にポツダム宣言を履行しておると言われない。具体的に申上げるならば封建的諸勢力の一部は退陣したようにも見えております。又財閥も解体されたように見えております。軍閥はすでになくなつたような形でおります。だが併し、我が国の官僚のいわゆる閥というものは相当根強いものがあり、今日尚国民の上に相当な権力を持つておることは事実であります。かかる場合において今回人事院が高級官吏の試験を行うということに対しまして、而も政府態度はこれを喜ばないというようなことが新聞に伝えられておる。或いは又封建勢力をなくするために、地主勢力を復活させないようにしなければならないということは当然であるにも拘わらず、現内閣政策はややもすれば古い地主勢力の温存を助長するがごとき政策をやつて、そうして注意のようなことを受けておる。かかる財政経済の面から見ましても、又政策の上から見ても、真にポツダム宣言を忠実に履行しておるかどうかということに対しては甚だ遺憾ながら疑わしいのでありまして、このことはすでに世界の日が我が国を十分に見ておると考えられる。かかる際において、真に総理が、只今申さるるように全面講和を希望するものであるということを、具体的事実を以て証明される熱意があるならば、そういう熱意に溢れておるならば、現内閣のかかる政策を先ず変更しなければならないのではないか、かように考えておるのであります。從つてこの講和條約は我が国安全保障の問題と絡んで、このことは同時に世界情勢から、国内の政治問題に関連し、一人々々国民生活に至大な関係を持つておるのでありまするから、総理はこの機会においてこれを国民世論に問うて、如何にせば全面講和を確保することが、できるかということについて、国民世論に問うの御意思が、あるかどうかということを端的にお伺いするのであります。
  14. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 今政府は、少くともポツダム宣言を重視しておらんというお話でありますが、これは私の毛頭考えておらんところであるのみならず。今日日本ポツダム宣言を履行しておらないという非難はあなた以外にどこの国にそういうお話があるか、(拍手)私は寡聞にして聞かないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)又政府として封建勢力を維持するなんということは毛頭ありません。(「認識不足だ」と呼ぶものあり)私は始終施政演説でも申したように、民主主義の確立に徹底したい、この趣意で以て終始いたしております。又国民世論に問うということは、私は始終申しておるのでありますが、総選挙において民自党か、相当の成績を得たということは世論の現われである。更にこの際、講和條約を目の前にして国民世論に問うことは、どういうことを意味するか分りません。総選挙をいたすつもりはありません。一応お答えといたします。(笑声
  15. 木下源吾

    木下源吾君 総理は少し激昂しておられるようでありますが、(笑声)私はそういう意味質問をしておるのではなく、真に我が国の現在は非常な危機に直面しでおるのである。誰しもポツダム宣言を忠実に履行しようという考えは持つてつても、尚それを実行する上において、方法等において足らざる点があるのではないか、こういうことは十分私はおのおの反省する余地があるのではないか、ポツダム宣言にありますように、我が日本において国民責任を負うところの民主政府が確立するならば、占領軍は撤退せらるべしと明記せられておるのであります。今日占領軍が尚日本におるということそれ自体は真に国民責任を負うところの民主政治が確立せられておらないということを私は言わざるを得ない。併しこのことは一朝一夕のことではございません、民自党多数と雖も、私は決してこのとは一朝一夕に行えることではないと考えるのであります。ただ問題は、そのポツダム宣言を履行するために、忠実に最も具体的に力をいたしておるかどうかということについては、これは十分総理大臣としても、又国民としてもみずから反省しなければならないところと考えておる。現在で尚足りると、かようにおつしやるということは、私はまだ反省の足らざる点を露骨に現わしておるのではないか、かように考えるのであります。
  16. 高橋啓

    高橋啓君 総理大臣に伺いたいと思います。国民健康の問題でありますが、この問題は政府におきましても、いろいろな方法によつて国民の体位を向上しようということについては私共は認められるのであります。その中に、殊に我が国において最も健康の上から憂えられる結核については特に注意拂つて予防接種法というようなもので順次それらの予防について効果を挙げるような政策を設けておることについては、私共は政府に対して認めでおるのでありますが、この前本会議におきまして、総理大臣施政方針に対する質問の中に含めて申上げたのでありますが、宮城県の岩ケ崎における接種予防ワクチン注射予防禍の問題でありますが、これは一僻地に起つた事実でありますけれども、これは私は大きな国家としての問題ではないかと考えるのであります。その理由は今盛んに予防接種法実施中でありまして、これが円滑に予防行政が行われて行くかどうかということについては、この予防接種に対して、政府国民に対して安心を與えら、保証するということが大事であろうと思うのであります。たまたま岩ケ崎に起きた問題でありますが、そのときは接種施行法がまだ施行期日前であつたということであります。併しながらそれについては、百日咳と結核限つて施行期日は二十四年の六月三十日までの間に政令を以てこれを定めるというような、極めて施行期日を決める日時がはつきりしておりませんので、たまたま指導者関係の人が先走りしたというか、行き過ぎというか、予防注射をするに当りましては、これは予防接種法によつて、その該当者注射をするのだというようなことで注射をしたために、そのときに災害を受けた人がこの法律の保護を受けることができないというようなことになつたのであります。この事実につきましては、厚生大臣から本会議において答弁のありました通りでありまして、今日の法的に許された範囲においては、十分厚生大臣はやつておることを私認めるのであります。たまたま私はこのようなことを予想しておらなかつたために、このような気の毒な立場に立つ人が沢山出たのでありまして、而も乳幼兒が、六十五人というような多数が、その予防注射によつて結核菌を植付けられて、今日一応病院から退院はいたしましても、その事後の栄養のために、非常に苦しんでおりまして、それについて専門家の今後の看護についての意見を申上げますと、十二分なる栄養の攝取、特に、蛋白源脂肪源並びに青果物の十分なる給與、それから過激な運動直射日光を避けよ、睡眠を十分に取る、淋巴腺結核患者切開口よりする排泄膿は伝染をするにつき、その附近のものは嚴重な家庭消毒を行う、結核病長期療養を必要とするから親の慈愛が第一であると、こういうようなことを特に注意をしておるのでありますが、この看護を誤まると直ぐに元に戻つて、そうして元の症状に返るというようなことがあるのであります。殊に二才から四才までの子供でありますから、親が付いていなければ、このような看護ができないのであります。そのために非常に家庭生活力に影響を受けまして、大部分家庭はそのために日々の生活にさえ苦しんで困つておる状況が殆んど大部分であります。そこでこれの救済のために、宮城県におきましては三百万円、又岩ケ崎地方におきましては八十万円というような金を出しておるのでありますが、御承知通り宮城県では五年のうちに七回の大水害に襲われておる。又この地方は、一ノ関町のように、この前の水害のときに川の土手が切れて押し流されて、その土手がないと、その地方が少しの水でも全滅するというような状況にあるので、非常に地方財政をここに傾倒いたしまして、漸く土手を築き上げた。そのためにこの土地の財政が非常に窮迫しておるのであります。それが今日この子供達療養のために非常な犠牲を拂つておるという状況で、これ以上地方財政としてはどうしようもできないというような状況であります。このような予防注射に基く非常な大きな災害のために、近所の村、町では集団的に予防注射を拒否しておるのであります。これにつきましては東京日日新聞がトツプ記事、五段抜きで書いておるのでありますが、結核予防策が仇となつて愛兒の治療で破産という題目であります。又これに非常な危惧を抱いて種痘並びに予防注射を集団的に拒むというような事実が沢山現われて来たのであります。折角国民の保健を向上させる意味におきまして、このようないろいろな施策を行なつても、こういうような事実が邪魔をして円滑に予防行政が行われないということは、私は国家として考えなければならん問題ではないかと考えるのであります。私はこういうような問題については、今後は法律が保証しておりますからないかも知れない。併したまたま政府法律をそのときに作りまして、而も施行期が結核と百日咳だけ遅れておつたために、行き過ぎた立場においてやつたかも知れないが、これは悪いことをやつたのじやない。若し百日咳、結核が流行して参つた場合には、これはやつていいことなのであります。併しながら全く不運にして、私は一つの災害と思つてもよろしいと思うのであります。こういうような法律に許される予算措置ができないといたしましても、私は高度の社会政策という意味におきまして、何とかできるのじやないか。私共は広範に政府に対して予算を決め、或る程度の彈力を委託してあると思うのであります。そういう意味におきまして、何らかこの問題を一部局の問題とせずに、又法律上どうのこうのという冷たい考えでなしに、一つの大きな災害に対する政府の方策として何らかの方法を決めて頂きたい。こういうことを考えるのであります。それは従つて予防行政を円滑に運営するゆえんになるのじやないかと考える次第でございます。この点極めで僻地に対する問題のごとく考えられますけれども、私としては大きな国家的な問題と考えますので、総理大臣の御善処について御意見を伺いたいと思います。治つたと称して退院した者の実際の写真が、これに出ておりますから、一応御覧になつて頂きたいと思います。
  17. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 同様の問題が、宮城県ばかりでなく京都その他数県に亘つて起つたので、それはその当時聞いて、誠にその禍いを受けた家族、その親、そういう方に対してもお気の毒に思つて、いろいろその当時の話を聞いておつたのでありますが、その善後処置については、厚生大臣ともよく相談をしてお答えいたしますが、御趣意のところはよく承わつて置きます。
  18. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 私は首相に対して次の四点についてお伺いいたしたいと思います。第一番にレートの問題、第二番が煙草民営についての問題、第三番目が人口問題、次が最後に予算審議権の点についてお伺いいたしたいと思います。  先ず第一番に、レートの問題でありますが、首相並びに大蔵大臣が本会議等において、常に為替レートを変更はしないというお話をなさつておるのですが、その理由といたしましては、三百六十円に決定した際、あの当時は実は三百円乃至三百三十円が至当であつたのを三百六十円に決定したのであります。そういうお話もあるのであります。併しながら日本の現状といたしましては、食糧輸入の点等におきまして、相当輸入の方か輸出よりも多いのが、これはまあ当然であります。そうしますと、為替レートというのは、成るべく高い方が成る程輸入には都合がいいのでありましようが、何故然らば三百六十円に決定された際に、輸入超過の多い日本の現状として、三百円或いは三百三十円に決定されなかつたかという疑念が抱かれるのでありますが、これについて先ず首相の御見解を承わります。
  19. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは三百六十円に決まつたときの経緯は御承知通りであります。その当時においても、三百六十円がよかろうという説もあり、又それが低過ぎるという説もありましたが、私は一応低いところで決まつた方がよかろうと考えて、その結果幾らか輸出にも利益があつたように聞いております。問題は、今日輸出の妨害になつたのは、日本が円を更に切下げるであろうというので取引が中絶しておつた。併しながら切下げないという政府の決心がいろいろ内外に徹底すると共に輸出は段々起きつつある、こう承知いたしております。それで為替のレートの上下は、いろいろな客観的の事情からして、一概に論は立ちますまいが、併しながらその後の結果について判断いたすより、議論はいろいろ立ちましようが、いろいろ後の結果について判断するより仕方がないと思うのであります。そこで三百六十円に決まつて後、幾らかその後輸出の振興なつた。或いは切下げないと決まつたために輸出も亦動き出したのだということであれば、事後の結果から見て、三百六十円に決めて、これを動かさなかつたということは決して悪いものではないと私は今でも確信いたしておるわけであります。
  20. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 只今の首相の御信念はよく分るのでありますが、大体切下げをしないという御説明は、企業合理化或いは金融の措置ということによつて、それを補いたいというお話も承つております。併しながら企業の合理化といい、或いは金融措置といつても、相当時期的ズレが事実あつたのでありまして、なかなか今の日本の産業状態で以て首相がお思いになるように、企業の合理化が促進下るものではないのでありまして、今日相当輸出産業方面においても、いわゆる弱肉強食と申しますか、強い産業は生きて行つても、多少弱体産業というものは非常に困つている現状になつております。こういう点について、いわゆる時期的ズレの措置を、もう少し政府で以て懇切な御指導或いは御措置をとられるような方針はないですか。
  21. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 時期的ズレはあるであろうと私は思いますが、併しながら今日の場合はいたし方ないと私は思います。又合理化は全然停滯しているのではなくて、順次各方面において進みつつあると考えております。今お話の時期的ズレとか何とかについての善後策を政府はしたらよかろう。この点は尚政府においても考究いたしますが、今日のところは三百六十円の為替レートで以て押切るべきである。これに躊躇いたせば却つて輸出の妨害になるということもありはしないかと、こう私は考えます。尚油井君のお考えのことについては考えもいたしますが、一応お答えいたします。
  22. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 その点については首相の御善処にお任せいたすことにいたしまして、次に、煙草民営についても随分質疑応答が交わされたのでありますが、煙草の民営は、何か外国資本を具体的に日本に持つて来て仕事をしたいというふうな噂もあつたのでありますが、これは私的であるか、或いは公けのものであるかは問わず、首相に何かそういうふうな話が先方からあつたのですか。その点が今まで明確にされておらないのですが、この際御発表願いたいと思います。
  23. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 煙草の民営という問題については、御承知通り大蔵省でありますか、内閣でありますか、民営可否について折角審議会を開いて研究をさしております。私自身としては成るべく政府の官業は止めた方がよい。又政府の組織は成るべく簡單にした方がよい。政府が事業に手を出して、そうして民間の仕事を発達させなければならんとか、或いは奨励等の意味合で以て官業をするということは考え得ることでありますけれども、今日は煙草のごときは民営にした方がよくはないか。これは私の個人の考えですが、そう考えて、民営可なりか、官営なりやということを、先ず一つ審議会において審議して貰つて、その答申を見て、政府考えを決めますが、そこで外国の会社から話があつたか、外国の会社からしてこういう話、ああいう話とか、民営にした方がいいじやないか、した場合には自分の方も金を出すというところまでの話は毛頭なかつた。ただ民営なすつたらよかろう、した場合には我々は大いに援助するというやつもあつたのですが、又競争しようというやつもありましたが、今日のところにおいて、民営にした場合に私共が引受けましようという具体的な話はないのであります。
  24. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 第三番目の人口問題でありますがこの前の予算委員会でも、これからの日本の人口政策はどのような方向に進むのが一番適当かということをお伺いしたのですが、そのときは人口審議会を作つて検討して見ようというお話ですが、それに対する或いは中間報告というようなものもお出しになつておりますか、これについてどんなような結論に達せられたのだが、この際御発表願いたいと思います。
  25. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) お答えいたします。審議会の答申はまだ出ておりません。従つて私はまだ見ておりませんが、この答申を待つて政府としても研究いたしたいと思つております。
  26. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 これは重大な問題ですから、是非一つ首相の御信念の程をこの際お聞かせ願いたいのです。どうも巷に随分いろいろいかがわしいような薬品であるとか、器具であるとかという物も氾濫して、風紀上もなかなかむずかしい問題になつておるようですから、そういうことも併せて首相の御信念の程を御披瀝願いたいと思います。(笑声
  27. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) それは私も專門家じやないものですから、(笑声)お答えがしにくいのでありますが、併しながら問題はお話通り日本としては殊に重大な問題であります。でありますから、軽々しく私の信念を申して却つて誤解があつてはいけませんから、審議会の答申を待つて更に政府態度を決定いたすことにしたいと思います。
  28. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 最後に、これは或いは委員長、途中で速記をお止めになつても、或いはお取消になつてもお任せしますが、実は予算の審議ですが、この前の予算委員会でも予算について不服とか、或いは意見があるならば、どんどん委員自体の見解で以て、修正案なり何なりお出しになるのが結構ですというようなお話を承つておるのです。併しながら事実、我々が予算の審議に当りまして、こういう点はこのようにした方がいいではないかという、大体全員の意向で以て政府に当りましても、それは政府といたしては、関係方面の了解を得ないうちは実現困難であるというような回答になるわけであります。そこで今日問題になつております織物消費税のごとき問題も、先般来政府においては成るべく早くこの低減を図るか、或いは撤廃をしたいというようなお話があつて、業界ではそれを待つてて、或いは十月説、十一月説というものがあつて、途中更に又遅くとも十二月一日からは実施するというような政府の見解があつたわけです。ところがそれについて今度の政府の発表では、補正予算で一月一日から撤廃するということになつたために、全国の業者に非常な混乱と迷惑を及ぼしているわけなんです。それについて我々の各党の意見といたしまして、これを十二月一日から一割にした方がよろしいではないかという結論に達して、修正案を実は持つて伺いに参つたのであります。ところがその修正案に対しては、これはこの予算が徹底的に我々で以ては処置できないのだ、結局指図するところまで行かなくては駄目なんだ、我々ではどうにもしようがないのだ、こういうような話で以て我々は引下らざるを得なかつたのであります。そうしますというと、この予算の審議に当りましても、我々はどういうふうに、全員一致で以て修正案を作つたにしろ、結局日本政府或いは日本の国会では何らこれを実現することができない。国民の要望に副うことができないというふうな点になつて参るのであります。これについては、政府当局或いは吉田首相から、直き直きもう少し国会の審議権というものを尊重して貰うようにこの際御交渉願わなくては、我々審議しても無駄になつてしまうと思うのです。こういう点については首相の御見解如何でございますか。
  29. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 織物税の問題については私よく知りませんが、併しながらこの予算政府責任において出してございますから、若しこれが一月一日でありますか、実施したために損害があるとか何とかというようなことであれば、政府としては無論そう考えますが、併し向うとの、GHQとの関係におきましては、今日まで私の体験するところによれば、筋の立たない、道理のないことを是非とも押付けようということは、これはないのであります。で、若しあなたの御主張の通りに、十二月ですか、一日から出す方がいいのだという筋の立つた、道理のあるものであるならば、無論GHQも了解するでありましようし、又政府としても、政府責任において出すものでありますから、若しそれが政府においても、成る程御尤もであるということであれば考え直しもいたしますでありましよう。決してGHQが道理のないことを是非共こうしろというようなことは、今まで曾てないことを御承知を願いたいと思います。
  30. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 もう少し補足して申上げますが、実はこの消費税問題は、先方に参つて検討して貰つたところが、日本政府考え方はこうである。従つて我々は日本政府考え方を正しいと見て予算を組んだ。その予算はいわゆる命令によつた予算であつて、ここで我々が訂正するということは、もうこれはできないのだ。そういうふうなことを頭から言われたのでは、我々は結局予算の修正ということも一言もできないというふうになつてしまうのであります。これは私は消費税は一例を挙げたのでありますが、他にもこういう例が沢山あるのであります。こういう点について、国民の自主的予算の編成というようなことを重んぜられて、結局大蔵省の立案に対して我々が意見があるならば、それを修正意見なり、何なり出して審議をできるというふうなことに直して頂かなくてはならないと思うのですが、これに対して吉田首相も何とか御処置を願いたいと思うのです。この御意見は如何ですか。
  31. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) 私代つてお答え申上げます。只今織物消費税の廃止につきまして、一月一日から施行する予定で法律案並びに予算案を御審議願つておるのであります。然るに只今油井委員のお言葉の通りに、私は只今そのことを聞いた。五分前に政務次官から聞きました。従いまして大蔵省の省議を十二時過ぎから開くことにいたしまして、政府態度を決めようと思います。
  32. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 これは今大蔵大臣から甚だ奇怪なお話を承つたのですが、大蔵大臣は、民自党の………いわゆるいつでも、民自党においてはというふうな前提の下において、予算でも何でも説明をなすつておつた筈です。その民自党の党議といたして、我々の提案した案と全く同一の意見であつたということを我々は承知いたしておるのであります。そういう点において、五分前に漸ぐ大臣の耳に入つたというのはこれは甚だ納得の行かない点なのでありますが、政務次官も前々からよく分つており、又主税局長もこの問題はよく知つておるのであります。そういう点については、甚だ政府の連絡が不十分だということは遺憾の点でありますが、本当にそれは大蔵大臣は五分前に初めて知つた事件ですか。
  33. 池田勇人

    國務大臣(池田勇人君) いろいろな噂は聞いておりました。そうしていろいろな陳情も各方面から聞いておるのであります。十二月一日から廃止すべきであるという陳情と、十二月一日から廃止されては困る、一月一日からの方がいいという陳情も聞いておるのであります。而していろいろなものが入つておりますから、政府としてGHQはこう言つておる、参議院の方の側もこう言つておられる、衆議院の方の側もこういうことを言つておられるということが入つて一来たのは、只今五分前、十分くらい前に政務次官から聞きました。それでは今日晝の間に省議を開いて決めよう、こういうこうになつたのであります。
  34. 内村清次

    ○内村清次君 吉田総理に御質問申上げますが、第一点は、講和会議の時期とその見通してあります。吉田総理施政方針演説で、衆参両議院におきましては、この講和会議問題に論議が集中をいたしましたことも、これは国民がひとしくこの講和を熱望しておるゆえんでありまして、その後におきましても、国民輿論はひとしくこの講和会議の時期の点について関心を持つておることは、これは事実であります。そこで講和会議は首相の施政方針演説によりますると、最近外電が頻りに来る。而もその見通しは近きにありと言う、施政方針の演説の中にこれは明言されてあります。そこで国民はただ外電、即ち外電を管理しておられるところの所管大臣である総理であり、外務大臣であるところの外相に集中していることは事実です。それでこの時期の速かならんことを国民は要望しておりますが、一体この時期はいつ来るのであるか。首相は近きにありと、こうおつしやつておられるが、これはいつ来るものであるか、この点について先ず御答弁願いたい。
  35. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 近きにありというのは、多少希望も加えているものでありますが、御承知通り我々は直接に外国との交渉をする機関を持つておらないものでありますから、ただ新聞であるとか、或いは日本に訪ねて来た人の話であるとか、或いはGHQの係官等の話を聞いて判断をするだけの話で、いついつかということは私においてはまだ聞いておりません。併しながら成るべく、日本との講和関係もそうでありますが、ドイツに対してもその他についても、成るべく早く講和関係を打立てて、そうして国際関係を普通の状態にし、貿易も正常化したいということは、我々もそう考えますが、米英その他の国もそう考えていて、ドイツに対しても大分話が進んでおるというようなことも、この間もパリにおいて、外相会議が開かれたというようなわけで、成るべく国際関係を正常化したいという考え方は英米には盛んになつておる状態でありますから、それで我々が考えておつたよりも早いのではないか。私は昨年あたりはどうなるかと思つておつたのでありますが、本年の初めあたりに考えておつたよりも一層早く近ずきつつあるのではないかと考えます。併しながら時期についてはどうということは今日私も知らないのであります。が大体が想像いたしますと、今米英の間で講和條約草案ができつつあるのじやないか。先ずアメリカならアメリカ、或いは、イギリスならイギリス、その他においてその国の態度を一応決定されて、そうして極東委員会に提出され、話が具体化する、こういう順序であろうと想像いたします、以上お答えいたします。
  36. 内村清次

    ○内村清次君 只今のお話で、これは総理施政方針演説と申しますと、政府の確乎たる方針が発表されまして、そうしてその方針によつて国民政府のよるところを知るわけでありますが、只今のお話では、まだいつになるか分らないというようなお話であるし、それならば総理は、只今のお言葉の中にも、自分の思つておつた時期よりも………その時期を待つているというような内容の御発言があつたようですが、それでは総理講和会議がいつ頃あるかということを思つておられるか、その点を明らかにして頂きたい。
  37. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) はつきりした時期ですか。
  38. 内村清次

    ○内村清次君 総理は、自分は講和会議はいつあるのだということは、待つておつたというようなことを発言されたのですが、総理だけの、即ちいつであるか時期を発表して頂きたい。
  39. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私のいわゆる時期も、今申したように国際の情勢と言いますか、連合国の間の関係について想像するだけの話で、その時期なるものは、いついつかということは私においても確たる信念がないので、今申したように外国の直接関係もないのでありますから、考えを立てるだけの材料は持つておらないのであります。従つて今申したようなところから来る話を纏めて、或いは早くなつたり、或いは遅くなつたりして、その度ごとに一杞一憂しておりますような状態であります。
  40. 内村清次

    ○内村清次君 更に、総理施政方針の演説の中に、現下日本の経済は安定したということを言つておられますが、その後財政演説におきましても、大蔵大臣は経済は安定の軌道に乗つた。同時に又私この委員会質問いたしました労働大臣のお答えでも、やはり大蔵大臣と同じように安定の軌道に乗つた、こう言つている。そうしますと、行政の責任者である総理大臣は、少し現在の経済状態を余り楽観的に、もう安定したのだというふうに見ておられるというところに楽観気味がありはせんかと思うのですが、これは大きに今後の施策に関係して来る。大蔵大臣はその発言から聞いて見ますと、一応インフレーシヨンが停止をして、そうして安定の軌道に乗つた、併しながら不安定な要素というものはあるということにも聞きました。大蔵大臣は軌道に乗つたという、併しあなたのお話では安定したのだ、今後は復興の過程に入るのだ、こういうようなお話ですが、その点をもう少し明確にして頂きたい。
  41. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 安定したといい、安定の軌道に上りつつありといつて、どこが違うかというお話でありますが、これは言葉のあやと申すか、確かにこうだと申す基礎もありませんが、併し私はこう思うのです。私の感想から言うと、これは終戰後日本がこの小さな島に押込められて、そうして領土の大半は失つてしまつた。外国との貿易は止つてしまつた、或いは漁業の問題にしても、南極、北極まで日本の船が行つたのが、日本近海に止まるというような状態に押込められて、そうして非常な窮迫した状態なつたその日本が、意外にも我々が想像するような、例えば恐慌も起り、又産業その他混乱の状態が、或いは起りはしないかと心配いたしておつたその状態を、仕合せにして免れた、これは安定したと言い得るわけだと思います。併しながらこれに止まつていいか、それはいけないのであります。一層日本を安定せしむるためには、今の物価ももつと下つて来て落付くところに落付き、その他いろいろな沢山な企業が興り、船も外航ができるようにますます余計になつて来るといつたところに、初めて日本の繁栄が再び還つて来る。現在においては船はなし、外国貿易も十分でない、この事態を以て満足すべきか、これは満足すべからざることが常識であつて、我々一層努力して日本の復興に努力したいと思います。今の安定したか、安定の軌道に乗つたかという点は、その程度のお話であると御了解を願いたいと思います。
  42. 内村清次

    ○内村清次君 最後に、国鉄の公共企業体に移行しましてから、漸く半年になつておりますが、国鉄は独立採算を建前として、その従業員は日夜この独立採算制の下に企業の立ち行くように従事しております。併しながら総理はインフレは收束したとおつしやるけれども、現在の即ち実効価格が非常に低下しておりますときに、生活状態は現在の六千三百円ベースでは窮迫しておる。これは法律に基きまして提訴をいたしまして、調停委員会で、御承知のごとく国鉄の要求が八千五十八円で調停案が出たことは御承知通りで、丁度十月の十四日の日に調停案を出しました際に、政府責任者は、増田長官は、このベースの改訂についての点は否定されておる。これは大きな職員にシヨックを與えた。この翌々日の新聞に、これは吉田総理は、政府の経費を節約をして年末賞與を出すということを御発表になつておる。この年末賞與の点につきましての総理のお考えは、やはり依然としてその発表通りであるかどうかということをお聞きしたいと思います。
  43. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 年末賞與についての話は、曾て官房長官等と話合つたことがあるので、日本の風習としては、年末賞與が出ないということは日本の風習に反することで、又役人も期待していることであろうから、何とかして出る途がないかと申したことがあるのでありますが、併しこれは予算関係することであり、金に関係することでありますから、私がそう希望したところで直ちに決定するわけには行きますまい。各省において予算その他の按配をしなければならんでありましようが、ただ希望としては、従来日本の慣習はそうであつたのだから、成るべくその慣習を守りたいものであるという話をしたので、出すということを言つたわけじやないのであります。どうかして出したいものであると申した。こういう話を話合つた程度のものであると御了承願います。
  44. 内村清次

    ○内村清次君 大きに世間では期待しおりますが、併し総理がああ言つた声明をいたしましたために、窮迫に追込まれておるところの職員の人達、これは国鉄従業員ばかりではないのですが、専売従業員も、又公務員におきましてもその通りです。これを望んでおることは確かにそうです。だからして総理は尚その声明をされたことである、それをもう年の瀬も迫つて来ておる今日、給與の改定はしない。こういう方針で行つておる。もう一体よりどころは、どうやつて、こういうような公務員の人達の生活を、年越しをさせるかという点に対してお考え及ばれしまて、そうして賞與の努力に対して確言をして頂きたいと思いますが、この点についてはどうですか。
  45. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは申す通り、希望としてはそういたしたいと思つておりますが、各省の事情もありましようから、各省の都合によつて或いはできたり、できなかつたりするでありましようが、私としては今尚何か途があつたら、そうしたいと思います。併し私が正式に声明を出すと言つて声明した覚えは実はないのであります。以上お答えをいたします。
  46. 内村清次

    ○内村清次君 これは国民は皆新聞その他によつて、一般の社会情勢も知つて行くような状態でありまするが、政府の言われることは、常にこういつた正式な委員会あたり、或いは本会議におきまして、自分が言つたことはないというようなことが、これは各大臣がそういうようなことを言うのですが、この点に対しまして総理はどうお考えになつておりますか。常にこれは新聞に言つた、だからここでこういうような政府の意図があるというので質問して見ると、それは根拠がないというような点が明らかになるのですが、これはこの前の予算委員会のときでもそうでありますが、大蔵大臣にお尋ねしたときも、労働大臣にお尋ねしたときも、又通算大臣にお尋ねしたときにも、そういうようなお話でありました。だから国民は迷つてしまうわけでありますが、一旦発表たされところの問題につきましては、政府の信念である、政府方針であるという点を、明確に国民の拠りどころが一貫して政府方針を知るようなことになつて行かなければ私は嘘だと思いますが、この点につきましてはどうお考えになりますか。
  47. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは新聞に出たことをそのまま盡くお信じになられると本当に困ります。どうも無闇に発表しますものでありますから、政府としても常に言つているのでありますが、成るべく不正確な発表をしないように注意しております。同時にこういう国会で申したことは無論政府の発表でありますが、今の新聞の中には発表しないものの発表もあるようでありますから、その点は両方ともお考えなすつて、どこに実際の実相があるということもお考え置き願いたいと思います。
  48. 内村清次

    ○内村清次君 最後に、先程の国鉄の賃金ベース及び専売公社の賃金ベースにつきましては、聞くところによればこれは法律の中にもありまするが、通産委員会において決定をされまして、明日か明後日御発表になるというようなことを承つております。そうしますと、この公共企業体の関係労働法によりまして、この裁定には従わなければならない。両方とも従わなければならない。この点につきまして私は最初緊急質問総理にお尋ねしましたときに、総理はこの発表があつたときには善処をするということを言つておられますが、これは当然な話であります。今まで五十万人の職員が法律を守つて来ております。こういうふうな窮迫したとき、同時に又国鉄の五十万ばかりでなくて、国民ひとしく法律は守つているのであります。この遵法的な精神からいたしまして、法律の決定というものは、ひとしくこれは守つて行かなければならない。政府においてもこれは守つて行かなければならないのでありますが、今これが発表されましたときに、政府総理の御発言通りにこれを直ちに予算化して、そうして給與ベースにつきましても従業員の希望を満たして下されたい。その点につきまして一つ……。
  49. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私が議会で以て申したことは、人事院からして賃金ベースの値上げということを申した場合に、善処すると申したか、考えると申したか、併しながら人事院の申したことに必ずしも政府は盲従しなければならんということは考えておりません。人事院の申立について研究をする、或いは政府方針、党の方針に反すれば拒否するかも知れませんが、いずれにしても考えるということは申したのであります。それはよく御了解願います。
  50. 内村清次

    ○内村清次君 総理の御発言としては非常にひどい御発言で、盲従するというようなこともおつしやつておられるのですが、この関係法律というものは、あなたの内閣のときに、あなた方の絶対多数のときにこの法律は決定したのであります。私はその法自体に対して多大の不満がある。それをあなたの内閣のときに決定して、而も又この法律によりましても、やはり両者に対して拘束権がある。政府は勿論これは十六條でこの裁定につきましてはこれはお考えになるでしよう。お考えになるでしようが、現在もう食つて行けないというような低い賃金で、而もこのコーポレイシヨンを守り上げて行つておる従業員に対しては、幾らかでも考えて、而もそういうふうに民主的に決められた仲裁であつても、それは盲従をしないというような御発言があつたと思いますが、とにかく発表がありましたならば、善処をされるということは本会議で言つておられますから、これはもう決して考えることじやなくて、善処をするというお考えからいたしまして、その点に対しましては是非善処して頂きたいと思います。
  51. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は五、六点伺いたいのでありますが、先ず第一に、二十五日の衆議院予算、大蔵、経済安定その他の連合審査会のときに、宮幡通産政務次官が、アジア、マーシヤル・プランに参加することを希望する、これは單に自分だけの意見じやなくて、実は政府意見であるということを次の日の二十六日、又同じ審査会で申述べておるのでありますが、政府は果してこのようなことを考えておられるのかどうか、おられるとすればアジア・マーシヤル・プランというものは、どういうような構想を持つておるのであるか、その点を先ず伺いたいと思います。
  52. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) ちよつと聞きとれなかつたのですが、質問の御趣意はどういうことですか。
  53. 岩間正男

    ○岩間正男君 宮幡通産次官が、アジア・マーシャル・プランに参加したいということを衆議院の三委員会の連合審査会で申述べており、その次の日又共産党の米原委員が、それに対して政府意見であるか、それとも……。
  54. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) アジア・マーシャル案というのはどういうのですか。
  55. 岩間正男

    ○岩間正男君 つまりアジアにおけるマーシヤル・プランのようなものを作りまして、そういうものに対して参加したいというようなことを述べておる。而もそれが政府の全体の意向であるということを、次の二十六日において又念を押したところが、そうだとはつきり答えておる。これは果して政府全体の意向であるか……。
  56. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 第一アジア・マーシャル案なるものが今ないと私は……いやないのであつて……。
  57. 岩間正男

    ○岩間正男君 つまりそれは一つの名称であつて、ヨーロツパにおけるマーシャル・プランのようなものをアジアにおいて設定する、こういうような意向に考えられるのであります。
  58. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) そういう…。
  59. 岩間正男

    ○岩間正男君 アジア・マーシヤル・プランと呼ぶ呼ばないに拘わらず、内容はそういうようなもの、一つの経済ブロックを確立するというようなことに対して、政府考えておられるかどうか。
  60. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私は一向承知しておりません。
  61. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、何ですか、これは一通産次官の意見として承つておればいいのであるかどうか、どうもその点が非常に大きな問題になると思うのですが、而もこれは政府全体の意向であるということをわざわざ念を押したのに対して答弁しておる、その点如何ですか、非常にそこのところあやふやなんですが。
  62. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これはその通産次官にお尋ねを願いたいと思います。政府としては一向知つておりません。
  63. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは事実なんであります。速記録をはつきり確めれば分るのですが、若しこのようなことが、政府の意向でなしに、一次官によつて言明されるということは実に重大な問題だと思いますが、これに対して首相はどのような処置をとられるか、承わりたい。
  64. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 言明したかしないかという事実も私は知りません。取調べまして……。
  65. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじや、この問題は速記録をはつきり確めて見れば分るのでありますが、この問題は別として、最近やはりこういうような風評も相当巷間に伝えられておるのでありますが、政府は今後一つの経済圏を設定するというようなこと、そういうような動きに対してどういうような態度をとられるか、承わりたいと思います。
  66. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) そういう問題は今のところ問題になつておりませんから、お答えいたしません。
  67. 岩間正男

    ○岩間正男君 その点については、今の話の範囲内では、現在の世の中に行われておるいろいろな輿論というようなものに対して、はつきりお答えを願つたとは思えないのでありますが、この問題はもつと調査して再質問したいと思つて質問を保留いたします。  次に伺いたい問題は、今回締結された日英通商協定によりますと、日本側には輸入義務がはつきりあるようであります。これに対して輸出をする場合に、日本側の輸出に対して一体保障をはつきり負わせておるのかどうか、この点が日本の今後の貿易に対して実に重大な関連を持つと思うのでありますが、はつきり輸出保障があるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  68. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 私は、日英通商協定ですか、の報告をまだ受けておりませんから、問題は通商大臣にお尋ねを願いたい。
  69. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは実に重大な国政の怠慢と我々は断ぜざるを得ない。これは一昨日も通産大臣から伺つたのでありますが、こういう情勢がはつきり進んでおり、協定が締結されたということは、今日これは三歳の童兒と雖も知つておる。新聞なんかにはつきり出ておる問題である。これに対して総理大臣がまだ報告を受けておられないというのですが、今の私の質問の要点は、日本の民族の将来にとつて非常に重要な関連を持つと思うのでありまして、首相のそれくらいの御答弁で我々は満足できないのでありますが、これはどうされますか。今後どうされますか、私の質問に対してどうされるか。その点に対して……首相は御考慮中のようでありますが、私はこういうことではいかんと思う。国政の非常な怠慢になつておると思います。尤も怠慢という言葉はいいかどうか分らないが、或いはまあ首相は非常に御老体で、そういうような仕事をお果しになつていられないようにも承わるのでありますが、併し私の質問は非常に重要なことに関連しますので、何とかこれに対して適当な実際の具体的な方法をおとりを願いたいと思うのですが、如何ですか。
  70. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 具体的の方法とはどういうことですか。
  71. 岩間正男

    ○岩間正男君 つまりいつ答えるとか……予算審議はあと余すところ二日半しかないのでありますが、この中で……。
  72. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 第一あなたにお答えしますが、日英通商協定はGHQとイギリスとの間の話で、まだ我々の方としては報告を受けていないということが事実であります。いずれ正式の通知があるでしよう。そのときお答えします。
  73. 岩間正男

    ○岩間正男君 正式の報告は受けていられなくとも、政府としては、どうも首相がそういう一番重要な点を検討することなく進められておるというふうには考えられない。そういうような点から、これはとにかく之の予算を審議する上に実に重要なんですが、いつお答えになるか。
  74. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 通知を受けた後にお答えをいたしますので、今日とか、明日とかいうことはお約束できません。
  75. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、これはもう早速GHQに行かれましても聞かれまして、予算の審議の過程のうちに是非報告を望みます。次に第三の点でありますが、賃金ペースの問題であります。これは内村委員からも先程言われたのでありますが、我々は人事院の勧告が、人事院が飽くまでも法令を重んずる、法令の定められた権限についてこれを行使するという亡とを確信しておる。従つてその時期について問題となつておると思うのでありますが、この第六国会中にはまだそういうことがないようでありますが、若し国会が終つた後あたりに、こういうような勧告が起るということも予想されないわけじやない。若しそのような事態が起つた場合には、政府はどのような措置をとられるか承わりたい。
  76. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは先程お答えした通り、人事院の勧告があつた場合に考える。
  77. 岩間正男

    ○岩間正男君 このベース改訂については、先程からも言われたのでありますけれども、政府予算的措置がないというようなことで、この改訂については余り賛成しないということを首相も述べられたように思いますが、飽くまでも人事院の勧告を尊重して欲しいということを附加えて置きます。人事院がこの頃その性格が戯画化して、そうして何か人事院の存在というものは最初に法的に決められたものに対して、現在においてはその機能が十分に行使されない、むしろ政府の補助機関であるというような印象を一般に考えておるのでありまして、この点は人事院そのものが、あれだけのいろいろな過程をめぐつて作られ、殊にこれは公務員のいろいろな拘束規定ができて、而もそれと連関して一方において当然待遇が人事院において改善されるが、そのことを前提としてのみこのような拘束規定というものが意味を持つのであります。然るにその点において、今の給與の面におきまして、政府が頬被りでやつて行くということになると、人事院の存在そのものが非常に大きな問題にさらされると思うのでありますから、との点において首相は、若しこの第六国会が終つたというようなところで、そういう問題が或いは勧告される、これも非常に曖昧な態度であるんでありますが、これについては併し第七国会がすぐに目前に控えておるので、十分にこれは考慮する必要があるということを附加えて置きたいと思います。  その次に伺いたいのは、同じくさつき年末の賞典の問題が出たのでありますが、誠にもう勤労者生活が逼迫しております。これは言多くここで費す必要がない。一昨日国鉄の民同の星加君が参りまして、ここで公聴会を開いたときに、今度の予算の進行によつて労働者生活が少なくとも約二〇%は赤字になる。こういういうようなことを言つております。これは国鉄の星加君でさえ、さように言つおるのです。而も現在においては労働者生活状態を見ますと、大抵一月当り三千円が赤字になつておるという実態であります。従つて何らかの形でこの年末を政府保障しなければ、労働者は干上つてしまう。いろいろなそこに社会的問題が発生することが予想されるのであります。そこで政府に伺いたいのでありますが、超過勤務手当の問題であります。最近超過勤務手当というものは非常に名前だけであつて実施されていない。労働基準法の規定する通り実施されていないという実態が起つておる。この頃は官庁の局課長級が超過勤務を命じない。ところが仕事は首切りによつて非常に多いから、当然局課長の命令はないにしても、居残つて仕事をやるというのが官庁の実態だと思う。そういうようなことからして、多の超過勤務が溜つておる筈であります。これを年末賞與という形ではなくとも、超過勤務という方式において合法的に支出することができると思うのでありますが、これに対して政府は一体どのような考えを持たれておるか、首相は先程から、自分は腹の底では、年末賞與というものは日本の習慣であるから出したい、併しながら最近の給與体系、給與実施方法なんかの形において、これがなかなか、認められないような状態であるから、困つておるというふうに伺つたのでありますが、これに対して超過勤務手当を合法的に支給するという関連におきましてこの点を考えておられるか、承わりしたいと思うのであります。
  78. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 超過勤務手当については、今折角政府は考慮中であります。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ考慮中だということでありますから、これは年末が追つておるのでありますから、十分に合法的にこの点を実施する、基準法を完全に実施するという方法でこれは進んで貰いたいと思います。これは当然の法律の要求であると思います。  その次に伺いたいのは、科学研究費の問題でありますが、堀越委員から先程話がありました。これに対して首相はこれを尊重したいというようなことを言われたのであります。併しここで私はつきり首相に伺いたいのは、あの湯川博士のノーベル受賞ということがあつた前と、それから後の情勢では非常にこれは違う、国際的な輿論並びに日本国民の輿論というものは非常に違つておるということであります。つまりあれをきつかけとして、改めて日本の足許を見る科学研究者、科学研究所、科学研究設備、そういうもの中に誠に問題にならないところの多くの破壊が起つておるということを見ておるのであります。先程参議院におきまして、この決議案が満場一致可決されたのでありますが、これに対しまして今までのような、何とか刺身のつま程度のものを出すというようなやり方では、当然この問題は解決されないと思います。これは日本としては科学技術振興するという以外に又方法はないと、我々まあ考えておりますが、而も化学研究費そのものは單なる投資じやなくで、これは生産費である。はつきり生産コストの中から出せる。従つて国家財政の中から多くの科学研究費というものを支出するということは、これは今の日本の今後の動向から考えましても最も必要な政策の一つになつておると思うのでありますが、首相はこの点に対して、もつとどのような積極的な考えを持つておられ、手を打たれようとするが、承わりたいと思います。
  80. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 先程もお答えいたした通り科学振興政府の最も重要視することであります。故に予算の余裕がつぎ次第成るべく沢山出したいと考えております。
  81. 岩間正男

    ○岩間正男君 今も予算の余裕のつき次第というお話がありましたが、今いつでも後廻しにされるということが、この文化的な予算に対する政府方法であるように思いますので、この点はもつと積極性を持つて考えて欲しいということを希望として附加ます。  次に、最後にもう一つ伺いたいのでありますが、それは第七国会における予算の提出の問題でありますが、これは政府はいつ頃提出される見込を持つておられますか、承わりたいのであります。新聞ではいろいろ言つておりますけれども、政府として今考えておられる方法を承わりたいと思います。
  82. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) これは今日のところは成るべく速かに提出するという以上に申上げられません。
  83. 岩間正男

    ○岩間正男君 第七国会が開会されると、直ぐに劈頭に予算を提出するというようなことを新聞なんかで報しておりますが、政府のこれは方針でしようか、如何でしようか。
  84. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 成るべく早く提出します。
  85. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは今言明される時期じやない、こういうために一応はつきりおつしやれないのですか。これは若しできましたら、もう予算の審議ともやはり関連をしますので、あと一週間何内に追つた問題でありますが、これは五日くらいに提出されるかどうかという具体的なことで伺いたい。
  86. 吉田茂

    國務大臣吉田茂君) 成るべく早く提出するという以上に申上げることはできない。
  87. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは総理大臣に対する質問は明日にいたしまして、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十八分休憩    —————・—————    午後二時四十八分開会
  88. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) これより委員会を再会いたします。安本長官に対する質問を始めます。
  89. 岩間正男

    ○岩間正男君 四、五点お伺いしたいと思うのでありますが、第一は、ローガン構想その他によりまして、今後の産業の状態がいろいろ変動すると思うのでありますが、それと関連して国民生活水準ということが問題になつて来ると思います。それでこれに対して政府戰争前との比較において、どれくらいの生活水準を維持されんと考えておられるか、この点安本長官に伺いたいと思います。
  90. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 只今御承知通りローガン構想に基きまして、民間貿易を進めて行くというような段階になつておりますが、現在の物価等の状況につきましては、御承知かと思いまするが、経済安定本部でいろいろと作業をいたしておりまする結果から見ますれば、大体今日のところ総括的に申しまして、大体昭和七年から十一年というような基礎に基きまして比較いたしますると、鉱工業製品、それから一般の生産というような点は、この十月までの間におきましては、大体八十%、これは昭和六年と比較いたしますると、大分違いまして、六割二分とかいうような数字が出ておりまするが、大体八割弱というような程度にあると存じまするし、それに伴いまして、今回の減税或いはその他いろいろな関係から、CPI等の数字からいたしまして、今年度、殊に十月現在等におきまする物価の関係等は、大体この四月と比較して大した変化がない。ただ尚そういう問題についで御承知の通力に、今年度におきまして価格調整費の中から二百三十億を節減したというようなことに上りまして、物価が多少上つておる。これがどんなふうに吸収されておるかというようなことを考え併せますると、大体この四月を百として見ますれば九・九二、CPIに基づいて出しますれば、そういう数字に相成つておる。九九・二でございます。そうして更に又この二百三十億の節約というようなことによりまして、多少上つて参ります。併しこれは大した違いはございませんので、私共の計算からいたしますると、大体この平均支出階級と言いますか、平均の支出を取つて見ますると、年十五万円の收入のもので、家族が夫婦に子供二人という計算でいたしますれば、大体この三・五三という程度の数字が出ておるのでございます。それくらいな値上りを生ずる。併しながら御承知通り減税等がございますので、これはその減税等に基きまして、余り一般的には大した変化がないというような状態を示してお次第でございます。
  91. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは伝え聞くところによりますると、安本のドツジ氏の示した資料によりますと大体戰前の六〇%程度の生活水準を保つというよりに聞いておるのでありますが、この事実があるかどうか。それからそう考えておられるか、その資料がそういう意味のものであるか。その点伺います。
  92. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 只今ドツジさんの御意向によつて大体六〇%ということでございましたが、私共の計算といたしましては、七割余、七〇%余という程度に考えておる次第でございまして、多少これは取り方の点において違いが生ずるかとも思いまするが、尚その爾余の点につきましては研究中でございます。
  93. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、まあ六〇%という資料は、これは提出されたという事実はないのでございますか。
  94. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) そういうお言葉でございまするが、私共の方としてはさような数字は出しでおりません。
  95. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題は、やはり講和会議と非常に関連して重要な問題だと思います。当然講和会議が議題に上つて来れば、日本の産業水準の問題が大きくこれは問題になると思うのであります。それとの関連におきまして、当然これは生活水準の問題が不可分の問題として討議されなければならないと、こう思うのでありますが、これに対して安本長官としての抱負をお伺いしたいと思います。
  96. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 御承知通りに、今年四月以来のこの均衡予算とか、デイス・インフレの線を堅持して行くというようなことから、我々のところでも有効需要等を勘案いたしまして、そうして産業政策についてどの程度を維持して行くかというような問題についても、勿論研究をいたしておりまするが、我々の今研究をいたしておりまするところでは、先ず今年度におきましては、この四月以来の状況は、生産の上においては大した変化はない。併しながら一面におきましては、金融操作等、或いは見返資金等の使い方の問題についても、昨日来いろいろお話がございましたが、多少の変化と申しまするか、或いは又そこにこのデフレ的傾向かどうかというような問題もございましようが、ともかくも我々はこの貿易振興とか、或いは又設備の拡張、即ち事業投資等の拡張というような問題乃至は国民生活の安定というような、太い三本の線を中心といたしまして、日本経済が漸次生産においても増大し、貿易振興と共に安定付けられるいうことの線で努力をいたしておりまするような関係でございまして一来年度におきまして、我々は特に産業が全体的に上昇して行くように、低下しないようにというような配慮、これは貿易振興と睨み合せて、特に考えておるような次第でございます。又予算面におきまして、今年のいわゆる十五ケ月予算と申しますか、この予算面から見ましても、今年度におきましては、御承知通り公共事業費等も相当削減されておりますので、その公共事業と、或いはその他復金等の新らしい、今年度に驚きましては貸出の停止というようなことによりまして、いろいろとこの今年の経済関係というものが停滞気味である、こういうような御意見も多々ございまするけれども、併し日本の産業政策といたしましては、今年明年においで安定を確立いたしたいということでありますし、尚この産業の合理化とか、或は又合理化に伴いまするところの操業度の向上、或いは工場管理の改善であるとか、或いは近代的施設を装備するとかいう点についても、いろいろ考慮して参りたいということで、経済安定本部としては、二十五年に対する見通しを立てながら、今年のデイス・インフレの線を堅持して、できるだけ上昇の過程を迫るような努力をいたして行きたいというようなふうに考えておる次第でございます。
  97. 岩間正男

    ○岩間正男君 ジヨンストンやドレーパーの報告で、日本の産業水準がいろいろ論議されておるというふうに聞いておるのでありますが、その具体的な情報について、安本の今まで入手されたものがあつたら伺いたい。どういうふうにそれを掴んでおられるか。
  98. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 私共のところでも、いろいろ景気変動とか、或いは今おつしやるような通産に対するいろいろな資料を集めまして、そうして作業をいたしておりますが、まだ今おつしやるような点についての特別な情報と申しまするか、或いは又我々のところで特別にそういう関係等については材料を獲得いたしておりません。
  99. 岩間正男

    ○岩間正男君 以上大体概括的な質問をしたのでありますが、以上の問題は非常に今後の講和問題を推進させる上には必要欠くべからざる問題であると思ひます。それで、これは質問をまだもつと細かにしたいところがあるのでございますが、今日の程度はこのくらいにしで、問題をもう少し保留したいと思います。次に、もう一点伺いたいのでありまするが、ガリオア、イロア、それから鮮銀券、儲備券、台銀券、そういうようなものの処分がこうなつておるか、この現状について伺いたい。
  100. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 御質問の御要旨は、御承知通り大蔵省に属しておりますので、大蔵省の方からお答えをいたします。……只今調べましたけれども、大蔵省参つておりませんので、後程お答をいたします。
  101. 田村文吉

    ○田村文吉君 安定本部長官にお伺いしたいのでありまするが、今度汽車の貨物運賃が上がりましたり、電力料金も近いうちに上るように伺つておりますと、すべての価格もそれに準じて大なり小なり変更なさらなけれならないことに相成るかと存するのでありまするが、途中で吸収をさせるから大した影響はないという御意見もありましようと思いまするが、理窟の上から言うと、とにかく変えなければならんことに相成るのでありまするが、そこでもう今日の段階におきましては、大部分の価格の統制は御廃止になつてもよろしいのではないかと我々は考えておるのでありまして、殊も第二次製品以下のものになりましては、その改定の煩に堪えないのみならず、実際と非常に離れたものに相成るかと考えられるのでありまするが、統制はどんな程度に順次御撤廃になる御意向でありまするか、主として価格統制の面につきまして御見解をお示し頂きたいと存じます。
  102. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 主要物資の統制につきましては、大体総数の半分余は、すでに統制を解いて参りました。これは概括的に申上げますが……。そこで只今の目標といたしましては、どうしてもこれだけは配給割当とか、そういうような関係で置かなければならんものは、勿論これを残しで嚴格に統制を維持して参りまするけれども、その他のものはできるだけ早急に統制を解いて参りたいというふうな方針で進んでおる次第でございます。そこで、今まで統制を解いて参りました数、それから主なるものというような点については、私共の生産局長等も参つておりまするから、大体の数字を申上げて御了解を得たいと思います。
  103. 田村文吉

    ○田村文吉君 私のお伺いいたしたいのは、過去にお解きになりましたものは強いて知る必要ないのですが、主として鉄道運賃が上つたり、電力料金が上りますると、必ず物価に響くわけです。そこでそう細かいものの一々価格の改正も、もう今日としてはなさる必要もないのではないかと私共考えまするので、裏から伺いまするか、今後お残しになりまする価格統制をとるものは、どういうものをお残ししになるか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  104. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) その点は政務次官からお答え申上げます。
  105. 坂田英一

    政府委員(坂田英一君) お答えいたします。統制は、特に価格統制は殆んど多数解除撤廃をいたしておるのでありまするが、結局最後に残りまするものといたしましては、サーヴイス、つまり公共的な鉄道運賃或いは電気料、その他の公共的な、サーヴイス的な料金、そういうものはやはり存続いたして行きたいと思います。それから又どうしても原料その他を輸入によらなければならんような基礎的物資、これは例えば鋼材のごときもの、或いは肥料、そういつたものについては、これはやはり存続いたして行かなければなりませんし、又輸入に大部分原料その他がよつておるような物資については、これはやはり存続いたして行きたいと思います。大体におきまして、でき得る限り需給のバランスが付きますものにつきましては、即刻撤廃するような方向に進みたいと、こう考えております。
  106. 田村文吉

    ○田村文吉君 具体的に伺いますが、鮮魚の価格統制はまだ残つておるようでありますが、木材の価格統制もまだ残つております。木材は基礎物資には間違いないのでありまするが、こういうものについてはどうお考えになつておりますか。鮮魚の価格統制につきましては、どういうふうにお考えになつておりますか。
  107. 坂田英一

    政府委員(坂田英一君) 木材の価格につきましては、木材の統制の問題と平行して、でき得る限りこの需給関係を見まして、これを外す方向に進みたい。まだ具体的に決定はいたしておりませんが、さような考え方で進んでおります、それから鮮魚の点でありますが、十月になりまして、十五日でありますが、百七の品目について外しまして、現在は十八の品目だけが残されているのであります。大衆魚的なものでありますが、併しこれも需給事情を見まして、でき得る限り季節をよく見ながら、つまり大変外すときに季節が悪いと悪影響がありまするので、相当季節をよく見まして、この点もでき得る限り外とて行く方向に今検討中であります。
  108. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 安本長官にお伺いいたします。安定本部においてかねて日本の経済復興のために五ケ年計画の案を作つておられます。その案が大体できまして、それが発表せられるばかりになわました頃、吉田首相はその発表を差止めてしまつたわけでありますが、この安本において作りました案は廃棄せられたのかどうか。そうして最早これは何ら価値なきものとして退けられたものかどうか、その点を先ず伺いたい。
  109. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 只今御質問の、安本から経済五ケ年計画が出ているというような御質問でございましたが、実はあれは五ケ年計画審議会というところで作りましたものでございまして只今私共のところでも発表は差控えておりますが、検討中でございます。
  110. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 その検討中という意味は、それをやはり基礎にして、安本といたしましては、日本の例えば基礎的な生産というようなものを進めて行くという意味での検討中であるか、又或いは單にもはやこれを廃棄する、併しながらその審議会との関係等もあつてただ検討中である、こういうお答えなのか、そこを一つはつきりして頂きたい。
  111. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 只今私共が検討中だと申上げましたのは、御承知通り、この五ケ年の長期計画というものは、成る程二千人もの人がかかつて、恐らく日本にはなかつたような、それ自体としては誠に立派なものができ上がつている、こう言われております。併しながら御承知の通力、現在の客観的情勢と申しますか、この四月以来の我が国の政治経済的事情から申しましても、ともかくもこの短期期間に、日本の経済の安定ということが目指されまして、九原則なり、ドツジ・ラインを堅持しながら均衡予算、或いはそれ基いた経済安定施策が営まれて参つたのであります。従いまして、これを全般を通じて私の拝見いたしておるところから、極く一般的に申上げますると、私共は御承知通り、民主自由党の立場といたしましても、吉田内閣にいたしましても、統制を漸次緩和撤廃して行く、こういう方向で進んでおります。そういうことの関係からいたしましても、又この約六、七ケ月間の過去を追想して考えて見ましても、相当に大きな変化があつたと思います。こういう意味で、尚あの五ケ年の長期計画がどの程度に我にとつて役立つものであるかというようなことも考えなければなりませんし、又只今全般を通じて私の拜見いたしましたところでは、概してではありますが、国家資本よつていろいろな計画が成り立つというような印象も帯びておりますし、さようなわけで、尚これを廃棄するということではございませんが、いろいろと検討をいたしまして、その結果に基いて考えたいということでございまして、只今発表を差控えておるような状況でございます。
  112. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 五ケ年計画案が、ドツジ方式による経済安定の行われます以前の状態を基礎にして作成されたものである。然るにドツジ方式によるところの経済安定が実施されるようになつて来て、そのために非常に狂つて来た、こういうお話であるのでありますが、これは無論その通りで、当然その案における修正、こういうことはあるわけだろうと思うのであります。そこで私がお尋ねしたいのは、そういうふうにドツジ方式によるところの経済安定が月下進行しておるわけでありますが、これは今日政府で言う安定の状態である。そしてこれから復興に向うように進めて行くのである。こういうお話であります。併し安定さした経済を今度復興へ持つて行くというような場合におきましては、やはりこれは自然に放置して置くわけには行かない。たとえ民主自由党がいわゆる自由主義経済なんかを理論としてお取りになりましても、日本の経済を復興さしますには、一定の方向を與えなければなりませんし、又国家によるところの推進、或いはそれを援助というようなこともしなければならんと思うのであります。従いまして前提が変つたということで修正はされましても、少くともやはり民主官田党内閣が一つの復興ということをお考えになつて参りますならば、確かに又その状態を基礎にいたしましての復興計画というものを持たなければならんと思うのであります。先程安本長官は、あの五ケ年計画案は国家資本によるところの計画経済である、そう見てこれは民主自由党の立場からいかんというふうなお考えのようでありますけれども、今日日本が復興いたしますのに、これは日本ばかりでなく、欧州諸国の復興状況を見ましても、国家資本の作用というものは極めて重大である。いわゆる見返資金にいたしましても、これは單に向うから民間資本が勝手に入つて来て、どの産業でも勝手にぼこぼこそれによつて動き出すというのではない。やはり国家におきまして、その作用はコントロールを加えて行つておるのであります。従いまして少くとも民主自由党内閣雖も、経済を復興せしめようとするならば、一定のやはり復興方針なるものを持たなければならんわけです。そういうものを安本において今お作りになつておるかどうか。前の案をお止めになり、或いは検討された結果、そういうものをお作りになる必要があると私は思うのでありますけれども、そういうものをやるつもりがあるか、或いはそれをやつておられるか、その点をお伺いいたします。
  113. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) お言葉の通り復興五ケ年計画は、それ自身としては先程申上げましたように、誠に立派なものと自分は考えておる次第でございます。併しながら、これを実行するということになりますれば、当然それに伴つた裏付けがなければならんことであると存じます。従いまして今日のような変化が激しい時期に、そのままその通りに実行できるか、できないかという問題も伴つておりますために、そこで私共として取敢えずこの見通し作業として、そうしてそれが実行可能である、ほぼ実行可能であると考えられるような案を、今日のところ経済安定本部としては作業をいたしておる状態でございまして、あのもの自体として、私はそれがいいとかいけないとか、こう申しておるわけではございませんので、そのデーター、或いはその内容におきましても、極めて尊重すべきものがあると存じておりまするが、今私の申上げておりますることは、大体見通しの立つ二ケ年ぐらい先の見通し作業を基本として考えて行つたらどうかというので、その点を検討しておる次第であります。
  114. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 補正予算は別といたしまして、昨日の大蔵大臣の言明によりまするというと、二十五年度の予算は安定より復興へという大きな目的を持つておるのだ、こう言われておる。従いましてこの復興計画は当然なければならんわけでありまして、そういたしますならば、二十五年度の予算が間もなく提出されるそうでありますが、それに伴つて安本において今日作業をしておられるという、その約三ケ年ぐらいの見通しをいたすところの案というのは、並行的にお出しになるかどうか、その点をお伺い。
  115. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 私共の作業か、これができ上がりまして、閣議の了解を得るということになりますれば、大体その線に沿つた経済政策というものが一応説明することができるんだというふうに自分は考えておる次第であります。
  116. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、安本の機構の縮小の問題でありますが、伝えられるところによりまするというと、経済安定本部なるものの性格の問題或いは統制撤廃等により冗員ができたというようなこともありますが、それよりも根本的な見地からいたしまして、安本というものを縮少しよう、こういうような話を聞いておるのでありますが、安本長官はその点について今日の情勢において縮小すべきものとお考えになつておるかどうか。或いはその権限はもつと小さくすべきものである。そうして又将来においてこれは廃止すべきものであるか、その点をお伺いしたい。
  117. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 安定本部は、御承知通り行政整理に伴ないまして、その人員は多少削られました。更に来年度におきまして、どうするかというこの二十五年度の予算の上におきまして約二割強の減員ということは予想せられております。従いまして、安本が縮小せられるかどうかという問題が問題になつておると思いますが、只今のところでは、過去の経緯に基きまして、統制が漸次緩和し、撤廃されて行く、そういうような事務関係、或いは物価庁等にもそれらの影響がございまして、現在員を減少して参る。或る程度の人員減少が行われる予定でありますけれども、経済安定本部それ自身は、御承知通り年々、一年ずつに決められております省でございまするから、将来については分りませんが、ともかく現状を維持しながら、経費はできるだけ節約して安定本部としての機能は決して落ちないように、いわゆるトツプ・へヴイの形を取りまして、できるだけの効果を挙げて参りたいという私の構想でございます。
  118. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先程田村委員から、補給金の廃止と物価の騰貴の問題につきまして、それが全体の物価に及ぼす影響から統制を撤廃せよというお話がありましたので、補給金の撤廃と物価の問題につきましては、私も余り沢山申上げようと思いませんが、ただ一つ肥料の補給金の廃止の問題についてお伺いしたいと思うのであります。肥料の補給金の撤廃問題につきましては、すでにずつと前から論議されておりまして、来年の春肥からそれが廃止されて、相当急激な値上りがあるように聞いておつたのであります。然るに幸いのことに、その補給金は漸減の方針がとられまして、急激に廃止されなくなりましたことは、農民にとりまして非常に喜ばしいことであるのでありますけれども、併しながら、これは今日の肥料価格がそのまま維持されるのではないのでありまして、すでにこの表にも出ておりますが、硫安におきましては、来年の一月一日から二月二十八日までは拂下価格が、現行の一万一千百二十六円か一万三千六百八十五円になり、更に三月の一日からは一万五千六十四円、約四割も上るという状況になつているのであります。石灰窒素、過燐酸又然りであります。これは農民にとりまして、春肥から相当な価格が上ることになるわけでありまして、重大な問題になつているのであります。米価は御承知のように、米価審議会の決定を無視いたしまして、低く決められているのであります。これは肥料の騰貴のことを予想して決められた米価ではないのであります一そういたしますならば、農民はすでにこの一月以降におきまして、漸次肥料価格が騰貴して参るごとによりまして、非常な農業経営の上に苦しみを受けで参るのであります。これは日本の農業にとりまして誠に不幸なことなのでありますが、一体この肥料の価格の騰貴ということと米価との関係、例えば肥料の価格が上りました際には、米価もそれに伴つて上げてバツク・ペイをやる。資金があつてバツク・ペイをやるというふうにお考えになつておるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  119. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 最後の点はバツク・ペイを行うつもりでございます。ただ只今物価庁の担当の政務次官が参つておりますから、その他のことはお答え申上げさせます。
  120. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 バツク・ペイをやるというお言葉を聞いたのでありますが、このバツク・ペイはいつおやりになるつもりであるか、それをお伺いしたい。来年のつまり七月一日におやりになるつもりであるのか、或いは肥料価格がすでに三月一日から四割乃至五割も上ることになつておりますので、その際におやりになるつもりであるのか、そのところをはつきりして頂きたい。
  121. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) それは既定の方針に基きまして、七月にやる考えでございます。
  122. 坂田英一

    政府委員(坂田英一君) 大体お話通りに、三月までに肥料が三割五分上る計算になります。それに対してバツグ・ペイのときの問題でありますがこれは肥料の値上り、その他の情勢が全部かかつて参りますもので、肥料の値上りだけによつてやるものではないわけであります。三割五分の肥料の値上りの結果、然らばそれだけで計算したらどれだけになるかということについては、まだ計算しておりません。
  123. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうも二千人の機構を持つている安本といたしまして、そんなことでは困ると思うのでございますけれども、できていないものはお伺いするわけには参りません。そこで次にお伺いしたいのは、これは物価庁と農林省の共管のような関係にあつたのでありますが、米価審議会の問題であります。米価審議会は、これは無論諮問機関でありまして、決定機関ではないのであります。米価につきましては、民自党に所属されておる委員の方も含めまして四千七百円という基本米価をお決めになつた。然るにこれは物価庁において御採用にならんで、全然別の米価をお決めになつた。而も超過供出の価格の倍率につきましても、これは四千七百円ならば二倍にしてもいいということであつたのですが、二倍のところだけをおとりになりまして、今度二倍にお決めになつた。みずから作られました米価審議会というものを非常に無視した態度であるのであります。何故に米価審議会をお作りになつたのか、而も自分達でお作りになりましたこの審議会の答申案をお容れにならなかつた、その点につきましては、私安本長官からその経緯を十分にお伺いしたいと、こう思います。
  124. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) これは御承知通り、只今のお言葉の通りに、経済安定本部外局の物価庁と、それから農林省の間におきまして米価を一つ決め失い、併しそれにはこれまでのような方式よりも、更に民主的に一つ決めようではないかということから米価審議会を設けまして、いろいろと委員の方々に御検討を願つたのでございます。その結果、大体四千七百円という標準と申しますか、この線が出たのであります。その当時勿論この委員会等も設けまして、いろいろと検討をいたしました結果、その根本的な流れといたしましては、農家が再生産できるように、いわゆる生産費計算に基く価格ということが相当強く要望をせられておりまして、併しながらその委員の各位におかれましても、元来この日本の米価を決定するという問題につきまして、生産費計算ということが極めて困難な問題でございまして、御承知通り日本が北の方から北の方に長い。或いはそれを考えの中へ入れて参りまする種々のフアクターが、いろいろ條件として異なつておるというようなことから、なかなか適当な生産費というものがむずかしい。仮に適当な生産費として考えて出たものも、必らずしもパリテイ計算に基くものよりも高いものだとは決まらないというようなことが、いろいろ検討せられまして、その結果やはりこの再生産という気持をともかくも織込んで考えたパリテイ計算、そのパリテイ計算を原則として、この生産費計算をもそれに織込む、考え込むというような意味での出た結果が四千七百円ということでございました。それには勿論この基礎米価は四千二百五十円ということでありまして、それに更にこの追加供出の三倍というもののうち、それを二倍にいたしまして、そうしてそのうちの一倍分というか、その三分の一倍分を米価の中へ織込んで、そうして一般の供出の価格にして行きたいというような、この計算を含めまして結果を得たのでございましたけれども、いろいろ検討し、いろいろやつて参りました結果、どうしてもそういうところに落付けるということができませんで、御承知通りこの中間経費等を織込み、そうして四千四百三円ですか、四千四百余円という数字が出で参つたのでございまして、勿論この米価決定につきましても、相当苦心をいたした結果が、さような、今申上げたような結果に相成つた次第でございます。
  125. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 米価決定につきましての経緯等、いろいろ私も存じているのでありますが、この米価審議会によつて決められました四千七百円という米価に対しまして、安本長官はこれが、とれなかつた事情については詳しくお話しにならなかつたのでありますが、これは理論的に間違つておつた、或いは計算の基礎が怪しいという理由でおとりにならないで、そうして安本によつて計算せられましたところのパリテイ計算の方式が正しい、そういう意味で米価審議会の案を御採用にならなかつたのかどうか、その点をお伺いしたい。
  126. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 勿論このパリテイ計算というものにつきましても、いろいろと御議論があろうと思います。併しながら物価庁といたしましては、この計算方式は一応正しいものという見解の下に行なつた次第であります。
  127. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうしますと、米価審議会の深慮は間違つている、そういうお考えと思われるのでありますが、そう解釈してよろしうございますか。
  128. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 米価審議会の考えた決定の結果が、決して間違つているというふうには自分は考えません。
  129. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 米価審議会の決定いたしました生産者価格は、すでに御採用にならなかつた。今度消費者の価格を決定しなければならんわけでありますが、すでに消費者価格につきましては、一割何分か上げるということが伝えられている。もはや米価審議会に消費者価格を付す御意思はないのかどうか、もう要らなくなつた米価審議会はお止めになるつもりであるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  130. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 私共は決して米価審議会を止めようというような考えはございません。勿論そのことにつきましても、米価審議会を招集いたしまして、一応経過の報告はいたした次第でございます。
  131. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 経過の報告はまあいたされるかも知れませんけれども、生産者価格についてすでに米価審議会の見解を入れない、消費者価格についても恐らく米価審議会の意見を容れる御意思がないように私共には思われます。又米価審議会におきまして、消費者価格をこの際上げないために、中間経費の節減の問題を生産者価格決定の際にもいろいろ持ち出しているわけです。その後中間経費の節減等につきましての具体的の御努力があつたように聞いておらんのであります。これは消費者価格決定にも及ぼす重大なる問題なんでありますが、その中間経費の節減の問題につきまして、安本といたしましては計算の上において何らかり手を打つているかどうか、それをお伺いしたい。
  132. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) これは消費者価格につきましては、まだ決定いたしておりませんので、その決定をいたしますまでに、我々も更にいろいろと中間経費筆についても検討をいたしまして、消費者価格を決定いたしたいと存じます。
  133. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 米の消費者価格はいつ御決定になるつもりであるか、これは賃金ベースとも関連する問題でありますので、その御決定になる期日を御明示願いたいと思います。
  134. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 米の消費価格は一月初旬に決定いたしたいと思つております。
  135. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 藤野委員の運輸大臣に対する質問を始めて頂きます。
  136. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 私は気象に関する件について運輸大臣にお尋ねいたしたいと思います。気象の観測をするのには、必要人員と設備と、これに要する諸経費が必要であるのであります。然るに政府は先の行政整理において、余りに沢山の整理をやつたために、気象の観測が十分でないということを政府みずからが認識せられた結果、今回の補正予算によつて二千余万円の増額をし、人員において四百四十七人の増加をされたということは喜びに堪えないのでありますが、これで細長いところの日本の気象が完全に観測ができると考えられるのであるかどうか、この点についてお伺いしたいのであります。
  137. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) この気象に関する定員につきましては、只今藤野君の仰せられた通り、運輸省の関係の定員を設定いたしまする際に、最も減少率が厳格でありましたので、今回はそれを補正いたしたような次第であります。未だ十分とは申されませんが、先ずこの程度で一応の事務は、処理できると考えております。
  138. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今の大臣の御説明によれば、人間は大体においでこのくらいが、私などは常に天気予報によつて農業の経営をやる、或いは漁業に出かけると、こういうふうなことであるのでありますが、過ぐる台風の実例を考えて見まするというと、測候所においては各風があるということを認めながら、この台風を国民全体に知らせるところの経費がなかつたということであるのであります。従つて国民はあれまで損害を受ける必要がないのであつたのであるが、気象の特報を各方面に出すことができなかつたために損害が大きかつたのであります。これは今まで気象に関するところの電報のようなものは無料電報であつたのが、制度の改まつたために無料電報が廃止せられたためであるのであります。政府は将来において気象に関するところの電報は、従来通り無料電報にする考えがあるかどうか、これを伺いたいと思うのであります。
  139. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) その点は郵政大臣とも協議いたしまして、考慮いたすことにいたします。
  140. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 若しこれが無料電報でないというようなことであつたらば、電報料その他というものは僅かな経費で済むのでありますから、補正予算にそのくらいのことは計上するのが当り前であろうと信ずるのであります。又大臣も今回の台風の被害が非常に大であつた。その一方においては通知が遅れたということは御承知であろうと思うのでありますから、これくらいの費用を補正予算に計算されなかつた理由はどこにあるか、これを伺いたいのであります。
  141. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) この補正予算の組み方につきましては、原案を出します際にはいろいろな注文を付けまして、それぞれの項目に対しまして、適当と信ずる額を現状といたしましては出しましたのですが、何分にも緊縮財政の見地から、当初の注文が十分容れられない憾みがございまして、只今仰せられたように、それが計上されないということに相成つておるわけでございまするが、その点は予算がたとえ僅少でございましても、気象事務には澁滞、支障を来さないように注意をいたさせようと思います。
  142. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今予算がなくても適当の処置を講ずるというお話であつたのでありますから、それで了承するのでありますが、できるだけ気象の観測をしたならば、これを成るだけ早く国民全体に知らしめ、殊に台風の起るような場合においては、あらゆる方法を講じて事前に対策を講じたならば、被害の軽減を図ることができるのでありますから、現在の各測候所では、この金がないために仕事ができないということを非常に感じておるのでありますから、直ちにその対策を各測候所に通知されて、最善の努力を図られるようにお願いしたいと思うのであります。
  143. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) 只今の藤野君の御趣旨はよく尊重いたしましてやるつもりであります。
  144. 高橋啓

    高橋啓君 運輸大臣にお伺いします。この前も総理大臣施政方針演説に関する質問にも申上げたのでありますが、非常に不徹底でありましたから、もう一度お伺いしますが、この物価と運賃との関係でありますが、物価に運賃が関係を持つことは御承知のことでありまして、物価を形成するところの主なる因子は、食糧或いは労賃と、それから運賃だろうと、思いますが、食糧と労賃はどこにおつても、同じ状況において物価に組入れられるのでありますが、この運賃の場合は全国の平均のパーセントを上げて、それが物価にこの程度の影響しかないというようなことは言えないと思うのであります。まあ今度の値上げによつて、物価には四・三%しか影響がない。こういうことを言つております。併しながらこの運賃の場合は、生産地と需要地との関係において、距離、重量、容積という点で非常に大きな影響の度合が違つて来ると思うのであります。非常に容積み少いダイヤモンドというようなものは殆んど影響がない。それから距離の近いものも影響ないと思います。このような距離、重量、容積といつたようなことを考慮に入れないで、そのまま全部を一律に値上げするというところに非常に大きな不合理があると思う。而もそれで影響を受けるものが非常に今後の物価に重大な関係を持つ。基礎産業に関連を持つ資材であつたならば、一層これは問題になると思うのであります。そこでこの前特に木材について話したのでありますが、木材は典型的な大きな影響を受ける種目であります。なぜというと、生産地は北海道、九州といつた離れたところに今林力が残されておつて、需要地に近いところにはないのであります。それが今後の値上げによつて、北海道から大阪まで木を運ぶと只になるといつたような状況になつておる。こういうことを無視してやつた場合、今後パルプの材料であるとか、或いは坑木であるとか。今後復興に必要な資材というものは出て来ない、国策遂行の上に大きな影響を持つんじやないかど思うのであります。そこでこの前の運輸大臣の御返答にこういうことがある。特殊の木材或いは石炭というような面については、御承知通り木材と素材は目下マル公値段が下廻つておるような関係がございますので、運賃の値上げをいたしても余り影響がない、こう言つておるのであります。それは物価がマル公より下つておる、若し上つた場合にはどうするかというと、何かスライド………物価の状況を見て、それにとつて運賃を上げたり下げたりできるような御返答でありますが、これは私はちよつと寡聞にして、こういう経済理論を知らないのでありますが…これはどういうことでありますか、今後運輸大臣が、今のマル公が下廻つておるのは生産原価が少ないのじやなく、金融その他にとつてダンピングが行われておるのでありまして、そういう状況によつて今後一掃されれば、これはぐつと上るかも知れませんが、そのときに運賃を下げて又何か物価の体形に副うような運賃の上げ方をして行くかどうか、恐らくこれは間違えて言われたのじやないかと思いますが、併しこういうようなことも当局が言われたことでありますから、はつきりとこれも承つて置きたいと思うのでございますが、とにかく物価に余り影響なしというようなことは、私はこの運賃に関しては、物によつていわゆる距離、重量、容積の関係において言えないと思いますが、それに対して御意見を承わりたいと思います。
  145. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) 只今の御質問、大体基本論といたしましては現在のものを八割上げますのですから、全然影響のないということは、これは言い得ないのでありますが、又同じ商品の運賃を考えまする場合におきましても、凡百のものが今御指摘の輸送の距離とか、或いはその商品のサイズであるとか、或いはその価格の嵩というような、いろいろな点で或いは影響が一致しないことは無論そうなんであります。ところがこれを押しなべて八割上げるということは非常に影響する度合が大いに不都合じやないか、それを一律にやるのは不都合じやないかという議論は、根本論といたしましては、さような通りであると思うのでありまするが、どの分は何割、度の分は何割というふうに、一々無数の貨物をさようなふうにいたすわけには参りませんので、一律に八割ということにいたしたのでありまするが、さてこれが一般生産者並びに一般消費大衆にどういう影響があるかという問題ですが、私の理念といたしましては、インフレーシヨンがどんどん進行の過程にある場合には、ちよつとした事柄でも物価に刺戟を與え、影響を與えるというような政策は当然避けなければならない、こういうふうに考えておるのでありまするが、現在のこの段階は無論十分ではございませんが、インフレも進行過程を中止いたしておると考えております。むしろ物によりましては不景気が参り、又デイス・インフレ或いはデフレーシヨンというような方向を今辿つておる際であり、且つ又もう一つ根本の理念は、大体運賃なるものの本質が、いわゆるこれはコストをカバーしない運賃でありまして、国鉄の只今運搬しておりまする主要品目全部の平均をいたしましても、コストの四八%しか運賃を取つておらんのであります。こういう馬鹿気た私は経済事象はあり得ないことで、今まではずつと十数年前からの国鉄の経営方針は、大体旅客運賃に重点をおきまして、貨物運賃はこれを非常に少なく見積つておつた。昭和十一年は大体経済状態がバランスの取れた時代でありますが、このときには貨物運賃と旅客運賃がやや均等に五〇%、五〇%ぐらいのウエイトで営業の収入を考えておりましたが、その後段々旅客運賃偏重主義になつておりまして、昭和二十三年度におきましては、旅客運賃の方はコストに対しまして一〇四%ということになつておりますが、今度は貨物の方は逆にコストの四八%しか貨物運賃に当つていないという馬鹿気た状態になつておりますので、これはいつの日にか是正しなければならん。旅客運賃とのバランスを取らなければならんというので、そのときを見計つておりましたのでありまするが、八割値上げというと如何にも影響が多いように思うのですが、そういう見地からも、どうしてもコストまでは引上げなければならんのですが、十分コストまではの八割はカバーできませんが、ともかくもそういう百円かかる運賃を四十八円しか取つていないと、いうようなことでは到底国鉄の経済もできませんし、又いつの日にかこれ充足しなければならんので、今回それを一つやろうと思つたのでありまするが、さてこれを数字的に見ますると、御指摘のように、昭和十一年は運賃が一般物価に占める割合は四・六%でございますが、現在は僅かに二・三%にしか当つておらない、これを八割値上げいたしましても四一%という数字がともかくも出まして、昭和十一年度の四・六%に比しましてこの八割値上げをしましても、平均は四・一%で、数字ばかりが無論能じやありません。先程高橋君の御指摘のように、各商品に関するいろいろの特色のあることは十分承知いたしておりまするが、まあまあこういう程度であるので、中にはいわゆる硫化鉄鉱であるとか、或いはその他のもので運賃を八割値上げをいたしますと、一〇%以上に上るものもあります。併しこれらは素材、生産材でございまして、それが国民の消費大衆に影響する場合には、二次製品、三次製品、四次製品の形を取りまして、非常に微分化されてフラクシヨンとなりまして、国民の実際の日常生活体系の中に入つて来るので、私はその程度の分は吸收ができるものと、かように考えておるので、無論影響が全然ないということは私は申さないのでありまするが、この程度の値上げでございましたならば、とにかく吸收ができるんじやないか、さように考えておる次第でございます。
  146. 高橋啓

    高橋啓君 今倍率が非常に不合理であるということは、これは前から一つの国の方向として止むを得なかつたと、こう思うのであります。今度の値上げによつてはね返りのために備え、鉄鋼とか、肥料とか、そういう方面については調整金によつてこれを補つておいて、そういうようなふうに、一つのこれは今日の日本状況においては止むを得ない方向であつたと思うのであります。そこで今あらゆる関係のうち、俄かにこのような、殆んど倍に近い値上げでありますから、甚だしくそのために影響を受けて、全然価格に吸收もできなければ、全くそれがそのものの経済的な機能を出し得ないような価格に追込められておるというようなのが沢山あると思います。そういうことを細かに一つ一つということはないけれども、今鉄鋼とか、肥料とかを選んだように、或る程度のそういうことの操作が必要だろうと思います。例えば等級の調整とか、そういうことによつて、やはり必要なものが必要な場所に甚だしく無理でなくこれが供給されるようにすることが、今日或る程度の統制を必要とする事情の中では必要だと思います。それをただ数字だけで以て見て、こんなところでよかろう、而も倍率が不合理であるから、倍率を訂正するんだというには、まだ世の中がそのようになつておらない、こう思うのであります。そこでこの値上げ全部の枠の中で、このような調整が取られなければならんと思うのでありますが、そういうことに関して運輸大臣はどう考えているか。
  147. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) 実はいろいろな御意見もありますし、又このいわゆる貨物運賃の等級なるものが、只今私が申上げました通り、ずつと以前のこれが制定にかかるもので、現在の経済状態から鑑みますというと、必ずしも適当でないものがあろうかと思われますので、来年度四月一日から、この等級のバランスの修正をいたしたいと思つておりますので、その準備をいたしておるような次第でございます。
  148. 高橋啓

    高橋啓君 国鉄は独立会計になつておるのであります。そこで、足りなければいつでも値上げする、そうでなければ人を減らすという方面の外に、私はあんな大きな世帯を持つて、而も人件費は四五%、物件費は大五%というような統計を、過般の公聴会において労組の人から聞いたのでありますが、かようなものを動かす上において、いろいろのここのところに合理的な動かし方があろうと思う。少くとも石炭で二十億節約できるというような話も聞いたのでありますが、民間の仕事においては、企業整備によつて大きな出血を余儀なくされておるのであります。又民間から鉄道が購入するものについては、私は枕木について知つておるのでありますが、随分苦しみを與えておるのであります。併しながら、石炭や何かの買い方はう私はもつともつと考えようがあると、いろいろに細かく掘り下げて行きますと、官業がやり方がよくとも惡くとも、国の力によつてこれを補つて行くのだと、併しながら民間の仕事については、あらゆる苦しい、而も血のにじみ出るような営業の合理化を要求しておつて、これでは政府の仕事としては、あらゆる国民に対するいわゆる指導力を失うのじやないかと思うのです。そこでこの国鉄のような、最も官業として大きなものであるから、もう少し企業の合理化によつて経費を節約して、物価に影響を與えたり、或いは人員を首切つたりするということは第二に持つて行くようにお願いしたい。そのような方法でまだまだ何とか金が出て来るところがあるのじやないかと思うが、運輸大臣は如何に考えておられますか。
  149. 大屋晋三

    ○国務大臣(大屋晋三君) 全く国鉄経営の根本方針につきましては、只今の御意見と同感であります。国鉄が経営山赤字が出た、直ちに運賃の値上げというのは、これはもう拙の拙なるものでございます。そこで專らこの国鉄の経営の面につきましては、御指摘のように、いわゆる各種のマネージメントの能率を上げるということ、細かく申すならば、いわゆるいろいろな請負の仕事、或いは物品の購入の方法におきまして、或いは石炭の焚き方であるとか、或いは各個人々々の執務上のいわゆるエフイシエンシーを上げるというような事柄を総合して、そうして單にその経営の赤字を出さないように、又赤字が出た場合にも直ちに運賃の値上り、直ちに人員の整理というようなことのないように、一つ十分事実経営の能率を上げることに努力を将来して行かなければならんと考えております。尚又、今回も実は八十六億の赤字が出るのでありますが、これもコーポレーンヨンが六月一日にスタートしまして、まだ日にちが僅かなのでありまして、いろいろ考えておりまする只今の能率増進とか、合理化の促進というような点が時間の関係で十分これが行われない。尚も、過ぐる六月に旅客の回り運賃を上げましたが、その上げ方が少しきつかつた影響か、利用逓減の法則に支配されまして、利用率の減少を一〇%くらいに見積つたのが、実際はもつと多かつた、見積り違いをした。とういうような関係で今回は八十数億の赤字を出し、その結果が止むを得ず運賃の値上げになつたことは、運輸大臣といたしましても誠に遺憾に考えているのでありますが、将来は仰せのような線に沿いまして、十分努力いたすつもりであります。
  150. 高橋啓

    高橋啓君 先程、来年度からは等級の操作を行なつて、実情に即するように直下考えを持つておるということでありますが、そのときはあらゆる正しい資料の下にやつて頂きたいと思うのでありますが、尚それまでに、私はそういうような見通しの下に物が動かなくなるのではないか。折角値上げをしても物が動かんということになれば、増收目的いうものは全然問題ににならん。そこで甚だしくそういうふうな不均衡なものについては、特に過渡期における便法を考えて、一方増收目的を図ると同時に、そのようなものが必要な動きを下るようにするという考えはおありになるかどうか。
  151. 大屋晋三

    ○国務大臣(大屋晋三君) 御趣旨の点を十分に尊重いたすつもりでおります。
  152. 高橋啓

    高橋啓君 了承いたしました。
  153. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 私は三点についてお伺いしたいのであります。  その第一は、只今高橋委員から御質問なさつた運賃値上げに伴つて物価に影響を及ぼす、これは本会議で四・三%とお答えになつて、只今四一%とお答えになりましたが、その違いは僅かでありますが、物価に及ぼす影響というものは、これは逃れられないのであります。と同時に、又一面主食配給の値上げなどによつて国民生活というものが少しも軽減されない。ところが一方において、二百億の減税をするかち、国民の負担が軽減されるというように政府は宣伝をしておられるのでありますが、その二百億円の減税というものは、結局そういうふうな国民生活の負担を軽減するものではなしに、一方に吸收されるものである。こうなりますると、運輸大臣という立場だけでなしに、現在の内閣の一貫した方針として、例えば公務員の給與を値上げをするというような問題に対しても反対をされて、むしろそれよりも実質賃金を上げるという方面に努力するということを、総理大臣初め政府としては声明をしておられたのであります。声明せられた方針と、運輸省で取られる方針とは全く矛盾するように思うのでありますが、これは政府内部の方針として運輸大臣はどう考えられますか。運輸省だけの問題でなしに、一貫した方策の上から御答弁を頂きたいと思うのであります。
  154. 大屋晋三

    ○国務大臣(大屋晋三君) 只今のパーセンテージの問題は、四・三%が正しいのでございますから、さように訂正いたして置きます。  尚又、政府政策が、一方に運賃の値上げをやり、国民生活を軽減するという主張に対して矛盾しておるのではないかというような御意見でありましたが、これは総理大臣施政方針演説の中にも、又大蔵大臣財政演説の中にも、明らかに申上げておるのでありまするが、総合いたしまして我々政府といたしましては、御承知通り国民の負担を軽減するという面に対しまして熱意を持つてそういう政策を実行しておる次第でありまして、御承知のように今回税制改革の一部も、この補正予算に織込みます。又或いはその他いろいろなこの失業対策、或いは公共事業費の各方面への割賦というような、いろいろな事柄を総合いたしまして、一方においては、運賃の値上げがございまするが、一方においてはプラスになり、減税その他の政策を以ちまして相殺いたしますれば、やはり国民全体の負担は軽減されるという面に向つておるので、最も大きな関心は、物価をこれ以上げないという点に対しまして、我々の取つておりまするこの補正予算の公共事業費の支出の面、或いはこの事業の補給金の廃止というような、すべての点をお考え下さいますると、一方に運賃の値上げという一つのマイナスの面がありますが、プラス、マイナスいたしますと、プラスの方が総合的に多く相成つておりますことは、予算を御覧下さいますれば十分私は分ると思います。
  155. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 物価はこれ以上、上げないとおつしやられますが、物価は現に上るのでありますから、この点大臣のお考えをもう一度御訂正頂かなければなりませんが、実質賃金の充実ということに対しましては、反対な方向になるように思います。その点どうお考えになりますか。
  156. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) いろいろな事業に対する補給金の撤廃、或いは税收の負担の軽減というような面物価の、インフレを停止いたしまするあらゆる政策を総合いたしまするというと、私はこの運賃の八割値上げは多少の、無論上げるのでありますから、この面だけを見ますというと、上ることは事実でありますが、総合いたしまするというと、私はこの運賃八割値上げは決して大なる影響はなし、むしろプラスの面によつて、このマイナスの面が吸收されると信じております。
  157. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 運賃値上げをすると、物価が上るから、その点をお見込みになつておるようでありますが、全体から言うと、プラスになるというお考えには承服し兼ねるのでありますが。この問題は一応止めて、更に次の問題を続けたいと思います。これは以前から運輸省の発表しておられるところによりますと、一、二等の運賃を値下げするということをお聞きするのでありますが、而もこれは四月からする、当初予算を組まれましたときに、すでに運賃の減收を見込んで、九十三億というものを見込んでおられるように説明を承つておるのですが、更に一、二等の運賃を何故値下げされるか、その点を一つお尋ねいたします。
  158. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) これは一、二等の路線は、相当利用率の高いところもございまするが、全平均をいたしますると、やはり利用率は五〇から六〇パーセントというので、非常に低いのでございます。それでこの原因を考えて見まするというと、やはり一、二等の運賃が少し高きに失するが故に利用率が少いというふうに考えておりまするので、これを幾分運賃を下げまして、利用効率を高めて大衆の目的に資したいということと、尚又、昨今観光客が続々入つて参りまする状態にございまするので、その意味につきましても、やはりこの利用率を高めるように、幾分運賃を低めて、而も国鉄の増收を図つて、その結果一、二等の観光方面のサービスも充実いたしたいと、さように考えておる次第であります。
  159. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 一二等の利用率の少くなつたのは、これは運賃値上の当座であつて、最近における状況から見ると非常に復活されて来ておるように思われるのであります。現に特急の平和号などでは、二等の急行券を持ちながら、座席さえないというような姿でありますので、余程以前とは実情が変つておるということを私は考えるのであります。それから観光客が多く見えるかちという意味のことを申されましたがそれならばむしろ値下をしないで、観光客から普通の運賃を貰つた方がいいじやないか。又混雑しないということにすれば、現在のような程度であるならば、却つて観光客を満足させるということができるのであります。いろいろな意味において、むしろこの一、二等を値下げするというならば、三等を値下するのが本当じやないか。利用者のうち最も大衆負担に影響のある三等を値下げし、又それと同時に定期を値下げするのが、本来の国民大衆の生活負担というものを軽減する上において非常にいいのではないか。殊に学生の定期或いは勤労大衆の定期というものは非常に生活に影響を及ぼすものであります。以前には勤労者の定期というものは会社負担であつた。ところが、最近においては会社の負担を止めて個人持ちにさしておるところが多いようでありますが、これは明らかに勤労者の実質賃金の値下げということになるので、政府が提唱しておられる実質賃金を充実きせるという意味から、反対の方向のことが続々と現われて来るように思われます。むしろ一、二等の運賃を値下げするより、定期を大幅に値下げするような方針をとられるのが、現在政府が提唱しておられる方針に合うのじやないかと思われます。この点重ねてお尋ねしたいと思います。
  160. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) 一、二等の利用率は、平和号の場合は充実しておると申して差支えないが、それは正にその通りで、平和号はあれは非常にうまく利用されておりまして、殆んど一〇〇%近い成績を挙げておりますが、その他の二等というのは非常に利用率が少いので、いわゆる運賃を下げて利用率を増して、増收をしようという考を持つております。尚又御参考になると思うのですが、日本のように一、二、三等の倍率が非常に開いておるところは諸外国にはないのでありまして、例えばアメリカのプルマンカーごときは、普通の等級を一〇〇といたしますと、僅かに五割増の賃金を取つておる又イギリスでは、三等に比較いたしまして、二等は僅かに三分の一増の一三三、又一等はその三分の一増の一六六というようになつておるのであります。然るに日本では御承知のように、従来は二等は三等の二倍、一等は更に二等の二倍というふうになつておつたのです。今度は一等、二等、三等の間を三倍刻みにいたしておる。これらのつまり倍率も非常にアブノーマルであるというようなことも考えられまして、いたしたわけであります。ところで御指摘の定期なんでありますが、この定期は、通勤定期と学生の定期があるのでありますが、これはもう非常に倍率の高い率の割引をいたしておるのでありまして、学生の割引のごときは最高は九割八分、通勤の割引も最高八割二分でございましたが、それくらいまでやつでおるので、これは諸外国にはかような例はないので、もはや通勤定期、学生定期はこれ以上に割引を強化することは絶対に無理だと思うのでありますが、この普通のいわゆる一ケ月から六ケ月の定期というものに対しましては、実は先般来この一ケ月、三ケ月に割引の差等を設けたやつを撤廃いたしましたことは、やや実情に適さない憾みがございますので、御指摘のように、来年四月一日からはこの差を一ケ月から三ケ月の間に当つては、在来の一割引、更に三ケ月から六ケ月に亘りましては、一割五分というくらいの程度で、普通定期の割引の強化をいたしたいと考えておる次第でございます。
  161. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 三番目にお伺いしたいというよりは、資料を提供して頂きたいと思うのですが、以前に問題になりまして、運輸省から発行されるパスが非常に整理されております。最近、殊によりますと、又これが緩んで濫発の傾向にあるということを聞くのでありますが、そういう事実があるかどうか。
  162. 大屋晋三

    ○国務大臣(大屋晋三君) そういう事実は、私は絶対にやらしておらないと思うのでありますが、ちよつと数字が実は今分りませんので、それは政府委員から御説明いたさせます……。数字的にはまだ御説明ができないそうですが、私は濫発を、いわゆるこのパスという無賃乗車券を整理いたしました後にパスを出した例はございません。併しこの従業員のパスというものは、これはお認めを願つておりますので、これは出しておりますが、これも五月三十一日に整理いたしまして以来、増発しているような事実はないと考えております。
  163. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 この点について確かな数字の点をもう少し資料を頂きたいと思います。
  164. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) 承知いたしました。
  165. 田村文吉

    ○田村文吉君 運輸大臣に伺いたいのでありますが、今一番私共予算を拜見して淋しく感じたりいたしました問題は、今度の予算に九十億円の価格差補給金が出ておるのであります。この将来の或いは当面の日本の海運政策、今度運賃を九割からお上げになるのでありますが、第一に伺いたいのは、この海運の運賃を九割お上げになるということは、国際的の物価水準に基いてお上げになるのでありますか、それとも原価計算によつてお上げになるのでありますか、或いは又陸運との釣合をお考えになつてこの措置をおとりになつたのでありますか、尚合せて伺いたいのは、私共昔は門司浜の運賃は大低八十銭ということを聞いておつたのでありますが、仮に一円といたしましても、現在門司浜の運賃はこの公定価格でどのくらいになつて、戰前の運賃に対して今度の決められる運賃というもの場は何百倍くらいになるのでありますか。
  166. 大屋晋三

    ○国務大臣(大屋晋三君) 只今御質問のこの運賃は、これは内港の運賃でございまして、国際のオープン・マーケツトの運賃を調節する意味ではございませんので、これは内港の運賃と御了解願いたいと思います。従いまして、やはり陸運の鉄道の運賃の方に見合いをいたしまして、今回鉄道は八割五分の運賃を九割三分というふうにいたしたわけなんであります。さように御了承や願いたいと思います。又戰前の若松大阪乃至横浜の運賃は、只今手許に数字がございませんから、これはあとで政府委員から数字をお示しいたしまして、御説明申上げたいと思います。
  167. 田村文吉

    ○田村文吉君 分りました。私は昨年の運賃の種上り前に計算いたしまして、三百五六十倍と考えますので、今度の値上わが九割といたしますと、五六百倍近くになるのであります。こういうことを実は心配しているのでありますが、それで今のお話では鉄道運賃と見合つておるというお話でありますが、鉄道運賃は、現在は私の計算でありますけれども七十七倍、それを八割上げますと百三十八倍、政府の御計算でありますると、百三十倍という御計算のようでありまするが、私は確かな数字で見たつもりでありますが、凡そ百四十倍であります。そういたしますると、戰前における陸運というものと海運というものとを比べますると、昔は海運の方が陸運よりも遥かに安かつた。仮に北海道から東北方面に船を曳きましても、鉄道によるよりも海運による方が安かつた。でありまするのに、そんな倍数がありますのに、何故海運の方をそんなに上げなければならないのか、この点が私の疑問としておるところでありますので、御説明を願いたいと思います。
  168. 大屋晋三

    ○国務大臣(大屋晋三君) お説の点は、これはあとから数字で御説明申上げます。
  169. 田村文吉

    ○田村文吉君 その点はあとで伺つて結構でありますが、ただ現在の日本の海運界の状況を伺いますところによりますと、四、五十万トンの船が遊んでおる。のみならず現在の廻つております船といたしましても、実は非常にサボタージユをせざるを得ないような運航状況でありまするので、私はこれは幾ら補給金をお出しになつても、幾ら運賃をお上げになつても、これは今の状況では焼石に水をやるような状況で、船を持つておる人々も実は非常に困つておる。こういう状況でないかと考えております。これにはいろいろGHQとの御関係もあつて、諸般の事情もあるだろうとは考えておりまするが、多大の国民の負担に相成つておることでありまするから、一日も早くこの昔の海運日本、船を廻すことにはどの国の人にも劣らない技能を持つておるこの我が国の海運界といたしましては、一日も早くノルマルな状態に一つ移して行くということが、国民負担の軽減にもなり、又鉱工業の発達にも重大なことではないか、こう考えておるのであります。それにつきましては、現在船がオーシアン型のものでないために、或る程度の改造をしないというと外航に振向けることも困難である。こういうようなお話も伺つておるのでありますが、御承知のように国際收支の上から申しまして、一億五千万ドル程度の外国へ運賃を拂つておるわけであります。そういう点を連合国から今日援助を受けておるその好意に甘えるわけではありませんが、何とか日本の船をもつと多く廻す方法考える。又これに対しては何度でも一つGHQの御了解を頂いて、今半死半生のような形になつておる日本の現在の船を、もつと有効に能率的に働かせる方法があるのではないか。こういうことを考えられるのであります。そうなりますると、従いまして内航の運賃も下げることが当然できるだろう。こういうふうに考えるのでありますが、その辺の経過並びにどういうふうにお考えになつておられますか、お伺いしたいと思います。
  170. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) 内航、外航を通じての海運政策に関する御意見並びに御質問でございまするが、大体御承知のように、敗戰後の我が国は内航の貨物の出廻りが非常に減少いたしました。従いまして外航に不適な内航船が相当多いのであります。荷物の量と船の量とがマツチしない。且つ又石灰のごときも、今までは船で積んでいるのが常識でありましたけれども、国鉄の独立採算制というような建前で、国鉄が自分の鉄道でこれを運ぶというようなことに相成りますると、そこに鉄道に海の船の貨物が奪われるというような結果を招来いたします。いろいろの原因がありまして、要するに貨物が少なくて船が多いと言いますか、貨物と船の量がアンバランスであるというようなことから、非常な困難に直面しておるのでありまするが、今回はとにかく陸運の貨物八割、海運九割三分のこの提案を実現して頂きますれば、やはり内航に関する限り海の運賃の方が二割くらいは安くなるというような関係で、内航の経済も先ず先ず行けると考えておる次第でございますけれども、外航に向く船が目下非常に少うございまして、僅か数隻の船が公式に籍を持つておりまして外航に適するわけで、従いましていろいろな物資が入つて参ります場合に自国船を使うということができず、従つて外国貨を、貿易外の運賃收入を確保するような、こういうチヤンスも非常に失われるというようなことでございます。この点に関して、この見返資金の中から七十億の一応の予算をとりまして三十五万トンの艦舶を新造いたす、又戰時改良型の「2A」という舶を二十杯改造をいたしまして、これにオーシヤン・ゴーイングの船籍をとりまして、比較的早く六、七ケ月の間にこれを修繕して外国に差向けるというような目下方策を実施中でございます。且つ又日本の船が外国の貨物を取るということは、非常に国際的にいろいろな関連がございますので、日本政府一存ではなかなか行かん関係もございますが、あらゆるチヤンスを利用いたしまして、政府といたしましては、日本のいわゆる商船隊の外航進出に関しまして非常な関心と又あらゆるチヤンスを利用いたして、その目的の遂行を期しておるような次第でございます。
  171. 田村文吉

    ○田村文吉君 運輸大臣の御答弁の中に、海運の方が陸運よりは二割ぐらい安いのであるから、海運も相当の貨物があるであろう、こういうようなふうにとれるような御答弁でありましたが、これはあべこべでありまして、こういうように上りますというと、みんな又鉄道になるということになりまして、北海道かち東京へ貨物が来ますにも、鉄道を利用するような甚だ変則な状態が、今もあり、今後も続くであろうと考えておりまするが、その点のために船運賃が九割上つても、実は闇は却つて下るであろう、公定価格が行われないだろう、こういうような観測をしておりまして、今度船の運賃は上つたけれども、事実行われない、こういうようなことを言つておるのでありますが、この点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  172. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) 只今は少し間違つておりましたから訂正いたします。石炭だけが鉄道によるよりも海運による方が二割乃至三割安くなつております。その他木材、鉄鉱石、或いは銑鉄、木炭というようなものは、概ね海運と陸運か同額になるということでございますから、訂正をいたします。
  173. 田村文吉

    ○田村文吉君 その問題はそのくらいにいたしまして、旅客運賃と貨物運賃の問題でございますが、旅客運賃はこの前値が上りまして八十七倍、今度の貨物運賃は私は百四十倍と思うのですが、運輸省の言われる百三十倍と仮にいたしましても、この比率が非常に合わない。この前旅客運賃が貨物運賃よりは安いから、八十七倍程度に上げるということで、旅客運賃をお上げになつたのでありますが、今度貨物運賃が百四十倍になりますということは、鉄道が独立採算制をとるものである限り、先程運輸大臣の御説明のように、半分は旅客、半分は貨物ということに、いずれにも重点を平均に考えるという点から申しますると、やがては旅客運賃も又百四十倍に上げなければならないが、然らば貨物運賃を一旦上げたけれども、お下げになるか、いずれかになされなければならないのではないか。なぜ一方は戰前の百四十倍か、なぜ一方は戰前の八十七倍か、こういう不安定の数字を見ておりまするということは、将来において又鉄道運賃政策が変るのではないか、こういうふうの疑念を持つのでありますが、大臣はどうお考えになりますか。
  174. 大屋晋三

    國務大臣(大屋晋三君) お答えいたします。この御指摘になりました数字でございまするが、昭和十一年に基準を置きまして現在の旅客運賃と貨物運賃の割合を見ますると、旅客では私の方の統計では九十二倍になつております。貨物におきましては七十二倍になつております。それを今回貨物の方を八割値上をいたしまするというと、百三十倍となるわけでございます。さてここにおきまして、只今の御意見のように、然らば旅客は九十三倍で、貨物が百三十倍で価格の均衡がとれないではないかという疑問が起きて参りますのですが、成る程そのバランスはとれないのでありまするが、旅客の方は定員を遥かに超えましても、鈴なりで列車の中に詰込みをいたしておる現状でございますので、それでバランスが実際の收入の面においては取れて参りますので、若し戰前と同様な乗車の率で、つまり鈴なりでなく、まばらで体裁よく旅客を詰め込んでおるというような状態でございましたならば、やはり田村委員の御指摘のように、旅客運賃をもう少し上げなければ採算がとれないということに相成りますのですが、私はともかくも鈴なりでやつておりますので(笑声)数字の上からはさようなことになりますが、実際はバランスがとれて、一向差支えないというようなことになつておる次第であります。
  175. 田村文吉

    ○田村文吉君 只今の御答弁でありますと、人間を動物みたいに運んでいるから運賃の上げ方は少ないのだ、こういうことでありますから、いずれ人並みにお扱いになるときには、運賃は貨物と一緒の費用にお直しになるということにもとれるのでありますが、私はさような意味もあつたかも知れないが、独立採算制では、それが旅客運賃のときには労働賃金とも関係するから、余り上げないで行こうというような思いやりがそこに出ておつたのではないかと考えておつたのでありますが、御承知のように米価はすでに二百倍にも相成つておるのでありますから、実は旅客運賃だけが……。すでに設備があつてそれを運営して行くものでありまするから、米価が二百倍になつたから旅客運賃が二百倍になるべきものでは無論ありませんが、こういう点については又再び旅客運賃の値上とかいうような問題が起る伏線があるのではないか、こういうことを、私はいいか悪いか存じませんが、心配しておるのです。そこで貨物運賃の値上と旅各運賃の釣合いが余りにとれておりませんので、お伺いしたのでありまするか、それに対する大臣の若し将来についての特別なお考えがあれば別ですか、なければ、それで私の質問を打切ります。
  176. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) この際、委員長から発言いたしますが、今朝程、薪炭需給調節特別会計予算に関する小委員の方々を御指名申上げましたが、小委員の方々におかれましては、早急に小委員会をお開きになりまして、委員長をお決めの上、会期もございませんので、御審議、御調査あらんことを切に希望いたします。帆足委員、安本長官に対する質問を始めて頂きます。
  177. 帆足計

    ○帆足計君 安本長官に御質問いたしますが、先程経済安定本部の人員を二割ぐらい縮少するというお話を伺いましたが、経済安定本部の性格を変更される御意思なのでありまするか、又若し安定本部の性格は、今後変つて来るとしますれば、どういう方向にお考えになつて縮少されるお考えでありましようか、お伺いいたします。
  178. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) お答えいたします。経済安定本部の性格の問題でございますが、これは将来に属する問題だと存じますが、御承知通り、今まで主として、アロケーシヨンを中心として仕事をやつておりました。併しながらこれは経済の発展と言いますか、その進行過程におきまして、漸次この統制の撤廃というような、緩和、撤廃というようなことから変つて参りましたので、経済安定本部の主要な仕事というようなものが大分変つて来るのじやないかというふうな御質問、御尤もだと存じます。勿論まだはつきりと、そういうことについて、その性格の問題まで変るということについて、どう変えるかというようなことには、自分は決定的な考え方を持つてはおりませんけれども、経済安定本部の仕事の現状から見まして、例えば国土計画とか、或いはその他経済の調査等には、今日もそうでありまするが、尚一層重点を置きまして、そうして尚相当に残つておりまするところの統制関係、乃至はそれから来る、或いは安定に基いて起つて来るところのアジヤストメントというか、そういつた仕事が今後とも相当にあるものと考えまするので、性格の根本的な変更というところまでは考えておらない次第でございます。
  179. 帆足計

    ○帆足計君 私が只今の長官のお話のように、敗戰のあとを受けました崩壊した国民経済を再建しまするためには、どうしても国土計画、それから再建のための大綱の企画並びに政策の調整というような点が引続いてますます必要であり、そういう面はむしろ簡素にしても、内容は強化充実せねばならんのではないかと思います。従いまして安本としましては、人員の整理は、私は人数は必ずしも多いことを必要としないのでありますけれども、質を充実し、企画の任務に堪え得るようにすることが必要であると存じます。それに関連しまして、長年の御苦労でできました五ケ年計画につきまして、先程伺いましたが、総理はあれは余りにアウタルキーに過ぎると言われましたが、これは誤伝かも知れませんが、新聞その他に伝えておりますけれども、私はあの五ケ年計画は折角一つの試案としてお作りになりましたものでありますから、公表しまして、国会の適当な委員会におきましてこれは審議を経まして、国民並びに国会のもつと論議を聞くべきものではなかろうかと考えております。そうしてあの案は、私の只今見ましたところによりますと、アウタルキーどころか、十六億ドルというような厖大な輸入乃至輸出に依存しておりまして、極めて平面的なものであつて、従いまして今後の日本の復興のためには爪をもがれ、腕をもがれた国として、もう少し立体的な国内の開発、即ち食糧の増産、電源の開発、治水、治山、国土計画等に重点を置いた立体的な、民族的な、又科学的な計画の観点からあれを再批判せねばならんのではなかろうかと思つておりますけれども、政府としましては、折角あの案を非常な御苦労でお作りになりまして、その後の活用の仕方は、国民一般にも、專門家にも示されず、又国会におきましても審議する機会を十分持つていないというような状況は、私は遺憾であると思つております。今後やはり大綱だけでも、日本再建の方法論と目標だけはしつかりと国会並びに政府において審議して、国民の皆さんに示されることが必要であろうと思いますが、この五ケ年計画なり、再建の計画の今後の取扱い方について、どのようにお考えでありましようか。先ずそれを伺いたいと思います。
  180. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 仰せのことは誠に御尤もに存じます。先程も申上げましたように、あの計画それ自身としては、誠に立派心ものだと存じておりますけれども、尚私共といたしましては、只今仰せのような国土計画等の問題も強く意思表示されておりまする関係から、十分今後とも検討をいたしまして適当に善処いたしたいと存じまするが、尚研究中でございますので、批評を差控えておる次第でございます。
  181. 帆足計

    ○帆足計君 次にお尋ねいたしたい点は、戰争中以来の官僚統制が、諸般の情勢によりまして解体されつつありますけれども、今後それでは自由経済でやつて行けるかと申しますと、よく戦前の状況に戻ると申しますけれども、戦争前に自由経済であつたかと申しますと、昭和五、六年、すでに数十のカルテル機構ができておりまして、恐慌防止、生産と消費の均衡を得ますために、業界は生産と消費のバランスに対しまして必死の努力をしましたけれども、その努力すら功を奏せずして戰争勃発の一因になりましたことは御承知のごとくであります。最近の傾向といたしまして、有効購買力の相対的な不足と申しますか、過少消費が一面にあり、他面には国民が非常に貧乏し、且つ困つておりますにも拘わらず、厖大なる滞貨を来しておるというような状況でございます。私は資本主義社会制度の一つの欠陥は、むしろ生産の不足のときには、資本主義機構そのものにおいて大きな障害を感じないのでありますけれども、生産が余つて来る傾向に対しまして非常に苦しいというのが、この機構の一つの歴史的欠陥であろうと存じております。従いまして現在の恐慌の来た状況に対しまして、特に有効購買力の減少、又相対的な不足に対しまして、生産と消費の均衡を得せしめ、その矛盾を緩和しますために、長官としてはどのようなお考えをお持ちでありましようか。その点をお伺いいたす次第であります。
  182. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 御承知と存じますが、経済安定本部は、有効需要の測定を多少不完全だとは存じますけれども、その作業を続けて努力いたして参りましたのでございますが、経済安定本部が有効需要につきまして測定をいたしました大体の結果を申上げますならば、主要物資について調査をいたしましたその結果、有効需要が年度当初の生産計画に上廻つておるところのものが、例えばセメントであるとか、或いは板ガラスであるとか、化学肥料であるとか或いは用紙であるとか、そういうものでございました。それから当初計画と大体水準においてこれと一致しておるようなものは亜鉛であるとか、それからカーバイドであるとか、それから硫黄、こういうものでありました。それから更に、それでは当初計画に下廻つておるものは何か。こういう点を調べて見ますと、その物資の主なるものにつきましては、例えば鋼材でございます。これは数字がございますから、ちよつと申上げますが、当初の計画は百八十万トン、こういうことでありましたが、百六十七万トン、有効需要の点において百六十七万トン、アルミニウムにおきまして二方五千トン、有効需要で二万トン、それから銅が六万五千トンに対して有効需要は五万二千トン、荷性ソーダが当初計画で十四万トン、有効需要で十二万八千トン、それから石炭が四千二百万トンと言つておりましたけれども、三千六百万トンというような予想でございました。尚車輌につきましては、二十二年度この受註が百十二億円でございましたが、これに対しまして二十四年度の受註は四三%でございます。それからこれは四三%で大体四十九億円であります。それから通信機械が二十三年度に比較いたしまして、約六〇%というような現象になつておると予想されております。かような状態でありまするので、これを何とが有効需要を付けなければならんと、こういう観点から考えまするに、先ず何故こんなふうに有効需要が減退したか、そういう点はどういうところに原因があるかということを研究して見ますと、海外市場の悪化ということ、御承知のように英国のポンドの切下げ等、こういうことによりまして、その悪化に随伴いたしまして、貿易が伸び悩みを生じたということ、それから又二十四年度におきます鉄道、通信電話、公共事業費、政府事業費の削減というようなことが、先ず有効需要を減退せしめた主な原因であると存ずるのでございます。併しながら日本のような現況におきまして、又将来のことを考えましても、日本経済としてはやはり貿易の復興を図り、殊に飛躍的な貿易の増進を実現し得ない限りは、日本の経済的自立というものは極めて困難であるというような観点から考えますれば、ただ政府事業予算を膨らましたから有効需要が増大したというような結論には相成りません。そう考えますと、先ず政府予算の点で一応考えますれば、二十四年度の予算補正の直接的影響といたしましては、御承知通り百六億円の公共事業費が見積られましたので、従いましてこれによつて有効需要に影響のあるもの、増加できるものは大体生産財といたしましては、鉄とセメントというふうに考えて、そうしてこれには相当なプラスがあるだろうというような予想もいたしました、更に二十五年度におきましては、予算面において御承知通り公共事業費一千億ということでありますので、これらが政府事業としていろいろ経済面に実行に移されますならば、これによつて相当有効需要も殖えて来る。こういうような考えでおる次第でございますが、来年度の予算を一貫的に検討して見まして、今の公共事業費一千億というような数字から見ますならば、大体見通しといたしましては、一割ぐらいは有効需要が増加するのではないかというふうに予想いたしております。その場合においては、鋼材等につきましては二百十万トン、セメントについては三百八十万トン、石炭については大体四千万トン出るのではないかといつた考えを以ちまして貿易振興考え合せまして、漸次有効需要の付くことができるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  183. 帆足計

    ○帆足計君 只今の有効需要の現状の測定と、増大の方針につきまして資料が頂けましたら、この審議中に簡單な資料で結構でございますから、一通り分りますような数字を頂きたいと思います。  それから次にお尋ねいたしたいのは、只今の長官のお話のように、私は日本の来年度の経費は、一に食糧問題と貿易、この二つに依存しておると存じます。なかんずく貿易が最も緊要な問題でありますが、御承知のように、ヨーロツパ諸国も戰前の水準の二割を突破しております。アメリカ、カナダも戰前の七、八割を突破しておるというような大きな数字を占めて偽りますので、このあたり世界不況は一通り或いは免れられないところではなかろうかと存じております。島国であり、貿易国である日本といたしましては、従来は殆んど鎖国状況でございましたから、日本国内の経済で事足りたでありましようが、今後は世界経済並びに世界景気の研究が必要ではなかろうかと思いますが、現在適当な機関がありませんので、経済安定本部におきまして是非この点を調査して頂き、その調査資料を我々も頂きたいと思います。世界景気の見通しにつきまして、長官はどのように観察しておられますか、その点を伺います。
  184. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 只今の御要求の資料は明日でも差上げたいと存じます。尚取落しましたが、有効需要等の問題について見返資金の使い方でありますが、この点も大蔵大臣から屡々お述べがあり、御承知かと存じますが、との使い方はできるだけ一般企業にも、又あらゆる面において日本貿易の促進なり、有効需要の増加というようなことにも大きく関係しておると存じます。この点も附加えて置きたいと存じます。尚、御質問世界経済における景気の波動と申しましようか、景気の変化、こういう問題についても私共もできるだけこの点については注意深く検討いたして参りたいというので、経済安定本部といたしましても、その旨を以ちまして目下検討中であります。尚、国際経済の現況というものから見て、一体世界経済は将来どうなるかということは、極めてむずかしい問題であると存じまするが、併し国際経済の現況というものを大まかに考えて見まして、一体今日の食糧の現状であるとか、或いは又各国の貿易状況であるとか、或いは又国際的状況であるとか、こういつた問題は、第一次大戰後の経過と大分異なりまして、そうして貿易状況におきましては、御承知通り協定貿易が一般的に支配力を持つているということも考えられると存じまするし、又各国共、戰勝国も、戰敗国にいたしましても、経済の回復にあらゆる努力を傾倒いたしておりまする関係から、来年度におきまする景気の観測を私が簡單に見通すということはできませんけれども、併し明年度において、そんなに大きな質的変化があるというふうには自分は観測をいたしておりません。
  185. 帆足計

    ○帆足計君 最後にもう一点お尋ねいたしたいのでありますが、日本の明年度の景気、又経済景況につきましては、食糧、貿易の外に、援助資金の今後の見通しというものが非常に大きな影響を及ぼすのでありまするけれども、援助資金が今後年々期待できないことは当然でありまするけれども、又外字新聞等もいろいろなことを伝えておりますけれども、安定本部といたしましては、援助資金の見通しをどのようにお考えでありましようか。それから、並びに来年度における生産の上昇の見通しは、安定本部の計画におきましては、今年に比してどのくらい上るものか、又国民生活の水準、即ち国民所得と申しまするか、国民生活水準は、今年に比べて来年はどのくらい上るようにお考えでありましようか、その点を最後にお伺いいたしたいと思います。
  186. 青木孝義

    國務大臣(青木孝義君) 経済安定本部のはつきりした見通しを言えとおつしやいましても、今研究の途中にございまするので、私からはつきり申上げるというとはできませんが、併しながら、二十五年度に対する我々の極くラフな見通しとして申上げるといたしますれば、経済のデイコントロールしつつある現状におきましては、デイス・インフレの線を堅持して行くという立場から考えて見まして、先ず第一に、今年度、来年度を通じて輸出の促進を図る、それから第二点として、建設投資の拡大を図る、第三点といたしましては、国民生活の安定というようなことを、先ず大きな眼目として考えている次第でございまして、この三つの政策を重点として、更に日本経済を、先程申上げましたように、デイス・インフレの線を堅持するという限りにおきまして、御承知通り日本の経済安定本部が推算いたしました結果として、来年度の十月一日を目標とした日本の人口の増加は、大体八千三百七十七万三千人という数字を示しております。更に又二十五年度の一応決定して出してございまする十五ケ月予算というものから、この予算の面から生ずるかも知れないところの、多少のデフレ的な傾向というようなものが生ずるといたしますれば、これに対しては、日本銀行の国債買上操作というような、マーケツト・オペレーシヨンについても十分検討と実行を行い、且つ又その他適切な金融政策を実行するというような考え、更に企業の合理化は、先程もちよつと申上げましたけれども、できるだけこれは合理化を行い、且つ設備の近代化であるとか、或いは又工場管理の改善であるとか、或いは又科学技術振興、導入であるとか、そういつたことを予想しておる次第でありまするし、又貿易におきましては、一ドル三百六十円を先ず堅持しなければならん。日本といたしましては、貿易協定の拡大であるとか、或いは貿易上、米国以外に対する買付けを増加するとか、或いは変えて行くというようなことも、できればやつて行かなければなりませんし、或いは日本船の外国就航の範囲を拡大するとか、或いは又国内におきまして、いわゆる必要最小限度以外の物資の急速な統制の解除であるとか、そういつた目標の下に今後の日本の生産を高め、同時にその貿易振興を図るといつたような線で進んで参りたいと考えておりまするが、一体どの程度に生産が上昇するかというような問題は、尚十分検討をいたしまして、我々のその結果が出さえすれば、できるだけ早くお示しをいたしたいと存じます。
  187. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは本日はこれで散会いたします。    午後四時五十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     黒川 武雄君    理事            内村 清次君            高橋  啓君            高橋龍太郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            堀越 儀郎君            岩間 正男君            木村禧八郎君            岩男 仁藏君    委員            岩崎正三郎君            岡田 宗司君            木下 源吾君            森下 政一君            岡田喜久治君            城  義臣君            深水 六郎君            田口政五郎君            中川 幸平君            西川 昌夫君            西川甚五郎君            平岡 市三君            小杉 繁安君            仲子  隆君            深川タマヱ君            藤森 眞治君            油井賢太郎君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            尾崎 行輝君            西郷吉之助君            伊達源一郎君            玉置吉之丞君            久松 定武君            藤野 繁雄君            帆足  計君            松村眞一郎君            池田 恒雄君            小川 友三君   國務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 殖田 俊吉君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    運 輸 大 臣 大屋 晋三君    国 務 大 臣 青木 孝義君    国 務 大 臣 樋貝 詮三君    国 務 大 臣 本多 市郎君   国 務 大 臣 山口喜久一郎君   政府委員    内閣官房副長官 郡  祐一君    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    物価政務次官  坂田 英一君    経済安定事務官    (物価庁第二部    長)      長谷川 清君