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1949-11-24 第6回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十四日(木曜 日)    午後一時四十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十四年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣送付) ○昭和二十四年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣送付) ○昭和二十四年度政府関係機関予算補  正(機第一号)(内閣送付)   —————————————
  2. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) これより委員会を開会いたします。本日は労働大臣に対して質問を行います。岩間委員
  3. 岩間正男

    岩間正男君 二、三点お聞きしたいのでありますが、先ず第一に、政府は今後補給金を外す、安定帶物資を初めその他のものに対しまして、補給金を徐々に外して行く、その結果当然そこに物価のはね返りが起ると思うのであります。そうしてコストが当然に上昇する、そういうことになるのでありますが、それを企業合理化によつて政府は切拔けるというようなことを、過般の蔵相答弁なんかも言われているのでありますか、これに対してこれはどのような方策を以て進んで行くか、今後当然この企業合理化の実際的な方法としまして、ここで大量生産的な方向を取つて、それで物価を安定させるという方法以外にないと思うのでありますが、そうしますというと、現在の状態では資金面それから有効需要の面から考えまして、大量生産的な方式というものは現在の産業状態ではなし得ない、そういうような状態に迫られていると思うのであります。従つて当然その問題が労働者首切り、それから労働強化、そういうような方向に多くの負担をかけて、これを行うというような方式が出ると思うのでありますが、政府はこれに対してどのような対策を持つておられるか、先ず伺いたいと思います。
  4. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 大変概括的な広い御質問でございますので、全般的亘つていろいろ経済政策のことを挙げて私だけで御答弁でき得るかどうかと思いますけれども、御指摘になりました産業合理化ということは、日本経済再建一つの重要な方式であり、現に行われつつあるし、将来も継続して行われて行くと思います。併しそれが一方的に岩間委員の言われましたように労働者諸君労働強化というような形をとつて行われて行くということは、嚴に警戒しなければならないことは勿論でございます。私共もそう考えております。それではどういうふうにして、産業合理化ということを実現して行くかという問題につきましては非常に広汎な問題であり、今日私この参議院の委員会には始めて出て参りましたのですが、恐らくそういう問題についてはそれぞれの直接当該の大臣からもいろいろ説明があつたと存じます。合理化、設備の改善、そういつたものが資金がないがために全然やれないじやないかという御指摘もあつたように思いますけれども、これは昭和二十四年十一月二十四日私自身財政の方の専門ではございませんが、それをやるにも何ら資金がないというような状態ではないと存じます。大蔵大臣も今後は、その方面相当資金の放出をしてやつて行くんだとしばしば言つておりまするし、私は大蔵大臣の言うような形で資金相当出て行くと考えております。  それから見返資金等も時期的に、或いは手続上の煩雑さ等で以てやや遅れたというような傾向はあつたかと思いますけれども、丁半期に入り或いは来年度等は相当量、而も時聞的にも適宜なときに放出されて行く筈でありますので、資金の面も相当緩和されると存じます。いずれにせよ労働力の問題につきましては、立法には嚴として労働基準法もあるのでございまして、これらの法律を立法本来の目的に副つて運用して行くことによつて、そういう問題は避けねばならないし、避けられると考えておる次第であります。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 そうするとお伺いしたいのですが、今の資金面において十分の努力をするということで、今後首切りとか、労働強化というようなものは、これは行わないという見通しを付けていいわけですか。その点はどういうふうに考えておられますか、第二次首切りが行われるということは、巷間の今日殆んど定説になつておるのでありますが、今の説明によりますと、政府はそういうような面で努力をする。そうすると非常に首切り労働強化の面においては当然にこれを押し進めないような対策の方に努力するというように聞いたのでありますが、こういうことを確認していいわけですね。
  6. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 産業が動いておる限り、そういつた問題は別といたしまして、雇用のうちに相当な変化もあり、常に行われて行く、こういうことは、これは別のところから考えてもあるのでございまするし、尚又産業合理化と申しまするか、労働及び資本の新らしい組替えの整理というような段階は、これは日本経済界に現在続いておるのでございますからして、そういうような意味において、或る場合には人員整理というものが行われ、又或る場合には新らしい雇用があつて、そこに相当量吸收されて行くという作用はずつと続いて行くと思います。併し今春来叫ばれたような形における、時期的に非常に殺到して来るところの整理というようなことは、大体今年度上半期及び下半期の初めにかけて、その峠を越したのであつて徐々にこういう状態は薄れて行く、ただ如何なる場合にも整理が絶対にどこの産業部門にも行われないというような状態は、これはまあ岩間さん方の考えておられる共産主義的な組織の下においてはどうか知れませんけれども、自由主義的な経済界においては常に存在するのでありまして、これに対しては妥当な職業安定行政、それからその他もつと根本に遡つて、幾つかの総合的な経済施策を時宜に応じてやつて行くということによりて、阻止されて行くと思います。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 今のは資金面に対する努力の点について話があつたのですが、併し低賃金、それから首切りなんかによつて国内の購買力は非常に減少しておる。こういう実情にあるのでありますが、こういう面から、どうしても今の補給金を外して、そうして生産費を切下げる、生産費が非常に高くなつて物価にそれが非常に影響する。こういう問題を大量生産的な方式で解決する以外に途はないのではないかと、こう考えるのでありますがその大量生産的な生産増強と、それから購買力の低干というものは非常に相矛盾した二つ方向となつて、大きくこれは占めて来ると思うのでありますが、この点はどう考えますか。
  8. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 生産が著しく落ちてしまつたという事実はないし、一方において非常に、もうこれで十分だという程生産上つたという程、楽観的な情勢もありませんけれども、大体において生産は清々回復しつつあるということが言えると思います。それから物価におきましても大体現在の線において物価を食い止める。でき得るならば自由価格に移して行く、その過程において、もつと物価を下げて行く面もある。そういうところで安定政策を完成しようというのが、今の政府根本的な考え方だと思います。その線に沿つていろいろなジグザグは、内外の諸條件によつて、これは段階的には今後もあるでありましようけれども、大体その線に沿つて政策が結実しつつあると私共は見ているのでございます。そのために著しいアンバランスを生じて、政策が破綻し、或いは一方の特殊の組織だけが著しい打撃を蒙るというようなことはなく、大体にバランスのとれた形で以て経済再建は完成して行くと、私達は見通しを持つております。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 只今のお話だと、大体生産状態上昇しつつある、そういうようなお話でありますけれども私のお聞きしておるのは、補給金相当な部分に亘つてこれを切捨てる、こういうことのために起る新たな情勢についてお伺いしておるのです。従つてそこから起るいろいろな現象をどういうふうに処理するかというのが、私の質問の要点であります。つまり今の御答弁では、非常に従来の大体の概括的なお話にはなると思いますが、新たな情勢に対する御答弁というふうには考えられませんけれども、その点改めて一つ……
  10. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 補給金切つて行くという政策根本的な考え方の是非については、もうこれは本会議委員会等を通じて十分、而も私よりはその方の直接関與しておる方面から説明があつたと思います。今御質問の、補給金を切ることによつて直接岩間さんの御指摘になりましたような、或る部門への特殊な、急激な圧力が加わつて来るというような虞れはないかという御質問だと思いますけれども、この点については、補給金は御承知のように相当切つておりますけれども全部切つたのではなくして、今後はやがて我々の主張するところは補給金というような形のものがないところの、新らしい自由経済の道を目指しておることは勿論でありますが、それに至るまでの十分な段階と、それから時間的の余裕とを考えつつやつておるのでありまして、補給金自体計画について綿密な計画は、安本長官なり何なりに別の機会にお質し願いたいのでありますが、私の承知しておる限りにおいては、補給金切つて行く考えについては来年度も切つて行くものも相当あるのでありまして、そうして全体の政府経済再建政策の進行とも睨合せて更に次の段階において今度はここまで来ればこの補給金も減らしてもいい、或いは切つてもいいということを見定めながら今後整理して行くのでありますから、他の一連の政策さえ総合的に進められて行くならば岩間ざんの指摘になりましたような点は、十分避け得ると思います。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 この点についてはいろいろ意見はあるのですがこれは保留しておきます。先程の質問と連関した問題でありますが、当然我々の見解ではどうしても今後の産業合理化によつて、第二次第三次の首切り労働強化、更に低賃金というような現象がどうしても免れないのじやないか、そういう点で一番大きな問題になるのは、政府実質賃金はむしろ今後上昇するいろいろな物価の撥返りの分は減税によつて相殺することができる、そういうようなことがしばしば言明されておるのでありますが、ここで問題になるのは、それは労働者生活が安定する状態にはいろいろあり得ると思うのです。つまり問題になるのは労働者生活水準をどの程度のとこうで安定せるかということが一番大きな問題じやないか、これはフイリッピン式の安定のさせ方もあり、イギリス式労働者賃金の安定のさせ方もあるわけでありますが、日本の現在の情勢におきまして、労働者生活水準をどこに置くか、この点は労働省はどういうような見解を持ち、又これに対する方策を考えておられるか、この点お聞きしたいと思います。
  12. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 実質賃金の問題でありますが、成る程最近上昇の線を描いておるということは事実でありますけれども、別の機会にも私はどこかの委員会か或いは本会議であつたかも知れませんがお答えしたのでありますが、上昇はしておるけれども、戰前に比べれば相当低いのだ。だから我々は戰前までとは言切つたのではありませんけれども、まだ実質賃金には満足していない。況んや引下るというふうな現象に対しては嚴に警戒しなければならん。積極的にはあらゆる機会を掴んで上昇さして行く、充実さして行くということをも併せて考えなければならん。それからどの線と岩間さんが今お質しになりましたけれども、例えば戰前の九〇%の線とか、或いは戰前の七〇%の線とかという、そこまで申上げて明確に計算をしたわけではありません。というのはこれは実質賃金は勿論言うまでもなく、私より岩間さんの方が御存じかと思いますが、物価その他の生活水準とも相対的な関係の性格のものでありますからして、さつきも申上げましたように、これらの政策がどの程度に成功しておるか、それからいわゆるどこのところで以て次の時代の日本経済の安定の線が引かれるかということとも相関的に考えながら、実質賃金安定線というものを考えるべきであり、それはそう遠くない将来に経済全体の安定に伴つて、そういうことをも一応数字的にも算出して見て置くような段階が来ると存じておりますが、今のところはまだそこまでは、将来五年、十年二十年に亘つて日本実質賃金水準の線を、この線まで数を挙げて決定するというところまで至つていないと思います。いずれにせよ結論的に申しまして今後も実質賃金を引上げる努力をすべきだ。併しその努力は言うまでもなく一方には賃金諾原則もあるのでありまするし、又政府考え方自体といたしましても、今後においては物価賃金も成るべく一方が無暗に上昇してしまつて、又バランスを破つて経済政策根本的建直しをしなければならないというような事態になる虞れのある政策は参避けて、着実な安定政策バランスのとれた安定政策、そういう政策の上に実現して行きたいと考えておりまするからして、従つて実質賃金充実の諸方策というものを主として図つて、それらの一つ一つ輸入政策はどうか、食糧政策はどうか、纎維の問題はどうかというような、一つ一つの問題にかかつて来ておるのであります。結論はその総合の上に出て来るというふうに考えております。もう少しはつきり申しますと、それらの諸政策を私は労働大臣としての立場におきましては、関係の各大臣実質賃金の面からも考えまして、そうして機会あるごとにそういつた線において、現政府主張政策が推進されるように要望もいたしておりますし、今後もいたすわけであります。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると大体今の御答弁では、結局全体の経済政策が安定していないので、労働省生活水準というものも決定されない、こういう方向へ動いている、こういうふうに確認していいわけでありますね。
  14. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 安定していないということは申上げません。安定しつつあるけれども、五年、十年の長きに亘つて決定的な賃金水準、或いは物価水準というものは、この線だという数字を挙げてまで今決定するという段階に迄は至つていない。安定は大蔵大臣が言うように着々と実現しつつある、すでに安定の線は引かれたという意味に外ならぬのであります。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 それは数字を挙げないにしても、基本的な大体の線というものを持つていなければ労働対策はできないというふうに我々は考えるのですが、どうも今の大臣の御答弁では非常に資本部面の安定ということを考えておられるけれども、労働者生活の問題については非常に理解が足りないのではないかというふうに考えられます。というのはこれはしばしば今度の国会で繰返された問題でありますが、労働者生活実態の把握が果して本当になされておるかどうか。それから広汎な首切りがなされ、更に購買力が非常に減少して苦しんでおる。こういうような実態が本当に掴まれておるがどうか。そうしてそこを土台にして、殊に新らしい産業の形の上においては、やはり労働部面というものが非常に重要なウエイトを持つて来ると思うのでありますが、そういうような面を本当に抑えて、そうしてそういうものを一つの大きな基盤として今度の経済政策というものを確立しておるかどうか。でその点は我々としては疑いなきを得ないのであります。その点についてはこれも保留したいと思いますが、次に実質賃金上昇の問題でありますが、これは上昇しておるというようなことが数字的にも蔵相から話があつたのです。併し我々としてはもつと細かなこれに対するデーターが欲しい、政府はどのような基礎によつてこういうことを力説しているかということは、非常に重要であります。従つてそのようなデーター政府は現在作成されておるのであるか、作成されてあるとすれば、そのデーターが欲しい、こういうふうに思いますが、その点如何ですか。
  16. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 実質賃金の問題の指数等につきましては、曾て私として申上げた範囲は、いろいろな季節的な変動もあり、ジグザグのコースを通つておるけれども、上昇の線を辿つておる。それから今年の八月まで実質賃金計算ができておるのでありますけれども、それによつて見ても、これは最近僅かではあるけれども安定して、そうしてやや上昇の気味も極く最近のところにある。これは全体を見通して見ても、終戰後ずつと上昇傾向にある、こういうことをさつき申上げました。併し戰前に比してはまだずつと低いのであるからこれは充実して積極的に上昇させるべく努力はすべきである、これだけのお答えをしたわけであります。それからデータの問題その他になりますと、実は専門的で技術的な問題になりますので私の方の局長が来ておりますから、説明させることにいたします。
  17. 金子美雄

    説明員金子美雄君) 実質賃金のデータついてお答えいたします。現在実質賃金計算をしておりますのは、賃金指数といたしましては、毎月勤労統計工業平均賃金を使つております。又これに対する消費者物価指数としては、最近の分につきましては、最近改正されました総理府統計局から発表になつております全国消費者物価格指数、俗にCPLと言われておものを使つております。即ち毎月勤労統計による工業平均賃金指数総理府統計局の全都市消費者物価指数、この二つから実質賃金指数計算しております。
  18. 岩間正男

    岩間正男君 今の御答弁は、八月あたりまではやや上昇の線を辿つておるというお話でありますが、その後起つておる賃金遅配欠配、こういうものを入れておられるか、こういうことを考慮に入れてそして計算をなされておるか、これを伺いたい。
  19. 金子美雄

    説明員金子美雄君) 毎月勤労統計賃金は、遅配欠配というものは入つておりません。
  20. 岩間正男

    岩間正男君 この点が非常に大きいのじやないかと思います。が、最近の遅配欠配状況は非常に深刻化しております。従つて我々としましては、この貸金の配給の速度ということが一つのやはり大きな待遇の内容を成す、こういうふうに思う。従つて今の統計賃金遅配欠配という非常にはつきり歴然と現われておる事実を抜いて、單に数字的なからくりによつてこれを説明されたのでは、根拠稀薄じやないか、実態に即しない、こういうふうに思われます。それにしても今政府の持つておるそのデーターですねのデーターは頂けますか。
  21. 金子美雄

    説明員金子美雄君) 差上げます。
  22. 岩間正男

    岩間正男君 それから現象的に起つておりますこの問題については、又質問を保留して置きたいと思います。いずれそのデーターをよく調査して、我我意見を述べたいと思います。
  23. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 第五国会において鈴木労働大臣が大体国民に公約せられましたところのものは、失業対策という点について不安のないような答えがあつたのであります。あの時の予算におきましては、大体民自党でおやりになつ予算の方針に、我々不安を感じたのは、結局失業対策費の矛盾が来たしはしないかという点であつたのであります。今回の補正予算を拜見いたしましても、僅かに八億五千万しかやはり計上しておらないという点に、我々は非常なる不満を感じるのであります。而も先般大臣が本会議等におきまして失業対策問題をお取上げになつたのに対しては、非常に楽観的立場に立たれて順次解決しつつあるということをお話になつておられますが、あのお話の中にある失業者の数というものは、何を基礎にしてああいう数字をお出しになつたか、先ず承わりたいと思います。
  24. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 失業者の数とおつしやいましたけれども、あなたの御記憶ではどういうふうな数を……。
  25. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 これは十一月十八日に森下社会党議員質問に対して、大体本年九月から来年三月までに完全失業者が五、六十万程度であつて、而もその中七〇程度は職に就く予定であるというようにお話になりましたが、この五、六十万の数字はどこからお取りになつたか、それを取敢ずお伺いしたいと思います。
  26. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 完全失業者という言葉にもいろいろございますが、現在日本センサス式の、実態をぴしつと捕えた調査を、時間も経費も構わずにやれば別でありますけれども、現在では飽くまでこの失業者の数というものは、比較的信頼し得る基礎に立つたものを使つたところの推定という以上には、出られないのが実情でございます。そういたしまするというと、我々としてはどういう基礎に立つてやるかと言いますると、やはり今の内閣統計局労働力調査というものは、拔取調査で完璧のものではありませんけれども、一つの有力な資料として考えなければならないと思うのであります。であれによりまするというと、失業者というものは、完全な失業者というものが現在四十何万という数字が出しおるのでございます。併しその上に四百十八万の、この数はちよつと違うかも知れませんが、これは予めお断りしておきますが、追加労働希望する人達調査に出ております。その中に二百六十万くらいは三十五時間以上働いておる人達でありまして、もう少し家計充実させるために働きたいという人達でありまして、これはまあ失業者として考えるよりは家計上の問題でありまして、日本経済の全体の立ち上りと共に、更にその人達希望も達成されて、家計充実して行くという人達であると思うのであります。(「満点満点と呼ぶ者あり)その下に百万人くらいの二十時間乃至三十時間現在働いておるけれども、荷追加労働をしたいという人達があります。それからその下に五十万人くらい、九時間くらいしか働いていない、そうして追加労働希望するという人達があります。そうしてその下に完全失業者としてあの調査に現われておるのが四十何万あります。併しこの完全失業者は、調査期間の一週間の間に一時間も働かなかつた、と同時に、その一週間の間に就職運動をどこか必ずした、安定所を通じてなり、知人を通じてなりでしよう、そういう一つ條件に当嵌まつ人達完全失業者として出しておる一のでありますから、可なり辛いと言いますか、厳重な枠を通しでの完全失業者の算定だと思います。そういたしますというと、実態はもう少し、例えば一八日前には就職運動を、したけれども、七日以内にはやらなかつたという人達つてありましようし、それらの点を考慮し、又労働者同体実態から見た指数も考慮して見ますと、十九時間以上働いておつ七追加労働希望者というものは、相当の数は失業者とみなすべきものでないかと思います。それらを考慮いたしまして、別に私は明確に算定した数字があつたわけでありませんけれども、そういう意味完全失業者が五、六十万、その上に今の人達段階的に晦在するというのが実態ではないかと思います。こういう御説明を申上げたわけであります。
  27. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 全国各地職業安定所がありますが、これは大体市とか、郡とか單位で町村までには及んでおりません。そうするというと、多くの失業者が今言つた都市以外の町村相当あるのですが、この人々が安定所行つて、本当に職を紹介してもらうというようなことがなかなか、骨が折れるのですが、これに対してはやはり町村方面まで職業安定所の出張所を作るとか、或いは町村の役場にそれを依嘱するとかというような方策をとられるのが、至当ではないかと思うのですが、大臣としての御見解は如何ですか。
  28. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) こういう際でもありまするししますから、できるだけ安定行政と場いうものの充実は勿論図るべきだと考えております。御質問よりやや外れますけれども、御報告を申上げますれば、例えば安定行政に当る人達も今春の整理相当一緒整理されてしまつたという問題のごときは、来るべき二十五年度予算では大体元へ帰る程度人員の増加ということも確定しておるのでありまして、そういう問題を十分注意しております。御指摘になりました町村方両への延長という問題につきましては、局長かち説明いたします。
  29. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 市町村の問題でございますが、現在の安定法では市町村長に非常な御協力を願うことにいたしておりまして、求人求職申込の取次ぎを市長にお願いするということもいたしております。併しそれだけでは実際問題として足りませんので、私共の方の安定所の職員の許す限り、又経費の許す限り、できるだけ辺鄙な土地にも出向きまして、いわゆる巡回的に求職申込を受ける、こういうことを現にいたしておるような次第であります。
  30. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そこで末端までの失業者状況というものをよく把握なすつて大臣労働行政をおやり願いたいというのが我々の希望でありますが、それにつけても先程申上げましたように緊急失業対策の費用が八億五千万円というものでは、到底今日の失業者の救済というとは不可能ではないかと我々は考えております。少くとも三十億くらいの予算を計上しなくてはならなかつたのではないかと思うのですが、この八億五千万円で十分と大臣はお考えになつておられるのですか、それとも他に構想がおありになられるのですか。
  31. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 若しこの予算全体の中に、失業対策的な十分な施策が盛られておらないといたしますれば、八億五千万円でも、十倍の八十五億円でも、現在の失業対策費としては不足だと思います。若し又予算の中に十分に失業対策的な性格を持つたところの措置がとられておるのでありましたならば、場合によつては八億五千万円はなくてもいい場合があると思います。という意味は、八億五千万円に盛られたこの緊急失業対策のごときに政府の失業問題解決の力を全的にかけておるのではない、逆に解して申しますと、これもああいう自由労働者を中心とした失業に苦しんでおる方々に対する重要な喫緊な失業対策一つで、ゆるがせにできないことは勿論でありますけれども、戰後のこの大きな国民経済再建と、労働力の配置転換を中軸とする、こういう性格の失業対策というものは、これは極く一部分でありまして、本体は飽くまでも政府自体の再建の成否如何にかかつておるのであり、それを実行して行くところの一つつの政策の中にかかつておると、私達は考えておるのであります。従つて失業対策政府考え方を聞いて頂きたいのでありまして、そういたしますれば、相当考え方も納得して頂けるのではないかと思います。先ず第一番に、端的に申しまして如何なる対策が出て来てもその対策が実行された途端に現在の日本失業者が一人もなくなるという、そういう奇想天外の妙手はないということは事実でありまして、要するに一年の間に失業者と言いますか、失業者と言うよりも離職者が出て来る、一方においては如何なる場合にも国民経済の中には必ず新しい雇傭というものがあるのでありますから、その離職者を新らしい雇傭の中で吸收して行く、吸收し切れない段階、その段階に処す構想としては失業保険なり、緊急失業対策なりを以て対処して行く。その外に重要なのはいわゆる公共事業であるわけであります。公共事業をとつて見まするというと、二十四年度のごとく五百億円の公共事業が行われるといたしますと、それによつて生ずるところの雇傭力は大体五十万人になります。二十五年度には一千億の公共事業が動かされるのでありまするからして、百万人の雇傭が公共事業だけの両で以て生れて来るという概括的の計算ができ上ります。併しながら御承知のように今年五百億円行われ五十万雇傭しておるのだから、来年四月一日から公共事業の拡大によつて生ずる新たに加わつて来るところの雇傭力は、差し引いて五十万人であるということになるわけでございます。こういう問題、それからこれは同様に補正予算にも十分盛られております、補正予算の中に御説のように八億五千万円の緊急失業対策費があります。これは昭和二十四年度一年間を通じての八億八百万円に較べれば約四倍前後の拡充であります。この八億五千万円はこれをそのまま延ばして二十五年度予算には四十億円として計上されております、継続的にできております。併しながらこんなものだけに頼つておるのではないのでありまして、補正予算だけを見ますというと、新たに百六億六千万円の公共事業費が追加されております。その内訳は災害復旧に八十五億円、一般の公共事業費六億六千万円、六三制の建築費に十五億円であります。この一般公共事業と言いますのは、実は従来の公共事業が地方中心になつておりましたのを、都会の失業者に対処する建前から、私の意見を探入れて、必要だと労働大臣が一認めるときに、都会中心の失業対策事業的の工事を起すという、そういう考の下に織込まれておるところの資金でありますが、これは或る意味でさつきの八億五千万円とお挙げになつた緊急失業対策と同じ性質のもので、合せて十五億一千万円と考えて頂いても実質的には間違いのない数字であります。それら失業保険の方も六十億円くらいは支拂い得る措置がありますけれども、更に補正予算に八億五千八百万円を追加計上しております。これによつて八十億円くらいまでは悠々と失業保険を拂つて行けることになるわけでありますし、八億五千八百万冊の中には約九千万円の日傭労働保険に対する政府の新らしい負担金も計画されております。これによつて近く実施される日傭労働保険、これは今年の春の国会で皆さんの御賛成を得まして成立しておるのでありまするが、実施は近く行われます。これによつて毎日、昨日も今日も明日も毎日二万人ずつの日傭労働者失業者を受入れて行く態勢もできておるわけであります。こういうふうなものを合計いたしますと、失業対策に比較的関係の深い数字だけで、補正予算のみを以てして百二十三億六千八百万円あるわけでありまして、八億五千万円きり失業対策的のものはないじやないかという考は全然当らないと思います。どうぞそれらの点を一つ綿密に調べて見て頂きたいと思います。荷ついでにそれならこれにまつ一体どれだけの人達を新らししく吸收できるところの雇傭力が生れて来るのか、補正予算だけを例にとつて申上げますと、公共事業費によつて場三十三万乃至三十八万人の人達が新たに雇傭し得る、それから失業対策、さつきの八億五千万円であります。あれによつて八万五千人の、人達を毎日使つて行くところの雇傭力が出て来る。それから失業保険金の繰入を増加したことによつて玉十三万人の失業者に保険を與えて行くことができる、来年の三月三十一日まで……、その内訳は一般失業保険の方で四十万人、さつき申しました日雇労働者の新らしい失業保険に又毎十三万人ずつこれを受入れて行くことができる。こういうことが計算されるのであります。これらを総計いたしまするというと、これは概括でありまするからして、多少の幅というものが出て来るのですけれども、補正予算のみを以ていたしましても、新たに九十六万五千人乃至百一万五千人の新らしい対象の数字が挙げられておるとか言えるのであります。勿論併し、只今も申しましたように、失業保険のごときはそのまま放置するならば六ケ月先にはもう保險が貰えなくなつて、その間に仕事がなければ新たに保險も貰えないところの純粋の失業者として再出現して来るということは、言うまでもないことでありまするけれども、そういう間において、こういう形で以て来年の年度末まで止めて置いて、来年度は公共事業費はなくなるのじやありません。今申しましたように五百億円乃至一千億円になつておるのでありまするから、この面だけは五十万人の雇傭力が上昇するのであります。そういうものを吸收するには又見返資金もあります。見返資金は遅れておるのじやないかと申しまするけれども、とにかくあれだけの金が準備されておる力大藏大臣も下半期には急速にこれを放出するようにと言つておりますし、来年度の見返資金も、すでに大体方途が昨日あたり決まつたのじやないかと思います。そういうようになつて参りまするというと、決して八億円或いは来年度の四十億円程度の緊急失業対策費だけを頼りとして、唯一の頼りとしてこの大きな失業問題に対処して行こうなどという考え方を、政府も私も持つておるのではないのでありまして、そういう性格の、その中で以て或る一部分のものを受持つための経費が、今御指摘になりました八億何百万円かの緊急失業対策費であるというふうに御解釈願いたいと思います。
  32. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 大変御丁寧な御答弁で結構でしたが、次にお伺いいたしたいことは、今の日本経済状態で、とかく労働力が一面においては資本家の圧制下にあるというような説もありますけれども、面においては輸出貿易産業等から見事すというとまだまだ外国に比しては努力が足りないではないかというようなことが言われております。そういう際において、日本のいわゆる過剰人口のはけ口であるところの労働力というものが、現在の産業上から比べて、マッチしておるかどうか。これは相当過剰であるとか、或いは不足であるとかということが問題になつておると思うのであります。労働大臣といたしましては、現在の産業が、このままでいいんですか或いは相当やはり産業が発達して労働力を吸收した方がいいか、或いは又現在の労働者の勤勉さがこのままでよろしいのかもつともつと努力いたしまして、生産増加ということを図るような、いわゆる労働なつた方がいいのか。それに関連いたしまして産業労働力の、いわゆる極端に申しますれば、産業と人口との関係というものが、しておるかどうか。こういう点についての御所見をお開かせ願いたいと思います。
  33. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 極めて基本的な大問題でありますけれども、これは一つの所見として申上げるべきでありますが、日本労働力は量においてこれを十分最有効な形で以て消化するだけの日本経済の骨格、大きさというものがまだ回復されておらない。従つてここに完全なバランスを取られておらないというのが、残念ながら現在の日本段階における実情ではないかと思います。而も、ともすればそれはうつかりすると、そうであるが故に個個の労働者賃金の問題に低賃金というような問題を引き起し易い。今あるとは申しません、うつかりすると引き起し易い、そういう條件の下に今の日本労働力産業というものは立つておると思います。これを解消するところの方法は、やはり今御指摘になりましたように、極力産業充実して、その生産力を中心とした経済力というものは、今後尚拡大強化して行かなければならないと考えておりまする同時にその一環として輸出という問題は勿論重要中の重要な問題であると思つております。
  34. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そこでいわゆる日本労働力に対る報酬がアメリカあたりから比べるというと、大体十五分の一乃至二十分の一の所得であると言われておりますが、これが果して低賃金でないというふうにお考えになつておられますか、我々共から言えば、これは、甚だ低賃金であつて、もつとこれを拡充して充実して行かなくてはならないと思うのですが、その点についての御所見は如何がですか。
  35. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 一般の民間の賃金については賃金統制とか、賃金の枠というものは現在においてもないのでありまして、あるのは賃金の三原則とか、ああいつたものは一方において嚴として存在しております。そういう関係を考慮して、さつきも申しましたように実質賃金充実して行くという方策は、労賃双方の企業努力以外にはないと考えておりまする上、労賃双方の企業努力によつて実質賃金がますます充実されて行く、民間の賃金問題について政府は決してこれを阻止しようというようなことを考えておらないのでありまして、ますます企業の成績が挙り、その結果労資双方が生活上もいい條件に立つということは歓迎こそすれ、決してこれを阻止しようというような考は持つておりませ。要は賃金三原則、あれは三原則でありまするけれども、三原則が出る出ないに拘らず、赤字による名目賃金の引上げという問題を繰返して行なつたならば、これは結局駄目になつてしまうということは分り切つておるのでありますから、賃金三原則があるから勿論でありますが仮にないといたしましてもやはり企業努力によるところの賃金充実という方向を取つて頂きたいと考えております。
  36. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 この問題は大分時間を要しますから、この辺で打切りにして置きますけれども、尚労働大臣に一段とこの点の解決にお骨折り願いたいと思います。  次に年末の臨時手当を官庁方面の、いわゆる公務員に拂わないというふうに決定なされたようなんですが、労働大臣としては公務員に対して年末手当をお出しにならなくとも、いわゆる越年できるかどうかということをお聞かせ願いたいと思います。
  37. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) どうもそれらの人達に取つて切実無比な問題を、軽く答弁してしまうわけにも参りませんし、極めてむずかしい御質問を今されたわけですが、(「簡單ですよ、簡單ですよ。」と呼ぶ者あり)その問題につきましては私達はでき得る限力の考慮を廻らして努力を続けておりますということを以て、お答えをさせて頂きたいと思います。
  38. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 併し今度の補正予算にはこれはお出しになつていないのですから、努力をされても、これは当然與えられないということになるのですが、角度を変えて申しますと、民間の給與がこの前六千三百円の給與が決定されたときにくらべて、大体三割程度つておると言われております。そういう点から比べましても、賃金ベースも変更しない、又年末のいわゆる公務員に対する特別手当も出さないというようなことは、これはいろいろ大きな影響はありましようけれども、余りに不公平ではないかと世間でも取沙汰されておりますが、もう少、労働大臣はこれは出すべきであるというふうにお考えになつておられますか。それとも出さなくとも実質賃金が向上しておるのだからいいんだというふうにお考えになられておるか。この点を明確に一つされたいと思うのであります。
  39. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 何らかの形で以て、賃金ベースの問題は別でありまするけれども、何らかの形で以てその諸條件が許すならば、考慮したいということは私だけでなくて官房長官あたりも言つておるのであります。私達も同じ考えであるのであります。そういう点においてできる限りの考慮を廻らして来たということを以て重ねて御答弁申上げます。
  40. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 これは労働大臣の善処を待ちまして、私は他の委員会がありますから打切りにします。
  41. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私労働大臣に六点ばかりお勢ねをいたしたいと思いますが、先ず最初に私共は公務員、或いは民間企業を通じまして、人員整理ということは絶対に反対をして参りました。そういう整理をしないような経済政策が展開されることを希望して参りましたけれども、不幸にして只今のところ、非常なスピードで人員整理が強行されつつあります。この現実の上に立つて労働大臣にお尋ねいたしたいことは、今の政府がこういう経済政策の下に、人員整理を行なつておられる本旨は、いわゆる賃金の両からして産業合理化という問題を取上げ、そうして残つた労働者には十分に労働の再生産力を與える、そういう一つの構想の下におやりになつておるか、どうか、この点を先ず伺いたいと思います。
  42. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 先程からも繰返して他の方にお答えしたように、実質賃金は最近の線だけを見れば上昇しておることを示しておるけれども、戰前に比べれば相当低いのであつて、もつと充実させる必要があるのだということをお答しておつた通りでありまして、今後も労働者諸君実質賃金充実ということを極力考えて行かなければならないと思つております。ただこれを直ちに名月賃金物価関係そういつた全体の考えを無視して、直ちに名月賃金の引上げとか、或いはそういつた形で以つて行くことには十分の警戒を要します。けれども、つまり実質賃金というものはもつと上昇されなければならんと思つております。
  43. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 まあ大体そうしますと、前の人員整理というものは、整理された残つた人々に対しては十分に労働の再生産力を確保し得るような賃金を保障して行くという考え方であるという具合に、私は解釈をするわけでありますが、併しここで極めて遺憾なことは、こういう人員整理を強行しまして、いわゆる労働市場に相当潤沢に力が出て参りますると、勢い企業の内部に残つておるところの労働者諸君に対しましては、企業の非常な不振の影響を受けまして賃下げ或いは賃金の遅配、欠配と、こういうようなものが、どんどん各所に起つておりますが、こういうような状態はもうすでに今おつしやつた意味から申しますると、賃金政策に対する産業合理化の枠を飛び越えたところの問題であると私は考えるのでありますが、この点に対する御所見を伺いたいと思います。
  44. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 今御指摘になりましたような形における賃下げというような問題に対しましては、私共といたしましては経営者の団体なり或いはその他なりに対しましても、縷次こういう情勢の下においては嚴に警戒されたいということを申入れておりまするし、又その都度賃金の切下げという問題が今どんどん起きておるというふうには考えませんけれども、とにかく今のような諸條件の下においては、ありがちなことでありまするからして、十分の警戒をしております。  それから賃金の不拂の問題につきましては、これは先にもこれについて厳重な労働省意見を発表しておるのでございまして、この八月までにそういつた賃金問題で以て基準局に持込まれた二十八億円かの金額の中、労働省が先頭に立つて、そうしてこれは直ちに摘発するというような、これは最後の方式でありますけれども、拂わせるよりに仕向けて、そうして拂わせたものは二十八億円の中、二十一億はそれによつてすでに支拂つておるという事実もございます。尚それで以て全部それだから解消したとは申しませんけれども、そういつた線に沿つて指摘のようにそういつた傾向が起り易い今の段階でありますから、極力労働省といたしましては働く人達立場に立つて、この問題を処理して行きたい、と考えております。
  45. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が伺つたのは、そういう現実の行政の面でなくて、こういうようなことが相当方面に広く行われておる。特に中小企業、小企業などにおきましては、全く低賃金政策が今各地に行われておるわけでありますが、そういう工合に人員整理をやつたということによつて労働の再生産力を確保しようという考え方が却つて崩れつつある。そうしてそこには労働強化が行われ、賃金の遅配、欠配というものが行われて来ておるのでありまして、これを産業合理化のいわゆる理念を超えたところの問題になつておるのではないか、という質問をいたしたのでありまして、そこのところを、はつきりお答え願いたいと思います。
  46. 寺本廣作

    政府委員(寺本広作君) 賃金の不拂、遅拂問題が方々に頻々として起つておる。丁度企業整備の始まります前後から、この傾向が非常に強くなつてつて、今年三月労働大臣並びに検事総長の賃金不拂の取締に関する方針が発表されまして以来、先程労働大臣から御指摘がありました通りでありますが、八月十五日現在で三十億五千一百円の賃金不拂事件が労働省の出先機関であります労働基準監督署に持込まれております。件数にして五千五百九十件であります。その中解決しましたのが先程労働大臣より御説明になりましたより、若干その後に資料が入つておりますが二十六億五千五百万円の賃金労働省の出先機関の斡旋で支拂われております。件数にして三一千九百五十五件であります。街悪質と申しますか、支拂余力があつて支拂わなかつたと認められる事件で、再三再四の労働省の斡旋にも拘わらず支拂わなかつた事件、それが約百四十三件ございましてこれは最高検察庁と打合の上検事局に送付いたしております。母上のような賃金不拂問題について労働省がまあ斡旋し、解決しつつある状況でありますが、こういうふうにこの賃金不拂が一方で解決されつつありますが、又只今御指摘の通り企業整備後における賃金が、労働の再生産力を保障するに至つていないのではないか。並に賃金切下の傾向が出ておるのではないかという質問でございますか、その点につきましては賃金水準全体として本年度に入りまして、企業整備前後を通じてやはり工業平均賃金は一進一退でありまして、必ずしも下つていないというふうに考えられるのでございます。ただ終戰後の我が国の国民経済力の全体の力からいたしまして、賃金が必ずしも労働者生活の全体をカバーするに至つていない。これは内閣の家計調査その他の面から見ましても明らかなことでありますが、家計費の全部を償うに至つていないという点は御指摘の通りであります。この点は国民経済力の復興に伴つて漸次解伏せらるべき問題ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  47. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大体分りました。結局合理化の枠の外にあるというふうに私は理解いたします。一そこで私質問が大分沢山ありますので簡單に申上げまから、そういう工合にお答えを願いたいと思います。只今のところ今まで申上げましたように、企業の不振が因になりましてそういう経済政策の中におきまして、賃金の不拂、或いは賃下げということが相当これは私は深く現実の例を幾つも知つておりますので、事実を申上げるわけでありますが、そういうことが起りつつありまするから、ここで何らかの手を打たなければならないと思うのでありますが、賃金水準維持の問題は後から御質問を申上げますけれども、この給料の遅欠配というような問題に対して、政府は例えば賃金の未拂に対しまして政府が或る程度の保障をして企業主に支拂わせるとか、或いはその他別個のいろいろな方法があるでございましようが、そういうような賃金の支拂保障法案というような法律を作りましてそうして労働階級の生活の安定を、この困雑な経済下で一応切拔けて行く、そういうような途をお採りになる掛意があるかないか、これを伺いたいのであります。失業対策をいろいろ言うわれるのでありますけれどもやはり現に職に就いておる者はその職に留め、そうしてその人の生活を安定させるということが最も大きな失業対策であると思います。而もそれが日本生産増強の最も大きなポイントでもあると思いますので、この点をお聞きいたしたいと憩います。
  48. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 一つの有力な御意見として謹聴して置きますけれども、政府は今そういうことを準備しておるということはございません。
  49. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 次に第二点は今の問題の関連でございますが、過日も大蔵大臣が本会議の席上で、銀行の預金利子と、それから貸出利息の間に非常に大きな幅のあるのは銀行の経費が嵩むからである。その経費の嵩む大きな理由の一つは、銀行従業員の給與が非常に高いことである、こういうことをはつきり明言されたのであります。私は前国会からこの二点を質問しておりました。大蔵大臣が過日の本会議はつきり明言されましたが、銀行の従業員の給與が私は高過ぎはしないのであつて、他の産業が低過ぎるのであると思うのでありますけれども、とにかくこの銀行の従業員の給料をトップにいたしまして現在国内の各業種の賃金というものは、極めてアンバランス状態にあります。これは価格政策の画き出したいろいろ弊害もこれに混つておるでありましようけれども、とにかく大幅なアンバランスがありますが、これを何とかして修正しない限りは、日本経済全体として総合した生産意欲の向上を図るということは、極めてむずかしかろうと思いますが、こういう問題について大臣はどういう工合に考えておりますか、一つ伺いたいと思います。
  50. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) それらのアンバランスというものは、御指摘のように戰後の新らしい経済関係を通じ、諸政策を通じて一時的に出て来た面もあるでございましようけれども、それは徐々に平均化され、そうして国民経済全体として平均のとれた姿に返つて行かなければならないと考えております。ただそこに至る政策が、社会民主主義によつて統制経済の形を以て行くか我々の唱える自由民主主義の、自由経済の形によつて、比較的自然の法則に従つて行くかというだけの相違でありまして、そこを埋めて行くという考えにおいては皆さんと同様であります。
  51. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういう御答弁は前にもしばしば私共伺つておるのでありますが、そういう御答弁で百年河清を待つにしては余りにも漫々的過ぎるのでございまてこの際労働大臣としては今のアンバランスのことを端的にお認めになるならば、労働行政としてはこの混同を如何に解決するか、その点を先ず明らかにせられたいと思うのであります。それから特に銀行方面のこの賃金に対しては、経済の三原則の適用関係はどうなつておるか、それから賃金のいろいろな産業統計を見ますと、いわゆる銀行という部門は殆んど見当らないのでありますが、こういうものを新らしく追加されて、そうして公にせられる用意があるかどうか、その点も伺いたいと思います。
  52. 金子美雄

    説明員金子美雄君) 現在の賃金統計の中で、場金融業は商業の中に含まれて取られております。荷第一一勤労にも含まれております。が、その他の賃金統計におきましても、決して金融業を特別に除外しておるということはありませんので、他の産業と同じように取つております。
  53. 寺本廣作

    政府委員(寺本広作君) 銀行業の直接の監督は大蔵大臣に属しておるわけでありますが、賃金三原則は銀行労働者賃金についてもそのまま適用になつておると私は思います。
  54. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それで間違いないですか、どうも私御答弁頂いたけれども、まだ少し腑に落ちない点があるんですが、これは労働省の資料として商業の部門へ銀行が入つておるというお話でございますが、銀行だけを拔きましての統計を頂きたいと思いますか、それはできますかそれでは今の賃金支拂保障の問題はその統計表を頂くことをお約束いたしまして次に移りまして、賃金水準の維持の問題に移つて行きたいと思います。鈴木大臣は今年の八月九日の省議におきまして、最低賃金制を検討する段階に入つたと言われたということが新聞紙上に報ぜられました。又八月二日の参議院の厚生委員会におきましては、確か山下委員であつたと思いますが、その質問に答えられまして、審議会を設けて一般民間八を加えて妥当な結論を出したいということを言われたと思います。こういう工合に、少くとも鈴木労働大臣が今まで公式の席上において述べられたことは、最低賃金制を何とかするように準備中であるということになるわけであります。今年の春であつたと思いますが、中山商大総長もこの予算委員会の公聽会に臨まれまして、インフレーシヨンの高進期においては、最低賃金制のごときは考慮するものでないけれども、もうこうなれば最低賃金制を布かなければならんということを明らかにせられたことを私は記憶をいたしております。そこで労働大臣が今まで、今年第五国会以後に構想として持たれましたところの、いわゆる検討する段階に入つたというので、お持ちになりました構想の最低賃金制という内容はどういう意味のものであるか、これを先ず伺いたい。  それからそういうものが審議会を設けて妥当なる結論を出したいとおつしやつたのでありますが、こういうような実行段階と申しますかは、どういう工合に相成つておるか、その点を明らかにせられたいのであます。
  55. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 最低賃金制を検討すべき段階に入つたということを申上げたことはございます。その通りでございまして、それからいつどういう形の最低賃金制をというふうなことは、これは今以てまだお答えできませんが、今までどの席上でも喋つたことはございません。というのは、私自身にもまだその結論が出ないのであります。審議会を作るということ、審議会によつて得られたところの案をも十分考慮して、そうして政府としては自分としては、最後の案を作りたいということを今考えております。で、この、二十五年度の予算に審議会の経費は計上しておるのでございます。そこまで実際に進んでおる。併し極めてこれは日本労働者諸君にとつても、経営者諸君にとつても、重大微妙な問題でありまするからして、慎重の上にも慎重を期して、この問題には対処して行きたいと今考えておる折でありまして、今お答えできるのはそこまでであります。
  56. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 重要な問題であるから私はお尋ねをしておるのでありまして、少くとも労働大臣からもう少し肚のある御答弁を伺いたいのであります。と申しますのは、現在の政府は薪炭の損失補償だとか、或いは今日も商工委員会でやつておりますが、鉱山の災害補償であるとか、或いは石炭の損失補償であるとか、少くとも政府の力の非常に近いところにあるいろいろな問題については極めて熱心に取り上げられて、そうして国家財産を割いてでも相当な補償をせられておるのであります。私はそういうような勇気のある現政府が、こと労働政策に関する限り、ちよつと匂わされるだけで以て積極的にこれを進展させるとか、或いはその結論を急がれるというような努力の表明のないことは、甚だ残念に思います。ここで先程申上げました賃金の支拂保障法案或いは最低賃金制法案、そういうようなものに対する、もう少し私共の納得できるような一つ答弁をお願いしたいと思うのであります。もうすでに八月九日に省議でお話なつたわけでありますから、時間も相当つております、相当休会も長かつたことでございますから、いい案もできたことと思いますので、一つ伺いたいと思います。
  57. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 八月何日かに省議を云々というのは、新聞の伝えるところに過ぎないと思います。ここに局長連中もおりますけれども、最低賃金制の問題を省議なり、そういつたような形で以て言つたのではありません、雑談としてはあつたかも知れません。又私自身の決心を決めるのには、別に省議にかけなくてもいいのであります。併しそうだからと言つてやらなくてもいいのだ、遅れてもいいのだということをお答えをしておるのではありません。適当な段階、それと同時に適当な方法を以て愼重にこの問題を採り上げようという決意を以て臨んでおりますということだけは申上げられます。それ以上には実際にまだ案自体ができておらないのであります。
  58. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、審議会を設ける予算が計上されるということになるわけでありますが、そうするとこの審議会の妥当なる結論を得られるのは、大体どれくらいを目標にしておやりになるのですか、時間的な目標ま……
  59. 寺本廣作

    政府委員(寺本広作君) 労働基準法で最低賃金を決める場合には、賃金審議会にその原案の作成の審議を求めなければならんということになつております。法律に基きまして現在すでに賃金審議会の設置に関する諸般の手続は済んでおります賃金審議会は、賃金審議会令によりますと、労働者使用者並に公益代表各同数の代表者を出して構成するということになつております。賃金審議会の委員の推薦につきましては、労働組合並に使用者団体に、それぞれ一ケ月の余裕を置いて推薦を求めるということになつております。従いまして予算が、明年度実施することになつておりますので、明年度の予算の実施に入りましても、委員会の構成までそれだけの時間的な余裕を見なければならんと思います。又委員会ができまして委員会で最低賃金制を設定すべく諸般の情勢を検討し、又どういうふうの方法によつて最低賃金制を設定するかという、具体的な最低賃金の設定計画を作りまして、これに基いて最低賃金の実施方法を具体的に決めるというまでは、若干の時間がかかろうかと思います。賃金審議会が案を作りましたら、それによつて労働大臣意見を出すことになつておりますが、それに基いて労働大臣が公聽会をやつて、最終的に決定するということになつておりますので、最低賃金が決定されるまでには相当の日子が必要であるというふに考えております。
  60. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 只今までのとろ、政府は、労働平和を保つために、いわゆる労働組合法を大巾に改正せられて、労働組合が余り活撥に動かないような工合に、一応なりました。そうして労働組合法によつて、合法運動というものを強力に指導せられて参りました。そうしてその蔭で組合運動を正常な形で守り、労働者生活権を守るためには、労働協約を締結して、この労働協約によつてすべて労働平和を招来すべきであるというようなことをおつしやつておりましたが、最近の労資間の関係を見ますと、今までありました労働協約が続々と破棄せられつつあります。各労働組合は無協約の状態に入りつつあります。そうして再びこれを結ぼうといたしまするならば、資本家側の反対に遭いまして、なかなか結ばれない、こういう状態にあるわけでありますが、この労働協約に対して、労働平和の今までの政府の指導理念からいたしまするならば、資本家側に労働協約を、積極的に締結すべく指導して然るべきだと思いますが、これに対するお考えを先ず伺いたいと思います。
  61. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 大体においてお説の通りの考えに私共も立つております。尚実情はどういうふうになつておりまするか、労政局長からお答えいたします。
  62. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 実情につきましては、今栗山委員の御質問になりました中、——一部は我々もさような傾向のあることを認めております。具体的に申しますならば、労働協約は、組合法の改正の趣旨に副うて、目下これが改訂期に入つておるのが多いのであります。併しその大部分は労資の協力によりまして、極めて合理的な労働協約が続々締結せられておりまするけれども、一部では業者側におきまして、この機会に反動的と申しますか、便乘的に非常に今までの失地を回復しようというような意味で、強く出ておるのもあることは一認めております。同時に組合側におきましては、やはり以前の法三章的な基本的な権限だけで、少くも組合の権利は十分認めさして、義務は成るべく書かないというふうな従来のようなやり方をやつておりまするために、まとまらないという事実のあることは、先程申しましたように認めておるのであります。従いまして労働省といたしましては、栗山委員の御意見にありました通り、又大臣もそれに対しましては認められた通りに何とか労資の関係を、労資の相互の権利と義務を正当な合理的な立場で、協約によつて詳細に決めまして、産業平和を維持して行きたいという建前からいたしまして、組合側に対しても組合法施行以来強力に勧告をやつてつておりまするが、特に使用者につきましては、そらの団体を通じてやりますると共に、我々といたしましても特に使用者を招致いたしまして、そうしてそれらのわだかまりが消けるようにという意味において、殊に先程申しましたように行過ぎの使用者につきましては、十分警告を発して御意見のように速かに協定が成立つように努力をいたしておるのであります。
  63. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大体分りましたが、是非共そういう工合に労働省努力を願いたい而もその内容は労働者の保護になり得るような内容にして頂きたいと思いますが、私の承知いたしております限りでは、只今の労働協約がうまく結ばれない、労資の関係の暗礁になりますものは経営参加の問題であろうと思います。殆んどどの企業家も経営参加ということについては拒否の態度を取つており、そうしてこれに代るものとして会社側の生産委員会式なものに変更しようという考え方が強くて、折合いがつかないように私は見ておるのであります。併し日本のこの労働組合的な訓練を労資共に得ていない日本におきましては、アメリカのような工合には参らないのであります。今アメリカ式な考え方を一応資本家の人々も、いろいろなイグザンプルを取られて主張せられておりますけれども、主張された人自身がアメリカの資本家のところまでとても水準が上つていない、こういう工合に私は言わざるを得ないのであります。特に経営参加の問題について考えますると、最近例えば通信機関係をやつておりますところの日本電気労働組合、或いは自動車の関係をやつております全自動車の組合、その他相当多数の組合が業界の不振を切り拔けるために、労働者が自分の生活権を守ることが前提ではございましようけれども、とにかく会社の経営内容に非常に心配をいたし研究をいたしまして、相当厖大な、而も細密な資料を作りまして、国会の私共のところへも届けられておる例があります。労働者の経営参加を拒否することは私には意味がよく分らないのであります。最近はこういうことが契機になりまして、一度企業の不振という問題になりますると、労働組合の作りました明細な資料の下に国会で取上げれば、これによつて資本家も共に国会に参りまして、いろいろ運動されているというような実績もあるのであります。米国のたとえばCIOのジヨン・ルイス氏は労資対等の立場で団体協約を結ぶべきである——そうしてこれを産業別の組織の中核的な指導方針としておりますが、こういうようなアメリカの大産業労働組合が資本家団と結んでおりますところの団体協約でありますが故に、一面経営参加というような面がそんなに入つていなくてもやはり交渉の場面においては配当とか或いは人事だとか、或いは生産計画、或いは価格の決定、会社の機構の問題、その他相当広汎な経営権の重要な領域に入りますような問題についても、アメリカの労働組合は現在発言権を持つている、実質的な経営参加の実を挙げつつあるのでありまして、日本の多くの資本家の人々が形式的にだけでもアメリカの労資間を真似まして、先ずみずから独りよがりをするというような考え方は、この際一挙に拂拭されなければならないと主張するものであります。この経営参加の問題について労働大臣の明確な御所信を承わりたいと、こう思います。
  64. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 経営参加の問題について、特に経営協議会の問題についての御意見、御質問でありましたが、労働省といたしましては、従来我が国労働組合が労働協約によつてつておりました経営協議会の、大功績については我々は一応認めておるのであります。と申しますのは、今日労働組合運動が極めて現実的になり、本年上半期から下半期の当初にかけて行われました企業整備に当りましても、又最近の石炭、電力或いは繊維等のいわゆる補給金……、この補給金の打切り等をやられました産業労働組合の最近の賃金交渉の実情を見ておりましても、極めて現実的な交渉をされておるのであります。これらの諸点は確かに過去三ケ年乃至四年間に亘りまして、対等の立場で経営の内容をよく知つて来たという点が、その功績であると我々は考えておるのであります。併しながら一面この改正労働組合法の実施に関連いたしまして、今後のあり方としては、この経営協議会というものは更に発展的にかような形を取るべきであるということを、我々は指導いたしております。と申しますのは、従来の経営協議会の実績を見ましてもこれは三つの機能を持つておる。一つは、いわゆる団体交渉的機能であります。第二は、苦情処理機関的な機能であります。第三は、生産或いは経営について双方が対等の立場で納得し合つてつて行くという生産委員会的な形式であります。このことは御指摘のようにアメリカの組合の行き方の最も長所とするところを参考にいたしたのでありますが、我々の考え方といたしましては、このやり方を組合に強行しようという考え方は持つておるわけではありません。ただ問題といたしまして、我々が取上げたいと思つておりまするし、又取上げておりまする点は、とかくこの経営協議会という問題を中心としまして、労資の間でよく議論が行われておりまするが、これは経営権というものの、或いは経営権に関連しての経営参加という言葉から来ますところの魔術と申しますか、何かに囚われて形式論的な議論をやつておる点であります。経営者側は経営権は経営者にあつて、一歩も労働組合に容赦さすべきではない。いやその経営権に我々を参加させよ、或いは人事権を持たなければ組合は弱いというようなことを言つておりまして、現実的な面から申しまするならば、双方が対等の立場で、産業全体の利益を図つて行くという立場において民主的な経営、即ち双方が納得ずくでやつて行くという点において、経営について話合うというような扱いになつて呉れるならば、実際的に解決がうまく行くのでありますが、とかく言葉に囚われ、形式に囚われ、或いは経営権という言葉が持つておりまする魔術にかかつておるという状況でありまして、この点は特に最近におきましては使用者が、先程お答え申上げたときに申しましたように、今まで労働組合から自由自在と申しますか、非常に経営者側の自主的な確固たる責任感を持つていないというふうに見られるごとく、非常に労働組合に自由にやられておつた、これの反動的に今度は自分が労働組合に対しては何とか反感的と申しますか今度こそ勝手にやるぞという考え方で、我々の申しております趣旨の了解ができない使用者も相当おるようであります。組合側の最近の動向は、先程申しましたようにややその現実的な力、特に大きな組合、又今日まで非常によく組合の活動をやつて来ました組合におきましては、逐次分つておりまするが、経営者側におきましてこの経営権というのに未だ囚われておるものが多いようであります。従つて我々の方から生産委員会或いは苦情処理委員会、交渉委員会という三つの形でやるべきであるといつたことに便乘的にこれに拘わりまして、そうして経営権を主張するというふうな形が現われておるのであります。この点は我我としましてはこの誤解を解き、或いは感情的な問題を解いて経営の責任、経営の権利というものはこれは当然使用者が持つているのであるが、対等の立場において労働者は納得して喜んで働く、そうして労資がお互いに納得ずくでその会社或いは産業の興隆するように指導いたしておる次第であります。
  65. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大分時間を取りましたので、この問題はこれで一応打切つて置きたいと思います。ただ今の局長の話で、正式に経営参加というはつきりした明言はございませんでしたけれども、その精神は飽くまでも企業振興のために労働階級の経営発言を認めるような工合にして行きたい、こういう工合におつしやつたと了解いたします。  それから次にこれは非常に重要な問題でございますが、最近新聞紙上に報ぜられましたいわゆる磁気産業労働組合が今年の春以来非常に民主的な形で賃金引上げの運動を展開しておりまして遂に中央労働委員会もこれを取上げ調停委員会に懸けられまして、四月から九月までの賃金が一応結論が出たのであります。これに対して組合側が無條件でこれを受諾いたしたのに反しまして、経営者側は完全に拒否いたしました。その後、拒否いたしました後においても中山調停委員長が更に立たれましている、斡旋をせられておりましたが、なかなか問題がスムースに解決いたしませんので、電産の組合としては春以来の民主的な組合運動を続けて参りまして、そうして而も最後の一線において組合員が非常に不満でありながらも無條件で受諾した。これすらも会社側が一顧もいたさないということでは問題にならないというので、組合員の下部大衆からの非常に大きな声が掛りまして、張る十一月の二十日以後は全国の停電を行う。そうして而もその停電の罷業は決して個々ばらばらのものではなくして、はつきりと統制をとつた中央委員会の指令下においてこれを行うというような手段を取つたのでございますが、これに対して最高検察庁が地方検察庁に対しまして、稟請を俟たないで或る場合にはその行為に出た者を検挙して差支ないという指令が出されたということを闘いいるのであります。これは最高検察庁当局も確認をせられているようであります。これは非常に重要な問題でありまして、労働省としても恐らくこの問題についてはいろいろ御参加にも相成つているものと思いますが、簡單でよろしうございますが三点ばかりお尋ねいたしたいと思います。この最高検のとられましたるあの処置について労働省は事前に御参加に、連絡をお受けになつたか、或いはああいうような形が出される前に御相談でも受けられたか、どうか。最高検の独自の見解で行われたものであるかどうか、この点を先ず明らかにして頂きたい。それからそういうことになりますと、電産の組合の持つておりました組合法による争議権というものを否定されたのか、或いは争議権というものははつきりとお認めになつてそうしてああいう指令が出されたのかどうか。それから事実具体的にその前に争議が解決したからよかつたのでございますが、解決しなかつた場合に停電ストライキが行われ、そうして検挙が始まるということになりました場合には、どういうような行為があつたならば実際に検察庁が発動せられるような工合になつてつたのか、この点若し労働省の方でお分りになつておりましたならば伺いたいと思うのであります。労働省が全然この問題にはタツチしていなかつた、こういうように明言をして頂きまするならば私は又最高検の方に伺うことになると思います。一応お伺いいたします。
  66. 賀來才二郎

    ○政参府委員(賀來才二郎君) 只今の問題につきましては労働省は全然タッチいたしておりません。
  67. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 分りました。最後にもう一点だけ伺いたいと思います。それはいよいよ年末を控えて参ったわけでありますが、これについては今労働階級の中で非常に問題となつておりますのは、税金の年末調整によりまして十二月の給料が殆んどポケットに入らないという人が相当沢山出ておるようです。私の調べました或る組合におきましても大体最高は一万五千円、最低は二千円ぐらい、従業員の約半数ぐらいがこれにかがる、こういうことでございます。従つて賃金のストップ状態にあり、而も年末を控えて遅欠配も相当出て来る、或いは賞典金は全然見込みがないというようなときに、相当高額の税金が取られるということになりますならば、年越しをしようと思つてもこれはできないことになるわけでありますが、これについて労働省としては、問題は大蔵省のことになるのでありましようが、労働省としてはこういう問題に御関心を持つておいでになるかどうか。関心を持つておいでになるとすれば、これを政治的にどういう工合に解決しようとしておるか、この点を伺いたい。
  68. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) こと働いておる人達生活の問題でありますから、労働省としては根本的の問題としてこれは関心を持つておりますけれども、御指摘のように大蔵省の方針にかかつている問題でありますし、それ以上にその関心をどういう形で以て行くというふうなことは少しお答えを差控えたいと思います。
  69. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは平時のときと違つて非常に重要な問題で、労働大臣が若しそういう御気持で御心配をなさつておるとするならば、一遍ぐらいは閣議の問題にも相成らなければならん問題であると思いますが、閣議でこういうことをお採上げになつたことがありますか、それをお伺いいたしたいと思います。  それからあと幾日も日がございませんが、かける御意思があるかどうか、この点をお伺いいたしたい。
  70. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 御承知のように、その問題で以て少くとも今日まで大蔵大臣がこれこれの方針であるというようなことを考えたか、言われたか、とにかくそういつた動きがなかつたのでありまして、従つて問題自体がそういう形である現在、閣議の模様等につきましてはこれはお答えいたしません、こういう強力な言い方ではありませんけれども、あつたということはなかつたという……この問題について申上げかねるのであります。
  71. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 了解しました。そうすると何とかこれをしないと、ちよつと治まらない恰好になると思うのでありますが、労働大臣として非常に御答弁なさりにくい点もよく分りますけれども、実際にこれは私共が若しいろいろ運動するならば教えて頂いてもいいわけでありますが、何とかしなければならんということをはつきりお分りになれば、何らかの手を打たなければならんと思いますが、そういうところを一つお答え願いたいと思います。(「大蔵大臣に聽けよ」と呼ぶ者あり)大藏大臣に聽くことはよく知つていますが、問題は労働大臣の非常に関心を持たなければならない問題でありますから、私は聽くわけです。
  72. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 今日只今の段階におきましては、只今までのお答えを以て私の考えを一応諒として置いて頂きたいと思います。
  73. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから最後にもう一点ございますが、日本労働組合運動も四ケ年間、いろいろな紆余曲折を経て参りましたが、最近世界の労働組合との提携の問題でいろいろな形が出ております。で、私が聞くところによりますと、アメリカの労働組合の人々が日本へ参られまして、日本労働組合と直接手を握つていろいろな運動に連絡をとつてつて行くような機会が、近くできるのではないかというようなことを聞いておるのでありますが、実際に現在の占領軍とは別個に、自主性を持つたところのアメリカの労働組合の機関が内地に派遣になりまして日本労働組合といろいろ労働問題の発展のために提携をして行く、そういうような機会があるのか、ないのか、或いはそういうことをお考えになつておるかどうか。私の聞いておりますことが、ただ單なる風説であつて事実でないのか、その点を一つ伺いたいと思います。
  74. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 日本労働組合の発達のために、先輩と申しますが、アメリカの労働組合の指導者が日本に来まして親しく指導して貰つたならば、効果があるのじやないかという考え方は、我々としても持つておりましたし、又占領軍の当局におきましてもさような希望を持つており、又計画もしたことがあると承つております。ただ目下のところはアメリカの労働組合側におきましていろいろな都合で、これは笑い話みたいでありますが、日本労働組合と違います点は、日本労働組合は幹部になると非常にえらい目に遭うので、余りなり手がない。ところがアメリカの労働組合の幹部は非常に待遇もいいし、なり手も多いので、うつかり留守にすると後をとられるというようなこともあつて、なかなか日本に来たがらないというふうなこともあるような話を笑い話のように聞いたこともあります。まあいろいろ事情があると思いますが、目下その計画或いは考え方につきましては、占領軍当局などに承わりますところによりますれば、アメリカの本国においてもさような考え方が進んでおるということは聞いておりますが、具体化するについてまだはつきりしたことを聞いておりません。
  75. 内村清次

    ○内村清次君 吉田総理が今回の施政方針では、我が国の経済は安定したとおつしやつたし、大蔵大臣は安定の軌道に乘つた、そういうふうなことを考えておられるようですが、労働大臣日本経済がどういう状態にあるかという点について、先ず一つ御認識の程度を伺いたい。
  76. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 極めてこれは考え方によつて広汎極まる課題でありますけれども、簡單に大体大蔵大臣あたりと同じ見方で考えておりますということをお答えいたします。
  77. 内村清次

    ○内村清次君 この認識の程度によりまして当然所管の労働対策というものが変つて来るのですが、一体労働大臣といたしまして、現在の経済情勢におきまして、この失業者の問題、企業の合理化から来るところの失業者の問題、それから一般国民の生活状態から来るところ公失業者の問題、こういう問題は今後即ち安定の軌道に乘つたと思われるならば、失業者の数というものは今後殖えて行かないというようなお考えであるか。この点一つ伺いたい。
  78. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 先程もどなたからか同じような御質問がございましたけれども、失業者といいまするか離職者、そういつた者は如何なる段階にも特に自由経済的な資本主義的な一生産組織の下においては、いつでも或る程度ずつは発生したり、又どこかへ吸收されたりして、行くのでありますから、そういうものは今後も勿論発生すると思います。御指摘になりましたのはそういう意味ではなくて、今年の初めから只今までにかけて、例えば企業整備或いは行政整理というような形で以て、集中的に日本の国民経済の或る段階的な特異な現象で以て生じて来た失業者の発生状態はどういう見通しかという御質問であろうと存じます。言うまでもなく行政整理による失業者というものは、屡次政府も声明しております通り、もうやらないのでありますからして、今年のような形で出て来ることはないと存じます。それから私共この春の国会からしばしば言つた中には、一応の離職者の中に引揚者というものも入つておりまして、今年春見通しを申上げましたときに一応、ソ連の方で九万なんぼ帰すと言いますから、その全体の数の如何という問題については、国全体としている、考えはあるけれども、我々も一応職を與えなければならない人というものは、引揚者の、中から十万出て来るという計算を立てておりました。こういつた変化は、来年になつて、どういうふうになるか分りませんけれども、今の企業整備のための大量の失業者というものは、今年の九月、十月、十一月頃がピークであつて、それから減少の傾向にあると存じます。一挙にそれが来年度になつて無くなつてしまうというところまで、一安定後の平均が取れるかどうか。その点までは、私共はなかそうは行くまいと思いますけれども、低い線を段々辿つて行つて安定の線に近づくであろう。端的に申しますと、八、九、十、十一月あたりが失業者の出て来るピークであると我々もこの春想像いたしましたし、現実にも事後の数字がそういうふうに推移しておるように思います。
  79. 内村清次

    ○内村清次君 先般二十四年度の予算の際と、同時に又政府職員の行政整理のいわゆる定員法が可決される際に労働大臣がおつしやつた中には、今後自立経済によつて輸出産業方面失業者を約四十万乃至六十万吸收するというようなことを確かに言明されておつたのでありまするが、十現在においてどういうような吸收状態になつておるか、その点を一つ……
  80. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 昨日もどなたかから、衆議院の予算委員会でそういう御質問がありましたけれども、輸出産業というものを重要な対象として考えて、そうして数も一応の見通しを春に申上げたことは事実でありますが今申されましたような数字は、一度も発表しておらないと思います。私なり労働省なりで申上げましたのは、昭和二十四年度を通じて日本の国民経済全体を通じて、四十万程度の新らしい雇傭というものは予定される。勿論一方では失業者は出て来ますけれども、新らしい雇傭というものが予定される、その中二十万は輸出産業、二十万は他の一般産業、合わせて四十万ということが予定される、それから二十五年度になれば、これは、その倍くらいのものが予定される。併しこれは一年先のことでありますからして、本年度は、そう見込んでおりますということを次申上げて来たのでありましてその後この四十万全部を、輸出をも引つくるめた、全産業で四十万の雇傭ありという見透しに至つては、外れておらないと思います。輸出は、御承知のように、途中でジグザグのコースを取るということはあります。併しあのときの四十万は、輸出産業、その他の全産業を含めて四十万という見通しでございまして、ここで五万か、十万、そこらの差があつても、一方で綜合して来年の三月三十一日までに四十万の雇傭が生れて来るという、全産業の雇傭力というものにつきまして挙げた数字は、終始それ一つであつたので、ございまして、六十万とか、何とかいう数字は、昨年も聞かれたのでありますが、その他の失業対策のどこかの数字とくつ付いて、聞き違いと申すと失礼でありますが、というような点もあつたのじやないかと思います。私として申して来た数字は、今申した通りであります。
  81. 内村清次

    ○内村清次君 この点は、これは衆議院の速記の方にもはつきりありますし、又私が最後に御質問をいたしましたときに、はつきり労働大臣は言われております。併し問題は、新らしく吸收するというお考えが、現在の輸出産業状態は、これは先程通商大臣も言われたようですが、非常な企業の整理期に入つておる。而もこの整理期というものは、これはあなた方の見方とすれば、資本主義的な自由整理の方に持つて行つておる、このためにいい結果が起きて来るというお考えであるけれども、併しそういうような整理期に入つた現状から見ますると、吸收どころかずつと失業者が殖えて来ておるような状態ですが、このような、即ち観察の何かはつきりした調査の記録というものはないか、この点一つ伺いたいと思います。
  82. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 私から一応お答え申上げます。最近の下平期に至りまして、私の方でやつておりまする公共職業安定所、その万両の求人関係等におきましては、年の五月以来は月々減つてつておりましたけれども、九月頃から逐次十上昇傾向が見えておるわけであります。勿論それは二十万、三十万というものが一月に出ておるといつたものではありません。即ち八月頃に比べますれば一万四、五千人程度に求人の度合いというものが一応出ておるわけであります。そして尚民需産業の増加の問題につきましては、企業整備で減る、減るは減つております。逐次減る方は減りますけれども、殖える方は殖えるという形で来ておりまして、一番新らしい統計で見ると、安定所の窓口に出ておるのは、前の八月、九月の一万五千の求人が現われておるということであります
  83. 内村清次

    ○内村清次君 そこでこの失業者の現在の数というものは、一体労働省といたしましては、現在一番新らしいこの調査統計から行きまして、正確に一つこの点を今日私は発表して頂きたいと思うのでお伺いしたわけであります。どうしても最近労働大臣のおつしやるこの失業者の現在の数というものが、ところどころによつてつておるのです。それで我々がこれを調査した数と喰違いますし、一体どういような調査方法をとり又何年の何月までこれをとり、而も現在はどういうような状態なのか、例えば完全失業者とか、或いは十時間未満の半失業者がどのくらいか、それから一週間中に三十時間の就業者、こういうような失業者がどれ位あるかというようなことを、一つはつきりここで御説明頂きたいと思う。
  84. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 私から失業者の現在数につきましてお答え申上げます。御承知のように、失業者の数を掴みまするための資料といたしましては、一応三つあるわけでございます。全国的な調査として行なつておりますのが内閣の労働力調査でございます。その内閣の労働力調査によりますと、これは最も新らしい資料でございますが、本年九月現在の完全失業者は四十七万ということになつております。尚先程も大臣からお話のありましたように完全失業者の外に部分就業者というものがあるということを大臣も申しておりますが、これは内閣統計局のこの労働力調査の附随的な調査として行なつております。これは三ケ月に一回行なつておりまして、一本年におきましては五月と八月があるだけでございまして、先程申上げました九月の完全失業者四十七万、追加労働希望者数字は分りません。そこで一番新らしい五月、八月の数字を申上げますると、追加労働希望者の数は五月において四百十八万、八月に二百六十九万でございます。その追加労働希望者の中で三十五時間以上働いておりながら、追加労働希望しておりまする数は、五月に二百二十六万であり、八月に百五十五万という数字に相成つております。それから三十四時間以内就業しておりながら、三十五時間以上の労働希望しておる者が五月で百十八万、八月で八十七万という数字でございます。これは一応拔取り調査によりまする全国的な推定であります。それからもう一つ、失業情勢を把握するための一応の資料と申上げまするものは、公共職業安定所の窓に現われておりまする職業紹介の状況から見ての推定でございます。これによりますると、最も新らしい統計は九月でございまして九月におきまする公共職業安定所の窓口に現われた未就職者の数は六十九万になつております、併しこの六十九万人が、それでは全部失業者かというと必ずしもそうではないのであります。御承知のように、企業整備等がありますれば、首切りの始まる事前に、職業の相談をいたしております。即ち安定所の窓口に来る者は全部が失業者ではありません。又一面、失業者が全部安定所を利用しておるわけでもありませんが、一応の未就職者の数として現われておりますのが六十九万ということに相成つております。それから全国的にもう一つ、世界的にも利用されておりまする統計は、失業保険の受給者の統計でございます。これは本年の九月の正確な統計はまだできておりませんが、九月の失業保険の給付を受けました数は、九月が二十七万ということに相成つております。大体以上の推定を本といたしまして、本年度下半期当初における現在完全失業者を五、六十万というふうに推定をいたしておるわけでございます。
  85. 内村清次

    ○内村清次君 そうしますると、一政府失業対策といたしまして今後の対策資料として輸出産業、その他民需産業に吸收する人員は、四十万乃至六十万、同時に又失業保険によるものが四十二万ある、それから日傭失業保險による者は十三万人であり、職業補導施設吸收が五万人、失業対策事業が四万人、従つて百万乃至百二十四万はこの対策計画の中に立ててあるというようなことは、これは誤報でありますか。
  86. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) そこで失業対策として考えますときは、完全な失業者は現在、先程申上げましたように五、六十万人程度ということを推定しておりまするけれども、先程も申上げました追加労働希望者が三十四時間未満のものが五月に百十万人、八月に八十七万と申上げましたが、大体百万程度のものがおるわけでございます。この三十四時間以内の追加労働希望者というものが、或る意味から申しますと、経済情勢によりましては、失業という労働事情に影響のあるものでありますので、そういうものも将来経済情勢によつて失業者に落ちるかも知れんということを頭に入れながら、失業対策の全般というものを考えておるわけでございます。
  87. 内村清次

    ○内村清次君 さつきは、その日傭失業保險費、その問題といたしまして、十一月というのは、はつきり月は言つておられませんでしたが、これはいつから実施をされまして、その内容はどういうような方法で、又一人当り幾らぐらいの額になるか、その点について一つお伺いいたしたいと思います。
  88. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 日傭失業保險は十一月から実施しておりまして、一月からは給付が始まります。尚その方法等については賀來政府委員から……
  89. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 失業保險の日傭失業保險のやり方でございますが、これにつきましては定額制の給付を採用いたしておりまして、百六十円以上の賃金日傭労働者につきましては、百四十円の定額給付を支給することになつております。百六十円未満の賃金を受けておるような日傭労働者につきましては、日額九十円の給付額を支給する、こういうことになつております。尚この給付の要件といたしましては、失業の発生する月前二ケ月間におきまして、三十二日間稼働しておるということを要件として、日傭失業保險の場合は日拂の給付をいたすということになつておるわけでございます。
  90. 内村清次

    ○内村清次君 二十四年度の予算に組んでありました、緊急失業対策費としは、今大体全国にどのように利用されておるかその点はつきりしておりますれば一つ説明を願いたいと思います。
  91. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 本年度の予算に組まれておりまする八億八千万円の使い方の問題でございますが、使い方といたしましては御承知のように四半期ごとに、その予算を使つて行くというのが筋でありましたので、第一四半期におきまして、多少の節約もいたしましたけれども、大体八億の四分の一の二億を支給しておつたわけでありますと。ころがその後第一四半期の後半に当りまして、特に日傭の失業状態が多少深刻になつて参りました。特に東京、大阪、横浜、こういつた大都市の日傭失業状態が深刻になつて参りました。…その大きな原因は何と申しましても、公共事業費が少かつたこともありましようし、更に公共事業費の使い方が遅れたこともあつたろうと思います。いずれにせよ、第一四半期の後半から深刻になつて参りました。そこで第二四半期に至りまして、この四半期ごと二億という使い方は足りないというふうなことにもなつて参りましたので、第二四半期の九月に至りまして第三四半期の分をも或る程度使つてしまうということになつて参りました。更に第二四半期の後半、更に日傭の失業情勢も深刻になつて参りましたので、第三四半期におきまして第四四半期の残り分をも一応繰上げ支出をしようということにいたしまして、今日に至つておるわけであります。その就労状況を言いますと、第一四半期におきまして大体緊急失業対策事業として就労さしておりました数が一万七千人程度であつたのでございます。これを九月の十五日に至りまして約一万二、三千人殖やしまして約三万人程度になつております。更にそれが十一月に至りますれば、四万人の失業対策事業が現に行われておるようなわけでございます。そうすることによりまして先程労働大臣からお答えがありましたように、失業対策事業が唯一の失業対策事業でないのでありまして、あらゆる手段を盡して最後の土壇場に行われておりまする事業であります。そこで現在の四万人を就労せしめることによりまして、特に日傭問題の深刻化ということを喰い止めておるような状況でございます。
  92. 内村清次

    ○内村清次君 先程横浜、東京あたりに相当こういうような失業の数が増加しておるというようお話でありましたが、これは事実その通りであつて、これは話に聞いて見ますと、東京ではずでに第一四半期、第二四半期までに五億円ぐらいは使つておるというような事態を聞いておりますが、これは事実であるかどうか。東京の職業安定所の方で聽いて見ると、どうしても週に一日か二日、或いは又できれば三日ぐらい働ければ良好だという程度でありますが、一体これでこの活用というものがなされておるか。この点を一つ承りたい。
  93. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 東京の例を申上げますれば、第一、第二四半期に使つております金額は約一億であります。第一四半期は大体三千万円程度、それから第二四半期は七千万円程度でありまして、今のところ流しました金の八億のうち東京で使つておりますのは、二億を多少切れると思つておりますが、一億八千万円から九千万円程度東京で使つております。東京で今使用しております労働者の数は一万人であります。それで東京の日傭労働の事情を申上げますと、予算等の関係もありまして、日傭労働者全部を毎日就労せしめるということは多少困難な点があるのでありますけれども、東京のあぶれる日傭労働者は最近においては一万四千人程度といわれております。併しこれは勿論将来多少でも殖えて行く予想は持つておりますけれども、現在のところでは一万四、五千人というところに大体なつております。従いまして四、五千人のものについては或る程度輪番制をとらざるを得ないということも考えております。併しながら先程も申上げましたように日傭失業保險というものが十一月から実施されて参りましたので、日傭失業保險制度の円滑な連帶と対策事業の円滑なる実施というものを、総合的に噛み合せまして運用して参りますならば、一応東京の日傭失業問題というものも解決して行けるのではないか。こういうふうに考えておる次第でございます。
  94. 内村清次

    ○内村清次君 私が心配いたしておりますのは、東京或いは横浜のような一体この失業者が多くて又毎日の生活が困難である、この状態というものは全国的にも実際生活に困つておる人達はありますが、問題は緊急失業対策費が八億八千万円もあつて、その費用が公共職業安定所から一般の、例えば東東、横浜より外のどちらかというと田園地帶、即ち中国以南の地帶、或いは北海道地帶、こういうような地帶に対する徹底度が少いのではないか。そのために結局農村及び漁村からの顕在化が展開しておるので、そういうようなところを頼つて行く途というものの徹底度が少いのではないか。このうなことに対して職業安定所はどのような方策でこういうようなことを徹底しておられるか、この点を一つ
  95. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 細かい点は局長から説明して貰いますが、大体のところといたしまして、全国一定の基準を置いて、それによつてこの事業を進めて行つております。併し一方においては緊急性を考慮して参つております。御指摘の地方の方に徹底度が薄いのではないかどいう点は当初そうであつたかも知れません。併しそれは全体の金額が従来は一年を通じて八億という線であつたのでありますが、今度は四ケ月で八億でありまするからして、大体年に直せば三十数億になるわけであります。同時にさつきも申しましたように、公共事業の方に五億円、特殊の失業対策的な都市中心の事業に盛られておりますし、来年度はやはりそういう意味で四十億円、つまり補正で訂正された第一四半期に八億何千万円という数字をそのまま延して、来年度はそれよりやや多く四十億円が計上されておりまするからして補正が通つたならばその時から来年の二十五年度の三月末までは、この面の包容力というものは、今年の四月頃に比べますと、四倍程度の包容力を持つてつております。そうすると先程局長も申しましたように、東京においても二万人以上引受けることができますと同時に、一般地方に対する滲透度というものも相当上げ得るというふうに考えられるような予算的措置が付いて来たというのが現状でございます。
  96. 内村清次

    ○内村清次君 それからこれは労働大臣も、大体予算委員会においてもそういうような心持があつたように新聞等でも拜見しておりますが、現在の失業保險法を一つ改正して、そうして公務員の問題につきましても、或いは又期間の延長の問題につきましても、これは一言考えて行くというようなことを聞いたわけですが、この点に対して御意見を承わりたい。
  97. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 期間の延長という問題は曽て一度考えたことがございますが、併し諸般の事情、又財政全体のあれから言いましても、これは極めて困難であるということを発見いたしましたので、これは今の話ではありません……。前のに変えるに給付の率、給付の仕方というものを変えることによつて、受給者が相当利益を得るような方法はないかということを十分当局に検討して貰いまして、その結果第一番には従来は辞めるときに給料の何割ということが決まつておりますけれども、その基礎になる給料の中に諸手当を除いて計算しておつたのでありますけれども、諸手当を加えたものを、これから基礎とするということに改正されたのでございます。これによつて何%か、詳しく後で説明して貰いますが、何%かの給付の引上げがすでに実行されておるのであります。  それからもう一つ、従来は段階的にこういう階級の人達が辞めるときに何%何%というふうに四十%から、八十%ぐらいに段階を設けておつたのを、六五%という数字にした方があらゆる計算をして見て受給者に有利であるということを発見しましたので、その改正をもすでに実行しておるのでございます。それらの点を考慮しますというと、給付率の引上げという問題は完璧ではないにいたしましても、実はやり得る範囲で以て余り大騒ぎをせずにやるだけのことはやつておるわけでございます。一方において給付期間の延長という問題は、財政の関係もございまするし、その他ございまして当面においては、これはなかなか実行不可能というふうに考えております。
  98. 内村清次

    ○内村清次君 これは労働大臣努力によりまして、結局給付の率は少し増加した。併しながら問題は期間の問題であつて、これは御承知のごとく今企業整備の真最中であるし、その面から失業しておる人達も長期化するような傾向は確かにあります。そういうような点からしまして、やはりこの失業保険の期間を長くするという点が一番要望しておる問題だと思います。これに対しましてもう一段の努力を願います。
  99. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 御意見に対しましては十分拜聽して置きます。
  100. 内村清次

    ○内村清次君 最後に労働大臣は、国鉄の調停委員会の発表がありましたその直後に労働大臣として所見を述べておられますが、個人としてそれに対して所見を述べられるのはいいが、大臣の所見というものは、直ちに公表される、御承知のごとく公共企業体労働組合関係法で、調停委員は労働大臣の方で結局任免するというような形になつておるのです。而もその調停委員が自主的に法律的の働きで調停したものに対して、労働大臣はその調停の八千五十八円は到底現在の状態では抑えないというようなことを発表されるのは、どうかと思いますが、この点に対して労働大臣は考慮される余地がありますか。
  101. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 国鉄の今日では仲裁でありますが、当時は調停案を審議中でありましたが、この点に関しましては、私自身労働立法の精神に立ちまして、あの機関は完全に独立であるという建前を終始堅持しまして、この間如何なる意味においても、積極的にも消極的にも調停委員会は勿論のこと、仲裁委員会に対しても或いは新聞等に対しましても、何ら意見を述べないという態度で終始しておるわけです。勿論いわゆる政府側というような立場に立つておる人達から、この問題に対しては意見を述べずに置いて呉れ、そうしないと調停機関の独立制云云ということになるから、嚴に警戒して呉れということも言われまして、私自身意見を述べるということはなかつたと思います。ただ賃金のベースをどうするのだというような問題になりますと、これは国鉄ばかりの問題でなく、他の全般の公務員を含めた問題になるので、労働大臣としてでなく国務大臣として、当時すでに政府側からもいろいろ意見も出ておつたのでございますからして、私はそれを覆すような意見を言う筈もなく、或いはこういう問題はなかなか困難だと思うというようなことは、或いは言つたかも知れませんが、いずれもその程度でありまして、終始国鉄問題につきましては今日でも意見を述べずにずつと成行きを見ておるというのが実情でございます。
  102. 内村清次

    ○内村清次君 非常に立派な態度であると思います。これはもう調停委員会のことを発表するときから、政府当事者は拘束しておるのだというような感を一般に與えておりましたが、この法律を守つて行こうというような人達に対して、只今の答弁を承わり安心したわけであります。そこで最後に伺いたいのは、今民間給與の遅配、欠配この点につきまして先程具体的に統計も頂いたのですが、政府はこの低物価政策の面からして、民間間給與を現在の平均資金のうちに段段鞘寄せして行くというような考えを持つておられるかどうか、これはやはり企業の自主性及び労働組合との対等な協約によつて委せるのだというような考えであるか、政府自体として、労働省自体としてはもそうやつて鞘寄せして行く、低めて行くのだというような考えかどうか一つ
  103. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 大体におきましては、私共の経済政策の基本は自由民主主義でございますからして、賃金にしろ何にしろ人為的に統制の枠をやつて行くという考えは持つておらないわけでございます。それから現在の民間のものを鞘寄せといいますか、何かの機会に下げるというふうな、これは自然の、私共の唱える自由主義的な生産組織の下で以て調整されて行くということは、上下共に妥当な労賃双方の納得により、妥当な経済原則に従つて動いて行くということに対しては、上下共に干渉するあれは持つておりまんけれども、今申しまするように、計画的に意識的に鞘寄せして高いものを下げて行く、その方が正しいのだというような考えを毛頭持つておりません。
  104. 内村清次

    ○内村清次君 賃金問題については今少し統計問題から質問したのですが、時間がありませんから次に讓ります。
  105. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 簡單に労働大臣に御所見をお伺いしたいのでございますが、それは少し離れた問題でございますが、昨年から労働省で婦人問題審議会を設けて看護婦の問題を大変研究になつておられるように伺つておりますのでございますけれども、御承知のように、今度の医療法に従つて看護婦を使うと、十六万くらい要るのではないかと思います。それが実働は六万何千人かでございますが、その間十万なんぼという不足があるのでございます。従いまして今日見ておりましても、看護婦が段々失業するのか離職するのか分からないような傾向にございますのでございますが、労働省といたしましては、これをどういうように見ておられるのか、どういうような対策をお取りになつておいでになるか、お伺いいたしたいと思います。
  106. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) お答えいたします。看護婦の皆さんというものは、重要な仕事をやつておられますし、それから又労働問題といたしましても将来に亘つて重要な性質を持つておるので、十分注意しなければならないと、労働大臣としては考えております。尚お尋ねのいろいろな関係につきましては、係の局長から詳細説明して貰います。
  107. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 看護婦の需給調整の問題でございますが、私共のといたしましては、看護婦の皆さんにも一つの試験ということになつておりますし、私の方といたしましては、厚生省に対しましてできるだけ看護婦を沢山養成して頂くということをお願いいたしたいと考えております。尚看護婦の現実的な問題といたしまして、需給関係、いろいろなことからいたしまして、看護婦の方々が都市から田舎に帰つて行くというようなことをできるだけ防ぐように、都市において看護婦が安心してその仕事に就くような、いわゆる職業斡旋組織というものを整備して行くということも必要ではないだろうかという、こういうように考えておるわけでございます。それがためには民間におきまする看護婦に理解を持つておられる業者の方々に、有料或いは無料の職業紹介事業をできるだけやつて頂く。それと同時にそういう業者の方々に、必要によりましては、看護婦さん方の住宅も作つて頂くといつたふうなことをいたしまして、特に都市でありますが、都市におきまする看護婦が不足しないようにできるだけ努力して参りたい、かように考えておるのでございます。
  108. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 もう少し具体的にお伺いしたいと存じますのでございますが、実はこれは大変現実の問題なのでございます。この参議院内におきましても医務室がございます。であの医務室で二人なり三人なりの看護婦の人がおりますのでございますけれども、普通の会社やら工場と違いまして、看護婦の仕事と申しますものは甚だ煩雑なのでございます。八時間労働とか何とかと労働組合でいろいろおつしやつておられましても、その八時間の中の働き方が普通の工場や事務所と違いますのでございます。実に過労でございます。それでどうも看護婦の年齢に見ましても、これは労働省あたりで何か調査なすつておられるかどうか知りませんが三十五歳以上の看護婦は本当に少いのでございます。二十歳、二十五歳というような方々ばかりなのでございます。勿論婦人は結婚ということを控えておると思うのでございますけれども、結婚ばかりじやないと思うのです。そういうことでいろいろ大きな問題もございますと思いますので、一つ労働省あたりでも御研究頂きたいと存じます。実はこの参議院の医務室におりました者が、この医務室におりましても一日中きりきりまいをいたしましても、会館あたりの受付で一日過してもこれは給與にはちつとも変りがない。そういうことなどは看護婦の免状をとつた者の方が、却つて不幸だから事務員になろうかというような現状なのでございます。それを無理して続けておりますと病気になつて結核になつて死んでしまうというようなことでございまして、この問題は日本の従来の看護婦に対する偏見というものもありましていろいろな労働問題が取上げられて研究されておりますけれども、こうした問題が放つて置かれておるというようなことは、勿論工場や会社などと違いまして、看護婦の仕事は物を相手じやございません、人を相手でございます。殊にむつかしい病人相手でございますので、單に労働問題で片付けられないのでございますけれども、労働省におかれましてもこの問題は一つうんと研究して頂きたいのでございます。現在十万以上の看護婦が足りないのでございます。どういうようにしてこれを補つて行くかということ、勿論厚生省の方へ十分にお話して督励して頂くようにいたしますけれども、一つ大きく取上げて頂きたいと存じます。
  109. 寺本廣作

    政府委員(寺本広作君) 御指摘の通り、看護婦の労働は非常に過激な労働であるのであります。従いましてこの看護婦の労働を無制限労働に放つておるということは適当な措置ではない。こういうように考えられますので、現在の法制の下ではやはり看護婦の労働時間その他を制限して、これに法律的な保護を與えることが適当であると考えまして、現在労働時間の制限その他の措置を取つておりますが、ただ御指摘通り看護婦の仕事は相手が人間でありまして、いつその仕事を受けるか分らんというその間の労働相当に多い。従いまして看護婦については労働時間の制限を適用すべきでないという有力な意見もあるのであります。又看護婦の資格要件につきましては、現在の衞生行政の立場から、従来のように資格要件を緩慢にして置くことなく、これの教養については相当の高い水準を要求するというようなことになつておりまして、相当養成に年月がかかるので、そういう意味から看護婦の労働時間を制限すれば、ますます看護婦の数が少くなるという関係で、痛しかゆしの立場に置かれておるのであります。従いましてこの看護婦の労働立法につきましては婦人問題審議会厚生省医務当局双方の意見を承わりまして現在のところでは九時間労働ということになつておるのでございます。将来看護婦の養成が段々進みますに従いまして、その労働時間その他につきましても、他の一般労働者を均衡をとつて行かなければならんと考えておりますが、問題は御指摘の通りなかなか重大な問題でありますので、今後共婦人問題審議会その他の意見を承わりまして研究を続け、改善を続けて行きたいと考えております。
  110. 黒川武雄

    ○委員長(黒川武雄君) それでは今日はこれを以て散会いたします。    午後四時十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     黒川 武雄君    理事            内村 清次君            高橋  啓君            高橋龍太郎君            田村 文吉君            堀越 儀郎君            岩間 正男君            岩男 仁藏君    委員            岡田 宗司君            栗山 良夫君            和田 博雄君            岡田喜久治君            城  義臣君            深水 六郎君            中川 幸平君            西川 昌夫君            西川甚五郎君            岩木 哲夫君            小杉 繁安君            仲子  隆君            油井賢太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            藤野 繁雄君            松村眞一郎君            池田 恒雄君            小川 友三君   国務大臣    通商産業大臣  稻垣平太郎君    労 働 大 臣 鈴木 正文君   政府委員    労働事務官    (労政局長)  賀來才二郎君    労働基準監督官    (労働基準局    長)      寺本 広作君    労働事務官    (職業安定局    長)      齋藤 邦吉君   説明員    労働事務官    (労働統計調査    部長)     金子 美雄君