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1949-11-22 第6回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十二日(火曜 日)    午後三時三十七分開会   —————————————   委員の異動 十一月二十一日(月曜日)委員小畑哲 夫君辞任につき、その補欠として、安 達良助君を議長において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十四年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣送付) ○昭和二十四年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣送付) ○昭和二十四年度政府関係機関予算補  正(機第一号)(内閣送付)   —————————————
  2. 黒川武雄

    委員長(黒川武雄君) これより委員会を開会いたします。  建設大臣に対する御質問小川委員にお願いいたします。
  3. 小川友三

    小川友三君 建設大臣にお伺い申上げますが、治水治山事業の中で、八十五億の予算補正予算に見込まれておりますが、その中で利根川治水事業にどのくらい見積られておりますか。大体七億円程度関東地方利根川治水関係の方は要求していることと思うのでありますが、建設大臣はどのくらいをもつておられますか、先ず第一番にそれをお伺い申上げます。  その次もう一つは、隅田川上流であるところの荒川治水費でございますが、この問題は建設大臣は御承知と思いますが、荒川は、東京都の数百万市民の水害を防止するために、荒川には二十三本の、横から入つておる横堤防、横堤と申しますものでございまして、水の流れを四分の一に、その横堤防によつて防止しましてそうして、埼玉県は毎年水害に見舞われても東京水害を見舞われない、いわゆる埼玉県民損害の負担において東京都民水害を防止しておるという、世界河川でたつた一つしかないところの横堤防のある荒川でございますが、この堤防が不完備のために非常な迷惑を埼玉県民は毎年いたしております。昨年も三十数名の水で死んだ犠牲者を出し、又幾千万円の損害を出しておるのでありまして、この問題につきまして、堤防改修費としまして約二億円を治水関係のものは要求いたしております。利根川両方におきまして、合計補正予算において十億円程度費用がないと水害は防止できないのでありますが、特に建設大臣におかれましては、八十五億の補正予算水害関係事業の中からその十億を荒川と、利根川改修費に出して頂きたいのでありますが、その両方について大臣の是非出して頂く御所見を拝聽いたしたいと思います。
  4. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 今回の御審議を願つておりまする八十五億であります。これは本年の春以来の災害復旧費であります。うち建設省といたしましては河川関係として、五十億見積つております。その他公安関係とか、或いは砂防関係とか、或いは都市災害復旧とか、直轄道路関係、それぞれありまするので、只今質問のような河川に対しては五十億でございます。そうしてこれは今回の災害復旧費助成費でございます。従いまして只今の御質問のように、利根川費用、若しくは荒川費用、これは主としてお尋ね防災の趣旨と承つておりますが、それは河川改修費として明年度予算に要求いたしておるのでありまして、その中には包含いたしておりません。本回の本年の災害は両河川とも、荒川利根川災害は大体各々二億足らずの申請額かと記憶いたしております。従いまして只今の御質問のように、それぞれ防災意味で今回の八十五億から出すかどうかというお尋ねでありますが、これは今回の予算には包含いたしておりません。明年度予算相当額のものを治水費として、或いは言い換えますと、災害防除費として要求いたしますが、併しながらまだ最終的の決定はいたしておりません。従つて利根川に幾らということも未だ決定いたしておりません。
  5. 小川友三

    小川友三君 建設大臣におかれましては、利根川荒川は今度のキテイ颱風水害によるところの改修費として大体二億万円見ておられますが、二億万円あればこのキテイ颱風損害は十分とは申しませんが、八割くらいはできると思いますので、満腔の敬意を表しまして、是非出して頂きたいということをお願いする次第であります。  この災害復旧費というものが先程申上げました十億万円前後でありまして、利根川は御承知通り昭和二十二年九月十五日の大水害によりまして、二百二十ケ所の亀裂箇所が、現在そのままに放置されておるのでありまして、この十億近い復旧費というものは災害復旧費でございますので、どうかこの二百二十ケ所の堤防が削られておるということでございまして、これに対しましては、特に関東一部七県の重要な地帯を流れるところの阪東太郎でありますので、特にこの点と荒川の問題につきましては、特に世界東京、世 界の三大都市の一つ東京の数百万同胞の生命を埼玉県二百万県民犠牲において、荒川のいわゆる貯水地帯的な横堤防二十三本を以て、いつも危險にさらされておるのでございますからして、特にこの辺に重きを置かれまして、日本十大河川と同様に荒川を加えて頂きましてそうして治山水事業予算を賜わりたいのでありまして、特に建設大臣におかれましては、荒川を御視察賜つたと思つておりますが、ああした横堤防が二十三本もあるというような所でございまして、東京水害防止犠牲になつておるという埼玉県民は、この横堤防を取拂つてしまうという。そうして東京は水に呑まれても埼玉県は水に呑まれないようにしたいという県民の叫びが非常に大きいのでありまして、それでは政治といわれませんから、どうか横堤防を以て水を溜められるというような大きな犠牲を拂つておる埼玉県民も、やはり建設大臣所管日本人でございますから、どうか埼玉県民第三国人扱いをなさらないで、そうして水害対策に対しましては万全の策を立てて頂きたいと、こう思うのであります。この昭和二十二年度の災害復旧費用は、利根川はまだ六億万円出ておりません。政府は出すと言つて出さないわけですから、不渡なつておるわけですが、この六億万円をぜひ出して頂きたいのですが、それにつきまして御所見をお伺い申上げます。
  6. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 只今の御質問、主として直轄河川のことと存じます。荒川利根川直轄部分昭和二十二年度、二十三年度、及び本年は大体三十億近い損害があります。総計三年度通じて六十八億程度復旧費を要するのでございます。従つてこれに対しましては明年度におきましては、二十二年度の災害は全部復旧いたす計画でございます。又二十三年度は約六割以上の復旧をいたしたいと思います。そうして本年の二十四年度の災害につきましても、来年は災害復旧費を大幅に増額いたしまして、速かに災害復旧に努めたいと存じております。  その外只今仰せのごとく二百数十ケ所とおつしやいましたが、これには御承知通り上流において、都道府県が負担すべき災害復旧がございます。これはそれぞれ助成金をやはり相当に来年度は増額いたしまして、速かに来年の出水期に備えたいと存じておるのであります。尚荒川横堤防お話でございますが、これは従来からいろいろの問題がありますので、河幅を拡げて治水をいたして参りたいという考えを持つております。
  7. 小川友三

    小川友三君 大分具体的な御説明を賜わりまして有難うございます。そこで今度の補正予算の中から都道府県に渡すところのいわゆる治山治水費助成金はどのくらい見てございますか、それを一つと、荒川を十大河川並取扱つて頂きたいのでございますが、それに対するお答えがございませんでしたが、荒川をぜひ十大河川並にお取扱い願いたい。これに対する御所見をお願い申上げます。
  8. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 河川災害は今回の補正予算で五十億を御審議願つております。その中に五億三千万円か、五億と記憶いたしておりますが、これは直轄河川災害復旧であります。その他四十五億に近いもの、四十四億何がしと思いますが、これは地方助成金があります。災害助成金であります。これではもとより十分とは申上げることができませんが、明年度相当予算を増加いたしまして、そうして只今申しました通り出水期までに備えたいという所存でございます。
  9. 小川友三

    小川友三君 荒川を十大河川並取扱つて頂きたいのでございますが、それに対する御所見一つ承わりたいのであります。
  10. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 荒川直轄河川でありますが、いわゆる十大河川の中には加わつておりません。おりませんが、只今質問のようにこれは埼玉県、或いは東京都と非常に重大な関係のある河川でありまするので、等閑にはいたしておりません。重要な直轄河川一つとして取扱つております。
  11. 岩崎正三郎

    岩崎正三郎君 今小川委員質問に関連してでありますが、利根川の問題、誠に重大な問題でありまして、河川改修審議会ですが、利根川改修の二十ケ年計画というものが立つておるそうでありますが、これは二十ケ年を超えては誠に困ることなんで、早く、少くとも十ケ年ぐらいでやつてくれというのが地元民の要求であります。勿論現大臣も御承知と思うのでありますが、この補正予算の五十億……勿論四百億がこれに関連した骨子をなすものだと私は思つておりますが……その五十億の中にその予算は入つていないんだろうと思いますけれども、四百億の中に、来年度の予算には、当然これは一万七千立米の総合改修計画費用を入れて貰いたい、むしろ入つておるのでなかろうかと、私は存ずるのでありますが、一体どのくらい入つておるのですか、まあ十ケ年にやると、五十億は貰いたいということですが、一体どのくらいのお見込なのか、この点お伺いしたい。
  12. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 利根川を初めてといたしまして、十大河川に関する根本的治水計画は、計画といたしまして作つたのであります。そうしてすでに計画の線に副うて改修をいたしております。明年度におきましては、相当計画の進捗を期待し得るものと考えておるのであります。おるのでありまするが、最終的の決定になつておりません。利根川に果して明年度どれくらいの予算を投ずることができるかということは、まだ明確にはなつておりません。併しながら今日までの状況では、いわゆる治水費方面においては、相当国家の財政の上から見て、期待し得るものと思つております。
  13. 岩崎正三郎

    岩崎正三郎君 建設大臣商工大臣通産大臣もいるので、関連して御質問申上げたいのですが、それは最近新聞に載つております只見川発電の問題でございますが、あの只見川に関連して、御承知のように新潟案福島案日発案、さような案が非常に混線しておる、地元民はとにかく早く妥協して決定してくれれば、それが国家のためになるならば、かれこう争うことはないんだということは、明言しておるのであります。それで一つにはこの只見川新潟の方に落す場合には、一つ河水統制の問題が起きると思うんです。かような場合に、建設大臣はこの河水統制、いわゆる流域変更の問題でございますが、こういう問題に一つどういう御所見を持つておるか。  それから、関連しまして、通産大臣がおりますから伺いたいことは、今アメリカからいろいろな人が来てこれを見ておる、何かこの商工省関係で、この二月かに、新潟福島案を取上げて、一応の断案を下したと聞いておりますが、その後通産省としてどんなふうな進展を見ておるかということお伺いしたいのであります。
  14. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 建設省といたしましては、近年御承知通り災害が頻発いたして、非常に国民が迷惑いたしておるのであります。これは主として申すまでもなく、災害根本治山治水にあると思つております。従つて治水の面から利水の方面も十分に総合的に考えなければならんのであります。例えば、発電用のダムを造ると仮定いたしまして、それが造つた結果、運営その他について治水の面に如何なる影響があるかということを、十分に考えなければならないのであります。そういう意味合から、建設省といたして、水を利用する、発電計画を実行するという際において、相当治水の面から関心を以て、そうして又治水の面からこれに処して行かなければならんと考えております。只今指摘只見川のことにつきましては、いろいろ福島県或いは新潟県におのおのの計画があるということは承知いたしておりまするが、まだ私の方は詳細の計画等承知いたしておりません、これが具体的に計画ができ上つて、私の方の認可という場合においては、十分に関係者とも協議をいたして、治水の面から十分に考究いたして見たいと考えております。
  15. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) 只見川の問題についてお答えします。これは新潟案或いは福島案、いろいろあるわけでありますが、まだ通産省といたしましては、いずれにどの計画をということは、決定いたしておりません。そこでこの只見川の問題でありますが、御承知のようにこれが計画を遂行すると、これは百七十万キロワツトの出力があります、従つてこれが建設されるということは、或る意味において渇水期における電力の調整を行い得る、言い換えればこれを常時化するという利益がありまするので、至急に着手することが必要であるとは思いまするが、何分にもこれが建設費用といたしましては、少くとも一千億円以上の金がかかる、ことにこれの送配電線というような問題になりますると、尚その以上にもう一千億以上の金がかかる、こういう問題であります。只今日本現状といたしましては、なかなかこれが着手に困難な資金の面があると存ずるのであります。のみならずこれが建設を最終的に行うというためには、少くとも日本の現在の築堤技術におきましては、十五ケ年ぐらい要するんじやなかろうかというようなことも想定されているのであります。そこまでまあ御承知新聞なんかで伝えられておりました外資関係から、向こう技術者が来て、先般調査をいたしたのであります。まあその調査の結果につきましては、まだ報告は得ておりませんが、数日中に私の手許に報告が参ることに相成つております。但し私が聞きましたところによりますというと、この只見川工事をやるということは、いわゆる電力の面からして十分の価値がある、併しながら本式にこれにとりかかる。例えば外資を導入するという面から考えた場合には、尚調査に時日を藉して貰わなければならんというような意見のように承知いたしておるのであります。それと、もう一つ考えられることは、我々は大体工事費に一千億円かかるであろうというような考え方日本では考えておるのでありますが、大体最近の非常に進みましたアメリカのこういつた工事の計算から申しまするというと、大体それの約まあ七割程度済むんじやないかというようなこともいわれております。そういう意味において、外資によつてこれを実行するということは、十分我々は検討もし、又考えなければならん問題だと存じまするけれども、只今ではまだ今いつたような情勢でありまして、向こうも一応これが検討をする問題であるという程度でありまして、本当調査という段階には至つていないのであります。従つて通産省としては、元の問題に帰りまして、新潟に落すか、福島に落すかという結論には達していないということを申上げます。
  16. 岩崎正三郎

    岩崎正三郎君 そうすると結論アメリカの技師が出すのを通産省が待つているということですね。
  17. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) いや必ずしもそうではございませんが、これも一つの参考として、この研究の結果を待ちたいと存じております。
  18. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 通産大臣お尋ねいたしたいのですが、先ず今度の予算について織物消費税撤廃ということが一月一日から出されることになつております。併しながらこれはシヤウプ勧告によりますと九月一日に遡つて行うべきであるということを言われております。それにも拘わらず政府は、これは私は全く政府の怠慢であると思うのですが、漸く一月一日から撤廃するということに発表になつたわけなんですが、その期間四ケ月というものは業者は殆んど滯貨が殖えまして、その処理にも困つて金融の面にも、亦販売の面におきましても、非常な困難を来しているというのが現状であります。これについて通産大臣といたしまして、日本繊維産業界発達は勿論常々お図りになつておられますが、こういうことによつて繊維商業界発達を阻害するというようなことが起れば、一大事であると思うんですが、これについて十二月一日に少くとも遡つてこの撤廃或いは減税ということをお図りになる御意想があるかどうか、お聞かせを願いたいと思います。
  19. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) この問題は大蔵大臣がお答えすべき問題のようにも思いまするが、ただ実際問題といたしまして、九月に遡つての何といいますか全廃ということは、実際に技術的にやりにくいのじやないか、私はさように考えております。尚十二月から実施できないか、こういうお話でありますが、この業者方達の御意見に従いまするというと、徴税の面からして十一月中、例えば会期が今月一ぱいと仮定いたしまして、ぎりぎりに済んで十二月一日ということは手続上にもできないのだという業者の方の御意見を我々は拜承いたしております。それからして成る程小売業者或いは御問屋の方は手持がある、これがまあ撤廃されるということで、動かないので困るのだ、こういう今のお話であります。御尤もなことでありますが、ところが面白いので、生産業者の方は遡つてでもできるだけ早くこれを全廃して貰いたという御意見がありますというと、片方において我々の方には、手持を持つている方は、一日も長く全廃の時期を延ばして貰いたい、こういう陳情が参つているのであります。そこで通産大臣といたしましては、いずれをも誠に御尤もなりと、実はこう考えているようなわけでありまして、まあこの間には実際に無理のない形において一月一日から、そうして外の税と同じようにスタートする、物品税なんかと同じようにスタートする、こういうことで大蔵省の査定いたしました方法に我々は同意を表している次第であります。
  20. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 只今大臣お話によりますと、十二月一日からは技術的にも何か業者税金を下げて貰つては困るんだというお話でしたが、これはもう今日でも下れば、今日納める織物に対しまして安い税金をかけるということは当然でき得ることでありまして、この点は何か大臣のお考え違いじやないかと思われるのです。それから又手持品に対しまして、成る程手持品の課税された部分が四割というような高いものでありますれば、これは業者といたしまして、若し戻し税というようなものがなければ、成るべく高い手持品を処理した後で税金が下つた方がよいでしようが、通産大臣立場からいたしまして、ストツクに対しまして高い税金を拂われている、而もそれは消費者が当然負担すべき税金であるにも拘わらず、業者がそれを立替えて拂つた、こういうものに対しましては、四割から一割になるとか、或いは四割から零になるというような場合には、政府として当然拂戻しするのが常道ではないかと思われるのであります。それはこの前一割五分から四割に値上りした際には反対に差額を徴収したのですから、そういう点から見まして、通産大臣のお立場からいつて拂戻しをしてやるというようなお考えはございませんでしようか。
  21. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) お答えいたしますが、我々は拂戻すというようなことは考えておりません。但し問屋さんなり或いは手持されている小売業者がこれだけの税金を金つている、こういう点は十分我々認めるのであります。そういう意味におきまして価格差益金との相殺といいますか、そういう問題については十分考慮したいと、こう考えているのであります。
  22. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 この問題は大蔵大臣に尚お聽きしたいと思いますから一応打切りにいたします。  その次に貿易の面でありますが、通産大臣は先刻の国会の演説中においては、貿易ポンド切下げがあつて影響がないようなお話を再三なさつておりますが、実際の数字によつて現われたるところを見ますと、十月には相当輸出が減つております。又十一月の回復度も、大臣お話によりますと、相当回復していると言いますが、元通りにはなつておらないと思うのでありますが、大臣といたしまして、やはりこのままで以て差支えないものですか、或いは十二月、一月になれば、本当輸出が、増進する見通しがおありですか。それをお聽きいたします。
  23. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) この問題は実はどなたかの御質問、波多野さんの御質問か、どなたかの御質問のときにお答え申上げたのでありますが、今御指摘の十月はポンド・ブロツクに対しまして……ドル地域に対しましては貿易が殖えたのでありますが、ポンド・ブロツクに対しましては非常に下りました。一時は前月に比べて四%ぐらいの足取りになつたのであります。その理由は二つありまして、一つ日英通商協定がストツプされている。日英通商協定がストツプしたということは、実際上取引がないことでありまして、これが一つの点、もう一つは円の切下げがあるだろうという予想の下に取引を手控えておつた、こういう二つの点が輸出不振の原因になつたと思うのであります。そこで大体円の切下げがあるだろうという予想は、これは本当予想であつて、これは実現されないという考え方が行き渡つたせいで、十一月に入つてポンド・ブロツクに対する貿易の率が殖えて来た。日英通商の最後的な決定は、今日四時に向うで両方の代表がサインすることになつておりますので、いずれ今日午後新聞発表されることと存じているのでありますが、それが発表されますればもう一つの障碍も除かれるわけです。我々の方は実際の貿易の週間的な集計をいたしておりますが、その集計によりますと、ポンド・ブロツクについては殆んど前と同じような率に回復している、こういう状態であるということをこの前申上げたのであります。全体としての率は、月にすれば恐らく三千万ドルぐらいになるのじやないかと思います。前月の三千五百万ドルからすれば下廻つておりますけれども、少くとも三千万ドルぐらいになると思います。日英通商協定が決まれば、我々は必ず今までの平均である三千五百万ドルから四千万ドルの線へは来るものだ、かように考えているのであります。実際に私はどうも影響があると考えていないのであります。個々の品物について仮に考えましても、繊維について考えましても、実は実際にフロアプライスを廃止した。フロアプライスがあるときでも、油井さんは玄人で御承知通りで、実際は、二割或いは三割のリベイトを出しておる、これが実情であります。これを出さなければ……全然こんな無駄なものを出さなければ、実際には商売が楽に行われるわけであります。又機械類につきましても、実際には同じような事柄が言えると私は思うのであります。これは單にフロアプライスを外したというだけで、今問題が英国においてフロアプライスを廃止したということについて、いろいろな論議が行われているということは、私はとりもなおさず、その点をよく証明していると私は考えておるのであります。それのみならず、実際にポンドエーリア、スターリング・エーリアの価格というものは、我々が得たところの調査によりますというと相当つておる。これはポンド切下げの結果、当然これは上るのが当り前でありますが、これはこの前申上げたように、一〇%なり、或いは一五%なり上つておる。差額は非常に僅かなところに持つて来て入つて来る物は安い物が日英協定によつてつて来る。品物相当安い物が、それだけ下つただけ安い物が入つて来る。こういうことが期待されるのでありまして、それに持つて来て、我々が構想いたしておりますようないろいろな條件についての緩和を得られまするならば、殊に、丁度こういうポンド切下げがあつた、而も円は切下げない、こういう機会にこそ我々はCIF建てにして貰いたいとか、或いはできるだけ多角協定一つ実行して貰いたい、別ないろいろな我我が平生考えておつた條件を推し進めるのにもいい機会だと私は考えておるのでありますので、私は円の切下げをやらないでも十分我々の目的通り数字が出て来るものだとかように考えておる次第であります。
  24. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 大臣に今のレート関係で、もう一つお伺いしたいのですが、三百六十円に決めた当時のアメリカと、日本の物価の水準と、それから今日の状況におけるアメリカの物価は相当値下りしているといいますか、そういうふうな状況と比べまして、実際日本で円とドルの、いわゆるドルの闇相場と申しますか、それの建値が大分変つているというのは、これは事実になつておりますが、例えばあの当時は三百六十円と大差がない程度でもつて、ドルが交換されたのが、今日は五百円乃至六百円位にも換算されているということになつております。そういう点から比べましても、日本の円の信用維持というようなお話もありますけれども、外のポンドの方も値下げした以上は別に信用維持でなくて、同調するということになるわけでありますが、それまでしても円の値をどうしても三百六十円に釘付しておかなくてはならないかどうかということは、どうも国民がよくはつきりとまだ観念を得ていないのですが、この点について大臣の御所見を伺いたい。
  25. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) その問題でありますが、その問題にもこの前返答のときにちよつと触れたと存ずるのでありますが、仮りに円の切下げをした、そういたしまするというと、自然入つて来るところの品物は、高い物を入れるということになります。従つて我々が折角インフレを終熄さした、足踏さしたと、こういつたものが、或いは入つて来ますところの食糧にいたしましても、或いはその他の物にいたしましても相当高い物を買わなければならん、それだけに、結局インフレを折角足踏したものを又昂進さす、こういうようなことに私はなることを怖れるのであります。それで、これは折角日本の経済が建直りをしておる、自立の域に進んでおる、こういうときに又後戻りをさすということは、決して我々の採るべき政策でないと、かように考えております。
  26. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 次に最近商品の在庫の程度を見ますというと、各商店共、相当手持が殖えております。街を通つてみても、非常に豊富に見受けられるようになつたのでありますが、而も品物が豊富になつておるのに拘わらず、一方生産業界の方は、最近企業の整備とか、或いは縮小というようなことになつていい、大分切詰めた事業をやつておるようになつております。この点が大変我々から見て矛盾を来しておるように思うのでありますが、この状態を続けて行てつも日本の産業界は構わないものでありますかどうか、それともいわゆる縮小再生産というような現在の形を打破しなければならないのでありましようか。大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  27. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) その点につきまして私はまあ非常な縮小だという前提でのお話になるように思うのでありますが、併しながら指数の示すところによりますというと、そんな非常な縮小には私はなつていないと考えるのであります。私結局はいわゆる企業の整備がいろいろ行われておる。その企業の整備が行われておるところの過程において丁度それが縮小の感を与える。或いは一部的には或る業種によつて縮小もありましよう。例えば專ら政府の註文に、需要にのみよつてつたところの通信工業、こういつたようなものは縮小せざるを得ない。全然需要がありませんから、そういつたような面はあります。だから業種によつておのおの違いまするけれども、全般的に見まして、私は工業生産というものがレベルが下つたのだ、こういうようには私は考えないのであります。と同時にこの企業整備をやつておるところの、外に現われておるところの様相が、これが恰も縮小再生産に向うがごとき形を私は与えるのじやないかと、かように考えるのであります。で、私はその点については必らずしも油井さんと意見を同じにすることができないのを遺憾に存じまするが、私はさように考えております。又同時に私はこの企業の合理化の問題については、又はつと問題を皆さんお待ちと存ずるのでありますけれども、併しどうしてもこの際、企業の合理化というものが強く行われませんと、日本本当の経済の自立、或いは日本の産業というものの本当の確立はできないものだと私はかように考えております。
  28. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 商品は相当豊富になつて、いわゆる過剰生産気味で実際あるのでありますが、一般商業界におきまして、購買力と、いわゆる生産力とがマツチしていないために、こういう現象ができておるのだというように現在では考えられておるようですが、これに伴いまして、もつと購買力を増して、実際国民といたしましては、今物資があり余つて豊富であるというような感じは持つてないのです。結局購買力が不足しておるから欲しいものも買えない。そこで商品も溜つて行くというような形になつておるのですが、一応これを打開するために購買力の増進策を大臣としてお考になつておられるかどうか。
  29. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) この問題は、非常に誰しも購買力の増進ということについて考えざるを得ないと思うのであります。今結局品物が余つておる。購買力がないのだ、こういうことについては私は認めます。その通りだと存じます。これは一つの過程として私はそういう事態が起つておるものだということを認めなければならんと私は思うのであります。これを打開するという余は、やはりどうしても一方においては、輸出の増進が期待されなければなりません。それから又一方におきましては、企業の整備と言いますか、企業の合理化と同時に、今度は本当日本産業におけるところの、何といいますか、拡充といいますか、産業の……拡充ということはいけないかも知れませんが、日本産業に対するとことの国内需要を起さす、こういうことが両方の面が必要になつて来ると存ずるのであります。併しながら結局は私は輸出産業のためにウエートを置くということが、結局同時に国内産業というものの基礎をも確立する、或いは国内産業のあり方、このあり方をおのずから決めて行く、かように考えておるのであります。この際は、我々はやはり日本の経済確立のために、輸出というものについて特段の力を盡す、こういうことを考えなければならんと存じております。
  30. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 只今お話中の輸出産業に力をお入れになるのは甚だ結構ですけれども、例えば綿布の放出が一億七千万ヤール出すとか、その外、そういつたような放出物資が相当出て参ります、これについてもまあ今までの輸出産業に対する日本政府の指導方針が少し間違つてはいなかつたかと思われるのですが、この点については聊かも矛盾も何もないというようにお考になつておられますか。
  31. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) 輸出の滞貨があつたという問題については、これはもういろいろなこのいわゆる管理貿易下におきまして、或いは先方のマーケツトについて知識がなかつたという問題もありましよう、或いは又規格が外れておつたという問題も私はあると思うのであります。或いは見込生産において、その見込が違つてつた、こういう点も私はあると思うのであります。それでありまするから、この際溜つたところのストック、将来再輸出に振向けられないところのものについては、できるだけこの際衣料の国内におけるところの窮乏を緩和する意味におきまして国内放出を頼むということで、我々は関係筋との話合で国内放出を頼んでおるようなわけであります。輸入されるところの綿布はおのずから国内向けの分量は決つておりますので、この滞貨を国内放出するということによつて衣料を潤沢にする、こういうことができるように考えております。
  32. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 次に取引高税、或いは物品税織物消費税というような、いわゆる産業に関連のある税金の内容を調べますというと、二十四年度の予算を決めた政府の定初予算の額と今日までの実際徴収の額とが相当開きがあるのであります。即ち織物消費税は一六%減となつております。又物品税が一二%取引高税が九%、いずれも減少されておるのでありますが、これは結局生産がそれだけ減つておるというふうな証左にもなると思うのですが、このままで行くというと日本の産業がこういう面から見ても何か萎靡沈滞しておるように見受られるのでありますが、先程の話に戻りますけれども、こんな調子で以て日本の産業が継続して行かれるかどうかということの大臣の御信念をお聽かせ願いたいと思います。
  33. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) これはまあ私はそのもう一つ根本的に言いますというと、当時参りましたバイヤーその他に対するところの業者考え方に非常な錯誤があつたということも私は考えなければならん、それからして又バイヤーに対するところの錯誤と言いますか、要するにバイヤーがもたらしたところの一つの需用に対するところのレポートといいますか、そういつたものに対する判断が正確でなかつたという点も私は挙げなければならんと思うのであります。それでこういう点については、これはやはり我々が今日尚盲貿易であるということの結論には私はなつて来る、かように考えておるのであります。今つまり初めの一時、あれは本年の初めでありましたか、一億ドル以上の一月には契約ができたのでありますが、その当時のつまり考え方をもとにして計画を立てたところが毀れて行つた、こういうことで私はあろうと存ずるのであります。でそういう点については今後リテイン、システムなり、或いは近く許されるところの商務官の設置なり、そういつた面からおのずからその点は是正されて行く、かように考えております。
  34. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 次に資金の面でありますが、大臣の国会におけるところのいろいろのお話によりますと、資金は別に年末になつても心配ないようなお話をなさつておられます。又大蔵大臣なども殆んど手離しの楽観説をやられておるのでありますが、実際は各業界とも資金難で苦んでおるというのが現状であります。これに対しましてもう少し大臣として丁寧な、いわゆるその大臣の所管から申しまして、業界のために一ふんばりして頂きたいというのが業者本当の心でありますが、何らかの対策をお持ち合せであつたら御発表願いたいと思います。
  35. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) この問題につきましては、無論年末資金の手当、こういう問題につきましては業者において非常に苦心されておる、この点私自身産業人としてよく承知いたしておりまするし、又自分らも度々年末には苦心した経験を持つておりますので、この点は痛い程自分の頭に入つております。従つてこの点につきましては、この日銀のポリシイボードその他に対して十分に我々の考え方を申上げてあり、尚我々の方の企業を通じまして、それぞれの業界の方の御相談に与りながら融資の斡旋にはできるだけの努力をいたす、かような考えでやつております。
  36. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 通産大臣に御質問いたしたいのですが、その前に只今日英協定のことについてお話しでございましたが、お差支なければ大体そのトータルがどのくらいになつているか、協定額ですね、お差支なかつたらその内容をちよつと伺いたい。
  37. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) 木村さんのお話ですが、実は私、今その書類を持つて来ておりませんのと、先程実は聞いたばかりでございまして、内容を今ここに持つて……お知らせすることはちつとも構わないと思いますが、あとで取寄せましてお答えいたします。
  38. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは一ドル三百六十円の円・ドル交換比率の制度は変えない、こういうふうに声明されましたが、これをどうして維持して行くか、この問題について御質問したいのですが、結局どの程度に企業の合理化ができるか、ここに問題があると思うのです。そこで企業の合理化について問題になるのはその程度と方法だと思うのです。そこでこの二つについてお伺いしたいのですが、この合理化の程度、即ち生産費の切下げ、必ずしも合理化は生産費の切下げだけじやない、品質の改良その他あると思いますが、問題の生産費の切下げについて見ますと、單にポンドを三割切下げた、そうして大臣のおつしやる通りその結果イギリスでは輸入物価が一割五分も上つておる。そこで結局まあ日本に対する影響は一割五分程度になる。この程度に私はポンド切下げ影響考えるべきでないと、生産費切下げという場合、更に補給金の削減による合理化もありましようし、それから資産再評価による物価の値上り、これに対して又切下げをやらなければならないと思います。更に又海外物価の低落、主としてアメリカの物価あたりの低落、これに対しても切下げをやらなければならん。そうしますと輸出貿易に関して考えますと、單にポンド切下げ影響で、その分だけを生産費切下げをやつたらいい、それで輸出ができるというわけに私は参らないと思います。そこで大臣がこの企業合理化の現状を、まあ日本において中小産業その他大企業こういうところで何割程度の企業合理化が可能であるというふうにお考えでございましようか。どの程度に……
  39. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) 私は企業の合理化という問題について、今の木村さんのお話になつた向うの物価の値上りとの差額、例えば一五%、それだけでいいという考え方を私は申したつもりはないのであります。私は企業の合理化というものはこのポンド切下げとかなんとかに無関係に、日本としてはやらなければならん問題だ、かように考えております。そこで企業の合理化という問題はこの仕事の種類、業種によつて、でき得る範囲が非常に異ると存じます。例えば機械設備を沢山持つておりまするところの面におきましては、私は企業の合理化が非常に余計できるのだ、かように考えております。  話をかえまして戰前のいわゆるコストの構成を考えてみまする場合において、又戰前のコストの構成を現在のコストの構成と比較して見て、或いは現在の日本のコストの構成と、それからしてアメリカ一つの業種のコストの構成を考えてみて、或いはアメリカの戰前のコストの構成と、現在のコストの構成を考えて見る。こういつたような研究すべき要素が沢山あると私は思うのです。私は業種々々によつておのおの決まると存じまするので、これは例えば一つの例を考えて見まする場合に、これは一つの例でありますが、例えばグツドリツチ・ラバー・カンパニーの戰前の一つのコストの構成を先ず考えて見ると仮りにいたします。そういたしまするというと、例えば原材料費が三〇%である、或いは労務費が三〇%である、その他の管理といいますか、そういつたものが仮りに三〇%とする。これが戰前であつたと仮りに仮定しまして、そうして今日どうなつているか、例えば賃金だけで申しまするというと、大体戰前と戰後とは、具体的な数字を比較したのを見たのですが、五〇%上つておる。従つてそれでは労賃の割合が三〇%に対して五〇%だから、四割五分を占めなければならない。こういうことになつて参りますかというと、そうではなく、依然として三割乃至二割七八分になつておる。こういう現実を見るのであります。それからして原材料費が大体六割上つておる。然らば六割上つた率になつているかというと、これは又不思議なことには二割六分に下つておるのであります。それはどういうことかと言いますと、要するに技術的な非常な工夫によりまして、原材料を少く使つて、そうして同じだけの例えば走るところのタイヤの効率を上げて耐久力を強くして行く。技術的な問題ばかりでなく、或いは機械のエキユイプメント、インストルメントを改善しておるために、非常に個人のウエージスは上つたが、全体の労務費としてはむしろ下つておるという現象が起つておると思うのであります。現に例えば仮りにグツドリツチで一つのゴムを練る機械を持つている。従来これに十五人かかつたが、今は一人、ボタン一つでやれる。その割合は十五分の一でやれる。その部分に関する限りにおいては、非常なるところの技術的な改良がされておるが、或いはエキユイプメント、或いはインストルメントに対しての非常な変化が起つておる。こういうことでありまして、前の構成と後の構成というものは大体同じ構成でやつて、それで一つの企業になつておる。こういうことが言えると思う。それを日本と比べて見ると、日本で向うの構成の上に持つて行くためには、この機械の点と技術の点、これを変えて行かなければならん。むしろ労金を上げても、一人のウエージスを上げても、全体のインストルメントを変えれば、総額の労務費は減るのだ、こういうことになると思うのであります。そういう場合にそのいわゆる企業というものは、二割引け或いは三割も引けると思うのであります。従つてこれは各業種によつてそれぞれ検討して行くべきものと、かように考えるのであります。そこで私の考え方におきましては、各業種にわたつて一つできるだけの検討をして、先ずこのコストの構成はかくあるべし、或いは一人当りの生産量というものはかくあるべしというような基準を作つて行く。そこでおのずから変つて来ると思うのであります。そこでどうしても機械のいわゆるあなたのおつしやるような十五%以上の、その他のいろいろな考慮を入れた差額というものをカバーできないところの企業は、日本では成り立たない。例えばいろいろの機械的な設備やいろいろな整備をやつて見ても、これは日本では成り立ち得ない産業であると思うのであります。成り立ち得る産業は私はそういう形で持つて行ける。これを一々検討するのがこれからの通産行政で一番重要な点である、かように考えるのであります。
  40. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今お話でよく分つたのですが、そうしますと企業合理化の限界というものは、成立たないものは潰れてもいい、こういうお話になるわけですね。それでは合理化の方法と関連して御質問いたしまするが、政府のお考えは、結局只今お話によつても分る通りに、経済の合理性、それから採算に合わないものはまあこれは整理されても仕方がない。結局プライシング・フアンクシヨン、価格の作用によつて、有効需要のないもの、買えないもの、そういう製品を作つているものは整理されて行く、こういうことになると思うのです。そこで日本の産業を一体どういうところへ持つて行くか、その目標をどういうふうにお考えですか。例えば補給金を削減する。そして昭和二十六年度には鉄鋼も削減してします、ソーダも削減してしまう。そうすると日本では外国商品、外国の鉄鋼、ソーダと競争できるまで日本の鉄鋼、ソーダのコストが下がらないとした場合、それは鉄鋼業は日本では必要ない、ソーダ工業も必要ない、みんな外国から買う、こういうような産業構成をやはりお考えになつておるのですか。
  41. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) 原則論としてはさようでございます。但しこれは原則論としてはそうなければならんと考えておりまするけれども、併しながら特殊なものについては、他の産業との関連において、或いは日本の生活物質との関連において、どうしてもこれは或る程度の助成、或いは保護を与えて残さなければならんものがあると考えております。例えば鉄鋼業を例におとりになりましたが、日本の機械工業なり或いはその他のものが東南アジア地域に行く、こういう場合に、どうしても我々自身がこの鋼材なり何なりを持つている方が非常に便利な場合がある。価格だけの問題ではなくて、すぐ間に合う鋼材の質をこうして貰いたい、鋼材の質をこのように変えて貰いたい。こういうことのためにどうしても鉄鋼業というものは日本自身なければ困る、こういう問題があるのであります。従つて私は鉄鋼業を例にとつただけでありますが、然らば鉄鋼業が合うか合わんか、今の企業合理化で、結局競争し得る産業になるかならんかという問題は別でございますが、例として仮に、そういうものが場合によつて関連産業との見合いにおいて残さなければならんものもあると思う。或いは日本の生活の必需品といいますか物資の上において、これは残して置くことが必要であるというものはあろうと思いますけれども、概念論としては、私は成立ち得ない産業は日本に残るべきではないと、かように考えております。  それから鉄鋼業の問題。鉄鋼業はそれではどうだということでありますが、私は鉄鋼業が日本の例えば原料、石炭もない、粘結炭もない、或いは鉄鉱石もない、これで一体成立つか、こういう問題があります。併しながら私はこれが平常に属した場合に、例えば開らんの粘結炭を入れ得る、或いは中国の鉄鉱石を入れ得る、或いはフイツリツピンの鉄鉱石を入れ得る、これは運賃の関係からいいましても、向うが鋼材として東亜地方へ持つて来るという運賃との比較からして、内向うの生産の量、そういつたものを考慮に入れまして、私は日本の鉄鋼業というものは十分成り立ち得るものだと、かように考えております。だから今例に引きましたのは、ただ関連産業との例として申しただけであります。現に実際問題としては、戰前にも起つた問題でありますが、銅工業であります。銅工業は、実際日本は戰前二番目でありました。ときにメキシコに凌駕されて、三番目になつたこともあります。チリーが出て来まして四番目になつたことも、或いは二番目、三番目になつたこともあります。併しアメリカとはこんな開きがあります。現に日本では戰前七万トン、多いときは八万トンから九万トンくらい生産したことがあります。併しながらどうしても毎年二万トン或いは三万トン輸入しておつたアメリカではその場合に八十万トン。日本が八万トンくらい行つておるときアメリカは八十万トンですから、日本アメリカの一割くらいにしか行つておらなかつたと思います。或いはもう少し出ておつたかも知れません。従つてコストが下つて非常に安いので、アメリカの相場がとに角世界市場の鋼の需給によつて常に作用されておる。今日十四セントのものが翌る日は二十三セントに動いて行くというようなことがあつたのであります。そういう場合日本の鋼工業は、アメリカ相場と関連して考えた場合には、成立ち得なかつたという場合がある。例えば十四セントに落ちてしまつた日本では成立たない。併し二十三セントに上つた日本の鋼工業は利潤があつて余る。こういうようなケースがあるのです。そうしますと必ずしもよその相場というものをすぐに直結して考えるわけには行かない。だから日本としてはあのときに少し高い関税率を設けておつたと思うのです。こういつたような個々のケースで考えなければならん問題で、一貫して、ただ概念的にこうだというお話なら、私は概念的にそう申上げますけれども、産業といたしましては個々の産業として十分に考えなければならんと思います。
  42. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大体通産大臣考えは分つたのでありますが、これはこれまでの日本経済の安定再建復興計画と非常に違うところであつて、重大な変化だと思うのです。それはですね、復興計画の目標というものはないわけですね。目標というものがどの程度日本の鉄工業、或いはソーダ工業、その他の産業をどの程度の水準に持つて行く、或いは雇用をですね、エンプロイメントをどの程度つて行く、或いは生産量をどの程度に持つて行くか、こういうような目標というものはなくなると思うのです。通産大臣は盲貿易はいけないということを言つておられますが、結局は盲生産、いわゆる盲貿易になるというのは、経済の合理性だけでやつて行こう、プライシング・フアンクシヨン即ち外国との競争に堪えないものは整理する。こういう構想であると、これは目標というものはないと思う。それで先程通産大臣のお言葉にあつたように、仮りに鉄工業を日本から無くしようとしても、問題は鉄工業を無くして後失業する人をどこへ持つて行くか、エンプロインメントの問題、雇用の問題とも関連して考えなければならんと思うのです。そうしますとこれは前の、これまでの安定本部で復興計画というもののプランを立てておりましたが、必ずしもあれはよいと言わないのですが、これまでの再建の目標というものを一応立てて来た。そうすると今後はこの政府の産業の政策というものは、目標というものはない。プライシング・フアンクシヨン、有効需要によつて成立つものは成立つ。成立たないものは成立たない。そうすると日本経済はどこへ行くか、どういう復興計画、どういう水準に持つて行くか、その目標を一つ伺いたいと思います。
  43. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) これは私非常に意外なことを語きますが、プライシング・フアンクシヨンで行くということと、日本の生産なり、生産面なり、或いは生活の、国民一人当りの生活の基準なり、そういつたものの問題を、どうも私はそれがただプライシング・フアンクシヨンであるということと、プライシング・フアンクシヨンでやれば、その目標がないということと私違うと思うのです。私の言うのは企業の合理化はプライシング・フアンクシヨンを基準として、考えなければならんということを申したのであつて従つて日本の経済の持つて行き方、或いは結局は国民所得の一人当りはどう、或いは一人当りの生活の基準はどの辺に置くべきかという基準を立てて行つて、合わして行くことは必要だと思う。たが私はそれを概念的に先程申上げたということを繰返して、私は力を入れて言うて置いた筈であります。そこでただ私は従来終戰後とにかく日本の産業というものが復興できなかつた。ああいつた破壞された状態にあつたときには、一つ統制的な方法で力を添えて、一つの元の遂に活かすことを我々は努めねばならなかつた。今日はそういうことをしなくてもおのずからプライシング・フアンクシヨンによつてそこへ行くのだというような私の考え方であつて、決して目標をどうしようというのではなく、やはりこの程度で、例えば今年度は五億ドルだと仮りに概算して、来年から七億ドルなら七億ドルを目標とした施策を考えて行かなければならないと考えております。而もそれは成立しない産業はいかなくても、或立つものを考えて、その目標とそれからして今のプライシング・フアンクシヨンの問題とは全然私は別問題だとかように考えております。
  44. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これまでこの予算が提出されるとき、物資需給計画とか生産計画とか、そういうものが出されたのですが、これからはそういうものはなくなるわけですか。
  45. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) これは私の方の仕事でなくて安本の仕事になるのですが、代弁をするとちよつと叱られるかも知れませんけれども、併し私は安本としても、来年度なら来年度、或いは再来年度というものに対する一応の計画というものは、私は立てているというふうに聞いております。
  46. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと非常に政策が矛盾して来るのですがね、それは有効需要を本にして生産とか案を決めて行くわけなんでしよう。最近では石炭四千二百万トンの生産計画であつたところが、有効需要がそれだけないから三千八百万トンですか、そういうふうに下げて行く、これはプランニングが先でなくて、有効需要に従つて生産を決めて行くとなると、これは計画というものがあるのはおかしいと思う。めくら生産になる有効需要によつて、今度は四千二百万トンにするには有効需要をそれだけ注ぎ込まなければならない。逆にプランニングから来ているのではなくて、これはそこに今の経済の合理性とかプライシング・フアンクシヨンによつて経済の均衡なり安定を考えて行くことは限界があるのであつて無理じやないか、その点をお伺いしているのです。
  47. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) どうも私にあなたのお考えになり方が少し合点が行かないのですが、成る程有効需要によつて生産が決まつて行くというあなたのお尋ね、私は生産が有効需要を促進するという面も忘れてはならないと思う。
  48. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 無論……
  49. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) 私はだから有効需要によつて生産が制限されるということも考えられましようけれども、又同時に生産のコスト安ということのために、有効需要が殖えて来るという面が、我々産業人としては最も尊いところなんであります。この点をちよつと申上げて置きます。  それからさつきの日英のことをちよつと申上げます。協定期間は一九四九年七月一日から五十年六月三十日に至ります。それから輸入が五千五百万ポンド輸出が四千五百五十万ポンド、これはこの前の出超を差引く関係からこういう数字が出ております。それから今度は輸入の主なる枠の品物名ですが、食糧、それからゴム、繊維原材料、それから石油、或いは金属原材料、鉄鉱石、油脂原料等々、それから主なる輸出の品目は繊維製品・陶磁器、化学製品、機械、ゴム製品、金属製品、その他雑貨類、大体そういう内容です。
  50. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 有効需要の問題は議論になりますからこれで止めますが、問題は今日英協定のことをお伺いしましたが、世間でいわゆるローガン方式ということを言つておりますが、ポンド切下げによつて円貨切下げはしない。その代りにいわゆるローガン方式によつて輸出を増進させるというような構想を持つているようでありますが、その日英協定もその一環かとも思われますが、いわゆるローガン方式とは具体的にどういうふうになつているのか、それで政府はどういうふうにこのローガン方式を通じて円貨を切下げないで輸出を増進せしめて行くようなお考えであるか、それを一つ具体的にお伺いしたいのです。
  51. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) これは今度のローガン方式として政府でこれからやりまする問題については後でちよつと御説明申上げますが、ローガン氏と我々が会つたときのローガン氏のものの考え方は、どうも管理貿易で、まず輸出考えて、その範囲に輸入を止めるという考え方はこれは面白くない、むしろ大いに輸入をしろ、併しその輸入の範囲において輸出をしろ、まあ余計輸入してそれだけ輸出をしようじやないか、そういう形に持つて来ることの方が日本の産業を起すゆえんであり、また輸出の額を殖やすゆえんである。こういうのが大体の大掴みの考え方だと私は思うのであります。そこで今度の大体ローガン構想ということになつておりますが、まあとに角十二月の一日からは輸出はもう全然民間に移してしまう、そこで民間は自由に輸出をすることができる。ただ我々通産省といたしましてこれをチエツクする点は、これがダンピングになつてはいけないということ、或いは品物方面においてのいわゆる粗惡品ということであつてはならない、これは粗惡品であつてはならないという点は、我々が民間の検査制度、或いは通産省の検査機構によりまして検査の面も強化するということであります。またその輸出を迅速に行わせるということのために、輸出手続は為替銀行を通じて税関へ持つてつた申告書を、後で我々の通産省の方に廻してもらつて、その為替を通産商が後でチエツクするということにしております。前にチエツクするということになると、輸出の促進に障碍になるという意味から、後でチエツクする、後でチエツクいたしまして机上で本当に我々が考えてダンピングであると考えられるもの、或いは国内の市価、或いは国内の生産費というものを遙かに下廻るもので出しておるというものについては、今後の輸出についてこれが差止めをするという場合もあるべしというような形で輸出をやつて行くことになると思うのであります。  それから輸入の方は、一月の一日からいわゆる自由貿易にする、併しながらこれはまあ輸入資金の面がありまするから、輸入資金の面からいわゆる為替予算を作る、その為替予算関係閣僚の委員会を拵えましてその委員会予算を作成する。この予算に従いまして大体仕向地、或いは品種その他のものについての大綱だけを示す。これを通産省で公示いたします。これに従つて業者が買付をする、その品種を見て買付をする。買付はやはり手続上の問題は為替銀行を通してやりますが、そういう手続の問題は、細かいことは私記憶しておりませんが、大体の構想はそういつたような構想であります。そこで我々の方において、ローガン構想の、輸入が受ければ実際に輸出も多くなるという、こういつた面から我々はできるだけ力を入れてやらなければならんと考えるわけであります。大体まあできるだけ自由な形で輸入するということがよく問題になります。一体抱き合せで変なものを入れたじやないかというような問題とか、或いは不要のものを入れておるじやないかというような問題は、これで解消すると思う。必要のものを、おのずから民間ではいわゆる要望が起きて来るわけでありますから、仮りに間違つて委員会が違つた品種を、必要のない品種を仮りに予算を組んだとしましても、恐らくこれは民間の業者はそんなものを入れるものはなかろうと思うのであります。実際の需要の面が起るものを選んで輸入する。輸入する額が多ければ多い程又輸出する額も多くなつて行くということになるだろうと思うのであります。
  52. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その場合に、先に沢山輸入して、それでそれによつて生活水準を、国民一般の生活水準を高めるということは考えていないのですか。ということは、輸入したものによつて材料生産をやる。材料生産をやると全部輸出に向けないで国民に多く消費させれば、そうするとそれだけコストが下がる。これは先程の油井さんの御質問と反対になるのですが、輸出を多くすることによつて、国内のコストが下がるというお話しでしたが、国民の生活水準を高めて、多く国民に消費させることによつて料材生産をやつて輸出のコストを下げる。そういう構想が入つておらないのですか。
  53. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) これはさつきの合理化の分析をすることをやらなかつたからなんでございますが、私の考え方は、やはり操業度を高めるということより外ないと思います。本当意味の合理化の一面は……反面と申しますか、そこで操業度を高めるということから行きますと、とにかく海外に輸出ができるというためのコストを下げるためには、国内にも向けて行くという形になると、私は自然にそこに来なければ操業度を高めるということは無駄だというか、操業度を高めるという目的は達せられない。従つて丁度その点は御意見通り考えております。
  54. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 生活水準を高めることですね。
  55. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) そういうふうに考えております。
  56. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 最後に一つ、スナイダー長官が参りまして、政府でも、総理大臣その他お会いになつたようでありますが、新聞に伝えられるところによりますと、外電の伝えるところによりますと、会談の内容はいろいろあるが、その中で円価の問題が話になるのではないかということが新聞に伝えられております。これまで幾度も円価の問題が外電で報じられる度に、政府はこれを否定して来ております。打消して、司令部側においてもそういうことはないと否定しております。ところが今回のスナイダー長官が来られるに当つて、外電が報じておるその円価のことが問題になるのではないかということに対しては、何ら否定の声明も出ていない。そこで円価の調整の問題、これは政府はやらないやらないと言つておりますが、それから今通産大臣からいろいろ合理化のことについてお伺いしましたが、これからも問題になると思いますが、いろいろ合理化をやつてもどうしても輸出ができないということになれば、やはり円価の調整が問題になるのじやないか。この点やはり依然として通産大臣は必要なしと認められておるか、その点くどいようですが、もう一度お伺いいたします。
  57. 稻垣平太郎

    国務大臣稻垣平太郎君) スナイダー氏のお話しがありましたが、スナイダー氏が見えまして、私も総理その他経済関係大臣の二、三の方とお目にかかつたのであります。併しながらそのときにはそういう問題は全然話頭には上りませんでした。又後で聞いたのでありますが、そういう考えは持つていないということがはつきりいたしておつたようであります。それはそれとして、それからお前は仮に追つめられて来ても、一切円価の切下げはしないかというようなことのようになるのですが、私は只今の段階においてやり切れると思つておることについては、先程から答弁をいたしておつたのであります。どうしてもやり切れないという事態になつたら、これは又考えなければならないでしようが、私といたしましては十分にこれはやつて行けるのじやないか、こういうことを固く信じておりますので、私は、いわゆる実際裏にはそういうことがあるのだが、表面でこういつておるのだということではなくして、これは私自身の考え方を私は卒直に申上げておるのであります。
  58. 黒川武雄

    委員長(黒川武雄君) それではこれで委員会を閉会いたします。    午後四時五十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     黒川 武雄君    理事            内村 清次君            高橋  啓君            高橋龍太郎君            岩間 正男君            木村禧八郎君    委員            岩崎正三郎君            木下 源吾君            波多野 鼎君            岡田喜久治君            城  義臣君            深水 六郎君            中川 幸平君            西川甚五郎君            岩木 哲夫君            小杉 繁安君            深川タマヱ君            藤森 眞治君            油井賢太郎君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            藤野 繁雄君            松村眞一郎君            小川 友三君   国務大臣    通商産業大臣  稻垣平太郎君    建 設 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    大蔵事務官    (主計局次長) 石原 周夫君