○
国務大臣(
稻垣平太郎君) 私は企業の合理化という問題について、今の木村さんの
お話にな
つた向うの物価の値上りとの
差額、例えば一五%、それだけでいいという
考え方を私は申したつもりはないのであります。私は企業の合理化というものはこの
ポンドの
切下げとかなんとかに無
関係に、
日本としてはやらなければならん問題だ、かように
考えております。そこで企業の合理化という問題はこの仕事の種類、業種によ
つて、でき得る範囲が非常に異ると存じます。例えば機械設備を沢山持
つておりまするところの面におきましては、私は企業の合理化が非常に余計できるのだ、かように
考えております。
話をかえまして戰前のいわゆるコストの構成を
考えてみまする場合において、又戰前のコストの構成を現在のコストの構成と比較して見て、或いは現在の
日本のコストの構成と、それからして
アメリカの
一つの業種のコストの構成を
考えてみて、或いは
アメリカの戰前のコストの構成と、現在のコストの構成を
考えて見る。こうい
つたような研究すべき要素が沢山あると私は思うのです。私は業種々々によ
つておのおの決まると存じまするので、これは例えば
一つの例を
考えて見まする場合に、これは
一つの例でありますが、例えばグツドリツチ・ラバー・カンパニーの戰前の
一つのコストの構成を先ず
考えて見ると仮りにいたします。そういたしまするというと、例えば原材料費が三〇%である、或いは労務費が三〇%である、その他の管理といいますか、そうい
つたものが仮りに三〇%とする。これが戰前であ
つたと仮りに仮定しまして、そうして今日どうな
つているか、例えば賃金だけで申しまするというと、大体戰前と戰後とは、具体的な
数字を比較したのを見たのですが、五〇%上
つておる。
従つてそれでは労賃の割合が三〇%に対して五〇%だから、四割五分を占めなければならない。こういうことにな
つて参りますかというと、そうではなく、依然として三割乃至二割七八分にな
つておる。こういう現実を見るのであります。それからして原材料費が大体六割上
つておる。然らば六割上
つた率にな
つているかというと、これは又不思議なことには二割六分に下
つておるのであります。それはどういうことかと言いますと、要するに技術的な非常な工夫によりまして、原材料を少く使
つて、そうして同じだけの例えば走るところのタイヤの効率を上げて耐久力を強くして行く。技術的な問題ばかりでなく、或いは機械のエキユイプメント、インストルメントを改善しておるために、非常に個人のウエージスは上
つたが、全体の労務費としてはむしろ下
つておるという現象が起
つておると思うのであります。現に例えば仮りにグツドリツチで
一つのゴムを練る機械を持
つている。従来これに十五人かか
つたが、今は一人、ボタン
一つでやれる。その割合は十五分の一でやれる。その
部分に関する限りにおいては、非常なるところの技術的な改良がされておるが、或いはエキユイプメント、或いはインストルメントに対しての非常な変化が起
つておる。こういうことでありまして、前の構成と後の構成というものは大体同じ構成でや
つて、それで
一つの企業にな
つておる。こういうことが言えると思う。それを
日本と比べて見ると、
日本で向うの構成の上に持
つて行くためには、この機械の点と技術の点、これを変えて行かなければならん。むしろ労金を上げても、一人のウエージスを上げても、全体のインストルメントを変えれば、総額の労務費は減るのだ、こういうことになると思うのであります。そういう場合にそのいわゆる企業というものは、二割引け或いは三割も引けると思うのであります。
従つてこれは各業種によ
つてそれぞれ
検討して行くべきものと、かように
考えるのであります。そこで私の
考え方におきましては、各業種にわた
つて一つできるだけの
検討をして、先ずこのコストの構成はかくあるべし、或いは一人当りの生産量というものはかくあるべしというような基準を作
つて行く。そこでおのずから変
つて来ると思うのであります。そこでどうしても機械のいわゆるあなたのおつしやるような十五%以上の、その他のいろいろな考慮を入れた
差額というものをカバーできないところの企業は、
日本では成り立たない。例えばいろいろの機械的な設備やいろいろな整備をや
つて見ても、これは
日本では成り立ち得ない産業であると思うのであります。成り立ち得る産業は私はそういう形で持
つて行ける。これを一々
検討するのがこれからの通産行政で一番重要な点である、かように
考えるのであります。