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1949-11-14 第6回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十四日(月曜日)    午前十時二十六分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第九号   昭和二十四年十一月十四日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第五日)  第二 船舶法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。一昨日に引続き順次質疑を許します。市來乙彦君。    〔市來乙彦登壇拍手
  4. 市來乙彦

    市來乙彦君 私はインフレーシヨン現状について質問をいたします。終戰以来、歴代の政府はいずれも高物価政策を掲げまして、物価引上げることに盡力いたしたのであります。その結果は遂に今日物価最高峰に達しておるのであります。インフレーシヨン高進を停止いたしましたのは、一般購買力が衰えたからであります。このインフレーシヨン只今物価最高峰に安定いたしております。その安定は一時的安定でありまして、本当の安定ではありません。これから上るか下るかの間に足踏みをしている意味の安定であります。この足踏みをしておる安定は、ややもすれば誤解されまして、インフレーシヨンが全く終熄したものである。全く克服されておるものであるという誤解がしばしば起るのであります。この点は特に我々が深く注意すべきことであると考えます。この足踏みをしておる安定のインフレーシヨンは、将来更に進むのであるか、更に退くのであるかということは、一に今後の政府政策によつて分れるのであります。ここに政府の重大なる責任があると申さねばなりません。物価はすでに最高峰に達しております。非常に高いのであります。人事院や国鉄労組が、給料、賃金ベース引上げを主張いたしますのは当然のことであります。これに対して政府方針が未確定であるように見えるのは遺憾の至りであります。一般論を申上げますれば、多量の通貨が放出せられますれば、申すまでもなく、足踏み安定のインフレーシヨンが直ちに高進をするのであります。而もこの高進は、財政の破綻、経済崩壞を目指して急速度を以て進行するのであります。これに対して、これを途中で抑圧することができなければ、遂に破局に陷ることは疑いないのであります。この故に、この足踏み安定のインフレーシヨンは成べく速かに克服することが当面の緊急なる要務であります。殊に来年の国民所得が三兆一千五百億円になるという計算を見るにおいては、我々はこの点に非常な関心を持たざるを得ないのであります。  政府は一億七千万ヤールの綿布を放出することになつておりました。値段は相変らず高いのであります。或る新聞がこれを報道しまして、この綿布を我々は思うままに、必要の程度を満す程に買取ることができるのである、衣料に関する極めて明朗なるニユースであると申しております。私はさように考えません。さような地位に立つておりまする人々は、極めて、相当生活余裕のある一部少数の人に限られておると思うのであります。我々大衆は、多くはこの高い綿布を思うままに買取ることは夢にも考えられないのであります。(拍手)それを買おうと思つて苦心惨憺するのであります。陰欝に陷るのであります。私はこのニユース陰欝なるニユースであると考えておるのであります。  政府企業合理化を促進することを警告されております。誠に御尤もであります。併しながら高物価政策の下においては生産費の切下げも思うようにできないのであります。従つてこの高物価政策の下においては、完全な企業合理化は到底望まれないと私は考えておるのであります。殊にそれが目前の事実であります。  輸出につきましては、品質の改良技術の進歩、意匠の研究、商業道徳の高揚、その外手続等の改善も、もとより必要であります。併しながらこれらのすべてを完成いたしましても、尚その上に最後的決定條件物価の低兼であります。その点は先に米国の商業団が熱心に懇切に指導をし激励をした点であります。これに対して我が国の反響が極めて微弱であることを遺憾とするのであります。  私は前の議会において、右の趣意によつて物価政策を提唱いたしました。政府は共鳴されなかつたのであります。然らば政府は如何なる方針があつたか。種々の方策があるということを弁明されました。その結果は何であつたか。輸出の不振であります。金融の梗塞が非常に激しくなつております。従つて産業資金が甚だしく欠乏しております。これも高物価政策の結果であります。生産費が非常に高い。従つてこの生産費を以てできる物資価格が非常に高いのであります。一面に一般購買力の欠乏であります。生産品がなかなか売れない。高価格を含んでおる製品が倉庫の中に累々と滞積して唸つております。生産品が唸りましても回転すべき融通資金は出て来ないのであります。  以上の二、三の実例をとつて考えましても、国民生活は安定しておらない、経済は逼塞しておることが明らかであります。私は先の国会の開設以来、低物価政策を主張しておるのであります。半面において高物価政策はすでに行詰りの前兆が現われて来ておるのであります。高物価政策国民生活を脅威し、物資増産さえも阻害するものであります。この高物価政策が早晩行詰りになるということは当然来るべき本来の帰結であります。私は政府国民生活と、経済事情と、殊にインフレーシヨンの特質とを、もう少し愼重に、もう少し真劍味を以て考慮されんことを希望するのであります。過日経済安定本部の内部において、この際、低物価政策を立てて企業整理促進図つてはという意見が出たと噂があります。これは誠に時弊に的中して傾聽すべき意見であると考えます。これを要するに、国民生活を安定せしめ、経済の自立に進むためには、速かに低物価政策を立ててこれを断行し、インフレーシヨンを成るべく速かに克服することがその根底であり、当面の緊急政策であると思うのであります。若しこれを等閑に付しましたならば、近き将来においてインフレーシヨンとデフレーシヨンがかち合いまして、混雑紛糾の場面を現わすであろうということが想像されるのであります。今日においては、すでにその段階に入りつつある実情であるのであります。尚、更にその混雑紛糾が拡大いたしまして收拾することができないようになりましたならば、遂には最後的の強力なる特殊な整理を施す必要が生ずるであろうということも又想像すべきであると思います。殊に来年の所得が三兆一千五百億矢に上るという、この驚くべき、恐るべき計数を見るに至つては、我々は、今私が申すような一つの疑念が決して脱却されておるものであるとは考えません。  次に、私は私の質問の要点を申述べます。  第一に、政府インフレーシヨン高進を停止したということを認められたのであるが、更に進んでインフレーシヨンを急速に克服する必要があるとは思われないのであるか。思われないならばその理由は何であるか。若しその必要があると思われるならばその対策は何であるか。  第二に、政府は現在の物価を以て高過ぎるとは思われないのであるか。高過ぎると思われないならばその理由は何であるか。高過ぎると思われるならばその対策は何であるか。  第三に、政府は現在の経済が逼塞しておるとは思われないのであるか。若し逼塞しておると思われないならばその理由は何であるか。逼塞しておると思われるならばその対策は何であるか。以上の三点について、私は政府の明瞭にして迅速なる答弁を望むのであります。  尚、私は、政府前途を楽観されることなく、その先見ある明識を以てこれらの事情を予め達観されて、急速に適当なる政策を立てて、これを断行されんことを切に希望するのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。今日の現状インフレが停止され、克服されたのであるかどうか、今日は安定ではなくて足踏みではないかという御質問でありますが、政府としては、インフレ克服のためにあらゆる手段を用いたり、我いは又用いんといたしているもので、決して前途を楽観いたしておるものではございません。全体、申上げますと、日本戰後領土の多くを失い、台湾、朝鮮、千島、樺太、日本の従来の領土は半分以上を減らされておる今日、而も貿易は停止せられておつたのであります。又漁業にいたしましても、従来は南極、北極、至る所の海に進出したのでありますが、御承知のごとく、最近、この戰後においては極く限られた海面の上に出漁を限られておるというような状態でありまして、思うに、敗戰国の中で以て一番日本が苦しい、経済的に苦しい立場に追いやられておつたと思わるるのであります。又これをイタリア等考えて見ましても、或いはドイツ等考えて見ましても、ヨーロツパにおいてはとにかく金持の国と申しますか、経済力の盛んな国々に取り囲まれておるのでありますが、日本の現在においては必ずしもそうではないのでありまするから、輸出がただに事実において停止されておるのみならず、停止せらるべき幾多の不幸な原因を持つておるので、この国にインフレーシヨンが起らなかつたということは考えられないことであります。従つてこの克服のためには政府としてあらゆる手段を以てこれに対応し、インフレーシヨン克服に全力を挙げて当り来つた次第であります。その結果、不幸にも行政整理とか、或いは歳出の縮減とか、あらゆる手段を盡してその克服努力いたしておりましたのでありますが、とにかく今年度の補正予算或いは来年度の予算において御覽になるであろうと思いますが、歳出は非常な削減を、圧縮をすることができたのであります。お話の所得は来年度において三兆以上に上るということでありますが、私の承知いたしておるところでは、左程に上らん、断じて上らんということであります。又輸出貿易その他につきましても、今年は一時輸出止つたそうでありますが、予定の五億ドル以上に現に達しつつあるのでありまして、輸出足踏みしたとは考えられないのであります。又国内の状況におきましても、生産その他の指数も相当つておるのみならず、闇物価も現に停止されておるので、今後これがどうなるかということの見通しについては決して楽観はいたしておりませんが、併しそのインフレーシヨン克服のためにあらゆる手段を盡し、又予算等において御覽になると思いますが、政府としてはでき得るだけの施策を施しておるのであります。又政府として決して現在の物価が低いとは考えておらないので、減税その他によりまして物価の低廉になるように運びたいと考えておるのであります。その他いろいろな問題については所管大臣から詳細お答えをいたす筈であります。(拍手)    〔国務大臣青木孝義登壇拍手
  6. 青木孝義

    国務大臣青木孝義君) 只今市来議員の御質問に対しましてお答えを申上げたいと存じます。  政府は過去半ケ年間、経済安定の諸施策を実施いたして参りました結果、現在の段階におきましては、インフレーシヨンは一応克服せられて、物価水準公定価格の上昇と闇物価の下落とがほぼ相殺されて、本年四月以来殆んど横這いの状態にあるというふうに見ておる次第でございまして、戰時中以来の不合理な物価体系国際価格水準を基準として逐次正常化に向いつつありますることは、皆様の御承知通りであるし、さように認めざるを得ないと存じております。以上のことは経済諸指標に現われておりまする通貨物価及び賃金等の動きを根基といたしまして申上げることができるのでございます。併しながら他面この安定施策実行の過程におきまして、多少生産の低下であるとか、或いは滯貨の増大であるとか、貿易の不振というようなことの芳しからざる事実も現われて参つておりますることは、これ又率直に認めざるを得ません。これらを以ていたしまして、政府といたしましては現在のこの経済が行詰りであるというふうには考えておりません。と申しますのは、以上のような現象に対しまして、折角から得ました安定を基盤といたしまして、輸出産業を中心とする産業の振興、総合的国土開発等によりまして積極的に雇用の機会を図つて、失業の発生を防止いたして参りますると共に、更に減税等その他による実質賃金維持向上図つて参りまするならば、いわゆるデイス・インフレーシヨンの線に沿つて国民経済は明らかに将来明るい発展を見られるものと信じて、今後ともこの点に大いに努力をいたして参りたいと存ずる次第でございます。(拍手
  7. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 大蔵大臣は病気のため答弁を他日に留保されました。高橋啓君。    〔高橋啓登壇拍手
  8. 高橋啓

    高橋啓君 我が民主党におきましては、吉田内閣に対しては、是は是とし、非は非とする立場をとつておりますので、政府施策に対して正しい判断をしなければならないのであります。この意味におきまして総理大臣施政方針演説に注意と期待をかけておつたのでありますが、内外問題とも極めて抽象的であつたことは私の遺憾とするところであります。  第一に、講和会議が近付いたということについては、政府はしばしば言明したのであります。国民にとつては待望の朗報であります。この期を画するような大試錬に際して、国民の正しい輿論を表現することが必要であると私は思うのであります。尚、連合国もこれを求めているのではないかと推察されるのであります。官房長官の談として新聞に発表したところによりますと、講和会議は現政府でこれに当るということを言つておりますが、過般の選挙はこの講和問題を主なる題目として行なつたのではないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)民主主義民主政治国民多数の意向によつて動かして行く形態でありまして、この国民多数の意向がいろいろ判断を誤まらせるような、国民の求むるような公約を並べて国民輿論を現わしたのでは、正しいとは言えないのであります。殊に現政府は、新聞等によつてワン・マン・パーテイの印象を與えているのでありますが、これによつて講和会議に当るということについて、国民は不満を持つているのではないかと思うのでありまして、(拍手)この際、政府が正しい輿論を、講和会議国民の声を集結するために、解散する考えがないかどうかを総理大臣に伺いたいと思うのであります。(拍手、「そんな必要はないよ」と呼ぶ者あり)  内政問題については何ら目新らしいものはない。例えば政府が実行して来た計画報告政策を羅列したに過ぎなかつたのでありまして、議会を始めてから随分、二週間以上の時間を過ぎているのでありまして、十分準備余裕があつたと思うのでありますが、全く二週間という貴重な時間を無駄にしたことを私は遺憾と思うのでありまして、もつと国民納得の行くような具体的なことを示すことが政府の義務であつたのであります。現在の條件下において経済九原則或いはドツジ・ラインがどんなものかということは国民承知しております。併し行き過ぎた緊縮政策の結果、あらゆる産業界は萎靡沈滯いたしておりまして、金融に喘いでいる。このような状態下において、今日の條件下で許された範囲政府が適切な政策国民に示す、国民又これを待望しておつたのでありますが、総理大臣演説に現われた政策が、予算の上で見よといつたことで突つ放しているのでありますが、一体如何なる範囲の即ちウエイトを置いてあるか。若し予算上程の上、全く問題にならないものであつたとしたら、国民は非常な失望落胆をいたすのでありまして、このような演説の仕方について、私共は国民に対して不誠実であると思うのでありますが、総理大臣の所見を伺いたいと思うのであります。(拍手)  外に六点について私は質疑を行いたいと思うのであります。  第一点は食糧増産方式の問題でありますが、食糧の不足から来る経済問題その他いろいろ派生する幾多の問題を孕んでおりまして、国政運営の上に困難を来たしている。これを救うにはどうしても食糧自給自足に持つて行かなければならないのであります。今日増産方法としては、増反をして、即ち開拓して耕地面積を殖やして、そこから増産をして行こうとする方式でありますが、これは余り成功しておらない。二十三年十二月末現在の統計によりますと、入植者が十六万三千八百五十九戸のうち、離脱したのは二万五千六百五十戸という一五%内外の離脱者があつたのでありまして、又その中には成功を疑われているものも相当な率を示しておるのであります。この失敗原因は何かというと、机上計画に基いて決められた目標に対して、いわゆる適地の必要な條件を顧みないで、ただ示された面積の数字を合せようという無責任な末端官吏のやり方が、非常に今日の失敗原因をなしておるのであります。適地決定には、少くとも地味の問題とか、水利の問題とか、治山治水の問題とか、こういうものを考慮して、営農に適した條件を満たさなければならないのであります。一度入植さしたならば、これを必ず成功させる、若し失敗したならばその人は更に努力をしなければならぬ。そうしてその荒されたいわゆる荒廃地の回復には何十年か、かかるというので、国の損耗が非常に多いので、増産どころか、むしろ国土荒廃を来たすといつたような結果になるのでありまして、この点については再検討を要すると思うのであります。そこで、どうして増産するかと申しますと、今日、今耕しておるのに或いは科学的検討を加えたり、或いは土地の改良、肥料の増配等で、今まで收穫したのに何パーセントかのプラスをするという方法も、最も必要でありまして、昨年度の千算では全くこれに対して問題にならなかつた。併しその外に未利用の大きな資源があります。それは今参議院の農林委員会で小委員会を開いて調査をいたしておりますが、單作地帶の問題であります。特に一毛作をやつておるところの田の面積は、正確な資料ではありませんが百八十万町歩ぐらいある。この未利用資源は直ちに増産に振向けることができるのであります。これが対策は最も確実で近道であるのであります。農林大臣は、自給自足には外国から百八十万トン以上の輸入を得て、そうしてやるより仕方がないというような御答弁と記憶しておりますが、一毛作の裏作の活用によつて何年かの後には自給自足ができると確信いたすのであります。ついては先ず一毛作二毛作に切替えるためには、気候の状況とか、品種の選び方とか、技術、経費、労力等の問題、実験施設二毛作をなすについては、一時作が減收する、その際の供出の関係、課税の関係、いろいろな課題を解決しなければならないのでありますが、政府はこのような未利用資源活用について今日どんな計画をいたしておるか。承わりたいと思うのであります。  第二点は国土計画に関してお伺いいたしたいと思います。最近災害が頻々と発生して、その復旧費の支出、災害地の出費は勿論のこと、国家財政にも大きな部分を占めておるのであります。併し国家財政傾向を見ても、目前緊急の彌縫策、即ち復旧の面だけに力を入れて、根本的な面を逸脱しておる傾向があります。本年の七月ですか、建設省発表の「国土建設の現況」というのによりますと、河川災害は近年累増しておるが、その原因は、山林濫伐開墾による荒廃のため降雨は土砂伴つて一挙に流下して、河床が隆起しておると言つておるのであります。その通りで、山林が緑化され、砂防が完全であれば、河床は自然に低くなつて従つて治水河川等工事の規模は小さくて済むのであります。現行のように土砂の流れるのと競争して川の土堤ばかり高くしても、これは完全を期し難いのでありまして、もつと根本的な面に予算を向けるべきであると私は思うのであります。故に山林から治水工事まで一貫管理を必要とすることは誰でもこれは納得のできることであります。各省のセクシヨナリズムによつて随分禍いされておるのであります。この際、国土百年のために、どうしてもこの互いの縄張りを捨てて、そうして効率的な措置を取ることが必要であると思うのでありますが、所管大臣である建設大臣農林大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。  尚、現在の荒廃した林地を復旧し、この森林の保全を図ることであるが、これには木材の需要の関係考える必要があります。木材資源は里山にはありません。奧地であります。奧地を開発するには非常に大きな資本が要るのでありまして、そうして、それには電源を失つたり、水源地を失つたり、いろいろ洪水の原因になつたりするような危險が伴います。そこで、これらにダムを作つたり、いろいろな施設を伴わなければならないのでありますが、これは小さい資本ではできない。国家の大きな資本準備によつてやらなければならないのでありますが、これも、ダム電源の涵養に、例えば水力電気の発電に使うといつたようないろいろな関係の総合した仕事の下に予算を使わなければ、一つ一つ別々に使つてはこの仕事は成立たぬと思うのでありまして、私共はこの点についても所管大臣にお考えをお聞きしたいと思うのであります。  その次は運賃価上の問題であります。総理大臣演説の中で、物価影響を考慮して賃金ベースは変えないと、こう言つております。そこで若し物価が変動したならどうするか。こういう問題であります。そこで政府は今度運賃の値上を発表しておるのでありますが、これは運賃の値上によつて物価が変動する。即ち物価を形成する因子の中に運賃の入らないのは殆んどない。それについては、非常に容積の小さいものや軽いものは運賃の値上によつて余り物価影響しません。併しながら石炭、木材といつたようなものは非常に大きく影響いたすのでありまして、今日でさえ木材は素材において一三%六、又製材においては七%三二というような大きな価格部分運賃が持つておるのでありまして、これを更に値上げした場合にどうなるかというと、今日の木材資源は北海道、九州或いは奧地に、随分端に偏しておるのでありまして、この大きな百五十万戸という戰災住宅を建設する際に、そのような資材が全然生産ができないというような状況に置くということは、果して今日の国策としてなすべきことであるかどうか。それについて運輸大臣は、この非常に価格影響するような品目について、何らかそれに対して操作をするような考えがあるかどうか。而してこのような用意があつて政府方針である物価に変革を起させないという方針との調和をどういうふうに考えておられるかをお伺いいたしたいと思うのであります。  第四点は、これはなかなか大きな問題でもあり、又急ぐ問題でないとも言えるのでありますが、今日法律が非常に沢山出て、法令が数多くある。我々の一投足が果して法律に触れているか触れていないか分らぬ。その数が五十万或いは三十万と言つておるのでありますが、我々はこのような沢山の法律の中で生活をいたしておるのでありますが、これでは国民尊法精神がなくなるのであります。そこで誰かやらなければならないのでありますが、現政府はこの法律整理するために一大調査委員会のようなものを設けて、調査機関を設けて、国民が分り易い、而もこの尊法精神国民によつて発揚さるるようにするお考えはないかどうか。これを伺いたいと思うのであります。  次には煙草民営の問題であります。首相は波多野議員質問に対して、官営の事業を順次民営に移すのがいいではないかというような簡單な御説明でありましたが、私はこれについて煙草事業民営に移すについて、時期は一体いつ頃やるつもりであるか。又外資導入を必要とするかどうか。若し必要とするならどんな形でやらうとするのか。それから財政に及ぼす影響、即ち千二百億というような大きな国家收入を確保する方法はどうするのであるか。外国煙草が入つて来ると、うまくない内地煙草は駄目になつてしまう。そうなつた場新、六十万の煙草耕作者生活が脅威にさらされることは、これは分り切つたことでありますが、これをどうするか。又設備の売渡し、これはなかなか大変なことでありますが、如何なる方法で円滑にこれを移して行くか。又煙草民営問題の街頭録音のラジオを聞きました。そのとき一人の講師が政党の食い物になる心配があると言つておりますが、そのようなことがないかどうか。この点についてお答えを願いたいと思うのであります。  第六点は、これは岩ケ崎という所に起つた百日咳ワクチン禍の問題でありますが、極めて一僻地の問題であるけれども、これは全国的な大きな問題であると思いまして、緊急質問に申出ておつたのでございますが、便宜ここで御質問いたしたいと思うのであります。これは二十三年の十二月下旬に二回に亘つて施行された百日咳予防接種に当つて、二百余名の注射をした子供の中から、六十五名の乳幼兒に惡質な反応があつたのであります。これはその経過その他の内容については、政府は、はつきりと資料を持つておりますから、ここでくどくどと申上げることを止めまして、これがたまたま予防接種法の施行期日が百日咳と結核が延期されておつたということを知らないで、県当局或いは地方当局が法律の基礎において予防接種を施行せしむるように通知して、この乳幼兒の接種を行なつたのでありますが、これがどういう原因か、まだはつきりいたしませんけれども、結核菌がその子供に皆うつつて、非常な惡質な状況を示しておるのであります。そこで私はこの問題に対して、政府にいろいろな措置の手落ちがあつた、或いはやり方が惡かつたということを言わんとするのではありません。    〔議長退席、副議長着席〕  それはこの患者ができたときには、当局並びに連合軍の方々まで協力して、これに対してその措置に万全を期したのでありまして、今日の制度の許されておる範囲においては厚生省当局は非常に飛躍してまでこれが救済に当つたのでございまして、私はこの点については政府に対して感謝をいたしておるのであります。併しながら法律は施行されておらなかつた、こういうことは、権利義務のごとき関係であれば、法律効力の発生のときに一線を画して処理することは、適切な問題については、私はそれでよいと思う。併しながら、この場合の事例のごとく国民の健康に関することは、法的責任なしということでその一線を画すことは、これはいけないと思うのでありまして、一線を画したから病気の子供が癒ろというものでもない。健康が回復するというものではない。特に予防行政という国策遂行に当り、国民が不安を抱いてこれに協力しないということに私共は考えが及ぶのであります。この事実は、隣接町村に予防接種に対して集団拒否の事実が起きて参つたのであります。今後は法律が施行されておりますから、国家賠償の途も開けているのであるし、かくのごとき懸念はないかも知れないのでありますが、この施行前に接種したことは、国の方針によつたのであつて、先走りしたというような手落ちはあるが、この事故さえなかつたならば惡いことではなかつたのであります。  先に学者や医者の注意がありまして、この子供達のためには長い間いろいろな看護をしなければならない。その看護は非常にむずかしいのでありまして、病院に入院させたと同じような看護をして行かなければならないのであります。その養生の方法、或いは伝染の憂いがあるから、その措置の方法、或いは母の愛情であるとか、親の愛情であるとか、或いは刺戟をしてはならないとか、よく見せなければならないとかいうように、附ききり入院させた患者と同じような看護をしなければならないような注意を必要といたしまして、それをしないと直ぐ元に帰つて来て、直ぐぶり返して参るのであります。このように、長い間何年もこのような状況で続くということを私共は考えるときに、如何にそこの家庭というものは悲慘なものであるかということが考えられるのであります。いたいけな愛兒が見るも無残な腫れ上つた傷が痛んでひいひい泣く有様を見た親の心情というものは、実に私共は同情するに余りあるのでありまして、私が会つた若い母親は、こんなになるならば役場の門の前に捨ててしまいたくなると言つて気狂いのように泣いておつたのであります。乳幼兒であるから、親の看護が必要であります。そのために一家を支える働き手は生活力を失つて、病兒を抱えながら明日の食をどうするかと言つて苦しんでいるような実情であります。ここで総理大臣にお願いしたいことは、災害の場合のように、高度の社会政策意味で、これが救済につき特別な措置をとつて頂きたいと思うのであります。重ねて申しますが、当局のとつた生活保護法或いはララ物資の斡旋というようなことを基礎にしては、長い間の看護計画は立てられないのであります。又その中に死んだ子供もありまして、それに対する慰安の方法も法的に途が開かれておらないので、非常な可哀そうな結果になつているのであります。この点について、何らか措置について首相のお考えを承わりたいと思うのであります。若し総理大臣が社会政策の一端として特別な措置をとるべきだということでありますなら、厚生大臣はこれに対して予算措置をとつて貰いたい。よく大蔵大臣が駄目だつたというようなことを言われておりますが、大蔵大臣にお願いたしたいことは、こういうような災害のような特殊な事情の場合に、予算措置をとるだけの彈力は恐らく政府に與えられておるのであつて、我々は予算委員として審議する上においてこのことを承知いたしておるのでありますから、いろいろな費用に対する制限はあるかも知れませんけれども、この際曲げてこの問題に対して御同情ある措置を直ちにこれが具体化するようお願いいたしたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  9. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。講和條約の問題は、終戰以来国民が一日もその締結の早からんことを望んでおつた、熱望しておつた問題でありまして、今日これが突然起つたわけではなく、従つて又、この前の総選挙において、国民も講和條約という問題も考えてこの選挙を行われたものと私は確信いたしまするから、従つて今日解散ということは政府といたしては考えておりません。(「同感」と呼ぶ者あり)  又、施政方針演説が抽象に過ぎたということはしばしば伺いますが、方針である以上は抽象であるのが当り前の話であつて、具体案については、具体的の施策については、予算案を提出いたしましたときに十分御検討を願いたいと思います。  それから民営の問題でありますが、私は民営に移した方が国民のためにも国家のためにもよいのではないかと、こう考えまするから、今日当局者並びに審議会において、折角官営にすべきか民営にすべきか、民営にするとしたらどうしたらよいかというようなことについては、極く愼重に検討をいたしております。いずれ成案ができました上で以て、議会の協賛を経るために提出いたしますつもりでおります。  只今宮城県の百日咳ワクチン問題についてお話がありましたが、誠に私としても同情に堪えません。よく実情等については取調べた上、適当な処置を講じたいと考えます。一応お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎君登壇拍手
  10. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 高橋議員にお答えいたします。  食糧増産に対する増産形式というお気持で單作地帶改良のことについてお述べになつたのでありまするが、誠に同感であります。單作地帶は誠に今日の農業経営の上に非常な不利な立場にありまするので、今後灌漑排水、土質の改良等、あらゆる土地改良をいたしまして、できるだけ二毛作、裏作のできるように改良をいたして行くということも一つの増産の形式であります。尚、日本貿易状態といたしましては、食糧増産につきましては、従来の増産方式とその趣きを変えて行かなければならぬと存じまするが、限りなく増加いたしまする人口を限りある土地においてどうして養つて行くか。自給自足ということをお述べになりましたが、これは先日も申上げました通り、排他的な自給自足では、どうしても日本としては食糧が不足するのであります。あらゆる努力をいたしまして自給度を高める、日本食糧の量を殖やすということは当然でありまするが、この増加する人口に対しましては、やはり海外から公正なる貿易の下に、工業を発達いたさせまして、工業の発達に伴う貿易の結果によつて食糧を輸入するということを考慮して行かなければならんと、かように考えておるわけであります。  尚、治山治水の問題でありましたが、これは建設大臣からも御答弁があろうかと存じまするが、勿論今日、日本といたしましては、あらゆる角度から見まして治山治水の重要性は申上げるまでもないのでありまして、現政府といたしましては、特にこの治山治水に、国土を保全する上におきましても重大な問題として、あらゆる角度から治山治水の問題を施設いたして行きたいと、かように考えております。  尚、木材の問題につきまして、奥山の開発をお述べになりましたが、御尤もであります。里山におきましては相当荒廃に帰しておりまするので、将来奥山の利用が問題となつて来るのでありまするが、奥山開発には自然林道の開発ということが必要となつて参りますので、林道も予算の許す範囲において極力開発いたしまして、奥山の利用の途を開いて行きたいと、かように考えている次第であります。以上、高橋議員に対するお答えをいたします。  尚、先日太田議員の御質問中、農産物の価格を国会に協議しないかという御質問がありまして、答えが遅れておつたわけでありますが、これは農産物の価格決定は現在の組織によつて行きたいと、かように考えておるわけであります。(拍手)    〔国務大臣青木孝義登壇拍手
  11. 青木孝義

    国務大臣青木孝義君) 只今高橋議員の御質問の、物価運賃との関係、この点につきまして先ずお答えを申上げたいと存じます。  一般経済の不況によりまして、旅客面において、運賃改正後、著しいこの利用減を生じましたので、このままでは今年度の予定收入額から八十六億円不足することが予定されまするし、貨物の面においては三億円程の増加を予定されますが、その他の雑收入におきましても六億の減收を見込まれて、收入不足の総額は、大体八十九億円に達するものと考えられております。これに対して政府は運輸審議会の答申の線に沿いまして、一月以降、貨物運賃を八割以上、八割程度引上げるという改訂案について検討中でございます。本年度のこの予算に基きまする人員の縮減、企業合理化によりまして、運送原価は従来よりも若干低減しておりますために、現行貨物運賃の八〇%値上げは、運送原価を概ね償うことができるのではないかと考えております。  尚、以上の国鉄貨物運賃の改訂説と並行いたしまして、海上運賃についても、一般貨物九割三分、それから重油類一割五分の引上げ方を考究中でありますが、これにより船舶運営会の赤字も減少し、船舶の稼航率の向上を見込みますれば、各航路の採算運賃となる見込であります。右申上げましたように、この運賃引上げを実施した場合には、運賃の性質上、各物資価格に多少の影響がありまするが、企業合理化によりまして吸收を見込んで、比較的影響の大きいこの銑鉄とか、或いは鋼材であるとか、それから硫安、セメント、木材等について見ましても数パーセントの原価の上昇に止まることになります。又安定帶物資につきましては補給金によつてカバーされますので、全般の物価水準に及ぼす影響は比較的少いものと考えておる次第でございます。  尚、右の銑鉄、鋼材、硫安等の原価の上昇によりまして、補給金を本年度一月以降十億円程度増額する必要があろうかと存じておりますが、いずれにいたしましても右は予算内で賄われる見込であります。右御答弁申上げます。    〔国務大臣益谷秀次君登壇拍手
  12. 益谷秀次

    国務大臣(益谷秀次君) 治山治水を根幹といたしまする失業対策の根本的、恒久的な政策を樹立実施いたしまして、そうして国土の保全をいたしますると同時に、国土の総合的開発利用をいたしまして、その対策を樹立実施いたしますることは、現政府予算編成の上に最も重点的に取上げて参つておる点であります。これと共に、これを実施運営いたしまするのには、必要なる法令並びに機構を確立いたさなければならぬという考えから、御承知通り政府部内におきまして、先般行政制度審議会を設けまして、合理的な改革方針を目下同審議会において検討中であります。と同時に政府におきましても鋭意研究をいたしております。(拍手)    〔国務大臣大屋晋三君登壇拍手
  13. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 運賃問題に関します物価との関係は青木安本長官からお答えいたしましたから、私は木材とか或いは石炭とかいうようなものに対して等級を変更する、等級に何らかの手心を加える意思はないかというようなお尋ねの分に対しましてお答えいたします。  只今も青木安本長官から御説明がありましたが、総体的に見まして国鉄が運搬しておりまする貨物の二十六品目について考えて見ましても、今回引上げをいたさんといたしておりまする八割の値上によりましても、現在の率が二%三になつておりまするが、これは運賃物価に占めるパーセンテージでありますが、八割の値上によりまして四・三%上がる程度でございまするので、貨物総平均の全体から見ましては、今回八割値上いたしましても余り影響がないと思つております。尚、特殊の木材或いは石炭というような面につきましては、御承知通り木材は、素材は目下マル公を値段が下廻つておるような関係がございますので、運賃の値上をいたしても余り影響はないと考えております。又石炭にいたしましても、この統制の撤廃の関係がございますので、今回の値上につきましても、さまで大した影響はないと考えておりますので、今当分の間は等級を変更する意思を持つておらないのであります。(拍手)    〔国務大臣殖田俊吉君登壇拍手
  14. 殖田俊吉

    国務大臣(殖田俊吉君) 昨今、法律政令が沢山公布されて参りましたことは、高橋さんのおつしやる通りであります。併し私はその原因は、主として新らしい憲法の制定によりまして、国家のあらゆる制度に対しまして改革を要する点が出て参つた。そのためにかように沢山の法律、政令を必要としたものであろうと考えておるのであります。併しながら現在の法律或いは政令等の中には、修正を要するもの或いはこれが統一を要するものが多々あること又勿論でありまして、私はこれに対して直ちに十分な検討を加えたいと考えております。併しながら特に調査会等を設けてこれをやらせる必要はあるまいと思います。現在法務府の中に設置しております法制審議会というものがありまして、これは朝野のその道の権威を集めております。この方々にお願いいたしまして、私はこの機関を活用いたしまして、そうして法令の整理に当りたいと、こう考えております。又今日いわゆる法治国でありますために、国民の日常の生活があらゆる法規に縛られること又これ止むを得ないことでありまして、法律が非常に多くなつているということの結果は、どうも止むを得ないことと思うのであります。併しながらかように法規が多くなりますれば、如何に遵法精神がありましても、実に法律通り生活するということが甚だ困難になつて来る。従つてこの遵法精神を高揚せしめるためには、どうしても法律の周知徹底が必要であります。従来はこの点について閑却されておつたのでありまして、法律が出れば当然国民はこれを知つておらなければならぬという態度でありましたが、これは私は親切なるやり方でないと考えますから、どうしても国家の、政府の手によりまして、法規の周知徹底ということを図りたいと考えております。現在でも法務府の中に、これは終戰後であります、新憲法下においてでありますが、情報課と申しますものを設けました。言葉は少し不十分でありまするが、これは国民に法規を周知徹底せしめるための機関でございます。只今でもパンフレツトなり、雑誌なり、或いは講演等によりまして、周知徹底を随分努めておるのでございます。併しまだまだ予算等も不十分でありますので、今後一層この点に力を入れまして、国民の隅々にまで法律の精神なり或いは法律のあり方につきまして、周知徹底をいたさせたい、その上で以て国民の遵法精神というものを高めたいと、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣林讓治君登壇拍手
  15. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 高橋君にお答えいたします。  宮城県の岩ケ崎町に発生いたしました百日咳予防接種によりまする事件の起きましたことは、所管の大臣といたしまして、被害者に対しまして衷心から御同情を申上げるわけであります。その百日咳の予防接種は、予防接種法によりまして、本年の六月三十日から実施されたのでありまして、岩ケ崎町において行われましたものは、その実施以前の昨年の十一月下旬に、宮城県の若柳保健所の勧めによりまして実施いたしたものなのであります。従いまして厚生省といたしましては、その問題が起きますや、取敢えず治療の万全を期しまするがために、ストレプトマイシンを特別に斡旋をいたしまして、宮城県における診療について便宜を図り、又生活保護法の適用による生活の援助なども行なつて参りまして、県におきましては三百余万円、町におきましては八十余万円を支出いたしまして、できるだけ治療を行なつたのでありましたけれども、不幸にいしまして一名の死亡者を出すに至つたわけであつたのであります。その他の患者は本年の八月までに重症三名を除きまして六十名の退院を見たのであります。今後の対策といたしまして、厚生省はこの種の事件の根絶を期することは勿論のこと、当面治療援護につきましては、或いは栄養確保のためにララ物資を補給いたしましたり、或いは県衛生部におきましては定期的に健康の診断を行なつて患者の診療に万全を期するなど、遺憾なきを期しておる次第でございます。尚、県衛生部、岩ケ崎町の経費負担につきましても、国の補助は予防接種法による措置でも遺憾ながらございませんのと、又そのワクチンが十分の検定をいたしたものでもございませんので……が併しながら非常に御同情申上げるべき一つの問題でありまして、種々何らかの方法によつて支出を考えてみたのでありますけれども、遺憾ながら現在の法律範囲におきましてはこれを実施することができませんので、高橋議員の御期待に副い得ないことを誠に遺憾に考えておるわけであります。その点、篤と御了承をお願いいたしたいと考えるわけであります。(拍手
  16. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 大蔵大臣は病気のため答弁を他日に留保されております。天田勝正君。    〔天田勝正君登壇拍手
  17. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は日本社会党を代表いたしまして政府質問いたします。  第五国会終幕以来僅々五ケ月間に、我が国内外の情勢は驚くべき変貌を遂げたのであります。五月末にはパリにおける四国外相会議において、東西両勢力の調整がとられておつたのでありまするが、十月になりますると東独政権の成立が宣言せられまして、更に九月にはソ連の原子爆発が確認されておるのであります。東亜においては九月三十日、中華人民政府の樹立が宣言され、今や国民政府の最後の拠点でありまする重慶に砲煙上らんといたしておるのであります。この間MRA大会のごとき平和への努力も試みられましたが、東西両勢力は冷たい休戰のまま險惡化しつつあるのであります。国内においては陰惨なる不祥事件が惹起する一方、台風は次々と襲来いたしまして、復興途上にありまする我が国に甚大なる影響を與えたのであります。又政府部内におきましては、国家警察本部長官、この更送問題をめぐりまして、内閣と公安委員会の対立という事件が惹起され、国民の一大不安を與えたのであります。  かくのごとく国際的に国内的に激動の中にありまする日本にとつては、その激動に対処する覚悟と政策の樹立がなされなければならないのであります。私はこの見地に立ちまして、主として国内問題について以下順を追うて政府の所信を質したいと思うのであります。  先ず治安問題について質問いたします。政府は六月十三日治安閣僚懇談会を開いて、警察制度の再検討をなさつておられます。下つて九月八日、樋貝国務大臣は記者団会見において警察法改正を表明いたされました。然るに折柄来朝中のヴオルヒーズ陸軍次官は、九月十日の記者団会見において、日本の警察力は十分である、こう述べられておるのであります。思うに現警察に欠けておりまする点は、その機構或いは数にあるのでなくして、その運用、予算の問題、並びに、治安に任ずる意思にあると思うのであります。然るに政府は敢えてこれが改正を俎上に上ぼせてある、このことは第五国会におきます労働諸法規の改惡、公務員法、人事院規則、或いは又今期国会に上程を予定されておりまする地方公務員法等によりまして、思想彈圧、この問題と関連して、巷間戰前の特高警察の復活を企図しておるやに伝えられておるのであります。政府は果して特高警察の復活のごとき改正をもくろんでおられるかどうか、樋貝国務大臣は如何なる改正をもくろんであられるか、先ず明らかにした頂きたいのであります。  次に七月六日、内閣は公安委員会に対しまして齋藤国警本部長官の罷免の申入れを行なつております。公安委員会はこの罷免の理由はないということによりまして、内閣の申入れを拒否された。内閣はこの拒否に対しまして、直ちに声明を発表せられると同時に、増田官房長何から不適格五理由を公表されたのであります。政府みずからが不適格者なりと断定いたす者が国家治安の実権を握つておるというこのことは、当時不祥事件の頻発の折柄でありましたために、国民に一大不安を與えたのであります。この事件は総理並びに官房長官と、治安担当大臣たる樋貝国務大臣との閣内不統一でございます。若し旧制度でありましたならば、内閣不統一の責を負つて直ちに闕下に辞表を捧呈しなければならない重大問題であると思うのであります。官房長官、樋貝国務相、公案委員会、齋藤長官、そのいずれにこの責任がありまするか。今日におきましては、主権者である国民に対してこれを公表するところの義務があろうと思うので、私は国民の代表といたしまして、総理、官房長官、樋貝国務相に対し、本事件の措置の公表を要求するものであります。  次に中小企業対策について、稲垣通商産業大臣並びに大蔵大臣に伺います。我が国の経済再建に当つて貿易の発展が重大なる要素であることはここに喋々するまでもございません。目下政府は集中生産方式によりまして、中小企業を顧みないかのごとくに見受けられております。併しながら、すでに戰前に比較いたしまして七〇%の復活を見ておりまする今日は、大企業重点の方式に一大修正を加える必要があろうと思うのでありまするが、この点に対する通商産業大臣の所見を承わりたいのであります。次に第二国会において中小企業庁の設置がなされまして、これら企業の育成が図られたのであります。然るに定員法の施行に伴いまして、現在僅かにこの機構は九十四名によつて運用されております。この程度の小機構によつて中小企業の育成は十合であると産業大臣はお考えになつておられるかどうか。更に中小企業に対する金融の問題でありまするが、今日においては大企業も中小企業も同例に扱いまするために、結局復金の例に見まするがごとく、中小企業は殆んど問題にされないという結果を生ずるのでございますが、これは中小企業の規模に対応するところの金融機関の設立が必要になつて参ると思うのであります。従つて現在の金融機関を区分いたしまして、その産業規模に応ずるところの金融機関設置の用意があるかどうか。大蔵大臣に伺います。  次は在外同胞引揚対策につきまして、総理、大蔵大臣並びに厚生大臣に伺います。先ず引揚同胞に対する基本的な考え方について総理に伺いたいのでございます。現在單に引揚者と総称いたしておりまするが、この引揚には二種類あるのであります。即ち今次戰争によつて日本が侵略しました地域における引揚と、それ以外の地域の引揚であります。沖縄、千島、奄美大島は本来日本の領土でございました。台湾、南樺太、関東州、満鉄附属地、朝鮮、南洋諸島、これらはそれぞれ條約に基きまして、日本が割讓を受けるか、或いは委任を受けた地域でございます。而も朝鮮を除いてはこれら條約の相手国はむしろ日本より強大であつたのであります。この條約が不当だといたしましても、これは在留民の責に帰すべきではなくして、国家相互の責任であるのであります。従つてこれらの地域は講和條約によつてその帰属が決定されるまでは通常日本に委ねらるべきでございます。在留民は日本政府によつてその居住、労働、企業の諸権利ガ保護されなければならないのであります。然るにこれらが保障されませんために、連合国の命令と日本政府の実行によつて危險のない地域に移住を命ぜられたと考うべきであるのであります。従つて国内的には、これらは引揚にあらずして強制立退きと言えるのであります。故にこれらの引揚者は、前居住地域と同様、居住、労働、企業の諸権利が政府によつて保障されなければなりません。この基本的な点に関しまして、総理はどのように考えておられるか承わりたいのであります。次にソ連地区、中共地区の在留邦人の引揚に関しましては、総司令部、ソ連代表部に対して、総理はどのような墾請、折衝をなされておられるか、勿論正式交渉は不可能な今日でございますが、併し国会及び民間団体はこれをなしているのであります。これらの国会並びに民間団体がなし得ることが総理にできない筈がないのであります。この点に関する総理の熱意を承わりたいのであります。  第三に、引揚者の在外資産については、外務当局は講和の成立までは論ずることが困難であるとの見解を持つておられるようであります。五月の極東委員会で米国代表マツコイ少将が我が国の賠償施設撤去中止の声明を発せられました際に、同代表は、日本は在外資産を以てすでに賠償を支拂つているとの見解を有していると外電は報じているのであります。更に米国上院は、一九四八年七月戰争犠牲補償法なるものを通過せしめまして、その内容として伝えられる点は、一、日独両国人の財産にして敵産監理局長官において管理しあるものはすべて日独人に返還しない。これを売却処分いたして置きまして、二、第二次世界大戰中、日独両国によつて抑留された米国人に対し、財務長官は週三十ドル程度の計算を以て右資金によつて損害を補償する。こう伝えられているのであります。然らば今述べましたところの日本が賠償を行いつつあるとの報道と符節を合せているのでありまして、もはや在外資産問題は国内問題として解決すべき段階に到達したと思うのであります。ここに申上げまする在外資産とは戰争遂行企業としてではなくして、一般在留民が正当に取得して零細資産を指すのであります。外務大臣はこれが措置について如何ように考えておられるか。或いは在外資産補償法の提出について考えておられるかどうか。伺いたいのであります。  次に在外公舘が戰争後、当時の政府——吉田外相でございますが——の命令に基いて資金の借入を行いまして、引揚の費用に充てたのであります。これが一応の措置といたしまして、第五国会に在外公舘等借入金整理準備審査会法、こうした法律が制定せられました。この法律に基いて本年度中にその確認がなされるのであります。大蔵大臣はこの確認があつた以上は、二十五年度予算にこれを計上する用意があるかどうか。この点を伺つて置きます。  次は住宅問題でありまするが、住宅危機は世界的な現象でありまして、もはや理由を述べる必要はございません。ただ引揚者は現在、神社、仏閣、工場、或いは豚舍、或いは鶏舍、こういうものに住まつております者が一割に上ぼつております。これが急速なる対策の樹立を要望されておるのであります。政府は公営庶民住宅建設について今回の補正予算に増額の用意があるかどうか。又住宅復興金庫の設立の用意があるかどうか。この点を明らかにして頂きたいと思うのであります。  第五に、内地に地盤を有しない引揚者にとりましては、新規着業資金は更生の鍵ともいうべきものであります。本年度貸付目標額は三億円でございまするが、これを十億円に引上げる用意があるかどうか。又引揚者の唯一の金融機関は国民金融公庫であります。この資本金を二十億円増資するの用意がありまするかどうか。  次は文化財保護と学者身分保障の問題につきまして、文部大臣、建設大臣及び厚生大臣にお尋ねいたします。先の国宝法隆寺の燒失によりまして、各界非常にこの文化財保護の問題が重視されるに至りました。このことは遅きに失したとは言いながら、非常に喜ぶべき現象でございます。文化財とは勿論国宝に止まるものではございません。最近新聞紙の伝えるところによりますると、南葵文庫、或いは仙台文庫、幾多の貴重なる文庫が、僅かの維持費がないために散逸の危險に陷つております。或いは又博物館等の標本は放置されておる。こう伝えられております。過日のノーベル賞に輝く湯川博士の写真のその下には、我が国科学研究の破滅が掲載されておるのであります。こういう状態でありまするから、これらの措置は最も急速に対策を立てられなければならないのであります。又一方、明治以後におきまする我が国の世界に誇り得る文化的な業績は、個々の学者によつて成し遂げられておるのであります。遠くは野口英世博士、或いは志賀潔博士、或いはZ項の木村博士、近くは湯川博士、これらの得難い博士は、日本によつて認められるよりもむしろ外国によつて認められ、この援助によつてその天分を発揮いたしまして、人類文化に貢献し、更に世界の学界に我が国文化を認めしめておるのであります。私はこの学者の天分と、国家の保護と、社会の尊敬、この合作による諸外国の例のごとく、日本においてもさようにしなければならないのでありまするが、現在事務官僚の下風に学者を圧迫しておる事実を指摘し得るのであります。まして公務員法或いは定員法の惡用によつてこの事実を見得るのであります。七月三十一日の毎日新聞に掲載されました予研の矢追博士事件はその一例でございます。一学者のことをと或いは嘲笑される人があるかも知れません。併しながら瀘過性病毒の世界的権威者を極めて不明確な無根な理由によつて馘首いたしました林厚相が、又やがては日本が後悔するときが来たるであろうと警告申上げて置きます。  さて、そこで質問いたしたいのは、学校附属の研究所の研究者は、教育公務員特例法によつて、多少その身分が保障されておるのであります。ところが官庁附属の研究所、例えば予防衛生研究所のごとき、これらの学者は何ら身分の保障がなされておらないのであります。これらに対して政府は特別の法律を制定する用意がありまするかどうか。或いは先に申述べました文化財をどのように保存されまする用意がありまするかどうか。又今次補正予算においてはどのような措置が講ぜられておりまするかどうか。この点をお伺いいたします。  更にもう一点、文化財創造者に対する課税の問題について大蔵大臣に伺います。元来、漱石なくんば漱石文学はなかつた筈であります。幸田露伴なくんば露伴文学はこの世に生れなかつたのであります。或いはエジソンなくんば電気の惠沢に我々は浴せなかつたのであります。野口英世博士なくんば黄熱病の災禍から人類は免れ得なかつたでございましよう。これらの文化創造者は他人の労働を何も搾取しておらないのであります。みずからの頭脳と努力によつて文化を創造し、その惠沢は人類がこれを受けておるのであります。従いましてこれらの文化創造者に対しまして課税するは愚か、我々は感謝と賞金を贈らなければならない義務があるのであります。この観点に立ちまして、政府は今回の税制改正に当つて、発明者、発見者或いは著述者、これらに対して課税特例法を設くるの用意があるかどうか。  次に農村対策について、農林大臣大蔵大臣並びに安本長官に伺います。先ず農業政策の基本でございまするが、我が国従来の農業政策は戰争を前提とする主食自給主義にあつたのであります。一朝戰時の場合、封鎖経済に対処するために、ひたすら国内自給の建前をとつて参りまして、農業労働力の生産性を高めることによつて市場に適応するという、近代経済法則に逆行する政策に終始して参つたのであります。併しながら戰争を放棄した日本はもはやその必要はございません。又調和会議を真近に望んで、国際経済への全面的な参加近きを予想される今日において、主食強制作付主義から適地適作主義へ、又土地の生産性重点から労働生産性の高揚へ、この転換を早くいたさなければ、日本の農業はやがて崩壞に瀕するであろうと思うのでありまするが、農林大臣はこの基本的な点についてどのように考えておりまするか伺いたい。  次に我が国農業の近代化を急速に成し遂げまするためには巨額の資金を必要といたします。現在の農村は窮乏の一途を辿つておりまして、到底この資金の調達は不可能でありまするが、これに対して国家資本投下の用意があると思いまするが、農相はどのように考えておられますか。又政府は農業復興金庫のごとき長期金融機関を設けてこれに当らせる用意があるかどうか。昨年、勧業銀行を普通銀行に改編いたしました。これによつて農村の不動産金融の途は鎖ざされているわけであります。政府はこれに代るに興銀を以てなさしむるか、或いは新たな特殊銀行を設ける用意があるか。この点は大蔵大臣に伺いたい。  次に今年度の供出成績の上らないのは米価の決定が遅れた点でございます。これは同僚議員諸君の指摘された点でもありまするが、対価を決めずして物を引渡せというのは、ただ弱い農民にだけ強要している偏頗な措置であるのであります。これは明らかに国家権力の圧迫による私有財産の收奪でありまして、憲法違反であると思いまするが、農相はどのように考えておられるか。農民は收奪的米価、徴税的な供出、これに堪えつつ祖国の復興に協力しております。この犠牲の中で、第五回国会を通過いたしました土地改良法は農民にとつてただ一つの希望であります。現在土地改良法がありましも、予算は計上されておりません。又従来の改良費も殆んど削除されているという状態であります。一方去る八日参議院議員会館において、土地改良促進全国議員大会が開かれました。このときは民自党を初め各党代表が参加されまして賛成されているのであります。又坂本農林政務次官もこれ又参加されまして賛成の意を表されております。この土地改良の問題に対して農林大臣は如何なる促進の用意があるか。或いは予算措置はどのように考えておられますか。伺いたいのであります。  次に安本長官に一点伺います。農村工業の振興を図らなければ農村の過剰人口は吸收できないと思うのであります。従つて政府はTVAのごとき機構によりまして総合的に電源を開発すると同時に、これを基礎として農村工業を興す必要があると思いますが、所信を承わりたいのであります。  政府日本の復興のために国民に耐乏を要求しております。耐乏も結構でございます。併しその耐乏には、耐乏することによつて、いつになつたら明るくなるかという希望を與えなければならないのであります。それ故に各国共に長期計画を立てまして国民に希望を與えつつ復興に努力しているのであります。総理は五ケ年計画のごとき長期計画は無駄であるということを過日申されております。犠牲のみを強要されておりまする農民にとつては盲耐乏は迷惑千万でございます。特に土地改良事業は、その性質上長期且つ計画的に行わなければ到底成功し得ないのであります。この点につきまして安本長官は長期計画必要なしと主張されるかどうか。承わりたいのであります。農民は誠に犠牲の強要ばかしを受けております。併し未だ赤旗を立てて総理官邸を取囲んでおりません。又議会に集団坐り込みもいたしておりません。併しながら農民一度憤激して立上るならば、大地の崩るるがごとく、或いは地軸を揺がせるごとく殺到して参りまして、吉田政権のごときは疾風枯葉を捲くがごとく壊滅せられるであろう(笑声、拍手)ということをば警告いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。我が警察制度の完成については、政府はその一日も早く完成充実を図らんとして種々調査をいたしておりますが、併し特高警察のごときを置く考えは毛頭ないのであります。又国警長官は更送を見ずして未だ尚同じ人が長官になつておるのであつて、その経緯等についていろいろな世間に噂がありますが、一昨日申した通り政府が一々弁明の責任をとるわけに行かないのであります。  又強制引揚者の住居はどうするか、或いは在外資産の補償はどうするかという御質問でありますが、これは結局講和條約の問題でありまして、講和條約後に至つて初めて政府としては適当な処置を講ずる考えでおります。  又在外公館の措入金については、これは政府としては支拂いたい、支拂うという考えを持つておりますが、何分引揚当時忽率な際であるものでありますから、正確なる調査が誠にしにくいのであります。殊に今日においては当時の在外公館は撤去され、又文書等についても取調べが甚だ完備しておらないために調査が進みませんが、成るべく早くこの調査を完了いたしまして、それぞれ処置を講じたいと思つております。その他は主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣樋貝詮三君登壇拍手
  19. 樋貝詮三

    国務大臣(樋貝詮三君) お答えいたします。只今総理大臣から答弁のありました通り齋藤国警長官に関しましては、こと人事に関しまするので、詳細に私が申上げるわけに参りません。只今総理大臣の言われた通りと私も存じておる次第であります。  それから警察の方面は特高警察を回復するというようなことは全然夢想だにしておりませんが、只今のところは報知は来ておりますようなものの、政府においては何ら指令をしておらぬのは事実でありまして、これは御心配のないことだと私は考えております。(拍手)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇拍手
  20. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 天田さんの私に対する分についてお答えを申上げます。中小企業日本経済産業の上に占むる重要性については、政府としては十分認識いたしておる次第であります。集中生産といい、或いは企業合理化ということは、結局するところ、一方においては高度の操業を行うということと、他方において経営の能率化ということであります。そこで高度の操業を行うという面におきましては、政府といたしまして中小企業の協同組合化の問題について、一方特にこれが促進に十分力をいたしますると同時に、経営能率化においては、各中小企業に対してそれぞれの業種別に工場の診断を行う、これらの技術指導をいたしておるような次第でありまして、全然中小企業をネグレクトしておるということはないことをはつきり申上げて置きます。  次に中小企業庁の定員が減つたが、あれで間に合うかどうか、こういつたようなお尋ねであつたようでありますが、我々は十分これで間に合うつもりであの定員法を提出いたしたわけであります。併しながら今日中小企業のいろいろな指導と言いますか、育成と言いますか、そういつた方面について多数の人を要することは勿論でありまして、若し必要とあります場合におきましては、省内における各現職の人を手助けにいたしまして遺憾なきを期したいと存じておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣林讓治君登壇拍手
  21. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 先程引揚の問題につきまして、強制立退のごとき問題のお話があつたのですが、終戰後、小笠原島であるとか、沖繩、奄美大島というような所は、樺太同様の引揚者としての取扱の観念でやつておりまして、内地無縁故者の引揚者の場合にはそれぞれ相応の取扱をいたす。全く同様に取扱つて別の取扱をいたすような考えは持つておりません。尚、引揚者の住宅の問題でありますが、極めて御同情申上げるべきものと考えまして、この度の補正予算におきましては約四億二千万円くらいのものを計上いたしまして、整備或いは買收であるとか、或いは建設であるとかいう方面に使用いたしたいと考えております。従つて御協費を得ましたならば、直ちに取計いたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇拍手
  22. 高瀬荘太郎

    国務大臣(高瀬荘太郎君) 第一に、国宝の保存の措置及び予算の点についての御質問お答えいたします。  国宝保存の措置につきましては、予算の外に保存行政及び保存技術などにつきましての改善も是非共必要であると考えまして、これにも十分検討を加えて、万全を期しておる次第であります。尚、国宝保存につきましては、国家も無論責任を負うのでありますけれども、御承知のように国宝の大部分国家の所有物ではありませんで、個人の所有物であります。従いましてその保存を完全にいたしますにつきましては、所在者個人におかれましても今少し保存の責任を考えて頂く必要があると考えております。併し何と言いましても、今最も重要な故障は、保存についての経費の問題でありまして、国宝所有者の大部分が今日経済的に非常に困窮に陷つておりますし、他方、国家予算も甚だ不十分であるというところで、保存事業経済的に非常に困難に当面しておるわけであります。戰争中全く荒廃に任されておりました非常に夥しい数に上ります国宝について、その全部を急速に修理保存するということは、経済的に到底できませんので、文部省といたしましては、その重要性、保存の程度などをよく考えて、重点的に順次完成を図る計画を立てておるのであります。これに必要な予算につきましては、勿論不十分ではありますけれども、本年度は昨年度に比べて二倍に増額をいたしました。又来年度は本年度の約二倍ぐらいに増額をいたしたいと考えております。  次に、大学或いは大学附置研究所以外の研究者の身分についてのお尋ねがありましたが、これらの方々の研究も無論研究として十分尊重をし、保護しなくてはならないと考えておりますが、教育公務員特別法というのは、教育に関係のある職員に対する身分の保障でありますからして、同じく研究者でありましても、これと同じように扱うということはどうしても適当でないと考えております。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎君登壇拍手
  23. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。  戰時体制といたしまして、日本の農業が特殊の構想の下に置かれて参りましたことは御承知通りであります。御説の通りでありまするが、今後日本の農業が世界の産業と融和して行かなければならないという段階に進んで参るのでありますから、従来のような農業政策を以て臨むことのできないことは当然であります。今後自主的な貿易を許されるということを考えまして、日本の農業政策を根本的にこれを改正して諸般の施設を行なつて行かなければならぬと、かように考えておるわけであります。  次に、米価の決定が遅れて、それがために供出が遅延しておる、且つ今日の供出制度は憲法の趣旨にも背くような強制的であるという御意見でありましたが、今日の食糧事情から考えまして、海外より食糧を仰いでおるという関係食糧の不足をいたしておる関係から、食糧の供出配給の形式は法律によつて定めまして、農民諸君の協力を得ておるようなわけであります。これは決して憲法違反でもないのでありまして、今日の食糧事情といたしましては、生産者である農民諸君の絶大なる協力を是非お願いしなければならんでありましよう。本年の米の供出の遅れておりますことは、決して米価の決定が遅れておる、こういう意味ではないのであります。本年はこの收集の時期に当りまして、非常に各地とも天候が惡いのであります。従つて調整等が遅れておるということが今日供出が予想通り進んでおらないという原因と私は考えておるのであります。  尚、土地改良についての御質問でありましたが、土地の改良につきましては、予算の面においては前年と変つて相当の増額を計画いたしておるのでありますが、尚、土地改良は長期的な事業でありますので、特別会計等を設けまして、そうして長期の低利資金の融通ということを今後考慮して行きたい。かように今対策を考究いたしておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣青木孝義登壇拍手
  24. 青木孝義

    国務大臣青木孝義君) 天田君の御質問お答えを申上げます。  農村の電力化の問題は、勿論我々日本経済の全体的な観点から見ましても極めて重要な問題でありまして、この点については今後日本のこの総合開発計画、特に電力の開発の進行に伴いまして、この方面の漸次充実は図つて行かれると考えておりまするが、御承知のように、今年度全国におきまして三十三の電源の開発が予定されております。これにつきまして今年度恐らくその半数以上の開発につきまして、見返資金等を以ちまして急速にこれが着手をいたし、この実現を図りたいと存じておる次第でございまして、折角私共もこの点について努力いたしておる次第でございます。  尚、第二点の経済安定本部がやつて参りました五ケ年計画の問題であります。この復興五ケ年計画につきましては、御承知の通の今年ドツジ・ラインによつてインフレーシヨンの終熄を期するというような点から、大体におきましてインフレーシヨンを終熄させる、この点については、最も大きな需要者である政府、殊に財政の均衡を図らなければならぬというような点から、急速にこの経済的な……或いは財政金融の面におきましても大きな変化をいたしました。従つて五ケ年計画考えまして、而もそれに対するもろもろの條件があります。この條件等を勘案いたしまして、十分我々も検討をいたして参りましたが、何しろこの急速な変化に対応いたしまするためには十分ではないということから、五ケ年計画の発表を差控えた次第でございます。更に私共といたしましては、経済安定本部で大体二ケ年くらいの先を見通して、そうしてその見通し作業をいたしますと共に、実行可能であるという点を中心といたしまして、今後共十分検討をいたして参る所存でございます。(拍手
  25. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 大蔵大臣答弁は、先刻も申しました通り他日に留保されております。      —————・—————
  26. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 国務大臣演説に対する質疑は尚ございますが、議事の都合により明日引続き行うこととし、この際、日程第二、船舶法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。運輸委員会理事丹羽五郎君。     —————————————    〔丹羽五郎君登壇拍手
  28. 丹羽五郎

    ○丹羽五郎君 只今議題となりました船舶法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会におきまする審議の経過並びに結果を御報告申上げます。  現在の船舶法によりますると、日本の船舶の所有者は船舶原簿に登録をいたしまして、船舶国籍証書の下付を受けることを要件といたしております。又登録事項に変更があつた場合には、変更の登録、船舶国籍証書の書換等を申請しなければならぬことに相成つておるのであります。併しながら実際は船舶の沈沒、解撤、行方不明、売買のような登録を抹消又は変更すべき事由が発生をいたしましても、登録簿の上にはそのままと相成つておるのでありまして、船舶国籍証書も返還をされませず、書換もされないでいる事柄が少くないのであります。このような状態が生じましたのは、関係法規が單に罰金刑を以て強制されるだけでありまして、船舶の運航には何らの支障がないことになつておるからであろうと考えられるのであります。本法案はこのような状態を改善をいたしまするために提出をされたのであります。  次に本法律案の内容の要点を申上げますと、その第一点は、日本船舶の所有者をして定期的に船舶国籍証書を管海官庁に提出をされまして、その検認を行ないまして、検認を受けない国籍証書は無効といたしまして、管海官庁をいたしましてその船舶の登録を職権を以て抹消せしめ、船舶国籍証書及び船舶原簿を現状と合致せしめることといたしたのであります。これの主なる原因と申しまするのは、戰争中の混乱によりまして船舶原簿が船舶の現状と非常に不一致になつておるのであります。一例を挙げますならば、終戰前に二万一千六百十三隻、総トン数におきまして四百十九万トンありました船が、現有船舶におきまして一万六千三百八十七隻、その総トン数は二百七十七万トンと相成つておるのでありますが、これが相変らず船舶原簿に載つて抹消されずにおるのであります。かようなことをよく調整いたしまするために、国籍証書の検認を行いまして、船舶原簿の正確性を回復するのが改正の目的の要点であるのであります。第二点は、船舶所有者変更の場合は、登録の変更並びに船舶国籍証書の書換を申請した後でなければ、その船舶を航行させては相成らぬことといたしたのであります。去る十一日、小豆島の沖合におきまして、美島丸事件がここに起つたのであります。この遭難事件が新聞紙の報道いたしますることが果して事実と相成るならば、この法律が一日も早く成立をすることが必要な事態が起つて来たのであります。第三点は、日本船舶を擬装するもの、或いは日本船舶のような国旗を掲げたり、又日本船舶にひとしい擬装をいたしまして、密輸出をする、又密輸入をするもの、或いは正当な手続を経ず且つ又国籍証書の下付を受けることなく航海するもの等につきましては、その行為の惡性が特に著しいときには、船舶を沒收し得ることといたしました外、現下の経済情勢に適応するように罰金の額を調整いたしたのであります。  現行の船舶法は明治三十二年法律第四十六号を以て規定をされたものでありまして、今日までまだ一回の改正もされていない法律であります。かような意味におきまして、運輸委員会におきましては本法律案につきまして愼重審議を重ねましたる結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。以上甚だ簡單でございまするが御報告申上げます。(拍手
  29. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。    〔総員起立〕
  30. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。  次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十九分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第五日)  一、日程第二 船舶法の一部を改正する法律案