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1949-11-11 第6回国会 参議院 本会議 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十一日(金曜日)    午前十時十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第七号   昭和二十四年十一月十一日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りいたします。橋上保君及び栗栖赳夫君よりそれぞれ病気のため今期中請暇の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  5. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。昨日に引続き順次質疑を許します。仲子隆君。    〔仲子隆登壇拍手
  6. 仲子隆

    仲子隆君 民主党を代表いたしまして一部の質問をさして頂きます。  総理大臣の過般の施政演説に対して、他の多くの人々と共に不満を感ずることは同様であります。抽象的であり、一般的なる言葉でありまして、具体的なる内容が示されておらない。これに対して昨日首相は、その、予算を見ろという御答弁もありましたが、今日予算内容を知る由もないけれども、大体この状況を判断いたしますると、必ずしも首相のここで宣言せられるような事情があるとも考えられない。(「その通り」と呼ぶ者あり)殊に他の例をとりまして、この休会中政府当局の多くの方々が、自分の個人の意見であるか、或いは政府方針であるか、随時適当なる放送をせられて、又立所にこれが取消される。かの八月朗報であるとか食糧に関する諸問題のごとき未だ決定せざることが勝手なる方式を以て述べられるごときこと、今日の総理大臣の御答弁と同様、未だ具体的内容を示さざるものについて抽象的なることを言われるのは、国民を愚弄するものであると思うのであります。(拍手)  先ず外交問題について若干のお伺いをいたします。外交の問題はまだ何とも分らないものであるということは誰にも想像つくが、総理大臣は外電の報ずるところとしていわゆる朗報を述べられたのであろう。併しその朗報なるものの中には、或る一国の考えであるか、或いは数ケ国の考えであるか、或いは四ケ国、十一ケ国、或いは連合諸国考えであるか、我々が新聞で見る限りにおいては甚だ不明瞭なものである。これを最初に取上げて報告せられる。演説せられるということについては、総理大臣は相当に自信内容を持つての御発表であることと思うのであります。然るに昨日来次々来るところのその外電なるものの中には、我々が必ずしも簡單に了解することのできないことがある。若し今日まで現わされておる一国若しくは二国の場合においては、今日複雜なる国際情勢において、又極めて危險考えられるべき国際情勢において、日本を取巻くところの地理的條件は、ただ一国の意思を受取る、或いは二国の保護を受けるというようなことのみに限るものではないと思われるのであります。殊に若し或る一国が特に單独講和をし、我が国保護的なる立場に置く場合においては、これは保護国になるのであるか。一つの国の保護を受けるという場合において、その国と他の国とにおいて一つの争いが起る場合には最も危險なる地理的情勢にあるものである。これらのことを考えまして、私は総理大臣のお考えは、如何なる国々を相手として考えられて、この朗報を我々に伝えられたのであるか。これがお伺いしたいのであります。  又、或る地区を、これを租借地として、ここに軍を派遣するというようなことが考えられました場合において、残されたる他の地区我が国国民の力によつて治安を保持しなければならない。政府方針従つてこの治安は守らなければならないのであります。然るに今日においてすら、相当十分なる警察組織はあると言われておるに拘わらず、実情としては占領軍援助を得なければ治安は十分に保たれない現状にあります。まして独立の国としてみずからこの治安を守らねばならないという場合において、かかる場合に果して一国内の治安さえ保たれるか。まして永世の中立的な意味永久の平和の立場にあることができるか。これは誠に私としては疑問に感ずるのであります。  次にこの戰争以来或いは占領下におきまして、我々は非常に苦しい苦痛の生活、小さな殻の隅に閉じ籠つた生活をいたしております。このために占領下においては唯々諾々とその命に従つて、まして若干、心の中に要求する、希望する点がありましても述べないで、ただこれに従つてつたのである。これは戰時中における翼賛政治組織と同じ姿にあつたように考えるのでありまするが、今やこの朗報を得て、やがて我々が一独立国として立つということになれば、ここに国民として、或いは国家として、この相手国に要求すべき点が多々あるものと思います。希望をし、要求する点の諸点はすでに政府においては用意されてあるのであるか。ただ單独講和をし、或いは数ケ国の講和をする場合においては、向うの命令従つてこれを鞠躬如として受ける立場にあるのであるか。この点が我々は過般の総理大臣演説においては明らかでないのであります。(「受ける立場だ、しようがない」と呼ぶ者あり)この点を若し御用意があるならば御説明願いたいと思うのであります。  次に過般の総理大臣演説においては、我が国文化国としての位置を示さなければならない、今日までは耐乏生活を褒められてかようなことができたのであるが、これからの平和会議その他に参加して、国民はその民主国家的な国民態度を示さなければならぬと言われるが、その文化と言われるのは一体何を言われて指されておるのであるか。戰争中或いはそれ以前の日本において、世界国民に対する日本の信用は甚だ少いのであります。平和時においても、とかく貿易上の不信実、不良なる生産というような点において信頼失つてつたのであるが、戰時中においては日本人の不信実、或いは詐略的な態度、更に非人道的な態度、場合によつては非人間であるというような感情を持つて日本に向われた例が若干考えられる。もとより今日、世界の好意又は慈悲によつて、我々は相当の恩惠と優遇とを受けていることは知つているのでありますけれども、一例を以て申せば、過般のフイリツピンにおけるユネスコ運動日本人は加わることを許さないという主張が出たごとく、その他のMPA会議、或いは或る一地区新聞等内容において、今日尚、日本人世界の人類としての一員として待遇せらるるに、やや不安を感ずるがごとき傾向が感ぜられるのでありますが、これらに関して総理大臣は如何にお考えであるか、お示し願いたい。以上数項目について、今日の平和條約問題に関して総理大臣のお説を伺いたいのであります。  次には文教関係の問題で文部大臣に主としてお伺いいたしたいのでありますが(「文教は満点だ」と呼ぶ者あり)文教の問題について過般総理大臣は、国際社会一員として恥かしからぬ民主文化国家たることを実証せぬばならぬ、更に文教の基本を確立し、民主国家を担当するにふさわしい国民を育成するということを述べられておるのであります。文化国家たる日本としては、先ず第一に世界に誇るに足る文化財というものが我が国にあります。先人が苦心して古き昔から作り上げたこの文化財、在るものはこれは国宝となつておる、これが十分に保護保存せられておるのであるかどうか。更に又これを世界に示すために十分展示し、人に見せるというような組織方法ができているのであるか、これらの点が一つの問題であります。  次には学問芸術に関する問題であつて、今日において日本文化を進めるためには、学問芸術一般について政府は十分なる努力をせられなければならない。野口博士湯川博士のような学者、その他の芸術家苦心努力を、更にこれを育成しなければならないのは当然のことであります。その次に、国民教育を進め、その施設を充実して、世界に立ち得るところの立派な国民を育成しなければならぬ。この三つの問題について、これから若干具体的なる例を挙げてお伺いするのであります。先ず第一に文化財についてでありますが、過般来、国宝の問題について頻りに論議せられておる、保存組織方法の過ちから法隆寺のあの災害もあつた。併し現に全国各地情勢を見ますと、国宝として保つべきものが腐朽し、破損し、今日の現状においてさえ甚だ憂慮すべきものがあるに拘わらず、尚このまま置くならば、近き将来においてすつかり腐朽し果ててしまうのではないかと思われる点があります。試みに重要なる例を挙げて見ましても、外国人に見せるために多く利用せられているところの日光であるとか、姫路城であるとか、或いは京都、大阪方面にある各国宝のもの、地方に隠れている国宝のもの、かようなものが今日速かに手を入れなければ立ち所にこれは永久に取返しの付かない情勢になると考えられるものがあります。然るにこれに関する政府予算は今年一億五千万円程度であるように考えられる。こんな少額を以てして、この大事業を、或いは永久文化財なるものが保護できるか、或いは一般に見せるための用意が整うかという問題であります。  次には科学研究について、今年大体予想せられるところのものは四億四千万円であり、大学の研究費には六億七千万円であるが、合計十一億一千万円くらいなものを以て日本科学を振興し、芸術を進展せしめるということが果してできるのであるか、多くの学者のグループが今日アメリカに行き、アメリカのいろいろな設備資材の中において研究したい希望を頻りに発表せられるのは、我が国が余りに現在貧弱であるからである。更にこれが二十四年度予算において、今申したと同じ十一億一千万円が、今年度出されるところの予算において果してどれだけの進展でせらるるのであるか。これらについてお伺いしたいのであります。  次に初等教育について特に力を入れるという総理大臣説明であるが、本年度予算義務教育費が二百二十二億である。二十五年度においては僅かに十億の追加と想像せられる。学童の増加或いは朝鮮人兒童引受け等から見て、この十億円増加くらいを以て果して初等教育施設が充実せられるという意味になるであろうか。これは如何なるものでありますか。殊にこの新制六・三制教育整備について考えて見ますると、教育使節団の指導によつて六・三制を採用いたしました二十二年二月二十四日の吉田総理大臣を中心とする閣議において六・三制が採用せられましたときに、文部省は当時の金を以てしても三百三十五億の必要を唱えており、内務省は三百六十五億必要と言つたのでありまするが、事実発足する場合においては、文部省の五億、内務省の三億という、ただの八億を以てこの大組織な六・三制を始めたのであります。その当時、二十二年の秋において七億円の追加要求が達成したのであるけれども、又二十三年において漸く五十億の予算を得ることができた。然るに本年二十四年になつては、この整備費というものはゼロとせられたのであります。この二十三年度までの補助金によつて漸く三分の一の学校はこれを整えたのであるけれども、三分の一は補助を切られて以来、すつかりこれをみずから賄うか或いは放棄しなければならない状態になりました。漸く三分の一は苦労を重ね、困難な地方財政を更に困難にせしめてでき上つたのであるが、残りの三分の一は、今日でも馬小屋教育青空教育というような、或いは民家を借り倉庫を借りながら誠に不正常なる教育が施されているのであります。この実情を今少し詳しく申上げて見ますると、二十三年度における地方財政混乱は、当初予算において道府県市町村の大体平均が二五%であり、貧弱なる町村においては三五%を学校建築費に充てている。更に特に学校建築を施さなければならない村においては五〇%を建築費にかけている。併しかくのごとき苦労をして設備し得るものはいいのでありますが、これのできないものは多くこれを寄附に仰いでいる。一戸当り平均一万円以上の過重なる寄附を以てこの整備に当つており、或るものは遂にその村の財政基礎であるところの林野一切を売拂つて漸くこれをやつたのであるけれども、遂にこのできないものが地方自治混乱財政混乱を招きまして、村長で辞職した人が百七十七人、これは六・三制予算によつて辞職した者であるが、其の他或いは病気とか家庭の都合という言葉を以てやめました村長のことを考えると、合計約三百人を超するのであります。最も気の毒な者は彼の香川県三豊郡和田村の村長藤井梅吉氏とか岡山県阿哲郡石蟹郷村長村下泰通氏、山梨県中巨摩郡睦沢村長飯沼國行氏のごときは遂に其の責任を負うて自殺しておられるのであります。かかる困難なる地方財政事情は、先に総理大臣の言われる初等教育整備完遂するということによつて国民教育を施すと言われるのであるが、これは果して今年の予算が削られ、又二十五年度においてどれ程の御用意があるのであるか。これが承わりたいのであります。更にこれらに対する陳情というもの、請願というものを集めて見ますると、本月十一日までに参議院が受取つておるところの請願は二百九万八千六百五十五通であります。電報、葉書その他を加えて見ると、すでに三百五十万以上の請願陳情が出ておる。政治国民の要望によつて行われるものであるならば、この三、四百万というものは国民の一部の代表者の調印によつてできた書類であるならば、全国隅から隅までの者がこの学校整備に対して非常なる熱願を持つていることを御了解の上に、十分文部大臣の御説明を求むる次第であります。  次にこの問題は地方財政法に対してどういう形になつておるものであるか。同法の第三十四條においては義務教育年限延長に伴う施設建設費は国と地方負担するとなつており、第三十三條では、義務教育年限延長に伴う施設建設費起債を認めるということになつておる。然るに五十億が二十三年に出され、起債が許されておつたのであるが、本年は補助起債も如何なることになるか分らない事情にあります。これらに対してこの財政法政府は存在を認めておるのか。更にこれに対して何らかの手を打つのであるか。すでに時期が経過してこの延長に対する補助若しくは起債は認められないのであるか。これらについて御答弁が願いたいのであります。又学校財政法というものが考えられなければ、そのときの情勢によつて混乱せられるが、財政法を設ける意思があるかどうか。教育委員会等制度が設けられておるのであるが、その主張希望考えられておらない。殊に地方教育委員会なるものは今日財政権を持たないために、ただ計画し、主張し、実行においては他の制肘を受ける以外に方法がない状態にあります。これについて御意見が承わりたいのであります。昨夜新聞において政府教員の整理を行わないということを発表せられておる。政府が発表したのか、新聞記者が書いたのか、これは存じませんが、さようなことを見て若しこれが事実であるならば非常に喜ばしい次第であります。今日の教員定員定額というものが行われて、本年六月二十八日に各府県に宛てこの定員定額が指示された。これは本年の五月七日に義務教育費国庫負担法施行令というものが制定せられ、四月一日に遡つて行われるというのである。一県の兒童数を五十で割り、その数を学級数とするという方針である。然るに日本の地理的、地勢的情勢は、山間部落の小さな村においては、一学校においての生徒数は僅かであり、一学級としては誠に少数である。こういう場合において果してこの定員定額制が妥当であるかどうか。教育実情を知らずして機械的に行われたものであると思います。若しこれが廃止或いは変更せられるということであるならば、誠に国家教育のために喜ぶべきことであります。尚、時間の関係上端折りまして申上げますが、私立学校に関して如何なる財政的援助考えられておるか。本年私立学校貸付金は二億七千万円程度であると伺つております。国家の重要な教育負担し、公共的な大きな仕事をしておるものに対してこの取扱は非常に貧弱なものであり、尚又私立学校法案なるものが考えられる、この場合においては、その自主性財政的基礎に対して、監督し或いは圧迫する風が考えられるのである。これに対して如何なる方式をとられるのであるか。文部大臣の御説明を願います。  総理大臣は、今年は災害復旧に対して十分なる力を入れると言われる。二十四年度の当初予算において、過年度災害費は、当初予算ではありませんが、当初において過年度災害費は七百四十億でありました。そのうち拂われて明年度に承け継がれるところのものが、二十三年度以前の災害費を承け継がれるものが五百七十一億であり、二十四年度の台風その他の被害が六百八十五億であつて、これにすでに六十億が出されておる。残りのものが六百二十五億である。従つて二十五年度に繰り越されるところの災害費合計は千百九十六億に当ります。これに事業費を加えるならば大方三千五百億円に及ぶものと見られるのであります。明年度においても更に災害がないとは限らない。これらに対して建設大臣は如何なる方策、施策が考えられておるか。更に又戰災復興都市において、今年は百十六都市から八十五都市に減少され、補助金は減らされたのでありますが、今日まですでにこの復興事業を進展しておるその途中において、こういうことにせられたために、非常に困るものがある。殊に又この補助が減らされた部分については、復興費用の二〇%で……二〇%が地方負担であつたのを今回は五〇%地方負担となつておる。一方において起債は許されないということになつておる。シヤウプ案によつて、税制から見て、地方財政基礎住民税或いは地租家屋から取るというのであるが、災害を受けた燒野原のバラツクにおいては、住民税負担においても、家屋税負担においても、地租負担においても、到底地方財政を賜うわけに行かない。これによつてこの災害を復旧することはできない。これらの状況に対して建設大臣は如何なる考えがあるか。住宅は三百五十万戸不足のうち、来年度十二万戸、以後五ケ年間に六十万戸建てられる。尚不足の後の三百万は如何なる方式考えられるか。多数の者は家をなくして今日も困つておるのであります。  次に恩給についてでございます。公務員法第百八條によつて恩給はその生活を維持するに必要なる所得を與えられることになつております。現在国庫恩給を受けておる者の平均一ケ月は七百四十四円四十七銭で、一日割り二十四円八十二銭であります。これが適当なりや否やについて、生活保護法の算盤から見れば、月当り一人一千四百七十円、一日四十九円、夫婦二人あるような場合には二千三百二十五円、一日七十七円、恩給によつて老後生活しておる者の費用は一日当り二十四円八十二銭であり、保護法による者は今申しました四十円又は七十円という程度であり、ここに非常な差額のあることが考えられる。更に又六千三百円ペースによつて受けられる人の恩給と二十一年以前の恩給によつて受ける者との間においては、四分の一の、つまり新らしい制度の人が受けるものと古いものと比較して見ますと、四倍の差がある。これらの不公平に対して如何なる是正の方針があるか。  もう一つ附け加えさして頂きます。第五国会において衆参両院において戰争犠牲者の遣家族保護するという決議案が出たのでありますが、この二千八百三十四万人という犠牲者の遣家族は今日総理大臣の言われるような経済が安定したという際において、ますます苦しい生活をしておるのである。これに対して各種の項目、年金、弔慰金育英資金職場授與課税軽減農地返還生産資金の貸與等を挙げて、過般両院決議をいたして政府に要求したのであるが、これに対して何らの方策が示されておらないのであります。これについて御親切なる御答弁を頂きまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇
  7. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。私の過日の施政方針演説が甚だ抽象的であるという非難でありまするが、これは施政方針を述べたのでありますから、自然抽象的になるのは当然であると私は思うのでありますが、併し具体的のことは補正予算において数字も示されることでありますから、そのとき、その場合において、抽象であるか或いは私の方針と違つておるかを御指摘を願いたいと思います。  講和條約の話でありますが、講和條約について私はどうこうと申したのは、今日において日本といたしては、海外電報その他の新聞報道に待つ以外に海外情勢については知る機関がないのであります。これは御承知の通りであります。故に海外からの電報新聞等報道に基いて考えを立てるのと、又欧米を往復した官吏、実業家その他の経験、旅行談等を聞いて海外情勢を判断する以外に資料はないのでありまするが、これらの資料考えて見ましても、又米英において講和條約の草案までも用意されつつあるということは、これは私において朗報考えるところであります。又講和條約について少しお考え違つておりはしないかと思いますことは、講和條約の場合に日本戰敗国として、或いは日本国として希望を述べると、論難或いは主張対等地位において論難ができるようなふうにお考えになつておりましようが、これは講和條約において、或いは九月二日でありますか締結せられた終戰の場合における條約によつて考えても、日本は無條件降伏をいたしたのでありまするから、対等地位において、戰敗国戰勝国との間に論議が闘わされる、講和会議において闘わされるとお思いになつたらば間違いであります。併しながら講和條約が、日本立場日本国民を無視して拵えられたという場合にはどうであるか。現にヴエルサイユ條約においては戰敗国意思を無視して條約ができたために、遂に第二の戰争になつたというような議論もあるくらいでありまして、戰勝国と雖も戰敗国希望なり立場なりを全然無視して條約を作り上げるということは、その條約それ自身が永続性のないことになりまするから、自然戰勝国においても、即ち連合国においても、日本国民希望なり主張なりということは、自然取り入れられることであるのであります。(拍手)故に私は講和條約なるものは時々刻々講和会議があるのである。連合国なり戰勝国日本に対する信頼なり日本に対する尊敬が増されてこそ、ここに講和條約の内容ができ上るのでありまして、我々の希望なり主張なりというものは、日々の我々の行動によつて、その行動が反映せられてここに講和條約の内容をなすものである。(拍手)故に日本国民の言動が時々刻々講和條約の内容をなすものであると私が言うゆえんであるのであります。(拍手)又終戰後四ケ年余の間の日本国民行動が、連分国信頼を得、尊敬を得て、遂に講和條約が或る国、他国の反対があるにも拘わらず、講和條約を促進したいという考え米英が先んじて持つに至つたゆえんであると思います。  又日本文化は、いわゆる私の申した文化はどんな文化かというお話でありまするが、この文化は、つまり連合国日本文化のある国であり、現在の状態においても尊敬すべき文化を持つているという感じを與えたるが故に、講和條約を促進して日本と共に世界の平和なる繁栄なりを促進したいというのが、講和條約を早く締結したいという考えを起したゆえんと私は考えるのであります。(拍手)  又講和條約のできる場合に、総司令部命令によるのかよらないのか。これはお答えをするまでもなく、総司令部は、今日までも成るべく日本の自立、日本の行政は、日本に委したいという考えで指導するような態度をとつておるのであります。又今日まで政府としても総司令部の言うことを唯々諾々遵奉しておるわけではないのであります。言うべきことは言う。筋の通つた話司令部においても必ず受け容れて呉れるのであつて、無理にこうしろ、ああしろということは決して申しておらないのであります。  外交はとかく惡意に解することは惡いのであります。相手国信頼し、相手国を善意に解釈してこそ、ここに初めて外交ができるのであつて相手国を惡意に考えることは、これは外交を失敗に導くゆえんであると思います。(拍手)特に参議院の方においてはどうぞこの点は御注意を願いたいと思います。(拍手)又、更に申しますが、この講和條約は、いろいろな今申すようなわけで、相手国日本に対して敬意を拂い又了解を進めることによつて、この内容をなすのでありますから、私がここで私の考えとしていろいろ申すということは、講和條約の場合において不都合であるみのならず、又国際関係においては、又日本には、決して連合国すべてが、日本に対して良き了解なり善意なりを持つておるものではないのであります。終戰後未だ日が短かいのでありまするから、戰争中に起されたいろいろな問題、例えばいわゆるアトロシテイの問題などは、尚これに対する怨みは、各国の国民の間に深く印象付けられておつて日本に対して決して善意なり或いは又好意なりを寄せておるのみが連合国ではないのであります。連合国の中にも尚日本に対して誤解を持ち、日本に対して恐怖の念を持ち、猜疑の念を持つておる国は沢山あるのであります。(「ノーノー」「反動政府に対して持つておるのであつて日本国民に対しては持つているのではない」と呼ぶ者あり)故にこの状態において、この微妙な国際関係において、我々としては余り多くを語ることのできない事情はこれを御了承願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇
  8. 高瀬荘太郎

    国務大臣(高瀬荘太郎君) 第一の国宝の問題でありますが、国宝保護、修理の問題は、我が国文化の振興上極めて重要な事柄でありますので、これについては常に愼重な考慮を拂つておるわけであります。併し厖大な数に上ります国宝の保存、修理を完成いたしますためには、非常に莫大な経費を要するのでありますから、その重要の程度、破損の程度などを十分愼重に考慮いたしまして、緊急性に応じて計画的に順次これを完成して行く考えであります。  第二の科学研究費の問題でありますが、これも勿論非常に重要な問題であります。それで、これは目下その予算について編成中でございます。文部省といたしましてはその充実のために最善の努力をいたしております。  第三に六・三制予算の問題でありますが、これはお話のありましたように、国民の要望、地方の窮状等を考えて、急速に解決を図る必要があるということは御意見通りであります。政府といたしましても財政の許す限り順次これを完成して行く考えで、本年度補正予算並びに二十五年度予算におきまして、相当の程度予算計上を予定しておるのであります。金額につきましてお尋ねがありましたが、これはまだ編成中でございますので、いずれ近く予算案として提出されますので、そのときに御承知願いたいと思つております。  次に教育財政法というようなものを設けるかというお話がありました。教育財政法という名前で作るかどうかは別といたしまして、文部省としては教育費の最低基準というようなものはどうしても考える必要がある、従つてそれらを規定するような法令を作りたいという意向を持つております。  それから次に定員定額制についてのお尋ねがありました。定員定額制制度は、御承知のように均衡財政を確立しようという目的でできている制度でありますからして、これを直ぐ廃止するということは適当でないと考えております。併し本年度定員定額制による予算には、相当に実情に即しない点もあつたと考えております。従つてそれは補正予算において適当な調整を加える考えでおります。  次に私立学校についてのお尋ねがありました。私立学校法案の提出と関連いたしまして、文部省私立学校を圧迫し、統制する考えではないかというお尋ねでありましたが、文部省は全くそういう意思を持つておりません。そうして今回提出しようとしております私立学校法案の内容も、決してそのような内容でないと確信をいたしております。(拍手)    〔国務大臣益谷秀次君登壇拍手
  9. 益谷秀次

    国務大臣(益谷秀次君) 簡單にお答え申上げます。  災害復旧並びに治山治水に、今回予算編成に当りまして重点を置きましたことは、総理の施政方針演説に述べられた通りであります。私の所管の災害は、昭和二十二年度分の助成金は尚、約三十六億残つております。二十三年度の分は大体二百三十億、而して本年の災害は各都道府県からの申請によりますると、約五百億ということになつております。これは目下査定中でありまするから、約一割五分か或いは乃至二割ぐらいは減額になるものと存じております、この災害に対しまして、政府は只今申しました通り重点的に予算編成に努力をいたして、本年の補正予算並びに来年度予算には、国家財政の許す限りの額を計上いたそうと努力いたしております。又與えられたる予算で工事施行に当りましては重点施行の方針をとりまして、重要地点を選定いたして、逐次復旧に努めたいと存じております、而して民生の安定、食糧増産或いは交通の確保に資したいという所存でございます。  第二は戰災都市の問題でありまするが、仰せのごとく本年は戰災都市百十三都市を八十五都市にいたしました。これは大体その区画整理とか換地等が完成いたしましたので、政府から更に助成をいたすという必要を比較的認めなかつたので、八十五に決定をいたしたのであります。申すまでもなく戰災都市復興事業は、これまで政府は重要なる施策の一環として取扱つてつたのであります。地方財政の上から、又国家財政の上から、一日も引く区画整理を実行いたし、完遂いたしたいという立場から、本年は再検討いたし、そうして計画を縮小いたしたのでありますが、どうかして五ケ年間にこの再検討いたしました都市計画を実行いたしたいというので、これに対する予算を、これにふさわしい予算を獲得すべく努力をいたしておる次第であります。  最後に住宅問題でありますが、建設省といたしましては、あらゆる角度から見まして、現在約三百六十万戸の住宅不足を推定いたしております。そのうち約百万世帶、今日最も住宅に困窮いたして苦しんである世帶は約百万戸あると推定いたしております。それは過密居住或いは仮小屋、壕舎というような、全く住宅に困窮しておる人達であります。このうち二十万戸は、二十万世帶は、大体收入から、資産の点から見まして、自力で住宅を入手できる世帶と見ております。而して八十万戸中の六十万戸は、いわゆる今日まで政府のとつて参りました庶民住宅の政策、並びに今回予算化すべく努力いたしております政府出費による金融、この面で六十万戸程の建設をいたしたい。更に残つておる二十万戸は、これは政府職員などもおります。公務員などもおりますから、政府出費による公務員の住宅、或いは産業会社の給與住宅というような方面から解決をいたしたいという所存であります。(拍手)    〔国務大臣林讓治君登壇拍手
  10. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 第五国会における参衆両院の御決議に基きます未亡人並びに戰歿者遺族の福祉に関する御決議につきましては、目下政府といたしましては努力いたしておりますが、そのうち御決議一つの、「社会保障制度の確立を促進すると共に、社会福祉施策の強化特に公共扶助の制度を拡充して、生活保護の基準を引上げ、これが活用を計り、その適切、公平なる遂行をなすこと」という御決議になつているわけでありますが、この御決議に基きまして、目下社会保障制度審議会におきまして、社会保障制度の確立と公共扶助制度の拡充について審議されつつあるのであります。近く原則的の答申というものが審議会において決められるのではなかろうかと期待をいたしておるわけであります。又生活保護費も今回改訂を見たのでありますが、更に一層の努力をいたして行きたいと心得ておるのであります。第二の御決議は「未亡人の擁する子女の育英に関しては現行制度を拡充して特別の施設をなすこと」、こういう御決議になつているわけでありますが、この点につきましては、奬学制の採用の範囲の拡張をいたしましたし、又或いは個人貸與額の増加等をいたしまして、御決議の趣旨に副うように、目下鋭意努力をいたしているわけであります。それから第三の、「遺族年金又は弔慰金を支給すること」という御決議でありますが、この遺族年金の問題につきましては、遺憾ながらポツダム宣言の受諾に伴う勅令によつて禁止されておりますが、併し弔慰金の問題につきましては何とか方法考えて見たいと考えまして、目下これが検討中なのでありますから、御了承を願いたいと思います。第四の御決議の、「生産扶助制度及び生産資金制度を拡充し、その適切な活用を図ること」という御決議になつておりますが、この生業扶助算度及び生業資金制度につきましては、明年度におきまして、幸いにして皆様の御協賛を得ますならば、相当に拡充のできるような予算を組んでいるわけであります。この点につきましては御了承を願つて置きたいと考えるわけであります。それから第五の、「母子福祉事業特に授産事業、母子福祉施設等の拡充強化を図ること」ということでありますが、授産設備におきましては、積極的に資材、資金の運転と、正しい運営を行わせるように指導をいたしまして、万全を期したいと考えております。又母子福祉施設の拡充強化につきましては、母子寮及び保育所の増設に努めております。この点につきましても、先程申上げましたように、予算面において相当な成績を挙げ得られるのではなかろうかと考えております。それから第六の、「戰歿者に対する葬儀その他の慰霊行事については一般文民同様の取扱とすること」ということでありますが、戰歿者に対する葬儀その他の弔慰行事につきましては、関係方面と連絡をとつているわけであります。それから第七の、「課税の減免、農地の開放、作物供出、職業の安定等の問題に関して、未亡人家庭の特殊事情を充分参酌して、適切なる施策を行うこと」という御決議でありますが、課税の減免、農地の開放、作物の供出、或いは職業の安定等の問題につきましては、未亡人の家庭の特殊事情を十分に勘酌いたしまして、関係官庁と相協力いたしまして、適切な処置をとつて見たいと考えております。幸いにいたしまして、臨時国会並びに明年度予算におきまして皆様の御協賛を得まするならば、従来よりは若干いろいろな施設を行い得られることと考えて、この御決議に副いまして、その成績を相当に挙げ得られるのではなかろうかと考えております。(拍手
  11. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 太田敏兄君。    〔仲子隆君「恩給に対する答弁を願います」と述ぶ〕
  12. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 太田敏兄君、登壇をお願いいたします。    〔太田敏兄君登壇拍手
  13. 太田敏兄

    ○太田敏兄君 私は無所属懇談会を代表いたしまして質問をいたしたいと思います。首相施政演説は形式的には非常に抽象的でありましたし、又内容的には極めて多くの論理的矛盾を含んでおつたと思いまするが、併し私は今これを一々批判するの時間を持たないので、左に質問の要旨を簡單に申上げます。  最近米英或いは濠洲等では、若しソ連が米英案に同調しないときは、單独講和又止むを得ないとする意向を伝えておるのでありますが、仮に單独講和が成立しますれば、その特定国だけとは国交が回復いたしまするが、併しそれに漏れた他の交戰国とは依然として戰争状態が継続するのでありまするから、これでは真の平和回復とは言えないと思うのであります。故に私共といたしましては、飽くまでもすべての交戰国との全面和平でなければならぬと思うのであります。このことは一九四二年ワシントンにおける連合国会議におきましても、或いは彼のカイロ宣言におきましても、連合各国は單独講和をやらないという取り決めが行われておる筈でありまするから、恐らくさようなことはないと思いまするが、若し万一にも單独講和の交渉があつた場合に、政府はこれをそのまま受入れる所存であるかどうか。更に今一つの問題は、アメリカ側ではこの講和会議と同時に、軍事基地を含む一種の軍事條約締結の希望を持つておるようであるが、御承知のように我が国は新憲法において永久に戰争を放棄し、平和な文化国家を建設するということを以て立国の精神としたのであります。この建前よりいたしましても、我が国土に軍事基地が置かれることは我が新日本の平和的理想に甚だ矛盾するものであると思われるのであります。これに対する首相の見解如何。尚この問題に関連いたしまして、平和條約はポツダム宣言と違いまして、それが一個の国際的條約でありまするから、双方の当事国において締結されるのであります。である限りは、一方的なものではあり得ないと思うのであります。従つて相手国希望や構想如何に拘わらず、当方の主張すべきことは当然これを主張し得ると信ずるのであります。然るに前質問者の質問に対する首相答弁では、この点甚だ我々の見解と相違をいたすのであります。苟くも平和條約という限りは、それは戰勝国命令ではない筈である。従つて條約という文字を用いる限りは、双方の当事国の間に自由意思によつて結ばれるべきものであると思うのであります。吉田首相は多年外交生活を送られたのであつて、この條約に関しましては十分その辺のことは心掛けておられると考えるのであります。これに対しまして私は首相答弁を求めるのであります。  私の質問の第二は減税についてでありまするが、政府は本年度において二百億円程度の減税をするとのことでありまするが、併しその財源といたしましては、補給金を削減して行うのだと承わつておるのであります。若しそうであるとするならば、基礎産業に対する補給金削減の結果は、当然その影響といたしまして物価の騰貴を招来するのであります。そこで一方で若干の減税をいたしましても、他方で物価が上つたならば、結局実質的には国民負担軽減とはならないのであります。これは恐らく民自党が一月選挙のときの国民に対する公約の手前をつくろうための一種のペテン政策であると申してもいいのではありませんか。(「そうじやない」と呼ぶ者あり)米の供出完了後の自由販売を約束して、できなかつたのを、米券制度でごまかそうとするのと同じ手口であると思われます。この点、池田蔵相にお伺いをいたしたい。  第三は文教問題についてであります。私の聞こうとした問題のうち、二つはすでに前質問者において質されましたが、首相は「初等教育に力をいたし、」と特に力を入れて言われておりまするが、現実の政策はむしろ反対の方向に向つておるのであります。今年度予算では六・三制の補助費は全部削られておる。加うるに定員定額制という極めて融通性のない予算措置のために、地方では非常に困つておるのであります。この点につきましては先程文部大臣から御答弁がありましたが、私は速かにこの定員定額制に対して善処せられ、更に六・三制の補助金を増額されんことを希望するものであります。次に科学振興の問題につきましても、前質問者から発言がございましたが、本年度予算面に現われておる自然、人文の各研究費は極めて貧弱である上に、更にそれが削減されようとするように新聞は報じておるのであります。若しそれが事実であるとしますならば、我が国科学研究は崩壞に瀕せざるを得ないと思うのであります。政府科学研究費の増額に特に意を用いられたいと思うのであります。  次に今一つは教授の追放問題でありまするが、これは極めて巧妙なる学者の自由研究に対する彈圧であると思うのであります。世間では今の吉田政治を曾ての東條政治以上であると評しておるのであります。科学研究の後退はこれこそ明らかに民主主義への反逆であり、日本を再び反動に追いやるものであると思われるのであります。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)以上の諸点につきまして特に文部大臣答弁を求めたいと思います。  第四は賃金ベースについてであります。首相は賃金は改訂しないと、はつきり言われたのでありまするが、その理由といたしまして、賃金を上げれば賃金と物価との惡循環を起すということがその理由であつたのでありまするが、これこそは吉田首相の認識不足の最も大なるものであると思うのであります。即ち国家の公務員の給與に関する限り、民間の賃金ベースよりは遥かに低いのであります。のみならずそれは直接商品の生産費とは何らの関係も持たない。だから、この際、公務員の給與ベースを上げても物価との惡循環は絶対にあり得ないのであります。むしろ、それによつて多少でも一般の購買力が増すならば、現在危殆に瀕しつつある経済不況救済の一助ともなるのではないかと思うのであります。即ち公務員の賃金ベースの引上げは、実に一石二鳥の効果をもたらすものであると思われるのであります。この点に関しまして吉田首相答弁を求めるものであります。併せて人事院総裁の見解も伺いたいのであります。  第五は農村対策でありますが、私は第一に米価の問題を取上げたいと思います。先月波多野議員からも指摘されましたように、農産物価と一般商品との価格差は、資本主義経済の下では殆んど不可避の現象となつておるのであります。ここに農業衰退の原因があることは申すまでもありません。二十四年度産米の政府買上げ価格は、当初農林省案は石四千六百十八円、物価庁案は四千二百六十三円、これに対しまして各種農業団体の共同提案は五千九百九十四円であつたのであります。かくして米価審議会ではこれらの案を中心として審議されました結果、四千七百円に決定すべしとの答申を行なつたのであります。然るに最近、政府政治的にそのいずれよりも安い四千二百五十円に内定したと伝えられておるのであります。政府はこの審議会の答申や農林当局の計算をも全く無視して、何が故にかくのごとき低米価を決定しなければならなかつたのであるか。私はその政治的理由なるものをつぶさに聞きたいと思うのであります。又農林大臣は昨日の答弁において、将来食糧の自給率を高め、外国からの輸入食糧をできるだけ少くしたいという意向が述べられておりましたが、低米価の決定は單に農民経済を破壞に導くのみならず、農民の志向を食糧増産と反対の方向へ追いやらぬとも保証し難いのであります。次に二十四年度生産計画におきまして、甘藷の超過供出に対しては二・五倍の価格で買入れることが約束されておるのであります。然るに最近中途で計画を変更し、超過買入れは供出数量の一割に限るとも政府方針のようでありますが、果してそれが事実であるとしますれば、政府は農民に対する公約の責任をどうするつもりであるか。尚この際併せて伺つて置きたいことは、政府は今後主要農産物の買入れ価格を国会に諮るように手続を改正する用意ありや否やということであります。  次に我が国今次の農地改革は実に世界史的な意義を持つておるのでありまするが、然るに政府は第二次農地改革は一応終了したという見地に立つて、この辺で打切りたい意向のようでありまするが、私は若し今打切るならば、折角の農地改革も忽ち後戻りするであろうと思うのであります。(「ノー」と呼ぶ者あり)これに対する政府の見解如何。又政府は小作料及び農地価格の引上げを計画しておるというのでありまするが、若しそれを実現するならば、やがては再び富農への土地集中と、小農の沒落は必至であると思うのであります。(「ノー」と呼ぶ者あり)即ち農地改革の九仭の功を一簣に欠くことになるのであります。以上の諸点に対しまして農林大臣の答弁を要求する。  最後にもう一点お尋ねいたしたいことは、戰後、重要基礎産業に対しましては、国家資本による過大の保護政策がとられておるのでありまするが、一方中小企業に対しては殆んど放任の形であります。併しこれは国の産業政策上重大なる問題であることは申すまでもないのであります。今、中小商工業者の一番困つておるのは金融の梗塞であります。政府は当面の中小商工金融に対して如何なる対策を持つておられるか。これは通商産業大臣に答弁を求めます。  以上を以て私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。昨日も申しました通りに、單独講和可なりや、全面講和可なりや、どちらがいいかという問題は、今日はないのであつて海外事情によつて、つまり外交の国際関係によつて決まるわけであつて、我々に採択の自由はないのであります。併しながら連合国と雖も、希望は全面講和希望するでありましよう。が併しながら、それができなかつた場合には、全面講和をしたくない、対日講和はしたくないという国に対しては、是非とも全面講和をやれということを強いることはできないでありましよう。従つて單独講和ということもあり得るのであるが、併しながら單独講和になると決まつておるわけでもないのであつて、仮説の問題について我々が今日ここで、とやかく申す自由を持つておりません。  又こうも考えられます。單独講和から全面講和に行く一つの道として單独講和が生ずるということもあり得ることであります。いずれにしても、講和がたとえ少数の国と成り立つても、無いよりはいいのであつて、いわんや、これが全面講和に導く一つの道であるならば、喜んで応ずべきものだと私は抽象的に考えます。併しながら具体的に問題に当面いたしたときには、更に又政府としては方針を決定して申述べます。  日本において軍事基地を設けるか設けないかということは、全然仮説の問題でありまするから、これに対する答弁は差控えます。  又講和條約は、條約である以上は権利であるのだ、権利を主張し得るのだ、それはそうでありましよう。若し講和條約が日本国において不利であるという場合には、いわゆる席を立つてその会議を退くか、或いは講和條約を受け入れないだけの話であります。  普通教育についてのお話がありましたが、勿論、政府財政の許す限り普通教育その他の教育も完備いたしたいと思うのでありますが、財政の困難なとき、又重点的に考えて見て、先ず日本財政の均衡予算を作つてインフレーシヨンを止める、日本財政経済を健全な基礎の上に置くというためには、すべての経費を重点的に考えるより外いたし方ないのであります。政府としてはでき得る限り、予算において財政において余裕の生ずる限りにおいて、各種の教育問題は適当な施設をいたしたいと考えております。  給與ベースのお話がありましたが、これは私の施政演設において述べた通りに、今日においては各種の物価その他の関係もあるから、実質賃金において考えるようにいたしたいという希望を述べて置きましたが、その方針には変りはないのであります。(拍手
  15. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 池田大蔵大臣は本日病気のため出席できかねるので、他日に答弁を留保いたしたいとの趣きであります。    〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇拍手
  16. 高瀬荘太郎

    国務大臣(高瀬荘太郎君) 定員定額制の問題、六・三制の問題、科学研究費の問題等は、お話がありましたように、すでにお答えをいたしましたので省略をいたします。  次に政府は今日、大学教授の思想圧迫をしているのではないか、こういう御質問でありましたが、この問題は最近行われておりました大学教授に対する各大学の措置と関連して言われたことと存じます。併し大学教授に対する措置の問題は、国家公務員法教育基本法、教育公務員特例法等に基きまして、嚴正愼重に各大学が処置しておると考えておりますので、これが大学教授の思想を圧迫し、学問研究の自由を破壞するものとは考えておりません。従つて政府といたしまして、何ら大学教授の思想研究を抑圧しようというような考えを持つてはおりません。(拍手)    〔政府委員淺井清君登壇
  17. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 只今太田さんより、政府職員の給與ペース引上げと物価の関係について、私の見解をもお質しになつたのでございまするが、人事院はその任務といたしましては、何が適正給與ペースであるかということを国会及び内閣に勧告するに止まるものでございまして、それが物価にどのような影響を及ぼすかと申すような経済問題は国会及び内閣、殊に最終の決定は国会の御意思において定まるものでございまして、人事院といたしましては、それに対し何ら発言すべき地位にないと存じております。言葉を換えますと、そのような問題如何に拘わらず、人事院は勧告すべきものは勧告いたすと申すことでございます。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎君登壇拍手
  18. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 米価問題についてお答えをいたします。  今お述べになりました二、三の数字は、米価決定の過程におきまして、いろいろと算術の上において出た数字であるのでありますが、米価審議会の答申に基きまして、政府は米価を決定する段階に入つておるのでありますが、今日の米価ということは生活費に非常な関係を持つておりますので、この価格の決定につきましては、昨日御質問ありました工業生産物との比較等もお話がありましたが、パリテイ指数によつてこれを決めるということが、米価決定の根基をしていいと考えておるのであります。農林省が六千四百円としたとか、或いは物価庁が六千二百円と考えたということは、今日の価格を決定する一つの段階としての研究資料でありまして、必ずしもそれに決定いたしたようなわけではないのであります。政府はまだ関係方面との予算関係等も交渉がありますので、近く決定いたすのでありますが、今お述べになりましたような価格に必ずしも決定するということは、今日の場合はつきりと申上げかねておるのであります。  甘藷の超過供出の問題でありまするが、これは決して統制を‥‥国民と約束を違えておるものではありません。六億一千三百万貫というものを提出割当をいたしまして、これはすでに政府は目下供出を受けておるのであります。超過供出は予算関係から六億一千三百万貫の一〇%を考えておるのであります。この予算関係で一〇%を見ておるのでありますが、その実績におきましては、敢てこれを一〇%と限定するわけのものではないのであります。又超過供出に対する奬励金は、すでにお約束しておる通り、或る一定の時期以後において奬励金を出す、こういうことを発表いたしておるのであります。今日割当以上の超過供出がありましても、それはその当時の公定価格によつて買入れておるということと御承知を願いたいのであります。  農地改革の問題でありまするが、農地改革は一応予定通りの終了をいたしたのでありますが、その未だ完了をいたさないものがありまするので、これは当初計画通りに進捗して行きたいと存じております。そこで更に農地改革を一歩進めて行くかという問題でありますが、政府といたしましては、いわゆる第三次農地改革は考えておりません。又小作料の修正等によつて、又昔のような封建的な態度に農地が改正に、農村が変えられやしないかという御心配になられますが、決してさようなことはないと確信いたしておるのであります。耕地は御承地の通り、自作農を創定いたしました以上は、或る一定の期間これを売却することはでき得ないのであります。でき得ないのでありまするから、決して小作料を上げましても、ために、これが一部に集まるというようなことは断じてないと思うております。又小作料におきましても、すでに地租が増額されておる以上、現在の石当り七十五円ということにおきましては公租さえ支拂ができませんので、適当な価格にこれは当然引上げるのが妥当と、かように考えておるわけであります。(拍手)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇拍手
  19. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 中小企業対策に対する御質問に対してお答えを申上げます。  中小企業が日本の経済復興の上に非常に重大な意義を持つておることは十分承知いたしておりまするし、又非常な関心を以てこれに対処しておるのであります。金融につきましては、これが運転資金については、大体日本銀行から、中金又は勧銀、興銀を通じまして、運転資金として二十二億円只今出ております。尚、年末には三億円を増加して大体二十五億円くらいの見当に考えておるのであります。尚この運転資金につきましては、カウンター・パートのオペレーシヨンによりまして、二十億円程度を設備資金として考慮いたしておるようなわけであります。  尚、商工中金の改正につきましても、従来商工中金は一億五千万円でありましたが、大体これを五億円に増加し、債券発行限度を十倍から二十倍に増加することを考えておるのであります。尚、中小企業の対策といたしましては、信用組合なり或いは地方における信用保証協会というようなものの設立につきまして、これが促進を図つておるような次第でありますが、ただ非常に融資の節に問題になりますのは、中小企業側において非常に受入態勢が整つていないという問題があるのであります。これについては、できるだけこれが受入態勢の確立について、中小企業庁として努力いたしておるというわけであります。(拍手)    〔国務大臣増田甲子七君登壇拍手
  20. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 仲子さんの恩給に関する御質疑にお答え申上げます。  御指摘のごとく、受恩給者の方は非常に同情に値いする次第でございまして、殊に低い賃金ベースの当時退職された方々の受恩給者が生活難に悩んでおる次第でございます。そこで政府といたしましては、従来賃金ベースに調子を合せるように一生懸命に努力して参りまして、御承知のごとく去年も恩給額が増額されましたが、本年度におきましても、新賃金ベースの下で退職された方々と調和が取れるように予算措置を講じております。併しながらこの予算措置を以てしてもまだ十分とは言い難いのでございまして、将来と雖も政府は旧ベースの時代にやめた方と新ベースの時代にやめた方との間に不均衡がないように、調整調和には極力努力いたす所存でございます。(拍手
  21. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十一分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、請暇の件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)