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1949-11-10 第6回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十日(木曜日)    午前十時十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六号   昭和二十四年十一月十日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  第二 日本銀行政策委員会委員任命につき事後承認の件  第三 外国為替管理委員会委員任命につき事後承認の件  第四 お年玉つき郵便葉書等の発売に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。 一昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。波多野鼎君。    〔波多野鼎登壇拍手
  4. 波多野鼎

    波多野鼎君 一昨日我々は本議場におきまして、吉田首相から施政方針に関する演説を聞く機会を得ました。我我国民と共に、これに非常な大きな期待をかけておつたのであります。めまぐるしく変転する今日の世界情勢のうちにおきまして、又日本運命が決せられるであろうこの重大時機におきまして、責任ある政府が如何なる態度を以て対処するであろうか。我々は挙つて首相の明らかにせんとする方針に耳を傾けたのであります。然るに首相の述べられましたところは誠に抽象的でありまして、我々の期待に副うものではなかつたのであります。国民もひとしく感じを同じうしたことと感ずるのであります。例えば六・三制、或いは国民負担の軽減、災害復旧、いろいろのことを並べ立てられましたけれども、いずれも予算的な措置を未だ伴わざる單なる公約に過ぎないのでありまして、我々は本年度の補正予算及び來年度の本予算提出せられる時期におきまして、改めてこれらの問題については質問を展開することを留保しながら、本日は左の諸点について政府の所信を質したいと思うのであります。第一は、講和会議並びに平和保障に関する問題であります。我々日本国民が一日も早く独立を回復したいと念願しておりますことは、これは申すまでもないことでありまして、我が党としましても、この念願を体して、昨年來全国に亘つて講和促進の運動を展開して参つたことは皆さん御承知通りであります。併し国民のうちには、この問題に関連いたしまして一抹の不安と危惧の念があることも、これ又否定することができないのであります。それは何であるかと申しますれば、独立後の平和保障の問題であります。独立国なつた曉におきまして、我が国が再び戰争惨禍を蒙むることはないか、果して日本の平和が維持できるか、この点に関してであります。日本憲法の前文には、御承知のように「わが国全土にわたつて自由のもたらす惠沢を確保し、政府の行為によつて再び戰争惨禍が起ることのないようにすることを決意し」と、こうあります。又「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とも述べてあります。この決意は誠に崇高なる決意であつて、我々があの恐るべき戰争の犠牲によつて初めて固め得たところの決意でありますから、あらゆる方策を講じてこの決意を貫き通さなくてはならぬのであります。政府ももとより同感のことと思うのであります。而して今日の場合、我々としてとるべき最も緊要な方策は何であるか。それは独立後の日本国際社会において如何なる在り方をするのか、この点について確乎たる方針を確立いたしまして、平和を愛する諸国民の協力と共鳴をかち得ることであろうと思います。もとより我々は無條件降伏をしたものでありまして、平和條約の内容などにつきましては連合国側の決定するところであつて、我々の如何ともし難い点であります。併し我々が国際社会に復帰する資格を備えて來たと認められる程に成長した今日でありますから、独立後の我が国国際社会における在り方についての我々の方針を確立して、以て平和を愛する諸国民の公正と信義に訴えるということは、民主主義の原理の上から言つて当然許されることであろうと信ずるのであります。首相は一昨日の演説におきまして、独立後の日本在り方について述ぶるところがありました。それは無軍備の問題であります。即ち首相は次のごとく言つております。「無軍備こそは我が国民の安全、幸福の保障にして、又以て世界の信頼を繋ぐゆえんであり、又平和国家として世界に誇るに足るゆえんであります。故に私は国民諸君が国を挙げてこの趣旨に徹せられんことを信じて疑わぬものであります。」こういうふうに述べておる。この一節を聞いて私共が受けた率直な感じは、何故に首相はこのことを改めて力説したかということであります。我々日本国民にして、新憲法第九條、戰争放棄の規定を忘れた者は一人もない筈であります。この原子力時代に、この貧弱な経済力を持つた日本が再び軍備を持つというような夢を抱く者などが一人もあろう筈はないのであります。それどころか、世界戰争が起らぬようにと、すべての日本人がひたすらに願つておるのである。我々はこう確信いたしております。それ故に我々は首相が殊更にあのようなことを国民にこの際要請されたところの真意が一体どこにあるのか、これを明らかにして頂きたいと思うのであります。  質問の第二点は、右の点に関連いたしますが、一昨日の演説の中で、無軍備ということと共に、非武裝国家という言葉を用いられておりますが、これらの概念は、独立後の日本がその主体として持つ軍備又は武器がないことを意味するだけであるのか。それとも更に広く日本国の領土内に如何なる国の軍備武器もないことを意味するのであるか。この点を明確にして頂きたいと思うのであります。  質問の第三点は、独立後の日本に再び戰争惨禍が見舞わぬために無軍備であるということは、一つ消極的な條件であるに過ぎません。而もこの條件日本国民が十分にこれを満しておる、又満たそうと覚悟いたしておる点であります。併し問題は別のところにある。即ち平和を維持する積極的な條件は何であるか。国際社会において日本がどのような在り方をしたならば平和が積極的に維持できるかという点に問題の集点があると思う。この点に関連いたしまして、第五国会におきまして永世中立ということがしばしば問題となつた。本院におきましても、衆議院におきましても、しばしば論議された一つの問題であります。この問題につきまして、首相は常に懷疑的態度をとつておられた。永世中立ということを條約において決めて見たところで、ベルギーの例に見るごとく、戰争惨禍を免がれることはできないであろうという趣旨のことを答弁いたしておられましたが、今日においても同じ考えを持つておいでになるか。国際社会復帰の日が近きにありと観測される首相が、この問題について今尚懷疑的であられるかどうかということをお伺いいたしたい。それとも又別に新たなる中立のアイデイアを持つておいでになるのか。我々は国民と共に戰争惨禍に見舞われることのないようにと念願する見地から、この点についての首相のお考えはつきりと承わりたいのであります。  質問の第二は、貿易及び為替レートの問題に関連いたしております。日本独立維持される時期が間近にあると考えられるときに、独立後の日本経済的自立を実現することは刻下の急務でありますが、而もこの経済自立外国貿易の振興に待たねばならぬということは、日本経済の構造的な性格から見て疑問の余地のないところであります。然るに今日の世界経済動きを眺めて見ますと、恰かも第一次世界大戰後におけると符節を合せるがごとき動き方をいたしておる。一九三一年九月にイギリスのポンド崩落いたしまして、これによつて世界恐慌が深刻化し、当時日本金輸出の解禁、即ち金本位制の再建をした直後であつたために、ポンド崩落の惨害を一入痛感させられ、遂にポンドに追随して金本位を離脱するの止むなきに至つたことは、我々の記憶に新たなるところであります。ポンド崩落から日本金本位制を離脱するに至るまでの一年三ケ月間に、深刻なる不景気が我が国に拡がりまして、これに伴う社会不安も甚だ深刻な樣相を呈し、遂に再び金本位を放棄せざるを得ない、そういう運命に立ち至つた。今日我が国実質金本位制に復帰しておるということが言えましよう。本年初めに一ドル三百六十円のレートを定めたときに、実質的には金本位制度に復帰したのであります。この通貨価値の安定後、恐らく深刻なる安定恐慌が到來するということは、人々が予想したところであり、第五国会における論議の一焦点となつてつたのであります。そうして事実又安定恐慌が現に進行しつつある。そこへ恰かも一九三一年におけると符節を合せるごとくにポンド崩落が起つた。一ドル三百六十円で実質的金本位に帰つておる日本経済は大きな激動に見舞われております。失業者の増大、中小企業の沒落、賃金遅配欠配が至るところに起りまして、労働基準法のごときは今や死文と化したのではないかとさえ疑われる程の状態を呈しておる。農民経済も又破綻に瀕しておるという有樣であります。経済は有機的な構成を持つておりますから、こうした事態資本家階級をも遂にその過中に巻き込まずには置きません。株式価格崩落がこれを端的に物語つておるのであります。このときに当りまして、吉田首相は一ドル三百六十円レートの堅持を大方針として幾度も声明され、一昨日の本会議におきましても、この方針を明確にされました。一つ方針としては成る程成り立ち得る方針であります。併し私は首相に問わなければならない。首相は果してこの方針を貫き得る確信があるか、確信がありとすれば、それは如何なる合理的なる根拠に基くものであるのが、合理的な根拠に基かない限り、日本国民を、否、世界人々を納得せしめることはできない。世界人々を納得せしめ得ない限り、円為替レートは不安であるという世界的ルーマー根本から覆えすことはできず、遂に浜口内閣の失敗の跡を追うことになるのであります。私は円為替レート維持が可能であるという合理的根拠を明らかにせられるものと期待しておつたのでありますが、併し世界が注視しておるこの一大問題につきまして、首相が述べましたところは次の三点に帰着しておるのであります。一つは三百六十円レート設定の当時は、三百円設、又は三百三十円設があつたにも拘わらず、将來の内外経済環境を勘案して、適当なる線に單一為替レートを設定したのでありますということ。即ちその当時において将來の内外経済環境を勘案してということは、ポンド切下げをもすでに勘案していて三百六十円に定めたという意味を含んでおるのか、若しそうだといたしますれば、これは世界に誇るべき偉大な先見の明であると言わなければなりません。(拍手)が、世界人々はこの吉田内閣先見の明を額面通りに買つて呉れるであろうか。これは大きな疑問であります。第二の点は、三百六十円のレート維持する合理的根拠として首相は次の点も挙げておる。即ち政府生産費切下げ品質改善等によつて販路の開拓に資するということを言つておられます。併し生産費切下げ品質改善には、生産設備根本的なる改善が必要であります。今日老朽した生産設備を抱えた日本の諸企業、発達した世界今日の技術水準から眺めますれば、正に工場が手工業的段階にある企業形態のままにおきまして、生産費切下げ品質改善がどうして行われるでありましようか。実質的金本位制の下において、すべての企業は深刻なるデフレーシヨンに悩み抜いておる。老朽した設備維持するだけが関の山の現状であります。近代的設備を整えるそういう途は完全に塞がつてしまつておる。第五国会におきまして、我々は吉田内閣政策は甚だしいデフレーシヨンを招來するものである、決してデイス・インフレーシヨンの線で止まるものでないということを口を極めて指摘したのでありますが、大蔵大臣金融業公共性を力説することによつてデイス・インフレーシヨンの線で食い止め得ると強弁しておられます。今日見るところは一体どうでありましよう。金融業者公共性というがごときことには耳を藉しておらない。そうしてその独占的地位に閉じ籠つてしまつて自己保身に汲々としておるという有樣であります。即ち独占的金融業者は、生産費切下げ品質改善を行わんとする企業家の前に立ち塞がつて、これを妨害いたしておるのであります。この事態の下において、首相はどのようにして、又如何なる順序を経て、生産費切下げ品質改善ということを行わせようとするのであるか。又行い得ると期待しておるのであるか。更に円為替不安は現下の問題であります。当面の問題であります。生産費切下げ等々ということは将來において実現し得るかも知れない問題である。この間の時間的ズレをどうして乘り切ろうとしておるのでありましようか。円為替不安のルーマーを一掃せんとするならば、当面もつと適切なる方策、合理的なる根拠を提示しなければなりません。單なる決心をしておりますというだけでは、世の人々を納得せしめ得ることはできないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)第三に貿易通商自由体制への転換と言つております。これに輸出増進への大きな期待をかけておるようでありますが、首相貿易通商自由体制の下において、日本貿易国際場裡で果して競争に堪え得ると考えおいでになるかどうか。通商貿易自由体制の下で日本貿易が伸張し得るためには、輸出品品質改善等を第一の前提といたしまして、更に通商戰第一線的設備が整備しておることが必要であります。世界各地にエージエントを待ち、輸送船舶を持ち、金融保險の施設を持つこと、更に適当なる関税率関税制度等を持つことなどが必要であります。これらの第一線的設備を整えることなくして世界各国の巨大なる商社自由競争をするという場合、その結果は言わずして明らかであります。今日の外国の巨大なる商社に比較いたしますれば、日本貿易商のごとき、手甲脚絆に身を固め草鞋を履いておる行商人にひとしいのであります。問題にならぬ程弱体であります。今日の国際通商場裡に乘り出す場合に、これに堪え得る地位を占めようとしますれば、道は二つしかないのであります。国営貿易方向に進むか、貿易商社カルテル化方向に進むか、この二つしかないのであります。自由体制で進む、国際場裡自由競争をやつて行こうなどということは、お伽噺にひとしいのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)このことは政府はつきり知つておる筈です。現に貿易組合法改正だの、事業者団体法改正だのということが話題に上つている。このことは自由貿易自由競争体制では勝てないのだということをはつきり自覚しているからそういうことになつているのだ。(「その通り」と呼ぶ者あり)だから私は政府に問わなければならない。貿易組合法とか、独占禁止法とか、事業者団体法等改正する意思があるかどうか。第二に、弱体商社国際競争場裡に放り出して競争に堪え得ると信ずる根拠がどこにあるのか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これをお伺いしなければなりません。  質問の第三は、日本民主化の問題に関連いたしております。我々は敗戰以來ポツダム宣告を忠実に履行して、日本民主化の道を急いで参つたのであります。日本民主化は政治の民主化だけじやない。経済民主化もその不可欠なる前提であります。そのための努力を我々は拂つて参つたのであります。例えば農地改革、例えば労働関係三法の制定、例えば独占禁止等、皆それであります。然るに第三次吉田内閣成立以後の実績を見ますると、ややもすれば経済民主化方向と相反する方向をとらんとするがごとき傾向が甚だ顯著であることを看取せざるを得ないのであります。例えば追放解除によつて時代財閥人の復活を企てた。或いは国有鉄道の一部拂下を意図する。或いは煙草の民営を叫ぶ。これのごときは新たなる財閥に活動の場所を提供せんとするものであることは、何人の目にも極めて鮮かなところであります。(拍手、「ノーノー」と呼ぶ者あり)これに反して経済民主化を推し進める点については甚だしく冷淡なんであります。否、これを阻止せんとする姿勢を示していることは一再に止まらないのであります。そこで私は次の諸点についてお伺いしたい。  第一、農地改革、これは日本民主化の一支柱としての意義を持つものである。これは言うまでもなく政府はこれを今日の段階において中止しようと伝えられているが、その真意はどこにあるのか。又政府折角作つた自作農維持について如何なる行政上の措置を講ぜんとしているのであるか。今日世界食糧生産事情はすでに飽満状態に達しているのであります。來年度は年三百万トンの輸入計画さえも伝えられているのであります。日本農業は、今やまさに世界農業と真正面に対立して、その影響をひしひしと受けて來ているのであります。我々が警告をしておつた農業恐慌は今や現実の問題として出て來ているのであります。この重大時機に、耕地面積平均僅かに八反歩の小規模経営農家がどうしてその経営維持することができるか。多角経営ということは言われるけれども、それは平均以上の耕地面積を持つところの富裕農家にのみ許されたる途であります。加うるに、米価問題その他の経緯を見ても分るように、農産物価格工業生産物価格との開きがますますひどくなろうとしている。教育費警察費に関する寄附金が多い。国税を多少軽減すると言つて地方税負担の加重が眼に見えておる。農民の頭痛の種なんだ。加うるに天災頻りに至つて、もはや再起の希望さえも失つた農民が沢山出ておる。このままの状態に置いて置きますれば、再び小作農の続出は明らかなんだ。首相は昨日の演説において、農家経営の安定を図るために適切な各種農業政策を樹立実行して行くつもりでありますと言つておりますが、どんな適切な方策があるか。これを具体的に示されたいのであります。(「何にもない」と呼ぶ者あり)  第二、労働調整法労働基準法等運用について政府の熱意が足りない。首相は、数千万に上る我が国労働力我が国に残された最大資源でありますと言つております。労働力資源であると言うのは、戰時中に流行した人的資源という言葉を想起させまして甚が不愉快であります。(「ノーノー」「その通り」と呼ぶ者あり)それはとにかく、労働力を保護するために吉田内閣は如何なる政策を採らんとしておるか。(「何もない」と呼ぶ者あり)労働力根本は言うまでもなく労働力の再生産を確保することである。その再生産を確保する賃金体系を確立することである。又失業者に対しては社会保障制度を確立することである。然るにデイス・インフレーシヨンを履き違えた誤まれるデフレーシヨン政策のために、民間企業賃金は先に申しましたように遅配欠配続出の有樣なんである。これは今や公然の事実として默許されておる事実であります。政府は果してこの問題を真劍に考えられておるか。又どんな対策を講じようとしておるのか。更に又社会保障制度についてどういうふうに考えておるか。どういうふうにこれを運用して実現しようと考えておるのであるか。更に労働力維持が不可能であるがごとき高物価低賃金現状を打破せんとして労働組合が立ち上つた場合においても、例えば国鉄労働組合争議において見られるように、調停にも応じない、仲裁にも応じないというがごとき誠に奇怪なる態度をとつております。(「その通り」と呼ぶ者あり)かかる態度は決して労働力重要性を認識した者の態度ではない。労働関係調整法という、民主主義的、平和主義的法律の精神を理解した者の態度ではありません。(その通り」と呼ぶ者あり)国鉄労働争議に絡まる政府態度を見て見ますと、政府はデイス・インフレを遂行するために労働力の再生産が不可能になることも又止むを得ないと考えておるのではないか。そうして首相は幾千万に上る我が国労働力我が国に残された最大資源でありますと言つたことが、單なる空稔仏に過ぎないのではないかという疑問さえも起るのであります。かかる疑惑を解くために、政府国鉄労働争議の解決に善処するとの確約を與えられることを要求します。  第三に、国家公務員法運用においても人事院民主主義の原則を蹂躪しつつあるのではないか。周知のように国家公務員法は、人事院に、公務員給與の問題について一定條件が備わつた場合には政府及び国会に対して一定勧告をなすべき義務を課しておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)一定條件というのは実効生活費が五%以上変動した場合のことなんだ。六千三百円ベース決定以來実効生活費は五%以上が現に変動しておる。これは内閣総理庁の発表の数字においても明らかなんだ。然るに人事院は今日に至るまで未だ勧告をなしていない。これは重大なる義務違反である。法律の蹂躪なんだ。民主的に制定された法律を守らない意味において反民主主義的な態度であります。(拍手人事院総裁に、だから次の点をお尋ねする。人事院総裁は今日尚、給與額を引上げる必要を認めていないのか。認めていないとすればどういう根拠に基いているのか。認められておるとすれば遅滯なく……遅滯なくというのは公務員法の文句でありますよ。遅滯なく給與準則に関する改訂案を作成して、これを国会及び内閣提出せねばならないが、何故に提出していないのか。又いつ提出するつもりであるのか。補正予算成立後では意味をなさぬことは十分御承知のことと思いますから、(「その通り」と呼ぶ者あり)提出の時期をはつきりと御答弁願いたい。尚、一昨日首相公務員賃金ベースは変えないということを言つておられる。賃金ベースは変らないが、併し実質賃金維持は図ると言つておられる。実質賃金維持を図るためにどのような方針を採つて、どのような施策をしようとしておられるのか。これを明確に御答弁を願いたいと思います。私の質問はこれを以て終ります。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。私の施政演説が甚だ抽象的であるということで、波多野君の御満足を得なかつたことは誠に遺憾に思いますが、併しながら今日は私の施政演説は、今後予算案においてお話の御希望に成るべく副いたいと思いますから、そのときに更に御批評を願いたいと思います。  又無防禦、防備のないことをなぜ力説したかと言われますが、この防禦のないこと、武裝を撤廃したというこの意味合いは絶えず幾度も繰返して一向差支えないものであるのみならず、更にこの趣意が徹底することが即ち講和條約を促進するゆえんであると考えますので、(拍手)しばしば今後も力説いたしますつもりであります。どうかさよう御承知願いたいと思う。又非武裝ということは消極的條件であると、こうおつしやるが、(「空答弁」と呼ぶ者あり)私は積極的のことは永世中立というようなお話承知いたすが、私には消極、積極という意味合いが分らないのであります。又経済的自立講和会議後において経済的の自立はどうするかということでありますが、これは今日において論ずべき問題ではなくして、講反條約が如何にできるか、講和條約ができたところで更に御議論を願いたいと思うのでありますが、今日は先ず講和條約が促進せられることが日本において最も大事なことであり、又国民が熱望するところであると私は考えるのであります。又日本における非武裝という意味はどうか、外国をも武裝させないのかというようなお話でありますが、私の意味合いの非武裝ということは、日本において武裝はしない、日本国としては武裝を国内においてしないと、こう申しておるのであります。(「それは当り前なんだよ」と呼ぶ者あり)  又為替問題について、為替レートを堅持するその合理的の根拠は如何。これは甚だおかしな話でありまして、自由貿易等において、即ち戰前における自由貿易等においては、為替需要供給レートが決つたんでありますが、今日管理貿易、或いは日本が外交及び経済的の自由を持つておらない占領下においては、政府といたしては、現在における輸出入の関係或いはその他各種の国際的の環境等を考えて、これが三百六十円を堅持することが合理的であると、こう考えておるのであります。(拍手)  又民主主義下の民営の意味が徹底しないと、或いは民営に移すとかいうことになれば民主主義に反するのではないかというようなお話でありますが、官営よりも民営に移すことが民主主義に適うと、こう考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり。)その他細かい問題が出ましたが、これは補正予算案を御覽になつて、いわゆる具体的とか或いは合理的とかいうことは、予算案提出されましたときに更に御質問を願いたいと思います。(拍手、「頭は空つぽだな」と呼ぶ者あり。)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇拍手
  6. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 波多野さんの御質問にお答え申上げます。  先ず第一に、ポンドの引下げによつて円ルートの維持の問題でありますが、ポンドの引下げによつて果して輸出が維持できるか、從來の輸出が維持できるかどうかというような御質問と私は思うのでありますが、これは我々の考え方といたしましては、ポンドが約三〇%切下げられた、そこで実際の問題といたしましては、ポンド切下げが必らずポンド・ブロツクにおきまして、スターリング・エーリアにおいて物価の高騰を來たしておる。これはもう事実であります。現に我々の承知いたしておる範囲におきましても、大体一〇%或いは一五%のすでに上昇を來たしておるわけであります。そこで三〇%は一五%或いは二〇%に縮まつた。こういうことが先ず考えられると思うのであります。同時に我々が考えなければなりませんことは、輸入におきまして三〇%の切下げは我々がそれだけ安い原料を入れられるということであります。尚、我々はこの対策といたしまして、御承知のようにフロア・プライスを撤廃いたしました。フロア・プライスを撤廃いたしますと同時に、今日関係筋との折衝におきまして、大体GIF建にする。從來のFOB日本渡しをGIF着港渡しという形に持つて行くことに努めております。そうしますと、フレート或いはインシユアランスにおいて、我々は相当の幅を得ることができると考えるのであります。又実際にできますならば、現在日本船がありませんけれども、あるだけの日本船を利用いたしまして、これで船賃稼ぎをする。この点についても大体了解を得ておるようなわけであります。かようなわけでありまして、実際に今度は国内においていわゆる企業合理化によつてこの差を縮めるという差は三〇%ではなくて、一〇%であり或いはそれ以下である。こういう形に持つて來られておると私は思うのであります。然らば先程波多野さんの御質問の、日本企業合理化をするためには、実際に日本設備その他というものが非常に貧弱である。或る意味において非常に非能率である、それが改善できなければ実際の企業の合理化はできないのだと、これは御尤もであります。併しながら企業の合理化はいつの時代におきましてもインフレーシヨンの時代或いは景気のよい時には実際の企業の合理化は産業界において起つておりません。いつでもせつぱ詰つたとき、どうしても企業の合理化をしなければならないときに本当に企業の合理化ができ、設備改善はできておるのであります。将來の採算が設備改善によつてできる企業に対しては、或いは金融業者も喜んで金融をして呉れるというのが從來の例でありますが、今日においてもそれをいたしておりますし、又我々といたしましてもそれの斡旋をいたしておるのであります。そういう意味におきまして、私は今日の時期こそ本当の意味企業の合理化ができ、又設備改善ができるものだと考えておるのであります。(「輸出の滯貨はどうしたのか」と呼ぶ者あり)それは、輸出の滯貨の御質問はございませんでした。改めて御質問を願います。  それからして、その次の御質問でありましたが、一体自由貿易をやるという形に持つて行くそうだが、これは今日の日本経済界の弱体化からして、果してこれが効果を挙げ得るかどうか非常に危惧されておるのである。この説は巷間しばしば伝えられておるところでありますが、私は自由貿易を通じてこそ本当の日本企業の合理化もでき、日本の商品の優劣化も行われ、又実際に日本貿易が促進できる。これは私は必ずしもこれが外国貿易業者の手に落ちるものではないと考えておるのであります。これは從來の例が如実に示しておるのでありまして、これはただ机の上の議論ではいけないと私は思います。  最後に独占禁止法なり或いは事業者団体法なりを改正する意思があるかどうか、或いは輸出組合法を作る意思があるかどうかというような御質問であつたと思うのであります。この問題につきましては我々も十分研究いたしておるのであります。我々は輸出組合法を作りたいということを申しましたのは、いわゆるカルテル化のつもりで申しておるのではありませんので、我々が考えておる輸出組合法は、ダンピングをどうして我々は抑え得るかという点に重点を置いて考えておつたのであります。從來日本の商品の世界市場における競争において、最も日本が從來各国から嫌惡されたところのものは、いわゆるダンピングであつたことは御承知通りであります。これをどうして防止するかという意味において、輸出組合法などというものを我々は考えておつたのであります。で、今日、自由競争においてこそ、本当に経済民主化も行われ、又貿易民主化も私は行われると考えておりますので、從つて事業者団体法なり、或いは独禁法、その面において改正する意思は持つていないことをここに申上げて置きます。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎君登壇拍手
  7. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 波多野さんにお答えいたします。農地改革によつて日本農業根本的に修正されたが、今後これらの農地改革による平均八反歩の農家になつておるものをどうして維持して行くか、而も世界の食糧事情が今日のごどき飽和点に達しておる場合において、どうして日本農業維持して行くかという点についての御質疑であつたと存ずるのでありますが、農地改革は御承知通りの今日まで段階を経て参りまして、今日はすでに百八十七万四千町歩の改革をいたしまして、そのうち百八十二万町歩がすでに整理が付いておるのであります。この残つておるものにつきましては、至急にこれらの完結をいたしまして、そうして一応これで農地改革段階をいたしたと見ていいと思うのであります。今後におきましては、この小さい農業をどうして維持して行くかという問題でありまするが、御承知通り、今、日本が食糧事情について非常な困難なる環境にあることをお考え下さる場合において、日本独自の立場においてこの農業政策考えることは非常に困難な状態にあるのであります。今日連合国から食糧を百八十万トン以上を輸入しなければ維持できない日本の食糧事情でありますがために、この日本の食糧事情は今後とも絶対に輸入を仰がなければならないのであります。併しながらアメリカから日本といたしましては工業原料の輸入を仰ぐことにいたしまして、できるだけ日本の自給度を高めて参りたいと思うのであります。それにつきましては、日本の食糧を米麦の簡單なる組織で進めて参りましては、到底農家経営が困難であるのでありまして、ここに今お話のありました多角型の農業は当然考えて行かなければならないと思います。今日、日本農業生産物が工業生産物と非常に違つて安いというお話でありまするが、今日は農業生産物の価格決定は、四囲の環境を取入れまして、その価格をパリテイ指数によつて定めておるのであります。決して過去のごどき工業生産物の価格と農業生産物の価格が非常に食い違つておるということは今日論ぜられないと思うのでありますが、今後日本におきましては、この海外から輸入いたしておりまする食糧をできるだけ少くして行くということに考えて行かなければならぬと思うのでありますが、尚、今日の貿易が自主的に許されない状態であるのであります。從つて農業経営維持して行く上におきましても、この観点から考慮を拂つて行かなければならないと存じておる次第であります。尚、農地改革におきましても、この小さい農業に分割されましたが、この農業をどうして維持して行くかという問題は、あらゆる角度から眺めなければなりませんが、要するに今日の農業経営を更に一層多角型に経営して行くということより途がないのであります。で、この点につきましては、日本農業に工業を取入れまして、いわゆる農村工業の面から農家経営維持して行くということを考えて行くより外はないと考えておるのであります。(「予算は計上したか」と呼ぶ者あり)政府におきましては、この点について今後農村、農業経営を合理化して行きたい。かように考えておるわけであります。    〔国務大臣大屋晋三君登壇
  8. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 波多野君の御質問は、国鉄の賃上要求の問題に対しまして、政府は調停委員会並びに仲裁委員会の意見を無視しておるが、これに対しては考えはどうかという御質問でありましたがこれは無視は決していたしておらないのでありまして、先ずこの調停委員会の議に関しましては、大方三つの理由によりまして、この意見は採用する時期にあらずという考えの下にこれを拒否いたしたのであります、(「同じことじやないか」と呼ぶ者あり)先ず第一に、公務員等の給與の関係並びに国鉄の予算の関係、又国鉄のいわゆる能率その他の点、かような点に鑑みまして、国鉄当局がこの賃上要求に対しまして、これを適当にあらずと判定いたし、政府はこれに同意の意を表したのであります。尚又仲裁委員会は、目下仲裁委員会におきまして、種々の考慮をめぐらしておるわけで、何らの結論が出ておらないので、これは波多野君の言うように進行中でございますから、さように御了承願います。    〔政府委員淺井清君登壇
  9. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 波多野さんの御質疑は、先般の総理大臣の施政方針演説と関連して、給與ベースのことに関し私へお尋ねがあつたようでございます。人事院総裁といたしましては、総理大臣の御演説を批判すべき位置にはございませんが、(「その通り」と呼ぶ者あり)御質疑がここに触れておりますので、率直にお答えを申上げる外ないと存じます。総理大臣の御演説によりますれば、給與ベースは変更しない、実質賃金はこれを向上するような施策をとるとのお言葉でございました。併しながら人事院勧告をいたしますると、いたしませんと、如何なる時期に勧告をいたしまするか、又如何なる内容の勧告をいたしまするかは、総理大臣の御演説如何に拘わらず、国家公務員法二十八條によりまして人事院に課せられておる義務でございまして、(拍手人事院といたしましては、この義務を誠実に履行することは、波多野さんの御指摘を待つまでもないことと存じております。ただその時期及び方法につきましては、尚只今ここでお答えを申上げられないことを残念に存ずる次第であります。尚、実質賃金の向上につきまして、(「はつきり返答しろ」と呼ぶ者あり)総理大臣からお話がございましたが、住宅政策或いは病院の設立等の問題が解決をいたしますれば、将來におきまして公務員実質賃金が漸次向上することは、私の信じて疑わないところでございます。(拍手)併しながら、古語にも申しまする通り、轍の鮒はたつた今一掬の水さえ欲しているのでございます。
  10. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 大蔵大臣は病気のため本日出席不可能の趣きでございます。他日出席の際まで答弁を留保したいとのことでございます。帆足計君。     —————————————    〔帆足計君登壇拍手
  11. 帆足計

    ○帆足計君 緑風会の主張の一環といたしまして、又首都十万の市民を代表いたしまして、政府質問いたしたいと存じます。(「国民だよ」「選挙演説だよ」と呼ぶ者あり)  先ず第一に、講和会議に臨む国民の心組みに関してでございますが、この問題につきましては、先程波多野議員からも触れるところがございました。申すまでもなく、講和会議の問題が連合国によつて取上げられましたことは、祖国の前途に明るい希望を投ずるものとして喜びに堪えない次第でございます。もとより敗戰の国民といたしまして、これに対してとかくの批評や主張を云々いたしますることは、或いは愼しまねばならぬかとも存じまするが、それにしましても、自由を理解し、自尊心ある国民といたしましては、これに対する見解なり、合理的輿論を持ちますことは当然のことであると存じます。而して、かかる公正なる国民の輿論は、当然幾ばくかの範囲において、理解ある連合軍諸国の見解に反映するであろうことは当然のことと予想せられるのであります。  講和会議の問題につきまして、今後許さるべき日本産業の水準の問題とか、賠償問題とか、いろいろな問題がございますが、今日といたしまして、それらはいずれも第二義、第三義の問題でございまして、私共が最も関心を持ちますところの問題は、先程波多野議員も指摘せられましたように、祖国の独立と、自由と、安全保障の問題でございます。如何にしい祖国の独立と自由と安全を保障するか、問題はかかつてこの一点にあるのでございまするが、その保障の方法としては次の二つの方法が考えられるのでありましよう。第一には、特定国の衛星国となり、又はこれに海港又は軍事基地を與え、その駐兵を認めるか、又は特定数ケ国の集団的安全保障の方法による場合でございます。第二の方法は、その技術的方法はともあれ、ともかく実質的な永世中立の立場を固守する方法でございます。  先ず、その第一の場合を考慮いたしますと、このような例は或いは妥当でないかとも存じまするが、仮に日本が特定国の軍事的庇護の下に立ち、その軍事基地となることによつて安全保障の道を求めようといたしまするならば、勿論私は米ソ間その他の戰争のないことを信ずるものでありますけれども、万が一にも両国間に戰争が勃発いたしました場合には、日本本土は戰場となり、猛爆の中心となり、数十発の原子爆彈によつて痕跡も止めざるに至るであろうことが予想せられるのであります。尚、若し当該特定国が戰略的に撤退するといたしますならば、開戰月余にして、今日の保護者の手によつて明日は日本の重要なる産業施設が破壞されねばならぬというような悲運も又我々に予想し得られるのであります。太平洋同盟への参加、その他数ケ国の集団保障の場合におきましても大同小異でありまして、日本の占めております宿命的なる地勢的條件よりいたしまして、最もひどい犠牲と打撃を一身に受けるものは日本の私達国民であることを憂うるものであります。  從いまして、現実に残される道は、第二の実質中立の途をおいては外にないと存じます。申すまでもなく、敗戰の祖国に万全の道を求めようとしましても、あり得る筈がございません。我々は與えられた條件の範囲内において最善の道を選ばねばならぬと存じます。この場合、永世中立條件といたしましては、国際連合又は世界各国日本永世中立を認め、それに対して保障を與えるということが前提條件として必要なことは申すまでもございません。勿論その法制的な技術につきましてはいろいろな問題が残されておるでありましようが、スイツツルの方式にせよ、又はスエーデンのごとき実質的なる中立の方式にせよ、とにかく絶対的中立の立場を保つことが唯一の祖国を救う道であり、新憲法に忠実なるゆえんであると信ずるのでございます。同時にこの観点に立ち、飽くまで日本国民がポツダム宣言と新憲法の線に沿うて進みまするならば、ソ連、中国も又これを認め、講和会議に参加するものと私は信ずるのでございます。若し万一講和が特定国だけの講和であり、その條件が特定国の軍事基地と駐兵とを認めるものでありまするならば、それはポツダム宣言の約束する講和とは凡そ縁の遠いものである。(「そうだ」と呼ぶ者あり)又一面にはソ連、中国との対立の激化となり、他面には、実質的には日本の從属と植民地化との永続を意味するものであると存じます。マツカーサー元帥は、デーリー・メールの主筆ウオード・プライス氏に、「余はソ連との間に戰争が起るとは思わないが、若し万一戰争が起つた場合においても、アメリカは日本が軍事同盟国として参戰することは希望してはいない。アメリカが日本期待しておるところのものは、その自立と平和であり、そうして望むらくは太平洋のスイツツルたることである」。私はこの態度こそは、この示唆こそは、日本の進むべき道を示したものであると信ずるのであります。私共はとかく過去の小銃、機関銃、戰車の立場から物事を考え易いのでありますけれども、今や我々は原子爆彈の時代に生きておることを忘れてはなりません。世界の平和は今や人類がみずからを救うための絶対の要件であるばかりでなく、更に日本国民といたしましては、如何なる戰争に対しても飽くまで中立を守るという堅い決意が必要であると信じます。すでに一切の武器を放棄し、永世の平和を決意した国民として、私は、如何なる国と雖も、日本の国土の中において、日本の国土を基地として、これを戰場とすることに対しては、断じてお断わりせねばならぬと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)我々は原子爆彈の最初の天刑を受け、戰争の災害を骨身にしみて味わつた国民であります。この八千万国民の平和と中立への良心的叫びは、全世界の平和を愛好する人類の知性と団結の力によつて保障されることを信じて疑わないのでございます。  永世中立の問題につきましては、総理がいつぞや、ベルギーの例を引かれまして若干の御批評がございましたが、その外交技術的細目に関しましては確かに幾多研究すべき余地もあるでありましようけれども、併しながら、何らかの形において実質的な中立の立場を堅く守り通したいという決意は、恐らく八千万国民の一致した要望であろうと存じます。私は、総理が今次の施政演説におきまして、率直に新憲法の精神を尊重され、平和に徹し、無軍備を押通すべき態度を闡明されましたことに対しましては、深く敬意を表するものであります。祖国の平和と中立の問題に関しまする限り、自由党たると、社会党、民主党、共産党たるとを問わず、全国民が良心にかけて一致団結せねばならぬことと信じまして、全国民のこの問題に対する自覚を期待しますると同時に、是非共総理の御賛成を期待し、重ねて御所信の程を伺いたいと思うのでございます。  更に、現在日本の置かれておりまする立場の深刻なる矛盾は、政治的にはアメリカ民主主義の影響下にありますにも拘わらず、経済的には日本の生きるべき唯一の道がアジアにあり中国にあるということでございます。この微妙な切線を行きまするためにも、私は今日、日本の進むべき道は永世中立の道をおいて外にないと信じます。同時にそれはスエーデン、印度、日本を繋ぐ平和の切線であると存じます。日本の進むべき道は、今や單なる常識論や、即ち算術や、代数ではなく、国民の叡智、即ち高等数学の上に立つて打ち立てられねばならぬのではないかと思います。新生中国との貿易につきましては、すでにイギリス政府並びに印度、濠洲等の政府は、それぞれ承認問題はもはや時日の問題のように思います。又ロンドン、サンフランシスコの商工会議所等におきましても、相次いで中国との貿易を要望する旨を声明しております。私が多少接触いたしておりまする在日華僑並びに中国の諸君にいたしましても、日本中立と平和、即ちポツダム宣言の道に忠実である限り、その経済体制やイデオロギーの如何を問わず、日本と進んで提携すべきを希望しているのでございます。この問題に対しましては、私は総理が從來の行きがかりを離れられ、虚心担懐、もつと積極的に中日貿易再開のために努力されますことを希望して止まないのでございます。  次に産業復興の問題につきましてお尋ねいたしたいのでありまするが、昨年の秋、戰前の五割程度まで回復いたしました日本の産業は、その後、石炭、電力事情の好転、貿易の振興並びに援助物資の増大によりまして、今春には六割、この夏には七割程度まで回復いたしました。併しながら我が国の人口は戰前に比べまして二千万人も増加しておりまするが故に、国民一人当りの生活水準は未だ戰前の五、六割にしか達せぬ現状でございます。国民大衆は未だ堪え難き苦痛と生活の不安にさらされている現状でございます。かくて七割まで回復した国内の生産をせめて來年度には八割まで持つて行きたいというのが私共の念願でございます。ところで目を転じて世界の情勢を見ますると、西ヨーロツパ諸国はすでに戰争の打撃から回復し、戰前水準の二、三割を超え、又カナダ、アメリカ等も戰前水準の更に七、八割までの繁栄を突破いたしております。併しながら戰後の五ケ年、世界市場はすでに生産過剩の徴候を呈し、世界的な景気の停滯はもはや免かれ難い実情でございます。然るが故に、今春以來輸出貿易は停滯し、滯貨の激増となり、又国内的には財政支出の減少、復金融資の停止、一般購買力の減少等によりまして、日本経済は著しい不況に直面いたしているのでございます。この不況を打開しまするためには、今若し漫然とただ通貨の増発、購買力の増大を図りまするならば、いわば国民共食いとなりまして、資材を食い潰し、再びインフレの再燃は必至であります。然るが故に、この滯貨並びに原材料を極力生産の方面に動員し、例えば食糧の増産、電源の開発、戰災の復興、住宅の建設、失業者の救済、輸出並びに海運の振興というような積極的な方面に活用せねばならぬと信ずるのでございます。八千二百万の人口を抱え、年々増大する二百万人の人口を擁して、今日程度の生産水準で停滯するような消極的な政策では、敗戰の国民は断じて救われないと思うのでございます。僅か四千万トン足らずの石炭が滯貨を生ずるような消極政策は、どうしても切り換えて頂かなければならないのではないかと思います。現在我が国は年に三億ドル近くの食糧を輸入しております。又この難局を打開しまするためには、現在の極端なデフレ状況を打破しまして、せめてドツジ公使が最初に予期しましたようなデイス・インフレの線に切換えることが必要であろうと存じます。このためには、生産の復興並びに国土の開発方面の資金に対して積極的な疏通の途を開くことが必要であろうと存じまするが、これに対して総理大臣並びに大蔵大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。  我が国の食糧は経済安定本部の計画によりますると、数年後に尚只今の倍額の六億ドル、二千万石以上の食糧を輸入いたさねばならぬことになつております。現在我が国は年に三億ドル以上、一千万石以上の食糧を他国の惠みに依存しておる現状であります。而も敗戰直後の一年であるとか、或いは飢饉等、特別の事情であるならばいざ知らず、年々巨額の食糧を漫然と他国の惠みに仰いでおります現状は、嚴重に反省されねばならぬのではないかと存じます。私共は現在三億ドルの食糧輸入をせめて数ケ年後には二億ドルに圧縮するというような真劍な対策を樹立いたさねばならぬと信じております。併しながら農民諸君の孤立した努力のみにこれを求めることは到底無理でございます。全国民がこれを自覚し、これに協力し、国家が国策として積極的指導と援助をこれに與え、協同組合の育成、科学技術との結合、治水、治山、農地の改良、肥料の増産、国有林野の開放、牧畜水産の振興等、全面的努力が必要であろうと思います。現状を以て講和会議を迎えまするならば、祖国の自立と解放どころか、講和会議の日は国民の飢える日でなくてはなりません。かくのごとき難局に処して、農林大臣は如何なる覚悟で農政に当つておられますでありましようか、御所見の程を伺いたいのであります。  食糧の増産と並んで当面の急務は水力電源の開発の問題であります。敗戰の日本といたしましては、かのデンマルクの復興のスローガンにもありましたように、外に失いしものを内に耕さねばなりません。彼の日本降状の日、ミズーリ艦上におきまして、日本の今後進むべき道に関し、マツカーサー元帥が、平面的復興ではなくして、日本は立体的復興の方式を選ばなければならぬと言われましたことは、極めて示唆に富む言葉であると私は思います。我が祖国は山高く水清き国でありますけれども、我が国の水力電気は、御承知通りそのアジア的な気候に影響されまして、夏は豪雨と洪水に見舞われまして、冬は渇水によりまして半減するというところにその欠陥があるのでございます。然るが故にこれが対策といたしましては、全国至るところにそれぞれの地勢に応じ、大中小無数のダムを設け、それによつて水流を夏冬平均化し、併せて電源開発と治山治水を結合し、食糧増産と工業の振興を結合することが必要であろうと存じます。このダム式の電源開発の急務に対して通産大臣は如何なる御所見をお持つでありましようか。電源開発に関しましては、アメリカのテネツシー・バレーの開発計画が極めて示唆に富むものでございまするけれども、同時に我が国におきましては、鴨緑江の豊水ダムを開発いたしました強力なる技術陣を動員することが最も肝要であろうと存じます。この点に関しまして政府の一段の施策と奮起を要望いたす次第であります。  次に本日御欠席でありまするけれども、大蔵大臣にお伺いしたいのでありまするが、これは最初に述べましたように、現在産業界は非常なる資金難で悩んでおります。敗戰によりまして根柢から瓦解しました日本経済再建のためには、正常なる民間資本蓄積だけでは到底再建の不可能なことは申すまでもございません。どうしても国家資金並びに設備長期資金の援助が必要でございますが、右に関しまして大蔵大臣なり次官にお尋ねいたしたいのでございまするが、第一には、アメリカ政府からの好意の賜物でありまするところの援助見返資金を、もつと有効に復興資金に活用する方法はないものでございましようか。第二には、長期建設資金供給のための特別金融機関の必要につきまして、政府は如何なるお考えをお持つでありましようか。第三には、この年末金融並びに当面極度に梗塞しておりまするところの株式証券金融に対しまして、政府は如何なる対策を準備しておられるのでありましようか。第四には、庶民の渇望の的でありまするところの住宅金融の問題につきまして、政府は如何なる準備をしておられるのでありましようか。第五には、懸案の石炭関連産業の未拂金の処理に関しまして、通産大臣その他当局におきましては如何なる対策をお持ちでございましようか。これらの諸点を適当なる機会に関係大臣の皆樣からお伺いしたいと思うのであります。  次に、吉田総理にお伺いいたしたいのでありまするけれども、経済安定本部が非常な努力を以て作成しました五ケ年計画案は、混沌たる敗戰日本経済一つの参考資料を提供いたしたものとしまして、私はその努力は相当高く評価さるべきものではないかと存じます。もとより現在のような複雑な内外情勢の下におきまして、綿密なる計画経済の不可能なことは申すまでもございません。併しながら少くとも祖国再建の大まかな目標と方法論だけは確立いたしまして、国民の進むべき途を示すことが必要であろうと存じますが、これに対して政府は如何なる見解をお持ちでありましようか。総理の施政演説によりますれば、治水治山並びに失業対策とも結合いたしまして、下から盛り上る国土開発計画を強調しておられますることにつきましては、深く賛意を表する次第でありまするけれども、我々はその速かなる推進を要望いたしたいのであります。同時にこれに関連いたしまして、封建明治の遺物でありますところの、現在の余りにも狹小なる府県の制度を廃止し、道庁制度を設ける意思がおありかどうか。これに対する総理並びに関係大臣の御所見を伺いたいと存じます。  戰いに敗れました我が国が、内に耕さねばならぬことは当然のことでありまするけれども、国土を耕さねばならぬと共に、人の心を耕さねばならぬと思います。即ち教育の改革、科学、技術の振興は最大の急務でございます。湯川博士がノーベル賞を頂きましたことは、我々日本人といたしまして最大の誇りであり、喜びでありますけれども、これを機といたしまして、我が国の科学技術政策にこの際一大反省を加えて頂きたいと思います。(拍手我が国の科学技術研究機関の現状は実に惨澹たる実情でありまして、国家のこれに対する助成は全く冷淡極まるものでございます。(「その通り」「同感」と呼ぶ者あり)而も多年、例えば納税思想普及費に一億円もの予算が組まれていると申されますような、無駄な国費の浪費は至る所に見受けられるのでございます。更に、会社の科学技術研究諸施設に要しましたところの各種の施設、機械等に対しましても、戰時中は免税の方法が講ぜられておりましたのでありますが、現在は課税されまして、非常な負担になつております。これらにつきまして当然免税されて然るべきではないかと存じますが、これに対しまして、関係大臣の御所見を伺いたいと存じます。  最後に、終戰以來、占領軍当局の御好意その他によりまして、D・D・T並びに化学薬品の普及は、衛生状況の改善に著しい進歩の跡を示しましたにも拘わらず、現在結核の蔓延は恐るべき状況になつております。特に結核の予防という問題につきましては、殆んど国費もこれに割かれず、僅か九千万円程度しか割かれておりません。御承知のように、結核は予防してのみ防ぎ得る病気でございます。而も病院に收容されておりまする患者は全患者の五%に過ぎず、百五十万人以上、それ以上の患者が放置されているというような状況であります。全国の保健所等におきましても、進歩したるエツキス線又はその他進歩した気胸療法設備は殆んど六〇%しか備えられてないという現状であります。日本は彼の「ほととぎす」の物語以來、結核の国でございます。このために苦しめられ、又命を失つた秀才の数は、数知れない現状でございます。然るが故に私はこの際、政府当局は結核撲滅のために特別の部課を設けられ、一局を設けられ、これに対して最善の努力をなさることを要望したいと存じます。  最後に、現在室業者は激増し、引揚同胞、病弱者、未亡人等の生活難は言語に絶するものがございますが、交通整理又は都市の美観というごとき理由で露店商を駆逐することは余りに苛酷であると思いますが、これに対する関係御当局の御答弁を承わりたいと存じます。私の質問はこれを以て終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。講和條約の問題に関連しまして、日本独立、自由、安全保障等に対しまして、いろいろな現に議論が生じており、又いろいろ御心配の点も私は誠に御同感に考えます。併しながら政府としては、この仮定の問題に対して、政府考えはこうである、ああであるということは、現在の立場は申しにくいものであることを御了承願いたいと思います。併し国民の間において、こうしたい、ああしたいという、この輿論の討議については、これは無論自由であつて国民としても、国会において自由に御討議になることは一向差支えはないのでありますが、(笑声)ただ当局の立場としては、仮定の問題について、具体的にこう、あるということのお答えはできにくいことは甚だ遺憾といたします。又局外中立の問題でありますが、これは絶えずいろいろ議論がありますが、局外中立と申せば、その前庭において、戰争ということを前提といたすのであろうと思いますが、日本としては、戰争を放棄し、武裝を放棄して、そうして世界に先立つて世界戰争放棄、又は武裝解除、撤去ということの輿論を起す、その先駆けに日本国がみずから任じて立つという決心は、それが日本の将來の安全を保障するゆえんであり、日本国民の幸福を保障するゆえんであると私は考えて、先般の施政演説においては、その趣意で以て述べたのであります。この局外中立という問題については、先程お示しの通り、マツカーサー元帥もその声明において言つておられますが、趣意とするところは、日本をして戰争の巷に置きたくないという希望考えからして出たのだと私は確信いたしますが、これは是非とも日本をして再び戰争の巷に置きたくないということは、これは国民挙げてその気持であることは申すまでもないのでありますが、一層進んで、世界戰争を放棄せしむるために、世界をして日本が先駆けになつて戰争放棄を唱えて、世界の平和を確立することに邁進することが、又日本に対する信用を高めるゆえんだと考えるのであります。今日まで講和條会議が遅れたという一つの原因は、日本が再び武裝をするのではないか、地下部隊があるのではないかというような疑惑或いは恐怖が相当この講和條約の促進を妨げておるものと私は承知をいたしておるのでありますが、日本としては、無論戰争放棄に徹し、又武裝を解除し、非武裝国として立つ。これが日本の将來の安全が、これによつて国際の信用を加える。世界にも又かくのごとき国体であると確信せしむることが、日本の将來を確保するゆえんであると私は確信いたします。  又中日貿易については、無論我々としても、その再開なり発展なりが、ますます発展するようにと希望いたしますが、何しろ今日は中共は内乱の最中でありますから、この内乱の最中に中共と、貿易を促進する相手政府までもまだ確立しておらない今日において、とやこや言えない時代にあると私は思います。無論、中日貿易が再開され、発展されるような時期に到達すれば、政府としては極力その発展なり再開に努力する考えであります。  五ケ年計画のこと、五ケ年計画の安定本部の発表について云々というお話がありましたが、これは私の趣意とするところは、再検討をするようにということであります。今日お話のように国際情勢及び内外の情勢は変転極まりないときであつて、この計画を立てるにおいても、五ケ年計画を立てるにおいてもその前提としての日本内外の状況、環境、この変転極まりない環境を土台として、如何程までその変転しつつある環境を計算の中に入れたか、計画の中に入れたか、又日本の從來の統計は、これは私としては甚だ心細い統計と考えておる。統計の確立と言いますか、統計の事業についての十分なる、正確なる統計を作ることに一層政府としても盡力いたさなければならず、その計画は、すでに新たに統計局を設けて、統計の改造ということをいたしておりますが、併しこれも統計は一、二年にして初めて確立することはできないので、多少長きに亘つての統計を集めて、ここで初めて正確なる統計ができるものであります。五ケ年計画といつても、今日までの統計が戰前、戰を通じて、いろいろ政府の要求と言いますか、そのときの事情に応じで、統計の狂いというか、或いは曲げられた正確でない統計が各いろいろな方面において現われております。そし点について我々は甚だ不安であるから、五ケ年計画を立てるについても、正確なる統計の上において、且つ又変転極まりないこの環境において、如何程までに五ケ年計画の計画書の中に採り入れられたか再検討を要すると言つて、今発表を中止させておるわけであります。これはどこかで同じようなことを申しておりましたが、再びお尋ねであるからして申述べます。  その他の問題については予算提出せられた場合、又主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇拍手
  13. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 帆足さんの御質問にお答え申上げます。  先ず第一に電源の総合開発についての御質問がありましたわけでありますが、戰後日本に残された唯一の資源でありますところの水力の開発は、單に電源のみの見地でなくて、治山治水、或いは灌漑、そういつた全般的の下に総合的な電源開発をする必要がある。御指摘のテネシー・バレー・オーソリテイの方式による開発をすることは我我としても全く賛成であります。できるだけそういつた方向において要後の電源開発をして行くべきものであろうと考えるのであります。尚、御承知のように何々河川、一つの河川を中心といたしまして、それに対する電源の開発なり、治山治水なり、或いは灌漑なり、或いはそれに関連した工業なり、或いはその他種々なその河川に関連したすべての関係事態一つに纏めた計画を立てる。こういつたことについで、御指摘の鴨緑江ダムの関係の技術者の方々がいろいろな案を立てられておるので拝見いたしております。非常に私は結構なお考えだと存ずるのであります。そういつたような文献を主にいたしまして、通産省といたしましても、できるだけダム式な総合開発の方式に行きたいと思うのでありますが、ただ現下の問題といたしましては、御承知のように水力が非常に少い。総合開発には多大の経費を要すると同時に、相当の長年月を要するわけであります。年月と経費の問題から、根本的にはそういつた式の総合開発が必要でありまするが、それと同時に並行して電源開発を急がなければならぬ。こういう事情がある点も御了承を願いたいと存ずるのであります。  それから、その次の御質問は、石炭の関連産業への支拂の問題があつたと存ずるのでありますが、御承知のように、例の関連産業への問題が起きました当時、昨年の四月……本年の四月でありましたが、その当時におきまして、大体設備資金におきまして残つておりましたところの金額は四十二億円と記憶いたしております。それから運転資金については六十五億円残つておつたと承知いたしておるのであります。ところで、これに対しまして政府といたしましては、極力これが融資の斡旋をいたしまして、大体運転資金につきましては、五、六月の頃に十八億八千万円、その後八月までに大体六億一千万円、合せて二十五億円の運転資金に対するところの融資を斡旋いたしております。又設備資金につきましても、大体十一億八千万円の設備資金の融資をいたしておるのであります。その後御承知のように配炭公団が廃止され、各炭鉱におきまして運転資金その他の面からしてこれが関連産業に対する支拂が遅滯しておることは承知いたしておるのでありますが、政府といたしましても極力これが融資の斡旋に努めて、関連産業への決済をいたさせたいと、かように考えておる次第であります。  その次の御質問は、いわゆる研究機関に関する問題であります。研究、技術の問題でありますが、この点につきましては、殊に民間の研究機関が、経費の点か、又人員の点、その他の点におきまして、今日直接に從來民間の研究機関が果しておりましたところの機能を果していないという実情にあることも承知いたしております。又有名な民問の研究機関におきましても順次閉鎖をいたしておる、こういう実情にありまするので、それだけに、今日どうしてもこの技術に重点を置かなければならぬ立場から、通産省といたしましても、我々の持つておりまするところの十二の研究機関を動員いたしまして、それぞれ適切な問題について各業者に指導を與えることを努力いたしておるのであります。尚できるだけ日本戰争中足踏みをいたしておりましたところの技術を取返す。或いは足踏みばかりじやありません。非常な方向違いのことをやつておつた技術の取返しをするという意味におきまして、できるだけ、今日の不便なときではありまするけれども、先方の文献も我々の力によつてできるだけ沢山集める。今日大体八千冊ばかりの文献も集めておりまするし、尚、特別に新らしいところの機械、サンプル・オーダーをいたしまして、四十件ばかり新らしい機械を入れる。こういつたように措置によりまして、だきるだけ研究を続けて行くと同時に、民間の各業者に対してこれが指示を與えたい。かように考えている次第であります。尚、研究費その他の課税の問題につきましては、これは大蔵省の所管でありまするけれども、我々といたしましては、從來この研究費その他の課税の問題につきましては、しばしば民間の間にもありました問題でありまするので、尚十分検討いたしたいと、かように存じている次第であります。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎君登壇拍手
  14. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 帆足さんにお答えいたします。食糧問題の自給自足についてでありまするが、お述べになりました通り、国土は制限されましたし、人口は年々百六十万の増加をいたしておりますので、ここに如何にしてこの人口問題と食糧問題を解決するかということは、我が国にとりまして重大な問題であるのであります。政府におきましては、我が日本の総力を挙げまして自給度を高めて行きたいということにあらゆる施策を行なつているのであります。只今御意見の中にもありました通り、食糧増産のためには総合的にあらゆる施策が必要でありまするが、尚人口の増加は、この増加する人口に対して食糧が十分あり得るとは考えられないのであります。現在百八十万トンの食糧を輸入いたして漸く二合七勺の基準の配給をいたしているのでありまするが、この自給自足と申しましても、日本内地で生産いたしましたあらゆる食糧によつて自給自足をするという、こういう意味でないのであります。我々はこの日本におきまする人口を工業力にこれを転換いたしまして、いわゆる工業力によつて輸出を盛んにいたし、そうしてこの輸出によつて食糧を確保する。現在アメリカからは御承知通り食糧の補助を受けているのでありまするが、この補助がいつまで継続するかという問題であります。然らばどうしても今後はこの貿易を盛んにいたしまして、この貿易する力によつて食糧を確保する。そこに私は自給自足の途を考えて行かなければならぬと思うのであります。いつまでも、いつまでも、このガリオアによつてアメリカから我が日本は食糧を融通して貰つているということは許されないのであります。併し今日は世界の食糧を非常に増産の傾向を辿りまして、今日、日本に対する輸入の食糧量についても相当変化を來たして参つたのであります。併しこれとても日本におきましては、これを受入れる態勢を作らなければならぬのでありまするが、日本におきましては、とにかく自分の力のあらん限り食糧増産をいたしまして、そうして外国からの食糧補給を減額いたしまして、その余力を工業原料の輸入に充てて、そうして貿易を盛んにし、この貿易の力によつてこの食糧の輸入を考えて行くということが、将來考えて行く途ではないかと、かように考えたわけであります。一応経済安定本部において計画いたしました将來の輸入等は、現状を推移いたして行く形であつたのでありまして、我々は一日も早くこの独立的な食糧体制を整えたい、かように考えているわけであります。(拍手)    〔国務大臣林讓治君登壇拍手
  15. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 帆足君の御質問に対しましてお答えをいたします。最初に結核の問題でございますが、今日戰後におきまして結核の蔓延は、数字の上においては漸次減少の傾向を示しておりますけれども、昨年二十三年度におきまして結核の死亡患者というものが十四万五千人ばかりありまして、国民の死亡率といたしましては最高のものであります。そこで公衆衞生対策上最も重要な問題といたしまして、政府におきましても相当に考慮をいたしているわけであります。一般的に予防対策はどういうようなことをやるかと申しますると、先ず健康診断、特に集団生活者の検診を強化いたします。又予防接種法に基きまして結核予防接種の徹底を図つて行く。そうして尚、結核予防の第一線の機関といたしまして保健所を各地に設けるようになつておりますが、來るべき予算におきましても、この第一線の機関としてこの保健所の整備拡充をいたして、目下予算の面においては相当に現われているわけであります。又結核の病床につきましては、現在では国立のもの或いは私立のものを合せまして七万五千床あるわけでありますが、その中で国立のものが四千五千でございます。近き将來におきましては、国立のもののみでありましても八万床を目標にいたしまして、これが整備に取りかかつて、目下関係方面と折衝をいたしているような実情にあるわけであります。尚、結核患者の治療につきましては、近來大分治療の技術が進歩いたして参りまして、人工気胸であるとか、或いは外科的の療法を積極的に奨励をいたしているわけであります。尚、幸いにいたしまして連合軍の司令部の好意によりまして輸入いたしまするストレプトマイシンの活用を図つているわけであります。このときにおきまして、ただ輸入に仰ぐばかりでなく、我が国におきましても国内において生産のできるように目下準備を進めているような実情にあります。尚、今後におきましては、現在の結核予防法の全面的の改正をいたしまして、これが絶滅に努力をいたしたいと考えているわけであります。  尚、引揚者に対するところの問題でありますが、誠に御同情に堪えません。その実情に鑑みまして政府も努力をいたしておりますが、今のところにおきましては、近頃の引揚者が先ず自営をいたした者であるとか、或いは原職に復帰いたした者が相当ございまして、新たに尚残つております者は約三分の一が新規就職を必要といたしまして、公共職業安定所におきましては、引揚者の就職というものを第一に考えまして、これが努力をいたしているわけであります。尚その就職のできません者であつて特別に事業などについて経験のありますような者は、その方々の更正をいたしまするがために資金の貸付をいたしているわけであります。これが現在におきましては約五億程計上いたしておりますが、この度の補正予算におきまして更に二億円というものを追加いたしまして、美さんの御協賛を得たいと考えているわけであります。尚、住宅のないような者などにつきましては、現在まで国庫の負担といたしまして四億五千七百万円を都道府県に交付いたしまして、本年においては約九千五百戸を建てるようなことになつておりますが、更にこれを増加するように努めて行きたいと考えているわけであります。尚、生活の困難なる者に対しましては、生活保護法の適正なる運用によりまして最低の生活を保証いたして参りたい。応急の問題といたしましては、家財であるとか越冬用の寢具などにつきましては、窮迫しておられる方々に適当な処置を講じまして、これを提供いたしているような状況になつております。尚、今後におきましては、一般国民の引揚者に対する援護思想の高揚を図りまして、政府国民と一体となつて引揚者の更生を図つて行くように、政府として努力をいたしたいと考えております。(拍手)    〔政府委員小野哲君登壇拍手
  16. 小野哲

    政府委員(小野哲君) 帆足さんの御質問中、所管事項についてお答えいたしたいと存じます。御質問の要点は、この際、府県を統合して道州制を布く考えがあるかというふうに承わつたのでございます。都道府県の現在の区域が地方行政の單位として必ずしも最も適合しておるとは考えておらないのでございまするが、目下、シヤウプ勧告に基きまして、新憲法の意図する地方分権の本旨に則つて、行政事務配分の再調整及びこれに伴う地方公共団体の区域の再検討の問題が急速に取上げられる予定でありまして、政府といたしましても、今国会に右の問題を調査研究するために、地方行政調査委員会議設置法案を提案いたしたく準備を進めておるような次第でございまして、その会議勧告等に基きまして十分検討を加えたい。かように考えておる次第でございます。(拍手
  17. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 大蔵大臣答弁は、先刻申上げました理由により他日に留保せられます。国務大臣に対する質疑は尚ございますが、議事の都合上、明日引続き行うこととし、この際、日程第二より日程第四までを順次議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。      —————・—————
  19. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 日程第二、日本銀行政策委員会委員任命につき事後承認の件。去る十月二十七日、内閣総理大臣から、日本銀行政策委員会委員に、中山均君、岸喜二雄君、宮島清次郎君及び荷見安君を任命したことについて、昭和二十四年法律第百九十一号附則第二項の規定により本院の承認を求めて参りました。本件に関し承認を與えることに賛成の諸君の起立を請います。    〔起立者多数〕
  20. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本件は承認を與えることに決定いたしました。      —————・—————
  21. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 日程第三、外国為替管理委員会委員任命につき事後承認の件。去る十月二十七日、内閣総理大臣から、外国為替管理委員会委員に杉原雄吉君を任命したことについて、外国為替管理委員会令及び昭和二十四年政令第三百四十号により本院の承認を求めて参りました。本件に関し承認を與えることに賛成の諸君の起立を請います。    〔起立者多数〕
  22. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本件は承認を與えることに決定いたしました。      —————・—————
  23. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 日程第四、お年玉つき郵便葉書等の発売に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。郵政委員長山田佐一君。     —————————————    〔山田佐一君登壇拍手
  24. 山田佐一

    ○山田佐一君 只今議題となりましたお年玉つき郵便葉書等の発売に関する法律案につきまして、郵政委員会の審議の経過及び結果についてその大要を御報告申上げます。  先ず提案の理由でありまするが、我が国の年賀郵便の特別取扱は昭和十六年に停止されるに至つたのでありまするが、終戰後、年賀状の差出も漸次増加する機運にありましたので、昨年から年賀郵便の特別取扱を再開したのであります。ところが、その利用数は約七千万通で、戰前の一割内外に過ぎなかつたのであります。郵政省はこの事態に鑑み、年頭の挨拶を郵便で交換する從來の好ましい風習を助成しますと共に、郵政事業の收入増を図るために、年賀状の差出を積極的に勧奬いたすべく、くじ引によりお年玉を付けた年賀郵便葉書を発売するため、本案の提出となつたのであります。  以下この法律案の骨子を申上げますと、お年玉の額につきましては、お年玉の性質に鑑みまして、その單価は最高二万円を超えてはならず、又その金額及び価格の総額は、お年玉つき郵便図書の発行総額の百分の五を超えてはならないこととしたのであります。又この法律には、西欧諸国や我が国における、いわゆる慈善切手等の発行の例に徹しまして、郵便切手やお年玉つきの年賀葉書等に、社会福祉の増進を目的とする事業を行う団体に対する寄附金を付けて発行できるようにするため必要な事項を規定しておるのであります。即ち寄附金を受ける団体は、その選定を公平にいたしますために、郵政大臣はその選定に当りましては必ず郵政審議会に諮つて指定することとしたのであります。  以上は本案の大要でありまするが、本委員会におきましては、寄附金の関係から厚生委員会との連合委員会をも開きまして、愼重審議いたしましたが、その主なるものを申上げますると、本法律案趣旨は誠に結構であるが、郵政省においては一体どのくらいの発行枚数と寄附金額とを予想しているかとの質問に多しましては、本年度は、大体総数が一億八千万枚であり、そのうち一円の寄附金つきの郵便葉書は一億五千万枚、從つて寄附金額は一億五千万円の予定であるとの答弁がありました。次に、最も問題とされましたのは、この寄附金を受ける団体についての規定に関してでありまして、この寄附金は社会福祉の増進を目的とする事業を行う団体に対して行われることになつており、その団体は郵政大臣が郵政審議会に諮つて指定することとなつているが、郵政省は如何なる団体を予定しておるか、又これらの団体に対する所管大臣たる厚生大臣に協議を行わないで指定するのであるかとの質問に対しましては、郵政省としては差向き中央共同募金委員会以外は考えていないし、郵政大臣が郵政審議会に諮つて団体を指定する場合には予め厚生大臣に協議することとするとの言明があり、又若し來年度において再びこれを実施するような場合には、予め厚生大臣に協議して後、郵政審議会に諮つて指定するよう、所要の修正の手続をとりたいとの答弁がありました。尚、寄附金募集が憲法第八十九條に牴触するものではないかとの質問に対しましては、当局は、寄附金は直ちに振替貯金によりその団体に交付されるものであつて、從つて憲法第八十九條に牴触しないとの答弁がありました。以上の外、各委員より詳細に亘り熱心なる質疑応答が重ねられましたが、それは速記録によつて承知願いたいと思います。  かくて質疑応答を打ち切り、討論に入つたのでございまするが、格別の御発言もなく、引続いて採決に移りましたところ、全員一致原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上簡單でございまするが御報告申上げます。(拍手
  25. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。    〔起立者多数〕
  26. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。  本日は議事の都合により、これにて延会いたしたいと存じますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 松平恒雄

    ○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十二分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  一、日程第二 日本銀行政策委員会委員任命につき事後承認の件  一、日程第三 外国為替管理委員会委員任命につき事後承認の件  一、日程第四 お年玉つき郵便葉書等の発売に関する法律案