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政府委員(
高橋一郎君) 御
指摘のように、
現行法で一日五円とありましたのを二百円以上四百円以内と、こういたしました。それに対しまして、
死刑の場合は、五十倍にしたのではないかと仰せられますが、実は
現行法では、
死刑の場合は、
金額の定めがございませんで、
裁判所の担当と
認むる金額ということにな
つておりまして、ただこの間こちらのお出ししましたところの旧案で、
死刑の場合に、一万円以内という
金額の制限を設けたのでございます。
従つて一万円に比べて五十万円が五十倍というふうにお取りにな
つたのであろうというように
考えておるのでありまして、倍率の点は別段
抑留、
拘禁の場合に引き比べて、
死刑の場合に、より少いという
考えではございませんから、御了解を願いたいと思います。
それから
抑留、
拘禁の場合に、二百円以上四百円以下というようにいたして置きながら、
死刑の場合には、単に五十万円以内ということで、
最低限を切らないのはどうか、むしろ切
つた方がよいのではないかという点の
お尋ねも、誠に御尤もなんでありますが、この点は、
前回にもお答えいたしましたように、結局二百円といい、四百円とい
つても、又五十万円といいましても、何等か数字的な計算で以て、
金額がこれでなければならんというものが、実は出て参らないのであります。それで結局は、いわゆる
達観と申しますか、我々の、いわゆる常識で以て、この辺で妥当ではないかというところを定めたわけでございますが、
死刑の場合に、
最低限を幾らに切るかということにつきましては、その
達観ですらも、適当な
金額を実は決め兼ねたのであります。
死刑の
裁判は、いずれにしても、慎重になさるべきものと
考えますが、特に
死刑の
執行が、実は過
つてお
つたというような場合は、非常に稀有のことであり、又あ
つてはならないものでありますけれども、仮にそういう場合が出たといたしますると、
裁判所としても、これは本当に真剣にお
考えになることと信ずるのであります。従いまして、仮に
最低限が
切つてございませんでも、決してそれによ
つて非常に安い、
刑事補償の本旨に副わないような、
金額が定められるというような心配は先ずないのではないかと
考えておる次第であります。