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1949-11-28 第6回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十八日(月曜 日)    午前十時五十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○刑事補償法案内閣送付) ○少年法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○仙台大年寺山東北少年院設置反  対の請願(第三百六十二号) ○戸籍法中一部改正に関する請願(第  四百四号) ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 只今から法務委員会開会いたします。初めに刑事補償法案質疑を行います。速記を止めて。    午前十一時五十六分速記中止    ——————————    午前十二時十二分速記開始
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 速記を始めて。それでは休憩いたします。    午前十二時十三分休憩    ——————————    午後一時四十三分開会
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれより午前に引続き法務委員会を開きます。  午前中質疑がありました少年法の一部を改正する法律案につきまして質疑を継続いたします。
  5. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちよつと午前中に聞き漏らしました点で二点程お伺い申上げます。  收容されました少年の年齢超加のことが收容後に発見されましたときに、処分変更はどういうことになるのでございましようか。
  6. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 只今少年法の上から申しまするというと、それに対して処分変更する途はございません。従いまして私共といたしましては、一応その決定従つて処分をしなければならんという建前になつております。この点につきまして、将来この不備を直したいというふうに考えております。
  7. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それからもう一点でございますが、現行少年法によりますと、強制処分的な刑事訴訟法規定少年保護の部面に用いられている点がございます。例えば第十五條のような又少年の身柄の留置に関しましても規定しておりますが、その規定少年保護処分をいたしますのに如何かと思つておりますのでございますが、結局少年法保護処分に関しまする諸規定の中から刑事訴訟法の、訴訟法的な手続の要素一切を取り去つてはどうかという点でございますが、その点についてのお答えを願いたいと思います。
  8. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 少年法の中に刑事訴訟法において認められるような強制的な力を用いる場合という御質問でございますが、その強制的な処分をいたしますのは、少年の福祉を保護するために特に強力な手段が講じられたのでありまして、少年自身に対する証拠発見とか、或いは処分を重くするとか、その他の強制処分意味ではありません。その点につきましては現行法律でいたしても差支ないように考えております。
  9. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 幸いこの機会に私は柳井少年院ですか、あすこの設備計画及び現情の設備を承わりたいと思います。
  10. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 山口県柳井にありまする新光学院と申しまする施設は、これは少年刑務所でございます。終戰時に海軍の施設でありました潜水学校行刑施設の転用を受けまして、その施設が非常に理想的な立派な施設でありまするために、これに少年收容して、理想的な矯正教育を施したい、かように思いまして私共もその施設にいろいろな工作を加えまして、只今收容能力は約六百程度までのところを十分改容し得るまでになつております。更に設備を加えまして、職員を充実いたしますれば、千人以上十分に收容できる施設でございます。現在その学院に入つておりまする少年受刑者の数は約四百人を少し超えた程度でございまするが、何故さようにしないかと申しますると、実はこの少年院を開始いたしまするときにその筋からのいろいろな御注文がございまして、日本においても一つモデル少年プリズンとして新らしい方法を採つて、その実験によつて少年矯正教育に対する何らかの示唆を得るようにやれという言葉がございました。そういうような点からいろいろ考えまして、私共はその少年刑務所を一般のそれよりも或る程度教育方針にマツチさせるために、警備等の面は或る程度度外視いたしまして、本人の個性を十分に発揮させながら教育を施すという進んだ矯正方法を取入れることにいたしました。そうして收容いたしまする少年は、成るべくこの戰争において両親或いは保護者等を失いましたような、いわば戰争犠牲者である少年を第一番に收容し、更に将来改悛の見込が十分にあるような者を收容して教育を施すということにいたしたのであります。裁判所を開設いたしまして以来、暫く適格少年を得ることが困難でございましたが、最近各全国の少年刑務所協力を得まして漸次收容者も増して参りましたが、将来は更に多くの少年收容することができると思つております。
  11. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 この少年刑務所予算それから敷地、建物の坪数、尚教育方法、それから授産事業等についてのお話を願いたいと思います。尚大体收容者の資格というのは、大別してどういうことになつておりますかということも一つお願いいたします。
  12. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) ちよつと今資料を持つておりませんので、敷地予算その他につきましては只今ここで御答弁いたしかねるのでございますが、追つて又後で調査いたしまして…
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では追つて書面でお出し願うことにいたしましてよろしうございますか。
  14. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 結構です。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは都合上この程度にいたします。   —————————————
  16. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次に裁判官報酬等に関する改正法律案並びに検察官俸給等に関する改正法律案議題に供します。前回に引続いて質疑をお願いいたします……それでは便宜ここへ請願一つ入れさして頂きます。請願第三百六十二号、仙台大年寺山東北少年院設置反対請願、この請願議題に供します。紹介者高橋啓君の御説明をお願いいたします。
  17. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) この請願趣旨について簡單に御説明申上げたいと思います。この東北少年院仙台市の大年寺山という所に設置する問題について反対請願でございます。この問題のそもそもの発端は、東北少年院仙台市に設置するということで、昨年の十二月に成瀬院長外数氏が仙台市に来られまして少年院設置趣旨を説明して、用地斡旋方仙台市に要望して参つたのであります。この際反対運動が誤解を受けることを避ける意味において、私が基本的な問題を申上げたいと思いますが、この少年院設置につきましては、これは国策でありますから、これに対しては仙台市は反対いたしておらないのであります。そうしてむしろこの建設熱意を持つて協力いたしたいということを市長その他関係者がはつきりその態度を示しておるのであります。ところが地元といたしまして、建設場所についてはいろいろ観光施設或いは風致地区、それから都市計画というような、いろいろな重大な問題が関連して参りますので、予め市或いはその他の当局設置場所決定についてはよく協議して貰いたい、尚進んで自分達がこの適地を斡旋したいというので、市長は七ケ所かを用意いたしまして、特に一ケ所はここにも書いてあります通り仙台西部観光協会というのがありますが、その観光協会が盡力いたしまして、そうして国見山峠という所に十万余坪を決定いたしまして、それを御推薦するように用意いたしておつたのであります。ところが本年の三月三十一日に仙台矯正保護管区長官吉田さんという人が来て就任の挨拶をしに来たのでありますが、その際に大年寺山一帶の地を少年院建設するための適地として決定したからという報告をして参つたのであります。そこに大きな市と建設当局との行違いが生じたのであります。その後仙台市におきましては市会を開いて、いろいろとこの問題に対して協議したのでありますが、全会一致でここに建てて貰つては困るということになつたのであります。又仙台市の市民大会が四回開かれたようでありますが、これ又非常に大きな叫びになつておりますので、殊にこの請願を紹介して参つたときに、私は一応これは何らかの行違いがあるんじやないかというので、実際に問題を調査いたしたのであります。ところが只今申上げたような当初において大きな行違いがあつたというのであります。そこで私が法務庁にも参りまして、その係の関という事務官から、いろいろ法務庁側の今日までのいきさつを聞いたのでありますが、ところがそこに非常な行違いがあつたことを発見いたしましたので、私はどうしても両方の人が会つて、そうして洗い浚い話合つたら何か一歩前進するんじやないか。私としてはこういう少年院というような問題は、ただ建設だけが決定しても、実際に今後感化訓育するためには地方との接触が非常に必要である。殊にいろいろな開拓をしたり、或いは工場を設けたり、その他社会人との接触を保ちつつこのよう目的を達成するのであるから、地元反対を押切つて進めて行くということには、この仕事の本質から見ていけない。どうしても地元熱意ある協力の下に建設して行つたらどうかという考え方から、何とか両方一致点を見付けたいと思つて、私が苦心しまして、市長の方にもわざわざ行つて貰つて、そのとき丁度市長はこちらにおつていなかつたのでありますが、併し地元の人やなんかの主張をするところを聞いて参つたのでありますが、そのときに結局まあ非常な激烈な言葉であつたようですが、一週間内に替地を見付けたならば何とかするということで別れたのであります。そこでとにかく替地を見付けてやらなければいかんただ話だけで建設の話をして、そうして少年院の今後の運営支障を来させてはいかんから、できるだけ早く今までの話の熱意替地の選定に向けたらいいだろうということで、私共はその反対者人達にも話して一生懸命替地を心配させたのであります。大体適地が見付かつたというので、私も行つてその現地を見たのであります。見るときはあらゆる建設関係者、或いは市当局又市会議員約三十名といつたよう人達現地を踏査いたしまして、これならば前の大年寺と大体條件において一致する、例えば職員住宅等も近くにある、学校も今度新制大学ができて今落成式を挙げたばかりである。それから土地の状況においても十万坪というものが一括して得られるし、尚その外に近くにいろいろな養魚池とか、或いはその他耕作するに都合のいい地域が隣接しておる。いろいろな條件からこれはいいのではないかというような私も判定いたしたのでありますが、そのまま市においては市会議員全員協議会を開いてここを推薦しようというので早急に現地調査をして呉れということであつたのであります。そういうことで仙台市はこの少年院設置に対して反対をしておりません。それからこれに対して援助するということを惜んでおらないのであります。ただ適地として決定された大年寺山というのは、最初は十万坪の計画で三万坪が木を伐られてある。これも治山治水関係から危險な土地でありまして、その外に七万坪というのが今木が生えております。これは観光地、いわゆる風致林として制限地になつております。これが一部の人によつてすつかり独占されるということは将来仙台市の観光都市としての計画、或いは都市計画において非常な支障を来す。もう一つは建てるところが由緒のある土地一つの信仰的な気持で仙台市は反対した。それから近くに女專があります。この女專の生徒の、余り山の中に建てたのでありますが、その通り道にもなるので、そういうことも懸念されるのであります。そういうことであの地域でなければならないというよう建設者側理由よりも仙台市側の理由という方が大きな理由があるのじやないかと私は思つておるのであります。そこへ今度調査行つて貰いました。ところが調査行つた場合、その前に県知事より、若し大年寺山でなく別に替地が欲しいというならば協力よう、市の市長も私が直接聞いたのですが、若し大年寺山でなければ何んとか心配してあげようということであります。そこで第一調査をした結果、法務庁の方から調査行つて貰つたのですが、大竹とという技官が行つたそうです。私には何も話がありませんでしたが、行つたそうです。それが中間報告をしてこう言うのであります。それは適地ではない、どういう理由かというと、技術的に経済的にというのであります。技術的には技術者がそこに行つておりまして、決してこれは不適当ではない、経済的というのは、まだ交渉もしないのだから、交渉したかしないか分らないけれども……地元反対というか、最も公平な見地から僕が決めるということは、ここは私がいるところなんです。私の住いがこのところにあるのですが、私がそこの警防団長をしておりました、この地域真ん中におる……そうして地元反対ということがあれば私が一番苦痛を受けて立たなければならん、その私がそれはこの辺に造つてやらなければいかんという考えを持つたのでありまして、地元反対を調べるところによりますと、吉田という人が盛んに反対者に対して行動をしたというような事情も聞いておるのですが、これは確かに言つたかどうか知らんが、そういうことを聞いておる。そうしてたつた二十分間見たというのです。私はあれを約六時間、私が山を調査した。ところが、実際にそれをやらなければならない人はたつた二十分間見ただけで福島帰つて温泉やなんかで休養したということに対しては、初めから大年寺山でなければならないという結論を以て見るからそうなんです。そうして仙台市民全員反対を押切らなければならんという理由は私はないと思う。そこで今日まで大分建設が遅れたからこれは皆んなでいろいろの行違いがあつたにしたところ、国策運営支障を来しちやいかんからお互いに一もつこでも担ごうじやないかということを言つておる。それを排斥して、この問題の大年寺山決定しなければならんということは私はどうしても考えられない。ここにおいてこの山についていろいろな問題が起きておりまして、この新聞にある通りです。これは一流、二流の新聞が皆書いておる。こういうように沢山の問題がありまして、ここにどうしてもやらなければならんということの私は理由はないと思うのであります。将来の運営に対して三万坪では駄目である。十万坪でなければならん。ところがその中の七万坪というのが、反対の下にやつた場合、風致林として県が制限地として指定してありますから、これを若し絶対に解除しないという場合には小さい三万坪だけでやつて行くというところへ恐らく最後に到達しなければならん。理想的の計画には持つて行けない、こう思うのであります。私は将来段々それが必要であれば十万坪か十五万坪といつたような隣接した環境も含めて考えなければならんと思います。私は何よりもこの少年院の性格から地元熱意ある協力があつて、そうしてやらなければ駄目だ、ただ監獄として隔離するならばどこでもいい。併しながらこれは事業をするにも、耕作するにもいろいろ社会人との接触があるのでありますから、私はどうしてもこのようなことを強行しないで、そうして十分なる仙台市民の賛成を得て、そうしてできるだけ遅れた建設市民熱意のある協力を得てやつて行くことで私は十分補いがつくと思う。そうでないと人夫一人出ない場合はどうする。請負師も相当心配いたしまして、仙台市民反対を受けてやるよう仕事を推進することについて考えておると言つておるのであります。そういうようなことでありまして、どうぞこの問題に関しては皆様の熱意ある御支援を頂きまして、この反対請願に対して御採択あらんことをお願いいたします。
  18. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本件に関しまして政府側の御意見をお伺いいたします。
  19. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 只今請願にお答えいたします。御承知のごとく戰後犯罪少年乃至非行少年の数は著しく増加しつつありますが、東北管区内にはこれら少年收容矯化するに適当な施設が極めて乏しいのでありまして、そのために管区に移送したり、或いは收容をして貰つておるよう状態であります。こういうよう関係から当局といたしましては速かに当地方少年院の確立を整備いたしたいと考えまして、諸方面に亙つて土地の物色をいたしたのでありますが、少年矯化にふさわしくて纒まつた入手し易いという土地はなかなかないのでありますが、その結論として漸く選定されたのがこの大年寺山でございます。この大年寺山はかようにして漸く発見した土地でありまして、地勢環境よりするも、少年院用地としては最も理想的な好適な土地なんでございます。併し仙台市からこの変更方の申出がありましたので、当局といたしてはこの土地のみを固執するものではなく、他に適当な土地があれば変更に応ずるよう回答をいたしまして、市の方から二ケ所に亙りまして別に適地を推薦して参つたのでありますが、これ又地元の非常な反対によりまして、遂に実現を見ることができなかつたのであります。大年寺山土地につきましては、地元反対意見も十分に斟酌しまして、成るべく風致を害さないように努めるは勿論のこと、施設を整備して市民各位不安感を与えないようにいたすことに今後努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  20. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か御質問ありませんか。
  21. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちよつとお伺いいたします。大年寺山に代ります土地家庭裁判所から余程離れておりますか。
  22. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) 三キロだそうです。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 観護所からは如何でしようか。
  24. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) 刑務所ですか。
  25. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 いえ、観護所……あの仙台にございますね、観護所、ありませんか。観護所家庭裁判所はくつついているのですか。
  26. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) どちらも同じ位な距離なんです。西と南となつております。真ん中裁判所がありますから丁度両方とも同じような……
  27. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 あ、そうですか。大年寺山の方は近うございますか。
  28. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) 同じ位ですね。地勢から言つて同じ位です。
  29. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 分りましてございます。それからもう一つはあの近間にあります東北学院が成績不良でございますから、本当のことは恐れていらつしやるのではないでしようか。地元の方が……
  30. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) それは実際のこの地方運動する人の中にはそういうことを恐れている人もあるかも知れません。併しながら今の運動の主体は市と市会議員中心になつておりますから、大体そういうことでやつて参る地元が皆んな地元になるわけなんです。ところがこの設置に、福島からこれは復元するのですから、それは認めているのです。それから設置に対しては、一生懸命適地を選んで推薦しようとして、市長みずから立つて市会議員全員がやつているわけなんです。そこでこの大年寺に対して市民全体が反対するという理由は、さつき申上げたように、治山治水関係、それから風致地区として、風致林として残してある。もう一つは、伊達さんの由緒のある所だから、これは将来観光地計画の中に入れて考えたいというので、何と言うのか、いろいろ感情的というか、人工的というのか、そういうことに無條件で、あれは駄目だ、こういうことではありません。
  31. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その反対運動をいたしております中に、婦人層は動いておりますか。婦人団体など如何でございましようか。
  32. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) 二千人の陳情者のうち半数以上あります。大体あそこは、何と言うのか女子專門学校が傍にあるのでありますから、それでお母さん達が心配している、それは本当に心配しているのです。
  33. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 分りました。
  34. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) それで尚これが適地としていけないということになつても、仙台市は心配しております。それだけは市長から確証を取つております。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外に御質疑ありませんですか。
  36. 佐藤藤佐

    政府委員佐藤藤佐君) 只今請願の御趣旨につきまして、高橋議員から詳細御説明承つたのでありますが、法務府におきまして大年寺山少年院を設立しようということを決しましたのはこの春頃であります。それに至るまでは、従来東北の文化の中心である仙台市に少年院が長らくない。そのために男の少年福島に送る。女の少年はわざわざ東京まで送らなければならんというよう状態が長年続いておるのでありまして、福島においても、東京においても脱走する少年少女は多く仙台から貰つた少年が多いのでありまして、こういうところから考えましても、少年矯正教育には成るべくその郷土に近いところでやりたい。その方が矯正教育目的に合するのではないかというような考から、仙台市の周囲につきまして八方土地を探したのであります。市の方にも、県の方にも連絡いたしまして探したのでありますが、なかなかよい所がない。殊に何万坪という広大な土地を見付けるのに苦心いたしたのでありますが、たまたま仙台市の伊達家のこの大年寺山の一郭が讓つてもよろしい、こういうことで、この讓るということについては、或いは伊達家の方では財政上の問題もあつたかも知れませんが、とにかく私共の趣旨に賛成して下さいまして、伊達家所有地たる大年寺山を讓るということに話が決まつたのであります。そこで私の方では県庁に伺いまして、この辺は風致地区であるということだが、風致地区を除いて、それじや売買契約をしようというので、県庁の係の方に相談しましたところが、丁度大年寺のお寺のある附近風致地区だということで、それではその土地を除いた、丁度地形としては非常に損な地形でありますが、こうO字型にして、その風致地区だけを除いた十万坪を売買契約をいたしたのであります。ところがこの売買契約は外に適当な所がないために大年寺山行つたのでありますが、その決まつたときに、即刻市や県に通知し、又了解することに手間掛かつたために、その点が只今高橋議員のおつしやるよう行違いがあるというような問題が起つたので、非常に市の一部の方に、少年院反対の声を刺戟したのであります。で、市の方では、市会において大年寺山少年院設置することの反対の決議がされたということも承知いたしております。又大年寺山附近の長町の部落民がやはり反対の気勢を挙げて、再三市民大会と称する会合を開きまして反対され、又私共にいろいろ反対陳情をされて来たことは重々承知いたしておるのであります。そこでかよう地元反対を受けるということは誠に遺憾なことでありまして、たとえ国策の遂行とは言え、かよう仕事地元熱意ある協力がなければ、将来円滑に事を発展させて行くことはできないのでありますから、地元協力を求める意味において、それでは外に適当な土地を斡旋して下さるならば、我々の既定方針を変えようということを御相談申上げたのが確か八月だと記憶しております。その八月以来三ケ月の間、市の方ではいろいろと御斡旋下さいまして、二、三ケ所候補地を持つて来られましたけれども、それは又新たな土地地元反対を受けるとか、或いは地形上どうも少年院適地と言えないとか、いろいろな惡條件がありましたために、そのことを市の当局者にも申上げて、その候補地はいずれも取上げることができなかつたのであります。さようにして段々日が延びて、又早く工事を進めなければ、東北は御承知ように早く寒さが参りまするために、壁も乾かない、本年度の予算工事を竣工することができないところまで追い詰められておりまするので、早く工事に着手しようといたしまして苦慮しておるところへ、丁度高橋議員が中に入られまして、それでは県及び市の当局十分了解を求めるようにして下さるというような御厚意もありましたので、実は私が先般の日曜日に仙台に参りまして親しく現地を見たのであります。現地を見ますると、確かに仙台の街から殊に市役所から眺めて南の方を望みますと大年寺山のうつそうたる森林が見えるのであります。これが風致地区と称せられるものであります。そこで一番反対理由は、風致地区に手を加えられることは困る、それから風致地区或いはその近所の樹木を伐採されると風水害に影響がある、これは誠に御尤なことでありますので、それでは折角十万坪を買つたけれども、その十万坪のうち、風致地区と全然反対の側、つまり風致地区以外の裏山の方、併しその裏山の三万坪は樹木一本もない裸山になつておるのであります。それではその裸山の三万坪に少年院を建てて、そして風致地区には一指も触れないようにしたらどうか、そして工事をする上においては風水害に害のないように專門家の設計によつて少年院を建てたならば、風致にも害はなし、風水害に影響がないように建てられるのではないかということを私共は考えまして、佐々木県知事にも御了解を得まして、又市役所の方では生憎市長東京に御出京中でお会いはできませんでしたけれども、助役並びに市会の議長、副議長その他の方と御面談いたしまして、大体外に適当な土地がない以上は止むを得ないじやないかというところまで御了解を得たつもりで私は帰つたのであります。併しその際に大年寺山附近部落民の方が参りまして、替地がないからそこに建てると言われても困る、替地は探せば幾らもある、こういうような、お言葉であつた。我々は三ケ月以上市の当局の方にお願いして替地の斡旋を頼んだのだけれども、適当な替地がない。併しあなた方がそれでは斡旋して下さるならばもう一週間工事に着手することを待とう、それでは一週間内に適当な土地を心配して下さいますかということを念を押したのでありますが、部落民の方は、それでは一週間内に土地を見付けよう、こういう御厚意のお言葉があつたので、その言葉を服膺して私は帰つたのであります。ところが四、五日前に替地があるから出て来い、こういう電報を受取りましたので、私は国会もありまするし、又その土地を見る專門家でもありませんので、專門の技師を遣わしまして、現地に派遣いたした。それで技師の、これはまだ帰つてからの報告は聞きませんが、中間報告によりますると、その新たなる替地と称するのは、仙台市から余程離れておる山奥であります。山奥でもまだよろしいが、そこの間の道がない、本当のいわゆる山道しかないので、その山の中に少年院を建るには先ず道路をつけなければ車も通らない、道路を建設しておる間にこの年度は終つてしまうだろう、そうすれば目的が達せられないから、この年度内に少年院を建るというためには今の山奥は不適当だという中間報告を得ておるのでありまして、最後の報告には接しませんけれども、私の想像するところでは、高橋議員のおつしやる新たなる替地というものは、この度仙台市に少年院建設するには不適当な土地ではないかと、かように考えられるのであります。尚問題になつておりまする大年寺山について近所に学校があるということでありましたが、これは勿論学校もありまして、それは風致地区内に学校があるのであります。学校の外に感化院もございます。県で建てておる感化院もある。学校もある。感化院或いはその学校と性質は全然同じな矯正教育を施す少年院を而も風致にちつとも害のない裏山、それも禿山になつておる所だけに建てる、反対理由仙台市の風致を害するとか、或いは治山治水に害があるというようなことは全然ないようにして私達はこの工事を進めて、この年度内に仙台市にも少年院を建てたい、こういうような宿望を持つておる次第であります。決して大年寺山だけを固執しておるわけではありませんが、それに代える適当な候補地がない以上は、大年寺山に建てることを仙台市民も御了承下すつて、そうして将来仙台市にも理想的な解放主義の少年院を建てて、そうして宮城県或いは東北から発生する少年矯正教育をして立派な市民として仙台市にお返しするという役目を私共に授けて頂きたい、かように考えておるのであります。
  37. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) 只今まだ現地報告に接しないというお話でありまして、そこに只今御発表の中に間違いがあると思います。というのは、一番最初に適地として臨済院の十四万坪を先ず推薦した。それは昨年の十二月。それを何らの決定決定を全然市の方に話さないで、突如とあちらの報告に来たというのが、行違いであつたというのでありまして、これを見たときにはこれは大変いいと言つて係が適地として見て行つたわけです。道路がないというけれども、立派な約二間の道路がついている。その奧には無線電信所がありまして、そこに宿舎があります。そこから十町ばかり向うに宿舎がありまして、そこに始終通つております。大年寺と大変離れている場所でもありません。私が直接行つて見たのであつて、ここにも私共一行が行つた写眞が載つておりますが、そこが非常にだらだらな土地で、大きな坂もなければ、何と言うのか、波状地と言いますか、非常にだらだらした開拓なんかするのには非常にいい土地であります。そうしてそこから太平洋が一望に見えまして、非常な景勝な地でもあります。そういう意味環境としては非常にいいのじやないかと、こう思うのでありますが、そこで遅れたということについては、いろいろないきさつがどちらがいい惡いということよりも、現実において遅れておりますから、これは仙台市民協力で追い越すことはできるのじやないか、こう思うのですが、道路は立派についておりますから、その心配は要らないと思います。ただ見に行つたというだけじやないのか、写眞も撮つて行つて呉れないかと要求したそうでありますが、それも撮らなかつた。そこで今三万坪と言いますが、三万坪建てたばかりでできる仕事でなくて、必ずそこにはもつと七万坪或いは十万坪の土地が要ることは我々は計画の上で必要と、こう思つておる。その三万坪だけで将来立て籠つてやり得る仕事ではありませんから、私はこの際本当に市民熱意協力するというものであるなら、この土地の方を選んだ方がよいと思う。遠くはないのです。私自身が仙台の者で、ここに齋さんもおりますが、そんなに遠くないのです。道路もできている。それでその道路やなんかは市では必要によつては又惡い所は直す。そこで技術者にこの道路をどうするか、惡い所をどうするのかと聞いたら、これはこういうものでこういうふうにするのだというような技術的の面からの私は返事を得ておるのです。それで市の関係者全部揃つて大きなバスで行つたのです。ちよつと暫くの間だけバスが余りにも大きなバスなものですから、通れない所があつたが、自動車ならば十分通れると、こう考えております。そんなに心配したことではなしに、最初に推薦したときは、これはよい所だと言つて、前の成瀬さんですか、長官がこれはよいと言つて……引継いだかどうかは分らないが、それが突如として決まつたということに非常に行違いがあると思う。実は明日市会議員が全員で陳情にやつて来るということでありますから、そんな無理押しをするよりは、長官の言われたようにやつて行きたい。そのためには私共は熱意を以てやりたい。併しあとの始末については、どこかでやるというよりは、地元にやらすのがよいと思う。知事にも頼んでやらせます。そして学校或いは宿舍の問題も、傍に八幡住宅というのが約五町ぐらい離れた所にあります。そこは電車の停留場がありまして、八幡住宅から三、四町ぐらい離れた所には新制中学の第一中学があります。だから甚だしく環境條件が違うということではないと思いますから、一つここのところは余り反対のあるところを無理押ししないように願いたいと思うのです。社会人接触するときにはどこにも行き渡るような話をして貰いたいと思うのです。そうしないといきなり接点でスパークしてしまいます。私が中に入つて困るのです。とにかく最初にここはよいと言つて推薦したのが振り戻しになつたのですから、そこで仙台市民協力を得て、あすこでなくやつて貰いたい、そういう意味で皆さんの御採択をお願いしたいと思います。
  38. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 どのくらい離れておりますか。
  39. 高橋啓

    委員外議員高橋啓君) 仙台市内です。仙台中心から大年寺とこちらと殆んど同じです。私の住んでおる所です。私の所から六町ばかりしかないのです。
  40. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本案につきましては尚調査することにいたしまして、決定は後日に讓ることにいたします。速記を止めて。    〔速記中止
  41. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 速記を始めて。では少年法の一部を改正する法律案につきまして別に御質疑ありませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 質疑は省畧いたすことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尚討論もこれを省畧いたしまして如何でございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 直ちに採決に入ることにいたします。  本案全部を問題に供します。本案全部に対しましての御賛成の方の御起立を願います。    〔総員起立〕
  45. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全会一致原案通り可決することに決定いたしました。  尚本会議における委員長報告については、予め御了承を願つて置きます。御賛成の方の御署名をお願いいたします。    多数意見者署名      鬼丸 義齊 大野木秀次郎      鈴木 安孝  松井 道夫      松村眞一郎  宮城タマヨ      齋  武雄  深川タマヱ   —————————————
  46. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では請願の四百四号戸籍法中一部改正に関する請願議題に供します。紹介議員井上なつゑ君に御説明を願います。
  47. 井上なつゑ

    委員外議員(井上なつゑ君) この請願東京都澁谷区原宿三丁目の日本助産婦看護婦保健婦協会の者の提案でございます。この請願趣旨は、現在の戸籍法第四十九條第三項の出生届出の場合に出生の証明書が要るのでございますが、その出生の証明書に医師、助産婦、その他これに準ずる者の証明ができるということになつておりまして、現在そういうようにいたしておるのでございますが、この「その他の者」ということは国民生活の上に広く便宜を与えて頂いて大変結構なのでございますけれども、これは保健衞生の立場から見まして「その他の者」がございますわけで、本当に助産婦にかからなくてはならない人達が助産婦にかからなくて、そうしてお産のときも助産婦にかからないということが未だに起つておるのであります。未だに沢山そういうことがございまして、結果は母子共に大変不幸を見ることが多いのでございます。殊に赤ん坊は点眼をされなかつたために盲になつたとか、お臍の緒の切り方が惡くて敗血症になつたとかいうような、大変危險なことが大分発生いたしますので、これは保健上大変由々しい問題でございますので、「その他の者」ということを削除願いたいというのが請願趣旨でございます。よろしく御審議頂き度う存じます。
  48. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 請願の御趣旨は十分に了承いたしますが、併しこの医師、助産婦の立会いのない場合におきましても、これはやはり出産することを想像しなければならん場合が往往あると思うのであります。非常な山奥の中の場合とか、そういうようなことを考えますると、やはりこの規定を置くことが必要ではないかと考えておるのであります。助産婦や、医師が山奥におらんで、そしてその立会いが得られなかつたというような場合におきまして、この以外に証明書を付けては駄目だということになりますと、出生届を出すことができ得ない場合が出て来る不便があるのでありまして、やはりこの規定はこれらの不十分な点を補うためにも置いた方がよろしいのではないかと考えておりますので、今のところではこれを俄かに改正するという考えは持つておらんのでございます。この点これは御了解願いたいと思います。
  49. 井上なつゑ

    委員外議員(井上なつゑ君) 只今政府委員の方の御説明はよく分りましてございます。それにつきましては改正がむずかしいということでございましたら、この母子の危險が起らないように何とか厚生省の方とでも御相談を願いまして、そうして行けますような何か便法をお講じ下さいますように再びお願いいたしたいと思います。
  50. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では本件に対して何か御質疑ありませんか。
  51. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その山間僻地に助産婦のいないというよう場所がございましようか。
  52. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 実はこれは私は山形県でありますが、無医村がまだ相当ありまして、そうしてそこの部落に助産婦がたとえおりましてもその部落までは七里もあるというような場合があるのでございます。そうしまして出産に間に合わんので隣近所の人々が立会つて出産をせしめるというような場合が非常に多いのであります。そういうような場合を想像しますると、どうしても広い規定をやはり置く必要があるのじやないかと、こう考えておりますし、そうしてこれがあつてもこの只今の御請願の御趣旨に反するようなことにはならんでいろいろやり方によつては済むんじやないか。御趣旨は十分にこれは我々としても尊重いたしますが、ただそういう場合を想像しますと非常に不便を感ずるというところから広い規定をやはり置いた方がいいじやないのか、こう考えております。
  53. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本件に対するところの決定は後にいたすことにいたします。速記を止めて……    午後二時四十五分速記中止    ——————————    午後三時四十六分速記開始
  54. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 速記を始めて。それでは一時休憩いたします。    午後三時四十七分休憩    ——————————    午後四時八分開会
  55. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 休憩前に引続いて法務委員会を開きます。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、この二つの法案について質疑に入ります。
  56. 伊藤修

    伊藤修君 先ず裁判所の方にお伺いいたしたいのですが、御承知通り全国の裁判官が非常に住宅に困つておる次第でありまして、これは私がくどくど申上げるまでもないと思いますが、昨年ですか一昨年ですか、三ケ年計画を以て全国の裁判官の住宅を必ず賄うというような御計画の下に進められておつたように我々は仄聞いたしておるのでありますが、昨年度におきましてもその一部が実現されておるのでありますが、恐らく本年度におきましてもその一端が実現されておると存じますが、これが予定通り三年間において全国の裁判官の住宅を完成し得るや否や、この点を先ず明瞭にして頂きたいと思います。
  57. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 住宅の計画はお話のように立てましたところが、本年度になりまして、すべての全国の公務員の宿舍がやはり不足しておるというようなことで、これは政府職員全体に亘つた問題でございます。本年度におきましては約十一億の経費を大蔵省が担任し、公務員宿舍法という法律が片方において前の議会でできました。その公務員宿舍法に基いてすべての公務員の宿舍を設営する、こういうことになつたわけであります。従つてその中に含まれて裁判官の宿舍も設営するということになりまして、大蔵省の方の予算で宿舍の手配をする、こういうことになつております。その結果戰災を受けたような九つの都市に今年はアパートその他恐らく二千四百軒、戸数にして二千四百戸ぐらいだと思いますが、宿舍が今設営しつつある状態であります。そのうちのどれだけを裁判所が貰えるかということは、まだ決定しておりません。そういう一般的な方法がある外裁判所に対しては従来の関係上特殊な宿舍が必要であつて、そこの燒けた九大都市以外に我々の方では方々にブランチを持つておるものですから、大蔵省と交渉いたしまして、その十一億のうちの約四千万を裁判所の独自の立場からして宿舍を設営して差支ないことになりましたので、その方は今年度内に必要な場所を考慮してそうして設営して行く、こういうことになつております。
  58. 伊藤修

    伊藤修君 見通しとして全裁判官に対して住の問題が解決して行くにはいつ頃完成するという御予定ですか。
  59. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) その宿舍法案に基いて公務員の宿舍に関する審査委員会というものができまして、その委員会において決めたところによると、大体裁判官は全部宿舍をやれるような宿舍を与えるメンバーの中には入つております。だからしてその宿舍法の計画通りできれば、全国の裁判官にそういう宿舍を割当てられるようなことになつております。その計画によれば五年計画で以て一応そういうものの宿舍ができるというよう計画になつております。その外何級職以上の人に対しては宿舍をやるというようなことは計画の中に入つております。その中に判事も含めて計画して、約五年かかるというような見込であります。
  60. 伊藤修

    伊藤修君 いつから起算するのですか。
  61. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 今年からです。予算関係でその予算が貰えないとすればできない。その予算によると毎年二十億ぐらい出して貰えないと五年計画で完成できないように計数上は成つておつたと思います。
  62. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると従来行われておるのは、例えば三重県におけるところの長官の官舍のごときは、これは今の法律に基いて行われておるのですか。又先の計画の実行によつて行われておるのですか。
  63. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 三重県の方は私はつきり覚えておりませんが、今年だけで特別に四千万円貰えるのですけれども、来年度はどうなるか、大蔵省の方で設営するということになるかも知れません。それで今年の計画の中に三重県があるかどうかちよつと覚えておりません。まだ全般的な計画を立てていないのではないかと思います。最近宿舍法の金をどういうふうに使うかという問題については、十月頃使途がやつと決まつただけである。我々の方はそのときに幾ら特別な金を使えるかということははつきり決まつておりません。ただ私共裁判所といたしましては、人事の異動が住宅がないためにできないよう状態です。従つて大阪とか福岡とか定員の空席があるに拘わらず判事を配置することができないのは住宅のためなんで、そういうような人事の異動、それから配置定員の判事を充たすためには、宿舍のことを関連して考えて置かなければならない。そういう建前においても宿舍の配置を考えなければならぬ、こう思つております。
  64. 伊藤修

    伊藤修君 今本間事務総長の御説の通り我々が宿舍の問題に対しまして強く要求いたしたいことは、現在裁判の運営におきまして宿舍がないために適当な裁判官を適当の地に配置するということができない、心ならずも不適当な人が不適当な地に配置されておる。それが原因いたしましていろいろな情実因縁というものができたり、又裁判の上に好ましくない運営方法が行われるということを我々は常に聞くのでありますが、そういう意味から申しましても、国民の基本的人権の保障という観点から考えましても、この際宿舍の問題を早急に解決して、いわゆる人員を適当の地に容易に配置し得るような態勢を整うべきことが最高裁判所として至急なさるべきことではないかと思うのです。にも拘わらず、例えば三重県の長官の宿舍のごときは、一長官の宿舍としてふさわしくない厖大な物を建てて、例えばその坪数五百坪を獲得して、市の中央にこれを設置し、一長官の宿舍に多額の費用と莫大な地所を占めて設置することよりは、むしろそこの職員の数名の判事の宿舍を賄つた方が、私は裁判の運営の上におきましても、非常に効果的ではないかと思います。元来最高裁判所の考え方というものが常に外形的威信を整えるということに汲々としていられるように思うのです。勿論国家財政の余裕のある場合におきましては誠に結構な趣旨であるし、供し失礼ではありますけれども中味を整えずして形のみを整えて、以て足れりとか、或いは国民に対して威信が整つたとかというこけおどしの方策は我々はどうしても是認できない。かような時世におきまして殊に国家財政の窮乏しているこの時世におきましては、むしろ本質的に実際第一線に当れる人々のいろいろな隘路を打開してやつて、その運営を全からしむる方法をむしろ刻下の政策としては第一に採らるべき方法ではないかと思います。最近聞くところによりますと、岐阜の裁判所の場合でもそうです。終戰後戰災に遭つたところの裁判所を急速に復活して一応バラツクではありますが、整つた裁判所ができ上つておるにも拘わらず、この裁判所を今日取壞して四階建の鉄筋コンクリートの裁判所を作る。できることは我々住民として非常に結構なことと思いますが、併しそれ程の国家の財政的の余裕があるのかどうか。最高裁判所のみがさような贅沢な考えを持つていいのかどうか。若しさような金があるならば、現に小倉の裁判所のごときは天井が拔け床が落ちており、職員なり或いは住民がその構内に一度入つた場合において、建物の危險をも感ずるような庁舍において職務をとらしめるということは、むしろ裁判所の威信を害すること甚だしい。殊に人命の危險をも伴なうことを考えますならば、かような腐朽してその使用に耐えない裁判所をむしろ率先して改築し、一応間に合つておるところの裁判所のごときは後に廻しても然るべきではないかと思う。又岐阜県の高山の裁判所でも、御承知通り飛彈における昔の代官所の跡をそのまま利用しておる建物です。再三地方からこれを要求してもこれ又顧みられていない現状ではないでしようか。然るに最近建てられたところの最高裁判所の一長官の部屋が二千数百万円を使用してこれを整えた。これ又国家のために結構なことでありましよう。併しそれ程の余裕があるならば、何故こういうような緊急欠くべからざるところの庁舍に対するところの手当をなさらないのか。この御趣旨を私はお伺いしたいと思うのです。最高裁判所の一部屋の裝飾にさような厖大な費用をかける余裕があるならば、その費用を以て他の修繕に充てることも可能であろうと思う。如何に最高裁判所予算は独自に大蔵省と折衝ができると言いながら、国費をそれは濫費するものではないかと思う。殊に裁判官の控部屋が今日何に使用されているか。一給仕がそこにたむろしているために大きな部屋を占領しておる。ところが地方におけるところの裁判官が実際職務をとる場合におきまして、皆狹いところを而も汚ないところで威信を保てないような部屋において、執務を止むを得ずとらしめられている実情ではないでしようか。勿論最高裁判所と言えば、国家の最高機関でありますから、これに対しまして、そうした権威ある威信あるところの裝飾を施すことも別に私は反対はいたしません。併しさようなことをなされる前にまだなすべき仕事が沢山あると思う。そういう点につきまして、裁判所はどういうお考えを持つておられるかをお伺いしたいと思います。
  65. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 最高裁判所は、御承知ように明治二十年の頃の庁舍の古いのもありまして、誠にお説のような朽廃しているところがありますので、そういうものを順次予算の許す範囲内で改築して、そして近代的な設備をしよう、そういうふうに重点的に考えて改築その他をやつております。今お話の小倉も敷地ができましたし、新築する予定になつております。そういうわけで全部一緒にやるというわけには行きませんで、やつぱり同じ国費を使うのであるならば、バラツクで間に合せるということでなしに、段段年月が経つても重点的にいい裁判所を作つて行きたいというような方針で、一番朽廃しているようなところより改築しておるよう状態であります。従つて所によつては、少し時期が先になつたり、遅れたりするようなことがあるのは誠に申訳ない次第ですけれども、そういう場合が起きて来ると思つております。  最高裁判所の建物に費用を沢山かけて、地方の方の裁判所の修築を怠つたと言われる点は、そういう見方もありましようが、とにかく最高裁判所は、新らしい憲法の下で、他の官庁と比較するとすれば、国会のようなところと比較するような形になりまして、戰後の資材その他で十分なわけには行きませんでしたけれども、できるだけのことをした結果が最近でき上つた庁舍であります。一方において裁判所の非常に立派なものを作り、他方を放任しておると言われますけれども、これは予算関係上そう一時にできないので、そういう関係で前後すると、こう思つております。或いは立派過ぎて、あれは少し粗末にして、外に使つたらいいだろうという御意見は、御意見として十分承つて裁判官会議その他にも報告して置きます。ただあの庁舍を立派にするということは、裁判所だけでは何ともできないので、各方面からして、法律尊重の思想を現わすと同時に、一種の象徴のようなもので、この辺は相当立派にしてもよかろうというような考えからして、できるだけのことをいたしたわけであります。外の下級裁判所は皆あの通りにするというようなわけには勿論行きませんで、贅沢だとこうおつしやられても、どうもいたし方ありません。その立派にした趣旨は、何とかして日本の法治国における法律尊重のそのシンボルとするだけでも立派に現わしたいというような心持からでき上つた次第であります。どうぞそういうふうに御了承を願つて、決して外を粗末にして、あれだけ立派にすればいいというような考えでおるのではございませんから、御了承願いたいと思います。
  66. 伊藤修

    伊藤修君 私は決して、外のものも立派なものを建てろという意味じやないのです。それだけの余裕があるならば、何故緊急欠くべからざるところの朽廃したところの庁舍に早く手を着けないかと、こうお聽きするのです。予算関係があるということは、十分我々国会議員として承知しております。あなたの方におかれましても、予算を獲得する場合におきまして、そういうことが耳に入らん筈がないと思うのです。何も立派な最高裁判所と匹敵するようなものを各地方に作れということを要求するわけではありません。少くともバラツクでもよろしいから、さような朽廃した裁判所を、多年地方民は要求しておるのです。それが耳に入つていない筈はない。して見ますれば、先ず以てそれらに対しまして予算を振り向けてこれを賄うことが理事者として当然の職務ではないかと思います。又最高裁判所において国家のシンボルとして新憲法に認められたところの最高裁判所の威嚴を整えるということに反対するものではありません。併しながらその裝飾において儉約し得べきものは儉約しても、敢てその威信を傷付ける程度のものには至らないと思う。立派なものができたから反対するという意味じやありません。国家の財政に余裕があるならば、それはよろしいのです。然らざる場合におきましては、それを公平に使つて、そうして国民の要求するところのものを充たしてやるということが理事者の責任ではないかと思うのです。他に仕事がなければともかくですが、他に仕事が多々あるのです。而もその御答弁はありませんでしたが、岐阜の裁判所のごときは、現にバラツクとして建てられて使用されておるのです。そのものを又取壞して新らしく四階建の鉄筋コンクリートのものを建てるというような余裕がどこから出て来るのですか。若しさような余裕があるならば、外の荒廃したものにそれを何故使用されないのかということをお尋ねするのです。
  67. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 我々の方が努力が足りなかつたのは、これはそう言われてもいたし方ない。私共の方の希望する金額で大蔵省に交渉したのは、現に認められた予算の十倍以上も全部一遍にやろうとすれば公共事業費として約百億ぐらいのものを考えておつた、それが六億ぐらいに減らされておるのでありますから、結局重点的にやる外はない。岐阜のことは私よく取調べて御返事したいと思いますが、恐らく家庭裁判所ができるためにバラツクに附け足ししなければならんとか、少し模様替えしなければいかん。というようなことで、どうせ狹い場所に建てるなら、コンクリートのものを建てる。先ず重点的に完成して行こう。少しずつ雨漏りを修繕したいというような、そういうところに金をあつちこつち使つたりするのは結局使い損になるというような場面が大分あるようでありまして、そういうふうに予算を重点的に使うというような建前から計画したのじやないかと思いますが、よく取調べて御返事いたしたいと思います。で、この計画はただ漫然とやるのではなくて、やはりしかく考慮して、そうしてこれはどうしても我慢できないというところはすつかり建替えるというような方針を以てやつておるわけなんです。例えば新潟の三條のようなのは、これは二十三年頃できたので、軒、廂が壞われかけて、修繕しても却つて損なような形になる、そういうところは建替えなければならんと、そういうふうな気持でやつておる。岐阜のことは恐らく土地が狹いところへ家庭裁判所を増設しなければならないというよう関係から、これを増設するとすれば一部取壞わさなければならんというようなことがあるのじやないかと思うのでございますが、調べた上で御返事したいと思います。
  68. 伊藤修

    伊藤修君 岐阜の場合を例にするわけではありませんが、岐阜の場合におきましては、いろいろ先程申上げましたごとく、終戰後とにかく元の形態のものが建てられたのです。仮に家庭裁判所が必要なる場合におきましては、検察庁をどうせ今立退きを命じておるのですから、早晩検察庁は他の土地へ移転さるべきです。その検察庁の跡が家庭裁判所に充当されてもそれは差支ない。勿論我々といたしましても、鉄筋の四階の建物ができればこれは結構なことです。併しそれよりは前にまだして頂かなければならん仕事が沢山あるのじやないか。重点的々々々とおつしやるなら尚更重点的に当面使用に耐えないものを何故先に建てないのかとこう言うのです。この全部を盡く改廃しろと申すわけではないのです。この間建てたばかりで間に合つておるものを今取壞わして新らしく建てるというような不経済なことを考えずに、それが現在使用されておつて、使用に耐え得ることなら、使用に耐えない庁舍を先に何故やらないのか。その関係をどうして皆さん御考慮にならんのかということをお尋ねしておるのです。
  69. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) そういうものを考慮して計画しておるわけなんです。決してそのお考えに最高裁判所反対しておるのではなく、そういうつもりでやつておるのです。
  70. 伊藤修

    伊藤修君 只今の問題については全国的なものをよく調べてから、後日質問することにして、この程度で留保して置きます。  次に裁判官の報酬及び検察官の報酬につきまして法案が提出されておりますが、これは当法務委員会におきましても過去の裁判官及び検察官の俸給の増額の場合にその都度指摘して置いた筈でありますが、裁判官の職務を遂行するに大きな役割をなし、且つ特殊な立場にあるところの事務系統の書記及び検察官事務官、これらの補助機関の職員等の俸給の値上げにつきましては具体的にお考えができていないのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  71. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 只今のお尋ねの点を法務府としてお答えいたします。仰せ御尤もでございまして、この点につきましては、検察官の職務とその責任の特殊性に鑑みまして、一日も早くこれを改めて行きたい。即ち一般の政府職員と同じ俸給になつておるが、これを税務職員及び経済調査官と同じ線に上げて行きたいという考えを以ちまして、今年の初めから人事院といろいろと交渉いたしまして、そうして政府職員の新給与に関する法律改正方を申入れて、その大体の條項も呈示いたしておつたのであります。これに対しまして人事院においても非常に好意を示して呉れまして、法律改正よりも同法に基く俸給調整の方法として人事院規則による措置が簡便であるとのそうした見解の下におきまして、これは人事官の会議においても決定して下さいまして、そうして関係方面といろいろ折衝して下すつておるのであります。然るに未だに向うの承諾を得て参ることができ得ないのでありまして、それで法務府といたしましては、国会提出の法案としてもやつて貰いたいというような希望を持ちまして、衆議院の法務委員会でもそのことをいろいろ話したこともあるのであります。然るに人事院の方では自分の方で尚先方に極力折衝して見るから、もう少し待つて呉れと、こういうような話もありますので、その成行きを今日まで相当長い期間にはなつておりますが、待つておつたような次第でございます。漏れ聞くところによりますと、検察事務官には、実際に検事の補助としてやる事務官、その他会計方面を担当する事務官とこの二つがある。これを一律に税務職員或いは経済調査官と同じように上げることはどうか。その点について研究を要するというようなことになつておるというようなことも聞いております。併しながらこの観念上の区別はありましても、実際の職員仕事の上から、又生活の関係等から見まして我々といたしまして一律に上げて貰いたいということを懇請いたしておる次第でございまして、どうかこの問題につきましては参議院におかれましても何分の御協力をお願いいたしたいと存じます。
  72. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 裁判の書記官の方も一般職である関係上、俸給の問題は人事院と相談しなければならないので、容易に上げることはなかなか困難な状態でありますが、併し今度の職階法ができ、その職階のどれに書記官を当てるかということによつて、俸給が高く給与されることができると思いますので、それで我々といたしましては、この職階の決め方の際において書記官をその級の上の方に格付けして貰うように努力して、書記官の待遇をよくしたい、こう考えておる次第であります。近いうちに恐らく次の議会ぐらいまでにはつきりした格付ができるのではないか、その際において参議院の御協力も頂いて書記官は高い地位に格付けして貰いたい。かように考えております。
  73. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると裁判所の方の立て方と本庁の方の立て方とは違うようになるのですか。それとも同一案においてこれを賄つて行こうというお考えですか。職階法の問題につきましてはいろいろ関係方面におきましてもこれをやつておるということを聞いておるのでありますが……
  74. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 我々といたしましてはこの春頃におきましてはその見通しがまだ立つておりませんので、少くとも職階法ができるまでの間におきましても、この特別な取扱によつて下級の職員の生活の保障というものをいたして行きたいという考えで努力してやつて来ておるのであります。
  75. 伊藤修

    伊藤修君 裁判所の方はそういうよう法務府と同じようなお考えをお持ちにならないのですね。
  76. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 裁判所は特別な俸給表によつて書記官を高く優遇するという方面においてやろうという気持は持つておりませんでした。まあ書記官の実質上の能力を上げるために書記官の養成制度を拵えて今年の予算において書記官の学校を二年間ぐらい書記官をそこにおいて養成する。そうして書記官の実質上の能力それを上げて置いて、そうして職階制における格付において、有利な待遇を受けるように実質上高める。そういう計画の下に来年度の予算を組んで書記官学校を設立するという予算は編入しておるのであります。そういう立場において書記官の地位を上げようと、こう考えておる次第であります。
  77. 伊藤修

    伊藤修君 若しそういたしますと、その待遇は両方の建前が違つて来る場合に実際問題として書記官なり及び事務官なりは、従来裁判所に勤めるという場合におきましては同じような考え方で勤めておる。同じ庁舎、同種類の職に職を奉しておつて、一方はそういうような考え方、法務府は法務府の考え方で行かれる場合にその調和がとれて行くのですか。職務をとるところの事務官書記官の心持として果してそれで円滑に遂行できるでしようか。それは私の考え方ですが。
  78. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 多少職責の点において検察事務官とは違つておるかと思いますが、我々の方では裁判所事務官と書記官とは違つて扱いたいという考えでおります。裁判所事務官の方は法廷においての裁判官の補助はいたしておらない関係から、これは一般公務員法のその種類のものと同じく待遇をして貰いたいものであります。書記官の方はその職責の違つておるのに対して特殊な技能を持つて仕事をして行かなければならん、これは別に待遇して貰わなければならん、こういうふうに考えております。法務府の方でそういうような別途に俸給の表を作られることであるならば、その点について我我の方も考慮して見なければならんと思いますが、その点をまだ法務府の方では提案がされてないようですから、それを拜見したら我々の方も同じようなことを希望することが起きて来るかも知れませんと思います。まだその内容についてよく存じておりませんから、その点は考えなかつたのであります。
  79. 伊藤修

    伊藤修君 私の希望といたしましては、御承知通り裁判所に奉職するということは検察庁、裁判所を同一に従来考えておる。職務の性質上も今日の俸給の上においては勿論異つた官庁の下に奉職しておるのでありますけれども、勤める者から考えますれば同じような考え方を以ておるのであります。又いろいろな密接な関係もあるのでありますから、これは裁判所法務府とはよく御連絡下さいまして、歩調を一にして頂いて彼らの職を安心してとれるような待遇方法に持つて行かれるように努力願いたいと思うのでありますが、これは強く希望して置きたいと思います。それから尚一言お尋ねして置きたいことは、現在書記官なり事務官なりのオーバー・タイムをお拂いになつていないように聞きますが、この点は如何ですか。何だか我々地方で聞きますと、宛がい扶持を分け合うというよう方法を採られておる。実際は何十時間という居残りをしておるにも拘わらず、予算面において宛がい扶持を分けるということになりますから、その十分の一なり或いは二十分の一のオーバー・タイムの支給より外受けない。たださえ生活の困窮しておる彼らの生活を余計に困難に陷れるというような形になつていはしないかと思います。成る程裁判官なり検察官なりは御承知通り法律において職務の性質上オーバー・タイムは認めませんが、この事務官なり書記官なりの場合におきましては、裁判官とは別の待遇を受けていないのでありますから、現在は殆んど一般官庁と同様な立場にある。従つてオーバー・タイムに対する手当が完全に支拂われるべきが本筋であると思いますが、予算関係はどうあろうとこの点について一つ意見を伺つて置きたいと思います。
  80. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 只今の点でございますが、これは予算に決められた金額の範囲内におきましてそれをでき得るだけ公平に支給するという法律になつておりますが、委員長のおつしやる通りに非常に予算が限定されまして、盡く全部満足に行く程に行かないということは本当に我々といたしましても非常に遺憾に思つておる点でございます。ただ只今申しました通り予算の決められた範囲でできるだけこれを有効に支給しまして、そうしてこれを支給するというような考え方、方法を以てやつておると思います。
  81. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 裁判所も今政務次官のおつしやつたと同じよう関係で与えられた予算の範囲内を事務の繁閑に応じて各裁判所に配給して、その予算の範囲内の仕事しか法律的には支給されないような恰好であるが、事実上いろいろ働いておる人は実は誠にお氣の毒のように存じておりまするが、できるだけ予算貰つて趣旨に副うようにしたいと、これは全く同感であります。
  82. 伊藤修

    伊藤修君 それは予算の範囲内と言つて責任を回避されてしまえばそれまでのことですが、私は働く人は判検事の場合とは違つて、こういうふうに実際勤労によつて対価を得るというような立場にある下級職員に対しましては、働いただけのものはその報酬を拂われることが当然ではないでしようか。又予算としても何としてもそれだけは賄うべきが当然ではないでしようか。又これらの下級職員は居残りいたして家へ帰る電車賃もそれによつて拂えない。五十時間なら五十時間オーバー・タイムしておるにも拘わらず、それに対して一割も貰えないならば、その間における電車賃をも償なえない。或いは特別に要するところの電燈であるとかというようなそういうものをも償なえないというような実情で、実際の生活はオーバー・タイムされるために切り込まれる、生活の本体に影響をもたらされる。それがために、勿論家族の者もそれがために長い時間を家で待たなくちやならんようないろいろな関係から来て、その生活の実質に、それがために非常な影響をもたらすことは十分お考え合せることが出来ると思うのであります。こういうことは、何とかして予算の面において、他の面から繰合せても私は完全に支給することが本当じやないかと思うのですが、そういう点について次の予算において御考慮があるかどうか、一つ意見を伺つて置きたいと思います。
  83. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 伊藤さんの申されます通りに、全くこの下級官吏が勤労によつて、心身共に使つたところのものに対して、十分なる対価を与えることができ得ないということは、誠に我々といたしましても相済まんと思つておるのであります。それで二十五年度の予算におきましても、できるだけ予算を獲得いたしたいという関係から、私もいろいろそういう方面につきましても、大蔵当局と折衝をいたしましたが、もう予算は外の予算も盡く削られているよう状態でありまして、誠に遺憾に思つておる次第であります。従いましておつしやる通りに、できるだけの予算の操作を他方面におきましてもいたしまして、そしてこの御趣旨通りにできるだけの支給をいたすことに努力いたしたいと存じております。
  84. 伊藤修

    伊藤修君 時間も迫りましたから簡單に申上げますが、私は今の問題に対しましては、外の予算と違つて人の労力に対して支拂うということが、これは予算とか何とか言う問題じやないのです。それなら使わないようにしなくちやいかん。対価を拂わずに居残らせるということは、それは無理じやないかと思うのです。それだけ又他の考え方から言えば、十人要るところを五人でやるところから、そういうことになつて、一面においては、国家は五人の労力を利益しておるということになるのですから、これは予算をお立てになる場合におきまして、オーバー・タイムは大体今の勤務に対して何十時間ということは求め得られるから、これに対しましてオーバー・タイムさせずに人員を補充するか、或いはそうじやなくてそのままの人員を以て賄うならば、それにふさわしいところの報酬を支拂うべき予算をお立てになることが私は正しいと思うのであります。国家が国家の力を以てこれらの人に無理強いなる労力を無報酬で提供せしめるという考え方は、この際私は拂拭しなくちやいけないと、かように考えておるのです。この点を十分御検討下さいまして、将来さようなオーバー・タイムに対して、ただの労力奉仕をさせないように努めて頂きたいと思うのです。そういうことが重なつて行くことによつて、下級官吏の職務の執行に対しまして、監督権が強く発動できないという憾みもあり、国家自体が無理を強いておるのだから、それによつて間違いを起した場合におきましては、国家はその責任をとらなくちやならんという、こういう結果になるのでございますから、完全に職務執行を希望する以上は、それに対して彼らの働いたものに対して、相当する対価を拂わなくちやならん、かようなことについて、次の予算に対しては完全に支給できるように努力を拂うことを希望して置きます。次にこの法案中に、今度の案は遡及して支給してないのですが、この理由をお伺いして置きたいと思います。
  85. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) ざつくばらんに話を申上げますが、遡及して支給するように原案は作つてつたのですが、併し関係方面からこれを削除されまして、この上級裁判官検察官の方にはこの度はしないという條件と、それから遡及しないという條件で漸くこれだけの許可を、同意を得たのでございます。そうしましてこれを強く遡及のことを言つておりますと、とうとうこの案が流れるようなことになりますと、下級裁判官或いは下級検事達の昇給ということもでき得ないというよう関係になりますので、私らといたしましては原案についての未練は持つておりましたが、この程度で同意を得て参つた次第でございます。
  86. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、政府が法案を提出する時期によつて下級判検事は非常に損害を蒙むることになります。それからこういう場合におきましては遡及を認めないということが今後採られるというならば、他の俸給制度が変更された場合におきましては、少くともその直後において若しくはそれと同時に、他の職員と同時にスライドするよう改正案を出して頂かんというと、不当にこれらの判検事の人がこの間俸給を失うという結果を招来する、そうはお思いになりませんでしようか。皆様の方で法案をお出しになることが遅ければ遅いだけ、遡及しないために、当然受けられるところの俸給を失つて行くという形になつて来る。でありますから、今度の場合は止むを得んといたしましても、今後さような事態のある場合におきましては、速かに法案をお出しになつて、他の俸給の値上げの場合と並行して行くようにお取計らいになることを……一般下級の判検事諸君は当然この間俸給を失つてしまう形になつて来るのですよ。非常にお氣の毒だと存じますが如何でしようか。
  87. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 仰せ御尤もでございまして、これは実は他の一般公務員の賃金ベースが改訂になりましたとき、やはり裁判官、並びに検事の給料の値上げにつきまして、法案を作りまして、関係方面に持つて行つたのでございます。ところがその当時裁判官や検事は、他の一般職員よりも、特別な扱いにされておるからということで、実はそのときは同意がなかつたのであります。そうして又この席出しましたところが、さつき申しましたような、非常に困難な状態になりまして、これを得るまでは、十回以上も折衝いたしまして、漸くこの程度によつて、向うの同意を得て参つたのでありますが、やはり伊藤委員の仰せられる通りに、私達といたしましては、他の一般職員と同じように賃金ベースの改訂をいたしたかつたのであります。今後におきましても、十分この御趣旨は尊重いたしまして、手落のないようにやつて行きたいと思つております。
  88. 伊藤修

    伊藤修君 重ねて申上げて置きますけれども、この法案に対するところの御処置は誠に止むを得なかつたと存じます。よくその事情は了承いたしました。併し今後例えば外の一般官吏が、今度は例えば七千円ベースに改訂された。その比率によつて判検事の方も変更される、こういう場合があり得るとして、直ちにおやりにならないと、遡及されないのですから、半歳経てば又もう一遍上るだろうから……今度の法案はそうでなかつたでしようか。三千何百円ベースで以てそれが五千円とか六千円とかいういろいろ説があつたために躊躇されておつて、そうしてこの法案が遅れて来た。又今度七千円なら七千円にすると、又近いうちに変更されるから変更されたときに一遍に出せばいいということで、遡つてからという漫然たる気持で提案も遅れる。結局その間遡及しないために低いところの俸給を以て判検事は満足しなければいかん。殊に本法案を拜見しますと、公布の日よりこれを施行するとなつておりますから、そうすると一日この法案の成立が遅れると遅れただけ判検事諸君はそれだけ損失をする。こういう結果を招来するのでありますから、従来の法案のごとく遡る場合におきましては、日にちは余り問題になりません。併しこの度の法案のような形で今後出されるという場合におきましては、その点は十分御留意なさつてお出しになることが望ましいと思う。この点一言申上げて置きます。
  89. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 戰後の国内情勢から見まして、犯罪者は前途を考えましてもなかなか減じそうもない。従つて事件も殖えましても減る気ずかいは、先ず見通しが付かんと思います。一方裁判所の、現在において山積いたしておりまする事件の数等から考えまして、これがためにそれぞれの訴訟関係人は非常に迷惑を蒙つているのであります。それ故に裁判官の増員は、増員するというよりもむしろ現在の定員を尚充実せられるということに承知されます。かくて加えていろいろ家庭裁判所とか、或いは新らしい施設に関する規則等もございますので、裁判所も漸次その人を要することは目に見えている。而るにも拘わらず、一方裁判官は資格を前提といたしまするためにその人を得ることが非常に困難だと存じておるのであります。そこで現在におきましても、尚定員に満たざること数十人と聞いておりますが、その主なる理由としましては、俸給は他の官吏と大体隔りないよう思つております。この点については格段隘路になつておるとは思つておりませんが、むしろどちらかというと、一番人を得ることに対して隘路となつていることは、住宅のことだと思つております。これに対しまして裁判所の方ではどういう一体御計画になつておるのであるか。その点を先ずお伺いします。尚若し私の見るところと同じであるといたすならば、それに対する政府のお考えを伺いたい。そうして少くとも現在定員の程度までには一日も速かにその人を獲得して事務の処理を進渉して頂きたいと私は願う。これに対しまする裁判所の御所見を承わります。
  90. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 住宅については誠に鬼丸委員のおつしやる通りでございまして、裁判所といたしましては本年度の住宅計画は、人員の補充できないよう場所、それは主に今の住宅関係でございます。ですから、その点に重点を置いて充実をさしたいと、こう考えております。ただ本年度から公務員の住宅は全部大蔵省において予算を集めて、大蔵省が施設することになつておりまして、現在十一億くらいの予算で今年は建てておりますから、現実でき上つた際に、裁判所が今のような、補充できなかつたような判事の空席になつたところには、住宅を余計貰うように交渉して、現物を配給して貰いたい。こう考えています。その点において鬼丸議員と全く同感であります。何とかいたしたいと思います。それからもう少し補充して置きますが、判事の補充は如何にも困難でありますけれども、第二国会において判事の待遇をよくして頂いてから、その前は毎月十人くらいずつ平均辞めて行くように多かつたのが、爾来病気その他の特別な場合の外は辞める人がなくなつて大変有難い結果を招来しております。近いうちに大体補充できるようになるのではないか。判事補におきましては殆んど欠員がなくなりかけております。裁判官においては約八十人ぐらいまだ欠けております。その主なものは大阪であるとか、福岡であるとか、全く住宅のない県が一番多いのであります。それから簡易裁判所の判事は百二十人ばかり欠員がありますが、これは奧地であるとか、なかなか行き手がないような場合にそういう結果を生じているのであります。これもできるだけ早く補充して事務に支障のないようにいたしたいと、こう思つております。
  91. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 先回裁判官並びに検察官の俸給というものが政府で確立されまして、行政官との間において俸給の等差ができた結果として、検察庁方面では検察官を兼ねて行政事務を扱わせるというように私は聞いているのですが、裁判所の方でもやはりそういうことによつて定員を貸しているということがありますか。その点どういうふうになつておりますか。
  92. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 裁判所においてもやはり司法行政のエキスパートが事務に出て貰わないと困る関係上、裁判官の人に司法行政をやらしているものが大分あります。その数は主なものは高等裁判所において事務局に八人、最高裁判所の事務局においては約三十五六人であります。これは裁判官から借りたことについては、非常に裁判面の事務に対してそれだけの手数をかけたことになりますが、やはり司法行政事務も裁判所にとつては大切なものであります。これは一般公務員として十分にその能力のある人が出て来た場合においては、裁判所に返すということにしたいと思います。今はただ当分の間この裁判所の司法行政に関して、どうしても裁判官の経験のあるようなエキスパートに依頼する外ないというよう関係でタッチさしているわけであります。臨時的な措置であります。
  93. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私は実は裁判所の方にはそうしたことはないと思ひますけれども、実際はたださえ定員不足の折から、限られております定員なので、事務は非常に山積している。先程の御説明によりますと、現在においても八十何人の欠員、加うるにそうしたような闇取引ですか、そういうものがあるといたしますれば、更にその数も多くなつて参ります。少くとも私は裁判所においてはそうしたようなことはどうも愼んで頂きたいと思います。何となれば理由がありましたならば、その理由を附して堂々とやはり予算も請求されて決して私共は拒むものではない。やはり何としても兼任をいたしますることの趣旨は恐らくは俸給の問題以外に私は何ものもないと思う。少くとも裁判所はそういうことは私共愼んで行くべきじやなかろうかと思いますし、その点についての操作についてはとつくり一つ深く御考慮を持たれて、やはり明るい行き方をして行かなければならんのであります。併せて定員を充実すると同時に、それらも一つ整理して頂きまして本当に真に不足する場合でありますならば、これは国費として、止むを得なければ国会としてもこれを承認して行かなければならんことになるのではないかと思います。その点一つ御考慮願います。
  94. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) 私共も実際問題としてそういう有能な人に司法行政事務をやつて貰わなければならん実際上の必要は現在の法務府と全く同じである。法務府において検察官仕事をしている人をやはり司法行政事務に関与させなければならない。又法務府の方においても判事の経験ある人を約三十何人というものもやはり法務府の職員に使つておられる。  実際その人達協力を得なければ現在の司法行政というものがやつて行けなくなる状態です。これは併し人さえあれば直ぐすり代えられるので、人を得ることがなかなか困難である。こういう事情を御了承願つて当分の制度として御理解下さるようにお願いしたいと思つております。
  95. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 外に御質疑ございませんか。御質疑がなければ先ず裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について討論に入りたいと存じますが御異議ございませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 御異議ないと認めてこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べ頂きたいと思います……別に御発言もなければ本案について採決をいたします。本案に賛成のお方の挙手を願います。    〔総員挙手〕
  97. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 全会一致と認めます。よつて本案は可決すべきものと決定いたしました。  次に検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に入りたいと思いますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 御異議なければこれより討論に入ります。御意見をおつしやつて頂きます……別に御発言がなければ直ちに採決に入ります。本案に賛成のお方の御挙手を願います。    〔総員挙手〕
  99. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 全会一致と認めます。よつて本案は可決すべきものと決定いたしました。  尚本会議における委員長の口頭報告の内容は本院規則第百四條によつて、予め多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本法案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ございませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 御異議ないと認めます。  それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書につき、多数意見者の署名を附することになつておりますから、両案を可とされた方は順次御署名をお願いいたします。    多数意見者署名      齋  武雄  伊藤  修      松村眞一郎  鬼丸 義齊      鈴木 安孝  松井 道夫      來馬 琢道   —————————————
  101. 松井道夫

    ○松井道夫君 本間事務総長がいらつしやいますのでこの際ちよつとお尋ねしたいと思います。  先般いわゆる最高裁判所の誤判事件と称しまして彼の問題が起つたのでありまして、私この問題に関連いたしまして御質問申上げたいことは、私あの適用を遺脱したところの刑事訴訟法施行規則の條項が裁判所規則によつて定められておつたということを全然知らなかつた一人であります。それで新聞紙を拜見しましてああいう規定があるのだということを承知いたしたのでありまするが、甚だ意外に思つたのであります。裁判所規則は法律の範囲内において、乃至は法律規定のない範囲内におきまして制定さるべきものと了解しておつたのであります。諸外国の制度におきましてもやはりそういうことはその制度の前提となつておると解せられておるように見ておるのであります。ところがあの施行規則を拜見いたしますると、外の規定はこれは別に問題はないと思いますが、あの問題になつ規定だけは国民の重大な訴訟上の権利に関係しておりまして、私の考えから申しますと刑事訴訟法施行法で最高裁判所に委任申上げた範囲を逸脱しているかのごとく私感じておるのであります。尤も最高裁判所であの規定を作られる上におきましては、訴訟法委任の範囲内と解せられたのであろうと想像するより仕方がないのであります。そこでああいう規定法律家であればある程看過し易い。ああいう種類の規定が今後も裁判所規則で決められるということになりますと、ああいう誤判事件というものが又繰返される虞れがあると、かように存ずるのであります。最高裁判所におかせられては、如何なる意味合であの規定が委任の範囲内であると認められたのかどうか、その点をお尋ねしたいのであります。決して最高裁判所の責任を云々する、そういう意味ではありませんので、單に刑事訴訟法施行法を審議いたしました一法務委員としてお聽きしたいのであります。現に衆議院の訴追委員会において各界の意見を聽きましたときに、憲法違反であるといつたような御意見も出ておつたと聞いておるのであります。その憲法違反であるという根拠が奈辺にあるのか私勿論存じませんが、若し最高裁判所の方でその辺を御承知であれば、その辺の御意見と関連いたしまして私の質問にお答えを願いたいと思います。
  102. 本間喜一

    ○説明員(本間喜一君) あの規則は法律上規則制定権を逸脱しておるかどうか、逸脱しておると思うというような御趣旨でございますが、あの規則を制定する際の裁判官会議においては、果して規則制定権の範囲なりや否やということは始終裁判官会議の場合に考えるのでありまして、あれを逸脱しておるというふうな意見がなく、全会一致で制定された規則であります。併し今のような御議論について最高裁判所法律上の見解ということになると、具体的な事件が起きて、裁判所においてそれを発表することになると思いますが、そうして現に一つの事件がその点を理由として繋属しておりますからして、その事件の法廷においてはつきりした意見が近いうちに出るであろうと私は思つておりますから、それで御承知願う外ないのじやないか。それからして誤判事件の責任問題を論ずる際においては、やはりその点も一つの前提として論じなければならん問題になりますが、裁判官会議においてはその点をあの規則が無効であるということを前提とした議論はちよつと触れたところはありましたが、結局裁判官会議意見としては、規則は無効でないのだ、こういうふうに解釈して進行しておるように私共は承つております。その外裁判所意見として今の法律見解として見れば、今のように御説明申上げる外に仕方がないと思います。規則制定の際の規則制定委員会というものに諮詢しますが、その際においてはあの弁論方針のことは数年来の実務家の懸案になつてつて、あれは余り形式的で止めようじやないかというような議論がそこにあつたのを、その実務家の意見を尊重して、そうしてああいう規則を拵えたのだろう。実際上の訴訟手続においては、新刑事訴訟法においては更新をしなくてもいいことになつております。そういうところと睨み合せて繋属事件について成るべく簡素に事件を進行させ得るようにするためにああいう規定を置いたのであります。そういう委任などは考えなかつたのじやないか、こう考えております。
  103. 伊藤修

    伊藤修君 大分時間も遅いですから、只今の松井さんの御発言は重要なる問題でありますから、尚後日十分一つ御討議願うことにして、本日はこれを以て散会するようお諮り願いたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 御賛成でございますか。次回は明二十九日午前十時に定めましてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) それでは本日はこれで散会いたします。    午後五時二十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            宮城タマヨ君    委員            齋  武雄君           大野木秀次郎君            鈴木 安孝君            深川タマヱ君            來馬 琢道君            松井 道夫君            松村眞一郎君   委員外議員    高橋  啓君            井上なつゑ君   政府委員    法務政務次官  牧野 寛索君    刑 政 長 官 佐藤 藤佐君    法務事務官    (矯正保護局    長)      古橋浦四郎君    検     事    (検務局長)  高橋 一郎君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総長)  本間 喜一君