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鬼丸義齊君 たしか私は
昭和六年に現行法が両院を通過して
法律と
なつたように思いまするが、その以前の
昭和三年のときに……、一異最初は両院に対してこれは建議として出しておるわけです。更に
昭和三年から或いは四年てしたかに、五十七議会か六議会たつたと思いますが、そのときには、すべて
只今私の申しまするようなふうに、苟くも
理由なき
抑留、
拘禁に対しては、すべて
賠償をすべきものだというふうな案がありまして、多分衆議院だけは通過して、
審議未了に
なつたと思います。その後段々切り詰められまして、
昭和六年に現行法ができたのでありまするが、
只今の御
説明によりますれば、
憲法の四十條の
趣旨も、必ずしも
裁判の結果
無罪にな
つた者のみに限
つて填補をし救済の途を與えるべきものではない、やはり同様な
趣旨において人人権尊重の
意味から、そうした
理由なき
拘禁或いは
抑留については、これは国が
補償してやるべきであるというふうな
憲法の
趣旨だと解釈せられるといたしましたならば、
手続上において難易がありましても、
手続の難易によ
つてそんな
国民を不平等な
扱いにするということは、それは決して私は親切な行き方ではないと、かように
考えます。
殊に今日の
現実では、
起訴されまする
事件よりも、むしろ不
起訴の
事件の方が数において多いのじやないか。又段々とこうして思想の惡化して参りまして、犯罪激増の傾向のありまするときの将来を
考えて見ますれば、
国家の方では非常な経費を要するがために、すべての拘置所或いは刑務所等の設備も十分できないというふうなところから、おのずからその間に
起訴にかかります
事件等も手加減が生じなければならんようなことになるでありましようと察せられまするが、そうした場合においては、ますます不
起訴事件というものは殖えて参ります。犯罪は決して減りはしません。殖える一方でありますそのときに当りまして、
起訴されて
無罪の
判決を受けた
事件のみに限るといたしましたならば、本当の半数にも達せざる者のみを救うことになります。そこでそれだけに対して
国家が交付をし、その他の者は煩わしいからというわけではありますまいが、
手続上困難だからというようなことから、その者を切捨て御免のようなことにして行きますることは、民主主義には断じて私は合わないことだと思います。恐らくはこれは
国民等しく、そういうものは差別あるべきものだということを
国民こそ知らないから別でありますけれども、公正なる見地に立
つて見まするならば、そうした
意味において差別をつけるということは、決して私は
国民の意思には副わないと思います。不
起訴になりまする場合の
無罪か
有罪かということの
決定は、如何にも
裁判によ
つて愼重なる
審理の結果、
無罪、
有罪を決めまする場合よりも、勿論
決定はいたしませんけれども、少くともいわゆる易きにつくというふうな
意味におきまして、せめてもの
国民の権利を害したという虞れのある場合において、これを私は救
つてやるということは決して惡いことじやないと思います。
検事の
手許におきまして、嫌疑なしと
決定いたしましたような
事件についてまでも、全然これを顧みず切捨て御免にして置くということは、如何にもこれは
刑事補償制度を設ける限りにおきましては看過するべきものではないと思います。成る程時効であるとか、或いは又大赦であるとか、そういうふうな場合はおのずから
只今の
制度の上においてそれぞれの場合を
研究いたしまして、これを
対象とすべきか、すべからざるかは決めるといたしましても、少くとも私は
裁判によ
つて無罪の
裁判を受けた者だけというふうに限りますることは、如何にもどうも余りにも不公正に陥つたことだと思います。この上
政府の御意見を伺つたところでやはり結局原案がそういうふうにな
つておるのでありまするから、致し方ありませんが、
手続上において、
検事の
手許で嫌疑なしと、犯罪の嫌疑なしということと、犯罪はあるけれども、
起訴すべきものにあらずと
検事が
考えて、いわゆる
起訴猶予にした場合ということの
区別をいたしますることは、別段困難ではないんじやないかと思います。又一方におきまして、
審理の途上死亡したような場合におきましても、
有罪無罪の犯罪を決するよりも、これはいわゆる
補償して
差支なきものなりや
否やということは、たとえその途上でありましても
裁判所で以て
決定いたしまするに別段困難ではないように思います。
只今お
手許において若し分
つておりましたら、
一つこの際お聞かせ願いたいと思いますことは、いわゆる
検事局の受理件数の中において、
起訴されましたる者と、いわゆる不
起訴処分に付したる者との量的
限度をこの際概略で結構でありますから、お願いいたします。尚今私の申上げまするようなふうによ
つて損害の
補償をなすならばなし得ると思うなこともでき得ないと、やはり依然としてお
考えになりまするか。若し
検事の嫌疑なしと
決定して、嫌疑ありと、いわゆる
起訴猶予というふうに
決定した者に対して、それを争うということになれば大変複雑になるからといことでありまするが、これに対しましては、やはり抗告の途を與えてやるならば、成る
程度満足させることができるのじやなかろうかと思います。これも
一つこの際伺いたいと思います。